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財政制度分科会(令和3年4月7日開催)記者会見の模様

〔増田分科会長代理〕それでは、始めに私からしばらく御説明申し上げます。

本日、財政制度等審議会の財政制度分科会が開催されました。新体制の初回ということで、まず、財政制度分科会の会長の互選を行い、榊原会長が選任されました。そして、会長代理については、榊原会長から、私、増田が指名されました。会長、会長代理はこれまでに引き続きとなりますが、改めてどうぞよろしくお願い申し上げます。

また、財政制度分科会の下に、これまで同様、法制・公会計部会、及び歳出改革部会が設置されることとなりました。その上で、榊原会長より、法制・公会計部会の部会長に藤谷委員、歳出改革部会の部会長に私、増田を指名していただきました。

その後、分科会では、新任委員から自己紹介を行い、その後、麻生大臣から、ポストコロナに向けた経済構造の転換、社会保障の改革等を進めていかなければならないので、新しい委員の皆様を含め委員の英知を結集してほしい、といった趣旨の御挨拶がございました。

続いて、このたび分科会長に御就任をされました榊原会長から御発言がございます。

〔榊原分科会長〕先ほど御紹介いただきましたように、本日の財政制度等審議会及び財政制度分科会におきまして、委員の皆様の互選によりまして会長に選任していただきました。

財政制度等審議会では、昨年7月、御案内のとおりでございますが、「会長談話」を発出いたしました。また、11月には建議を取りまとめました。その2つの談話、建議でも指摘をしたとおりでございますが、新型コロナ対応による債務残高の増大、それから少子高齢化という構造的課題、特に来年から団塊の世代が後期高齢者となることを踏まえれば、経済構造の転換による生産性の向上、社会保障の受益と負担のアンバランスの是正等はますます重要な論点となってまいります。

今日、発足した新体制におきましても、各界の第一線で活躍しておられる有識者の方々に引き続き委員に就任いただくことになりました。こうした委員の皆様とともに、日本経済、財政が抱える構造的課題にしっかりと切り込み、今後のあるべき姿、道しるべを示す、といった財政制度等審議会の使命はしっかりと果たしていくということで、私自身も引き続き先頭に立って取り組んでまいりたいと思っております。どうかよろしくお願い申し上げます。

私からは以上です。

〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。

次に、本日の議事の内容を御紹介します。

まず、事務方から財政制度総論について説明がありました。その後、土居委員から、中長期試算の試算期間後の公債等残高対GDP比等について、委員自身が過去になされた試算も参考にして、言わば機械的に計算した結果になりますが、その結果について御説明がございました。その後、委員からの御発言に移りました。

いつもどおり、主な発言を私から委員名を伏して御紹介いたします。順次、読み上げていきます。

まず、初めの委員でございます。中小企業支援は極めて重要だが、厳しいから助けるというだけでは成長できないままになってしまうので、成長産業となることを目指した支援をお願いしたいという御意見でした。それから、働き方も変化しているためフリーランスの成長も促していくことが重要だという御発言がありました。

次の委員ですが、コロナ関係について第3次補正を含め大規模な財政出動を行っていますが、その支援の様子が国民にきちんと伝わるような見せ方や発信が必要であるという意見です。それから、基金や補正予算の執行を適切に評価することが重要であるという意見でした。加えて、財政健全化に関し先行きを見通すのは難しいため、歳出の抑制に軸を置き目標達成を目指すべきであり、PB黒字化の旗を降ろすべきではないという意見がありました。

それから、次の委員ですが、この委員の所属組織の調査によりますと、新型コロナ以降、収入が50%以上減少した世帯は1割程度であり、世帯の65%は収入が増加しているため真に必要な者への支援に限定すべきという意見です。それから、引き続き、グリーン・デジタルについては社会実装が促されて初めて意味があるという意見です。くわえて、土居委員の試算には大変意義があると考え、金利と成長率という観点に加え、今後人口構造の変化も見ていく必要があるのではないかという意見でした。

次の委員です。この方は、若年層が貯蓄を増やしているのは、今後はこれまでどおりにはいかないという将来不安の表れであるため、政府が未来のことを真剣にと考えていると彼らに示す必要があるという意見です。それから、今後は一般の方向けだけではなく、ターゲットごとに向けた丁寧な情報発信が求められるという意見でありました。

