〔増田分科会長代理〕それでは、先ほど財政制度等審議会の財政制度分科会を開催しましたので、その内容についてご報告いたします。
本日の16時15分から開催をいたしました。本日の議題は2つあり、一つは令和2年度予算の概要等ということで、予算の内容をお聞きして、質疑を行いました。今年度の補正予算も内容として含んでおります。それから、もう一つは海外調査の実施ということで、いずれも事務局から説明をした上で、質疑を行ったものであります。
各委員からの主な質疑や意見について、通例どおり委員の個人名を伏せて、これ以降、紹介をさせていただきます。なお、議論の詳細につきましては、後日、公表される議事録をご参照いただきたいと思います。
早速ですが、内容です。最初の委員からのご意見です。先般、内閣府から発表されました中長期の試算が今日の資料の中にも入っておりますが、こちらについてであります。この委員からは、実績との乖離について内閣府が検証したということであるけれども、目標としている国・地方のプライマリーバランスはSNAベースである一方、国会で行われている審議は予算ベースとなっており、そこの変化のプロセスがわからないというご意見がありました。
そして、あわせて、次の委員のほうからも中長期試算について、その計算過程が明らかでないという意見がございました。そして、この委員の方は、主計局においても分析が可能なのではないか、そういったものに取り組んだらどうかという意見を述べられました。また、この委員は、海外調査について、歳出改革についての各国の取り組みを調査いただきたいと、このような注文がございました。
次の委員でありますが、こちらは全世代型社会保障検討会議の中間報告に関連した意見です。中間報告の内容を読んで、いかに国民の不安を解消できるか、いかに現役世代の負担感を軽減できるかがポイントであるという印象を持つという意見です。そこで、今回行う海外調査においても、社会保障に関する負担の増加について、過去、いかに国民の理解を得ているのか、そこの点をよく調査をしてきていただきたいということであります。
次の委員です。こちらも、中長期の見通しの中で経済見通しについて、民間の予測が必ずしも正しいというわけではないけれども、今出ている民間の予測は、成長率平均が0.5%で、政府予測よりもずっと保守的にやっている。中長期試算も含め、財政の見通しは、政府の成長戦略における経済見通しとは性質が異なるため、やはりそこは区分して考えていくべきと、こういう意見でありました。
次の委員です。中長期試算について、成長実現ケースがずれるのはともかく、ベースラインケースがこれまでの実績と乖離するというのはいかがなものなのかと、こういうご意見でありました。
次の委員の意見は構造的な要因を背景に低金利は続くだろう。他方で、金融と財政の過剰な緩和によって日本経済にゆがみが起きていて、コストがかかっているのではないか。したがって、これがこの方の分析というか、意見ですが、海外調査では、構造的要因で金利は下がり、過剰な緩和政策がとられたことによるコストをどう考えるか、この点をよく調べていただきたいと。具体的に、例えば生産性が低下しているとか、ゾンビ企業の継続といったようなことが起こっていないのか、このあたりのコストがどう増加しているかよく調べてきていただきたいという話でありました。
次の委員です。予算全般についてですが、今年度、足元で消費税率を引き上げたが、税収が下がってしまった。下方修正に伴い、赤字国債を発行している中、2020年度予算が過去最大になっているというのは大変重たい事実だということをご指摘されました。
次の委員の意見です。難しい予算編成だったと承知はしているが、それにしても、税収というのは財政健全化に充てるべきだけれども、今回、新規国債発行が減少しているといってもごく少額で、こうした問題については引き続きよく検討すべき課題であるという意見です。
次の委員の意見です。この方のコメントは、昨年の秋、当財審でも社会保障の議論が中心に行われていた中で、社会保障関係支出の伸び全体を高齢化分の中でおさめたり、後期高齢者の窓口負担を引き上げたりといったことも議論に出てきた。これは全世代型社会保障の中でも、そういうことに書かれているわけですが、一方で、できなかったことも多く、こうしたことをきちんと見る必要があるという意見でありました。
