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財政制度等審議会財政投融資分科会
議事録

令和元年7月26日
財政制度等審議会


財政制度等審議会財政投融資分科会議事次第

令和元年7月26日(金)13:58~15:32
財務省第3特別会議室(本庁舎4階)

  • 1.開

  • 2.平成30年度財政融資資金運用報告書

  • 3.令和元年度政策コスト分析

  • 4.質疑・応答

  • 5.閉

配付資料

資料1-1平成30年度財政融資資金運用報告について

資料1-2平成30年度財政融資資金運用報告書

資料2-1令和元年度政策コスト分析について

資料2-2財政投融資対象事業に関する政策コスト分析(令和元年度)

出席者(敬称略)

分科会長

池尾和

可部理財局長

鑓水理財局次長

嶋田総務課長

湯下財政投融資総括課長

柳町管理課長

柴田計画官

大関計画官

堀納資金企画室長

山本財政投融資企画官

高田 創

渡部賢

臨時委員

土居丈

冨田俊

冨山和

原田喜美枝

専門委員

川村雄

家森信


13時58分開会

〔池尾分科会長〕定刻の少し前ですけれども、出席予定の委員の方は全員お揃いになりましたので、ただいまから財政制度等審議会財政投融資分科会を開催いたしたいと思います。

本日は当分科会としてはわりとルーティン的な議題ですけれども、非常に重要な役割ですので、平成30年度財政融資資金運用報告書と令和元年度政策コスト分析の2つを議題としてご審議いただきたいと思っております。

議事に移ります前に、理財局に人事異動がございましたので、事務局より紹介をお願いします。

〔湯下財政投融資総括課長〕事務局より人事異動につきましてお知らせさせていただきます。

まず、このたび7月9日付で財政投融資総括課長を拝命いたしました湯下でございます。どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。座らせていただきます。

委員の皆様からご覧いただきまして、池尾会長の右側におりますのが次長の鑓水でございます。

〔鑓水次長〕よろしくお願いします。

〔湯下財政投融資総括課長〕その隣が総務課長の嶋田でございます。

〔嶋田総務課長〕よろしくお願いします。

〔湯下財政投融資総括課長〕次に、委員の皆様からご覧いただきまして、私の左側におりますのが計画官の柴田でございます。

〔柴田計画官〕よろしくお願いします。

〔湯下財政投融資総括課長〕その隣が計画官の大関でございます。

〔大関計画官〕よろしくお願いします。

〔湯下財政投融資総括課長〕次に、委員の皆様の右側のほうになりますが、管理課長の柳町でございます。

〔柳町管理課長〕よろしくお願いいたします。

〔湯下財政投融資総括課長〕続いて、委員の皆様の左側のほうになりますが、資金企画室長の堀納でございます。

〔堀納資金企画室長〕堀納です。よろしくお願いします。

〔湯下財政投融資総括課長〕こういったメンバーで行っていきますので、引き続き今後ともよろしくお願いいたします。

〔池尾分科会長〕ありがとうございました。

それでは、平成30年度財政融資資金運用報告書につきましては湯下財政投融資総括課長から、それから令和元年度政策コスト分析については堀納資金企画室長から順次続けて説明をしていただいて、まとめてご審議いただくということにしたいと思います。

それでは、湯下財政投融資総括課長から説明をお願いいたします。

〔湯下財政投融資総括課長〕それでは、議題1といたしまして、平成30年度財政融資資金運用報告書についてご説明させていただきます。

本報告書につきましては、財政融資資金法第12条におきまして、財務大臣が毎年度財政融資資金運用報告書を作成し、当該年度経過後4カ月以内、すなわちこの7月中でございますが、審議会に提出しなければならないと定められていることに対応するものでございます。資料の1、2と2種類をご用意させていただきました。資料の1-2というのがまさにこの12条に基づいて提出します本体でございますが、本日はその概要をまとめました資料の1-1に沿ってご説明させていただきたいと思います。

まず、資料1-1の1ページ目をご覧くださいませ。財政融資資金に産業投資、政府保証を加えた財政投融資計画の運用状況をご説明いたします。

平成30年度の当初計画、A欄のところでございますが、14兆4,631億円でございまして、長期運用予定額の増減に対する改定額、国の予備費に伴う追加弾力がございました地方分でございますけれども、B欄のところに6,458億円、そして前年度29年度からの繰越金、こちらC欄でございますが、1兆9,602億円を加えた改定後現額といたしましてD欄は17兆691億円となっております。続きましてこの改定後現額に対しまして、年度内運用額、E欄のところでございますが、12兆2,218億円、そして翌年度への繰越額、F欄が2兆2,190億円、そして運用残額、G欄のところでございますが、2兆6,283億円となっております。表の一番下に参考といたしまして、29年度の実績額を示しておりますが、前年度の比較におきますと2兆270億円の運用額の減、そして運用残額が3,285億円の増ということになっております。

続きまして2ページをご覧ください。まず、左側の参考1でございますが、財政投融資計画の年度内運用額の推移でございます。財投改革後、最高額は平成13年度の23兆9,711億円でございますが、30年度は12兆2,218億円と、前年度から約2兆円減少しております。右側の参考2、財政投融資計画の運用残額の推移をご覧ください。運用残額はその時々の財政投融資計画の規模や経済情勢等を反映した資金需要の変化によって生じますけれども、ここでご覧いただきますと、真ん中のあたりですが、平成21年以降はいわゆるリーマンショック等のセーフティーネットに関するもの、また震災復興対応の観点から十分な貸付枠を確保して結果的に使わなかった部分があるというようなことで、やや高い水準で運用残額は推移しておりましたが、足元ではほぼ落ち着いてまいりまして、大体2兆から3兆ぐらいで推移しているということで、30年度の運用残額は2兆6,283億円となっております。

次のページをご覧ください。参考3、平成30年度財政投融資計画の主な機関の運用状況ということでございます。太枠で囲んだところをまずご覧いただきたいのですが、ここは年度内運用額が大きいものから上から順に並べております。日本政策金融公庫、地方公共団体、そして日本高速道路保有・債務返済機構、この3機関で約8.3兆円と全体の7割近くを占めてございます。また、一番右の運用残額につきましては、日本政策金融公庫、そして国際協力銀行、地方公共団体、こちらの上位3団体で大体1.7兆円、こちらのほうも全体の約7割を占めるというような形になっております。

大きな金額となりました運用残額9,570億円となっております日本政策金融公庫でございますが、こちらは主にセーフティーネット貸し付けとして計画が用意されていたわけでございますけれども、資金需要に落ちつきが見られたことなどから国民向け、中小企業向け業務におきまして5,788億円。また、災害等の発生が少なかったということから危機対応円滑化業務というものが発動されなかったことから2,670億円という運用残額が生じております。また、地方公共団体の運用残額、これは例年も同様の傾向でございますが、1,800団体ございますので、それぞれの中での計画の見直しや入札結果の事業費の減額等が積み上がったものとして3,420億円ございます。そして、翌年度繰越額の大宗は地方公共団体となっておりまして、繰越額の合計2兆2,190億円となっておりますが、前年度の1兆9,602億円に比べて約2,600億円の増加というような形になっております。

次ページをご覧ください。参考4、財政投融資計画残高の推移でございます。平成30年度末の財政投融資計画残高につきましては、下段の表の太枠で囲っておりますが、平成29年度に比べて5.6兆円減少し、142.5兆円となっております。これは過去最高だった平成12年度の417.8兆円に比べて約3分の1の水準となっております。

続きまして、次の5ページ、6ページと続きますが、平成30年度におきます財政融資資金の運用状況、まさにこちらのほうが法律に基づいた報告部分に該当いたしますが、そちらについてご説明させていただきたいと思います。

