財政制度等審議会財政投融資分科会
議事録
財政制度等審議会財政投融資分科会議事次第
令和7年7月31日(木)13:59~16:09
財務省第3特別会議室(本庁舎4階)
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1.開会
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2.議題
- 令和7年度財政融資資金運用計画の一部変更について
- 質疑・応答
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3.議題
- 大学ファンドの状況報告
- 質疑・応答
- 令和6年度財政融資資金運用報告書
- 令和7年度政策コスト分析
- 財務局等を通じた地域課題解決支援について
- 質疑・応答
- 産業革新投資機構の大型案件の進捗について
- 質疑・応答
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4.閉会
配付資料
議事次第
| 議案説明資料 | 令和7年度財政融資資金運用計画の一部変更について |
|---|---|
| 資料1 | 大学ファンドの状況報告 |
| 資料2-1 | 令和6年度財政融資資金運用報告のポイント |
| 資料2-2 | 令和6年度財政融資資金運用報告書 |
| 資料2-3 | 政策コスト分析(令和7年度)の概要 |
| 資料2-4 | 財政投融資対象事業に関する政策コスト分析(令和7年度) |
| 資料2-5 | 財務局等を通じた地域課題解決支援について |
| 資料2-6 | 地方公共団体の収支改善取組事例等について |
| 資料3 | バイアウト投資等に係るJICの取組について |
出席者
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分科会長 |
翁百合 |
井口理財局長 渡辺審議官 尾﨑総務課長 西川財政投融資総括課長 鈴木資金企画室長 伊藤管理課長 高橋計画官 鳩間計画官 天井財政投融資企画官 |
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委員 |
土居丈朗 丸田健太郎 家森信善 渡辺努 |
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臨時委員 |
有吉尚哉 岡田章裕 小橋文子 工藤禎子 西野和美 山内利夫 |
13時59分開会
〔翁分科会長〕それでは、ほぼ予定の時間となりましたので、ただいまから財政制度等審議会財政投融資分科会を開会いたします。
議事に移ります前に、井口理財局長よりご挨拶をお願いいたします。また、理財局の人事異動がございましたので、併せてご紹介いただきたいと思います。
〔井口理財局長〕ありがとうございます。
本日は大変お忙しい中、また、大変酷暑の中、お集まりいただき大変ありがとうございます。また、ウェブで参加の皆様も本当にありがとうございます。
私、この7月1日付で理財局長を拝命いたしました井口と申します。どうぞよろしくお願いいたします。私自身、以前、財政投融資総括課長を2年やらせていただきました関係で、本当にこの分科会、当時からいらっしゃる方と新しくいらっしゃる方がいらっしゃいますが、大変お世話になっております。引き続きよろしくお願いいたします。
この機会をお借りしまして、7月で異動した人間も含めて新体制についてご紹介させていただきます。
大臣官房審議官、渡辺でございます。
その右、皆さんから見ると左、総務課長の尾﨑でございます。
〔尾﨑総務課長〕尾﨑でございます。よろしくお願いいたします。
〔井口理財局長〕分科会長の右隣、左側、財政投融資総括課長の西川でございます。
〔西川財政投融資総括課長〕西川でございます。
〔井口理財局長〕同じく管理課長、伊藤でございます。
〔伊藤管理課長〕伊藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
〔井口理財局長〕計画官、2人おりまして、計画官、高橋でございます。
〔高橋計画官〕高橋です。
〔井口理財局長〕同じく計画官、鳩間でございます。
〔鳩間計画官〕鳩間でございます。よろしくお願いいたします。
〔井口理財局長〕また、財政投融資企画官、天井でございます。
〔天井財政投融資企画官〕天井でございます。
〔井口理財局長〕同じく財政投融資総括課の資金企画室長、鈴木でございます。
〔鈴木資金企画室長〕鈴木でございます。よろしくお願いいたします。
〔井口理財局長〕以上の職員によりまして、今年、財政投融資制度の企画等を担ってまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
本日は、4月1日付で新たに委員にご就任された小橋文子委員にご出席いただいておりますので、一言ご挨拶をお願いいたします。
〔小橋委員〕初めまして、慶應義塾大学の小橋文子と申します。このたび臨時委員を拝命いたしました。なにせ初めてのことで、いろいろと至らぬ点もあるかと思いますが、少しでもお役に立てるように精進してまいりたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは、議事に移ります。本日は、財政融資資金運用計画に係る議案に加えて5つの議題についてご審議いただきます。時間が限られておりますので、ご質問、ご意見などはできるだけ簡潔にお願いいたします。
まず、議案の「令和7年度財政融資資金運用計画の一部変更について」、鳩間計画官よりご説明をお願いいたします。
〔鳩間計画官〕「令和7年度財政融資資金運用計画の一部変更について」ご説明申し上げます。表紙に「議案」と記載されている資料が本日ご審議いただく内容でありますが、説明は表紙に「議案説明資料」と記載された資料に沿って行わせていただきます。
それでは、議案説明資料1ページ目をご覧ください。
今般の議案の内容ですが、独立行政法人福祉医療機構について、物価高騰等の影響を受けて厳しい状況に直面している医療・福祉事業者の資金需要に対応するため、令和7年度特別会計予算総則第21条第3項に基づき、財政融資資金の貸付を973億円追加したいというものでございます。
次のページ、根拠規定であります令和7年度特別会計予算総則の抜粋を掲載してございます。こちらをご参照ください。
資料の3ページ目をご覧ください。
こちら福祉医療機構におきましては、令和6年12月に物価高騰対応資金を創設しまして、医療・福祉事業者の資金繰りを支援してまいりましたが、医療・福祉事業者はそもそも医療需要等の変化により厳しい経営環境に置かれておりまして、昨今の物価高騰の影響も受けて、より厳しい状況に直面していることから、令和7年4月に貸付利率の一定期間無利子化ですとか、無担保貸付限度額の拡充などの貸付条件の変更を行いました。こちら赤字で示させていただいておりますのが変更部分でございます。
資料4ページ目をご覧ください。
貸付条件の変更を受けまして、物価高騰対応資金に対する需要が伸びております。福祉医療機構全体の融資実行額ですが、令和7年6月までの実績で539億円となっております。足元の借入の申請状況を踏まえますと、9月には2,514億円となりまして、当初想定しておりました令和7年度の貸付規模2,309億円を超過する見込みとなっております。ご案内のとおり、財政融資資金の長期運用予定額は、特別会計予算総則におきまして、予見しがたい経済事情の変動その他やむを得ない事情により、長期運用予定額の増額を必要とする特別の事由があるときは、100分の50に相当する金額の範囲内において増額することができるとされております。これに基づきまして、先ほど申し上げました資金需要を踏まえ、医療福祉機構の財政融資資金運用計画につきまして、当初計画の1,946億円から50%に相当する973億円を増額し、合わせて2,919億円とすることをお諮りするものであります。
私からは以上でございます。
〔翁分科会長〕ご説明ありがとうございました。
それでは、ただいまのご説明を踏まえて、委員の皆様からご意見やご質問をお願いしたいと思います。会場にいらっしゃる方は名前の札を立てていただき、オンラインの方は挙手ボタンもしくはチャットにてお示しください。なお、ご発言の際に資料を引用される場合には、資料番号や該当ページなどおっしゃっていただければと思います。よろしくお願いいたします。
それでは、岡田委員、工藤委員、お願いいたします。
〔岡田委員〕読売新聞の岡田です。本日、ご説明ありがとうございます。
質問なのですけれども、物価高騰ということが理由に挙がっていましたけれども、物価といっても消費者物価とか生鮮食品を除くとか、あるいはどの程度の物価高騰、あるいはどれぐらいの期間の物価高騰、いろいろな考え方あろうかと思いますが、そうしたときに不測の事態という場合に何か物価高騰、これぐらいなら、という基準はあるのでしょうか。
以上、よろしくお願いします。
〔翁分科会長〕それでは、まとめて後でご回答をお願いいたします。
次に、工藤委員お願いいたします。
〔工藤委員〕ありがとうございます。また、本日、ご説明ありがとうございます。
コメントをさせていただきたいと思います。コロナ補助金の終了以降、経営が大きく悪化している医療法人等が数多く存在しているということを認識しております。全日本病院協会等の病院団体が行った調査によると、経常利益ベースで赤字の病院というのが、2023年度の50.8%から2024年度は61.2%に増加しているという数字もありました。物価賃金の上昇により厳しい状況に陥っている医療法人が多くあるということは否めないと思います。また、表面上は比較的経営の順調な医療法人でもですね、実際は手元の資金繰りに窮しているケースも相応に存在していると思っておりまして、比較的大規模な病院でも、倒産リスクを抱えている状況と認識しております。既に民間金融機関だけでは支え切れなくなっている、こういった事例も出てきているところです。
そうした中で、今回ご提案ありますように福祉医療機構が無利子・無担保による支援メニューを用意して、経営改善に必要な資金を支援していくということは妥当と考えておりまして、資金運用計画の一部変更に賛同いたします。
支援を受けた病院が経営を着実に改善させて、地域における医療サービスを継続的に提供できる事業体制を確立するということは、国民生活にとって極めて重要であると考えております。
加えて、財投として一定の収益性確保も重要でありまして、返済確実性を高める観点からも、機構には今以上の経営指導をお願いしたいと思います。
また、財投の場で話す話ではないのかもしれないのですが、全般に財政は厳しく、社会保障をどうするという話もある中ではあるのですけれども、やはり根本に戻り、病院側の努力もあると思いますし、枠組みとして本当に病院がサステナブルな運営ができるにはどうしたらいいのかという課題と施策アクションというのも、しっかり考えていくタイミングにあるのかという気もしておりまして、そういったことも課題として、ぜひ挙げてご検討いただければと思います。以上でございます。
〔翁分科会長〕貴重なコメントありがとうございます。
土居委員、お願いいたします。
〔土居委員〕福祉医療機構についてですけれども、確かに今の病院経営をめぐる環境というのは物価上昇、特に仕入税額控除が使えないという形で、診療報酬が非課税品目になっているということも影響しているということではないかと思います。その観点で、金融的に支援するということは、妥当ではないかと思います。
加えて、福祉医療機構は比較的その融資先についての経営情報を的確に入手していらっしゃるとは承知しておりまして、支援をするということとともに、医療機関の経営情報の見える化を進めていただくということも大事だと思います。ただでさえ医療機関というのは、保険、医療で税や保険料を財源とした診療報酬によって収入が支えられているということになりますから、ほとんどパブリックマネーで収入を得ているということなわけですから、もちろん融資先としての関係として、福祉医療機構が情報を入手するというのは当然といえば当然ですけれども、それにとどまらず、国民に対しても、しっかり経営情報について、さらなる見える化を進めていただくと。例えば、各種の医療従事者の平均賃金とかそういったものを、今は任意の開示となっていますが、これを義務化するというようなことだとか、そういうところもこの取組に併せて、しっかり環境整備をしていただきたいというふうに思います。
それとともに、診療報酬が、結局のところキャピタルコストをきちんと手当てできているのかという問題が、特に昨今の病院にまつわるコスト構造に影響を与えていると思います。確かに資本集約度が高い病院については、必ずしも十分に診療報酬上、手当てされてないという面がある反面、資本集約度の低い診療所は、むしろ逆に、過剰に手当てされているということにもなっているかもしれないということを考えますと、やはり診療報酬でしっかり資本集約度の高い医療機関に手当てをしつつ、メリハリをつけて、必ずしも物価上昇の影響を大きくは受けていない診療所にまで手厚く診療報酬を加算することがないような形で、診療報酬をメリハリづけしていただくことを通じて、医療費全体の増大を防ぎつつ、資本集約度の高い医療機関が、こういう形で福祉医療機構から融資を受けて、そしてそれを将来の診療報酬が多くの返済原資になるであろうということですので、返済原資をきちんと確保して、償還確実性を担保するというような形につなげていただきたいというふうに思います。私からは以上です。
