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財政制度分科会(令和3年3月18日開催)記者会見の模様

〔増田分科会長代理〕それでは、今日、9時30分から、財政制度等審議会の財政制度分科会を開催いたしました。その模様をこれから御報告いたします。

本日は、令和3年度予算の概要等、それから令和3年度予算編成等に向けた建議の反映状況、これらについて事務局から説明をしていただきまして、質疑を行うということです。

早速、発言の委員の個人名は伏せて、質疑の内容についてこれから申し上げたいと思います。詳細については、また後日の議事録で御確認いただければと思います。

初めの委員の御発言内容ですが、財政出動をするためにも財政の持続可能性を取り戻しておくべきであると。それで、官主導の財政出動だけでは自律的な経済成長は難しいので、民の力を引き出すことが重要であると。財政健全化を図っていくためには、中長期の財政計画を立てて、そして財政規律を立てるということが重要ではないかということです。

それから、次の委員の方ですが、当初予算に関して、これは今、審議中の来年度の当初予算に関して歳出改革の目安が働いていることを高く評価したいと。それから、2022年度以降の歳出改革の方針をしっかり定めることが重要で、補正予算を打つとしても、その中身を点検、厳選して効果的にする必要がある。さらに、この委員の方は、中長期試算について公債等残高GDP比が下がっていくということは、経済成長率と金利の関係として、金利のほうが低いという内閣府の試算前提が影響しているからであるという意見でした。

次の方の意見ですが、一時的な各種支援が恒常化することのないよう、一旦、広げた風呂敷を閉じる方向にかじを取るべきであると。それから、新たな予算をつけるのであれば、各種社会保障など既存の財政支出の見直しが必要ではないかと、効果検証などを行ってPDCAサイクルを回すべきと。それから、例として、病床確保など国、自治体から通知しても現場が動かないなど、やはり政策と現場の乖離が浮き彫りになっている面があると、こういう御発言がございました。

次の方です。この方は、諸外国に比べ病床数は多いのに新型コロナの病床数が足りないということは、改革策が分かっていたのに問題解決を先送りにしてきたツケの一例であるという意見。そして、続けて、財政赤字の問題は、先送りしてきた問題の中でも最大の問題であると。新型コロナ対応で、財政の健全化については大きな宿題を抱えたままとなっているので、狼少年と言われるかもしれないが、財政健全化の必要性について情報発信をすべきという意見です。

次の方です。求職者支援制度は、労働市場の柔軟性と保障や安定性を上手に組み合わせる制度で、これは評価できると。雇用調整助成金を通じて、1つの会社における雇用維持も大切だが、労働市場全体の雇用を維持して、成長が期待できる分野への移動を図って、生産性向上につなげるということは大事であるという意見でした。

次の方の意見ですが、国民の皆様方に財政再建の議論を投げかけるということは難しい点があるが、新型コロナ対策のお金はどこから来ているかという点をぜひ国民に認識してほしいと、そう伝わる、伝えていくことが必要であるということです。それで、イギリスでは、スナク大臣が法人税の増税を発表したが、支持率は上がったという現象も紹介しておきたいという御発言がございました。さらに続けて、特に医療については、平時は多少の不便さも受け入れるが、危機のときに、今回のコロナということであると思いますが、危機時にしっかりと対応してほしいという意識が国民の意識であるという御発言でありました。

次の方の御意見ですが、ワイズスペンディングについて、効果の検証は重要である一方、検証するためのKPIが見えづらいということは懸念であるということです。

それから、次の方の意見ですが、この方は国土強靱化について、ハード面の防災だけでなく、我が財審はソフトの重要性も強調してきたが、どこまで反映されたのか、そうした整理が必要ではないかという意見でした。

次の方ですが、株式市場は好調で成長率も高いが、格差が拡大していないかなど、全体論だけでなく個別の、ミクロの部分も見ていく必要があるという意見です。それと併せて、国民がやはり危機感を共有していく必要があるということです。

次の方ですが、この方は、コロナによって財審の役割がさらに高まったと。専門的な話、各論も大事だが、やはり国民のコンセンサスをどう取っていくのかが重要であるという意見です。

それから、次の方の意見です。この方は、日本国債について、今、もし自分が格付アナリストなら格下げをしたくなるような状況であると。政府の債務が増加し、特に短期債務も増えていると。やはり財審等の場で、財政健全化をしっかり進めていくというメッセージを発信していくことが重要であると。それから、この方は、もう1つ意見をおっしゃっていまして、ワイズスペンディングも大事だが、やはり見せ方の工夫も重要であると。日本のグリーン政策は、欧州に比べても十分な金額を計上しているが、うまくそういうことが見せられていない、したがって世の中に伝わっていないという意見でありました。

次の方の意見ですが、この方は、過去、6割弱の確率で税収の実績が隔年の見通しを上回っているということだが、ただ、その間にオイルショックやリーマンショック、それから、今回、コロナなどの危機時には、大きく税収の見通しを実際の税収が下回って多額の補正予算を計上したため、結果として財政状況が悪化しているという歴史がこれまでであったとのことです。そして、国際情勢の不透明感を踏まえれば、財政については不測のリスクに備えるための余力、いわゆるバッファーを確保する必要があるという意見でありました。

