財政制度等審議会財政投融資分科会
議事録
財政制度等審議会財政投融資分科会議事次第
令和6年11月15日(金)13:59~16:13
財務省第3特別会議室(本庁舎4階)
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1.開会
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2.令和7年度財政投融資計画の編成上の論点
①(独)日本学生支援機構
質疑・応答
②(株)産業革新投資機構
質疑・応答
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3.海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)
有識者委員会の状況報告
質疑・応答
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4.閉会
配付資料
資料1 |
説明資料独立行政法人日本学生支援機構 |
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資料2 |
説明資料株式会社産業革新投資機構 |
資料3-1 |
論点整理を踏まえた検証・検討事項について |
資料3-2 |
「海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)の役割、在り方、経営改善策等に関する有識者委員会」最終報告(骨子案) |
出席者
分科会長 |
翁百合 |
窪田理財局長 森田審議官 坂口総務課長 吉住財政投融資総括課長 村松資金企画室長 天井財政投融資企画官 横山計画官 伊藤計画官 |
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委員 |
土居丈朗 野村浩子 丸田健太郎 家森信善 渡辺努 |
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臨時委員 |
有吉尚哉 岡田章裕 工藤禎子 小枝淳子 山内利夫 |
13時59分開会
〔翁分科会長〕ほぼ予定の時間となりましたので、ただいまから財政制度等審議会財政投融資分科会を開会いたします。
本日は、令和7年度財政投融資計画の編成上の論点として、独立行政法人日本学生支援機構及び株式会社産業革新投資機構についてご審議いただき、その後、海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)有識者委員会の状況報告に移ります。
時間が限られておりますので、ご質問、ご意見などはできるだけ簡潔にお願いいたします。
それでは、日本学生支援機構について、伊藤計画官より、要求の概要及び編成上の論点の説明をお願いいたします。
〔伊藤計画官〕計画官の伊藤でございます。それでは、お手元の資料に基づきましてご説明させていただきたいと思います。
まず、1枚おめくりいただきまして目次でございます。こちら、日本学生支援機構の機関の概要と令和7年度要求、そして編成上の論点を3つ掲げさせていただいております。
続きまして、1ページ飛びまして3ページをお開きいただければと思っております。資料の上段では、日本学生支援機構の設立経緯について簡単にお示ししているところでございます。日本育英会の奨学金貸与事業を前身として平成16年4月に設立された独立行政法人となっております。下段は財務の状況ということで、令和5年度末のバランスシートについて概略を掲載しているものでございます。
4ページ目をお開きください。こちら、下の図の左側にございますとおり、機構では、在学中、財投機関債等で調達いたしました短期の民間資金を活用しまして、学生に学資資金等を貸与しますが、図の中央にございますとおり、卒業時に貸与額が確定しますので、その時点で長期資金に借り換える、そのような形で運用しております。この長期資金のうち、主に有利子奨学金分を財政投融資では措置しているところでございます。
5ページ目でございます。こちら、左側は貸与人員のグラフでございますが、令和2年度給付型奨学金の拡充の影響によって貸与人員は減少傾向となってございます。一方、右側のグラフでございますが、こちら、卒業して奨学金を返還する要返還者の数を示しております。引き続き増加傾向にございます。
6ページをご覧ください。先ほどは貸与人員面でございましたが、今度は金額面について4つのグラフを用意してございます。上段2枚のグラフ、こちら、機構が行う奨学金のフローである貸与額が左側、右側が貸与残高を示したものでございますが、総じてフロー・ストックともに減少傾向にございます。これを受けまして、下の2枚のグラフ、こちらは主に有利子奨学金を対象とする財政融資資金のフロー・借入額、ストック・残高でございます。こちらについても同様に減少している傾向にございます。
7ページをご覧いただければと思います。こちらが令和7年度の要求の概要となってございます。機構は、令和7年度要求におきまして、表の赤囲みの下の部分にございますとおり、5,219億円の財政融資資金を要求されているところでございますが、この内数としまして、括弧内の57億円については、新たに授業料後払い制度分としての要求でございますので、次の論点①でご説明させていただきたいと思ってございます。
8ページ目以降、こちらについては、編成上の論点①授業料後払い制度と機構の財務の健全性についてとなってございます。
9ページへお進みいただければと思ってございます。資料上段右の概要及び背景のスキーム図にございますとおり、授業料後払い制度は、まず機構が授業料相当額を大学に支払いまして、卒業後は、学生は本人の所得額に応じて機構に後払いを行う仕組みとなってございまして、こども未来戦略等に基づき、令和6年度から大学院修士課程を対象に導入されているところでございます。
10ページをご覧ください。こちらは、既存の貸与型奨学金と授業料後払い制度の関係を整理したものでございます。資料に赤囲みをしてございますが、授業料後払い制度、こちらの返還の仕方は、平成29年度より無利子奨学金に導入されました、卒業後の所得に応じて返還の月額や期間が決まる所得連動返還方式でございまして、機関保証への加入が必須となってございます。財源でございますが、財政融資資金を活用しつつ、返還期間が長期化した場合でも無利子となるよう、一般会計から利子補給金が措置されておりまして、所得連動返還方式をベースに有利子奨学金の財源措置を組み合わせた制度となってございます。
11ページでございます。こちらは、所得連動返還方式における返還額をイメージとしてまとめたものでございます。真ん中の図にありますとおり、赤点線の定額返還方式のように、毎年一定額の定額の返還額となるものと異なりまして、青色の実線のとおり、所得連動返還方式では、毎年返還額が前年の所得に応じて変動しているということになってございます。
12ページでございます。こちらは所得連動返還方式の貸与終了から返還開始までの主な流れを示した資料となってございます。上から下に、貸与中、返還1年目、2年目という流れになっております。卒業して貸与が終了する同年の10月から奨学金の返還が開始されます。こちら、翌年の9月までは、返還額は原則として定額返還方式を選択した場合の半額となってございます。その後、機構が、卒業してから2年目の7月から8月に、これは一番下の部分になりますが、マイナンバーによりまして返還者の前年の課税所得を把握の上、返還2年目から返還額が決定されます。このため、返還額が所得に連動するのは卒業から2年目の10月以降となってございます。
13ページ目をお願いいたします。こちらは、所得連動返還方式の導入にあたり、機構に設置されている機関保証制度検証委員会において検証された内容でございますが、資料下段の右にあるとおり、平成29年3月に公表された報告書では、検証に当たりまして、返還月額の低下に相当します返還期間の長期化や、代位弁済前の段階では回収率の向上もしくは延滞率の低下に相当します代位弁済率の低下などを想定された検証が行われていたということでございます。
14ページ目でございます。今回、所得連動返還方式につきまして、返還状況を実際のデータを使って簡単に分析したものでございます。大学院段階の令和6年4月のデータに基づけば、左上、定額返還方式の返還額の分布と、左下の所得連動返還方式の返還額の分布を比べますと、左下の所得連動返還方式の返還額の分布のほうが右に寄りまして、返還月額も1.5倍程度と大きくなっております。また、定額返還方式の平均返還月額よりも多く返還した債権が全体の3分の2を占めているという状況でございます。
15ページでございますが、大学学部段階につきまして同じような分析をさせていただきました。こちら、所得連動返還方式は、定額返還方式よりも返還月額が低く、定額返還方式の平均返還月額よりも返還した債権の割合は4分の1程度となってございまして、先ほどの大学院とは少し異なる結果となってございます。
16ページ目でございます。今度は回収率について状況をまとめた表を作らせていただいたところでございますが、令和5年度について、定額返還方式と所得連動返還方式に分けて回収率を算出いたしましたところ、所得連動返還方式の回収率は定額返還方式よりも低い結果となってございます。
17ページでございます。今度は、3か月延滞債権の割合を示した資料となってございます。大学院・学部段階ともに、定額返還方式選択者に比べ所得連動方式の選択者は3か月延滞債権の割合が高いという状況になってございます。
18ページでございます。これまでは所得連動返還方式の状況につきまして見てまいりましたが、機構の奨学金事業の現状をまとめてみたところでございます。左側のグラフになりますが、機構全体の延滞債権の金額・構成比率ともに若干低下傾向にございます。一方で右側のリスク管理債権のグラフを見ていただくと、リスク管理債権のうち、返還期限猶予等の適用を受けました貸出条件緩和債権が増えてございまして、こちらが延滞債権の低下と逆になっている関係上、リスク管理債権の金額・構成比率ともに上昇に寄与している、そのような状況になってございます。
19ページ目でございます。こちらは編成上の論点1つ目、授業料後払い制度と機構の財務の健全性について整理したものでございますが、資料の下段の矢じりの1つ目でございます。所得連動返還方式選択者に延滞率が高い傾向が見て取れること、機構のリスク管理債権が増加、リスク債権比率も上昇していることを踏まえて、機構は、授業料後払い制度の導入を受け、債権管理・回収に係る機能・体制を強化する必要があるのではないか。2つ目の矢じりでございます。現状の大学学部段階における所得連動返還方式の返還状況を踏まえれば、所得連動返還方式の更なる拡大に当たっては、文部科学省及び機構で返還状況や延滞者の傾向・特徴などについてさらに詳細な検証を行うべきではないか、このように考えてございます。
20ページ以降でございます。こちら、編成上の論点2つ目、機関保証制度の健全性についてのご説明となります。
21ページ目をお開きいただければと思っております。こちら、機関保証制度のスキーム図でございます。中ほどのピンクの矢印にありますとおり、機関保証選択者は、毎月奨学金から2,000円程度の保証料が差し引かれ、それを原資に保証事業が運営されてございます。
22ページでございます。こちら左のグラフ、保証債務全体の残高の推移でございますが、こちらは累増しております。一方、こちらを有利子・無利子に分けたものが右側の2枚のグラフとなってございます。上が有利子、下が無利子でございますが、どちらも機関保証対象債権額の構成比率が一貫して増加していることが分かると思います。
23ページでございます。今度は機関保証事業の事業収入のグラフを左側に取ってございます。無利子奨学金の保証料が所得連動返還方式の導入に伴い約15%引き下げられました影響もありまして、保証料収入については減少傾向にございますものの、JEESが代位弁済を受けて取得いたします求償債権の回収額は増加しておりまして、事業収入全体としては微増となってございます。
続きまして、右のグラフでございます。今度は機関保証を選択する債権の割合でございますが、総じて増加傾向にございまして、令和5年度は56.4%と、新規債権の半分以上が機関保証債権となってございます。
24ページでございます。今度は機関保証の事業収支を表したグラフを左側に用意してございますが、棒グラフの代位弁済額の増加に伴いまして悪化してございまして、令和5年度、赤の折れ線グラフでございますが、35億円の赤字を記録してございます。これに伴いまして、右側のグラフでございますが、機関保証事業の健全性を表します保有財産の残高は大きく減少しておりまして、平成30年に比べると143億円の減少となってございます。
25ページでございます。今度は左側のグラフに代位弁済額と求償債権回収額、右側のグラフが債権残高の推移をまとめております。代位弁済額が年々増加する中、JEESが代わりに取得します求償債権の回収額も増加しておりますが、代位弁済額の2割程度となってございます。このため、求償債権残高は増加しており、令和5年度末時点で1,613億円となってございます。
26ページ目をお願いいたします。こちらは編成上の論点2つ目、機関保証制度の健全性について整理させていただきました。矢印下の部分でございますが、今後、代位弁済額がさらに増加いたしますと、事業収支の赤字拡大を招くおそれがございますので、足元の状況を踏まえ、機関保証制度の健全性をより保守的に検証するとともに、関係する文部科学省・機構・JEESが一体となって、事業収支の適正化をはじめとする対応策を検討・実施すべきではないかと考えてございます。
続きまして、27ページ以降は、今度は編成上の論点3つ目でございます。奨学金返還の必要性に関する周知・意識醸成に向けた取組についてとなってございます。
