財政制度等審議会財政投融資分科会
議事録
財政制度等審議会財政投融資分科会議事次第
令和6年10月18日(金)15:01~16:41
財務省第3特別会議室(本庁舎4階)
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1.開会
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2.令和7年度財政投融資計画要求の概要
質疑・応答
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3.令和7年度財政投融資計画の編成上の論点
(株)国際協力銀行
質疑・応答
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4.閉会
配付資料
資料1 |
令和7年度財政投融資計画要求 |
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資料2 |
説明資料株式会社国際協力銀行 |
出席者
分科会長 |
翁百合 |
窪田理財局長 森田審議官 坂口総務課長 吉住財政投融資総括課長 村松資金企画室長 天井財政投融資企画官 原井管理課長 横山計画官 伊藤計画官 |
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委員 |
土居丈朗 野村浩子 丸田健太郎 家森信善 渡辺努 |
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臨時委員 |
岡田章裕 工藤禎子 冨田俊基 山内利夫 |
15時01分開会
〔翁分科会長〕それでは、予定の時間となりましたので、ただいまから財政制度等審議会財政投融資分科会を開会いたします。
本日は、オンラインでのご参加を含めて、10名の委員がご出席されておられます。欠席されております有吉委員から意見書を頂戴しております。
それでは、議事に移ります。
本日は、令和7年度財政投融資計画要求の概要及び令和7年度財政投融資計画の編成上の論点として、株式会社国際協力銀行についてご審議いただきます。時間は限られておりますので、ご質問、ご意見などはできるだけ簡潔にお願いいたします。
それでは、財政投融資計画要求の概要につきまして、吉住財政投融資総括課長よりご説明をお願いいたします。
〔吉住財政投融資総括課長〕財政投融資総括課の吉住でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
令和7年度財政投融資計画要求の概要につきまして、資料1に沿ってご説明させていただきます。資料2ページをご覧いただけますでしょうか。上段の表をご覧いただきますと、令和7年度の財政投融資要求額は、全体で12兆7,237億円となっておりまして、6年度計画比で約6,100億円の減となっております。
要求の内訳といたしましては、財政融資が10兆541億円、産業投資が4,984億円、政府保証が2兆1,712億円となっております。
資料下段の財政投融資計画額の推移でございますが、今回の要求額は12.7兆円となっておりまして、左側と比べますとコロナ前のいわゆる平時と言われておりました令和元年度並み、あるいは、それ以下の水準という形で大分小さくなってきております。
次の3ページをご覧いただけますでしょうか。こちらは財政投融資計画のうち、左側が財政融資計画額の推移、右側が産業投資計画額の推移という形で、それをグラフ化したものでございます。
左側の財政融資ですが、これが財政投融資計画の大宗を占めるものですから、全体額の推移とパラレルになっておりまして、こちらもコロナのとき、令和2年とか令和3年を除きまして、大体10兆円余という形で、近年に至ってはだんだん小さくなってきております。
右側をご覧いただきますと、産業投資でございますが、これは縮尺が、左側が兆円で、右側が億円ということで、やや注意を要するのですが、昨今のスタートアップやGX支援等もございまして、産業投資につきましては、右肩上がりに伸びてきている状況となっております。
次の4ページをご覧いただけますでしょうか。こちらは、財政融資の要求額が1,000億円以上の機関を要求金額の大きい順に並べた資料となっております。
そのうち増減額の大きな機関をご説明申し上げますと、まず、一番上にきております①日本政策金融公庫でございますが、ここは要求額が3.3兆円という形で6年度と比べますと7,000億円程度減少となっております。
理由といたしましては、日本政策金融公庫が融資をしている融資先からの回収金といった、いわゆる自己資金が増加する見込みであること等から、要求額として3.3兆円となっていると承知しております。
その次、②は地方公共団体でございます。続いて、③国際協力機構、④国際協力銀行という形になっておりますが、こちらにつきましては、それぞれ、プラス2,000億円、プラス3,000億円程度ととなっております。
これにつきましては、為替変動等の影響でございますとか、あるいは、過去に発行いたしました政府保証外債の償還の山が来るということで、資金を増強しておくという形から要求が増えているということでございます。
さらに1ページおめくりいただきますと、5ページになりまして、産業投資の要求でございます。
こちらは全体、一番下のほうを見ていただきますと、先ほども右肩上がりと申し上げましたが、令和6年度と比べまして、令和7年度要求は4,984億円と、若干の増という形になっております。
上のほうに機関を書いておりますが、要求が増加した機関といたしましては、①のエネルギー・金属鉱物資源機構がございまして、これがプラス376億円という形になっております。増えました理由といたしましては、この機構につきまして、令和4年の法改正で水素等の業務に対応するものが追加されましたので、今回は、その業務を行うために増額要求という形で来ているものでございます。
そのほか、真ん中あたりでございますが、⑤海外通信・放送・郵便事業支援機構、⑥脱炭素化支援機構となっておりますが、それぞれ日本企業の技術を活用いたしましたDXの推進やGXの推進といったことから、増額の要求となっております。
最後、6ページにつきましては今回新たに追加させていただいた資料でございますが、財投機関数の推移を財投改革後から並べたものでございます。財投改革初年度の平成13年の当初計画では、47機関が計上されてスタートしておりますが、その後、法人の組織形態や事業の見直し等々を経まして、42、37、32という形で、今回は32機関となっております。
ご参考までに2005年と2015年に計上されていた機関を申し上げますと、2005年におきましては、高速道路会社であるNEXCO3社とか首都高速道路、阪神高速道路とか、研究開発法人であるNEDOや中小機構、IPA等が計上されていたということでございます。平成27年(2015年)につきましては、国立がん研究センター、国立循環器病研究センターがあったところでございます。
資料に縦の棒グラフで当初計画額も併せて書かせていただいておりますが、機関数の減少に比例するように、青色の財投計画額も減少しているところでございます。
7月末の当分科会でおとりまとめいただいた議論におきまして、財政投融資の意義等にご言及いただきながら、経済社会環境の変化に伴う新たな資金ニーズに応えていくべきといったお話をいただいたところでございます。償還確実性、民業補完性、あるいは債権のリスク管理ということに気を払うことは当然でございますけれども、おとりまとめいただきましたことを踏まえながら、必要なニーズに適切に対応してまいりたいと考えております。委員の先生におかれましては、引き続きご指導賜ればと思っております。
それ以降の、7ページ以降につきましては、ご参考でございますので、説明は割愛させていただきます。
私からは以上でございます。よろしくお願いいたします。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
それでは、ただいまのご説明を踏まえまして、委員の皆様からご意見、ご質問をお願いしたいと思います。会場にいらっしゃる皆様は、名前の札を立てていただきますようお願いします。オンラインでご出席の皆様につきましては、挙手ボタンまたはチャットにてお示しください。
なお、ご発言の際に資料を引用される場合には、資料番号と該当ページをおっしゃっていただくようお願いいたします。
それでは、よろしくお願いいたします。
まずは、有吉委員のご意見をご紹介いただけますか。
〔吉住財政投融資総括課長〕有吉委員から、今日はご欠席ということで意見をいただいておりますので、読み上げさせていただきます。
【令和7年度財政投融資計画要求の概要】への意見という形で、昨今の社会経済の状況を踏まえ、全体的な方向感としては、財政投融資全体の規模は抑制しつつ、産業投資については拡大させていくべきと思料いたしますというご意見をいただいてございます。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
それでは、丸田委員、お願いいたします。
〔丸田委員〕丸田でございます。ご説明ありがとうございました。
私からはまず、有吉委員の意見にも非常に近いのですが、全体の傾向としまして、6ページ目にございますように、確かに2001年やコロナ前の15年と比べて、機関数だけでなく金額も右肩で下がっているようには見えるのですが、やはり、前回のとりまとめでも議論がございましたように、今後例えばGXとかサプライチェーン等の新しい分野の資金需要は非常に長期かつ大規模なものが想定されると理解いたしておりますので、必ずしも右肩で下がっているのが適切というわけではなくて、資金需要に応じた柔軟な制度の運用が望まれる、場合によっては拡大する可能性もあるのではないかという点でございます。
次に、5ページ目でございますが、こちらは質問になるのですが、全体的に、GXやDXの取組で多くの機関で予算も要求も増えているということではあるのですが、日本政策投資銀行について、恐らく日本政策銀行もGXやDXの取組は結構行われていると思うのですが、今回予算要求が17.6%減っているということにつきまして、何か背景や理由があるのか教えていただけますでしょうか。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
