〔幹事〕それでは、御説明をお願いいたします。
〔増田分科会長代理〕それでは、発表いたします。本日9時から、財政制度等審議会の財政制度分科会を開催をいたしました。本日は、令和6年度予算編成に向けて、現在の経済財政状況等のいわゆる財政総論、その中で重点分野となる社会保障分野を導入的な形で、委員の皆様方から意見をいただくということで進めました。社会保障については、また後日、それだけでまたテーマとして行いたいと思います。
まず初めに政務の三役の方、具体的には鈴木大臣、それから両副大臣、両大臣政務官より、マスコミの皆様方が入られたオープンの場で御挨拶をいただきました。その後、十倉会長が挨拶して、事務方から資料説明、そして質疑と、こうした形にしております。各委員からの主な質疑や意見につきましては、個人名を伏してこの場でこれから紹介させていただきます。詳細については後日の議事録を御参照いただければと思います。
それでは、順次申し上げます。まず、経済活動が平常化しつつあり、物価高や金利の上昇など、これまでと構造的に違う経済財政構造の動きが見られる中、歳出構造を平時化するとともに、金利上昇を意識した今までと違う経済財政運営が必要と、これが一つ目です。
それから続いて、生産性の高い分野に重点化した成長戦略を実施するとともに、国民の将来不安を減らし、規制改革と併せて政策を実施し、持続的な賃金上昇につながる成長と分配の好循環につなげていく必要がある。これが二つ目です。
続きまして、物価上昇、金利上昇が見られる中、世界から中長期的に日本の財政は持続可能であるという信認を確保しておく必要があると、こうした意見です。
それから、経済対策の指示が出されているが、需給ギャップや物価動向を踏まえると、規模ありきの政策でなく喫緊性や生産性の高い分野などに絞った対策とすべきという意見です。
続きまして、EBPMなどを活用してコロナ期の対応を含め、政策の成果をきちんと評価・公表し、それを次の政策に生かす取組が必要であると。
それから続いて、以下、社会保障とか子育ての関係を少し紹介いたします。将来の社会保険料率も上昇が見込まれる。子育てを担う現役世代の負担を抑制するため、医療・介護についても年金のマクロスライド的な仕組みの導入や、全体の社会保険料率に上限を定めることも検討すべきと、こうした意見です。
また続いて歳出改革について、医療・介護の過剰な支出の削減を実現すべき。収入面においても高齢者の窓口負担の検証、資産と所得を把握して応能負担を求めるべきと。高額な医薬品も出てきている中、メリハリづけが重要であるという意見です。
それから続いて、年々増える社会保険料負担が現役世代の手取りを縮小させていると。「こども未来戦略方針」にも記載されているとおり、現役世代に配慮して実質的な負担増とならないように、社会保障の給付の抑制に努めていく必要がある。これは成長と分配の好循環にもつながっていくと、こうした意見です。
それから、こども財源については、実質的に追加負担を生じさせないという取組について、この言葉が、負担のない給付があるという意味で伝わることは避けなければいけないと。皆で子育てを支えるということが浸透していないため、今回の改革の狙いについて国民によく説明をする必要があるという意見です。
それから続きまして、医療・介護の関係のお話ですが、今年の予算編成はトリプル改定であり、全世代型の社会保障に向けた政権の本気度が試される局面。保険料の増加は現役世代の負担増につながると、事業主負担も上がると賃上げ原資がなくなってしまうという意見がありました。
それから続いて、医療・介護について報酬がきちんと分配をされているか。厳しい方もいるが、一部の方が高給を取っているのではないかという点も含めて、よく検証すべきと。病院、診療所などもよく分けて分析をすべきで、単に物価増に基づいて報酬を引き上げること、これは避けるべきという意見です。
また、医療・介護の報酬改定は1%の上昇で、3,000億円の保険料負担増と、こうした関係にある。高齢化で不可避的に供給量、いわゆるQが増加する中で政策的に決定される改定率、こちらはPになるわけですが、こちらについては、データに基づいて必要な水準をよく考えていく必要があると。雇用者報酬より給付が伸びるというのは、サステーナブルなものにはならない、こうした意見がありました。
