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財政制度等審議会財政制度分科会
議事録

令和元年12月18日
財政制度等審議会


財政制度等審議会財政制度分科会議事次第

令和元年12月18日(水)10:00~11:47
財務省第3特別会議室(本庁舎4階)

  • 1.開会

  • 2.財務副大臣挨拶

  • 3.令和2年度財政投融資計画等

    • (議案第1号)令和2年度財政投融資計画

    • (議案第2号)令和2年度財政投融資資金運用計画

    • (議案第3号)令和2年度の財政融資資金の融通条件

    • 質疑・応答

  • 4.「今後の産業投資について」への対応状況等

    • 質疑・応答

  • 5.閉会

配付資料

  • 議案第1号令和2年度財政投融資計画

  • 議案第2号令和2年度財政融資資金運用計画

  • 議案第3号令和2年度の財政融資資金の融通条件

  • 議案関係説明資料

  • 参考資料令和2年度財政投融資計画の機関別事業計画・資金計画

  • 資料1「今後の産業投資について」への対応状況等

出席者

分科会長

池尾和人

藤川財務副大臣

可部理財局長

鑓水理財局次長

嶋田総務課長

湯下財政投融資総括課長

柳町管理課長

柴田計画官

大関計画官

堀納資金企画室長

山本財政投融資企画官

高田

野村浩子

渡部賢一

臨時委員

江川雅子

冨田俊基

中里

林田晃雄

専門委員

川村雄介

工藤禎子


10時00分開会

池尾分科会長それでは予定の時間になりましたので、ただいまから財政制度等審議会財政投融資分科会を開催いたします。

本日は、前回に引き続きまして藤川財務副大臣に御出席をいただいております。つきましては、開催にあたって藤川副大臣から御挨拶を頂戴したいと思います。

藤川財務副大臣改めまして、おはようございます。財政制度等審議会財政投融資分科会の開催にあたりまして、一言御挨拶を申し上げます。

委員の皆様方におかれましては、これまで熱心に御議論いただき、また、年末のお忙しい中、こうして御出席を賜り、心より感謝申し上げます。本日は、令和2年度財政投融資計画等についての御審議をお願いしておりますが、当該計画は、10月23日から4度にわたって本分科会で御議論いただいた内容及び前回御議論いただきました「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」への取組を反映したものでございます。具体的に申し上げますと、成長力強化のための重点投資として、現下の低金利状況を活かし、民間には供給が難しい超長期の財政融資資金を活用した、高速道路や成田空港、なにわ筋線等のインフラ整備の加速などに全体計画の50%超の配分を考えております。また、日本企業の海外展開支援などにも積極的に取り組んでまいりたいと考えております。委員の皆様方におかれましては、忌憚のない御意見を賜りますことを心よりお願い申し上げまして、御挨拶とさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

池尾分科会長どうもありがとうございました。なお、本日は予算案の決定を間近に控えていることから、藤川副大臣、事務局側においてやむなく途中退席される場合もありますので、あらかじめ御了承ください。

それでは、早速ですが議事に移ります。本日は議事次第にありますように大きく2つ御審議をいただきたいと思いますが、まず令和2年度財政投融資計画等の3案について前半で御議論いただき、後半では今後の産業投資についての対応状況等ということで、フォローアップですが、御審議をお願いします。

それでは、最初の令和2年度財政投融資計画等の3案につきまして、湯下財政投融資総括課長より順次説明をお願いいたします。

湯下財政投融資総括課長よろしくお願いいたします。湯下でございます。まず、議案関係説明資料をお開きください。議案第1号の令和2年度財政投融資計画、議案第2号の令和2年度財政融資資金運用計画、及び議案第3号の令和2年度の財政融資資金の融通条件につきまして、こちらの議案関係説明資料に沿って御説明を申し上げます。

まず1ページ目でございますが、令和2年度財政投融資計画のポイントを御覧ください。まず、令和2年度財政投融資計画額は13兆2,195億円でございます。真に必要な資金需要に重点化するとともに、12月5日に閣議決定されました「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」への対応も行うということでございまして、3年振りに対前年度当初計画比で増加の計画となっております。このうちリスクマネー供給等を行う産業投資の規模は過去最大の4,510億円となっております。

今のは箱の部分でございましたが、その下の丸に移らせていただきます。財投計画額の配分につきましては、まず成長力強化のための重点投資等に約7.2兆円と、全体の50%超を配分しております。「主な施策の例」でございますが、これにつきましては後ほど2ページ目以降で御説明させていただきます。このほか、その下の丸でございますが、日本企業の海外展開支援等に2.0兆円、教育・福祉・医療に1.1兆円、地方に2.9兆円という配分になっております。

2ページ目以降をお開きください。主な個別の施策を御説明させていただきます。

まず、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構と各高速道路株式会社でございます。12月11日の分科会で御議論いただいた件でございます。平成30年度より、道路機構に対して超長期の財政融資資金を活用し、生産性向上や防災・減災対策のための高速道路ネットワークの整備を加速してまいりました。

今回の経済対策を受けまして、道路機構に対して引き続き超長期の財政融資資金を活用し、高速道路ネットワークの整備を加速するとともに、各高速道路株式会社が実施する高速道路の更新事業等に対しても財政融資資金を活用することとしております。道路機構に、8,600億円、各高速道路株式会社に合計2,600億円の財政融資を措置し、安全性・信頼性等の向上のための暫定2車線の4車線化等を実施してまいります。

続きまして3ページ目を御覧ください。こちらは成田国際空港株式会社でございます。2030年の訪日外国人旅行者6,000万人の目標に向けて、成田国際空港のB滑走路の延伸及びC滑走路の新設などを実現するため、4,000億円の財政融資を措置いたします。これによりまして、右下にございますような旅客数、貨物取扱量等の増加が期待されます。

続きまして、4ページをお開きください。独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構でございます。空港等とのアクセスとなる主要な都市鉄道ネットワークの強化のため、具体的には、関西国際空港及び大阪南部と大阪都心を直結する「なにわ筋線」、また、大阪・関西万博の会場である夢洲への交通円滑化を図る「北港テクノポート線」の整備等を実現するため、財政融資1,171億円を措置することとしております。

続きまして、5ページ目でございます。日本政策投資銀行でございます。国際競争力強化や災害等へのレジリエンス向上に資する社会資本整備等、民間資金だけでは十分な対応が困難な長期事業資金の供給を行っていきます。また、特定投資業務においては、成長段階ごとのボトルネックに対応することにより、未だ不足する民間リスクマネー供給を促進するため、産業投資1,000億円を措置いたします。

次の6ページをおめくりください。国際協力銀行でございます。官民一体となって日本企業の海外展開を促進する観点から、外国為替資金特別会計より補完的原資を供給する「成長投資ファシリティ(仮称)」を活用しつつ、民間金融機関等とともに、日本企業による海外M&Aやグローバル・バリューチェーンの再編、質の高いインフラ整備等を強力に支援することとし、財政融資2,810億円、産業投資800億円、政府保証8,825億円を措置しております。

次のページでございます。日本政策金融公庫の国民一般向け業務、中小企業者向け業務でございます。民間金融機関との協調等の取組を引き続き推進しつつ、特に創業や事業承継、事業再生、海外展開等の成長戦略分野を重点的に支援することとし、国民一般向け業務に、財政融資2兆300億円、産業投資40億円、中小企業者向け業務に、財政融資9,280億円、産業投資174億円を措置しております。

最後に8ページ目の、日本政策金融公庫の農林水産業者向け業務でございます。農林水産業の生産基盤強化や輸出力強化を目的とした設備投資等への資金需要に的確に対応するため、財政融資5,200億円を措置しております。

次に、9ページ目をおめくりください。ただいま御説明しました施策を織り込みました令和2年度財政投融資計画額は13.2兆円と、青色の当初計画ベースで御覧いただきますと平成29年度以来3年振りに対前年度比で増加となっております。

さらに2ページお進みいただきまして、11ページ目でございます。産業投資の概要でございます。令和元年度当初計画と比較いたしまして、日本政策金融公庫が減額となる一方、産業革新投資機構が新経営陣のもとで投資を始めるということで1,000億円を措置していることなどから、対前年度比661億円増の4,510億円の計画となっております。これは過去最大規模ということでございます。

以上を踏まえまして、議案のほうの御説明に入りたいと思っております。

まず議案第1号でございます。こちらは今申し上げました令和2年度財政投融資の対象機関ごとの措置額を財政融資、産業投資、政府保証の原資別に整理した表でございます。

この中の5ページ目をお開きください。5ページ目は、それぞれ今申し上げました措置額を使途別に分類したものでございます。(6)の「産業イノベーション」ですとか、(8)の「社会資本」、また、(9)の「海外投融資等」の分野が増加となっております。これは先ほど説明しました民間リスクマネー供給の促進、低金利を活用したインフラ整備、日本企業の海外展開支援などといったようなことに重点化して措置した結果でございます。

続きまして議案第2号をお開きください。こちらは今御説明しました財政投融資計画のうち、財政融資資金のみを切り出したものでございます。

そして最後、議案第3号でございます。令和2年度の財政融資資金の融通条件でございます。これにつきましては、機関ごとに資産・負債の構造を分析いたしまして、マチュリティ・ギャップなどの課題がある場合には、それを解消すべく新たな融通条件を追加、また融通条件ごとの財政融資措置額の変更等を行い、反映したものとなっております。

