- 開会
- 中華人民共和国産黒鉛電極に対する不当廉売関税の課税に関する調査の開始
- 閉会
出席者 | |||
特殊関税部会長 | 河野 真理子 | 財務省 | 内野審議官 |
委員 | 片山 銘人 | 中澤審議官 | |
杉山 晶子 | 石谷参事官 | ||
高橋 裕子 | 藤中業務課長 | ||
田邊 國昭 | 藤岡特殊関税調査室長 | ||
田村 善之 | 経済産業省 | 信田貿易経済安全保障局貿易管理部 | |
野原 佐和子 | 菊池製造産業局素材産業課企画官 | ||
専門委員 | 阿部 克則 | ||
石黒 憲彦 | |||
佐藤 英明 | |||
末冨 純子 | |||
藤岡 博 | |||
宮島 香澄 | |||
村上 秀德 |
本稿は、令和7年3月12日の関税・外国為替等審議会 関税分科会 特殊関税部会の議事録です。 |
午後5時00分開会 |
○河野部会長 それでは、ただいまから関税・外国為替等審議会関税分科会特殊関税部会を開催いたします。
委員の皆様方におかれましては、御多用中のところ御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
それでは、本日の議事に入らせていただきます。
本日の議事は、お手元の議事日程のとおり、「中華人民共和国産黒鉛電極に対する暫定的な不当廉売関税の課税」についてでございます。
本件につきましては、資料1のとおり、「暫定的な不当廉売関税の課税について」、財務大臣から当審議会に諮問がなされております。これを受けまして、本件が当部会に付託されております。したがいまして、本件につきましては、委員の皆様方に御審議いただいた後に答申の取りまとめを行いたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
まず、「黒鉛電極産業の現状」につきまして、経済産業省製造産業局素材産業課、菊池企画官より御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○菊池製造産業局素材産業課企画官(経済産業省) 経済産業省素材産業課の菊池でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
私のほうから、資料2-1になります「黒鉛電極産業の現状」について御説明を申し上げます。
まず、対象品目となっている黒鉛電極についてでございます。ここに写真を掲載しておりますけれども、黒鉛電極は円柱状で、一般的に黒色となっている部材でございます。主にコークスを原材料としておりまして、これを、ねつ合、粉砕したコークスをほかのピッチ、タールとかと一緒に混ぜ合わせるという作業です。それから、成形、焼成、高温熱処理を施すことによって、強度や熱伝導率が高い、耐久性にも優れた特性を有するものになります。日本で黒鉛電極を生産しているのは、SECカーボン株式会社、東海カーボン株式会社、日本カーボン株式会社、株式会社レゾナック・グラファイト・ジャパンの4者でございます。
次に、黒鉛電極の主な用途でございます。黒鉛電極は主として電気炉における陰極として使用されます。その中でも、直径約20インチ、およそ51センチになりますけれども、それ以上の太い電極は、主に1度使用された鉄スクラップを電気炉で溶かし、鉄鋼を製造するために使用されます。直径約18インチ、およそ46センチになりますけれども、それ以下の細い黒鉛電極は、主に電気炉において鉄鋼の成分調整を行う際に使用されるものでございます。
次のページに参りまして、黒鉛電極産業の現状についてでございます。先ほど申し上げましたとおり、黒鉛電極は、主に鉄のスクラップを溶かしてリサイクルするという電気炉において、陰極となる炭素棒として用いられます。これは他の素材での代替は困難でございまして、国内産業のサプライチェーンを支える鉄鋼業等に重要な製品となっております。また、カーボンニュートラル実現への取組の中でも、鉄鋼業として、二酸化炭素排出量を抑え、鉄のリサイクル、資源循環が期待できる電気炉への転換が推進されているところでございます。そういった需要に応えられるよう、黒鉛電極の安定した供給が求められております。そして、今後も黒鉛電極は、電気炉で鉄鋼の生産効率がよく、二酸化炭素排出が少なく、環境に優しい高性能な製品を生み出す技術開発が重要となります。性能が悪いと、消耗が早くて、そして欠落を起こして、取り替える頻度が上がったり、または、炉を止めたりして作業をしなければならないという頻度が増えてしまうことになってしまいます。しかしながら、日本の黒鉛電極産業は中国からの安価な輸入品との価格競争に巻き込まれて、技術開発の資金にも影響する厳しい状況となっております。
最後に、まとめとなりますけれども、黒鉛電極は、特に鉄鋼や非鉄金属を製造する電気炉において不可欠な材料でございまして、鉄鋼や非鉄金属の供給という国内の産業基盤を支える役割を果たしています。そして、不当廉売による影響を受ければ、この産業の現状も踏まえ、暫定措置の発動による早期保護の必要があると考えております。それにより、鉄鋼の供給を通じたサプライチェーンの安定性の確保や、効率的で環境に優しい高性能な黒鉛電極の技術開発にもつながることが期待されると、このように考えております。
以上で資料2-1の御説明を終わります。
○河野部会長 ありがとうございました。引き続き、「中華人民共和国産黒鉛電極に対する暫定的な不当廉売関税の課税」につきまして、藤岡特殊関税調査室長より御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○藤岡特殊関税調査室長 財務省関税局特殊関税調査室長の藤岡でございます。よろしくお願いします。
それでは、資料2-2について御説明をさせていただきます。
