財政制度等審議会財政投融資分科会
議事録
財政制度等審議会財政投融資分科会議事次第
令和6年12月12日(木)14:58~16:03
財務省第3特別会議室(本庁舎4階)
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1.開会
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2.副大臣挨拶
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3.議題
- 海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)
- 有識者委員会の最終報告及び対応策等
- 質疑・応答
- 有識者委員会の最終報告及び対応策等
- 令和7年度財政投融資計画の編成上の論点
- (株)海外交通・都市開発事業支援機構
- 質疑・応答
- (株)海外交通・都市開発事業支援機構
- 海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)
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4.報告事項
- 「地方創生2.0重点イニシアティブ」について
- 質疑・応答
- 「地方創生2.0重点イニシアティブ」について
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5.閉会
配付資料
資料1-1 | 海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)の役割、在り方、経営改善策等に関する有識者委員会最終報告(概要) |
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資料1-2 | 海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)の役割、在り方、経営改善策等に関する有識者委員会最終報告 |
資料1-3 | 海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)経営改善策・改善計画 |
資料2 | 説明資料海外交通・都市開発事業支援機構 |
資料3 | 「地方創生2.0重点イニシアティブ」について |
出席者
分科会長 |
翁百合 |
斎藤財務副大臣 窪田理財局長 森田審議官 坂口総務課長 吉住財政投融資総括課長 村松資金企画室長 天井財政投融資企画官 原井管理課長 横山計画官 伊藤計画官 |
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委員 |
土居丈朗 野村浩子 丸田健太郎 家森信善 |
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臨時委員 |
有吉尚哉 岡田章裕 冨田俊基 山内利夫 |
14時58分開会
〔翁分科会長〕それでは、予定の時間となりましたので、ただいまから財政制度等審議会財政投融資分科会を開会いたします。
本日は、斎藤財務副大臣にご出席いただいております。開催に当たりまして、斎藤財務副大臣よりご挨拶を頂戴したいと思います。報道関係者の方が入りますので、そのままお待ちください。
(報道関係者 入室)
〔翁分科会長〕それでは、斎藤財務副大臣、よろしくお願いいたします。
〔斎藤財務副大臣〕財政制度等審議会財政投融資分科会の開催に当たりまして、一言ご挨拶を申し上げます。
このたび財務副大臣を拝命いたしました斎藤洋明でございます。理財局も担当させていただくことになりましたので、先生方のご指導、何とぞよろしくお願い申し上げます。
翁会長をはじめまして、先生方におかれましては、日頃から熱心にご議論いただき、心より感謝を申し上げます。
本日、令和6年度補正予算、今まさに衆議院の予算委員会、修正可決をいただいたところでございますが、連日、令和7年度財政投融資計画の策定に向けて、先生方に熱心なご議論をいただいておりますこと、心より感謝を申し上げます。
本日取り上げられます案件は非常に国民的な関心も高く、また、財政の観点からも非常に重要な案件でございます。先生方には引き続き熱心なご議論をいただきまして、よりよい財政投融資計画をつくれますよう、私どもも全力を尽くしてまいりますので、何とぞご指導よろしくお願い申し上げます。大変ありがとうございます。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは、報道関係者の方々はご退室をお願いいたします。
(報道関係者 退室)
〔翁分科会長〕それでは、議事に移ります。
本日は、国土交通省及び株式会社海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)より、JOIN有識者委員会の最終報告及びそれを踏まえた対応策などにつきまして、ご説明をいただきます。そして、それに対する皆様のご意見を伺った上で、JOINの改要求等の令和7年度財政投融資計画の編成上の論点についてご議論いただきたいと思います。その後、地方創生2.0重点イニシアティブについてご報告をいただきます。
時間が限られておりますので、ご質問、ご意見などはできるだけ簡潔にお願いいたします。
また、議事に先立ちまして、令和6年度財政投融資計画補正等については、先般、持ち回りにて開催したところですが、原案のとおりとなっておりますので、ご報告いたします。
それでは、議事を進めたいと思います。国土交通省及びJOINの関係者の方々が入室されますので、しばらくお待ちください。
(JOIN関係者 着席)
〔翁分科会長〕JOINにつきましては、多額の損失計上となったため、当分科会としましても問題意識を持ち、複数回にわたり国土交通省から説明を受けましたが、今般、土居委員長の下、有識者委員会において精力的にご議論、最終報告の取りまとめをいただきました。
さらに、それを踏まえ、国土交通省・JOINにおいて、改善に向けた対応策などをまとめられたとのことですので、説明をお願いいたします。
〔国土交通省田中国際統括官〕国土交通省の国際統括官の田中でございます。前回、11月15日にJOINに関する有識者委員会の最終報告(骨子)についてご説明いたしましたが、これを踏まえ、また、その際の財投分科会でのご議論も踏まえまして、本日、最終報告の公表に至りました。JOINの存廃を含めて在り方を議論した、この有識者委員会におきまして、徹底した改革を行うことをもって存続を認めるということとされております。この最終報告を踏まえまして、国土交通省において、大臣にもお諮りいたしまして、JOIN存続の前提となる徹底した改革を取りまとめたところでございます。国土交通省としましては、本日、これからご説明する改善計画や改善策はJOINを存続させるに値するものになっていると考えておりますところ、これらについてご説明させていただきます。