今の点いかがでしょうか。
〔横山計画官〕計画官の横山でございます。日本政策投資銀行の特定投資業務の要求が減っている理由ですが、基本的には毎年度、直接金融的なものに投資するために必要な額を要求いただいているということでございます。去年と比べて政投銀における見積りが少ないということで、来年度要求としては700億円の要求をいただいていると認識しております。
〔丸田委員〕ありがとうございます。何か取組の方針に変化があるとかではなくて、タイミングだったり、そういったものということですか。
〔横山計画官〕そうですね、手元にDBJの中で残っている資金と、来年度必要になる資金を勘案し、結果としてこのような要求になっていると理解をしております。取組が特に変わっているとか、そういうことではないということでございます。
〔丸田委員〕ありがとうございます。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
それでは、土居委員、山内委員の順番でお願いいたします。
〔土居委員〕ご説明どうもありがとうございました。もちろんこれは要求なので、これから精査して、よりよい令和7年度財政投融資計画を策定していただきたいと期待をいたします。
図らずも、吉住課長が振り返られたように、確かに財投改革後の財政投融資の位置づけ、在り方が、その間にもいろいろと変化してきた。もちろん危機対応という役割があった時期もありましたし、その部分は少し特例的な状況なので、これ以上議論はしませんけれども、6ページにあるような形で財投機関が推移してきたというところを見ますと、財政融資資金、産業投資、それぞれの役割があって、それぞれの役割をその時々に果たしてきていて、今日ということで見ますと、財投機関が直接事業を手がけるというよりかは、事業を手がける民間企業なりの支援をする財投機関というものがかなり多くを占めるような時期になってきているのかと思います。
もっと踏み込んだ話を申しますと、インフラ整備に関わる財投機関が、財政融資資金ないし産業投資から直接出融資をして、そこで事業を営むというようなタイプの財投機関は、もちろん今も引き続きあるわけですが、金額的にも大分規模が小さくなってきて、むしろ、政府系の金融機関とかで、実際の事業会社は民間なのだけれども、そこから政策金融で融資をするとか、ないしは産業投資に至っては大半がそうなわけですが、民間の事業者に対して、官民ファンドとかが出資をするという形で、実際に事業を営むのは出資先の企業というような形で、側面支援といいましょうか、政府ないし独立行政法人なりが、じきじきに事業を営むところに対して財政投融資を活用するというよりかは、今申し上げたような形に今は形が変わってきているということが、今回改めて振り返ると、この資料からそういう時代の変化を感じたというところを、私のコメントとして申し上げたいと思います。
以上です。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。政府関与のやり方が変わってきたということですよね。私も以前、行政改革推進本部で官民活動役割分担小委員会というのに入ってそういう議論をしましたが、それが実際に起こっていると思います。ありがとうございます。
それでは、山内委員お願いします。
〔山内委員〕ご説明ありがとうございました。
私からもコメントとして、2点申し上げます。
まず、産業投資に関して、これまでも財投分科会で議論がありましたとおり、各産投機関の要求の裏側に、実際の投資案件がきちんとひもづいているのかどうかをぜひご議論いただければと思っています。JICTにつきましては、単年度黒字になったものの、要求額は非常に大きく、累損がまだ残っている中でこういった額が妥当なのか、投資の裏づけがしっかりあるかどうか、お金を出した後のモニタリングができるのかという点も含めて、ご議論いただければと考えております。
もう一つは、財投分科会の範疇外であるということを理解した上で申し上げるのですが、最近、政府の経済安保政策の話などで政府保証という言葉が結構メディアに出てくるようになっています。国民から見ると、政府保証の財源といいますかバランスというのは一体どこで取っているのかはあまり分からない部分であるかと思います。これはどちらかと申しますと私が個人的に今後気をつけて見ていきたいということではあるのですが、産業投資、財政融資の枠外にある政府保証、これも究極的には産業投資と近い性質をもつかと思いますので、そこも視野に入れながら、議論させていただければと思っております。
以上です。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
そのほかはございませんでしょうか。オンラインでも特にないでしょうか。
それでは、今のお二人のご意見について、何かコメントがございましたら、よろしくお願いいたします。
〔吉住財政投融資総括課長〕吉住でございます。貴重なご意見を大変ありがとうございます。
今いただきましたお話を踏まえながら、これから令和7年度の財投計画編成していく形になりますが、必要なニーズを適切に、そして十分に応えながら、うまく日本経済等々に貢献できるようにやっていきたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。
〔窪田理財局長〕一言だけよろしいですか。
〔翁分科会長〕お願いします。
〔窪田理財局長〕土居先生のご指摘は全くそのとおりだと思います。確かにインフラ関係の財投の役割というのは縮小していますが、では、国が民間活動に関与する割合が、この10年間で減ってきているかどうかというのは、また別の議論があるところでありまして、そういう意味では、どちらかというと補助金をはじめとした財政負担に依存する部分が高くなっていますが、ただ、非常に低金利の時代でもありましたので、そう考えると、今後については、財政融資などについても一歩進めるという意味で、新たな役割を果たしていける可能性があるのではないかと私どもとしては考えております。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
官の活動の可否の問題と手法の問題と、いろいろ組み合わせて議論していく必要がありますよね。ありがとうございます。
それでは、この点につきましては、よろしいでしょうか。
続きまして、令和7年度財政投融資計画の編成上の論点についてご審議いただきます。株式会社国際協力銀行の関係者の方々が入室されますので、しばらくお待ちください。
((株)国際協力銀行関係者 着席)
〔翁分科会長〕それでは、横山計画官より要求の概要及び編成上の論点のご説明をお願いいたします。
〔横山計画官〕計画官の横山でございます。よろしくお願いいたします。私からは資料2についてご説明をさせていただきます。
資料2の3ページ目でございます。これは機関の概要ということで、説明は省略させていただきます。
4ページ目でございます。JBICは一般業務と特別業務という2つの業務の種類がございます。
2つ目の丸でございますが、一般業務及び特別業務は、区分経理した上で勘定ごとの「収支相償の原則」を規定する一方、特別業務については、リスクテイク機能を強化する観点から、個別案件ごとの「償還確実性の原則」を免除するということでございます。一般業務については、個別の案件ごとに償還確実性が必要であるということでございますが、特別業務はそれが免除されている。ただし勘定全体では収支相償の原則を維持しているということでございます。
続いて6ページ目でございます。令和7年度要求の概要でございます。
事業規模については、前年度計画比マイナス4,500億円を見込んでおります一方で、社債償還金増加による自己資金の減少等を踏まえ、財政投融資としては前年度計画比3,740億円の増となっております。
それから、表中央の「産業投資」という欄をご覧いただければと思いますが、産業投資については、7年度要求、合計が1,100億円となっておりまして、そのうち一般業務が1,000億円、特別業務が100億円となっております。
編成上の論点としまして、2つ掲げさせていただいております。
1点目が、一般業務勘定における産業投資要求についてでございます。8ページ目でございます。
JBICからの要求の考え方ということでございますが、7年度要求としては、将来的な自己資本比率23.4%をJBICとしては目指されており、これはJBIC発足時の自己資本比率でございますが、これを将来的に実現していきたいというお考えでございます。
それに向けまして、来年度要求としては、中央の図にありますようにリスクアセットの増加約2,000億円に対応する、リスクアセット増加分の23.4%のリスクバッファ、それからJBIC法改正による、リスクの大きい業務への対応のための上乗せ分として合計1,000億円の産投の要求をいただいているところでございます。
9ページ目が、その要求の背景の1つ目ということで、経済安全保障の重要性が増す中で、各国公的機関においては機能強化の動きが見られるということでございます。
10ページ目が要求の背景の2つ目ということでございまして、JBIC法改正が昨年、成立・施行されているということでございます。日本の産業の国際競争力維持・向上に資するサプライチェーンの強靱化、スタートアップ企業を含む日本企業のさらなるリスクテイクの後押し、それからウクライナ支援という柱の下で、業務の範囲の追加が行われているということでございます。
11ページ目でございます。これまでの自己資本比率の推移でございます。一番左側が、先ほど申し上げた設立時の自己資本比率23.4%でございますが、その後自己資本比率が低下しております。ただし、その後、産投措置等の結果、近年では17から18%台の自己資本比率になっているということでございます。
他方で、ここの赤で囲っておりますように、かつては非常に円高だったわけですが、円安が進行しているということもありまして、リスクアセットが増加し、足元の自己資本比率はやや低下しているということでございます。