〔翁分科会長〕重要なご指摘ありがとうございました。
それでは、今のご意見やご質問につきまして、ご回答をお願いいたします。
〔鳩間計画官〕岡田委員、工藤委員、土居委員、貴重なご意見、ご質問ありがとうございました。
工藤委員、土居委員からは、ご意見ということで賜りまして、これからの福祉医療機構ですとか、あるいは、制度所管官庁であります厚生労働省との意見交換、対話の中でしっかり生かさせていただきます。ありがとうございます。
岡田委員からのご質問でございます。物価高騰というのはどういうところを言っているのかですとか、何か基準があるのかというご質問であったかと思います。
土居委員の方からコスト構造について随分お話しいただいたのですけれども、物価という点でおきますと、令和2年を基準とすると、足元ですと全体としては1割程度上がっておりまして、食料のほうが、それよりも大きく上がっているところではあるのですが、光熱費ですとか水道も、当時に比べて2割程度は上がっておるところであります。
基準として何か特定のものを設けているところではありませんけれども、物価の高止まりに加えまして、先ほど申し上げました医療需要の変化、診療控えとかですね、そういったところも含めて、医療機関の経営状況が厳しくなっているところをもって、経済変動の事情であったり、やむを得ない事情、と考えまして、このようにお諮りさせていただいている次第であります。以上になります。よろしくお願いいたします。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。岡田委員、よろしいでしょうか。
〔岡田委員〕ありがとうございます。
〔翁分科会長〕それでは、追加的にご質問ございませんようですので、本件につきましては、この辺りで質疑については終了したいと思いますが、本議案については、様々な必要な対応というご意見もありましたので、それを反映した上で、この議案につきまして、ご異議ございませんでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
〔翁分科会長〕ありがとうございます。それでは、本分科会としては了承とさせていただきますし、皆様のご意見をぜひ生かして対応していただければと思っております。
続きまして、「大学ファンドの状況報告」につきまして、ご審議をいただきます。内閣府、文部科学省、科学技術振興機構の方々が入室されますので、しばらくお待ちください。
(大学ファンド関係者着席)
〔翁分科会長〕それでは、文部科学省、科学技術振興機構よりご説明をお願いいたします。
〔文部科学省俵研究振興局大学研究基盤整備課長〕ありがとうございます。文部科学省の大学研究基盤整備課の俵です。今日は大学ファンドに関して、JSTの喜田理事と国際研究開発政策課の豊田課長と私の3人で、状況の報告をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
ページをめくっていただいて、最初、大学ファンドの制度設計について、私から説明したいと思います。
右側にスキームを書いています。政府から科学技術振興機構(JST)に資金を拠出して、大学ファンドを置いて、そこで運用してもらって、その上で研究大学に支援をする、そういうスキームになっています。その資金拠出に関しては、8.9兆円を財政投融資、1.1兆円を政府出資という形で拠出いただいています。
左側に運用の仕組みを書いています。支出目標率3%に物価上昇率を加えたものを目標として、JSTに運用いただいています。
その下の赤いところの黒丸に書いていますが、65対35のレファレンス・ポートフォリオの標準偏差の範囲内で、長期、国際分散投資を徹底して行っていただいています。これは少なくとも5年に1回見直しの検討をするということになっていますので、来年度に見直しの検討を行うとしています。
その下には大学支援の仕組みがあります。これは、大学に対して、事業成長3%と、独自基金の造成・運用、これを目指すこととして支援をしています。具体的には黒丸に書いていますが、大学の外部資金の獲得額に応じた支援をしています。
その下の黒丸に、大学からJSTに対する資金の拠出を慫慂するということと、独自基金の造成を促進するということを、併せて取り組んでもらうとしています。
※印のところに書いていますが、国際卓越研究大学に対する支援とは別に、博士課程学生への支援も行っています。これは200億円ぐらいの規模で行うこととしています。
最後、右側に「償還確実性」について書いています。財政融資資金をきちんと返すということを念頭に置きながら取り組んでいます。赤字のところに書いてありますが、リスク管理・モニタリングに万全を期して行っていくということで、もし、一定の事柄が起こったら、JSTから報告をいただきながら、その対応をともに考えて、専門家の意見を聞きながら行うというふうにしています。
続いて、現在の資金運用の状況について、喜田理事からご説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。
〔科学技術振興機構喜田運用業務担当理事〕本日はお時間ありがとうございます。JST運用業務担当理事の喜田でございます。
それでは3ページから、まず、実績に移る前に特徴ということで、7月頭に公表しました業務概況書にも明記してあるペーパーを抜粋してご説明申し上げます。
左上の方針や支出については、先ほどの俵課長の説明と重複しますので割愛いたします。構造としては、許容リスクの範囲内でのリターンを最大化する運用ということで、レファレンス・ポートフォリオがグローバル株式65%、グローバル債券35%でありますが、このポートフォリオが持っているリスクの範囲で、なるべくリターンを上げる、最適化するのが目標でございます。
とはいえ、左下にありますとおりファンドの財務構造は、政府出資が1兆1,000億円、借入が8兆9,000億円ですので、立ち上げ期のリスクコントロールとしましては、償還確実性を確保するために、直ちに許容リスクと同水準のリスクを取る、フルスイングするのではなく、レファレンス・ポートフォリオと比較して保守的なポートフォリオによる運用を行っています。
ただ、保守的にと申し上げますが、レファレンス・ポートフォリオそのものがかなりリスクの高いポートフォリオでありまして、相対的には、保守的と言いながら、今のポートフォリオでもそれなりのリスクは取っているということはお伝えしたいと思います。段階的に、資本のバッファをためながらというのを意識してやっております。
4ページへ移っていただきまして、運用実績の概要でございます。
上にもありますとおり、当期純利益、実現利益で、コスト控除後で2,560億円ということでございます。それからトータルリターンは1.7%、金額にしまして1,882億円です。総じて昨年度は、押しなべて株は堅調でしたし、円安傾向は続いておったのですが、2月頭にトランプ大統領就任後の関税政策の混乱ということで、2月、3月と、ある程度パフォーマンスが失速し、1.7%を確保したということでございます。
資産構成割合を見ていただきますと、先ほどのレファレンス・ポートフォリオでは、グローバル株式の割合は65%ですが、令和6年度末の資産構成割合では債券が65%、それから株式及びオルタナティブで34%となっており、レファレンス・ポートフォリオと比べるとほぼ逆の状況ではあります。リスクのバランスを意識しながらやっているということが特徴でございます。
5ページですが、リスク量の推移を右上に載せております。許容リスクからどのぐらい取っているかというと、おおむね半分です。過度には取らずということでもありますし、2月以降は株式の価格が落ちまして、円高になりましたので、リスクもその分落ちたということでありますが、ほぼ半分強を取っているというのが今の状況です。左下にありますとおり、結果としての累積収益は、これは2022年3月から3年間で1兆1,308億円となっており、現状のところでは10兆円強の元本に対して年率4%弱で回っているということでございます。右側に、年度末の運用資産額の推移を載せております。
ということで、ある程度リスクを意識しながら、リターンも出すというところのバランスに、気をつけながら運用を行っております。私からのご説明は以上です。
〔文部科学省俵研究振興局大学研究基盤整備課長〕続いて6ページ、国際卓越研究大学の公募・選定の状況について、改めて私から報告させていただきます。
現状としては、第2期の公募に入っていまして、第1期では東北大学を認定しました。第2期のスケジュールとしては、昨年の12月に公募を開始し、5月に公募を締め切らせていただきました。
今回、8大学から申請をいただいて、現状としては審査を行っている段階であります。今年度中に助成を開始できるように、この審査を進めて取り組みたいと考えています。
次の7ページに、8大学の一覧を掲載させていただいています。第1期のときに申請をいただいた大学が8大学、今回も申請していただいていて、第1期ではそのほかに東北大学と東京理科大学がありましたが、今回はこの8大学に申請いただきました。
続いて8ページになりますが、今回、緊急的にということでありますけれども、大学ファンドの運用益を活用させていただいて、海外研究者の戦略的な招聘を進めようと考えています。この内容については、豊田課長から説明したいと思います。よろしくお願いします。
〔文部科学省豊田科学技術・学術政策局国際研究開発政策課長〕文部科学省国際研究開発政策課長の豊田です。よろしくお願いいたします。私からは海外研究者の受入れについて、ご説明いたします。
このページ、J-RISE Initiativeというのが6月に内閣府CSTIから発表されています。報道等でもございますけれども、アメリカのトランプ政権になってアカデミアへの影響が非常に大きくなっていて、アメリカ国外への研究者の流出、あるいはアメリカを目指す研究者の滞留みたいなところがトレンドとして出てきております。
これに対応するためのプログラム、施策としてJ-RISE Initiativeというものをつくっておりまして、赤字のところですが、海外在住の日本人を含めて優秀な海外研究者等の戦略的な招聘ということで、可能な限り早期に拡大することが重要だと。1,000億円の事業規模ということで、既存予算をフル活用しながらやっていこうということでございまして、これはヨーロッパを中心に、例えばEUであれば複数年で800億円ですが、フランスはそれに加えて160億円、イギリスは100億円みたいな形で、国が前に乗り出していろいろ、その辺りの受入施策をつくっていっているという状況でございます。
イニシアチブの主な方向性として、先ほどからも出ていますが、国際卓越研究大学制度はずっと進めているものでございますので、まさにそこの海外からの頭脳循環みたいなところも、もともと構想で進めているところでございますので、こういった既存予算をフル活用していくこととともに、2つ目のポツのところが今回の新規施策でございますけれども、緊急的に大学ファンドの活用を行うということでございます。
この緊急的にという意味ですけれども、やはり流動性が今高まっている中で、通常の予算プロセス、概算要求を夏にして、年末にかけて予算を決めてというプロセスですと、どうしても支援の開始が年度末だったり、あるいは年度をまたいだりとか、そういうことになってしまいますので、迅速性をかなり重視して、あとは事業の趣旨も重視して、今回若手研究者を含めて、そういう受入施策をつくってございます。
次のページでございますが、プログラムをつくるに当たって、基本方針の改訂をしてございます。私が今申し上げたようなことを支援するために追加をしているということで、先ほどからも「償還確実性」という言葉はよく出ていますけれども、下から3行目ぐらいからですか、大学ファンドの運用益の状況や財務の健全性確保を考慮して、既存の施策の国際卓越研究大学とか、あるいは博士課程学生への別途の支援、そこに影響を及ぼさない範囲で3年間の支援を行うということにしてございます。
次のページをお願いします。
具体的には、公募を今開始しておりまして、9月中ぐらいに大学を採択する予定で動いてございます。
目的としては、優秀な海外研究者・大学院生を世界基準の処遇で受け入れる、ひいては我が国の研究力の強化を図っていくということで、事業規模・期間と書いてございますが、3年間で総額33億円ということで、迅速性を考えて大学ファンドを活用させていただいているということでございます。
支援内容については、雇用経費とか研究費とか立ち上げ経費みたいなところを想定してございまして、評価の観点のところに大体書いているのですけれども、全てを支援するわけではなくて、やはり国際卓越研究大学とか、あるいは地域中核、特色ある大学みたいなところで施策を打っていますので、それを踏まえて海外から優秀な研究者を受け入れて、それを定着させて、将来にわたって活躍してもらうような、そういう環境を提供できる大学、あるいは、すぐにでも提供しようとしている大学、そういうポテンシャルのある大学を対象に公募をしております。
