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財政制度等審議会財政投融資分科会
議事録

令和3年7月28日
財政制度等審議会


財政制度等審議会財政投融資分科会議事次第

令和3年7月28日(水)14:00~16:09
財務省第3特別会議室(本庁舎4階)

  • 1.開会

  • 2.令和2年度財政融資資金運用報告書

  • 3.令和3年度政策コスト分析

  • 4.質疑・応答

  • 5.大学ファンドに係る現状報告

  • 6.質疑・応答

  • 7.

配付資料

資料1-1令和2年度財政融資資金運用報告のポイント

資料1-2令和2年度財政融資資金運用報告について

資料1-3令和2年度財政融資資金運用報告書

資料2-1政策コスト分析(令和3年度)の概要

資料2-2財政投融資対象事業に関する政策コスト分析(令和3年度)

資料3-1説明資料大学ファンドについて

資料3-2大学ファンドについて 国立研究開発法人科学技術振興機構
(内閣府、文部科学省)

資料3-3世界と伍する研究大学の在り方について(中間とりまとめ案)
(総合科学技術・イノベーション会議、世界と伍する研究大学専門調査会)

資料3-4世界と伍する研究大学の実現に向けた大学ファンドの資金運用の基本的な考え方(案)
(総合科学技術・イノベーション会議、世界と伍する研究大学専門調査会、大学ファンド資金運用WG)

出席者

分科会長

百合

角田理財局長

大津理財局次長

石田総務課長

関口財政投融資総括課長

米田管理課長

原田計画官

漆畑計画官

笠原財政投融資企画官

小林資金企画室長

高田

土居丈朗

野村浩子

渡部賢一

渡辺

臨時委員

江川雅子

冨田俊基

冨山和彦

林田晃雄

原田喜美枝

専門委員

川村雄介

工藤禎子

家森信善


14時00分開会

〔翁分科会長〕それでは、予定の時間となりましたので、ただいまから財政制度等審議会財政投融資分科会を開会いたします。

議事に移ります前に、角田理財局長よりご挨拶をお願いいたします。また、7月に理財局の人事異動がございましたので、併せてご紹介いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

〔角田理財局長〕委員の皆様方には大変ご多忙のところご参加いただきまして、ありがとうございます。

7月8日付で理財局長を拝命いたしました角田でございます。前任の大鹿共々、よろしくお願い申し上げます。

また、委員の皆様方には、財政投融資制度等につきまして、時には厳しいご意見も含めて、貴重なご意見を承っているところでございます。この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。

今、翁会長からお話がありましたように人事異動がございましたので、事務方のほうの紹介をさせていただきたいと思います。

まず、次長でございます。大津でございます。

〔大津理財局次長〕大津です。よろしくお願いいたします。

〔角田理財局長〕その横、総務課長の石田でございます。

〔石田総務課長〕よろしくお願いします。

〔角田理財局長〕それから、こちらの財投総括課長は昨年に引き続き関口が務めます。

〔関口財政投融資総括課長〕よろしくお願いいたします。

〔角田理財局長〕それから、計画官は原田と漆畑でございます。

それから、すみません、飛ばしてしまいましたが管理課長の米田でございます。失礼しました。

それから、資金企画室長が小林でございます。

以上の新体制で臨みます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

それでは、議事に移ります。本日は、令和2年度財政融資資金運用報告書、令和3年度政策コスト分析、大学ファンドに係る現状報告の合計3つの議題についてご審議いただきます。

まず、令和2年度財政融資資金運用報告書について、関口財政投融資総括課長より説明をお願いいたします。

〔関口財政投融資総括課長〕財投総括課長の関口でございます。昨年度に引き続き、課長をやらせていただくことになりました。

各委員の皆様におかれましては、引き続き、よろしくご指導方、お願いいたしたいと思います。

それでは、本題に入らせていただきます。

議題1といたしまして、令和2年度財政融資資金の運用報告書についてご説明させていただきます。本報告書は、財政融資資金法第12条におきまして、財務大臣は、毎年度財政融資資金運用報告書を作成し、当該年度計画を4月以内、すなわち、この7月の末までに審議会に提出しなければならないと定められていることに対応するものでございます。資料の1-1から1-3まで3種類の資料を用意させていただきました。資料1-3が運用報告書の本体になりますけれども、数字の羅列でやや分かりにくいところがございますので、資料の1-1として、報告書の要点を1枚にまとめたもの、それから資料1-2として、報告書本体の項目に沿って概要をまとめたものを用意させていただきました。本日は、資料1-1のポイントに沿ってご説明させていただきたいと思っております。

資料1-1をご覧いただければと思います。上段の四角枠の(1)に記載しておりますとおり、財政融資、それから産業投資、政府保証からなります財政投融資計画の令和2年度の運用額は26兆2,361億円でございました。うち、その財政融資資金の運用額は24兆5,511億円となってございます。

資料の中段左側に近年の実績をグラフ化してございますが、近年では執行率が70%台で推移してございましたけれども、令和2年度につきましては、40.9%というふうになってございます。

これは新型コロナウイルス感染症の影響拡大に伴う資金需要に対応するため、十分な資金規模を確保したものの、民間金融機関によるコロナ対応の融資も始まったことなどから、政策金融機関に対する資金需要に落ち着きが見られたことによるものと思われます。

続きまして、財政融資資金の短期運用実績についてご説明いたします。資料の中段右側にございます(2)短期運用実績という表をご覧いただければと思います。短期運用は、特別会計の一時的な資金繰りに対応するための貸付けとして、5年以上の長期資金とは区別して運用されてございまして、令和2年度中の短期運用額は、赤枠内にございますとおり、253兆7,497億円、右隣にあるとおり、その回収額は254兆1,306億円となってございます。数字が非常に大きいんですけれども、これは交付税特会への貸付けと回収が数日単位で、また、年金特会への貸付けと回収が1か月単位で繰り返されておりまして、その運用実績としては累積で計上されるために、このような大きな額になっているということでございます。

残高につきましては、前年度比で3,809億円減の9兆1,894億円となってございまして、内訳については、交付税特会が7.7兆円、それから、年金特会が1.4兆円となっているところでございます。

続きまして、資料の下段左側にございます(3)財政融資資金資産現在高のグラフをご覧ください。これは運用額のストックベースの額になります。令和2年度の運用額が24.6兆円と大きかったこともございまして、令和2年度末の資産の現在高は前年度比で12兆4,525億円増の130兆4,494億円となりまして、平成13年度の財投改革以降初めて増加いたしてございます。

令和2年度末の現在高の主な内訳につきましては、地方公共団体向けが43.1兆円、日本政策金融公庫向けが23.5兆円、都市再生機構向けが9.3兆円などとなっているところでございます。

次に、資金調達サイドに当たる財投債の発行と、ほかの特会などからの預託金の状況についてご説明いたします。(3)の右隣の(4)財投債発行残高及び預託金残高のグラフをご覧いただければと思います。令和2年度末における財投債の発行残高は、前年度末比27兆5,549億円増の118兆6,450億円、預託残高は前年度末比1兆9,605億円減の28兆7,349億円となってございます。財投債残高の増加につきましては、コロナ対応に伴う資金需要に対応するために、その財源となる財投債の発行額も増加したことによるものでございます。

一方で、預託金残高は減少してございますけれども、これは預託元である労働保険特会において、失業等給付費の増加などに伴って預託金の取崩しが続いたことなどによるものでございます。

それから、続きまして、令和2年度の財政投融資特別会計財政融資資金勘定の損益についてご説明させていただきます。右隣の(5)財政融資資金勘定貸借対照表をご覧ください。令和2年度の利益は赤枠をつけてございますけれども、7億円となってございます。この利益は翌年度に繰越して金利変動準備金として整理されます。

なお、令和2年度末における金利変動準備金は1兆3,176億円となってございます。

一方、ご参考まででございますけれども、現在、同じ勘定について歳入歳出決算という国の決算を整理中でございますけれども、こちらの歳入歳出決算というのは現金主義で整理されておりまして、そちらのほうですと402億円の不足、赤字になる見込みでございます。この不足分については積立金のほうから補足する、補うことになっておりますので、令和2年度末の積立金は1兆2,373億円となってございますけれども、そこから、402億円取り崩されるということになります。

なお、この貸借対照表上は利益になっていますけれども、今申し上げた現金主義で整理される歳入歳出決算のほうは赤字になるということでございますが、これ、額が違う理由というのは、財投債の中に、その額面を超えた額で発行されたものがございまして、その償還差益の処理方法が違うということに伴って、会計上、その差異が出てくるというものでございます。

ご参考までに、資料の1-2の12ページをご覧いただければと思います。このように歳入歳出の決算で赤字に転落する可能性というのは、実は、今から7年前の平成26年の財投分科会において既に指摘されてございまして、その赤字の要因としては、財投改革後の平成13年度から平成18年度にかけて、資産よりも負債のほうが短いデュレーションギャップ、期間のギャップを解消するために、20年債を積極的に発行したという事実がございまして、その金利負担が利率にして2%前後ということでございまして、それが結構影響しておりまして、こういった赤字になるというふうに考えております。

1ページめくっていただいて13ページでございますけれども、これまでの実績を基に、改めて今後のシミュレーションを行ってみたのでございますけれども、やはり令和3年度以降においても、当分の間、決算においては赤字となるリスクが高い状況が続くというふうに見込まれているところでございます。この青い図の棒を見ていただければ、ゼロより下になっているようなところが5年、6年ぐらい続いていくという見通しが書かれているところでございます。

なお、こうした歳入歳出決算が赤字になるということは、かつて昭和47年度、あるいは53年度、54年度にもあったことでございまして、54年度が最後でございますので、令和2年度は41年ぶりのこととなるということでございます。

それから最後に、令和2年度の財政投融資使途別分類表についてご説明させていただきたいと思います。右隣の(6)財政投融資使途別分類表のグラフをご覧ください。資料1-1の右下(6)でございます。令和2年度の運用状況を使途別に見ますと、総額26兆2,361億円のうち、中小零細企業が10兆4,639億円、下の社会資本が4兆3,798億円、それから、その左の緑がその他4兆1,312億円となってございます。ちなみに、このその他というのは日本政策金融公庫の危機対応円滑化業務というのがございまして、公庫のほうから日本政策投資銀行や商工中金を経由して事業者に融資が行われる制度ですとか、あるいは地方公共団体が発行した臨時財政対策債、地方消費税などの税収がどすんと落ちて、債券を発行しなければならなくなった、それを引き受けたということがございまして、そういったものになります。

あとは、先ほど見ていただいた資料1-2の14ページに使途別の分類の経年比較というのを示しておりますけれども、過去に比べてみますと、令和2年度でのコロナ対応貸付けの影響が大きくなってございまして、特に中小零細企業向けの割合というのが、令和元年度におきましては21.5%だったのに対して39.9%と大幅に増加しているところでございます。

また、その他として計上されています緑の部分ですけれども、先ほど申し上げたような危機対応円滑化業務のところですとか、あるいは、ここは福祉医療機構を通じた融資もございますので、こういったものもコロナ対応と考えていいかと思いますけれども、こういったところが非常に割合として大きくなっているということでございます。

令和2年度の運用報告についての説明は以上となります。今回報告させていただきました2年度の実績を踏まえまして、今後、令和4年度の財投編成に取り組んでまいりたいと思っております。引き続きご指導をよろしくお願いいたします。