それから、12ページ目でございます。設立時の自己資本比率である23.4%というのは、2011年度に2,000億円というかなり大きな額の措置をした結果、達成しているものでございます。その後も、追加で約6,000億円の産投を措置しておりますが、先ほど申し上げたように、円安がこの間進行したということもありまして、足元では17%程度の自己資本比率になっているということでございます。
仮に、2023年度末時点において23.4%を実現する場合、1兆1,692億円の追加の措置が必要になるという計算になります。
他方で、右側の図をご覧いただきますと分かりますように、2011年度と比べますと、足元で産業投資によるリスクマネー供給のニーズは多様化、かつ増大しているということでございます。
13ページ目でございます。上部の表は他機関との自己資本比率の比較を並べております。大手邦銀である3メガバンクの単体とグループベースの自己資本比率は、おおむね15から18%ということで、JBICと同程度の水準ではないかということでございます。
右側の表は、海外の公的機関の自己資本比率でありまして、欧州系の機関については、JBICよりも高い自己資本比率で活動されているということでございます。他方で中国、韓国と比べると、JBICのほうが高い自己資本比率になっているということでございます。
それから、真ん中から下については、自己資本比率や出融資実績、格付けの推移を並べております。
下側の格付けについてでございますが、基本的にJBICの格付けとJGB、つまり日本国債の格付けが同じ格付けになっているということでございまして、2014年度末が一番自己資本比率が低かったわけですが、その時点でもJBICとJGBの格付けは変わっていないということでございます。
また、2014年度末において、出融資実績がこの前後で大きく抑制されたというようなことは読み取れないということでございます。
14ページ目でございます。自己資本比率を向上させるためには、自己資本を増やすほかに、分母であるリスクアセットを減らしていくことも考えられるわけでございますが、この右側の表をご覧いただくと分かりますように、JBICについては2012年度末と2023年度末を比較すると、かなり不良債権の比率が高まってきていることが見てとれると思います。他方で、3メガバンクグループやDBJについては、この間、不良債権比率を減らしてきておりますので、少し対照的な動きになっているのではないかと思っております。
15ページ目は、リスクアセットの圧縮に関係した取組でございます。流動化対象としてJBICがカウントしている1兆1,625億円という数字がございますが、流動化実績としては約1,800億円になっているということでございます。
これは、右下の図を見ていただきますと、まず、案件を形成する段階で、JBICとして、これぐらいのものが将来流動化できそうだと特定した部分を全て足すと、先ほど申した約1.2兆円の額になるものでございます。
その案件が、進捗していき、リスクが安定していくと、実際に機関投資家等に売却できますが、その売却の実績が約1,800億円ということでございますので、約1.2兆円がそのまますぐ売れるかというと、そうではないということにはご留意いただければと思います。
16ページ目でございます。以上のまとめでございますが、JBIC法改正を踏まえて、日本企業の国際競争力維持・向上に資する取組の推進が期待されており、諸外国の公的機関が機能強化を図っている中で、円滑な業務実施のためには、財務健全性を確保することが重要であると認識をしております。
他方で、自己資本の原資となる産投については、財源に限りがございますし、社会経済情勢が変化する中で、ニーズが多様化、増大しているということもございます。
そうしたことを踏まえまして、JBICの円滑な業務遂行に必要な自己資本の在り方についてどのように考えるか、ご議論いただきたいと思います。
また、財務健全性の確保のためには、自己資本の確保だけではなく、リスクプロファイルの適切な管理やリスクアセットの圧縮などの取組も重要と考えますが、これらが十分なされているかということについてもご議論をいただければと思います。
以上が論点の1点目でございまして、次からが論点の2点目である、特別業務勘定における産投要求についてでございます。
18ページ目でございますが、特別業務勘定は開始後7年が経過しておりますが、案件組成は限定的でありまして、これまで8件、631億円の承諾実績となっております。
中央の図をご覧いただきますと分かるように、自己資本が3,283億円、既に積み上がっており、かつ現預金としても2,947億円が積まれているという現状でございます。
こうした中で、JBICからは、追加で産業投資100億円の要求をいただいております。
19ページ目でございますが、なぜそのような要求をいただいているかという背景でございます。JBICについては、銀行法の直接の適用はないのですが、銀行法上の大口信用供与規制と同等のものとして、1債務者当たりのエクスポージャーを自己資本の25%以内にするというルールを設けられております。一方、右側の将来像にありますように、JBICとしては、将来、1債務者当たりの出融資として1,000億円オーダーのものを検討されているということでございまして、先ほどのルールからしますと、4,000億円程度の自己資本が必要になってくるということでございます。そうしたことを踏まえて、来年度に100億円の自己資本の積み増しをしたいとお考えでございます。
他方で、これまでの出融資の承諾実績は累計で631億円にとどまっているということでございます。
20ページ目はJBIC法改正により追加された特別業務で可能な業務のご紹介でございます。
21ページ目でございます。特別業務の開始以降、3,283億円の産投措置を行ってきた一方で、承諾額合計は631億円に留まっている。こうした状況の中で同一債務者への大型案件を念頭に置いた要求をいただいているところでございます。
論点でございますが、産業投資の財源は限られている中で、出融資承諾実績に比して多額の自己資本を有している特別業務勘定に対する、さらなる産投の措置が必要かについてご議論いただければと思います。
また、要求の背景にある将来的な大型案件の遂行に関しては、事業リスクやカントリーリスクも想定されるわけでございますが、勘定全体の収益性の確保という観点から問題はないかについてもご議論をいただきたいと思っております。
私からの説明は以上でございます。
〔翁分科会長〕ご説明ありがとうございました。
それでは、ただいまのご説明を踏まえまして、委員の皆様からご意見、ご質問をお願いいたします。なお、要求側の方々にご質問いただいて結構です。
最初に、本日ご欠席の有吉委員からのご意見をご紹介いただけますか。
〔横山計画官〕有吉委員からのご意見をご紹介させていただきます。2点、ご意見を頂戴しています。
1点目は、不良債権比率が、絶対値としても、また他の銀行と比べても高まっていることについては原因について慎重に分析を進め、リスク管理のさらなる高度化に努めていただきたいということでございます。
また、海外企業・プロジェクトへの投融資については、従来よりも投融資先を限定する、特定の投融資先への信用供与の集中を避けるなどの対応を進めることも検討されるべきと考えます、ということでございます。
2点目は、リスクアセット圧縮に向けた取組との関係で、流動化の取組を進めることをより積極的に検討すべきではないかと考えます。仮に「流動化対象額」として計上されている債権の中に、実際に債権譲渡等を行うことが適当でない、あるいは現実的でないものが多く含まれているということなのであれば、「流動化対象額」の定義を見直して、流動化によるリスクアセット圧縮に具体的に取り組みやすくなるよう再整理をすべきと考えます、といったご意見を頂戴しております。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
それでは、岡田委員、丸田委員の順番にお願いいたします。
〔岡田委員〕岡田です。本日、説明ありがとうございます。
論点①のほうですけれども、まず、自己資本の関係ですが、考え方として、バッファーを厚くするということもあるかと思いますが、一方で、純粋な民間の金融機関ではないので、資本が毀損するような事態になれば、その時点で増資をして対応するということも可能かと思います。JOINの件もあったように、日本の場合、どうしても公的金融機関が大きな損失を出すと、社会的な批判も結構高まるとは思いますので、どの道、バッファーがあっても、その後に増資をしても、いろいろ社会的な議論が起きた中で対応していくということであれば、どちらもあまり変わらないのではという考え方もあるかと思いますが、その辺りは、いかがでしょうかというのが1点です。
もう1点は、不良債権比率の比較、14ページでされていますけれども、民間の金融機関というのは普通の事業体への融資なんかもあって、こういう数字になっていて、あまり単純に比較できないような気もするのですが、全般的な世界の情勢で、経済安全保障のリスクとか国際的な安全保障環境の悪化などで、これまでよりもJBICとして、リスクテイクの度合いを少し強めなければならない環境にあるということは理解はしますが、その際に、JBIC単独で出融資というわけでもなくて、民間の方と一緒にやられるケースが多いと思います。その際、そういうリスクテイクの度合いというのは、JBICだけではなくて、民間の人たちも事業体もひとしく取りながら、少し、そういう度合いを高めていこうということなのか、あるいは、公的金融機関としてリスクをより取る必要があるというような状況認識の下でやっていかれるということなのか、それはいずれなのでしょうか。
以上です。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
それでは、次に、丸田委員、お願いいたします。
〔丸田委員〕丸田でございます。ご説明ありがとうございます。
