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財政制度等審議会財政投融資分科会
議事録

令和4年10月31日
財政制度等審議会


財政制度等審議会財政投融資分科会議事次第

令和4年10月31日(月)13:30~15:57
財務省国際会議室(本庁舎4階)

  • 1.開会

  • 2.総合経済対策における財政投融資の活用

    質疑・応答

  • 3.令和5年度財政投融資計画の編成上の論点

    地方公共団体

    質疑・応答

  • 4.大学ファンドの状況報告

    質疑・応答

  • 5.

配付資料

総合経済対策における財政投融資の活用
資料1

説明資料地方公共団体

資料2-1

説明資料大学ファンド(財務省資料)

資料2-2

説明資料大学ファンド(文部科学省資料)

資料2-3

説明資料大学ファンド
(国立研究開発法人科学技術振興機構資料)

参考資料

川村委員提出資料

出席者

分科会長

百合

秋野財務副大臣

齋藤理財局長

彦谷理財局次長

柴田総務課長

原田財政投融資総括課長

奥村資金企画室長

原山財政投融資企画官

丸山管理課長

佐野計画官

大江計画官

土居丈朗

野村浩子

渡部賢一

臨時委員

冨田俊基

中里

林田晃雄

専門委員

川村雄介

工藤禎子

家森信善


13時30分開会

〔翁分科会長〕それでは、予定の時間となりましたので、ただいまから財政制度等審議会財政投融資分科会を開会いたします。

本日は、総合経済対策における財政投融資の活用、令和5年度財政投融資計画の編成上の論点をご審議いただきます。

また、前回に引き続きまして、秋野財務副大臣にもご出席いただいております。

なお、時間が限られておりますので、ご質問、ご意見などは、できるだけ簡潔にお願いいたします。また、会場にいらっしゃる皆様方は、ご発言の際、マイクにできるだけ近づいていただいた上で、差し支えなければマスクを外してご発言いただければと思います。

それでは、議事に沿って、「総合経済対策における財政投融資の活用」について、原田財政投融資総括課長より説明をお願いいたします。

〔原田財政投融資総括課長〕原田でございます。よろしくお願いいたします。

先週の金曜日、10月28日に閣議決定されました「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」に盛り込まれた財政投融資に関連する施策をご説明いたします。一枚紙をご覧ください。

資料の上段でございますが、財投を活用した施策の事業規模の合計は2兆2,688億円でございますが、その中、財投支出の合計は1兆4,210億円となってございました。

対策の柱立てに沿って内訳をご説明いたします。

まず、物価高騰・賃上げへの取組といたしまして、燃料輸入への金融支援を行うため、JBICにおきまして、天然ガスをはじめ燃料価格が高騰する中、日本の電力・ガス会社等が燃料を輸入する際、必要な資金を供給することとし、財政融資2,300億円を活用することとしてございます。

また、エネルギー事業者への金融支援として、DBJにおきまして、燃料価格高騰に伴い厳しい状況にある電力・ガス会社等の事業者に対しまして、運転資金をはじめ必要な資金を供給するということで、財政融資2,000億円を活用することとしてございます。

次に、円安を生かした地域の「稼ぐ力」の回復・強化でございます。農産物等の輸出に取り組む事業者への金融支援を行うため、日本政策金融公庫におきまして、自己資金を活用いたしまして、円安を生かした農林水産物・食品の輸出拡大に向けて、輸出に取り組む農林漁業者等を対象とした融資制度の貸付枠を拡充することにしてございます。

次に、「新しい資本主義」の加速につきまして、まず、人への投資でございますけれども、DBJにおきまして、企業による従業員への投資を促進するため、人的資本に関する非財務情報に着目した融資制度を拡充し、企業の人的資本に対する取組を促す仕組みを導入することとしてございます。

また、スタートアップへの投資を強化するために、既存のDBJイノベーション・ライフサイエンスファンドをスタートアップ・イノベーションファンドに改称いたしまして、幅広くスタートアップを特定投資業務の対象とすべく、要件確認を簡素化することとしてございます。

それから、スタートアップへの支援につきましては、DBJのほか、日本政策金融公庫、それから沖縄公庫におきましても、高い成長性が見込めるスタートアップを対象とする融資制度を創設するなど、支援を強化することとしてございます。

次に、GX・DXの推進といたしまして、DBJにおきましてGXに資するインフラ整備を推進するため、脱炭素やトランジションに向けた取組、それから再生可能エネルギーの拡大に向けた送配電網の整備等に対し資金を供給することといたしまして、財政融資2,000億円を活用することとしてございます。

また、省エネ住宅の普及促進に向けまして、住宅金融支援機構が発行するグリーンボンドに対し政府保証を付与するということによりまして、省エネ性能に優れた住宅の普及を促進することとし、政府保証200億円を活用することとしてございます。

さらに、日本企業の海外展開への金融支援を行うため、JBICにおいてグリーンやデジタルなど日本企業が強みを有する分野の海外展開や、日本企業のサプライチェーン強靱化を金融面で支援するということで、財政融資4,700億円を活用することとしております。

最後に経済安全保障でございますけれども、JICAにおきまして、ウクライナ危機における食糧価格など、物価高騰や先進国の利上げによる通貨安などにより、不確実性が高まっている開発途上国に対する財政支援等を行うことといたしまして、財政融資5,010億円を活用することとしてございます。

JBICにおきましては、先ほどご説明したとおり、日本企業の海外展開への金融支援を通じて、国民の安全・安心の確保に取り組んでいくこととしてございます。

なお、総合経済対策の中では、令和4年度第二次補正予算における追加額は1.0兆円とされてございますけれども、JBICにおきましては、本日ご説明をいたしました経済対策における財政投融資の活用の項目のほかに、政府保証の4,000億円の減が行われるということで、全体としてネットで1兆210億円となるものでございます。

私からは以上でございます。

〔翁分科会長〕ご説明ありがとうございました。それでは、ここまでのご説明を踏まえて、委員の皆様から本議題に関してご意見などございましたら、お願いいたします。オンラインでご出席の委員の皆様については、ご発言の際、チャット欄にその旨を書き込んでください。チャットがうまくいかない場合は、挙手ボタンでお示しいただければと思います。チャット欄等を確認しながら指名いたしますので、そのままお待ちください。ご発言の際に資料を引用される場合は、資料番号と該当ページをおっしゃってください。

それではまず、渡部委員、野村委員、川村委員、林田委員の順でお願いいたします。

〔渡部委員〕ありがとうございます。

簡潔に質問します。ご説明のあった財投の活用の中で、1番の項目も燃料価格高騰等々で項を増やすと。あるいは3番の一番下ですか、日本企業の海外展開の金融支援、これもある意味では、為替の影響がかなり大きいと思われます。それから4番のJICAさん、これも大幅な増です。インフラ輸出、既に決まっていることを含めた為替の影響がかなり大きいと想定します。一方で、2番で円安を生かしたというのがあるんですけれども、これらの計画それぞれの主体なのか、財務省さんで一律決めていらっしゃるのか、政府で決めていらっしゃるのか、為替、単純に例えばドル・円も、レートは幾らを想定、今現在幾らのレート予算で、現在、来年度末まで含めて、どういう為替の想定で計算されているのか、教えていただきたい。平たく申し上げれば、さらなる円安も求めていらっしゃるのか、どうされようとしているのかというのも教えていただきたい。

以上でございます。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。それでは、野村委員お願いいたします。

〔野村委員〕全体的に若干抽象的なコメントなのですが、今回の総合経済対策を拝見しますと、様々なレベル感のものが混在しているというか、並列されていると感じておりまして、その中で、やはり財政投融資の活用をしていく上では見極めが必要であろうと。ざっくり言うと、例えば対症療法的なものか、原因療法というか構造的な問題を解決するものなのかという仕分もできるかと思います。対症療法が全て悪いかというと、もちろんそういうことでもなくて、国民の命を守るとか、長期的には経済安全保障につながるというような緊急対策的なものはもちろん必要だと思います。ただ、ややもすると、言葉が適切か分かりませんが、耳触りはいいけれども一過性の効果にとどまるようなものは、注意深く見極めていって、そういうものに財投を使うのはどうかと思います。

それから、もう一つの構造的な問題を解決することにつながるものはもちろん必要だと思いますが、そこで2つ申し上げたいと思います。1つは、形だけ、お金だけの支援に終わらないような仕組みづくりが必要だろうと思います。例えば、この財投の活用の中でいうと、人への投資というところで非財務情報に着目した融資制度というのがございます。これはもちろんいい取組だと思いますが、それだけで人的資本に対する取組を促す仕組みになるのかどうか、まだ不足ではないかなと思いますので、例えばですけど、全国の労働局のカウンセリング的ヒアリングと組み合わせての非財務情報を基にした融資にするとか、そういうふうに中長期的な取組を促すような、もう一段踏み込んだ仕組みづくりが必要ではないかなと、一例を挙げると思います。

それから2つ目は、あるべきというか、目指す社会像を考えると、見過ごされている根本的な問題はないかということも、いま一つ見ていく必要があるかと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。それでは、川村委員お願いします。

〔川村委員〕どうもありがとうございます。

質問と、ちょっとコメントをさせていただきたいと思うんですが、質問の1問は、今、野村委員からもございました、人的資本に関する非財務情報への融資支援ということで、これは具体的にどのようなものがあるのかなというのを教えていただければと思います。

また、主語が人的資本に関する非財務情報ということになって、一方で企業会計審議会でもこの問題の議論が始まったわけですけれども、これは基本、上場会社を相手にしている話なのかということです。その上場会社の場合に一番コストがかかるのは、多分このディスクロージャー要員とか、ディスクロージャーの作業のほうに膨大な時間と手間がかかって、実は、こういう言い方はちょっと語弊がありますが、本当にこの人的資本を拡充させるための具体的な施策のほうにお金や時間が回らずに、どっちかというとディスクロージャー等に伴う作業のほうに行っちゃうみたいなリスクも十分あると思うんです。なので、ぜひ実のあるお金の使い方をしていただきたいし、もし仮にこれが上場企業だけが対象だったら、むしろ非上場会社や地方の企業のほうがより支援が必要かもしれないので、その辺はどうかということについて教えていただきたいと思います。

それからもう一つの質問は、一番下の日本企業の海外展開への金融支援の、これまた中身なのでありますが、私が認識するところ、今、日本の企業、特に製造業、消費サービスもそうですけど、特に製造業の場合は、ご案内のような様々な世界の地政学的リスクの中で、サプライチェーンの再展開をどうするか。あるいはもっと具体的に言えば、生産拠点を移さなきゃいけないんじゃないか。それはこの円安ということも相まって、国内回帰とともに、端的に言えば、チャイナプラス2か3かという議論がもう切実なものとして始まっているわけです。ここでいっている日本企業の海外展開という言葉の意味なんですが、そのような、多分一番重要な問題は、新たな展開というよりも、サプライチェーンや生産拠点の見直し・再配置ということに多分一番お金がかかると思うので、そういう部分も含まっているのかという部分のご質問です。

あとコメントは、このスタートアップとGX・DXの推進、これはいずれもごもっともなんですけど、ぜひご留意いただきたいのは、スタートアップというのはそう簡単ではないですよと。これは前から言われて、もうスタートアップを何とかしなきゃいけない、早く日本版の大きな企業をつくっていかなきゃいけないともう20年言われているわけで、もちろん、支援の手を緩めてはいけないけども、ついつい何となく、名称が新しい片仮名になったから出そうみたいなことは絶対ないようにしていただきたいなと。これは十分精査していただきたい。

同じことは、グリーン・トランスフォーメーションについても言えて、これもどちらかというとEU主導で、結構日本があおられているという部分も私はあると思います。ESG投資の最近の見直しなんかの状況とかということも考えたときに、これまた実のある、真にGXに、DXももちろんそうですけど、GXに実のあるものにしていただきたいなという意見です。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。それでは、林田委員お願いいたします。

〔林田委員〕ご説明ありがとうございました。この経済対策に伴う補正で、まず私のほうから感想とお願いみたいなことなんですが、まず全体として、全体の規模から考えると、財投の規模は抑え目なのかなと思いました。財投としてはいいという気もしますが、むしろ、かつては一般会計を抑えるために、財投頼みにしていた部分があり、むしろ一般会計を支出することへの抵抗感が薄れている表れではないかという気もして、その辺りは、財投分科会で議論することではありませんが、若干の危惧を持っています。

それから、そもそも論で、財務省の方には釈迦に説法なのですが、補正予算を財務省のホームページで定義を見ますと、予算作成後の事情の変更によって、その予算に不足が生じた場合、また、予算の内容を変える必要が生じた場合に、出来上がった予算を変更する予算ということです。この事情の変更というのはいろいろ解釈の余地があります。この総合経済対策をつくったというのも事情の変更の一部なのかもしれませんけれども、次の当初予算まで待つことができない、補正でやるということは、緊急に必要な予算を計上するということが補正予算の本来の趣旨だろうと思います。

この補正予算の項目を眺めさせていただくと、確かにグローバル・インフレや急激な円安は今年度予算編成時には想定されていなかったものでありまして、緊急に対策を取るべき政策課題と言えます。一方、グリーンあるいはデジタルの海外展開、あるいはGXに資するものといったあたりは、以前からこうした課題は認識されておりまして、総合対策にGXやDXが盛り込まれたから対応するということだとは思いますが、対策を出すことになったから後知恵を絞って使い道を探し出すというのは、補正予算本来の趣旨から見て、やや本末転倒ではないかと感じています。

