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財政制度等審議会財政投融資分科会
議事録

令和3年11月9日
財政制度等審議会


財政制度等審議会財政投融資分科会議事次第

令和3年11月9日(火)13:29~15:59
財務省第3特別会議室(本庁舎4階)

  • 1.開会

  • 2.伊藤財務副大臣挨拶

  • 3.令和4年度財政投融資計画の編成上の論点

    ①地方公共団体

    質疑・応答

    ②(国研)科学技術振興機構

    質疑・応答

  • 4.

配付資料

資料1 説明資料地方公共団体
資料2-1 説明資料大学ファンドについて
資料2-2

大学ファンドについて
(国研)科学技術振興機構

出席者

分科会長

百合

伊藤財務副大臣

角田理財局長

大津理財局次長

石田総務課長

関口財政投融資総括課長

小林資金企画室長

笠原財政投融資企画官

米田管理課長

原田計画官

漆畑計画官

高田

野村浩子

渡部賢一

渡辺

臨時委員

江川雅子

冨田俊基

中里

林田晃雄

原田喜美枝

専門委員

川村雄介

家森信善


13時29分開会

〔翁分科会長〕それでは、そろそろ予定の時間でございますので、ただいまから財政制度等審議会財政投融資分科会を開会いたします。

本日は、伊藤財務副大臣にご出席いただいております。開催に当たり、伊藤財務副大臣にご挨拶を頂戴したいと思います。報道関係者が入りますので、そのままお待ちください。

(報道カメラ入室)

〔翁分科会長〕それでは、お願いいたします。

〔伊藤財務副大臣〕皆様お疲れさまでございます。財政制度等審議会財政投融資分科会の開催に当たりまして、一言ご挨拶を申し上げます。

岸田内閣におきましては、成長と分配の好循環による新しい資本主義の実現を目指すことを掲げており、現在進めている財投編成においても、コロナ後の新しい未来を切り拓くための投資や、防災・減災・国土強靱化に資するインフラ整備、地方活性化、科学技術立国の実現といった幅広い分野における財政投融資の活用について検討が進められているものと承知をしております。

本日の分科会においては、令和4年度財政投融資計画の編成上の論点として、地方公共団体及び大学ファンドについてご審議をお願いしております。委員の皆様におかれましては、忌憚のないご意見を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。

それでは、報道関係者の皆様はご退室ください。

(報道カメラ退室)

〔翁分科会長〕それでは、議事に移ります。本日は、令和4年度財政投融資計画の編成上の論点として、地方公共団体、国立研究開発法人科学技術振興機構の2つの議題がございます。

まず、地方公共団体についてご審議いただきます。地方公共団体関係者の方が入室されますので、しばらくお待ちください。

(総務省担当部局着席)

〔翁分科会長〕それでは、漆畑計画官より、要求の概要及び編成上の論点の説明をお願いいたします。

〔漆畑計画官〕漆畑でございます。よろしくお願いいたします。

それでは早速でございますけど、1ページ目をお開きください。目次でございます。1番目、機関の概要等ということで、地公体向け財投融資の現状と基本的考え方をまず説明させていただきます。その次に2番目、令和4年度の要求の概要、それから3番目、編成上の論点ということで、今回は防災・減災に絡めた形で少しご議論いただければなと思ってございます。

中身に入らせていただきます。3ページ目でございます。こちらは地方債計画額の推移ということでございますけれども、全体の大枠の傾向といたしましては、総額、それから下の赤部分が財融資金の部分でございますけど、いずれもずっと縮小してきたところ、近年に入りまして少し横ばいになってございまして、これが令和3年度にぽんと、コロナ対応をしたために増加している、そういった傾向になってございます。

次をお願いします。次が地方向けの財融資金の事業別の貸付額の推移でございます。ポイントは3点ございまして、1つ目が、令和1、令和2年度をご覧いただければと思いますけれども、こちらの棒グラフで一番上の部分、ピンク色の防災・減災・国土強靱化緊急対策事業というのが載ってございまして、「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」に基づくものということで、こちらに対応したために、令和1、令和2年度は少し増加してございます。その後、令和3年、2つ目のポイントでございますけれども、ご案内のとおり、コロナ対応をしたために臨財債が増えてございます。それから3つ目のポイントとしまして、同じく令和3年でございますけど、下水道事業、それから一番下の地方単独事業、これは緊急自然災害防止対策事業債でございますけれども、こちらも防災・減災的な観点で増やしてございます。

次のページをお願いします。5ページ目でございます。こちらは財融資金の事業別の貸付割合の推移でございますけれども、今し方説明しましたとおり、下水道事業のところ、それから一番下の紫の地方単独事業の部分が割合を増やしてございます。

次、6ページ目をお願いいたします。6ページは、それぞれの事業区分の中での財融のシェアということでグラフがございますけれども、一番上の災害復旧事業、こちらは100%財融が引き受けているものでございます。それからその下、辺地過疎対策事業も、9割弱財融が引き受けている状況でございます。さらにその下、上・下水道事業、それから教育・福祉関連でございますけど、こちらもそれぞれ4割強、3割強というところで、この辺りが財融資金が大きな役割を果たしている分野かと思ってございます。

次のページをお願いいたします。以上の現状を踏まえて、こちらで3点整理させていただいております。1つ目、財融資金は段階的に減少することとされてございますけれども、地方公共団体の課題やニーズを踏まえて、引き続き災害復旧など国が責任を持って対応するべき分野に積極的に対応していくべきではないかということ。それから、国の政策と密接な関係のある分野にも対応していくべきではないかということが1つ目。

2つ目でございます。新型コロナウイルスは、この後どうなるか分からない状況でございますけれども、引き続き地方財政への影響を踏まえつつ、民業、民間等資金の補完としての役割を果たしていきたい、いくべきではないかというのが2つ目。

3つ目、引き続き我々ども従来からやってございます実地監査や財務状況把握などにより、財融資金の償還確実性をしっかりと確認するとともに、それだけではなくて、その地公体に対して財政健全化や課題解決に向けた取組を支援するような役割を積極的に果たしていくべきなのではないかというようなことを、現状、基本的な考え方の整理とさせていただいてございます。

その後ろからが、今し方の実地監査、それから財務状況把握の具体的な参考資料でございますので、飛ばさせていただきまして、11ページ目、次の要求の概要に移らせていただきます。11ページ、こちらは令和4年度要求の概要ということで、総務省から提出されたものでございます。地方公共団体が必要とする地方債額については、ご案内のとおりかと思いますけど、8月末の段階での地方財政収支の仮試算を踏まえ、令和4年度の地方債計画案に基づいて要求がなされるところでございます。この表の上段、事業計画実施に必要な資金の合計額というものがございますけれども、こちらが令和4年度の地方債計画の案の規模になってございます。具体的には、11兆4,324億円と、前年度に比べて2兆2,048億円の減少となってございます。こちらにつきましては、地方税等の税収増が見込まれることから、財源不足が減少し、臨財債の発行が抑制される見込みになることから、こういう数字になってございます。ということで、その下の財融資金の要求額につきましても、2兆9,686億円となってございまして、前年度比7,153億円の減少となってございます。

なお、もうご案内のとおり、例年のごとくなんですけれども、今後、地方債計画は年末の国の予算編成、地財対策等を踏まえて所要の修正が行われる予定となってございます。それから、東日本大震災分に係る地方債計画につきましては、所要額の全額を公的資金により確保することとされてございますので、こちらについても、年末にかけて別途要求されるという姿になるかと思います。

次のページをお願いいたします。こちらは参考でございますけれども、左側の表は、要求と決定を年度ごとに並べてございます。一番下の赤枠が、先ほど申し上げました令和4年度の地方債計画の要求額、それから財政融資の要求額になってございますけれども、いずれも令和3年度の要求ベース、決定ベースからも少ない、減額された金額になってございます。

要求の概要は以上のとおりで、あとは参考資料が並んでございますので、19ページ目へ進んでいただければと思います。編成上の論点ということで、今回は防災・減災・国土強靱化にどのように関与しているかというような観点から、少しご議論いただければと思ってございます。

具体的には20ページ目でございます。防災・減災・国土強靱化対策関連事業ということでございますけれども、こちらは令和2年12月に決定された「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に基づき、令和3年度については、防災・減災・国土強靱化緊急対策事業債に積極的に財融資金を配分しているところでございます。具体的には、一番上の枠の部分でございますけれども、5か年加速化対策の初年度ということで、令和2年度補正予算において措置された財融資金が6,013億円ということになってございます。このほか、2つ目の青四角のところでございますけれども、防災・減災・国土強靱化に資するライフラインや、排水関連インフラの支援としまして、緊急自然災害防止対策事業債のうち、流域治水対策への財融資金の配分を開始させていただいております。

それから一番下の青四角でございますけれども、下水道事業債ということで、こちらは洪水防止等に資する雨水処理対策について、財融資金の優先的な配分をしてございます。

次のページをお願いいたします。少し背景、ファクトを整理させていただいたものでございます。左上のグラフでございますが、こちらは公立小中学校施設に関する築年数別のストックの推移を示したものでございますけれども、赤い部分の築30年以上の老朽施設の面積が大幅に増加しています。他方で、青い折れ線グラフ、こちらは修繕費の推移ということでございますけれども、平成3、4年辺りをピークに、凸凹しながらではありますけど、右肩下がりに下がっているようなグラフになってございまして、修繕費の総計が減少しているということで、公共文教施設の老朽化対策が十分に行われていない、もしくは先送りになってしまっているのではないかというのが見て取れるかと思います。

その下の公営住宅の築年数、公営住宅の状況でございますけれども、こちらは約50%程度の公営住宅が1980年以前に建設されたもの、つまり築40年以上となってございまして、早期に修繕・更新等の措置が必要になってくるのが見て取れるかと思います。

右の上のグラフ、今度は下水道の敷設年数ごとのストックでございますけれども、標準耐用年数の50年を経過した管路が、赤い矢印から左の部分でございますけれども、約2.2万キロメートル、これが、グラフの外に表がございますけれども、10年後、7.6万キロメートル、20年後、17万キロメートルと、今後急速に増加するおそれがございます。

最後に、右下、廃棄物処理施設の状況でございますけれども、ダイオキシン類対策のために1990年以降整備したものが更新時期を迎えてございまして、これまで耐用年数とされてきた20から30年程度を超える施設が今後増加していくのではないかというような状況でございます。

22ページ、次のページをお願いいたします。以上を踏まえて論点ということでございますけれども、2つ整理させていただいてございます。

1つ目、近年頻繁に発生する自然災害等に対応する必要な防災・減災に資する事業や、地域のライフラインとなる公営企業債など、国として重点的に資源配分すべき事業については、引き続き財融資金を積極的に措置すべきではないかというのが1つ目。

2つ目、更新時期を迎える公共施設等の増加が見込まれることも踏まえ、特に資金調達能力の低い地方公共団体に対し、柔軟に対応しつつ、着実な改修・更新等が進むように支援することとしてはどうかということをまとめさせていただいてございます。

下に点線囲みがございますけれども、これまでの骨太の方針ないし当分科会での考え方を整理したものでございますけど、基本的には、この方向性に従った問題提起かと思ってございます。

私からの説明は以上でございます。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。それでは、ただいまの漆畑計画官の説明を踏まえまして、委員の皆様からご意見、ご質問をお願いいたします。挙手ボタンを確認しながら指名させていただきますので、そのままお待ちください。ご発言の際に資料を引用される場合には、資料番号と該当ページもおっしゃってください。また、要求側の方々にご質問いただいても結構でございます。

それでは、どなたからでも結構です。それでは、高田委員、お願いいたします。

〔高田委員〕ご説明いただきまして、どうもありがとうございました。私がお聞きしたかったのは、今のこの地方の議論ということで、地方のファイナンスということに関しまして、地域の持続性ですとか、最近非常に重要になっておりますのが環境への配慮の観点ということで、そういう観点から、グリーンボンドの発行というんでしょうか、環境債と申しましょうか、こういうことに関する議論は、今回の視点の中でないのかどうかということです。幾つかの地方公共団体の中では発行がもう既にあるわけですが、今後のこういう脱炭素の環境の中で、こうした配慮の議論はどうかということがお聞きしたかった点でございます。

以上でございます。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。それでは、林田委員、お願いいたします。

〔林田委員〕ご説明ありがとうございました。幾つかあります。

まず、資料1の4ページ、財融の事業別貸付額、これを見て目立つのは、臨財債がこれまでの減少・横ばいトレンドから明確に上昇トレンドになったということではないかと思います。コロナ対策の重要性を考えますと仕方がない面もありますけれども、今後詳細が見えてくる岸田内閣の経済対策があります。さらに地方の支出が増え、臨財債も膨らむのではないかと懸念をしています。