最初に、最終報告についてでございます。
資料1-1の概要でございますが、ここに示されているポイントにつきましては、前回ご説明したものから変わっておりません。前回の分科会でご指摘のあった点につきましては、組織体制の課題などを中心に、有識者委員会でもご議論いただいた上で、最終報告に反映させていただきました。これを踏まえた改善計画についてこれからご説明いたしますが、分科会でいただいたご意見の反映についても主要な点を触れさせていただきます。
まず、次の最終報告を踏まえたJOINと国土交通省の改善策につきましては、説明資料という資料、資料番号1-3でございます。これで説明をしてまいります。
最初のページから7ページ目までの部分で改善策を載せています。
1ページ目は、投資リスク管理に関するものでございます。
1つ目は上限設定の導入による適切なリスク管理の抑止への対応になります。カントリーリスクへの対応としまして、全体ポートフォリオにおける上限割合の設定を行い、同様に、1件当たりの投資規模についても上限割合の設定を行い、過度な投資への歯止めをかけるということにしております。こうした方針につきましては、今月中にJOINの取締役会等で方針を決定いたしまして、関連する内規を年度内に整備いたします。
それから、分科会の中でも、仮に事業を継続するとしても、損失に至った事業の関連分野には投資しないという方針を示すべきというご意見をいただいておりました。これに関連しまして、まずベンチャー投資につきまして、最終報告において、JOINの扱う意義や規模の在り方を整理し、体制を整えるまでの間は投資を停止するということにされておりますので、これを受けて、その方針を今月中に決定し、年度内に内規の措置も行います。
また、もう1点、高速鉄道システムに関しましても、初期段階からの出資を対象外とするというところが今回の反省を踏まえた点でございまして、こちらにつきましても、今月中に取締役会で方針を決議いたします。
2ページ目は、案件ごとのリスクの把握の在り方に関するもので、プットオプションや債務保証などのエクスポージャーについての可視化が求められたことにつきまして、事業報告書等で可視化などを直ちに実施することとしております。事業委員会の強化・運用改善につきましては、新規案件の複数回審査の実施などの方針を今月中にJOINの取締役会等で決議いたします。
それから、定期的な第三者評価の導入も求められておりますが、こちらは直ちに検討に着手して、今年度中に試行、トライアルを行いながら新たな枠組みの構築を行っていく予定でございます。その上で、来年度以降に本格的に導入してまいります。
そして、さらなる取組として指摘された現在価値の的確な把握につきましては、官民ファンド共通の取組として進む公正価値評価の検討をJOINでも適切に行っていく予定でございます。
3ページ目、全体ポートフォリオ管理の観点からの累損解消に向けた取組についてです。JOINにおきましては、これまで着実な収益を上げている都市開発や物流分野の拡充、操業段階のブラウンフィールドの案件を増加させるという方向性、これを今月中に決議するということにしております。ポートフォリオの詳細につきましては、後ほどJカーブの説明で詳しくご説明いたします。
3ページ目の下段ですけれども、厳格なリスク管理のための方策の中で、撤退やExitの方針・基準を明確化するということへの対応も記載されております。個別事業の収益などを勘案して適切な時期にExitすることや、大幅な収益悪化などの撤退要件を明確化すること、事業の見直しや撤退に向けた客観的なレビューの検討が必要とされておりまして、こうした方針につきまして、JOINの取締役会等で今月中に決議、年度内に内規を整備ということにしております。
4ページ目上段に、民間イニシアティブの担保のあり方とございます。こちらも今回の損失計上を踏まえた反省点を踏まえたものでございますが、リスクの大きい先行出資を対象外にすることや、リスク抑止策などについて、今月中にJOINの取締役会にて方針を決議して、年度内に内規を整備いたします。
下段に行きまして、関係政府機関との連携のあり方でございますが、JBIC、JICA、NEXI等とのより一層の連携を行う方針につきまして、今月中にJOINの取締役会にて方針決定、可能なものから速やかに実施いたします。
5ページ目の上段でございますが、監督官庁の関与のあり方の改善としまして、国交省の対応を記載しております。政府のサポートの強化といたしまして、来年1月に国交省で省内実務者連絡会議を発足させます。また、関係省庁との連絡調整も強化するため、こちらは年内から相談を開始していきたいと思います。
個別事業の検証の際に、支援事業のモニタリングにおいて、制度趣旨に合致しない懸念が生じた場合の対応についての改善が求められておりますので、これを受けて、JOINに設置する予定の第三者評価の枠組みを活用しまして、その評価結果を国土交通省へ報告し、これを基に必要な措置を取る仕組みを構築することで改善を行ってまいります。これにつきましての対応スケジュールは、JOINの第三者評価の対応と同一でございますが、年度内にトライアルをして、新たな枠組みを構築、来年度から本格的に導入となります。
このほか、法律に基づく5年ごとの制度の見直しに当たりまして、今回の有識者委員会のように外部有識者の目を入れて、組織の存廃を含めて見直しを実施するということにつきまして、年度内に実施要領を改正して明確化いたします。
それから、最終報告の第Ⅵ章に記載された改善状況のフォローアップの必要性でございますが、こちらは分科会の中でも、誰がどのように改善状況をフォローアップするのか。そういったところについてのご指摘をいただいておりましたが、国交省が年度内に今回の有識者委員会のフォローアップ会合を実施しまして、改善状況の確認を行っていただくことを考えております。
このページの下の段の損失計上等のリスク情報・ネガティブ情報の説明・公表につきましては、ご指摘いただいた事項について今年度決算より適用してまいります。
6ページ目からは組織体制についてでございます。
まず1点目、効果的なハンズオン支援でございます。こちらにつきましては、分科会の中でも60人という小規模の体制で支援が必要とされる海外の事業にどういうふうに関与していくのかという点のご指摘をいただいておりました。JOINの少ない人員で、ファイナンスに加えて、プロジェクトに係る専門的知見の提供ができるように、案件形成時の外部人材の活用などの方策を検討いたします。
