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関税・外国為替等審議会 関税分科会 特殊関税部会(令和5年1月24日開催)議事録

  1. 開会
  2. 中華人民共和国産高重合度ポリエチレンテレフタレートに対する不当廉売関税の課税期間の延長
  3. 不当廉売関税に関する手続等についてのガイドライン等の見直し
  4. 閉会

出席者
特殊関税部会長 佐藤 英明 財務省 諏訪園関税局長
委員 片山 銘人 山崎審議官
河野 真理子 柴田審議官
古城 佳子 河西総務課長
杉山 晶子 吉田関税課長
髙橋 裕子 西川監視課長
田村 善之 小多業務課長
野原 佐和子 馬場調査課長
三石 誠司 澤藤事務管理室長
専門委員 阿部 克則 鈴木特殊関税調査室長
国松 麻季 近田原産地規則室長
佐々木 伸彦 松田経済連携室長
末冨 純子 経済産業省 濱坂製造産業局素材産業課企画官
宮島 香澄 曽根貿易経済協力局貿易管理部特殊関税等調査室長
村上 秀徳

 

本稿は、令和5年1月24日の関税・外国為替等審議会 関税分科会 特殊関税部会の議事録です。

 

午後12時59分開会

佐藤部会長 ただいまから関税・外国為替等審議会関税分科会特殊関税部会を開催いたします。

 委員の皆様におかれましては、御多用のところ、対面またはオンラインでの御出席、誠にありがとうございます。

 本日の議題は、議事日程のとおりです。

 まず、最初の議題である「中華人民共和国産高重合度ポリエチレンテレフタレートに対する不当廉売関税の課税期間の延長」を取り上げたいと存じます。

 本件につきましては、資料1のとおり、不当廉売関税を課する期間の延長について、財務大臣から当審議会に諮問がなされております。これを受けて本件が当部会に付託されております。したがいまして、本件につきましては、委員の皆様方に御審議いただきました後に答申の取りまとめを行いたいと存じますので、その件もよろしくお願いを申し上げます。

 まず、高重合度ポリエチレンテレフタレート産業の現状につきまして、経済産業省製造産業局素材産業課、濱坂企画官より御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

濱坂製造産業局素材産業課企画官(経済産業省) ただいま御紹介にあずかりました経済産業省素材産業課の濱坂でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 私のほうから、物資を所管する立場といたしまして、資料2-1に基づきまして、高重合度ポリエチレンテレフタレート(PET)の概要について御紹介させていただきたいと思います。

 資料にあるとおり、テレフタル酸、エチレングリコール、こちらの化学反応を用いた樹脂でございます。写真を掲載しておりますが、このような白色のペレット状で提供されるものでありまして、使用済みのものをリサイクルして再生PETとする、こういったケースがございます。

 主な用途といたしましては、飲料用のペットボトル、さらにはシートの原料に使われます。ユーザーといたしましては、飲料業界、容器包装材、こういった業界に提供しているところでございます。

 次のスライドになりますが、現在の産業の状況ということでございます。2017年度、こちらの課税措置が始まりまして、輸入量は極めて少なくなったところでございますが、他方、2019年度、営業利益は悪化しているという状況です。また、国内需要は今後大きく拡大することが見込まれていない、このような状況になってございます。

 当然ながら、産業界は、競争力強化ということに取り組んでおります。プラスチックに関しましては、プラスチックの汚染を防止するという観点で、現在脱プラスチック、そのような動きがあるところでありますが、このPETにおいてもリサイクルをうまくし、資源循環できる物資として今後やっていきたいと考えておりますが、結果が出るのがまだちょっと先という状況でございます。

 このような中、現在不当廉売関税が撤廃されまして、不当に安い輸入品が入ってくることになれば、また企業としては製造原価に見合った価格設定ができない、このような悪影響が考えられるところでございます。

 これらの状況を踏まえまして、課税措置の延長による保護の必要があると考えている次第でございます。

 私からは以上でございます。

佐藤部会長 ありがとうございました。

 引き続き「中華人民共和国産高重合度ポリエチレンテレフタレートに対する不当廉売関税の課税期間の延長」につきまして、鈴木特殊関税調査室長より御説明をお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