私からは、まず、論点①のほうでございますが、自己資本比率について、13ページ目にございますように、私の理解では、基本的にはJBICの格付けというのは、日本国と同一とみなされて、日本の国債と同じ格付けということでございますので、JBICとして自ら証券化を行うとか、独自の資金調達を行うために格付けが必要というのがあれば別なのかもしれませんが、そうではない以上、ある一定程度のレンジ内でしっかり管理がされているのであれば必ずしも自己資本比率を他の海外公的機関と同程度まで高める必要性があるのかよく分かりませんでした。また、設立時の23.4%にこだわることについて、そもそも23.4%の根拠も含めて理解ができておりませんので、必ずしもそのような考えでないといけないというわけではないのではないかと感じました。
それと、次の14ページ目の不良債権比率でございますが、当然、昨今地政学のリスクも高まっておりますので、債権の貸倒リスクが、一定の範囲内でしっかり管理がされている前提の中で高まる分には、そこまで大きな問題ではない可能性もあると思います。例えばJOINのようにJBICが単独でリスクを過度に取っているわけではないと思いますので、その意味では逆にリスクが高まる環境下でJBICがしっかりチャレンジされてリスクを取って呼び水効果を得ながら、案件組成に関わり、その結果不良債権比率が少し上がるということにつきましては、逆に、政策目的という意味からも有用なことをやっていただいていると考えることもできると思います。もちろん、その前提として当然しっかりリスク管理がされていることが重要にはなりますが、そのような見方もあるのではないかと感じました。
次の15ページの債権流動化について、恐らくJBICからすると資金調達コストも非常に安いので、債権を流動化するインセンティブがあまりないような気はするのですが、ただ、一方で、やはりここにリスクアセット圧縮の目的もありますし、あとは恐らく民間側からしても、機関投資家等がこれらの債権に投資する機会の提供にもなりますので、こちらについては、やはり、より積極的に取り組んでいただくということが必要ではないかと感じました。以上が論点①のコメントになります。
論点②につきましても、今ご説明がございましたように、過去、特別業務についてまだまだ承諾実績が低いというところがある中で、今回かなり大規模案件に取り組むという点が妥当なのかどうかは具体的にどのような案件に取り組むのかも含めてその妥当性の検討が必要と考えています。
また、特別業務のほうで、今後融資だけでなく投資も含めて、リスクを取っていくというような記載もございますが、過去、JBICは融資を中心に取り組まれていたということもございますし、投資をやるからにはいろいろモニタリング体制だけでなく、ノウハウ、人材が必要だと思いますので、そういったところも含めてしっかり体制を整備した上で、このような何か特定の大型案件を考えられて要求されているのかどうかというところについて、確認をさせていただければと思います。
以上でございます。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
全体、後で集中的にご回答いただきたいと思います。それでは、冨田委員、工藤委員、野村委員、渡辺委員、家森委員、この順番でオンラインの委員の方からよろしくお願いいたします。
まず、冨田委員、お願いいたします。
〔冨田委員〕ありがとうございます。
まず、円安によって自己資本比率が低下したという話が、12ページにありました。それで、資金調達におけます通貨構成、私の理解では、政府保証債をドル債で出しているということ以外に存じないのですけれども、残高ベースで、大体ドルと円の比率はどれぐらいなのかということが1点目です。
2点目は、これに関連するのですけれども、自己資本比率対策としての政府保証債の位置づけについてであります。ある意味、ダイレクトに自己資本比率対策をやっているものとして、政府保証がついているというようにも理解は可能だと思うのですけれども、その位置づけをどのようにお考えなのかということが2点目です。
それから、3点目の質問は特別業務勘定についてですが、これまで非常にリスクの高い、しかし、我が国にとって極めて重要と考えられる領域について例示がございました。18ページです。この特別業務の事業の進捗、例えば、イラクの変電所機器の輸出のための金融をつけたと。それの事業の進捗がどのようになっているかということ。そして、水素ステーションの事業の進捗。これは自動車の燃料として、ガソリンスタンドに代わってくるものとして極めて重要な位置づけにあると思うのですが、この事業の進捗はどうなっているかということです。
最後に、特別業務勘定におけます融資についてのリスクウェイトはどの程度と考えたらいいのかという問題です。これが特別業務勘定におけます出資の在り方に大きな影響を与えるものと思います。
以上、よろしくお願いいたします。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
それでは、工藤委員、お願いいたします。
〔工藤委員〕ご説明ありがとうございました。
JBICについては、14ページに不良債権の比率の記載がありますけれども、ここにお書きいただいておりますようにサプライチェーン強靱化や、若い技術の商業化の初期のサポートや、また、地政学リスクのある先に民間資金の呼び水として機能するために、長い期間にわたり、融資をお出しになっておられますので、ここもとの地政学リスクの高まりなども受けて、不良債権比率が上がっているというのは、理解できると思い、拝見しておりました。
また、リスクアセット圧縮に向けた取組について、ある程度プロジェクトが安定しているものについて、お取り組みになっていただいていると理解いたします。
先ほど申し上げたようなリスクプロファイルからして、流動化も簡単ではないのだろう、日本には深いリスクを取る投資家というのも限定的ですので、ある程度安定してからではないと無理なのだろうと思いますので、そこをしっかりやっていただくということは大事だと思いますが、何でもかんでもというわけにはいかないのだろうというご苦労も理解するところです。
論点①の自己資本比率のことですが、自己資本比率の目標については、より精緻に考え方を整理するべきときではないかと思っておりまして、発足時の自己資本比率である23.4%をあえて目標とする必要はないのではないかと、お話を伺っていて思いました。もちろん経済社会システムの中で果たしている機能、役割や規模、官民における役割の違いによって、民間金融機関とは必要自己資本の考え方や検証の厳密性といったことが異なる部分があると考えるのは自然であると思います。
一方で、健全性を保つために必要とされる自己資本の水準に関する大枠の考え方については、大きく異なるというものでもないのかと思います。
例えば民間の商業銀行に対しては、国際合意に基づくバーゼル規制が導入されておりまして、健全性を保つために必要な最低自己資本比率が厳格に定められています。リスクプロファイルは多様化、複雑化する中で、大手行は多様なシナリオ分析、ストレステストを行い、危機が発生した際にも健全性を保てるように、自行にとって必要な自己資本の水準、バッファーを持ちながら、検討してまいりました。そして、その上で、中長期での事業戦略を検討し、他の研究機関等への出資といった施策を実現できるように、自己資本の積み上げを行っております。
JBICは自己資本比率規制の適用を受けておりませんけれども、自主的にバーゼルⅢに準じた自己資本比率の算定を行っておられて、加えてポートフォリオの特徴等に照らしたストレスシナリオを策定し、自己資本への影響を確認することも既に行っていると伺っています。そういった結果を活用しながら、中長期の事業戦略上の施策の実現のために必要となる自己資本を検証した上で、目指すべき自己資本比率の目標を設定いただくとよいのではないかと考えます。
以上です。ありがとうございました。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは、次に、野村委員、お願いいたします。
〔野村委員〕ご説明ありがとうございます。
先ほど冒頭の説明にはなかったのですが、これまでの実績を拝見すると、15ページにありますように、民間資金の呼び水としての役割を果たされてきたということは評価されるところかと思います。平成25年からJBIC出融資の保証の2.2倍の民間資金を呼び込んでいるということは、役割を果たされているところかと思います。
その上で、今後について2点お伺いです。18、19ページのあたりですが、産業投資について、将来像として1,000億円規模の大口案件を視野に入れていくとございますが、これまで7年で案件8件で631億円ということを考えると、これには非常に唐突な印象を受けております。例えばどのような案件を想定されているのかということをお伺いしたいと思います。
もう一つの質問は、これに関連するものです。大口のリスクの高い海外案件を手がけるとなると、やはりリスク管理が心配されるところです。直近ではJOINの大きな損失を出したという件もございます。このJOINの大きな損失からどのような学びを得たのか、投資先モニタリングなどどのような学びを得て、リスク管理をより一層強化しようとしているのか、それについてお伺いしたいと思います。
以上です。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
次に、渡辺委員、お願いします。
〔渡辺委員〕渡辺努です。初歩的な質問でお恥ずかしいのですけれども、為替の話なのですが、理解できないので教えていただきたいのですけれども、何度か、円安でリスクアセットが増えているので、自己資本が減っているという説明があったのですけれども、恐らく、JBICであれば対外資産を、例えば米ドル建ての資産をたくさんお持ちだとか、あるいは融資の残高も米ドル建て、あるいはほかの通貨建てでお持ちだということだと思うのですが、そうだとすると、普通に考えると、そこで自国通貨、円が安くなるということは、もうかることはあっても、損することはないと思いますが、なぜそれが自己資本の毀損になるのか、何とも理解ができていないのですが、まずそこを教えていただければと思います。