それで、緊急時の支出に財投で手当てするというのは、これはやむを得ないとしても、確実な償還という点は揺るがせにできないと思っています。ご説明では飛ばしてしまいましたが、16ページの参考5を見ますと、2022年度は財源不足が解消して臨財債の発行はない見通しとありますけれども、これは、経済対策による追加コストのことを考えていないのではないかと見込まれます。グラフの前のほうの年度を見ていただくと、リーマン・ショック後に臨財債の発行が急膨張しておりまして、その膨張も長いこと続いています。こうした歴史を振り返れば、ポストコロナ時代についても、地方債の大量発行があってもちっともおかしくないと思っています。もう少し財投当局としても先行きに対しての危機感をお持ちになって、確実な償還あるいは臨財債の残高減少に向けた道筋について、財投当局としての見込みあるいは取り組む構え、こうしたものをきちんと示してもらいたい。単に今の時点では発行の見込みはないと済ませないで、その辺りも踏み込んで検討していただきたいというのが1点です。

地方分野でもう一つ際立っていますのが、防災・減災・国土強靱化向けの財融の強化でありまして、防災・減災の重要性、それに財投を活用することは理解しております。ただ、やや財投当局の姿勢が、この文章の書き方が前のめりなんじゃないかという気がしているので、指摘をします。例えば、資料22ページをご覧ください。論点でここにまとめてありますが、ライフライン向け公共事業債や公共施設更新等について、財投を積極的に措置すべきではないかとか、着実な改修・更新を支援することとしてはどうかとあります。ただ、ライフラインや公共施設につきましては、人口減少や地方経済の現状を考えれば、今ある施設をそのまま全て更新・改修というのは、現実的ではないことは皆さんご承知のとおりです。もちろん、地域住民の暮らしと安全を支える公共インフラは重要でありまして、更新は急がれると。先行きの見通しも厳しいことは先ほどの説明で理解しました。財投でしっかり支援していく必要性について異論を申し述べるつもりはありませんが、しかし同時に、選択と集中という視点も持ち、コンパクトシティといった将来のまちづくりとの整合性を取る。あるいは、各自治体の人口見通し、公共事業体の収支の持続可能性、こうした点も総合的に勘案して、これは財投で措置すべき案件なのかどうかということを精査する姿勢を財投当局としてしっかり示していく必要があると思います。

財投当局としては、説明にもありましたけれども、財務状況把握あるいは実地監査で目配りするというお考えなのでしょうけれども、この論点を読む限り、防災・減災、国土強靱化には、財投はとにかく一方的に積極的に措置していく方針だと受け止めてしまいます。この表現と同時に、選択と集中を行うといった一定の抑えがないと、地方に対しても誤ったメッセージを送りかねないと私は思います。現行の表現を踏襲して、つまり、そうした補足をせずに財投当局としての方針を示すとすれば、私としては賛同いたしかねるということです。

長くなりました。以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。それでは次に、江川委員、お願いいたします。

〔江川委員〕どうもありがとうございました。ご説明もどうもありがとうございます。私の問題意識は、今ご発言されたのは林田委員だったのかもしれませんが・・・。

〔翁分科会長〕はい、そうです。

〔江川委員〕どなたかよく分からなかったんですけれども、共通する面がございます。公共施設の老朽化への対応というのは、もちろんとても重要ですし、特に被災した地域の復興も緊急を要することは理解できます。ただ、今、林田委員もおっしゃったように、人口減少に応じて、コンパクトシティ化ということはしっかり政策としてやっていく必要があると思います。東日本大震災のときには、将来的には人口減少が見込まれている地域だったところも含めて、結果的にはほぼ原状回復という形で、かなりの投資がなされたと伺っています。

ですから、私のご質問は、そういった選択と集中あるいはコンパクトシティのような考えに基づく各地域の長期計画に照らして、必要性をチェックするような仕組みが制度的にあるのかということをお伺いしたいと思います。もしそれがシステマチックになされていないのであれば、ぜひそれをつくっていただきたいと思います。

地方ではございませんけれども、例えば東京都心でも、人口が減ったからといって小学校を潰して、また10年後ぐらいに人口が増えたからといって小学校がまた新たに造られるという例を見かけます。それぞれ地公体で実情に応じてやっていることなので、その一つの例をもっておかしいと言うわけにもいかないのは分かりますけれども、限られた財源を賢く使っていくために、長期的な計画に照らして財投を使うという制度をぜひ設けていただきたいと思います。

ですから、長期計画に照らしてチェックする制度があるのかというご質問と、それから、もしそれがなければ作ってほしいというコメントです。よろしくお願いします。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。それでは、渡部賢一委員お願いします。

〔渡部委員〕意見です。計画官のご説明から割愛された8ページの監査を通じたアドバイス事例というところです。この実施はコロナ禍の下で大変だと思いますけれども、前にも私申し上げましたように、どんどん財務省さんは頑張っていただきたいなという意見でございます。事例の①、②について書かれておりますが、民間企業の活用とか、公的機関同士の連携、あるいは国と地方との連携、あるいは広域的な動き、これはコロナ禍で高い授業料を払ったものだと皆んなで認識していると思います。いろいろな事業展開で、デジタライゼーションの推進が必須だと思われます。サイロ化というかタコつぼ化している仕組みを改革するためには、このデジタライゼーションというかオープン化、オープンでやっていくという思想が重要だと思います。そういう意味で、財務省さんあるいは総務省さんも含めて、オープン化、デジタライゼーションの突破口になっていただきたい。大きな絵ばかりじゃなくて、こういう地道なとこから始まる成功例が出ていくというのはいいことだと考えますので、以上、意見でございます。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。それでは、川村委員、お願いいたします。

〔川村委員〕ありがとうございます。2、3点申し上げたいんですけど、いずれも意見です。

まず、臨財債について、これは全く林田委員のご指摘のとおりで、例年こういう問題提起が出されてきているわけですよね。で、何年かすると、また危機が来て元に戻っちゃうという、あまりいい循環でないので、ここはぜひしっかりとテイクノートしておいていただきたいなということが1点目です。

2番目は、ほかの委員からも出ている、主に資料1の21ページ、22ページ、つまり老朽化対応のところで、選択と集中は全くご指摘のとおりでありまして、特に21ページのこのグラフを見ると全部足らないんですけれども、これは少子高齢化とともにアフターコロナの働き方とか生活パターンの変化というのがあるわけですよね。一頃、公共工事で山の中に立派な橋を造ったら、通行量は人間よりも猿のほうが多かったという笑えないような話があったわけです。

財投分科会は政策評価という大変大きな武器を持っているわけですが、この分野について、例えば関係省庁である国交省等とも協力しながら、早急に、要するにグランドデザインというか、どういう分野を選択と集中していかなきゃいけないのかという絵を描かないと、一筋縄ではいかないことは十分分かるんですけども、選択と集中すべきだし、ある程度数字の裏づけを持ったシミュレーションをぜひやっていただきたいなと。逆に、質問的に言えば、そういう動きはないのですかということになります。

この点に絡んで1点、先ほど高田委員からグリーンボンドというご指摘があって、これは一般論として大変魅力的ではあります。ただ、気をつけなきゃいけないのは、今、気候変動とかカーボンニュートラルというのは葵の印籠になっていて、何でもSDGsの時代なので、それを見せれば全部通用してしまうような誤解があります。このグリーンファイナンスとかグリーンボンドの部分も、これは金融庁、証券業協会あるいは環境省なんかもいろいろガイドラインづくりをして大分進んではきています。ただ、従来と変わらないのに表札だけ替えているというケースが間々あるということと、もう一つは、グリーンファイナンスもファイナンスなので、それは償還確実性であるとか、あるいはリターンというのはちゃんと計算して、キャッシュフローが読めるものでなければ駄目なんですよね、当たり前の話ですが。ついついグリーンボンドとかいったときに、言葉にやや泳がされちゃっているところがあるので、それはファイナンスであるという当然のことにぜひご留意いただければと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。それでは、原田委員、お願いいたします。

〔原田委員〕ありがとうございます。林田委員、江川委員、川村委員がおっしゃったことと関連する意見になります。今この出ています21ページの幾つかある図表を見まして、防災・減災の重要性というのはもっともで分かるんですけれども、老朽化ということもすごく進んでいます。選択と集中というのももちろんそうなんですけれども、例えば下水道事業一つ取ってみましても、20ページでは、次年度は自然災害に対応するということで、雨水処理対策分を財投で集中的に手当てしましたとあります。これも一つの集中であってよいとは思うんですけれども、財政融資資金を返してもらわないといけないということを考えたときに、集中して投資をする、見直しをするというのはいいんですけれども、果たして本当に返ってくるのかなということを考えたときに、不安になる部分がいつもあります。今回は実地監査の結果の報告でもなければ、財務状況把握についてのご報告でもないんですけれども、果たしてこのずっと貸している状況で、返ってくる部分がどのぐらい見込めるのかというところを、もう少し具体的に絵を描いて説明をしていただければというふうに思いました。今後考えていただければいいんですけれども、お願いします。続く8ページ、9ページでは、以前にもこの手の参考資料を頂いていますけれども、いろいろ事例の説明を入れていただいて、よい試みだと思っておりますが、もう少し具体的に何かできないかと。例えば下水道一つ取ってみても、事業者数は多いですし、職員数も多いですし、M&Aを進めるとか、人口減少社会の中ではM&Aというのは一つの選択肢で、具体的に進めることは可能だと思うんですけれども、そういったところについて、今後考えていっていただければということになります。

以上になります。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。それでは、中里委員、お願いします。

〔中里委員〕どうもありがとうございます。2つ質問させていただきたいと思います。

まず最初は、国土強靱化と防災・減災に関してです。先ほどの説明資料にもありましたとおり、これは老朽化の対策とも関連するわけですね。そうすると、老朽化をどうするかということと同時に、施設の集約化などをどうしていくかということが大事だと思うんです。この点については、先ほど林田委員と江川委員からお話がありましたが、それに関連して言うと、公共施設等適正管理推進事業債というものが別途あって、それがたしか令和3年度、今年度で措置が切れて、経過措置が一部ありますが、終了してしまうんですね。この措置については、もう完全に終了させてしまうのか、それとも新しいメニューの中で取り込んでいくのか、それを伺いたいというのが1つです。

それからもう一つは、ちょっと大きな話なんですけれども、臨財債のことです。資料1の17ページ、参考6というのを見ていただきたいんですけど、これを見ると、臨財債はどこから調達しているかというのがあって、6割が民間で、4割が公的な資金、財政融資と地方金融機構の資金ということになっています。そのことについてなんですが、小規模な自治体が、公募債を出すというのは無理なので、それは致し方ないんですけれども、財融と機構のところについて言うと、臨財債というのは経緯をたどると、昔、財政投融資特別会計が資金運用部と言われていたときに、交付税特会が資金運用部からお金を借りて、それをもとに交付税として全部出していた分を、それはいかがなものかということで、今の枠組みにしたわけですよね。そうすると、今は折半対象財源不足の半分は、国のほうは交付税で見ているわけです。特例加算をしているわけですね。一方で、半分が地方の負担分になっているわけで、それについては、過去経緯からすると、これはなるべく機構さんで受けていただいて、財融は方向的には減らしていくべきではないかと思うんです。この資料を見ると、基調的には確かに財融が減っているんですけど、ただ、最近足踏みをしているんですね。その動きをもう少し加速させていく必要があるのではないか。資金調達の環境が難しければ、それはしようがないんですけども、現状ではそういうことはないので、その点に配慮して、つまり、過去の交付税特会のときからの経緯を考慮して、さらに機構資金による引受けを重点化させていっていただけないでしょうか、そういうことであります。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。それでは、野村委員、お願いします。

〔野村委員〕2点申し上げたいと思います。委員の先生方がこれまでおっしゃったこととほぼ重なっているので、ごく簡単に。

1点目が、防災・減災・国土強靱化に関する取組で、毎年この単年度の数字が出てくるのですが、これは、先ほど川村委員がおっしゃったように、長期のプラン、長期のグランドデザインを描いて、長期の時間軸の中で議論をすべきものだと思います。

それから2点目です。グリーンボンド、グリーンファイナンスというご指摘も先ほどありましたが、私はグリーンとか、そしてもう一つデジタルですね、この新技術の開発と応用を防災・減災・国土強靱化と絡めて進める、そうした視点も公的な資金を入れるからには必要ではないかと思います。単に防災・減災・国土強靱化を資金面でサポートするということのみならず、グリーンやデジタルの新技術の開発を後押しすることにつなげるというような視点を持ってはどうかと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。それでは、ただいまのご質問やご意見につきまして、まず、漆畑計画官からご回答いただければと思います。

