- 開会
- 大韓民国産及び中華人民共和国産溶融亜鉛めっき鉄線に対する不当廉売関税の課税
- 中華人民共和国産高重合度ポリエチレンテレフタレートに対する不当廉売関税の課税期間の延長に関する調査の開始
- 閉会
出席者 | |||
特殊関税部会長 | 佐藤 英明 | 財務省 | 諏訪園関税局長 |
委員 | 片山 銘人 | 山崎審議官 | |
河野 真理子 | 柴田審議官 | ||
杉山 晶子 | 河西総務課長 | ||
高橋 裕子 | 吉田関税課長 | ||
田村 善之 | 河邑参事官 | ||
根本 敏則 | 濵口国際協力専門官 | ||
野原 佐和子 | 西川監視課長 | ||
三石 誠司 | 小多業務課長 | ||
森田 朗 | 馬場調査課長 | ||
専門委員 | 阿部 克則 | 澤藤事務管理室長 | |
佐々木 伸彦 | 鈴木特殊関税調査室長 | ||
末冨 純子 | 近田原産地規則室長 | ||
藤岡 博 | 荒巻税関調査室長 | ||
宮島 香澄 | 松田経済連携室長 | ||
村上 秀徳 | 伊藤知的財産調査室長 | ||
経済産業省 | 高橋製造産業局金属課企画官 | ||
名須川製造産業局素材産業課課長補佐 | |||
曽根貿易経済協力局貿易管理部特殊関税等調査室長 | |||
大門貿易経済協力局貿易管理部特殊関税等調査室上席特殊関税調査官 |
本稿は、令和4年11月24日の関税・外国為替等審議会 関税分科会 特殊関税部会の議事録です。 |
午前11時23分開会 |
○佐藤部会長 ただいまから関税・外国為替等審議会関税分科会特殊関税部会を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、関税分科会に引き続き御出席を頂きまして、誠にありがとうございます。
本日の議題は、議事日程のとおりでございます。
まず、最初の議題である「大韓民国産及び中華人民共和国産溶融亜鉛めっき鉄線に対する不当廉売関税の課税」に入りたいと存じます。本件につきましては、資料1のとおり、不当廉売関税の課税について財務大臣から当審議会に諮問がなされております。これを受けて本件が当部会に付託されております。したがいまして、本件につきましては委員の皆様方に御審議いただいた後に答申の取りまとめを行いたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
まず、溶融亜鉛めっき鉄線産業の現状につきまして、経済産業省製造産業局金属課 高橋企画官より説明をお願いいたします。
○高橋製造産業局金属課企画官(経済産業省) ただいま御紹介いただきました経済産業省金属課で企画官をしています高橋と申します。私から、簡単にではございますが、溶融亜鉛めっき鉄線産業の現状について説明をさせていただきたいと思います。
資料の1ページを御覧ください。まず、溶融亜鉛めっき鉄線とは何ですかというところですけれども、亜鉛めっき鉄線とは、伸線と言っていますが、鉄線を一定程度の太さに伸ばして、その上で主には防さびのための亜鉛めっきを施した鉄線のことを指しております。一般的に使われている用語で申し上げると、針金をイメージいただけると分かりやすいかと思っております。
亜鉛めっき鉄線のうち、亜鉛めっきの仕方について2通りございまして、1つが今回の調査の対象になっている溶融亜鉛めっきを施した溶融亜鉛めっき鉄線、もう1つは電気亜鉛めっき鉄線と、めっきの種類は2種類に分かれております。今回の対象となっている溶融亜鉛めっきは、450度ぐらいの高温に溶かした亜鉛の槽、液体化した亜鉛の槽に鋼材、鉄線を浸すことでめっきを施して、最後に冷やすという工程をさせております。小さい字で書いてありますが、それに対して電気亜鉛めっきにつきましては、こちらもめっきの工程が1つ違うだけなのですけれども、亜鉛めっき液に浸すのですが、この場合は電解溶液に浸しておりまして、その中で電気を通す。すなわち電気分解をして亜鉛を表面に付着させてめっきをする、そういう工程でございます。
現在の溶融亜鉛めっき鉄線をつくっている国内生産者というのは6社ほどございます。
下段に記載の主な用途でございますが、大半がここの写真にもございますような金網、フェンス、落石の防護柵といったような金網類であったり、有刺鉄線に結構使われていて、それ以外でもパルプ結束線のような結束用途に用いられることがございます。
もう1ページおめくりいただけますでしょうか。溶融亜鉛めっき鉄線産業の現状ですけれども、溶融亜鉛めっき鉄線自身はいわゆる鉄鋼製品の一部ですので、そういった点で申し上げますと、まず、我が国で今回調査対象となった韓国産、中国産の溶融亜鉛めっき鉄線の輸入量というのは過去、調査対象期間の平成28年から令和2年度にかけてかなり増えている。平成28年度がほぼ3万トンに対して令和2年度については4万3,000トンぐらいで、国内における市場の占有率が上昇しております。他方で、鉄線自身の需要はそんなに大きく変わっておりません。したがって、不当廉売された調査対象の貨物の輸入が増加すれば、その分、国産品の販売量が落ちますし、市場占有率の下落につながっていきます。調査対象貨物が国産品を常に下回る価格で販売されておりまして、加えて国内の生産者は製造原価の上昇分を十分には価格転嫁することができないことによって、また販売機会を失い、営業利益は調査対象期間中は減少している。このような事情を振り返りますと、国内の生産者は、安値で販売された韓国産、中国産の溶融亜鉛めっき鉄線の輸入の影響を受けて利潤が悪化するなどの損害を被っているということで、不当廉売関税措置の発動による保護が必要だと考えております。私からは以上になります。
