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財政制度分科会(令和5年10月11日開催)記者会見の模様

〔幹事〕それでは、会見を始めていただければと思います。

〔土居部会長代理〕皆様、こんにちは。財政制度等審議会財政制度分科会の歳出改革部会の部会長代理をさせていただいております、慶應義塾大学の土居でございます。本日14時から財政制度等審議会財政制度分科会歳出改革部会が開催されました。

本日は「文教・科学技術」、「国内投資・中小企業」について議論を行いました。事務方から説明があった後、委員から御発言をいただきました。

主な発言内容をここで御紹介をさせていただきます。なお、各委員からの主な質疑や意見につきましては、通例どおり、委員の個人名を伏せて御紹介をさせていただきます。なお、議事の詳細につきましては、後日、公表される議事録を参照していただければと存じます。

それでは、最初に文教・科学技術に関連しての御意見を御紹介させていただきます。教育については、量ではなく質の向上が最大の課題である。働き方改革のインセンティブが働きにくい構造があり、業務の削減による本来業務やプライベートの充実にトップダウンで取り組むべきである。運営費交付金や私学助成については、教育の質を向上させるためのインセンティブとなるメリハリ付けが必要であるという御意見をいただきました。

それから、教員の勤務環境改善のため、定数の改善や外部人材の効率的配置や効果的活用が必要であるという御意見をいただきました。

高等教育は定員管理が最大の課題であり、国立大学も関係ない話ではなく、国全体として、適正な定員管理を行っていくべきではないか。大学の自治もあるので、第三者評価機関による客観的な評価なども考えられるのではないかという御意見もいただきました。

また、私立大学について、充足率9割未満の私立大学のうち、充足率改善のための具体的な方策を作成していない大学がなぜこれほど多いのか。具体的方策の策定を補助の要件とすることは検討に値するのではないかということです。

奨学金については、卒業後に働いても返還できないような経済状態になっては問題があるので、免除の拡大ではなく、大学教育の効果測定が重要ではないかという御意見をいただきました。

科学技術予算については、公平性に留意しつつも、メリハリ付けが重要であるという御意見をいただきました。

それから、研究者を志す若者が将来に夢を持てることが重要である。限られた財政資源を有効活用して側面支援するべきであるという御意見をいただきました。

また、大学の任期付きポストが増えているが、企業で働く方が大学教員を兼務する流れができると、博士人材のキャリアパスの多様化にもつながるのではないかという御意見をいただきました。

それから、博士人材の「専門性」を柔軟に捉えるようにすれば、博士人材の企業での活躍につながるのではないかという御意見がありました。

続きまして、博士人材の企業における活用が進まない背景には、ジェネラリスト志向、学卒一括採用、年功序列の人事管理といった日本の慣習があるのではないか。専門性が求められる時代であり、企業も慣習を改めていくことが重要であるという御意見をいただきました。

文化に関しては、海外の博物館・美術館では、入場料だけでなく、所蔵品の貸出、それから物販収入など、多様な手段で自己収入を得ている例がある。我が国の博物館・美術館の自己収入比率を引き上げる上でも、そうした多様な発想が重要であるという御意見をいただきました。

文化財については、クラウドファンディング等により、資金を集める取組は重要である。こうした取組が刹那的なものにならず、国民が継続して文化を支援していく仕組みとしていくことが必要であるという御意見をいただきました。

ここまでが文教・科学技術です。

続きまして、国内投資・中小企業につきまして、御意見をいただいております。

産業支援は、「AI」や「半導体」等の流行り言葉の下に一括りにしてごまかすのではなく、例えばAIであれば、オープンAIのような言語モデルをやるのか、サービスを育てるのかなど、何に投資をしてどういうリターンがあるのか、具体的・明確な説明をするべきであるという御意見をいただきました。

それから、GXは投資内容の明確化や財源確保がされており、評価していると。それに対して、DX・半導体も個別の投資に注力するばかりではなく、そうした大きな戦略を描いていくべきであるという御意見をいただきました。