資料28ページ目にお進みいただければと思います。資料下段の左にございますとおり、これまでも学生のマネーリテラシーの向上に向け様々な取組を機構では実施されておりますが、このたび新たに、金融庁や日銀などが参画いたします金融経済教育推進会議に参加され、一緒になって「お金を借りる」というパートの中で動画講座を開設されているなど、新たな取組を実施されているところでございます。
続きまして、29ページでございます。機構で毎年度実施しております奨学金の返還者に関する属性調査について、主なものをまとめたものを掲載いたしました。特に左側のグラフになりますが、返還義務を延滞督促を受けてから知ったと回答する延滞者の割合は、無延滞者に比べてまだ依然として高い水準にあるものの、年々低下している傾向にございます。
30ページ目をお願いいたします。機構で行われている様々な取組の実施状況の中で、特に、スカラシップ・アドバイザーについて、平成29年度よりファイナンシャル・プランナーなどを養成・認定して派遣する事業でございますが、こちらの状況をまとめたものが下の2枚のグラフとなってございます。真ん中がスカラシップ・アドバイザーの登録者数、右端が派遣数のグラフとなっておりますが、どちらも減少傾向でございまして、特に派遣数は令和5年度が令和2年度の半分程度にまで落ち込んでいる状況でございます。
31ページをご覧ください。今度は、学生向けにオンライン等で提供しておりますサポートツールのアクセス件数等をまとめたものでございますが、どちらも右肩下がりになっておりまして、利用実績が低迷していることが分かると思います。
32ページでございます。先ほどご説明させていただきました属性調査に関する資料でございますが、属性調査は郵送の調査票に記入する形式で実施されておりますが、近年、回答率が大幅に低下しておりまして、直近では有効回答数が平成27年の半分まで減少している状況でございます。
これを受けまして、33ページ目でございます。編成上の論点3つ目を整理したものでございますが、資料下段の1つ目の矢じりでございます。授業料後払い制度の導入に当たり奨学生のマネーリテラシーの向上を図ることが一層重要になることから、機構は、スカラシップ・アドバイザー派遣事業等の取組について、EBPMの観点から、活動実績やその効果を定量的に検証・評価し、メリハリをつけて強化策を検討するべきではないか。
続きまして、2つ目の矢じりでございます。「奨学金の返還者に関する属性調査」は、調査の有効性を確保するため、オンライン調査など回答者の負担軽減につながる調査形式を検討すべきではないか、そのように考えている次第でございます。
私の説明は以上でございます。どうもありがとうございます。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
それでは、ただいまのご説明を踏まえまして、委員の皆様からご意見・ご質問をお願いしたいと思います。会場にいらっしゃる皆様は名前の札を立てていただきまして、オンラインでご出席の皆様は挙手ボタンまたはチャットでお示しください。ご発言の際に資料を引用される場合には、資料番号と該当ページをおっしゃっていただくようお願いいたします。なお、要求側の方もいらしていますので、ご質問いただいても結構でございます。
それでは、家森委員、野村委員、有吉委員、土居委員の順でお願いいたします。
〔家森委員〕神戸大学の家森です。
機構ないしは文部科学省様にお尋ねしたいと思います。延滞率に関してです。所得連動型と通常のものを比較すると、所得連動のほうがお金がないときには返済を待ってもらえるということなので、制度導入のときにはこちらのほうが延滞率が下がるのではないかと予想していたのですが、逆の状況になっています。これはどういうことだろうかと思いまして、どのような分析をされているのかという点です。
また、財務省の資料では、回収管理、そういうところの強化ということが記載されていますが、根本的にこの差をなくしていくような方向の取組について、もう具体策はあるのでしょうかというのが1つ目です。
それから2つ目は、機関保証と人的保証の部分です。私は企業金融を専門にしておりまして、企業金融のほうで経営者保証というのをなくしましょうということで動いており、連帯保証というのはもう基本なくなっているところです。この奨学金制度における人的保証の在り方についてはどのようにお考えなのか、という点です。
以上です。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。後でまとめてお答えいただきます。
それでは、野村委員お願いします。
〔野村委員〕ご説明ありがとうございました。
まず、論点3に関してですが、借りる学生への意識づけというのが非常に重要だと思っています。私が以前、大学の専任教員だったときに、学生に、奨学金は卒業するときに200万、300万の借金を背負って社会に出ていくということなんだよと言うと、みんなぽかんとしていて、ちょっと言っている意味がよく分からないという。借金という意識、借りて返さなきゃいけないという意識がなく借りている学生がすごく多いのです。全国平均と同じく、私の周りの学生も大体4割、5割が奨学金をもらっていて、なおかつ、それだけで賄えているかというとそうではなくて、プラス、自分でアルバイトをして、奨学金とアルバイト代で大体学費は自分で払うという学生が多くを占めていました。では、そういう学生は返済可能性が低いので貸さなければいいのかというと、そういうことでは全くなくて、奨学金があるおかげでようやく大学に来られているという学生が本当に多くいたので、この奨学金の意義は大きいものだと思っています。しかし、借りているものを返すという意識づけのために、やはりマネーリテラシー教育をもっと徹底するべきで、オンライン学習の受講とかセミナーの受講、それを条件として奨学金を出しますよというような、そういう条件づけをしてもいいぐらいだと思います。
取組を様々なさっている中で、スカラシップ・アドバイザーなども行っていらっしゃいますが、ここで30ページのところにありますように、登録者が大幅に減少していて派遣数が半減しているという、力を入れなければいけないのに、どうしてこういうような状況になっているのか、これに関しては質問です。
それから、論点2の所得連動方式ですが、今、家森委員がおっしゃったように、なぜこの延滞率が高くなるのかというところの理由をもう少し分析する必要があると思います。返済率が低いということの理由分析、背景分析と併せて、やはり借りている人たちの生活状況の把握というものも併せて行ったほうがよいのではないか、合わせ鏡だと思うのです。それは機構の管轄外かもしれませんが、生活が苦しい状況があって返せないという状況があるとしたら、もう少しその実態を把握する必要があると思います。
ちょうど昨日の新聞記事でも、労働者福祉中央協議会というところが調べたアンケート調査で、奨学金の返済によって結婚・出産への影響があると4割ぐらいの人が答えていて、食費への影響も感じているという人が半数近くというような、そういうアンケート調査も出ておりましたので、そういう実態調査と併せて分析されるとよいかと思います。
以上です。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
それでは、有吉委員お願いします。
〔有吉委員〕有吉でございます。私は奨学金制度については全くの素人で、大変恐縮でございますけど、日頃金融実務に関わっているという立場から、2点ほどコメントないしご質問をさせていただきたいと思います。
1点目は、今、野村先生がおっしゃっていた1点目のコメントとほとんど重複する内容ではございますけど、資料1の29ページのデータであるとか、あるいは奨学金に関して日頃出てまいります報道等を拝見いたしますと、奨学金を申請する段階において、それが借金であることを本当に意識しているのかとか、さらには、将来厳しい返済の負担があることを十分考慮したり理解した上で、奨学金が申請されているのかということを若干疑問に感じるところがございます。そういった意識なしに奨学金の申請がなされているケースが少なからず存在しているのではないのかなと思うわけであります。
そういった中で、資料1の33ページの論点3との関係で、奨学金を受けた者に対する金融リテラシーの強化、周知とか意識醸成ということも、それはそれでとても大事であることは分かるわけでありますが、もっと重要なのは、奨学金を申請する前の段階で周知活動、説明活動をするということではないかと思います。そもそも、貸与型という名称がついているとしても、私はこの奨学金という呼び名自体が非常にミスリーディングだと思います。これまでの経緯がございますので、この名前を変えろというのは無理なのかもしれませんが、これが借金であるということが明らかになるようにしっかり表示をして、そうしてこの申請を受け付けるという運用をもう少ししていくべきなのではないかなと思います。
それから2点目は、既に家森委員がご質問されていたことと全く同じなのでありますが、昨今、企業の経営者保証ですら人的保証はもう取るなという方向になっているにもかかわらず、この奨学金制度の中では個人保証が出てくるのは一体どういうことなんだろうと素朴に疑問に思いました。ここは、私自身奨学金制度についてよく分かっていないということもあっての質問かもしれませんが、どういう背景、それから今どうお考えになっているのかを伺いたいと思います。
私からは以上でございます。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
それでは、土居委員お願いします。
〔土居委員〕ご説明どうもありがとうございました。
今、有吉委員がおっしゃった直後なので、まず先にそのことについて言及したいと思います。日本学生支援機構で募集されるときの奨学金というのは、確かに返済不要と返済必要ということぐらいは書いてあるんだけれども、貸与型という言葉があまり表に出てこないというわけです。だけども、釈迦に説法ですけど、行政ないしは予算の議論をするときには、給付型奨学金、貸与型奨学金という言葉はよく使う言葉で、なかなか学生に貸与型ということが必ずしも十分に伝わっていないんじゃないか。第一種・第二種とかという形で表示されることが多いとなると、有利子なのか無利子なのかというのも、要項を読めば分かるけれども、看板にはそうダイレクトには書いていないというのは、若干それが影響しているという可能性はあるのかなと思ったということ、これは感想でございます。
それから、もう少し本題に入りますと、資料の14ページと15ページの返還状況ですけれども、もちろんこれは、期待値の意味では、この両者が同じになるような、つまり、平均的に見ると、その両者は無差別であるというようなことになることが期待されるような形で所得連動返還方式を設計するということになるのかなと思います。もちろん、手数料だとか経費だとか、そういうところがあるので、その分ずれるということはあってもいいと思いますけども、どちらを取っても、結果的には期待値の意味では変わらないけれども、所得が多いときと少ないときとがライフステージの中で出てくるということを懸念する奨学生がおられたら、毎月定額で返せないかもしれない、だから所得連動型を選ぶということでリスクヘッジしながら、自分が大学で学んだことを生かしながら仕事をして所得を得ていくということになる。だけども、大学院のほうは、むしろこれは奨学生にとっては負担が多かったということかもしれませんけども、日本学生支援機構の会計からみると非常にポジティブな結果になっていると。つまり、返済が滞るという延滞は別ですけど、返済してくださっている奨学生から返還してもらっている金額からすると、平均以上に返っているということだけども、学部学生のほうはそうではないというところが、この両者が極端に分かれているなと思いました。
そういう意味では、もう少し確率計算をしっかりしていただいて、できるだけ定額で返済しても、所得連動型で返済しても、それほど大きく変わらないというような形。だから、乱暴な言い方をすると、大学院生はさすがに学位を得て社会に出られるということだから、それなりに高い所得に恵まれる機会が多いということかもしれないけども、所得連動返還方式を選んだ学部学生は、残念ながら今のところそうではないと。もちろんこれは、今までのところということなので、今後彼らが40代、50代――そこまで返済を迫られないのかもしませんけども、もう少し年齢がたったところで、それでもこういう状況なのか、でもやっぱり頑張って、その結果としてきちんと平均返還月額に直したところでも定額返還方式と同等のレベルになってくるというところにいずれなるということであるのかは、まだ予断を許さないところはありますけども、少なくともそういうところは確率計算の問題だと思いますので、上手にデータを取って、所得連動返還方式でもしっかり返済していただけるような制度設計というのが必要かと思います。
ただ、これまでのお三方の委員もご懸念されていたところということでいうと、やはり回収率が所得連動返還方式では定額返還方式よりも低いというところについては、もう少し真剣に取り組んでいただくということは必要だと思います。回収に努めるということでこの差がなくなるということであればいいんですけれども、そういうのは杞憂であってほしいですが、もしかすると、所得連動返還方式を選ぶ学生は、自分が定額では返せないということをある種予見していて、それが実現してしまっていて、さらにそれが返済すらできないというところにまで追い込まれているということになっているかもしれない。
しかも、もっと乱暴なことを言うと、単に定員割れをしている大学に入学するのを容易にするということにこれが働いていて、結局はその大学の授業料は、奨学生にとっては事実上後払いだが、大学のほうには収入が先に入っている形になっているということでもって経営が成り立つ方向に延命されているということに、これが加担していないかということです。そう想像したくはないですけれども、まさかそういうことになっていないだろうかということについては、緊張感を持ってこれからも臨んでいただきたいと。そうなってほしくないし、そうなっていないということを信じていますけども、今後のことまでも考えると、単に定員割れをしている大学の延命に加担するような形でこの奨学金が使われるということにはならないようにという緊張感を持って臨んでいただくと。それはひいては、24ページの機関保証事業の状況にも影響しているということだと思います。