私からは以上でございます。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。令和3年度政策コスト分析についてはお手元の資料をご覧ください。こちらも含めまして、委員の皆様からご意見、ご質問をお願いしたいと思います。挙手ボタンを確認しながら指名いたしますので、そのままお待ちいただければと思います。

それから、オンラインでご参加の場合、ご発言の際に資料を引用される場合には、資料番号と該当ページをおっしゃっていただくようにお願いいたします。

それでは、いかがでしょうか。

それでは、林田委員、お願いいたします。

〔林田委員〕ありがとうございます。いきなり資料の見せ方の問題で恐縮なんですけれども、今ご説明のあった使途別の分類表で、資料1-2の14ページに経年変化が示してあるのは、これは非常に結構だなと。やっぱりコロナ禍で財投も大きな変動を余儀なくされているので、その中でどういうインパクトが財投にあったのかということをきっちり示すことが財投の役割とか社会への貢献度、あるいは課題についても理解してもらう上で非常に重要だと思います。

もっと言えば、例えば、さっき出てきた在り方報告の中で、産業投資というものをリスクマネーの供給を担う主軸に据えたわけでありまして、そうしたリスクマネー供給についても、コロナ禍でどういう影響があったのかみたいなことも経年変化で示していただいたらなおよかったのかなと思います。

それから、肝心の内容面ですが、資料1-1にあるように運用額が急増しておりまして、一方で執行率は下がっていると。運用額については、真に必要な資金需要にしっかり対応しているのか、無駄なものはないのかというところは事後的に検証していただきたいというお願いです。

一方、執行率が下がったことについては、緊急対応が必要だったという状況を考えれば、あまりこの部分をとがめないほうがいいのではないかと私は思っています。財投機関側が執行率の低下を避けるという意識が強まってしまいますと、不必要な執行が増えてしまうという副作用があるので、その辺りは注意をしながら、我々も指摘していきたいと思っています。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

それでは、江川委員、お願いいたします。

〔江川委員〕ご説明どうもありがとうございました。資料を拝見して、コロナ禍の中で経済を支えるという公的な役割を財政投融資がしっかり果たしているというのを確認できて、それを評価できました。

私も、今の林田委員と同意見で、執行率に関してはこういった緊急対応の場合というのはその比率にあまりこだわる必要はないのではないかと思います。

2点、コメントさせていただければと思います。1つは資金回収に関してです。今、また感染者が急増して、将来、コロナの第5波の行方も不透明な面はありますけれども、ワクチン接種が進みつつあるので、経済活動を再開するという動きになってきておりまして、融資の返済ということも具体的に考えていかなければいけない局面に来ていると思います。今回、危機対応ということで、時間のない中でのいろんな対応があったので、市場競争の中で競争力がない会社にも無利子で貸付けが行われたみたいな話も耳にしております。ですから、資金、特に無利子融資のものに関して資金回収が大変だと思うんですが、やはり財政投融資の役割に鑑みて、資金回収に関してはしっかり着実に取り組んでいただきたいと思います。それが1点目です。

それから2点目は、今回の政策、それから執行プロセスに関して検証をお願いしたいということです。今回、特に、感染力が強いウイルスということで、試行錯誤でいろんなことを進めなければいけなかったのは仕方がないですが、かなり大きな資金が投じられているので、それをしっかり後から検証するということはとても大切だと思います。

私は、今会計検査院懇話会の委員もしていまして、そちらは政府全体に関してですが、コロナ対応全般に対してしっかり検証してくださいという話も出ております。財政投融資に関しても、そういう観点から検証をお願いします。感染症というのは今後もまたやってくるというお話もございますし、感染症に限らず、危機において財政投融資は常に支出を迫られるので、今回のことをきちんと検証して、将来にうまく生かしていただきたいと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。

それでは、高田委員、お願いいたします。

〔高田委員〕ご説明どうもありがとうございました。

今回いろいろご説明いただきまして、特に中小零細企業向けのところの融資が随分増えているということで、これはこの1年間も随分いろいろご説明をいただいてきました。こういったコロナの関係の中で大変な金融機能を発揮していただいたという形で、倒産件数も少なくなっておりますし、いろんな安心感が出ているということについては、もう間違いないと思います。

ただ、この分野のところですと、本来であれば、かなり赤字が出ている中での運転資金ということでありますから、かなり資本性の資金に本当は近いところを、こういう普通のデッド資金という形で貸しているというような状況がやっぱり現実には多いんだろうと思います。実態が把握できていないというのも実情で、やっぱりそれは、これだけ急な状況から見ると、取りあえず、そこの部分をかなり対応せざるを得なかったという部分は、私は否めないんじゃないかと思いますし、それはやむを得なかったところはあろうかと思います。

ただ、やはりこれから考えてまいりますと、やっぱりこれは国のお金ということでもございますので、当然、この部分が、今後どのぐらいの信用コストと申しましょうか、もしくは財政負担になり得るのかそれなりに想定しておく必要もあるんじゃないかなと思っています。ですから、そもそも、どのぐらいの負担が見込まれているのかということも想定する必要が生じます。

それともう一つは、取りあえずこれだけの融資を出したわけですけれども、実は重要なのは、これからどういう形で出口を迎えていくのかというところが、私はそれ以上に実は重要になってくるんじゃないかと思います。

これは単に貸したお金の返済をどうするかということだけではなくて、せっかくこれだけ金融機能を発揮した中でいえば、いかに再生ができるかというようなことを、しかも、今回民間金融機関と一緒になってやっておりますので、そういう中で、複雑化した中での対応というんでしょうか、こういうものをどのような形で出口に向け対応していくのかというシナリオは、そろそろ、年限としても利払いや返済が生じる期限のところにもなってまいりますので、議論が必要ではないかなと思っております。その辺のところは私も以前にも申し上げた点ではあるんですけれども、やはり、これだけの金額ということでもございますので、逆にこれからがやっぱり重要なんだと思います。1回貸し出せば終わるというものではなくて、これからのモニタリングと再生と出口というのが重要になってまいります。その辺は、従来にない対応ということになってこようかと思いますので、その辺の目安を、私どものほうとしても今後も議論させていただければと思った次第でございます。

以上でございます。

〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。

それでは、土居委員、お願いいたします。

〔土居委員〕ご説明どうもありがとうございました。

ご説明いただいた点については、私としても理解をいたしまして、今後、各委員がおっしゃったような点に留意しながら、引き続き財政投融資の運営に努めていただきたいと思いますけれども、資料1-2の8ページに、財投債の満期構成について記されていて、令和2年度は、これは一般会計の国債もそうだったわけですけれども、短期国債の発行に依存せざるを得なかったという金融情勢があったということなわけでありまして、ただ、この財政投融資はもう長年ALMを非常に注視しているという意味ですから、ここで短期国債が令和2年度で残高としても増えたということ、それ自体が問題だとは思いませんけれども、さはさりながら、長期で運用しているということとの兼ね合いでいえば、引き続きALMに注視していただいて、うまくマネジメントをしていただければと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

そのほかはいかがでしょうか。よろしいですか。

それでは、今まで委員の様々な指摘やコメントございましたけれども、これについて、関口課長のほうからお願いできますでしょうか。

〔関口財政投融資総括課長〕先生方、ご意見ありがとうございました。私どもも、林田先生が言われたとおり、経年変化とかその辺りをしっかりと見ていきたいと思いますし、また、これから回収というのが非常に重要になってきますので、そこはやっていかなきゃいけないと思いますし、また、執行プロセスの検証、そこもしっかりやっていく必要があると思ってございます。

それから、まさに出口に向けてどういうふうに議論していくのか、我々理財局としても、その資金の貸手としてしっかりやっていきたいと思います。また、財投債の発行につきましても、確かに短いものをかなり出しておりますけれども、運用との兼ね合いがございますので、しっかり留意しながらやっていきたいと思っていますので、引き続きご指導方、よろしくお願いいたします。

〔翁分科会長〕多くの委員の懸念事項というのは、特に中小企業向けに非常に融資の実行が大きくなったこと、そのこと自体はよいという、やむを得ない対応だったと思うんですけども、これからのまさにエグジットとか、そういった状況がどうなっていくかというモニタリングと、あと、今までの執行プロセスの検証というようなこと、これをしっかりまたこの会議などでご報告いただいて、また検証、モニタリングできるようにしていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

よろしいでしょうか。

それでは、次の大学ファンドにおける現状報告につきまして、入りたいと思うんですけれども、内閣府の方はここで入られるんですね。では、ちょっとお待ちくださいませ。

(内閣府、文部科学省、科学技術振興機構 着席)

〔翁分科会長〕それでは、おそろいになりましたので、大学ファンドに係る現状報告について、初めに関口財政投融資総括課長、次に、内閣府の担当部局の方よりご説明をお願いいたします。

それでは、まず関口課長からお願いいたします。

〔関口財政投融資総括課長〕理財局の財投総括課長の関口でございます。

それでは、大学ファンドについて、ご説明させていただきたいと思います。大学ファンドにつきましては、昨年12月の本分科会におきましても2度にわたりご議論いただいたところでございます。

今回の分科会では、現状についてご報告させていただくとともに、主にファンドの運営方法についてご議論いただきたいと思ってございます。幾つか資料を用意させていただいてますけれども、資料3-1が私ども理財局で用意させていただいた資料になります。

では早速でございますが、資料3-1の3ページをご覧いただければと思います。昨年12月に閣議決定させていただきました総合経済対策におきまして大学ファンドを創設し、その運用益を活用することにより世界に比肩するレベルの研究開発を行う大学の共用施設等の整備、若手人材育成等を推進することでイノベーションエコシステムを構築するとされたことから、運用原資として、一般会計による出資金5,000億円と財政融資資金4兆円が措置されているところでございます。

本件につきましては、財政融資の償還確実性を確保する仕組み等について法定化するなど実効性を確保することが求められているところ、先般の通常国会におきまして、国立研究開発法人科学技術振興機構法、JST法と言われてございますが、その法律が改正されてございます。

4ページをご覧いただければと思いますけれども、その法律に規定された主な事項でございます。具体的には、上のほうから資金運用に関する体制整備等としまして、安全かつ効率的な運用のための基本指針、こちらは文科大臣がつくられるものでございますけれども、それやJSTのほうでつくられる基本方針、そういったものの策定、それから、その資金運用のための長期借入金、あるいは債券の発行認可、償還計画の策定といったものが規定されてございまして、これらについては財務大臣への協議事項となってございます。

また、財政融資資金法の特例といたしまして、財政融資の貸付け期限は令和52年度までの50年間、実際の貸付け条件としては、40年間の貸付けでございまして、当初20年間は元本据置きということで利払いのみになります。その後、20年間の元金均等償還を想定してございます。

それから、その運用の指針などに財政融資資金の確実な償還のための事項などを定めるといったことも規定されてございます。これらについても財務大臣への協議対象となってございます。

それから、参考のほうでございますけれども、毎事業年度の利益処分、これは具体的にはその大学への助成配分に充当されるわけでございますけれども、こういったことについても財務大臣の協議事項となっているところでございます。

それから、続いて大学ファンドをめぐるこれまでの経緯として、制度の検討体制をご紹介します。5ページをご覧いただければと思います。

内閣府CSTI、総合科学技術・イノベーション会議の下に専門調査会がつくられてございまして、大学改革に向けた検討ですとか、大学ファンドの参画大学の指定要件ですとか、運用益の使途などについての検討がなされているところでございます。