その意味で、支援対象のところに国際卓越研究大学に準ずる日本トップレベルの大学を公募するということで進めてございます。
私からは以上でございます。
〔文部科学省俵研究振興局大学研究基盤整備課長〕最後に、大学ファンドからの助成の実績、あと今年度の方針について報告したいと思います。
11ページは昨年度の助成実績をまとめたものです。上のところに、令和5年度末のバッファ681億円、それと、令和5年度の当期純利益1,167億円があります。これに3分の1を掛けたものが助成上限になります。これらのうち、昨年度は東北大学への助成154億円と、先ほど少しお話をした、博士課程学生に対する支援167億円、もともと200億円程度と考えていましたが、令和6年度は167億円助成をさせていただいたという状況です。
その結果、令和6年度末のバッファとしては1,527億円があるというのが令和6年度末までの状況です。
続いて令和7年度の状況です。令和7年度は、先ほど報告いただきましたが、令和6年度の当期純利益として2,560億円を出していただいていますので、この2,560億円と先ほどのバッファの1,527億円を足したものが助成財源になり、それに3分の1を掛けた1,362億円が最大の助成総額になります。この2,560億円については、助成財源として活用できるかどうかを財務大臣と協議をした上で、確定するということになっています。
これらの助成財源を踏まえて、今年度の助成額を決定していくということになりますが、実際には、関係省庁との協議を経て、具体的な額を決定していくということになります。先ほどの公募の状況を踏まえながら、今年度の助成額を決定していくということになります。
今後も運用益の確保に向けて、JSTと一緒に取組を行って、運用益の範囲内で支援できるように進めていきたいと考えています。
以上になります。よろしくお願いします。
〔翁分科会長〕ご説明ありがとうございました。
それでは、ただいまのご説明を踏まえまして、委員の皆様からご意見やご質問をお願いいたします。
有吉委員、丸田委員、お願いいたします。
〔有吉委員〕有吉でございます。ご説明どうもありがとうございます。
私からは、運用の結果の関係で1点と、それから運用収益の使い方の関係で1点、併せて2点質問ないしコメントをさせていただきたいと思います。
まず、運用の結果の関係で、4ページの資料の中でオルタナティブ投資の割合が8.2%で9,065億円という直近のデータをお示しいただいているところでありますが、このオルタナティブ投資の中で、国内のベンチャー投資がどれぐらい含まれているのかということをご質問させていただきたいと思います。
その質問の背景というか意図としましては、この分科会の場にはそぐわないコメントであることは承知しておりますし、また、償還可能性という観点と必ずしも相入れない面があることは理解しているところでございますが、昨今、公的な基金、公的なファンドから成長資金の供給を行うことに対する期待も非常に高まっていると理解をしております。そういった中で、実際に大学ファンドからどれぐらい国内への成長資金の供給がなされているのかということと、また、今のような考え方についてどういうお考えで大学ファンドとして運用に取り組まれているのかということについて、お聞きしたいというのが1つ目であります。
それから2点目、運用収益の使い方の関係で、資料だと8ページのJ-RISE Initiativeの関係で1点ご質問させていただきたいと思います。このJ-RISE Initiativeというお取組自体については、すばらしいものだと思いますし、反対するものではないわけですが、もともと大学ファンドの運用収益の使い方との関係で、こういった機動的な使い方を想定したものだったのかどうかが、改めて考えてみるとよく分からないと思ったところであります。今回のJ-RISE Initiativeのお取組が、アメリカの状況なども踏まえてイレギュラーな状況において、特別な対応ということで進めることになったということなのか、それとも、今後も折を見て、運用収益の余剰の状況とか、それから本来の大学への支援の金額との兼ね合いなどを見て、余剰部分については、ある程度柔軟に、大学とか研究に関連するものについては、こういった何かサイドポケット的な使い方をしていこうという取組の一環なのか。今後、本来の使い方というと若干語弊があるかもしれませんが、もともとの目的以外の使い方で、どうやって運用収益を使っていくのかということについて、J-RISE Initiativeという今回の取組を進めることを1つの例として、どのようなお考えを持っているのかを伺いたいというのが2点目のご質問になります。
よろしくお願いいたします。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
後でまとめてご回答いただくようにいたします。
丸田委員、次、お願いいたします。
〔丸田委員〕丸田でございます。どうもご説明ありがとうございました。
私からも質問とコメントを何点かさせていただければと思います。
まず、先ほどの4ページ目のところで、最近マーケットのボラティリティーがかなり大きくなっている中で、収益率としては昨年よりやや落ちているかと思います。その要因として株式のポートフォリオのレファレンス・ポートフォリオとの差異の影響もある中で、収益率に一喜一憂するわけでは全くないのですけれども、昨今、為替や金利等含むマクロ経済の状況が変動していますので、例えば日本とグローバルの比率とか、そういったところも含めて、柔軟にポートフォリオを見直すような、機動的な運用がされているのでしょうか、恐らくされていると思うのですが、その内容を教えていただきたいというのがまず1点でございます。
2点目は、今の有吉先生のコメントに少し近い部分もありますが、J-RISEの取組は非常にすばらしい取組だと思いますが、一方で、他の国との研究者の獲得競争が非常に激しい状況かと推察します。特に優秀な方については厳しいと思います。
その意味では、お金の使い方としまして、やはり大学ファンドのもともとの趣旨に鑑み、国際卓越研究大学のような非常にしっかりしたところに、かなり絞り込んで集中的にお金を投資するのが重要ではないかと思います。その意味では、J-RISEの、海外の優秀な研究者を誘致する取組につきましても、広くばらまくのではなくて、特定のしっかりとした取組に対して質をしっかり担保するような形で、逆にそこには集中的に資金を投入するような形での運用が、適切と考えます。
3点目は、12ページの計算式です。ルールとしましては、年間助成予算3,000億円の2倍のバッファを徐々に貯められていっているというところと、一方でバッファが貯まるまでは、複雑な計算式に従って今年使える金額が決まるという仕組みになっておりますので、バッファがきちんと貯まるまでは、なかなか使える資金が一部安定しない状況ということもあるかと思います。その中で、今後どの程度の期間をかけて、このバッファを満額まで貯め、安定した支援ができるようになるかという計画に応じて、国際卓越研究大学の選定であるとか、そういった事業の進捗等をしっかり管理していくということが非常に重要かと思いますが、そこについては何か、中長期で計画を持たれた上で、この運用計画とその資金の支出というのが、しっかり計画・管理されているのかどうかという点を教えていただければと思います。
私からは以上でございます。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
工藤委員、よろしくお願いいたします。
〔工藤委員〕ご説明ありがとうございました。
現時点において、近年の相場環境も背景にはございますけれども、大学ファンドによる資金運用が大変順調に行われてきているということをよく理解できまして、その純利益を計上しているということは、本当に率直に評価をしております。
一方で、日本やEUが米国と関税について合意はしたものの、現政権のこれまでの過程や今回の合意に至る過程なども見ておりますと、やはりグローバル経済の不透明性というのは全く変わっていないと思っておりまして、非常に不透明性が高まっている時代だと、言うまでもないことですが、思っております。
また、中東情勢やロシア・ウクライナ紛争を始めた地政学リスクというのも、今までとはまた違う形で発現もしておりまして、予断を許さない状況だと思います。
もちろん大学ファンド立ち上げ時において、ポートフォリオ全体の中で長期的に安定して、リスクコントロールするような体制整備を行っていることと理解しておりますし、収益もしっかり上げていただいている、プロの方がやっていただいていると理解しておりますけれども、先行きが見通しがたいところでございますので、突発的なリスクにも十分に注意を向けながら、リスクが顕在化した際に、機動的に運用を組み替え、着実に運用成果を上げられるように、リスクシナリオについては、不断の見直しを行っていただきたいということを、皆さんやってくださっているとは思うのですけれども、改めてお願いしたいと思います。
もう1点質問がございまして、私が聞き落としたかもしれないのですけれども、8ページにJ-RISE Initiative、政府全体で1,000億円の事業規模、これは3年ということですか、9ページには、当面の間は200億円規模というのが、国際卓越研究大学法、この大学ファンドから出るものということでございまして、その次の10ページには、令和7年度から3年間で総額33億円と書いてありまして、自明なのかもしれないですけれども、これは33億円を、おおよそ6大学に今の200億円の資金の中では、3年間配り、また、様子を見て、そこを変えていくという意味でございましたでしょうか。
後ほど、ご回答よろしくお願いいたします。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。そのほかございませんでしょうか。
それでは、回答をお願いいたします。
〔科学技術振興機構喜田運用業務担当理事〕ご質問ありがとうございます。
まず、運用面のご質問について、喜田の方からご回答申し上げます。
有吉委員からのご質問で、日本へのエクスポージャーについて、ベンチャーのご質問がありましたのでこれはプライベート・エクイティということかと思いますが、今残高が、プライベート・エクイティ全体で、グローバルで5,296億円あります。そのうち国内は145億円ということで、残高からするとかなり小さいなとお感じになるかもしれません。これは大体3%ぐらいのウエイトですが、世界の市場に占める日本のPEの割合そのものが1%台でありまして、少しオーバーウェイトしている状況でございます。
それから、この145億円のうち、ベンチャーが幾らかは集計してございませんので今、数字は手元にございませんが、2つのものを意識してやっております。
1つはベンチャーキャピタルそのものということで、企業の成長を収益化する。これはひとえにリターンのためということでございます。これはいわゆる通常のリターンのためということであります。
それからもう一つは、ファンドのマネジャーそのものが新興系の人たちも取り入れるということで、これは長い目で見て新興の方々のマネジャーに運用をお願いすることによって、先々その方々が、成熟したときのリレーションを維持するためという、この2つの観点から取っております。
ということで、おしなべて資産運用のためということに特化してやっておりますが、現状、日本への投資、プライベート・エクイティに占める投資というのは、今ご説明申し上げたとおりです。
それから、丸田委員からご説明ありました柔軟な運用が可能かということですが、設計そのものは非常に柔軟にできていまして、レファレンス・ポートフォリオどおりやりなさいではなくて、レファレンス・ポートフォリオが持っているリスクの範囲内で運用を最適化しなさいということです。
プロセスとしましては、まず我々の持つチーフエコノミストによる10年間の経済の見通しに基づいて基本ポートフォリオを作成します。基本ポートフォリオ構築にむけて、立ち上げ期は少しリスクを抑え目にスタートさせながら、毎年の移行計画を作成し、計画の毎年度末の想定も参照しながら資産配分方針を作成、更にそれを月次に落とし込んだうえ、マクロ経済の見通し及び市場の見通しを勘案しながら日々の運用をしています。また、資産配分方針において各資産のオーバーウェイト及びアンダーウェイト、自律的な許容乖離幅を設定して、その範囲で機動的に運用をするということで、そもそも非常に危機的な状況とかリスクに関しては、なるべく耐性をつけるように、あるいはどのようなシナリオでも、大きく毀損しないようにポートフォリオをつくっているつもりではありまして、柔軟な運用もできるようにしています。
それから工藤委員からのコメントということで、突発リスクにも備えるようにということで、丸田委員からのご質問にも関連する部分、我々もそこを留意してまいります。
