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財政制度分科会(令和4年4月8日開催)記者会見の模様

〔増田分科会長代理〕お待たせいたしました。本日の14時半から財政制度等審議会財政制度分科会を開催しました。本日のテーマは2つで、財政総論等、それから、もう一つが文教・科学技術。事務方から説明を行って、質疑と、こうした形です。

財政総論等ですが、こちらは物価・金利のゼロ局面の変化、それから、経済成長に向けた課題と財政健全化、それからまた、基金の在り方、それから、財政広報、そして、財政教育と、こうした内容について説明がありました。それから、文教・科学技術は、義務教育、高等教育や科学技術、それについて説明がございました。いずれも事務局から説明があったのですが、全体、一気通貫で説明してもらって、その後質疑ということになりましたので、以下、委員の個人名を伏せて内容を御紹介しますが、その発言の中で財政総論等、それから、文教・科学技術、それぞれ混ぜこぜになっていますので、できるだけそこは区別しながらとなりますが、ある委員の発言の中に両方入っていますので、御留意いただきたいと思います。

それでは、順次説明してまいります。最初の委員の方ですが、この方は、総論のほうですが、ウクライナ侵攻で冷戦時のようなブロック経済が進展をしていくと、物価上昇局面が相当長く続くのではないか。インフレが構造的なものと考えると、やはり従来の政策の見直しが必要になる。それから、次に教育についてですが、そちらについては、人口減少が続く中で、次の3つを行う必要がある。一つは統合、それから、2つ目がIT化、それから、3つ目がアウトソーシング。この3つを進めることによって質を高める必要があると、こうした意見でした。

それから、次の委員の方ですが、世界情勢が一変をした。コロナとウクライナ侵攻でまさに疫病と戦争の二大脅威の今真っただ中にある。したがって、その影響として、金利が上がれば利払いが増えていくということになりますので、まさに財政健全化が重要であるという意見です。

それから、次の委員の方ですが、財政の将来展望について危機感を持たざるを得ない状況が今である。そして、財政的に見ると、ニーズ、解決しなければならないことばかりであるので、今後、具体的な制度、資金面をどうしていくか、そのことを考えなければならない。それから、この人は、その中で長期的な課題に対する財政の緊急提言のようなものを行うべきではないか、こうした意見です。

それから、次の委員の方ですが、国家戦略として将来の不確実性に備えた財政運営を行う余力を今のうち持っておくべきであるということを言っています。

それから、次の委員の方ですが、子供たちに財政について理解してもらうことが必要である。これは財政教育に絡んでの話です。例えば模擬政府とか模擬国会をつくって、子供たちが今何に予算が必要かとか、税はどうやって取ろうかといったようなことをお互いに議論させると大変面白いし、理解が深まると、こうした意見です。

それから、次の委員の方ですが、この方は、今日の説明資料の中で高等教育に触れた部分があるのですが、その高等教育の見直しについては、この資料のとおり、今回の見直しについて完全に同意をする。あとは、どうそれを実現するか。すなわち、やるべきことはもうはっきりしているが、どうしてこれまで実行できなかったのかという議論が必要であるという意見でした。そして、PDCAについても、KPIが因果関係とは関係のない指標になっている部分があるのではないかと、こうした意見です。それから、解決の鍵は、若い人たちをどう財政の問題に引きつけるか、この視点が大事なので、ここをしっかりと考えていく必要があると、こうした意見でした。

それから、次の委員の方ですが、今、政府の中で新しい資本主義が議論されているが、その中で配分の話が出てきておりますが、やはり原資を企業も稼がないといけない。その上で、そのためにはデジタル化がマストである。ICTの資本ストックがこの国に少ないということはまさに世界の中ではディスアドバンテージになっている。それから、IT教育のミスマッチに関して、求められるレベルは様々多様である。AI、データサイエンスからリテラシーまでそれぞれのレベルに応じた対応が必要である。それから、最後、財政の総論的な話ですが、コロナの補助金について適正でないものが散見されるので、未然に防ぐ方策を考えていく必要があるのではないかと、こうした意見でした。