まず、5ページ目の長期運用計画及び実績でございます。この長期運用計画と申し上げますのは、財政融資資金の運用のうち国会の議決の対象となる運用期間5年以上の長期運用状況を示しております。したがいまして、先ほどご説明しました財政投融資計画の一部の財政融資資金の部分でございます。表の一番上の平成30年度につきましては、運用予定額10兆8,538億円、そして繰越1兆9,602億円、さらに弾力追加6,458億円を加えた長期運用予定現額が13兆4,598億円となっております。これに対して本年度運用済額が9兆4,512億円、翌年度繰越額が2兆2,070億円、運用残額が1兆8,016億円というふうになっております。表の一番下に参考といたしまして平成29年度の実績を示しておりますが、運用済額につきましては1兆1,393億円の減、運用残額は3,081億円の増となっております。

続きまして次のページが5年未満の運用状況でございます。一番右の平成30年度末現在高は9兆9,774億円となっておりまして、主な内訳につきましては、交付税特会が8.5兆円、年金特別会計が1.5兆円などとなっております。

次のページをご覧いただきます。平成30年度における財政融資資金の資産の異動でございます。財政融資資金が保有する資産の平成30年度末現在高は、一番右の欄でございますが、合計で119兆8,735億円と29年度末に比べて4兆447億円減少しております。主な内訳につきましては、地方公共団体が45.4兆円、日本政策金融公庫向けが12.7兆円、都市再生機構向けが9.7兆円などとなっております。

次のページ、8ページをご覧ください。平成30年度における財政投融資特別会計国債(財投債)の状況でございます。30年度の財投債発行予定額は12兆円でございましたが、先ほど申し上げましたような1.8兆円程度の運用残等を見込みまして、表の平成30年度発行額の一番下の欄の10.6兆円に減額しております。また、12.9兆円の償還を行った結果、30年度末における財投債の発行残高は、前年度末に比べ2.3兆円減の92兆2,456億円となっております。

次のページをご覧ください。平成30年における財政融資資金預託金の状況でございます。30年度末の預託残高は、労働保険特別会計の減少等により、29年度末から約0.5兆円減少し、31兆3,535億円となっております。主な内訳は労働保険特別会計約12.6兆円、年金特別会計約8.0兆円などとなっております。

次のページをご覧ください。こちらは預託金残高及び財投債発行残高の推移のグラフを載せております。郵貯、年金、その他の預託金残高の上に、13年度以降発行された財投債の発行残高を示しております。郵貯、年金の預託金は全て既に払い戻されておりまして、平成30年度末の総額は123.6兆円となっております。

次のページをご覧ください。平成30年度財政投融資特別会計財政融資資金勘定損益計算書及び貸借対照表についてご説明いたします。こちらでございますが、30年度の損益計算書上の利益は1,339億円、表の右下でございます。この利益は「特別会計に関する法律」第56条1項の規定に基づきまして、翌年度に繰り越し、金利変動準備金として整理されます。平成30年度末の金利変動準備金は1兆1,236億円となりまして、総資産額の合計が125兆2,356億円となったことから、その水準は1,000分の9となっております。今年度で約1,000億増えているわけですけれども、この剰余金につきましては、平成17年度の決算4兆円をピークといたしましてずっと減少傾向にございまして、1,000億、1,000億と減ってきている状況でございますので、引き続きALM管理等を通じて特会の財務の健全性の確保を図ってまいりたいと考えております。

続きまして、12ページでございます。平成30年度財政投融資使途別分類表でございます。30年度の財政投融資計画の運用状況を使途別に見ると、総額12兆2,218億円のうち、主なものは社会資本4兆4,643億円、中小零細企業2兆3,283億円、海外投融資等1兆1,524億円となっております。

次のページ、13ページ目でございます。こちらは参考といたしまして、平成30年度の産業投資の運用の状況となっております。こちら30年度の当初計画A欄のところでございますが、3,645億円が合計でございまして、これに対する年度内運用額は2,066億円、翌年度繰越額が120億円ということになりますので、運用残額は1,459億円となっております。一昨年の3,500億円程度の運用残額に比べれば減少したというような形になっております。翌年度繰越金120億円の主な要因でございますが、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構の天然ガス業務の支援予定先の対象プロジェクトにおきまして、現地政府の許認可が想定以上に時間を要して、出資が翌年度にずれ込んだこと等によるものです。また、運用残の主な要因でございますが、株式会社海外交通・都市開発事業支援機構の支援予定案件におきまして、現地政府の許認可に想定よりも時間を要したため、事業スケジュールが遅れて出資に至らなかった等の理由によりまして、483億円の運用残が生じたことなどによるものでございます。

続きまして、最後のページでございますが、財政投融資特別会計投資勘定の資金の全体の流れにつきましてご説明させていただきます。一番左側が歳入総額1兆3,849億円となっておりますが、主な歳入はJBICなどからの納付金358億円、NTT、JT等からの配当金収入3,148億円、前年度剰余金受入5,220億円でございます。これに対しまして、歳出は産業投資支出、先ほどの説明のとおり、1,500億円減った形になりますけれども2,066億円、また事務取扱費1億円、東日本大震災復興のための一般会計への繰入634億円などの総額6,702億円となっております。その結果といたしまして、歳入歳出差額は7,147億円という形になっております。

資料1-1、平成30年度財政融資資金運用報告につきましての説明は以上となります。この実績につきまして十分に分析した上で、令和2年度の財投編成に反映させてまいりたいと考えております。今後ともご指導のほどよろしくお願いいたします。私からは以上です。

〔池尾分科会長〕はい、ありがとうございました。

それでは引き続き、堀納資金企画室長から政策コスト分析についてご説明をお願いします。

〔堀納資金企画室長〕令和元年度政策コスト分析について、私のほうからご説明申し上げます。資金企画室長の堀納と申します。よろしくお願いします。

本日は資料2-1に沿ってご説明いたします。機関別の分析資料である2-2は大変ボリュームがありますので、こちらは後でご覧いただければと思います。

それでは、要点をまとめて説明していきたいと思います。

ご承知のとおりと存じますが、政策コスト分析は平成9年11月の資金運用審議会・懇談会取りまとめである「財政投融資の抜本的改革について」より、将来の国民負担に関するディスクロージャーや財政投融資の透明性を確保するといった観点から導入について提言をいただき、平成11年度から当時は住宅金融公庫や国民生活金融公庫など分析可能な5機関から試行的に分析を開始しました。当分科会でのご意見を賜りながら改定や拡充を図りつつ、今日に至っているところであります。

1ページ目の最初のポイント、令和元年度の政策コストは、27機関合計でマイナス9,781億円となっております。これは平成30年度分析よりも政策コストが2,000億円程度減少、つまり改善の結果となりました。まず、マイナス9,781億円の政策コストの内訳を見てみますと、左下の表のとおり3つの構成要素があります。「1国からの補助金等」は、将来、国から財投機関への支出が見込まれる補助金等の総額であります。令和元年度は1.6兆円、昨年度から約1,000億円減少しております。これは国立病院機構の退職金の減額改定による補助金の減少等が主な要因であります。

2国への納付金等」は、将来、国への納付が見込まれる国庫納付金や法人税等の総額であります。令和元年度はマイナス5.6兆円と昨年度よりも約1兆円増加しております。これは後ほどご説明いたしますが、国際協力機構(JICA)の変動が大きく影響しております。

その右の、「3国からの出資金等の機会費用」は、財投機関に投入されている出資金等に関する国にとっての機会費用の総額であります。令和元年度は約3兆円となっております。これをさらに分解しますと、右から2列目、「分析期首までに投入された出資金等の機会費用」が平成30年度の7.2兆円から令和元年度は6.7兆円に減少しており、この後ご説明いたしますが、前提金利水準の低下による影響が見てとれます。昨年度よりも政策コストが2,000億円ほど減少した主な要因といたしましては、「3国からの出資金等の機会費用」が減少したことが挙げられます。

資料右下に、平成30年度と令和元年度の前提金利のイールドカーブを記載しております。グラフにおけるピンクの線が今回分析の前提金利になります。ブルーの線は平成30年度の前提金利であります。基準となる国債の流通利回りが8年あたりまではマイナスの水準でございましたので、両年度とも同様にゼロに張り付いておりますが、そこから同じようなカーブを描いて上昇した後、残存期間19年以上の長期ゾーンでは今年度の金利水準は昨年度よりも低く、「3国からの出資金等による機会費用」を減少させる結果となっております。ちなみに今回分析の前提金利は、平成29年度分析に次いでコスト分析史上2番目に低い水準でありました。