鈴木特殊関税調査室長 財務省関税局特殊関税調査室長の鈴木崇文でございます。

 それでは、資料2-2について御説明をさせていただきます。

 まず1ページ目、現状ですが、中国産高重合度PETに対して、平成29年12月より不当廉売関税を課税中でございます。

 なお、法令に基づいて、調査終了までは課税が継続されてまいります。

 また、今回の調査は、課税期間を延長するか否かの調査でございますので、課税期間を延長する場合にも、現在課している不当廉売関税率はそのまま維持されます。

 本調査は、令和3年12月に三井化学株式会社から課税期間の延長を求める申請があり、昨年2月より調査を開始しております。

 調査対象貨物につきましては、先ほど経済産業省から御説明をさせていただいたとおりでございます。

 次に2ページ目ですが、調査・課税手続の流れを整理したものでございます。

 昨年11月には、最終決定の基礎となる重要な事実を利害関係者に開示いたしました。これに対し、利害関係者より反論を受け付ける等、所要の手続を経まして、資料2-3のとおり、調査結果報告書を取りまとめ、本日の部会での御審議をお願いしているものでございます。

 3ページ目を御覧ください。以降は、今回の調査で判明した事実でございます。

 まず、不当廉売された貨物の輸入の事実に関してです。調査対象期間において、当該貨物の輸入は実質的に停止したと認められたことから、正常価格と中国から第三国への輸出価格を比較したところ、第三国への輸出価格が正常価格よりも低いことが認められました。

 次に不当廉売された貨物の輸入の再発のおそれですが、中国の供給者には相当程度の余剰生産能力があり、将来の生産は増加が見込まれること、また、これを全て吸収できる中国国内及び海外市場は存在しないことが認められました。

 以上のことから、不当廉売された貨物の輸入が不当廉売関税の課税期間満了後に再発するおそれがあると認められました。

 4ページ目を御覧ください。まず、本邦産業の損害の再発のおそれに関してです。

 本邦産業の状況ですが、現行の不当廉売関税措置により、中国産品の輸入は実質的に停止したと認められる状態となっており、平成30年度までは本邦産品の販売価格は上昇し、売上高も増加したことにより、本邦産業の営業利益は一定の改善が見られましたが、令和元年度以降は売上高及び販売価格は減少基調に転じ、営業利益は悪化し、令和2年度は大幅に赤字になる等、依然として低迷しており、損害を受けやすい脆弱な状況にあると認められます。

 次に、損害が再発するおそれに関してです。本邦の市場における需要量は現状以上に拡大するとは考えにくく、取引において価格が重視されていることから、課税期間が満了し、不当廉売された中国産品の輸入が再開されれば、本邦産業は製造原価を下回るほどの販売価格の引下げを余儀なくされ、各損害に係る指標の悪化を招くおそれがございます。

 以上のことから、不当廉売された貨物の輸入の本邦の産業に与える実質的な損害等の事実が不当廉売関税の課税期間満了後に再発するおそれがあると認められました。

 次に5ページ目ですが、先ほど触れましたが、昨年11月8日に最終決定の基礎となる重要な事実を利害関係者に開示いたしました。

 これに対し、幾つか反論がございました。6ページ目にお進みください。

 主な反論を記載させていただいております。反論の内容を左側、調査当局の見解を右側に記載させていただいておりますが、これらの反論の内容を検証・確認したところ、重要事実の内容を変更する必要は認められなかったところでございます。

 以上のことから、調査により得られた結論として、不当廉売された貨物の輸入及び当該輸入の本邦の産業に与える実質的な損害等の事実が、不当廉売関税の課税期間満了後に再発するおそれがあると認められましたので、最終決定の案でございますが、課税期間を延長することが適当であり、期間はWTO協定及び法令で認められております5年間とさせていただいております。

 私からの説明は以上でございます。

佐藤部会長 ありがとうございました。ただいまの事務局からの御説明につきまして、御質問、御意見等を頂きたいと存じます。いかがでしょうか。

村上委員 この結論自体には特段異論はございません。ただ、本件のような事案は経産省の担当企画官のお話の中にもあったように、非常に複雑な問題をはらんでいる性格のものかと思っています。

脱プラスチックの動きの中で、それを促進するためには、国内のこういう業界が存続していくということは非常に大事なので、外国から安いものがどんどん入ってくると、リサイクルが促進できないという側面があります。他方で、ユーザーのほうから見ますと、僕は別に食品産業とかを代弁しているわけではないんですが、そういうところの利害との関係をどうバランスを取っていくのかという問題があります。

また、このような環境問題に絡む案件について、不当廉売関税も含めて、関税を含めた国境措置というものを環境行政あるいは地球環境行政との絡みでどう整理していくのかということは非常に大きい問題だと思います。そういう観点が、今後財務省の皆さんにとっても、あるいは審議会全体にとっても、大事な問題ではないかということだけ御指摘させていただきたいと思いました。