それから2点目は、今のこととも関係するのですが、為替レートは今、足元随分動いていますけれども、恐らく先々も少し不安定な状態というのが数年間、あるいはもっと長く続く可能性というのはかなり高いと思いますが、そういう中で為替のリスクのマネジメントというのは、現状どのようになさっているのか。それからさらに、そういうボラティリティが高まる中で、先々どのように工夫する余地というのがあるのかどうか、その辺のことについて、今お考えになっているところを教えていただければと思います。
以上です。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
それでは、次に、家森委員、お願いいたします。
〔家森委員〕ありがとうございます。神戸大学の家森です。
最初に、資料13ページに大手邦銀の自己資本比率が並べられています。これ以外に、ほかの不良債権のところなどでDBJが参照されていて、DBJの自己資本比率は現在17.7%ということからすると、それほど今の、JBICの自己資本比率が、おかしなものではないような気がいたします。なぜ殊さら当初の23.4%という水準が目標になるのかが十分に理解できないというところであります。
2つ目に、そもそも、先ほどから先生方がご指摘のように、JBICにとっての自己資本比率というのがどういう意味を持つのかということです。銀行が自己資本を大事だというのは、預金者に迷惑をかけないためです。預金者に相当するものは、JBICの場合に言えば借入先、あるいは社債権者ということになると思いますが、23年度末で見ると、借入約5兆6,000億円のうち、財政融資資金が約9,500億円、それから外国為替資金が約4.7兆円、そして社債が約7,600億円となっていまして、借入のほうは、財融と外国為替という国からのお金というところです。社債は、どの程度政府保証がついているのか分かりませんけれども、政府保証がついているということは政府の負担です。となると、自己資本で政府が出すのか、借入の部分で毀損するのかというのは、ほぼ同じになってきていて、社債のうちの財投機関債に相当する部分のケアさえできれば、極端に言えば、あとは結局同じことになっているのではないかと思うのです。優先弁済の順番とかという点で、何か特別に懸念すべきことがあるのかという点を教えていただければと思いました。
それから、19ページのところで、将来的には1,000億円規模の大口案件を手がけることを視野に入れているということですけれども、この特別業務制度というのは、案件全体でリスクを分散するということで特別に入れられたものと理解しております。1件当たりの案件についてロスがあるのはよいですよという、これはポートフォリオ全体を考えるのでおかしなことではないと思うのです。しかし、今のポートフォリオのところに1,000億円のものを持ってくるというのは、これではリスク分散は効かなくなるわけです。別の枠組みを新たにつくって、これを実施するしか、現状ではないと思います。つまり、この枠組みの中で1,000億円をやりますというのは、少し無理があるのではないかという感じがいたしました。
以上です。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは、土居委員、お願いいたします。
〔土居委員〕ほかの委員のご質問と重なる部分もあるのですが、違った表現というか、似たような質問をさせていただくことになるかと思います。
私が思ったのは、自己資本比率に関しては、確かに23.4%という話で、そこまでなくてもいいのではないかという、ほかの委員のご意見もあって、そのときに一般業務勘定ではそういう話がある一方で、特別業務勘定のところでは、19ページのように与信集中管理の観点からの自己資本の在り方という話になっていて、もちろん勘定によってそもそも償還確実性の考え方が違うことは承知をしていますけれども、そうはいっても与信集中管理はしておられると。だとすると、与信集中管理の観点から、どれぐらい自己資本が要るのかという説明のほうが、むしろ発足時の自己資本比率がこれだけだからという説明よりも、もう少し説得的なのかという感じがしたということです。その点については、どう思われるかというところが私の1つ目の質問です。
2つ目の質問も同じようなところに焦点を当てた話で、同じ19ページには、同一の債務者に対して1,000億円程度の大口案件と書いてあるのですが、これは家森委員もおっしゃっていたとおりで、ある融資先に対して、1,000億円丸々出融資するのかというと、さすがにそれはリスキーだというか、25%そこに注ぎ込んでしまいますね。だから、1,000億円は可能なのだけれども、実際のところ、どのぐらいの規模までならばエクスポージャーできるのかというところの実態。だからあくまでも上限は上限なのだけれども、実のところどれぐらいの、1件当たりの出融資を可能にするものになるのかというところの対応関係を、もう少し実態を踏まえた上でお答えいただけると、1,000億という上限は分かるけれども、実態としてどのぐらいになるのか。そうすると、翻って現状で、今要求されているものを踏まえて、もしそれが満額認められると、2025年には1件当たりの限度額が846億円になるけれども、それに比して、実態としてどれぐらいの案件ぐらいまでならば承諾できるという話になるのか。そのところで、実態としての、念頭に置かれているような案件の規模というのは、どのぐらいを想定されておられて、上限に比して、もう少しセーフティーなところで幾らぐらいまで出せるという話になっているのかというところの対応関係が分かると、1,000億円を目指しているという話よりかはもう少し現実的に、そのぐらいまでなら確かに自己資本が必要だとかというようなことの議論ができるのかなと思ったというのが2点目の質問です。
3点目の質問は、一般業務勘定と特別業務勘定の案件についてです。33ページと34ページに例があって、もちろん、これまで特別業務勘定で承諾された案件は列挙されているものが18ページということですが、特別業務勘定で出融資することにしたということが、どういうような意思決定をJBICの中でなされていたのか。最初から特別業務勘定で、これは扱う案件だと決めたら、ただひたすら特別業務勘定でやるかやらないかというオール・オア・ナッシングのような形の意思決定をされているのか。それとも、これは一般業務でいけるのか、特別業務でいけるのか、どちらなのだろうかと考えた結果、一般業務でできるという程度に案件ごとの償還確実性があると判断したから一般業務になって、結局、ここで指摘されているように特別業務勘定の案件組成がそんなにたくさんないのではないかという話との対応関係でいうと、どういう意思決定をされていたのかということについて、お伺いしたいと思います。
以上です。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。
それでは、ご質問やご意見について、要求側の方々や、あと、財務省からも、ご回答いただければと思うのですが、まず、それではJBICのほうから、マイクに口を近づけてお話いただきますようにお願いいたします。
〔国際協力銀行企画部門小松経営企画部長〕承知いたしました。
いろいろとご質問等を賜りまして、誠にありがとうございます。国際協力銀行の小松でございます。では、少しまとめつつとなりますが、お答えできればということと、もし漏れておりましたら、ご指摘をいただければと存じます。
まず、そうは言いつつ、若干順番に申し上げられるとありがたいのですが、最初に有吉先生から2つありました。このうち、不良債権比率に関してということ、これは各委員の皆様からもいろいろといただいておりましたので、まず、そこからお答えできればと考えております。
不良債権比率が3.55%となっているということでございます。こちらは開示しておりまして、要するに厳密な金額でいうと約6,400億円というような金額規模になってきているということはあります。ただ、ご案内ですけれども、邦銀はアセット、自己資本ともに大きいということがある中でいうと、実は金額の規模でいうとJBICのほうが小さいというところがあるのも事実は事実ということでございます。
それと、3.55%になったからといって右肩上がりで上がっていくかというと、歴年の比率を見ますと、減らすこともできるということが起きます。したがって、必ずしもこのまま右肩上がりで上がっていくものではないというのがございます。
ただ、JBICのポートフォリオの特徴でございますけれども、どうしても私どもはリテールではなく、大口の、国向けあるいは海外プロジェクト向けということになりますので、おのずと分散を図ろうとはしているのですけれども、どうしても偏るという部分がありまして、結果的に、1件、非常にリスクを伴ったということになりますと、例えばその分だけ格付けを下げるというようなこと等を行ったり、条件緩和する、危険債権化するということがございます。したがって、結果的に、こういったようなことが場合によっては起きるというところでございます。
ただ、私どもは政府の支援をいただいておりますので、その関係からいうと実は、分類上は、そのように下げた形で債権を管理するということはいたしましても、当然債権回収は図っておりまして、例えばインドネシアで申し上げますと、アジア通貨危機等の際に、条件緩和等まで行った危険債権というものの回収を100%実施するということが結果的にできるということがございまして、そういったこともあり、これまでも私どもの最終的な利益の半分を国庫納付させていただいておりますけれども、過去数十年にわたりまして、ずっと黒字で利益を数百億円出し、国庫納付してきているということでございます。
したがいまして、会計基準に基づいた貸倒引当金を充てるということをしながらでございますが、こちらもきちんと管理をしていくということが大事だと引き続き認識しているというのが、不良債権比率の話でございます。
続きまして、流動化の話もいただいております。こちらは、有吉先生からは、なかなか進んでないということであれば、その定義の見直しを含めて、やるべきではないかというようなことがありましたが、例えば工藤先生からは、一方で投資家のアペタイトということもあるのでなかなか難しさもあるのではないかというような話も賜ったというところも理解しております。