それから、補正予算は、得てしてその規模を確保することが目的化して大盤振る舞いになりやすい、これは私の記者の取材の経験でもそう感じていました。財投当局においては、真に必要な政策にしっかり資金の手当てをするという、ここは大事ですけれども、一方で、節度と規律のある審査に努めていただきたいとお願いします。

以上です。

〔翁分科会長〕補正予算についての大変貴重なご提言だと私も思います。ありがとうございます。

それでは、工藤委員お願いいたします。

〔工藤委員〕ありがとうございます。ご説明をいただきましてありがとうございます。増額を予定する理由として挙げられているものは、エネルギー価格高騰対策など、カーボン・ニュートラル実用化の推進といった、いずれも重要性の高いものばかりでありまして、政策金融機関が担うべき役割も踏まえれば、その点に違和感はありません。ただ、前におっしゃっておられる方がいらっしゃいましたけれども、中には一過性の政策効果のものが相応に含まれており、国民の生活のセーフティー・ネットの役割も必要と思いますものの、財政の健全性を強く求めなければいけない中で、我々日本のトランスフォーメーションや成長に資するもの、また、レジリエンス強化に資するもの、そういった中長期の効果も生むものにもっと使えないのかなという気はいたしました。

そう申し上げた上で、これも先ほどおっしゃっておられましたけれども、補正は、年度途中でスピード感がある対応が必要となった政策目的のために措置される性質の予算であることに加えて、当初予算と比べ執行期間も限られていることを考えますと、現時点において具体的なニーズが見通せるものであることが措置の前提になっていると考えられます。そのため、現時点において実際に想定されている案件を具体的にご教示いただくということが、今回の補正に関する議論をより深めることができると思っておりまして、この点、差し支えのない範囲でお示しいただけますと幸いです。もちろん、ある程度この内容を読んだだけで明らかなものもあるわけですけれども、例えば農産物の輸出に取り組む事業者への金融支援でありますとか、日本企業の海外展開への金融支援など、今どれぐらいパイプラインがあるとか、そういったことを分かる範囲で教えていただければと思います。

以上です。ありがとうございました。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

冨田委員お願いいたします。

〔冨田委員〕ありがとうございます。

財投は出融資なので、中長期の効果の発現を狙った対策は今回も打たれねばならないという目で見ますと、私は、ここに挙がっております項目はおおむねそれを満たしていると思います。

1点質問させていただきたいのは、4番の中に、開発途上国・地域への緊急財政支援というのがございます。必要性は分かるのですが、緊急で財政支援する、融資を行うわけですから、その償還確実性がどのように担保されるか。これは一般会計の予算との関係で、この点だけご説明いただきたいと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕どうもありがとうございます。それでは、ご回答をお願いできますか。

〔原田財政投融資総括課長〕ありがとうございます。委員の皆様方には、特にこの補正に関連いたしまして、各項目、短期のもの、長期のもの、それから補正事由に関連する話、それから日本の中長期の姿、こういったことに関連するご質問をまずいただいたと認識してございます。一つ一つお答えする前に、まず申し上げますと、この4つの項目、物価高騰、それから円安を生かした稼ぐ力の回復・強化、この辺りというのは、ご指摘のとおり、今現在、為替の状況が非常に大きく変わっていることから、当初計画の段階では見通せない、その状況を克服する、または生かすという観点で補正がなされている項目ということになります。

それから一方、この新しい資本主義でありますとか経済安全保障は、確かに、こういった目的というのは、当初計画を立てた段階からあるものではありますけれども、さらにこれを喫緊の課題として今現在取り組めるものはないかということの項目でございます。後者の項目につきましてはこの機会に我々、当初の段階ではできないと思われたものでもできるものがあるのではないかということを、まずは各省が知恵を絞り、それから我々もその中で緊急性、優先順位が高いと言えるものを精査してつけた項目でございます。そうしたものであります。

順番に参りますと、渡部委員の言われていたレートのことでございます。当初計画、それから補正におきましても、どういうレートで勘案しているかというのももちろんあるわけでございますけども、今非公表ということでございますので、この額というのは申し上げ難いということでございますが、相当な差が出ています。それで、ブレーキとアクセルとどっちを踏んでいるんだということでありますが、それはそれぞれ、円安ということで、為替で燃料のような問題は、今緊急にこれは手に入れなければ、我が国国民の影響が大きいでございましょうということに対応するものでありますし、農業のほうは、この円安を生かしたことに対応するということでございますので、それは両面それぞれの、今この当初計画とは違う状況を生かして措置していくという性質のものでございます。

それから、野村委員のお話でございますけれども、これは前に新平時というような話もございましたけれども、中長期的なものということでございます。その中でも、ご指摘いただいたような政投銀の取組というのは、我々もなかなか面白い取組だなと思っておりまして、ただ、政投銀自体は、実は、大分前からこうした認証制度というのはやってございまして、その働き方がいい会社というのを新しい今回の経済対策の目で見直して、さらにリニューしてやっていこうということでございます。ご指摘いただいたような全国の労働局等の情報をどのように生かしていくかというのは、非常にいい観点だと思いますので、我々もどのようなことができるかということを機関につないでいきたいと思うところでございます。

それから、川村委員、補足があれば計画官からご説明いたしますけれども、また政投銀の話だったと思います。申し上げたとおり、実は10年ぐらい前から政投銀は会社の評価で健康経営格付という認証制度をやっておりまして、その対象には上場会社と非上場と両方含まれているところでございます。ですから、上場企業に係る話だけではないと。それから、開示の話も、実は女性の管理比率のような話は有価証券報告書に出せといった検討が進んでございます。ですので、当然大変で、これは企業、上場会社の負担は増えているわけですけども、その中でも、こうした項目がそれでも入ってくるほど、我々としても重要視しているということで、こういったことが背中を押すことになればいいのではないかなと思っているところでございます。

それから海外展開のところでございますけれども、もともとご説明を申し上げたとおり、サプライチェーンの強靱化ということは、まさにサプライチェーンの再配置も含めて、そういうものは大いに含まれているものとして考えていただければと思います。

それから林田委員のご質問でございますけども、補正は最初に申し上げたとおりでございます。規模は、我々としてもそれなりに必要なものを見たわけですから、もちろんこれは規模ありきではなくて、先ほど申したとおり、今やるべきものというのを我々としても相当精査して措置したところでございまして、GX・DXにつきましても、今直ちにやるべきものをやったということでございます。ですから、当初計画の段階で思わなかった、新たに今現在こういった観点からできるものを精査してつけたものだということでございます。

それから、工藤委員、海外展開、農産物がどういうものかということでございました。では、農産物と、それから冨田先生からいただいたJICAのお話につきましては、担当の計画官から補足させていただきます。

〔佐野計画官〕計画官の佐野でございます。

まず、工藤先生からご質問いただきました農産物の海外展開はどのような話が具体的にあるのかということですけれど、こちらのほうは、輸出促進法の改正に合わせて10月から公庫のほうで取扱いが始まった制度でございますが、今、具体的な話をいろいろな事業者の方から承っているところです。具体的な内容のイメージといたしましては、輸出にチャレンジしていこうという事業者が輸出の拡大を図るために、海外の基準に合わせるために必要な製造施設であるとか流通施設、また、海外子会社への出資など、輸出拡大に必要な幅広い資金需要に対応することとしています。

また、日本企業の海外展開の支援のほうでございますが、こちらも例えば経済安全保障関係でありますと、レアメタル等の資源の権益の確保であったり、重要なインフラ関係のM&A、買収案件であるとか、あとはGXに資するような海外での再生エネルギー事業等が具体的にJBICのほうに相談が来ていると伺っております。

また、冨田先生からご質問のありましたJICA事業の償還確実性についてでございます。もちろん、事業の採択におきましては、JICAのほうでも、まずしっかりウクライナ情勢や途上国不安の影響を考慮した上でキャッシュフロー見込みを立てておりまして、将来の各年度貸付回収金が負債の償還を上回るといった全体の財務状況を確認しておりますとともに、現在のJICAの財務状況を見てみますと、一般会計出資金や利益剰余金で構成される自己資本比率が70%以上と、高い健全性を有しておりますので、直ちに償還確実性において問題が生じるような状況ではないかと考えております。

以上です。

〔翁分科会長〕ご説明ありがとうございました。

それでは、この議題につきましての審議はここまでといたします。

続きまして、「令和5年度財政投融資計画の編成上の論点」についてご審議をいただきます。地方公共団体関係者の方が入室されますので、しばらくお待ちください。

(地方公共団体担当者着席)

〔翁分科会長〕それでは、大江計画官より、要求の概要及び編成上の論点の説明をお願いいたします。

〔大江計画官〕計画官の大江でございます。よろしくお願いいたします。

地方公共団体向け財政融資についてご説明させていただきます。

それでは、機関の概要等から始めさせていただきます。3ページをご覧ください。

こちらは地方債計画額の推移を資金別にお示ししたものでございます。財政融資資金は棒グラフの一番下の濃い緑色の部分となっております。

その事業別の推移を示したものが、次の4ページでございます。令和3年度は、臨時財政対策債が増えたことにより膨らんでおりますが、令和4年度は発行が抑制されたため、再び減少傾向になっております。

他方、次の5ページでお示しした残高ベースでご覧いただきますと、臨時財政対策債のシェアは依然として一番高い3割程度を占めております。

続きまして6ページ目ですが、こちらは事業区分ごとの財政融資資金の引受割合の推移をお示ししております。災害復旧など国が責任を持って対応すべき分野については、大半を引き受けております。また、上下水道など国の政策と密接に関係ある分野については、時々のニーズに柔軟に対応しております。そして、臨時財政対策債については後ほど詳しくご説明いたしますが、令和3年度を除き抑制が続いているという状況でございます。

次の7ページをご覧ください。以上を踏まえまして、基本的な考え方ですが、まず、「財政投融資をめぐる課題と今後の在り方について」等に基づきまして、引き続き、地方公共団体の課題やニーズを踏まえて対応すべきではないか。さらに、実地監査や財務状況把握により償還確実性を確認するとともに、財務健全化や課題解決に向けた取組を支援する役割を積極的に果たすべきではないかと考えております。さらに、深度ある分析に向けて、財務総研等とも連携し、学術的な成果も踏まえて参考としていくべきではないかと考えております。こちらは最後にご説明させていただきます。

8ページから15ページは、実地監査や財務状況把握について、過去の分科会の資料をご参考までに掲載させていただいたものですので、説明は割愛させていただきます。

次に、総務省から提出された令和5年度の要求の概要です。17ページをご覧ください。地方公共団体が必要とする地方債の額について、8月末の地方財政収支の仮試算を踏まえた地方債計画案に基づいて要求がなされております。その規模は9兆7,007億円と、前年度に比べて4,792億円の減少となっております。これは、地方税等の税収増が見込まれることから、臨時財政対策債の発行が抑制されていることによるものでございます。財政融資資金の要求額は2兆5,150億円となっており、前年度比1,102億円の減少となっております。

18ページから21ページは参考資料となっておりますので、説明は割愛させていただきます。

以上が地方公共団体に係る要求の概要の説明となります。

続いて、編成上の論点、臨時財政対策債について移らせていただきます。まず、23ページをご覧ください。過去からの計画額と財政融資資金の割合をお示ししております。引受割合は、コロナの影響で令和3年度に引き上げておりますが、それを除くと平成22年度の29%から抑制しておりまして、令和4年度では23%となっております。

続きまして、24ページで、財政融資資金が実際にどのように地方公共団体に配分されているかをお示ししております。下に、同意等基準の運用要綱を抜粋しておりますが、これを踏まえ、まず、市町村の要望をお聞きし、余剰分があれば都道府県等についても一部お引き受けするという運用をしております。左側のグラフをご覧いただきますと、財政融資資金の引受割合の低下に伴って、都道府県等の引受割合が減っておりまして、令和2年度においては市町村の要求のみで全ての財政融資資金を消化する状況になっております。

続きまして、25ページをご覧ください。こちらは計画額の推移ですが、足元は、令和3年度を除いて、青色のいわゆる折半対象部分がなくなって、基本的に既発の臨時財政対策債の元利償還金に充てるため臨時財政対策債を発行するという姿になっております。なお、平成30年度計画までは、発行額が常に元利償還金を超えておりましたが、令和以降は、3年度を除き元利償還金よりも発行額が抑えられております。

それを踏まえまして、ストックの状況についてお示ししたのが26ページでございます。先ほど申し上げたとおり、最近では発行額が抑制されているので、ストック額が僅かに減少しておりますが、元利償還金に対して新たに臨時財政対策債を発行しておりますので、ストックが減りにくいという状況になっております。

以上を踏まえまして、27ページの論点でございますが、資金調達能力の低い地方公共団体に対して柔軟に対応しつつ、赤字補塡の性格を有することを踏まえ、引き続き抑制的に配分することを基本とすべきではないかとしております。また、資金調達能力の低い地方公共団体の範囲については、時々の経済状況、資金繰り環境によって幅があるものと思われます。ご参考までに28ページに、過去からの重点化措置の厳格化及び緩和の概要をお示ししております。