さらにその調査会の下に資金運用ワーキンググループというのがつくられてございまして、JSTにおけるその資金運用の基本的な考え方についての検討が行われているところでございます。

検討状況でございますが、次の6ページをご覧いただければと思います。昨日7月27日の専門調査会におきまして、専門調査会としての中間取りまとめと、資金運用ワーキンググループの最終取りまとめの結果の報告があったところでございます。

内容は追って内閣府のほうから説明いただきますけれども、この資金運用ワーキンググループの最終取りまとめのほうは、今後、文科大臣が定める助成資金運用の基本指針のベースとなるというふうに聞いてございます。

それから、文科大臣がつくられる基本指針を受けて、JSTのほうで基本方針というものをつくるということになってございまして、これらを踏まえて、JSTでの運用開始というのは今年度中の来年3月を目指していると伺っておるところでございます。

7ページでございますけれども、本年6月に閣議決定されました、いわゆる骨太2021における大学ファンドに関する記載をつけてございますけれども、本年度中に運用を始める大学ファンドについて、経営と教学の分離の推進、外部資金の拡大等の参画大学の要件を年内に具体化するとともに、大学改革の制度設計などを踏まえつつ、10兆円規模への拡充について、本年度内にめどを立てるというふうにされているところでございます。

9ページでございますけれども、こちら、大学ファンドの運営方法について、この分科会でご議論いただきたいと思っている主な論点をご紹介させていただきたいと思います。

1番目でございますけれども、財政融資資金、4兆円を運用元本としてファンド運用を開始するに当たって、具体的にどのようなファンド運営を行われようとしているのか。リターン目標ですとか運用ポートフォリオ、あるいは支援対象となる大学、あるいは事業、あるいはそういった支援事業への支出額の年度の間の平準化策、そういったものはどのようにしようとしているのか。すぐに借入金を毀損するような運営をしようとしていないか。

2点目が、昨年の総合経済対策においては、償還確実性を確保するための仕組みを設けるとございまして、先般の通常国会で成立しましたJST法には基本指針に財政融資資金の確実な償還のための事項を定めてございますけれども、例えば、運用状況が一定の間、一定程度を下回る場合の運用の見直しなど、具体的にはどのような仕組みを定めることとなっているのか。また、その財政融資資金の償還原資は何なのか。

3番目としましては、運用開始初期には、資本バッファーの構築に重きを置くなど、安定的なファンド運営を行うための方策を講じることになっているのか。

4番目につきましては、JSTにおきまして、本年6月1日付で運用業務担当理事が着任されていると承知してございますけれども、実際の大学ファンド運営においては、どのような運用体制、あるいはガバナンス体制、あるいはリスク管理体制等を具体的にイメージしているのか。

5番目につきましては、運用開始後においては、財政融資資金の償還確実性の確保も念頭に、資金運用とリスクテイクの適切かつ適時のモニタリングが必要となりますが、どのような頻度でどのように行っていくのか。また、情報開示はどのような頻度で行っていくのか、そういったことが論点になろうかと思ってございます。

それから、10ページでございます。今後の進め方ということでございますけれども、大学ファンドの運用の基本的な考え方などについては、文科大臣が定める基本指針ですとか、JSTがつくる基本方針の中でどのように盛り込んでいくのかというのが今後の課題であろうと思ってございますし、また、そのJSTの体制構築も途上であると思ってございます。

こうしたことから、理財局としては、引き続き財政融資資金の貸手として財政融資資金の償還確実性を確保していくために、今後の制度設計に当たって、担当の内閣府、そして文科省としっかりと協議を進めていきたいと考えております。

私からの説明は以上でございます。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

それでは、内閣府のほうからご説明をお願いいたします。

〔内閣府合田大臣官房審議官〕失礼いたします。内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官の合田と申します。

本日は文科省から坂本審議官、それからJSTから、先ほど関口課長からもご紹介がありました運用担当の喜田理事、コンプライアンス担当の甲田理事も参加してございます。どうぞよろしくお願いいたします。

昨年12月10日の財投分科会で先生の方にはご指導賜りました。深くお礼を申し上げます。関口課長からもご指摘がありましたように、昨年度の補正予算と本年度の財投計画で合計4.5兆円規模のファンドをJSTに置くことが、予算、あるいは法改正という形で立法府においてお認めをいただきました。各国が科学技術投資を増強する中で、立法府にお認めをいただいたこの大学ファンド、骨太2021に定める10兆円規模への拡充を行い、我が国の研究大学を世界に伍する存在にするのは喫緊の課題であるというふうに考えてございます。

そのため、資料の3-2の4ページのとおり、文科省と連携しながら内閣府の総合科学技術・イノベーション会議に専門調査会及び資金運用ワーキンググループを置きまして精力的に議論を重ね、昨日27日に一定の方向性がまとめられましたので、その説明を行う中で、先ほど関口課長からご提起のあった問題意識にお答えをしたいと存じます。

まず、この資料の3-2の5ページをご覧いただきたいと存じます。今後のスケジュールでございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、昨日、CSTIの大学専門調査会で一定の方向性が出されたところでございます。8月下旬に総理が議長のCSTIの本会議でこれを決定し、資金運用につきましてはJSTの体制を整備して運用開始をする、大学改革につきましては関連法案を来年1月の通常国会に提出をし、対象大学を指定し、支援を開始するというスケジュールで考えているところでございます。

このうち、まず大学改革のほうでございますけれども、6ページ目をご覧いただきたいと思います。右側にございますように、冨山和彦先生などにお入りいただきました専門調査会におきまして、ガバナンスについて、左側にございますように、ユニバーシティカレッジロンドン、バークレー、シンガポール国立大学、イェールなどの大学関係者からもヒアリングを行って議論をまとめたところでございます。次の7ページをご覧いただきたいと思います。

世界の研究大学の競争力の源泉は成長でございます。学術研究水準の高さを現在の産業構造や社会構造における社会的価値に展開し、新たな資金の流れをつくり、それを、社会的価値には結びつかないけれども重要な分野ですとか、今我々が考えたこともないような時代のイノベーションにつながる未来、未知の研究への挑戦、あるいは若手研究者や博士課程の学生への支援に投資をする、その循環が確立をしていることでございます。

実際、スタンフォード大学はこの15年間で財政規模が2,900億円から6,700億円と2.3倍に増えておりますし、オックスフォードも大学の700億円から2,200億円と3倍に増えております。東京大学は15年で1,500億円から1,800億円と増加してはいるものの、なお伸び代がございます。基金もハーバードの300分の1、スタンフォード200分の1という状況でございます。

しかし、動きがございまして、ご案内のとおり、寄附金だけではなくて東大とダスキンの連携のように産学連携におけるプライシングの転換、大学債、大学発ベンチャー、東大の大学発ベンチャーの市場価値は兆円単位になっておりますが、それから独自基金という動きが出てございます。

このような動きを世界の大学並みに、この資料の7ページの一番上の行にございますが、3%程度の事業成長をするということを10年、20年単位で結びつけることが、我が国の大学を世界に伍する研究大学に成長する上で不可欠だと考えております。そのためには、6年といった総長の任期を超えてインスティテューショナルメモリーを確立して長期的に取り組む必要がございまして、この資料の7ページのガバナンスというところに合議体という言葉が出てまいりますけれども、ガバニングボードを設置すると。このガバニングボードが3%成長のステートメントを出し、戦略を立て、実現可能な学長を選び、オーディットとすると。社外取締役のように責任を持って3%成長を実現する仕組みというものを確立していく、そのための法改正を来年1月の通常国会に提出し、このような覚悟と体制を固め、意欲ある大学を大学ファンドで支援するというご議論をいただいているところでございます。

次に、8ページでございますが、そのことを前提といたしまして、資金運用ワーキンググループにおけるご議論をご紹介申し上げます。

資金運用ワーキンググループにつきましては、8ページの右側にございますように、伊藤隆敏先生を座長といたしまして、冨山和彦先生、それから高田先生にもお入りいただいてございます。運用の実務経験を持った理論家として川北先生、四塚先生、それから、プライベートエクイティーの投資にご経験のある蓑田先生などにお入りいただきまして、かつ、左側にございますように、日本には長期投資を行いながらぺイアウトしていくという機関がないことから、ワーキンググループにおいて海外の有識者として、コモンファンドのCEOのマーク・アンソン氏、それからスタンフォードマネジメントカンパニーのロバート・ウォレス氏などからお話を聞き、世界の知見も取り入れながら議論をいただいたところでございます。また、事務的にも、国内外の30以上のファンドからヒアリングを行ったところでございます。

その中身が9ページ、全体の概要でございますけれども、この運用の目的、それから運用の目標、それから運用上の重要事項、それぞれにつきまして、ぶれないということをしっかりと形にしていく必要があるというご指摘をいただいたところでございます。

詳しくご説明をさせていただきたいと思います。

11ページをご覧いただきたいと思います。運用の目的につきましては、研究大学の実現に必要な研究基盤の構築の支援を長期的安定的に行う財源を確保するということを目的としている、この目的をぶらさないということでございます。

その上で、13ページでございますけれども、この運用に関する基本的な方針ということでございまして、①と上のほうにございますけれども、JST法におきましてこのファンドの目的が明確に規定されてございますので、これを踏まえて、他事考慮はできない仕組みとする。あるいは、②とございますように、投資判断の全部を一任する投資一任契約の締結が基本ということを前提として、このページの下に①②③とございますけれども、①といたしまして、市場の一時的な変動に過度にとらわれることなく、資産の長期保有及び投資規律の遵守(リバランスの適切な実行)により、資産や地域等の分散投資の推進により、長期的かつ安定的に国内外の経済全体の成長の果実を確実に獲得していくことというのが1つ目の考え方でございます。基本的な方針でございます。

2つ目には、②とございますように、公的運用機関として市場をゆがめることがないように、③としては、大規模な資金を運用する機関投資家として市場に与える影響が大きいことに十分留意するということが3つの原則として示されてございます。

この1つ目でございますけれども、14ページをご覧いただきますと、先ほどご紹介させていただきましたスタンフォードマネジメントカンパニーのロバート・ウォレス氏などから、規律ある投資をサポートしていくということで、そのガバナンスの役割というのは、リーマンショックのようなパニック期、あるいは陶酔期・高揚期に規律を守ることであるというような指摘がございました。

コモンファンドのアンソン氏からも、クライシスプレーブックを作成しているというような指摘もあったところでございます。

飛んでいただいて恐縮でございますが、16ページをご覧いただきたいと思っております。16ページは、過去20年の市場の実態でございまして、長期的かつ安定的に国内外の経済全体の成長の果実を獲得するにはダイバーシフィケーションが重要であるということがコモンファンドなどからも示されているところでございます。

大変恐縮でございますが、25ページに飛んでいただけますでしょうか。25ページは、特に市場環境の悪化のときの対応ということで、コモンファンドのプレゼン資料の抜粋でございますけれども、リーマンショックのときに資産の下落に伴い、投資規律を遵守しリバランスした場合と、資産を売った場合、すなわち、株式等を現金化した場合の比較でございます。ワーキンググループの議論では、日本の場合はほとんど後者だったとの指摘がございましたけれども、下落時には投資規律を遵守してリバランスをする、価格の下がったものを買うという姿勢が何よりも重要であり、これにより市場の回復局面を迎えることが可能となる、これが世界の常識になっているということでございます。我が国では、こうした際に売却して運用を止めるという発想が多く、このことこそがリスクであるというご議論をこのワーキンググループでは賜ったところでございます。

