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財政制度等審議会財政投融資分科会
議事録

令和5年6月21日
財政制度等審議会


財政制度等審議会財政投融資分科会議事次第

令和5年6月21日(水)13:30~15:57
財務省第3特別会議室(本庁舎4階)

  • 1.開会

  • 2.財政投融資分科会長互選

    分科会長互選

    分科会長挨拶

    分科会長代理の指名

    分科会の運営等

  • 3.産業革新投資機構の状況報告

  • 4.質疑・応答

  • 5.INCJの状況報告

  • 6.質疑・応答

  • 7.官民ファンドのフォローアップ

  • 8.質疑・応答

  • 9.大学ファンドの状況報告

  • 10.質疑・応答

  • 11.諸外国における財政投融資類似制度(委員より報告)

  • 12.

配付資料

議事次第
資料1

財政制度等審議会財政投融資分科会名簿

資料2

財政制度等審議会関係法令等

資料3-1

説明資料(株)産業革新投資機構

資料3-2

(株)産業革新投資機構における投資案件の管理、モニタリング

資料3-3

株式会社INCJ投資実績とEXIT状況報告

資料4-1

説明資料官民ファンド・フォローアップ

資料4-2

投資計画及び経営改革の進捗状況等について
(経済産業省(株)海外需要開拓支援機構)

資料4-3

投資計画等の進捗状況
(国土交通省(株)海外交通・都市開発事業支援機構)

資料4-4

投資計画等の進捗状況
(総務省(株)海外通信・放送・郵便事業支援機構)

資料4-5

投資計画等の進捗状況
(農林水産省(株)農林漁業成長産業化支援機構)

資料5-1

説明資料大学ファンド(財務省資料)

資料5-2

説明資料大学ファンド(文部科学省資料)

資料5-3

説明資料大学ファンド(国立研究開発法人科学技術振興機構資料)

委員提出資料

スウェーデン・ノルウェーにおける海外調査報告について

資料6

説明資料スウェーデン・ノルウェーにおける海外調査について

出席者

分科会長

百合

齋藤理財局長

彦谷理財局次長

柴田総務課長

原田財政投融資総括課長

奥村資金企画室長

原山財政投融資企画官

佐野計画官

大江計画官

土居丈朗

野村浩子

丸田健太郎

家森信善

渡辺

臨時委員

有吉尚哉

岡田章裕

工藤禎子

冨田俊基

山内利夫


13時30分開会

〔原田財政投融資総括課長〕それでは予定の時間となりましたので、ただいまから財政制度等審議会財政投融資分科会を開会いたします。

本日は、4月1日付で財務大臣より任命させていただきました委員の皆様による初会合となります。分科会長選任までの間、事務局にて議事進行させていただきます。よろしくお願いいたします。

それでは、議事に移ります。このたび財政投融資分科会の委員に就任された皆様は、資料1の名簿のとおりでございます。

ここで今回新たに委員にご就任された方々からご挨拶をいただきたいと存じます。それでは、丸田委員、お願いいたします。

〔丸田委員〕皆さん、こんにちは。私、このたび新任で委員を務めさせていただきますあずさ監査法人の丸田でございます。私はあずさ監査法人で、監査のDX(デジタル化)の責任者を務めるとともに、グローバル企業の会計監査を担当させていただいております。このたびはよろしくお願いいたします。

〔原田財政投融資総括課長〕続きまして、有吉委員、よろしくお願いいたします。

〔有吉委員〕皆様、こんにちは。西村あさひ法律事務所の弁護士の有吉でございます。私は、日頃は主に金融分野のお手伝いをさせていただいており、そういった分野を専門にしている弁護士でございます。本分科会の中心的な論点は数字を取り扱う部分にあると思っておりますところ、その点については、素人かと思っておりますが、金融規制であるとか法制度、あるいはガバナンスとかリスク管理の観点から何がしかコメントさせていただくことができるのではないかと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

〔原田財政投融資総括課長〕続きまして、岡田委員、よろしくお願いいたします。

〔岡田委員〕読売新聞の論説委員で岡田と申します。よろしくお願いします。論説委員自体は3年前から務めておりまして、国際経済や、日本銀行の金融政策や、マーケット関係、そういったものを担当してまいりました。記者としては2008年から9年、また、2015年から16年に財務省の取材は担当させていただきました。

重責に身が引き締まる思いですけれども、よろしくお願いいたします。

〔原田財政投融資総括課長〕ありがとうございます。

続きまして、山内委員、よろしくお願いいたします。

〔山内委員〕はじめまして。PwCアドバイザリー合同会社の山内と申します。私は企業様、ファンド様の投資に関する助言をさせていただいております。今までの経験が少しでもお役に立てばと思っておりますので、どうかよろしくお願いいたします。

〔原田財政投融資総括課長〕ありがとうございました。

このほか、本日ご欠席ですが、小枝淳子委員もご就任いただいております。

次に、財政制度等審議会令により、分科会長の互選を行います。

分科会長の選任につきまして、ご意見がございましたらお願いいたします。挙手ボタンで確認しながら指名いたしますので。冨田委員、よろしくお願いいたします。

〔冨田委員〕WEBからの参加ですが、冨田でございます。アメリカの予算教書、大統領の予算教書に、連邦政府は合衆国最大の金融機関であると記載されていました。フェデラルクレジットプログラム、連邦信用計画と訳すのがいいと思うのですが、その計画があるからです。

アメリカと同様に財政投融資計画の下で、我が国政府も国内最大級の金融機関です。翁委員は、その重要事項の審議を行う上で不可欠な金融システム、金融資本市場についての高いご見識をお持ちでございます。したがいまして、ぜひとも翁委員に分科会長を引き続きお引き受けいただきたく存じます。

〔原田財政投融資総括課長〕ありがとうございました。

そのほか、ご意見は。渡辺委員、よろしくお願いいたします。

〔渡辺委員〕渡辺努です。私も翁委員が分科会長として適任ではないかと思います。知見の高さはもちろんのこととしまして、非常に複雑な会議の進行を、非常に手際よく、昨年、一昨年とやってこられたと思いますし、何よりも大事なことは、審議について、フェアな審議ができるようにご配慮いただけたということは非常によかったかと思いますので、ぜひ引き続き、お願いできればと思います。

〔原田財政投融資総括課長〕ありがとうございます。

ただいま冨田委員、それから渡辺委員からいただきました翁委員を分科会長に推薦する旨のご提案につきまして、皆様、ご異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

〔原田財政投融資総括課長〕ありがとうございます。

委員の皆様のご了解によりまして、翁委員が分科会長にご就任されることになりました。翁委員、分科会の会長席へご移動をお願いいたします。

それでは、今回分科会長にご就任されます翁分科会長より、一言ご挨拶を頂戴いたしたいと思います。

この後の議事につきましては、翁分科会長に進めていただきます。よろしくお願いいたします。

〔翁分科会長〕皆様のご指名でございますので、大変微力ではございますけれども、会長をお引き受けしたいと思います。皆様のご協力、ご支援を得て、任務を全うしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、議事を進めさせていただきます。

最初に、財政制度等審議会令において、「会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する」と規定されておりますので、分科会長代理を指名させていただきます。

私といたしましては、分科会長代理は土居委員にお願いしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

〔土居委員〕ご指名ですので、お引き受けさせていただきます。土居でございます。よろしくお願い申し上げます。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

なお、分科会の招集や議事の公開など、これら運営につきましては、資料2の関係法令等に従い進めてまいります。

まず、議事に先立ちまして、今回の委員改選前の審議になりますが、緊急に議決を経なければならなかったため、3月に持ち回りによりご審議いただいた「『交付税及び譲与税配付金特別会計』並びに『年金特別会計』に対する年度越し短期貸付」についてでございますが、原案のとおり了承となりましたので、ご報告いたします。

それでは、次の議題、産業革新投資機構及びINCJの状況報告に入ります。各機関及び経済産業省の担当部局の方々が入室されますので、しばらくお待ちください。

(JIC、INCJ、経済産業省着席)

〔翁分科会長〕本日は大変議題が多くて、時間が限られておりますので、委員及び機関の皆様におかれましては、できるだけ簡潔にご発言をいただきますようにどうぞよろしくお願いいたします。なお、時間内で質疑応答が難しい場合には、後日事務局を通じて対応させていただきたいと思いますので、ご了承ください。

それでは、議題について佐野計画官から説明いただいた後、産業革新投資機構からご報告いただきます。

佐野計画官、よろしくお願いいたします。

〔佐野計画官〕計画官の佐野でございます。資料3-1をご説明いたします。

まず、2ページ、こちらが組織の概要になります。産業革新投資機構(JIC)は、ファンド・オブ・ファンズ方式を採る官民ファンドであり、ファンドを運営するJICの子会社といたしましては、下の①のスタートアップ投資等を行うJICベンチャー・グロース・インベストメンツと②の大企業・中堅企業の成長・事業再編投資を行うJICキャピタルがございます。

3ページをご覧ください。この仕組みを図にしております。

次に、4ページでございますが、JICキャピタルの運用するファンド、JIC-PEについてです。昨年11月に当分科会にご報告したとおりでございますが、大型の事業再編などにも対応できるよう、ファンドの規模を1.1兆円に拡大しております。

それでは、5ページをご覧ください。論点になります。

大型投資案件については、想定どおり進捗しない場合JICの経営・財務に大きな影響を与えることから、選定、投資決定、投資後の管理及びEXITを慎重に行う体制を構築すべきと考えております。

具体的には、まず、投資検討に当たっては、適正な価格付やJICが投資の妥当性等を自ら検討できる体制、適切なポートフォリオ管理を行った上での投資額の決定が必要ではないかということ。

また、民間のリスクマネーを相当規模引き出すべきではないかということでございます。

さらに、投資後については、投資先のモニタリング等を行える体制整備、投資先の状況把握と必要な経営改革に向けた対応、JIC経営陣の責任ある関与、投資先価値の適切な評価と反映、そして説明責任を果たすこと、こういったことが重要と考えております。

資料のご説明は以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

それでは、続きまして、JIC及び経済産業省からご説明をお願いいたします。

〔産業革新投資機構横尾代表取締役社長CEO〕株式会社産業革新投資機構の代表取締役社長CEOの横尾でございます。よろしくお願いいたします。

今日のご説明は、当社の投資案件の管理、モニタリング、特に、今もご紹介ありましたが、大型投資案件についての管理、モニタリングを中心に、久村CIOから、まずはご説明させていただきますので、よろしくお願いいたします。

〔産業革新投資機構久村取締役CIO〕それでは、お手元の資料3-2を使いまして、久村からご説明申し上げます。

4ページをお開きください。こちらに2019年12月以来の新体制発足以降の投資活動について、現況をまとめさせていただいております。組織の再構築を経て、投資活動が本格化してきております。

民間のファンドにつきましては、資料左下にございますが、VCファンド及び一部PEファンドも含めてですが、これまでの間に28件、約1,500億円のコミットメントを行っております。

昨年度は、年間で15件程度、民間のファンドにコミットメントを行っておりますので、投資活動がかなり活発になってきているとご理解いただけると思います。

傘下のファンドということで、2つ運用会社を持っておりまして、ベンチャー・グロースに投資するJICVGI、PE投資、バイアウト・ラージグロースに投資を行うJICPEでございます。

JICVGIにつきましては、2020年に1,200億円の1号ファンドを立ち上げて、今年の1月に2,000億円の2号ファンドを立ち上げております。

JICPEにつきましては、旗艦ファンドとしての1号ファンドを2,000億円で立ち上げ、大型案件に備えるために共同投資ファンドという位置づけで9,000億円のファンドを立ち上げてございます。

5ページで、ファンドの管理、モニタリングについてご説明申し上げます。

資料の「LP投資先の民間ファンド」の上の四角に記載がございますが、基本的には各ファンドの投資状況につきましては、四半期ごとに、ポートフォリオの状況も含めた運用報告を求めます。こちらはグローバルに、PEファンドが行っているプラクティスに沿った形でのご報告をいただいているということでご理解いただければと思います。

JICの子会社、JICVGI並びにJICPEについては、IPEVガイドラインに基づき公正価値評価を行っております。

また、民間ファンドにつきましては、ファンドとしての規模の問題もございますので、体制を整えた民間のGPさんについては、公正価値評価に取り組んでいただくということで、レポートに反映させていただいております。

資料右下にございますが、JICの子会社のJICVGI、JICキャピタルには、JICのCIOである私と、CSOである者を社外取締役として派遣し、ファンドの運営状況、投資状況を把握しております。

資料でその上にございますが、JICの投資先ファンドの状況につきましては、社外取締役を含むJICの取締役会に対して、四半期ごとに状況についてレポーティングを行う体制を整えております。

対外公表については、年に2回、今、夏と冬に行っておりますが、投資状況について、可能な限り、定例会見等で対外公表を行っております。

また、JICは、産業競争力強化法に基づき、設立・運営されておりますので、同法で定められている各ファンドの業務実績の評価を年に1回行っております。こちらの評価結果につきまして、経済産業大臣にご報告するとともに、各ファンドの運営者にLP投資家からどのように見えているか、他のファンドと比べてどうかということも含めて、フィードバックをさせていただいております。

資料右上になりますが、経済産業大臣は年に1回、産業競争力強化法に基づきまして、JICの各事業年度の業務実績について評価し、これを対外公表している、このような形になってございます。