ですから、返済能力だけで測るわけではないですけれども、返済能力が高まる形で大学教育を受けていただいて、そして、社会に出てしっかり所得を稼いでいただいて、返済をしていただけるという好循環をつくるためには、きちんと大学で教育を受けて、それがその後の奨学生の生涯を豊かにするものにつなげていただくということにつながっていないといけなくて、かつ、つながっていないというようなことが露骨に表れてしまうようなことがないようにするには、やはり一つの尺度としては、きちんと借りた金は返していただくということになる。かつ、ここの機関保証についても、JASSOの財務という意味では、機関保証されて返ってくるという部分ではいいのかもしれませんけども、でも、制度全体で見ると、保有資産残高が減っているという意味においては、かなり将来に悪いシグナルを今のところ出しているということですので、何とかそれを、少なくとも保有資産残高が払底するなんていうようなことにならないようなレベルでしっかりと踏みとどまっていただきたいと。そのために何が必要かということを、奨学生のデータとか、ないしは場合によっては出身大学についても遡りながら分析していただくということも必要かと思います。
既にJASSOのほうでは、延滞率の高い大学名は公表しておられるということですから、そういう姿勢というのも大事だと思いますし、まさか払底するとは思っていませんけど、もし保有財産が払底するなんていうようなことになった場合は、代位弁済をせざるを得なくなった奨学生がもともと通っていた大学はどこかというところから突き詰めて、その大学からその分を肩代わりしていただくというようなことすら考えざるを得ない。そのようなことも、想像したくないですけども、あるかもしれない。そういう意味では、そうならないようにしっかり踏みとどまって、分析を加えながら改善に努めていただきたいと思います。
以上です。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは、工藤委員、丸田委員、山内委員、渡辺委員の順でお願いいたします。工藤委員お願いいたします。
〔工藤委員〕ありがとうございます。オンラインから失礼いたします。ご説明ありがとうございました。
こういう奨学金という事業については、個人のスキルアップに加えまして、学問というのは国の基盤でございますので、その高度化を図っていくために国の資金を使うということには意義があると思います。一方で、今日ご説明をいただきましたように、所得連動方式については、奨学金貸与者のその時々の返済能力に応じた返済方式でありまして、導入当初は回収率の向上が期待されていたものの、そうはなっていないということで、要因の詳細な分析をした上で、今後どう扱っていくのかということを見直す必要があるのかなと思いました。
例えば、返済額が変動することによる毎月均等返済に比べた複雑さのようなものが影響を与えている、理解が進んでいないということがあるのか、それとも、そもそも所得連動方式のほうが、より経済状態が苦しい家庭が利用する比率が高く、在学中に学業やその他の活動に専念しづらく、卒業以降にもその影響が出ているのか。
はたまた、財政の観点からは飛び出るかもしれませんけれども、そもそも大学院卒の就職というのが、処遇アップにつながるような就職が進まない環境にあるのか、また、処遇アップするのに修士が十分なのか、処遇アップするのに十分な支援ができているのか。本当にこの収入の世帯に貸与する原資として財政の貸付が適当なのかとか、あと、どういう分野の学問で修士を取った方が卒業後どういうところに勤務されていて、その結果、延滞が起きているのかというようなことを分析することによって、今後の考えるべき打ち手というのが異なってくるのかと思います。
大変お手数がかかることだとは思いますけれども、しっかりと要因を分析した上で、奨学金制度の理解に向けた意識醸成や、そもそも修士を重んじる、財政投融資の観点を超えた、さらなる国としての基盤である学問を守るための支援策、スキルアップを促すための支援策と対応策を考えていただければと思います。
以上です。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは次に、丸田委員お願いいたします。
〔丸田委員〕丸田でございます。ご説明ありがとうございました。私のほうからは、論点1・2・3について、それぞれコメントをさせていただきます。
まず、論点1でございますけれども、こちらは他の委員の皆様からもご指摘があるように、私も、仮説の部分について、まだ分析が十分できていないのではないかと感じました。この制度が、逆に返せない人にとってのインセンティブとして機能して、返済の自信がない方が、所得連動返還を選んでいる可能性があり、その結果として、回収期間が延びてきているという仮説は1つ成り立つのではないかと思います。17ページの表も、その結果として、延滞債権割合の差が生じていると考えられなくはないと思います。一方で、この分析で全体的に見えづらいのは、所得連動返還を選んだ方・選ばなかった方の属性です。例えばその方の給与、年収等が大体どれぐらいなのかであるとか、先ほど土居委員からも出身大学別というコメントもありましたけども、やはり何らか属性を追って、それを前提としたしっかりとした仮説がないと、なかなか対策は打ちづらいのではないかと考えます。
実際に、その結果として、18ページ目に全体として重要なKPIであるリスク管理債権の比率が増えているというのは、好ましくない状況ですので、リスク管理債権比率はしっかり低減させていく必要があるのではないかと思っております。しかし、リスク管理債権比率の増加も、所得連動返還によるものなのか、それともマクロの動向によるものなのか、それとも奨学金を受けている方の属性の変化によるのかなどというところも含めて、少し分かりづらいところがございます。所得連動返還が増えたから全体としてリスク管理債権が増えたのかという点については、逆に所得連動返済であれば、15ページにありますように全体として返済の額が減って、仮に所得が低い方が所得連動返済を選択しているとすると、要返済額が減ることによって、対象となるリスク管理債権の残高自体は減る効果もあると思います。このように、リスク管理債権比率の増加理由もなかなか分かりづらい点もありますので、ここはやはり貸与者の属性別の分析を行った上で、検討を行うことが必要と感じました。
次の編成上の論点の2でございますけれども、こちらは、機関保証の加入が所得連動返還の選択に必須となることを背景として保証料を約15%下げたことによる影響があると思いますが、この現状を鑑みると、今の保証料と代位弁済実績との兼ね合いで、やはり収支モデルとしては現実的に回っていないということで、赤字が累積している状況かと思います。過去の実績からある程度データはあると思いますので、今後この収支がどうなるかというのは、当然しっかり分析・予測をされるべきだと思いますので、収支が合わないということであれば、現在の保証料の水準がやはりリスクに見合っていないということでございますので、そこを見直すことも含めて検討が必要になると思います。その意味では、実績を振り返るだけでなく、今後の予算や中長期の計画のようなものをしっかり策定し、対策をしていく必要があると思いました。
論点3は、周知活動が重要だというところでございますが、この31ページ目の表で気になりましたのが、左側の表で、例えばシミュレーションのアクセス数がこの数年でコロナを経て8割くらいに減っていて、同様に右の表の、コールセンター応答件数も同じように減っているのですが、逆に、今の時代でコールセンターだけでいいのか、例えばチャットとか、もう少しテクノロジーを活用したアクセスフレンドリーな仕組みで、貸与者との接点を増やすようなことも含めて検討が必要なのではないかと感じました。
次のページの属性調査も、今郵送でやられているというところもございますけれども、やはりここら辺ももう少しメールとかデジタルとか、そういったテクノロジーを活用することで、基本的にはもう少し調査方法を今の時代に合ったものに合わせながら、効率的かつ効果的に調査や周知を行っていただくということが必要ではないかと思いました。
私からは以上でございます。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは、山内委員お願いします。
〔山内委員〕山内でございます。ご説明ありがとうございました。今、委員の皆様からお話をいただいていることとほぼかぶっておりますが、私はマーケティングの考え方から、3点ほどコメントを申し上げたいと思います。
まず1つは、奨学金を使っていただいて最終的に返済していただくことは文字にすると回収となるものの、使っていただきながら自発的に返還していただけるよう、予防的な管理と言いますか、後で回収しに行かなければならぬ状況をつくるよりは啓蒙を通じて返還する感覚を養うなどの予防的措置が必要と考えています。
そうしますと、今頂いている資料の範囲で申し上げれば、返還している方の意識調査はあっても、返還する前の方の意識調査はなく、今借りている人や借りようとしている人たちがどのような意識を持っているかは分からないところがございました。私の近いところでも奨学金を使った人たちがいますし、先ほどの野村先生のお話も非常にリアリティーを持って伺いました。私自身も最近まで社会人学生でしたので学生のお金の話をリアリティーを持って捉えているほうだとは思うのですが、今借りようとしている人たちの状況が分からないと、どのような啓蒙をしていけばいいのかが見えないと思います。返還をされる方の調査とは別に、貸与を受けている人、受けようとしている人たちの調査、いわばマーケティング調査を充実させていただきたいということが1点目です。
2点目は、先ほど回収よりはどちらかというと予防的な管理と申しましたが、もう少し掘り下げて申し上げると、要は、返せるかどうかは、その人の収入、もっと言ってしまうとキャリアプランやキャリアパスと関係してくると思います。先ほど土居委員のお話の中でライフステージの影響というご指摘があったかと思いますが、それぞれのタイミングで余資に応じて返せる、返せないというのがあって、本来、所得連動型はそれを考慮して柔軟性を持たせようとしたのではないかとは考えております。ただ、実際のところ、そういうふうに至っていないのは、制度上の問題とは別に、借りている側がそもそも、このお金を借りて、将来どういう仕事に就いて、どれぐらい収入を得たいというキャリアプランの意識が抜けていることもあるのではないかと考えております。
幸いにして、資料の中でも触れられているとおり、金融経済教育の考え方が出てきて、フィナンシャル・ウエルビーイングという文脈で、お金のことについて、投資だけではなく、借りること、ためること、使うことも意識していきましょうという非常に良い流れがようやく出てきたと。ただそれは、その裏側に、どうやって稼ぐか、その原資を得るかというのが当然あるべきで、これは一方で、例えば文科省も関わられているキャリア教育と重なってくる部分だと思います。学生支援機構は、あくまで金融の領域から金融経済教育を見ていらっしゃるかと思いますが、このキャリアの話も必要だと思います。要は、キャリア教育とセットにして学生、マーケティングでいえば消費者に対して、意識づけを図ることが必要ではないか。これが2点目です。
3点目は、マーケティングでやはり大切なのが、意識づけのために相手にどのように刺さる伝え方をするかという点です。
誤解を恐れずに申し上げれば、現状、学生支援機構のウェブサイトは、使う方、学生の立場、特にお金のことを考えている方にとって使いづらいと思います。例えば、お金を借りるときにキャリアのことも考えようとなった時、グーグル検索で最初に出てくる、学生支援機構のキャリアのページは外国人留学生の就職相談です。もちろん、外国人留学生の就職の相談への対応も大切ですし、調べている方が多くいるから検索上位に来ている可能性もあるとは思うのですが、日本人学生がキャリアをどのように考えて、何をすればいいかという情報はすぐ出てきません。キャリアに関するページに入っていくと、キャリアのセミナー等の案内があるのですが、これは、個別の相談ではなく、先生向けの大きなセミナーやシンポジウムが出てきます。これらが出てきても、お金やキャリアのことを考えたい学生はそれよりも先のページには行かないと思います。
そうした現状のプラットフォームは、技術的な話で、いかようにも改善できると思いますが、使う方の立場に立ったプラットフォームの整備をぜひご検討いただければと思います。先ほど丸田委員からもお話もありましたアンケート調査も、今は、郵便で返したい学生はあまりいないと思います。国勢調査もインターネットという時代ですので、なるべくデジタルツールを使い、実際に使われる方のユーザー・エクスペリエンスを高めるようなプラットフォームをお考えいただき、以て最終的に、債権回収の強化というよりは予防的措置により回収率を上げていくという考え方で、お考えいただければと思います。
以上でございます。ありがとうございました。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
それでは、渡辺委員お願いいたします。
〔渡辺委員〕渡辺努です。私は経済学の研究者なんですけれども、その観点から一言だけコメントさせていただきます。
最後のページのところにたしかEBPMという言葉が出てきたかと思うんですけれども、まさにこういう大量の人数が参加しているようなプログラムにおける、しかもデータが蓄積されているわけですので、そういうところにEBPMを適用していって、どういう施策の仕方がいいかというのを分析していくというものは非常に正しいことだと思いますので、それをさらに進めていただければと思います。