基本的には、レファレンス・ポートフォリオとの比較という意味では、株式の割合をかなり落としているということで、最初から売っているという状況だと思っています。ただ、ここからの不透明性というのは、大分関税も落ち着いてきたとはいえ、ご指摘のとおり、まだ高まっております。我々2022年の3月、つまりロシア・ウクライナの翌月から実は運用を始めているのですが、やはり、そこからの相関とかも崩れていますので、その辺りの市場の動向も意識しながら、ただ長期運用がメインでありますので、短期の機動的な運用と長期的な視点というのを併せてやっていきたいと思います。
私からは以上です。
〔文部科学省俵研究振興局大学研究基盤整備課長〕ありがとうございます。先ほど、J-RISE Initiativeに関して大学ファンドの活用の方針に関するご質問があったかと思います。
これは先ほど説明にもありましたが、緊急的な措置として活用させていただこうということで取り組んでいます。これはあくまで国際卓越研究大学に対する支援と、もともと想定していた博士課程学生の支援、これに影響を及ぼさない範囲で取り組もうということで、今回、活用させていただこうとしたものになります。
予算額に関して最後にご質問あったかと思います。もともと博士課程学生の支援は200億円程度で想定しておりました。それが昨年度は167億円の支援であったということもあって、33億円をまずは活用して、このJ-RISE Initiativeの、特に海外からの招聘ということに活用させていただこうとしたものです。
具体的にJ-RISE Initiativeの選定については、幅広くというよりも、より集中的にすべきではないかというご意見もありました。そのことに関して豊田課長から説明したいと思います。
〔文部科学省豊田科学技術・学術政策局国際研究開発政策課長〕丸田先生からの、広くばらまくのではなくて、絞り込んで集中してということは、我々もまさにそのとおりに考えておりまして、質を担保していきたいと思っております。10ページ目に「国際卓越研究大学に準ずる日本トップレベルの大学」と書かせていただいているのは、まさにそういう趣旨から書いているものでございます。
〔文部科学省俵研究振興局大学研究基盤整備課長〕ありがとうございます。
最後に、助成財源に関して、ページ数で言いますと12ページでしょうか、助成の考え方に関して、バッファの規模に対して3分の1を掛けて助成をすることになっているなかで、そもそも助成財源をどのように確保していくのか、目標があるのかというご質問があったかと思います。
毎年度の実現益に関しては、令和8年度末までのできるだけ早期に、年度の実現益を3,000億に達するようにという目標を持って取り組んでいただいています。これが昨年度は2,560億円出していただいているので、大分近づいてきているという状況があります。こういう形で目標をつくりながら、助成財源をしっかり確保していくという方針で取り組んでいるところであります。
以上です。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
そのほかにございますか。よろしいでしょうか。
これは、先ほど丸田委員がご質問されたのは、バッファをためていくところと大学の選定とか出資額とか、そこのマネジメントのこともおっしゃってくださっていた。
〔丸田委員〕そうですね、そこを含めてもということでお願いします。
〔翁分科会長〕ということでございますね。
〔文部科学省俵研究振興局大学研究基盤整備課長〕ありがとうございます。
大学の選定に関しては今、第2期の公募に入っていまして、国際卓越研究大学は数校程度としています。ただ、これは財源ありきではなくて、きちんと、国際卓越にふさわしい大学を選定するとしていますので、そういう方針で、まず、選定をしていきたいと考えています。
大学ファンドの第1目標というのは、国際卓越研究大学を選定し、集中的な支援を行うことで、研究力を高めていくということにありますので、その方針に従った選定と、それを目指した運用規模になるような取組をしていくという方針で進めているところです。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
それでは、この辺りで質疑については、終了したいと思います。引き続きよろしくご対応いただきたいと思います。
内閣府、文部科学省、科学技術振興機構の皆様には、どうもありがとうございました。ここでご退席をお願いいたします。ありがとうございました。
(大学ファンド関係者退席)
〔翁分科会長〕それでは、続きまして、「令和6年度財政融資資金運用報告書」、「令和7年度政策コスト分析」、「財務局等を通じた地域課題解決支援」について、西川財政投融資総括課長、鈴木資金企画室長、鳩間計画官よりご説明をお願いいたします。
〔西川財政投融資総括課長〕財政投融資総括課長の西川でございます。私からは、令和6年度財政融資資金運用報告書についてご説明させていただきます。
この報告書は、財政融資資金法第12条におきまして、毎年度作成し、年度経過後4か月以内に審議会に提出しなければならないと定められていることに対応するものでございます。資料は2-1と2-2の2つございますが、2-2が報告書本体になります。本日は、報告書のポイントをまとめた資料2-1に沿ってご説明をさせていただきます。
それでは、資料2-1の2ページをご覧ください。
財政投融資計画の執行状況について、年度ごとの推移をグラフで表しております。令和6年度の運用額は一番右端の棒グラフですが、財投計画全体の運用額はオレンジ色の10.4兆円、このうち財政融資に限りますと、水色の8兆円となっております。
執行率は折れ線グラフで表しておりますが、財投計画全体で56.7%、財政融資資金では52.5%となっております。ここ数年の執行率はおおむね5割から6割程度で推移しておりますが、これはコロナ前、令和元年度以前の水準と比べますと若干低い水準となっております。
その要因につきましては、次の資料3ページをご覧ください。
主な機関の運用状況の概要としまして、令和6年度の財投計画の年度内運用額が大きい順に10機関を掲載しております。
資料の上から2つ目の日本政策金融公庫をご覧ください。令和6年度の計画額約4兆円に対しまして、その右側執行率が37.8%、さらにその右側ですが、運用残額が約2.5兆円に上っております。全体の運用残額は、一番下の合計欄に記載のとおり、約4.8兆円ですので、このうち約半分が、日本政策金融公庫が占めていることになります。
この運用残の要因としましては、物価高等の影響を踏まえ、中小事業者等の資金調達に支障を来すことのないよう十分な融資枠を確保しておりましたが、実際には資金需要に落ち着きが見られたことによるものとなっております。
ただ、右側の(参考)に記載しておりますとおり、令和5年度の運用残額が約5.3兆円でしたので、こちらと比較しますと大きく減少しておりまして、今後とも適正な計画額の精査を行ってまいりたいと考えております。
次の4ページをご覧ください。
財政投融資計画の残高の推移になります。令和6年度末時点の残高は、一番右側、142.9兆円となっております。財投改革初年度の平成13年度以降、大きなトレンドとしては減少傾向が続いております。令和2年度に新型コロナ対応により一時的に残高が増加しましたが、その後の計画額の縮小に伴いまして、再び減少傾向となっております。
次の資料5ページをご覧ください。
財政融資資金の短期運用実績についてですが、資料中ほどの合計欄、令和6年度中の短期運用額は143兆円、年度末時点の運用残高は、1つ飛ばして右側に記載のございます、5兆円余りとなっております。残高の内訳としましては、交付税特会が3.8兆円、年金特会が1.4兆円となっております。この表中の運用額と回収額の金額が非常に大きくなっておりますが、これは交付税特会への貸付・回収は数日程度の期間、また、年金特会への貸付・回収は1か月程度の期間で繰り返されておりまして、運用実績としては累積で計上されるため、このような規模となっております。
資料下段の左側のグラフをご覧ください。
令和6年度末の財政融資資金の資産(貸付金)の現在高は123.6兆円となっております。主な貸付先としては、地方公共団体が39.2兆円、日本政策金融公庫が14兆円、科学技術振興機構が8.9兆円となっております。
右側のグラフは財投債と預託金の残高を示しております。令和6年度末における財投債の発行残高は91.4兆円、預託金の残高は34.3兆円となっております。預託金残高が前年と比較して減少しておりますけれども、これは年金特会の預託金が払い戻されたことが主な要因となります。
次の6ページをご覧ください。
令和6年度における財政融資資金勘定の損益についてですが、貸借対照表の赤枠をご覧いただきますと、391億円の損失となりました。令和3年度決算から4年連続で損失を計上しております。
この損失計上についてご説明申し上げますと、従前は、過去の比較的高い金利の長期貸付が残っておりましたことから、利益を計上しておりましたが、近年は、この長期貸付の残高の減少に伴いまして、利益が減少しております。こうした中、令和3年度以降におきましては、運用利回りと調達コストの金利差が逆転したことにより損失が出る結果となっております。
この金利差が逆転した主な要因としましては、財投改革後の平成13年度から平成18年度にかけまして、当時は資産よりも負債のほうが短いというデュレーションギャップがございまして、それを解消するため20年債の財投債を積極的に発行しておりました。当時、20年債の利率は2%前後でしたが、金利負担の影響によりまして、調達コストが下げ止まっているという状況にあります。しかしながら、平成18年度に発行した20年債も、今後数年で償還を迎えることから、その影響も解消してくるものと見込んでおります。
なお、391億円の本年度損失は翌年度に繰越しまして、金利変動準備金から補足して処理することとなります。また、令和6年度末における金利変動準備金は1兆170億円となっております。
次に、7ページをお願いいたします。
令和6年度末の実績を基に財政融資資金勘定の将来推計を行ったものになります。左側、将来剰余金の推計をご覧いただきますと、令和7年度以降も当面は単年度損失が生じる可能性があるとの分析になっております。ただ、それも次第に解消されるものと見込んでおりまして、右側をご覧いただきますと、ストックベースの繰越利益は安定してプラスが維持されるとのシミュレーションになっております。
資料8ページをご覧ください。
最後に、財政投融資の使途別分類についてですけれども、右側の円グラフをご覧ください。令和6年度の運用状況を使途別に見ますと、総額10兆3,655億円のうち、社会資本が最も大きく約3.4兆円、続いて、海外投融資等、産業・イノベーションが主な分野となっております。
左側に年度ごとの推移をお示ししておりますが、令和5年度と比較しまして、海外投融資等の割合が大きく減少しておりますが、これは、JBICに対する運用額の減少が主な要因となっております。
一方で、中小零細企業の割合が大きく増加しておりますけれども、これは日本政策金融公庫の国民・中小企業者向け業務の運用額の増加が要因となっております。
次ページ以降は参考資料となりますので、説明は割愛させていただきます。
令和6年度財政融資資金運用報告についての説明は以上となります。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
続きまして、鈴木資金企画室長よりご説明をお願いいたします。
〔鈴木資金企画室長〕資金企画室長の鈴木と申します。よろしくお願いいたします。私から、令和7年度財政投融資対象事業に関する政策コスト分析について説明させていただきます。
資料2-3の1ページ目をご覧ください。
下段の表に主な機関の政策コストをグループ分けして表示しております。
まずは赤枠Aとしてくくられた、国際協力機構、高速道路機構、日本政策金融公庫、こちらが上段枠の説明にもありますように、出資金の機会費用を賄うほどの利益が見込めないため、それぞれ3.1兆円、2.9兆円、1.7兆円ほどの政策コストが生じる試算結果となっております。
次に、緑枠Bの鉄運機構ですが、こちらは工事費に投入される補助金を賄うほどの利益が見込めないということで、5,500億円ほどの政策コストが生じる試算結果となっております。
一方、青枠Cの政策投資銀行は産業の成長などを支援することで、出資金の機会費用を上回る利益が見込める試算結果となりまして、9,600億円ほどのマイナスの政策コストとなっております。
また、政策コスト額と併せて、財投対象事業の成果や社会・経済的便益につきまして要約したものを表の右側に示しております。
令和7年度の政策コストは25機関合計で8.5兆円となりますが、直近5か年の推移を示したものが2ページ目となります。
令和3年度から令和4年度にかけまして、日本政策金融公庫のコロナ関連事業に対する国からの手当てが大幅な縮小となったことを受けまして、前年度比マイナス2.0兆円となっておりますが、以降、金利の上昇とともに政策コストも増加するという傾向となっております。足元の金利はさらに上昇しておりまして、政策コストも増加する可能性がございますので、このような状況にあることを本分析からのメッセージとして各機関、各省庁が受け止めていただいて、令和8年度要求に向けて現行の事業スキームとまた向き合う機会に繋がればと思っておるところでございます。