〔漆畑計画官〕ご意見、ご質問ありがとうございます。ざっと私から、理財局から、答えられるものを答えさせていただきます。

グリーンボンドのお話が高田委員から出たかと思います。これは、もし場合によっては後ほど総務省から補足いただければと思いますけど、幾つか政令市なんかで出してございますけど、全体の動きにはまだなっていないという認識でございます。

それから、臨財債に関して何人もの委員の先生方からございました。我々もそこは非常に意識してございまして、この資料の18ページ目でございますが、これはよくよく釈迦に説法でございますけれども、財融資金としては、引き続き抑制な関与、抑制に努めるべき、いろいろご提言いただいてございますので、年末に向けて、しっかりと総務省とここは折衝してまいりたいと思ってございます。

それから、防災・減災についても、何人もの先生からご意見いただきまして、若干前のめりになった書き方なのかもしれないですけど、しっかりと中身を見つつ調整してまいりたいと思いますし、それから、全体の適正管理みたいのはどうなっているかというお話もございましたけれども、一応、政府全体としても、その辺りは非常に問題意識を持ってございまして、特に地方公共団体の公共施設については、公的ストックの適正化という観点から、長寿命化の徹底、老朽化への対応、地方の事情に応じた公共施設の統廃合を進めることということを論点として持って、総務省においても、公共施設等総合管理計画というものをつくって、それぞれ個別施設ごとに、どういうふうにこの学校施設を例えばまとめて、それをどういうふうに長寿命化するかとか、そういう計画を自治体ごとに今立てていただいて進めるような、そういう全体の動きになっているかと思います。後ほど総務省さんから補足いただければと思いますけれども。

それぞれ役所ごとにそういうストックマネジメント的な話はやってございまして、あと、自治体ごとにそれぞれ持っているものについて、まだ全体計画ができていないところは計画を立ててしっかりと長期的な視点でストック更新をしていくというような方向性にはなっていると承知してございます。

それから、もちろん選択と集中、それからどういうふうに維持していくかというのは、我々としてもしっかり意識していかなくてはいけないのかなと思ってございます。

それから、老朽化施設のめり張り的な話の中で、中里委員から、公共施設の適正化債の話、13ページ目でございますけれども、一応事業としては、6の(7)公共施設等適正管理ということで、令和4年度計画額としては入れてございますので、この令和3年度で期限が切れるということですけれども、一応数字としては入っているのかなと思ってございます。

以上ですかね、ざっと。いろいろとご意見、ご指摘いただいたのを肝に銘じて、年末に向けてしっかり編成を総務省と調整してまいりたいと思ってございます。

以上でございます。

〔翁分科会長〕例えばさっき原田委員からご質問があった下水道とか、雨水処理の償還確実性はどう確認しているのかというようなこととか、あと、中里委員から、機構分にもう少し引き受けてもらうという考え方があるのかということについてもご質問ありましたが、いかがでしょうか。

また、野村委員から、少し新技術を絡める防災ということをできないかというご意見、その点についてはいかがですか。

〔漆畑計画官〕失礼しました。機構分のほうですけれども、そういう意味では、今この参考資料の6になりますが、17ページ目でございます。まだこの資料を言及されてそういうお話があったかと思いますけれども、これが今新しい数字になると、大体例年ベースの23%に下がるような感じになると思いますので、そこはしっかり意識して、引き続き総務省と調整したいと思います。

それから、原田先生からの償還確実性は、もちろんそのとおりでございまして、我々もしっかりそこは監査、それからもう少しアドバイス的な機能をしっかり進めてまいりたいと思ってございます。そこは見ていきたいと思います。数字というのは今手元にございませんけれども、参考資料として飛ばしてしまいましたけれども、債権者としての各自治体にお伺いしたときの財務監査みたいな面を通じてしっかりと見ていきたいと思います。

それから、新しい技術のほうですね、デジタル、それから新技術の開発というところですけれども、そこも我々、広い立場というか横串で動ける立場なので、どうしても自治体がタコつぼになっていて分かっていないところがあるので、セミナーとか、横展開できる新しい技術みたいなものをしっかり財務事務所などを経由して展開するとか、アドバイス機能をしっかりとそこは発揮して進めていきたいと思ってございます。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。総務省からお願いします。

〔総務省自治財政局新田地方債課長〕総務省でございます。それでは補足的なご説明を申し上げたいと思います。

まず、グリーンボンドの関係でありますけれども、先ほど計画官からもありましたが、幾つかの団体で取組が進んでおります。足元を見ておりますと、スプレッド差は基本的に起きておりませんので、同一団体で出しているグリーンボンドと通常の地方債の市場の金利差という面では、評価は同じということになっているようでありますけれども、じゃあ、なぜ自治体が取り組んでいるかといいますと、今、足元の地方債の市場関係の需給関係が非常によろしいわけでありますが、将来のことを考えて、多様な投資家を確保していきたいという自治体側のニーズもありまして、一部の自治体で積極的な取組が進んでいるという面が見て取れます。

また、次に、岸田内閣の経済対策の追加コストのお話もありましたけれども、今議論されております補正予算の関係で申し上げますと、今回この補正予算がもしできますと、恐らく地方負担が発生いたします。この部分についての地方債は、臨時財政対策債ではございませんで、補正予算債という別の地方債で対処することになりますので、今回の補正予算に関して申し上げると、そういう仕組みになってございます。

あと、これも計画官からご紹介いただきました公共施設等総合管理計画については、ほぼ全ての団体がつくっておるのですけれども、定期的に人口減少等を踏まえて見直す必要があります。それで、今何をしているかといいますと、国土交通省や文科省を中心に、個別施設計画ということで、学校であるとか、道路であるとか、下水道であるとか、施設区分ごとの個別施設計画というのを各自治体につくるように関係省庁が要請をいたしておりまして、それも進んでおります。こういった個別施設計画の策定を踏まえて、今、公共施設等総合管理計画そのものをもう一回見直してくれないかということを総務省から各自治体に働きかけをしている状況でありますので、ご議論ありましたように、人口減少やコンパクトシティ、また、老朽化したものをただ単純に更新するのではないという考え方を自治体は持っておりまして、こういう総合管理計画に基づいて事業を進めていくというふうに考えております。

あと、それに関連しまして、公共施設等適正管理推進事業債というのが今ございまして、令和3年度で期限を迎えます。これは令和4年度以降どうするかということについては、年末の地方財政対策で決着をいたしますけれども、状況だけ申し上げますと、地方財政審議会というところがございまして、こちらで、延長すべきではないかという提言が1つなされておるというのが事実関係としてございます。またもう一つ、多くの地方自治体の皆さんから、ぜひ延長してほしいという声もいただいておりますので、こういったことを踏まえて、年末に議論を進めていきたいというふうに思っております。

また、臨財債でありますけれども、これはもうこの分科会で毎年議論になっておりますけれども、総務省のスタンスとしては、交付税の代替財源という位置づけもありますので、国の一定の関与は必要だろうと。特に、政令市を除く一般市町村においては重要だろうと思っておりますが、ただ、資料の参考6にございますように、この間ご覧いただくと、財政融資資金も、機構資金も減少トレンドにございます。機構でより多くというご意見もございましたけれども、最近の流れとしては、財政融資の動きと機構資金の動きが同じような動きをしておりまして、機構側の意見も聞く必要がありますけれども、来年度は臨財債が減る見込みとなってございますので、例年ベースに戻しまして、縮減傾向で両者足並みをそろえて議論できないかということを現時点では考えているところでございます。

私からは以上でございます。

〔翁分科会長〕冨田委員、それではお願いします。

〔冨田委員〕ありがとうございます。総務省の方にご質問させていただきます。今ご説明あった中で、グリーンボンドなんですけども、これは、従来の地方債の適正基準を完全に満たすものに限定されているでしょうかというのが1点目。

それから2点目に、今ご説明あった補正予算で地方債が出る分について、臨財債ではないというご説明をいただきましたが、それについても、従来の地方債、つまり適債基準を満たすものなのかどうかというお話をいただきたいという点。

それから3番目に、臨財債について、我々は大変心配しているというご意見がたくさん出たわけですけども、交付税の代替財源だという話を、またそれに近い話が中里委員からもあったわけですけれども、私は基本的には、一般財源総額を実質同水準に保つルール、これを2011年からずっと守ってきて、それがゆえに、これまで臨財債が発行がゼロになったり、あるいは臨財債の残高を、若干ですけども償還もできたりしていますので、このルールをこれからもきちんと守るということが、臨財債の発行抑制、そして残高抑制に寄与するのだと考えております。そこら辺、今申しましたような理解でよろしいでしょうか。

〔翁分科会長〕それでは、ご回答よろしくお願いします。

〔総務省自治財政局新田地方債課長〕ありがとうございます。まず、グリーンボンドについては、現在自治体が取り組んでおりますのは、例えば環境に資するような事業であるとか、個々の事業をパッケージにしまして、それを使途とするものとして発行しておりますので、事業ごとの同意基準を満たしたものを大前提として行っておりますので、ルールの範囲内でやっておられるということです。

また、補正予算債については、臨財債と異なりまして、主に国土交通省や農林水産省の公共事業の補助裏分に当たる事業債でございますので、適債性等についても問題はないというものでございます。

あと、一般財源同水準ルールについては、もうご案内のとおりでございますけれども、今回3年間延長ということが決まりましたけれども、一番大事なことは、歳出の水準をいかに管理していくかということと、あと、成長戦略等によって国税・地方税の税収をいかに確保するか、その大きなフレームがなければ、臨財債だけ取り上げましても、これは結果論でございますので、国と歩調を合わせた歳出の見直し、そして税収の確保、ここに引き続き努力していきたいと思います。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。林田委員、少し短めでお願いします。

〔林田委員〕短く。経済対策の関係で臨財債のことに言及して、補正予算債で返されたのは、肩透かしを食った感じがしたんですが、今の経済対策は、新聞報道レベルで恐縮なんですけれども、規模としては何十兆円、30兆円とも言われていますし、時期からすると、これは常識的に考えて、15か月予算ということで、次の当初へ食い込んでいくに、まあ間違いないと思うんですね。その場合、当初予算に行った場合には、公共の補助裏だけでは済まずに、臨財債のような性格の地方債も出す必要が出てくると当然思うんですけれども、そこに言及がなかったんですが、その辺は見通しとしては、いかがなんでしょうか。

〔翁分科会長〕お願いします。

〔総務省自治財政局新田地方債課長〕ありがとうございます。当初予算の編成はこれからでございますので、今確たることは申し上げられませんが、ただ、先ほども申しましたように、足元の状況を見ますと、国税も地方税も、コロナの昨年度も想定よりも多かったという面がございまして、それを発射台として考えますと、令和4年度の国税収入と地方税収入は、そこそこ一定程度回復するというふうに見込んでおりますので、それで、先ほど計画官からもご説明あったように、折半対象はなくなっている状況で、これが復活するようなことになると、今ご懸念のようなことはあると思いますが、現時点ではそういう見通しは持っていないということをご報告させていただきたいと思います。

〔翁分科会長〕それでは、この辺りで地方公共団体については質疑を終了したいと思います。総務省、地方公共団体関係者の皆様にはご退席いただきます。どうもありがとうございました。

(総務省担当部局 退席)

〔翁分科会長〕次に、国立研究開発法人科学技術振興機構の要求の概要につきましてということで、お入りいただくんですね、どうぞよろしくお願いいたします。

((国研)科学技術振興機構、内閣府、文部科学省着席)

〔翁分科会長〕それでは、国立研究開発法人科学技術振興機構の要求の概要、編成上の論点につきまして、関口財政投融資総括課長及び内閣府よりご説明をお願いいたします。

〔関口財政投融資総括課長〕財投総括課長の関口でございます。よろしくお願いいたします。

それでは、資料2-1をご覧いただければと思います。2ページ目をお開きください。こちらの右の箱の上段にあるとおり、大学ファンドにつきましては、昨年12月の経済対策において骨格が示されたところでございます。その箱の下の一番下の行にあるとおり、本年6月の閣議決定におきまして、10兆円規模への拡充について本年度内にめどを立てるとされたところでございまして、左上の青の箱表にあるとおり、令和4年度の財政融資の要求として、6,111億円の自己資金等があることを前提として、4兆8,889億円の要求が出されたということでございます。これまで措置された4.5兆円と合わせて、全体として10兆円規模と理解してございます。