以上、簡単でございますが私の説明を終わらせていただきます。

池尾分科会長どうもありがとうございました。

それでは、ここまでの説明を踏まえまして、委員の皆様から本議案に関して御意見あるいは御質問等をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

それでは冨田委員、お願いいたします。

冨田委員ありがとうございます。質問3点でございます。

1点目は今般の経済対策について、補正追加と新年度の財投計画に分けて計上されているわけですけれども、その分け方の考え方についてお伺いしたい。それと、決算においてですね、実行済みと不用額とをいつも決算報告でいただくわけですけれども、それを追加分と当初計画分に分けているのは今まで見たことないんですけれども、それは今回も同じなんでしょうかということが1点目。

2点目は議案についてなんですけれども、産投についての出資条件ですが、今回の議案第3号は、いつもそうなんですけれども、財政融資の融通条件についての変更は記載があるんですけれども、産投出資の出資条件については変更がないと解釈していいのか、あるいはあったとしてもこうした議案第3号に相当するようなものは提出されないのかどうかということが2番目の質問です。

3番目も産投なんですけれども、これは前回御質問したことの続きでもあるんですけれども、産業革新投資機構についてです。これは認可ファンドに投資するというお話をいただきました。その認可ファンドは、私が聞きたかったことは、その認可ファンドというのは旧産革機構とどのように違うのか。その違いのエッセンスの部分をお教えいただきたいという3点でございます。

池尾分科会長 では、お答えください。

湯下財政投融資総括課長まず、1点目の御質問についてお答えさせていただきます。今回の対策、財政投融資規模は合計3.8兆円でございますが、基本的には当年度に支出が予想されるものは補正計画、そして来年度に見込まれるものは令和2年度当初計画に計上しております。

具体的に細かく説明させていただきますと、例えば成田国際空港ですとか、なにわ筋線というものは、今、成田国際空港であれば許可申請が出ていて、来年、許可のための手続が行われるという状況でございます。また、なにわ筋線でございますと法改正を行った上での融資ということになりますので、いずれにしましても今年度中に融資をするということは難しいということで、令和2年度計画での措置になっております。また、外国為替資金を活用したファシリティにつきましても、これは18カ月の全体計画でございますので、最初の3カ月分は補正計画に計上し、次の12カ月分は2年度当初、そして最後の3カ月分は令和3年度という形でそれぞれの融資時期に合わせて分けて計上しております。運用残等の決算につきましては全体をまとめて計上するということになります。

続きまして、2番目の産投出資の出資条件でございますが、まさにそういうものがないものでございますので、のちほど企画官からフォローアップで御説明させていただきますが、出資に当たっての取り決め事項について、現状、一個一個の機関と取り決めを行っているところです。それにつきましては後ほど御説明させていただきたいと思います。

柴田計画官3点目の産業革新投資機構の関係の御質問でございますけれども、前回の御議論で経産省なり機構からもお話あったかと思いますけれども、基本的には認可ファンドをつくってそこから投資をしていくということで、個々の認可ファンドから見てみれば、今までの産業革新機構と同じような位置付けになるのではないかというお話かと思います。1つ大きな違いは、これまでの産業革新機構というのはそれぞれ1件1件直接投資という形でやっていましたので、投資の支援決定自体は革新機構のほうで判断するわけですけれども、個別案件ごとに、経産大臣に意見照会をするという仕組みが法律上定められていたわけでございます。一方、今回の新しい投資機構は、認可ファンドをつくるときには経産大臣の関与のもとで投資基準に沿って、しっかりガバナンスを効かせるわけですけれども、認可ファンドがどういうところに具体的に投資をしていくかというところは、基本的に認可ファンドに自由裁量を持たせましょうという基本的な設計になっておりますので、認可ファンドからの個別具体的な事業に対する出資に対して、何か制度的に経産省なりが関与するような仕組みにはなっていないというところが大きな違いかと思っております。

池尾分科会長よろしいですか。

それでは、工藤委員お願いします。

工藤委員ありがとうございます。コメントを1つと、質問が1つございます。

今回の財投計画全体を見ると、低金利を生かしたインフラ整備、国内のリスクマネー供給、日本企業の海外展開支援と3つの方向性があるかと思います。これらはいずれも日本のファイナンスにおける課題だと思っていますので、大きな方向性については異論ございません。

DBJさんの新たなファンドやJBICさんの成長投資ファシリティについては、民間としても詳細な設計をお伺いしながら、今後、連携・協調を進めていくことができればと考えております。

なお、財投の低金利資金を活用する際にはいろいろな形態があると思っています。具体的な制度設計に関しては民業補完性にも御留意をいただきながら進めていただければと思います。

また、「民間金融機関に長期の融資は難しいから」という御説明をお伺いすることもございますが、この低金利環境下で地域金融機関も長期の融資を出して何とか利ざやを改善しようとしているところですので、そうした事情にも御配慮いただき、官民それぞれが、最大限に力を発揮できる形で連携して日本の成長に貢献していければと思っています。

質問は、今回の計画では、産業革新投資機構、JICでも日本政策投資銀行の特定投資業務でもベンチャー支援が盛り込まれていますが、この2つは一応すみ分けがあると考えてよいのでしょうか。足もとでは、政府のほうでもベンチャー企業と大企業との連携促進のために税制優遇等を打ち出していますが、これら一連の施策は、ベンチャー支援に一層力を入れていくのだという政府の意思のあらわれだと受け止めております。DBJの特定投資業務とJICのベンチャー支援も既にかなりのボリュームがあると思いますので、それぞれ別のガバナンスの中でやっていくということではありますが、もし何かすみ分けがあれば御教示いただければと思います。よろしくお願いします。

池尾分科会長はい。お願いします。

柴田計画官DBJとJICの関係ということでございます。基本的にはJICはこれまでもそうでしたし、これからもだと思いますけれども、ベンチャーなどを中心に案件を積み重ねていくということだと思っております。

DBJは、これまでどちらかというとレーターのほうに重きがあったということだと思っておりますが、今後は特定投資業務を活用してスタートアップも含めて全体を見渡した上でやっていくということだと思いますので、そういう意味ではそれぞれが想定している支援対象というものが重複する部分は確かにあろうかと思っております。きっちりとすみ分けがされているというわけではありませんので、今後、具体的に個別の事案ごとに判断していくということに最終的にはなると思いますが、それぞれの機関に求められている役割といったものをそれぞれが整理しつつ、各機関連携しながら全体として民間リスクマネーの供給の促進につなげていくことになるということだと思っております。

工藤委員分かりました。ありがとうございます。

池尾分科会長それでは、林田委員お願いします。

林田委員ありがとうございます。短くコメントだけ申し上げます。

財投の規模は3年振りに増加するということですし、中でも産業投資は過去最大になるということです。一般会計予算が年々厳しさを増している中で、産業投資に対する、何というか、期待というものは年々高まっているのかなということが伺えると思います。有償資金である財投を活用して日本の成長力強化などを図っていくことは、時代の要請でもあり望ましいと私は考えています。ただ、産業投資といえども無尽蔵ではありませんし、何か便利な打ち出の小づちのように安易に使われることも制度本来の趣旨には沿わないと思っております。リスクマネーの供給といったことを目的としているとはいえ、将来的なリターンなどについてもしっかりと見据えて厳しくフォローアップをしていっていただきたいと、そのように思っております。

以上です。

池尾分科会長どうもありがとうございました。それでは野村委員、お願いします。

野村委員御説明ありがとうございます。

前回欠席しておりましたので、既にお話が出たかもしれませんが、一つコメントさせて頂きます。今回の大きな方向性についてはもちろん異論はないのですが、その中でのインフラ整備に関して、空港や高速道路についての計画を示していただきましたが、このインフラ整備については、ぜひもっと大きな青写真を踏まえての単年度計画を示していただけないかと思います。

例えば、成田国際空港でしたら、単に外国人観光客の数を増やすというだけではなくて、アジアの中でのハブ空港としてどのような地位を狙っていくのかという、戦略的な目標があるかと思います。そのための滑走路拡張だと思います。というような大きな絵を示していただきたい。

それから、例えば、防災・減災なども踏まえてのインフラの整備ですが、これもさまざまなインフラが老朽化する中で、例えば国交省の推計ですと主要インフラの維持管理、更新に今後30年で190兆円ぐらいかかるという試算があるとも聞いております。そうなると、数十年単位での更新計画の中で財投をどう考えるかという視点も必要かと思います。ということで、特にインフラに関して大きな青写真を踏まえての単年度計画というものが示されますと、政策目的がよりクリアになるのではないかと思います。

以上です。

池尾分科会長前回ちらっとそういう議論はしたんですが、改めて御説明いただけますか。

湯下財政投融資総括課長ありがとうございます。

前回の道路のところで御説明させていただきましたのは、道路の50%ぐらいが古くなっているので、そういった、特に橋梁やトンネルを中心に今回、道路会社が行いたいということでございましたが、先生御指摘のとおり、全体をどう見るのかというのはまた重要なことだと思っておりますので、我々の中でまた検討していきたいと思っております。

ちなみに、今年はこういったものを議論させていただいたんですけれども、更新投資がこれからどんどん重要になっていくというのは私どももよく認識しておりまして、例えば昨年でございますと地方公共団体向けで特に老朽化している上下水道といったものをどう財投で支援していくのかというのも御議論いただきましたし、確かに御指摘のとおり1本1本毎回議案を御提示させていただいてるというのはあるんですが、全体でどうお示しできるのかは、また来年に向けて考えていきたいと考えております。