続きまして、3ページ目で、昨年度分析との比較について説明させていただきます。
黄色の経年比較分析に主な機関の増減要因を示しております。
まず、国際協力機構ですが、途上国への開発資金等を供給する際、調達よりも低い金利、いわゆる逆ざやで貸付を行うスキームとなっておりますので、令和7年度の新たな融資に係る分が政策コストを押し上げることになります。これで6,700億円ほどコストが増加という形になります。
続きまして、日本政策金融公庫の国民一般向け業務勘定ですが、こちらはコロナ融資などの影響が反映された直近の決算の状況を踏まえまして、引当金繰入を増加させたことで、政策コストも1,300億円ほど増加しております。
最後に、住宅金融支援機構ですが、金利上昇基調の下で、固定金利の住宅ローン(フラット35)の利用が減少しておりまして、その影響を受けて、政策コストが1,000億円ほど増加しております。
また、感応度分析としまして、青枠の部分に金利が1%上昇した場合の例を示しておりますが、高速道路機構、都市再生機構ともに政策コストは増加、さらに赤枠の部分に、事業収入が1%減少した場合として、都市再生機構の例を示しておりますが、こちらも政策コストは増加するという試算結果となっております。
こういった分析結果の活用につきまして、4ページ目で説明させていただきます。
左側の青枠、具体的な活用例をご覧ください。
1つ目としまして、まずは経年比較分析で将来の財務状況に影響を与える項目をしっかり確認する。2つ目としまして、感応度分析で財投機関の事業に潜在するリスクを把握していく。3つ目としまして、基礎資料となる長期資金収支を見ながら収入・支出の推移を捉えまして、財投への償還が確実に行われるかを確認することと併せまして、右側の黄色枠にあるようなマチュリティラダーを組みまして、将来の資金調達の要因となったり、金利リスクにさらされるような負債ギャップが生じないよう、例えば財政融資資金から借り入れる際の融通条件を考えるといった形で、この分析を活用していくことができるのではないかと考えております。
以下、6ページ以降に参考資料として政策コスト分析の枠組みや作業内容、機関別公表資料の改善点や、また、実際の機関別の公表資料も資料2-4として添付しておりますが、説明は割愛させていただきます。
私からの説明は以上です。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
続きまして、鳩間計画官よりご説明をお願いいたします。
〔鳩間計画官〕ありがとうございます。資料2-5、財務局等を通じた地域課題解決支援について、ご説明申し上げます。
1ページ目をご覧ください。
各財務局等が実地監査や財務状況ヒアリングなどの機会を通じて把握した地方公共団体の課題について、各財務局等がセミナーを開催する際に、本省理財局が各財務局等に対して支援を行う「地域課題解決よろず支援」という取組を昨年4月より開始しております。具体的な取組、左下の枠内にございますが、例えばセミナーのデータベースの作成ですとか、講師の斡旋・新規開拓、あるいは、セミナーの共催に向けた支援ということで、積極的に各財務局等の取組を支援しているところでございます。
2ページ目をご覧ください。
「地域課題解決よろず支援」のセミナーの本年の開催実績になります。2事例ご紹介させていただきます。
本年1月でございますが、東北財務局との共催によりまして、空き家・空き店舗の利活用などをテーマにいたしました地域課題解決サポートセミナーを、下でございますが、本年6月に、四国財務局との共催によりまして、地方にある公立病院の経営改善をテーマにしました地方公立病院経営改善セミナーを開催いたしました。こちらにつきましては、それぞれ地域の声を反映いたしまして、理財局より講師のご紹介をさせていただいて実現に至った事例であります。
今後とも、セミナー等の開催につきまして、財務省や各財務局等とのネットワーク、財投機関の機能も活用しつつ行ってまいりたいと思いますし、セミナーの開催がゴールではなく、地域課題の解決がゴールになりますので、課題の解決に向けて、理財局、各財務局等と一緒になって積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
本日、時間の関係でご紹介はできませんけれども、資料2-6といたしまして、各財務局等において、財務状況ヒアリングなどを通じて把握した優良事例をご紹介して、財務省のホームページで公表しておるという取組を行っております。こちら各財務局等が集めました貴重な資料、情報につきまして、他の財務局等にも展開することを目的といたしまして、実施しているものであります。お時間ございましたら、お目通しいただければ幸いでございます。
私からは以上になります。
〔翁分科会長〕ご説明どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの3つのご説明を踏まえまして、皆様からご意見やご質問がございましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
丸田委員、西野委員、お願いいたします。
〔丸田委員〕ご説明ありがとうございました。
私から何点か質問とコメントをさせていただければと思います。
1つ目が、財政融資資金運用報告について、やはりまだ全体の執行率がコロナ前水準までは戻らないというところで理解しておりますし、3ページの表を拝見していましても、例えば日本政策金融公庫の計画額などは、去年より現実的な水準に見直しをされて、その中で、とはいってもまだ執行率はやや低いのですけれども、実際に年度内運用額も増えていたり、というところで、改善をされていると理解をいたしました。
一方で、今回気になりましたのが、JICAやJBIC、JICAは一部翌年度繰越もございますけれども、共に執行率が落ちていて、運用額の絶対額も昨年より減少しているように見受けられます。恐らく今後、日米で合意された日本企業の米国投資であるとか、そういった新しい案件でかなりこれらの機関の力を借りることが必要になってくると思います。その意味では、新規大規模の投資の運用ができる体制も含めて、今後しっかり体制強化がされ、取組が加速していくことを期待しておるのですが、事業規模拡大のための体制がしっかり整備されているのかどうかといった点が気になりました。
2点目は、純粋な質問で大変恐縮ですが、政策コストは、当然、金利が上がるとコストが上がるという仕組みになっておりまして、感応度分析を拝見しても、今後金利が更に上昇するとコストが増えるという状況は理解したのですが、一方で、4ページ目に書いていただいているような政策コスト分析の活用例の中で、今後コストが上がるということに対して各機関で何か対策は行っているのでしょうか。もちろん政策は政策で別に決定されていると思いますので、何か、工夫をして政策コストを少しでも改善しようという取組があるのか、どこまでできるのかはあるのですが、このような現状を踏まえて取り組まれている実例があるのであれば、教えていただきたいというのが2点目でございます。
3点目の地域課題解決支援というのは、非常にすばらしい取組だと思って拝見をしておりまして、しっかりやっていただきたいと思いますし、今回の、取組の事例について詳細はご説明いただけませんでしたが、取組メニューを拝見して、本当にいろいろなことをやっておられるということで感心いたしました。
あとは、ここに書いてある取組の中でも、例えばAIを活用した効率化といったところは、民間企業でも相当取組が進んでいますし、恐らく、病院とか地方自治体も相当活用の余地はあると思いますので、そういったところもタイムリーにいろいろ啓蒙いただくことを非常に期待しているところでございます。
私からは以上でございます。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
それでは、西野委員お願いします。
〔西野委員〕ご説明ありがとうございます。
政策コスト分析についてでございますけれども、政策コスト分析によって定量的に政策コストというものが分かって、それによって社会的、経済的便益が分かるというのは大変有用な指標であろうと思います。
ただ、一方で、やはり感応度とか、今後金利がある世界になってくると、おのずと政策コストは上がるということになる中で、他方でやはりJICAや日本公庫のように、社会的必要性という定性的な側面というものを、どのように併せ持って評価をしていくのか、これは質問というよりはコメントになりますけれども、工夫が必要なのではないかと感じております。政策コストがおのずと上がる中で、しかしながら、社会的な必要性という定性的な部分をどのように評価するのか。もしくは機関側としては、多分定性的な側面で、いやいやこれは社会的に必要であるからというような、機関としての理由づけがなされると思います。そういう中で、この政策コストの数値というものをどのように使って説得をされるのかという定量評価と定性評価の使い分けであったり、もしくはこれを積極的に機関に対して、例えば経営の改善や効率化の際にどのように伝えていくのかという工夫が必要になってくるのかと感じた次第でございます。
以上でございます。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
次に、家森委員、工藤委員の順でお願いします。
家森委員、お願いいたします。
〔家森委員〕神戸大学の家森です。ご説明ありがとうございます。
私は資料2-1の令和6年度財政融資資金運用報告のポイントについてご質問いたします。
まず、6ページですけれども、本年度損失として391億円が計上されています。それの理由としては、逆ざやであるというご説明でした。なるほどそうかと思ったのですが、これまで、いわゆる官民ファンドでもうお金を貸してくれそうにないという幾つかのファンドがあるのですけれども、その部分の損失引当金みたいなものは、ここではどのように見ているのでしょうかというのが1つ目の質問です。
それから2つ目は、8ページですけれども、ここには使途別の分類があるわけで、「環境」という橙色のものが1,400億円しかないということになっています。今、財投として、GXを進めていくところで、すごく頑張っているということだったと思うので、これはもちろん社会資本の中に環境にやさしいものとかがあると思うのですが、これだけを見てしまうと、財投で環境はほとんどやってないねと見られてしまうのではないかと思いまして、これはこれとして行政ルールに基づいて作られていると思うのですが、財投として環境にもっと取り組んでいるというところが示せるような資料があるほうが、国民の皆さんに理解していただけるのではないかと思いますという意見です。
それから、財務局の地域における貢献について、私のように地方に住んでいますと、具体的には近畿財務局と東海財務局と私はいろいろ話をさせていただいておりますけれども、これら両財務局とも非常に熱心に地域のことに貢献されていると日頃感じておるということを申し添えます。
以上です。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは、工藤委員、お願いします。
〔工藤委員〕ご説明ありがとうございます。
先ほど丸田委員もおっしゃっておられたこととダブってしまうのですが、やはりコロナ禍以前において70%台が続いていた執行率が、依然として50%台というところは、少し気になっております。もちろん実際には支出動向を見ながら、適時に財投債を発行しているので、余分な財投債を発行しているわけではないということは重々理解しておるのですけれども、効果的な経済対策等を行う観点からも、執行可能な財投計画を立てるということが重要な面もあるのかと思っておりまして、仮に機関のオペレーション上、執行できない規模になっているのであれば、その状態を速やかに解消するべきだと思いますし、また、仮に計画策定段階での需要見積りが甘くなっているのであれば、より精緻化するべきだと思います。
また、機関ごとに予算請求の目線が違うとか、また、その理由が業務の内容として、例えば、大型の案件を1件できるかどうかで執行率が大分影響を受けてしまうというようなことがあるかもしれませんので、もしそういった機関ごとの業務の特徴によって異なる面もあるのであれば、そういうことも記載いただいたほうが、より説明力と、誰かが見たときにも納得感というのを持っていただけるのではないのかと思います。
また、JBICについては、日米関税合意の内容に沿った役割の強化という観点から、今後改めて財投計画の中で議論がなされるのかと理解しております。民間にとっても最大限意義のある形で財投が投じられるということが、特に本件重要だと考えておりまして、また、本分科会において丁寧に議論をさせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。ありがとうございました。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
