このページの本文へ移動

財政制度分科会(令和元年11月6日開催)記者会見の模様

〔増田分科会長代理〕本日15時から、財政制度等審議会の財政制度分科会を開催いたしましたので、その内容についてご報告を申し上げます。

本日は、まず前半で地方財政について、事務局からの説明の後、質疑を行いました。そして、後半は、有識者の講師として、小塩隆士一橋大学経済研究所教授をお招きして財政の長期検証について、それから、山藤昌志三菱総合研究所政策・経済研究センター出席研究員をお招きして人生100年時代を支える財政・社会保障制度についてお話をいただき、このお二人を交えての質疑を行いました。

初めに、事務局からの説明について、地方財政については、総論では引き続き一般財源ルールを維持して臨時財政対策債を縮減すると、こういう説明と、あと各論では、自治体のシステムについて標準化を進めて、歳出効率化効果はマクロの地方財政計画に反映させること、それから、もう一つ個別に、具体的には下水道を取り上げて、その広域化を進めるということと、公費の繰り出し基準について見直しを検討すると、こういった事務局から説明がなされました。

それから、小塩様からは、NIRA総合研究開発機構からオピニオンペーパーとして公表されています財政の長期検証についてご説明いただき、それから山藤様からは、三菱総研のほうで公表されている「未来社会構想2050中長期展望」という、先月、公表されたものがあるのですが、その最後のところに健康寿命延伸に関する推計というものがございまして、それについてご説明をいただいたと、こういうことであります。

この後、質疑の内容について、委員の個人名を伏せて紹介をさせていただきます。なお、次回は11月15日の午前を予定しておりますが、これまで5回の審議を踏まえて建議の取りまとめに向けた審議を行うと、こういう予定をしておりますので、11月15日についてはカメラ撮り及び記者会見はなしということにさせていただきたいと思っております。

それでは、本日の質疑について、委員の名前を伏せて、申し上げたいと思います。まず地方財政について先に申し上げて、そこでご紹介した後、有識者とのやりとりを紹介するということにいたします。

最初の委員からは、令和元年度の地方財政計画で、いわゆる折半対象財源不足がゼロとなって、臨時財政対策債の発行額が減少していることは評価いたしますと。そして、令和2年度の地方財政計画について、総務省の仮試算では、折半対象財源不足はゼロだけれども、臨時財政対策債が増加する見込み、これは資料の中で総務省の仮試算が記載されていることについてですが、臨時財政対策債の償還を進めて残高を着実に減らす必要があると、こういう意見がありました。

それから、次の委員の意見ですが、いわゆる地方財政計画と決算の乖離について、地方税収が上振れたときと下振れたときの扱いが非対称になっていると。下振れのときには財政措置するわけですが、上振れのときには渡し切りとなっているので、このことは是正が必要だという意見がありました。それから、交付税特会で30兆円を超える借入金があるわけで、1年以内の短期借り入れで借り換えを繰り返してきていると。これは、将来、金利が上昇した場合のリスクが大変大きい、早期に償還を進める必要があると、この委員の方も言っております。

それから、次の委員の方は地方交付税について、基準財政需要額の算定においては人口に比例する部分が多いと。地方歳出は、人口減少に伴い、今後はそれほど大きくならず、むしろ中・長期には減っていくはずではないかと、そういう意見であります。それから、この方はもう一つ、歳出効率化効果をマクロの地方財政計画に結果的に反映させていないのは問題であると。地方団体、自治体のやる気は重要だけれども、歳出効率化効果の一部は、財政健全化に充てるべきだと、こういう意見であります。

それから、次の方の意見ですが、この方は行政のコストを削減する、そして自治体での業務を効率化していくという意味で、徴税業務以外にも、全部の自治体に共通の業務があるのではないかと。したがって、システムの標準化、共同化を進めていく必要がある、という意見であります。