恐縮でございますが、18ページにお戻りをいただければと思います。18ページでございますけれども、運用目標と、それから基本的な運用プロセスでございますけれども、運用目標につきましては、2ポツの1つ目のポツにございますように、長期的に支出(ペイアウト)目標率、これは3%と考えておりまして、物価上昇率1.38を足しました4.38%というのを運用目標と考えてございます。ご案内のとおり、GPIFは1.7%に物価上昇率、実質賃金上昇率を足した4.0%というのが目標でございますので、ほぼ同水準でございますし、これらの数値の妥当性は外部の金融系のコンサルティング担当会社の知見を活用したシミュレーションによって検証させていただいております。また、政府系のソブリン・ウエルス・ファンドや欧米の大学エンダウメントの目標に比較して保守的な数値でございまして、グローバルな運用で国内外の成長を取り込むことができれば十分に実現が可能なものというのが、ワーキンググループの皆様方の共通した思いであるというふうに理解してございます。

その下に許容リスクがございます。ソブリン・ウエルス・ファンドではレファレンス・ポートフォリオを活用した許容リスクが多いということで、私どももこれを活用させていただいて、具体的には、その下にございますように、グローバル株式・グローバル債券、65対35の資産構成割合をレファレンス・ポートフォリオとして設定をすると、ボラティリティーとしては16.8ということで考えているところで、そういうご議論をいただいたところでございます。

次の19ページ目をご覧いただければと思います。私ども、世界と伍する研究大学の実現のためには、G7諸国のGDPの規模を考えますと、世界大学ランキングトップ50に6大学程度入ってもおかしくないということから考えますと、6大学程度の大学を支援する必要があるというふうに考えておりまして、その観点から、年間3,000億円程度の支出額が必要であると考えてございます。先ほど申し上げましたように、ペイアウト目標率は3%ということで、併せて、支出上限額を、当面、年間3,000億円ということにさせていただきたいと考えております。運用には変動がつきものでございますが、毎年の大学の支出、これは安定的で継続的なものとするのがポイントでございます。このため、バッファーとして2年分、6,000億円を確保し、これは過去35年を分析し、単年リターンが連続してマイナスになったのはリーマンショック時の2年連続というケースがございましたので、市場は赤字でも支援が途切れることがないように確保するということでございます。

世界標準のグローバルな運用を行うためには、運用体制、ガバナンスが極めて重要でございます。運用・監視委員会が執行をしっかりと管理すること、そして、投資部門、リスク管理部門、監査という3線がしっかり機能することが重要でございます。高度かつ多様な運用の実践には、覚悟と能力を持った優秀な人材、今日、喜田理事にもお越しをいただいておりますが、確保・育成が成否を分けるといっても過言ではございません。そのための雇用形態や給与形態の構築が重要ということでご提起をいただいておりまして、私どももしっかりと取り組ませていただきたいというふうに考えております。

23ページをご覧いただければと思います。リスク管理でございますけれども、本ファンドの考慮すべきリスクについてでございますが、これは先ほど来申し上げておりますように、短期的・一時的な損益ではなくて、大学へのペイアウトができなくなることでございまして、これがリスク管理の肝だというふうに考えてございます。評価損益の変動をモニタリングした上で、この資料の23ページの上から4つ目のポツでございますけれども、投資規律の遵守、リバランスの実行を大前提に市場環境等を確認すること。具体的には、モニタリング結果が一定の水準、このページの注の1つ目でございますけれども、このシグマ、2倍に達した場合、2シグマということですので、ボラティリティーで申し上げれば33.6というところに来た場合に、国に報告をし、この基本指針に基づき作成された基本指針に沿っているかどうかを確認する。

それから、その下でございますけれども、累積の実現損が自己資産を上回る状態が3期連続で継続した場合には、事業の見直しを国に協議することが妥当と。例えば、3期連続で継続した場合には事業の見直しを国に協議することが妥当ということでご提起をいただいているところでございます。

27ページをご覧いただきたいと思います。この大学ファンドのトランスペアレンシーの件でございますけれども、年度の公開資料を分かりやすいように工夫することなどに取り組む必要があるというご提起をいただいておりますと同時に、他方で、情報公開に当たっては市場への影響等に留意をするというようなご指摘をいただいておりまして、これをしっかり踏まえさせていただきたいと思っているところでございます。

最後に、昨日の総合科学技術・イノベーション会議の専門調査会において、伊藤隆敏先生のほうから最終的なご発言ということでございまして、その際、やはり日本での資産運用というと、株というとそんなリスクが取れるのかという意見が必ず出てまいります。安全に運用するなら債券で十分じゃないかということですが、このような議論というのは世界的な考え方に相入れません。やはり、長期運用のプレミアムを獲得していくという資産運用についての大学での研究、理論研究や実証研究が行われておりますので、後ればせながら、日本でもこのような長期運用とは何なのか、このような長期運用によることによるプレミアムをいかに獲得していくかが重要ではないかと考えておりますというご指摘、ご発言をいただいたところでございます。私どもも、引き続き先生方の専門的な知見にご指導いただきながら、これらのお言葉を拳々服膺しながらしっかりと緊張感を持って取り組ませていただきたいと考えている次第でございます。

駆け足でございますが、ご説明は以上でございます。

〔翁分科会長〕ご説明ありがとうございました。

ただいまのご説明を踏まえて、委員の皆様からご意見やご質問などをお願いしたいと思います。

直接、内閣府や文部科学省のほうにご質問いただいても結構ですので、よろしくお願いいたします。

それでは、川村委員、お願いいたします。

〔川村委員〕すみません。いっぱいあると思うので口開けをさせていただきます。

ご担当の内閣府、文科省の皆さんに伺いたいんですけども、原資になるお金は返さなきゃならないお金。みんな、投資ということを前提に集めて、極論すればハイリスク・ハイリターンでもいいし、元本がなくなってしまってもいいといって集めた通常の民間ファンドとは全く違って、これは財投債を中心に集めた、必ず返さなきゃならないお金です。なので、これだけもうかるパフォーマンスを長期でやればいいんだという論調に、私には聞こえたんですけども、まずもって、どうやって元本償還確実性を担保するのかという説明がないと、少なくともこの財投分科会としては全く承服できないということを最初にお断りせざるを得ません。これは通常の民間ファンドではないわけです。

その点、私の頭をよぎるのは、大分前ですけども、基盤技術研究促進センター(きばセン)という、あれは産投を使って溶けてしまった。しようがないので、最終的にNEDOに飛ばしたという大失策がありました。

我々財投も、非常に政策的意味を感じながらも、現在、苦闘している官民ファンドという、数多くのファンドがあります。ただ、これらに比べても、今回の大学ファンドは桁が違うんですね。より大きい、非常にインパクトが大きい。しかも、基盤技術研究促進センターにしても、いわゆる「騎馬戦(きばセン)」に負けたという言い方をしましたけど、「きばセン」にしましても、官民ファンドにしても、基本的には産投なので、まだ分からんでもない。

しかし今回、財融と一般会計、まして、我々から言えば財融が原資であるということを、当事者としてはもっと重く受け止めていただく、民間の外資のアセットマネジャーのプレゼンテーションを聞いているみたいで、違うんですよね、性格が根本的に。そこをちょっと、役所の方でいらっしゃるんで、大学ファンドとか大学が遅れている云々という意味は、私も大学にいて物すごく苦労しましたし、それはよく分かります。その志は大変分かるんだけども、お金はとにかくしっかりしてくださいということは、まずもって申し上げたいし、そのシミュレーション上やればエクイティーが65で、35がフィックスト・インカムというのは、それはパフォーマンスが出るのは、こんなの当たり前の話なんですよ。別に50年前だって同じ結果が出ます。これ、言わずもがなです。で、それでいいのかと。ダウンサイドをどう考えるのか。

例えば、1億円のお金を親から借りて、毎年300万円を生活資金にします。そのために、この1億円の65%株に投資しますというのと同じ話なんですね。例えて言えばですけれども。そういう何というか、基本的な考え方がそういうところにあるというのは、私は大変不安を感じます。

例えば、GPIFが3.61ぐらいで、それに近い、過去20年のパフォーマンスを取るんだというのは、それはそれで説得的ではあるんですが、これもよくよく考えないと、リーマンの直後に買ったら、2倍、3倍になっているわけです。あるいは、東日本大震災の直後に投資したら、やはり相当パフォーマンスは高いです。しかし、その逆があるわけです。リーマンのときに売らなきゃならないこともあるわけですね。つまり、それほどボラティリティーが高いという世界がこのエクイティーの投資の世界なので、そこを十分踏まえた発想じゃないと、ただいまのプレゼンテーションを伺って、不安は増すばかりであります。

ややテクニカルなことを聞きますけども、この直接、言わばインハウスの運用の部分と委託の運用部分というのはどのぐらいの割合になるんでしょうか。つまり、この大学ファンドのポートフォリオを法律上見ると、ピュアエクイティーについては自家運用はできないということになっておるようですので、そうなると一任しかないですよね。

そうすると、理屈から言えば65%は一任、外部委託になるということになると思うんですけども、その場合に、大宗は外部委託で、つまり内外のアセットマネジメント会社に運用を委託します、手数料を払って、というのが大半で、自ら運用する部分は、ポーションとしては小さいという形なんでしょうか。だとした場合に、ポートフォリオマネジャーだとかファンドマネジャーのスペックって大分変わってくるし、組織も全然違ってくると思うんですね。

先ほどキャリーを含むような報酬体系もあり得るようなお話もちょっとあったかと思うんですけども、この具体的なファンドマネジメントの構成を教えていただきたいと思うんです。このインハウスと全体のグローバルポートフォリオを見ながらリバランスをしたり、いろいろしたり、ヘッジかけたりというものと、このスキルが違うわけですよ。なので、ただ単純にコンプラでこうやってチェックします、失礼ながら、ばーっと見てもチェックする方はあんまりプロの方がいらっしゃらないみたいなので、そうなると、いくら体制のチェックを強くしても意味がないです。どういうプロフェッショナルの組織でしているのか、具体的に人数なり経験なり、それをはっきりお示しいただかないと、ただ過去、計算してみるとこういう利回りがありました、パフォーマンスがありましたというだけでは、それは、大学のポートフォリオ理論の講義にすぎないと思います。

運用益だけで元本は要らないということなんですが、そのバッファーを具体的にどういうふうに考えるのか。例えば、4兆5,000億円ですが、5,000億円が一般会計の出資だとしたら、この一般会計の5,000億円はバッファーとしてすっちゃってもいいというような、意味ではないと思うんですけども、どういうバッファーを考えるのか。ダウンサイドに入ったときに、研究費が全く出せない、運用益が出ないようなときにはどういう仕組みを考えておられるのかというのをもうちょっと具体的に教えていただきたいと思います。

いずれにしても、最大のステークホルダーは、国のお金でこれだけの金額なので、必ずこのオペレーションについては、財務省というか、財投分科会というか、ただ単なる形じゃない、しっかりしたグリップを私は要請したいと思います。

取りあえず以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。いろいろご質問ありましたので、ちょっと、お答えいただけるでしょうか。お願いいたします。