国内投資に関連して、財政支出に際しては、足もとのインフレ傾向に十分留意するべきであるという御意見をいただきました。

それから中小企業対策について、中小企業対策には、「経済政策」の側面と保護を目的とする「社会政策」の側面が混在するが、前者に重点を置いていくべきであると。今後は一律の補助金ではなく、価格転嫁対策に徹底して取り組むべきであるという御意見をいただきました。

また、賃上げを実現する上では、意欲のある中小企業を応援していく仕組みも重要だが、既存の補助金は、意欲ある中小企業に重点的に配分される仕組みになっているのか疑問であるという御意見をいただきました。

ものづくり補助金など中小企業向け補助金は、実際には、労働生産性向上につながっていない、あるいは事後的な効果検証がなされていない。中小企業の補助金依存を招き、逆に生産性を悪化させるようなことがあってはいけないという御意見をいただきました。

中小企業対策については、どのような支援をした場合に、どのような効果があったのかの効果検証がまったく行われておらず問題である。しっかりと検証するべきであるという御意見をいただきました。

最後になりますが、コロナ禍で膨れあがった中小企業対策費を縮減するのは当然である。事業再構築補助金については、交付を受けた個々の事業者のレビューに加え、全体として、これまでに投じた国費約2兆円が、日本経済の構造転換に資するものだったのかという検証が重要であるという御意見をいただきました。

以上が委員からの意見の御紹介ということになります。

〔幹事〕ありがとうございました。それでは、質疑応答に移ります。本日オンラインはないので、会見室にいらっしゃる方で、質問がある方は挙手をお願いします。

〔質問〕最後にありました事業再構築補助金につきまして、検証すべきであるという御意見ありましたが、今の時点でも、もちろん採択も先月まであって続いていて、続けていることへの意見などそうしたことも含めて、事業再構築補助金に対して、もしほかに意見があったら教えていただけますでしょうか。

〔土居部会長代理〕多くの委員の共通した意見の御趣旨は、本当に政策目的にかなった形で、その補助金が交付されているのかというところであり、それに対しては、残念ながら肯定的な意見がなくて、疑問があるとかこのままでよいのかというところに対しての御意見が多かったということです。もちろん、まだ効果検証が行われてないということなので、これは事業再構築補助金だけに限ったことではないとはいえ、特に本日話題になった事業再構築補助金については、ちゃんと効果検証ができるように進めてほしいという、そうした御意見をおっしゃる委員が多数おられたということであると私は受け止めております。

〔質問〕もう1点、部会長代理としてお伺いしたいのが、今まさに与党で経済対策が議論されている中で中小企業対策というのもあると思うのですが、コロナが5類に移行された一方で、賃上げに向けた支援という議論が出ておりますが、今これから議論される中小企業対策の在り方についてどういう方向性が重要であると考えているのか、そこの御所見を伺えたらと思います。

〔土居部会長代理〕特に委員の方から、今の経済対策そのものに対してこうあるべき、あああるべきであるという御意見ということではありませんでしたが、会議全体の議論の中では、やはりコロナ禍で未曽有の水準にこの中小企業対策費が達している、そこまで増えていると。やはり平常、平時に戻すことが必要であるということは最後に御紹介した意見でもありまして、それでやはり正常化を中小企業対策費全体として、進めていく必要があるのではないかということであると思います。

特に何人かの委員から、中小企業対策をするターゲットとしては、下請、中小企業と発注企業との間での取引を適正化して、価格転嫁できる環境を整備していくという、いわゆる価格転嫁対策が意味を持つ、非常に重要であるということをおっしゃる方が多数おられました。もう一つは、信用保証のことも本日議題になりまして、信用保証についても100%保証というようなやり方は、平時ではそうした100%までは保証しないので、そうした意味では、平時に戻して平常化していくということも求める御意見というのもありました。

〔質問〕今の事業再構築補助金のところで重ねてお伺いしたいと思います。本日も事務局からの資料の中で、ゴルフとかエステといった共通のキーワードで検索をかけると、たくさん似たような事業が出てくるというような状態、これについての意見があったかどうかということと、それから、土居部会長代理御自身がこうした状況になっていることについてどのように受け止めていらっしゃるのか、併せてお伺いできたらと思います。