ハンズオン支援の内容や方法改善、更なる人脈・ネットワークの構築も含めまして、直ちに検討に着手して、事業管理体制の再構築やキーパーソンリストの作成など、可能なものから速やかに実施してまいります。
2点目の組織ガバナンスの強化でございますが、こちらにつきましては、分科会の中でも改善策を具体化する上で、どのような体制上の問題があったのかということを特定して検証すべきというご指摘をいただいております。最終報告の中でも、事業の途中で撤退の可能性を検討すべきだったのにできなかったということについて、組織内の同調圧力を牽制するガバナンスが欠如していたからではないかというご指摘を記載させていただいております。
これにつきまして、事業推進に対する歯止めとなる牽制機能の強化といたしまして、案件審査に関する社内会議を牽制の利く合議制にするなど、必要な措置に直ちに着手しまして、今年度中に実施し、枠組みを構築してまいります。その他ガバナンスの強化を図るために最終報告でJOIN内関係者の意識改革を行うべきと指摘されておりますので、これを踏まえて、社内に社長をトップとするJOIN改革推進本部を立ち上げまして、社員の声を聞きながら可能なものから速やかに実施してまいります。
3点目の業務執行体制の強化につきましては、投資ファンド出身者を一定数確保するなど、エクイティファイナンス審査体制を強化するため、直ちに検討に着手してまいります。どのような人材を確保できるか、国交省もサポートしながら検討して、今年度内に方針を定めるということにしております。また、最終報告の最後に指摘された固定費の削減につきましても、今年度中にオフィス縮小に着手するなどの対応を行う予定でございます。
以上が最終報告を踏まえた対応でございますが、次に、策定した改善計画について、ご説明いたします。
新たな改善計画は、JOINの実績を踏まえた達成可能なものとすべく、安定的な達成が見込まれる条件としまして、想定のIRRを3.0%、毎年の投資計画額を220億円と設定しております。これにより、遅くとも2049年度の累積損失解消を目指すものとしております。
9ページ目に、具体的な条件設定の状況を記載しております。想定IRRにつきましては、従来は5.0%と置いていたところですけれども、これまでの支援案件のうち、損失計上した事業を除く35件の実績を踏まえまして、グリーン案件、ブラウン案件の別や、事業分野を踏まえました配当開始時期、投資期間、IRRの平均値を資料のとおり算出しているところでございます。
今後の投資比率につきましては、これまで着実に実績を上げている都市開発、物流分野、あるいは操業段階のブラウン案件、こうしたものの割合を増やしていくということにしておりまして、これを踏まえて、改善計画における想定IRRは3.0%と算出されております。
年間投資額につきましては、直近5か年の平均は約412億円でございましたが、今般、新たに設ける1件当たりの投資上限額を過去に遡って適用したと仮定した場合、直近5年の平均投資額は約220億円となることから、改善計画における年間投資額を220億円と設定しております。
次の10ページで、まず累積損失解消年度でございますが、解消される年度は2049年度と見込まれております。その下に投資限度額について記載しておりますが、有識者委員会で指摘を受けました1件当たりの投資規模について、総資産額に対する上限割合を設定して、適切にリスクマネジメントを行うこととしております。中・低リスク国につきましては、総資産額2,034億円に対して約5%としまして、ただし、業績が好調なものや都市開発・物流案件で高収益が認められるものは、倍の10%としております。
一方、改善後すぐの令和7年度、8年度につきましては、一律5%としております。ブラジルやバングラデシュ等の高リスク国につきましては、より慎重な対応が必要ということで、半分の2.5%と設定しております。1か国で複数案件を行う場合でも、その年の合計は最大100億円ということで、キャップも併せてかけていくということにしております。
国・地域当たりの投資規模につきましても、総資産額に対する上限割合を設定して、特定の国・地域に偏り過ぎないよう適切にリスク管理を行います。国・地域ごとに1割を上限として、既往の業績が良好な国・地域は倍の2割といたします。既に上限割合を超えている国等の案件につきましては、個別に慎重に検討していくことといたします。
以上が新たに策定いたしました改善計画の説明となりますが、改善計画に関しまして、JOINの武貞社長から補足の説明がございます。
〔海外交通・都市開発事業支援機構武貞代表取締役社長〕この改善計画では、2049年の累損解消という形になっておりますが、執行部としましては、これでいいとは思っておりませんので、極力これを前倒しにできるように、まず今般、昨年度、減損したものの回収は見込んでおりませんし、既往の案件につきましてもストレスケースで入れております。また、新規の案件も3.0%とあまりにも低いということで、より高いレベルのものを求めまして、1年でも早く累損解消できるように努力していきたいと思っております。
〔国土交通省田中国際統括官〕以上の改善後の計画の達成にしっかりと取り組みまして、着実に累積損失の解消を行うこととしたいと考えております。このため、2025年度に新規支援決定を再開して、新規案件に取り組む必要がございますので、令和7年度財投要求につきまして改要求を提出いたしました。ご審議、どうぞよろしくお願いいたします。
以上でございます。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。土居委員長におかれては、幅広い論点につき取りまとめをいただきまして、ありがとうございました。最終報告の結論を踏まえ、国土交通省において大臣にもお諮りした上で、対応策・改善計画を取りまとめ、これらがJOINを存続させるに値するものと国土交通省として判断しているとのご説明でございました。その上で、当分科会は、財政投融資に関する立場から意見を申し上げることになりますけれども、JOINの改要求の議論に進む前に、委員の皆様にも、今ご説明いただきました対応策の内容をご確認いただき、ご意見やご質問がありましたらお願いしたいと思います。こちらにいらっしゃる皆様は名札を立てていただきまして、オンラインでご出席の皆様につきましては、挙手ボタンまたはチャットにてお示しいただければと思います。
なお、ご発言の際に資料を引用される場合は、資料番号と該当ページをおっしゃっていただくようお願いいたします。
それでは、岡田委員、家森委員、お願いいたします。
〔岡田委員〕読売新聞の岡田です。本日、ご説明ありがとうございます。私のほうから、意見と質問が混じった形で、まず第一に、責任の所在ということで、この官民ファンドによるインフラ輸出というのは、政府としても積極的な攻めの姿勢のような、外交的なことも考慮して行っていったものだと思われますけれども、そうした姿勢自体は、何かとリスクテイクに慎重な日本という国においては評価できる面もあるかとは思いますが、うまくいかなかった場合には責任の所在をはっきりさせるということも、モラルハザードを防ぐ意味では必要かと思われます。