それから、次の委員の意見です。デジタル化については国、地方自治体におけるデータ活用による利便性向上のほか、コスト削減の観点から評価することも重要であるという意見でした。それから、グリーンについて留意すべきは、地理的条件により社会実装する場が小さい日本はイノベーションにより世界中で社会実装する場を求めることが重要であるという意見です。

次の委員の意見です。企業が利益を上げるには適正な値づけができるような経営という視点も必要ではないかと意見です。それから、最近は兆円規模のお金の単位に慣れてしまっているが、消費税1%の増税で2.7兆円の増収を確保できることもあることから、歳出・歳入の見直しを深く議論する必要があるという意見でありました。

次の委員の意見です。金利水準は経済や物価を勘案するのが原則であって、財政状況が厳しいからといって、金利が下げられるようなものではないという意見です。それから、日本は景気が良くなっても物価が上がらない状況を経験した一方で、巨額の財政支出によりインフレ懸念が生じたアメリカでは、実際に金利も上がり始めているということに留意が必要ではないかという意見です。

それから、次の委員の意見です。今回はリーマン時と比較して生産年齢人口や企業業績等の状況が異なるため、冷静に見極めながら、危機からの脱却に向かっていくべきという意見です。それから、大学ファンドは一般会計から出資するので、当分科会でもしっかり注視していく必要があると意見を述べられました。

次の委員です。コロナで格差問題が深刻になっていて、所得再分配という観点もこれから重要になるという意見です。

それから、次の委員は、短期的には感染抑制をしっかり行っていくことが中長期的には財政のためになるというメッセージを発信していくべきではないかという意見です。

それから、次の委員です。コロナによる2020年度の出生数の大きな落ち込みが潜在的な成長率の低下や、将来世代の負担増につながりかねないことを訴え、財政健全化の必要性を理解してもらうべきという意見です。

それから、次の委員ですが、デジタルについては予算の一括計上など進捗が見られたが、生産性向上についても予算を使っていくという大きな方針を明確に示すべきであるという意見です。それから、社会保障の生産性という意味では、高齢化による増加分以上に社会保障費を抑えるという目標を立てるべきという意見でした。

それから、次の委員です。この方は、歳出改革の目安が機能してきたところ、2025年黒字化目標の実現に向けてどういう歳出改革の目安を設定するかについては逆算ベースで考えるべきという意見です。それから、短期国債への依存が非常に強くいずれは長期国債へのシフトが必要だが、これは過去に大量の国債発行と長期化を同時に進めたとき突発的な金利上昇が起きたということもあったため、注意が必要であるいう意見です。

それから、次の委員です。ポストコロナの経済構造の転換については、グリーンとデジタル、レジリエンスの3本柱が重要であるという意見です。

それから、次の委員です。コロナ対策に支出が必要なのだから、各省においてもそれに向けスクラップ・アンド・ビルドが必要であるという意識を持つべきという意見です。それから、短期国債の発行額が増えているが、短期債は海外投資家の保有率が高いことに留意が必要であるいう意見です。

次の委員です。ポストコロナに向けた基金の設置は、例えば大学ファンドという異例な対応もあるので、PDCAでしっかり評価していくことが重要であるという意見です。それから、コロナ対策の財源確保策も考えるべきであり、コロナ以外の恒常的な赤字は社会保障の受益と負担の在り方について考えていくべきと、こういう意見です。

次の委員の方は、デジタル、脱炭素の構造変化に対応するためにも失業なき労働移動を実施することが重要であるという意見を述べられました。

それから、次の委員の方ですが、コロナ禍で大きな財政出動したことを踏まえれば、平時での財政再建の重要性を国民に広く共有することが大切であるという意見です。

それから、次の委員の方です。この方は、過去に財政再建に成功した国は、経済成長、歳出改革及び増税の三位一体で行っていると。歳出改革の目安は一定の効果があったことを踏まえて、引き続き地道な歳出改革と目安の設定が必要であるという意見でした。

次の委員の方は当初予算だけでなく、補正予算も一体で歳出改革に取り組む必要があるという意見です。

最後の委員の方です。この方は、成長率を高めることは重要だが、それが成功して自然利子率が高くなれば、日銀の低金利政策が難しくなっていく。成長すれば金利が上がっていくということを踏まえ、効率的な財政運営、そしてワイズスペンディングが重要だという意見でした。