それから、次の委員の方ですが、新型コロナ対策について、短期国債、その調達で何とかその場しのぎをしてきただけで、誰が負担をどう分かち合うかという、そうした大きな議論が日本ではまだできていないという指摘です。それから、この方は、文教関係についてですが、大学の定員問題や評価について、定員充足率だけでなくて、教育の質を見ていくということも必要である。したがって、例えばそれを測るために、卒業後の卒業生の所得の把握なんていうことも考えたらどうかということ。それから、人口減少下で高等教育の質の維持をどうするかという問題意識も持って取り組んでいくべきである。同じ定員でも、人口が減少すれば、学生のレベルは下がってしまうということがあるので、教育の質の把握が今はできていないということが問題である。それからまた、研究開発の関係ですが、研究のエフォート管理については、研究の世界ではこれまでちゃんとできていなかったことであり、そうしたことについて今回はっきり指摘があってよかったと、こうした意見でありました。

それから、次の委員ですが、今の日本経済の置かれている状況は、御本人も少し矛盾する表現と言っておられましたが、まさにインフレとデフレという本来共存するものでない両者が共存している状況ではないか。エネルギーとか食料品でインフレが起こっている一方で、それ以外の分野でデフレリスクも出てきている。したがって、そうした状況の中で、コロナ禍を経ても新陳代謝が進まず、企業の中では成長が進んでいないという、そうした問題があるという指摘をしております。それからまた、この方は文教の関係では、教育についても両方が重要であると。要するに、全体のレベルを引き上げるボトムアップの教育が一方で重要であるし、それと同時に世界と戦えるトップをどう伸ばしていくかという教育、その両方が重要であって、トップに資金を重点的に配分するなどのメリハリづけをしっかりと行うことも重要であると。

それから、次の委員の方ですが、文教の関係ですが、働き方改革につながるエビデンスを把握していくことが重要であると。過重労働の指摘のところです。それから、学校の施設整備について資料の中で触れているのですが、あれを見ると、児童生徒数の将来推計が十分できていない、あるいはないために非効率な施設整備となっていた例がその中に記載されていて、改めて人口推計、将来推計が重要であるということを指摘しております。

それから、次の委員の方ですが、国際的なインフレ上昇は、これは一時的な現象ではなくて、構造的要因に起因していると思う。グローバル化の流れが滞ることは間違いなく、それから、グリーンフレーションは10年単位で続いていくのではないかと、こうしたことです。それから、コロナ禍における例外からの脱却を急ぐべきと。これも以前の財審の提言をしておりますが、例外からの脱却という、それを引用しながら、物価高の対策等のため補正予算の策定を求める声が上がっているのは大変憂慮すべきである。限られた財政資源をいかに有効に配分するか、まさに今後の財政運営のグランドデザインを今示していく必要があるということを言っています。それから、この方はもう一つ、科学技術予算について、やはり様々なデータを見て複眼的な分析が必要になってくるのではないか。それからまた、文教予算ですが、人材の流動化に触れています。そのためにも、社会人に対するリカレント教育の整備、こうした分野にも力を入れていくべきであると言っております。

それから、次の委員の方ですが、金利上昇リスクなどに加えて安全保障リスクが生じている。こうしたときこそ平時の財政余力を持つことが何よりも重要である。それから、この委員の方は、ワイズスペンディングという言葉が世の中で流布しているが、財審では、その正確な意図が分かるように厳密にしていく必要があるのではないか。この委員の方は、自分はワイズスペンディングということよりも更に的確な表現として、アウトカム・オリエンテッド・スペンディング、まさにそうしたふうに言うことが正確ではないかと思っているということを言っております。それから、デジタル化と教育についてですが、デジタル化による業務の効率化を通じた働き方改革をしていくという、こうした点が重要であるという指摘をしています。それからまた、オンライン授業の単位の上限が今決められているのですが、これは古い規制なので、オンライン時代には見直していくべきであると、こうした意見です。

それから、次の委員の方ですが、例外からの脱却と言っている中で、補正予算は検証がしにくいということです。やはりそこはもう補正を仮に編成したとしても、きちんと検証していくべきである。それから、基金について今回資料の中で触れていますが、基金も執行すればよいというものではなくて、その取組やガバナンスなど全てを厳格にチェックする必要があるという意見です。それからまた、高等教育のチャンスを与えることは重要だが、大事なことは、その人の能力をどれだけ高められたのかということなので、教育の質が低い大学の淘汰はやむを得ず、その大学を救済の方向に持っていくのはよくないと、こうした意見です。