その点で、官民ファンドとはいえど、ほとんどが国の出資で、官製ファンドの色彩も強い中で、国土交通省としての責任の所在、また、JOINの経営体制における責任の所在というものはどのように考えていくべきなのか。これが第1点です。存続が決まって、5年ごとに見直すということでありますけれども、取りあえず5年、毎年毎年、重く問われていく課題かと思われます。
もう一つはリスクテイクの在り方です。この政府のインフラ戦略の新戦略の骨子というのを拝見しても、基本的には、地政学リスクが変化する中でも積極的なリスク投資をして、前向きにやっていこうという基調が示されています。ただし、今回、巨額の損失を出したことによって、全体的にリスクテイクを徹底して潰していこうというような、そうした運営方針かと思われます。そうしますと、地政学リスクというのはそもそもどういうリスクがあるのかよく分からないという、予見がなかなか難しい中でやっていく中で、リスクテイクを極力抑えていくということは、同時にその政策的な意義というものを小粒な、小ぢんまりとした手堅いものばかりに集中して、政策的意義が落ちていってしまうのではないか。そうすると、政府の積極的な、こういう時代にリスクテイクしていくということとそごが生じるのではないかという点です。
もう一つは、そことの兼ね合いでもありますけど、事業範囲ということで、鉄道はリスクが高いと。一般の国民がインフラ輸出というのをイメージした場合に、国土交通省の関係でいけば、鉄道とか港湾、空港、そういったことが普通はイメージされると思いますし、このインフラ輸出戦略でも光海底ケーブルとか、データセンター、デジタルインフラ、電力インフラ、金融インフラ、宇宙インフラなどが示されています。そうした中で、不動産のデベロッパー開発などは比較的手堅いかもしれませんけれども、国民が一般的にイメージするインフラの輸出ということとはかなり開きがあるんじゃないかなということを懸念はいたします。
最後に、事業の収益の見通しですけれども、これは2049年度と、これも一般の国民的感覚からすると、四半世紀先ということで、相当遠い先で、そこで収支がようやく均等になる、損失がなくなるというのはいかにも気の長い話で、あまり納得感がないように思いますし、今後の事業もそこから逆算するような形で手堅くやっていくことというのは、若干、本末転倒のような気がいたしますけれども、この辺りはなるべく損失解消時期というのは早くすることが期待されると思います。
以上です。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
家森委員、お願いします。その次、冨田委員、お願いいたします。
〔家森委員〕ありがとうございます。神戸大学の家森です。私から2点ございます。
一つは、IRRが3%という点でございます。想定IRRが3%だということでありますけれども、普通に投資をしていく上で考えるとすごく低いところになっています。これは目標ではなくて、これまでの自然体ならこのぐらいが出せるという数字みたいなのですが、目標もこの3%ということでしょうかという点です。本来は、当然こういう投資という形でやるんですから、高いリターンを、となります。もちろんリスクを見合いながらということですが、高くすれば高くするほどリスクが出ますので、そこで3%というふうに見られているのか。ここのところ、少し教えていただきたいというのが1点目です。
それから、2点目は、今、岡田先生からもご指摘あった点です。2049年度にこの累損を解消するということで、8ページのJカーブが描かれていますが、今後、我々が1年ごとに見るときに、25年後、どうなっているかというのを見るのは非常に難しいところであります。先ほど社長のほうから、なるべく早く解消するということをおっしゃっていただいたんですが、できるだけ早い段階で、これはボトムラインであって、もう少し上にいくことを、我々が毎年チェックするそういうことができるようにしていただきたいと思います。これのままですと、25年後にと言われて、その間は何も言えなくなってしまいますので、ぜひこのJカーブの見直しについてお願いしたいということです。以上でございます。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは、次に冨田委員、お願いいたします。
〔冨田委員〕ありがとうございます。国内で公共事業を行う場合には、事業ごとに整備されたマニュアルに従って、対象地域のデータなどをインプットして、費用便益分析、B/C分析が行われております。そのプロジェクトを実施する企業への投資を行う際には、費用便益分析で計算された社会全体の便益をその企業の収益に転換する。すなわち内生化し、そして、キャッシュフローを計算する必要があります。海外の事業に投資するにも、便益の計算、それを企業収益に変換する際にも様々なリスクを考慮して投資決定を行う必要があります。国内では、例えば北陸新幹線の延伸という最近の問題に対しましても、B/Cの再計算、再評価を何度も行い、そのたびにB/Cは低下してきたんですけども、財投からの貸付金の償還確実性を確保するために、貸付け料の引上げやコンセッションの長期化などの議論が当分科会でも行われてきました。極めて巨額の累損が発生した後で言っても仕方のないことかもしれませんが、産投出資という国民の負担が投入されるからには、そして、今回の報告書でも書かれているように、海外事業の大きな投資リスクに鑑みれば、B/C分析と、それを踏まえた投資採算の計算を一定の手順で行った上で投資決定を行うことが、国内事業以上に必要であると思います。
また、巨額の累損解消を経営の大目標とし、リスクを踏まえた全体ポートフォリオ管理の的確な実施ということは当然でありますが、1件当たりの投資規模を抑制することなどによりまして、民間事業者、民間投資ファンドなどの民間事業者を圧迫しないようにすることが必要であります。このように、今回の巨額の累損を考えますと、官民ファンドとしての活動領域はそれほど大きくないと思われます。
以上です。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
それでは、有吉委員、野村委員の順でお願いいたします。
〔有吉委員〕有吉でございます。まず、短い期間の中で、これまでの当分科会でのコメントも踏まえて、この報告書と、それから、対応策を取りまとめられたことにつきまして、土居先生以下、有識者委員会の委員の先生方、それから、事務局の皆様のご尽力に感謝申し上げます。