以上、議論の内容や主立った発言を御紹介いたしました。

なお、この分科会に先立って開催されました財政制度等審議会総会では、会長に榊原委員が選任され、会長代理には翁委員が指名されました。

今日の会議の様子の御紹介は以上でございます。御質問等ございましたらお願いいたします。

〔幹事〕ありがとうございました。

それでは、質疑応答に移ります。まず、会見室にいらっしゃる方で御質問のある方は挙手をお願いします。会見室での質問に引き続き、オンラインで参加をいただいている方の質疑応答となりますので、オンライン参加者で御質問のある方は手を挙げるボタンを押していただき、お待ちください。後ほど指名いたします。なお、パソコンにマイク機能がない方は、チャットメッセージに質問を直接打ち込んでください。

それでは、会見室の中で質問ある方、お願いします。

〔質問〕会長から冒頭に御発言もありましたように、去年はコロナ禍のため分科会を開けず会長談話の発出といった少し異例の対応を取られたと思います。今年はどういったスケジュールで春の建議を出すか等、その辺りの見通しをお聞かせください。

〔榊原分科会長〕はい。昨年は、4月に緊急事態宣言が発出されまして、実質的に財政制度等審議会、分科会をほとんど開催できませんでした。ただ、通常であれば春の建議を発出するところが、コロナ禍のために全く報告事項がないというのは、やはり財政制度等審議会としての機能を十分果たせないのではないかということで、委員の皆様にも諮った上で会長談話を発出いたしました。

今年ですが、厳しい感染状況が続いておりますが、リアルとリモートを組み合わせ、感染対策を十分した上で会合を行いました。今月、もう1回分科会を予定しており、春の建議に結びつけていきたいとと考えております。会長談話ではなくて、建議という形で進めたいというのが今の考えです。

〔質問〕補足で御質問です。今月もう1回ということですけが、1か月に1、2回ずつぐらい議論して、大体、春の建議は昨年と同じぐらいの時期に出るという理解でよろしいでしょうか。

〔榊原分科会長〕はい、そのようなスケジュールを考えております。

〔質問〕もう1つ補足で御質問です。今年は、建議の内容を骨太の方針に反映させるべく財審を開催されていると思います。前回の骨太の方針のうち2018年度に示された歳出改革の方針の期限が今年度で切れて、次の複数年度の歳出改革の方針を示さなければならないと思うのですが、その観点から、今後の春の建議に向けて、歳出改革の部分で議論の大きなポイントとなるところはどういったところであるとお考えでしょうか。

〔増田分科会長代理〕昨年の秋の建議で、現時点の経済の落ち込みを全て公需で埋めるべきといった議論や公需主体で経済を支え続けなければ今より経済が落ち込むといったそうした議論というのは適当でなく、民需の自律的回復をやはり考えるべきと申し上げました。やはり基本はその線です。今、お話のありましたように、6月の骨太の方針はやはりコロナの中で、今後3年間の経済をどう考えていくかは非常に大きなテーマになると思います。その際には、昨年の秋に指摘した、基本的な考え方がやはり今年度の財審の中でも基本になるのではないかなと、思います。

〔質問〕分かりました。ありがとうございました。

〔質問〕御説明ありがとうございました。先ほどの御質問に重ねて恐縮ですが、社会保障費の増大についても新しい目安では今後検討していくことになるかと思うのですが、その辺りについてお考えをお聞かせいただくことはできますでしょうか。

〔増田分科会長代理〕これから社会保障について分科会の中で議論をしますので、それによるということにはなります。しかし、来年度には団塊の世代が後期高齢者に入り始めると、いわゆる2022年問題が出てくるので、やはり給付と負担の関係をどのように整理をしていくのかは議論の中心になると思います。これまで、コロナ以前から、この問題はずっと議論してきましたので、そうした議論を十分踏まえながら、コロナが終わっても、大きなこの社会保障の問題は立ちはだかっていますので、そうした前提でしっかりと議論していきたいと思っております。

〔質問〕会長に御質問です。改めてになるのですが、例年、財審で財政の問題を議論している中で、特に今年はコロナで財政状況が悪化しているというところもあるかと思います。そうした意味で、危機感のある中、建議に向けての重要性も増し、意気込みも強まると思うのですが、その辺りをお伺いしたいです。