以上が臨時財政対策債についての説明となります。

最後に、地方公共団体の資金繰り状況についてご紹介させていただきます。29ページをご覧ください。こちらは、本日ご出席の財務総研の大野総括主任研究官に多大なご協力をいただきまして、過去の分析を改めて直近の決算統計まで反映していただいたものとなっております。この場をお借りして、改めて大野先生には感謝を申し上げます。どうもありがとうございました。

それでは、31ページをご覧ください。理財局では、地方公共団体の債務償還能力の実力を把握するため、基金を含めた実質的なキャッシュの増減に着目し、地方公共団体の決算統計を組み替えて、行政キャッシュフロー計算書というものを独自に作成しております。下のグラフでお示ししたように、決算統計上の収支である実質収支比率は横ばいで推移しております。他方、我々の行政経常収支、こちらは、地方公共団体の収入全体から日頃の行政活動に係る経費を引いたものであり、公共投資や債務償還の原資になるものでございますが、ご覧いただけますように、2010年まで改善した後、悪化傾向にございます。また、キャッシュフロー収支は、行政経常収支から公共投資や債務償還に用いたキャッシュを引いた後にどのくらいキャッシュが残っているか、もしくは足りないかを示しているものでございますが、2010年代以降、同様に悪化傾向にございます。特に、2015年まではプラスで推移しておりましたが、2016年から2019年まではマイナス、すなわちキャッシュ不足となっているのが特徴的となっております。なお、2020年は再びプラスになっております。この年はコロナが蔓延し始めた年であり、地方向けの国庫支出金が増えたこと等も影響していると考えられますが、こちらについては、今後精査が必要だと考えております。

次に、32ページをご覧ください。行政キャッシュフロー計算書を基に、理財局では4つの指標、積立金等月収倍率、実質債務月収倍率、行政経常収支率、債務償還可能年数を算出しております。これは、家計で例えますと、おのおの預貯金は給与の何倍か、ネットのローンの残高は給与の何倍か、給与のローン返済に回せる割合はどのくらいか、ローンを返済するのに何年かかるかといった指標になっております。これらの数値を用い、ある一定数値を超えた地方公共団体を、ここでは「やや深刻」「深刻」としております。ご覧いただきますように、積立てや実質債務の状況は改善傾向にございますが、収支は悪化傾向にございます。

こうした状況を踏まえ、34、35ページにお示ししているとおり、4つの財務指標から見て健全とされる団体が減少し、「やや深刻」や、その予備軍となる団体数が増加しております。

これらの要因を分析したものが36ページとなっております。行政経常収支の収入・支出の各項目をお示ししたものですが、収支の悪化に対して、物件費、補助費等、扶助費の寄与が大きいことがお分かりいただけると思います。

続きまして、「やや深刻」「深刻」に該当する団体の特徴をお示ししたものが37、38ページとなっております。37ページでは、「やや深刻」に陥る要因は、扶助費の寄与が大きい一方で、「深刻」に陥る要因は、物件費と補助金等の要因が大きいことが示されております。38ページでは、「やや深刻」の団体は継続的に「やや深刻」に陥り続ける可能性が高い一方で、「深刻」に該当する団体は、一時的に陥っているケースが少なくないことが示されております。これらを踏まえますと、「やや深刻」に該当する団体は、扶助費すなわち社会保障費の伸びにより構造的な収支悪化に陥っている一方、「深刻」に該当する団体は、災害等の一時的な要因で陥っているといったことなどが考えられると思っております。いずれにいたしましても、今回の分析結果を用いて、構造的、中長期的な観点も取り入れて、よりよい財務状況把握が行えるようにしていきたいと考えているところでございます。

地方公共団体についての説明は以上となります。

〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。

ただいまの大江計画官のご説明を踏まえまして、委員の皆様からご意見、ご質問をお願いいたします。なお、総務省の方々、要求側の方々にもご質問いただいて結構でございます。それでは、川村委員お願いいたします。

〔川村委員〕ありがとうございます。

簡単に申しますと、この論点にある、臨財債を抑制的に配分することを基本とすべきというのは、もう当然のことでありますし、これは長い間この問題を問題視し、なかなか構造的というか仕組みの問題で、減り方が急には減っていかないという状況も十分理解しますけれども、当然のことながら、これは抑制的にできるだけ減らしていくという方向が望ましいことは言うまでもないと思います。

あともう一つ、お金に色はないではありませんが、地公体でも特に市町村レベルのお金の使い方、趣旨としてはよく分かるけど、本当にこれが有効に使われているのかと最近疑問に思うことが幾つか立て続けに起こっています。例えば、そこらじゅうキャラクターだらけで、よく分からない似たようなキャラクターが市内、町内に何十もあるみたいなこととか、その1個当たり数百万円かかるというような説もあるわけですけども、そういうものの有効性。地域を盛り上げようという気持ち、それはよく分かるんですが。それから先般も、全国紙に相当お金のかかった全面広告が出ていて、こういうそのまま捨ててしまう、だけどよく見るとものすごいお金がかかっているなと。多分ウン千万か、場合によっては億がかかっているかもしれない。もちろんその意気は多とするし、趣旨は分かるんですけども、こういう借金で支えられている自治体、とりわけ市町村がどういうお金の使い方をしているのかということは、財務省としても、特に実地監査とか財務状況把握等も通じて、ぜひ総務省とも協力しながら、モニタリングというかウオッチしていく必要があるなと感じています。

ありがとうございます。以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

それでは、中里委員、土居委員、林田委員の順にお願いいたします。その後、冨田委員ですね。

中里委員お願いいたします。

〔中里委員〕どうもご説明ありがとうございます。臨財債のことについて確認をさせていただきたいと思います。折半対象財源不足が解消されて、既往臨財債だけになって、過去十数年の中で一番臨財債の発行額が少なくなっている、これはとてもよいことだと思います。これはちょうど一般会計の交付税の加算も減っていることになり、一般会計にもよい効果が出ているので、とてもよいことだと思うのですが、ただ、もうちょっと踏み込んで工夫ができないかなということで、23ページのことに関して質問させていただきたいと思います。

いつも臨財債については抑制的に引受けをするということになっているのですけれども、となれば、23ページのところの数字を見ていただきますと、令和2年度は当初計画なので、コロナ前と理解していいと思いますが、令和2年度の23%と同じところまでは財政融資資金の割合が戻ってきてはいるのですけれども、過去、以前は割合が漸減してきたのが今回は23%で止まってしまっているんですね。財政融資資金は基本的に規模の小さい団体さんが中心なので、なかなか公募債を出すというのは難しいと思うんですけども、機構資金に振り替える、それによって財政融資の分を減らしていくことはできないんでしょうか。あるいは、それが難しいとすれば、それはどこにどのようなネックがあるんでしょうか。それを教えていただきたいんです。それが1つです。

それから、この表には出ていないんですけれども、もう一つ地方財政の話があって、それは何かというと、交付税特会の借入金の話なんです。これは根雪みたいになっていて、少しずつ返してはいるんですけれども、もし地方財政の全体の状況に余裕が出てくれば、交付税特会借入金の返済を、あれはちょうど交付税を確保するために償還計画を調整項目みたいに使っているところがあるんですが、より早めて返済をしていくということも大事だと思います。後者のほうは意見というか、感想でございます。

以上でございます。ありがとうございました。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

それでは次に、土居委員お願いいたします。

〔土居委員〕土居でございます。ご説明どうもありがとうございました。

3点意見を述べさせていただきたいのですけれども、1点目は、29ページからの財務状況把握の財務指標から見た地方財政、地方公共団体の資金繰り状況ということで、このように財務総研と連携して分析を進めていくということはとてもいいことだと思います。その上で、行政経常収支比率の悪化の要因とかを分析して、扶助費が寄与しているという点が分析結果として把握できたということは、非常に注目に値する結果だと思います。特に地方の一般会計から国民健康保険、介護保険、後期高齢者医療などの特別会計への繰り出しというものが、もしその悪化を助長しているということであるならば、それを明示的に分析できるようにするということが次のステップとして有意義なのではないかなと思います。特に、全ての団体がそうだというわけではありませんけれども、一部の団体では、一般会計からより多く繰り出して、国保、介護保険、後期高齢者等の保険料の引下げをして、住民受けがいいということで、住民の保険料負担を軽くする割には一般会計の収支は悪化させているというようなことが、一部の団体であるやに聞いています。本当にそういうことが行われているということであれば、本来、介護や医療で応益負担的に保険で便益を受けているということであれば、それなりの応分の保険料負担をしていただかなければいけないというわけですけれども、当然、国で定められているような低所得者の保険料負担軽減というのは、これはこれとして実施する必要はもちろんありますけれども、必要以上に一般会計から繰り出されているというようなことがあってはいけませんので、そういうところは、より細かく分析するということが次のステップとして考えられるのかなと思いました。そんなような形で、今後も引き続きこの財務状況把握を活用して積極的に分析をして、今後の地方向け財政融資資金の配分等に生かしていただきたいと思います。

それからもう1点は、この財務状況把握にも関連するところでありますけれども、普通会計だけの分析に限らず、下水道、上水道、それから病院などといった公営企業会計にも、この財務状況把握のようなデータを用いて分析するということができるといいのかなと。しかもそれは、単年度単年度ということよりかは、年度単位のデータをストックして時系列的に分析するというような形で体制を整えていただくというのは非常に重要なことではないかなと思います。これが2点目の意見です。

最後3点目は、臨時財政対策債の貸出先別貸付状況の推移という24ページにある資料に関連するところで、この財投分科会でも、財政融資資金を地方債にどういうふうに活用していくかということについては、先ほど大江計画官のお話にあったように、過去にもこの分科会で取りまとめたところであります。確かに、地方税収の少ない地方公共団体に対して、より金利が低い財政融資資金を貸し出すということは、それは一定の意義があるんだと思いますけれども、やみくもに民間資金よりも低い金利であるということの効果を、とにかく返済負担が軽いから、負担を軽くするために財政融資資金を使うというようなことを安直にはしないほうがいいと。だからこそ、臨時財政対策債に対する比率を低下させていくというような話を以前からしているというところで、本来は、外部性が大きい事業、もっと公共経済学的に言えば、非排除性の強い事業、つまり、便益を受けているけれども対価を払わなくとも便益を受けられるという性質、これが非排除性ですけれども、非排除性の高い事業ですと、本来便益を受けた人からきちんと対価をご負担いただけるということであれば、もう少し高い金利を払えるぐらいの費用回収ができるのかもしれないけれども、非排除性が強いと、便益を受けていてもその対価を払わないという方がおられる。それが悪いとかということはここでは不問ですが、便益に応じた負担を求められないというような性質があり外部性の強い事業ですと、本来きちんと収益が回収できれば高い金利が払えるかもしれないけれども、そうではないということで、その外部性、便益が多く及ぶということとの対比で、より少ない金利で貸し出して、そして、確かに、直接便益を受けた人から十分には費用は回収できないかもしれないけれども、ちゃんと税収などでそれを徴収して返済するとかという、そういうことができるならば、それはそれとして低利で財政融資資金を活用することはとても意義があるということは言えるんだと思いますので、よりそういう形で財政融資資金を地方向けにも活用していただくということが重要なのではないかと。

そういう意味では、このグラフも確かに全体的な傾向が分かるんですが、もう少しブレークダウンして、どの市町村にどの程度財政融資資金が配分されているかというようなデータとか、そういうものも今後の財政融資資金の配分を考える上で役立つデータと思われますので、そういうデータに基づいた議論というのができるといいかなと思います。

私からは以上です。

〔翁分科会長〕大変貴重なご意見ありがとうございます。

それでは、林田委員お願いいたします。

〔林田委員〕ご説明ありがとうございました。質問を1つだけお願いします。

先ほどからご指摘ありますように、臨時財政対策債、財投の配分は抑制的にということは当然のことだと思います。足元は横ばいぎみですけれども、配分は下げていこうと。ただ、そのベースとなる臨財債自体が今後増えていってしまえば、比率を下げても実額は上がってしまうなんていうことも起きかねません。幸いなことに、臨財債の発行は、ここのところ抑えられていると。それでも残高がなかなか減らないと、なかなか手ごわいことにはなっておりますが、少なくとも増えていくよりはいいということで、その理由を、大江計画官のほうからはちらっと税収の増加でというご説明がありました。私が知りたくなったのは、どういう税収、どういう税目がどういった理由で増え、今後の見通しはどうなのか。今後も持続可能な税収増ということであれば、臨財債を継続的に抑制していくことに希望が持てるということになるわけですが、その辺りはいかがなのか。そして、税収以外にも、近年発行が抑えられている理由が多分あるのじゃないかなと推察されるのですが、その辺りの事情もちょっと教えていただけるとありがたいということです。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

それでは、冨田委員お願いいたします。

〔冨田委員〕ありがとうございます。4点、手短に申し述べたいと思います。

巨額の新型コロナ感染症対応地方創生臨時交付金が給付されまして、国のプライマリーバランスは急激に悪化したんですが、地方公共団体は、2020年度もプライマリーバランスの黒字を続け、同時に基金が積み上がっております。200兆円もの地方債も抱えつつ基金を積み増しているということは、合理的かどうか検討が必要ではないか。