それから、次の方の意見ですが、この方は同じようにシステムの標準化、共同化を取り上げているのですが、そういったシステムの標準化、共同化を進めるには、まず業務自体の標準化を進める必要があると。それで、システムの入れかえの時期に共同化を進めるということが現実的には非常に効率的だと、工程表を作成するとよいのではないかという意見を言っております。それから、この方はもう一つ、上下水道について、コストと料金の適正化、見える化を図ることが、今、最大の課題であって、不透明なままでは広域化や民間委託等のプレッシャーが事業者にかからない、ぜひ見える化を進めるべきという意見であります。それから、地方財政に余裕があるときにこそ、さまざまな改革を進める必要があると。実は、地方財政は今、税収が過去最大限、本日の資料の中に入っていますが、42.9兆円ぐらい地方税収が入っているはずですし、今の時期にこそ大きな改革をしていくべきという意見でありました。

地方財政については、以上です。

それから、有識者お二方に対するヒアリングを行いました。資料等も配付されているかと思いますが、ご説明があった後、一括して質疑を行いましたので、各委員の発言の内容についてお話し申し上げます。

最初の委員の方のご意見ですが、お二方に対して大変重要な指摘をいただいたと。社会保障以外の経費を物価上昇率ではなく名目GDP費一定で計上した場合には財政収支が大幅に悪化するという点、これが大変重要な示唆だと、この委員の方はおっしゃっています。そして、今後もこれまでの歳出改革に倣って歳出を抑制する必要があるということをこれは意味しているのではないかと、プレゼンを聞いての意見をおっしゃっておりました。

それから、次の委員の方ですが、この方は金利について、今回、大まかな見通しを立てているわけですが、今回の想定が必ずしも正しいとは限らないので、いずれにしてもいろいろなケースの試算をして、試算全体の頑健性を示すということが重要ではないかと、こういうことを述べております。それから、もう一つ、財審がそういったプレゼンを受けた上で、アウトプットを間違えると、場合によってはあたかも長生きを否定しているように国民に受け取られてしまうのではないか。財審としては、予防は進めるという姿勢を保ちつつ、他方で、長生きをした場合には公費負担が増えるという点を国民に理解してもらうことが大事と。これは、本日のプレゼンの内容を受けて、注意点を意見として述べたということです。

それから、次の委員の方ですが、政府試算を毎年チェックする仕組みづくりを、ぜひ政府においても行ってほしいという、政府に対しての意見でありました。

それから、次の委員の方も、政府の検証に対する独立した検証が今回のものであって、こうした取り組みを継続していくことが重要であると、こういう意見であります。

それから、次の委員の方ですが、この方はプレゼンを聞かれて、健康寿命というのは増やすべきだと思うのですが、寿命が延びることで財政の持続可能性を脆弱化させるのではないかと。人口を増やすと、歳入の増加策として一体どんな案があるのかという、この2人の講師に対しての逆に問いかけがございまして、2人の講師からは、それに対してこんな答えがありました。

1人の講師の方は、健康になった高齢者に働いてもらうのが重要で、支える人を増やして60代後半の就業率を高め、その方々から保険料や税金を納めてもらうというのは一つアイデアとしてはあるということです。

それから、次の講師の方は、1つは健康寿命の延伸、健康であって働けるのであれば働いてもらう、そうすれば税収は拡大すると。それでも足りない場合は消費税増税などの財政措置が必要で、この2つを組み合わせて考えていくということがアイデアとしてありますという答えがありました。

それから、次の委員から、計算、試算期間の違いもさることながら、政府で全体としての経済像を描けていないということが問題だというご指摘でありました。

それから、次の委員の方ですが、この方もプレゼンを聞かれて、年金の財政検証について、年金財政は大丈夫という結果であるのですが、その裏で財政全体が悪化するという本日のプレゼンのご指摘は大変重要だと、そういう意見を述べております。

それから、次の委員ですが、今回、長期推計のPDCAが必要で、データがオープンにされると外部の有識者は検証できる。ですから、データをオープンにして外部の有識者が検証できるようにするのも一つの考え方で、そういったことが重要ではないか、という意見を言っております。

それから、次の委員の方ですが、本日のプレゼンで、健康寿命の延伸にコストがかかるという議論についてのプレゼンもあったのですが、この方の理解は、医療費の支出が10.7兆円増えるというのはそのとおりだろうけれども、就業者の増加によって増収5.3兆円、それに社会保障改革の効果を足せば、全体として財政的にもプラスの効果が出るので、社会保障制度改革が重要であって、今こそ、それをしっかりやればきちんと効果が出るという意味では、非常に良いということではないかということでありました。講師の側からもそういう意見を受けて、講師の方もそういう立場であると。小さなリスクには自助、大きなリスクには共助でという考えを持っておられ、委員の指摘はそのとおりだと、こういう意見でありました。