上の段に戻りまして、2つ目のポイントは経年比較分析であります。全体の政策コストは平成30年度分析との単純増減で約2,000億円の改善となったと申し上げましたが、前提金利等を同じ水準にして比較してみますと、プラス2,879億円と実質的に政策コストが増加しております。この点は後ほど機関別にご説明いたします。

最後に、3つ目のポイントとして感応度分析ですが、政策コストに影響する前提条件について、機関ごとに複数の指標を変化させるシナリオ分析を行っております。そのうち、前提金利を1%上昇させるケースでは、マイナス9,781億円だった政策コストが約5.8兆円増加するとの試算結果となっております。この変動は、インパクトは非常に大きいものですが、先ほどの金利水準の変化に関する説明と同様、金利上昇によって過去に投入した出資金の機会費用が増加するところが大きく、「新たな補助金等が必要になるものではないか」といった誤解を招くことがないよう、資料にも注意書きを付けさせていただいております。また、右下のグラフがゼロ金利を示しております残存1年から8年までの期間も全て1%上昇するという試算でありますので、この部分が大きな要因かと思われます。この点も後ほど機関別にご説明いたします。

次ページにまいります。こちらの「主な機関の政策コスト(基本ケース)」をご説明いたします。表の右下にありますように、合計マイナス9,781億円を機関別に示した内訳となります。表の左側に融資系機関、右側に事業系機関を記載しております。また、日本政策金融公庫につきましては、勘定別に内訳が分かるように表示しております。政策コスト分析は、各財投機関が行う事業の将来見通しに基づくものであることから、主要業務が収益を生むものか、あるいは補助金等の政策コストで支えられている事業か、さらには国からの出資金の大小などによりまして、各機関それぞれに特徴があります。ご覧いただいております今年度の分析結果の数字の大小では、その点が分かり難いところがありますので、昨年度と比較して大きく数字が変動した機関について、ポイントを絞ってご説明いたします。

右側の融資系の5段目、日本政策金融公庫の危機対応円滑化業務勘定は、昨年度6,883億円の政策コストだったものが、本年度は3,167億円に減少しております。これは主務大臣による危機認定の厳格化や震災対応の推移を踏まえて、損害担保の事業規模を縮小したことによる政策コストの減少です。また、補償応諾した債権の償還が進み、引受残高が減少することに伴う期末欠損金の抑制も政策コストの減少の要因となったものであります。

次に、中段にある国際協力機構(JICA)ですが、昨年度の政策コストは1,374億円でしたが、本年度は4,548億円に政策コストが増加しております。これは、JICAが実施しているODA、円借款事業の将来見通しにおいて、JICAの内部判断において一部の借入国について機械的に格付けの変更を行った結果、その信用力低下に対応する形で貸倒償却見込額を増加させたこと等が要因であります。

下から2段目の日本政策投資銀行(DBJ)ですが、昨年度の政策コストはマイナス3,785億円であり、本年度はマイナス5,394億円と、さらに1,600億円程度、政策コストがマイナス方向に動いております。これは昨年度の当分科会でご審議いただきました、融通条件の見直しにおいて、これまでの15年、20年の2種類の借入れを、10年、12年、15年、17年、20年と5種類のきめ細かい融通条件とし、調達構成を見直したことによる資金効率の向上や、DBJがより長期間の融資実行を想定し、分析期間を26年間から41年間に延長したこと等によるものであります。

右側の事業系機関については、昨年度とほぼ同程度の政策コストとなっております。

3ページ目をご覧ください。「経年比較分析」であります。これは、前年度と比較分析を行うため、分析対象機関の数や前提金利の変動など、揃えられる前提条件を同一にして、政策コストの実質的な増減値を算出したものであります。

大きなところで、ご説明いたしました、日本政策金融公庫の危機対応円滑化業務や、JICA以外に特徴的な機関としては、右側の事業系機関である都市再生機構(UR)をご覧いただきますと、前提金利の影響を除いた経年比較では、政策コストが2,515億円増える結果となっております。URは、平成30年12月に策定された、古い賃貸住宅の建て替え、集約、用途変更などの「ストック活用・再生ビジョン」のもと、3期目の中期計画において72万戸と見込んでいた管理賃貸住宅を2033年には65万戸まで削減する見込みの計画を立てております。そういった関係で、賃貸業務収入の下方修正による将来の国庫納付の見込みの減や、新規の都市再生事業に対する補助金の増等が、政策コストへの影響としてあらわれたものであります。

4ページ目をご覧ください。「感応度分析」であります。政策コストが、各機関の将来的な事業見通しに基づいて算出されることから、金利水準や貸倒れ等のリスク項目に関して前提条件を変化させて、政策コストを試算したものであります。冒頭に申し上げましたとおり、前提金利が1%上昇した場合で試算した政策コストは、大幅に増加しております。これは前提金利が上昇することに伴い、融資系、事業系に関わらず、多額の出資金が投入されている財投機関であるほど、その機会費用が大幅に増加することになるためです。また、表の右側、事業系機関につきましては、融資系機関のように調達費用の増を事業収入に転嫁できるとは限らず、借換資金の支払負担が増加する影響もこれに加わることになります。これらを集約いたしました結果、表の右下、全機関合計で金利1%上昇時に、政策コストが約5.8兆円増加するという結果になっております。

金利感応度が高い機関といたしましては、左側の国際協力機構及び日本政策投資銀行がそれぞれ約1兆円、右側の中ほど、URと道路機構がそれぞれ1.8兆円、1.1兆円の増加が試算されております。やはり、国から投入された出資金等が大きい機関、分析期間が長期にわたる機関においては、金利水準の変化に大きく影響を受ける結果となっております。

先ほどご覧いただきました右下の合計欄には、増加する政策コストの内訳を記載しております。金利1%上昇時の政策コストの増加は、全て機会費用の増によるところがこれでお分かりいただけると思います。資料冒頭で注意書きについて申し上げましたが、今回の金利感応度分析の結果は、各機関に実額として投入される補助金等の増加を意味するものではありませんので、その点はご留意いただきたいと思います。

5ページ目をご覧ください。「感応度分析」は金利上昇ケースのほかに融資系機関であれば「貸倒償却額が10%増加」したケース、事業系機関であれば「事業収入が10%減少」したケースを、それぞれ将来事業見通しのストレスシナリオとして設定し、政策コストを試算しております。いずれのケースも、当然にして政策コストが増加する試算結果となっており、増減額が大きく出る機関も、例年に同じ傾向となっております。

続きまして、6ページ目をご覧ください。「発生要因別政策コスト内訳」です。これは融資系機関に共通する「繰上償還」と「貸倒」のリスクに着目し、この発生要因別の政策コストを切り出して整理したものであります。各機関とも例年同様の結果となっておりまして、取り立てて内容をご説明すべき特徴は出ておりませんが、例えば、国際協力機構(JICA)でありますが、見てみますと発展途上国向けの貸出しが多いポートフォリオでありますから、貸倒リスクが非常に高く利ざやが薄いといった、各々の機関の業務の特徴があらわれております。

続いて、7ページ目、最後のページになりますが、「政策コスト分析の概要」として、分析目的、枠組み、分析手法等を一枚にまとめております。説明の冒頭に申し上げましたとおり、政策コスト分析は財投改革の一環として平成11年度より開始し、今回で21回目となりました。当分科会のご意見等を踏まえながら拡充してまいったところであります。例えば、中ほどの枠、「主な分析手法」に記載しております「経年比較分析」は平成15年度から取り入れ、(2)の「感応度分析」は徐々に分析対象を広げながら平成28年度には「前提金利が1%上昇」のケースを全機関において実施、公表したところであります。また、昨年度までは一般会計と特別会計との間の、国庫内による資金移転を政策コストとして扱っておりませんでしたが、財投資金に関するディスクロージャーである政策コスト分析の趣旨を踏まえて、今年度からは、一般会計から特別会計の資金供給も政策コストとして捉える整理をしました。その上で、食料安定供給特別会計(国営土地改良事業勘定)と、エネルギー対策特別会計(エネルギー需要勘定)の2つの特別会計を新たに政策コスト分析の対象機関としたところであります。このように鋭意見直しを行ってきたところであります。