こうした中で、本日、資料の21ページで、来年度の地方財政収支の仮試算が示されております。一般財源総額は8,000億円、水準超経費を除いて2,000億円の増加とされています。一般財源総額実質同水準ルールを遵守することによって、臨時財政対策債の発行を、今の見込みが1.3兆円でありますけれども、そこから削減して抑制してはどうか。

それから3点目、財融資金によります地方債の引受けにつきまして、考え方ですけども、国の政策に対応する補助事業には積極的な対応を進め、一方、地方単独事業については、国の地方財政計画及び地方交付税を通じて国が財源保証しておりますけれども、枠計上経費とかと呼ばれ、使途が各団体に委ねられて、事業内容の類推すらできないのが地方単独事業でありますので、その引受けを抑制するという姿勢でよいのではないかと私は思います。

それから4点目。事務局から、臨時財政対策債の配分が論点として提示されました。私が観察するところ、23ページにあります、これまでの財政融資資金による臨時財政対策債への配分というのは、地方財政計画に占める公的資金のシェアを引き下げる、このことは民間資金のシェアを引き上げる、それを毎年やるための調整弁のようにこの金額が設定されてきたのではないかと見えます。市場資金によります引受けの増加によって、地方財政に市場の規律が作用してきたのであれば、結構なことなんですけれども、国による財源保障という仕組みの下では、そうとは言えません。このため、財政融資資金は、財融の貸出審査を通じて、そして、今日の資料にあった実地監査や、説明のあった地方公共団体間の財務比較などを通じて、各団体が求められている予算制約と財政規律、そして行政の効率化を各地方公共団体に意識していただくことが必要であると思います。

以上です。

〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。

それでは、今までのご質問、ご意見にご回答をお願いしたいと思いますが、まず、総務省のほうからご回答いただけるところについてはご回答をお願いして、その後、大江計画官にお願いいたします。

〔総務省自治財政局神門地方債課長〕総務省地方債課長、神門でございます。よろしくお願いいたします。

臨財債につきまして、幾つかご意見をいただいております。基本的には抑制をすべきだということでございまして、これまでもその基調で減少が続いてきているわけでございます。機構資金との関係がございましたけれども、過去には、財融資金を引き下げて機構資金のウエートを上げていくということをやってきておりまして、これまでもそうした方向での動きがあってきていると承知しております。今後もということでございますけれども、我々は、臨時財政対策債というものの性質上、どこまで財融資金を引き下げるかということについては慎重になるべきだろうと思っておりまして、この臨時財政対策債は、本来であれば地方交付税の交付税率の引上げで対応をすべきところを、これに代えて国の一般会計繰入れと、それから地公体の借金、臨財債の発行で対応するということで創設をしてございます。すなわち、個々の地方公共団体の財政運営の結果、生じている赤字ということではございませんで、この臨財債の額自体も、国のほうで割当てをしているというような性格の、地方交付税の代替のものということでございますので、その資金調達に当たっては、国に一定の資金を確保する責任、理由があるんだろうと認識をしているところでございます。

この臨時財政対策債が今後増えていくのかどうなのか、税収の見込み等々ご意見がございましたけども、傾向としては、先ほどグラフで出ておりますとおり、ここ数年、折半対象分がコロナの一時を除いてなく、ストックが若干減少しているという傾向はございます。これはいろいろな見方がございましょうが、最近ではやはり法人税収関係の見込みの増などもありまして、このようになっているところでございまして、これが恒常的なものかどうかというところは、しっかり分析していく必要があろうかと思っております。

取り急ぎ、以上でございます。

〔翁分科会長〕それでは、大江計画官お願いいたします。

〔大江計画官〕いろいろ有益なコメントをいただきまして、どうもありがとうございます。

まず、共通していただいているのは、臨財債を抑制していくべきだと。特に土居先生からご指摘いただいたように、そもそも財融資金の公的資金の扱いは外部性があるようなところに重点的に配分するべきではないかという観点からも、臨財債への財融の配分は抑制していくべきではないかというご意見があったと思いますけれども、土居先生からもご指摘ありましたように、あと、中里先生からも、23%以下にさらに抑制できないのかというご指摘もありましたけども、こちらについては、土居先生のお話にもありましたように、各市町村において、どういう資金繰り状況になっているのかとか、そういう状況もより精査して見ていって、さらに抑制が図れる余地がないかということをしっかり調べていく必要があるのかなと思っていますので、その点は地方の実情をよくご存じなのは総務省さんだと思いますので、総務省さんからもいろいろご協力いただきながら、しっかり考えていきたいと思っております。

あと、共通して言っていただいたのは、財務状況把握を通じて地方自治体のお金の使い方、川村先生のご指摘とか、他の先生のご指摘もありましたように、よりしっかり地方のお金の使い方を財務状況や実地監査を通じて把握してもらいたいというご意見がありましたので、それはぜひ、さらに今回、財務総研のご協力をいただきまして、より深度ある分析をさせていただいたところでありますけれども、さらにそういうことも踏まえまして、よりよい財務状況把握を行っていきたいと思っております。

さらに、今回、論点の対象にはしておりませんけれども、土居先生から、普通会計以外の公営企業会計、下水道とか水道とかについても、今回財務状況把握でしたような網羅的な分析をして、よりよい実地監査につなげたらどうかという趣旨のご指摘だったと思いますけども、こちらについて、実地監査を行っているのは管理課ですので、管理課や財総研ともよく相談しながら、どういったことができるのかというのを考えていきたいと思っております。

以上になります。どうもありがとうございました。

〔翁分科会長〕冨田先生からの質問について、大体お答えいただいていますか。

〔大江計画官〕冨田先生から、地方単独事業について、どういうことをやっているのかが類推しにくいとか、あと、一般財源について、今回要求総額で8,000億円、水準超経費を除いて2,000億円増えているのをどう考えるのかというご指摘があったと思うんですけども、こちらは、まず総務省さんのほうでお答えいただいたほうがいいかなと思っております。

〔翁分科会長〕では、お願いいたします。

〔総務省自治財政局神門地方債課長〕単独事業のお話がございまして、枠計上経費でざくっと計上してあるのではないか、その詳細を見ていったほうがいいんじゃないかということだと思いました。地方交付税の計上、基準財政需要額の計上の仕方は様々ございますけれども、いずれにしても、計上した結果、地方の一般財源として税等と変わりなく使っております固有の財源ということでございます。地方公共団体それぞれが議会に諮りながら運営されているものということでございますので、その単独事業の中身を見ていただいて、財融資金云々ということはあり得るんだろうと思いますけれども、単独事業だからということではないんだろうと思っています。例えば、単独事業でも、最近でございますと、緊急に自然災害の対応をするための経費でありますとか、あるいは、このところの災害に対応して河川の浚渫をしようといったような動きもございます。そういうものもしっかりと単独事業として対応してきているような場合もございますので、そうしたこともご配慮いただければなと思っております。

〔翁分科会長〕冨田先生、ご質問いかがですか。コメントございましたらお願いします。

〔冨田委員〕まず、地方債については、国の補助事業が、財投としては、融資先としては最優先に考えるべきではないかという意見です。

もう一つ聞きたかったことは、臨財債の要求というのは、現在の国・地方の財政規律から考えると、もっと減らすことができるのではないかということを3番目に、2番目だったかな、申し上げました。つまり、水準超経費を除いて2,000億円の増加で、一般財源総額で見て8,000億円の増加と見られているんですけども、一般財源総額実質同水準ルールでいけば、これは横ばいにできるわけですので、臨財債の発行額1.3兆円が抑制できるのではないかという話であります。また、それが可能なのは、臨時交付金で物すごいお金が国から地方に行って、すごい勢いで巨額の基金が積み上がっているということも背景にあります。

以上、総務省の方のお考えをお聞きしたい。よろしくお願いいたします。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。それではお願いいたします。

〔総務省自治財政局神門地方債課長〕コロナの臨時交付金につきましては、ご指摘のように、多額の額が交付されて、その使途、目的に沿ったものに使われていると理解をしてございまして、何らかそれが一般財源に余裕をもたらしたかどうかというのは、慎重に見ていく必要があろうと思います。よく言われていますのは、やはりコロナ禍の中で、通常、一般財源を活用していた事業ができなくなって、一般財源が余るような格好になったとか、いろいろなことがあると思っております。今後、コロナの臨時交付金をどうしていくかということも含めて、これは内閣府のほうで交付をしている交付金でございますので、よく連携して調整していきたいと思っております。

1.3兆円としております来年の臨時財政対策債につきましては、これは夏の仮試算の段階で、本当に機械的に統計情報などを用いて算出しているものでございますので、当初予算の編成の中で、さらに1.3兆円の抑制にも努めてまいりたいと考えてございます。

〔翁分科会長〕それでは、その方向でどうぞよろしくお願いいたします。

それでは、ほかに追加的にございませんようですので、こちらで地方公共団体につきましては終わりたいと思います。総務省様、また、財務総研の大野様、どうもありがとうございました。

(地方公共団体担当者退席)

(内閣府、文部科学省、科学技術振興機構着席)

〔翁分科会長〕それでは、次の議題、「大学ファンドの状況報告」に移ります。原田財政投融資総括課長、文部科学省、科学技術振興機構よりご説明をお願いいたします。

〔原田財政投融資総括課長〕本日はまず私から、これまでの分科会でご指摘いただいたことを簡単に振り返りまして、その後、文科省から大学への助成に当たっての考え方、最後に、JSTから運用状況のご説明をしていただく予定でございます。

資料2-1、財務省理財局資料をご覧ください。3ページ目は大学ファンドの概要でございます。もう皆様ご承知のとおりだと思います。

それから5ページ目、これまでの分科会における指摘事項でございます。償還確実性の確保、JSTにおけるファンド運営、リスク管理・モニタリング、情報開示、大学への支援、大学ファンドの自立、JSTによる資金の自己調達努力、将来的な各大学における大学固有基金の運営、それから参画大学の要件・大学改革(ガバナンス改革)等ということでございます。

6ページ目以降に、年末に分科会からご提出いただいた「大学ファンドについての議論の整理」を参考としてつけてございます。

私からの説明は以上でございます。

〔翁分科会長〕それでは、文部科学省のほうからお願いいたします。

〔文部科学省木村大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)〕引き続きまして、文部科学省のほうからご説明、資料2-2をご覧いただけるかと思います。1枚めくっていただくと、大学ファンドの制度設計ということで、今日ご説明させていただく概略、JSTの分も含めて概略を載せてございますので、後ほどご参照いただければと思います。

続きまして2ページでありますけども、今回の会計処理のフローということで載せておりますけども、運用した利益に限って、財務大臣協議をした上で積立てを行う。その積立金の中から大学への助成を行うという基本的なフローチャートを載せておりますので、また後ほどご参照ください。

次のページでございます。大学ファンドに関するスケジュールでありますけども、現在、基本方針の策定に向けたプロセスを踏んでいるところでございます。今月の半ばにパブリックコメントのほうが終了いたしまして、現在、これからCSTIのご意見を聞きながら最終的に文部科学省で決定をするというプロセスを踏んでいるところでございます。これがうまくスケジュールどおりいきますれば、本年中、12月中にでも大学の公募を開始したいというようなスケジュールで進んでございます。

続きまして、しばらく飛びまして、7ページをご覧いただければと思います。先ほどメンションいたしました基本方針案でございます。主なポイントについてご紹介したいと思います。この国際卓越研究大学の意義と目標でございますけども、世界トップクラスの研究者が集まって次世代の研究者を育成する。そのためにも、魅力的な研究環境を整えなければいけないということと併せて、社会の多様な主体、特に産業界を中心としながら、協調してイノベーション・エコシステムの中核的役割を果たしていく。そのために必要な基本的な事項、国際卓越研究大学として認定されるために、まず世界最高水準の研究大学というものに変わっていくんだという意思とコミットメントをしっかりと示していただくということであります。この制度を踏まえますれば、この大学の数ですけども、無制限に拡大していくというものではなく、数校程度に限定されるものであろうと。特に最初の公募に当たっては、相当数を絞っていくということになろうかと思います。

また、この要件でございます。大学の認定と計画の認可の審査のプロセスを一体的に進める、かつ、審査側と大学側とがコミュニケーションしながら審査を進めていこうということで、要件といたしまして3つ、国際的に卓越した研究成果を創出できる研究力、2つ目、実効性高く、意欲的な事業・財務戦略、3つ目、自律と責任のあるガバナンス体制という、この3点を要件にこれから議論を進めていきたいということであります。

8ページをご覧ください。特に研究体制強化の目標として、この目標には、アウトプットのみならず、アウトカム、非常に長期にわたる事業ですので、なかなか難しいところもあろうかと思いますけども、アウトカムについて記載するということ。それから、学術研究ネットワークを牽引してイノベーションを常に創出し続けるマネジメント・システムの全体像を提示していただくということが必要になってくると思います。

続きまして、9ページをご覧ください。基本的な事項の続きでございますが、基本方針に記載された事項に照らして、特に「ロ」の外部資金の獲得状況でございますとか、継続的な事業成長が見込めるということ。さらに言えば、資金循環の形成と学内の資源配分を行うことができるガバナンスを有するということで、特に合議制の機関でございますとか、教学担当・事業財務担当の役員について、有効に機能するようなマネジメントシステムということを求めていきたいということを考えてございます。