この報告書を拝見いたしますと、JOINの活動の政策的な意義というのか、産業界や金融業界からの期待の大きさということについて改めて感じました。同時に、リスク管理やガバナンスの向上のための対応策をおまとめいただいているわけですが、この報告書や対応策をまとめるだけでは何のプラスにもまだならないわけでございまして、ここでお示しになっているような対応策が着実に実施されていくことを強く期待しております。
特に体制面の見直しについては、次年度以降、強化していくというような表現がこの対応策の中で散見されますところ、この部分、言葉でまとめたというだけではなくて、実際にJOINの皆様の中で、日々ご検討いただいて、特にマイナスが大きく生じないようにするという観点を踏まえて、体制面を順次強化していっていただきたいと思います。また、方針的なものも、策定するだけではこれもこれで何の役にも立たないものでございまして、実際に出来上がった方針に従って誠実に運用するという、この運用面が一層重要だと思いますので、次年度以降ということになるのだと思いますが、しっかりつくり直したリスク管理、あるいはガバナンスの下で業務を遂行していただきたいと思います。
私からは以上でございます。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
それでは、野村委員、その後、土居委員、お願いいたします。
〔野村委員〕まず、短期間で有識者委員会の皆様にはすばらしい改善策を策定していただいたと思います。本当に今後これが20年、25年かけて粛々と進み、実行されるということを願うばかりです。この改善計画を本当に実のあるものにするにはリスク管理が必要だと、これが肝になることは言わずもがなでございますが、私が一つ気になった点だけ申し上げますと、リスク管理する上で、意思決定において、専門的かつ多様な視点が持ち込まれるということが非常に大事かと思います。先ほど国交省からのご説明の中で、これまでの振り返りとして、同調的圧力を排するガバナンスが欠如していたのではないかというようなコメントがございました。私もそれが非常に気になるところです。
具体的に気になりましたのが、リスク管理、2ページ目ですね。事業委員会を強化して、この運用の改善策を講じていくということがうたわれております。この事業委員会、構成メンバー、どういう方かというのを、ホームページ上の公開情報で拝見したところ、全員、取締役会のメンバーでした。事業委員会の委員長こそ社外取でいらっしゃいましたけども、事業委員会のメンバーが全員イコール取締役ということで、果たしてこれでよいのか、大丈夫かなという心配が生じております。やはり客観的なチェックの目というものがいかに働くかということが、リスク管理においては非常に重要だと思います。
今後こういう改善の方向性と枠組みがしっかり出されて、これを進めていく上で、改革はやはり枠組みができて、それを誰が担うのかということが成否を決めると思いますので、意思決定層から現場に至るまで、専門性があり、かつ多様なメンバーがいるということが、リスク管理をしながら進めていく上で重要ではないかと思っております。
以上です。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは、土居委員、お願いいたします。
〔土居委員〕私はこれまでは最終報告を取りまとめる側におりまして、それで有識者委員会では、本分科会でも、丸田委員、山内委員にも大変ご協力を深くいただきまして、これをうまく取りまとめることができたかなと思っております。
私はむしろ、今日は分科会の一員として、この報告書で、今後のJOINの在り方というところで、今まで各委員がご指摘してくださったリスク管理だとか経営体制の点についてのご意見については、全くもって同感でございます。
それで少し有識者委員会の委員長の立場を離れる形で一言だけコメントをさせていただきたいのは、資料1-2の最終報告の39ページの脚注10であります。これは私も、この議論に加わらせていただくまでは全く承知していなかったのですけれども、ある種、官民ファンド共通の問題点として浮かび上がってきたものなのかなと思っております。官民ファンドは株式会社ですので、東京に本社を置いていると、東京で外形標準課税の法人事業税を払わなければならないと。産業投資で出資して、そして、民間からも共同出資を仰ぎながら経営をしておられて、それでいて、毎年、JOINの場合は10億円を東京都に納税している。ちょっと言葉は悪いですけれども、東京都は特にJOINに対して何もしてくれていないんだけれども、JOINは10億円をただで東京都に差し出すというような形になっているというのは、これは日本の財政制度全体を考えたときにいかがなものかと思っております。
他の一部の官民ファンドでは上手にこれに対して免税措置などを講じておられるというような話も聞いているわけでありまして、官民ファンド全体として、公益性があり、公共的な立場である。株式会社ということではあるけれども、公益性があり、公共性があるものですから、東京都に対する納税という点については、特に外形標準課税は免じていただくというような方向で、これは理財局だけでは解決できないかもしれませんけども、場合によっては、主計局、主税局にもご協力いただきながら免じていただくような方向で議論を進めていただきたいというふうに強く思った次第でございます。
以上です。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
それでは、今の意見、委員の皆さんの意見や質問に対して、お答えをお願いいたします。
〔国土交通省田中国際統括官〕ご意見、どうもありがとうございます。
最初に岡田委員から、責任の所在についてのご質問がございました。国土交通省といたしましても、今般、多額の損失計上をJOINが出したということについては極めて重く受け止めているところでございます。国土交通省としましては、これまでのJOINの支援事業の認可に当たっては、新基準に照らして適切に判断しているというところではございましたが、有識者委員会の振り返りでも申し上げましたが、支援基準と合致しない状況が生じている点について看過してしまったのではないかという点も反省点としてございまして、今後、最終報告における改善事項に真摯に対応していくということ、それから、JOINに対しても適切に監督してまいりたいと考えておりまして、2049年度よりも少しでも早く累損が解消されるように、しっかりと取組を進めていくという所存でございます。
それから、リスクテイクの観点から、全体的にリスクを徹底的に潰すということになると政策的意義が落ちるのではないかというご指摘もございました。ここはやはりインフラの官民ファンドでございますので、全てがうまくいくわけではないにしても、JOINの全体の中できちんと吸収できるようなリスクにしないといけないという観点で、今回、一部上限を入れたりということはしておりますが、ただ、やはり政策的意義がないと、JOINが出ていく価値がないということにもなりますので、そこはしっかりと政策的意義が出るような案件形成に努めてまいりたいと思っております。