さらに1点ご報告いたしますと、一昨年、当分科会において、「財投機関の規模に関係なく、全体を横串で全体図が見える別の指標」の開発をご意見いただいたところであります。これについては、「IRRという内部収益率を用いた手法がよいのではないか」とのご提案をいただきまして、担当のほうで試行錯誤を繰り返しながら検討してまいりました。政策コストは、将来キャッシュフローを現在価値化して算出するものでありますから、これまでご説明しましたように、前提金利に大きく影響されます。他方で、IRRは、キャッシュフローそのものから算出される収益率でありますから、前提金利による影響よりも、リターンとしてキャッシュフローが生じるタイミング次第で大きく変動する特性があります。これは短期的な回収が多いほど収益率が上昇するという指標でありますので、財投ならば5年以上の長期運用の視点とか、40年間という超長期の貸付けも行うようになっている中で、なかなかIRRを指標とするのは難しいのかなということで、今回の導入は見送ったという経緯があります。こういった新たなご意見をいただきながら鋭意検討しているところであります。

今後とも、漫然と前例踏襲的な政策コスト分析とならないように、毎年度発生する疑問点や課題、また財投編成等を踏まえて、必要に応じて改善に努めてまいりたいと思います。私からは以上でございます。

〔池尾分科会長〕ありがとうございました。

それでは、委員の皆様からご意見、ご質問をお願いしたいと思いますが、ペーパーレスでやっておりますので、資料に言及される場合は資料ナンバーと当該のページを明示的に発言していただきたいと思いますので、その点よろしくお願いします。

それでは、冨田委員、お願いいたします。

〔冨田委員〕ご説明ありがとうございました。

質問が2点と1点意見を申し述べたいと思います。1点目は、運営状況について。資料1-1の1ページでお触れにならなかったのですけれども、運用状況、政府保証について、当初計画から見て非常に大きな運用残があるのですけども、これの中身をご説明ください。

それから2点目の質問は、政策コスト分析でありまして、先ほどご説明いただいた中で資料の2-1の4ページで感応度分析、前提金利が1%上昇した場合、「国からの出資金等による機会費用」の増加というのはこういうことだろうと思うのですが、国の信用、国庫納付等が増加することによって、7,000億円余りもコストが軽減される要因となっていることの理由をお聞かせいただきたい。先ほどご説明の途中でもあったのですけれども、事業機関であれば調達コストが上がるわけですから、収益圧迫要因になるわけですね。それなのに何で国庫納付が増えるのか。政策金融機関であれば融資条件の変更等で対応することも十分可能だし、むしろ、こうしたシミュレーションが私は大事だと思うのは、先ほども最後の7ページでご説明あったのですけれども、いわゆる財投機関、融資機関が貸出条件と融通条件を変化させることのシミュレーションができるのではないか、という観点から重要だと思うのですけれども、この国庫の収入の増加についてご説明をいただきたいというのが2点目の質問です。

それからもう1点、3点目は、政策コスト分析が、アグリゲートした政策コストで見ると、ほとんどが今の場合ですと、出資金の機会費用になっているわけです。その前提となっているのがまさにご説明のあった1ページのイールドカーブなわけです。極めてフラット化したイールドカーブですので、これが、分析対象期間が長いものですと70年とか80年といったところがあるわけでして、70~80年にもわたってこうしたフラットなイールドカーブが示す超低金利が続くという前提で考えることの妥当性如何ということから問題提起したいと思います。こうした国民負担に関わる推計について、内閣府の経済財政の中長期試算、それから年金財政検証、それから国債についてはコスト・アット・リスク分析という3つがあって、政策コスト分析があって4種類、私はあるように思うのですが、それぞれ前提が違っていて、なかなか国全体の債務を管理するという観点から、ちょっと考えにくいように私は思うのです。

内閣府の中長期試算については、私はその成長実現ケースについては、あまりplausibleな前提ではない、現実的なものではないと思うので、例えば、その基本ケース、ベースラインケースというふうに呼ばれていますけれども、これは向こう10年間なわけですが、例えば、名目経済成長率で1.5%に向かっていくわけです。名目長期金利は、つまり10年国債2%に向かって上がっていくわけですね。2%になってから先はフラットなので借換リスクはそれほど発生しないということになるわけですけれども、途中で金利が上がってゆく形になっているので、必ず借換リスクが発生するわけですね。だから、いかに長期・低利を特徴とする財投であったって、借換リスクを抱えているわけでして、それが異常なこのフルフラットというか、こうした低金利の中での見通しを前提として分析を行うことはいかがなものだろうか、何か参考としてでもベースラインケースによる政策コスト分析をやってみるということが現実的ではないか、ということなのです。むしろ財投機関にしても、成長実現ケースはあらまほしい姿なので、より現実的なものを前提にして色々長期的な計画を立てていく、融資条件を考えたり、事業計画を考える、ということは妥当ではないかと思うから申し上げた次第でございます。

〔池尾分科会長〕それでは、事務局からお願いします。

〔湯下財政投融資総括課長〕まず、政府保証債運用残額が6,809億円出ておりますが、主なところを3機関ご説明させていただきます。

まず、国際協力銀行でございますが、国内の金利が非常に低く、アメリカの国債金利がちょっと高いということもございまして、為替リスクをとってでも国内でというような企業側の意向を受けまして、政府保証外債の発行を取りやめたということが要因として挙げられております。

続きまして、日本高速道路保有・債務返済機構、こちらのほうも政府保証が減っているのですが、こちらのほうは道路会社の経営状況というか収益が上がっておりまして、貸付料の増加があったということと支払利息が減少したというようなことから政府保証債の減額を行っております。

もう一点、地方公共団体金融機構のほうも政府保証債を減少させておりまして、こちらちょっと個別案件になるのですけれども、大阪の地下鉄の民営化に伴いまして発行予定であった政府保証債の発行を取りやめたと。この3点が主な要因として6,809億円の政府保証の運用残高の発生を行っております。

〔池尾分科会長〕もう一つ挙がったのが。

〔堀納資金企画室長〕資料2-1の4ページ、国庫納付によって政策コストが減少している要因ですが、分析期間中の運用の利ざやで国庫納付が膨らむ機関ですとか、逆に機会費用が嵩む機関を合計した結果、減少しております。

〔池尾分科会長〕金利が上がるときは貸出金利も全部並行して上がるわけですか? そういう想定なのですか?

〔堀納資金企画室長〕はい。

〔冨田委員〕事業会社のほうは、それはないですよね、事業系機関、事業会社というか。調達コスト、上がりますよね。

〔池尾分科会長〕いや、だから事業系機関はおっしゃるとおりだけども、融資系機関は緩やかに金利が上がったほうが収益は上がりますよ。

〔冨田委員〕だから、三角形が書けるということですよね。

〔池尾分科会長〕1%はかなり大きいですね、やっぱり。

〔冨田委員〕で、収益は改善と。

〔池尾分科会長〕あと、国庫金の機会費用を内閣府とかとでやっているのと、合わせて将来的な金利シナリオに基づいて計算し直すというのは当然やってみていいことだと思いますが、今の段階でどうですかね、その点に関しては。

〔堀納資金企画室長〕この内閣府の中長期の経済財政に関する試算のことで、例えば10年後に2%まで上がるという前提だったかと思いますが、我々の分析期間、例えば89年と長いタームで見ておりますので、それをどうやって引っ張るかなというのがちょっと悩ましいかなと考えておりました。

そうは言っても金利環境を見込みでどう置くかによって政策コストがまた変わってくるかと思いますが、その辺は感応度分析でどういうふうに行っていくかとか、検討することは可能かなとは考えております。

