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財政制度分科会(令和2年6月1日開催)記者会見の模様

〔増田分科会長代理〕お待たせをいたしました。本日10時から、財政制度等審議会の財政制度分科会を開催いたしましたので、その内容を皆様方のほうに御報告をいたします。

10時から、先ほど12時40分まで会合のほうは開きました。本日は、新型コロナウイルス感染症に係る対応について、初めに事務局から説明をしてもらった後、質疑を行いました。

少し次回が空いての久しぶりの会議となりましたが、3密を避ける観点から、これは財審で初めてでありますが、対面とウェブの両立ての開催ということになりました。そこで出た意見について、通常どおり委員の個人名を伏せて紹介をいたします。少し数が多くなりますけれども、御了承いただきたいと思います。順次、申し上げていきます。

まず、初めの委員の御発言でございます。財政の使い方、規模については、緊急的なものとしてやむを得ないと。当審議会、財審として留意すべきは、その有効な使い方と、そのようになっているかどうかであるという意見です。

次の意見です。今回、財政支出をしているわけですが、今の世代が負担するような仕組みを考えるべしというのが、この方の意見の核心の部分であります。

次の委員の方は2つおっしゃっていますが、特に1点目、国民の不安の解消が最も重要、基本中の基本と言っていましたが、国民の不安の解消が最も重要であると。2つ目は、雇用とその持続性、これをきちんと確保すべき。各種給付、貸付けを当てにして、今、急場をしのいでいるのですが、あらゆる手だてで雇用とその持続性をきちんと確保していくべしという意見であります。

次の方の意見ですが、国民の安心をどう確保するかが重要であるということが1点目。2点目はデジタル化の促進。こういう言い方をしていました。コロナというのは、日本にとって新しい問題ではなくて、既存の問題を露呈させたのだと。デジタル化がこれまでも遅れていたので、そのことが露呈をした。このデジタル化が非常に重要というのが2点目。そして、3点目、財政規模の拡大は財政規律の喪失を意味していないと。重要なのは、一度、拡大すると閉じるのが大変なことであると。今回の一時的な支出は、収束後、直ちにやめるべきと。閉じ方、風呂敷の閉じ方とおっしゃっていましたが、要は閉じ方をきちんと考える必要があると、こういう意見であります。

それから、次の方でありますが、この方は、財政健全化というのは平時にやるしかなく、有事にはできませんと。それから、今後についてですが、少子高齢化が今後、さらに進む可能性が高く、収束後は中長期の財政健全化と潜在成長率の引上げを行うべきであると、こういう意見です。

次の方の意見です。この方は、事業主支援、それから雇用維持、生活維持の必要性は認めた上で、低金利がいつまでも継続するということを所与の条件とせずに、健全化を進めることが重要であるということをみんなで認識をしなければいけないと。それから、これはほかの方ももう既におっしゃっていた意見ですが、デジタル化が遅れており、ここをきちんと進めていかなければいけないということです。

次の方の意見です。国民等に対して、オンラインでもいいから、直接理解する機会をもっと与えていくことが必要ではないか。国民は、自分の周辺にあるメディア等だけで理解をする状況に、今、なっているのですが、それだけではなくて、オンラインでも直接理解する機会を与えるということが重要ではないかという話です。

次の委員です。財政政策には実施ラグがあるということを国民が肝に銘じるべきで、そういう構造があるという中で、それを知っていただいた上で、ラグがどうやったら短くなるのかという努力も必要ではないかという意見でありました。それから、企業に対しての信用保証や資金繰り支援も立派な経済支援であり、真水にこだわるだけではなくて、しっかりとした経済支援をするという観点で議論をすべきと、お金を使わずに満足度の高い支援をすることは必要であると、こういう意見でありました。また、医療費の抑制について、効率的な使い方という点をどう効果的に発信していけるのかを今後、考えるべき必要があると、こういう意見であります。

次の方の意見です。ヨーロッパはデジタル課税などをやっているけれども、日本はこのようなことをせずに、全部、債務になると、金利上昇、国債格付引下げの将来的なリスクを無視してはなりませんよという意見でありました。

次の方の意見です。外国から日本の感染症対策が称賛されている部分も非常に多いわけですが、それは国民のコンセンサスの下で、国民が方向を一つにして頑張ったからではないかと。変わらないといけないというコンセンサスも必要であり、「骨太」で将来に向けての姿をきちんと描いていくべきと、こういう意見であります。