これらに関しまして、まとめての答えとなりまして、大変恐縮ですけれども、申し上げますと、いずれも踏まえてやっていく必要があると十分認識をいたしましたが、JBICの債権は、これまでの対象債権というものが、いかんせん、これまでどうしても大型のプロジェクトファイナンスであり、そういう案件というのは資源開発、あるいは火力発電の案件というものが結構多くあるということがございます。したがって、昨今、化石燃料の関連案件というものに関しては、おのずと投資家のアペタイトが下がっているといったところがありまして、どうしてもそこで売りにくいという部分があるということが1つございます。
もう一つあるのは、もちろんリスクが収まるまで、すなわち建設が終わって竣工してから流動化をするということで、実現するのに時間がかかるということもあるのですが、それよりもやはり海外向けの、この類いのリスクを取り得るという、アペタイトのあるオルタナ投資家というのが、現時点におきまして、日本国において、それほど多くはないというのも実情でございます。外貨で長期ということもございます。
そういったようなことがありますので、仕掛けをつくっても実現をするというものがすぐに多くならないということが現実として起きているということでございます。
一方で、これはページでいうと、15ページに描かせていただいた右下の図にもあるのですが、流動化のポーションをつくるということを大型案件ではやってきております。これは、まず、最終的にリスクが安定したところで、民間の投資家が買いやすくする、きちんとリターンが出るようにするために、金利条件をかなり高くして、その分だけJBIC分を抑えてトランシェ分けをして設定をするということをやっております。
その上で、建設・完工までというところにつきましては、完工等に得意なスポンサー、事業者、EPCコントラクター等を入れるセキュリティーパッケージを構築しまして、それで実施してもらった上で、竣工後に流動化を図るということをやってきているということでございます。
したがいまして、アペタイトの問題はあるのですが、こうした仕掛けは引き続き大事だと思っておりますし、今後もむしろ逆に仕掛けていくということが大事なのではないかと考え、取り組もうと思っているということと、定義を変えてというような、先ほど委員の話がありましたが、そういう意味でいうと、対象となる案件のセクターを広げるということが多分大事なのだろうと思っておりますので、申し上げました化石燃料関連の案件や上流開発案件に限らず、非化石燃料や、再エネ関係の案件というもの、これは送配電の事業、銅開発など、そういった案件等が実はこの中にも含められつつあるのですけれども、そういった案件をどんどん広げていって、できる限り日本からのオルタナ投資を促進することも可能になるような取組が図れればと考えてございます。
以上が2点目の流動化ということでございます。
続きまして、自己資本の話がかなり多くございました。こちらに関しては、複数の委員の皆様からのご指摘、23.4%にこだわる必要があるのかという点でございますが、こちらに関して言うと、最後に土居先生からいただいた話に、まさしく私が申し上げようとしていたことが若干入っていたものですから、そこに集約するような形で申し上げたいと思っておりまして、何かというと、おっしゃるとおり23.4%でなければならないというのは、どこにもそのような細かい数値基準というものが世の中にあるわけでもないということからすると、分かりにくいということはご指摘のとおりかと思った次第です。
他方で、なぜ厚みのある自己資本というものが必要なのかということに関して申し上げますと、分かりやすいのは、順を追って申し上げますと、12ページをご覧いただきまして、要するに、理論的に23.4%を一気に達成しようと思うと、追加で産投出資が約1兆円必要です。
言いたいことは、これをやると、先ほどの与信集中を思い出していただきますと、要するに4分の1追加で与信できるということが起きるわけでございます。したがって、1兆円の自己資本の厚みが起きると、追加で2,500億円の与信が可能になる債務者が増えるとなるわけでございます。
そして、そういうことをなぜやる必要があるかということですが、それが9ページにお示し申し上げているような他国の事例ということで、こちらは仔細を割愛いたしますけれども、例えば中国であればもともと自己資本が8兆円超えるというような中国国家開発銀行であり、韓国輸出入銀行であれば、法律上、準備金を超える赤字は補塡するということが政府としてなされます。それから、豪州のEFAに関しましては、国家に全ての損失収入がつけられるという、国益勘定というものを持っております。こうしたことをやりながら、かなり戦略的な取組をやってきているということとの関係において、国益に資する案件をしっかりやっていく、伍していくということが極めて大事だと考えているということでございます。
したがいまして、例えば、今度は大変お手数で恐縮ですが、33ページをご覧いただきまして、こちらは一般業務勘定の案件でさせていただいていますが、これはリスクが深くなりますと、これが特別業務になったりもするのですけれども、こちらは左上に電力の大型案件、これは中央アジアでございます、でありますとか、あるいは資源の調達の案件、サプライチェーン強靱化支援としての、ブラジル/Vale S.A.に対する融資案件がございます。
それから、下に巨額なM&A、これも海外の外需を取り込むという意味では重要な日本企業の取組だと思っておりますけれども、こういう大型の取組で、外貨で30億ドルとか、こういうことをコミットする必要が出てくるような案件でございます。
それから、資源の集中の分散をする、ロシアの脱却をするという観点で重要な、これはモザンビークでやった、右側の上ですけれども、LNGの関係、これも3兆円を超える案件にJBICが30億ドルの融資をしてございます。
その他、再エネの案件も、大型の案件が、例えばフランスでは洋上風力で起きてきているといったことがあります。こういったような話が、今後ともかなり増えるというような状況でございますので、そういったようなものに対して必要な際に追加の与信を行う、これが大事なのだと考えております。
したがいまして、私どもとしましては、自分たちで、これは利益を出しますと半分準備金に積みますので、その分も自己資本の厚みになっていくわけでございますが、追加的に産投出資のご措置を賜りながら、追加の与信をしていく、国益にかなう案件をしっかりやっていく、これが大事なのではないかと考えておりまして、ご要求をさせていただいているということでございます。
それでは、続いて、岡田先生からいただいた話でいうと、民間金融機関と協調融資する場合のリスクテイクが、どのようになっているかということですが、これについて言と、全く同条件であるようなケースもゼロではないのですが、どちらかというと私どもがポリティカルリスクを取るということに関し、場合によっては民間金融機関、協調融資銀行に対する保証を行うということをやりながら、民間資金に投入するということをやってきております。
また、債権流動化の、先ほど図をお示し申し上げましたけれども、これは15ページでございますが、この左側のほうに個別の案件をつけているのですが、こちらは比率を赤字で書かせていただいているようにJBICの融資の割合は30%台、40%台でございます。このように、もう少し本当はニーズが高く、50%を超えるような融資ニーズがあるということがあるのですが、特に大型の案件等においては、国際機関でありますとか、有志国の公的機関というものを入れながら、よくエクスポージャーを分散するということをしつつ、セキュリティーパッケージをつくって民間資金を入れるということをやってきております。
このような形で、リスクは取りながら、何とか民間資金を動員するということをやってきている、そういうことでございます。
それから、特別業務勘定の話をさせていただこうと思います。これも幾つかご質問を賜った中で、これまでの進捗に比し、今後の案件と見込むものが大きいのではないかといった話をいただきました。これは、ページでいいますと18ページ、19ページのあたりということでございます。
あと、土居先生からも、これはどのように案件を決めているのかというお話をいただいたということがあると思います。
こちらですが、これは確かに事実関係ということで18ページのとおり、これまでの実績は8件ということでございます。金額の規模も合計で631億円、これもそのとおりでございます。
ただ、こちらはリスクが高いものについて、要するに1件1件では少し償還確実だと言い切れないような低格付けの案件でありますとか、あるいは新しい技術の案件、あるいは商用化がされていない事業化の前の案件、需要リスクのある案件といったようなもの等をこちらの勘定でやるということですが、1つ言いたいことは、わざわざリスクを、穴をあけながら案件をやりにいくというのはバンカビリティの観点で望ましくないというところがございます。したがいまして、先ほど例示をさせていただきました一般業務勘定で、例えばモザンビークのLNGの案件というのがございましたが、あれは実は、はざまの案件だったということでございまして、セキュリティーパッケージをきちんと構築でき、日本のオフテイクということでJERAや東北電力、東京ガス等が、きちんとガスを買うというコミットをしてくれたことが伴ったので、一般業務でできるとしたわけでございまして、もしそこまでいかない場合には特別業務でやるとなっていくわけですが、そうしたら次はリスクが取れるのかという話になってくる、というようになっております。
そして、もう一つ、特別業務勘定は、JBIC法に特別業務をつくるところで制定されたのですが、専門委員、外部の委員の意見をきちんと聞くようにとなっております。したがって、今我々は外部の先生、ファンド出身の方でありますとか教授の方にも入っていただいているのですけれども、リスク・アドバイザリー委員会という取締役会の諮問機関がございますけれども、こちらが1件1件の案件の中身を見て、アドバイスをいただくということをしてもらった上で、最終的にコミットしていくということをやっております。