次に6ページでございます。大型の投資案件に関する考え方についてご案内申し上げます。

1,000億円を超えるような、大型の投資案件を想定し得るのは、国際的な産業競争力の強化に向けた事業再編やグロース投資を手がけているJICの子会社のJICキャピタルによる投資案件となります。

大型案件に投資を行う際には、JICキャピタルに任せきりにするということではなく、JICキャピタルのPEファンド1号、2,000億円のファンドと、JICも関与する共同投資ファンド1号、9,000億円のファンドにより対応する、こういうファンド・ストラクチャーを組むことによって、一定のガバナンスを確保しつつ、対応する体制を整えてございます。

資料下の枠の3つ目の点をご覧ください。

JICとしてのエクスポージャーが1,000億円を超える案件の場合には、やはり経済社会に与える影響が大きいということでございますので、公的ファンドとして対外的な説明責任を果たしていくことが求められると理解しております。そうした観点から、政策的な投資意義やリスク、リターンの蓋然性、JICのポートフォリオ全体への影響、これらの観点から、個別案件の適格性について、社外取締役を含むJIC取締役会による投資承認を必要としております。

また、投資後の状況に関しても、JICの取締役会に対し、四半期に1回程度以上の頻度で報告をさせていただくことにしております。

実務としては、JICの中にファンド投資室、これは、いわゆるフロントと言っていますが、投資部隊がございます。また、ファンド管理室、いわゆるミドルバック的な部隊でございます。これらの2つのチームがファンド全体のポートフォリオ、並びに、大型投資案件がでてきた場合には、大型投資案件について投資時の評価、投資後の状況についてのモニタリング、これを実施することにしております。先ほどご覧いただいたように、民間の投資先ファンドの数も増えてきておりますので、陣容を整えつつございます。昨年の春の段階ですと、ファンド投資室が9名、管理室が2名、合計11名の体制でございましたが、今年の春の段階ですと、投資室が13名、管理室が5名、合計18名ということで、人数的にも充実を図ってきているところでございます。

また、資料に戻っていただきまして、大型投資案件が出てきた場合の公表でございますが、投資活動・支援の状況に関しては、四半期に1回程度の頻度で定期的に経済産業大臣にご報告させていただきます。また、投資実行後の状況につきましては、先ほど申し上げたように、年2回、定例記者会見をやってございますが、その中で、開示可能な範囲で開示させていただく形で考えてございます。

〔産業革新投資機構横尾代表取締役社長CEO〕最後に、代表取締役である立場の私から一言申し上げたいと思います。

当然のことではありますが、JICCがJICと共同で投資を行う大型投資案件、今、ご説明をさせていただいた規模の案件については、JICCのみならずJICの経営陣として、責任を持って遂行していきたいと思います。

JICは親会社として子会社であるJICCが新規の投資活動、投資先企業の支援活動、モニタリングを適切に行えるよう、必要な内外のリソースの確保について、指導・監督をするとともに、JICとしましても、しっかり対応していきたいと考えています。

会議冒頭に財務省様からご説明がございましたように、財務省様の説明資料で、5ページ目、検討時、それから投資後ということで、論点が色々と示されてございますが、これらを踏まえ、しっかり管理、運営していきたいと考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

以上、ご説明となります。

〔翁分科会長〕ご説明どうもありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明を踏まえまして、委員の皆様からご意見やご質問がございましたら、お願いいたします。いかがでしょうか。

それでは、有吉委員、お願いします。

〔有吉委員〕ご説明ありがとうございました。

私からは、もう既にご説明された内容と若干重複するところもあろうかと思いますが、2点、コメントというか確認をさせていただきたいと思います。

1点目は、特にJICキャピタルが投資の対象とするものについては、民間だけで投資を行うには収益の確実性が低くて、投資が容易ではない、そういった案件について、ある程度の収益性があることは前提にして、政策課題の解決につながる場合に限って投資対象にすると理解いたしました。

そういった政策課題の解決に資するということがまた、収益性への貢献にも影響してくると理解しております。

そういった中で、事後的に投資が本当に適切なものであったのか、その妥当性を検証する観点からは、やはり個々の投資案件がそれぞれどのような政策課題にどのように資するのかを、適切に開示していただくことがとても重要ではないかと思います。先ほども言及されていた点だとは思いますが、1点目はその点を強調させていただきたいというコメントでございます。

2点目は、特にファンドの規模が大きくなったということで、個々の案件での、投資額もさることながら議決権割合的なものが大きくなりやすい状況にあるのだと思います。そうすると、投資後のスチュワードシップ活動の重要性がますます高まっていくと考えます。

そういった中では、モニタリングの重要性ということもご説明の中で強調されておりましたが、JIC本体というよりは子会社を通じてということかもしれませんが、いわゆるエンゲージメントであるとか、さらには議決権行使的な対応も、とても重要になってくると思います。もちろんアクティビスト的な活動をしてほしいということを申し上げるつもりは全くないわけでございますが。

ただ、1点目でも申し上げました、政策課題の解決にも資するという発想も持ちながら、企業、投資先の収益性も高める、これは非常に難易度が高いエンゲージメント、議決権行使が求められるものと思いますので、最後に横尾社長が強調されていた点と重複するとは思いますが、そういった面での人材面・体制面の整備も、従来以上に拡充して取り組んでいただきたいと思います。

私からは以上2点のコメントでございます。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

もう一方、ご質問希望の方がいらっしゃいますので、その後、ご回答いただければと思います。

それでは、工藤委員、お願いいたします。

〔工藤委員〕WEBから失礼いたします。よろしくお願いします。質問ではなく、コメントでございます。

今日ご説明いただいたことに大きな違和感はございません。今、産業構造の変化が起きている中、日本に大型のエクイティがいる場面は増えてきていると思っております。国の政策に沿う形で、大型案件への対応力を強化していく、そのために規模も増やす必要性について、十分に認められると考えております。JICについては多くの政策金融機関に課されている民間協調原則が法定されておらず、単独での出資も法律上可能となっているのが現状と認識しております。この部分の自由度はあっていいと思っているのですが、今日、ご説明ありました論点、対応の中で、1つの鍵は、人材の確保だと思っております。今、日本においては、ファンドビジネスの優秀な人材はマーケットで取り合いの状況でございまして、人材の確保が難しい面もあると認識しております。

一方で我が国においては適切にリスク・リターンを評価する能力を有する民間主体も徐々に増加している状況ですので、JICとして、特に大型案件のリスクを評価する際に、彼ら民間の投資ファンドの投資判断も参考になるのではないかと考えます。大型案件については、JICの経営、財務に対するインパクトの大きさにも鑑みまして、投資ファンドを含む民間自体が相当規模の出資等を行うものを中心に行っていくこともご検討いただければと思っております。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

それでは、今の委員の2人のコメントにつきまして、何かございましたらお願いいたします。

〔産業革新投資機構横尾代表取締役社長CEO〕久村CIOから、2点ともお答えします。

〔産業革新投資機構久村取締役CIO〕まず、1点目でございます。政策課題の解決に貢献するかどうかについては、VGI、JICキャピタルともに、個別の投資案件を評価する際に、極めて真剣に議論をさせていただいています。投資した後は、個別案件について、都度、ニュースリリースを出させていただいております。そちらで、どういった政策課題に対応するものか、都度、個別案件ごとに公表させていただいております。

大型の投資案件につきましては、先ほど来、ご説明申し上げております定例の記者会見でも注目が集まる部分ではございますので、そちらでも改めて政策課題への対応について強調する、開示していく形になろうかと思っております。

あと、2点目のガバナンスにつきまして、私どもはいわゆるアクティビストではないのですが、お話があったかと思います。ベンチャーへの投資とバイアウトの大型投資案件ということでも在り様が変わってきますが、JICPEが投資をするケースにおきましては、基本的には社外取締役としてJICキャピタルのメンバーが投資先企業に入る、もしくは社外取締役をJICキャピタルが指名するという形で、直接、取締役会に参加いたしますし、また、比較的持分の大きい案件等々については、経営会議等々にも参加していく形になりますので、通常の株式投資のように、パッシブな投資というよりは、かなり経営陣の方々と日々議論をし、中長期的な戦略にも関与していくという形で関わらせていただこうと考えてございます。

〔産業革新投資機構横尾代表取締役社長CEO〕お時間もない中で申し訳ないですが、少し補足させていただいて宜しいでしょうか。

〔翁分科会長〕お願いいたします。

〔産業革新投資機構横尾代表取締役社長CEO〕1点目の中で、エンゲージメントの話があったかと思います。これは確かにJICCが直接的に、ということではありますが、私どもは投資後のことも意識して案件を検討します。投資した後、PMI等々、いろいろと展開していくわけですが、投資先へのサポートをしていかなくてはいけないので、IRの活動も含めて、エンゲージメントの在り方、進め方について、これは十分に投資先の経営陣としっかり議論するということについて、JICCのトップともよく話をしておりまして、そういう進め方をしていきたいと思います。エンゲージメントの重要性について、おっしゃるとおりだと思います。

それから、2点目の人材の件ですが、今、体制強化として人材の採用を相当進めていますが、確かにかなり、レベル感、それから、業種の専門性によっても違うと思うのですが、これはと思うレベル感の人材については、払底しているのが事実だと思います。

そういった中でも、ある程度の事業展開は必要となりますので、昨今はJICグループとしては、それなりの応募をいただけるので、そういった中でいい方をということで人材の採用を進めていることと、あと、やはり専門分野がありますので、ある程度、委託関係も含めてですが、専門分野の方にお手伝いいただくことも併せて進めていくことになりますので、その点、ご理解をいただければと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。

それでは、産業革新投資機構につきましては、ここまでといたしまして、続きまして、INCJからご報告をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

〔INCJ志賀代表取締役会長CEO〕株式会社INCJの会長を務めております志賀でございます。本日はよろしくお願いいたします。

1ページ目をご覧ください。会社概要でございます。

産業革新機構は、産業競争力強化法に基づいて2009年7月に設立され、15年間を時限とする会社として投資活動を行っております。2018年9月に、産業革新投資機構の設立に合わせて、産業革新機構から新設分割をされ、事業承継する形で、株式会社INCJが発足しております。スローガンは、オープンイノベーションを通じて、次世代の国富を担う産業を育成・創出するということで、社会的課題に対して投資をしていくというファンドであります。

2ページ目をご覧ください。組織及び執行体制ですが、右側の組織図で、グループとしては、ベンチャー投資、スタートアップ投資を主に行っているベンチャー・グロース投資グループと、それからPE、バイアウト系の投資を行っております投資事業グループと、2つのグループを抱えております。

ガバナンスとしましては、産業革新委員会メンバーということで、社外取締役5名、代表取締役の2名が個別案件を1つずつ決議し、投資をしている形になります。INCJは、新設分割された以降も旧産業競争力強化法に基づいて運営されていますので、JICのガバナンスと少し違って、個別案件については、全て経産大臣の意見をいただいた上で、投資活動しております。

それからもう一つ、これは実態としてぜひご理解いただきたいのですが、三村委員長を筆頭とする産業革新委員会での決議の前に、最低2回程度、同委員会への報告を行い、かつ個別の説明を行っており、これはベンチャー案件も、PE投資案件も併せてですが、相当ガバナンスを厳しくしていることはご理解いただければと思います。

3ページ目をご覧ください。組織に関して、INCJは2020年に新規投資を止めております。後ほど、どれぐらいの投資を行ったかを報告しますが、INCJに所属するベンチャーキャピタリスト、あるいはファンドマネージャーには、INCJを専業とするメンバーもいますが、多くのメンバーがJICグループのVGI、あるいはJICキャピタルと兼務を行っております。これによって、INCJでは新規投資を行わないものの、新たにJICグループのファンドで新規投資をやっていただく、そういう流れで人材の活用を行っています。

さらに重要なのはナレッジということで、INCJには成功案件も失敗案件も多くありますので、これを毎週1回、EXITとした案件の振り返りをして、テイクアウェイを我々が確認をしています。これはJICグループで働いている職員にもシェアをしますので、INCJでのナレッジがJICグループに伝わっていくという、1つの、ナレッジのプラットフォームを形成しています。

4ページ目をご覧ください。経営幹部の紹介です。私と勝又社長が代表取締役を務めています。私は長く事業会社にいた人間ですが、勝又社長は日本興業銀行をスタートに金融会社にいた人間となります。右側の経営幹部でいえば、今日、常務執行役員の東が出席しておりますが、ほとんどの経営幹部が民間で投資活動を行ってきています。

次に、5ページ目をご覧ください。基本方針になりますが、極めてクリアです。

収益性をしっかりと重視するのはもちろんですが、社会的意義、インパクトのある投資を行っています。

2つ目は、15年の時限の会社ということで、民間ではなかなか厳しい中長期的にバリューアップしていくような案件に投資を行ってきました。したがって、ベンチャー案件も比較的シーズ・アーリーの案件に投資をして、長くバリューアップをしていくということをやっています。

それから3つ目は、民間だけではリスクが高く投資が困難な分野、これは官民ファンドの宿命ではありますが、厳しい案件に投資をして、これが社会的意義のあるということであれば、リスク・リターンを考えながら投資を行っているという状況にあります。

6ページ目をご覧ください。投資実績になりますが、これまで144件の新規投資を行ってきました。

下に円グラフがありますが、スタートアップ、アーリーベンチャーに対する投資は116件となり、およそ件数として8割がスタートアップ投資案件、残り2割が海外への投資と再編案件になります。本日ご説明するJOLED、あるいはジャパンディスプレイ、ルネサスは再編案件という形になります。したがって、再編案件の件数は少ないですが、逆に投資額としては約60%が再編案件という状態になっております。