〔増田分科会長代理〕コロナがやはり春の建議の場合には非常に大きな議論になると思います。ただ、少し各論になりますが、前年度3回補正予算を組みました。そのなかでまだ繰越しのような形で使われていない部分もあります。また、予備費として今年度計上したものもあるので、まずそうしたものをしっかりと執行していくということが重要だと思います。それから、先ほど御紹介した御意見に執行管理をしっかりと行い、そしてPDCAを回していくべきという御意見がございました。そうしたことをこれから本格的に考え議論し、その上で建議にまとめていきたいと思います。

〔榊原分科会長〕秋の財審でも、コロナ対応をまずしっかりやるべきであるという目標を第一に掲げていまして、財政が厳しい状況の中でも、コロナ対応は優先的にやるということを言っています。ただ、その対応によって債務残高が増大したことは確かです。ですので、今度の建議に向けては、経済構造の転換による生産性の向上や社会保障の受益と負担のアンバランスの是正等、こういった論点はますます重要な論点になってくるといったことを盛り込んだ建議にしていきたいと思います。

〔質問〕1点だけ、先ほど各委員の御発言の詳細を教えていただきました。今回のコロナ対応に伴い生じた90兆円とも言われる国債発行で、財政状況が悪化しておりますが、財政健全化に向けてどう取り組んでいくのでしょうか。また東日本大震災のときには財源確保のために復興特別税が導入されましたが同様に今回も将来に向けた税源や財源を今後財政再建に向けてどうしていけばいいのかという議論は特に今のところは出ていないような感じでしょうか。

〔増田分科会長代理〕まだ、個別の委員から意見としては出てきておりません。恐らく今後、開催する分科会であらゆる大きなテーマを扱っていこうと思っています。そうした中で、御指摘の議論が委員の中から出てくるのだろうと思っています。ただ、本日も、それから、また、前委員のときの昨年度の3月のときもまさにそうでしたが先ほど言った社会保障の問題、非常に将来不安があって若年層の消費が抑制的になっておりがなかなか増えていかないという問題、それから、東日本大震災のような自然災害、あるいは、色々な感染症もまたあるかもしれません。そうしたことに備えるためにも、財政再建が必要であるという議論がやはり各委員からずっと出てきております。本日もそうですので、そうしたことはしっかりと皆様意識しながら、今後、議論していきたいと思います。

〔幹事〕会見室、以上でよろしいでしょうか。オンラインのほうから御質問を受け付けます。

〔質問〕財政とは関係ない話で大変恐縮ですが、榊原会長は経産省の総合資源エネルギー調査会の会長を務められた経験もあることから、エネルギー関連について、もし回答可能でしたら質問してもよろしいでしょうか。英国・CVCキャピタルが、東芝の非公開化に向けた買収提案をしたことが明らかになっています。東芝は、原子力関連銘柄ということもあり、外為法上の問題となり得ると考えますでしょうか。原子力の開発ではなく、運営側の電源開発への買収提案のときは、電力の安定供給や原子力政策に影響を及ぼすおそれがあると判断して、チルドレン・インベストメントによる買い増し中止命令が政府から出されていますが、そのときとの違いはありますでしょうか。

〔榊原分科会長〕ただいまの御質問は、当審議会の記者会見の内容とは関係ないわけですが、御指摘いただきましたように、私は昨年の6月まで経済産業省の総合資源エネルギー調査会の会長を務めておりまして、その関係で今の御質問があったと思います。今日、私も新聞で知ったばかりで内容を詳しく知りませんので、今すぐコメントできる立場ではないと思っています。ただ、一般論として言えば、原子力というのは国のエネルギーを支える重要な基幹的電源という位置づけは変わっていません。それをしっかりと、技術も守っていくということが基本的な考え方であると思います。これが、今回の買収提案が外為法と照らしてどうかということは、これから内容もしっかり見た上で判断していくということであると思います。今、私が元会長としてコメントする状況にはないということで、御理解をいただきたいと思います。

〔事務局〕ほか、オンラインで参加されている方で質問のある方、いらっしゃいますでしょうか。

〔幹事〕では、御質問ないようでしたら、これで会見を終わりたいと思います。ありがとうございました。