ただし、今日のお話を聞いている限りにおいては、既に何人かの方からも議論が出ていますけれども、残念ながら、そのEBPMというものがしっかりやられているとは、私のような者から見ると見えません。例えば、今日何度も出てきますけれども、所得連動型と定額についての回収率の差とか、そういうものを比較している、そういう分析がありますけれども、これは本来であれば、同じような属性を持つ人がランダムに所得連動型を選ぶか、あるいは定額のほうを選ぶかという状況を生まれさせて、そのときにどういう回収率の差が出てくるかということをやらなきゃいけないわけでして、いわゆるRCTとかといいますけれども、要は、医学でいえば、ある薬を飲ませた人と、それからプラシーボの偽の薬を飲ませた人の比較をしないと薬の効き目というのは分からない。同じように、所得連動型の効き目というやつも同じような人に聞かなければ分からないわけです。
ただ、今やっている分析はそうではないわけでして、例えばリスクの高い人はもしかしたら所得連動型のほうを取るかもしれません。選択するかもしれませんので、そうすると、そちらのほうにはリスクの高い人がプールとして集まっているということになりますので、その差が結果に表れてしまうわけです。なので、そのRCTというのは、そこを何とかしてランダムに振り分けているような状況をつくり出して、それによって所得連動と定額の差というのを計算するという手法なわけで、ある意味、EBPMの一丁目一番地と言っていいぐらいの非常に初歩的なものだと思います。それが残念ながらできているようには思えませんので、その意味では、EBPMの取組というのが不足しているのかなと思います。
恐らく、そういう統計的なテクニックについて詳しい方があまりいらっしゃらない中で、単純に集計をするみたいなことに、せっかくのデータがそこで終わってしまっているんじゃないかなと思います。もちろん経済学者でも構いませんし、統計学でも構いませんし、あるいは最近では医学とか、あるいは情報系とか、そういうところの先生方でも、若い先生でも当然そういうことをやっていますので、そういう方に入っていただいて分析を手伝ってもらうということを考えてはどうかと思います。もしかしたら学生でも、優秀な人であればできる分析だと思いますので、奨学金をもらっている学生の中からやってもらうのもいいと思います。いずれにしても、今は所得連動の話だけをしましたけれども、いろいろな場面でRCTというのは使えますので、それをもっともっと積極的に使っていって、科学的に根拠のあるファクトというのは何かというものをしっかりと出すということを心がける必要があるんじゃないかなと思います。
それから、それと関係しての話なんですけれども、これも既にいろんな人から議論が出ていますけれども、こういう奨学金のようなプログラムというのを走らせることというのはどういう意味を持つのかというのを、ここもしっかりとしたとした統計的な手法で知りたいわけでしょうけれども、そのためには、奨学金をもらっている人のデータを幾ら集めてもしようがないわけでして、もらっていない人たちと比較しなければ意味がないわけです。例えば、一旦奨学金にアプライしたんだけども、何かの理由でリジェクトされてしまったとか、ちょっとだけ何かの形式的要件が整わなくてリジェクトされてしまったとか、あるいは、何か学生のほうの事情で辞退したとか、そういう学生がもしいたとすれば、それは実際に奨学金をもらった人と似たような属性を持っている可能性があるわけですので、そういう人たちの情報を捉えることによって、そういう人たちの将来の就職してからのパフォーマンスと、それから、この奨学金をもらっている人のパフォーマンスを比べて、奨学金をもらっている人のほうがしっかりいいパフォーマンスが出ているというようなことが出れば、いいプログラムだということになるわけですし、差がなければ、もらってももらわなくても大して変わりがないということをいっているわけですので、そういう意味では、やはり奨学金をもらわなかった人たちとの比較というのが非常に大事だし、そこの部分は恐らくデータがないわけでしょうから、積極的にそういうデータも集めるということをお考えになったほうがいいんじゃないかと思います。
以上です。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは、今たくさんのご意見、ご質問ございましたけれども、文科省、それから日本学生支援機構のほうから整理してお答えいただければと思います。
〔文部科学省奥野大臣官房審議官〕文部科学省の大臣官房審議官の奥野でございます。本日は非常に技術的な観点、専門的な観点から有意義なご指摘等をいただきまして、ありがとうございました。全体につきまして、いただいたご指摘につきまして、文部科学省及び学生支援機構JASSOと連携いたしましたJASSOの委員会等でご指摘いただいたような観点を踏まえて分析を行いまして、回収率の問題もしくは全体としての機関保証のサステーナビリティーの問題等につきまして、しっかりと具体策を検討してまいりたいと思います。
さらに、いただいたご指摘の中を具体的に何点かまとめますと、まず、所得連動返還方式を導入した際のシミュレーションと実績に差が生じている点につきましては、事前の仮説とのずれが生じている点、さらにその点について、特にご指摘いただいたように、定額返還と所得連動返還を選択した層の属性に関して、一定のまさに返済能力等の属性の差が生じているのではないかというような仮説について、私どももそのような点を認識しております。そういった点を踏まえて、また改めて従前の仮説と現状とのずれに関して分析をしっかりしてまいりたいと思います。
次に、いただいた論点の一つとして、機関保証と人的保証の問題でございます。特に全体の傾向といたしまして、所得連動返還方式につきましては機関保証を前提としております。定額につきましては従前から双方の方式を取っておりますが、全体の趨勢として、機関保証のほうが多くなっているという趨勢がございます。従前この問題については、文科省内等での有識者の議論におきましては、保証の選択率が人的保証と機関保証で同等であるという申請者側の選択の問題、また、奨学金の返還率は、機関保証に比べて人的保証のほうが高いというような実情、そして、修学支援新制度その他の制度見直しの影響等も鑑みる必要があるという観点で、基本的には機関保証と人的保証の選択性というのを維持しているところでございます。
ただ、様々な社会要因等が変化している中、人的保証に対する社会的な評価、さらには少子化の影響等において、人的保証の確保というのが困難になっていくような状況等、そういった全体状況等を含めまして、機関保証を含めた保証制度の在り方等につきましても、今回いただいた観点を踏まえまして改めて検討してまいりたいと存じます。
そしてもう1点、意識づけ、リテラシーの問題につきましてご意見いただきました。主として2つの観点があろうかと思います。まずは、まさに貸付けの契約時点における契約のリテラシー、または契約条件等をしっかりと契約相手等に認識していただくための、意思の疎通等が明確になされているのか等の検証、方法等の見直しが必要なのではないかという観点と、より広い観点で、文部科学省のほうで教育政策全体で進めております金融関係等のリテラシーの強化、さらには大学のまさに学生のコンピテンシー、リテラシーとしてのキャリアの能力の強化等のご指摘、これはまさにおっしゃるとおりであろうかと存じます。教育部局の中、また、JASSO以外のところとも相談した形で、方向性としてはその方向性で進めてまいりたいと思っておりますので、どのように進めていくことができるのか等を検討してまいりたいと思います。
そして、機関保証の在り方につきましても様々ご指摘等をいただいておるところです。こちらにつきましても、当初の仮説等との観点等でご指摘いただいたように、事業そのもののサステーナビリティーを維持するために、様々仮説を立てた当時と制度全体の在り方、制度全体像等も変わってきておるところではございますので、そういった事情変更を踏まえた上で、この事業そのもののサステーナビリティーが維持できるのかどうかにつきましても、これもJASSOの委員会がしっかりと分析等を行ってまいりたいと考えております。
その他、若干それぞれのご指摘いただいた中で、大学そのものの経営の問題とこの学生支援との観点のご懸念等、土居先生等からいただいたところでございます。まず、文部科学省としては、基本的には大学そのものの経営の在り方、大学の教育の質保証というのは大学自身がしっかりと行っていくものでございまして、学生支援というのは、あくまでも学生支援という政策目的のために実施しているものですので、それをコンタミするようなことはあってはならないと考えておるところです。
あと、授業料後払いに関しましては、現時点は修士課程に関して適用しておるところでございますので、現時点では、ご懸念のような事象というのは生じにくいような段階ではないかと思いますが、今後の事業を進めるに当たって、そういったご懸念を抱かれないように、しっかりと状況等の把握を進めてまいりたいと思います。
以上です。
〔日本学生支援機構谷合理事〕日本学生支援機構理事の谷合と申します。本日は貴重なご意見ありがとうございました。
私のほうから、全てにお答えできないと思うんですけども、1つ先生方にご紹介したいのが、資料の55ページを開いていただけますか。これが奨学金の返還義務を知った時期ということなんです。左側が延滞者の回答、右側が無延滞者の回答でございます。それで、この青いところは、そもそも奨学金を申請する前から返すことを知っていたよというんですけども、オレンジ以降がもっと遅く気づいたと。特に右から2つ目の水色の部分は、延滞督促をされてから気づいたということですから、何といいますか、延滞するのはもうこれは必然ですよね。ですから、私はやはりこの辺りに根本的な問題があるのではないかなと思っていまして、先ほど山内先生からも、予防のほうだとおっしゃっていただいて、まさに私もそう思っていました。延滞を解消するには、回収という対症療法的なところももちろん必要で、しっかりこれは引き続きやっていきますけども、やはりそれ以上に、そもそも延滞に入らない、この予防のところ、これをしっかりやっていかなきゃいけない、そういうふうに思っています。
そういう意味で、ほかの先生方からも、先ほどスカラシップ・アドバイザーのお話ですとか、金融リテラシーの教育、こういったものが大事だというご指摘いただきました。私も全くそのとおりだと思っております。スカラシップ・アドバイザーについては、この数年低迷していますが、コロナ等もありまして、それがコロナ前に戻っていない部分もあるかと思いますし、あとやはり機構として、こういったスカラシップ・アドバイザーというもののPRが足りなかった部分はあると思います。ここはしっかり活用促進をしていきたい。特に民間の教育産業なんかも、進学ガイダンスなんかを高校に出かけていってやっているというケースもあるので、そういったところとタイアップして、奨学金関係で1コマくれよということで、セットでやっていくようなことも今検討しております。
とにかく、まずは延滞に陥らない、つまり、返すことが当然であるし、返すことの優先順位は非常に高いんだということを学生たちに認識してもらう、それによって学生たちも幸せになりますし、もちろん我々JASSOもそれを望みますので、そういった取組をしっかりやっていきたいと考えております。
以上です。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
今日の様々なご指摘、貴重なご指摘ばかりだったと思いますが、ぜひご検討いただきたいと思います。ここで日本学生支援機構の関係者の方々にはご退席いただきます。
((独)日本学生支援機構関係者退席)
〔翁分科会長〕続きまして、産業革新投資機構の関係者の方々が入室されますので、少しお待ちいただければと思います。
((株)産業革新投資機構関係者着席)
〔翁分科会長〕それでは、産業革新投資機構について、横山計画官より要求の概要及び編成上の論点の説明をお願いいたします。
〔横山計画官〕計画官の横山です。資料2に基づいて説明をさせていただきます。
まず3ページ目、機関の概要をご覧ください。JICは、ファンド・オブ・ファンズとして投資活動を行っておりまして、下のJIC VGIというファンドがベンチャーキャピタルとしてスタートアップへの投資を行っております。その横のJICキャピタルというのが、プライベート・エクイティ・ファンドとして比較的大型な投資案件に取り組んでおります。そのほか、右側の民間投資家と協調してのLP出資も行っております。
4ページ目でございます。これまでの投資の概況でございますが、ベンチャーキャピタルの分野におきましては、投資件数は全体の過半を占めております。PEについては件数が少ないということでございますが、出資約束額、払込金額を見ていただきますと、ベンチャーキャピタルよりもPEのほうが大きな金額になっているということでございます。
5ページ目でございます。投資基準の改正というところでございまして、運用期限が法律上延長されたことに伴いまして、新たな投資基準を定めると伺っております。産業分野としての半導体、蓄電池、産業機械等の追記とか、ディープテック、シード・プレシード・グロース期のスタートアップ、セカンダリー、アフターマーケットを支援するファンドへの投資を追記するといった形を予定されると伺っております。
続いて、7年度要求の概要というところでございます。7ページ目でございます。来年度の要求ですが、事業規模は前年比2,200億円の減を見込む一方で、自己資金も同額減少するという見込みの下、来年度の産業投資としては、前年同額の800億円が要求されているということでございます。