〔内閣府合田大臣官房審議官〕お答え申し上げます。私ども、財投というお金をお預かりしているということについては重く受け止めております。償還確実性につきましても、先ほどご説明申し上げましたとおり、私ども、65・35というレファレンス・ポートフォリオの中で、これを運用することによってかなりの確率、私ども、ある意味では自信を持って、この償還確実性と、それからペイアウトの両立ということをしっかりとやっていくということを前提に、先ほどご説明させていただいたところでございます。

したがいまして、先ほど触れさせていただきましたけれども、基盤技術研究促進センターのお話が出てまいりました。ご指摘のとおり、政策的意義のある事業への民間投資の活性化を目的としてリスクマネー供給を行う官民ファンドと、それから、先ほど来申し上げておりますように、何かそういった特定の事業等に投資をするということではなくて、長期的分散型のグローバルな資産運用を行うというこの今回のファンドというのは、これはもう本当に重ねてで恐縮でございますが、国内外の成長を取り込むことによって長期的に運用をすると。これは40年ということでお預かりをさせていただくわけでございますが、20年償還猶予がございますけれども、長期的に運用させていただけるということと、それから、投資規律を遵守ということで、市場環境の回復局面を捉えることが可能であるといった特徴において、官民ファンドとは基本的に異なるというふうに考えているところでございます。

JSTの体制につきましては、今日のご指摘も踏まえまして、先ほど申し上げたように、まだ私ども、文部科学省としても基本指針をお示ししていない段階でございますので、今、喜田理事を中心に様々検討させていただいておりますけれども、これについてはまた適宜ご報告をさせていただきたいというふうに思っております。

それから、バッファーにつきましては、先ほどお話をいただきましたように、4.5兆円の中で5,000億円、自己資本ということで政府出資をいただいているところでございますが、私ども、今後、10兆円ということを視野に入れた場合も、このバッファーというのが必要であるというふうに考えてございます。その上で、先ほどお話をいただきましたように、私ども、今回のファンドは、経済環境の悪化に伴いまして大学を支援できない、あるいは、博士課程の学生さんを支援できないということがあってはならないというふうに思ってございますので、先ほども少し申し上げましたとおり、1年間3,000億円とすると2年分の6,000億円を当初バッファーとしてしっかりと積み上げていくということをさせていただく、そのバッファーの厚みを強くしていくということが、先ほど来申し上げているように、償還確実性とペイアウトの両立ということの前提として重要ではないかというふうに考えている次第でございます。

以上でございます。

〔川村委員〕ありがとうございます。ただ、皆さん、毎月分配型ファンドをご存じだと思うんですけれども、元本、手をつけないで、リターンは出たら全部キャッシュアウトしてしまうという大はやりになったファンドがありました。パフォーマンスは最低です。なぜかというと、再投資ができないからです。それは、パフォーマンスはプラスのこともあればマイナスのこともあるわけで、普通は収益に関しては相当程度元本に繰り入れて再投資していくものなんですが、この仕組みは全部出しちゃうわけ、吐き出しちゃうわけですよね。

〔内閣府合田大臣官房審議官〕恐縮でございます。

〔川村委員〕違うんですか。

〔翁分科会長〕お願いします。

〔内閣府合田大臣官房審議官〕恐縮でございます。先ほど来申し上げましたとおり、私ども、支出上限というのを定めておりまして、仮に経済環境の中で3,000億円を超えるような収益があった場合、これは元本に積み増すというようなことで考えておりますし、今申し上げたように、運用が始まった当初は6,000億円のバッファーも含めて、まず、その元本を積み立てていくということをしっかりやっていくと。レファレンスポートフォリオ、65・35の場合でございますと、20年目には元本が相当程度積み上がるというような構造になっているところでございまして、毎年3,000億円のキャッシュアウトをした上で積み上がるというものでございますので、運用益を全てキャッシュアウトするというものではございません。

〔川村委員〕ただ、その前提は、3,000億円の運用益が出るということを前提にしているわけですよね。

〔内閣府合田大臣官房審議官〕長期的に、私ども、これは喜田理事とも相談させていただいておりますが、長期的に先ほど申し上げた当初目標というものを達成するということは、私ども、緊張感を持ってしっかりとやっていけば可能だというふうに考えております。

〔川村委員〕だから、緊張とかそういう話を、僕、伺いたいんじゃなくて、例えば長期的に3,000億円が出る計算になったとしても、例えば初めの5年、6年ずっとマイナスパフォーマンスをしちゃっていたということだってあるわけですよ。私が言いたいのは、3,000億円が出ることを前提にして組んでいるということが非常に危険で、私は後で申し上げようと思ったんですが、思い切ってハードルレートを下げたほうがいいと思うんです。高過ぎると思います。

〔内閣府合田大臣官房審議官〕お言葉、ご指導はしっかりと受け止めさせていただきたいと存じますが、私ども、大学支援という観点からも、それから、運用という観点からも、3,000億円ということを軸に考えさせていただきたいと考えてございます。

〔川村委員〕最後に1つ。これだけ儲かったらということを前提にやった事業で成功したものを聞いたことがありません。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

それでは、原田委員、野村委員、土居委員、まずそのお三方で、またご質問にお答えいただくという形にしたいと思います。

どうぞ。それでは、まず原田委員お願いいたします。

〔原田委員〕ありがとうございます。ご説明もありがとうございました。先に、川村委員からご意見があったことについては、100%同意見でして、その上で、実務的な論点で、重ならない内容について少しご質問させていただきます。

先ほど、内閣府の方による、川村委員への返答の中で、ファンドのリターンの一部は博士課程の学生の支援というふうにおっしゃいましたけれども、この大学ファンドは、イノベーションの促進ですとか、そういう意図で運用益を使うということになっていますので、「博士課程の学生支援が途切れてはいけない」というご発言の趣旨が全くもって分かりません。ここのところ、奨学金として運用益が利用されるのかをまずご説明いただきたいというのが1点目になります。学生への奨学金は別の組織から提供されています。

それから、ファンドマネジメントの工程ですとか、こういったところは先ほど、川村委員が聞かれたのでちょっと省きます。

あと、運用が悪化しても益が出なくても、バッファーから大学にお金を出すということについては、これは、極めて危険な考え方で、モラルハザードの最たるものになるように思います。益が出なかったら大学に渡すお金はないんだと、そこのところは徹底しておくべきではないかと思います。補助金ではないんです。補助金ではないので、大学ファンドは運用益を大学のイノベーションの促進に充てるという趣旨で設立されており、そこからは大きく離れているお考えかと思いますので、バッファーからお金を出すという補助金のような道はそもそも考えてはいけないことなのではないかというふうに思いました。

あと、繰り返しになりますけれども、ファンドは借入が100%で運営されます。そのお金の出し手の一部は財政投融資ですので、この借りているお金、財投への報告というものについてはどのようにお考えなのかというところについても少しご説明いただいてもいいのではないかと思います。超長期の運用というのは、確かにそういう絵になっていますけれども、40年の超長期の運用の後、返済が始まるというスケジュールです。私たち、今の関係者は生きていない将来ですね、もうその頃になると。そこまで返済計画も何もなく、期中に財投への報告がどうなっているかもご説明なく、理想的な感じの話をご説明いただいているので、今お伺いしたようなところをご説明いただければと思います。お願いいたします。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

それでは、次に野村委員お願いいたします。

〔野村委員〕ご説明ありがとうございます。冒頭の川村委員からのご指摘に賛同するところであります。私からは2点だけコメントさせていただきたいと思います。

1つは、この大学ファンドは時限的なものであり、四、五十年後に大学独自の自立的なファンドを運用してもらうということを目的にしていると思うのですが、現状の仕組みで各大学にいかに投資ノウハウが蓄積されるのか、自立した運営体制というものが築かれていくのか、そこが全く見えないと思います。40年後に考えればいいとお考えかもしれませんが、このファンドがスタートするときから大学それぞれの自立したファンドの形成につながるような、そういう仕組みを織り込むべきではないかということが1点目です。

それから、2点目としては、非常に高い運用目標値が具体的に設定されている一方で、撤退ラインが非常に不明瞭であるということです。やはり、私はこの運用目標値というのは非常に高いハードルだと思っております。専門家の先生方の様々な試算により十分実現可能ということですけれども、これはかなり高次な運用能力をもって、市況の後押しがないと実現できないような数値ではないかと思っております。だから、なおさらのこと、期間を定めて、運用実績が上がらない場合はここで損切りをするという撤退のラインを、スタートする前から恐縮ですが、今から具体的に設定しておいたほうがいいのではないかと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

それでは、土居委員お願いします。

〔土居委員〕4点指摘と質問をさせていただきたいと思います。まず最初に、文科省というのかCSTIというのか、どちらでもいいんですけれども、ずばりイエス・オア・ノーでお答えいただきたいのは、大学ファンドの資金を受ける大学、恐らく、国立大学がメインだと思うんですけれども、国立大学を想定して、国立大学は文科省がちゃんとグリップを握っている大学であると言えるのでしょうか。それをずばりお伺いしたいと思います。

この大学ファンドで、昨年もこの分科会で議論して、非常に気持ち悪い仕組みになっているなというふうにおぼろげながら思っていたんだけれども、今のご説明を聞いて、なるほどそういうことだったのかと分かったのは、これは理財局にもぜひその点については深く留意をしていただきたいと思うのは、利益相反の塊だということです。まず、CSTIは大学への支援を最大化したい、大学の事業で成長を促したい、その気持ちは分かります。ところが、別に財融資金をきちんと償還確実性をもって担保するということが第1の目標なのかと。そのための組織ということだったら、別にJSTでなくてもいいということなんだけれども、JSTはJSTの役目があるので、今申し上げたような目的を持っているとは思いますけれども、償還確実性については別に第一義的な目的じゃない。

それから、この大学ファンドの資金を預かる資金運用機関、これは別に財政融資資金が元手だったか何だかそんなことは関係ないわけです。とにかく、上がった運用益をできるだけ大きくしようという。しかも、その運用益が何に使われるかなんていうのは、資金運用機関は興味がないわけです。別に、口出ししてもらうつもりもないでしょうし。だから、償還確実性という観点にも興味がなければ、大学に支援するということが、運用益で上がっているかどうか、それは別に資金運用機関の方々が第一義的に視野に入れなきゃいけないことかというと、そうじゃない。少なくとも、できるだけ元本割れしないようにしながらも運用益を多くしようということが彼らの仕事ですから当然そうなんですけれども、全然その目的を共有していない。

それから、その資金を提供される、世界に伍する研究ができる研究者、この研究者は別に学長のために研究しているわけじゃないんです。自分の学術的な業績が最大限世界で評価されることを目的としている。ましてや、そのお金が財融資金から出ていることなんていうのは、からっきし興味がない。償還確実性、そんなの大学の研究者は全く視野に入っていない。

というわけなので、結局のところ元手の資金が、確かにもらって、あとどうなってもいい、多少毀損してもいいというんだったら、そのお金はそのお金でしょうけれども、あくまでも、川村委員のご指摘にあったように、財融資金が元手だということについて、そして、償還確実性を担保しなきゃいけないということがあるということについての理解の共有が全然できていない。