7ページ目をご覧ください。スタートアップでどういう分野に投資しているかですが、簡単に申し上げますと、民間が比較的投資をしやすいゲームやアプリといったところには我々投資をせず、シーズ・アーリーでしっかり育てていくという分野、事例で申し上げますと、先日、民間初で月面着陸を試みたispaceとか、宇宙ベンチャーへは4社、投資をしています。あとは、ライフサイエンスは日本においてはなかなか難しい投資分野でありますが、例えば、血小板をiPS細胞で作ろうというような案件に投資をしています。

また、例えば保育・介護においてITを使ってデジタル化をすることによって、もっと業務改善できないか、あるいは農業・漁業においてもIT化ができないか、そういった社会課題であった分野での投資を行っております。

8ページ目をご覧ください。144件のポートフォリオになります。比較的全ての分野に投資をしていますが、先ほど申しましたようにゲームとかアプリとか、民間が投資しやすい分野には投資をしていないということになります。

9ページをご覧ください。これまで144件のうち、今年の3月までに95件EXITいたしました。残り49件のEXIT活動を行っていくという形になります。

INCJは残り2年となりますので、2年で49件ということで、今ちょうどIPOだとか、M&Aが厳しい状況の環境下で、結構苦労しながらEXIT活動を進めております。これは我々官民ファンドとしての節度、つまり、投資先の将来の成長に期するEXITということでやっていますので、民間であれば、ディスカウントして、あるいは、創業者に買い取っていただくというようなやり方もあるわけですが、今、丁寧に丁寧にEXIT活動を進めている状況です。

10ページをご覧ください。これまで144件投資いたしまして、総投資額は1兆2,862億円になります。先ほど95件EXITしましたと申し上げましたが、今まで回収した額が1兆7,000億円弱ということで、現時点でMultiple of Cost、MOCでいいますと約1.3倍、回収しております。さらに、残りの49件で、今の我々の見込みとしては、4,000億円以上の回収を見込んでおりますので、トータルとしては、2兆1,000億円の回収、MOCでいいますと1.6倍、これを経営目標として取り組んでいるところであります。

また、INCJから国へこれまでの累計支払実績として、既に配当や法人税等々で4,350億円、国庫に入れておりますので、ご承知おきいただきたいと思います。

次、JOLEDの件につきまして、お話をさせていただきます。

今年の3月、4月に正式に裁判所から許可をいただいて、民事再生プロセスが始まりました。トータル1,390億円の投資融資の結果、民事再生となったことにつきまして、INCJの責任者として大変申し訳なく思っております。ただ、これは投資としては、私は正しい投資であったと思っておりまして、その辺りを少しご説明させていただきたいと思います。

JOLEDは有機ELディスプレイパネルの分野であります。この有機ELは、2007年にソニーが世界初の有機ELテレビを発売しましたが、液晶と同じ日本の技術であります。ただ、残念ながら現状、電気屋に見に行くと有機ELテレビがたくさん販売されていますが、あれは全てLG製ですし、皆さんがお持ちのiPhoneといったスマートフォンも有機ELはサムスン製であります。何とか日本で有機ELを開発したいということで、ソニー、パナソニックともすばらしい技術をお持ちで、特にパナソニックは、世界で誰も成功させなかった印刷OLED、これサムスンは蒸着のOLEDですが、印刷OLEDの技術を持っていたということで、INCJとジャパンディスプレイ、ソニー・パナソニックで、合弁会社をつくりました。これは一言で言いますと、これはプライベートエクイティーとしての投資ですが、スタートアップ投資です。これは大企業から技術をスピンオフさせて、合弁会社をつくったベンチャーということで、研究開発からスタートし、何とかパイロットプラントで、医療向けモニターの生産を開始し、量産できるということで石川県の能美市に工場をつくったという状態です。この能美工場は中型を狙いました。小型のところはスマホで使われているサムスン、これはもう絶対的なマジョリティのシェアを取っているところであります。それから大型のテレビ、これはLGが世界を席巻しています。したがって、真ん中の、医療用モニター、PCのモニターの部分とか、また、車載向けも今ほとんどが液晶ですが、将来的には有機ELになると言われています。有機ELの方がフレキシブルな形状を持たせられてデザイン性が高いということで、非常に将来性があるということで、ここに自動車関連メーカーの意向を受けて、将来的なことを考えて有機ELを車に搭載できないかということで投資をしていただきました。

次の12ページをご覧ください。先ほど申し上げましたが、トータル1,390億円、株式としては1,190億円を順次投資をしていきました。一番大きかったのは2018年に、量産工場として能美事業所に設備投資をいたしました。約1,000億円の投資について、本来これは、当初の計画においてジャパンディスプレイがその後の投資を行い、その時点でINCJはEXITするというのが、当初の予定でした。研究開発からスタートして、死の谷を渡って、ダーウィンの海ですね。量産に入るところでは、我々金融投資家は引いて、事業投資家にバトンタッチというのが、当初の絵だったわけですが、皆さんご承知のとおり、ちょうどあの頃に、Appleがスマホを液晶から有機ELに変えるという流れの中で、JOLED・ジャパンディスプレイ両社の方向性が変わり、各々独立した成長を志向するようになり逆に、いろいろ事業会社から約500億円の投資をしていただいて、INCJも追加400億円出して何とか能美工場での生産をスタートさせたということです。ちょうど19年の夏に量産は始まったのですが、歩留りが悪くて、なかなか量が出せませんでした。つまり、月に30億円から50億円ぐらいの売上げを出すと損益分岐点という状態だったのですが、なかなか歩留りが低くて量が出ないという中で、赤字を続けてきた。ちょうど22年の頭ですが、歩留りが大分上がってきました。これで、量産が進めば、黒字化が見込めるぞということで、INCJとしては、最後の投資を行ったのですが、残念ながら歩留りは改善の方向になったのですが、その頃にはコロナが明けて、PCのモニターのマーケットも冷えていって、残念ながらうまくつながっていかなかったということで、非常に苦渋の判断だったのですが、我々としては、さらなる追加投資を断念して、今年の3月に民事再生を決めた、そういういきさつであります。本当にじくじたる思いを持っております。

13ページですが、「技術で勝って、事業で負ける」ということを繰り返している中で、何とか官民ファンドのリスクマネー、あるいは事業会社から追加投資をしていただいて、こうした日本の技術を事業として次世代に残していく、これは官民ファンドとしての大きな役割だと私は思っております。残念ながら、物は出せたのですが、量産で黒字化を果たすところまで行かず、志半ばで終わってしまいました。ただ、大型のところについては、中国の最大手のテレビメーカーTCLの子会社でディスプレーの会社CSOTにライセンスをし、かつ、サムスン、LGからも、ライセンス料を取るということで、ライセンスビジネスはうまくいったわけですが、やっぱり製品ビジネスのところが、生産のつまずきと、販売のつまずきの両方が引っかかって、今年の3月の民事再生につながった、そういう状況で、責任者としては、本当にじくじたる思いを持っております。

私から以上です。

〔翁分科会長〕どうも貴重なお話ありがとうございました。

それでは、今のご説明につきまして、ご意見やご質問ございましたらお願いいたします。

岡田委員、お願いいたします。

〔岡田委員〕読売新聞の岡田です。すみません、先ほどの産業革新投資機構の状況報告と今回のINCJの件と併せて、感想というか意見を申し上げます。

総じて説明責任というか政府系ファンドの、一般の方の印象というか、イメージというのがあまりよくないのではないかと思っていまして。というのは、JOLEDもそうですし、その前のJDIもあまりうまくいかなかったという中で、こうした政府系ファンドが産業政策との兼ね合いでどのようにうまくやっていくかということが、一般の人にうまく理解されているのかどうかという点。その点で、前段の産業革新投資機構の状況報告で、ファンドの規模が随分拡大というのがありましたが、その是非については、去年に整理がついているということではあるとは思うのですが、広くそのことについて、一般の国民の間に理解があるかどうかというあたりも、例えば、2,000億円から9,000億円に増やした際には、報道ではこれはやっぱり東芝のためなのではないかという報道が結構あったりして、もちろんそういう個別のことを前提に拡大したのではないというのが、ご回答かと思うのですが、結局のところ、あまりうまくいってない国の産業政策のために、また拡大するのかというイメージで、どうしても捉えられてしまうというふうな、そうした現状の一般的なイメージ、個別1個1個の案件で、いろいろ意義はあろうかと思いますが、総じて、全体として、特にこうしたJOLEDのような件というのは、広く報道されることもありますので、その辺りの説明責任というのは、改めて深く考えながらやっていただければと思います。

私からは以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

そのほかございますか。よろしいでしょうか。

冨田委員。それでは、冨田委員のご質問が終わりましたら、ご回答をお願いいたします。

〔冨田委員〕すみません、手短に申し上げます。ファンド事業は、どうしても効果が、出資先の収益として株価といったところに内生化されてしまう傾向が非常に強いように思われます。それがゆえに、今日のご説明も、INCJのところもファンド管理、ガバナンスの話が中心でありました。しかしながら、冒頭に政策効果といたしまして、産業競争力の強化、そして民間投資の拡大という極めて一般的な大ぐくりのものが掲げられておりまして、そしてそれが、今日はJOLEDとか、ジャパンディスプレイのところにもお話があったのですが、もっと具体的に、どういう外部効果があったのか。つまり、ファンドとしては、ガバナンスは失敗だったのだが、こういうものがあったとか、あるいはこれから行う事業についても、こういうことが政策としての目的なのだということについて、具体的で明示的なことがお話しというか、議論があってしかるべきだと思います。この点、主務省によろしくお願いしたいと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

それでは、志賀会長から何かコメントがございましたら、また、経産省から何かありましたらお願いいたします。

〔INCJ志賀代表取締役会長CEO〕最初にご質問いただきました世の中の官民ファンドに対する評価のところですが、私も事業会社から官民ファンドの会長を引き受けて、こんなに風当たりの厳しいところなのかと、本当に何をやっても絶対褒められないですし、批判しかされないということで、こういうものだなと感じたのですが、これではいけないということで、しっかりと、これは官民ファンドの中で働いている職員の皆さん方は、退路を断って国のために働きたいということで、ベンチャーキャピタリストあるいはファンドマネージャーが、我々のところへ来てくれているわけなので、そういう意味でも、評価いただくための活動を正式にやらなければということで、私になってから定例記者会見を、当初は年に2回、今は年に1回やっていますが、そこでしっかりと説明し、かつ、新聞社の論説委員等々も回って、失敗案件に関しては、正式に失敗した理由その他もしっかり説明責任を果たし、かつ、トータルとして、やっぱりやっていることをご評価いただき、ご理解いただくべくやってきたのですが、残念ながら現在に至っているということです。

このJOLEDの案件に関しては、1点、実は民事再生を申請しますということを、JOLEDはリリースを出しただけですが、一方で、官民ファンドとして、勝又社長が記者レクを行って、その中で、失敗に至った経緯を相当説明しました。

したがって、JOLEDに関しては、どちらかというと有機ELに対する産業投資がよかったのかどうかという形で割とニュートラルな、官民ファンド批判というよりも、その投資を日本としてすべきだったのかという形の議論になっていて、しっかりと説明を果たすことが重要かということについては、本当にそのように思っております。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

経産省から何か一言ありますでしょうか。

〔経済産業省蓮井大臣官房審議官(経済産業政策局担当)〕経済産業省でございます。ご指摘の点、特に政策的な観点と投資のリターンとを同時達成する、極めて難しいミッションを負っているのが、INCJ、産業革新投資機構(JIC)だと思っております。

政府といたしましても、産業競争力強化法という根拠法に基づく投資基準を定めてございまして、その中で、具体的にはSociety5.0に向けた新規事業の創造の推進とか、ユニコーンベンチャー創出とか、あるいは既存事業による産業組織の枠を超えた事業再編の促進といった、産業競争力強化にどう資するのかということを、INCJさん、あるいは産業革新投資機構さんと、政策的な対話をやりながら、特に経済戦略、あるいは成長戦略の観点で重要な分野にきちんと絞り込んだ形で、そこに集中的に投資をしようということで、日常から議論をしているところでございます。その上で投資の効果の評価はしっかりと、先ほどもご説明ありましたとおり、やらせていただいておりますが、それと併せて、対外的な説明を含めしっかりやっていきたいと思っております。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

〔INCJ志賀代表取締役会長CEO〕1点だけ言い忘れたことがあり、いいですか。一言で終わります。

〔翁分科会長〕はい。

〔INCJ志賀代表取締役会長CEO〕あと2年で、産業革新機構、INCJは終わりますので、実は今、社史編纂プロジェクトを立ち上げ進めています。その中で官民ファンドとしてやってきたこと、やれなかったこと、失敗したことも含めて、しっかりと将来に残しておくということで、文献化を進めておりますので、出来上がった段階では、ぜひ皆さん方にも、お配りしたいと思います。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

それでは、ここで、産業革新投資機構、INCJ及び経済産業者の皆様にはご退席いただきます。どうもありがとうございました。

(JIC、INCJ、経済産業省退席)

〔翁分科会長〕次は官民ファンドですが、担当部局の方と、4つの官民ファンドが入られますので、少しお待ちください。

(CJ、JOIN、JICT、A-FIVE着席)