続いて編成上の論点でございます。9ページ目をご覧いただきたいと思います。JICとしては、リスクマネー供給に支障が生じないようにしつつも、一定の自己資本を確保するという観点から、実投資額の3割に相当する金額を出資金、産投から充てるということにしております。令和7年度3,900億円の投資を要求上予定していますけれども、そうすると、実投資額の見込みが約1.79兆円になります。その3割に相当する5,400億円を出資金から充てることになりますが、現時点での出資金が約4,600億円ということになりますので、不足する800億円についての要求をいただいているということでございます。
10ページ目がスタートアップに関してでございます。事業規模3,900億円のうち1,800億円をスタートアップに投資することが予定されておりますが、これについては、スタートアップ育成5か年計画等で、JICが一定の役割を果たすことが引き続き期待されていると認識をしております。
左側の絵を見ていただきますと、2023年から2027年まで、全体として0.81兆円を10兆円まで伸ばしていくということが計画上書かれておりまして、そのうちVCファンドも相当程度投資を増やすということが予定されているということでございます。
右側が、そのVCファンドにおけるJICの出資のシェアということでございまして、折れ線グラフを見ていただきますと、年度によってばらつきがありますが、加重平均しますと1割程度がJICの出資のシェアとなっておりますので、一定の役割というのはJICが担っているということかと思っております。
11ページ目がPE分野でございます。2,100億円をPE分野に投資するという要求になっておりますけれども、これについては、政策的な意義はあると考えておりますが、案件の進捗状況によっては、JICの経営・財務に大きな影響を与えるということに留意する必要があるのではないかと思っております。JICとしては、エクスポージャーが1,000億円を超える場合は、JICキャピタルのみならず、JIC本体の承認も要するというようなガバナンスを確保していると伺っております。
12ページ目が大型案件の進捗状況ということでございます。大型案件としましては、JSRという会社と新光電気工業という会社についてTOBをするということを表明されておりまして、JSRについては、左下にございますように、既にTOBを完了されております。新光電気については、ベトナム、中国での審査がまだ完了しておらず、来年1月以降にTOBは延期と伺っております。買付代金を見ていただきますと、JSRは約9,000億円、新光電気は約4,000億円ということで、かなり大型の金額になっております。加えまして、その下にありますように、買付代金のうち相応額を借入れで調達するということでございまして、JIC本体からのお金に加えまして、民間金融機関から借入れを行うことで、レバレッジを効かせて買収をするという仕組みになっております。JSRについては、この一番下の※にありますように、買付け等に要する資金として4,400億円を借入れによって調達すると記載されてございます。この大型案件については、まずは企業価値向上に向けた取組を徹底していただくことが何より重要ではないかと考えております。
それから13ページ目でございますが、ポートフォリオに占めるJICキャピタルの割合ということで、プライベート・エクイティ分野が全体に占める割合ですけれども、令和5年度末ですと、4分の3近くがこのJICキャピタルが占めていると。6年度、7年度にかけて割合は低下していきますけれども、7年度の要求ベースの数字ですけれども、7年度においても3分の2程度をプライベート・エクイティ分野が占めるという見込みになっております。
以上を踏まえまして、14ページ目、論点でございますが、スタートアップ投資等リスクマネー供給については、引き続き必要性が認められると考えております。他方で、大型投資案件については、モニタリング、リスク管理に注力をすることが重要であって、新規の案件については抑制的であるべきではないかと考えております。
そこで、論点として2つ挙げておりまして、スタートアップ育成5か年計画等の政府方針の下でのJICグループの果たすべき役割についてどう考えるか。7年度事業計画において、プライベート・エクイティ分野のエクスポージャーの積み増しについてどう考えるかということについてご議論をいただきたいと考えております。
私からは以上でございます。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは、ただいまのご説明を踏まえまして、委員の皆様からご意見、ご質問をお願いいたします。要求側の方々にご質問いただいても結構です。よろしくお願いします。
有吉委員、それではお願いします。
〔有吉委員〕有吉でございます。ご説明どうもありがとうございました。私からは、資料2の14ページの論点2つそれぞれについて、コメントないしはお願い的なことを申し上げさせていただきたいと思います。
まず、主にスタートアップを対象とするような成長資金の供給という領域に関しましては、JICが引き続き重要な役割を担っていく必要があると思いますし、私自身、それを大変期待しているところでもございまして、相応の産業投資を割り当てるべきだと思います。ただ、期待と責任の裏返しと受け取っていただきたいと思うわけでございますが、原資が公的資金であるということに加えて、JICのような官民ファンドの出資は呼び水効果的な意味合いも非常に大きいということがございまして、他の投資家の行動、投資にも少なからず影響を及ぼし得る立場であると理解をしております。そういったことも踏まえて、特に出資前のデューデリジェンスであるとか、それから出資後のモニタリングにつきましては、しっかりと実施をしてもらいたいと思います。
それから2点目、PE分野についてでございますけど、ご説明の中で、金額ベースでは投資ポートフォリオの非常に大きな割合をPE分野が占めていると理解いたしました。PE分野の大型案件というのは、1件当たりの投資額が非常に大きくなりがちであるということとともに、PE、プライベート・エクイティでございますので、金融商品取引法であるとか、あるいは取引所規則であるとか、こういったものによる継続開示は求められておらず、公表される情報が非常に乏しいという性質があるわけでございます。このため、特に大型案件については、少なくとも軌道に乗ったと言えるような状態になるまでは、ぜひ個別案件ベースでその進捗状況を、財務省なのか、当分科会なのか分かりませんが、継続的、定期的にウオッチできるような進め方をしていただきたいと思います。
私からは以上でございます。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
それでは、家森委員、岡田委員、丸田委員、土居委員の順番でお願いいたします。それでは、家森委員お願いします。
〔家森委員〕ありがとうございます。
まず、9ページで既出資額が、国が4,470億円、民間が135億円となっております。キャピタルを積まないといけないということで、今回産投からの資金をということですが、官民ファンドという意味でいうと、民間とのバランスも大事で、民間にも要請をされているのでしょうかという質問です。
それから2つ目は、資料の4ページを見ますと、JICの投資エクスポージャーがJSRの9,000億円など少数のPE投資に偏っているように見えるわけであります。現在のJICのリスク負担能力を前提にすると、JICあるいは経産省としてスタートアップ向け投資とこのPE投資というのはどういうバランスが最適と思われているかという質問です。というのは、組織そのものの存続に関わるような問題が生じないようにしておかないといけないと考えると、やはり分散を利かせておかないといけないところです。このPEは、なかなか今のJICのレベルでは分散が利かないのではないかと心配します。そうすると、スタートアップ5か年計画をもう一つの使命にされているという点からすると、1件当たり金額が少ないスタートアップ投資に注力したほうが、組織としての安全性というのは保てるのではないかと考えるところなんですけれども、その辺りについてお考えを教えていただければと思いました。
以上です。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
それでは次に、岡田委員お願いします。
〔岡田委員〕岡田です。本日、ご説明ありがとうございます。
私のほうからは、JSRのほうへ非常に投資額が大きいわけですけれども、今年JOINのほうで問題になったように、1件当たりの額が大きいと、全体に及ぼす影響が非常に大きい。その際に、うまくいってほしいとは思うんですけれども、状況が例えば芳しくなくて、あまりよくなくなってきた場合に、どういうふうな報告とか開示になっていくのか。JOINの場合だと、もう本当に駄目になって、唐突に巨額の損失が出たというふうな報告を受けたという、そんな印象を持っていますけれども、全体のポートフォリオのバランスがJSRに大きく傾く中で、また一方で、これは詳細は報道等でしかよく分かりませんけれども、水平的な統合とか、あるいは垂直的な統合とか、何らかの再編のようなスキームが関係してこないと、エグジットに向けて高い成長が見込みにくいんじゃないか、巷間そういったことを言われたりしていますけれども、水平的なという面では、いろいろ競合会社からもそんなに積極的な声が上がっていないようなことを報道で目にしたりもします。
そうした中で、エグジットに向けた進捗状況、成長に向けた進捗状況というのがどのように時折時折で、うまくいっているときもうまくいかないときも報告をいただけるのか、開示をいただけるのか。また、少し不祥事が報じられていましたけれども、そうしたようなケースでも、株主としてどのようにそうした不祥事への、今回のような経費のというぐらい、ぐらいといってもあれですけれど、経費のような問題以上にいろいろな不祥事が起こる可能性もありますけれども、そうしたものにどういうふうに向き合っていくのか、その辺り伺えればと思います。
以上です。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
それでは次に、丸田委員お願いします。
〔丸田委員〕丸田でございます。ご説明ありがとうございます。私からも何点かコメントさせていただきます。
まず、論点の中で、スタートアップへの取組につきましては、10ページに書いていただいているように、実績も出ていますし、あと、21ページを拝見しても、新しく、例えばセカンダリーとかアフター・マーケットとか、そういった日本でその分野に取り組むファンドがあまりないといった分野にもしっかり取組が行われているという点が理解できました。リターンの実績としても、4ページ目にありますように、ネットIRRも、ビンテージごとには赤黒が出ていますが、全体でプラスということで、非常にうまく運営がされているものと理解しました。今後、まだまだスタートアップ投資は足りないということでございますので、引き続き取組を継続していただきたいと思います。
一方、今回課題になっているPEの分野でございますが、やはりこちらについては、他の官民ファンドと違って、JICの特殊性というのが非常に出ていると思いますので、それに合わせて、しっかりとしたモニタリングが重要と考えております。具体的には、今回大型案件の投資に当たって、LBOのスキームで、借入れを行って投資を行うということが12ページに記載されておりますが、その意味では、やはりエクスポージャーが借入れ部分も含めてかなり大きくなっているというところと、あと、岡田委員からもご指摘ございましたし、JOINでも実際にありましたが、官民ファンドで特定のポートフォリオに投資が偏った場合に、そこに対するガバナンスとか、モニタリングが適切にできるのかといった点については、まだ今の段階、巨大投資案件が始まったばかりで、案件の内容的に状況の説明が難しいのは分かるのですが、非常に高いハードルがあると感じています。
具体的には、例えば4ページ目の表でも、PEをこれから伸ばしていくということで現時点の実績のIRRがマイナスなのは理解できるのですが、今後この分野に注力していくのであれば、今の時点での投資ポートフォリオの将来の想定IRRについて、どの程度を見込んでいるのか、当然ポジティブな数値を見込んでいるのが前提と思いますが、こういった点も見えないと、この分野にアクセルを踏んでいいかどうかというのも判断が難しい部分もあると思います。あとは、他の官民ファンドであれば、どちらかというとポートフォリオ全体のバランスや経済合理性を見ていくといったところがポイントで、個別案件にあまり踏み込まないというところではあったかと思うのですが、このような特定案件に偏ったポートフォリオになってくると、先ほど有吉先生からもありましたけれども、個別案件の状況について、しっかりある程度のモニタリングであるとか情報提供を受ける仕組みをつくって、かつ、現在の進捗が順調に進んでいるので、次の案件も増やしていくというようなストーリーがないと判断が行いにくいと思います。今の段階では、大型案件もまだまだ始まったばかりで、これらに関する状況がよく分からない中で、さらにまた新規の大型案件を現時点で行うことが果たして適切なのかどうか。まずは足元を固めて、この2案件の道筋であるとか個別の状況を十分ご説明・ご開示いただいた上で、かつ、経済合理性について将来の見込み、具体的には大きな穴を開けるような状況にないとの情報の共有を行っていただき、かつ今後もどのような情報がどのようなタイミングで提供されるかなどについて、しっかり合意をした上で次のステップに行くというところが重要ではないかと思っております。
最後に、やはりこのPE分野につきましても、従来のJカーブに過度に依存したモニタリングですと、個別大型案件の投資の減損をするかしないかで、インパクトが大きすぎて全てが変わってしまうと、個別投資案件をしっかり評価をするインセンティブが失われてしまい、ファンドの健全性・透明性の確保が難しくなるリスクが高いと思います。この点はJOINを見ていて非常に強く感じたのですが、やはり個別案件で大きな損失等が適時に計上できないということになると、これは後々大変な問題になるのですが、実際そうせざるを得ないインセンティブが官民ファンド側で働いていたというのは事実だと思います。