理解が共有できていないという中で、その資金を受ける世界に伍する大学とされる大学が、ちゃんとそれを有効に使ってくれるのか。JSTだって、当然、資金提供したからには世界に伍する研究ができるように研究者に研究してもらわなきゃいけないということだけれども、出すだけ出してそれっきり、学術的な業績は、それはうまくいくときもあればうまくいかないときもあるでしょうというような自由放任というか、学問の自由があるので、私も研究者の1人ですので、研究業績についての強い縛りが必ずしもないということであれば、何のためにここまで一生懸命、ああでもないこうでもないと議論しながらこういう仕組みを整えているのかと。

少なくとも、この大学ファンドの資金を受ける大学については、もう大学の自治だとかそういうくだらない言い訳を許さずにちゃんと、CSTIならCSTI、文科省なら文科省の言うことを聞けというふうに言えるだけのものがせめてないと、もう償還確実性も何もないということになりかねないということですので、やはり、少なくともちゃんと支援対象になっている大学はグリップを握っているかどうかということは極めて重要なので。

しかも、ついでにちょっと悪口を言えば、国立大学法人は文科省の所管だけれども、CSTIは科学技術政策担当大臣、もちろん、一番上は総理大臣ですけれども。というわけなので、両者の関係もどうなっているのかというようなこともあるわけなので、少なくともお伺いしたいのは、ちゃんと支援対象となる国立大学はグリップが握られているということを断言できるのかどうかというのをお伺いしたいというのが1つです。

2番目は、先ほど申し上げた財融資金を使っているということなので、償還確実性についてはJSTが取り結ぶ契約、資金運用機関だとか支援する大学だとかというところに、これは財政融資資金が使われていて償還確実性を確保することが大事なんですということを契約書の一文でもきちんと明記して、事あるごとに財融資金が元手で償還確実性が大切だということをきちんとコミットしていただけるかどうか、これをお伺いしたいと思います。

3番目は、年間に3,000億円の資金が必要だということなんですけれども、これは消費税を0.1%も上げれば3,000億円ぐらいは毎年出てくるわけです。なんだけれども、わざわざ10兆円だか何だかその資金を運用に回さないと出てこないというその関係ですね。特に、財投債で資金調達した財融資金を借りて頑張って運用して、それから20年後から返済するといって、最終的に残っているお金というのが政府出資だけということになるということならば、最初からエクイティーというか、償還確実性を求められるようなお金じゃなくてもよかったんじゃないかということなんですけれども、質問は、なぜその3,000億円という金額がまずありきなのかと。3,000億円を下回った資金でも確保できれば御の字ということなのかどうなのかというのをお伺いしたいというのが3番目。

最後は簡単に済ませますけれども、ガバナンス体制です。確かに、資金運用を上手にするということは大事なんだけれども、やはり元手が財融資金であるということであるからには、JSTに設けられる運用監視委員会に財投制度に深い理解があって資金運用機関から独立していて批判的精神を持って健全に組織を運営できる人を必ず入れるべきだと思いますけれども、その点についていかがでしょうか。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

それでは、原田委員、野村委員、土居委員の質問に対してご回答をお願いいたします。

〔内閣府合田大臣官房審議官〕ありがとうございます。

まず、原田委員のご質問でございますけれども、博士課程の学生支援について、すみません、少しお声が聞き取りづらかったんですけれども、博士課程学生支援を行う根拠というご質問でいらっしゃったとすれば、資料3-2の13ページの1ポツの①にJST法の規定、引かせていただいておりますけれども、国際的に卓越した科学技術に関する研究環境の整備充実並びに優秀な若年の研究者の育成及び活躍を推進する活動に関する助成を行うということになっておりまして、博士課程学生支援につきましても今回の対象にしているというものでございます。

それから、シミュレーションなどを通じて、償還確実性とペイアウトの両立ということをぎりぎり知恵を出してしっかりとやっていきたいというふうに考えております。

借換えについては現在のところ何も考えてございません。

野村先生からお話をいただきました件でございますが、大学独自のファンドをつくっていくということについて、それぞれの大学のファンドの運用体制というものを確立すべきではないかというのは誠に仰せのとおりでございまして、私ども、先ほどの土居先生のご指摘にも関わりますけれども、40年、財投をお借りをいたしまして、40年後には財投が全部回収し終えるということでございますけれども、その間、大学独自の基金というものが成長していくというのが大事だというふうに思っております。

昨日の専門調査会でもございましたけれども、これから、JSTで取り組ませていただく長期分散投資ということについての知見というものが、これも理論だけではない意味でアカデミアと結ぶ形で各大学の自立した運用体制を確立するということは大変大事なことだというふうに思っております。

それから、撤退ラインが不明確というところでございますけれども、これにつきましては先ほどもご紹介を申し上げた23ページでございまして、2シグマで国に報告、それから、ネットの損失が自己資本を上回るという状況が3期連続で継続した場合というようなことで考えているということでございます。

それから、土居先生のご質問でございますけれども、今回、利益相反というお話がございましたけれども、まず、この大学ファンドが財政投融資によって成り立っているということの認識の共有、目的の共有というのはご指摘のとおり何より重要でございますが、その軸となるべきはやはりJSTだというふうに思っております。本日、喜田理事も来ていただいておりますけれども、先ほど来申し上げているように、償還確実性とペイアウトの両立ということに取り組むに当たってはその点はしっかりと踏まえさせていただきたいというふうに思っております。

その上で、大学でございますけれども、私どもは、先ほど土居先生からもお話がございましたように、学問の自由ですとか大学の自治というのは尊重していく必要があるというふうに思っております。しかしながら、今回、先ほど申し上げましたように、大学自体が3%毎年財政規模の拡大をしていくと、そのことについては、私ども、相当強く大学をグリップしていくということをやっていかなければならないというふうに思っておりまして、そういった意味においては大学において闊達な研究ができること、それがイノベーションや若手研究者あるいは次代を育成するという機能を果たすということと、それから、先ほど来申し上げておりますように、今回のファンドが財投のお金をお預かりしているということから来る償還確実性というものをしっかりと踏まえる必要があるというふうに考えているところでございます。

JSTの体制におきまして、これも先ほどご説明申し上げましたけれども、3線管理というものはしっかりと取り組ませていただきたいというふうに思っております。その中で、これが財政投融資からお預かりしているお金であるという意識というものはしっかりと受け止めさせていただきたい、喜田理事もその思いで担当させていただいているというふうに思いますけれども、そこはしっかりと踏まえさせていただきたいと考えております。

駆け足になりましたが、以上でございます。

〔翁分科会長〕よろしいですか。

〔原田委員〕申し訳ありません、ちょっとよろしいでしょうか。

〔翁分科会長〕はい。

〔原田委員〕院生への支援についてなんですけれども、おっしゃっていることの意味がよく分かりません。オーバードクターに奨学金を出す、あるいは給与を出す、そういう形での院生の支援ということになるのでしょうか。そうしますと、この大学ファンドはイノベーション促進を担うようなプロジェクトに支援するというふうに勝手に思っていたんですけれども、そういう理解は異なる、間違っているということになりますでしょうか。

〔翁分科会長〕お願いします。

〔内閣府合田大臣官房審議官〕この大学ファンドでございますけれども、WPIですとかムーンショットのような特定の研究テーマに対して支援をするというものではございません。先ほど来申し上げているように、20年、40年という期間で日本の研究大学が世界と伍するための財政的な自立性を高めていくというために支援をするということと、それからもう一つは、先ほどJST法をご覧いただきましたように、次を担う博士課程の学生、日本の博士課程に進む修士の学生さんがこの20年で半分になっているという実態もございますので、ここは次代への投資として博士課程の学生さんを支援させていただくということでございまして、これらがイノベーションの基盤になってくるというふうに考えてございます。

〔土居委員〕ご説明は分かりました。では、なぜその3,000億円を大学ファンドだけから出さなきゃいけないのかと。別に、増税してその財源を賄えばそれはそれで財源が確保できるんじゃないかという点についてはどうでしょうか。

〔翁分科会長〕お願いします。

〔内閣府合田大臣官房審議官〕ほかならぬ土居先生からのご発言でございますので大変心強く思っておりますけれども、先ほど消費税のお話がございました。もう本当に釈迦に説法で恐縮でございますが、消費税の使い道は消費税法で決まってございまして、大学には使えないということになっていることも含めて、私ども、主計局とご相談をさせていただいて、大学に対する支援というものはしっかり充実をさせていただきたいとは思っておりますが、冒頭申し上げましたように、世界が次元の異なる科学技術投資を行っている中で今回のような枠組みというものを構想し実現をして、日本の研究大学の抜本的な機能強化を図っていくということも同時にやっていく必要があるというふうに考えてございます。

〔土居委員〕コメントということですけれども、もちろん消費税の財源の使い道はありますけれども、所詮その、あれだと思います、非課税になっている授業料を課税取引にして、それで上がった税収でこっちに回してくれということだってあり得るわけなので、別に今の縛りにとらわれることは、しかも長期的な視点でいいますとね、むしろ3,000億円ありきということが大問題だと。3,000億円を上げるためにはファンドの規模をこれぐらいにしなきゃいけないとか、運用益をこれぐらいにしなきゃいけないということよりも、やはり償還確実性を重んじていただかなきゃいけないと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕それでは、林田委員、冨田委員、工藤委員の順番でお願いいたします。

〔林田委員〕時間も迫っておりますので、駆け足でコメントしたいと思います。私は研究者ではなくジャーナリストですので、ジャーナリスト的な考え方でコメントしたいと思います。

この分科会の議論を駆け出しの記者が聞いて記事を書くとすれば、財投分科会委員、大学ファンドに大反対というふうになってしまうと思いますが、私が思うには、当分科会の委員は大学ファンドそのものに反対しているわけでは決してない。こういう仕組みで研究力向上を図る、その政策意図について反対論はなかったと思います。

それから、一部違う方もいましたけれども、基金の運用益を使うという、こういう大学の支援に使うということは、上山先生といろいろ検討会に出られている先生も10年ほど前に著書を書かれて、私も読みましたが、グローバルスタンダードであります。ただし、その原資は主に寄附でありまして、寄附を基にやっていると。川村先生が最初におっしゃられたように、問題はその原資の性格にあるんだということだろうと思います。

先ほど、この運用手法でいけば運用益を出せることに自信を持っているというふうなご説明がありましたけれども、借りたお金でもうかることを前提にしてのことを進めるというのは、バブルのときにお金を借りて営業特金やファントラにお金を突っ込んだというメンタリティーとほぼ同じであるというふうに私は思います。

彼らは損失補塡をしてもらったわけですけれども、今回の大学ファンドで損が出た場合には、その損失を補塡するのは国民でありまして、国民のお金がぐるっと回るだけですので、何ら損失の補塡にはならないということはしっかり自覚して、事に当たっていただきたいと思います。

有償資金の財投から4兆円という大変巨額なお金を拠出して、それを元本割れのリスクのある金融資産で運用すると。しかも、毎年大学に支援しなきゃいけないと。このスキームが、果たして持続可能なのかと。原資として財投はふさわしいのかという点に、まずそこに立脚して議論を進めないと、幾らそこを共通認識がない、土台がないまま幾らテクニカルな議論を進めても、その上に建った建物というのはもろくも崩れるということになると思います。この点、単に償還確実性を重んじていますということではなくて、その原資自体に問題があるんだという点について、私は共通認識を持っていただきたいと思っています。