〔冨田委員〕すみません、長期で考える場合、結局その長期の均衡金利が、中立金利がどのぐらいの水準かということについて、多分このベースラインケースだと2%ということは、実質成長率が1%で物価を1.1として2%と出していると思うのですね。そうするともう80年ぐらい先まで変わらないわけです、さっきもちょっと申しましたけれども。だから融資系機関は困るかもしれませんけれども、多分、そういうのが一つの均衡状態なので、そういうので示すことはどうかなということです。だから、参考として申し上げたのもその意味なのですね。

ただ、大事なことは1回で大きく上がるという想定ではなく、次第に金利が上がってゆく、その際も議論は発散してしまうので、一応、政府部内で使っているベースラインケースを使うのはいかがなのだろうかということを申し上げた次第です。

〔池尾分科会長〕その点は引き続き検討していただくということで。

それでは、原田委員、お願いします。

〔原田委員〕ご説明ありがとうございました。

2点ほどお伺いさせてください。資料1-1の8ページになります。財投債の状況に関するところです。

発行が10.6兆円で償還が12.9兆円で、残高が2兆円ちょっと減りましたということで改善しているということになるかと思うのですけれども、財投債は投資家側からしてみれば普通国債と同じで両者一体として発行されているものですので、そうした場合、普通国債なら償還されている分のかなりが借換えされていると思うのですけれども、そうであれば借換えされた後はどこに入ってくるのでしょうか。ちょっと基本的な質問になるかと思うのですけれども。借換えも財投債として発行されているのかどうか。それとも順調に残高が減っているということになるのかというところをちょっと確認させてください。

〔池尾分科会長〕マチュリティーを伸ばすようなことをしているだけじゃないのでは?

〔原田委員〕そうですかね。新規発行分のマチュリティーが長くなっていることで対応ということでしょうか。ここの2兆円ちょっと減っているのは純減なのか、それとも借換えした後に普通国債なのかとか、ちょっとその辺が分かりませんで、確認をさせてください。というのがまず1点目です。

先ほど冨田委員から政府保証債の運用残額についての質問がありましたが、ちょっと3ページ戻りまして、5ページの5年以上の運用に関する計画と実績のところになるのですけれども、ここについても少しお伺いしたいことがあります。先ほどご説明いただいたときには、地公体で繰越が多くて翌年度への繰越も多いと。ここは地公体の数が多いので積み上げていった結果こういう金額になったというふうにご説明をいただいたところですが、次に多いのが独法でして、繰越も前年度も多くて翌年度も多いということになって、地公体に比べると金額は1桁以上小さいのですけれども、独法の数はそれほど多くはありませんので、この背景に何か要因のようなものがもしあるようでしたら、そこのところをお教えくださいというのが2点目になります。

あと、これも先ほど冨田委員がおっしゃったことですけれども、政策コスト減の主な要因が機会費用の減少にあると。その背景には日銀のイールドカーブコントロールがあるということが明確だとすれば、これは一時的なものなので、この政策コスト分析でコスト減というのは特会の財務の健全性とは直接結びついているものではないと、そういう認識はもう皆さんお持ちであろうと思うのですけれども、そこのところを、だからどうしてくださいというわけではないのですが、今後もさらなる様々な検討を加えていっていただくべきところであろうと思います。ちょっと感想めいたことになります。以上になります。

〔池尾分科会長〕ありがとうございました。

それでは、質問がありましたので、その2つについてお答えいただけますか。

〔湯下財政投融資総括課長〕まず、償還のほうでございますが、基本的に92兆円になった部分で2兆円の部分は借換えではなくてもう完全償還ということでございます。

それと、2点目の繰越のほうでございますが、基本的にちょっとここは制度的なところもございまして、逆を言うとなぜ地公体が多いのかというところの説明から入らないといけないのですけれども、地公体のほうは基本的に3月もあるのですけれども、4月・5月の支払いが多いということでございますので、もうその前年度に明らかになった債務の支払いが年度を超えるということが毎年行われており、つまり4月・5月に繰り越してまた前年から繰り越してというのが制度として前提となっております。

他方、独立行政法人の繰越でございますが、基本的にこちらのほうの繰越は3月までに原則使っていただいて、それが足りなければ運用残になるというのが原則でございますが、他方、独立行政法人の中でも、それぞれ理由はあるのですけれども、豪雨等の復旧で遅れてしまった部分があるので、完成して出るのは明らかに分かっているのだけれども支払の時期が遅れてしまうとか、対象プロジェクトの現地の国とのやりとりの中できちんと進んでいて、完成するのは明らかだけれども、それが6月になってしまうというようなものに関しては、運用残という形をとらずに繰り越すということになっております。

それの積み上げなので、ちょっとそもそもの制度の違いと一個一個の独法の繰越にはそれぞれ理由があるということでご理解いただきたいと思っております。

〔原田委員〕ありがとうございます。

〔池尾分科会長〕全ての経済活動は4月に始まって3月にきちっと終わるというわけではないということですよね。

じゃあ、土居委員、お願いします。

〔土居委員〕ご説明どうもありがとうございました。

先ほどの議論で、政策コストの変動ということですけれども、資料1-1の2ページにあるように、年度内運用額が過去最低水準――過去というか、財投の抜本改革後最低水準になっているということなので、新規の融資にまつわる政策コストの変動というのは過去よりもかなり小さい。既往の残高にまつわる部分の政策コストの変動のほうがむしろ支配的になるということが、結局ご説明があったような結果に反映されているのだろうと思います。ですから、当然、機会費用がその大きな変動要因になるというのは、新規のものが少ないがゆえに既往のものがより変動を大きく説明することになる。なので、もちろん日銀の政策も影響しているとは思いますけれども、新規の融資なりが多くなければおのずとそういう結果にならざるを得ない。だからいいとも悪いとも別に何とも言えないというか。ある意味で財投機関からすると金利変動というのは受け身で、そういうその政策コストが変わってくるものだという理解で良いのではないのかなと思います。

むしろ、新規の融資案件でそのコストが増えるものなのか、それとも、それほど増えないような融資案件、つまり自己収入がそれなりにちゃんとあって、ないしはむしろ財政融資が呼び水になって国庫納付がさらに将来大きく期待できるような案件であるのかということが、実は政策コスト分析の一つの重要なポイントだと思いますので、既往の案件のチェックというのも重要ですけれども、新規案件の政策コストがどうなのかということを財投編成の中でもさらにこれまで以上に活用していただくといいのかなと思います。

それから、冨田委員がおっしゃっていた点については、私は2つの要因に分解して考えれば、今、既に出している資料からでもある一定程度理解できるのかなと、私は勝手にそう理解したのですが。と申しますのは、確かに、金利の設定がスポット・レートでやっているので低いのではないかという話になるのですけれども、それは当然その懸念を感応度分析で前提金利が1%上がったときにどうなのかということを既にお示しになっておられて、案の定と言うべきか、確かに今年の基本ケースの政策コストが1兆円弱のマイナスというか、要は政府に入ってくるお金が多いということなのですけれども、資料2-1の4ページにもあるように、むしろ1%上がるだけで6兆弱の政策コストの増が出るということで、あっさり基本ケースの減を上回るコストが発生するということがこれで明らかになっている。ですから、冨田委員がご懸念されているような点は一つここにもあらわれていると思います。

もう一つ、これだけでは分析しきれていない部分というのは、おそらくは私はそれを意図されているのかなと思ったのは、いわゆる逆ざやというか、先に財政融資で貸し付けたけれども、財投債の調達サイドのほうが満期が短いと、その分調達コストが上がってしまうと、そのコストがある意味で見きれてないのではないか、というご懸念ではないのかなと私は理解したのですが。それは確かに政策コスト分析の目的とはちょっと違うところにあるとは思うのですけれども、大事なコストの認識ではあるので、今まではこの分科会ではALMでちゃんとそういう逆ざやができるだけ大きなマイナスにならないようマネージしていくんだという話ではあったと思います。それからあとは、金利変動準備金でバッファーを組んだということが、この分科会でも再三再四議論されているということなので、当然そのALMにまつわるリスク、コストは引き続きこの分科会でも議論の対象になってしかるべきですし、理財局におかれましても非常に色々腐心を引き続きしていただきたいなと思う次第です。以上です。