〔翁分科会長〕それでは、議題について原山財政投融資企画官から説明いただいた後、投資計画等の進捗状況について、各ファンドのご担当の方より順にご報告をいただきます。

委員の皆様からのご意見、ご質問については、全ての説明の終了後に対応いたします。

配付資料4-1の参考データにつきましては、各機関における正式手続前の資料を含んでおりますので、本日、この内容に言及いただくことは差し支えございませんが、公表は後日とさせていただきますので、ご承知おきください。

それでは、原山さん、お願いいたします。

〔原山財政投融資企画官〕それでは、資料4-1をお願いします。

2ページ目をお願いします。論点の関係です。

官民ファンドについては、これまでも改革工程表に基づく確認をいただいていますが、今回は、今年の3月末時点における進捗状況を確認事項として考えております。

また、前回の官民ファンドに関する分科会、昨年の11月に開催されましたが、前回の分科会以降の具体的な取組も確認事項として考えております。

3ページ目をお願いします。今年3月末時点での投資額と累積損失についての進捗状況です。CJ、JOIN、JICTについては目標達成、A-FIVEについては目標未達となっております。

4ページ目をお願いします。前回の分科会以降の具体的な取組などについて、各ファンドに確認すべき主な事項です。

まず、CJです。CJについては、令和4年11月に「最低限達成すべき投資計画」を公表していますが、計画の達成状況や、昨年11月の分科会で示された改善策の進捗状況はどうなっているのかといった点。

JOINについては、収益力の強化に向けた案件組成の状況や今後の見通し、他の官民ファンドなどとの連携の状況、こういったことを確認事項として考えております。

5ページ目をお願いします。

JICT、AーFIVEについても、案件組成の状況や見通し、既存案件の状況や見通し、情報開示の検討結果、こういったことなどを確認事項として考えております。

6ページ目をお願いします。

昨今の金融情勢の変化などを受けまして、投資先を取り巻く環境なども変化をしています。そのため、ポートフォリオ分析・管理、個別案件の進捗状況、EXIT戦略の考え方について、各ファンドより考え方を提出してもらいました。

8ページ目をお願いします。今後の進め方についての考え方です。

改革工程表に基づき、各ファンドや主務省は引き続き対応を行っていく。財務省も出資者として、必要な対応を促していく。特にCJについては、「最低限達成すべき投資計画」を下回った場合は、他の機関との統合または廃止を前提に、具体的な道筋を検討する。JICTについては、「改善計画」と実績との乖離が認められる場合は、速やかに組織の在り方も含め、抜本的な見直しを行う。こういったことなどを今後の進め方として考えております。

私からは以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

それでは、クールジャパンから順に4機関にご説明をお願いいたします。

〔経済産業省商務・サービスグループ茂木商務・サービス審議官〕それでは、クールジャパン機構についてご説明をさせていただきます。経済産業省の茂木と申します。

昨年11月に策定いたしました投資計画の進捗状況及び経営改革の取組状況、そして前回ご指摘をいただいたEXIT案件に関する情報開示について、ご説明させていただきます。

資料の4-2をご覧ください。

1ページ目でございますが、まず、投資の状況でございます。

2022年度の投資額は、計画額で154億円に対しまして161億円。2022年度末の累積損益は、計画額をマイナス363億円に昨年修正させていただきましたが、結果がマイナス356億円となっております。累積損益の計画額は、達成はしておりますが、引き続き厳しい経営状況であることには変わりはありません。昨年度ご審議いただきました、経営改善策を着実に実行しながら、政策目的の実現と収益性の確保の両立に努めてまいります。

次に、5ページ目をご覧ください。経営改善策の取組状況についてご説明いたします。

まず、1ポツ目の「投資先の管理と資金回収の強化」についてでございますが、既存案件の投資管理を強化するため、モニタリング会議の開催頻度の増加や必要に応じた早期のEXIT交渉などを実施してきております。新規案件の検討時にはミドルオフィスなどでも、独自にリスク確認を行って、レポートを投資委員会に提出するなど、より精度の高いリスク評価を行っております。また、昨年の7月のジョブディスクリプションの策定によりまして、投資と経営のガバナンスを明確化するとともに、今月末には社外取締役を一部交代しまして、より事業経験が豊富な人材をそろえた新体制を構築してまいります。さらに、2022年の4月、昨年の4月に賞与体系の傾斜強化を実施、組織の新陳代謝も進んできております。自己投資の仕組みについては、導入コストや実効性の観点から導入可能性を検討中としております。

続いて、2ポツ目の「案件組成や投資先支援の強化」でございますが、政策目的の実現を前提に、より収益性も踏まえたポートフォリオ構築に向けまして、投資対象を明確にした上で、昨年の8月には社長直轄部隊を設置するなど、優良案件の発掘及びビジネスマッチング等の事業支援を強化しているところです。

さらに、3ポツの「専門人材の確保と組織の効率化」でございますが、特に、投資検討時における事業性や、技術基盤の評価に当たって、専門的な知見を補完する仕組みを構築すべく、昨年の6月に産総研と業務連携協定を締結しました。実際、技術的優位性の分析等で技術相談を4件実施しておりまして、支援決定につながった案件もございます。また、収益改善に向けては、当然、必要経費の削減にも努めていく必要があります。2021年度のオフィス面積縮小によりまして家賃の削減を行いましたし、ネットワーク費用もクラウド化等によって、かなり削減ができているところであります。加えて、調査研究費用の合理化などの取組を行っているところです。

各項目の詳細は6ページ目以降に記載しておりますので、後ほどご覧いただければと思います。

こうした経営改革を通しまして、機構の業務改善につながるよう引き続きしっかり取り組んでまいります。

それから続いて9ページをご覧ください。

昨年の分科会におきましても、政策性と収益性の両立について、多数ご指摘を頂戴いたしました。ご指摘の点も踏まえまして、投資ポートフォリオの再構築も進めているところでございます。日本の生活文化の魅力を生かした商品と、これは設立時の支援基準にも記載があるわけでございますが、コンテンツに限らず、これは衣食住の関連ですとか、それから先端テクノロジーなども含まれていますが、これらを通じて海外需要の開拓という政策的な意義を実現していく。そして海外現地に確立した事業基盤を持つ事業者、安定した収益基盤を持つ事業者、そして、堅い技術基盤を持つ事業者への投資を重視してまいりたいと考えております。

例えば、10ページ目に、昨年度の支援決定を行った案件を記載しております。政策的意義を有することは大前提といたしまして、いくつか事例がございますが、例えば2つ目のWineGalleryですとか、一番下にありますJumpStartのような、海外現地に販路を持つ事業者、こうした販路を持つ事業者を通じて、日本の産品、商品を販売していっていただく、こうした投資でございますとか、あるいは一番上の刀、それから真ん中にあります4P’s、それから五常・アンド・カンパニーのような比較的収益基盤の堅い事業者への投資も進めています。それからDAIZのような、これは日本発のバイオテクノロジー事業者でございますが、それと食文化の海外展開、こうした政策性を兼ね備えつつ、先端的な技術を持った事業者への投資案件というものを決めてきているところであります。

それから、こうした案件の中で、やはりコロナ禍で、民間資金だけでは十分に集まらないというケースもございました。そうした中でクールジャパン機構にもお声がけをいただいて出資している案件もございまして、民業補完の原則の下に投資を行ってきているところであります。

引き続き優良案件の発掘、それから効果的な事業展開支援、そして適時適切なEXIT判断を実行する体制整備を進めながら、機構による投資を通じた政策目的の実現及び収益性の確保の両立に努めてまいります。

最後に、前回の分科会にて、ご指摘をいただきました、EXIT案件に関する情報開示の方針についてご説明させていただきます。

資料の17ページでございますが、財投分科会での開示について、これまでは各分類の内訳の区分を固定しておりました。結果として、固定した分類の中の案件が1件のみの場合は、例えば回収率の特定が可能となってしまうので、非開示というような形になっておりました。こうした指摘を受けまして、非開示となっていた箇所が、今後はブラックボックスにならないように開示の工夫をしながら、平均回収率を開示してまいりたいと思っております。

また、これまで事業規模別、分野別ということで開示をしておりましたが、支援決定年度別、それから実出資額別というような違うカテゴリーでも開示を行うことで、より多面的な情報開示も追求していきます。

それから、個別案件についても、これは開示について、しっかりと取り組みたいと思っております。EXIT時点におきまして、関係企業に対しまして、開示に関する確認を行うなど開示に努めていくことといたします。

私からの説明は以上です。

〔翁分科会長〕それでは、次、よろしくお願いいたします。できるだけ簡潔にご説明をお願いいただければと思います。恐縮ですが、よろしくお願いします。

〔国土交通省平岡国際統括官〕続きまして、JOINについて、国土交通省からご説明をさせていただきます。資料4-3の2ページ目をご覧ください。

投資計画では、先ほど財務省さんからもご説明ありましたとおり、2022年度の年間計画として、146億円の投資を行うこととなっておりますが、実績額は433億円と年間計画額を上回っているところでございます。2022年度におきましては、デジタルや脱炭素などのポストコロナの投資ニーズを踏まえつつ、リスクマネジメントの観点からポートフォリオのバランスを確保すべく、ブラウンフィールド案件の取り込みやスタートアップ企業の支援などにも取り組んでまいりました。引き続き投資ニーズを踏まえた案件形成に取り組むとともに、支援案件の長期的収益性を担保するためのモニタリング体制の強化や、他の政府系機関などと連携した案件形成や支援に取り組むことで、投資計画の達成の実現を図ってまいりたいと思っております。

前回の分科会でお示しした取組の進捗状況につきましては、3ページ以降でJOINからご説明をさせていただきます。

〔海外交通・都市開発事業支援機構細見専務取締役〕JOIN専務の細見です。3ページをご覧ください。

2022年度下期も、新モビリティサービスに係る案件や、日本のTODのノウハウを生かして、商業施設をバリューアップさせるブラウン案件など、ポートフォリオのバランスを意識して、案件の多様化に取り組みました。

海外インフラ事業を取り巻く環境は不透明で変化が激しいですが、様々なリスク要因を注視しつつ、投資計画の達成と政策的意義の実現を図っております。

4ページをご覧ください。

JOINでは、個別案件の管理に加え、ポートフォリオを様々な観点から俯瞰して管理しています。投資実行前には、個別案件の長期的収益性及び政策的意義に加え、投資実行後のポートフォリオの状況も踏まえて社内審査を重ねた上、事業委員会で入念に議論しています。また、案件ごとにEXITの時期や方法等をあらかじめ共同出資者とすり合わせしています。投資実行後は、事業推進部が共同出資者と協力して、案件の状況を適時適切に把握し、モニタリングしています。そしてプロジェクト管理部がそのモニタリング結果をレビューし、ポートフォリオ全体のリスク・エクスポージャーの管理をしています。また、昨年11月に、JOIN全体のリスク管理状況を網羅的に管理、提言するリスク管理委員会を新設いたしました。

最後に5ページをお願いします。

JOINでは、地方セミナー開催等で、他の政府系機関と連携して、民間企業の海外進出を後押しする一方、デジタルや脱炭素等の新たな領域での案件創出にも取り組んでいます。引き続き他機関とも連携しつつ、JOINに期待される役割をしっかりと果たしてまいります。

以上でJOINの説明を終わります。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

では、次お願いいたします。

〔総務省田原国際戦略局長〕続いてJICTについて、まず、総務省からご説明申し上げます。資料4-4の2ページをご覧ください。改善計画の進捗状況でございます。

令和4年度、JICTにおいてはハードインフラ案件1件に加え、昨年2月の支援基準改正により支援可能となったICTサービス事業の案件2件、ファンドへのLP出資の案件2件の計5件について支援決定を行っております。その結果、令和4年度は138億円の投資を実施いたしまして、計画額である80億円を58億円上回ってございます。

また、累積損益額につきましては、令和4年末時点におきまして、マイナス127億円となっておりまして、こちらの計画額であるマイナス154億円を27億円上回る状況でございます。

案件組成の状況、ポートフォリオ管理等につきましては、JICTから説明をお願いします。

〔海外通信・放送・郵便事業支援機構大島代表取締役社長〕JICT社長の大島でございます。

3ページ目をご覧ください。案件組成の状況でございますが、21年度までは、年平均1.5件でございましたが、昨年度につきましては5件であり、3分野ともバランスよく実施できております。こちらに関しましては、令和4年2月の支援基準の改正による影響、また、エコシステム構築の取組に加えまして、経営ビジョンや中期経営計画の検討など社内の体制整備が進み、人員の増強も順調に行われたことが、案件組成等執行力を高めたものと認識しております。また、財務的にも、配当収入が増加しまして、経常的な費用が賄える状況になり、また、有価証券評価差額金も増加しまして、財務の安定性も同時に確保されているところでございます。

投資環境の変化が大きいこともございまして、為替リスク管理や資金管理についても強化を図っているところでございます。

4ページ目をご覧ください。ポートフォリオ分析・管理等でございますが、ファンド全体のポートフォリオを分析しながら、懸念すべきリスクについては可視化して確認をしております。資産配分上は、投資分野や融資の形態、投資期間とのバランス等も考慮しながら、ポートフォリオ上は全体として健全性が維持され、また、個別事業に関してもしっかりとモニタリングを強化し、投資案件の円滑な進捗と価値向上に向けた取組を行っているところでございます。支援基準拡大に伴いまして、ポートフォリオ上は分散化が進んでいるところでございます。