時間の関係がございますので、最後、11ページであります。認定に関する基準、若干細かいものを掲載させていただいておりますけども、この趣旨に鑑みれば、これまでの実績とか蓄積のみで判断するということではなくて、当然そういったものを踏まえつつ、変革への意思、コミットメントという先ほど申し上げたような要件、これをしっかりと見ていきたいということで、各7項目に分かれております。Top10%の論文の数でありますとか、研究成果の活用の実績、それから若手・女性・外国研究者の登用・活用、将来的には外国人研究者の割合を世界最高水準のレベルにまで引き上げていくということ。民間事業者との連携協力。効果的な資源配分。そして研究に関する業務と管理運営に関して適切な役割分担を行っていくという業務の執行体制。しっかりとした財政基盤、こういったものを今後、公募・審査をしていくことになろうかと思います。

文部科学省からは以上でございます。

〔科学技術振興機構喜田運用業務担当理事/資金運用本部長〕それでは、科学技術振興機構より、9月末の大学ファンドの運用実績をご説明申し上げます。私は、運用業務担当理事の喜田と申します。よろしくお願いいたします。

それでは、1ページをお開きくださいませ。まず、枠組みのおさらいをさせていただきます。まず、運用開始は今年の3月でございました。5.1兆円ということで、政府出資金1.1兆円、それから財政融資資金4兆、都合5.1兆円で開始しました。それから、今年度の下期でありますが、合計4.9兆円の追加借入れを予定させていただいているところでございます。財政融資資金は20年間の元本償還据置き、20年の分割返済となっております。

2ページへお進みください。運用方針と現状とありますが、ポイントといたしましては、上記にありますとおり、まずは基本指針によりグローバル株式:グローバル債券=65:35のレファレンス・ポートフォリオというのを示されております。ここから算出される許容リスクの範囲内で、可能な限り運用収益率を最大化する基本ポートフォリオを定めて、これに基づいた管理運営を行うとございます。基本ポートフォリオにつきましては、今年の3月の運用・監視委員会の審議を経て決定しております。

一方で、このグローバル債券・グローバル株式で株式65%のポートフォリオというのはリスクがかなり大きくございます。ですので、調達構造も踏まえて、移行計画を設けて、基本ポートフォリオ構築に向けて暫時進んでいくということにしております。ポイントとしましては、まず、令和8年度までの可能な限り早い段階で、3,000億円の運用益の達成。それから、10年後、令和13年度までの可能な限り早い段階で、基本ポートフォリオを構築していくということでございます。

続きまして、3ページでございます。こちらは立ち上げ当初の我々のコンセプトを簡単に示したものでございます。まず、「Simple」ということで、先進国の株式と国債を中心とするシンプルなポートフォリオ、資金面でも体制面でも立ち上げ途上でございますので、これを留意いたします。それから右下、「Gradual」ということで、資金の投入が一時に集中しますので、段階的にポートフォリオを構築するということ。それから「Defensive」ということで、ダウンサイドリスクを抑制いたします。これを意識して、当初、レファレンス・ポートフォリオ対比で保守的なポートフォリオを構築するというのがポイントでございます。

4ページでございます。ガバナンス体制は、縷々ご説明申し上げておりますが、まずは上位組織として運用・監視委員会が年4~6回程度ということで、中曽委員長以下5名で構成いただいて、重要事項の審議、それからパフォーマンスの報告、レビュー、意見をいただいております。JSTの中には2つ、左側が投資委員会、これはフロントのほうの委員会でございまして、私、運用業務担当理事が議長を務めます。それから2線としまして運用リスク管理委員会がございます。こちらは内部統制担当理事、甲田理事を議長として構成いたします。これは共に週次でありまして、私は運用リスク管理委員会の委員からは外れております。その他、理事長直轄で監査部があるということ、監事が全体を監査するというところでの体制になります。

5ページです。組織体制ということで、今度は本部、それからそれぞれの部のご紹介であります。現段階で資金運用本部が39名、それから運用リスク管理部が7名、監査部が3名、合計で49名というのが10月1日の状態です。一番左側の紺色が、いわゆるフロントでありますが、この中で、資金運用室のほうが投資の専門家で構成する投資フロントであります。こちらは合計23名。基本的には、運用の専門性もさることながら、この大学ファンドの国策としての意義に共感している人を厳選しているつもりです。それから運用調整室は、JSTのプロパーの方を中心に14名で構成しています。この中では、委員会の運営、公表、それから予算執行管理等になります。それから、内部統制担当理事以下のところで、運用リスク管理部で7名、それから監査のところで3名という状況でございます。

6ページ、モニタリングのシステムでございます。こちらに示しておりますのは、文科大臣から通知された基本指針、それから、JSTの基本方針に基づいた運用の骨格をご説明しております。指標としては4つございますが、特に償還蓋然性の観点からは、2番、資産評価額が財政融資資金の残高を下回るというところのチェックが重要になろうかと思います。右側にフローを置いていますが、現段階で該当しているものはございません。

それから、日次で、先ほど運用リスク管理委員会も週次で報告しておりますということですが、こちらのほうでは標準偏差、それから95%のVaR、為替、金利、株の感応度、それから、極端なストレス発生時の影響度というのを週次で見ております。それでまとめて月次で報告をしているという状況です。

1ページ飛ばしていただきまして8ページでございます、JST債発行計画ということで、基本方針のほうにもありますが、自己資本と他人資本のバランスに留意しつつ、政府からの出資、それから融資に続いてJST債の発行等に取り組むとございます。現段階で既に枠組みが決まっておりまして、今のところ2月頃発行予定ということで、取り急ぎ200億円の年限2年、格付はAA+ということで、R&I社から取得しております。主幹事証券会社は以下のとおりでございます。

ここからは運用実績になります。まず9ページのほうは、令和3年度ということで、3月から投資を開始した間もない状態を輪切りで既に公表しております。この段階では短期資産がかなり多いということでございます。

本日の主題であります10ページ、令和4年度4月~9月期の状況でございます。運用実績の数字だけ申し上げますと、収益率がマイナス3.67%、収益額にしてマイナス1,881億円でございます。参考までに、これのレファレンス・ポートフォリオを入れさせていただいていますが、収益率はマイナス3.63と。それから、このレファレンス・ポートフォリオを仮に、円安が進行してここがかなりプラスに寄与しております。ですから、全て円ヘッジをしていたらマイナス15 .33%であったという状況でございます。

ポイントを申し上げますと、資金投入後は段階的に投資を実行してまいりました。それから、あとは移行計画というのを用意しまして、レファレンス・ポートフォリオ対比でリスクを抑制しているわけですが、主に2つのリスクを抑制してまいりました。1つが株式リスクです。この株式につきましては、債券に比べても、この4~9月期のマイナスが大きいものですから、これは抑制がプラス寄与に出ております。為替リスクも抑制しております。これは、レファレンス・ポートフォリオがグローバル投資でございますので、債券・株双方に為替リスクがかかってきます。ですから、ある程度のヘッジをして進んでおります。為替そのものは、円安によりプラス寄与となっておりますけれども、一部ヘッジを行ったため、全てのリターン、円安効果は取り切っていないということであります。

それからもう一点が、段階投資で積み上げ途上でありますので、インカムがまだ限定的であります。という意味では、キャピタルの要素が相対的にかなり大きい状態にあります。

11ページでございます。こちらは、インデックスの推移を用いまして、この6か月間のグローバル債券とグローバル株式のパフォーマンスのほうをご説明いたします。青い太線がグローバル債券の為替を全てオープンにした場合、それからオレンジの太線がグローバル株式の為替を全てオープンにした場合でありまして、点線が為替の効果がなかった場合の、青が債券、オレンジが株式ということで、この点線のほうは太線のパフォーマンスに比べてマイナスが大きく、株式については15%以上のやられ、それから債券においても10%弱のやられというものでございました。円安はプラスであるのですが、グローバル債券について大体とんとん、それからオレンジの太線の株式については95%割れということでございます。これが1つ。

それからもう一つは、9月の中旬以降、一気にパフォーマンスが悪化いたしました。1つには、インフレ懸念からの金利上昇、株の下落が継続したということ。それから、ちょうど為替介入が入りまして、円安の動きがストップしたということ。さらに、英国の財政政策の混乱というのが参りました。こうした状態で9月末を迎えているということでありますが、足元では株式も上昇して、債券も若干買われております。円安も若干進行しておりますので、10月の今の状況、金曜日までの状況は、相当にパフォーマンスは改善しているという状況であります。

以上がご説明になります。ここまでのところ、私は就任以来、基本的には償還蓋然性、つまり調達構造も考えながら移行期間を設計してまいったつもりですし、基本ポートフォリオに至るパスというのも慎重にやってまいりたいと思っています。そうした中で、今回のパフォーマンスがマイナスになったということで、ひとえに私の運用責任ではございます。

かなり省略してご説明申し上げました。ご質問等々ありましたらお願いいたします。以上であります。

〔翁分科会長〕ご説明ありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明を踏まえまして、委員の皆様からご意見、ご質問をお願いしたいと思っております。今日いらっしゃっている文科省、科学技術振興機構の方々にもご質問いただいて結構です。今回、川村委員より資料をご提出いただいておりますので、まず初めにご発言いただければと思います。それではお願いします。

〔川村委員〕大変ありがとうございます。また、ご懇切な説明もありがたいと思います。

資料というほどのものでもないのですけども、これは若干承前的なことになりますが、私は10年ぐらい財投分科会でいろいろな議論に参加させていただいてきて、本件ほど、ほぼ全員が同じ方向で紛糾と言ったらいいんですかね、極めてネガティブな反応だった案件というのは、ほかに知りません。その理由というのは、償還確実性もさることながら、そもそもこういうものの政策目的って財投資金にあったかと。つまり、直接・間接問わず、事業に対しての出資なり融資は分かるけれども、投資資金運用のために出すとどこにも書いていないし、そういうことは一度もなくて、加えて、ここまでの金額規模って何なんだろうと。もちろん、その手前というか、大きな意味でのこの日本の教育レベルを上げていくということの、そういう意味での政策的な必要性は誰も反対しない、大賛成でありましたけども、じゃあそれが財投資金なのかということについて、かなり長い間、多数回に及び、相当慎重というか、これなんですかという議論があった上で、いわば苦渋の決断で今日へ来ているという背景があります。まずそれをぜひ当事者の皆様方には改めてご理解いただきたいなと思うことです。

それを踏まえると、先ほど喜田理事のほうから、運用パフォーマンスの足元の話が出ましたけど、今、何というか、トリプル・ペリルというか、デットはやられ、エクイティーはやられ、為替はやられという三重苦の中で運用しているわけなので、この半年だけのパフォーマンスをどうこうと言うことは、私個人としては全くありません。むしろ、いろいろご苦労されているんだろうなということの気持ちこそあるという感じなんですが。

そこで、先ほどの背景を考えると非常に重要なのは、ガバナンスという言葉をJSTの方も、文科省の方もおっしゃる、まさにガバナンスなんですね。そのガバナンスって何かというと、この機構の中のガバナンスではなくて、それはもちろんですけれども、最大のステークホルダーである財投資金、言わば国、公金に対してのガバナンス責任をぜひ果たしていただきたいということなのです。それは何かといえば、どういうガバナンスを果たせばいいのかというのは、それは、適時適切な情報開示をきちっとしていただくことであり、それを財投あるいは国としてきっちり拝見する、そのための情報開示というのが絶対的に必要だと思うんです。今日、お手元にお出ししたのは、もう既にGPIFが四半期開示でもこの程度はやっています。私はミニマム・リクワイアメントだと思います。少なくともタイミング的にも最低四半期に一度ぐらいは、この程度の内容のものは出していただきたいし、今日まさにプレゼンテーションがあって、今大変運用にご苦労されているということは、それはきっちりおっしゃっていただきたいし、それに対して我々のいろいろなアドバイスができるかもしれないし、そういう意味でありますので、そのガバナンスをきっちりやっていただくためにも、説明責任という観点からも、ぜひ適時適切な開示をお願いしたいし、また、ほとんどが外部に委託されることになると思いますので、その運用受託者に対する充実した開示というのをぜひお願いしたいと思います。今も出ておりますが、今後これはいろいろ増えていくと思うんです。また、ただ事業者の名前、運用業者の名前だけ出ても分からないので、特に海外の運用業者がこれから増えていくんじゃないかと思いますけども、その属性とか、トラックレコードとか、開示された側が判断できるようなものもぜひしていただきたいし、それと、この基本ポートフォリオだけだと、多分ターゲットレートというのは非常に難しいと思います。それで3%以上実質で上げろというのは、もう無理難題に近いことだと思っていて、相当程度オルタナティブをやらざるを得ないと思います。ただ、オルタナも専門家が限られているのと、やはり得意な業者とそうでない業者がいるわけですし、そもそもマーケットのパイが非常に小さいので、この10兆円がどんと出ていったら、それだけでマーケットが上下してしまうというようなマーケットで、そういう意味で、いろいろパフォーマンスは期待できるけど難しい。かつ、やはり相当程度ハイ・ハイでやらないと、償還確実性をあまり気にして超コンサバなものだけにしたら、絶対このパフォーマンスは出ないわけで、非常に難しい仕事を引き受けられているわけでありますが、それだけリスクの高いものとかパフォーマンスが望めるものに投資するのであれば、なおのこと、この開示をぜひしていただきたいなと、そういう趣旨であります。