プレゼンに対しての質疑、やりとりは以上のような形でございます。

〔幹事〕地方財政の徴税コスト、システムの標準化、共同化について、増田分科会長代理、知事をやられていたご経験から、この実現に向けて、先ほど工程表を示すべきとありましたけれども。

〔増田分科会長代理〕そうですね、委員からもそう言っていました。

〔幹事〕知事をやられたご経験を踏まえて、何かアイデアといいますか、意見があればお願いします。

〔増田分科会長代理〕これは、もう各自治体でやっているので、実はこういう分野というのは、それぞれの自治体が自前主義でずっと築き上げてきたところがあって、今、どんどんアウトソースして、共通のデータベースをもとに、さまざまな業務を標準化して、その上でシステムを標準化するということをやっていかないと無駄がうんと生ずるということで、考え方というのは少しずつやはり浸透してきていると思うのですが、いざ、そういうふうに動こうとすると、やはりシステムの問題というのは、なかなか首長のところまで本当に上手くきちんと上がっていかない。現場任せになるところもあるので、知事会だとか、市長会だとか、そういう高いレベルのところでその大原則を確定して、トップダウンで進めていかないと、なかなかこういう問題は進んでいかないのではないかと思います。

できるだけ各自治体の担当者レベルも一緒に集まって、どうするとシステムが標準化できるかということをよく忌憚なく話す必要があるのですが、往々にしてベンダー任せみたいになったり、高いものをつかまされたりしているところもあるので、私もここは非常に無駄が多いというふうに思っています。やはりできるだけ上に上げて、トップダウンでこれを進めていくと、そういうことが必要じゃないかなと思います。

〔幹事〕ありがとうございました。

〔質問〕ヒアリングのお二方のプレゼンなのですけれども、資料はいただいているのですが、具体的にお二人はどういうことを、簡単で構わないので、ご説明いただければ。

〔増田分科会長代理〕はい、わかりました。

最初、小塩さんのほうからプレゼンがあったのですが、問題点について2つ指摘があったのですが、最初に、今、我々が一番関係している財政について中長期試算があって、それが2028年まで、それから社会保障については2040年、そして年金について2058年ということで、3つの政府でかかわっている試算というのがあるのですが、全体の体系化がやはり不十分であると。

要は、先般、年金の財政検証が出たのですが、それは年金という分野だけについての検証になっており、実はそれをきちんと保障する意味での財政の持続可能性というのは、そこでは十分議論されていないという指摘があって、全体をきちんとまとめた体系化をする必要があるという指摘と、それから歳出の想定がどういうふうになるかということで結果が大きく左右をされる、そういう財政見通しというのは歳出改革の想定にかなり依存している可能性もあるということで、歳出改革、歳出の想定、そこについてきちんと取り組みを進めていく必要があると。

これは、例えば中長期試算、財政のほうについては非社会保障歳出と、それから社会保障歳出と、それぞれの想定がいろいろ書かれているのですが、そういったものについて、どうなるかということをきちんと出していくと、そういうことをしっかり政府全体として取り組むべきと。小塩さんについては、ざっくり言うとそんなプレゼンがあったというふうに理解しています。

それから、山藤さんのほうは、これは少し、MRIのほうで人生100年時代の財政とか社会保障制度全体ということについての報告書を出した、その中の一部ということなのですが、結局、健康寿命延伸がもう大前提であって、それ自身はこれからもきちんと行っていくべきという大前提の上で、それを実現していく上で3つの柱があって、1つはテクノロジー、技術をきちんと使う、エビデンスに基づいていろいろやっていく。それから、2つ目が、働き方、あるいは働き手、地域とか就労の関係ですね。それから、3つ目は国にかかわるわけですが、社会保障制度改革をしっかりと行っていくと。これは、厚生労働省、それからもちろん関係する財務省もそうですが、そういう制度にかかわる話、これは自治体にもかかわってくる話かもしれません。