池尾分科会長それでは高田委員、お願いします。

高田委員御説明どうもありがとうございました。最初に若干のコメントと、それに付随して幾つか質問をさせていただければと思います。

まず全体感ということになりますけれども、令和2年度の当初計画が対前年度比ということで3年振りに大きくなったということも、今のマクロ環境を踏まえた上では妥当なものではないかなと私は思います。

それからリスクマネーの供給ということで、産業投資の規模が過去最大ということで、やはり今の財政投融資の状況を鑑みますと、一般的な融資というよりは産業投資といったところの比重が高くなってくるのも、今置かれた日本の環境の中では非常に妥当なのではないかなと思います。

それから、多分これは年度ベースで見ますと今回の状況が過去から見ても一番低金利状況にあろうかと思いますので、そういう観点から申し上げますと、低金利を活用した対応というのも非常に時宜にかなったものと思いますし、日本企業の海外展開支援といったところも今これだけの日本の低金利、もしくは海外の状況を考えますと、やはり海外のウエートの比重が高くなってくるのは今の投資にしても企業活動にしても重要であります。そういう状況の中で、やはり外貨のファンディングのところが一つのネックになってるということを考えますと、この点も私は妥当ではないかなというふうに思います。

その中で若干質問なのでございますけれども、今回、低金利を活用というような状況で、財政融資資金の融通条件等をぱらぱらと拝見しますと大体最長で35年、まあ、30年ぐらいから35年ぐらいということだと思うんですが、この辺の年限に対する考え方は、もうちょっと長目にするようなお考えがあるのかとか、その辺の年限の考え方。もちろんこれは各事業ごとの条件によってということがあろうかと思いますので、もちろんそれに沿ってということかもしれませんが、同時にファイナンスの観点としても、もう少し長めにというような議論があるのかどうか、これが第1点目でございます。

それからもう一つは、今回、企業の海外展開にということで外為特会の活用をということだったわけでございます。これは外為特会のところの状況がなかなか御説明いただきにくいところなのかもしれませんけれども、どのぐらいの規模があって、どのぐらいの余地が今回の中である、今後もこれを活用するとしたらまたどのぐらいの余地があるのかというような観点、その規模感といったところ、外為特会の中におけるウエートというんでしょうか、その辺のところがもしある程度教えていただけるようであれば教えていただければという、この2点でございます。

池尾分科会長それではお願いします。

湯下財政投融資総括課長まず融通条件でございますが、基本的に委員御指摘のとおり、まずは先方のニーズがどうであるかということでございます。今回ですと、なにわ筋線のようにとにかく長いものを、というところは40年でお貸しするということでございますが、他方、道路機構につきましては、これまで40年で行ってきたんですけれども、今後の民営化に向けた期限がございますので、それを踏まえますと40年でこれまで2年やってきたものをだんだん30年のほうにシフトさせていきたいという御要望がございますので、補正では40年を少し入れましたが、当初では35年、30年と、各高速道路株式会社及び道路機構のALM管理に合わせまして期限を細かく設定させていただいております。

そして2番目のJBICの規模感でございますが、18カ月でJBICが使う政府保証外債及びJBICに措置する産投を合わせて財投で1兆円、そして外為特会からの貸付けも1兆円、そして民間金融機関が2兆円、合計いたしまして4兆円の規模感を18カ月間で持っております。

池尾分科会長2番目の質問は、JBICはそうだと思うんですけども、今後累次の形で外為特会を活用するとしたときに、その活用の余地がどの程度あり得るのかという点なんですが。高田委員もおっしゃったように、ちょっとお答えになりにくい、司が違うというところはあるかもしれないんですけれども。

湯下財政投融資総括課長今回できる措置というので1兆円の数字が提示されて、全体のファシリティができておりますので、これ以上どれぐらいなのかはちょっと私どもは分からないということでございます。

池尾分科会長それでは川村委員、お願いします。

川村委員ありがとうございます。総じて大変お疲れさまでした。前回、前々回の議論を通じて私なりにはそれぞれクリアになっているので、この案に異存はないというのが全体感です。

その上で若干質問というか、問題意識を含めた質問ということで申し上げますと、いわゆる地球環境問題とか、この間もCOP25が話題になっていましたし、ここ数年、いわゆるSDGsであるとかESG投資ということがグローバルにいわれているわけですね。17あるSDGsの目標の中でも、とりわけグリーンファイナンスということがこの世界では親和性が高いんだと思うんですけれども、財政融資なり産業投資というものの中で、今回何かそういう意識、SDGs投資的な、グリーンファイナンス的な意識というものが入っているのかどうか。

というのは、最近アメリカの連邦政府はああいう形なのですけれども、州政府や各国のかなり公的な機関、あるいはNGO、NPO等を通じて、排出権取引と結びつけて、今まではCO2を出すな出すなということだったんだけども、出すなと言っても、出るものは出ちゃう。じゃあすぐ原発に替えられるかといってもそうはいかないという事情が各国ごとにそれぞれある中で、出ちゃうんだけど、それを吸着させちゃうような技術革新をすべきだろうと。それは現在あるんだそうですが、非常に高額である。それをもっと普及するような形にして、発生するけど表に出さずに吸着させちゃうというか、食べちゃうというか、そういう技術をグローバルにアライアンスを組んでやる、そういうファンドをつくるべきだという提案が結構グローバルに行われてきている中で、例えばそういう中期の見通しを見たときに、財政投融資、とりわけ産業投資などの分野と親和的じゃないかなと。これは問題意識を持って、具体的に今どうのこうのということではないんですけれども、そういうことに関してどうお考えなのかということがちょっと大き目の質問です。

もう一つ、2番目は小さ目の質問で、これは各執行機関によって違うんだと思うんですが、来年の景気を考えたときに、一般的にいろんな見方があると思いますが、やはり夏の東京オリンピックが終わった後はちょっと寂寥感が漂うリスクもあるという中で、この上期下期の執行についてそれぞれの機関の特有性があるので、一概に全体でどうだということは言いにくいと思うんですけども、ある程度、景気の波というか減速になるようなことを織り込んで、端的に言えば下期のほうに執行事業を増やすとかという傾向は、この財投機関において見られるものなのか、そうじゃなくて上下半々、あるいは従前からある規則性によって従来ど、言いかえると、ある程度独自の景気の見通しを見て、その他の成長力強化であるとともにインフラのところなんか、とりわけそういう景気浮揚の効能というのもあると思うんですけども、そういう意識で執行計画を立てておられるのかという点。この2つについてお伺いできればと思います。

池尾分科会長はい。

湯下財政投融資総括課長特段、財政投融資自体で今回、SDGs向けというような分け方はしておりませんが、もちろん各機関そういった形で、執行段階でSDGs、債券とかも出したりする機関もございますので意識はされているかと考えております。じゃあ財投として正面からSDGsに全体を配分するかどうかというようなところまではまだちょっと全面的にそれを押し出した編成というふうには今なっておりません。

あと、今の執行の問題でございますが、もちろんこのインフラ整備の加速という部分につきましては、今回の経済対策の中の位置付けにおきましても東京オリンピック後を見据えてという分野で検討しております。むしろそれぞれの事業期間が、道路はもうちょっと短いですけど、成田国際空港、なにわ筋線というのはある程度長い時間がかかりますので、そういったオリンピック後を見据えた期間ではございます。

ただ、来年度の前半に入れるか後半に入れるかという区分けまではしておりませんで、それは事業会社のほうの判断として行っていただくということを今考えております。

山本財政投融資企画官今の川村先生の最初の御質問のうち、SDGsとかESG投資とか、産業投資、特に官民ファンドについて申し上げますと、財投計画の中でこれというのは先ほど御答弁されたようにちょっとストレートではないんですが、先生も御承知のとおり官民ファンドの運営に係るガイドラインにおいてはESG投資や、SDGsへの取組の推進を行っていくことが明記されております。あとは、現在、内閣官房において作業中ですが、KPIのほうでもそういったものを意識付けした指標というものが検討されておりますので、そういった方向から官民ファンドの活動がそちらのほうに貢献するような形になりますので、結果的に産投のほうもそういう形で貢献をしていくということに今後なっていくのではないかなと思います。

以上です。

川村委員ありがとうございます。

池尾分科会長今の話ですけど、財政投融資計画自身もESG投資的な観点をやっぱりわりと正面から考慮して議論していくという必要性というか、そういう段階にそろそろ来ているという面があると思いますので。

川村委員そうだと思います。

池尾分科会長足下そうなっていないのはそれも事実だと思いますが、今後そうした観点を明示的に考慮に入れていくという方向性で、この分科会でも検討していきたいと思います。

はい、じゃあ関連で。

林田委員すみません、ちょっと議論を聞いていていろいろ気がかりになったことがあったので一言だけ申し上げます。例えば成田国際空港のこの紙を見ていますと、現在の旅客数はこうで、整備をすると旅客数がこれだけ増えると。最近の政策の出方を見ますと、例えばホテルを50棟建てるとかっていう話もあって、何か供給をすると自ら需要がついてくるというような考え方にややなっているのではないかという危惧を持っております。突き詰めていくと、大昔にリゾート開発を大規模にやって全然お客が来なかった、それに財投が大変手を貸していたということもあったかと思います。そこのあたり、ちょっとそういうことでは困るので、やはり需要のあるところにしっかりつけていくという基本は外さないでほしいなと。ちらっと、ちょっと危惧を感じたものですから申し上げました。