それから、次の方の意見でございますが、この方は、今回のコロナにより発生した債務については、各国と協調して環境税等を導入するなど、国際協調の枠組みの中で債務削減していくという考え方もあって良いのではないかという意見でございました。

それから、次の方ですが、この方は、今年度の3次補正で規模40兆円の対策を行ったわけですが、これを捉えて、財政の悪化が深刻度を増しており、規模ありきということはやはり限界ではないかと。それから、来年度の予算についてですが、デジタル化、脱炭素社会の対策が盛り込まれているが、いずれも人材の育成や労働移動がなければ成り立たないので、やはり包括的な雇用パッケージというものを導入していくべきではないかということです。

次の方の意見ですが、この方はコロナ対策の効果の検証、それから収束を見据えた財政再建の道筋も検討していくべきという意見です。

それから、次の方ですが、イノベーションには既存企業の新陳代謝を進めるという面があると。DXやグリーンを進めるためには、雇用の流動性確保や新陳代謝を前提とした社会づくりが不可欠であるという認識を持つべきであるということでした。

それから、次の方です。この方が最後になりますが、財政の中長期試算は楽観的な試算と捉えられては信頼は得にくいということをきちんと注視すべきであるという意見でした。

以上、各委員の御発言の概略を申し上げたのですが、それを終えて、最後に榊原会長から、この2年間を振り返って御挨拶がありました。財審の委員の任期が2年になっておりますので、現メンバーで審議をすることは、事実上、今日が最後ということになります。そこで、榊原会長から2年間を振り返って挨拶ございましたが、その内容は、これまで2年間に取りまとめた建議、それから、昨年は会長談話を出しましたので、その会長談話の内容を改めて御紹介をされました。その上で、来年から団塊の世代が後期高齢者となるということで社会保障費も増加する。構造的な課題への対処が不可欠であって、財政健全化の議論をさらに前に進めていかなければならない。そこで、経済構造の転換を促していくということも引き続き重要な論点になってくる。我が財審は、耳が痛いことでも、日本の将来のために必要なことはしっかりと提言をする。そうしたことが財審の使命であって、そのような財審の使命は、今後、ますます重要になってくる、ということを会長がお話されて、今日の会議を終えました。

大変概略になりますが、今日の会議の状況は以上でございます。

〔幹事〕ありがとうございました。

そうしたら、幹事社から1問、お伺いします。今回のメンバーの任期は3月末で終わって、新年度以降、新しいメンバーでされるということですが、一方で、6月に骨太方針など、コロナ後の財政再建を見据えた議論を引き継いで、新年度以降やっていかなければいけないと思うのですが、新年度以降、どういった論点などを新しいメンバーに引き継ぐといったところについてお考えをお聞かせください。

〔増田分科会長代理〕形式的に言えば、また財務大臣に任命されて、委員が替わって、会長等を選出するということが4月に入って行われるかと思いますが、ただ、そういうことは別にして、私は、やはり今日の意見の中でもそうでありましたが、これだけ財政出動をするという一方で、本当にきちんとした政策的な取組を行っていくためにこそ、今こそ財政健全化が非常に重要であるということを、皆様異口同音におっしゃっていたわけで、そのためにPDCAを回せとか、これまでの政策をきちんと検証して、一方で見直しもしっかり行っていかなくてはいけないのではないか等々の御発言がございました。4月以降は、今、おっしゃったように骨太もございますので、そう間を空けずに、財務省でも新しい審議を行うような日程を組まれるのではないかと思います。その場では引き続き、今日、各委員が御発言されたような、そして会長も最後にコメントされたような、財審として果たさなければいけない役割、すなわち財政健全化に向けてどういう道筋をつけるべきか。そして重要な問題、特に社会保障などについては団塊の世代が後期高齢者になってきますので、非常に歳出が増えてくる。これらの構造的な問題に対して、解決策を考えていかなければいけないので、新しい体制でもしっかりと議論していかなければいけないのではないかと思います。

〔幹事〕ありがとうございます。今の、新しいメンバーについての話について補足的に。骨太2018では、恐らく、2019年度か21年度の予算編成における歳出改革の方針を示されたと思いますが、次、新年度なので、次の予算となると2022年度以降の話、そこの歳出改革をどうするという話が財審でも避けて通れないと思います。そのため、そこに反映させる話としては、今、おっしゃったような、団塊の世代が後期高齢者になることを踏まえた社会保障費の見直しなどがやはり一番重要になるというお考えでしょうか。

〔増田分科会長代理〕普通に考えますと、この団塊の世代が後期高齢者になるということは、もう動かせない話ですので、間違いなくそこが非常に大きな問題になることは自明の理ではないかと私は思います。それと、当面コロナの問題で、それをどのように取り扱うか、財政上もどう取り扱っていくか等々もあると思いますが、これは推移をもう少し見ないといけない部分もあると思います。構造的な問題とすると、やはり社会保障費の増加などにどう対応していくのか。その中で、経済構造をうまく転換できるのかといったことを捉えていかなくてはいけないのではないかと。そのため、2022年度の予算に向けて、そうした議論をしっかり行う必要があると思います。