そういう3つの改革をきちんと行っていく上で、2050年に向けての社会がどういうふうになるかということで、それぞれいろいろな柱について、テクノロジーについて、それから2つ目が地域社会でどういうふうに高齢者が活躍していくか、それから3つ目が制度にかかわる話ですが、それの各論についてご説明があったということであります。

最初の、特に小塩さんのほうの話は、やはり財政の長期検証なくして社会保障の議論を、例えば年金だとか、それから、もちろん医療、介護もありますけれども、そういうものについて、その分野だけでの財政検証をするということは、やはり体系全体としては非常に不十分ではないかと、こんな趣旨のプレゼンが私にとっては非常に印象に残りました。

大体、以上になります。

はい。

〔質問〕小塩さんの説明のほう、政府の中長期試算とNIRA総研の試算、比べられていますけれども、2028年で見てもPBの黒字化の水準が全く違うといったような結果になっていますが、こういった説明を聞いて、改めて内閣府が今、出している中長期試算のメッセージ性というものを、皆さん、どのように感じていらっしゃるのか、国民に誤解を与えている面もあるのか、そのあたり感触を教えてください。

〔増田分科会長代理〕やはり総じて言うと、財審の立場で、財審に参加している委員の皆さん方だから、やはり厳し目の前提などを置いて、きちんといろいろな試算、予測をしていくということが重要だということを、財審の皆さん方は今回のプレゼンを受けてそういう思いを抱いたのではないかなというふうに思います。要するに、エビデンスに基づかない甘い幻想だとか、楽観論はやはり排して、現実的なシナリオとか、堅実な経済前提とか、そんなことをベースに物事を進めていかなくてはいけないということが、本日の有識者の人たちを聞いての総じた意見というか、雰囲気だったのじゃないかなと私は理解していますが。

〔質問〕それは、逆に言うと、今、大体、我々は政府の中長期試算をもとに、2026年ぐらいにPB黒字化するのだなというイメージを持っているわけですけれども、それだと、どちらかというと、もうご誤解というか。

〔増田分科会長代理〕本日のあれで、特にその内容が誤解とか、そういうことまでは言っていないと思いますが、要は高い成長が実現されても、2040年にかけてPBの改善はなかなか進まないという、これは本日のプレゼンの一番の肝だったと思うのですけれども、これからの建議の中でいろいろ、そこをどう受けたらいいのかということはきちんと中で議論したいとは思いますし、今の内閣府で出しているものについてどうだということまで、皆さん、おっしゃっていなかったんですが、要はきちんとした、堅実な経済前提に立ってやはり考えていかなくちゃいけないとか、そういうところは我々もこれまでも建議では言っていますけれども、やはり本日のプレゼンを聞いて、みんなそういう思いを持っていると思います。その上で、建議で一体政府に対してどう言うかは、これからまた本日のプレゼンを受けて考えていきたいというのが、次回からの建議の中身での議論になると思います。そこでまた、委員の皆さんからいろいろご発言があるのだろうなと思います。

〔質問〕すみません、関連して。春の建議のときには、こういったやはり中・長期の試算がないことで、国民の中にも本格的な議論が広がらないといった指摘があったと思いますが、やはり最終的には、国民にこのあたりを正確に認識してもらって、さらなる改革が必要というメッセージを出していきたいということでしょうか。

〔増田分科会長代理〕やはり第三者的なというか、インディペンデントなところで、やはり中長期のものについてのいろいろな考え方というのが示されると、より高い視点からの立場というのがきちんと見えてくると思うので、どういう基調で、どういう線に沿って建議をまとめるかということはあるんですが、いずれにしても財審としては、やはり甘いそういうところに寄らずに、やはり厳格に、財政の将来に向けて堅実な経済・財政前提に立ってやっていくという姿勢、それを踏まえてきちんと意見を言っていきたいと思います。

ですから、それを国民の皆さん方にどうやって理解していただくかというと、前から中・長期の予測とか試算のことを言ってきましたが、やはり今、まさにおっしゃったように、政府のそれ一本だけということは必ずしも十分ではなくて、やはり民間なりのそういったものもきちんとヒアリングした上で、その上に立っての建議というのがやはり大事ではないか。ちょうど時間的にも今回のものが出てきましたので、それをよく見て、スタンスはきちんと固めていきたいと思います。

〔幹事〕そのほか、いかがでしょうか。よろしいですか。

〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。