5ページ目をご覧ください。他の官民ファンド等との連携状況でございますが、おかげさまで内閣官房海外ビジネス投資支援室の会合、財務省様主催の官民ファンド等の合同説明会への参画、また、JETRO様のJ-Bridgeパートナー制度への参画等を通じまして、他の官民ファンド等との連携も強化されつつあるところでございます。

また、具体的な連携の1例としましては、昨年度、決済ICTソリューション事業を対象とした投資案件につきまして、他の公的資金提供機関との協調支援が実施できたところでございます。

JICTからは以上でございます。

〔農林水産省大臣官房新事業・食品産業部萩原新事業・食品産業政策課長〕続きまして、農林水産省から、A―FIVEについてご説明させていただきます。

資料の4-5の2ページをご覧ください。

A―FIVEにつきましては、2019年12月、2021年度以降新たな出資の決定は行わず、可能な限り速やかに解散する方針としました。その上で2020年5月、改善計画を策定しまして、累積損失の最小化に向けて取り組んでまいりましたが、2022年度末の累積損失は、決算見込みで151億円となりまして、計画額131億円に対しまして、20億円下回りました。こうした乖離が生じた要因としましては、2021年度末において計画と実績の差が約18億円生じていたところ、新型コロナウイルス等の影響によりまして、経済状況の回復が本格化しない中において、出資先の業績悪化によりまして2億円の乖離が生じたことによります。しかしながら、現段階で出資時と比較して企業価値が向上している出資先があります。A―FIVEの解散時期であります2025年度末までには、23億円程度の利益を見込んでいること、さらにコロナの影響等を受けた出資先の業績の回復につながる支援を積極的に行いまして、回復の最大化を図ることによりまして、2025年度末の累積損失を120億円とする計画の達成は可能と見込んでおります。

次に、3ページをご覧ください。

既存の出資先の現状につきましては、全体として厳しい状況が続いておりますが、A―FIVEにおいては全ての出資先についてきめ細かく進捗管理を行いまして、それぞれのEXIT戦略の検討・変更を行いながら、回収の早期化・最大化に向けて出資先やサブファンドとの直接対話等を精力的に実施しております。

農林水産省といたしましては、A―FIVEにおいて本計画が着実に実行されるように必要な協力や助言を行っていくとともに、引き続き不断の経費削減等を促してまいりたいと考えております。

なお、前回の分科会で委員からご指摘いただきました回収率の内訳につきましては、6ページにお示ししております。これまでよりも開示内容を拡充し、出資先の総資金調達額別、A―FIVEによる実出資額別、支援決定年度別、及び分野別の4項目に分けてそれぞれ整理して、お示しております。

以上で説明を終わりにさせていただきます。

〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。

それでは、委員の皆様からご意見、ご質問をお願いいたします。

それでは、土居委員、丸田委員、お願いいたします。

〔土居委員〕ご説明どうもありがとうございました。

A―FIVE以外は、予定しているよりかは改善した結果だったというところは多としたいと思います。それからあと、私、前回の会議で官民ファンドの会議で回収率の内訳をより詳細にと申し上げまして、それをお示しいただいたことには感謝したいと思います。

1点だけ指摘をしたいと思うのですが、JOINの資料で、9ページですか、下から2つ目にWHILL株式会社があって、実は、ここは私の知る限り、クールジャパンとあとINCJもここへ出資しているということであります。

何を申し上げたいかというと、出資の使途は、それぞれご判断があってお決めになっているということですから、お金が混ざっているというよりかは、出資目的がそれぞれにあって、それぞれの機構でご判断なさって出資されているということだと信じておりますが、EXITに当たっては、結局は、いずれの出資者にとっても、よりよいEXITを目指すという意味においては、全くそこは同床異夢になることはないわけなので、せっかくの共同出資というような状態になっているということですから、それぞれの機構も人員が限られていて、その案件を1つ1つ、より精査してウオッチするというのは、それなりに注力できるにも限りがあると思いますので、私はWHILL以外でそういう案件があるかどうか存じませんが、少なくとも存じているWHILLに関しては、3機関の官民ファンドが共同して、今後のEXIT、もちろんINCJは先ほどの議論があったように、あと2年ということではあるのですが、EXITについては共同して省力化しながら、よりよいEXITを目指すように努めていただきたいと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

それでは、丸田委員、お願いします。

〔丸田委員〕ご説明ありがとうございました。

私から、まず、全体を通して確認、お願いも含めて2点コメントさせていただきます。1つ目の点は、今回累積損益をベースに計画と比較されておりますが、各社の決算を拝見すると、やはり売上よりも売上原価が多く、恐らくEXITに伴う実現損失と減損損失がかなり計上されているのではないかと推察いたしました。

この状況の中で、累積損益をターゲットにすると、EXITの時期が、予算の達成を優先することによって、結果として、適切なタイミングに実行されないことによって、機会損失のようなものが発生する可能性があるということを、私としてはリスクとして考えております。また、減損につきましても、当然ながら適切なタイミングで適時に計上することが必要だと思いますので、ぜひ、各ファンドの決算に当たりましては、この累積損益の計画があるからといって、EXITのタイミングを逸したりするようなことがないように、減損についても同じように適時適切に計上していただくことが大事ではないかと思っております。

2点目は、やはり先ほどの産業革新機構さんもそうですが、特にA―FIVE以外のファンドにおかれましては、先ほどご報告がありましたように、コロナで投資できなかったこともあったかと思いますが、昨今、特に新たなテクノロジーであるとか、環境とか脱炭素とか新しいテーマでのベンチャー企業や投資機会がかなり出てきているかと思います。また、投資対象の分野も、ぜひ、やはり民間がまだ手が出せないようなところに、政策目的という意味では、取り組んでいただいくことに意義があると思います。そういった成果について、より、現状と異なるKPIであるとか、新規分野への取組実績であるとか、それによる成果、成果の中には無形資産のようなものも結構あるかと思いますが、そのようなものもぜひ、累積損益や投資額等の数字だけではなくて、効果としてアピールをされてはいかがかと思いました。

最後の1点は個別の質問でございます。クールジャパンさんでございますが、資料16ページ、出資残高の内訳を拝見していますと、やはりEXITまで5年以上の残高がほとんどというところで、この手の投資の性質からするとEXITまでの期間が通常より結構長いものが、ポートフォリオとしてはかなり残っているのではないかと感じました。

ですので、今後、累積損益カーブが最終的にプラスになる計画にはなっているかと思うのですが、過去のEXIT済み案件のIRRはマイナス10%ということの記載もあったかと思いますので、今後、現在のポートフォリオを勘案すると、恐らく、最近の投資案件とか新規投資案件で相当高いIRRを出さないと、計画のカーブのように上がっていかないのではないかというところを私としては懸念として思っております。この点について、例えば現在の含み損益の状況や、具体的な含み益案件があるので実現できるというのであればよろしいのですが、何かございますでしょうか。

私からは以上でございます。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

それでは、今のコメント、ご質問に関して、それぞれお答えいただければと思いますが、クールジャパンからよろしくお願いいたします。

〔経済産業省商務・サービスグループ茂木商務・サービス審議官〕ありがとうございます。

まず、しっかりと複数ファンド連携してということはご指摘のとおりだと思いますので、CJ機構も、ほかのファンドと共同で出資している案件もございますので、やはりEXITのタイミング、それから情報共有の在り方については、しっかり関係ファンドと連携をしたいと思います。

それから、今、丸田委員からご指摘ありました点についてですが、減損のタイミングについては、減損ルールはしっかりと通常のルールに基づいて行いますので、何かそれでタイミングをずらすということはなくて、そのタイミングで減損します。

EXITについては、もちろん期待利益をしっかり上げていくことも重要でございますが、やはり政策目的をきちんと実現するタイミングもしっかり見据えながらやっていきたいと思います。ただ、一方で、それを見据えているうちに、せっかくのいいタイミングを逃してしまうことがないように、これはよくタイミングを見極めながらEXITしていきたいと思っています。

それから、テクノロジーや脱炭素系の話は、確かに重要だと我々も思っていまして、先ほどご説明申し上げました今後の投資ポートフォリオに関する考え方でも述べましたが、やはり日本発の技術をベースにして、新しい日本の生活文化にかかるような商品を出していく、そういう支援基準に合うものであれば、そういった支援をしていきたいと思います。先ほどのDAIZはバイオテックでございますので、こういったバイオテックの分野も、脱炭素にも貢献しますし、ディープテックの分野でもありますので、こうした分野への投資も、これは技術デューデリジェンスなどをしっかり行いながら進めていきたいと思っています。

それから残高については、確かに5年以上の残高のものが多いです。これは割と投資初期の案件が、EXITまでの期間を長く取っている案件が多くて、近年の案件は、少し投資のEXITまでの期間が短くなってきています。もちろんこれはEXITのタイミングを見極めながらという、先ほどのご指摘も踏まえながらしっかりやっていきます。

それから、今後のIRRですが、財務省の資料にもありましたが、過去の案件のIRRはご指摘のとおりマイナス10.7%ということであります。最終的な、2033年度のファンドの期限におけるIRR、全体のIRRはプラス3.4%ということになっておりますので、当然そこに向けて、これまでの既存案件の回収率を上げていくということと、これから投資をさせていただく案件についても、政策性ならびに収益性もしっかり見ながら、この数字を実現できるように努めていきたいと思っています。

〔海外交通・都市開発事業支援機構細見専務取締役〕JOINから報告申し上げます。9ページにあります案件につきまして、ご質問いただきましたので、まず、それについてお答えします。

WHILLという会社でございますが、クールジャパン、INCJ様が投資されており、もちろん連携しておりますが、私どもJOINが支援している案件は、WHILLが北米の空港で自動運転の車椅子のサービスを提供するものでありまして、特にコロナ禍で非接触というニーズが北米の空港でも出てきたときに、これをどういう形でサポートするかということで、WHILLの持っている自動運転の車椅子を北米に導入する。それにあたって、カナダにあります既存の会社、Scootaround社という企業を買収するということになり、WHILLと私どもJOINで、少額の出資をした上で、1つ1つのサービスを開始するにあたって融資をするという形での支援ということで、INCJさんとかクールジャパンさんとの支援の形態とは少し違う形で、また、投資対象地域も北米の空港ということでやっております。羽田空港にも同じようなサービスがございますが、現在、カナダのウィニペグ空港と、アメリカのジョージア州のサバンナという空港でサービスを開始しておりまして、これを広げていくということでやっております。ただ、ご指摘ありましたとおり、EXITあるいは回収ということになる場合には、2つのファンドともよく情報交換、連携しながら進めていきたいと考えております。

それから、丸田委員からのご質問ですが、EXITの時期、適切なタイミングとありますが、先ほど説明申し上げましたとおり、JOINでは案件ごとに退出時期とか、退出方法をあらかじめ共同出資者と認識をすり合わせた上で、EXIT戦略を定めております。大体全体の4割ぐらいが都市開発案件、6割ぐらいが交通関係ということですが、都市開発案件が大体5年から7年、交通関係はどうしても長くて10年以上の案件が多いということになっていますが、あらかじめそれを定めています。ただ、5年とか10年という範囲の中では、状況がよく変わります。そのためにモニタリングをしっかりやっておりまして、事業の状況を適切に把握して、仮に事業環境が大きく変化した場合には、必要に応じて当初のEXIT戦略を見直して、退出時期や退出方法の変更等を共同出資者と協議しているということでございます。また、こういうEXIT戦略の検討にあたっては、外部専門家の知見も活用しながら社内で検討しております。

なお、減損につきましては、クールジャパンさんからもありましたとおり、日本の会計基準に沿ってしっかり毎年、例年、決算の前に見直しをしておりまして、その結果、監査法人の承諾を得た上で減損判定をしているということでございます。

最後にテクノロジー、脱炭素ということですが、私どもも、例えば、3次元道路マップの事業で、北米あるいは欧州での事業を支援したり、ドローン配送の管制といった、そういう新しいテクノロジーの分野の支援をやっていたり、あるいは代替航空燃料いわゆるSAFの支援を現在アメリカでやっておりますが、日本の航空会社のSAFの引取権を確保するというようなところで、国土交通省の指導の下、しっかりとこれにも取り組んでおり、今現在も動いている案件がある、こういう状況でございます。

JOINからは以上でございます。

〔海外通信・放送・郵便事業支援機構大島代表取締役社長〕JICTにつきましては、会計的な面は会計基準に則って、しっかりやっております。

EXITのタイミングにつきましては、資料のページ4にも記載しておりますが、案件組成時におきましては、事業パートナーともしっかり議論をし、EXIT戦略をまとめて、支援決定しております。期中におきましても、対象事業のバリューアップを図りながら、事業者と対話を重ねて取り組んでいるところでございます。

ポートフォリオ全体としては、JICTは比較的、長期にわたる案件が多いですが、投資案件の分散を図りながら、EXITのタイミングについて、損益の出方がどうなるのか等も考慮し、管理しております。

支援範囲拡大によりまして、投資期間がもう少し短い傾向があるICTサービス事業や、ファンドへのLP出資ということにも取り組んでおりますので、投資期間の分散についても十分留意しながらコントロールできる状況になっていると認識をしています。

また、新しい技術領域に対しては、LP出資を通じた技術動向やその実装状況を把握する、あるいはエコシステム構築を通じて我々のフォーカスするICT領域やそれに関連する新しい技術領域として、DLT技術とかDeepTechであるAIなども対象として入ってくる可能性があります。こういった技術領域も、ICTサービス事業やLP出資への投資を通じ、あるいは、エコシステムを通じて把握をしていきます。また、総務省様とも連携しながら、国際的な展示会等にもアクセスしながら、新しい可能性について追求してまいりたいと考えております。