この点につきまして、2月に亡くなられた池尾前分科会長が、12月18日、各委員の様々な意見をもって当分科会の意見とするというふうに議論を締めくくられました。したがいまして、当分科会としての賛意はいまだ示しておりません。しかし、大学ファンドを含めた財投計画は国会に何事もなく提出され、成立いたしました。賛意を示していない政策の善後策について当分科会に検討を求められても、これは挨拶に困るというのが私の率直な感想であります。分科会の役割としては仕方がないかもしれないし、審議会の一員として大人の対応をすべきだと、いつまでもごねていてもしようがないとも思います。ただ、賛意を示さなかったという締めくくりをした亡き池尾先生の言わば遺志、これは私としては最大限尊重したいと考えています。

少なくとも、今年度中に10兆円規模の拡大にめどをつけると言われている大学ファンドでありますので、これ以上、財投には頼らないと、財投を主軸に考えて原資を捻出するということはおかしいよということは、これは理財局と主計局との関係があるので困難なことは重々承知しておりますけれども、理財局として性根を据えてしっかり主張を通していただきたいというふうに思います。

それから、内容面ですけれども、いろいろ検討されたという苦労は分かります。その苦労は多といたします。大学ファンドの運用体制、ガバナンスなどいろいろと目配りをされているというところは多といたしますけれども、到底できそうもないことを字面で作文したと思われる点も幾つかあると私は思っています。

全部は言及いたしませんが、例えば資料3-1の9ページ、償還確実性を確保する仕組みとして下のほうに適時のモニタリングとか情報開示とか例示されておりますけれども、現実問題として損失が出た場合、幾ら専門家が運用状況を眺めてみても、あるいは情報開示をしてみても、何をしても損失というのは決してなくなりません。バッファーを超える損失が出た場合、どうにも対応ができなくなるというのは避けられない。先ほども指摘しましたとおり、毀損した分は国民負担になるということをきっちりと国民に説明をして、理解を得た上で政策を進めるというのが政策決定の筋道だと私は思います。

それから、資料3-4の1ページ、大学ファンドの運用の目的に、長期的な観点から適切なリスク管理を行うとあります。これはGPIFのように給付が長期的な時間軸で行われる年金資金という場合なら運用と給付のギャップは生じません。現に、GPIFも兆単位の運用益が出る年もあれば運用損失が膨らむ年もあります。そして、全体として運用実績を平準化、安定化させてきています。

しかし、毎年の支援を前提とした大学ファンドの運用目的として、長期・分散というだけで適切なのかと、それで本当にお金は回っていくのか、資産運用に関しては、長期・分散と言っておけばいいというようなやや安易な言い回しを使っているだけではないのかと、政策論としての詰めが甘いのではないかと、私はジャーナリストとしては、そういうふうに思います。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

それでは、冨田委員、お願いいたします。

〔冨田委員〕ありがとうございます。3点。

1点目は、財融貸付の償還財源は何かということについて、今日、お話がなかったですね。資料3-2の9ページの右上、3番のところに書いてあるんですが、財政融資資金の確実な償還のために、機構は毎年度適切に償還計画を策定とあります。

借金をするときには、まず返済計画を提示してお金を借りるのが常識です。ましてや、4兆円を40年間借りるわけですから、きっちりと償還計画をつくっておくというのが大前提なわけですね。それを毎年、適切に策定ということでは、これは返してもらえるかどうか分からない。

何によって、財投借入れが返済されるのか、これを話していただきたい。借金するには返済計画を出してから借金するのが当然の前提であります。後顧の憂いのないように、つなぎ資金である財投を自己資本に、つまり寄附金に置き換えていくプロセスを示すべきであるというのが1点目です。

2点目は、3,000億円、2年分のリスクバッファーについてです。これは先ほどご指摘あったGPIFとの関係で申し上げますと、GPIFの運用益のネットプレゼントバリューというのが給付原価に対して何%占めるかということが示されております。年金再計算ですね。それは厚生年金で8.8%、国民年金で7.1%なんです。しかも、公的年金の場合は、国民から保険料を強制徴収するわけなんですね。しかも、給付水準についても所得代替率などに応じて見直しはなされる。対して、先ほど来、3,000億円、3,000億円というふうにおっしゃっているわけだけれども、そういうことが果たしてこの程度のリスクバッファーで可能なのかどうか。強制徴収ではなくて寄附金に依存する大学ファンド、寄附金収入の計画、事業支援計画というものが、やはりファンドのリスク管理の大前提のはずなんです。したがって、これらを考慮した上でリスクバッファーを考える必要があるというのが2点目です。

3点目は、このリスクバッファーとも関係いたしますけれども、ファンドのパフォーマンスについてなんです。過去の立派なパフォーマンスについては、それをもたらした過去の経済構造というのが背景にあるわけです。それは、例えば、冷戦の終えんがあり、そして中国経済が世界市場に参入する。これらによって物価の持続的な下落というのが可能となり、日本円というものにとってみれば、実質実効レートがどんどん低下を続けるということが背景にあったわけです。

そして、もう皆さん、ご記憶にあると思うんだけど、r大なりg(r>g)という、つまり資本収益率が成長率よりも高いということを本の表紙に書いた本が世界中の飛行場で、もう大変なベストセラーになっているわけです。つまり所得格差の著しい拡大というのが、この間にr大なりgによってもたらされた。そういう世界経済の構造だったからこそ、こうしたパフォーマンスが上がったと考えることができます。

さらに、先ほどもご説明あったんだけど、2年連続でパフォーマンスがマイナスになったのは過去に1回だけだということを言われましたけれども、その背景には物価の持続的な下落と、さらに各中央銀行によりますゼロ金利政策及び量的金融緩和があったわけです。こうした背景が今後も続くのかどうかということの検討もなしに、そういう説明で果たして十分なのかどうかということが問題だと思います。

つまり、これから先の世界経済の構造をどう考えるかということが大事であって、内外の株式と債券の分散投資を行いますという形式論を述べるだけで、果たして大学ファンドに寄附が集まるのか、各大学に自律的な基金がどんどん造成されるのかどうかということを問いたい。つまり借金による市場運用の哲学とは何かということを聞きたいわけです。

以上3点。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

それでは、工藤委員、お願いいたします。

〔工藤委員〕ありがとうございます。

昨年12月の分科会でも申し上げましたが、ファンドの運用目的自体は理解できるのですが、その政策目的を踏まえた運用が行われる設計となっているのか、また中長期的に見て、財政投融資の償還確実性が担保されているのかという点については、今日もいろいろ議論がございましたけれども、引き続き検証が必要と考えております。

私がコメントしたいのは、支出された資金が政策目的に沿って適切に運用されるのかという点についてです。本政策のゴールは、研究環境の整備等を通じて、日本が世界に誇ることのできる成長分野を創出することだと理解しております。現在、支援対象となる大学のガバナンス強化等をご検討いただいていると思いますが、大学での研究の成果をいかに我が国の成長につなげていくかという視点を踏まえて、これは財務省だけではないと思いますけれども、やはり国として財投を使うわけですから、この分科会、財務省としても見ていかなければいけないと思います。

また、野村先生から、40年後に本当に自立したファンドが大学にできるのかという点が非常に疑問というご意見がありましたが、それを本当に目標とするのであれば、このファンドをつくるときから、それに向けた仕組みをしっかりと入れておかないと、結局、40年後にロールオーバーするという形になるのではないかと思いました。

以上です。ありがとうございます。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

それでは、今の林田委員、冨田委員、工藤委員の質問やコメントについて、お願いいたします。

〔内閣府合田大臣官房審議官〕いろいろご指導ありがとうございました。

林田委員のご指摘につきましては承らせていただきたいと思います。

冨田先生のご指摘でございますけれども、何をもって償還するかということでございますが、20年後の段階で元本が相当程度積み上がるということを前提にいたしますと、この段階から、償還をしていくということになるわけでございます。

21年目から、償還するに当たっては、先ほどお話がありました償還計画というのをお示しをし、確実に償還していくということになるわけでございます。

これは工藤先生のご指摘にも関わるわけでございますが、私どもとすれば、これはこの大学ファンドというものを、本来であれば大学が自身のファンドを持っていくというのが、アメリカでもイギリスでも本来あるべき姿だと思っておりますけれども、それでは間に合わないので、今回、このような形で財投をお預かりしてでも取り組ませていただくわけでございますが、各大学におけるそういった成長戦略、3%の成長というものの中には、大学独自のファンドをつくっていくことも、当然、含まれているわけでございまして、今回の指定に当たりましては、指定というのは、このファンド支援対象大学の指定に当たりましては、そのような戦略ですとか、それから体制というものが組まれるということをしっかりと見てまいりたいと考えてございます。

その上においては、この支出されたものが、工藤先生の支出されたこの支援というものがうまく生かされているかどうかというのは、ご指摘のとおり大変重要でございまして、総合科学技術・イノベーション会議の資金運用ワーキンググループにおきましても、今、ご懸念をいただいたようなことをしっかり踏まえながら、運用することによって生じた、この支援額というものを、きちんと生き金になるようにということは、二度三度とご指摘をいただいたところでございます。今回は研究大学の機能強化、ガバナンスの確立と車の両輪で、冒頭申し上げたようにセットでやらせていただきたいというふうに思いますので、これは40年後ロールアウトするということではなくて、確実に同時にやらせていただきたいと考えている次第でございます。

駆け足でございますが、以上でございます。

〔翁分科会長〕どうぞ。

〔冨田委員〕運用益で借金を返済するということですね。そういう理解でよろしいんですか。

〔内閣府合田大臣官房審議官〕21年目からは運用益、それから元本をお返ししながら40年目に全てお返しをするということになろうかと存じます。

〔冨田委員〕それは結局は錬金術を大学ファンドという名前の下に行うということを大声で言われていることですね。無税国家ですな。

〔内閣府合田大臣官房審議官〕私どもは決して錬金術だと思っておりません。科学的なポートフォリオ理論に基づきまして、しっかりと取り組ませていただきたいというふうに思っております。

〔冨田委員〕科学的な理論って何なんですか。私、さっき言ったように、シミュレーションの背景にある経済構造、つまり21世紀になってから20年間のことを僕はおおむね申したつもりなんだけれども、物すごく高いパフォーマンスを生んだわけですよね。その背景にある経済構造というのは、これからも続いて、同じようなリターンが得られるんだと、同じようなリスクとリターンの構造だということは、何か科学的な背景なんですか。それが錬金術の理由なんですか。顔を上げて言ってください。

〔内閣府合田大臣官房審議官〕恐縮でございます。

私ども、先ほど来申し上げておりますように、長期・分散の投資、これは何度も繰り返したとお叱りを頂戴いたしましたけれども、世界の成長の果実を獲得するということ、これは先ほどの伊藤先生の言葉を借りれば、長期運用のプレミアムを獲得するということだと存じます。なかなか我が国においては形になっていないかもしれませんけれども、これは取り組ませていただきたいと考えてございます。

〔翁分科会長〕それでは、あと10分で4人の方にご質問、コメントをいただかなければならないので、大変恐縮ですが、2分ずつぐらいでお願いしたいんですが、渡部賢一委員、渡辺努委員、江川委員、高田委員の順番でお願いいたします。

〔渡部委員〕渡部でございます。時間が限られていますので、回答しやすいように、実務的な、易しい質問をしたいと思います。

2点ありますが、1つは、JSTさんの役割というのは増大、重要になってくるわけですけれども、JSTさんの年間経費とか人員の増加というのは、どれぐらいに見込まれているのかをお聞きしたいと思います。