次の方ですが、翻ってみると日本では景気がいいときに財政再建を進めてくることができなかったという実態があると。そして、今回のことについては、次世代に対して胸の張れるお金の使い方をすべきであり、真に必要なものと、それに付随してくるものを見分けて、それできちんとやっていくべきという意見です。

次の委員ですが、この方も有効なお金の使い方をするべきということ。それから、デジタル化と関係してくる話ですが、家族形態、働き方が多様になって、例えばお金を配るのも、企業から配るか、個人に対して配るかなどの論点がありますと、税の徴収の仕方、配り方も新しい時代に転換できる、これは一つのチャンスになりますという意見でありました。

次の委員の意見です。今回の経験を生かしてデジタル化を進めていくべきであり、効率化できれば財政再建にも資するという意見です。それから、平時の財政再建の意義をきちんと国民に伝えていくべしという意見でありました。

次の委員の方です。財政に余力があるというのは、とても重要だということを改めて思った。今回の対策に伴う財政支出につき、いかに今後、負担を求めて、そして赤字を減らしていくのかも含めて、しっかりと考えていく必要があると、こういう意見であります。

次の委員の方です。医療やPCR検査の増強が非常に重要だと。経済の回復の阻害要因は、消費者が感染不安を抱えていること、そして企業が将来を見通せず設備投資ができないことの、この2点に関わっている。したがって、このことからも医療検査体制の増強が重要と、こういう話をしておりました。

それから、次の委員の方です。この方も、まずワイズスペンディングが重要であると。それから、社会、経済、地政学の状況や、産業構造が変わる中でのお金の使い方を十分考える必要があると。将来の産業を担う社会的課題を解決する企業、こうしたところに資本を供給することが有効であると。それから、金融政策の結果、金利は低下をしていると。格下げが直ちに起きる気配もないのですが、しかしながら、こうした状況が未来永劫続くわけではない、こういうことをきちんと理解しておく必要がある。それから、この方の3点目の意見は、いわゆるDX、デジタルトランスフォーメーション、これを進めていく必要があるという意見であります。

次の委員の意見です。パンデミックの構造が解明されていない中、生命と生活を守っていく対策が規模最優先になってしまうのもやむを得ない。予備費について、執行段階で現場から適切なフィードバックをもらい、効率化を図っていく必要があるという意見でありました。

次の方の意見ですが、今回、企業経営をしていて、仕事スタイルの変化を余儀なくされたが、一部は大変に便利で、不可逆的に今後残っていくと思いますと。ビジネスモデルの転換に際して、業績が上がるところと下がるところ、明暗がくっきりと今後、分かれていくと思うが、ビジネスモデルの転換を図る企業を対象にする支援策をやっていく視点が必要だというお話です。

次の委員の方ですが、予備費は財務省の管理下に置かれるため、しっかりとそこは精査してほしいという意見でありました。

次の委員の方です。今回の規模が、感染者数、死者数から見て妥当か、後でしっかり検証する必要があると。医療供給体制の基盤は充実する必要がある一方で、ワイズスペンディングの観点を持って、新型コロナと関係ない要求については精査する必要があると。それから、この方は、財審での国外調査に前半のほうで滑り込みで行けた方なのですが、ヨーロッパに行った際に、財政が健全だからこそ様々な対策を行うことができると感じた、非常時のために平時の財政健全が必要という御意見を申されました。

次の方で最後になります。ポストコロナの経済、社会の在り方を考える必要があり、今までの延長線では議論はできませんと。今後、大きく経済、社会が変わる可能性があり、その一つはデジタル化が進むということではないかと。それから、もう一つの意見は、歳出歳入改革をしっかりとやっていく必要があるということであります。

いろんな方の意見の主だったところを紹介させていただきました。

私からは、以上でございます。よろしくお願いします。

〔幹事〕ありがとうございます。

幹事から、2つお伺いさせていただきます。まず、1つ目ですが、今後のこの審議会の進め方について何か議論があったのでしょうか。もしなければ、座長のほうから、何か今後、決められていることがあれば教えていただけますか。