次の委員の意見は、主に医療についての、特に地域医療構想についての意見です。給付と負担はセットなので、給付のほうは地域医療構想はきいてくるが、地域医療構想で都道府県が権限を発揮できるかというと、実際にはそういうふうになっていない。国保も、都道府県が主体的に機能を発揮できる環境が必要であって、そういうことが、今、本当に図れているのか、必ずしもそうはなっていないのではないかと。給付と負担のガバナンスができるような仕組みが、今後、必要になるのではないかと、こういう意見でありました。
それから、次の方の意見は医療費についてです。この方は、全世代型社会保障検討会議で、メンバーの大方の委員が自己負担、後期高齢者2割を主張していて、これは自分の主張とも合っており、ありがたいということですが、実際の制度設計はこれからということになるので、自己負担2割の対象が、小さな範囲にならないように、これからもよく検討していかなければいけないという意見でありました。
次の方の意見で最後になります。中長期試算をやるたびに、結果が毎年、悪くなっていることに危機感を持つと。社会保障制度改革を思い切ってやる必要があって、政府で全世帯型社会保障検討会議を行っているけれども、今後も手を緩めずに社会保障改革を継続していく必要があると、こういう意見でありました。
本日の審議における各委員からの主な質疑・意見は、今、ご披露したとおり、以上であります。
私からは以上であります。
〔幹事〕先ほどの意見の中で、中長期試算のくだりの2つ目の意見ですが主計局でも分析できるのではないかとありました。
〔調査課長〕中長期試算は、SNAベースでできており、その統計は内閣府が持っているわけですが、一方で一般会計のPBみたいなものも中長期試算の下のほうには載っていたりして、予算審議というのはそういう部分でやっているということで、そこがどうなっているのか、昔の中長期試算ではその部分を見込んでいたけれども、実際にはどうなっているのか。そういったあたりは、予算をまさにつかさどる主計局でも数字を持っているわけだから、そういった検証を始めるみたいなことがあってもいいのではないかという、そういったご示唆です。
〔幹事〕主計局で中長期試算をつくるとか、そういうわけではない。
〔増田分科会長代理〕そういう意見ではなかった。
〔幹事〕あと、もう1点。直接、今日の議論とは関係ないところなんですけれども、日本郵政の新社長になられたということで、この財政審の今のお仕事は引き続きやられるのでしょうか。
〔増田分科会長代理〕最初、いろいろ考えたんですが、この財審の場が、財政だけでなく経済の問題、それから、さらには金融の問題についての、日本でのいろいろな関係について分析をしている有識者の集まりなので、やはりその議論をよく見ていくというのは大変意味があるだろうと。一方で、最初、懸念をしましたのは、やはり仕事が格段に従来よりも忙しくなるので、それが持続できるかどうかということです。会長は榊原会長であり、あと、財政審の中で部会がございまして、私が部会長で、部会長代理は土居先生がやっておられ、部会で審議をすることもあるのですが、お二人の先生方に相談をして、おそらく役割分担をきちんとするということで、会議の進行は、今、会長代理である私が行っています。この会見もこういう形で私が来て話すことが多いのですが、そのあたりは、しばらくはこの会議、多分、開かれないと思いますが、日程をとるのがなかなか難しいことが多くなると思うので、会長、それから部会長代理とよく役割分担してやっていきたいと。この場が今後の先を決める上で、私としても非常に重要な場だというふうに思っていますので、会長代理はそういう形で引き続き継続していきたいと、こういうふうに思っています。
〔幹事〕ありがとうございます。
〔質問〕今の質問に関連して、郵政の社長というと、財務省や政府にとってのステークホルダーであると思うのですが、そのステークホルダーでありながら有識者会議のメンバーを務めるということについて、ご自身ではどう心の整理をされていますでしょうか。
〔増田分科会長代理〕財務省自身は、もちろん株主の立場という観点から、直接はグループ会社には金融庁のほうがもっと影響力は大きいと思うのですが、ご承知のとおり理財のほうが主として担当しております。したがって、そういう意味では、この財政というのは主計局のほうの関係なので、私自身はこの財審は大学教授の立場でこれまで参加していたのですけれども、一応、審議の中も議事録等で透明性がきちんと確保できますし、ここでどういう発言をしたかということもご紹介しているので、きちんと偏りのない形であの場には参加して、それで続けていきたいと。企業経営者も、もちろんこの審議会に参加している方も多くて、それぞれ銀行の関係で、関係していらっしゃる方もいると思うのですが、同じような立場で私も有識者としてこれからも参加していくつもりで、これは非常に貴重な場だと思います。