次のページをご覧いただければと思います。ちょうど一月ほど前に、岸田総理による所信表明演説におきましても、10兆円規模の大学ファンドの年度内設置が表明されたところでございます。

その次のページをご覧いただければと思います。先般の通常国会において改正されました科学技術振興機構法に沿って、1行目にあるとおり、運用に関する基本指針や基本方針を速やかに策定するとともに、3行目にございますとおり、来年3月には、財政融資を含む借入金の償還計画を策定していく必要がございます。

それから、中段の(2)の3番目のチェックにあるとおり、こうした基本指針や償還計画に、財政融資資金の確実な償還のための事項及び計画を定めるということが法律上明記されてございますので、これらも踏まえて、必要な事項を償還計画等に盛り込んでいきたいと考えてございます。

それからその下に、利益処分に関する規定が紹介されてございますが、JSTも独立行政法人の一つとして独法通則法の適用を受けることになってございまして、利益が出た場合に、過年度の繰越欠損を埋めてなお残余が生じる場合に、大学への助成配分に充当できるということになってございまして、融資された財政融資資金は、大学支援のために取り崩されることはなく、償還計画に沿って順次償還されるという仕組みになっているということでございます。また、その利益処分については、財務大臣協議事項になっているということでございます。

その次のページをご覧いただければと思います。今後のスケジュールでございます。上段が支援先の大学関係、下段が資金運用関係でございます。まず下段に関連してでございますが、今後速やかに運用の基本指針や運用の基本方針を策定して、JSTにおいて体制整備が進められ、来年3月の運用開始を目指していると承知してございます。

それから上段については、支援先の大学に関して、年内にCSTI(総合科学技術・イノベーション会議)において最終報告が取りまとめられて、来年の通常国会に関連法案が提出され、成立した暁には、それを踏まえて支援対象大学が指定され、2024年4月から大学への助成が開始されることになると聞いてございます。

それから、その次のページをご覧いただければと思います。本年7月の本分科会でも紹介させていただいた資金運用の基本的な考え方の概要でございます。赤字の部分が財投の償還確実性等を検討する際の重要なポイントかと考えてございます。左側の真ん中にあるとおり、バッファーを6,000億円分確保するとされているところでございます。また、左下の赤字にあるとおり、運用開始5年以内の可能な限り早い段階で3,000億円の運用益の達成と、それから10年以内の可能な限り早い段階で長期運用目標を達成するポートフォリオ構築を目指すとされています。従いまして、段階的にリスクテイクを行っていって、10年以内にグローバル株式とグローバル債券の比率が65対35になるようなポートフォリオの構築を目指す方針というふうに理解しております。

それから、右側のⅢの資金の調達というところですが、機構の債券発行あるいは支援大学からの資金拠出などを実施していく。それから、JSTは毎年度償還計画をつくっていきます。それからその下、Ⅳの機構が遵守すべき基本的な事項として、(3)リスク管理とありますけれども、評価損益の変動に関して一定の水準に達した場合には、結果を国に報告するなどとされているところであります。

それからその次のページをご覧ください。こちらも前回、本分科会に提出させていただいた、支援先の大学に関するCSTIの専門調査会報告が作成した中間まとめの概要でございます。真ん中あたり、2.世界と伍する研究大学に求められる要素とありまして、左下のほうに、事業・財務戦略と豊富で多様な資金とございます。財源に裏づけされた事業戦略を実施できるよう、その事業財務担当役員(CFO)の設置が必要とされているところであります。

それからその下、3番目の当面必要な制度改正ということで、既存の大学制度の特例として新しい制度的な枠組みをつくっていく。それから、国立大学法人における基金制度の構築が必要とされているということでございまして、さらなる検討の上、本年末までに最終取りまとめが行われていくと承知しております。

前回の分科会でのご指摘も踏まえて、本日の分科会でご議論いただければと事務局として考える主な論点を、ご参考までにご紹介させていただきます。1番目が、償還確実性の確保の観点でございます。先ほど、JST法上、基本指針や償還計画に財政融資資金の確実な償還のための事項や計画を定めるという規定があると紹介させていただきました。そこで、財政融資資金の貸付けに係る借用証書や償還計画などに、償還確実性を担保するための具体的な規定を盛り込んではどうかと考えています。具体的には、借用証書に、債務者の債務履行能力の維持を図るために、コベナンツ条項を入れるということが考えられまして、例えば、償還計画どおりの償還が見込み難い場合は、事業の見直し等を行う旨を記載してはどうかということが考えられると思っています。

それから、財政融資資金を確実に償還するためには、下方リスクに備えて、相応の自己資本が必要ではないかと考えているところでございます。

それから2点目が、大学への支援の仕組みでございます。大学への助成に当たっての会計処理はどのように行われるんでしょうか。運用益が出ない場合の仕組みはどうするんでしょうか。特に運用立ち上げ期も含め、大学への支出額の水準をどのように考えているのでしょうか。

それから、財政融資資金が政策目的に沿って適切に使われているか確認できるように、今後の大学への支援額の決定なども含めて、資金の貸手である財務省が関与すべきではないのでしょうか。

それから3番目が、リスク管理でございます。具体的にどのようなリスク管理やモニタリングを行っていくのか。事業自体の見直しを行うラインを設けるべきではないでしょうか。

それから4点目が、ファンド運営でございます。JSTにおいてどのようなガバナンス・リスク管理体制を構築していくのか。ファンドマネジメントの具体的な人数・構成等について、どのように考えておられるのでしょうか。

それから、5点目として、大学ファンドの自立でございます。昨年12月の経済対策では、「本ファンドの原資は、当面、財政融資資金を含む国の資金を活用しつつ、参画大学や民間の資金を順次拡大」と記載されていましたが、支援対象となる大学は、大学ファンドにどのように資金拠出をするんでしょうか。また、国の資金活用が時限的であることを踏まえて、例えば運用益により利益剰余金が拡大した場合は、財政融資資金の早期の繰上償還も検討すべきではないでしょうか。

それから6点目が資金の自己調達努力でございます。財投改革の趣旨を踏まえ、JST債の発行を含め、資金の自己調達を行うべきではないでしょうか。

7点目が将来的な各大学によるファンド運営でございます。本年8月にCSTIで決定された「資金運用の基本的な考え方」の本文において、「将来的には各大学が基金を保持・運用していくことを目指す」とされていますが、各大学において具体的にどのように基金の組成や体制整備、ノウハウ蓄積を行っていくのでしょうか。

8点目が、参画大学の要件でございます。本年6月に閣議決定されました、参画大学の具体的な要件というものはどのようなものになるのか。また、いつどのように決めるのか。大学改革の制度設計とは具体的にどのようなものでしょうか。

以上申し上げたような点が論点として考えられるのではないかと考えるところでございます。

私からの説明は以上になります。

〔翁分科会長〕それでは内閣府からもご説明をお願いいたします。

〔内閣府合田大臣官房審議官〕失礼いたします。本日はお時間をいただきまして感謝を申し上げます。内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官の合田でございます。本日は内閣府だけではなくて、文部科学省研究振興局の坂本審議官、奥野課長、それから科学技術振興機構の喜田運用担当理事、リスク担当理事の甲田理事が参加してございます。どうぞよろしくお願いいたします。

本分科会の先生方には、本年7月28日にもご指導を賜りまして、厚くお礼を申し上げます。その後、先ほど関口課長からもご紹介がございました、10月8日の衆参両院におけます岸田総理の所信表明、それから与党の先生方におかれましても、過日の総選挙において同様の選挙公約を掲げておられ、昨日の官邸の新しい資本主義実現会議の緊急提言でも、10兆円規模の大学ファンドを本年度内に実現し、運用を開始すると明記されたところでございます。私ども内閣府、文部科学省、JST挙げて、岸田内閣が掲げるこの10兆円規模の大学ファンドを、先生方のご指導を賜りながらしっかりと取り組んでまいりたいと存じておりますので、引き続きどうぞよろしくお願いを申し上げます。

まず私から重ねて、大学ファンドの基本的な考え方と、大学改革の方向性について、簡単に駆け足でございますが、ご説明申し上げた後、文科省の坂本審議官から個別の論点ごとにご説明申し上げます。

まず、資料2-2の1ページをご覧いただければと思っております。これは先ほど関口課長からもお話がございましたCSTI本会議で決定をされた資金運用の基本的な考え方を踏まえてまとめたものでございます。ポイントは、改めて申し上げるのも恐縮でございますけれども、博士学生や若手研究者など将来の研究基盤への大胆な投資を実現するために、大学支援ができない、これらの支援ができないということが最大のリスクであるというミッションを負いますこの大学ファンドについて、安定的・継続的な支援の仕組み、6,000億円の支援バッファーを構築すること。それから2つ目には、運用の専門家による世界標準の長期運用、国際分散投資、投資規律遵守を実行すること。そして3番目には、償還確実性の観点からも、償還期にはリーマン・ショック級の金融危機に耐えられる水準の自己資本を形成すること。そして4番目には、ガバナンス改革と併せて、世界トップ大学並みの事業成長と大学独自基金の造成により、世界に伍する研究大学を実現するということでございまして、これについては、来年度通常国会への関連法案の提出の作業を進めているところでございます。

2ページでございますけれども、大学改革の方向性ということで、先ほど関口課長からもお話がございましたけれども、ご案内のとおり、欧米の研究大学がこの15年で事業規模を大きく拡大しているということで、スタンフォード大学の事業規模は、今や東大の3倍から4倍ということでございます。長期的視野に立って大学の事業規模を拡大することが必要ということで、前回もご報告申し上げましたように、年3%の事業収入の拡大にコミットしていくということでございます。

例えば、これは東大がこの支援を受けるということが前提ではございませんけれども、東京大学は、現在、附属病院収入を除いた事業規模が1,800億円でございますが、25年後には3,700億円ということで倍になるですとか、あるいは東大の独自の基金も1兆円規模になるということが見込まれるところでございます。年3%という事業規模の拡大をしながら固有の基金を拡大していくということでございますので、自己収入を5%から7%程度増加する必要がございます。そのためには、上から4つ目のポツでございますが、大学固有の知的なアセットというものを適切にプライシングする必要がある。これが他の行政分野にはない特徴でございますけれども、ご案内のとおり、東京大学とダイキンは10年間で100億円、あるいはIBMの東大ラボは、量子で価値創発型・創出型の共同研究が行われておりますし、それから、東京大学の大学発ベンチャー、東大の上場規模は兆円単位になっておりますけれども、支援者、大学発のベンチャーのストックオプション、あるいは先端設備の利用料などを通じて、その大学の価値というものをプライシングして新しい資金の流れをつくっていく必要があると存じております。

ここ5年の、Ru11という、まず研究を中心とした大学の11大学、もとよりこれらの大学が全て支援されるというわけではございませんけれども、大学との共同研究はここ5年で12.1%、寄附金は5.9%、その他収入は8.7%増えているところでございまして、これらは、この資料の右の下のほうにございますように、社会との対話、大学債であれば市場との対話、共同研究であれば企業との対話、寄附金であれば個人との対話を大学がしっかりと深めていくということにほかなりません。

その上で、この上の箱の一番下のポツでございますが、このような新しい資金の流れをつくりまして、その中で、次代を切り拓く、これまでは全く思いもつかなかった新しいアイデアの研究や若手研究者、博士課程学生などの支援、今は日は当たらないけれども、大学の知的アセットの充実のためには欠かせない分野の基盤の形成といったことに投じるという両利きの経営というのは大学の公共性にとっても重要だというふうに思っておりまして、この3%成長の責任主体がガバニングボード、そして総括責任者が法人の長ということで、先ほど関口課長からございましたように、大学改革の仕掛けというものを、法改正を前提に検討させていただいているところでございます。

同じ資料の3ページ目でございますけれども、これらによりまして、私ども、3ページの詳しい説明は省かせていただきますが、もとより目的は、大学においてワールドクラス・クリティカルマスといったような研究拠点をしっかりと確立し、世界水準の研究とPh.D.の学生さんを輩出していく、あるいはJuniorfacultyを育成していくということをしっかり取り組んでいく必要があるというふうに考えているところでございます。

以下は坂本審議官からご説明申し上げます。

〔文部科学省坂本審議官〕文部科学省研究振興局審議官の坂本です。4ページをご覧いただければと思いますが、先ほどこれは関口課長からご説明があった内容ですけれども、今、内閣府合田審議官より、CSTIで検討されてきた資金運用そして大学改革の枠組みの基本要件について説明をさせていただきました。文科省からは、これらの内閣府の検討を受けて、枠組みの検討、具体的な内容について検討を進めてまいりました。