ちょっと長くなりましたけど、ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。なお、運用実績の開示の点に関しましては、本日ご欠席の原田委員より、プロダクト・ガバナンスの観点から、運用手数料を含む各種手数料控除後の正味収益率を開示すべきというご意見もいただいております。開示についてはほかにもご意見あるかもしれませんが、取りあえず、まずここで川村委員と、今の原田委員につきまして、ご意見のご回答をお願いしたいと思いますが。

〔科学技術振興機構喜田運用業務担当理事/資金運用本部長〕それでは、喜田のほうからご回答申し上げます。

まず、原田委員からのご示唆につきましては、経費込みということで、今後の収益率の出し方については検討してまいります。お預かりいたします。ありがとうございます。

それから、川村委員のほうのご示唆につきましてですが、説明責任は十分認識しております。基本ポートフォリオにつきましては、先ほど簡単なご説明を申し上げましたが、オルタナティブ投資をある程度組み込む想定をしております。ただ、オルタナティブ投資は一気にやるものではございませんので、少しずつ段階的に入れていくということを想定しております。

開示ですけれども、基本方針では、ベースとして、情報公開に当たっては市場への影響等に留意すると。それから、運用立ち上げ期は、年度末時点の資産構成割合や運用実績等のみに公開をとどめるなど、透明性を確保しつつ戦略的な取組を進めると定めさせていただいております。と言いつつ、令和4年度、今年度の運用に関するものから業務概況書は作成しますし、公表する予定であります。

先ほど申し上げた市場へのインパクトを含めて、GPIFさんも一定の考慮をしながら移行期間については開示をされていたと認識しておりますが、立ち上げ期であることも考慮の上で、適切に対応してまいりたいと思います。

〔翁分科会長〕いかがですか、川村委員。

〔川村委員〕ありがとうございます。マーケット・インパクトというのは当然考えなきゃいけないので、よく分かりますけれども、そういう意味で、間接開示というか、運用受託事業者に関する開示というのは必ずやっていただきたいなと思います。事業者がそのポートフォリオを開示しろということじゃなくて、こういうところに、こういうような手数料で出しているんだということは、ぜひお願いしたいと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。マーケットへのインパクトも考えながらも、やはり透明性の確保、説明責任は非常に重要でございますので、ぜひ工夫して、GPIFに倣ったような形の開示をお願いしたいと思っております。

それでは、ほかの委員からも手が挙がっておりますので、ご指名させていただきます。土居委員、工藤委員、中里委員、林田委員、野村委員の順で、まずお願いいたします。

〔土居委員〕土居でございます。ご説明どうもありがとうございました。

昨年12月にこの分科会でお話をいただいたわけですけれども、今日の資料の中では、私として特に印象深かったのは、文科省、JSTのほうもそうですけども、1ページというのですか、2枚目の「大学ファンドの制度設計について」という資料の中で、これは類似の資料が12月には出ていましたが、その12月と違う文言が盛り込まれていて、右下のところで、「JSTに3線防衛によるガバナンス体制の構築」と書いてあるところは、この3線防衛というのは非常に重要ですので、そういうところをはっきり明示されたというところは評価したいと思います。ただ、私が存じているグローバルに標準と認識されている3線防衛と、今ご説明されたものとを比較すると、なかなか日本流に手抜きにされていると。これはJSTだけじゃなくて、日本企業も大なり小なりみんなそうなんですけども、本当にきちんと3線が、独立性を持ってリスクに備えられるのか。内部告発があったときに、きちんとその内部告発者を守りながらリスク管理ができるのか、大変危惧をしております。

これは、JSTの資料でも、文部科学省の資料に「JSTにおける資金運用に係るガバナンス体制」という資料があって、これは12月の分科会でも示されているものでありますけれども、私が存じている3線防衛というのは、内部監査というのは、基本的には執行部には従属しないで独立する体制だと。ところが、これは理事長直結になっているわけです。しかも、図の一番左側にある監事、民間企業でいうところの監査役ないしは監査委員会ですけれども、これとは全然かけ離れたところに置かれているということです。もちろんこれは独立行政法人なので、独立行政法人通則法における監事の役割と、民間企業における監査の役割は違うということは存じていますが、基本的に会社法に基づく監査役、監査委員会のほうが厳しいガバナンスないしは法的な責任を負っている。独法通則法の監事はそこまでは負わされていない。損害賠償とか、そういうのは会社法に比べると緩い。こういう中で3線防衛が本当に機能するのかというところが大変、私としては懸念を持っております。本来ならば、内部監査というのは内部告発も含めて、理事長に直結すると内部告発が理事長に漏れ漏れになってしまうわけです。そんなことでいいのかと。内部統制と内部監査は違うわけですから、しっかりその独立性を担保する必要があって、もし償還確実性に危うい兆候が見られるということであれば、早めにきちんとそういう兆候は断っていただかなければいけないわけでありまして、そういうところが果たしてここで言っておられることと、この組織体制で実現できることとがうまくマッチしているのかというところを一応お伺いしたいと。加えて、3線防衛が償還確実性にどう機能するとお考えなのかというところも、改めてお伺いしたい。

そしてもう一つは、国際的な資格として、公認内部監査人、CIAという資格があるということはご存じかと思いますが、CIAの資格をお持ちの方をお雇いになられているのかどうかというところもお伺いしたいと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

それでは次に、工藤委員お願いします。

〔工藤委員〕ありがとうございます。繰り返しになって恐縮ですが、意見として述べさせていただいております。

1つは、開示という点でございます。もう先ほどもお話がありましたけれども、通常の財政投融資資金の活用と異なって、政策目的とは直接関係がないリスクを負う市場運用の原資として大規模な財政融資資金を貸し付けるという点で、やはり本件は異例のものだと考えておりまして、他の財投機関と比べても、精緻なガバナンス、リスク管理体制の確立、説明責任の履行が求められるものと考えています。当初より議論してまいったと思います。

一方で、一定の運用益を目指す上で、運用指針に沿ったリスクテイクを行うことは適切でありまして、短期の運用実績のみで評価すべきものではないと考えております。足元の市場環境の影響を受け、令和4年上半期の運用実績についてはマイナスとなっていますけれども、令和6年の大学への助成開始に向け、所定の水準に向け、投資規模を拡大しながら、引き続きリスク管理、運用のモニタリングをしっかり行っていただくとともに、透明性が高く、充実したご報告を適時適切に行っていただければと思います。運用実績の面からも、また、ガバナンスやリスク管理体制、情報開示などの面からも、本ファンドが我が国の資産運用力向上に資するモデルケースとなることを期待しており、何とぞよろしくお願いいたします。

またもう1点、先ほど土居先生がおっしゃっていたことと重なりますが、6ページの1線、2線、3線構造について、2線が日次で計数を計測して資金運用本部と3線の監査部に報告するということですが、3線は、日々のチェックに加え、まず独立した目で、正しいフレームワークがきちんと入っているか、また、そのフレームワークが正しく運営できているのかということをしっかり見ていただく部隊だと思っております。

また、当然、資金運用本部のほうでも、①から④までの数字というのは日々の運用をする上でチェックしているべきであり、それに対して、2線が自らも計測しながら1線の運用が適切なのかチェックしていくという関係だと思っております。そういう意味でお書きになっていらっしゃるかもしれませんが、3線構造がどうワークしていくのか少し分かりにくかったので、次回ご説明いただくときは、そこをはっきりとお書きいただくことが、このファンドが我が国の資産運用力向上に資するモデルケースになる一歩になるのではないかと思いますので、よろしくお願いします。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

それでは、ガバナンスのことが続きましたけれども、同じご意見をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんので、後ほど答えていただければと思います。

中里委員お願いいたします。

〔中里委員〕ご説明ありがとうございました。

7月の分科会で、このファンドというのは要するに投資信託みたいなものだから、運用状況報告書を出してくださいと申し上げたのですが、それから3か月でこのような形で資料を作ってくださって、まずそのことにお礼を申し上げます。

その上で、幾つか申し上げたいことがございます。過去のいろいろな立ち上げまでの経緯はあったと思うのですけど、せっかく船出したので、よい船出を祈りたいんですけれども、残念ながら、今私たちは嵐の中にいると思うんです。それはもちろん、為替が円安に振れたり、いろいろな環境が大きく変わってきているということですけれども、そのときに、今はJSTさんだけでなくて民間金融機関でもそうですが、外債の価格が下がってロスが出ているんですけど、それを円貨に直したときに、円安の効果が効いてあまりロスが大きく発生しないという形になっているわけです。

もっとも、現状では恐らく為替が円安に振れ過ぎていると思われますので、そうなると、これから円高方向に行くと、逆の方向の効果、つまり円貨に直したときになかなか収益が出ない、そういう効果が出てきてしまうわけです。そうすると、その場合に、為替についてどの程度ヘッジをするのか、これはヘッジコストとの見合いだと思うんですけど、逆に言うと為替リスクをどの程度積極的にテイクするのかということがあると思うので、そのことをまず教えていただきたいという、これはJSTさんについてのお願いです。

もう一つは、これはどちらかというと文科省さんにお願いをしたいことです。もちろんキャピタルゲインが出てそれを助成に回せればいいんですけど、最初は手堅い運用をして、配当とか、あるいは金利収入でインカムゲインをためて、それを助成に回すというようなことになると思うのですが、さはさりながら、例えば投資しているもので含み損が大きく出ているときに、では、実現益が出たから配分しましょうという話になるのかというと、そこはちょっと注意しないといけないことがあると思います。つまり、何を申し上げているかというと、2024年度に支援開始というのが初めにありきというか、これは期限が初めにある話なんでしょうかということなのです。よく投資信託だと、毎月分配型という投信があって、キャッシュが入ってくるのでいいなと思ったら、元本を取り崩してお金が来ているだけという例がありますが、そういうような仕組みになってはならないと思います。このファンドは9割は借入金でやっているので、そういうことになってしまうとなおさらいけないので、2024年支援開始ということについて、やはり一定の慎重さを持って臨んでいただきたいと思います。

それから、これはその流れで申し上げるんですけど、このファンドについて、ときどきいろいろな報道などを見聞きするに、これは補助金だと思っている大学の関係者の方がいらして、10兆円補助金がついたんだ、すごいという受け止めをされている方がいらっしゃるわけです。ただ実際は、これは運用益が出たら、その中から助成金を配分しましょうというものなので、あまり過大な期待を持たれてしまうと、今後の運用について困ったことが起きかねないので、その点についても文科省さんのほうで丁寧なご説明を、もちろんされているとは思うんですけれども、さらにしていただきたいと、この3番目は感想というか意見でございます。

以上でございます。どうもありがとうございました。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

それでは、林田委員お願いします。

〔林田委員〕ご説明ありがとうございました。

資料2-3の2ページにレファレンス・ポートフォリオという概念が出てきまして、その構成としてグローバル株式、グローバル債券と書いてあります。このグローバルという意味を、質問のための質問でちょっとお伺いしたいんですけども、これは日本も含めた株式・債券という意味と捉えてよろしいんですよね。

〔科学技術振興機構喜田運用業務担当理事/資金運用本部長〕はい。

〔林田委員〕それを前提に質問させていただきます。

まず1つは、どこかよそに物を言うときに、グローバル株式、グローバル債券という言葉では、あたかも何か外にだけ投資しているように思われてしまう可能性があるんじゃないかと。よく投資信託でグローバル何とかというのはほとんど外債でやっていたりするので、ちょっと言葉遣いの問題が1つ。

それから、基本ポートフォリオは非公開としている部分ですけれども、川村委員が用意してくださった資料の3ページに、GPIFの基本ポートフォリオの円グラフが載っています。GPIFは、いろいろ塩崎厚生労働大臣のときに経緯があって、基本ポートフォリオを変えたわけでありますが、運用残高200兆円と、このファンドの20倍の規模のあるファンドがこうして基本ポートフォリオを構築して、マーケットに影響を与えているとか構築に支障を来しているとかという話は聞いたことがございません。大学ファンドの関係者の方々は、何かというとGPIFを引き合いに出されますので、この基本ポートフォリオの開示についても、GPIF並みには出していただくことが十分可能なのではないかと思っております。

運用実績は、円安効果を織り込んでもなかなか厳しいものがあるというご説明がありました。ぜひ今後頑張っていただきたいと思います。今後の運用実績の公表につきましては、基本ポートフォリオを出していただいて、それぞれについてどういう収益状況になっているのかということも、先ほどの原田委員がおっしゃられたコスト込みでしっかりと開示していただく。そうすると、今のこのポートフォリオ構成が妥当なのかどうか、もう少し考え直す余地はないのかということが国民的にも議論になると思いますので、そうしたきっちりとした開示をお願いしたいと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