それから続いて、医療費の1受診当たりの単価が上昇する中で、コストの一部である医療従事者の賃上げは十分可能であると考えられる。今後公表される利益率を見て、必要であれば適正な水準に単価を下げる、これも視野に入れておくべきという意見です。
それから、単価増が起きている中でさらに改定率をプラスとすることは、保険料引き上げ、手取り減となり、政府が進める物価高対策とは矛盾するのではないかと、こうした意見です。
続いて、医療機関の経営データの見える化を進めるべき。医療経済実態調査、サンプル調査になっているが、情報開示を義務化すべきと。そして他の病床機能報告などのデータとひもづけできるようにしていくべしという意見です。
それから最後になりますが、介護の処遇改善加算によって、加算対象以外の者の賃上げができた。これは大変好ましいことである。更なる見える化、経営の共同化、合理化が必要である。リテラシーも含めてICT導入を進めていくべきという意見です。
駆け足での御紹介になりましたが、本日の分科会の中で出ました意見は、以上でございます。また、次回等については事務局から連絡をするということで、今日は閉じたところでございます。
私からは以上でございます。
〔幹事〕ありがとうございました。それでは、質疑応答に移りたいと思います。質問のある方は挙手をお願いします。
〔質問〕社会保障の分野について、やはり現役世代の社会保険料の負担が上がっていて、これ以上できるだけ抑えなければいけないという意見があったと思うのですが、抑えるというのは、今回子育て財源の中で言っている社会保険の仕組みを活用した、制度での負担ということも含めて抑えていかなければいけないという考えでしょうか。
〔増田分科会長代理〕本日、全般的には総論的な議論でしたので、いずれにしてもこれから必要なこと、社会保障給付を抑制的に見直しをしていくべしという、そうした大きな見取図というか、そうした意見が大前提にありましたので、これから、それについて各論をどうしていくかというのは、これからまたいろいろ考えていかなければいけないと思います。特に子育て財源については、現役世代の負担が上がってしまうとこれはやはり良くありませんので、そうしたことを見て、これから具体的にどうしていくかは、また財審の中でも会をきちんと設けて議論していくと、こうした段取りをしております。
〔質問〕その上で、まさに具体的な議論はこれからであると思うのですが、負担を抑えるということと歳出改革がどこまでできるかということはつながってくると思うのですが、そこはどういう議論、どういう方向で話をしていくべきと考えていらっしゃるのか、お考えを伺えればと思います。
〔増田分科会長代理〕やはり先ほども御紹介した中で大事なことは、子育て向けの未来戦略方針の中で、様々な政策が出ていますが、やはり給付と負担ということを委員の方もおっしゃっていました。やはり給付については必ず負担が伴うと。ですから、御紹介した意見の中でも、そうした負担がない給付があり得るのであるという伝わり方は、避けなくてはいけないということが、意見としても出てきたわけです。
したがって、こうした子育てについても、それから、そのための歳出改革を社会保障分野でしっかり行うということも、これから非常に射程を広くして考えていかなければいけないと思います。特に今年、本日の意見にもありましたが、トリプル改定のような形になっていますので、診療単価が一つ一つ上がっていますが、やはり一律に社会保障の改定をざっくりと考えるのではなくて、やはり非常に細かくピンポイントで、いろいろとやれることを考えていくべしということでしたので、まさにこれからどこをどうすれば必要な給付等についてもうまく収めることができるのか。これからもちろん事務当局の財務省の感覚も問われると思いますが、それはこれからよく見ながら議論していきたいなというふうに思います。
〔幹事〕ほか、いかがでしょうか。
〔質問〕トリプル改定に関して、様々な意見を御紹介いただきましたが、各論はまた後日やるとは思うのですが、今日の時点であるとやはり引上げということには慎重な意見が全てだったということでよろしいでしょうか。