〔土居部会長代理〕もう委員の方々は既にこの財審でフルーツサンドの話も出ておりましたので、今日改めてシミュレーションゴルフであるとか、そうしたことに言及された委員の方はおられませんでしたが、当然として議題に載っており、資料も出ているということなので、そうした一部の事業に集中するようなことであると、本当に日本経済の構造転換につながっているのかということについては疑問があるというか、もっと良い投資、交付対象があったのではないかというような思いをにじませておられるように、御発言をされておられる委員が多数おられたと私は受け止めております。

私自身も当然、これは国民の税金ですから、本当に役立って補助金を受けた方が事業再構築に役立つように使っていただきたいという思いがありますし、やはりその基金を積んで交付するというやり方自体が、本当にそのやり方でいいのかどうかということも、政府全体として検証ないしは必要な見直しを進めていただきたいなと思っております。

〔質問〕2点ありまして、まず、事業再構築補助金についてです。中小企業支援費全体で縮減というのは当然という意見があったということですが、この事業再構築補助金について、もう廃止も検討すべきであるというか、そこまで踏み込んだような議論があったのかどうかというのを確認したいです。

〔土居部会長代理〕廃止という言葉は、実際は委員の御発言としては出てきておりません。ですから、今の配り方でいいのかということについては、相当、御意見があったと思います。もちろん事業再構築補助金だけが問題であり、それ以外は問題ないということを言いたいわけではなく、中小企業向けの補助金の在り方として、それは一切要らないということはまったく誰もおっしゃっていないわけですが、せっかく中小企業のためを思って支援したいということで政策が講じられているわけだから、生産性向上であるとか、それが持続的な賃上げにつながるようなものに資するようにしてほしいというようなお言葉は、委員の方から、そうした単語が実際にあって、中小企業向けの補助金の改善といいましょうか、質の向上といいましょうか、そうしたところに対しては、相当御意見があったと思います。

〔質問〕もう1点、話題は変わるのですが、文化財保護について、事務方からは寄附を募るようなプラットフォームという提案もあったかと思うのですが、この点について何か委員から意見等、議論等ありましたでしょうか。

〔土居部会長代理〕特にクラウドファンディングで科博が成功したとか、そうしたような背景もあって、比較的好意的な御意見を委員の方からいただいたということかと思います。特に今、独自の自己収入を増やしていくことで、今まで以上に博物館なり美術館が我が国で成り立っていけるチャンスがあり、フロンティアがあると私自身も認識をしておりますし、委員の皆様もそのように思っておられることが感じ取れるような御発言がありました。クラウドファンディングそのものということではないにしても、もっと広く寄附ということで捉えて、それが盛り上がっているから、今だけというのではなくて、今後も継続していける形で、しかも博物館の運営というのはもう長期的にずっと続けていかなければいけないものですから、そうした収入によって支えられる基盤といいましょうか、その財源確保といいましょうか、自己収入の確保というものを今まで以上に頑張ってもらいたいというような御意見が何人かの委員から出ました。

〔幹事〕1点伺ってもよろしいでしょうか。冒頭の御意見の紹介の中で、教員の勤務環境改善について外部人材の効率的配置や、効果的活用が必要であるという御意見があったと御紹介ありましたが、実際、外部人材を増やしても、勤務環境の改善にはつながっていないという資料の指摘もありますが、このあたりどうすべきかというところ、どういった御意見があったか教えてください。

〔土居部会長代理〕具体的に委員の方からは、小中学校の教員が業務を抱え込み過ぎているのではないかと。だから、もう少しいろいろな方々に協力をしてもらって、本来の業務に専念できるような体制をつくって、それで今すぐに教員の方の働き方を改善するということとともに、まだまだそれでも足りないという面もありますから、さらに外部人材をという、そうしたような御意見ということかと思います。

さらに言うと、トップダウンで働き方改革を進めてもらいたいと。つまり、個々の学校で個々に取り組んで業務の見直しをするというだけでは、なかなか、抱え込み過ぎていると言っても、抱え込まざるを得ないという、そうした御事情も個々の学校ではおありになるということだろうと思いますから、全国レベルで、こうした業務は教員が担わなくてもよいですよというような形で、しっかり周知をしていくことを通じて、現場の教員の方々もこれはもっと本来業務にシフトさせてよいのであると感じ取っていただけるということを通じて、負担軽減も図られていくのではないかと。こうしたようなお考えが背景にあるということであろうと私は思います。