そのほかよろしいですか。それでは、今の段階で、回答をお願いいたします。
〔西川財政投融資総括課長〕先生方、ご意見ありがとうございました。
まず、執行率の関係につきまして、丸田委員、そして今、工藤委員から、ご指摘をいただきました。
資料3ページをご覧いただきたいのですが、機関ごとの運用状況ですけれども、まず、JICA(国際協力機構)の執行率が昨年と比べて低くなっている点ですが、これは(注2)に書いているのですが、JICAにつきましては、令和6年度の補正で4,390億円の追加を行っております。これはG7の合意を踏まえまして、ウクライナ支援ということで追加を行っているのですが、この分が令和6年度内に執行されなくて翌年度に繰越となっておりまして、それによりまして執行率が低くなっているということが1つ、特殊要因としてございます。
それとJBIC(国際協力銀行)の執行率も昨年と比べて低くなっているところでございます。これにつきましては、JBICは基本的に外貨で貸付等を行っておりますけれども、昨今の円安の影響によりまして、貸付回収金が円建てで見ると増加するなど自己資金が当初想定していたよりも増えたということで、執行率がやや低くなっているという、個別の事情がございます。
JBICにつきましては、先般の米国の関税措置に関する日米協議の合意事項の中で、政府系金融機関が最大5,500億ドル規模の出資、融資、融資保証を投資に当たって提供していくということとされております。JBICがこのうち出資、融資の部分を担うと想定しておりますけれども、今後JBICが必要な業務を円滑に行えるように、財投としても必要な措置を検討する必要があるというふうに考えております。
財投計画の計上に当たりましては、この審議会でご審議をいただくこととなりますので、その際には丁寧に説明させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
その際にJBICの人員を含めた体制がどうなっているかということも、しっかりJBICと我々も議論をしていきたいと考えております。
それと、家森委員からご質問をいただきました6ページの財政融資資金勘定の貸借対照表のところですが、損失が出ていることについては、官民ファンドの引当金等があるのではないかというご質問だったかと思いますけれども、官民ファンドに財投として措置しているのは産業投資になります。こちらは財政融資の方の勘定の貸借対照表になりますので、官民ファンドへの出資が影響して、こうした数字になっているということではございません。
それともう1点、家森委員からご指摘いただきました8ページの使途別分類の「環境」のところの数字が少ないのではないかというご指摘ですが、そこはご指摘を踏まえまして、今後、環境分野での財投としての貢献について、見せ方も含めて、検討したいと考えております。ありがとうございます。
〔鈴木資金企画室長〕続きまして、政策コスト分析に関しまして、丸田先生からいただいたコストが増えるということが見えてきている中で、何かそういったところで手を打った事例があるのかというところですけれども、まず、大きな話でいきますと、なかなか難しい部分があります。というのも、小さな話ですと、足元、長期収支が見えますので、どういう資金調達をすれば一番マチュリティラダーがスクエアになっていくか、みたいなところで、我々財政融資資金からの融通条件を変更したり、あとは、債券も何年債を出すとちょうどいいのか、財投機関債を出せばいいのかという調達の部分で資金メニューを変えていくみたいなところを検討している機関は過去にも多々あるのですけれども、一方、政策的にどうやっていくか、これは西野先生からのご指摘にもつながるのですけれども、政策コスト自体が悪なのか善なのかみたいなところの解釈がありまして、社会的必要性というお話をいただいたのですが、どうしても政策コストがあってこその利用者という部分、利用者への利便性なり安定感だったり、無利子貸付があったりとかというのはそういうことなのですが、それを維持すべきかどうかというところは、また少し違う政策判断も必要になってくる部分がございます。とは言いつつも、私も先ほどご説明で申し上げたのですが、今まで日本は金利がずっと低下傾向にあって、マイナスまで行って、今底を打って上がってきているという、また新たな局面にはなっておりますので、そこをどう捉えるかという中で、もしかしたら政策コスト分析も少しは役に立てるのかという思いをもって、申し上げた次第でございます。
答えになっているかなっていないか微妙なところですけれども、おっしゃられたことについては、これからもしっかり研究して、検討につなげていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
〔鳩間計画官〕最後に、地域課題解決支援につきまして、丸田委員、早速ご覧いただき、ご紹介いただきまして、ありがとうございました。タイムリーな啓蒙ということで、全国展開しておりますので、各財務局等との対話の中で、いろいろ気づきを得ていきたいと思っております。
家森委員、地方の地域からご覧になった財務局の活動について、ご紹介いただいてありがとうございました。おっしゃるとおり、各財務局等において、一生懸命、地域課題解決の支援に向けて、いろいろな形で活動しておりますので、引き続き理財局としても、それがうまくいくように、より効果的になりますように支援を続けてまいりたいと考えている次第であります。ご意見いただいてありがとうございました。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
特に追加的にはございませんか。
山内委員、お願いいたします。
〔山内委員〕ご説明とご質問へのご回答ありがとうございました。
先生方の話も踏まえて、私が政策コスト分析に関して感じたことを1点申し上げます。
今、いろいろ環境が変わっていて、金利がある世界というのもあると思うのですが、これから関税がある世界に入ると思います。今までは基本的に自由貿易体制で、関税がない状況を日本の経済が享受していたと思うのですが、これからは必ずしもそういうわけにいかないかもしれません。ですので、これまでの財政投融資の動かし方と前提を同じくして考えないで、ゼロベースで考えたほうがいいのではないかと考えております。
その意味では、混沌とした状況が始まるときには必ず、この数字は信頼していい数字だよねというところで議論を始めないと、この間の関税の話でも出てきましたが、ピンどめしていかないと議論が整理しにくくなります。その意味で政策コスト分析はピンどめに使えるツールの一つであると考えています。
政策コスト分析の結果は、西野委員もおっしゃったとおり、金額だけで見てしまうと、議論がそこでとまってしまうと思います。あくまで、金利が上がると皆さんの機関はこれだけ負担が増えますよ、資金調達をどうしますかと、先ほど鈴木室長がおっしゃっていたお話どおり、これまで通り、この結果を用いた対話を続けていかれたらよいかと思います。
その上で、先ほど執行率のお話を丸田委員と工藤委員からいただいたと思うのですが、その執行率の見方がポイントと考えています。例えば日本政策金融公庫のコロナ対応について、未曾有の事態の中で予算をとって大きく構えたが、結果的に使わずに小さく収め、翌年度以降は不要となった予算枠を減らす動きがありました。予算を機動的に大きくし、あるいは小さくすることをやった経験があるわけです。
今後、関税がある世界の中で、例えばJBICの名前が具体的に出ていますが、日本政策金融公庫が低利で貸し付けている人たちに対して、金利が上がるからといって急激に上げられないという政策判断はそこである一方で、JBICはどう考えても投資額に対して現在の予算規模というのは小さ過ぎるので、その手当てをしなければいけない。それぞれの政策的な必要性がありつつ全体の予算が決まっている話のため、今回はJBICさんに振り向けるので、政策金融公庫さんは減らさせてくださいといったこともあると思います。
つまり、執行率というのを単体で捉えるというよりは、全体の資金の動かし方、今年度はこちらにより寄せていきますという政策的な意図、意思というのはあってよいのではないかと思いますので、そういった意味で政策コスト分析とその結果を踏まえた政策的なコミュニケーション、特に執行率の関わり方で柔軟性を持っていくということが、少し大きな話で恐縮ですが、先生方のお話も踏まえて、伺って感じたところでございます。ありがとうございました。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
何かこの点、コメントございますか。
〔西川財政投融資総括課長〕山内先生、どうも貴重なご意見ありがとうございます。
まさにおっしゃるとおり、今、いろいろと金利のある世界もそうですし、それに加えて関税のある世界になっていくという、大きな社会の変化の中で、財投機関についてそれがどういう影響が出ていくかということを考えるに当たって、政策コスト分析というのは1つ大事なツールになると思っております。
また、さらに、先ほども少し私からもお答えさせていただきましたけれども、JBICも活用しました米国への巨額の投資につきましては、財投としても非常に大きな話になると思っておりまして、そうした中で財投計画にも非常に大きなインパクトがあるものだと思っております。財投計画全体の中での位置づけといいますか、資源配分の在り方ですとかといったことも、よく我々としても考えていかないといけないと思っておりまして、先生のご指摘も踏まえまして、今後計画の編成に当たりましては、よく検討していきたいと思っております。ありがとうございます。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
JBICの件は、これからどのようになっていくか、また、この場でしっかりと議論ができるようにしていただければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、次の議題に移ってよろしいですか。
次は、「産業革新投資機構の大型案件の進捗」についてのご審議をお願いしたいと思います。産業革新投資機構及び経済産業省の方々が入室されますので、しばらくお待ちください。
(産業革新投資機構関係者着席)
〔翁分科会長〕それでは、産業革新投資機構よりご説明をお願いいたします。
〔株式会社産業革新投資機構亀山取締役〕ありがとうございます。産業革新投資機構(JIC)の取締役を務めております亀山と申します。本日は、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。
本日は、JICのバイアウト投資等に係る取組について、ご説明、ご報告をさせていただきます。
最初に、JICについて、なじみのない方も少しおられるかもしれませんので、JICとはということを少しだけ説明させていただきます。
我々は、法律に基づきまして、日本の産業競争力の強化に取り組んでいるわけですが、もう少しかみ砕いて言うと、日本の産業の新陳代謝を進めるということでございます。直近、「失われた30年」とよく言われますけれども、やはり過去の成功体験にとらわれて、大企業中心の社会構造からなかなか抜け出せず、大企業自身がなかなか変われずということで経済の成長が停滞してきたというところがあると思います。
そこは、やはり新陳代謝が起きてこなかったということで、新陳代謝と一言で言いますけれども、我々として、具体的には、2つフォーカスをしていまして、1つはスタートアップ、新しいイノベーション、経済の成長を担うプレーヤーとしてのスタートアップを創出・育成する。もう一つは、成熟企業の改革、経営改革、それからプレーヤーが多い産業については産業再編、こういったことをしっかり進めて産業の新陳代謝を起こしていく。
まさにこういう動きをつくっていかないと、日本経済の成長はなかなか前に進んでいきませんので、こういったところに我々取り組んでいるということで、まさに日本の経済の未来をつくるという思いで、非常に重要な役割と自覚をしながら取り組んでいるところでございます。
まず、我々の活動の全体像をご説明させていただきます。2ページ目をお願いできればと思います。
こちらは、JICからの投資は3つのビークルがございます。大きく、スライドの左側に箱がありますが、1つは民間のファンドへLP出資をするということで、呼び水として底上げをしていくというところでございます。これまでベンチャーキャピタル、PEファンド等に対して48のファンドにLP出資をしておりまして、ちなみにその4分の3が1号ファンドから3号ファンドという、いわゆる新興のファンドでございまして、政府のEMPの方針にも沿った形で取り組んでいるところでございます。