以上です。

〔農林水産省大臣官房新事業・食品産業部萩原新事業・食品産業政策課長〕A―FIVEでございます。ほかのファンドとは少し立ち位置が違うのですが、連携については、可能な限り連携を取ってまいりたいと思っております。

また、減損ルールにつきましては、これもルールに基づきまして、私ども会計監査人の監査を受けまして、毎年度実施をしているところでございます。

EXITに関しましては、残された時間が限られておりますので、この中で関係先との合意形成をしっかり取りながら、前倒しできるところは前倒しをして、期限までにしっかり回収を実現したいということで取り組んでおります。

以上でございます。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

皆さん、経営改善には努めておられますが、クールジャパンにつきましては、計画比ではご努力されて実現されましたが、厳しい状況は変わっておりませんので、引き続きしっかりとご尽力いただきたいと思っております。ポートフォリオの基本情報が、回収率、17ページに出ましたが、こういった形で開示されると非常に分かりやすいですので、しっかりこういった開示にも努めていただきながら、引き続き案件をしっかり見極めて、選んで、出資していただきたいですし、EXITもしっかりと行っていただきたいと思っております。

A―FIVEについては、現時点では目標を達成していないという状況でございますが、引き続き、最終的に累損120億以内という目標を実現できますように、ご尽力いただきたいと思っております。

また、海外の2ファンドにつきましては、非常に難しい国際環境にはなってきておりますが、引き続き経営改善に向けてしっかりと取り組みながら、政策目的を果たしていただきたいと思っております。

それでは、特に、追加的にご質問はないようですので、今回はこちらで終了させていただきたいと思っております。

各官民ファンド及び関係省庁の担当部局の皆様にはご退席いただきます。どうもありがとうございました。

(CJ、JOIN、JICT、A―FIVE退席)

(内閣府、文部科学省、科学技術振興機構着席)

〔翁分科会長〕それでは、大学ファンドの状況報告に移ります。

まず、原田財政投融資総括課長、その後、文部科学省及び科学技術振興機構よりご説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

〔原田財政投融資総括課長〕大学ファンドにつきまして、まず、私から前回の分科会でご指摘いただいたことを簡単に振り返ります。

財務省の資料5-1をご覧ください。

5ページ目に、前回の分科会における主なご指摘事項を記載してございます。

1点目が、JSTの運用に係る情報開示についてでございます。充実した内容の情報開示を適時適切に行うべきである。例えば内外の株式・債券別の運用資産額等の開示をすべきというご指摘でございます。

2点目はガバナンス体制でございますが、投資委員会と運用リスク管理委員会のメンバーが全く同じであるという点、それから監査部が理事長直轄機関である、こういった場合に、内部告発等があった場合に、この体制で適切な対応ができるのかというご指摘があったと認識してございます。

それ以降はご参考として、一昨年、分科会からご提出いただいた大学ファンドについての議論の整理をつけておりますが、説明は割愛いたします。

以上でございます。

〔翁分科会長〕それでは、文部科学省からお願いいたします。

〔文部科学省奥野大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)〕資料の5-2、ご覧ください。

まず、大学ファンドの概要につきまして簡単に、3ページにお進みください。

国際卓越研究大学につきましては、通常の研究支援は、一般的には研究者及び研究活動等を支援するものでございます。ただ、国際的な国際競争の観点で、我が国の研究開発を主導するに当たっては、大学等の場そのものの研究環境の下に優れた世界の研究者等が集まり、新たな知を創出していく、そういった観点からこの事業につきましては、大学そのものの研究環境の整備を促すとともに、中長期的には大学が年年の財政、そういったニーズ等に左右されない自律的な財政基盤等の構築を目指していくものでございます。

4ページ目、スケジュールがございますとおり、現在、支援する大学の支援に向けた必要な法令指針等の整備及び資金の運用等に係る法令指針等の整備をほぼ終えておりまして、現在対象とする大学の選定の手続が進んでおるところでございます。

6ページ、大学ファンドの制度設計につきましては、記載のとおり、10年後、令和13年度に向けて、支出目標率3%プラス、物価上昇率以上の運用を目標に、そのための運用環境・運用体制等の整備を進めてまいったところでございます。

次に、7ページでございます。

大学ファンドの運用に当たりまして、財政融資資金の償還確実性の担保という観点から、いわゆる元本を支出の財源とせずに、年度年度の運用の過程で発生してございます利益の剰余の範囲の中から、財政当局、財務省のご承認をいただいた範囲を助成の財源とする形で、融資額の元本保全等を図るような枠組みを取っておるところでございます。詳細は割愛いたします。

次に、11ページをご覧ください。

現在、国際卓越研究大学の公募・選定を令和4年12月に公募を開始し、令和5年3月末公募を締切り、12ページにございます大学から申請等を受け付けてございます。現在、各大学の審査のプロセスを進めているところでございまして、書面の審査を終えて、現在それぞれの大学とWebの対面審査等を行っており、今後、さらにその中から現地等に入って、現地での意見交換等を行い、今後大学等の選定対象をより絞り込んでいるプロセスにございます。

以上です。

〔科学技術振興機構喜田運用業務担当理事/資金運用本部長〕それでは、科学技術振興機構で大学ファンドの運用を担当しております理事の喜田でございます。

1ページの目次でおさらいですが、先ほど、原田課長からもいただきましたお題目のうち、私からは「JSTの運用に係る情報開示について」という部分をご説明申し上げます。

3ページまでお進みいただきまして、ここでは開示に係る「基本的考え方」とございます。その前段の状況としまして、開示につきましては運用の状況を記載しました2022年度、つまり令和4年度、前年度の業務概況書について、7月7日金曜日の公表を予定しております。その作成に当たりまして、今、運用監視委員会の最終審議にかけているというのが、この業務概況書の状況でございます。

基本的考え方として以下3点挙げさせていただいていますが、1つは関係省令、ルールで定められている内容を踏まえて検討しております。それから、開示項目の充実度、それから公益性等を踏まえまして、公的年金機関様等の業務概況書を参考とさせていただいております。それから、大学ファンドはまだ運用開始から間もないこと、それから大学ファンドの趣旨・目的等を考慮した上で開示項目を検討する。この3つでございます。

1点目に関しましては、下に関連するルールとして3つございます。まず、JST省令では、業務概況書の作成・公表義務が、2022年度、令和4年度から課されているということで、前々年度、令和3年度分も簡単な説明資料を公開いたしましたが、令和4年度からが本格的なバージョンでの公表となります。それから、文部科学大臣が策定した指針の中では、第四で、「分かりやすく工夫して開示すること」、「情報公開に当たっては市場への影響等に留意すること」、「立ち上げ期については、運用実績等の公開にとどめるなど、透明性を確保しつつも戦略的な取組を進めること」となっております。

それからJSTの基本方針では、立ち上げ期においては基本ポートフォリオは非公開とし、年度末時点の資産構成割合等につきまして、今回ご説明します業務概況書の中で公表するということでございます。

いずれにしましても、スタンスとしては、市場への影響に配慮しながら、開示項目の充実を図っているということをスタンスとしております。

続きまして、4ページに「業務概況書の構成案」ということで、まず、このページでは(1)(2)(3)とございますが、「はじめに」としまして、中曽運用・監視委員長のメッセージ、小職挨拶、経済市場動向、実績のサマリーに触れます。それから、「大学ファンドの概要」として、設立背景に加えてガバナンスの状況。「資産運用の概要」といたしまして、資産運用の枠組み、リスク管理等々。この3項目につきましても、相当のページを割いた上でご説明をする予定です。

続きまして、5ページをご覧いただきますと、本日ご説明しますのは、この「運用実績」のところをご参考までにということで、レイアウトイメージを参考添付させていただいております。公表前でありますので、今回は構成の詳細のみのご紹介ということで、数字についてはマスキングをさせていただいています。この点ご容赦いただきたいということと、構成につきましては、今最終審議中ですので、内容も変わり得るということはご了解いただければと思います。

6ページでございます。

まず、「運用実績」につきましては、「資産構成割合」、それから「運用手法別の運用資産額」に触れた上で、右下に、ここではご説明をマスキングせずに書かせていただいていますが、今の大学ファンドのポートフォリオについて、レファレンス・ポートフォリオは株65、債券35の構成でありますが、グローバル債券や短期資産の比率が高い構成になっています。これはオルタナティブには相応の時間がかかるということもありますが、元本の約9割が財政融資資金からの借入であるということも含めて、リスクを低めにコントロールしているということであります。この辺り、委員の皆様からすると当然のことかと思いますが、小職、この任を受けるに当たりまして、基本的には、内閣府でつくられたワーキンググループ等を経て考えられたリスクテイクというのがアセットサイドである一方で、調達構造について配慮するということも、責任を持ってやらせていただくということを前提に私はお引受けしたつもりでございます。

それから、7ページ以降でございますが、例えば「国・地域別の運用資産額」、「配分・回収額」、次8ページ「保有銘柄」をグローバル債券、株式、オルタナティブという、アセットの詳細について申し上げた上で9ページでございます。

「収益率・収益額」とございますが、このページではパフォーマンスとしてのポートフォリオの「収益率・収益額」を債券、株式、オルタナティブに分けてご紹介しているとともに、参考としてレファレンス・ポートフォリオの収益率を出す予定にしております。

それから、「インカムゲイン」がメインで大学支援のための支出をするという目途がございますので、この辺りの言及をしております。

それから10ページでございます。

こちらの③につきましては、会計上の損益、それから評価差額についての言及、それから④につきましては、先ほど文部科学省からもありましたが、国際卓越研究大学への助成についての原資の考え方、それから助成ルールの考え方について触れております。

11ページは、「運用受託機関」がございますので、その名前を明示した上で時価総額、手数料額・手数料率、それから資産管理機関について開示しております。

12ページ「その他」ということで、ここも一部の抜粋ということでご紹介申し上げますが、資金調達の内容ということで、右下には財政融資資金の借入状況、利率、スケジュール等々について言及させていただいているということでございます。

開示につきましては、以上です。

〔科学技術振興機構柴田理事〕続きまして、内部統制担当者の柴田からご説明いたします。時間も押しておりますので、ごく手短に説明させていただきます。

スライドの14ページ。これまでも本分科会でガバナンス体制をご説明してきたところですので、ごく簡単にご説明しますが、これまでご説明しましたとおり、資金運用本部、運用リスク管理部、監査部による3線防衛によるガバナンス体制を既に構築しており、さらに、これもご案内のところだと思いますが、文部科学大臣が任命する外部の有識者で構成される最上位の機関として運用・監視委員会を設置しておりまして、ここで、基本ポートフォリオ等の重要事項の審議、運用業務の実施状況の監視等を行っている状況です。

また、投資委員会、運用リスク管理委員会、これもご指摘の部分でございますが、こちらにおいて必要事項を審議するとともに、これを運用・監視委員会に適切に報告し、それとはまた独立した監査部による業務執行プロセスの適正性等の検証、内部監査を実施することで、先ほど申し上げました3線防衛体制の強化を行っています。

さらには、文部科学大臣が任命する監事が、理事長から独立した立場から、大学ファンドをはじめ、JST全体の業務を監査している。これによってガバナンスを強化しているということでございます。

最後の15ページ、先ほどご指摘ございました内部通報があった際ということで、独立行政法人通則法及び業務方法書に基づいて、内部統制に係る体制を整備しておるところでございまして、この内部通報に関しましては、ご覧のとおりのフローでございますが、通報者からの通報は、内部、外部それぞれの窓口がございますが、保護された上で、監事及び内部統制担当理事に報告がされることになっております。理事長から独立した監事は必要に応じて役員や職員に対して業務に関する調査を行うということになっておりますので、ご指摘の執行部のみならず、必ず、最優先で監事に入るというところはご説明しておきたいと思います。

なお、この体制につきましては、総務省の独立行政法人内部統制研究会及びそれに基づく総務省局長通知等に沿った仕組みでありまして、独立行政法人共通の考えによる制度と理解をしているところでございます。

以上でございます。

〔翁分科会長〕ご説明どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの説明につきまして、ご質問がありましたらお願いいたします。

それでは、野村委員、お願いいたします。

〔野村委員〕ご説明ありがとうございます。2点ございます。

1つは、前回の皆様からの指摘を踏まえて、説明責任を果たして透明性を担保していただきたいというお願いに対して、運用実績の情報開示については、様々ご検討いただいたと思います。

加えて、その透明性についてもう一つお願いしたいと思います。今日の資料にも出ておりますように、10大学が手を挙げてくれております。その選考に入っているということですが、この大学名も新聞でも報道されているところでありますので、どこの大学が選ばれるかというのが少し関心を集めているかと思います。

そこで、選ばれた大学を、どのような理由で選んだのかという選考理由をある程度開示する必要があると思います。もちろん選考プロセスの全てを開示できないことは承知しておりますが。例えば引用論文件数のような定量的なものでしたら、ここで線引きしましたという説明もつくのですが、ヒアリングも経て定性的な判断も入ってくると思います。そのときに、ご説明の資料にもあった基準に関する情報が開示されたときに、せっかく手を挙げた大学のブランドイメージが損なわれるような危険性もありますので、手挙げした大学が選ばれなかったのは、ここが不足していたというようなマイナス情報がメディアに出て、ブランドイメージを損なわれることがないように、十分に配慮していただきたいということが1点目です。