それに加えて、勘定全体がきちんとリスクコントロール等の管理ができているかということについては、経営諮問・評価委員という方々がいますが、ここのチェックもいただいているということであって、そういうチェック体制を図っているということでございます。
次に、中身ですが、これまでの小粒の案件との対比において、1,000億円というオーダーが大きいのではないかということを幾つかいただいたとなっておりますが、こちらについて申し上げたいのですが、これまでの対比で言うと、そういうところはあるかという点はございますが、こちらは、むしろ前々からあった案件ですが、ここに来て、特にASEANですが、ちょうどエナジートランジションということを、そういった国々においても、ベースロードをきちんと確保しながらですが、やっていく必要があるとなってきている案件として存在してきているのですが、申し上げたいことは1件で1,000億円ということではなくて、複数件で1債務者当たりのリスクが1,000億円を超えていくということが起きそうだ、そのように今なっているということでございます。
とはいえ、結構煮詰まってきている案件が複数件同時で動いているので、結果的に大幅な与信になっていくことが予見されますので、段階的に自己資本を上げていただくことによって、戦略的な案件ができると考えているところでございます。
もう少し具体的に言うと、これは、アジアにおいて送配電や発電、それからエネルギー開発をやるような案件に日本企業が取り組むというような案件で、現地の公社のリスクを取るという案件が複数あります。
これを合計していきますと、同一債務者が、これも複数者いるのですけれども、1,000億円ぐらいになり得るということでございます。
これが、分散が効いていないという話が先ほどありましたが、ここで申し上げたいことは、むしろ、だからこそ大口与信規制があると理解してございます。我々は銀行法が適用される銀行ではないのですけれども、きちんと金融庁検査を受けるということが大臣の委任によって決められておりまして、受けております。そういうことで統合的リスク管理、大口与信規制に対する対応をやっているということですが、だからこそ1債務者当たり、25%までにするということをきちんと遵守するということが必要と理解しておりまして、したがいまして、我々今申し上げたように、1,000億円までというのを最大限としながら、それはもちろん自己資本が4,000億円になったらということでございますけれども、なったところで、今の自己資本4分の1までのところで、別々の債務者ごとに、そこを最大と見ながら、レバレッジをかけながら、与信していくということを考えているということでございます。
それから、内容としてもう一つ、一番今、目に見えて早いのは、AZEC等に資する、東南アジアのエネルギー等関係案件ということですが、加えて、今後は南米のクリティカルミネラル、例えばリチウムでありますとか、ああいうものを確保するような案件が出てきているということがあります。豪州なんかもあります。この山元のリスクを取るということが、極めてリスクが高いということがありまして、これも特別業務になり得るということと、あとは水素・アンモニアという案件が結構これから出てくるということで、ご案内ですが、現時点におきましてはコストが非常に高く、需要もそれほど多くないということから、なかなかFID、投資決定まで行かない案件が多いということですが、日本も値差支援というのがとうとう始まるというところまで行っておりますので、今後海外向け案件が増えてくるということもありまして、この場合には、まだマーケットが立ち上がっていないので、特別業務でやるという案件も増えてくるだろうと思っておりまして、このような案件が徐々に積み上がっていくということを見据えて、段階的ですけれども、自己資本の厚みをいただければと考え、今回は100億円をお願い申し上げている、そういうことでございます。
それから、財務面のお話についてのファクト関連は別途後で、茂垣部長からお答えできればと思いますので、それ以外をさせていただきます。
冨田先生から特別業務の進捗の話をいただきましたが、これは、イラク、アルゼンチン、あとは先ほど言ったアメリカの水素ステーションでありますとかということですが、細かくは言いませんが、基本的には、これはきちんと、特別業務ではあったのですが、管理できてきているというのが実情でございます。実際に完済できている、しっかり返ってきたというところが既に発生してございます。これは、相手国との間できちんとしたコミュニケーションを取り続けるということをやりまして、私どもとの債権債務関係の重要性ということについて認知をいただいてやっているということから、そういうことが起きている。水素ステーションに関しては、いかんせん、まだまだこれから進行を拡大させていくものですから、オンゴーイングなのですが、こちらについては、現地の事業者に対する出資者、これは三井物産でありますとかエア・ウォーターですけれども、こことともにエンゲージをしながら取り組んでいる状況でございまして、そのような形で、引き続きコミットした後のモニタリング、あるいは関与を含めてやっていくことが必要で、やっているつもりでございます。
それから、JOINとの関係におけるリスク管理というのも幾つかあったと思いますので、これについてということでございます。こちらにつきましても、もちろん私どもとして認識をしてございますし、留意をするという点については、そのとおりということでございます。ただ、JBICにつきましては、出資をメインのなりわいにしているということではないということで、むしろ融資が中心ということでございます。そうなりますので、先ほど申し上げました統合的リスク管理を本当にきっちりやるということで、この中で信用リスク管理、それから市場リスク管理、流動性リスク管理、為替リスク管理やストレステスト、シナリオ分析といったことをやってきている。これを一般業務、特別業務、それぞれで実施をしてきておりますので、ここをきちんとやっていくということが何よりも大事ではないかと考えております。
出資というものも今後あるのかということを、これは丸田先生からもいただいている点でございます。実際、確かに出資でやっている案件が特別業務にもあるということでございます。ただ、申し上げたいところは、JBICとしましては、やはり大型というか、若干大型になるような出資の案件をやる場合には、ベンチャー投資というやり方ではなくて、やはりきちんと最終的に出資元本が返ってくることを、できる限り確保しにいくということが何より大事だと思っておりますし、そういうところにノウハウ、知見があるということだと思っておりますので、スタートアップ以外のアップサイドを狙うということではなくて、むしろダウンサイドをプロテクションしていくということを、きちんと確保しにいくということで取り組んできています。それでもなおリスクがあるので、特別業務がある、そういうようなことでやってきておりまして、ここをきちんと、引き続き、取り組んでいくことが大事だと思っております。なお、特別業務では、法改正でスタートアップ投資を始めることとなったのですが、こちらについては、特別に外部の委員、キャピタリストを入れて取り組むということをやりまして、全く違うやり方でかつ金額も絞ってやるということでございます。これは資料の参考のところに少し入れさせていただいているところでございます。
大体、私からは以上でございまして、あと財務面で少し残っている部分についてお答えできればと思います。
〔国際協力銀行財務・システム部門茂垣財務部長〕それでは、財務につきまして、少しお答えさせていただきたいと思います。
まず、本行の資金調達における円と外貨の比率という問いがございました。こちらにつきましては、今時点、私どもの融資のポートフォリオでは、ほぼ円と外貨の比率が1対9で、9割が外貨といったような状況になってございまして、その9割を占める外貨の大宗は米ドルということになってございます。それ以外にも、ユーロですとか、ポンドですとか、細かい幾つかの通貨を取り扱っているところでございます。
したがいまして、資金調達という観点で申し上げますと、9割の大宗を占める米ドルをどのように調達してくるのかといったところが、私どもにとっては非常に重要なポイントでございます。
米ドルを調達する方法といたしましては、私ども今、大きくは、3つの手法を使わせていただいております。この中には、今回要求をさせていただいておりますものもございまして、まず、財融借入の資金、これは円でお借りさせていただくということでございますけれども、このまとまった資金をうまく活用させていただいて、外貨、米ドルへのスワップなどで米ドルを調達する、こういったことが1つございます。
それから、政保外債をいただいてございます。こちらも要求をさせていただいているところでございますが、こちらにつきましても、金額の規模は非常に大きく調達することができますので、市場の環境などをよく見ながら、先ほど申し上げました財融借入を起点とするスワップとうまく組み合わせた使い分け、こういったところを考えながら調達するということでございます。
そして、3点目は、外為資金を活用させていただいているというところもございます。こういった外貨、特に米ドルを調達させていただくといったことをしっかりと考えながら取り組んでいるということが、私どもの外貨、特に資金調達の考え方ということでございます。
今申し上げました、米ドルを中心に引っ張ってくるというところでございますが、それ以外の通貨ということも先ほど申し上げさせていただきました。例えばユーロや英ポンド、こういったものにつきましても、政保外債を使わせていただくようなことももちろんございますし、調達している米ドルを起点として、さらに、ユーロや、ほかの通貨にスワップをすることで調達をするといったことも行ってございまして、こういったことで多様な資金ニーズ、通貨のニーズにお応えしているような状況でございます。