まず1つ目が、大学への支援と償還確実性の確保についてでございます。大学への助成に当たっての会計処理、あるいは運用益が出ない場合の仕組み、大学への支出額の水準をどう考えるか、下方リスクに備えて相応の自己資本が必要といった点については、まず基本的考え方として、大学ファンドは運用益を基に大学への助成を行うというのは、これまでのとおりの考え方でございます。具体的なものとして、長期的な運用収益率あるいは大学への支出上限というのは、これまでご説明しましたとおりの4.38%、あるいは年間3,000億円というものでございますけれども、特に運用当初につきましては、段階的にリスクテイクを行い、収益率を徐々に高めていくことを想定しているということで、大学への支出についても、収益率あるいは資本剰余金等の状況を踏まえまして、段階的に拡大していくことを考えておるところでございます。

さらに、長期的・安定的な助成の重要性ということももちろんでございまして、一時的な経済的下落時に運用益が出ない場合に備えた支援バッファーとして、過年度の運用益の一部を資本剰余金として積むということを、当面3,000億円の2年分でございますが、これを検討しているところでございます。

さらに、償還確実性という意味で、下方リスクに備えた相応の自己資本として、大学への助成あるいは支援バッファーとして計上した後の残余の額は、全て積立金として計上することを検討しておるところでございます。

この処理の方法については、損益計算におきまして利益が生じ、そしてそれについて、損失、前期からの繰越欠損金を処理した上で残余の額が出てまいります。これを財務大臣協議を経た上で、まず、目的積立金に計上すると。これは大きく2つに分かれます。大学への助成、当面年間3,000億円を上限に、毎年度国が設置する会議体で決定するように今調整をさせていただいております。もう一つが、運用益の不足に備えたバッファーということで当面6,000億円、これは資本剰余金への振替を今検討しているところでございまして、会計処理のために省令で措置することも検討しているところでございます。さらに、その目的積立金を引いた残りの額については、全て積立金として、自己資本として積み上げていくということを検討させていただいているところでございます。

次、償還確実性のもう一つの論点でございますけれども、借用証書あるいは償還計画等に償還確実性を担保するための具体的な規定を盛り込むべきではないかという点は、ご指摘のとおり対応する予定で、現在調整をさせていただいております。

次にリスク管理でございます。リスク管理、モニタリングの方法、あるいは事業自体の見直しを行うラインについては、JSTにおいて標準偏差等をリスク管理上のモニタリング指標として、日次でまず確認をする。その結果を月次で運用リスク管理委員会に報告をし、結果に応じて、投資規律を遵守しながら、市場環境あるいは資産配分方針の見直しの要否を確認して、運用・監視委員会に報告するというふうなプロセスを考えております。

さらに、次のような場合には、文部科学大臣あるいは財務大臣にも報告するということを想定しております。3点ございますけども、1つは、ネットの実現損失(単年度と累計)が資本金相当額を超過する場合、3期連続となった場合には事業見直しの判断を行うということでございます。また、資産評価額が財融資金の残高を下回る場合、あるいは年度初来の総合収益率が基本ポートフォリオの標準偏差のマイナス1倍、マイナス2倍を下回る場合、そういったところについては、政府への報告ということがございます。モニタリングについては、市場リスク、流動性リスク、オペレーショナルリスクといった各種リスクの特性に応じて、複層的にしっかりと行っていくということを検討しているところでございます。

さらに、この財融資金が政策目的に沿って適切に行われているかの確認ということのために、大学への支援額も含めて財務省が関与すべきというご指摘がございましたけれども、これを今後、財務省と引き続き調整を進めさせていただければというふうに考えております。

次に、ファンド運営のガバナンス・リスク管理体制でございます。JSTにおいては、これも既にご説明をしておりますが、運用業務担当理事として、農林中金常務執行役員を務められた喜田理事を本年6月にお迎えをいたしました。さらに、執行部から独立した立場で運用を適切に監視する運用・監視委員会というものを、10月1日付で文部科学大臣が任命をし、設置をされております。

構成は、資料2-2の5ページでございます。そちらをご覧いただければと思います。運用・監視委員会の構成がございますけれども、ここに掲げられている5名の委員の方々にお願いをしているところでございます。既に11月2日に第1回開催をしているところでございます。それぞれ実務経験のある専門家でいらっしゃいまして、例えば中曽氏は、4番目にございますけれども、元日銀の副総裁でいらっしゃって、金融市場の専門家であると。その1つ上のLandisZimmerman氏は、アメリカの有名な研究財団法人のエンダウメント、運用の責任ある立場をお務めになったことがあると。その上の佐藤理事は、日本の大学のエンダウメント、運用の責任ある立場を今実際務められているということがございます。こういった金融市場、国内外のファンド運用、会計監査の責任ある立場で実務経験をお持ちの方により構成されているものでございます。

この運用・監視委員会が、右の囲みにございますけれども、JST法の規定をここに掲げておりますけれども、第20条の2項にありますように、業務方法書等、これらについて、基本ポートフォリオを含めた重要事項について審議を行うと。さらに、3項に示されるとおり、業務と運用状況というものを監視いたしまして、さらにその次の項にございますとおり、必要に応じて理事長に意見・建議をすることができる、そういう機能を持った委員会として設置をされているところでございます。

さらに、資金運用に関わるJSTのガバナンス体制として、投資部門、リスク管理部門、内部監査部門といった3線防御の構築を進めております。

第1線としては、喜田理事が率いられる資金運用本部ということです。これに対して、投資委員会が異なる視点でチェックをし、決定をするという委員会も組織をする。内部統制部門についても、運用リスク管理部、内部統制担当理事が率いるものでございまして、これについては、運用リスク管理委員会というのが組織される。さらに、第3線としては、理事長の下に置かれる内部監査部門において、第3線、プロセス検証が行われるということでございます。さらに、外部有識者で構成される、先ほどご説明いたしました運用・監視委員会がきちっと監視を行い、あるいは審議を行い、さらに全体制の監査については、監事というものがそこをしっかりと監査をするというふうな状況、体制をつくろうということで今進めておるところでございます。

JSTで検討中のモニタリングプロセスでございますけれども、四半期ごとに、投資委員会あるいは運用・監視委員会で、そのモニタリング結果のうち、あらかじめ設定されたチェックポイントに該当した項目について、審議・報告を行う。そして、計画に基づくコントロールということで、月次で運用リスク管理委員会あるいは投資委員会が事前協議・報告を行われるというようなことも想定をしております。

さらに、文科大臣、財務大臣への報告のプロセスでございますけれども、1つ目がネットの実現損失が資本金相当額を超過する、2つ目が資産評価額が財投資金の残高を下回る、あるいは3つ目として、実際のポートフォリオまたは基本ポートフォリオの標準偏差が許容リスクを超過する、4つ目が年度初来の総合収益率が基本ポートフォリオの標準偏差のマイナス1倍、マイナス2倍を下回る。こういったときに、JSTの中で、運用リスク管理部から運用リスク管理委員会に報告が行われ、さらに運用・監視委員会で審議あるいは報告が行われる。そして、1つ目、2つ目、4つ目の報告事項については、文部科学大臣、財務大臣に報告もされる。そういったスキームでしっかりと管理をさせていただくということを考えております。

また、参画大学による大学ファンドへの資金拠出の在り方については、現在検討を行っているところでございます。さらに、ファンドの政策目的あるいは運用に支障がない場合には、必要に応じて早期に財融資金の繰上償還を行う旨、借用証書等に記載するよう調整をさせていただいております。

さらに、JSTの自己資金調達の努力ということについては、市場環境や運用状況等を踏まえつつ、令和4年度中の自己調達、JST債の発行を目指すこととさせていただきたいというふうに考えております。

各大学による将来的なファンド運営でございますけれども、これについては、このファンドの出口戦略として非常に重要だと我々も考えております。独自基金の積立てが長期にわたって可能となるように、国大法における積立金の特例などの制度改正を検討中でございます。この詳細につきましては、CSTIの調査会あるいは文部科学省の検討会議において今検討を行っているところでございます。

さらに、基金造成のための人材供給面の対応としましても、JSTにおいては、OJTプログラムあるいは戦略的な人事ローテーションといった人事育成施策を実施していくということを考えております。

さらに、参画大学の要件あるいは大学改革の進め方についてですが、対象大学の基本的な要件は、内閣府合田審議官から説明があったとおり、継続的な事業成長あるいは現時点における高度な研究力、新たなガバナンスを備えること、こういったことに関係して関連法案をつくり、次期通常国会に提出を目指すということを考えております。さらに具体的な要件については、CSTIの調査会を中心に議論がこれからも進められるところでございます。

文部科学省からの説明は以上です。

〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。それでは、冨田委員、野村委員、江川委員、川村委員、まずお四方からお願いします。

〔冨田委員〕ありがとうございます。3点、質問及び意見です。

1点は、資産評価及び利益の認定方法につきまして、理財局資料の4ページに、独法通則法に従って行うというふうにございます。独法の中には、減損会計を採用して一挙に巨額の損を計上するところがあったりします。私の理解は、運用目的であるから、すべからく資産の時価評価をなさるものだと理解しているんですけども、それでよろしいかどうか。

また、資産の中には、オルタナティブ等、流動性が非常に低い資産もあって、時価評価がなかなか難しいものもあるかもしれませんけども、それはどうするのか。

そして、運用先に運用を一任するという場合の評価について、きちんと透明性を確保しながら評価をする。そういうことについて、どういうふうに損益及び資産の評価をなさるかということが1点目。

シミュレーションが可能ならば、実質実効レート、円のレートを変動させてストレステストをやってみるとか、そういうことも考える余地があるのではないかということが2点目です。

それから3点目に、JST債のお話がございました。財投機関債というのは、基本的には政策目的を実現するために財投機関債を発行するという形が、もうこれは財投改革から20年たって定着してきたわけです。当初は、これは国がやるのか民間がやるのかということを市場に判断させようということで、財投機関債を出したわけです。ですけども、今はもう財投機関債というのは一つのブランドになっていて、国が暗黙に信用を与えている。だから、財投債に非常に近い金利でもって調達できる。ですけれども、大事なことは、JST債は資産運用目的です。これも7月末の会議でご指摘になった点ですけども、他の財投機関よりは高いリターンが得られるんだということをご指摘になりました。それは内外の市場で運用するから、つまり逆に言えば、政策目的が運用なんですね。中小企業支援のための融資とは違って、世界に投資するわけです。まさか大学ファンドでもって、日本経済とか世界経済を活性化するために投資するわけじゃないわけですよね。そうすると、運用目的であるということを、このJST債の投資家がどこまで認識できるか。しかも、政府の暗黙の保証がつくかといえば、なかなか難しいと私は思うんです。それは、リスクを取って運用するからなんですよ。ただ、そういうことも踏まえて自己資金調達と言われているのかどうか。

それから、これは国から財投債で資金調達したもので借金なさるわけですよね。それを優先的に返済するとすれば、自己資金調達は劣後債であるという位置づけなのかどうかということについても明らかにしていただきたい。

以上3点でございます。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。次に、野村委員、お願いします。

〔野村委員〕3点、質問と意見です。

1点目が、財投を時限的とすると明記されているわけですが、次のステップに向けて、自己資本にどのように置き換えていくのか、新たな資金をどう呼び込むかという仕掛けがまだ分からないところですのでお伺いしたいと思います。例えば寄附金の控除の仕組みをもう少し拡大するとか、大学債をもう少し規制緩和するなど、呼び込む仕組みづくりというものをお伺いしたい。先ほど、寄附金も大学債も増えていますという数字を出していただきましたが、そうした自然増で大丈夫なのかどうか、これだけの自己資金増がそれで実現できるのか、何か呼び込む仕組みが必要ではないかという問題意識からお伺いしたい。

資料2-2をみると、民間と大学からの資金拠出という、力強い矢印が記されていますが、これはどういうめどが立っているのか。今現時点ではめどは立っていないのかもしれませんが、もしそうであるならば、どのような可能性や手応えを現時点で感じているのか。例えばですが、大学からの資金拠出とありますけれども、もう既に大学債を出してかなり成功を収めつつある、発行額の何倍もの購入希望額が提示されているようなトップランナーの大学もあります。そういう大学にとっては、自分の大学での大学債の発行よりも、この大学ファンドに資金を出すという、そのモチベーションがどう働くのかということもお伺いしたいところです。それが1点目で、長くなってすみません。

2点目は、ごく簡単に。40年後、50年後のイメージをお伺いしたいと思います。50年後には当然ながら財政融資は完済されているということですけども、ではその50年後、積み上がっている運用資産残高を、大学の出資割合に沿って大学に振り分けて解散するのか、大学の共同運用ファンドみたいなものにするのか、その辺りのイメージを伺いたいと思います。