その意味では、JICにおいても、今議論している公正価値評価をしっかり取り入れていただいて、ポートフォリオ全体の状況を把握した上で、個別案件の評価損等についても、公正価値に基づいて、何があっても適時に計上していくとか、そういった道筋が見えない中で、大型案件にさらにアクセルを踏んでいくというところは、個人的にはやや難しい面もあるのではないかと考えております。
個別にいろいろなことを申し上げましたが、総括しますと、個別案件の情報共有であるとか、あと、今後の見込み、ポートフォリオの管理方針といったところをしっかり合意した上で、今後の方向性を議論していくべきではないかと感じました。
以上でございます。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは、土居委員お願いします。
〔土居委員〕私は家森委員と同じ質問で、少しだけ付け加えさせていただきたいのは、官民ファンドといいながら民間の出資が少ないわけですけれども、その民間の出資というのをどういう基準ないし条件でどれぐらい受け入れるということを判断しておられるかというのをお伺いしたいと思います。
以上です。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
それでは、野村委員お願いいたします。
〔野村委員〕ほかの委員から出ていることとかぶらない点だけ申し上げます。
JICは、やはりJSRなどの大型案件が非常にクローズアップされていて、当然そこはモニタリングされるべきですが、一方で、5ページにありますように、スタートアップの創出ですとか、中堅企業による地方に眠る経営資源の活用や、大学発ベンチャーといったことへの支援も求められているところです。どうもこの2本目、3本目の柱に関することが、少し金額が小さいためか、個別案件のご報告があまり多くはないように思います。特に3本目ですね、投資額は小さいとしても、非常に政策的な意義があると思いますので、この辺りの進捗の報告も、今後で結構ですのでお願いしたいところです。
以上です。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは、経済産業省、産業革新投資機構のほうからご回答をお願いします。
〔経済産業省経済産業政策局河原産業資金課長〕経済産業省の河原でございます。本日はありがとうございます。様々ご意見いただきましたので、大くくりにしながらご回答させていただきます。足りない部分については、また追って補足させていただければと考えてございます。
まず初めに、スタートアップに関連しまして、有吉委員から、しっかりデューデリジェンスあるいはモニタリングというものをするべきではないかと、呼び水効果も評価していただいた上でご指摘いただきましたけれども、おっしゃるとおり、スタートアップにつきましては、LP出資の形でファンドエコシステムの成長を促していく、それから、JIC VGIが個別の民間出資が十分ではないところについて、スタートアップエコシステムを補完する観点から取り組んでいくといったことをやってございます。それぞれの成果、それから個別案件についても、モニタリングしながら価値を上げていくというところはご指摘のとおりでございまして、しっかりと取り組んでいく必要があると考えています。
また、同じくスタートアップで、野村委員から、進捗報告を適切に行っているかという話をいただきましたけれども、私ども経済産業省としましても、JIC側とは定期的な意見交換、こちらは実績に関する意見交換だけではなくて、むしろ目線を合わせるといいますか、政策の方向性につきまして、政策対話という形で実施してございます。実は本日も、トップ同士、局長と社長等とでミーティングを行っていまして、こういった密なやり取りをしっかりと続けていく必要があると考えてございます。
それから、有吉委員・丸田委員のほうから、個別の案件をPEの関連でしっかりとウオッチすべきであるというご指摘、岡田委員からも、しっかり報告をしていくべきである、進捗について見ていく必要があるといったご指摘をいただきました。おっしゃるとおり、PEの案件につきましては、やはり案件が大型になるごとに社会的なインパクトの大きさもございます。事業のリスク、JICのポートフォリオ全体への影響もございますので、こういった点を踏まえて、最終的に投資決定する段階ではJICの取締役会での承認を要するといった形で慎重に行っておりますし、また、その後、ご指摘いただいた出資後につきましても、四半期に1回の頻度でJIC取締役会に報告を求めるなど、徹底したモニタリングを行ってございます。JICとして、こういったガバナンスが適切に行われるようにと考えておりますし、経産省としても、JICから四半期ごとに報告を求めるとともに、毎年行いますJICの業績評価などを通じて、適切にリスク管理を行うように指導していきたいと考えてございます。
また、その関連で、岡田委員から、結果についてモニタリングに加えて開示もすべきだというご指摘を頂戴いたしました。こちらにつきましては、資料の11ページの下のところ、小さくなっていますけれども、この投資実行の状況については、最後のパラの最後の行、「また、」以下で、投資実行後の状況については、開示可能な範囲の情報をしっかり定例会見などを通じて公表していくということを記載してございます。こういった場も活用しながら透明性を確保していくことが重要であると考えてございます。
それから、ポートフォリオのバランスです。説明資料の13ページ目にございましたポートフォリオに占めるJICキャピタルの割合を含めて、このバランスをしっかり取っていく必要があるというご指摘を頂戴いたしました。このポートフォリオにつきましては大変重要だと思っております。とりわけ、JICの場合には、PE投資とスタートアップ両方やってございます。皆様ご指摘いただいたとおりですけれども、それぞれ投資対象企業のサイズ、リスクが異なってまいりますので、資料にもございますとおり、JICのエクスポージャーの7割がJICキャピタル関連となっているという状況でございます。この7割という数字自体が課題かというと、必ずしもそうではないと考えておりますけれども、ご指摘のとおり、大型案件が全体に与える影響というのは大きいので、例えば先ほど委員からご指摘いただきましたJSRの割合も大きくございますので、しっかりモニタリング管理していくことが重要だと考えてございます。
ここにいる皆様から、昨年6月の分科会のときにも、まさにこの大型案件の管理徹底をご議論いただきまして、足元でそうしたご意見も伺いながら、管理、モニタリングプロセスを進めているところでございます。JICのLP出資先であるJICキャピタル、JIC VGI、民間ファンド、それぞれのファンドごとに、今、収益目標を定めていますけれども、それぞればらばらにということではなくて、ファンド・オブ・ファンズということで、JIC全体のポートフォリオ、財務管理の徹底をしっかり進めてまいりたいと思ってございます。
それから、丸田委員から、モニタリングすべき、ウオッチすべきという話に加えまして、公正価値評価をしっかり取り入れる必要があるのではないかというご指摘を頂戴いたしました。私どもも公正価値評価についてはそのとおりだと思ってございます。例えば、足元の取組としましては、JICキャピタルにおいて、社内でモニタリングチームを構成することに加えまして、会計事務所を活用した公正価値評価に取り組むなども既に取り組んでございます。こういった取組先企業のモニタリングをしっかりしていくことによって、企業のバリューアップ、適切なモニタリングということを進めていくことが必要だと考えてございます。
雑駁ではございますけれども、一旦私からのご回答はここまでにさせていただきまして、JICのほうからご回答をお願いいたします。
〔産業革新投資機構亀山取締役CSO〕産業革新投資機構の亀山と申します。
大体今河原課長からお答えいただいたので、付け加える形になりますが、今の公正価値評価については、まず、JICグループは、JICキャピタル、VGIも含めて、相当しっかりやっております。専門チームを使って、IPEVガイドラインも踏まえながらやっている形になりまして、むしろ、投資をしている先の民間のベンチャーキャピタル、ファンドに対しても公正価値評価を導入するように要請しておりますので、まだ投資を始めたばかりの案件は数字が動いていませんが、今後しっかりそこは分析できるようになってくると思います。
それから、モニタリングについては、我々としては、先ほどご説明ありましたが、取締役会でしっかり1000億円以上の大型のものは意思決定、それからモニタリングも四半期ごとにしっかりやっておりますし、経済産業省へのご報告もすることになっております。
それから、民間株主をどう増やすかというお話がございましたが、こちらは当然、今既に入っている民間株主様、25社ぐらいおりますけれども、その人たちと対話する際は、もう少し足せないかというふうな話もしますし、ほかの民間企業とお会いする機会にもそういう話を出したりもします。立ち上げるときと違って、途中から入るということも含めて、なかなかハードルが高いところはあるのだとは思いますが、そこは、基準があるかというお話もありましたが、ここはやはり官民ファンド、JICとしてのミッション、それから実績も含めてご理解をいただいて、共感をいただけるような方々にお願いをこれまでもしていますし、そこは、今後さらに産業再編とか色々な動きを進めていく中で、そういったことに賛同いただけるような方にご協力を求めていくということだと思っております。
それから、ポートフォリオのお話については、これはリスク分散をするというのはもうおっしゃるとおりでございます。どうしてもPEとスタートアップは金額が違うので、PEのほうが割合が大きくなるというのは、これはもうある程度やむを得ないところはございますし、例えばJICの前の産業革新機構の時代においても、スタートアップ投資は2割ぐらいで、8割ぐらいはその他の大型な案件でございましたので、そこはある程度やむを得ないところはあると思います。ただ、スタートアップ投資はやはりリスクが高い。一方で、PE投資については、既にもうキャッシュフローが出るような事業を持っていて、ある程度スタートアップよりはリスクが低いところもございますし、その辺のリスクの違いなんかも含めて考えていく必要はあると思います。
それから、リスク分散という意味では、やはりそれなりの規模の案件、スタートアップはその一つ一つが非常に小さいので、これは数が増えても、1つが大きく当たっても、全体のポートフォリオに対するインパクトというのは大きくないと思うのですけれども、プライベート・エクイティのほうについては、それなりに1件当たりの規模がありますので、件数ベースでいうとプライベート・エクイティのほうはまだ数が少ない状況でございます。リスク分散という意味において、そちらのプライベート・エクイティも引き続きしっかり案件に取り組んで件数を重ねていくということが重要ではないかと思っております。
我々としては、投資は結構タイミングのものでもありますので、政策ニーズがあり、企業のニーズがあり、タイミングが合えば、しっかり精査した上で支援を進めていくということが重要だと思いますので、その辺りもぜひご理解いただきながら進められればと思っております。
私からは以上でございます。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
工藤委員からコメントございますか。
〔工藤委員〕手を挙げるタイミングが遅れてしまいまして、申し訳ございません、
もう皆さんがおっしゃっていたことと重なるので、短くいたしますが、まさに今日お話がありましたように、こちらのJICの価値というのは、政策的意義にかなった活動をされていて、民間資金へのつなぎや呼び水としての効果というのはこれまでも十分に発揮されていると思いますし、産業の育成というのにも非常に役に立っておられると認識しているところです。
1点申し上げたかったのは、PEファンドについてでございます。今日もまだ結果が出ていないというお話があったんですけれども、23年6月に大きな投資をされている中、まだ1年ちょっとなので、なかなか結果を出すのは難しいのかなと思うところではあります。そういう状況ではあるんですけれども、今のマーケットの状況を見ていますと、非常に大型のコーポレート・アクションが増えております。また、経済安全保障上も、自国のサプライチェーンの維持に必要な案件、そういう政策的意義を満たす案件というのも、今後も増えていくことが考えられまして、案件は大型化かつ増えていくのではないかと思います。ですので、まだ結果が出ていないというところではありますけれども、こういったことにおいて、JICの重要性、果たす役割への期待というのは、一定あると思っております。
一方で、本日ご説明いただきましたけれども、我々はJOINのときの振り返りをした上で、同じ轍を踏まないということも必要だと思いますので、まずはしっかりとJICの中でガバナンスを利かせていただくということに加えて、やはりビジビリティーを監督サイドにも高めていただく。資金の出し手である財投のこの分科会においても、大きな案件を取り上げる際、守秘義務があるでしょうから表に出すのは難しいとは思いますけれども、開示やその後の状況のモニタリングなど、また、エグジット方針なども明らかにしながら、できる範囲での開示をしていただいて、健全な運営がなされていくようにお願いしたいと思います。
以上です。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。私も工藤委員がおっしゃったとおりだと思っておりまして、経産省のほうでも、まず組織内のガバナンスをしっかりやっていただいて、私どもも資金の出し手ですので、守秘義務などおありかと思いますけれども、可能な限りのご報告や開示をいただいて、進捗状況が確認できるようにさせていただきたいなと思っております。