それから、事業範囲について鉄道をやらないということになると、インフラの海外展開という点でどうなのだろうかというお話がございました。今回は、高速鉄道の事業についての反省点といたしまして、高速鉄道システム全体を入れる場合については、これは官民ファンドがツールではないのではないかというところでございます。ですので、高速鉄道についても、例えばパーツだけ参画するということもあると思いますし、それから、都市鉄道になりますと、補助金とか、国のお金を入れるというよりは、むしろ官民ファンドのような民間資金でできるケースは非常にございますので、そういうところは今後も対象になっていくというふうに考えております。
収益の見通しは非常に長期的ですので納得感がないのではないかというお話が家森委員、岡田委員からございましたが、これにつきましても、先ほど武貞社長からのお話にもございましたように、かなり堅く見積もっている数字ではございますので、少しでも前倒しで解消できるようにというふうに考えております。
それから、IRR3%は、これは投資する上での実績が目標かという話を家森委員からいただきました。これはあくまでも、これまでの実績から判断して3%というふうになっておりますので、実際はもっと高いものをしっかりと実現できるように対応していくということになるかと思います。
それから、冨田委員から、国内の投資、インフラの投資についても、B/Cや投資採算分析をしっかりやっているというお話がございました。こちらにつきましては、やはり海外展開でも同じでございますので、今後そういった点もしっかり取り組むとともに、また、今回、第三者評価の枠組みも入れようと思っておりますので、こうしたところの第三者の目のご意見などもしっかりと活用して判断できるようにしていきたいと考えております。
あと、事業委員会の強化のところで、野村委員からもお話ございました。どのような形で強化すべきかのメンバーがこれでいいのかどうか、そういったところも含めて方針をしっかりと決定していきたいと考えております。
私からは以上でございます。
〔海外交通・都市開発事業支援機構武貞代表取締役社長〕すみません。1点だけ技術的な話でございますが、家森先生からご指摘ありました、3%はいかにも低いというところでございます。これは主として、為替をどう見るかで、円で3%という見込みをしておりますので、例えばドルで7%が円で何%になるかとか、ルピアで8%が円で何%になるかというところをちょっと堅めに見ておるというところがございますので、先ほど申し上げたように、決して、3%を目標にしているというよりは、為替の動静を見極めつつ、オペレーションを続けていきたいと思っております。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。特に今のご回答についてのコメントはよろしいでしょうか。大変貴重なご意見をたくさんいただいたと思いますし、これからJOIN、国土交通省に、今日のご意見、しっかり対応を図っていただければというように思っております。
言うまでもなく財政投融資における産業投資の対象は、国からの出資が将来の配当等の収益につながることが求められます。その意味で、JOINが財投機関であり続けるためには、その収益構造を抜本的に見直して、徹底した改革を図っていただくことが求められると思います。今般の対応策において、そうした取組が行われることを大前提として、JOINの改要求の説明を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
〔横山計画官〕それでは、私から、資料2に基づきまして説明させていただきます。2ページ目をご覧ください。改要求に至るまでの経緯ということでございます。
8月末の時点では、JOIN有識者委員会において議論・検証中であったということから、国土交通省からは、既約契約案件分に係る最小限の要求のみいただいていたというところでございます。有識者委員会の検証結果が出るまでは新規支援決定を見合わせるということでございましたけれども、本日公表された最終報告において、「JOINにおいて徹底した改革を行うことをもって、JOINの存続を認める」とされたこと及び国土交通省・JOINにおいて対応策を策定したということを踏まえまして、国土交通省より、新規案件分に係る「改要求」を受領したということでございます。
3ページ目が改要求の概要ということでございます。先ほどもご説明ありましたけども、JOINとしては、着実かつ早期に収益を確保する必要があるということでございます。それで、事業期間が短いブラウンフィールド(操業段階)の案件を中心に、産業投資を要求されております。
一例としましては、アジアに存在しますオフィス等が入った複合施設について管理運営する事業というもので、日系の建設会社と一緒に参画するような事業を想定されていると伺っております。
加えて、改善計画の達成のために必要な事業規模を確保するため、グリーンフィールド(計画・建設段階)の案件のうち、これまで収益を上げている都市開発分野の案件に関して政府保証を要求されているということでございます。
この改要求の増加額というのが一番右の赤で囲っているものでございまして、事業規模としては、216億円、財政投融資は201億円となっております。そのうち、産業投資が151億円、政府保証50億円となってございます。
編成上の論点が4ページ目でございます。3つ掲げておりますけれども、対応策は、JOINの今般の累積損失の反省を踏まえたものになっているか。また、対応策が着実に実行されるような仕組みが構築されているか。今般の改要求におけるポートフォリオ構築の考え方は妥当か。改善事項について確実に実行されていることを担保するためのフォローアップはどのようにあるべきかということを掲げさせていただいております。
私からは以上でございます。
〔翁分科会長〕ご説明ありがとうございました。
それでは、ただいまのご説明を踏まえまして、委員の皆様からご質問、ご意見などございましたらよろしくお願いいたします。
それでは、有吉委員、お願いいたします。
〔有吉委員〕有吉でございます。まず、この資料の内容を含めて、ご説明の中で、改善計画を達成するために早期に新規支援決定を再開したいというJOIN側のご事情というか、ニーズは理解したつもりでございます。ただ、対応策でお示しになっているものは、先ほども少しコメントで申し上げましたが、現時点で対応策が実施されているわけでは当然ないわけでございまして、今月、あるいは年度内に対応を進めていくというお話も幾つかございましたし、それから、先ほどのやり取りにもありました、例えば事業委員会の構成などについては、対応を強化するというお話はあるものの、その具体的な内容はまだオープンになっていないと理解しております。