ただ、1点、やはり日程の関係等についてはやはりきちんと役割分担して調整しないと、なかなか難しい場面が多いと思うので、それぞれの役割が十分果たせるように、会長・部会長代理等ともよく相談して、都合がつく部分はこちらに私が来るという形にしたいと思います。
〔質問〕今回の会議を振り返って、増田さんご自身は、ご関心を持たれたこと、気になったこと、改善点など教えてもらってもよろしいですか。
〔増田分科会長代理〕今日の審議を通じてという意味ですか。やはり大勢の方が中長期試算について指摘をされました。やはり成長実現ケースというのは、あまりにも現実とは離れていると私も思いますし、ああいう中長期試算を実現していく、要はプライマリーバランスの黒字化をきちんと実現していく上で、保守的に見たベースラインケースでもなかなか難しいということがあります。2020年度、来年度までは歳出改革の効果を織り込んでいると聞いていますけれども、21年度以降の部分はそれを入れてないので、やはり一番多く思いますのは、歳出改革の努力、それから、その実現をこれからなお一層図っていく必要があると思います。
それから、内容的には全世代型社会保障について触れられた方も多いのですが、同じような話にはなりますけれども、歳出改革といっても大きな部分はやはり社会保障制度であって、これは国民の中でも非常に関心が高い部分であります。この全世代型社会保障改革、まだ中間報告ですけれども、これを確実に実現していくということが大事で、昨年の中間報告でいろいろまとめられたものはあるのですが、制度の細部については、これからの、6月までの最終報告までの検討に委ねられている部分が多いので、そのあたりをきちんと行っていく必要があるのではないかと、こんなふうに思っております。
〔質問〕去年の12月に決まった一連の予算措置、すなわち2019年度については税収が大きく下振れるという補正をした上で、なおかつ大型の経済対策を組むと。2020年度の当初予算についても102.6兆円という過去最高の規模の予算を組むということで、この辺、財審としてどう受けとめているのか、何かご意見とかありましたら。
〔増田分科会長代理〕今日、皆様方からのご意見などを、私も、きちんと集約をしているわけではないのですが、やはり先ほど紹介した意見の中にもありましたように、せっかく8から10まで上がったにもかかわらず、実際に税収はやっぱり下振れていると。私も委員として思いますけれども、災害対策はやはりこれは必要だと思うのですよね。災害対策はきちんとやっていかなければいけないのですが、従来から指摘されているとおり、補正予算についての使途などが、本当に今、緊急性があって必要なものになっているのかどうか。
それから、当初も大変大きな額で膨れ上がっているので、使途の細部についてはやはり、国会で審議等もこれから始まるので、そちらで十分審議してもらいたいなと思います。財政健全化をしていく上では、こういう予算編成が行われていくと、中長期の試算でも、いろいろ問題があり、そこでも明らかになっているとおり、PBの黒字化が、どんどんやはりハードルが高くなっていくので、社会保障などについての改革の取り組みというのは一方で行われていますけど、それも含めて、やはり財審がよほど強い意見を出していくと。財政構造改革がきちんと相当行われないと、大きな約束をしたことがパアになってしまうので、それだけ我々の声を大にして言うべき役割も大事だと思いますし、当面、今日からですか、行われている補正予算の審議、あるいは当初予算の審議で、その使途が個々どうなっているか。財審は、やはりマクロの数字は見ていますけど、個々の問題についての具体的な審議をする場という形にはなっていませんけど、やはりそういったところでどういう意見が交わされるのか、どういうふうに国民の皆様方が見ているかということを十分考えていかなければいけないなと、こんなふうに思います。
〔幹事〕よろしいでしょうか。はい。
〔増田分科会長代理〕はい。それでは、どうもありがとうございました。