資料をおめくりいただき、1ページ目を御覧ください。調査の概要等になります。こちらの調査対象貨物につきましては、先ほど経済産業省から御説明させていただいたとおりでございます。右側の囲みは、これまでの調査の経緯を整理したフロー図となります。昨年2月に課税申請を受け、4月から調査を進めてまいりまして、本年2月28日に仮の決定を行い、中間報告書を公表いたしました。確認となりますが、暫定的な不当廉売関税の課税要件は、不当廉売された貨物の輸入の事実の推定、当該輸入が本邦の産業に与える実質的な損害等の事実の推定、そして、本邦の産業を保護するため必要があると認められることとなっております。
次に、資料の2ページ目を御覧ください。こちらはこれまでの証拠等の提出状況でございます。調査に際し知り得た利害関係者等に質問状等を送付し、回答を求めました。表1の①に海外供給者、52者とございます。これは中国の輸出者及び生産者となります。今回の調査においては、標本抽出というものを行い、これらの海外供給者の中から3者を選定して、個別に不当廉売差額率を決定することとしました。選定されなかった供給者については、当該3者の不当廉売差額率を基に決定することとしました。
資料の3ページ目を御覧ください。今回の調査の中間結果について御説明させていただきます。まず1つ目は、不当廉売された貨物の輸入の事実の推定です。不当廉売差額率は、正常価格と輸出価格の差を分子に、輸出価格を分母として算出されるものです。正常価格については、中国の供給者から市場経済の条件が浸透している事実が示されなかったため、代替国の企業の価格情報等を用いました。輸出価格については、選定した3者について輸出取引を調査しました。調査当局が検証できたもの及び知ることができた事実に基づき算出しました。調査の中間結果としまして、表2のとおり不当廉売差額率が算出され、不当廉売された貨物の輸入の事実が推定されました。なお、今回、供給者の3者を調査しましたが、3者のうち2者については、質問状の回答や現地調査において数多くの誤りや不整合が認められ、回答の正確性を確認することができなかったことから、知ることができた事実に基づき、残りの1者の不当廉売差額率を適用することとしました。結果として、各供給者に同じ不当廉売差額率が適用されました。
資料の4ページ目を御覧ください。2つ目ですが、当該輸入が本邦の産業に与える実質的な損害等の事実の推定です。表3は、平成30年の数値を100とした指数で表したものです。不当廉売された貨物の輸入の影響につきましては、当該貨物の輸入量は増加し、市場占拠率を拡大させ、本邦産品を下回る価格で輸入され、販売されておりました。次に、本邦産業への影響としましては、取引先から販売価格の値上げ幅の圧縮及び値下げを要求され、製造原価の増加に見合った価格設定ができず、営業利益は大きく減少しました。なお、中国以外の国からの貨物による本邦の産品の価格等への影響等は限定的であり、不当廉売された貨物の輸入と本邦の産業の実質的な損害との間に因果関係が推定されました。以上のことから、不当廉売された貨物の輸入が本邦の産業に与える実質的な損害等の事実が推定されました。以上が調査の中間結果の内容となります。
資料の5ページ目を御覧ください。次に、暫定措置の発動について説明させていただきます。不当廉売された貨物の輸入の事実及び当該輸入が本邦の産業に与える実質的な損害等の事実についての推定がなされました。また、先ほどの経済産業省からも御説明がございましたとおり、今後の調査期間中に生じ得る損害の拡大を防止し本邦産業を保護するために、暫定措置を発動する必要性が認められる状況となっております。したがいまして、調査にて明らかになった不当廉売差額率に基づいて、不当廉売関税率を95.2%とし、措置の期間を4か月間として、暫定的な不当廉売関税を課すことが適当であると考えております。
私からの説明は以上となります。
○河野部会長 ありがとうございました。ただいまの事務局からの説明につきまして、御質問、御意見等をいただきたいと存じます。いかがでございますか。
阿部委員、よろしくお願いいたします。
○阿部委員 御説明ありがとうございます。
質問ではなくて、意見でございます。今、御説明を伺いまして、暫定措置の発動要件が満たされているということですので、速やかに発動することを支持したいと思います。今後は確定措置に向けての調査もあるかと思いますけれども、適切に進めていただければと存じます。よろしくお願いいたします。
○河野部会長 ありがとうございました。ただいまのことはコメントとして承らせていただきます。
ほかにいかがでございますか。オンライン上で御参加の方もいかがでございますか。
特に御質問等がこれ以上ございませんようでしたら、答申の取りまとめを行いたいと存じますけれども、皆様、そのような方法でよろしゅうございますか。
〔異議なし〕
○河野部会長 ありがとうございます。オンライン上の方々もよろしゅうございますね。
〔異議なし〕
○河野部会長 ありがとうございます。それでは、お手元の答申案を御覧くださいませ。内容を御確認いただけますでしょうか。まず、配付していただきます。
〔答申書案配付、オンライン画面に表示〕
○河野部会長 皆様、御確認いただけましたでしょうか。オンライン上で御参加の委員の方々も特に異存はございませんでしょうか。
もしこれで特に何も御質問、あるいは御意見等がございませんようでしたら、当部会といたしましては本案のとおり決定することといたしたいと存じますが、よろしいでしょうか。
〔異議なし〕
○河野部会長 ありがとうございます。御異議がございませんようですので、「中華人民共和国産黒鉛電極に対する暫定的な不当廉売関税の課税」につきまして、当部会といたしまして、答申案どおり決定することとし、これをもって関税・外国為替等審議会としての答申といたしたいと存じます。
以上をもちまして本日の特殊関税部会を終了いたします。本日は、御多用中のところ御出席賜りまして、誠にありがとうございました。
午後5時15分閉会 |