3点目、これもごく簡単に、モニタリングについてです。日次、月次、それから当然ながら単年度累計でのモニタリングをされる、それは当然だとは思いますが、ただ、それによってあまり運用が短期の視点で縛られてしまわないかということが懸念点です。ここにいらっしゃる皆様には釈迦に説法ですが、投資というのは長期分散投資というのがリスク減のセオリーですので、短期的なモニタリングをすると同時に長期投資でリスクを減らすという、その両方の視点が必要ではないかと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。次、江川委員、お願いします。

〔江川委員〕ありがとうございます。1点質問、それから2点意見を申し述べます。

今回の質問は、研究力を強化するための制度を整えていくのに、どういうふうな計画を持っておられるかをお伺いしたいと思います。特に法人化以降、若手の研究者が激減して、それが研究力を削いでいるという問題があります。ですから、恒久的な研究者のポジションを整備していくということがとても大切だと思います。それから、研究力を高めていくためには、学際的な研究をもっと増やすとか、国際的な共同研究を増やすとか、かなり地道な長期にわたる努力が必要だと思います。これらをどういうふうに進めていくのかという、今回の目的を達成するために、研究力強化についてはどういう計画を考えておられるかということをご質問したいと思います。

次に2点の意見です。

1つは、先ほどJSTでのガバナンスについてご説明いただきました。また、各大学における資産運用の体制整備に関して、積立金の特例など含めて制度改正もご検討中ということも伺いました。ご存じのように、海外の大学では基金が別法人になっているので、それによって、例えば運用の専門人材なども雇いやすくなるとか、そういった制度になっています。日本も同様にすべきだというふうには思いませんけれども、国民の信頼が得られるように、基金の独立性を確保したり、あるいは専門人材の登用ができるようにしたりできるような制度をお考えいただきたいと思います。これが1点目です。

2点目は、償還確実性を確保するということはとても大切だと思います。ただ一方で、そのために監督の仕組みがあまりにも厳格あるいは複雑になり過ぎて、政策目標が達成できないということも避けなければなりません。政策のためにやっているわけですから、その点に留意していただきたいと思います。

具体的には2点あって、1つは資金の柔軟性の確保です。大学の立場から見ると、一般会計の予算からいただくいろいろな研究資金は、柔軟性に乏しくて研究がしにくいという事情があります。基金の運用益というのはそういう意味では柔軟性があるのが大きなメリットだと思いますので、それをしっかり活かしていただきたいというのが1点目です。

それから2つ目は、監督のための仕組みです。いろいろ難しいと思いますが、過度に、例えばKPIが多くなり過ぎるとか、そういうことにならないように、できるだけ少なく、しかも合理的にしっかりモニタリングができるような、そういった仕組みをつくっていただきたいと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。川村委員のところで一回お答えいただきたいと思います。よろしくお願いします。

〔川村委員〕ありがとうございます。大変懇切ご丁寧なご説明で、ただ、まだまだとても難しいよく分からないところがあるので教えてください。意見もあります。

最初に、資料2-2の2ページで、大きな前提が、大学の3%成長を目標にするということが何か全体の大前提になっているという気がするんですけど、その場合に、この図で見るガバニングボードや法人の長が責任者だというんですけれども、具体的に、じゃあ、この責任の客体、対象者は、ステークホルダーは誰なんですか、これが実現できなかったときにどういう責任を取るんですかというのがないと、あまり簡単に責任というような言葉をお使いになるのはどうかなと思うんです。というのは、民間のガバナンスであれば、これはビジネスジャッジメント・ルールに沿っていなきゃダメ。ジャッジメントの範囲でも危ないケースがあるので、D&O保険に入っているわけですよ。そういうことまできっちり考えないで、ガバナンスの責任だとか主体だとかというと、これは大学の長の方が大変気の毒です。また、この3%成長が何となく所与なんだけども、本当にできるのかなという気がします。そこの根拠をお答えいただければと思います。ですから、私の質問の趣旨として、内閣府さん、文科省さんへの質問が大半です。

もう一つ、今度は大学の立場から見てみると、これはトータルで4.38%以上の運用をするわけですよね。そうすると、自己資金を既に調達できている大学にとっては、1.38のオーバーヘッドを払う必要はないので、自分で3%以上運用できれば、このファンドに預けるインセンティブはゼロです。僕が大学の長で、もし大学に責任を負えと言われたら、自分で4%にできるものをわざわざ3%にしか運用できないものでやったら、これはフィデューシャリー・デューティー違反です。そんな危ないことはできません。

そんなに大学が集められるのかということがもう一つ大きなテーマになるわけですけれども、例えば去年、東京大学は200億円の大学債を出しました。デマンド40数倍です。つまり、その気になったら1兆円集められたんですよ、計算上そうなるわけです。もちろん、償還原資がそんなにないはずですから、1兆円なんか取るわけないですけど、ただ、そういう発行主体の大学がもう出てきているということの中で、これをどういうふうに、僕はもう今やこの大学ファンドに反対とか賛成とかそういうことじゃなくて、どう活用するか、モチベーション・インセンティブを考えたときに、例えば東大みたいなところだったら、私はインセンティブゼロだと思うんですね、現状だったら。かえって危ない、義務違反になってしまうというリスクすらある。そこをどういうふうにちゃんと運用、運営していかれるんですか。大学が拠出する意味、マッチング拠出とかおっしゃっていますけども、これはマッチング拠出したら、大学としてステークホルダーに対してアウトになるじゃないですか。大矛盾です、ここは。そこをきっちりご説明いただかないと、ここは、この大学ファンドをよくするためにも非常に危ないと思うんですね。片方で国立大学法人の自立経営とか自己資金と言っているわけで、そこがとても根本的な問題としてあると思います。

それと、その絡みで、ガバナンスについても、先ほどJSTのガバナンス体制について1線、2線という説明をいただいたんですが、1線、2線というのは一体何でしょうか。投資委員会、運用リスク管理委員会は、どういうメンバー構成になっているのでしょうか。

それともう一つ、運用・監視委員会って何するんですかというところが分からないです。これを見ると、重要事項の審議と監視と意見/建議と書いてある。じゃあ、この運用・監視委員会ってどういう権限とどういう責任を持っているんですか。このままだと、単なる絵で終わっているんですよ。決定されているメンバーのご紹介がありましたけど、例えば私の知る限りで、すばらしいメンバーだけども、じゃあ、実務家というんですか、こういう分野のですよ、この運用の分野の、運用チェックの。何よりも、この運用・監視委員会の責任というのと権限、どういう権限があるか。これは審議して監視して意見/建議するといったって、具体的にそれはどういう責任と権限なのか全然はっきりしていない。その辺を教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

〔翁分科会長〕今までのご質問や意見に関しまして、ここの中間段階で、まず回答いただければと思います。

〔文部科学省奥野振興企画課長〕それでは、文部科学省の振興企画課長の奥野でございます。私どもから何点か、最初に運用資産に対する会計基準の適用に関するご質問に関してお答え申し上げます。

基本的には、ご質問のお見込みどおり、独立行政法人のJSTにつきましても、独立行政法人通則法に基づきまして、文部科学省令の規定するところにより、企業会計原則及び独法会計基準等が適用されます。従いまして、お見込みのとおり、投資資産に関しては、基本的には時価評価をベースに行うことになってございますが、その資産の具体の評価の在り方につきましては、業務の実施主体でございますJSTにおいて、会計監査人の監査を受けながら、これらの会計基準を適用した上で確定していくという方法を採ることになってございます。

次に、財投機関債に関するご質問がございました。JST債の発行に関するご質問がございました。こちらにつきましても、JST法の規定に基づいて今回発行することになってございます。そういった観点で、財投機関債として発行する場合につきまして、劣後債になるのかという観点でございますが、JST法の中において、償還関係が劣後するという規定がございませんので、一般の普通の債券として成立する形になります。当然これが財政融資の償還と競合等しないように、具体の発行計画等をつくるに際しましては、財務省とも調整しながら進めてまいりたいと思っております。

また、政策目的との合致につきましても、これもJST法の中におきまして、当該事業につきまして、大学への助成というのを本来業務とした上で、それに必要な財源の調達として運用ができるという観点になってございます。こういった点につきましても、ご指摘いただきましたとおり、具体の債券の発行等につきましては、関連法令の内容、その他政策的な意義、この運用益というのが大学助成にのみ法律上使えるというような点を明記する必要があると認識しておるところでございます。

あと1点、法律的な観点といたしまして、最後のご説明、ご質問がございました運用・監視委員会につきましては、配付資料等の中において、法律上の権限等を明記されているところでございます。具体的には、法律に定められた権限に基づきまして、JSTのこの運用に関する重要事項に関して審議等を行うという形になってございます。従いまして、法律上の権限といたしましては、JSTの中に設置された審議機関として、JSTの投資行動等に関する当否等を審議判断するという権限が課されてございます。したがって、役員等執行機関が持つような形での法的な責任というのは法律上課されておりません。

私どもから3点ご説明申し上げます。

〔内閣府合田大臣官房審議官〕引き続き内閣府から幾つかのご質問についてお答え申し上げたいと思います。

まず、冨田先生から、シミュレーションについて、為替についてのご指摘がございましたが、今後そのような形のシミュレーションも、取り組ませていただきたいと思っております。

それから、野村先生からご指摘があった点でございますけれども、ご指摘のとおりかと思います。昨年の経済対策にございましたように、今回こういった形でJSTに大学ファンドを起こしていただいて、これは今後、大学において固有のファンドを成長させていくということで展開をしていくことが大事だと思っておりますが、その際、大学自身も、それからファンドについても、自己資本をどう呼び込むかということが大事だというのはご指摘のとおりだと思っております。もちろん、大学ファンドにつきましては、大学ファンド自体の収益、大学からの出捐、それから大学の固有の基金のためのお金をある意味では大学ファンドがリザーブするといったもので、大学ファンド自体の運営を行っていくということでございますが、同時に、ご指摘のとおり、大学自身が新しい資金の流れを呼び込む仕組みというのも大事だと思っております。これは現在、大学ともいろいろ個別にご相談させていただいておりますが、例えば、先ほどお話がございました大学債の使途については、現在、ハードの整備にしか使えないという縛りがございます。これを教育研究自体に使っていくというような規制緩和ですとか、リカレント教育に関する例えば税制をどう考えていくのか、あるいは日本版のプランド・ギビングをどう考えていくのか、あるいは土地活用についてどう考えていくのかということについて、大学の執行部あるいは先生方とも、PEAKSという内閣府を中心とした研究大学のアドミニストレーターの連携の場というのがございますので、引き続き議論させていただき、これらを一緒に取り組ませていただきたいと考えております。

それから、現在のところ、50年後どうするかということについての政策的な方向は定まってございません。

それから、川村先生からお話がございましたガバニングボードの責任と3%成長のことでございますが、ご指摘のとおり、例えばこれはあくまでも数字で申し上げますと、東大が支援対象となったということが決まったわけではございませんが、大学は、東大は1,800億円、附属病院収入を除いて事業規模がございますけれども、共同研究は現在180億円弱、寄附金は180億円弱ということでございまして、この数字について、先ほど申し上げたような形で年々歳々努力をして増やしているという状況でございます。ただ、これを共同研究8%、寄附金を5%増やしたとしても、増加額は年22億円ということでございますので、3%成長に必要な54億円には足りないということでございます。そこに大学ファンドとマッチングをすると同時に、大学固有の基金というものを造成していくということが必要だというふうに思っておりまして、これからさらに、大学とのキャッチボールをしながら議論を進めさせていただいておりますけれども、大学においても、これまでの努力をさらに進化させるということによって実現の可能性はあるというふうに思っています。

その意味においては、先ほどガバニングボードの責任という話がございましたけれども、私どもは、そういう意味で、ガバニングボードあるいは法人の長の責任は大きいというふうに思っております。ここにどういう人を得て、どういう責任を果たしていただくか、先ほど保険の話もありましたけれども、その点については、さらに議論を深めさせていただきたいというふうに思っております。

それから同時に、先ほどお話がございましたけれども、自分で、大学自身が運用できる力がある。実態を申し上げますと、東京大学においても、なかなか自分で運用するというのは、すぐにできますというような状況とは言い難いと思っておりますけれども、そういう状況の中で、自分で運用するということはあり得るとは存じておりますけれども、それから東大の大学債の発行についても先ほどおっしゃったとおりでございますが、先ほど申し上げたように、東大の財政規模に比べて自己収入というものの規模が必ずしも大きくないものでございますので、3%成長し、大学の固有の基金をつくっていくということにおいては、大学ファンドを活用するということに、大学自身も大きなメリットがあり、経営上もそのメリットを生かしながら大学の成長を図っていくということが大事ではないかというふうに考えている次第でございます。