そういった意味で、現時点で改要求で示されている計画について、一旦是認できるというものであったとしても、実際に示されている対応策が着実に実行されるのか。特に次年度以降に検討して進めていくという項目について、形式的に何か行ったというだけではなくて、実効的な取組がしっかりなされているのかということが、先ほど分科会長もおっしゃられていたとおり、大前提になると思います。
そのため、計画は計画であるということだとは思いますが、実際に、次年度に、資金供給を執行される段階においては、リスク管理とか体制面の見直し、整備の状況、特に実効的に機能しているかということを十分に踏まえて、財務省の側において執行の運用をしていただきたいと思います。
私から以上です。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
そのほかはいかがでしょうか。特にございませんでしょうか。
ここで挙げられています改要求、上のところに、3ページですね。事業期間が短いブラウンフィールドとか、加えて、これまで収益を上げている都市開発分野の案件について、政府保証も要求しているということを書いてございますけれども、今、要求されているものの中の主な項目、どんなものがあるのかということについてもご説明をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
そのほか、よろしいですか。それでは、山内委員、お願いいたします。
〔山内委員〕ご説明ありがとうございました。私も有識者会議のメンバーとしてではなく、財投分科会の委員として、一言申し上げたいと思います。
先ほど斎藤副大臣からもございました通り、国民の皆さんの関心が高いところだと認識しております。その中で、国民の皆さんの反応がどうなるかは出てみないと分からないのですが、私は2つの点に違和感を覚えられるだろうと思っています。
一つは、先ほど委員の先生方からもお話のございました2049年ぐらいに返すという、この長期間をどう考えるかということです。私は有識者委員のメンバーとして、IRRのお話にも参加させていただきました。一般的な海外のインフラ投資、グリーンフィールドも含めて、3%というのは、為替の部分を差し置いてにはなりますけれども、比較的、保守的に現実的に見ている数字であるとは思います。実際にはインフラ投資でも、グリーンフィールドで始めているものも含めて、企業の場合ですと大体10%ぐらい見ますので、それで考えればかなり保守的だと思います。さりながら、時間軸として非常に長いので、こんなに先になるんですかという反応は起こるのではないかというのが一つです。
もう一つは、損失が出た翌年に、200億円ぐらいの規模感のお金を追加で出すのですかという反応も当然あるかと思います。これについては、先ほど有吉委員からもありましたとおり、今後のリスタートに向けて必要な資金であるというところは、分かる人には分かりますけれども、分かりにくいといえば分かりにくいかもしれません。今後進めていくに当たっては、この改善計画とともに、今後のこうした要求に関しても、これを一体何のためにやるのか、実際、今進んでいる案件はどう進んでいるのか、今後どういうふうな見通しになるのかという情報開示を丁寧にやっていく必要があると考えております。それがあってこそ、関係する皆様の中での議論がさらに深まっていくと思いますので、情報開示、説明という点について特に丁寧に対応していく必要があるのではないかと考えております。
私からは以上でございます。
〔翁分科会長〕大変貴重なご意見ありがとうございます。
それでは、この段階で、質問や意見に対してご回答をお願いします。
〔横山計画官〕ありがとうございます。まず、有吉委員からのご指摘でございますが、新規要求を認めるかどうかについては、本日の議論も踏まえまして、年末に最終的に決定するわけでございますけれども、新規要求を仮に認めるとなった場合でも、おっしゃるとおり、体制整備がしっかりなされていることを確認して、その上でキャピタルコールに応じるというか、執行を認めていくということが必要ではないかと思っておりますので、今年度内に有識者委員会のフォローアップ会合を行われて、この対策案が進捗しているかどうかを確認すると伺っておりますので、そこでの議論等もよく私どももウオッチしつつ、対応がちゃんとできているかどうかというのを確認しながら執行する場合でもそういうことをやっていきたいというふうに思います。
それから、翁会長から、要求の中身についてももう少し具体的なものということでございましたけれども、先ほどご紹介したアジアの複合施設の管理運営というのが一つの例でございますが、ほかに、別のアジアの国ですけれども、商業コンプレックスのようなものと、マンションですとかそういうのがいろいろ複合されたビルディングがありまして、それを維持管理運営するような事業がほかに予定されていたり、あとは、これはグリーンの案件ですけれども、アジアにおいて物流倉庫を整備する事業というものが産業投資の要求としては想定されております。
それから、政府保証の要求といたしましては、これは先進国における案件でございますが、都市開発のグリーンの案件ということで、住宅地を整備して運営していくというような事業と伺っております。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。よろしいでしょうか。
〔窪田理財局長〕一言だけよろしいでしょうか。
〔翁分科会長〕お願いします。
〔窪田理財局長〕担当局長といたしましても大変厳しくもありがたい意見をたくさんいただきました。具体的には、今、計画官からお話し申し上げたことですが、情報開示の面も含めて、しっかりやらせていただきたいと思いますので、引き続きご指導のほどよろしくお願いいたします。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
それでは、質疑につきましては、ここで一段落させていただきたいと思います。改要求を受け入れるに当たりまして、当分科会として改めて条件をつけるというようなことはいたしませんけれども、分科会を代表して一言申し上げたいと思います。
今般の有識者委員会の議論は、主としてJOINにおける意思決定の手続きなども検証しておりまして、経営責任を問うものではないということはよく理解しておりますが、一般論として申し上げれば、巨額の損失を出し、事業等の再建を行うに当たっては、何らかの経営の責任に言及する議論があったとしても、決しておかしくはなかったものと考えております。そうした状況も踏まえて、国土交通省・JOINにおきましては、改善の進捗が着実に図られるよう、適切な対応をお願いしたいと思います。