ありがとうございます。何か追加的によろしいでしょうか。事務局のほうからございますか、よろしいですか。
どうもありがとうございました。それでは、ここで産業革新投資機構の関係者の方々にはご退席いただきます。どうもありがとうございました。
((株)産業革新投資機構関係者退席)
〔翁分科会長〕続きまして、JOIN有識者委員会の状況報告についてご審議いただきます。JOINの関係者の方々が入室されますので、少しお待ちいただければと思います。
(JOIN関係者着席)
〔翁分科会長〕本議題につきましては、先月30日に本分科会でご議論をいただきました。そこで頂戴しましたご意見及びJOIN有識者委員会においてこれまでなされた議論を踏まえ、去る13日に最終報告書の骨子案が提示され議論されたと聞いております。その骨子案につきまして、国土交通省より説明をお願いいたします。
〔国土交通省田中国際統括官〕国土交通省国際統括官の田中でございます。
前回の財投分科会で有識者委員会の論点整理をご説明いたしましたが、財投分科会でいただいたご議論も踏まえまして、11月13日の有識者委員会におきまして骨子案を議論しております。本日、資料としてもお配りしておりますが、これまでの議論を踏まえてまとめたものでございます。また、まだ十分に議論がなされていないけれども、最終報告には盛り込むべき事項というのもございまして、そういった点はパワーポイントの資料のほうに、検討を深めるべき事項としてまとめてございます。本日は骨子案とパワーポイントの資料の両方を見ながらご説明をしてまいります。
まず、最終報告案の構成でございますが、第Ⅰ章の「はじめに」のところで、この最終報告の趣旨について記載をしております。第Ⅱ章は、委員会の目的ですとか趣旨、それから第Ⅲ章は、有識者委員会でこれまでどのように検証してきたかという過程をまとめるものでございます。続きまして第Ⅳ章は、それらの議論を通じて抽出された課題点を基に、JOINの役割や在り方について検証した事項をまとめるところでございます。第Ⅴ章は、仮にJOINが今後事業を継続するとしても、徹底した改革が最低限必要ということになりますので、抜本的な改善策をまとめるものということになります。本日のご説明は、この第Ⅳ章、第Ⅴ章が中心になります。
第Ⅳ章のところ、まずはJOINの役割・在り方の検証でございますが、1-1につきましては、海外インフラ分野を対象とすることの適切性に関する基本的な考え方をまとめております。海外インフラ分野の特徴などから、海外インフラに対して官民ファンドを活用することの意義・必要性などをご議論いただいております。パワーポイントの4ページ、5ページのところに、海外インフラ分野の支援の意義ですとか、官民ファンドによる支援の意義についてまとめてございます。JOINにつきましては、制度創設から10年が経過しておりますが、有識者委員会の中では、インフラの国際競争をめぐる環境変化を踏まえて、JOINの役割の再定義が必要ではないかというご指摘をいただいております。財投分科会でも、岡田委員から、当初のコンセプトを見直さなくていいのかといったコメントをいただいております。これにつきまして、地政学的な状況等々大変大きく変化しておりますが、今日でもインフラ海外展開は政府の重要な施策であり、インフラシステム海外展開戦略2025などを含め、JOINはそのために必要なツールとして位置づけられていると考えております。
また、委員会の中では、民間のみでは対応できないリスクについて、民業補完の機能がないと海外展開の難易度がさらに上がるといった観点などから、JOINが関与することの意義なども確認されております。また、相手国との交渉という観点でも、官民ファンドが関わることの意義が指摘されております。
それから、設置期限についての議論も行っております。設置期限を設けていない背景は、パワーポイントの3ページに考え方をまとめてございますが、JOINの業務は、20年を超える事業期間のプロジェクトを扱うということもございまして、法令上の期限を設けてございません。これを受けまして、法施行後の5年ごとの制度の見直しを行っているほか、投資規律を図るために、20年を対象期間とした計画を作成するという運用になっております。有識者委員会の中では、期限があるかどうかによって扱う事業のプロジェクト期間や、収益の上げ方など投資ファンドの性格が異なってくるので、この投資の期限の議論は重要というご意見をいただいております。また、設置期限の設定が難しい場合でも、定期的に外部の目を入れて、事業の進捗状況や官民ファンドが取るべきリスクの範囲が適切であったかといったところをしっかりとモニタリングしていくことが有効ではないかというご議論もいただいておりまして、この設置期限の取扱いについては、引き続き検討を進めていくこととしております。
1-2は、民間事業者の事業参画に関する論点でございます。骨子案の中では、JOINの支援は民間イニシアチブの確保が前提であり、当初段階からの民間出資の確保が重要ということを記載しております。一時的に最大出資者となる場合の取扱いについては、有識者委員会の中では、民間事業者なしでJOINだけによる先行投資の扱いをどうするかといった議論もございましたが、パワーポイントの6ページに記載されているように、有識者委員会の中でも、やはり民間事業者が自ら事業リスクへコミットするということが重要という指摘をいただいております。また、民間が自助努力をして、そのサポートをするというのが官民ファンドの前提であって、先行投資は疑問である、あるいは例外中の例外というご理解が多かったと認識しております。
1-3につきましては、JOINの扱う事業の範囲の再整理でございます。JOINの扱う事業分野におきまして、官民ファンドというツールを用いて支援すべきものの範囲を精査すべきというご指摘ですが、これは、高速鉄道事業の個別事業検証の際に出されているご意見でございまして、これを受けまして、事業範囲の精査をするということを骨子案に記載しております。有識者委員会におけるこれまでの議論、パワーポイントの8ページ目に記載しておりますが、高速鉄道事業につきましては、JOIN以外のツールも含めて何が最適なのかを議論した上で、JOINが対応すべき範囲や手法を整理すべき、高速鉄道事業については、むしろ現地国側が引き受けるべきものなのではないかといった論点が出されております。おとといの有識者委員会におきましても、高速鉄道事業といっても様々な事業があるので、一律に高速鉄道事業であれば全て扱うべきではないということではないのではないかというご議論もあった一方で、やはり高速鉄道事業については、エクイティよりも、むしろ補助金などで対応すべきものであって、官民ファンドというツールによる対応ではないのではないかといったご意見もいただいておりまして、今般の損失計上の検証を踏まえても、官民ファンドという支援ツールが必ずしも適切ではない分野につきましては、引き続きもう少し議論を加えて方向性を定めることとしております。
1-4は、海外事業支援を行うほかの機関とのデマケーションでございます。JBIC・JICAとのデマケーションにつきましては、JOINは両者では対応できない機能であるところのハンズオン支援の活用で、初期段階からのリスクマネー供給という役割を果たすべきと記載しております。また、出資者と融資者は利益相反が生じやすいことから、こうした利益相反を引き起こさないような体制構築が必要であるというところも記載しております。この点については、おおむね皆様のご理解をいただいているところではないかと思います。
第Ⅴ章が課題への対応策でございますが、ここの冒頭部分に、今後の対応策の考え方というものを記載しております。こちらは、骨子案における対応策の位置づけを整理して記載したものでございますが、今ご説明申し上げました第Ⅳ章のとおり、JOINの役割や在り方の検証を行ったところ、インフラシステムの海外展開の支援ツールとしては、官民ファンドは一定の必要性が認められると考えられます。一方で、個別事業の検証におきまして、各事業の高い政策的意義は認められるものの、経済合理性の確保などの観点からは、大きな課題も指摘されたところでございます。したがいまして、仮に引き続きJOINを活用していくということとする場合におきましては、徹底した改革が最低限必要ということになりますので、そのための施策がこの2ポツ以降に記載をされております。
まず、投資リスク管理に関する課題でございますが、2-1のところでは、まず第1点目に、リスクの高い国・地域への投資が集中すると、JOINの全体ポートフォリオにおきましてリスクが高まるということで、上限割合を設定するなどの検討が必要という議論をしてございます。
それからもう一つ、ベンチャー投資についてでございますが、これまでも、このベンチャー投資は通常のインフラ投資とは手法が異なり、専門性も全く異なるというご意見をいただいておりまして、JOINが扱う体制があるのかどうかといったご指摘もございました。骨子案におきましては、これらの指摘事項について整理がなされるまでの間、ベンチャー投資は控えるという記載をしております。
2-2は、案件ごとのJOINの出融資に係るリスク管理でございます。骨子案では、プットオプションや債務保証などの潜在的な資金負担を対外説明資料で可視化いたしまして、こうした個別リスクを踏まえたポートフォリオ管理を行うことが必要と記載しております。また、リスク管理の状況を事後にチェックするということが重要でありまして、JOINの事業委員会の強化を図るとともに、定期的な第三者評価の導入についても検討が必要というところを記載しております。こうした第三者評価につきましては、ほかの公的支援機関で採用されているところもございまして、参考になるものでございますが、事後チェック機能が強化されることで、リスクが増加した案件の見直しやフォローアップの強化、収益性の懸念等につきまして複層的に気づきが得られる効果があると考えております。この点につきましては、複数の委員からも、第三者の目が必要というご意見をいただいているところでございます。
2-3は、リスク管理を踏まえた全体のポートフォリオ管理やExit方針についてでございます。ポートフォリオ管理につきましては、財投分科会でも家森委員から、なぜ組織の存在が問われるほどの損失が出てしまったのか、ポートフォリオ全体としての議論を行うとともに、損失計上を行った個別事業の検証の中で、ポートフォリオの中で分散はできていたのかという検証をすべきというご意見をいただいております。損失計上を行った個別事業の検証の中では、全体ポートフォリオの管理という観点がやはり弱かったという点が課題として認識されておりまして、2-3は、こうした課題認識に対する今後の対応策をまとめたものでございます。
まず1点目は、リスク管理を踏まえた全体ポートフォリオ管理でございます。先ほどカントリーリスクについて上限割合の設定を議論したというところを申し上げましたが、案件の1件当たりの規模の上限割合を設定すべきという点、それから、当面の間、リスクの高いグリーンフィールド案件よりもブラウンフィールド案件の割合を拡大する、それから、JOINの対象分野としては、都市開発と、物流などの収益が着実に上がっている分野の割合を増やすことの必要性、こういったところを記載しております。
それから2点目は、Exit方針でございますが、大幅な収益悪化時の撤退基準や適切な収益確保の観点からExitの方針を定めるべきというご議論があったことを受けて記載をしております。また、もろもろのこうした改善策を踏まえて、今後新たなIRRを再設定するということになります。
3点目としまして、現在価値の的確な把握によるリスク管理の向上というところでございますが、財務諸表上に出てこない潜在的なリスクや債務、利益を含むJOINの現在価値の的確な把握方法としまして、ネットアセットバリューや想定パフォーマンスの活用を記載しております。また、ここの項目では積み残しの点ですとか、もう少しございますので、そこはパワーポイントの13ページ、14ページのほうに記載をしております。
2-4に行きまして、民間事業者のイニシアチブを担保する方策でございます。民間事業者が主体的に事業にコミットすることが民業補完の観点からも重要というところを先ほど第Ⅳ章でご説明申し上げました。この民間事業者のコミットを確実にするためにどうすべきかという論点が、パワーポイントの16ページに記載しているところでございますが、どのように対応していくべきかという点は引き続き検討していくということになっております。しかしながら、いずれにしましても、民間のコミットを確実にするための手法を何か講じて民間企業を誘導するというよりも、むしろそれ以前の問題として、先ほども述べましたとおり、先行出資は原則としてないということではないかと理解しております。
それから2-5は、リスク抑止力の効果的な機能に向けた方策でございます。骨子案のほうでは、想定されるリスク発現時の対応の確約など、相手国政府との調整などを記載しております。有識者委員会のこれまでの議論、パワーポイントの17ページでございますが、対象国の政府・公的機関との人脈の重要性などもご議論いただいております。
2-6は、関係する政府系機関等との連携の在り方でございます。JOINが効果的に事業を行っていくためには、関係する政府機関のJBIC、JICAあるいはNEXIなどの特性を踏まえて、協調案件の形成や現地でのリスク情報の共有を含めまして、一層連携を密に行うべきという方向性を記載しております。
2-7は国土交通省による関与の意義と対応の在り方でございます。まず、財投分科会でも工藤委員から、JOINによる情報収集力には限界があるので、国交省が現地政府と密接に関与していくなど、官側の適切な関与の在り方を議論すべきというようなことをご意見としていただいておりました。この点も踏まえまして、まず1点目として、JOINが効率的に業務を行うために、所管省庁の適切な関与が重要であり、国交省がサポートを強化すべきということを記載いたしまして、対応策として、インフラ分野に関する専門的知見の提供支援、案件発掘の強化、そういったところをパワーポイントの資料で示しております。