〔幹事〕ありがとうございました。

それでは、質疑応答に移ります。まず、会見室にいらっしゃる方で、質問がある方は挙手をお願いいたします。どうぞ。

〔質問〕朝日新聞のツザカと申します。まず、増田分科会長代理にお伺いしたいのですが、例年、当初で抑えても補正で膨らむと。特に、今年度はコロナがあって、規模が例年とは全く違ったのですが、このような、当初で抑えても、結局、補正で膨らんでしまうという現状をどのように捉えていらっしゃいますでしょうか。

〔増田分科会長代理〕今回は別にして、例年財審の中で、補正についてもしっかりとした財政規律を働かせるような取扱い、それから全体を通して、当初であろうが、補正であろうが、ワイズスペンディングをずっと貫くべきではないかという御意見がありました。今のような御質問を受けるとすれば、私は全く同じで、緊急的な事情があっての補正ということで、その緊急性や、その当該年度でやらなければいけない理由がしっかりと御説明できるものに限って、補正予算を計上すると。この姿勢は、ぜひ政府としてもお持ちいただきたいと思います。

〔質問〕すみません、もう1つお聞かせいただきたいのですが、先ほど財政健全化の重要性というお話をされまして、その中でイギリスの例にも触れられました。アメリカでも、増税についての検討が水面下で進んでいるという話もあります。翻って、日本では、これは政府だけでなくて、与党も野党も含めて、こうした議論がなかなか起こっていないということについて、その背景をどのように御覧になっているのか教えていただけますか。

〔増田分科会長代理〕そこは、イギリスやアメリカ、それぞれの国なりの、やはり事情があるのではないかなと。イギリスでの動き、それからアメリカでの動き、あるいはEU全体でどういう動きがあるかということですが、やはりある種、非常に重要な問題だけに、政治的な背景等も理解しなければいけないので、各国と比較してのコメントはできないのですが、我が国としては、今日の委員にもございましたとおり、やはり財政健全化についてのことをしっかりと意識していないと、さらにまた何かあったときの財政出動ができなくなります。そのため、政策当局には海外の状況もしっかりウォッチをしておいてもらいたいとは思いますが、やはりきちんとした我が国の財政再建の取組を考えていくことが必要かと思います。

〔幹事〕ほか、いかがでしょうか。

〔質問〕ありがとうございました。先ほどの歳出改革の目安のお話で、目安を達成できたことは評価するという御意見が出たと思いますが、一方で、2025年度のPB黒字化に向けて、ここまで3年間、社会保障費の伸びを高齢者の伸びに抑えるなどの目安は達成してきていたものの、依然厳しい状況にあると思います。22年度以降の目安について、これから議論が始まるとは思いますが、そこの目安のつくり方について、何か委員の先生方から御意見が出たりであるとか、もしくは増田分科会長代理御自身がどうお考えになっているかについてお考えを聞かせていただけますか。

〔増田分科会長代理〕今日は、特に2022年度以降の目安のつくり方等について直接触れた方はおられなかったと思います。ただ、先ほど御紹介したとおり、将来に向けての財政健全化について大変危機的に捉えていらっしゃる方がいらっしゃったので、恐らく4月以降、春の建議は大きな枠組みをきちんと議論する場ですので、その中ではまた具体的なお話が出てくるのではないかと思います。

それで、2025年度PB黒字化等についても、それをどう考えるかという直接的な意見はありませんでしたが、全体として、やはり歳出、歳入とのバランスで、どのようにPBの黒字化を図るかということは、恐らく全員の頭の中にある問題であると思います。それこそ、これから新しい体制となってからは早々にそうした問題について議論していかなければいけないのではないかと思います。

〔幹事〕どうぞ。

〔質問〕先ほど委員の方の発言の御紹介の中で、コロナで発行した国債の償還について、国際協調の枠組みを財源に充てたらどうかという御紹介がありました。ほかに、例えばコロナで膨らんだ国債の償還、年限を決めて償還すべきとか、また、先ほどの質問にありましたけど、増税やむなしのような、突っ込んだ発言はあったのでしょうか。

〔増田分科会長代理〕今日は、そうした、こうすべきという発言はなかったと思いますが、ただ、先ほどの国際協調で考え、環境税という枠組みについての御発言や、イギリスで大臣が増税を示唆したにもかかわらず、逆に支持を上げたという例について言及された方がいましたので、やはり出口戦略をどうするかということは、今後、それぞれの委員が、考えていく課題としておられるのではないかと思います。

〔質問〕分かりました。ありがとうございました。

〔幹事〕ほか、質問がある方、いらっしゃいますか。

そうしましたら、会見室での質問に引き続き、オンラインで参加いただいている方の質疑応答となりますので、オンライン参加者で質問がある方は「手を挙げる」ボタンを押していただき、お待ちください。

特にいらっしゃらなければ、あとは個別でお願いします。ありがとうございました。

〔増田分科会長代理〕それでは、どうもありがとうございました。