以上です。

池尾分科会長関連ですね。

川村委員関連で、全く同感でありまして、前回のJICのときも同じことを申し上げたと思うんですけれども、要するにサプライサイドの推定だけじゃなくてデマンドサイドはどうなんですかと。実際需要がないところに供給を伸ばしていっても、自動的に伸びるかどうかはそこの、いわゆる広い意味でのマーケティングというのを、財融もそうですし、とりわけ産投のところは相当しっかり考えていかない、まあ、今日の後段の議論の中で出てくるんだと思いますが、官民ファンドで苦しんでいるところの多くがやはり、こんなはずじゃなかったと。サプライサイドでいくとこれだけいってるはずなのに、実はデマンドがそんなになかったというものが少なからずあると私は感じていまして、そういう意味でいきますと、今後も、規模もとりわけ財融は大きいですし、そういう本当のデマンドがどうなのかというシミュレーションもきっちりやっていただければと思います。

池尾分科会長それでは江川委員、お願いします。

江川委員ありがとうございます。今話題になったESG投資、あるいはSDGsについて一言コメントさせていただきます。

御案内のように、ヨーロッパの投資家を中心にそういったことに対する意識が高まっていて、特に日本の火力発電に対する批判が非常に高まっています。私が直接関与しているいくつかの民間企業の取締役会でも、そういったものへの対応をどうするのかというのが喫緊の課題になっています。そのたびに感じますのが、日本全体のエネルギー政策、つまり原子力発電に関してどうするか、それから火力発電をどうするかという、そういった長期的かつ包括的な議論がしっかりされないと、個別に議論してもうまくいかないということです。

特にエネルギー政策は、もちろん政府で議論していたりいろいろ計画があるということも存じていますけれども、一方で実際にそれぞれの地域で原発に対する反対が起こったり、市民のレベルでは電力の削減というか節電も、東日本大震災以来かなり進んできているのに、それらが計画に十分に反映されていないように思います。それから、自然由来のエネルギーをもっと政策的に増やしていくことも考えるべきだと思います。ドイツは2011年のときに原発をやらないと決めて、もちろん地続きでほかの国から電力供給を受けられるという日本との根本的な違いはありますけれども、自然エネルギーがその後大きく伸びたのはやっぱり政策によるものだと思います。そういったエネルギー全体をどうするかという議論を、政府でしっかりやっていただいて、それを踏まえて財投の中でSDGsをどうするかというふうな形で議論しないと、ここだけでSDGsが重要ですねと言っていても、どうしても話がちぐはぐになると思います。ぜひお願いいたします。

池尾分科会長それはもう御指摘のとおりで、環境省とか経済産業省にちゃんと立案の努力をしていただいて、ちゃんと政治プロセスでそれを固めていっていただかないと、我々の議論の前提がないという話になると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

林田委員今、ドイツが引き合いに出て、いい取組として出たんですけれども、実際に自然エネルギーも増えているんですが、あそこは石炭と褐炭、それを燃やしている発電所で多分電力供給の半分ぐらいを持っていると思うんですよね。ですから、やっぱりエネルギーの問題というのは簡単に割り切って議論できないので、やはりいろんな省庁と協力して総合的にやっていくしかないのかなというのはちょっと感じましたので、一言つけ加えます。

池尾分科会長それでは渡部委員、お願いします。

渡部委員今の関連で、分科会長の話のとおりで、SDGs、ESGというのをやはり前面にしてもしようがないですし、はやり廃りがありますし、せっかく資金使途という御説明がありましたけれども、あの中で何がしかの工夫、基本は個別の機関の動きを持ってくるような形にすれば、この尻尾で胴体とは言いませんけれども、財投計画でこうだみたいなことをしても詮ないなという気はします。ただ、このポイントは物差しとしてはやはり必要だと思うので、資金使途の中でなにがしかの工夫をすればとりあえずはいいのではないかという気がいたしました。なお議案は賛成ですので、以上です。

池尾分科会長今の点は、議論していきましょうということですよね。

それでは中里委員、お願いします。

中里委員今の渡部委員のお話、まさにそのとおりだと思って。要するにSDGsは大事なんですけれども、全体の色をそれで染めてしまう必要はなくて、おそらく何かいろんな議案が出てきたときにリスク管理、つまりいろいろ批判を招くようなことがないかというリスク管理の観点から見ていくのが基本であって、多分、財政投融資には他のいろんな目的があるので、その目的との整合性を考えないといけない。つまり、尻尾が頭を振ってはいけないので、そこは大事なことだと思います。

それからもう一つ、先ほど林田委員からお話があったことに関連してなんですけれども、財政投融資は非常に大事ですし、高速道路などについても民営化をして非常によい成果を上げているんですが、もともとは要するに需要が過大であるからそれを見直しましょうというところから入って、つまり需要予測などが甘いというようなことがあるといろんな問題があるということで、今まで点検してやってきたわけですよね。そのことを考えると、やはり低金利を生かす、これは非常に大事ですし、必要なインフラを整備していくことも大事なんですけれども、例えば暫定2車線を4車線化する、これは高速道路の話なんですけれども、それについても確かに防災の観点で大事なんですけれども、そこはきちんと需要予測と整合性を持った形でないといけなくて、そこの視点をもう少し入れていくというか、バランスを考えていくことが大事なのではないかなと思います。

以上です。

池尾分科会長いろいろと貴重な御意見、どうもありがとうございました。

ただいまの議案に関連いたしまして、さらに追加で御意見、御質問等ございますでしょうか。

よろしゅうございますか。

それでは、審議はここまでとしたいと思いますが、この議案3案につきまして御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

池尾分科会長どうもありがとうございました。

それでは、令和2年度財政投融資計画等3案につきまして、本分科会として了承したということにさせていただきます。どうもありがとうございました。

なお、ここで藤川副大臣は他の公務のため御退席されます。

それでは続きまして、先ほどの議論の中でも産業投資の重要性ということが指摘されていたわけで、それで「今後の産業投資について」という報告をまとめたわけですが、そのフォローアップに関しまして、次に御議論いただきたいと思います。

まず、「『今後の産業投資について』の対応状況等」につきまして、山本企画官から御説明をお願いいたします。

山本財政投融資企画官企画官の山本です。よろしくお願いします。今年の6月に、財投分科会におきまして報告書、「今後の産業投資について」をお取りまとめいただいております。この報告書は、産投の役割、課題などを踏まえて今後の産業投資の管理運営の在り方を示したものでございまして、私からは、この分科会報告書に基づく産投の管理・運営に関するこれまでの対応状況について御説明いたします。

3ページ目の、「報告書『今後の産業投資について」への対応状況1」とタイトルのあるページを御覧ください。

分科会報告書におきましては、投資の直接の原資としての産投出資に対するガバナンスの考え方として、政策性、収益性、それぞれの観点からお示しいただいておりますが、このページではそのうちの収益性に課題が生じた場合のガバナンスについての対応状況を御説明します。

この場合のガバナンスについては、分科会報告書では産投機関の投資目標・計画と実績を定量的に検証し、投資目標・計画と実績に乖離が生じている場合には、産投機関・主務省において定量的に検証可能な改善目標・計画を策定し、さらにそれが達成されない場合にあっては産投機関・主務省による抜本的な見直しを図る、という考え方をお示しいただいておりますが、こうした考え方を踏まえまして、昨年12月に経済財政諮問会議で決定されました新経済・財政再生計画改革工程表2018、いわゆる「改革工程表2018」におきましては、投資計画の進捗等に応じた判断、管理の枠組みが明確化されておりますことから、分科会報告書への対応状況として、この「改革工程表2018」に基づく取組を御説明いたします。

「改革工程表2018」に基づきまして、累積損失の大きい4ファンド、いわゆるA-FIVE、クールジャパン機構、それから海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)、それから海外通信・放送・郵便事業支援機構(JICT)及びそれぞれの主務省が、今年の4月に累損解消に向けた投資計画を策定・公表し、本分科会に報告をしております。そして本年11月に、今年度上半期終了時点における4ファンドの投資計画をフォローアップしております。

フォローアップの結果といたしましては、A-FIVEは上半期の投資計画33億円に対して実績は16億円ということで、計画は達成しておりません。クールジャパン機構とJOINにつきましては上半期の投資計画だけでなく、今年度の投資計画1年分も達成。JICTにつきましては上半期の投資計画を達成しております。令和2年度の財投計画編成におきましてはこのような検証結果も踏まえて編成を行っておりまして、その結果につきましてはページ右下の表のとおりでございます。計画未達成のA-FIVEにつきましては、農水省は財投要求を取り下げております。また、検討中の抜本的見直しにつきましては、農水省は年内に方針を示す予定でございます。

また、計画を達成した3ファンドにつきましては、令和2年度の投資見込み額を精査した上で所要の計画額を措置することといたしております。

今年の対応状況は以上となりますが、来年5月には再度4ファンドに対するフォローアップを予定しております。

なお、「改革工程表2018」におきましては今後のフォローアップとして2020年度、それから2021年度の検証が定められておりますところ、今月19日、明日でございますが、経済財政諮問会議で決定予定の「改革工程表2019」におきましてはさらに1年先の2022年度までの検証が盛り込まれておりますので、分科会報告書におきまして産投機関の収益性を継続的に把握することが重要という御指摘をいただいておりますところ、今後、数年にわたってそれをフォローするという体制、仕組みが構築されているところでございます。