それから、我々単にファンドにお金を出すだけではなくて、しっかりファンドのレベルアップをしていくというところにも取り組んでいまして、特に機関投資家、それから海外の投資家、こういったところからしっかりお金を調達できるように、伴走支援をするということで、例えば人材の採用も含めて体制の整備をお手伝いしたり、グローバルスタンダードに沿った形での組合契約をつくってもらったりとか、それから公正価値評価、こういうことの導入なども含めてお手伝いをしているところでございまして、結果として、非常に投資先のファンドからポジティブなフィードバックをいただいております。「JICのおかげで自分たちの今がある」というような声もいただいているところでございます。
それから、実際に成果としては、我々が投資した後のラウンドで、海外の投資家それから機関投資家からお金を調達できたというような事例も幾つも出ていますので、そういった観点からも貢献できているかと思っております。
スライドの右側2つ、JIC VGI、それからJICキャピタルとあります。これはJICの子会社でございまして、このビークルを使いながらスタートアップへの直接の投資、それからバイアウトの投資を進めております。先ほどの左側の民間ファンドだけでは、どうしてもリスクマネーがまだまだ足りない分野がございますし、そもそもプレーヤーがほとんどいない分野もございます。ですので、そういったところについては、JICの子会社が直接投資をしながら、エコシステムをつくっていくという観点で、こちらも大変重要な取組として進めているところでございます。
JICは本格的な投資を始めて5年ほどたちます。前身のINCJについて、先月、会長の志賀からもご報告させていただきましたが、INCJの成果もしっかり引継ぎながら取り組んでいるところでございます。こういったこともありまして、最近は、中にいる人間の立場としては、JICの活動に対する世の中の評価がメディアを含めて大分ポジティブというか、理解が進んできているのではないかと感じているところでございます。
次のページでございます。
バイアウト投資に係るJICキャピタルの大型案件について少しご説明をさせていただきますが、大型案件のガバナンスの考え方について、これは過去の分科会でもご説明した資料でございますが、改めてご説明をしたいと思います。
まず、大型案件、こちら中段あたりに書いてありますが、1,000億円を超える案件を大型案件として扱っておりまして、大型案件を組成する際は、JICキャピタルだけではなくて親会社のJICにおいて社外取締役を含む取締役会で承認をするというスキームにしてございます。
それから、投資後のフォローアップについてもしっかり行うということで、四半期ごとに、これもJICの取締役会で報告をするということ、それから、経済産業省の方にもご報告をさせていただいているところでございます。
次のページをお願いします。
足元、大型案件が2件ございます。JSRと新光電気という会社でございまして、概要は下の半分に記載をしております。
JSRについては、半導体材料産業の国際競争力強化に向けた産業再編、事業再編、こういうことを狙って投資をしてございます。足元2024年度の決算の数字でございますが、売上高は前年並みの約4,000億円、コア営業利益は若干減って2億円となっています。当期の純損失が2,177億円とかなり大きくなっておりますが、中身はこの下に書いてありますとおり、ライフサイエンス事業に関する減損、のれんの償却、これで1,500億円ぐらい、それから買収TOB後のPPA償却費400億円、その他構造改革費用で120億円ということで、いずれも一過性のものであります。減損とPPA償却はノンキャッシュで資金繰りに影響するものでもございません。買収をしてちょうど1年ぐらいたちますが、買収後の改革を進める上で、各事業を厳しく評価をした結果ということでご理解をいただければと思います。
今回、こういう形で下地を整えまして、これからしっかりバリューアップをしていくというフェーズに入っていくものでございます。もともと政策目的であるデジタルソリューション事業、この中で半導体事業がございますが、半導体事業は非常に好調でございまして、足元の決算では過去最高益を更新してございます。
他方、ライフサイエンス事業は、先ほど申し上げたとおり調子がよくないというところもありますので、非中核事業として、あらゆる選択肢の検討をしているということでございまして、その一環で体外診断薬の事業を4月に売却していますが、これも800億円以上で売却できております。それなりの利益が、これは2025年度の決算の方で出てくるものになります。
いずれにしても、我々として、JICキャピタルから取締役を直接会社に派遣をいたしまして、経営に直接参画をする形でPMIを強力に推進しているところでございまして、当初、投資時に描いていた計画、イグジットですね、半導体業界の再編を伴う再上場を目指す、結果としてJICキャピタルも収益を上げてイグジットをするという計画方針に変更はございません。数字上は大きな損失が出ているように見えますが、JSRの決算を受けた報道もネガティブなものは一切ありませんでしたし、世間からは冷静に受け止められているかと思っております。
新光電気でございます。こちらも半導体ですが、先進半導体パッケージ分野の事業化に向けた支援ということで、成長投資として投資をしてございます。
こちらは今年の3月にTOB完了で、6月に上場廃止をしたばかりでございますので、これからしっかり中に入って改革を進めていくというフェーズでございます。
次のページをお願いします。
最後でございます。今後の我々の取組といたしまして、足元、米国関税を巡る状況をはじめ、政治、経済情勢、非常に大きく動いております。各国政府も保護主義に走る中で、日本企業の改革、再編を通じた国際競争力の強化は本当に待ったなしの状況でございます。
その足元、PBR改善圧力とかアクティビストの活性化とか、いろいろな環境が日本企業の経営改革を後押ししております。企業価値を高める圧力が非常に高まっておりまして、経営者自身もマインドが大分変わってきております。実際、その結果、非公開化とかM&Aとか、カーブアウトとか、そういった形で自らを変えていこうという案件が増えておりますし、その案件の規模も大きくなっております。
他方、こういった動き、やはりファンドの支援というのは不可欠なわけですけれども、こういった動きを支援できる民間ファンドの数は非常に限られておりまして、本当に大型の案件は特に今ほとんど外資系のPEファンドが担っているという状況でございますので、ここのプレーヤーの多様化が必須であると考えております。また、そもそも、設備投資額が大きいような分野、製造業、GX、DX、こういった分野をはじめ経営改革を進めるためのリスクマネーの絶対量もまだまだ小さいというところがございます。
こうした動きを踏まえまして、JICとしては、2つ取り組んでいきたいと思っておりまして、1つ目はLP出資ですけれども、大型案件を手がける意思と能力のある日本フォーカスのバイアウトファンドに対してLP出資をして、大型案件に取り組めるファンドの成長を支援していくということでございます。
2つ目としては、JICキャピタルの1号ファンドがほぼ投資が進んで残額が少なくなっていますので、この支援の手を止めることなく、しっかり前に進むということで2号ファンド、8,000億円規模でございますが、これを組成するということにしてございます。
2号ファンドでは、民間ファンドと共同投資をこれまで以上に積極的に模索するということにしておりまして、そういうことを通じて民間のPEファンドの大型案件への取組経験を後押ししていきたいということでございます。
こういった動きも踏まえてJICでは大型案件に係る意思決定プロセス、より客観的な意思決定ができるようなプロセスの見直しを行っているとともに、エクスポージャーが今後も増えるということを想定して、適切な資本構成に係る議論を行っているところでございます。
私から説明は以上でございます。
〔翁分科会長〕ご説明ありがとうございました。
それでは、ご質問、ご意見などありましたらお願いします。
有吉委員、丸田委員、西野委員の順で、それからその後、オンラインで、工藤委員と岡田委員ですか、その順でよろしくお願いいたします。
それでは、有吉委員、お願いいたします。
〔有吉委員〕有吉でございます。ご説明どうもありがとうございました。
私からは1点、資料では4ページのJSRとの関係について、確認的なご質問をさせていただきたいと思います。
LS事業の減損について、数字は大きいものの特にサプライズではないというようなご説明だったと理解をしておりますが、こちらは結果として、それほどネガティブな話ではないというだけではなくて、もともと投資をする段階で、こういう状況になるという見込みで投資をされた、そういうイメージでよろしいのか、それとも、投資をした段階からすると想定していないことが起きたという状況なのか、その辺りを教えていただきたいと思います。
併せて、本業のほうは好調だというお話でしたが、こちらは、このようなものだろうという読みで投資をして、そのとおりだったということなのか、投資をした段階の想定よりもより順調だということなのか、それとも、本当はもっと順調だと思っていたものの、この程度ということなのか、プラスのほうの投資をした段階からの見込みとの差異があれば教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
それでは、丸田委員、お願いします。
〔丸田委員〕丸田でございます。ご説明ありがとうございました。
私からは本当に純粋に質問でございまして、5ページ目の、最後2つの取組ということで、1番目の大型案件を手がける意思と能力のある日本フォーカスのバイアウトファンドへのLP出資の新たな取組ということですが、これは大体どれぐらいの規模で、今ある既存のどのファンドの資金を活用してやられようとしているのかということを教えていただければと思います。よろしくお願いします。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
西野委員、お願いします。
〔西野委員〕ご説明ありがとうございます。
私は4ページ、JSRと新光電気工業への投資案件についてですが、当社は、政策的な投資意義というものがまずあって、ある種公的なファンドとしておやりになる中で、この経緯については、私は存じ上げないのですが、日本の産業にとって大変重要な半導体材料の2社を選ばれたものと考えております。そういう中で、例えばJSRですと、半導体材料だけではなくて、ディスプレイ材料、今回一部売却されたライフサイエンスもあるわけで、多角化をされているような企業を買収した場合には、やはり政策的な意義というところからすると、コア事業、例えば半導体であれば半導体事業に集約していくという方針なのか、それとも、その企業が新規の事業を手がけていくとコストもかかるわけで、そうすると一時的には利益率も下がってくるということがあるのですが、そうしたことも想定されながら、企業全体の経営改善を図られるのか、基本的にこうした買収した企業の再生において、どこを重視して再生されるのかということについてお伺いしたいと思っております。
以上です。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
岡田委員、お願いいたします。
〔岡田委員〕ご説明ありがとうございます。
JSRに関しては、一般に水平的な再編とか、あるいは垂直的な再編とか、いろいろな形があろうかと思いますが、こうした再編事業というのは、なかなか途中経過というのはよく分からないということになろうかと思いますけれども、なかなかうまくいかなかった場合に、ずっと分からないまま過ぎていくのか、あるいは、何か途中で説明の仕方があるのかどうか。その辺り、突然何か行き詰まったということで明らかになっても困るという気もするのですが、その辺り、途中の進捗状況というのは、うまくいっているのかいっていないのかというのは、どれぐらい説明可能なものでしょうかというのが1点です。
もう一つは、次に、また大きなファンドをということであろうかと思いますが、こうした公的ファンドというときに、1号ファンドもかなり規模が大きいところで、かなりリスク管理をしっかりというお話だったかと思いますけれども、こうした1号ファンドで何か成功したという実績があって、さらに大きなということであれば納得感もあるように思うのですが、1号ファンドでどうなっているのかまだ現時点、展望、最終的なところはよく分からないという中で、なぜそこまで急がなければならないのか。また、できればこうしたリスクマネー、官よりも民主導でやったほうがいいと思うのですが、民間のそうしたリスクマネーの供給というのを政策的な対応で後押しするのではなくて、なぜ、もう一度、官がこれだけの規模で出ていかなければならないのかという、その辺りのご事情を伺えればと思います。
以上です。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
それでは、この段階でご回答いただければと思います。よろしくお願いします。
〔株式会社産業革新投資機構亀山取締役〕ありがとうございます。
まず、有吉委員のご質問についてでございます。