それから、次の委員の方ですが、財政について、中長期的な視点でやはり議論していくということが重要であって、最近、毎年補正予算を編成しているのですが、補正予算も毎年度編成すべきではないと。あるいは、基金を隠れみのにしないといったような、そうしたことを確認していく必要があるという意見です。それからまた、ワイズスペンディングという、前の方がそれについての意見を言ったのですが、それに連なる意見ということをおっしゃっていましたが、やはりスタートアップについてもワイズスペンディングということが大事であって、最近、ともすると、スタートアップが重要であるということで様々な金を入れているのですが、スタートアップだからといってお金を流すのではなくて、内容も精査してしっかりとした目利きを行っていく必要があると、こうした意見です。

それから、次の委員の方ですが、コロナ対応が財政健全化にどのような影響を与えたのか、財政出動が本当に力強い経済成長につながったのか、ここの検証をしっかりやるべき。新陳代謝が進まなかったという、そうしたおそれはないのかということをおっしゃっていました。したがって、いずれにしてもしっかりと検証すべきという意見です。

それから、次の委員の方は、教員が多忙であるというのは、教員のほうで業務を丸抱えしているせいもあるのではないか。部活の忙しさであるとか、親からのいわゆるクレーム対応など外部委託すべき点は外部委託をしていくべきではないか。それからまた、学校施設の複合化について資料で触れていますが、それについては管理責任の在り方自体を問うていくべきではないかと、こうした意見でありました。それからまた、この方は財政総論についても意見がありまして、単年度主義の弊害是正について、これはばらまきの道具になりかねないので、基金のガバナンスや補正予算の効果の測定を進めていくべきということをおっしゃっています。それからもう一つ、財政教育とか広報については、地方自治体が重要な役割を担うと考えていて、ごみ処理や下水などのお金がなくなる。そうすると、その整備、維持管理ができなくなる。それで生活に悪い影響をうんと与えるという、そうした当たり前のことに気づいてもらうということが大事で、やはり自分事、見える化、こうしたことが大事であると、こうした意見でありました。

それからまた、もう少し何人かの意見がありますので、続けます。次の委員の方ですが、財政の在り方は、新しい資本主義の在り方と一緒に議論する必要があるということ。それから、所得の再配分は必要だが、できるだけ価格にディストーションを与えないことが前提と、こうした意見でありました。それからまた、R&Dには国の役割があるが、金を出すだけでは駄目で、国がその関係のコーディネーターになる必要があると、こうした意見です。

それから、次の委員の方ですが、この方は教員の過重労働を指摘しておりまして、やはり学校の先生が子供たちに尊敬されるような職業になるよう、今こそ働き方改革をしっかり考えるべきという意見です。

それから、次の委員の方です。財政教育について意見をおっしゃっていました。子供たちに何を教えるべきか、将来の視点に立ってその内容を考えるべき。フューチャーデザインとこの方は言っていますが、その考え方を取り入れて、今の政策のアウトカム、効果が30年後、50年後にどう残るかという、どの評価するのかというその考え方を入れていくべきという意見です。

それから、次の委員の方ですが、日米が2050年カーボンニュートラルの歩調を合わせたが、これを達成するにもかなりの財政出動が必要。増税の議論にとって、まさに今は一番その増税の議論をやるのに良い時期ではないかと、こうした意見をこの方は言っておられます。

それから、次の委員の方ですが、社会保障と税について、若年世帯の信頼が落ちて、貯蓄が増加をしている。将来不安ということであると思います。したがって、社会保障の安定的な財源が必要であって、財政健全化の道筋を示す必要がある。それからまた、高等教育の関係については、大学設置基準の見直しについては、質を保証するという観点も入れて考えていただきたいという意見でした。

それから、次の委員の方ですが、今後の財政のテーマは、セキュリティーが重要であるが、その際にはソーシャルのものと、それから、ナショナルのもの、この2つのセキュリティーのリバランスが重要であると。それから、国防費ということは、対GDP比2%とかいろいろ議論がありますが、そうした対GDP比何%ということではなくて、日米同盟を強化する目標を明確にして国防を強化すると、そうした視点が重要であるという意見です。

それから、次の委員の方、この方が最後でございます。文教の関係ですが、オンライン授業について、これ、上限が資料の中にも書いているとおりあるのですが、オンライン授業がその上限を設けているというのは、オンライン授業がリアルな授業に比べて劣っているという、そうした古い考え方で上限規制をしているので、そこはもう見直していくべきである。それから、教員の働き方改革について、外部人材の適切な活用が行われるように、文科省だけで考えるのではなくて、政府全体で、あるいはそれの外も含めて全体で取り組んでいくべき。それから、教育関連の政策というのは、数年後アウトカムベースでどのような成果が出たか、そこはしっかりと検証すべき、こうしたことでありました。