1枚お進みいただきまして4ページ目を御覧ください。対応状況②とあるページでございます。

分科会報告書におきましては、投資の直接の原資としての産投出資に対するガバナンスとして、産投機関の業務について責任の所在を明確化しつつ、投資やエグジットの際に適切な対応を円滑に行うことができるようにすること、また、投資実行後においても政策性や収益性の状況を適切に管理することができるようにすることを踏まえまして、今後、産業投資としては、新たな産投出資を行う場合には、このページの左下、図表Ⅲ-14、産業投資の出資条件の例の内容を参考としつつ、あらかじめ出資時に産投機関との間で出資条件を取り決めることが適当とされておりまして、それに関する対応状況について御説明いたします。

この出資条件の取り決めの対象となる機関は7機関ございまして、日本政策投資銀行、鉄道建設・運輸施設整備支援機構、海外交通・都市開発事業支援機構、海外通信・放送・郵便事業支援機構、石油天然ガス・金属鉱物資源機構、クールジャパン機構、産業革新投資機構の7機関でございます。そのうち日本政策投資銀行と鉄道建設・運輸施設整備支援機構につきましては、既に取り決めている内容について来年度の更新を行うというような状況でございます。それから海外交通・都市開発事業支援機構と海外通信・放送・郵便事業支援機構につきましては本年中、年末までには取り決めを行う予定となっております。最後に石油天然ガス・金属鉱物資源機構、それからクールジャパン機構、産業革新投資機構につきましては本年度中に取り決めを行う予定となっております。

そして、その取り決めた後についてでございますが、例えば、その収益性の実現に課題が生じる可能性がある場合には、取り決めた出資条件に基づきまして、投資決定プロセスとか投資先のモニタリング態勢、エグジット時に損失が生じた場合の対応等を適切に確認することとし、その確認の結果に応じて改善計画の策定や翌年度の財投計画編成への反映を検討していきたいと思っております。

続きまして、このページの右下の図表Ⅲ-25、「収益性に係るガバナンスのあり方」の表を御覧ください。これは分科会報告書から抜粋したものでございますが、只今御説明をいたしました出資条件の取り決めが図の左下の青色部分、産業投資による「出資条件の設定」に対応しております。そして取り決めた後の確認などがその右隣の青色部分、「産業投資による状況把握」に対応しております。このように、出資条件の取り決めによりまして分科会報告書でお示しいただいた投資の直接の原資としての産投出資に対するガバナンスの枠組みにも全体的に対応するような体制、仕組みが整ったということでございます。

1枚お進みいただきまして5ページ目、対応状況③とあるページを御覧ください。ここでは投資の直接の原資以外の産投出資に対するガバナンスに対する対応状況を御説明いたします。

投資の直接の原資以外の産投出資といたしましては、その機関の財務基盤強化などを目的として行われたものがあり、こうした産投出資につきましても政策性と収益性の2つの要件を当然満たす必要がありますところ、分科会報告書におきましてはそのためのガバナンスとして毎年8月末に産投機関・主務省から既往出資の活用状況等についての報告を受け、産投出資の要求がない機関分も含めて財投計画の編成過程において既往出資の取り扱いを検討することが必要という御指摘をいただいているところでございます。

対応状況でございますが、まず今年の8月末に既往出資の活用状況等につきまして全ての産投機関・主務省から報告をいただいております。この報告の中には、当然、全ての機関ですので、投資の直接の原資としての産投出資が行われた機関からの報告も含まれております。

報告を受けまして、産投におきましては現時点においてその出資の意義が失われ活用されなくなったものがないかなどの観点から、令和2年度財投計画編成過程で確認を行いまして、十分に活用されていないと判断された既往出資等につきましては計画に反映させるなどの対応を行っておりまして、その具体的な結果はこのページ下部分の表に記載されております。

表の内容について御説明いたします。まず石油天然ガス・金属鉱物資源機構でございます。この機構の業務の一つとして、開発段階における民間企業に対する債務保証業務というものを行っておりまして、民間企業が債務を返済できない場合の返済原資として基金を積んでおります。この基金は、もともと石炭分野と金属鉱物分野で1つの基金を置き、さらにそれとは別に地熱分野向けに1つの基金を置いていましたが、今年度から別々に管理するのではなく、3分野一体で1つの基金を管理することといたしました。機構に係る対応は2つございますが、いずれもこの3分野一体で1つの基金を管理することに伴い、基金に積むべき金額の水準を踏まえて検討した結果でございます。

順番は逆になりますが、2行目の地熱業務の債務保証基金、こちらから御説明いたします。一体管理する前は、石炭分野と金属鉱物分野の基金に405億円、地熱分野の基金に121億円がそれぞれ積み立てられていましたが、基金に積むべき金額の水準の考え方としては、債務保証している最大規模の債務保証案件の額とされていますことから、一体管理に伴いまして、金額の小さい地熱分野の基金121億円、これは不要であるということが判断されまして、この121億円については今年度中に国庫納付をしていただくことにいたしました。

続きまして、1行目の石炭・金属・地熱業務の債務保証基金についてです。この基金が対象としている債務保証案件につきまして、債務保証実績や今後の保証見込みを精査した結果、基金の必要額は300億円であるということになりました。そのため、先ほど申し上げた地熱分野の121億円を除いた基金残高405億円が必要額を105億円上回る見込みであるということを踏まえまして、その超過分105億円分を債務保証業務以外の機構の業務の財源に充てることといたしまして、令和2年度要求から同額を減額することといたしたものでございます。

続いて、2番目は情報通信研究機構でございます。今回議論となりましたのが、この機構の業務のうち、基盤技術研究促進勘定で行っている業務についてです。この業務は民間における通信・放送基盤技術に関する試験研究を促進するため、民間から公募した試験研究課題のうち、優れた課題について民間に試験研究を委託すると、そういったものでございます。この事業は平成13年度に創設されましたが、21年度を最後に試験研究課題の新規の採択は行われておらず、現在は過去の採択した案件に係る管理業務などを行っておりますが、今回、現在の事業規模に応じた見直しを行うことといたしまして、1億円を不要資産として、これは既に10月に国庫納付をしていただいております。

最後、3番目は農業・食品産業技術総合研究機構でございます。今回議論となったのは、この機構の業務のうち民間研究特例業務勘定についてでございます。この勘定で行っている業務の枠組みは、先ほどの情報通信研究機構と同じでございまして、違いは、対象としている分野がバイオマスなど農林漁業に関する試験研究であるという点でございます。この業務につきましては、法令の定めによりまして、令和13年度末に、この民間研究特例業務勘定の閉鎖が予定されているのでございますが、現在の業務運営状況を確認いたしましたところ、法令上の勘定閉鎖予定時期よりも前に業務を終了できる可能性が見受けられたということから、勘定閉鎖の時期の前倒しにつきまして今後検討ということになりまして、これは来年度以降、また引き続き議論していきます。

以上が令和2年度編成過程における対応状況でございます。

今後についてでございますが、来年の令和3年度財投計画編成においても同様に対応すべく、また来年8月末に産投機関・主務省から活用状況等についての報告を受け、財投計画の編成過程において既往出資の取り扱いについて検討するということを予定しておりまして、継続的に取組を行っていきたいと思っております。

最後に、資料に記載はございませんが、分科会報告書でいただいた御指摘のうち、民間との対話を踏まえた産業投資の課題・対応に係る対応状況について口頭で御説明します。

分科会報告書におきましては、産業投資が民間の企業、ファンド、金融機関等との深度ある対話、交流を図り、これを通じて民間のニーズや資金供給の状況、市場における協調の失敗等による非効率的な資源配分が生じている領域等を的確に捉えて、エクイティ性資金の供給を戦略的に行い日本経済の成長力強化等に貢献する。これを通じて、産業の開発及び貿易の振興という産投の基本的な役割を果たすべきとされています。

対応状況でございますが、分科会報告書の取りまとめの検討過程におきまして、3月の分科会で、民間のベンチャーキャピタルの関係者の方から、資金の状況についていろいろ御意見をいただいております。それを踏まえまして、今年度、日本政策投資銀行の特定投資業務におきましてファンドを創設いたしまして、民間金融機関等と連携し、オープンイノベーション促進とか先端技術、ディープテックの事業化、スタートアップ、ミドル・レイトステージにおける大型投資などの民間資金が供給されにくい領域に取り組んでいき、成長段階ごとのボトルネックに対応した資金供給を今年度から行う予定でございます。

今後とも、ベンチャー企業を含む民間企業や金融機関に対するヒアリングを実施いたしまして、民間資金が十分供給されていていない領域等を把握した上で必要な措置を検討してまいりたいと考えております。

1枚お進みいただいて、6ページ目を御覧ください。こちらは只今御説明した内容に関する分科会報告書の関係部分の抜粋でございます。

1枚お進みいただいて7ページ目を御覧ください。こちらは今月19日、明日、内閣府より公表予定の資料ですが、先ほど御説明しました「改革工程表2018」に基づき、4ファンドの数値目標・計画の検証などの取組が今年度行われたということが記載をされております。