JSRのライフサイエンス事業と半導体事業、それぞれ投資したときと比べてどうかというお話だったと思います。ライフサイエンス事業については、先ほどご説明したとおり、当初のイグジットを含めた想定から外れるものではございません。投資するときは、アップサイド、ダウンサイドなど相当広いシナリオを検討した上で投資をしますが、シナリオのうちの1つの範疇であると思っていますので、当然、もっとアップサイドにいってほしいという思いはありますが、当初の想定から外れるものではありません。
半導体のほうは、当時と比べてもやはりAIの需要がかなり後押しをしておりますので、そういう意味では投資当時よりもアップサイドの方にきていると認識をしておりまして、したがって、ライフサイエンスは想定の中で少し下方寄りですが、半導体は想定よりも上方寄りということで、結果として売上げなどはあまり変わらず、バランスが取れているということでございます。
丸田委員のご質問でございますが、PEファンドへのLP出資の規模感でございます。
こちらは、ファンドから出すということではなくて、これはJICのBSのほうからお金を出すことになりますので、ファンドのサイズの観点から上限があるということではございません。こちら1件当たり最大500億円と上限を定めておりまして、件数としても、頻発して出てくるようなものではないと思いますので、そのくらいの規模感でイメージをしていただけるとよろしいかなと思います。
西野委員のご質問でございます。半導体2件、大型案件の政策的な意義、半導体が続いたのはたまたまなのかというお話もありました。これは、やはり半導体産業が非常に裾野広く、あらゆる産業に影響してくるところで、DX、GXといった動きにも大きく関係してくるところである、非常に重要な基幹産業、戦略産業でありますので、半導体が続いたのはたまたまでございますが、やはりこういうところに戦略的に投資をしていくことが非常に大事であるということであります。どういう分野に投資していくかはケース・バイ・ケースですが、結果としては半導体、大型2件ということになっております。
JSRは確かにディスプレイ材料など、いろいろなところを多角化してやっておりますが、これも本当に企業によってケース・バイ・ケースでございます。我々が本当に育てたい産業とは別のキャッシュカウの事業がもしあるなら、そのキャッシュカウを使いながら、本来伸ばすべき事業を育てていくというケースもあるでしょうし、そうでない不採算事業はしっかり整理をしていくということも必要でございますので、いろいろなバリューアップのやり方がありますから、そこは一様にこうということは申し上げられない、ケース・バイ・ケースということでございます。なお、我々、再生という観点ではやっておりませんので、戦略的に重要なところを伸ばしていくという観点で取り組んでおります。
岡田委員のご質問でございます。まず、ご報告ということだと思います。JSRなど大きな再編案件について、途中経過、報告が必要であるということはそのとおりだと思います。今日もまさにこういう形で状況のご報告をさせていただいておりますが、非常にインパクトの大きい案件でありますので、今後も節目節目でご報告させていただければと思っております。
2号ファンドについては、先ほどの説明でも少し申し上げましたが、1号ファンド、これは成功か失敗かというのは、当然時間がかかります。投資ですので、それが判明するにはまだ数年かかるわけですが、それを待って2号ファンドということになりますと、申し上げたとおり1号ファンドはほとんど残額がない中で、他方でこういう経済政治情勢の中で、これは経産省のお考えもあると思いますが、この政策の手を止めるべきではないと我々考えております。
我々の前身のINCJも同じような取組をしてまいりまして、先月ご報告させていただきましたが、それは大型案件も含めて成功・失敗ありましたが、全体ではしっかり成果を出しております。INCJで担当していた人材が引き続きJICの中、JICキャピタルの中で担当している者もおりますので、そこは全体として見ていただいて、ご評価をいただければと思います。
それから、なぜ官が出ていくのかという観点については、先ほど申し上げたとおり、国内においてこれだけTOB、非公開化、カーブアウトの案件が出てきている中で、本当にそれを支えられるファンドが少ないという状況でございます。せっかく経営者が改革を志向していても、お金が足りない、ノウハウがないということで手が止まってしまうこともありまして、ファンドが足りていないということで、外資系のファンドがどんどん入ってきてもいますが、外資系のファンドをやはり敬遠するような経営者も当然中にはおられますので、そこを支援するプレーヤーの多様化というのは本当に喫緊の課題であると思っておりますので、プレーヤーがいれば当然官が前に出ることはないのですが、プレーヤーがまだまだいないので、我々がそこをリードしてエコシステムをつくっていく必要があると思っております。
すみません、漏れがあったら申し訳ありませんが、回答は以上でございます。
〔翁分科会長〕今のご回答で何かご質問ございますでしょうか。よろしいですか。
山内委員、お願いします。
〔山内委員〕ご質問へのご回答ありがとうございました。
私は以前JICに関わったことがある人間でもございますので、当然関心を持って見ておるのですけれども、財投分科会の議論としては、私の記憶している限り、半導体への投資はどうなのかということをおっしゃっている先生方はいないという理解ですが、どういう投資を全体でしようとしているかというロードマップが見えないというご指摘は、前からいただいていると記憶しています。
もちろん、プライベート・エクイティ投資は、非常に機会的で、案件があったら動くという世界でございますし、JSRのように、投資した上で最終的なパフォーマンスをプラスで出していくためにどのような施策にウエイトを置くかも状況をみて対応していくものなので、確定的にこうだというのは個別案件で言うのは難しいと考えています。しかしながら、何となく大きな案件をどかっとやって、それが何となくスタンドアローンでやっていてほかとのつながりがよく見えない、業界再編の先が見えない。その中で、お金が必要なのでもう一つファンドをつくるんですとなると、委員の先生方からいろいろ伺った範囲では、どこまでお金が必要なのか分からない、端的に言ってしまえば。ですので、これは非常に難しいと思うのですけれども、何となくでもこの半導体産業でどういう投資をしようとしていて、それのために官のお金がどれぐらい必要なのかというものが、何となくでも見えると、ここでの議論も、もやっとしたものではなくて、もう少し目鼻立ちが見えてくるのではないかと考えています。ベンチャーグロースの場合は、それぞれの案件が小粒で、結局その小粒の案件というのを見ていけば、今デジタル領域をやろうとしているとか、素材、マテリアルテクノロジーをやろうとしているとか見えてきます。トータルでその領域のベンチャーキャピタルとベンチャーのエコシステムをつくるということが見えてくるのですが、どうしても案件が大きくてスタンドアローンっぽく見えるので、その辺りについてどうしたほうがいいのか、私もイメージはないのですが、ぜひ経産省の皆さんも含めてご検討いただけたらと思っております。ありがとうございます。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
私も似たような意見を持っておりまして、今の山内委員と同じ感じで申し上げますが、やはり、JSRにしても新光電気にしても、大まかな時間軸と、それから業界再編の方向感というか、そういったことについても、もう少しお話しいただけると、こちらとしてもより見えてきて、モニタリングもできるという感じがしております。
それから、5ページ、最後のところで大型案件に係る意思決定プロセスをより客観的になさっていく、資本構成のこともご議論されているということですが、もしもう少し具体的に何か進んでいる議論がございましたら教えていただければと思います。
以上でございます。
〔株式会社産業革新投資機構亀山取締役〕ありがとうございます。
山内委員からのご質問でございます。ご指摘ごもっともだと思います。なかなか難しいのですが、まず、我々として、JICキャピタルがフォーカスする分野は対外的にも公表しておりまして、特に重点分野が5つございますが、半導体に加えてヘルスケア、化学、素材、モビリティ、この分野はやはりまだまだプレーヤーが多く、再編を含めてしっかりやっていかなければいけないとフォーカスを当てています。また、それぞれについてどういう時間軸で、どのように再編をしていくのかというあたりは、これは経産省ともよく議論しながら日々取り組んでいますが、なかなか大きな絵がまだ描き切れていないところがありますので、引き続きの課題とさせていただければと思います。
それから、翁分科会長のご指摘について、時間軸は今申し上げたとおりですけれども、あともう一つあるのは、やはり日本国内においてPEファンドが育っていくことが大事です。それを我々は後押しをしておりますので、国内において様々なPEファンドがしっかり、我々が出ていかなくても大型案件含めてしっかり支援ができるという状況をつくることができれば、それはJICキャピタルとしての意義は終わると思いますので、そこがいつぐらいになるかというのは、これも見極めは難しいのですが、しっかり頭に置きながら、考えていきたいと思います。
最後の、より客観的な意思決定というのは、まだ議論中でありますが、1つは、我々JICキャピタルで産業アドバイザーという、それぞれの分野の外部の専門家をリテインして、今でも投資委員会などで参加をしていただいていますが、それを大幅に人数を増やして、意思決定もその前の段階のプロセスから関わっていただくということで、客観性を高めていきたいと思っております。
それから、意思決定のプロセス自体についてももう少し、内部で議論に関わる人の対象も含めて少し見直したいということを考えております。
それから、資本構成については、まだいろいろな議論があります。今、産投出資と借入と社債とで賄っている状況ですが、今後、エクスポージャーが増えていく中で、どういった構成が適切なのかは、我々だけではなくて当然政府の側ともしっかり話し合いながら考えていく必要がありますので、それは引き続きご相談をさせていただければと思います。
〔経済産業省産業政策局河原産業資金課長〕よろしければ1点だけ。
最後の資本構成のところについては、経産省からも一言申し上げます。今、亀山CSOからお話ありましたとおり、一定割合を出資の形でということで、従来から要望させていただいていたわけでございますけれども、これからエクスポージャーが増えてくるという中で、特に今後につきましては、経済情勢がどう変化するか、それから投資の進捗が、どのように進んでいくのかを踏まえながら、それからファンドの性質として、民間ファンドとは異なる性質もございますので、こういった性質の違いも念頭に置きながら、その比率でございますとか、あるいは出資以外にも、リスクバッファとして扱える資金の範囲も含めて、適切なリスク管理の在り方とはどういうことかということを、よく財政当局ともご相談しながら進めていきたいと思っております。
以上です。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
追加的にございませんので、この辺りで質疑を終了したいと思います。
産業革新投資機構及び経済産業省の皆様、どうもありがとうございました。ここでご退席いただければと思います。ありがとうございました。
(産業革新投資機構関係者退席)
〔翁分科会長〕少し過ぎてしまいまして、申し訳ありません。本日の議事はここまでといたします。もしご議論いただいた内容に、追加的にご意見やご質問などございましたら事務局までお寄せください。
また、本日の議事内容につきましては、この後、事務局より記者レクを行います。
議事録につきましては、委員の皆様のご了解をいただいた後、財務省ホームページに掲載いたします。
次回の開催日程は後日事務局よりご連絡いたします。
本日はご多用中のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございました。これにて閉会いたします。
16時09分閉会
※時間の制約により、分科会終了後に委員から寄せられた意見は以下のとおり。
〔工藤委員〕グローバルにマーケットの不確実性は高いものの、足許では引き続き非常に大型のコーポレート・アクションが活発に行われていると感じる。また、経済安全保障の観点からも、自国のサプライチェーンの維持・強化に必要といったような、政策的意義のある案件が出てくると予想され、大規模なプライベートのエクイティ資金が必要な案件は今後も出てくると考えている。JICに対する期待感は大きいものがあると考えており、PE2号ファンドを立ち上げ、JICがPEに更なる資金を投下することには違和感はない。
一方で、いつも繰り返しになってしまい恐縮だが、他の官民ファンドの過去の損失事例からの学びとして、官民ファンドにおけるビジビリティーを高めることはやはり重要であると考える。個別案件の情報を事前につぶさに把握することが難しいことは理解しているが、財投分科会に対しても、最大限の開示をしていただき、当分科会として、JIC等において規律ある投資案件の選別や投資後のフォローができているかといった観点から、引き続き議論をできればと思う。