それから2点目として、現時点で運用実績がどうなっているのかということと、その考え方についてお伺いしたいと思います。3月末までの実績はこれからの公表かと思いますが、昨年の4月9月でマイナス3.67%というような情報もございます。そうすると各国の利上げがあったにせよ、かなり運用目標と乖離があるところなので、それをどう捉えていらっしゃるのか、お伺いたいと思います。

先ほどの説明で、資料5-3の6ページでのご説明で、このポートフォリオの組み方について、元本が財政投融資からの借入であることを踏まえてリスクを低めにコントロールしているというご説明があったと思います。もちろん、これはそのとおり、リスク低めにコントロールしていただきたいところですが、そうすると、運用目標が達成できるかという辺り、ここまでの実績も踏まえて、少しご説明いただければと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

それでは、土居委員、家森委員の順でお願いいたします。

〔土居委員〕ご説明どうもありがとうございました。

3線防衛については、ご説明いただいて、もちろん3線防衛をきちんと機能するように体制を運営していただきたいと思うのですが、独法通則法の制約もあるので、真の意味での3線防衛には、私はまだまだなっていない、弱いと思うわけですが、これ以上強化するというのも、独法通則法の制約があるので難しいということになりますと、やはり監事が独立性を持って、しっかり仕事ができるようにする環境を整えていただくことが、非常に重要なポイントになってくると思います。

それから、野村委員もご指摘されましたが、次の点は国際卓越研究大学の選定ということですが、当然ながら、運用益がそんなに上がらない段階で、たくさんの大学に助成することは無理だということは、大学界の共通認識になっているべきですが、そうではないというのは、一大学人として痛感しております。同じ大学人と話をすると全然理解ができてないということなので、これは文部科学省、それからJSTそれぞれにということですが、やはり運用益をきちんと確保できない段階で、そんな多くの大学にたくさんの金額の助成はできないということをしっかり伝えていただくことを通じて、選ばれなかったこと自体が別に何か大学ブランドが毀損されるような形にならないようにしていただくということもできるのではないか。お金に限りがあるので、残念ながら、これだけの大学にしか助成ができないのだという説明の仕方というのもある。つまり、お金がもっとあったら、もう少したくさんの大学に助成できたかもしれないが、それはできないということなので、別に能力がなかったから助成ができなかったわけではないという説明の仕方も私はあると思います。

そういう意味で申しますと、JSTの資料の12ページにあります資金調達についてということが、これは少なくとも公募に応募した大学に属している方は、みんなこれ、当然知っているということでないといけない。ですが、どうもそうでない。つまり、借りたお金もたくさん使って運用していて、それで、限られた運用益の中で助成をしてもらえるものなのだという、この資金スキームが、日本の大学人の常識に全然なってない。これが大問題でありまして、何か極端には10兆円もらえるのではないかと勘違いしている大学人すらいる。それはもうやっぱり文科省をはじめ、大学界にきちんと周知徹底していただかないといけない。だからこそ、3%とか3,000億とかという言葉が大学ファンドの議論の前にあったわけですが、そういう話になるし、しかも、私は、この分科会でも申し上げたように、3%前提ということで必ずしも固執する必要はないと思っていますから、リスクを低めにしながらでも、確実に償還できるような資金運用をしていただく、償還確実性が大事であるということを重んじていただいて、それを大学人にも周知徹底していただくことが大事かと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

それでは、家森委員、お願いいたします。

〔家森委員〕ありがとうございます。2つの質問をさせていただきます。

1つは、今日のこの開示というのは、年に1回の開示の分だと思うのですが、例えば年金基金とかということになれば四半期開示というのもあると思うので、どの程度の頻度で、その他の開示はされるのか、1年に1回だけなのかというのが1点目です。

それから2点目は、財務省の資料5-2の8ページで、目標は支出目標率3%と、長期物価上昇率の合計以上の運用収益率となっています。例えば、物価上昇率が3%だとすると6%を目標にしているということになると思うのですが、この資料5-3の9ページの収益率、資産全体の、今バツバツと書いている、ここが例えば6以上でなかったら、この目標は未達だと見たらよいのでしょうか。今後、開示されていく際に、支出目標率3%が絶対いいかどうかということはともかくとして、目標としている数字との関係では、この開示資料をどのように見たらいいのかというところです。この収益率はキャピタルゲインも含めた収益率だと、また違うかもしれませんので、その点も含めて、お願いいたします。

〔翁分科会長〕それでは、今の質問やコメントについて、ご回答いただければと思います。できるだけ簡潔にお願いいたします。

よろしくお願いいたします。

〔文部科学省奥野大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)〕まず、文部科学省からご説明申し上げます。

まず、国際卓越研究大学の選定のプロセスにつきましては、まさにご指摘のとおり、選定の途中ではございますが、結果が出た段階におきましては、当然選定の理由、採択の理由等についてはオープン、開示してまいりたいと思っております。また、この選定に当たりまして、大臣自身からも指示いただいておりまして、大学との間での丁寧なコミュニケーションを取る、通常のように書類をもらってマル・バツではなくて、丁寧なコミュニケーションを取っており、その中で各大学も相当ご努力されて申請いただいていますので、当然、申請の過程において、申請したところにはその理由を、さらに申請に関して採択されなかったところには、どういった理由で採択されなかったか、それが大学の積み重ねてきた様々な取組の先の、より建設的なメッセージになるようにしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

次に、目標の考え方につきましては、先ほど言いましたのは3%にプラス物価上昇率なので、現行の物価上昇率を使っても6ではなくて4%の半ばぐらいの数字になるかと存じます。また、お手元に文科省の説明資料で割愛いいたしましたが、指針の7ページ、5-2の7ページにございますように、支出目標率3%プラス物価上昇率以上の運用収益率といいますものが出せる資産構成割合の実現を、運用開始以降10年以内の可能な限り早い段階で基本ポートフォリオに沿ったという記述がその他でございます。したがって、この目標率の達成に関しては、基本ポートフォリオが完成した時点というのを1つの目安にしてございまして、また、現時点においては資金を入れた形で順次、ポートフォリオを構成している段階でございますので、まだ今回の運用状況は、この段階の目標値の達成を図るタイミングには至っていないという点が、こちら8ページの記載からそのようになっておるところでございます。

文科省からは以上です。

〔科学技術振興機構喜田運用業務担当理事/資金運用本部長〕喜田でございます。野村委員のご質問の2点目、運用実績とその考え方につきまして、ご説明します。

昨年9月末の実績につきましては、この分科会でも簡単にご報告させていただきました。おっしゃるとおりマイナス3%ということで、上期につきましては、相当のスピードで利上げが、特に欧米でございまして、そこで資産価格が株も債券も下落したという、なかなか近年見ない関係でございました。

そこで、株式のリスクを抑えていたというのはプラスに働いた一方、為替のリスクがかなり大きくなりましたので、そこをコントロールしたことで、リターンが少し減ったというところで、おおよそレファレンス・ポートフォリオと同じようなパフォーマンスになりました。

昨年末までは、その中でまた円高に急に振れるなどいろいろありましたが、本年1月以降、相当市場は落ち着いてきて、足元は相当株式が上がっているという状態です。

よって、申し上げたいのは昨年9月末からの相対比でいきますとパフォーマンスは改善しているという状況でございます。

それから、家森委員からございました「四半期開示はしないのか」ということにつきましては、足元、相当慎重に投資をさせていただいています。これは去年のボラティリティ、変動がかなり市場において高かったものですから、現金の割合も相当高めにセットし、まだ構築途上にございます。この辺り、熟成してまいりましたら、どこかで四半期開示というのは検討したいと思っていますが、現段階では、当面は年に1回というのを原則として想定してございます。

これが、私からのご説明になります。

〔科学技術振興機構柴田理事〕土居委員から3線防衛における監事の役割強化というコメントをいただきました。これに関しましては、この4月1日付で監事付の職員を新たに配置いたしまして、監事の監査機能の強化を図るということで対応を行ったところでございます。

以上でございます。

〔翁分科会長〕土居委員の2番目のご指摘について、文科省からコメントをいただければと思います。

〔文部科学省黒沼大学研究基盤整備課長〕大学研究基盤整備課の黒沼と申します。大学の人に何校選ばれるか、あるいは助成額が伝わっていないのではないかというご指摘の部分でございましたでしょうか。

そちらにつきましては、数校と、最終的に選定されるものの数は示しておりますが、併せて段階的に認定認可を行っていくということは基本方針でも示しておりますので、いきなり数校全部選ばれるわけではないというのは、少なくとも申請大学には伝わっているところでございます。また、助成額につきましては、外部資金獲得額とマッチングで助成をするというのも、こちらの算定式を示した上でやっておりまして、さらには、詳細なエクセル表でシミュレーションできるように、外部資金幾ら獲得できたら助成額幾らになるということが算定できるように、各大学には公募要領とともに、それもホームページに公開していますが、渡しているところでございます。

大学からむしろ、報道が引き続き、3,000億を6で割った500億とか、5で割った600億とか、そういう報道が出るのを文科省で何とかしてくれというような苦情が大学から来ているぐらいでございますので、我々も記者クラブ等とは綿密にコミュニケーションを図って、計算式等を紹介しているところでございます。引き続き努力には努めたいと思っております。

〔翁分科会長〕運用実績とリンクしているのだということも申請大学に理解いただくことが大事かと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

それでは、追加的にご質問ないようですので、これで終わりとしたいと思います。

本日は文科省、科学技術振興機構、内閣府の皆様、どうもありがとうございました。

(内閣府、文部科学省、科学技術振興機構退席)

〔翁分科会長〕それでは、続きまして、「諸外国における財政投融資類似制度」につきまして、本年3月にご出張いただきました土居委員、渡辺委員よりご報告をいただきます。よろしくお願いいたします。

〔土居委員〕お時間も限られておりますので、手短に出張報告をさせていただきたいと思います。

本年3月に、スウェーデンとノルウェーに、この分科会から渡辺委員とともに出張させていただきまして、誠にありがとうございました。大変勉強になりました。

縦長の資料に基づきまして、簡単にご報告させていただきたいと思います。

旅程的にはノルウェーから先に入ったのですが、ご報告はスウェーデンから先にご報告をさせていただきたいと思います。

スウェーデンにつきましては、スタートアップエコシステムの状況というところを金融面、それから、実際のイノベーションの現場を視察してまいりました。

まず、スウェーデンのリスクマネー供給体制ということで、政府系ファンドがいくつか現存して、それが機能しているということであります。100%政府出資ということになっておりまして、Almi Invest、Industrifonden、それからSaminvestという名前の政府系のファンドに今回訪問してきました。これらのファンドにつきましては、それぞれの組織形態や投資手法が異なっておりまして、基本的には、民間ファンドと共同で出資をするような形を取りつつ、市場補完的な役割を果たしているところであります。

それぞれにつきましては、事務局でご用意いただきました資料6に、より詳細がありますので、ご参照いただければと思います。

簡単に、各ファンドをご紹介いたしますと、Almi Investは2009年に設立された政府系のVCでありまして、リスクが高く民間資金の少ないアーリーステージの企業を対象に直接投資をしている。もちろんこれは、民間の出資も呼び込みながらの出資ということになっております。

それから、Industrifondenは財団形態を取ったもので、政府による拠出で1979年に設立されまして、役割が時代を経て少しずつ変わっているようでありますが、ライフサイクルの中で複数回にわたり投資が可能で、初期投資が比較的中くらいの投資先にも出資している。ただ、ここは財団という形を取っているので、民主主義的な統制を直接受けるというよりかは、既に資金は拠出済みという形になっていて返還する必要がない形で、エバーグリーンの構造を持っているということであります。

それから、Saminvestという政府系VCは2016年に設立されまして、これは、2ページにも少し書いてあるところでありますが、過去に設立された政府系ファンドで、必ずしもパフォーマンスがよくなかったところの、引き継いだその部分も含みながらも、新しく民間VCを経由して企業に間接投資をするという形で業務を営んでいるところであります。

2ページに移りまして、スウェーデンも過去には実際に政府系ファンドがあったが、パフォーマンスがよくなかったので統廃合する形になったところが2つほどありまして、そこは今はSaminvestという組織の傘下に入っているということであります。

政府系ファンドの独立性として、2ページにありますが、投資判断はファンドがそれぞれ独立に行っていて、持ち込まれた案件を精査しているということであります。

私の参りましたところでの印象を申しますと、スウェーデンは1,000万人の人口ということで、日本よりかは人口規模が小さいということもあって、比較的官と民の距離が近いということがあって、リボルビングドアとまでは言いませんが、結構同じようなメンタリティーで、政府系ファンドでもファンドマネージをしているような印象があるというのが私の印象でございまして、そういう意味では、官だから、政府だから特殊な判断基準を持ってという感じではなくて、実際、民間からもファンドの職員を登用していたりする形になっているところが1つ特徴的かと思います。

それぞれの3つのファンドは、それぞれに業務を営んでいるという関係で何か共通したバックオフィスを持つとか、そういうような話ということは必ずしも検討されてはいないということであります。

3ページに移りまして、今度は出資先の企業とかがどのような形で出資を受けて、展開しているかというところは、スウェーデン南部のルンドに伺いまして、それを実地に見てまいりました。

