- 開会
- 中華人民共和国産黒鉛電極に対する不当廉売関税の課税
- 閉会
出席者 | |||
特殊関税部会長 | 阿部 克則 | 財務省 | 高村関税局長 |
委員 | 内山 智裕 | 内野審議官 | |
片山 銘人 | 中澤審議官 | ||
木村 福成 | 𠮷田総務課長 | ||
古城 佳子 | 大関関税課長 | ||
杉山 晶子 | 藤中業務課長 | ||
高橋 裕子 | 藤岡特殊関税調査室長 | ||
田邊 國昭 | 経済産業省 | 信田貿易経済協力局貿易管理部特殊関税等調査室長 | |
野原 佐和子 | 菊池製造産業局素材産業課企画官 | ||
専門委員 | 河野 真理子 | ||
佐藤 英明 | |||
末冨 純子 | |||
松島 浩道 | |||
若江 雅子 |
本稿は、令和7年6月20日の関税・外国為替等審議会 関税分科会 特殊関税部会の議事録です。 |
午前10時58分開会 |
○阿部部会長 それでは、少し時間が早いのですけれども、皆様おそろいのようでございますので、ただいまから関税・外国為替等審議会関税分科会特殊関税部会を開催いたします。
委員の皆様方におかれましては、御多用のところ御出席を頂きまして、誠にありがとうございます。
先月開催されました関税分科会におきまして、特殊関税部会長の御指名を頂きました阿部でございます。今後、当部会の議事進行を務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
それでは、本日の議事に入らせていただきたいと存じます。
本日の議事は、お手元の議事日程のとおり、「中華人民共和国産黒鉛電極に対する不当廉売関税の課税」についてでございます。
本件につきましては、資料1のとおり、「不当廉売関税の課税」について、財務大臣から当審議会に諮問がなされております。これを受けて本件が当部会に付託されております。したがいまして、本件につきましては、委員の皆様方に御審議いただいた後に答申の取りまとめを行いたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
まず、「黒鉛電極産業の現状」につきまして、経済産業省製造産業局素材産業課、菊池企画官より説明をお願いします。
○菊池製造産業局素材産業課企画官(経済産業省) 経済産業省素材産業課の菊池でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
私のほうから、資料2-1の「黒鉛電極産業の現状」を御説明させていただきます。
まず、対象品目である黒鉛電極についてでございます。掲載した写真のとおり、黒鉛電極は円柱状で、一般的に黒色の部材でございます。原材料のコークス等をねつ合し、成形、焼成、高温熱処理が施されることにより、強度や熱伝導率の高い、耐久性にも優れた特性を有するようになります。我が国でこの黒鉛電極を生産しているのは、SECカーボン株式会社、東海カーボン株式会社、日本カーボン株式会社、株式会社レゾナック・グラファイト・ジャパンの4者でございます。
黒鉛電極の主な用途でございます。黒鉛電極は、主として電気炉における陰極として使用されます。その中でも、おおむね直径約20インチ以上の太い電極は、主に一度使用された鉄スクラップを電気炉で溶かし、鉄鋼を製造するために使用されるものでございます。直径約18インチ以下の細い黒鉛電極は、主に電気炉において鉄鋼の成分調整を行う際に使用されます。
次のページに参りまして、黒鉛電極産業の現状でございます。先ほど申し上げましたとおり、黒鉛電極は、主に鉄のスクラップを溶かしてリサイクルする電気炉において、陰極となる炭素棒として用いられますが、他の素材での代替は困難でございまして、国内産業のサプライチェーンを支える鉄鋼業に重要な製品と、このようになっております。また、カーボンニュートラル実現への取組でも、鉄鋼業等ではCO2の排出量を抑え、鉄の資源循環が期待できる電気炉への転換が推進されており、そういった需要に応えられるよう黒鉛電極の安定した供給が求められております。
しかし、調査対象期間中、需要が鈍化傾向にある一方で、不当廉売された調査対象貨物の輸入が増加し、国産品の国内販売量の減少及び市場占拠率の下落につながりました。黒鉛電極の国内生産者は、中国からの安価な輸入品との価格競争に巻き込まれ、製造原価の上昇分を十分に価格に転嫁することができず、また、販売機会を失ったことにより、営業利益は調査対象期間中に減少しました。