大分長くなりましたが、委員からの主立った発言は以上でございます。

〔幹事〕ありがとうございました。それでは、質疑に移ります。御質問ある方はいらっしゃいますでしょうか。

〔質問〕緊急提言を行うべきではないかとか、限られた財政資源のグランドデザインを示すべきとか、また、恐らくこれはコロナ対応の予算のことを言ってらっしゃるのかなと思ったのですが、新陳代謝、経済を進めたかどうかとか検証を、という意見が結構今回多かったというような印象を受けるのですが、これから通常の建議とは別に何か提言的なものとかを出されるような御検討とかを進められるお考えはおありでしょうか。

〔増田分科会長代理〕今日はその関係について特にその後、皆様で議論したわけではないのですが、私自身は、春も建議を出しますので、建議の中にそうした趣旨を取り込むということが良いのではないかと思っています。要は、発言者の趣旨は、それだけやはり財政について厳しい認識を持って、やはり健全化に向けてきちんと対応を取っていくべきと、こうしたお話が背景にあって、それで多くの国民の皆様方にその認識を広く伝えたいという意識から出ていると思うので、私は建議の中にそうした趣旨をうまく盛り込んでいけばよいのかなと、こうしたふうに思っています。

〔質問〕基金のところで、基金がこの2年ぐらいで非常にコロナ禍で増えたわけなのですが、増田さん自身はどういう問題点だったり、チェックの仕方とかが十分、不十分とか、どういうふうに見て、考えていらっしゃいますか。

〔増田分科会長代理〕確かに基金はおっしゃるとおり増えました。それで、基本的には予算単年度主義の関係から基金が出た関係もありますし、それからまた、現在のコロナ対応ということもあって、その内容に応じて増えてきた部分もあると思います。基金を設けてやっていきますと、この中の委員の中でも同じような指摘もあったかと思うのですが、どうしても単年度で使えない大きな額がそこの中にたまっていますので、一体基金がどういうふうにどの程度執行されたのかという、やや執行サイド、ですから、端的に言うと、その額のうち何%が執行されたとか、そちらにどうしても目が行きがちな部分が出てくると思っています。

したがって、やはりここでもいろいろガバナンスとかいうような指摘もありましたが、私もこの基金については、やはり常に内容について、執行の在り方からその必要性とか様々な点について、複数年度にまたがるので都度都度やはりきちんと目を向けていくということ、それから、ともすると、基金を造成すると、一般の方にやはりどうしても見えにくくなるところがあります。これは自治体でも随分基金があるのですが、なかなか見えにくくなっているところがあるので、今、基金がどういう状況でどういうものに使われているかという透明性を少なくとも高めて、見えやすくするようにということは、基金を運営していく上でまず重要なことではないかなと思います。

〔質問〕ありがとうございます。

〔幹事〕ほかいかがでしょうか。すみません、では。

〔増田分科会長代理〕どうぞ。

〔幹事〕先ほどインフレとデフレの共存というようなところがありましたが、ここの危機感というのは、増田さん自身はどういうふうに捉えられていますか。

〔増田分科会長代理〕本来、その発言者の方も、例えて言えばそのような状況が今見られるということで、大変、発言者自身もいわゆるそうしたことを研究されている方ですので、少し分かりやすくおっしゃったような感じの部分もあるのですが、確かに今見ますと、一方で資源等についてインフレのいろいろなそうした部分も現れているし、一方で給与などについては長らくずっと据え置かれているという状況があって、政府が旗を振ってやっとその辺りが少し変わってきつつあるようなことですから、非常にウクライナの問題もあって、資源とかエネルギーについていろいろな影響がこれから出てくるでしょうから、内容というか、要するに、現状、それから、今後の予測をよほどきめ細かくしっかりとやっていく必要があると、そうしたことにつながっていくのでないかと思います。

これから財務省を中心に政府では骨太で大方針をつくって概算要求基準をつくって、いよいよ来年度に必要な予算について各省が議論して、それを財務省と議論して決めていくということですが、そうした際にも、今の世の中でこうした分野はこうした状況になっているとか、それから、こうした分野については今こうしたことが現象面として出てきている、あるいはこれから現象面として出てきそうであるということをやはり従来以上にしっかりと見て、それに沿った政策を、あるいは財政をつくり上げていくことが大事じゃないかなと、こんなふうに思います。

〔幹事〕ありがとうございます。ほかはどうでしょうか。

では、なければ、これにて終了します。ありがとうございました。

〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。