それでは次に、野村委員お願いします。

〔野村委員〕ほぼ他の委員の先生方から出ておりますけれども、やはり私は運用状況の情報開示が一番気になったところです。足元で短期のパフォーマンスが厳しいのは十分理解はできますし、3年、5年、10年で評価していくとどこかに文言がありましたけど、そのとおりだと思います。5年、10年で振り返らないと分からないというところはあると思いますが、ただ、運用状況は少なくとも単年ごとにマイナス何%だったといった数字が独り歩きすることになるかと思います。そのときに、やはり公のお金が入っているから、だからこそ説明責任が必要で、基本ポートフォリオの開示とその結果、その乖離がなぜ起きたのかという説明責任はあるので、その開示は必須かと思います。

それから2点目が、これも皆さんおっしゃったとおりガバナンスの問題で、4ページ、6ページ辺りにある、投資委員会と運用リスク管理委員会、この1線、2線が同時開催されることを想定しているとありますが、それで果たして牽制が働くのかどうかが疑問です。

それから3点目、今日はもう時間がないと思いますけど、パブコメでどんなご意見が寄せられたか、公表される段階でどこかで教えていただければと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕他にいらっしゃいませんか。私もちょっと質問させていただきたいのですけれども、今は残念ながらこういう厳しい運用環境の中にあるわけですけれども、先ほど中里委員からご質問があったのですけれども、2024年度から助成をスタートするかどうかは、そのときの状況によって決まると思うのですが、それを誰がどういうふうに決める仕組みになっているのでしょうか。大学のほうは、24年度から当然予定していた助成が欲しいという圧力が来るわけです。けれども、こういった運用が厳しいという状況では分配原資がたまらず、そんなに分配できない状況なわけです。そこのディシプリンというか規律はどういうふうに働かせる工夫をこれからされようとしているのか、委員会みたいなものがあるのか、どういうところで誰が責任を持って決めるのか、そこについて教えていただきたいというのがまず第1点です。やはりこれは経済情勢とか運用状況を踏まえて、かなり冷静にご判断いただかなければいけないと思っています。

それからもう一つは、決まった当初よりもインフレがすごく進んでおります。文科省の説明では、というか以前から伺っておりますけれども、3%のインフレ率を足すというのが基本的な目指すべき運用収益率になっています。これは今どういう考え方で見直しをしようとされているのか。グローバルでの運用をなさっていて、日本のインフレと、また海外も違いますし、長期と短期というのでも見方は違いますが、しかし、局面は完全に変わってきております。ここについてどういう考え方で運用の目標を考えておられるのかということをお伺いしたいと思っております。

ほかに。家森先生すみません。お願いいたします。

〔家森委員〕ありがとうございます。家森です。今までの委員の先生方のご発言はそのとおりなので、それ以外のものとして。

お金を借りている人が更に別にお金を借りたときというのは、お金を貸す側としては大きな問題になるわけでして、その意味で、このJST債を2年で発行されているその意図とか目的、そういう部分について、お金を貸している方としては教えていただければと。それだけにさせていただきます。ありがとうございます。

〔翁分科会長〕それから最後になりますが、冨田委員、すみません、気がつきませんで。よろしくお願いいたします。

〔冨田委員〕ありがとうございます。

去年の今頃ですけども、GPIFの運用を見習って、高いリターンが得られるんだということで、随分GPIFの運用についてのお話があったんですが、今日、川村委員からGPIFの運用と運用成果をご説明がありましたが、私何が言いたいかというと、GPIFよりもこの大学ファンドはもっともっと厳しい運用条件が課せられているんです。それは何かというと、前にも申したのですけども、GPIFは年金給付原価全体に占める、このGPIFの運用収益のウエイトというのは1割以下にすぎません。さらに、保険料を強制徴収もするし、そして人口構成の変化等があれば、また、賃金水準について予定どおりでなければ、いろいろと保険料の改定だとか、そういう余地もあるのです。対しまして、3,000億円をお約束なさっているわけです。同時に、100%完全に借金を返すこともお約束なさっているのです。したがって、私は、運用が厳しいということは最初からそのとおりなんですけれども、GPIFのディスクロ以上に開示する必要があって、まずは、先ほど林田委員がお話しになったように、運用対象を内外の株式、内外の債券に分けて、この円グラフでGPIFは4分割していますけど、こういう形で最低限示す必要があると思います。今日は株と債券だけに分けたものなわけです。

それから、去年の12月に私がお聞きしたのは、どういう円レートを想定しているのかと。つまり、GPIFに至っても、もうその当時からパフォーマンスを円安に依存していることは明らかであったわけで、現在こういう状況なわけでして、先ほど分科会長がお尋ねになったこととも同じなわけですけども、これから先、どういうふうに円レートを想定しているのかということをあらかじめ示さないと、もうなかなか大変だろうと思うんですけども、GPIF以上のものを、厳しい運用条件なわけですから、それ以上のディスクロが求められているんだということを申し上げたい。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。開示とかガバナンスとか、非常にいろいろな意見がございましたけども、それでは順番にお答えいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

〔文部科学省奥野大臣官房政策課長〕文部科学省でございます。

まず、いただいたご意見の中で、大学への助成の開始時期の解釈について、複数の委員の先生からご質問いただきました。考え方としては、まさにご指摘いただいたとおり、開始時期及び開始金額ありきとするのではなく、文部科学省からご説明申し上げました資料の1枚目の左下、毎年度支援額は、運用状況と支援ニーズも踏まえ、政府の会議体で決定するという記述がございます。また、2ページ目の中で先ほど説明がございましたとおり、今回、大学への配分額につきましては、毎年毎年のJSTの損益計算を行った上で、損益計算の中で出てきた利益を財務省ともご相談した上で、配分可能な金額を決定した上で、さらに、大学への助成額の決定に当たりましては、こちらも財務省を含む関係省庁で助成額を決定するということにしてございます。したがって、考え方としては2点、まず、運用益を損益計算で出してから、そこからスタートすることで、それよりもまさに元本等を過剰に取り崩すことがないように、財務運営上の規則というのを当てますとともに、具体的な当該運用益の中で、助成財源とする範囲及び助成額につきましては、財務省をはじめとする関係省庁と、都度その金額の適正性等に関して協議した上で決定することとしてございます。

また、2ページ目の下に、始まった場合について、やはり大学側については、助成を受けた以降に関して、ある種固定費的なものに使ってしまった場合等について、やはり引き続き同額の運用を行ってほしいというような観点がございますので、下にございますとおり、支援に充てる部分に関しましては、一定のバッファーの額とかを見合った上で、継続的に複数年度におけるバッファーの確保等も視野に入れた上で、安定的に支援額が可能な基金規模にしてまいりたいと考えてございます。したがって、24年の運用開始時点におきましては、それまでの積立ての状況及び当該年度の収益で出てきました利益を前提にいたしますので、当然、必要な利益がなかった場合には無理に配分等を行わない、利益と積立てに応じて配分額を決定していくこととしております。

〔科学技術振興機構甲田理事〕JST、内部統制担当の理事の甲田でございます。ガバナンスにつきまして、何名かの先生からご指摘をいただきましたので、ご解説をさせていただきます。

まず、1線、2線、3線といえどもJSTの理事長の配下の下ではないかというご指摘をいただきました。これはおっしゃるとおりでございます。内部通報、公益通報、両方の制度を用意しておりまして、窓口も外部窓口と内部窓口を用意してございますけれども、今、JSTが用意している1線、2線、3線はJSTの理事長の下ということでございます。理事長の外にございますのが監事、これは文部科学大臣からの任命によって選ばれた監事でございます。これは理事長と同様に文部科学大臣の任命でございますけれども、これがいわゆる理事長の執行の外側にあるといった構造をまずご説明したいと思います。

その上で、3線防衛がどのようにリスクに関与しているのかということで、繰り返しになりますけれども、運用に対する内容は、先ほど委員の方のご指摘もございましたが、当然リスクについては1線でも確認をしてございます。その上で、1線で投資委員会のほうでリスクを含めて投資内容を議論した上で、運用リスク管理委員会、2線のほうで、先ほど申し上げました日次のモニタリング、週次、月次というふうなことをさせていただきまして、確認をさせていただいている次第でございます。3線でございますけれども、1線、2線と独立したものかということについては、おっしゃるとおりでございます。単に2線の確認内容をそのままフォローするものではなく、3線独自の視点を持って、リスクマップそれからリスクの考え方を持って1線、2線の会議に陪席をしたり、あるいは独自に資料収集、情報収集をしてやっていると承知をしております。

先ほど6ページ目に投資委員会と運用リスク管理委員会が同時開催というのはおかしいのではないかというふうなご指摘をいただきました。これは、「上記のケースでは」と付記がございますので、このチェックポイントに到達をしたようなケースとご理解いただきたいと思っております。基本的には、先ほど喜田の説明にもございましたが、両委員会は独立して運営をしております。

それから最後に、CIA、公認内部監査人と承知しておりますけれども、置いておるのかということについては、まだその資格を持った者はJSTに置いてございません。まだここについては、監査も今、人数は3人、専任の人間を3人当ててプロを揃えているところでございますが、これからその3線目の監査についても向上されていくと承知をしております。

ガバナンスにつきましては以上でございます。

〔科学技術振興機構喜田運用業務担当理事/資金運用本部長〕ご質問ありがとうございます。喜田より最後に、為替、それから個別論でいきますと為替のお話とインフレの考慮というので、私のほうからまずご説明させていただきます。

開示につきましては皆さんご関心が強いというのも承知しておりますし、我々の説明責任も十分認識しております。そうした中で、よくGPIFさんを引き合いに出すのは、分かりやすさもございます。我々も、開示内容について何が必要か考えてまいりたいと思っています。

その中で、基本ポートフォリオのお話をいただきました。林田委員、それから野村委員でしょうか。基本ポートフォリオは、おっしゃるとおりGPIFは開示しておりますが、私の承知では、GPIFさんも移行期間に関しては非開示としているという認識でございます。これは為替の、どのぐらいヘッジするのか、それから、円レートはどのぐらいを見通すのかというのも全て加わるのですが、先行きの見通しについては、基本的には触れないということで、控えさせていただければと思っております。

先ほどの市場へのインパクトを考慮するというときに、大学ファンドは、既にご案内のとおり、GPIFよりは規模は小さいというのがございます。ただ、やはり同じようなインパクトを与えるようないろいろな類推とか、そういうのも受けます。その中で見通しを加えるというのは避けたいというのが私たちの思いでありまして、この辺り、またご意見をいただければと思います。

それからもう一つ、インフレにつきましては、おっしゃるとおり加味する必要があると思います。これはかなり運用期間が長いので、その中で足元のインフレをどのように織り込んでやっていくのか。つまり足元で終わると思ったら、もうほとんど影響がないということでございますし、これが長く続くという確信度とその実績によってはかなり高くすると。この辺りは、今足元、特に、翁分科会長のお話でも海外ではというのがありましたが、期待リターンには影響するかもしれませんが、先ほどの目標リターン、1.38をどうするかというのは、基本的には国内の消費者物価上昇率だと承知しております。その辺りを、レファレンス・ポートフォリオをいただく身でありますので、内閣府さん、それから文科省さんから頂戴する内容で検討していきたいというのが私のほうからのお答えであります。

一応お答えしたつもりでございますが、すみません、漏れがありましたらお許しください。

失礼しました。JST債の2年の意図でありますが、まずは少額でスタートさせていただければと思います。これは、やはりニューカマー、新参者でありますので、どのぐらい売れるかどうか、その辺りはマーケットとの対話をしていきたいということです。

もう1点は、そんなに極端な規模でないと影響はないものではありますが、やはりこれも借金になりますので、基本的には自己資本比率を下げる調達となります。その辺りのバランスを考えて今後も進めてまいりたいと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

追加で冨田委員、林田委員お願いします。

〔冨田委員〕ありがとうございます。

今ご説明いただいた為替の件ですけれども、基本的には、金利とか為替とか経済環境についての予測を入れないと、基本ポートフォリオも作れないはずなんです。だから、内部ではやっておられることを外には発表しないということで理解していいのかどうか。それと、もし発表しないとしたって、事後的にディスクロしても、それはいいんじゃないかと思うんです。つまり、どういう方針で運用するかというのはやはり国民に開示しないと、これは国民からの借金でやっているわけです。それがきっちり返せるかどうかというのはやはり最大の関心なわけです。だから、そういうことについて、なぜ伏せるのかなと思うんですが、いかがでしょうか。

〔翁分科会長〕この点いかがですか。

〔科学技術振興機構喜田運用業務担当理事/資金運用本部長〕ありがとうございます。喜田のほうからご回答いたします。

まず1点、為替の件というので、まず内部的には、当然ながら、先行きのリターンを考えるに当たって、マクロ見通しをつくった上で長期の期待リターン、それぞれの債券なり株の期待リターンというのは出しております。ですから、内部には存在しております。なぜ出さないのかというのに関しては、すみません、繰り返しになりますが、市場インパクトというのがございます。先ほどの、先行きの発表はしないということであっても、それまでのところをどう見ていたのかにつきましては、先行きに影響を与えない範囲で、検討はしてまいりたいと思います。

〔翁分科会長〕冨田委員、よろしいでしょうか。

〔冨田委員〕これから先、令和8年度からは大学に給付金を配るだけの運用益を出し、今日の説明の資料にあったのは、令和13年からは基本ポートフォリオの構築が終わるという説明だったわけです。もともとの私の問題意識は、運用にとって前提となることは、どのような世界経済の構造を描いているかということがポイントなわけでして、それが私は国民に対する説明責任であると思うんです。これは投資信託だって同じようにそういう基本方針を示してから募集しているわけです。そういうことについてのお考えはないのでしょうか。つまり、状況を見ながらやっていくんだということでしかお聞きできなかったのですけども、いかがでしょうか。