〔幹事〕今おっしゃった全国レベルというのは、文科省からそうしたトップダウンのものを出してということですか。

〔土居部会長代理〕そうしたニュアンスであると私は受け止めています。

〔幹事〕ありがとうございます。

〔質問〕事業再構築補助金の件で、先ほど質問に対する答えの中で、土居部会長代理御自身の受け止めとして、基金を積んで交付するというやり方が本当に良いのかということも検証が必要であるという御発言ありましたが、ここの問題意識をもう少しかみ砕いて教えていただけますでしょうか。

〔土居部会長代理〕これは私個人の意見ですが、事務局の資料にもありましたように、結局、この基金というのは当初予算で積んでいるのではなくて、補正予算や予備費で積まれているわけです。

本当に必要ならば当初予算でその予算をつけて、年度内に執行するということだってできるのだろうと思いますが、補正予算として秋になってから予算がつくものの、とても3月末までに全部を執行しきれないという話になると、もちろん繰越しという手段もあるかもしれないが、基金という形で年度を越すという形にして、予算を使うということなのですが、本当に緊急性があるならば、何も基金として積んで年度を越すという必要はないのではないのかと私は思うわけです。

ですから、別にこれは財審の公式見解というわけではありませんが、基金というやり方ではなくてもっと本当に緊急性のある事業者に対して、スピーディーに交付するというような手段が別途あるならば、そうしたニーズがあるならば、そうしたことを考えてもよいが、必ずしもニーズがあるかどうかよく分からないから少ししばらくお金を取って考えようのようなことであると、本当に支援の必要な方々のところにお金が届いているのかなといったことは、疑問を感じるところがあるというわけです。

〔質問〕先ほどの初等中等教育の関係の委員の発言で、定数改善に対する言及があったというようなお話があったと思うのですが、一方で、本日の事務局の資料を見ると、効率化・合理化が可能なのではないかという指摘もあるわけですが、そのあたりの効率化・合理化を求めるような発言というのはございませんでしたでしょうか。

〔土居部会長代理〕特にこの業務をもっと効率化するべきとか、もっと人員配置をこのように合理化するべきであるという具体的なところまでには、直接の言及はありませんでした。基本的には、全体的な取組として、教員の働き方改革がもう一段進むような取組をしっかり検討して、有効なものについてはしっかり実施してほしいというニュアンスの御意見だったと思います。

〔質問〕国内投資のところで、先ほどDXや半導体で大きな戦略を描くべきであるという発言があったというところなのですが、もしその会議の中でもう少し詳しい、どういうところが足りないといった言及があれば教えていただきたいです。また、土居部会長代理御自身でも、この半導体なりDXの投資戦略に絡んだ問題意識があれば少し教えていただければと思います。

〔土居部会長代理〕まずGXについては、皆様御存知のように昨年暮れに「GX実現に向けた基本方針」を、今年7月に「GX推進戦略」を取りまとめたというものがあっての御意見ということであると思います。まだDXなり、DXと言いましても、業務のデジタル化といったそうしたものではなくて、産業としてそのDX周りの産業を振興していくなどという意味です。それから半導体もそれに関連している分野については、まだグランドデザインめいたものがないという状況のようです。ですから、何のグランドデザインもなく、対処療法的にこうした理屈が来たから、ああいう形で補助金をつけますとか、こうしたリクエストがあったから、こうした施策で対応しますという形ではなくて、この国としてDXや半導体分野はこうした方向で進んでいくのであるということを示した上で、政策としてどういうふうなものを講じていけばいいのかということをブレイクダウンしていくというような御趣旨をおっしゃりたかったと私は受け止めております。そうした意味で、GXが戦略をつくったように、その分野でも戦略をつくってから、しっかり必要な政策を講じていくべきであるという御意見だったと思います。私もまさに、的を射た御意見だなと思っていますのでこの話については同意見です。

〔幹事〕ほかはいらっしゃらないようなので、会見はこちらで以上となります。どうもありがとうございました。

〔土居部会長代理〕ありがとうございました。