スウェーデン南部はデンマーク東部と一体的に、メディコンバレーという形でその地域が呼ばれていまして、ライフサイエンスクラスターを形成しているということであります。企業、大学、研究機関、それからインキュベーション施設が集積していて、そこにVCも出資していたりするという形でありまして、スウェーデンはイノベーションの国であると、スウェーデンの方が実際におっしゃっていて、どうしてかなと思ったら、ノーベルはスウェーデン人なので、ノーベル賞のノーベルを見ればスウェーデンがいかにイノベーティブな国かということが一言で分かるみたいなニュアンスのご発言もあって、イノベーションは非常に今もなお活発であるというところは、現場に参りまして、理解できたと思います。

それから、必ずしもスウェーデンだけで伸びているわけではなくて、もちろん隣国のデンマーク、ノルウェーもありますし、さらには欧州のいろいろな、大学とか、地域から、いろいろな方がメディコンバレーに来られて、実際、そこで仕事をされているような姿も拝見できました。

それから、ノルウェーに移りたいと思います。

ノルウェーは、特にイノベーションとは直接は関係ありませんが、ノルウェー政府が有しております2つの基金につきまして、調査をしてまいりました。

しばしばソブリン・ウェルス・ファンドと呼ばれるもののうちの1つだったりするわけですが、意外と日本で伝わっていることとは違う実態も調査で分かってきたところであります。2つあると言っておりますのは、政府年金基金グローバルと、政府年金基金ノルウェーという2つの組織がありまして、GPFGとGPFNと略称で呼んでおります。これらの基金はもともとの原資が異なっておりまして、完全にそれら別々の原資になっていて、GPFGは、ノルウェー沿海で取れる石油の収入を基にした、石油基金を原資としているところであります。それから、もう一つ、GPFNは年金積立金を原資にしている。完全に国内の公的年金を原資としているというところで、元手がそもそも根本的に違う。これはノルウェーの独自の割り切りだと思いますが、石油収入を原資としている部分については、これは外国で運用するということに割り切っていて、公的年金積立金は国内、国内といっても北欧諸国も入りますが、で運用するという地理的な割り切りをはっきりしておられます。

そして、GPFGはしばしばソブリン・ウェルス・ファンドとして世界的にも有名だったりするわけですが、実際、その運用収益を着々と上げて基金残高を増やしておられます。特に何かリスキーな資産にたくさん投資するとか、運用益を相当たくさん上げるべくノルマが課されているとかというほど劇的なところはなくて、比較的穏当な水準での収益率をキープしておられるというような印象を持ちました。

特に石油収入があるうちに、しっかり蓄積をして、やがて収入がなくなったとしても、運用益を含む残高をしっかり国民に還元することで、石油基金の恩恵を国民にもたらすようにということが背景にあるのだろうと思います。

そういう観点もありまして、最近ではESGの視点から、リスクに基づく売却を、特に倫理的に好ましくないと思われる企業に関しては、投資対象から外すというようなことも、実際に、ポートフォリオの中では工夫をしておられます。

そして最後、4ページですが、政府年金基金ノルウェーについては、これは国内及び北欧諸国に限定した形で投資を行っているということでありまして、ノルウェーは財政黒字国でありまして、大量にノルウェー国債があるということで、国債を買うことで運用しているということではむしろなくて、どちらかというと国内の民間企業とかにも運用している、そういうすみ分けをしているところが特徴的で、このすみ分けというようなところが必ずしも日本で、ソブリン・ウェルス・ファンドとして名高いノルウェーの政府基金が、実態がそういうことになっているとは正しく伝わってなかったのかなと思ったものですから、大変勉強になりました。

私からは以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

渡辺委員から、お願いいたします。

〔渡辺委員〕土居さんから詳しく説明ありました。私は感想めいたことを一言だけ申し上げさせていただきます。

まず、行かせていただきまして、大変勉強になりました。ありがとうございました。

スウェーデンですが、私は行く前は、スウェーデンですので、きっと政府も関与した上手な出資の仕組みがきっちり出来上がっているのではないかと期待しておったのですが、しかし、それはそれほどのことではなく、やっぱりスウェーデンといえども、いろいろな形で苦労しているんだなということを実感しました。

土居さんの話もありましたが、2015年ですか、それまでの仕組みを一遍総ざらいで直すということをしたようでありまして、実際そのタイミングでレビューみたいなものが、分厚い文書が発表されていました。それを踏まえて、大きな組織替えをしてきたということなわけです。15年ですので、まだ七、八年しかたっていませんので、結果が出るところまではいってないというのが彼らの言いぶりですので、その15年の見直しを踏まえて、一応やるべきことはやってきた、その結果を待っているというのが現状なのかなと理解しました。

その15年の前の、うまくいかなかったものの特徴は明らかなようでありまして、1つは、ダイレクトな投資だと。ダイレクトというのは、ファンド・オブ・ファンズみたいな形ではなくて、政府がかなり直接的に関与するタイプの投資だということが1つの特徴としてありました。

それからもう一つの特徴は、民間とはあまり関係なく、政府が突っ走ると言うと変ですが、主導を取る形で出資を行うという形だったということで、この2つのものをひっくり返すというのが、どうも2015年の大きな方針だった。つまり、直接的ではなくて、間接的にしましょう、ファンド・オブ・ファンズのような形にしましょうと。

それから政府だけがのめり込むのではまずいので、むしろどちらかといえば民間がしっかりやっているところで、そこに政府が補完するようなことに徹していこうというのが、もう一つの基軸として出てきているのかなと。これは何度も何度も、どこに行っても同じことを言っていましたので、きっと、ある種の原理として、2015年の反省を踏まえて語られていることなのだろうなと思います。ですので、ある意味で、いわゆる民間の補完というものがそういう形でプリンシプルとして確立されつつあるのかなと私は理解いたしました。

それらについて、面白いと言うと語弊がありますが、大変興味深かったのは、実は出資先の企業にも行くことができまして、たまたまそこに、そこの企業のCMOの方がいらっしゃったので、様々なことをお聞きすることができました。そこの会社はITの絡みの会社で、欧米、アメリカとかでも展開している。そこそこいけているいい会社だと私には見えました。そのCMOの方に私が聞きたかったのは、こういう政府系の出資をそこは受けているわけですが、受けることのメリットは当然あるから受けているのだと理解しましたので、それはあるのかと聞いたところ、ないというのです。その方は、実はいろいろな事情があって、民間の資金では足りなくなってしまった。それで政府のところにも手を延ばして、そこからも出資を受けているのだという事情を説明した上で、なおかつ一般論として言えば、やはり政府はそういうところに出てくるべきではないということを、その人はしっかりおっしゃっていて、よく金をもらっていてこれだけのことが言えるなと思いましたが、僕らの立場が分かってなかったのかもしれませんが、そういう、多分本音だと思いますが、おっしゃっていました。彼の言葉が全てだとは全然思いませんが、スウェーデンといえどもそういうふうに、いろいろなタイプの人がいるんだなということで、決してスウェーデンだからがっちりと、政府主導の出資体制ができているわけではないのだなということを実感しました。

ノルウェーについては、この分科会とは議論が離れるかもしれませんが、私が非常に驚いたのは、あるいは感心したのは財政規律であります。原油が取れるわけですので、だからこれも、私の本当に拙い事前の想像ですが、がんがん取れるわけですので、それをどんどん予算の中に組み入れられていって、税金なんか要らないみたいな形になっているのかなと想像していたわけですが、原油から得られるものはファンドとしてしっかり管理されていて、予算は予算で別に当然あるわけですので、そうするとファンドから予算に、多分、だから、予算のほうから、今年は足らないからこれくらい欲しいとかということは言うのでしょうが、そういうことがあって、それでいろいろなプロセスを踏まえた上で、しかるべき金額が出される、予算について回されるという、そこのファイアウオールといいますか、仕切りがしっかりできている。ですので、実は土居さんたちと言っていたときにも、増税の話もしていましたよね。結構、漁業系みたいなところですが、ああいうものの増税をするとかという話をしているので、最初は、何でこんなに原油の金があるのに、しわいことを言っているのだと思いましたが、それはやっぱりファイアウオールがしっかりしているので、そういうことになっているのだと思います。ですので、規律の高さというのはすばらしいなと思いました。

それから、ファンドのほうとして、原油のお金を毎年毎年蓄えるわけですが、そのときの原理というのは、そのお金は現役世代が使うのではないのだと。将来の世代が使うのだと。それを今の世代が預かっているにすぎないのだと。将来の世代が使うときには、ノルウェーですから、全てのものを国内で賄うことはできないので、多くのものを海外から買わなければいけないのだと。そのために、彼ら将来世代が買うときに、海外の資産があるべきだろうから、それを今蓄えているのだと、ここが原理なわけです。ですので、決して、今日、土居さんの話もありましたが、決して国内の資産に投資するということはしていないわけでありまして、全て海外に回しているということであるわけです。

もちろん国内に投資をしてしまうと、どこかの国のように、国内のマーケットがゆがむということは出てきますので、それはいけないということもあるかもしれませんが、もっと大きなロジックは、将来は、子供たちの世代は輸入しなければいけない。その原資をつくらなければいけない。だから海外への資産だと、投資なのだと、この原理であります。

このことというのはやっぱり、多分、原油を取り始めたところでしっかりと議論をして、社会のコンセンサスをつくったのだと思いますので、ここの財政規律というのはすばらしいなと、本当に感心しました。

それから、ファンドの運用についてもびっくりしたことは、これだけの規模のファンドですので、もう好き勝手なことができるのだろうと私は実は想像していました。つまり、ほかの海外のソブリンと比べても、圧倒的に規模は大きいですし、民間のものに比べれば全然規模が違うわけですので、好き放題ができて、物すごいリターンが得られるのではないかと思っておりましたが、そこも大きな原則がありまして、1つは、コンペティティブでなければいけない。コンペティティブでなければいけないというのは、海外の、例えばアメリカのファンドがやっている程度のリターンはなければいけない。だけど、それ以上に、がめつくリターンを得る必要はない。

それからもう一つは、それぞれの資産の運用について、リーダーになってはいけない、あるいはドミナントなプレーヤーとして、勝手に振る舞ってはいけない、これをもう1個の指針として持っているようであります。つまりコンペティティブだけれども、リーダーではない、ドミナントでもない。この2つを満たそうということが、運用の際の大きな指針になっているようであります。それは、私なりに解釈すると、海外の様々な民間のファンドとかがつくってきた運用のルールというものがその中にあるわけでしょうから、それを幾ら金があるからといって乱してはいけないのだ、この自覚が非常に強くあるので、だから、そのルールを侵さない範囲で、コンペティティブにはしますが、しかし、それを侵さないようにするためには、例えばどこかに貸すとしても、リーダーは別な人がやる。民間の人、どこか民間の委員会とかがやって、自分たちはセカンドに入っていくとか、そういうようなことを、実務的なところで徹底しているということだろうと理解いたしました。ここもすばらしい発想だと思います。

スウェーデンのほうでもありましたが、民間の活動、市場活動がまず第1で、それを補完するのだと、この発想がノルウェーの運用サイドでもきちんとあるのだなということを感じました。

以上でございます。

〔翁分科会長〕大変貴重な出張報告ありがとうございました。

時間の都合上、本件に関するご質問につきまして、もしありましたら後ほど事務局にお寄せいただき、対応することとしたいと思っております。この場で、もし、土居委員、渡辺委員に直接確認しておきたいということがございましたらいただきますが、いかがですか。

では。

〔山内委員〕よろしいですか。ありがとうございます。

今回、先生方にご報告いただいて、非常に参考になりました。理財局の皆様ご用意いただいた資料の4ページに、現在のスウェーデンにおけるスタートアップの資金供給体制の図がありまして、各ファンドの構造などが違うことから、事務を共有するなどコスト共通化の取組は検討されたことがないとのことです。日本の官民ファンドの場合、ミドルバックコストが重い。ガバナンスをしっかりやる、コンプライアンスをきちんと遵守する体制を考えると、多少ミドルバックが重くなるのは仕方ない部分がありつつも、業績に影響を与えているところは、否定はできないのかなと。

今回の先生方にご報告いただいた内容の中で、例えば、Saminvestの下にある2社は統合された形ということになっていまして、恐らくここに関してのミドルバックコストというのは、削減されている部分というのは、可能性としてはあるのではないかと思ったのですが、もしこちらについても、今後、日本における官民ファンドのコストマネジメントの観点から、何か示唆がある部分があればご教示いただければと思っております。

以上でございます。

〔翁分科会長〕いかがですか、もしありましたらよろしくお願いします。

〔原山財政投融資企画官〕今回のヒアリングに行った3つの政府系ファンドでは、いずれもコスト共通化の取組は行っていないといった答えが返ってきました。理由としては、いろいろあるようですが、例えば秘密情報の共有ができないといった点だとか、あるいは、存続期間が違うので、なかなか業務の調整ができないといった点だったり、あるいは調整コストが違う組織ということで大きくなるといった話だったり、あるいは、バックオフィスの人数も小さいところもあったりということで、なかなかそういう点があって難しいといった点のお話は、いずれの3つからもありました。

〔山内委員〕ありがとうございました。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

また、何か追加的にございましたらよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

それでは、予定の時間が少し過ぎてしまいましたが、本日の議論はこれまでとしたいと思います。議論いただいた内容のほか、もし、今まで全てのことについて追加的なご意見がありましたら、事務局に寄せていただければと思います。

議事内容につきましては、この後、事務局より記者レクを行います。議事録につきましては、皆様のご了解をいただいた後、財務省のホームページに掲載いたします。

次回の開催日程は、後日事務局よりご連絡いたします。

本日はご多用のところ、ご参集いただき、ご審議いただきまして、どうもありがとうございました。

15時57分閉会