〔増田分科会長代理〕やはり引上げについては、総じて言えばやはり慎重でしょうね。それから最後のほうでも御紹介しましたが、やはり1受診当たりの単価が上昇するという中で、医療従事者の賃上げもその中で吸収できる部分もあるのではないかといったようなこともございましたので、当然やはり診療報酬を具体的にどの水準が良いのかを考える中で、様々な分析がなされるというふうに思いますが、どこまできちんと合理性のある、納得感のあるものになっていくのかということを、やはり委員の皆様はあらかじめ、本日の段階でやはりそうしたきめ細かな作業を報酬改定の中で行っていくべしと、こうしたことを意見を述べたのであると思います。
国民にとっても非常に重要な問題ですし、コロナで余計多くの国民が医療現場にかかって、いろんな経験をされたと思うので、最終的に国民の皆様がどれだけ納得できるかというのは大事になりますが、そうした中ではやはり報酬改定に当たって、非常にきめ細かく一つ一つ合理性のある考え方というのはきちんとまとめていくと、やはりそうしたことが必要であると。慎重なしっかりとした検討をしてほしいと、そうした意見だったと思います。
〔幹事〕ほか、いかがでしょうか。
〔質問〕私もトリプル改定のことについてお伺いしたいのですが、先ほど照会された意見の中で、一部高給の方がいるのではないかという指摘があったのですが、これがどういうものなのかイメージが少しつかみづらくて、増田会長代理の理解した範囲でどういう方が高給なのかという問題提起だったのかを解説していただければと思います。
〔増田分科会長代理〕その方は、特にそれ以上具体的なことをおっしゃっていなかったのですが、恐らく公的病院に勤務されている方と、それからそうでない方との違いなどを恐らく意識してそうした発言をされたのではないかと思われますが、本日は少しその背景まで具体的にお話しいただけるような時間はありませんでしたので、恐らく、各論の中でそのあたりはまた御意見あるかもしれません。
〔質問〕医療従事者の中でも、所属している機関がいわゆる民間の医療法人なのか大学病院なのか、もしくは個人のクリニックなのかなどによって本人の収入の度合いにむらがあるので、そうした一律に何%アップとするような議論は慎重にすべきであると。
〔増田分科会長代理〕改定のほうはまた恐らくいろいろ今後の議論になると思いますが、今の実態をきちんと見て、それで今後、議論をしっかり積み上げてほしいと、そうしたことだったと思います。今おっしゃったように医療現場、どこに所属しているかによってもそのあたりのデータ上も違っているところがありますので、そうしたことをきちんと踏まえた上でということであると思います。
〔質問〕先ほどの御意見の御紹介の中で、こども、少子化対策のところでありましたが、負担のない給付があり得ると伝わることは避けなければならないということで、本当にそのとおりであると思うのですが、ただ、「こども未来戦略方針」の中では、実質的に追加負担を生じさせないとはっきりと書かれていて、このあたりどういうふうに誤解をさせないように発信をするということなのか。そのあたりどういう議論があったか伺いたいです。
〔増田分科会長代理〕恐らくこれは財審というよりも実際に予算を組み上げたときの執行側というか、政府側というか、あるいはこども家庭庁がどういう情報発信をするのかというのを踏まえて我々もこれはこうした意味ですと、もちろん財審としての役割を出さなくてはいけないのですが、その組み方、出来上がり方であると思います。
今、実質的な負担が生じないようにという言い方をしていて、それがどういった意味なのかということを今後、今度の予算の中で財源手当をどうするかで具体化されると思うのですが、ただ、やはり財審で財政の健全化、国債的な信認の話などもあって、将来世代に逆に負担が生ずるようなことは絶対避けなければいけませんので、今回出来上がる予算がやはり将来世代も含めて負担がないような形にしていくということが肝腎です。ですから、それは我々財審としての今後のつくり上げ方というか、出来上がり方を見て、よくそのあたりを注意したいなというふうに思っています。