以上でございます。

〔文部科学省坂本審議官〕もう1点、文科省から、川村委員のご質問について説明させていただきたいと思いますけれども、運用・監視委員会についてご質問がございました。こちらのメンバーの方々の実務経験等については、もうよくご案内のことかと思いますけれども、先ほどご説明しましたLandis Zimmerman氏については、ハワードヒューズ・メディカル・インスティテュートで、2兆円を超える規模のエンダウメントの運用をされるCIOでおられたというふうなことを伺っております。そのほか、佐藤先生も、GPIFにも投資委員として……。

〔翁分科会長〕いや、むしろ、運用・監視委員会の責任はどうなっているのかということです。

〔川村委員〕すみません、僕が聞いているのは、1線、2線と言っているけれど、そこはどういう体制になっているのかということなんですよ。

〔文部科学省坂本審議官〕申し訳ございません、後回しになりましたが、投資委員会あるいは運用リスク委員会のメンバー構成については、JSTの甲田理事からご説明いたします。

〔川村委員〕別に個別メンバーのことを聞いてない、僕は組織のことを聞いているので、それを教えてください。AさんBさんがどうだこうだなんていうことは、もう決まっている方で、第一、その方々に失礼な話なので、そんなことは関心ありません。そうじゃなくて、このガバナンスの体制について、1線、2線って何なんですかということを中心に伺っているのです。

それと、運用・監視委員会の責任は何だと。一応、不満足ですけど、運用・監視委員会にはさっきお答えありました。で、1線、2線のところを教えてください。

〔科学技術振興機構甲田理事〕JSTの理事の甲田でございます。ただいまご質問のありました1線、2線でございますが、もともと委員長になっております者が、第1線の運用業務担当理事と、それから第2線の内部統制担当理事ということで、それぞれの責任権限が違う者の下に投資委員会及び運用リスク管理委員会が組織されているということ。さらに、合議の過程で取りまとまらない場合では、例えば運用・監視委員会等に報告するというような仕組みをつくるということで、この1線、2線の統制を図りたいというふうに考えておるところでございます。2つの委員会のメンバーは同じでございますが、そもそも、委員長の理事の職務権限が違うというところで統制を図りたいと今考えておりますが、まだこれは検討をこれからも引き続き進めさせていただきたいというふうに考えております。

以上でございます。

〔川村委員〕1点だけ。ここは十分ご留意ください。表札が違うだけでメンバーは一緒ですといったら、これはえらいことになるので、これは前向きな意味で十分ご検討いただきたいと思います。

〔翁分科会長〕よろしいですか。あと、その運用・監視委員会は、一応権限はあるんだけど、責任は何も問われないという形にはなっているということですね。

〔川村委員〕そうですね、今のお話は。これも時間がありませんから。

〔翁分科会長〕はい、すみません。それでは、大分延長しそうなので、もしお帰りを急がれている先生方がいらっしゃいましたら、先にいたしますが、大丈夫でしょうか。

〔川村委員〕私、もう間もなくです。

〔翁分科会長〕それでは、中里委員、渡辺努委員、原田委員、高田委員の順番でお願いいたします。その後、渡部さん。

〔中里委員〕ご説明ありがとうございます。皆さんいろいろお立場があって苦労されているので、こういうことを申し上げてはいけないとは思うんですけど、今お話を伺っていますと、厄介な投資信託とか、あるいはややこしい仕組債のセールスが来て、さて、これからどうしたものかというような、何かそういう居心地の悪さをとても感じます。まず確認しておかないといけないのは、これは産投出資じゃなくて融資ですから、ということは、確実に返してもらわなきゃいけないお金なんですよね。もし約定のところに特約が書いてないとすると、リスケになったらこれはもうデフォルトなんですよ。デフォルトになるということは、クレジットイベントが発生しちゃうということになるので、そこのところの緊張感というのはやはり持たないといけないと思うんですね。

その上で確認をさせていただきたいんですけど、これは債券と株式で運用するわけですよね。それで、例えば財政融資資金でお貸しした分は日本国債で運用してくださるというならいいんですけど、そうじゃないと、これは元本が戻ってこない可能性があるわけです。ということは、これは普通に考えると、負けが込んだときとか、あるいは勝ち進んだときもそうですけど、資産価額の変動をレンジを見て、要するにダウンサイドのリスクが発生して、負けが込んじゃったときに、ちゃんと戻ってこない確率がどれぐらいあるのかを知りたいわけです。その前提として、この4.38%で回るファンドのボラティリティーはどれぐらいになっているんでしょうかということを伺いたい、それが1つです。

それからもう一つは、今、理事さんはもうご就任いただいて、運用・監視委員会の委員さんもきちんと決まりましたと伺いました。ただ、この令和4年度って遠い先の話じゃなくてあと5か月後ぐらいですよね。この運用はバイトを頼んで募集かけてシフトを組むというわけじゃなくて、すごい人を呼んでこないといけないわけですよね。ということは、もし令和4年度、つまりあと5か月後にスタートさせるとすると、もう運用の責任者の方は相当程度ご内諾をいただいていると思うんですけど、お名前はもちろん今は言えないでしょうし、正式なご承諾もまだなくていいんですが、要するにご内諾いただいている運用担当者の方はどのくらいいらっしゃるんでしょうか。そのことを伺いたいです。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。それでは、渡辺努委員、お願いいたします。

〔渡辺委員〕渡辺努です。大学のガバナンスについて意見を申し上げたいと思います。大学改革については、別な場所で別な議論がなされているというふうに理解しておりますけれども、ここでは、資金の受け手になる大学という、その観点からガバナンスということをお話させていただきます。

先ほどから何度も東大の例が出ているので、引き続き東大を例にお話をさせてください。東大がファンドの受益者になるかどうかは決まったものではありませんけれども、それを前提に話をさせていただきます。

昨年度、大学債を東大は発行したわけですけれども、私も関係があったもので、その一部始終を拝見しておりました。基本的には社債を発行するのと同じことですので、市場に対してきちんと説明をする、それから償還についてもこれこれこういうことをするという計画をきちんとつくって、それを説明するということをしてきたわけであります。追加発行も考えておりますけれども、それについても、そういう緊張感を持って行うべきだという議論をしているところなわけであります。もちろん、学内の中でもそういう発行は危険だからやめたほうがいいとか、いろいろな議論があるわけですけれども、私が全体として見ていて、これは本当にガバナンスがしっかり働いているいい例だと。まさにマーケットの規律というものがようやく東大でも働きつつあるんだなというので、非常にいいことが起きているというふうに眺めておりました。一教員としては、なかなかいろいろ難しい点もあるんですけれども、大学全体のガバナンスという点ではこれでいいんだろうというふうに思っておりました。

ところが、この大学ファンドの話が出てきて、東大もこの中に受益者として含まれるんじゃないかということになったときに、どういうことを大学当事者が考えるかというと、そんな面倒くさい大学債を発行するよりも、このお金を受益者として受け取ったほうが得なのではないかと。つまり、もうちょっと経済学っぽく言えば、コストの観点からいうと明らかに大学債のほうがコストが高いわけです。コストというのは、単に金利という意味ではなくて、いろいろな意味での事務コストも含めてコストが高いわけです。こちらのファンドを受け取ったほうがコストが低いわけですので、そうすると何が起きるかというと、外からの資金を大学債という形で受け入れるという部分についてインセンティブが急速に弱まっていくわけであります。現に、現状でもそういう方向での議論が始まってきているというのは、東大の中での状況かというふうに思います。ほかの大学については分かりませんけれども。そういうものに、現状に、せっかく外部資金を大学が取る仕組みというのをつくってきた、大学が自立させるような仕組みをつくってきたにもかかわらず、それを上書きするような形で、もっと楽な資金があるから、こちらの資金を使ったらどうですかというのをつくるのは、政策として一貫性がないというふうに私は思います。

ただ、実際にこの大学ファンドが立ち上がる、あるいは東大とは違う事情でこのファンドを使うという方もいらっしゃるわけでしょうから、その点を考えると、考え方としては、資金のプライオリティーというものを明確にすべきなのではないかというふうに思います。これは意見です。どういうことかといえば、東大のように自分で調達できるところについては、それは、まずは大学債を発行させて調達をしてもらうと。当然、先ほどもちらっとお話が出ましたけれども、たくさんたくさん調達できるわけでは決してありませんので、そうすると、おのずから調達できる限度というものがありますと。あるいは、いろいろなプロジェクトにお金を使うにしても、どのプロジェクトも全部収益性があるというわけでは決してありませんので、そうすると、収益性がない事業にもお金を使わなきゃいけないと。それはなかなか大学債では難しいと。そうなったときに、その部分をこの大学ファンドで補助をする、こういう仕組み、そのプライオリティーをそうやってストラクチャーをつくっていくと。つまり、大学ファンドのお金を出すときには、自助努力、大学債を発行するなりなんなり、あるいは寄附金もそうですけれども、それが十分なされているということを何らかの形でチェックした上で、その上で、大学ファンドからの応援を、それでもカバーし切れない部分についてやっていく。この発想を強く持つ必要があるのではないかというふうに思いました。今日のお話も、それから7月のお話でも、資金を受け取る側の大学からの視点というのが全くなかったので、改めてどういうふうに見えているのかというお話と、それから今後に向けてどうしていくべきかということについて、提言を今日は申し上げました。

以上でございます。

〔翁分科会長〕どうもありがとうございます。大学側からの非常に重要なご指摘だと思います。

それでは、原田委員、お願いします。

〔原田委員〕ありがとうございます。もう時間も過ぎていますので、繰り返しにならないところだけお伺いさせていただきます。

まず、よりよい形で運用していっていただきたいということを思います。今後のスケジュールのところで、対象大学の指定などは今後2023年度にかけて詰めますと、そういうスケジュール感が示されているところについて、意見を申し上げさせてください。そもそもこのファンドの始まりはどこだったかというと、これは私の理解でしかないんですけれども、新型コロナのワクチンですとか治療薬の開発が日本は出遅れているんだと。そこで、国際的に低下した基礎研究力を強化するということから、大学ファンド構想は始まっているものだと理解しております。そうすると、自然科学分野で国際競争力をつける分野に集中的に配分するんだというふうに思うんですけれども、その辺のところを今後詰めるということで、今どうなっているかというのを聞くのは早いかと思うんですけれども、ぜひとも考えていただきたいこととしましては、分野と大学を必ずしっかり選ぶといいますか、ばらまきにならないような形での運用益の配分というのを考えていただきたいという要望です。先ほど国立大学のご説明をいただいたときに、大学とも相談しています、大学ともキャッチボールしていますというふうにおっしゃいましたけれども、それは果たして何大学ぐらいなのか。国立大学であれば希望すればみんなもらえるというような話も聞いたりしますけれども、その辺についても、基準が緩くなって、どこの大学でも応募できるというような形にするのは、多分本来の目的から外れてくることになるかと思いますので、そうならない仕組みというのをしっかり今後つくっていただければなと思います。

以上になります。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。それでは、高田委員、お願いします。

〔高田委員〕ご説明どうもありがとうございました。私は、意見になるんですけど、3点お話をさせていただきたいと思います。

今回のスキームなんですけれども、マーケットからいかに長期分散でグローバルな成長を着実に取り込むかということが非常に重要な目的だと私は思います。その観点からいたしますと、確かに今回、大学にお金を使うということで、しかも3%プラスアルファということでの一つの目標というんでしょうか、これが掲げられているわけなんですけれども、あくまでも目標は目標でありまして、確定給付的な運用モデルにならないということが非常に重要だと私は思います。ですから、大学側にある程度マーケットのリスクを負わせるというんでしょうか、フレキシビリティーというか、この辺が重要でありまして、そのために、幾つか議論が既にされておりますバッファーをつけてある程度対応していくということで、要は、3%というものが本末転倒にならないような形で、あくまでもその運用は実績配当なんだというような観点からの対応が望まれるところだと私は思います。

それから2番目なんですけれども、その観点から言いますと、運用に当たっては、そもそも今回のお金が国による長期の資金であり、本来であればリスクテイクが行われ得るメリットを活かす極めて自由度の高い運用にするということが重要になると思います。ですから、当然のことながら、モニタリングが必要ではあるんですけれども、あくまでもこの長期の視点に立ったリスク寄与度を高める運用に適するものにしておくというようなことが重要でありますので、そういう観点から言いますと、もちろんコベナンツの対応ももちろん重要ではありますけれども、その自由度の高い運用の制約にならないような形での対応が望まれます。それから、独自の発行をするという財投機関債も重要ではあるんですけど、コストの点がそれによって妨げられないような状況になるといったことも重要になるんだろうと思います。