佐藤部会長 村上委員、どうもありがとうございました。事務局からコメントはありますか。

鈴木特殊関税調査室長 ありがとうございました。特殊関税調査室長の鈴木でございます。

 まさに御指摘のとおりでございまして、本件自身は、WTO協定上のルールに則って、そのルールに反した不当な安値による輸出という不公正な貿易取引を是正するというものでございます。産業所管省である経済産業省とも緊密に連携し、協議の上、丁寧に調査を進めてきたところでありますけれども、御指摘の点も踏まえながら、今後ともいろいろと必要な場合には検討をしていきたいと考えております。ありがとうございました。

佐藤部会長 ありがとうございました。ほかに御質問、御意見はございませんでしょうか。

 特にないようでございますので、答申の取りまとめを行いたいと存じます。答申書案の配付をお願いします。

(答申書案配付、オンライン画面に表示)

佐藤部会長 会議室では答申書案が配付されて、ネット上でもお目にかけているところかと存じます。この答申案を御覧いただきたいと存じます。内容を御確認いただけますでしょうか。お手元の答申案につきまして、御質問、御意見がおありの方はお願いいたします。

 特に御質問、御意見等がございませんようでしたら、本部会として、本案のとおり決定することとしたいと存じますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

佐藤部会長 ありがとうございます。御異議がございませんようですので、「中華人民共和国産高重合度ポリエチレンテレフタレートに対する不当廉売関税の課税期間の延長」につきまして、当部会といたしまして答申案どおり決定することとし、これをもって関税・外国為替等審議会としての答申といたしたいと存じます。ありがとうございました。

 続きまして、「不当廉売関税に関する手続等についてのガイドライン等の見直し」につきまして、鈴木特殊関税調査室長より御説明をお願いします。よろしくお願いします。

鈴木特殊関税調査室長 それでは、資料3「「不当廉売関税に関する手続等についてのガイドライン」及び「相殺関税に関する手続等についてのガイドライン」における質問状回答期限等の明記について」、御説明をさせていただきます。

 なお、従前からガイドラインの見直しについては、見直しを行う際に、その方向性について御報告事項としてお時間をいただき御説明をさせていただいているもので、本日、何らかの御判断をお願いするというものではございません。

 まず1ページ目でございますけれども、ガイドラインは、制度の運用に当たって、WTO協定及び国内関係法令を補完し、証拠の提出や現地調査の実施というような調査実務を円滑に進めるための手続等を定めているものでございます。

 まず、御理解をいただきやすいかと存じますので、先に結論から申し上げさせていただきますと、今回の見直しは大きく2点ございまして、ガイドラインに調査当局が利害関係者に対して回答を求める質問状の回答期限を明記することが1点目、2点目としては、利害関係者から自発的に提出される証拠については既に証拠の提出のための様式というのは定めてございまして、ガイドラインにも規定されており、その際に提出される証拠によりどのような事実を証明しようとされているのかを記載等していただくこととなっておりまして、質問状を送付する際にも当該様式の内容を併せて送付しているのですが、なかなか手続に則っていただけない場合もございまして、ガイドラインで定めた様式により提出されなかった場合は当該証拠を受理しないことができる旨を明記することとしたいと考えております。

 ここで、現状と課題を見ていただきますと、現状、質問状に関しましては、当局が送付する質問状にWTO協定で規定されている37日間の回答期限に沿った提出期限日等を明記した上で利害関係者に送付しているわけですが、期限後の回答提出ということも起こります。また、自発的証拠の提出においては、当該証拠により証明しようとする事実の内容が示されておらず判然としないことがあり、利害関係者と調査当局との間で、当該内容や提出されたものの取扱いについて確認が必要となるため作業に時間を要するということも起こり、円滑な調査の妨げになる場合がございます。

 次に、2ページ目にお進みください。以上のように、調査当局としては、適正手続に則って調査を実施しているわけでございますが、先ほど最初に申し上げさせていただいた2点につきガイドラインの見直しを行うことで、当該手続の必要性のさらなる明確化や利害関係者の予見性の向上も図られ、また、相互における不必要な確認のための作業を生じさせないことにつながる等、円滑な調査の実施に利害関係者及び調査当局にとっても資するものと考えております。

 最後になりますけれども、同じ内容の繰り返しになりますので御覧になっていただければと存じます。一番下の改正の内容欄に今回の改正の方向性を記載させていただいております。

 私からの説明は以上でございます。ありがとうございました。

佐藤部会長 ありがとうございます。ただいまの御説明、御報告につきまして、委員の皆様から御質問、御意見等はおありでしょうか。おありであれば、よろしくお願いします。特にありませんか。よろしいですか。

 それでは、特に御意見、御質問等はございませんようですので、以上の御報告を受けたということにいたします。

 以上をもちまして、本日の特殊関税部会を終了いたします。本日は、御多用のところ御出席賜りまして誠にありがとうございました。重ねて御礼を申し上げます。

午後1時22分閉会