〔冨田委員〕ちょっと忘れないうちに言っておきますが、今、土居先生が言われたことは色々と違っていて、2つ言われたのだけれども、まず1つは、前提金利の影響を排除したものについては、資料2-1の3ページにあって、これが経年比較分析で、これは私の知る限り、ずっと金利とか対象機関の変化なしに見ると、毎年コストが上がってきているのですよ。だから本当にコストを被りながら政策を行っているというのはある意味当然ですけども、そういう財投の姿が僕は経年比較分析でよく出ていると思います。

それから私が言ったのは、一度に金利を1%上方に全部シフトするのではなく、金融業という感じで、収益は利ざやでも国庫納付でもいいのですけれども、基本的には対象期間中にどういう金利パスが想定できるかによって決定的に決まってくるわけで、だからこそ我々は、これまではドミナントなプレーヤーがいない状況においては、イールドカーブが一番いいだろうと。インプライド・フォワード・レートでもって先々の長期金利を示そうということだったわけです。けれども、これでいったら長期にわたって非常に低い金利になるわけなので、金利パスを考える上で中長期試算の見通しを使ったらどうか。さっき議論になっていたのは、その10年後から先がどうなんだということなのですけども、それは実質均衡金利であろうと類推されますので、それを使ってみたらどうかと。だから、大事なことは、一回金利が大きく上がる中において、これはいつ上がるか分かりませんけども、どういうことがその財投機関に起こるのかということを考える上で、やっぱり金利パスが極めて重要だということを申し上げたわけです。

〔池尾分科会長〕実質実効金利は想定できるとして、人口減とか何かでさらに下がる可能性があるんですけれども、ここでの計算は名目金利ですから、どれぐらいのインフレ率が乗るかという話をしないと出せないんですよね。

〔冨田委員〕そうなんです。それもだから2%の物価上昇なんだけど、基本ケースだと1.1なんですよ。より現実的なんで、こういう形で使っているのかなと。

〔池尾分科会長〕だから、それがある意味いつまで続くかという出口なき緩和をやっているわけだから、出口がなきゃいつまでも続くんじゃないかという。

〔土居委員〕よろしいですか、ちょっと。

ただ、あくまでも機会費用なわけですよね。つまり、財投機関が支払う金利というわけではないわけですし、さらに言うと中長期試算の金利もむしろあれは加重平均したというか、一般政府が支払うであろう利払費の利率を体現したものです。つまり、例えば2025年の中長期試算の金利というのは出ているけれども、名目金利も出ているけれども、これはあくまでもそのときの10年国債の金利というよりかは、むしろそのときに直面している一般政府が利払いするときの実際の残高に比した利払費の比率みたいな、実効利子率みたいなものが数字で内閣府のを使っているわけです。ですから、直ちに金利が上がらないというのはそういう理由で上がってなくて、実際、マーケットではインフレ率が2%になったらば、おそらくは新発債の金利は早々にそれに近い金利になっているかもしれないけれども、残高のほうが圧倒的に多くて、しかもほとんど1%以下の金利で発行した残高が今のところ多く占めているので、内閣府の試算では直ちに金利が急上昇するということにはなってなくて、緩やかに上がっていってという形になっている。というのは、支払ベースの、つまり政府側の利払ベースの利率を中長期試算で使っているからということなんで、その金利の表され方にはちょっと注意をする必要があるんじゃないかなと思います。

〔冨田委員〕いや、それも色々議論があるところなんだけれども、結局、今の公債発行の平均年限と残存年限が10年なわけですよ。残存10年。だからマーケットの10年金利を見ていると平均的な金利コストの部分に対応する形になっていて。だから、中長期の経済財政試算の想定はそんなに無茶な話ではないのですよ、10年とっているということは。

〔土居委員〕中長期的には、ですよ。

〔冨田委員〕政策コスト分析で、長期金利が一度に急にすべてのゾーンでそんなに上がったらみんなひっくり返りますよ。

〔池尾分科会長〕だから、機会費用の変化だから、キャッシュフローベースで出ていくのは借換えのタイミングだけなんですよね。

〔冨田委員〕そうです。

〔池尾分科会長〕ただ、出資金を何でファイナンスしていると理解するかという問題があって、例えば、資料1-1の11ページに財投のBSがありますが、財投のBSには出資金は資産として計上されていないわけですよ。一般会計とかの資産の扱いで、そうしたらそれは税金でファイナンスされていると考えれば、借換えということは問題にならないということになる。どういうふうなファイナンスのやり方で、実際、借換えとかのタイミングがいつ来るというふうに考えるかによって、キャッシュフローベースでの実際の負担の発生というのは変わってくるということ。それはなかなか難しい問題だと私は思うんですね。出資金を財投債でファイナンスしていると考えていいのかという問題は、機会費用を考えるときには国債のコスト、利回りを使っているけれども、実際、財投債で出資金をファイナンスしているという理解はちょっと違うんじゃないかと思いますので、ちょっと議論は弾んでいますが、そのあたりにしてまた考えていただくということで。

それでは、高田委員、お待たせしました。

〔高田委員〕すみません、ご説明どうもありがとうございました。

私のほうは、今回ご説明いただいた中で今日の趣旨とはちょっと外れちゃうかもしれないんですけれども、多少幾つか素朴な疑問がありまして教えていただければなと思った点であります。

どちらも資料1-1のほうの議論でありまして、参考資料の4のところに財政投融資計画残高の推移とあるんですけれども、今回平成30年度についていろいろご説明いただいたんですが、こういう20年にわたる長期なトレンドがあるわけなんですけれども、今後これがどういった方向に長期的に展望があるのかといった点について、もしお考えがあれば教えていただけないかなという点であります。

特に、例えばこの4ページ、参考資料4のページでいいますと例えば政府保証、産業投資、財政融資というふうにあるんですけれども、この内訳というのでしょうか、もしくはその中での大まかな方向性というんでしょうか、この辺のところがどうなるのかというところのご展望があればという点が第一点であります。それからもう一つは、同様にして参考の5に当たるところでありまして、預託金とそれから財投債の発行残高の推移ということにあるんですけれども、こちらのほうにつきましても、どういう長期的な展望にあるのかというところあたりを、この預託のところも含めてとりあえず昨年度はご説明いただいたとおりと理解しています。

と申しますのは、私も理財局にお世話になっていろいろ国債の議論をさせていただいてきたわけなんですけれども、こういう財投債も国債の一部ということになっているわけで、この市場をどういうふうに考えていくのかというところの議論になるのと、それからちょうどその前になってしまいますけれども、8ページのところに財投債の状況があるわけなんですが、私も長らく国債をやっていて、あまりこの財投債に分析、焦点を当てて考えたことがなかったんですが、財投債の中でこれだけ年限が2年から40年まであるんですけれども、これはどういうような形で年限の配分になっているのかというところであります。これは例えばALM的な関係がある中でこういうものになっているのか、正直言って私もこれまで所与のものとして受けとめてきたものですけれども、このたびこういう形で財投の議論をさせていただく中で、もし分かれば教えていただければなと思った次第でございます。以上でございます。

〔池尾分科会長〕じゃ、事務局からお願いします。

〔湯下財政投融資総括課長〕申し訳ありません。ちょっと今将来見通しというものは特段つくってないので、直接ご質問にずばっと答えることがなかなか難しいんですけれども、もちろん金利構成がどうなるのかということにもよりますが、政策的な面としましてこれがずっと続くのかというのはまたあるんだと思うんですけれども、足元はなるべく長期・低利なものを使おうということで、まだこれ数字にいつぐらいから出てくるのかというのはあると思うんですが、昨年の年限構成の見直しとか、あと長期債、30年度も30年債、40年債で1.5兆円使っているということで、今この非常に低金利の流れ、長期をなるべく使おうということを方向性としては持っておりますので、このままたとえ計画がそのまま同水準であったとすれば、残高は若干増える可能性は出てくる。ただ、そこはどこまで低金利が続いてどこまで長期金利で調達するのかとかもちろんそこら辺を見ながら、ALMを見ながら、また金利体系が変わってくればそこはどういう発行をしてどういう年限をとるか決めていきますので、ちょっと将来展望という意味で今現在持ち合わせているものはないんですが、足元は超長期のところを長くなるべく低金利を活用してその期間を長くというような方向を持っております。それ以上、すみません、どういう形になるかは大変恐縮ですが、現在持ち合わせておりません。