1枚お進みいただいて、8ページを御覧ください。先ほど4ファンドの数値目標計画の検証について御説明した際に「改革工程表2019」、明日、決定予定でございますが、これについて言及をいたしたものでございます。この表、2020年度から2022年度まで3つ列がございまして、2020年度には5月までに4ファンドなどの収支計画の検証を行うということが書いてありまして、21年と22年がブランクになっておりますが、ブランクというのは20年度と同じなので記載を省略するという意味でございまして、この文書によって2022年度まで引き続き検証を行うということが、明日、経済財政諮問会議において正式に決定されるという段取りになってございます。

1枚お進みいただきまして、9ページ目を御覧ください。続きましては2番として、「官民ファンドが効果的に活用された事例集」についてでございます。以前、分科会におきまして、官民ファンドの活動について、国民やマスコミになかなか理解されていないと、国民の受け止めとしては、累損を計上している官民ファンドは税金の無駄遣いというふうに国民やマスコミに受け止められている状況にあり、国民やマスコミに適切な理解を得られるよう、しっかりと説明していくべきであるという御指摘をいただいております。このような御指摘を踏まえまして、今回、この事例集を作成いたしております。この事例集は、官民ファンドが効果的に活用されて、政策面あるいは収益面において一定の成果を上げた個別の事例を御紹介しておりまして、これによって官民ファンドに対する国民やマスコミの御理解が進むことを企図しているものでございます。個々の事例の御紹介は、今日は省略いたしますが、今後の国民やマスコミ向けの説明時などに広報資料として活用していきたいと考えておりますので、忌憚のない御意見などをいただければと思います。

私からは以上でございます。

池尾分科会長ありがとうございました。

それでは、ただいまの山本企画官の説明を踏まえまして、委員の皆様方から御意見あるいは御質問をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。江川委員、お願いします。

江川委員ありがとうございます。産業投資に関してフォローアップを包括的にやっていただいて、全体としてはいい方向に進んでいると思います。

2点申し上げたいと思います。この分科会でも何度も議論したように、現在、そういったスタートアップ支援の中で、相対的に資金が不足しているのがレイトステージということで、6月におまとめいただいた報告書の7ページのところにも「我が国における民間ベンチャー・キャピタル・ファンドの投資実績」ということでレイトステージが足りていないというのはグラフにも描かれていますし、そのように認識されていると思います。ですから、産業投資の中でそこに力を入れていただきたいです。それから、産業投資とはまた違いますけれども、政府がやっているエクイティ投資という意味では、例えば官民イノベーションプログラムのように大学につけているファンドがあって、そういったところがよりアーリーステージにフォーカスすると思いますので、すみ分けをうまくやっていただきたいと思います。最近は民間のエンジェル投資も増えているし、コーポレートベンチャーキャピタルも増えており、アーリーステージというのはそれなりに増えてきていると思うので、1点目は、レイトステージに力を入れていただきたいということです。

2点目は、資金以外の課題にも対応して頂きたいということです。レイトステージが重要だという説明でよく言われているのが日本はユニコーン、新興企業の大きなものが少ないということです。しかし、必ずしも、それは、私はお金の問題だけではないと思っておりまして、1つは、市場の規律がうまくいっていないというのと、もう一つは、人材とか、それ以外の要素が大きいと思います。

1点目の市場の規律の問題ですが、日本はIPOのマーケットがいろいろな意味で正常に機能していないということもありますし、スタートアップが出てくると成長を待たずにすぐに上場させようとします。また、1回上場してしまうと、その後、退場も迫られないというようなことで、海外、特にアメリカなどのマーケットに比べると市場の規律がうまくいっていないためにいい形で育たないという面があると思いますので、そこはしっかり金融庁さんとも連携して考えていただければと思います。

それから、2点目はそれ以外の、例えば人材とか、そういうことですけれども、この報告書にもエコシステムの重要性というのが書かれていて、そういうことに対する認識というのは深まってきていると思います。一朝一夕に何かできるということではないですし、この分科会の守備範囲を超えていると思いますけれども、やはり関連しているので一言申し上げたいと思います。

私がよくユニコーンの代表として名前を聞いていたプリファードネットワークスという会社が結構頑張っていましたが、今月の初めに彼らの深層学習フレームワークのチェイナー、オープンソースのものですが、それの新規の開発投資はやめて、フェイスブックのパイトーチに移行しますということを発表して、関係者はショックを受けていたと聞きました。私もそんなに詳しく理由は知りませんが、オープンソースなので、世界中でどれだけ使う人が広がるかという競争だったところに、プリファードネットワークスは日本中心で、経営陣もエンジニアもみんな日本人ばかりだから、そんなに広がらなかったという説明を聞いて、なるほど、そうかと、とても残念に思いました。今、生まれながらのグローバル企業という意味の「ボーン・グローバル」という言い方がありますけれども、本当にいいスタートアップであれば、もう初日から世界を相手に戦わなければいけないというような環境になっています。ですから、お金の支援ばかりでなくて、多様な人材とか世界へのネットワークとか、そういった目に見えないものも含めた幅広い支援をどのようにやっていくかということもセットで考えていかないと、せっかくお金をつけてもうまくいかないということもあると思います。

池尾分科会長ありがとうございました。工藤委員、お願いします。

工藤委員ありがとうございます。いろいろ抜本的な見直しなどもされていて、一つの前進だと受けとめています。官民ファンドは、すぐには結果が出て来ないからこそ、民間ではなく官が中心になっているのだと理解しています。ただ、構造的に収益性を確保することが難しいと判明した場合は、今後もタブー視せずに抜本的な見直しを御検討いただく必要があるかと思っています。

いま一つの課題として残っているのは、以前も申し上げましたが、官民ファンドの間接部門における経費の大きさです。省庁ごとに所管の官民ファンドがあることは、各省庁における政策の連続性という観点からも重要だと考えています。他方で、やはり民間のファンドに比べてかなり高い経費運営になっているのではないかと思うところもあり、その理由も確認していただきながら、経費率を下げるために、例えば間接部門で共通化できるものがないかという点については、引き続き見ていただければと思います。よろしくお願いします。

池尾分科会長どうもありがとうございました。

ほかに御意見、御質問等ございませんでしょうか。野村委員、お願いします。

野村委員A-FIVEに関してですが、昨今いろいろな報道がなされております。資料にありますように、抜本的な見直しをして年内にも方針が示されるということなのですが、なかなか思うような成果が上げられなかった理由、需要予測を見誤ったのか、もしくは運営する側の人の問題だったのか、そのあたりをぜひ分析をして、報告をしていただきたいというのが1点です。もう1点は、現状の組織がこれからますます発展というのがどうも見込めない様子とはいえ、このA-FIVEが担おうとしていた政策目的が消えてなくなるわけではございませんので、そのA-FIVEが進めようとしてきたことを、どこの機関、組織が担っていくのかというようなことを考えなければいけない時期かと思います。ぜひこれを機に省庁の縦割りを越えて、農水の活性化なり6次産業化なりをいかに進めるかということを議論していただきたい。フォローしていくために、また農水省の管轄のもとで新たな組織を立ち上げるとか、そういうことではなくて、ぜひ縦割りを超えた議論をしていただきたいということです。既存の組織なども前提にして、そこがより農林水産関係に力を入れて、どんなことができるのかというようなことを議論していただきたいと思います。

以上です。

池尾分科会長農水省で後継組織を検討しているとかいうふうな報道を目にしたことがありますが、その辺、いかがでしょうか。

湯下財政投融資総括課長A-FIVEにつきましては、まさに、大変恐縮なんですが、今現在、いろいろと御検討されているというふうには聞いておるんですけれども、まだ結論を得て公表の段階まで至っておりません。ただ、年内には何らかの方向性なり何なりを公表できるところまではきちんと公表するというふうに私ども承っておりまして、そのとおりの文言を、ここの資料で書かせていただいています。

1個目に御指摘のございました、まさに原因についてどうなのかというのは全く重要なことだと、おっしゃるとおりでございますので、きちんと農水省からも話を聞いて、もちろん、大体我々のほうでもいろいろこれまで累次にわたって議論していただいた、なかなか案件が小さいとか、間接経費がそれに比して大きいとか、いろいろ指摘もいただいていますことも含めまして、何か問題だったかというのはまた議論していきたいと思います。

その後につきましては、今、まさにそういうことでございますので、ちょっと年内の農水省の報告を待ちたいというふうに考えております。

池尾分科会長それでは、川村委員、お願いします。

川村委員これは非常に重要なテーマであるし、方向性として極めて正しいと思っています。個別ファンド等のモニタリングをきっちりしなきゃいけないのと、主務官庁とともに、財布のひもを握っている我が理財局があんまりグリップ締めすぎるのもいけない。要するに、母親が勉強しなさい、勉強しなさいばっかり言うのはよくなくて、ある程度自主性に任せる、それはそれで必要ですが、最後のところはやはり財布のひもなので、そう緩むのではないということを、実際、この官民ファンドの現場にいますと、役所から出向している役員であるとか、あるいはトップはそこの意識はしっかりあるんですけれども、CIO以下、いわゆる現場のファンドマネジャーの人たちにとってはかなり縁遠いというのが、多分、現場感覚だと思うんです。例えば農水管轄、経産管轄、国交管轄のファンドマネジャーたちは、主務省に対しては、ある程度目はいくけれども、もともとお金は国から出ているんですということとか、そういうCIOをやっているような人でも、何年もやっている人でも、いまだにこれは税金だからと、初期によく言った、財政投融資と税金は違うんですよという説明をさんざんしても、二言目には税金だからという、その程度の理解でいるのが一般的なんですね。なので、国のこういうお金であるということを現場でもちゃんと意識してもらうと。言ってみれば、株式会社で、少なくとも役職員のレベルは株主に対するガバナンス、株主に対する収益責任を負っているんだというイロハのイみたいのがあるのと同じように、官民ファンドについての大きなステークホルダーが官であるということを、現場にもっと理解させる方策というのが必要だろうと思っているのが1点です。