〔増田分科会長代理〕次回の日程は決めておりませんけれども、次回会合は、ちょうど今日、6月に入ったところですので、今月の最後のほうになるのか、7月なのか、まだ今後の日程次第ですが、春先に幾つかもう、あらかじめ入れておいた日程が全部パアになりましたので、日程調整はこれからということになります。また状況の進展を見て、今、申し上げましたくらいの時期にですね、次回会合を開くということになると思います。一応、今後についてはその程度でございます。

〔幹事〕あと、もう一つお伺いしたいのですが、今日、委員の中から財政健全化が重要であるというお話が幾つかされていると思うのですけれども、この財政健全化を今後、進めていく上で、方法などについて踏み込んだ発言というのは何かありましたでしょうか。

〔増田分科会長代理〕財政健全化に向けては、今の支出はおおむね各委員の皆様方は了としていると、認めておられる。こういう緊急時ですから。しかし、かなり巨額のものが出ているので、やはり財政規律を全部放棄するのではなくて、財政規律の中には、先ほどの言葉で言うとワイズスペンディングというか、無駄が行われずに、きちんと使われているということがその規律の中に入っているわけですので、その使われ方をきちんと見ていく。それは予備費であってもやはりそこは見ていく必要があるということがございました。

それから、将来世代にやはりきちんと胸を張ってということですので、そこは将来世代の人たちにそっぽ向くような、そういう負担を押しつけるということは許されないというところがそこに入っていると思いますので、それについて、やはり財政健全化の観点から、きちんと巨額の財政支出をどういうふうに将来の資産として残していくのかということを皆様、考えとしては持っておられるのだと思います。

したがって、例えば今回企業支援などを行っていますが、先ほどの御紹介の中に出て、申し上げておきましたけれども、いろいろ企業としてビジネスモデルを変えて、新しい時代に対応するようなビジネスモデル、そういうところにきちんと支援をしていくべきではないかということをおっしゃった委員が複数おられましたので、やはりそういう観点で、この財政の使われ方をきちんと考えていく必要があるというふうに思います。

それから、この財政支出は非常に巨額でありますけれども、それを具体的に、どういうふうにして始末をしていくかという辺りの議論は、恐らく次のときに、また皆様方のほうからいろいろ意見が出てくるのではないかと、こんなふうに思います。

〔幹事〕ありがとうございます。

各社さん、どうぞ。

〔質問〕財政健全化に関しまして、2025年度にPBの黒字化目標というのがありますけれど、今回の巨額の支出で、それが厳しくなっているという意見もありますが、今日、そういったことに関する議論はあったのでしょうか。また、この点に関して、増田分科会長代理のお考えもお願いできたらと思います。

〔増田分科会長代理〕PBの問題について、今日、深く議論したということではないのですけれども、実際にPBの2025年度達成というのは、数字的に、今時点で見るとなかなか大変なことになるのかもしれませんが、やはりこれからどうするかというのは、コロナの今後をきちんと考えないといけません。しかもプライマリーバランスの在り方というのは、やはり非常に多角的な議論をした上で、目標をどうするかということを考えていかなければいけないと思うので、それだけの議論を積み重ねた上で、プライマリーバランスをどうしていくかということを考えなければいけない。今の段階で、2025年度のプライマリーバランスの目標ということを考え直すということではなくて、これからもっと状況を見ながら、どうしていったらいいか、いろんな方々の議論をもらって考えていくべきではないかということであります。

今日は、そういう意味では、久しぶりに補正予算が2つ出た後の議論ということで、そこまでに行く議論にはつながっておりませんけれども、やはり今の点は次回などには、また、いろいろ意見が出てくるのではないかなというふうに思います。

〔質問〕最初の質問の分科会の進め方に関連してですが、次回、一応、やる方向で調整をされるということでしたけれども、建議の今年の取りまとめに向けてどうされる、どういう動きになるのかですとか、やめるのか、それとも出すのか、その辺りの部分はいかがでしょうか。

〔増田分科会長代理〕会長とも、よく御相談しなければいけないなというふうには思うのですが、御承知のとおり、通常は春と秋と2回、建議をしておりました。今年は、春の建議というのは、なかなか今の状況だと難しいかなと私は思っていますが、そこは会長とよく相談したいと思います。ただ、もし、従来どおり、あれはかなり回数を重ねて、起草委員会も設けて、そこで議論をしてまとめるということなので、なかなか日程的にも、それから今の状況も流動的なので難しいとは思っているのですが、何らかの形で財審としての意見の発信なんかはあってもいいのではないかなというふうに思います。ですので、各論としてどういうことがあるのか、ないのか、それから、タイミングもあるのかどうか。その辺りは、また、会長をはじめ、ほかの委員の皆様にも、よく話を聞きたいというふうに思っています。要は、なかなか春の建議をまとめるのは、私としてはちょっとつらいなという感じは、正直、思っております。