〔科学技術振興機構喜田運用業務担当理事/資金運用本部長〕繰り返しで恐縮です。市場見通しを伝えるのには、かなり慎重に私はならざるを得ないです。ただその中で、その中でも影響を与えないものについては出していいのではないか、そこのところは説明責任とのバランスで考えてまいりたい。すみません、このお名前をいつも出すのが大変恐縮なのですが、GPIFさんも先行きの見通しを出すことには相当慎重だと承知しております。

〔翁分科会長〕それでは、いずれにせよ、どこまで出せるかご検討いただいて、私もできるだけ広く開示することを、とりわけこの原資は借金ですので、ぜひお願いしたいと思っております。引き続き検討をお願いいたします。

林田委員お願いいたします。

〔林田委員〕2つありますが、今の話の流れで、基本ポートフォリオのお話をお尋ねします。

GPIFに関しては、移行期間については非開示であるというご説明を今頂戴しましたが、私の記憶が不確かなのかもしれませんが、かなり早い段階でこの円グラフは見た覚えがございます。たしか社説でも書いた記憶がございますので、本当にそうだったのかなということと、あと、移行期間は非開示ということであるならば、移行期間が終わった後は開示すると自動的に考えていいのか。もしそうであるならば、開示するという前向きの方針をちゃんと表明されたほうがよろしいのではないかという点が1点です。

2点目、先ほど野村委員からご指摘があった同時開催云々という話ですが、基本、同時開催でないというお話でしたが、本質的な話は、前にも別の委員から前の分科会でも指摘がありましたけれども、これは文科省の2-2の資料の28ページ目、ご説明はありませんでしたが、ここに、投資委員会と運用リスク管理委員会の構成員が真ん中辺に書いてあります。これは、突き合わせていただければ分かりますが、この構成員は全員一緒です、オブザーバーも含めれば。ということは、この人たちが集まって席の前の肩書のプレートを変えれば、同じメンバーで別の委員会として会議が始まるということになります。そういう状況で牽制していると言われても、どういう牽制をしているのかなと。素人目には全く理解ができないのですが、そこを合理的に説明していただけないでしょうか。

〔翁分科会長〕それでは続いて川村委員のご質問を受けてから、お答えいただければと思います。

〔川村委員〕ありがとうございます。ちょうど今、林田委員がご指摘の点を聞こうと思ったこともあり、1つは、このガバナンスについて、形式美を幾ら整えてもメンツが一緒では意味ないですよという話は、かなり初期から私も指摘していたと思います。兼任兼任兼任だけだったら、人間は分けられないわけですから、実際牽制は利かないのではないか。そこはあまり無理して今のスタッフ数とかいろいろなことで3線を無理やり形式美を整えるんじゃなくて、真に実効性がある2線でも私は構わないと思うんです。

それが1つと、もう一つガバナンスに関して言えば、この運用・監視委員会というのが一番頭にあるわけです、半分外部というんでしょうか。これが運用で年4回から6回でしたか、どこかにあったかと思うんですが、私は、もし2線で考えるとすると非常に少ないと思います。これはどこの運用会社でも、金融機関でも、証券会社でも、社長は毎日夕方6時には報告が来て、自社のポートフォリオの勝ち負けを見ています。負けたところは、当該部署に対していろいろ指示を出したりしているのが普通なので、この運用・監視委員会が、何か気が抜けた頃に何か言っても、はっきり言ってこれでは全然監視にならないと思います。なので、先ほどの3線が現実問題内部で無理であるならば、2線にしても、この運用・監視委員会をしっかり活用する方策を考えていただくほうが現実的じゃないかと思うし、それともう一つは、意外に分からないのはその責任なんです。よく見ていたけどへまをこきましたというときに、そのへまの原因が何にあるのか。もし運用・監視にも責任があるんだったら、きっちり、ある意味で死命を制する立場にいるので、その責任も明確にしていただかなきゃいけないんじゃないか。これも従前申し上げたことなんですけれども、それを改めてぜひご検討いただきたい。

それから開示について、確かにいろいろなマーケットの先行きの見通しは、あまり具体的に言ってしまうと、これだけ大きいファンドなので、相当マーケット・インパクトが強過ぎてまずいというのは、それはおっしゃるとおりだと思います。ただ、その場合も、方向性ぐらいは言ってもいいのではないか。例えば、ある金融機関が、その所属するアナリストが為替の見通しを発表します。もちろん、それとファイアウオールがあるから別だとはいうものの、マーケットとしては、あ、この金融機関は先行きこのくらいの円高見ているんだな、円安見ているんだなとか、あるいはエクイティー・マーケットをこう見ているんだな、ああ見ているんだなと、ある程度予測はついてしまいます。なので、あまりマーケット・インパクトが強過ぎるということを金科玉条で言ってしまうと、だから防衛的で開示しないみたいなことになってしまう。少なくとも終わった後、例えば四半期が終わったら、例えばファースト・クオーターではこういう為替見通しを自分たちは内部的に立てていましたが、実際にはこうで、平均がこうだから、これだけ得しました、損しました、負けました、勝ちました、これは必ず開示していただきたいと思うし、全然問題はないと思うんです。

これはどなたか委員がおっしゃったように、全体のガバナンス、最初に私が申し上げた、この機構の国民的ガバナンスから見たときに、非常に開示に前向きである、もちろん運用上の問題点というか障害はある中でも、とにかく開示していこうという姿勢を示すことが大事だと思うんです。今日伺ってみると、これだからできない、これだから慎重、これだからやめると、何か開示したくない、したくないとどうしても取れちゃう。私も現場にいたので、そのお気持ちはよく分かるんですが、ただ、国民の資産をさらすファンドでありますから、やはり国に対して、国民に対して、自分たちは開示にすごく前向きである、それは検討しようじゃないかという姿勢をぜひ示していただきたいし、それがやはり成功と納得のもとだと思います。よろしくお願いします。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

土居委員お願いいたします。

〔土居委員〕今、川村委員がおっしゃったので、私は、その2線でもいいというのは大変懸念いたします。ただでさえ、今、林田委員がご指摘されたように、投資委員会と運用・リスク管理委員会のメンバーは結局一緒じゃないかと。それぐらいの体制ですから、むしろ3線目がしっかりしないと、もう1線と2線がずぶずぶだと。それで1線と2線だけでいいというのは、やはりこれは極めて危険だと思います。むしろ、監事と内部監査部門がしっかりと連携して理事長を牽制するというところに持っていかないといけないと思います。理事長直結だと、やはり内部告発も、結局は理事長がそれを外へ出すなとかと指示してしまえば、結局内部監査部門は何の機能も果たさないということになってしまいますから、しっかりとした独立した3線目をきちんと作っていただくということが重要で、そこに3人しかいないというのも、これも私としては問題が大ありだと思いますけれども、しっかりと人数を配して、きちんと償還確実性を担保することに重点を置いていただきたいと思います。

〔翁分科会長〕はい。

〔川村委員〕川村です。

1線、2線、3線がちょっと混乱、説明が言葉足らずだったと思ったんですけど、私はこの運用・監視委員会を3線にすべきだということです、端的に言えば。そのくらいの責任、内部で兼任、重任ばかり3つ4つ作ったって、これは全く意味がないので、じゃあ最低限、内部で2線でやって、3線はこの運用・監視委員会に担わせたらどうかというのが私の意見です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。お願いします。

〔渡部委員〕そうした意味では、私も川村委員と同じ意見です。ここで3線と書かれているのが適切なのかどうか、内部監査、インターナル・オーディットだと思います。これは理事長に属する部隊ですから、それは3名程度で十分なわけで、むしろリスク管理部隊の人員構成のあり方を含めてしっかりしたものにするという方がより実務的で重要だと思います。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

〔土居委員〕世界でいわれている3線防衛というのは、そういうものではなくて、だらしない日本企業の3線防衛、「なんちゃって3線防衛」といっているのが、そういう理事長の配下にある隠密部隊だといって内部監査部門を設けている。そういうものがあるから内部告発が効かず全然不祥事がなくならないんですよ。やはりきちんと独立性を持った3線を確立しないと駄目だと思います。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

〔林田委員〕私は専門家ではありませんが、いずれにしても、どこかの長の配下にある中でぐるぐると監視したり牽制し合っても、なかなかそれはうまくいかないというのは、これまで様々な不祥事で明らかになっていることだと思います。やはり独立性を持たせたところが俯瞰して全体を見るという体制を考えるのであれば、ここに書かれたポンチ絵のガバナンス体制で本当にいいのかねということは、スタートして間もないわけですから、これをもう全部決まりごととして考えるのではなくて、疑義が出ていることをきちんと踏まえて、担当省庁、そしてJSTを含めて、ちょっと知恵を絞ってもらえないかと。あと、貸手責任として財務省にも知恵を絞ってもらいたいと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕先ほどのご説明で、配分の際は、財務省も含めた関係省庁で決めていくというお話がありましたけれども、そういうときは、やはり外部から様々なプレッシャーがかかると思います。ですので、その意味でしっかりと独立して判断できるような枠組みというのを工夫いただいたほうがいいのではないでしょうか。

あと、移行期間はすごく長いですよね。その間にディスクロージャーが不十分というのでは、やはり国民には説明がつかないと思いますので、しっかりこのようにコンサバティブにやっているということを説明できたほうがよろしいのではないでしょうか。ですから、やはり基本ポートフォリオを、その時点の開示でなくても、工夫されてマーケットに影響を与えないような形で、こういう考え方でやっているのだということをしっかりお示しになったほうがいいと思いますし、国民としても望んでいると思いますので、ご検討いただければと思います。

すみません、少し長引きましたが、簡単に今までの意見や質問にお答えいただければと思います。

〔文部科学省奥野大臣官房政策課長〕文部科学省でございます。

まず、JSTの説明の前提として、理事長の位置づけでございます。JSTは独立行政法人でございまして、独立行政法人は、ガバナンスとしては古いのかもしれませんが、制度として、理事長一任の独任制の理事長に全ての権限を集めているという前提の下になってございますので、その前提でJSTは制度をつくっているという点がございます。ただ一方で、ご指摘いただいたように、監事につきましては、別途、理事長と独立して監事を文部科学大臣が任命してございます。また、今回の運用に先立ちまして、監事の中には、法務省、検察等でガバナンス等を経験していた法曹関係者の方を監事に任命する等、監事の監査体制の強化につきましても、文部科学省として可能な限り、今日のご議論を踏まえてJSTの監督等をしてまいりたいと思います。

また、運用・監視委員会につきましても、確かにJSTの内部の組織ではございますが、任命権者が文部科学大臣であるという点で一定の独立性等があろうかと思います。この点につきましても、JSTの運用リスク管理委員会、運用・監視委員会の在り方等、本日いただいたご意見等を踏まえてJSTとよく相談してまいりますが、一方で、独立行政法人という制度の枠内での運用という点がありまして、JSTの説明等、そういった前提での説明となっておるかと思います。

また、情報の開示につきましても、まだファンドそのものを造成の途中でもございますし、大きく資金等が動いているという移行期間のまだ初めの段階ではございますが、徐々に状況等が変わっていくに際しては、年度の報告書につきまして、今日いただいたご意見を踏まえながら、事前の情報の中でどういった範囲の開示というのが、国民への責任と、JSTが大変慎重に対応するように求められてございます市場への影響との間で妥当かどうか、引き続きまだ立ち上げている最中ではございますが、今日いただいたご議論を踏まえて、しっかりと議論してまいりたいと思います。

〔彦谷理財局次長〕よろしいですか。すみません。

林田委員からご指摘ありましたけれども、まさにこの点、JSTの方が監査、運用について全てお答えになっていますけれども、今まさに文科省の方がおっしゃったように、JSTは独法ではありますけれども、文部科学省が主務官庁としてしっかりと見るという点もございますので、その点も、財務省としても文科省ともよく話をしながら、かつJSTともよく話をしながら、今日のご議論を踏まえてしっかり対応していきたいと思います。

〔翁分科会長〕それではよろしいでしょうか。今日は様々な意見が出ましたけれども、ぜひ今後に生かしていただいて、ご議論、ご検討いただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

それでは、この辺りで本日の質疑は終了したいと思います。内閣府、文部科学省、科学技術振興機構の皆様にはご退室いただきます。どうもありがとうございました。

(内閣府、文部科学省、科学技術振興機構退席)

〔翁分科会長〕それでは、予定の時間を大分超過してしまいましたが、本日の議事はここまでといたします。各委員より頂戴いたしましたご意見等につきまして、今後の財投計画の策定にぜひご活用いただきたいと思います。

ご議論いただいた内容のほか、追加のご意見、ご質問などありましたら、事務局のほうにお寄せいただければと思います。

本日の議事内容につきましては、後日、事務局より記者レクを行い、資料につきましては財務省ホームページに掲載します。議事録につきましては、委員の皆様のご了解をいただいた後、財務省ホームページに掲載いたします。

本日はご多忙の中、誠にありがとうございました。これにて閉会いたします。

15時57分閉会