それからもう1点は、ファンドというので、最近、実は私、もう一つの官民ファンドの幹事会のところでは、もう所与の話になっているんですが、ちょっと疑問を感じている点があります。それは、この官民ファンドの組織の在り方。というのは、CIOというのは当たり前だというところから入っているんですね。要するにチーフ・インベストメント・オフィサーというのはファンドなのでいるのは当たり前だと、もう言わずもがなで、CIOがいないと、それはファンドじゃないという扱いを幹事会で受けています。私も、そういうものだろうというふうに思っていたんですが、実は、この官民ファンドの中で最もパフォーマンスの高い成果を上げているのがDBJの特定投資業務。実は、DBJの特定投資業務にCIOはいないんですね。むしろ伝統的な彼らのやってきたファイナンス業務の応用編として、一定面として見ている部分がある。案件発掘等についての、いわゆる目利き力というんでしょうか、これも彼らの蓄積してきたものを面としてフルに活用している。他方で、ほかの官民ファンドは、ファンドマネジャーというのは投資の専門家ではあっても、必ずしも企業評価だとか、いろんなことの専門とは限らない。要するに、投資という一つの切り口からしか見ませんので、そういう意味でのプロですので。そうなると、例えば、どれが絶対的にいい答えじゃない、答えというのがあるかどうかは別として、そもそも、みんな、機構という名前になっているわけですね。だけど、ファンドと言っている。ファンドになっているのもCIOは当たり前だときているんだけども、中を精査してみると、必ずしも、そういう民間のファンドの組織をそのまま持ってきて成功しているかというと、苦しんでいるところほど、実はその矛盾に悩んでいるような気がするので、私はDBJのケースなんかを見たときに、非常に目を開かれる思いがしています。だからCIOが要らないという意味じゃ全くないんですが、あんまり固定観念にとらわれて、民間ファンドと全くイクイバレントな組織形態を考えなきゃいけないというほどのものでもないんじゃないか。これまでの官的な色彩があるところで成功事例を積み重ねているところは、そういうものもぜひ参考にすべきじゃないかなという感想を持っています。

池尾分科会長渡部委員、お願いいたします。

渡部委員今後の産業投資についてへの対応状況、御報告をお聞きしまして、理財局の方々の御努力に敬意を表したいと思います。いろいろ議論ができる材料も、かなりクリアに上がってきたように私自身は思います。

あともう1点は、ファンドという名前で、川村委員の先ほどの御意見と似たようなことですけれども、政投銀さんみたいにメザニンだ、エクイティだと、いろんな形で本体も含めて努力されてきたような組織と、ある省で、突然ファンドで云々という、ファンドという言葉だけで先ほどの形ばっかりなのかも知れません。CIOなんてまさにその1つです。それから、民間の人間が入らなくてはいけないといって、そういうのに民間人が出されて、出席だけして、サインだけする、こんな怖いものはないなという方も増えてきているような気がします。形ばかりあげつらうと、ファンド・オブ・ファンズ的、この産業投資自体がそもそもファンド・オブ・ファンズになっているわけです。さらにまたファンド・オブ・ファンズ、ガバナンスでそういうものができた訳ですけど、あれも運営上はものすごく難しいですし、コストは必要以上にかかる気がします。せっかくKPIを見て云々と出てきたので、そういうのを見ながら柔軟に、それがやっぱりいい意味での官民ファンドの運営だと思いますので、やはり理財局の方々の非常に大人な運営が重要だという気がいたします。

それと、最後に申し上げると、メディアへの説明の仕方、難しいのですが、やっぱりファンドですので、官が入っていようとなかろうと、10打数3安打は最高の出来ですし、10打数1安打でも、その1つが100倍になれば、どこかも結果がありましたけども、それで全部がオーケー、そういうのがもともとのファンドという理解を得る必要があります。そういう意味では、産業投資、エクイティは貸付金でやられている償還性確実と全く違う物差しというか、次元のものだというのをメディアの人も、それからやっていらっしゃる方々も、理財局の方々も認識して確認しながらやることが大事です。でないと、人間、形状記憶合金で、どうしても30年で貸して償還確実だという物差しでは出資はできないですので、そこは使い分けというか、右手、左手、そういうのが我々関係する人が、みんなが勉強していかなきゃいけないのかなという気がいたします。スタートアップがユニコーンがという議論も、日本人全体が几帳面な性格だと難しいものです。ベンガルールにまた行ってきましたが、こんなの大丈夫かというのが、何でこんなの、金が付くんだというのは一杯ありました。これが理財局さんが全体を管理運営されていくのですから、ほとんど気が倒れるというような世界もあると思います。

すみません、感想です。以上です。

池尾分科会長ありがとうございました。お待たせしました。林田委員、お願いします。

林田委員ありがとうございます。いろいろメディアのことにお叱りを受けた後でちょっと話しにくいという感じはあるのですけれども、私自身としては、産業投資の性格についてはある程度理解した上でお話させていただいていると思っています。よろしくお願いします。

A-FIVEについてですけれども、これは投資実績が、この図にもありますように、当初の狙いどおり出てこなかったということでありますので、今回のような財投要求取り下げと、抜本的見直しという措置になったことについてはやむを得ないというふうに考えます。残りの官民ファンドにつきましても、しっかりとフォローアップをして、改革改善に努めていただきたいということです。

何度も申し上げていることではありますけれども、つくった組織を存続させるために無理して投資実績をつくる、積み上げるということが目的化してしまうようでは本末転倒であるということでありますので、それぞれの設置目的に本当に資する事業にのみ資金が活用されるよう、しっかりと財投当局も目を光らせていただきたいと思います。

それから、先ほどから縦割りを越えてというお話がありましたように、例えば今の並んでいる4つのファンドを見ても、海外インフラ投資を主業務とするファンドは、省庁の縦割りで2つに分かれていたりとか、5年、6年経ってきて、その在り方について、個々のファンドの収支だけではなくて、役割にも踏み込んで見直し作業も進める必要があるのではないか。あるいは業務の重複等、いろいろ整理するところはないのかといったところにも踏み込んで、来年度以降、御努力いただけたらと思います。

以上です。

池尾分科会長ありがとうございました。それでは、高田委員、お願いします。

高田委員どうもありがとうございます。こうしたファンド業務ということになりますと、長期のというような視点と分散というような視点と、それから、デットカルチャーというところからエクイティカルチャーにというような、この3つが重要なんじゃないかなというふうに思っています。

逆に申し上げますと、モニタリング期間を極めて短くして、毎日のように、これ、どうなんだといって、一方で、百発百中だというような形で議論すればするほど、デッドカルチャーの場合はややそういう部分もあるんですけれども、なかなかこういう自由度が上がらなくなってしまうというような部分があります。もちろんモニタリングは重要ではあるわけでありますけれども、そうしたなかでの自由度をいかにしながら高めていけるのかというのを全体の中でどうできるかと。先ほど渡部委員のほうからもお話がありましたけれども、こういう投資のところは「千三つ」と言われるような状況でありますので、その中で少しでも改善ができるといいかと思います。

そういう意味から言いますと、先ほどの議論にもあるんですけれども、やっぱり壁を越えるというか、各省庁のという部分ももちろんあるんだろうと思うんですけれども、いかに連携というんでしょうか、このポートフォリオを広げた中で全体最適ができるのかというところの自由度の在り方というのは重要なんだろうと思います。そういう意味で言いますと、比較的、先ほどの議論にもありましたが、政投銀あたりの特定業務のところというのは、ポートフォリオがやりやすいという部分の一つのメリットも含めて、それなりの効果が出ているという部分があるんだろうと思いますので、もちろん今後の幾つかのこういう省庁ごとの対応の中での連携といいましょうか、また、場合によっては、そこの中での自由度を高めて、より枠を超えた中でのポートフォリオが構築できるような、そういう情報の共有化といいましょうか、こうした動きもやっぱり今後は対応していく必要があるんじゃないかなというふうに思います。

それから、今回出てきておりましたA-FIVEにつきましては、先ほど御説明ございましたように、今の時点ではという御説明は承っておりますけれども、どこかでは、ある程度、我々にも御説明いただければなというふうにも思っておりますので、その辺のところについては、先ほど申し上げたところと、あまりモニタリングを強めすぎてもという部分はあるとは思いますが、少なくともこうした状況になった中では御説明いただければなというふうに思う次第でございます。

以上です。

池尾分科会長どうもありがとうございます。冨田委員、お願いします。

冨田委員産業投資について、国民というか、有権者、納税者の期待が大きい反面、いろんな批判があったように思うんです。だから、その批判の中で、今回、特に累積損失の解消に向けた計画を明確に示すことができたということは、説明責任として大きなことを果たせたというふうに思います。

その上で幾つか申し上げたいんですけども、1つは、これは予算としてやるわけですから、予算に対する信頼性という観点からも批判の対象になってくると思うんです。それは産投出資の計画額を不用額としてしまうことが、これまでもいろんな産投機関にあったわけでして、私の期待は、今回のいわゆるJ型カーブを見て、各産投機関が、累損を出している機関が、現実的な、また、やらねばならない計画を立ててくるという意味で、不用額が減ることを期待したいというふうに思います。