それから、翁分科会長からも、監督省庁としての関与の在り方について議論すべきというご指摘をいただいております。この点につきましては、有識者委員会におきましても、個別検証時の反省点を踏まえて、支援事業について制度趣旨に合致しない懸念が生じた場合の対応策を示す必要があるというご意見をいただいております。有識者委員会のご議論、パワーポイントの19ページに記載しておりますが、国交省は、支援基準には従っており手続として妥当であったわけですが、資金構成などの支援方法の妥当性までは踏み込めていなかったのではないかというご意見や、案件に係る意思決定の中心を誰が担っていたのか見えないといったところのご指摘をされております。
こうした点を踏まえまして、骨子案では、適切な事業チェック体制を構築すべきということを記載しております。これは、先ほどのリスク管理の対応策として提示いたしました、支援案件についての定期的な外部評価あるいは第三者評価の仕組みの構築と同様の趣旨でございまして、このような仕組みを講じることで、制度趣旨から外れた事案についての注意喚起がなされて対応策が促されるということになりまして、所管省庁としての対応の軌道修正がなされる機会が確保できると考えております。
3番目が損失計上や公表の課題でございます。こちらにつきましては、損失計上のタイミングや公表の在り方について、パワーポイントですと20ページにございますが、有識者委員会でも複数の委員からご意見をいただいております。財投分科会の中でも、工藤委員、それから冨田委員からもご指摘をいただいている分野でございます。損失計上などのリスク情報あるいはネガティブ情報をタイムリーに公表するという点については、こうしたことを踏まえて、ステークホルダーには早期に説明を行うべきという方向性を記載しております。また、やむを得ない事情から、パートナー事業者と損失計上や公表の時期がずれるという場合もございますが、この場合には、公表時に理由を含めて丁寧に説明を行うべきということを記載しております。
4番目は、組織体制の課題でございます。まず、効果的なハンズオン支援につきまして、こちらは翁分科会長のほうからも、地政学リスクが高まる厳しい国際環境の中で、60名体制で対応していけるのかというご指摘をいただいたところでございます。職員の少ないJOINが効果的にハンズオン支援を行っていくには、全てを職員で行うことができない場合も視野に入れまして、外部人材の活用なども含めた技術的・専門的知見の提供方策を検討することが必要という方向性をこちらでは記載をいたしました。
また、組織ガバナンスの強化につきましては、個別検証などでの反省点でありました経済合理性の厳格な判断のためには、JOINの事業委員会における対応の強化が必要と考えております。また、検証を通じて牽制機能の仕組みが必要という意見がございましたが、JOIN内部におきまして、事業担当部局に対して、リスク抑止を担う部局からの調整・牽制が働くよう、機能強化の必要性というものを記載しております。財投分科会におきましても、翁分科会長から、JOINが存続する場合であっても、事業委員会がしっかりと経済合理性について判断する必要があるというご意見をいただき、また、有吉委員からも、再発防止のガバナンス、リスク管理が非常に重要だというご意見、ご指摘をいただいておりますので、これらも踏まえまして、最終報告に向けて、さらに組織ガバナンスの強化策の検討を進めていきたいと考えております。
事業執行体制の在り方でございますが、こちらは、官民ファンドの業務を的確に行うためには、エクイティ・ファイナンスの知見を持つ役職員を一定数確保し、審査体制の強化を図る必要があるというところを記載しております。また、研修の強化や人材を有効活用するための人員配置の工夫というものも必要だと考えております、パワーポイント23ページに関連意見として記載されておりますが、人材活用の観点から、職員のケーパビリティと担当している案件がしっかりマッチしているかどうかといった点も見極める必要があるというご指摘もいただいております。この業務執行体制の強化につきましても、引き続き検討を進めていきたいと考えております。
最後に、今後留意すべき事項として2点記載しておりまして、まず、JOINが取り組む改善策につきましては、取組状況や改善状況のフォローアップの必要性があるということ、それから2点目として、損失計上を踏まえてJOINが策定する投資の改善計画におきましては、今後の事業で累損の解消をしっかりとしていくということが重要になってまいりますが、同時に、固定費の削減についても対応を求めまして、その際には、人件費などを削減することによって業務の質の低下を招くというものは含まないよう留意すべきということを記載いたしました。
以上、駆け足で申し訳ございませんでしたが、徹底した対応策としての内容を深めていきまして、ここまで実施するのであれば存続に値するという納得感が得られるレベルの対応が示されて、それに対するJOIN、それから国土交通省の相応のコミットメントをしていくということを踏まえた上で、JOINの存続の可否について最終的な結論が出ると考えております。
以上でございます。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。ただいま国土交通省より説明がございましたが、この最終報告書の骨子案は、土居委員長にもご配慮いただきまして、当分科会のご議論をおおむね反映していただいていると考えております。
今後、この骨子案を基に、13日の有識者会議の議論等も踏まえて、土居委員長のリーダーシップの下で最終報告書の取りまとめ作業が行われると承知しておりますが、土居委員長におかれましては、引き続き当分科会の皆様の問題意識にご配慮いただければと希望しております。
委員の皆様におかれましては、具体化に向けて、改めて何かおっしゃっておきたいということはございますでしょうか。有吉委員お願いします。
〔有吉委員〕有吉でございます。時間がない中で恐縮ですが、2点ほどコメントさせていただきたいと思います。
まず1点目は、毎回申し上げているガバナンスの観点でございます。本日のこの資料3-2の骨子案においては、これはあくまでも骨子ということで、あまり詳細な記述がない段階であると理解をしておりますけど、第Ⅴ章の4、具体的には4-2の組織ガバナンスの強化とか、それから4-3の業務執行体制の在り方の部分につきまして、この部分だけ読むと、ではJOINに具体的にどのような体制面の問題があったのかという検証結果が、率直に申し上げてよく分からなかったということでございます。今後どのような体制を構築していくかということについては、これからJOINの皆様が改善計画を策定する中で具体的に検討していくということなのかもしれませんが、その検討の前提として、これまでの体制のどこに問題があるのかということについては、具体的に特定して検証していただくことが必須であると思います。特に減損に至った各案件について、審査・支援決定がどういった手続で、どんな議論を経て行われたのかとか、それから、実行後のモニタリングがどんな体制で行われていたのかということについては、これは当然、有識者委員会ないし事務局におかれまして詳細な検証が既に行われているのだと理解しておりますけど、その点について、最終報告にもしっかり明確に、より具体的に記載していただくことが必要ではないかと思います。
それからもう1点、こちらは第Ⅳ章の1-3の辺りですか、JOINの扱う事業の範囲の再整理という部分との関係で、資料3-1では7ページ、8ページの辺りと思いますが、こちら拝見すると、有識者委員会でのご議論では、主に高速鉄道事業の取扱いを中心に議論がされていると拝見いたしました。今回のこの巨額損失の経緯を踏まえますと、仮にJOINが事業を継続していくということであったとしても、少なくともある程度収益が回復していくという状況になるまでは、減損に至った各案件に関連する分野とか、あるいは、その中でも特に状況がひどかったと評価された分野には投融資を行わないといった明確な方針を示すことを検討していただくべきではないかと思います。
本件の問題というのは、JOINだけではなくて、官民ファンド一般に対する信頼の問題になっていると思いますので、レピュテーション・リスクというか、国民への見え方というか、そういった点も十分に踏まえて慎重にご検討いただきたいと思います。この点、国土交通省の方、それからJOINの方には、後ほど本日の当分科会の議事録を見ていただきたいと思いますが、他の官民ファンドの議論におきましても、度々JOINのケースを踏まえてこういうことをすべきだというような意見が各委員から示されていたところでありまして、他の関係者にも波及している問題なのだということを意識して、ぜひ最終報告を取りまとめていただきたいと思います。
私からは以上でございます。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
次に、工藤委員お願いします。
〔工藤委員〕ありがとうございます。まずもって、この会議の議論を反映いただくべくご尽力くださった土居委員長に感謝を申し上げます。ありがとうございました。
コメントといたしましては、現在の骨子案に盛り込まれている項目は非常に網羅的だと思っております。これが実際に最終報告書にどういう記載になるのかが大変重要であると考えておりますので、ぜひ細部に至るまで引き続きご議論をいただければ幸いでございます。
骨子の個別の項目につきましては、1点だけ申し上げさせていただきたいと思います。第Ⅵ章の今後留意すべき事項の中に、1の報告書を受けた改善状況のフォローアップの必要性という項目がございますが、具体的に誰がどういったタイミング、形式でフォローアップを行うのかということや、フォローアップの結果、仮に改善に向けた進捗状況が不十分とされた場合には、JOINにどういった方針で臨むのかといった点についても、最終報告書に記載されるべきだと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
それでは、岡田委員お願いします。
〔岡田委員〕岡田です。ご説明ありがとうございます。
私のほうからは、今回の損失の件で鉄道に焦点が当たっているということは理解しますけれども、一般の人の感覚で、素朴な感想で、鉄道ですと、関連の日本の産業とか、あるいは安定的な導入された後のオペレーションなどでも、2国間の関係にも貢献したりとか、何となく政府が後押ししてやっていく意義というのが実感はしやすいかとは思いますけれども、今回損失の中にあった、今日の資料にはありませんけれども、ミャンマーの都市開発事業のような内容ですと、果たしてなぜここまで国が関与する必要があるのかというのが、一見してどこまでやるべきなのか、殊に損失が出た上ではよく分かりにくいなというふうな面があって、ミャンマーという国というのは、もともと政情の関係ではいろいろリスクが高いというふうなところと分かっていた国だと思いますし、今後どこまで手がけるのかというのは、よくよく精査していただく必要があるかなと思います。
資料4ページ目で、カントリーリスクの高い地域への民間単独での進出はリスクが極めて高く困難で、JOINのサポートは心強いとか、民間単独には限界があるとか、いろいろJOINの必要性が指摘されていますけれども、これはある方がおっしゃっていましたけれども、今、日本企業ははっきり言って臆病だと。リスクが高い国で、ほかの国なんかは民間でどんどん出ていっているのに、国がサポートしてあげないと全然出ていけませんと。そんな臆病なことで果たしていいんだろうか。そういうことであれば、あえて別にどこまでも国がサポートしてあげる必要性もないんじゃないかという、そうした観点もあろうかと思います。
また同時に、トランプ政権がアメリカで登場するということで、これから地政学リスクあるいは経済安全保障の観点からのサプライチェーンの再構築というものは、どんどん激変してスピードも速いと思われます。そうしたときに、例えばJBICなんかですと、伝統ある組織ですし、国際経済・金融にも、経産省とか財務省というあたりは知見も深くて、その辺りのノウハウもあって、大きな変化にもタイムリーに対応していくということもある程度期待できるかと思いますけれども、国土交通省が所管しながら60人ぐらいの体制でやっていくというふうな組織が今後も存続していくときに、どうしてもやらなければならないような事業というものをどこまでやっていくのかというのは、よくよく線引きは考えて結論を出していただければと思います。
以上です。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
事務局のほうから何かございますか。
〔国土交通省田中国際統括官〕いただきました点も含めて、最終報告に向けて検討を進めていきたいと思います。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
土居委員長におかれましては、今ほどの皆様のご意見を参考にしていただきながら、最終報告書をおまとめいただければと思っております。
どうもありがとうございました。ここでJOINの関係者の方々にはご退席いただきます。
(JOIN関係者退席)
〔翁分科会長〕それでは、予定の時間となりましたので、本日の議事はここまでといたします。
ご議論いただいた内容のほか、もし追加のご意見やご質問がございましたら、事務局までお寄せいただければと思います。
本日の議事内容につきましては、この後、事務局より記者レクを行います。議事録につきましては、委員の皆様のご了解をいただいた後、財務省のホームページに掲載いたします。
次回の開催日程は、後日事務局よりご連絡をいたします。
本日はご多忙の中、誠にありがとうございました。これにて閉会といたします。ありがとうございました。
16時13分閉会