〔高田委員〕となりますと、財投債のほうはそれ以外の国債に比べて、例えば発行年限のところが長期債で発行するということを意図的にALM上で対応しているという考えなのでしょうか。それは場合によっては理財局の国債のほうの対応なのかもしれないので、皆様方のところとは違うかもしれませんけれども。

〔湯下財政投融資総括課長〕もちろん向こうとの関係もありますけれども、こちらでご覧いただくように、30年、40年、例えば30年で見ますとこの1.5兆円というのはまさに平成30年で道路に対して1.5兆円の財投をつけまして、政府保証をそちらの財融に借り換えるということを行ったものに伴うものでございます。

ちょっと非常に細かい話ですけれども、財融の場合は満期一括償還ではございませんので、40年債1.5兆円という形ではなくて、この30年と40年に分けた形で発行しております。そういったことも、こういった長期化の活用というのをここ数年やっておりますので、実際の30年度のデュレーションギャップは資産が6.01年、負債が5.96年ということで0.05年となっておりますが、29年はこれがマイナス0.01年だったわけでございまして、足元のところは、ここ一、二年低金利の活用ということで、今ご指摘のとおり長いものをなるべく財投のほうに振り分けるということはやっております。ただ、ちょっとこれが将来的にどうなるのかというのは。

〔可部理財局長〕補足していいですか。

〔池尾分科会長〕局長、どうぞ。

〔可部理財局長〕重要なお尋ねだと思うんですけれども、若干補足をいたしますと、財投はストックもフローもひと頃の約4割まで減っております。これ財投改革を受けて必要なものにのみということでやってきた成果ではあるわけですけれども、じゃあこれからもどんどん減らすのかということになると、残高ないしフローを必要最小限のところに持ってくるというのは、一つ目途が付いているのかなと思っています。

むしろ先ほど財投総括課長からご説明申し上げましたように、例えば今の段階ですとリニアあるいは高速、こういったところで長期固定金利で融資をすることによって経済政策として、あるいは社会資本整備として政策性が高いというようなときには必要なものは出していくと。それに応じて必要な調達をするという考え方で、これは一方的に増やすとか減らすとか、そういう段階を超えてきたのかなと思っています。

その上で、財投として極めて重要なのは、先ほどから委員の先生方からもお話がありましたようにALM管理ですので、例えばこの令和元年度の計画でも長期固定ということで高速道路機構に貸付けをしているわけですが、ここは財投で調達して、調達した瞬間にもう機構にお渡しをして、ここでリスクを負わないという形にするために、ALMを合わせている、というような形でやっておりますので、そこは財投の調達と運用の世界の中で、今数字でもご説明申し上げたような形でALMを合わせてリスクを生じさせないようにするという形になっています。

この長期固定を受けた機関のほうは、ここでコストを固定できるものですから、もともと想定していた経営計画に比べると大きくそのコストが確定的に減るということなので、それを事業に活用しようというような仕組みでやらせていただいているということで、調達から運用までの中でそうしてリスク管理をしていくというのが基本的な考え方かと思っております。

〔池尾分科会長〕高田委員が最初に質問されたことは実はすごく難しい問題で、要するに今の局長のお話もありましたけど、財投の最適規模はどれくらいかというご質問なわけですよね。それで財投改革以後スリム化を図ってきたわけで、今局長からありましたように、実務の立場からはほぼ最適ぐらいのところまで来たんじゃないかという実感を持たれているわけですけれども、ただ、そういう実感とは別に、我々ももう少し理論的に考える必要があって、まだもっとスリム化したほうがいいかもしれないし、ひょっとしたら行き過ぎていて少し20兆円ぐらいまで戻してもいいかもしれない。そういうところの財投の最適規模に関してどういう基準で物を考えていくかということはそろそろ整理して考えなきゃいけないところに来ているんだと思いますが、だから非常に難しいことをぱっと聞かれて、なかなかすぐに明確に応えられません。

じゃあ、冨山委員、お願いします。

〔冨山委員〕先にちょっと、今の話があったんで一点だけ申し上げると、財投改革で財投の残高をずっと減らしていった時代とか、わりと最近までよくある民業圧迫論とかって議論ありますよね。多分わーっと減らせというときは平成の初めのときだから結構昔の話で、当時の言葉に「経済は一流、政治は三流」という言葉があったんですよ。政治が三流か二流かは知らないけれども今経済は四流なので、日本は。なので何が言いたいかというと、さっき言ったように、日本の場合は特に、民が官に優位するという時代は既に終わった。経済界の代表として申し上げます。なので、そう単純に民のほうが常に官よりも効率的で賢いと思わないほうがいいです、日本の場合は特にです。これは一言申し上げます。ですので、むしろ現実の民の賢さと、民が持っている競争優位・比較優位の問題と、官が持っている競争優位・比較優位の問題で、今会長が言われた話というのは、ある均衡点を常に探していくというのは私は正しいと思っています。とにかく、要はある種の絶対的ノームのように民の優位みたいなものは信じないほうがいいですよ、これ。そうでなかったらこんなふうに日本の経済はなっていませんから、と私は思います。というのがちょっと。

それと離れて、ちょっと近い話で、1-1の12ページ目の使途別のやつ。これは非常に興味深く拝見していまして、長期的な何かトレンドってあるんですよね、きっと。長期トレンド。これがどういうふうに比率なり何なりが推移してきたかというのは。そこに実は、今すぐ必要はないですけれども、ちょっと関心がございまして。というのは、今の話にちょっと連なるんですけれども、もしこれが常にある種効率的にこういう選択がされているとすると、そういった、要はその優位性の相対的な変化というのがここにあらわれているはずなんですね、民間の金融システムの関係で。今の議論と社会資本とか高速道路なんて私も中日本高速の役員をやっていたのでよく分かるんですけれども、確かにすごく長いので、めっちゃ長いので、確かにそこに財融かけていくとか、あるいは政府保証をやるというのは極めてそうなんだろうなという気はしているんですけれども、例えばの話なんですけれども、中小零細企業がまだ結構な技術がありますと。それで、これもだから民の優位性か劣位性かの問題ともちょっと連なるんですけれども、要はこれ多分、どっちかというと地域金融機関とかぶる世界ですよね、資本金をね。それでちょっとこの直前にこの問題でヒアリングを向こうで先ほど受けていたんですけれども、要は預貸が下がってかなわないってわめいているわけですよ、地域金融機関はね。金利政策はけしからんとかってわあわあ言っているわけですよ、スプレッドが潰れちゃうとかね。そんなに預貸で困っているんだったら何でこんなに政府系が貸さなきゃいけないんだろうって。圧迫というよりは――僕、圧迫論って言葉はあれは嘘だと思っていて、難しいところに貸すのは全部結局政府のほうに投げていて、要するに怠惰になっているんじゃないかと。怠けてんじゃないかという疑念というか、実際私現場におりますので、ほぼファクトとしてそう思っています。

どちらかといっちゃうと、そういう問題ともう一つは、これは私とデービッド・アトキンソンさんが特に言ってるんですけれども、日本の中小零細企業は生産性が低過ぎると。こんな人手不足のときにそんな生産性の低い会社は一体どうするんだと、退出させればいいのではというのを、彼とそういうことを言っているんですが、だとするとこんなところに金を貸してやる必要はないわけでということになっちゃうじゃないですか。ですので、どうなのかなとちょっとこの数字を見て思ったりするんですね。あれですよ、だから何とかショックのときとかそれはまた別ですよ。そういうときの話は別だし、例えば人手がすごく余っちゃって失業問題が潜在的にあるときに何とか企業を潰さないようにするというのは正しいと思うんですけれども、要はこれだけ世界の歴史上空前の完全雇用で、歴史上空前の人手不足で、なぜなぜこんなに中小企業、零細企業を政府が救出しなきゃいけないのかよく分からなかったりするんですね。で、別にこれの答えは要求していませんけれども、要は社会とか産業の状況とかそういった課題と、この比率というか構成というのが、先ほどの会長の話でわりと合致しているのであれば何か適正規模のような気がするし、ずれているとこの部分はひょっとしたら過剰かもしれないしと、そんな印象を持ったりしているわけです。なので、もしそういうトレンドみたいなことを教えてもらえたらうれしいなという、どっちかという好奇心でやっている質問です。