まとめとなりますが、黒鉛電極は、特に鉄鋼や非鉄金属を製造する電気炉において不可欠な材料でありまして、鉄鋼や非鉄金属の供給という国内の産業基盤を支える役割を果たしています。黒鉛電極の国内生産者は、安価な中国産黒鉛電極の輸入の影響から販売機会を失う等により、利潤が著しく悪化するなどの損害を被っております。上記産業の現状も踏まえれば、確定措置の発動による保護の必要がございます。
以上で資料2-1の御説明を終わります。
○阿部部会長 ありがとうございました。
引き続きまして、「中華人民共和国産黒鉛電極に対する不当廉売関税の課税」につきまして、藤岡特殊関税調査室長より説明をお願いします。
○藤岡特殊関税調査室長 財務省関税局特殊関税調査室長の藤岡でございます。
私からは、資料2-2「中華人民共和国産黒鉛電極に対する不当廉売関税の課税」に基づいて説明をさせていただきます。
資料の1ページ目を御覧ください。こちらは調査の概要等を記載しております。調査対象貨物につきましては、先ほど経済産業省からございました説明のとおりでございます。確認になりますが、不当廉売関税の課税要件は、不当廉売された貨物の輸入の事実が認められ、当該輸入が本邦の産業に与える実質的な損害等の事実が認められ、本邦の産業を保護するため必要があると認められることとなっております。
資料の2ページ目を御覧ください。こちらは不当廉売関税の調査・課税手続きの流れをお示ししております。昨年2月に本邦の生産者から課税の求めがなされました。これを受け、昨年4月に調査を開始しました。調査を進め、本年2月に不当廉売輸入の事実と当該輸入が本邦の産業に与える実質的な損害等の事実が推定されるに至り、仮の決定を行いました。3月に暫定措置の発動について特殊関税部会で御審議、御答申を頂いたところです。その後、政令の閣議決定・公布を経て、3月29日から暫定的な不当廉売関税の課税が行われております。
資料の色つきの部分は、前回の特殊関税部会以降の調査の進展を示したものとなります。仮の決定について利害関係者から提出されました反論等を検討した上で、利害関係者に対して最終決定前の重要事実の開示を行いました。こちらにつきましても利害関係者から提出されました反論等を改めて検討しました。調査結果につきましては、資料2-3のとおり、取りまとめに至っております。
この調査結果を受けまして、暫定措置を確定措置に切り替えることについて、本日お諮りをさせていただくところです。
資料の3ページ目を御覧ください。こちらは仮の決定に対して中国の供給者等の利害関係者から提出された主な反論と、それに対する調査当局の見解を整理したものです。左側が利害関係者の反論、右側が調査当局の見解です。
1点目はサンプリングに係る反論です。本件調査についてはWTOのアンチダンピング協定においてサンプリング調査をすることが認められている場合であることを説明しております。
2点目は代替国価格の使用についての反論です。中国の供給者に意見の表明の機会を与えるなどいたしましたが、市場経済の条件が浸透している事実を確認することができませんでした。これにより当局は正常価格の算出に代替国の企業の価格を使用することとしたものです。
3点目は代替国価格の算出方法に関する反論です。当局は供給者と代替国企業から貨物についての品種の差異を含む正確な回答が入手できておりました。正常価格と輸出価格を公正に比較するために、品種の差異が適切に反映されていない公開情報ではなく、入手できた証拠に基づいて算出することが適切であると判断しました。
4点目はファクツ・アヴェイラブルに係る反論です。供給者に複数回にわたり修正の機会を与えましたが、妥当な期間内に必要な情報を提供しなかったと判断し、ファクツ・アヴェイラブルを適用して決定を行ったものです。
5点目は同種の貨物の認定に係る反論です。調査において、直径の小さいサイズのものについても中国産は国産品よりも低価で販売され、国産品が影響を受けていたことを確認し、対象から除外する理由がないことを説明しております。
以上のとおり、仮の決定における判断を変更する必要はないと判断し、次の段階の手続きであります重要事実の開示を行っております。
資料の4ページ目を御覧ください。4月18日に利害関係者に対して、最終決定の基礎となる重要な事実、具体的には仮の決定において通知した事項に加え、仮の決定に対する反論並びにそれらに対する調査当局の見解を加えたものを通知しまして、改めて反論等の機会を与えております。