それから、やはり官民ファンドである限り呼び水効果ということが大きく期待されているわけでして、その呼び水効果について、これも先ほどの皆さんの御意見の中に、形にこだわったり縛りすぎるとよくないという御指摘あったので、私もそのとおりだと思うんですが、呼び水効果について、今回のところで言いますと、4ページにあった産業投資の出資条件の例としてこれまで議論してきたことがまとめられているんですけども、この例の中には、民間ファンドと産投出資を受けた産投機関の出資の比率だとか、そういうものについて一切触れてないわけです。もちろん産投機関によって望ましい出資比率は、またプロジェクトによって、いろいろ種類ごとによって違うと思うのですけども、ここらに官民ファンドとしての特徴があるべきだと思うんですね。出資条件の中に官と民のファンドのウエートとか、そういうことを示すことができれば、より説明責任を果たすことができるのではないか。特に先ほどの新しい産業革新投資機構においては、認可ファンドと産投機関としての新しい産業革新投資機構の出資比率とか、そういうことを明確に示す必要があるんではないかというふうに思います。

池尾分科会長今の点ですけど、基本方針の中の政策性というところで、民間と合わせた目標等を設定するということを一応うたっているわけですね。

山本財政投融資企画官呼び水の点は、今、分科会長が御指摘されている成長資金の供給について民間に対して目標等を設定する、これがいわゆる呼び水として、どのぐらい民間のお金を引っ張ってくるかということですので、内容はもちろん様々ですけれど、呼び水として何を目指すのかというところは、出資条件の中で取り決めていくこともあるかと思います。

冨田委員申し上げた点は、その点ではなしに、ファンドのウエートについて何か言及することはないか。先ほど来、DBJは成功例としてあるわけですけども、我々、DBJからヒアリングしたときに、産投出資幾らに対してDBJ幾ら、合わせたものに対して民間のウエートが幾らということで、4倍、5倍の呼び水効果を持っているという説明を受けたわけです。だから、産投機関が出資する金額に対してと、民間の出資する出資金のウエートをどのようにするかということについての、ある程度のイメージを、文言ではなしに、イメージを、ここでは民間も出資するということは書いてあるんですけども、それはどれぐらいなのかということを示すことがいいではないかと。それは呼び水効果であって、より経済効果を大きくするとともに、やっぱり民間も必要としているということで、説明責任として、つまりリスクの軽減という意味において意味があるのではないかと私は思うのです。

山本財政投融資企画官まさにその点につきまして、要は何倍という話だと思うんですけれど、そういったところも例えば出資条件に記載できないか検討していく。定性的ではなくて、なるべく定量的な形で決めると。そこにはそう書いてないんですけど、実際の取り決めはそういうふうになるように調整をしているところもございます。

冨田委員具体的に書かれていますか。

山本財政投融資企画官書いている例もあると聞いています。

冨田委員だから、私は、出資者である国の産投機関に対する出資条件、これはまだ具体的な出資条件について見たことないので、それが必要じゃないかと。

池尾分科会長そうですね。既に結んだ例とかを1回資料……。

冨田委員成功例としては出ていますね。

池尾分科会長資料として見せていただくというのはあると思いますね。

川村委員ちょっとその絡みでいいですか。確かに原則論としては、全く冨田委員のおっしゃることに違和感はないんですが、ただ、各論に入っていったときに、そのピュアエクイティで出す場合、それからメザニンで出す場合、それからもう一つ、GPとLPと組み合わせてLP部門をデットにするとか、いろんな組み合わせがあり得るわけですね。そのときに、例えば私なんかの経験していることは、最初は50、50だと。要するに、50以上が民間だと。分かりやすく言えば、51が民間で49が官民ファンド、これで最初は運用していたんですね。ところが、いろんな形態を考えていくとそれではうまくいかない、あるいは全部それじゃなきゃいけないのか。例えば、ものによっては民間が40で、政策を持って極めて高いものであったらマジョリティが民間じゃなくてもいいんじゃないかとか、あるいはさっき申し上げたいろんな複合形態を踏襲してくると、単純に何対何では割り切れないというのもいっぱい出てきているのも現実なんですね。なので、ここの決め方は、考え方として波及効果というもの、定量的なものはある意味でとても難しくて、場合分けをいろいろしていくと、また例外が出てきたりするので、ここは過去の実例をきっちり調べていただいて、まさに我々の考えている波及効果というものを出資の段階で条件としてどうつけるのかというのは、考え方をブレークダウンするのは結構難しい作業なので、そこは十分御留意して当たっていただきたいと思います。単純に半分とか、3分の1とかというふうにいかない部分が、出資形態によっていろいろありますので、それは御留意いただければと思います。

湯下財政投融資総括課長先ほどより、御質問を頂いている取り決めにつきましては、若干、オープンにできる部分とできない部分がございまして、数量につきましても、定量的に言える部分、言えない部分がありますが、全体としてどれぐらいのイメージなのかということをどう申し上げるかは中で検討させていただいて、何らかの形で御報告できるように検討したいと思っております。

池尾分科会長ありがとうございました。それは、よろしくお願いいたします。

ほか。中里委員、お願いします。

中里委員どうもありがとうございます。産業投資はこれまで大事な役割を社会的に果たしてきたし、官民ファンドも評判がよくないところはあるんですけれども、基本的には総じてうまくいっているわけで、一部、いろいろ問題を抱えているところがあって、全体の印象が悪くなってしまっていることがとても残念に思います。

A-FIVEさんの要求が出てきた頃のことを振り返ると、官民ファンドがブームになって、我が省、我が社にも一つみたいな形で、今の省庁じゃなくて旧省庁の縦割りの中みたいな形でいろんな要求が出てきて、その中で本来やるべきかどうかがちょっと微妙だったようなところまでファンドができ上がってしまったというところがないかと。そのことを点検する必要があるんだと思うんですね。その上で、新しい組織といったことも議論しないといけないと思うんです。

例えば、A-FIVEさんはこれで一旦しまうんですけれども、新しい組織をつくったら、たちどころにうまくいくかというと、そういうことは本当にあるのかなという感じがするわけです。

1つ、これは質問なんですけれども、日本政策金融公庫さんは、幾つかの公庫を統合する形で出来上がったわけで、かつての農林公庫さんが今の農林部門をやっているわけですよね。今、農林部門のところは産投出資がないんですけれども、農林業関係のノウハウを生かして、かつ金融のノウハウも生かして安定的な組織の中でやっていくということを考えたら、日本政策金融公庫さんの農林部門のところで、融資だとちょっと厳しいものを産投のほうで見ていくというような発想もあり得ると思うんです。組織もしっかりしているし、無理にファンドらしい立て付けというのをつくる必要は必ずしもないと思うので、そういうことがなぜできないのかということをちょっと伺いたいんです。

以上です。

池尾分科会長それは理財局のほうで分かりますか。日本政策投資銀行の特定投資業務みたいな感じでやれないかということですよね。

湯下財政投融資総括課長1点なんですが、日本政策金融公庫の制度として劣後ローンを入れるということはあります。現時点でそれを何か活用してやっているものはありませんけれども、今後また検討してまいりたいと考えております。

中里委員必要があれば、法改正をすればいいわけですよね。もちろん、どこまでという改正の範囲はあると思うんですけど、いろんな形で幅広く考えていただきたいと思います。

以上です。

池尾分科会長工藤委員、追加ですね。

工藤委員すみません、追加で申し上げます。A-FIVEの件は、思うような成果をあげられなかった理由を今後分析して頂きたいというお話もあったかと思うのですが、私は、官民ファンド自体が悪いわけではないと思います。例えばA-FIVEの場合は、ターゲットを6次産業化に絞ったところ、チャレンジする人が少なかったというような、日本の課題にアプローチするという意味では非常にいい政策だったのですが、なかなかその政策意図を受けて動く人がいなかったという課題があったのではないかと思っています。我々の議論はあくまで財投ですが、先ほど江川先生もおっしゃっていたように、財投を取り巻くエコシステムをどうやって動かしていくか、財投の効果を最大限に発揮していくためにはどうすればいいのかという観点で、財務省だけで動かすのは難しい面もあるかとは思いますが、例えば人材育成、キャパシティビルディング、その後、事業が育ち、商用化するまでのサポートをどうするか、そういったことも含めて考えていくということだと思っています。官民ファンドが決して悪いわけではないと思いますので、むしろ政策をより省庁横断で、パッケージで考えていくという視点で課題を明らかにして、それに対する施策を打っていただければと思います。

以上です。

池尾分科会長ありがとうございました。さらに追加で御意見、御質問等ございますでしょうか。一応よろしいでしょうか。

それでは、まだ少し時間的には余裕がありますが、このあたりで後半の議論の質疑も終了いたしたいと思います。前から申し上げておりますように、もし追加で御質問、御意見等ございました場合は事務局にお伝えください。

それでは、本日の分科会はここまでといたしたいと思います。本日使用した資料は、20日の閣議終了後に財務省ホームページに掲載するということですので、お取扱いに御注意ということです。

それから、議事録につきましては、いつもどおり、委員の皆様の御了解をいただいた後、財務省ホームページに掲載いたします。

それでは、本日は年末の御多用中のところ御参集いただき、御熱心に御審議いただきまして、まことにありがとうございました。これで閉会といたします。よいお年をお迎えください。

11時47分閉会