ただ、一定のリスクが生じることもあるわけでありますから、そういう観点から、自由度を高めるためにも、一定の自己資本の調達というところは非常に重要でありますので、この辺は対応しておく必要があるのではないかというふうに思います。

それから3番目の論点でございますけれども、今回、いろいろな経緯があるにしても、これから対応していくという方においては、私は、資産運用のこれからの在り方のモデルケースとして、貯蓄から投資へというようなことも含めた国民的な合意と申しましょうか、それから今回も成長戦略の一つとして位置づけられているというようなこともございますので、そういう観点から、これからは運用というものも含めた成長戦略というようなことを一つ掲げてもいいのではないかと思います。また、こうした資産運用に関する独自の研究というんでしょうか、こういうようなものを促進させるべく、大学においても、そういうようなことを官民挙げた、貯蓄から投資へ、資産運用というんでしょうか、こういうことのための一つの仕組みづくりというようなものに、今後成長戦略も含めて貢献できるというようなことが重要なのではないかなと思っております。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。それでは、渡部委員、その後最後に林田委員でお願いいたします。

〔渡部委員〕3%事業成長ありきは、なぜなどの質問があるんですが、皆さんの意見との重複を避けるため、2点だけ質問させてください。せっかく機構の方、内閣府の方、文科省の方もお見えですので、この分科会の検討テーマの外になるかもしれないんですが、質問ということで2点したいと思います。

1つは、研究大学です。対象は一応国立大学だけと聞いておりますけれども、それは行政の認識とすれば、日本の私立大学は十分世界に伍する競争力を持っているというご認識でおられるのかないのかというのをお聞きしたい。スタンフォードとか、あるいは資産運用で有名なハーバードなどは私立大学ですし、その点はどういう認識でおられるのかなというのをお聞きしたいなと思いました。

それから2点目は、違う形での支援金ということを使いつつ、大学のガバナンスを強化していきたいとのこと。ガバナンスボードの設置、あるいは研究とその経営の分離、あるいはCFOの存在というのは、ある意味当たり前で全く賛成でございます。ひょっとしたら、ほかの病院とかそういう医療機構などにも必要なことかなという気はいたします。言葉尻を捕える訳ではありませんが、これが特例ということじゃなくて、全大学に必要だと思います。また、先ほどの回でも出ました、今後少子化等を踏まえて、大学のコンソリデーションを次に考えていらっしゃるとか、そういう政策を、もしも簡潔に教えていただければ有り難いなと思いました。

以上2点です。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。それでは、林田委員、お願いします。

〔林田委員〕ありがとうございます。手短に。先ほど川村委員が、もう反対はしない、賛成・反対よりもこれをうまく活用することが大事だとおっしゃいましたが、そのとおりだとは思うんですが、私は川村先生ほど大人でないようで、こだわりがありまして、もちろん、このファンド自体に反対しているわけではありません。借金で巨額の資金を調達し、それをリスク運用してその上がりで支援するという枠組みそのものにはあくまで賛成できないということです。

それから、規模についても、何か政治家の議論の中で、どんと10兆円出せというような形で、腰だめの数字のようなもので決まった規模にあまり根拠はないんじゃないかと今でも思っています。そのたらずまいを全部財投で出せと言われても、話が違うんじゃないのということは、しつこいようですが申し上げておきたいと。

それから、基本認識として、文科省の方も、内閣府の方も、リスクケースを収益の出ないときという位置づけにしているのがどうも気になります。確かに、積立てをするという話はしていますが、積立てが終わる前に欠損が出た場合にはどうするのかというところは全く触れていないと。まず利益が出る、それで積立てをして欠損に備えるという立てつけでありまして、はなからリスクが襲ってくるということを全く念頭に置いていないというのは、資産運用の在り方として間違っていると思います。

それから、10兆円の決め方についても、まず、まともな政策論議でいえば、日本の科学技術の力が弱い、大学は研究しなきゃいかん、しかし資金がこれだけ足りない、だからここについては公的な支援が必要だと。さて、ファンドの規模は幾らにしましょう、運用利回りを考えればこれだけ必要ですねというのが、積み上げでいくのが本来の順番であると。それを、最初にファンドの規模が決まって、それを遡るようにしていろいろなことを決めていくというのは、これは政策論としてひっくり返っていると私は思います。

それと、先ほどから3%の運用利回りの目標の話がちろちろ出ていますが、この目標をどのような客観的事実や将来見通しをベースにして、この水準がまさに目指す目標たり得るリターンのレベルとして設定可能なのかという具体的な説明は全くありません。何で3%なのか。これは3,000億円をキャッシュアウトするために、逆算してこの利回りが必要だというのであれば本末転倒であるし、日本の潜在成長率が1%にも満たない中、いや、海外でやりますよといっても、海外に行った場合には為替リスクがあるというのは、先ほど冨田委員がご指摘なさったとおりであります。これは物価も入れて4%超の利回りを狙うとなると、かなりリスキーな運用にならざるを得ないと思います。ポンチ絵はいっぱい見ましたけれども、こういうポンチ絵が信用できないということは、我々は官民ファンドの議論でもう嫌というほど知っているので、あまり心に響かないということです。ですから、まずは運用目標の根拠をしっかり示してほしいと。

それから最後です。大学ファンドというのは、毎年巨額のキャッシュアウトが必要ですから、長期を見据えた運用が大切だということはそのとおりなんですが、これは利益の出た資産から売却して毎年の支援金を捻出しなきゃいけないという構図になってしまうので、年々ポートフォリオは劣化してしまうはずです。それを考えると、運用を困難にする宿命を制度に内在していると。この点をどうカバーして乗り越えていくのかというあたりについて、もう選ばれている運用責任者はどういう見通しを立てているのか、その辺りのことを聞きたいと思います。

最後の最後、これは念のためくぎを刺しますが、今、日本公庫の問題でいろいろと不正、疑惑が取り沙汰されています。疑惑自体は何も申し上げませんが、私が言いたいのは、不正、疑惑に手を染めてでも欲しいお金が財投のお金なんです。それほどおいしいお金であると。そのお金を、10兆円に近いお金をぽんと出すという話を今ここで議論している、それに対する責任感が要求側に足りないのではないかという見解を持っています。そこをもう少し真面目に議論していただきたいと思っています。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。それでは、今までの委員のご質問、コメントにつきましてお答えいただければと思います。よろしくお願いいたします。

〔内閣府合田大臣官房審議官〕時間もございますので、手短に申し上げます。

先ほど江川先生の研究力の強化についてのご質問についてご答弁が漏れておりまして、ご指摘のとおりでございます。若手研究者が腰を据えて研究できるというのは、このファンドだけではなくて、様々な研究費あるいは基本的経費も含めて、この大学ファンドとは別にというか同時に、大学の研究力に関する総合振興パッケージというものもCSTIで決定することになっておりまして、一緒に取り組ませていただきたいと思っております。

それから、中里先生から緊張感をと、今も林田先生からご指摘をいただきました。拳々服膺としっかり取り組んでいきたいと思っておりますが、まず、先ほどの4.38%でございますけれども、ボラティリティーは16.81%程度ということでございます。

それから、渡辺先生からご指摘がございました点は、全くおっしゃるとおりでございます。東京大学が大学債を発行する、市場と直接対話し、向き合って、好感を得て、東京大学が大学債を発行したということについては、私どもも本当に大変大きな重要なことだと思っておりまして、このような取組のモチベーションが下がることがないようにする必要があるというのは、全くご指摘のとおりだと思っております。大学におけるこのような努力が前提で、その意味においては、大学ファンドの支援もプライオリティーをつけていくというのはご指摘のとおりかというふうに思っております。

それから、ばらまきにしないというのは、これもご指摘のとおりでございまして、国立大学であれば支援が受けられるということは断じてありません。前回申し上げたとおり、私どもは、この対象大学というのは世界的な研究水準を持つ数大学というふうに考えておりまして、このスタンスはいささかも変更はございません。

それから、高田先生から、確定給付的にしないというのもご指摘のとおりでございます。あるいは、資産運用のモデルケースというものも私どもは重要な視点だというふうに思っておりまして、しっかり踏まえさせていただきたいと思っております。

それから、渡部先生のご指摘でございますが、制度上は国立・公立・私立全部含めて対象になるということでございますが、先ほど申し上げましたように、我が国の学術研究水準、各大学の水準ということを考えたときに、ウェブ・オブ・サイエンスのサイテーション・インデックスなどを見ても、強いのは国立大学であるということは事実だろうというふうに思っております。アプリオリにはじいているわけではございませんけれども、そんな状況を踏まえながら、対象大学を、先ほど申し上げたように、数大学ということで絞っていくということが必要かと思っております。

それから、ガバニングボードにつきましてはご指摘のとおりでございまして、私どもも大事な仕組みだと思っておりますが、今年の通常国会におきまして、国立大学全体につきましては、学長選考会議を学長選考監視会議に枠組みを変更するなど、チェック・アンド・バランスの仕組みを法改正したところでございまして、長期的な議論というのはまた別段でございますけれども、これは、今回のファンド対象大学の一つの枠組みとして考えさせていただいているところでございます。

以上でございます。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。どうしてもということでしょうか、よろしいですか。

〔文部科学省坂本審議官〕申し訳ありません、JSTから補足の説明をいただいてよろしいですか。申し訳ございません。

〔翁分科会長〕どうぞ。

〔科学技術振興機構喜田運用業務担当理事〕JSTで運用業務担当理事を6月から拝命しております喜田と申します。よろしくお願いいたします。

私からは、ご質問の中で漏れている2点、中里委員からの、採用に関連してまず申し上げます。採用のほうは、我々では、まず運用の企画、つまり資産配分を長期的に考える人、それから実際に債券なり株という伝統資産、それから、オルタナティブということでプライベート・エクイティー、不動産、インフラ等々を運用する、それぞれのキーマンから今採用の議論をしております。先ほど内諾は何人かというお話がありましたが、今ちょうど雇用契約の締結に向けたプロセスの最中でありまして、ここで何人とかいうのは、変動もございますので、人数は差し控えさせていただきますが、3月から資金が入ってきてからの運用には支障がないように、金融機関からの出向者も含めてカバーいたしますので、体制は整備してまいりたいと思いますし、無理な体制で投資はいたしませんということをお伝えいたします。

それから、最後の林田先生のところの、物を売って資金拠出をするのではないかということでありますが、おっしゃるとおり、造成していったキャピタルで資金をキャッシュ化して出す部分もあるんですが、当然に利息配当もございます。ご案内のとおり、もう債券のイールドは低いですから、それだけで足りるというものではありませんけども、先ほどの期待リターンあるいはこれを上回るポートフォリオを、65・35に関わらずつくっていく、リスクの範囲でつくっていくというのが私の命題でありますので、まず冒頭スタートの時点ではかなり慎重にリスクテイクをやってまいります。それでキャッシュもためながら、来る本格拠出に向けて、そういうインカムとキャピタルの組合せで適切にやってまいりたいというふうに思っております。

以上です。

〔林田委員〕先ほど3%の根拠を聞きまして、どこに試算させたというのは前にも聞いた記憶がありますけれども、そういうことを聞いているのではなくて、その試算そのものがどういう根拠なのか。あるいは、相見積もりを取ってほかはこうだったとか、1か所にやらせて、それでこれはもう絶対正しい運用目標だとなってしまう感覚が、国民からお預かりした資産を運用するという責任感をあまり感じないところなんです。そこを我々の納得のいくように、少なくとも僕が納得できるように、なるほどと思えるような説明を頂戴できれば有り難いと。これは宿題でお願いします。

〔翁分科会長〕皆様、本当に貴重なご意見、ご質問をありがとうございました。まだまだ多くの課題が残されているように思いますし、ぜひ本日のいろいろな議論を参考にして、ぜひ詳細を固めていっていただきたいと思いますし、また、今日のいろいろな意見を、国民全体に説明できるような形でどういうふうに説明していくかということも含めてご検討いただきたいと思っております。

それでは、本日はこれで質疑を終了したいと思います。大変長引きまして大変申し訳ございませんでした。どうも、内閣府、文科省、それから科学技術振興機構の皆様ありがとうございました。

追加的にご意見などございましたら、事務局にお寄せいただきたいと思います。

次回は、11月22日の月曜日、13時半から、官民ファンド等の議論をさせていただきたいと思っております。

本日はご多忙の中、どうもありがとうございました。

15時59分閉会