これに対しまして、次の5ページ目になります。中国の供給者等から反論の提出がございましたが、この反論は先ほどの仮の決定に対する反論と同様の内容でした。改めて検討いたしましても、重要事実の内容を変更する必要は認められませんでしたので、不当廉売された貨物の輸入の事実及び当該輸入が本邦の産業に与える実質的な損害等の事実に関する認定が確定されるに至りました。
資料の6ページ目を御覧ください。こちらは今回の調査結果に係る資料になります。課税要件の1つ目、不当廉売貨物の輸入の事実の説明となります。先ほど御説明させていただきましたとおり、認定の内容を変更する必要がないものと認められたことから、前回、暫定措置について御審議いただいた際の資料と基本的に同じものとなります。正常価格の算出については、中国の国内販売価格ではなく代替国企業の価格を用いました。輸出価格については、サンプリング調査を行い、供給者3者を選定して輸出取引を調査しました。
調査の結果、不当廉売された貨物の輸入の事実が認められ、不当廉売差額率を算出したところ、104.61%となりました。
続いて、7ページ目を御覧ください。課税要件2つ目の実質的な損害等の事実の説明となります。こちらも前回、暫定措置について御審議いただいた際の資料と基本的に同じものとなります。
不当廉売された貨物の輸入によって本邦の産業の営業利益が大きく減少するなど、本邦の産業に与える実質的な損害等の事実が認められました。また、中国以外の国からの貨物による影響は限定的であり、損害をもたらす要因ではなかったとの分析から因果関係が認められ、調査の結果、不当廉売された貨物の輸入が本邦産業に与える実質的な損害等の事実が認められました。
最後、8ページ目を御覧ください。調査の結果、不当廉売関税の課税要件を満たしていることが確認されましたので、今般、中国産黒鉛電極に対して不当廉売関税を確定措置として課すことにつきましてお諮りさせていただくこととなりました。税率は暫定的な不当廉売関税と同率の95.2%、課税期間は5年間でございます。
私からの説明は以上となります。
○阿部部会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの事務局からの説明につきまして、御質問、御意見等を頂きたいと存じます。いかがでしょうか。オンラインで御参加の委員からもよろしいでしょうか。
杉山委員、よろしくお願いいたします。
○杉山委員 ありがとうございます。
この黒鉛電極は、現在、経済産業省で特定重要物資に分類されているのでしょうか。
○菊池製造産業局素材産業課企画官(経済産業省) 特定物資には含まれておりません。
○杉山委員 今後、分類される可能性というのはあるのでしょうか。
○菊池製造産業局素材産業課企画官(経済産業省) 現時点であるかどうかという見通しは予断できませんけれども、今のところ分類はないということだけ申し上げさせていただければと思います。
○杉山委員 こちらの不当廉売関税の適用と併せて、経済産業省のほうでもそのような対応がなされると、今後相乗効果が期待できるのではないかと思いました。
以上でございます。
○菊池製造産業局素材産業課企画官(経済産業省) 御意見ありがとうございます。
○阿部部会長 ほかにいかがでしょうか。
よろしいでしょうか。ほかに御質問等ございませんようでしたら、答申の取りまとめを行いたいと存じます。
〔答申書案配付、オンライン画面に表示〕
○阿部部会長 オンラインで御参加の委員にも答申案が出ておりますでしょうか。
それでは、お手元の答申案を御覧ください。内容を御確認いただけますでしょうか。
よろしいでしょうか。御質問、御意見等もよろしいでしょうか。
それでは、特に御質問、御意見等がございませんようでしたら、当部会として本案のとおり決定することとしたいと存じますが、よろしいでしょうか。
〔異議なし〕
○阿部部会長 ありがとうございます。御異議がございませんようですので、「中華人民共和国産黒鉛電極に対する不当廉売関税の課税」につきまして、当部会といたしまして、答申案どおり決定することとし、これをもって関税・外国為替等審議会としての答申といたしたいと存じます。
以上をもちまして本日の特殊関税部会を終了いたします。本日は、御多用のところ御出席賜りまして、誠にありがとうございました。
午前11時15分閉会 |