内訳の1つは、大学への支援で、あと3,000億円という話ですけれども、それのために新たな経費、新たな人員増というのがあるのか、あるいは既存のスタッフでオーケーなのかというのが1つ。内訳の2つ目は、これは新たにつくる、この大学ファンド、この運用に関しても年間経費増、あるいは人員増というのを、どのように見込んでらっしゃるか、こうした経費増、人員増というのが1点目の質問。

2つ目の質問は、3,000億円を前提としたとしても、元本を毀損したときに、これは単純な質問ですけど、バッファーというのを、まさにあるとして、リスク管理の、23ページですか、3年の短期連続云々というのがあるんですけれども、制度としては、毀損した場合に、一般会計の追加出資等ができるような制度設計になっているんでしょうか。数値は別として、そういう設計になっているのかなっていないのかというのをお聞きしたいと思います。

ついでに3点目、あと15秒として、どこのページか忘れましたが、一般の大学さんが運用しているところ、スケールメリットを取るために、寄託を受けるというのがありましたけれども、これは積極的にそれをされようということでしょうか。

以上3点です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

それでは、渡辺努委員、お願いいたします。渡辺努委員、いらっしゃいますか。ミュートですか。

じゃあ、先に江川委員、お願いいたします。

〔江川委員〕ありがとうございます。

今回のスキーム、私、バックグラウンド、あまりよく分かりませんけれども、海外の大学の基金と同じような仕組みを財政投融資を原資につくろうとする中で、多くの委員がおっしゃっているような矛盾が生じてしまったんだろうと想像しています。ですから、林田委員がおっしゃる原資そのものに問題があるということに私も同感ですけれども、現状を前提として、2つコメントしたいと思います。

1点目は、対象6大学というお話が先ほどありましたけれども、対象大学がこれから増えないようにしていただきたいと思います。大分前ですけれども、ロースクールが発足するときに、政治家からの圧力などがあって、当初の予定よりもずっと対象大学が増えてしまった、それで大きな問題になったということがありました。逆に、今日、目標のリターンが高過ぎるという、多くの委員がご指摘になったので、もしかしたら大学の数を減らせば目標リターンを引き下げることができるので、そういうことも考えられないのかなというのを思いました。

2点目はガバナンスについてです。財政投融資の償還確実性を確保するという観点からの、ほかの委員がおっしゃった意見には賛同いたします。ただ、大学をCSTI、文科省の管理下に置くべきとか、そういうようなご発言もちょっとあったようなんですが、やはり学問の自由とか大学の歴史的な経緯、背景などの観点から、慎重に体制は考えるべきだと思います。要するに、ポイントは透明性のあるガバナンスをしっかり確立するということだと思います。

管理を厳しくするということで、レイヤーをたくさんつくると、細かいルールをつくることになって、かえって逆効果になることがあります。例えば、私が東大理事をやっていたときに基金も担当していたんですけれども、基金の運用対象を文科省が含めた法律の中に書き込んであるので、ギリシャの国債は買えるけれども、トヨタの社債は買えないとか、そういういろんな矛盾があって、これを変えられないのかと聞いたら、改正するには国会で法律を変えなきゃいけないから無理ですと言われたことがありました。ですから、実効性のある、透明性のあるガバナンスということを考えていただきたいと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

それでは、次に高田委員、お願いいたします。

〔高田委員〕どうもありがとうございます。手短に議論させていただければと思うんですけれども。

本来、こういう仕組みは大学へのファンドというんでしょうか、エンダウメントといいましょうか、寄附金みたいなものがあってというような状況の中で対応するところだと思います。但し、なかなかそういう資金がない中で、こういう財政投融資を使ってという中に、やっぱり制度上のチャレンジがあるのは確かなんだろうなと思います。それだけに、せっかくここまで支援するという形で対応するということであるとすれば、大学側、使う側というんでしょうか、非常に強い意識とガバナンスといいましょうか、強い覚悟を持って使っていただきたいなというのは非常に切に望むところでございます。

それから、2番目の論点なんですけれども、確かに今回、この国の資金ということでありますから、当然、償還確実性ということは重要であるというのが1つの性格づけということになろうかと思います。

また一方で、国の資金であるということは、非常に長いリスクが取れるという資金の性格付けの点もあるわけなんで、そこのメリットをどのように生かすかを、もう一つ、コインの表と裏という関係として認識するのが重要だと思います。

そういう意味では、私もこの委員の一人として、運営側のところでも、運用側のところでも議論したんですけれども、やはり長期運用のメリットを取るということは重要なところにもなってまいりますので、そういう中で、日本になかなかこれまで根付いてなかった資産運用のカルチャーを確保していく一つの起爆剤というか、一つのモデルケースみたいなものに、せっかく出来るんであれば、対応していく必要があります。同時にガバナンスというのはやっぱり重要なんじゃないかなと思います。ですから、そういう意味での安定的な対応ということを、裏を返せば、非常に長いリスクを取ることができるメリットを活かすことが重要です。従来のいわゆる官民ファンドというような政策目標に対応したというよりは、あくまでも今回の場合は市場を重視した運用でありますから、その市場の中での成長をグローバルな観点から享受していくというような発想で臨んでいただきたいなと思う次第です。

それから、最後になるんですけれども、当然のことながら、これは市場に対応している、世の中、もう何が起こるか分からないというような不確実性というものはあるわけでありますので、そういう市場に向かうということは、当然そういうリスクもあるわけであります。運用上のスタンスのところは、私、先ほど申し上げたように、揺るがないようなスタンスが必要ではありますけれども、実際の活用オペレーションといいましょうか、もしくは3,000億円の使い方、もしくはペイアウトのところということ、いわゆる制度的な部分については、ある程度フレキシビリティーはあってもいいんじゃないのかなとも思っております。そういう中で、実績配当に近いようなというんでしょうか、そういうようなフレキシビリティーみたいなものは、いずれ状況によっては、そういうことも幾つかのシナリオみたいなものはあり得るんだということは念頭に置いてもいいのではないかなと思う次第でございます。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

渡辺委員につきましては、うまく接続ができないようで、ご意見いただいています。

「大学への支援を3,000億円で固定するのに反対です。大学にリスクを負わせるべきです。米国の大学もマーケットの変動のリスクを負っています。」といったコメントがありました。

それでは、今の4名の方のコメントやご質問について、ご回答をお願いいたします。

〔内閣府合田大臣官房審議官〕時間も迫っていると思いますので、手短にお答え申し上げます。

渡部先生のJSTの役割拡大に伴う体制整備については、後ほど文科省のほうからご説明をさせていただきます。

それから、元本の毀損の関係。毀損と申しますか、実質損の関係で、23ページの国の報告、それから国との協議の話でございますが、ちょっとご質問が聞き取りづらかったんで恐縮なんでございますが、基本的には、例えば、3期連続でネットの損失が出た場合については、事業自体の見直しについて国と協議するということになっているところでございます。

寄託金につきましては、これはスケールメリットを生かせるように、各大学の取組を促してまいりたいと考えてございます。

それから、江川先生の件でございますけれども、私どもとしては、やはり我が国の国力を考えると、6大学が世界に伍せる研究大学として必要だと思っておりますし、また、先ほど高田先生のほうからも、国の資金、長いリスクを取れるという、そのメリットというのは、ぜひ生かさせていただきたいと思っております。リターンを上げることのほうが償還確実性が上がるというふうに、国の資金の長いリスクを取れるというメリットを、ぜひ生かしていきたいと思っております。

1点だけ、ちょっと私の説明が不十分で誤解が生じたとしたら訂正をさせていただきたいと思っておりますが、私ども内閣府の科学技術・イノベーション推進事務局が、大学に関して具体的な権限を持つということを考えているわけでは今はございません。先ほどはそういう観点で、文部科学省がそういう役割をしっかり果たすということで申し上げた次第でございますので、誤解がございましたら訂正をさせていただきます。

それでは、JSTの体制についてご説明申し上げます。

〔文部科学省坂本審議官〕文部科学省でございます。

先ほどご指摘いただきましたように、運用、それから大学への支出の管理については、必要な体制整備はございます。文部科学省としましては、内閣府と共同で、このファンドの運用の枠組みとして、これから文科省が、基本指針を定め、そしてそれを受けてJSTが基本方針を定めていくということになりますけれども、今、JSTのほうでは、まず運用についての体制整備を急いでいるところでございます。これについてはファンドの規模に応じた、しっかりした体制をつくるよう、今、JSTのほうで、鋭意調整中ということでございます。

支出の管理についても体制も必要でございますけれども、これにつきましては、この支出、大学支援についても計画づくりをこれから進めていく。これは当然、運用状況を踏まえながらということになりますけれども、その計画づくりと並行して体制整備を進めていきたいと考えております。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

今日、手を挙げていただいた方については、皆さん、ご意見いただいたんですけれども、私も個人的にちょっとコメントしたいのは、やはり3,000億円を固定しているということによって、結局、無理な目標リターンというのが出てきていて、その結果として、運用ポートフォリオがGPIFよりも高いリスクの株式比率65%という状況となっていることです。

GPIFを見ていても、年間で2割ぐらいの大きさの時価の振れがあるわけで、大学ファンドがそれよりもエクイティーの比率が高いとすると、本当に4兆円でも物すごく大きな時価の振れが出てくるという状況になるわけです。借入れをしながらこれを国として耐えられるのかということは、ちょっと私はどう思っておられるのかなと思っております。

また、運用成績が悪いというときにあっても、やっぱり3,000億円というのを捻出し続けなければいけないということで、そのためのバッファーつくりますとおっしゃっていますけれども、不確実性がすごく高いので、そういうときに元本を売らないで済みますかねということも非常に不安な部分でもございます。

多くの方がおっしゃっていたんですけれども、やっぱり財投分科会に対しては、償還計画を、公表資料として出していただきたいと思っております。

今日も、亡き池尾先生もおっしゃっておりましたので、私も取りまとめるということはとてもできませんし、本当に多くの意見が出て、多くの不安があり、私どもの意見というのは納税者の意見ということかと思っております。納税者というのは、もちろん私たち大学ファンドの目的については賛同はしているわけです。各国に伍して、しっかりと研究開発、大学を育てていかないといけないということについては誰も反対はしていないんですが、それをこういう形でやるということについて非常に不安を持っているということが、皆様の意見から出ていたということをお伝えしたいと思いますし、具体的に幾つかの検討していただきたい課題も出てきたと思いますので、ぜひご検討いただきたいなと思っております。

以上で私のコメントとしては終わりとしたいと思いますが、かなりいろいろな議論が出ましたので、局長から何かございましたら、コメントをお願いします。

〔角田理財局長〕財政融資資金を拠出する理財局としては、先ほど翁分科会長もおっしゃったように、国民負担につながることがないよう償還確実性の観点から、しっかり制度設計をしていくことが重要でして、関係方面とよく議論を詰めていきたいと思います。

以上でございます。今日はご議論ありがとうございました。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

本日、ご意見を時間の関係でいただけなかった方もいらっしゃいますので、事務局のほうまでお寄せいただければと思います。

本日の議事内容につきましては、この後、事務局より記者レクを行います。議事録につきましては、委員の皆様のご了解をいただいた後、財務省ホームページに掲載いたします。

それでは、本日、ご多忙の中、誠にありがとうございました。これで閉会いたします。

16時09分閉会