〔質問〕今の質問に関連してですが、建議か、何らかの形で意見をまとめるにしても、最後の議論の日程感はどのようにお考えでしょうか。

〔増田分科会長代理〕政府のほうからは、御承知のとおり、「骨太」が来月の半ばぐらいと、それから、財政に大きく関係している社会保障の関係ですが、全世代型社会保障も、今月の取りまとめを冬のほうにずらして、7月に第2回目の中間報告となりました。だから、スケジュールが先にずれています。それから、概算要求の締切りが9月いっぱいということになるので、財審では、今日の議論をスタートにして、次回は一カ月ぐらいたったその次ということになると思うのですが、ここも会長・事務局ともよく相談したいと思いますが、そうしたスケジュールで進んでいったときに、どういう政府のものを見て、どういうことを財審で言っていくかというのは、少し考えなければいけないなと思います。

ですから、タイミングとか、何か言い方というのは、まだ全く、これからの議論になりますけれども、今、2週間単位ぐらいで局面がどんどん変わってきているのでなかなか難しいのですが、ある程度まとめて出したことが、第2波などが出てくると、出した途端に、あるいは出すこと自身が陳腐化する可能性もありますし、よくその辺りは見ておかなければいけません。ただ一方で、財政について、どういう状況であっても言うべきこともあるように思うので、したがって、財審としての、そういう前提を踏まえた上での、何らかの発信はあってもいいのではないかなというふうに思っています。ですから、少しもやもやっとした言い方をしていますが、そのとき、次回会合を踏まえた上で、どういうことがその時点で考えられるのか、合意が取れるのか、少し会長や委員の皆様方とまた話をしたいなというふうに思います。

〔質問〕財政支出の在り方として、今回の補正、おおむね了とされたというお話があったと思うのですが、一方でワイズスペンディングというお話もあったので、無駄の精査みたいな話で、これまで出てきた、成立した第1次補正とまだこれから審議する補正案のほうですけど、ここの部分はちょっと考えたほうがいいのではないかという具体的な指摘はあったでしょうか。

〔増田分科会長代理〕補正予算の内容を見ておりますと、今、お話になった、これから国会で御審議されるものの中では、例えば10兆円ほど予備費が計上されております。これについて、やはりその時々の状況に応じて、予備費は支出をしていくわけですが、先ほど御紹介した御意見の中でも、やはり財務省の管轄下にあるその予備費について、使い方をよく精査しておくべきではないかということと、それから現場からフィードバックをしてもらって、本当に意味のある予備費になる使い方になっているのかどうか、そういうことをきちんと見ていくべきではないか、そんな御意見がございました。

〔質問〕予備費に関して、国会のチェックができないのではないかなどという指摘もあるようですが、その辺りは何か議論が及びましたでしょうか。

〔増田分科会長代理〕確かに、事柄の性格上、緊急的に出すものなので、総額ではいろいろコントロールするのでしょうけど、内容的には、認めた段階ではなかなか使い道は精査できないので、これはどうしても予備費の性格上、これまでの大水害等も考えると、私も最近の状況を考えて、あるいは、さらに今回のパンデミックを考えれば、予備費をかなり多く取っていくのが、今の時点でつくる予算としてはやはり必要なのだろうと。ただ、だからこその使い方については、国会がなかなか事後的なチェックにどうしてもなりがちということになるので、だからこそ透明性だとか、それから説明がきちんとできるような使い方になるように、これは政府サイドでよく考えておく必要があるのではないかと。これは、もう必ず国会で事後的には聞かれるでしょうけど、そのときはもう使われた後という形に往々にしてなっていると思いますので、これは政府サイドで、よほど効果的な使われ方を考えて実行していくと、これが予備費については必要ではないかと思います。

〔幹事〕ほか、よろしいでしょうか。

では、終わります。ありがとうございました。

〔増田分科会長代理〕はい。どうもありがとうございました。