これに関連しますと、そういった場合に、為替リスク管理をどうするのかといった問いもいただいてございます。私どもの融資の場合、外貨で融資を行う場合には、基本的には為替リスクはフルヘッジをするということで取り組んでございます。先ほど申し上げましたスワップ、これも1つの為替リスクヘッジの方法でございますし、また、米ドルがニーズの大宗だという中で、米ドル建てで政保外債を発行する、あるいは、ユーロが必要な場合にユーロ建ての政保外債を出す、こういったことで、そのまま必要としている資金を市場から調達するといったこと、これも為替リスクを基本的にはフルヘッジをするという考えでやらせていただいているところでございます。
それから、財務に関する少し、これは事実関係といいますか、念のための補足というふうに申し上げさせていただきますと、円安の影響でリスクアセットが増えて、自己資本比率が減っているということでご理解賜っているところでございますが、この部分をもう少し細かく補足をさせていただきますと、円安の影響によって、私どもの今申し上げました外貨が9割といったポートフォリオの部分は、円安によって金額が大きく膨らむということになる。これは円安の影響ということで事実でございます。
他方で、自己資本比率につきましては、ご案内のとおり、釈迦に説法になってしまうと思いますが、リスクアセットが分母に来る。そして、自己資本が分子に来るということでございます。私どもの自己資本は、これは基本通貨は円でございますので、為替の円安の影響で、自己資本比率といった場合には、分母の影響、円安の影響のほうがより大きく出るといったこと、これによっても自己資本比率の低下になるということでございますが、こういった為替の要因以外に、先ほど小松からも申し上げましたように、実態面でリスクの高いものをやっているといったことで、質の面からもリスクアセットの量が拡大し、比率としては自己資本比率が減るといったことになっているということでございます。
以上補足でございます。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
冨田委員、家森委員から自己資本比率について、政保債との関係とか、債務との関係についてお尋ねがありましたけれども、このあたりについては、いかがですか。
〔国際協力銀行企画部門小松経営企画部長〕では、すみません、お答えになるか、大変不安ですが。ありがとうございます。
政府保証をいただいて、安定的に資金調達をするということのありがたさというのは、もちろんございます。したがいまして、今後も、そこはやはり、そこで実際に国の格付けに即するような形の格付けをいただきながら、外部の投資家に訴求できるということについては、ありがたいと思っておりまして、それによって調達できたものは、その分を還元する形で、戦略的に重要な、政策的意義も高いような案件かつ日本企業の海外の取組に使うことができますので、そのようにさせていただこうと思っておりますし、お願いしたいということでございます。
他方で、申し上げたとおり政府保証をいただいた安定調達をして、その分をきちんと還元していく、ここがそうですが、やはり自己資本は自己資本で、申し上げましたとおり、戦略的な案件をコミットしていくために必要な自己資本の厚み、与信集中ということもきちんと管理しながらやっていく。実際、最終的に、これは私どもが損をしていきますと、最終的には国民のお金を毀損していくということになりかねませんので、きちんとした統合的リスク管理をすることが必要だと思っており、そこはサポートして自己資本、申し上げたように、利益準備金のほうに利益の半分を積み増していくということを自分たちでもやっていくということでございますので、全てが産投出資ということではございませんけれども、むしろ、そういった大型化してきている、競争が激しくなってきているグローバル環境における戦略取組ということをやっていくために、ご理解を賜りながら、自己資本、産投出資というものについても併せてお願いしたいと考えている次第でございます。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
ぜひ追加的にという方がいらっしゃいますでしょうか。よろしいですか。
財務省理財局から何か追加的なご回答ございますか。
〔横山計画官〕多岐にわたるご意見をいただきまして、ありがとうございました。23.4%にこだわる必要はどれぐらいあるのかというご指摘が多々あったと思います。また、目標を精緻化すべきではないかというご意見もあったと思います。
この点について、JBICからのお考えも説明はあったかと思いますが、年末に向けてJBICとよく議論をさせていただきたいと思います。
それから、不良債権についても、リスク管理を高度化すべきというご意見と、あとは、業務内容からするとある程度増えていくこともやむを得ないというご意見もありました。これについても、どうしていくかについて、引き続き議論を深めたいと思います。
また、流動化についてもご指摘いただいたところについて、どのようなことが考えられるか、これも議論を深めたいと思います。
また、特別業務勘定についてのご指摘については、ある程度、JBICから中身のご説明もあったかと思いますが、どのようにしていくかについて、よく検討して議論したいと思います。
〔翁分科会長〕ありがとうございます。
すみません、冨田委員から追加で手が挙がっていますので、一言。
〔冨田委員〕ごめんなさい。追加になってしまったのですが、先ほどお聞きした中で、私は、特別業務勘定における融資のリスクウェイトをお聞きしました。つまり、与信集中管理との、与信集中のリスクを考える上でも、一般業務におけるリスクウェイトと、特別業務のリスクウェイトと違うと思うのですよね。つまり、かなり高い想定なのではないかと思うのですが、そこらの感じをお聞かせください。
〔翁分科会長〕では、お願いいたします。
〔国際協力銀行企画部門小松経営企画部長〕冨田先生、どうもありがとうございました。お答えが漏れておりまして、大変失礼しました。
ただ、一方で、これも逆に言えば、先生もご案内のとおりだと思うのですが、リスクウェイトはウェイトで、きちんとその基準に沿った取組をするということ、要するに割当可能資本を考えたりすること等が、管理上は重要でございます。したがって、今新しく、ルールが厳格化されまして、残高や金額のアセットを超えた100%以上のリスクアセットとして、掛け目としてかけて、リスクアセット認識をしなさいというようなカテゴリーのものもあります。例えば出資のアセットなんかそうでございます。
したがって、そういうようなルールが存在しているので、それに即して、一般業務勘定も特別業務勘定も実施しているということがございます。
例えば、国向けというものと事業会社向け、これでもリスクアセットの掛け目のかけ方が変わっておりますので、ポートフォリオの中身によって、そこの掛け目の違うアセットがいろいろ構成されております。それによって、最終的にどのぐらいのリスクウェイトのアセットがあるのかという総体が出てくるという構図になっているところでございます。
ただ、1点だけ、現時点におきましては、特別業務につきましては、どうしてもまだ、これからの案件のために、要するに使っていこうとするような自己資本がかなり厚くあるというところの関係で言うと、現段階におけるアセットのレベルは、リスク管理という観点からいっても、十分に中にはまっているということではございます。
ただ、今後、先ほど申し上げた東南アジアの案件等が出てきた場合には、今ある資金を通貨スワップ等しながら外貨にしつつ、使っていくこととなりますので、そうなっていきますと、統合的リスク管理をきちんとやっていくという方向になり、ますますリスクアセットの管理も重要になってくる、そういう構図がございます。
〔翁分科会長〕ありがとうございました。
それでは、このあたりで質疑につきましては終了いたします。ここで国際協力銀行の関係者の方々にはご退席いただきます。どうもありがとうございました。
((株)国際協力銀行関係者 退席)
〔翁分科会長〕本日、各委員より頂戴いたしましたご意見については、今後の財投計画の策定にぜひご活用いただければと思っております。
最後に、少し、横山計画官から、ご説明をお願いします。
〔横山計画官〕ご報告をさせていただきます。
1つ目は、JOINの有識者委員会に関することでございまして、本日午前中に国土交通省において、第4回海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)の役割、在り方、経営改善策等に関する有識者委員会が開かれまして、これまでの議論を踏まえた中間的な論点整理がされました。今後、有識者委員会においては、年内の最終報告を行うべく、引き続き審議を進められていくものと承知しております。
本日議論が行われた論点整理の内容については、来る30日の本分科会におきまして、国交省から説明の上、皆様にご議論いただく予定でございますので、よろしくお願い申し上げます。
それから、DBJに関してですが、特定投資業務について、来年度末が投資決定期限とされているところ、これについての第一回の勉強会が、昨日、開催されております。この勉強会の結果についても今後、当分科会でもご報告したいと考えております。
〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。土居委員はじめ、こちらにご参加されている多くの方に、JOINの件につきましては、大変ご尽力いただいていて、ありがたく思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、予定の時間となりましたので、本日の議事はここまでとします。ご議論いただいた内容のほか、追加のご意見やご質問などがございましたら事務局までお寄せいただければと思います。
本日の議事内容につきましては、この後、事務局より記者レクを行います。議事録につきましては、委員の皆様のご了解をいただいた後、財務省ホームページに掲載いたします。
次回は10月30日水曜日、14時から地方公共団体及びJOINについて、審議を行う予定としております。
本日はご多忙の中、誠にありがとうございました。これにて閉会いたします。
16時41分閉会