一般的にはやはり給付と負担というのはセットになっていて、それで何らかの給付があれば、当然のことながらどこかで誰かが負担をしているわけですから、その関係は絶対に崩せないと思うのです。したがって、これからの具体的な予算の組み方、それからそれを受けて、それを組んだ政府側がどう発信するかということがまず第一に重要になるかなと思います。
〔幹事〕ほかにいかがでしょうか。
〔質問〕増田会長代理御自身の御意見を伺いたいと思うのですが、令和6年度予算の編成がキックオフしたわけですが、それについてのお考えと、また、トリプル改定について、御自身でどのように取り組んでいくべきか、どうお考えでしょうか。
〔増田分科会長代理〕一応、あまり個人の意見を言わないような場ではあるのですが、あえて言うと、やはり来年度予算は平時にどれだけ戻れるか、平時回帰をどう実現していくかが一番のポイントではないかなというふうに思います。その中でやはりこども関係予算、あるいは財源、それをどう組むかということですが、総論で言えばやはり平時にどう戻すのか。
それから、トリプル改定はこれからであり、委員の意見の中にも表れていましたが、報酬全体を、報酬をどういうふうにするのか。やはり現場が随分それぞれによって違いますので、そこをどれだけ踏まえた形で、報酬を考えていくのかということに尽きるのではないかというふうに思います。それ以上はこれからまた内容を見て、私としても考えていきたいと思います。
〔幹事〕ほか、いかがでしょうか。
〔質問〕2点あるのですが、1点目が先ほど診療所の御意見の御紹介の中で、物価上昇に合わせて報酬を引き上げるのは避けるべきという意見があったということですが、もう少し詳しくお伺いできないかということです。
もう1点目が、トリプル改定について、先ほど総じて慎重だったということで御紹介ありましたが、プラス改定自体が必要ないというような意見はあったかどうかも教えてください。
〔増田分科会長代理〕委員のほうで、プラス改定が必要ないとか、そこまでの意見はなかったと思います、本日の段階では。これからその内容、作業の状況を見てからの意見であるというふうに思います。
それから、先ほど紹介した意見の中で、当然、医療従事者の賃上げということも非常に重要なことであるのですが、受診の1単位当たりの単価が上がっているのですが、やはりそちらの単価が上がっている中には、そうした医療従事者の働くコストというのは当然含まれているわけなので、その中で吸収できる部分もあるのではないかと、こうしたことだったと思います。ですから、やはり報酬改定については何度か申し上げましたが、そうした現場の実態を見て、その上でトータルで報酬改定率はいくらとなるわけですが、現場のそれぞれの異なる実態をよく見つつ、これから考えていく作業が必要であるということを委員はおっしゃったというふうに理解しています。
〔質問〕金利上昇局面を踏まえた財政運営が必要であるという意見を御紹介いただきましたが、これは例えば利払い費が増えるというような影響も出てくると思うのですが、その財政再建をこれを機に進めてくださいというような趣旨の御意見だったのでしょうか。
〔増田分科会長代理〕おっしゃるとおり、利払い費などに相当な圧力がかかりますので、やはり今、内外金利差も非常に拡大していますし、いろいろな面で物価上昇局面になっていますから、そうした物価対策という予算ではなくて、物価対策という面もあると思いますが、やはり今後の金利の動向などもよく見ながら、全体としては日本だけ今のところ低いですが、各国全部大きく上げているわけですから、そうした中でイールドカーブ・コントロールをどういうふうにしていくのか等もあります。
これはもう財審というよりはまた違うところでいろいろ議論されると思いますが、金利上昇のそうしたことも頭に入れて、財政にどう、そうしたことが影響してくるかということを見ながら、今後の財政運営あるいは予算編成をしていく必要があると、こうした意見であると思います。
〔幹事〕ほかにいかがでしょうか。
ないようですので、これで終了したいと思います。どうもありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。