〔湯下財政投融資総括課長〕そちらのほうは調べまして後ほど数字をお届けするようにいたします。

〔冨山委員〕よろしくお願いします。

〔池尾分科会長〕財投レポートで基本的なことは出ているんじゃないかなと思うんです。

川村委員。

〔川村委員〕いろいろありがとうございます。今日、最初に非常に理論的な論争があって興味深く拝聴して、引き続きお願いしたいと思うんですけども。

私もやっぱり高田さんのおっしゃっていた、4ページですね。これを見ていたときに、財投の適正規模って何となくで100兆前後で――財融のほうですね――落ち着いてきているのかな。ただ、大きなプロジェクト、国家プロジェクト等が出てきたときのいわば随時対応というか、それは別途あるんだろう。だから、絶対的な水準はないと思う中で、質問が2つあって、1つは個別に見ると財融は3分の1どころか過去20年間に4分の1まで激減しているんだけれども、産投と政府保証はむしろ増えてきているわけですよね。特に政府保証なんかは逆に5割ぐらい増えている。絶対額が小さいので財融に比べると何か陰に隠れちゃうんですけれども。これは私の記憶ですとやはり危機対応があったり、そういうときに適宜この政府保証を発動するということになっているんだという部分があるんだろうと思うんですが、全体で見てむしろ20年前より政府保証と産業投資が増えている理由というのはどういうことなのかという点。特に、産投のほうは次第に民営化等をしていくと、だんだん原資が将来的には減っていくんじゃないかというところをどう考えるべきなのか。また、政保債で、従前だったら財融でやっていた部分を代替的にやっている部分というのがどんな感じであるのか。また、その場合の使い勝手としてどっちがいいのかというのか、政府保証を使った場合に非常に手間がかかるのか迅速にできるのかというような点について、今お分かりになる範囲で結構ですので、教えていただければと思うのが一つと、もう一つはこれはちょっとより根本で私もよく分からないところなんですが、財融のほうがここまでのペースで4分の1まで減ってきて300兆近く減ってきたということは、これはもともと郵貯・簡保資金だったわけですね。それが一旦こっちへ持ってきて運用されて。そこはもう市場化しましょうということで財投債ということ、市場で調達して必要なものにという建付けになると、かつての資金運用部資金と現在のこの財融の差というのが、これは財務省の話じゃないので個人的な興味に過ぎないかもしれないですけれども、郵政改革って何だったのかなと。昨今のいろんな郵政の苦しみを見ると、つまりああいう形で存在できるのかなということを逆にこの財融の激減というのが何か示している部分があるんじゃないかなと。非常に大きなテーマなのかなという気がしています。ちょっと感想めいたものですけれども。

〔池尾分科会長〕よろしいですか。

〔湯下財政投融資総括課長〕まず、使途別分類表における中小零細企業の割合についてでございますが、昭和36年度が11.6%、それからずっと増加傾向にございまして、平成13年度が17.5%、そして平成26年度が23.2%という形となっております。

〔冨山委員〕ある種、だからなるほどなと思う部分と、ちょうど人手不足でとにかく中小企業に要求しなきゃいけないときに増えちゃったという感じなんですよね、今の話を聞いていると。それはしょうがなかったかなという感じが正直するんですけれども。これまたちょっと正直こっち側で決める問題じゃないので難しいんですけれども、ただ、ある種のいいモニタリングだと思っていて、むしろ社会資本なんかが増えるのは僕は逆に今の状況で自然だと思ってほしくないと思っているんですね。と思っているので、ある種別にこれがすなわちどうこうっていうわけじゃないんだけれども、そういう感覚で数字を把握していくというのも金の元締めの財務省的には大事なんじゃないかなと思うわけです。要するに、全体像が見えるのはここだけなので。個別にやっている側は、中小企業庁は全体像を見ていませんから、これはすごく多くを語っているような気がちょっとしたもんですから、ぜひ可部さんにうまく使っていただければいいかなと思いました。ありがとうございます。

〔池尾分科会長〕私も日本の中小企業政策の現状については思うところが多々あるんですが、理財局としては、予算要求があったときにちゃんと査定するという対応、おっしゃったチェックというかモニタリングということになると思う。

それから、郵政改革についても、私は日本郵政公社の理事をやっていましたから、現在の日本郵政の制度設計に関しては極めて思うところがあるんですが、これも直接はここの議題から外れると思いますので、問題提起だけということで。

それではそろそろ予定している時間が迫ってきたんですが、ほかにご意見。

じゃあ、家森さん。

〔家森委員〕すみません、ごく短く。

運用残額について説明があったんですが、これがどう問題なのかがよく分からなくて。計画を立てたのと違うということは分かるんですけれども、それで実際どういうコストが発生しているのか、今日でなくていいので教えていただきたい。表には2兆円、3兆円ってあるというんですけれども、無駄にお金を調達していて、それが遊んでいて機会費用になっているんだったら問題なんですが、あるいは過大に予算を査定してしまったのが問題なのか。何が残額というものの問題かというのが1点です。それからもう一つ、資料2の3ページのところで、都市再生機構で2,515億円、新たに去年と比べるとコストが増えたという説明で、その理由が、空き家の見込みを増やしたとかいうことなんですが、金融機関でもどれだけ信用コストを見るかというのって常に論争になるんですけれども、65万を72万にしましたとかというのがすごくアドホックな聞こえ方をしていて、金利の見込みももちろん大変なんですけれども、そちらのほうも、どういうふうにそれが正しいといいますか、みんなが納得するように作られているのかをまた教えていただけたらと思います。以上です。

〔池尾分科会長〕それ、でも国土交通省の話。国土交通省が決めている……。

〔家森委員〕国土交通省が言うのが正しいって、理解するのですか。

〔池尾分科会長〕いや、正しいんじゃなくて、国土交通省が何らかの理由で決めたんだと思います。

〔家森委員〕それがどういうふうに決まっているのかなということです。以上です。

〔池尾分科会長〕1点目の。

〔湯下財政投融資総括課長〕もちろん運用残額が多過ぎるのは、査定がどれぐらい厳密かというご議論を昔から頂戴いたしております。

ただ、今回ご説明しましたのは、ある程度先ほど地方の話もありまして、一定の運用残が出てしまうのは仕方がないところがございまして、先ほど申し上げました、ちょっと粗くて恐縮ですが、2、3兆円ぐらいはリーマン後その範囲に入っているということなので、この程度の運用残というのは適正にそれなりに査定をしてこれぐらい出ているという状況なので、私どもとしては、適正な水準の中に入っているということでご報告させていただいたと。

さらに申し上げますと、財投債のところも運用残が出ることを見越しまして、あとそれ以外に中の調達の部分の金額もありますので、この1.8兆というのを見越しながら財投債の発行も途中でやっていますので、過調達になってコストを負担するということもないように運用しております。

〔池尾分科会長〕よろしいでしょうか。

それでは、予定の時間になりましたので、本日はこれまでとしたいと思いますが、平成30年度財政融資資金運用報告は、伺った、ちゃんと報告受けました、というのを一応確認しておいたほうがよろしいんですかね。受けましたということで。

それで、いつも申し上げていますが、議論をいただいた内容のほかに追加のご意見とかご質問等ございましたら、事務局までお寄せいただければと思います。

本日の議事内容につきましては、この後事務局より記者レクが行われます。

議事録につきましては、いつもどおり皆様のチェックを受けた後、財務省のホームページに掲載するということになります。

本日はご多忙中のところご参集いただき、熱心にご議論いただきまして誠にありがとうございました。それではこれで閉会とさせていただきます。

15時32分閉会