また、今、局長からお話もございましたけれども、財務省におきましては、本日の説明や議論を踏まえながら、JOINの早期の累積損失解消に向けて、改要求内容を精査するようにお願いしたいと思っております。
その上で、2点申し上げます。
まず1点目ですが、対応策において、JOINの改善状況について、第三者の目を入れたフォローアップを行うとの説明がございました。多くの委員がおっしゃっていましたように、計画を立てるだけではなく、その進捗をきちんとフォローアップするということが重要だと思っております。
国土交通省におきましては、引き続きしっかり対応していただくとともに、その状況等について当分科会にも適宜ご報告をしていただきたいと思っております。
2点目として、万一、再度、多額の損失が発生するようなことがあれば、先ほど申し上げた経営責任の取り方も含めて対応いただくことが必要ではないかと考えております。また、先ほどご説明いただきましたとおり、組織の存廃の検討を含めて、今後5年ごとに見直しを行っていくというご説明がございましたが、状況によっては、5年を待たずとも、統廃合を含めた組織の在り方の検討を行っていただくことが必要になる場面もあるのではないかと思います。国土交通省・JOINにおかれましては、そのような事態に陥らないように、緊張感を持って運営に当たっていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、ここでJOINの関係者の方々にはご退席をいただきたいと思います。どうもありがとうございました。
(JOIN関係者 退席)
〔翁分科会長〕斎藤財務副大臣は、ほかの公務のためにここで退席されます。今日はどうもありがとうございました。
〔斎藤財務副大臣〕ありがとうございました。先生方、ありがとうございます。引き続き、よろしくお願いします。
(斎藤財務副大臣 退席)
〔翁分科会長〕それでは、続きまして、報告事項に移ります。「地方創生2.0重点イニシアティブ」につきまして、吉住財政投融資総括課長よりご説明をお願いいたします。
〔吉住財政投融資総括課長〕財政投融資総括課長の吉住でございます。時間の関係がございますので、簡単にご紹介させていただきます。
資料3でございますが、現政権におきまして、地方創生が非常に重要な課題と、最重要課題の一つとなっていることを踏まえまして、産業投資を活用いたしまして、地方創生2.0重点イニシアティブという形で、民間資金と併せた事業規模でございますが、1,000億円をめどに、新しい地方経済の創生につながる事業に対し、優先的に資金供給を行うことを想定し、今まさにやっております令和7年度財投計画の編成の中で対応してまいりたいと考えております。
以上でございます。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
ただいまのご説明につきまして、委員の皆様からご質問、ご意見などございますでしょうか。
野村委員、お願いいたします。
〔野村委員〕この資金供給の方針、大方針のようなものがありましたら教えていただきたいと思います。例えば民間資金と併せて1,000億円めどということですけども、その官民の比率ですとか、また、重点分野、特にこういうところを対象に資金供給するという重点分野などございましたら教えていただけないでしょうか。
〔吉住財政投融資総括課長〕ありがとうございます。まだ現在編成中ではございますが、最初におっしゃられました民間資金との関係でございますが、今、財投機関は、ご案内のとおり、民業補完でございますので、財投機関が何らかの出資をする場合には、民間出資と併せてやっていくという形になっておりますので、そういった比率で民間資金が呼び込まれてくるというふうに考えております。
加えまして、分野につきましては、地方創生に役立つ分野ということでございますので、地方の大学発ベンチャーでございますとか、あるいは地熱とか、そういったことを含めた地方の再生可能エネルギーでございますとか、いろいろな分野があろうかと思いますけども、いずれにいたしましても、どういう分野に何を考えているかということを含めまして、現在聞き取って、編成を進めているというところでございます。
〔翁分科会長〕それでは、岡田委員、お願いいたします。
〔岡田委員〕岡田です。ご説明ありがとうございます。
質問ですけれども、こうした地方への資金ということでは、一般会計のほうで地方創生の交付金というものがあるかと思います。あちらのほうは、お金をもらっても地方のほうでうまく生かすアイデアというのはなかなか難しいということで、そうした課題などがかねてから指摘されていたり、あるいは、やや無駄遣いのような使われ方があるという、そうした指摘もあろうかと思います。そうした中で、財投の世界で1,000億というものを地方に、という場合に、かつ、交付金ではなくて、きちんとしたリターンを、という場合に、具体的にどういった事業でどういったふうに投じていくということで、この1,000億というものを想定されているのか、現時点でイメージできる範囲で教えていただければと思います。
〔吉住財政投融資総括課長〕ありがとうございます。釈迦に説法みたいな話でございますけども、財政投融資、投資勘定におきまして産業投資をするに当たりましては、収益が見込めるところに出資するという形でございますので、今、この編成中ではございますけれども、財投機関においてどういう形で出資していくか、どういう先が、どういうパフォーマンスを見せてくれるのかといったことを精査しながら出していく形になろうかと思っております。
どういうところをやっているのかということにつきましては、まだ編成中でございますので、繰り返しになりますが、地方経済の活性化につながるような形のものについて財投機関が、それまでの知見だったり、目利きだったりを生かしながら出資していくと。我々はその話を聞きながら、財投機関に出資するかどうかということを考えるという形になろうかというふうに考えております。
〔翁分科会長〕よろしいですか。
それでは、特に追加的なご質問がないようですので、この辺りで質疑を終了したいと思います。もし何か追加的にございましたら、事務局のほうにまたご連絡いただければと思っております。
それでは、予定の時間となりましたので、本日の議事はここまでといたします。ご議論いただいた内容のほか、追加のご意見やご質問がございましたら、事務局までお寄せいただければと思います。
本日の議事内容につきましては、この後、事務局より記者レクを行います。議事録につきましては、委員の皆様のご了解をいただいた後、財務省ホームページに掲載いたします。
次回の開催日程は、後日事務局よりご連絡をいたします。
本日はご多忙の中、誠にありがとうございました。これにて閉会いたします。
16時03分閉会