○佐藤部会長 御説明をありがとうございました。
それでは、引き続き「大韓民国産及び中華人民共和国産溶融亜鉛めっき鉄線に対する不当廉売関税の課税」につきまして、鈴木特殊関税調査室長より御説明をお願いいたします。
○鈴木特殊関税調査室長 財務省関税局特殊関税調査室長の鈴木崇文でございます。
それでは、資料2-2について御説明をさせていただきます。
まず1ページ目、調査の概要ですが、調査対象貨物につきましては、先ほど経済産業省から御説明をさせていただいたとおりでございます。なお、既に皆様には通知をさせていただいておりますが、ほう素を少量含有する溶融亜鉛めっき鉄線につきましても、含まれない物品と実質的に同一であると認められたことから、本年4月28日に調査対象貨物を拡大し、調査期間を延長いたしております。
次に、2ページ目ですが、調査・課税手続の流れを整理したものでございます。昨年3月に課税の求めがなされたことを受け、昨年6月に調査を開始し、先ほど申し上げましたが、本年4月に調査期間を延長等いたしました。そして、本年9月に最終決定の基礎となる重要な事実を利害関係者に開示いたしました。これに対し利害関係者より反論を受け付ける等、所要の手続を経まして、資料2-3のとおり調査結果報告書を取りまとめ、本日の部会での御審議をお願いしているものでございます。
3ページ目を御覧ください。以降は今回の調査で判明した事実でございます。まず、不当廉売された貨物の輸入の事実に関してですが、不当廉売差額率、いわゆるダンピングマージン率は、正常価格と輸出価格との差額を分子、輸出価格を分母として算出されるものであり、今回の調査においては、韓国については、1者から算出に係る証拠等が提出されましたので、その証拠に基づいて算出を行いましたが、その他の供給者からは回答がございませんでした。そのため、貿易統計等から算出を行いました。中国の輸出価格については、1者については証拠等から算出が可能でしたが、その他の供給者については現地調査で確認できた一部の輸出取引から算出を行いました。なお、中国の正常価格については、市場経済の条件が浸透している事実を確認できませんでしたので、代替国の企業の価格情報等を用いました。その結果、表1のとおり、不当廉売差額率が算出され、不当廉売された貨物の輸入の事実が認められました。
4ページ目を御覧ください。当該輸入が本邦の産業に与える実質的な損害等の事実に関してのものです。不当廉売された貨物の輸入の影響ですが、本邦需要量に大きな変化がない中、当該貨物の輸入量は増加し、市場占拠率を拡大、本邦産品を常に下回る価格で輸入され、販売されておりました。それによって本邦産業の受けた影響として、取引先への販売機会を失う等により売上高や営業利益は減少しました。なお、韓国及び中国以外の国からの貨物による本邦産品の価格への影響等は特に認められず、不当廉売輸入と本邦産業の損害との間に因果関係が認められました。以上のことから、不当廉売された貨物の輸入が本邦の産業に与える実質的な損害等の事実が認められました。
次に、5ページ目ですが、先ほど触れましたけれども、本年9月13日に最終決定の基礎となる重要な事実を利害関係者に開示いたしました。これに対し幾つか反論がございました。
6ページ目にお進みください。反論の内容を左側、それに対する当局の見解を右側に記載させていただいておりますが、重要事実の内容を変更するような内容の反論は特にございませんでしたので、我々の事実認定を確定するに至ったところでございます。
最後、7ページ目にお進みください。不当廉売関税による本邦産業の保護の必要性を否定する特別の事情も認められず、本邦産業を保護するために不当廉売関税を課する必要性が認められたところでございます。以上のとおり、不当廉売関税の課税要件を満たしていることから、表3のとおり不当廉売関税を課することが適当とさせていただいているものでございます。なお、期間は、WTO協定及び法令で認められております5年間とさせていただきたいと考えております。私からの説明は以上でございます。
○佐藤部会長 ありがとうございました。
ただいまの事務局からの2つの説明につきまして、御質問、御意見等を頂きたいと存じます。いかがでしょうか。
○杉山委員 こちらの不当廉売につきましては、報告書の資料2-3の2ページにある表1に記載されている会社が廉売による被害を受けたと理解してよろしいでしょうか。
○鈴木特殊関税調査室長 ありがとうございます。先ほど経済産業省から説明もありましたが、本邦の生産者は6社ということですけれども、このうち4社からいわゆる申請があったことから、2ページ目に記載させていただいているところでございます。いずれにしましても、本邦の産業において損害があったということを総合的に判断させていただいたところでございます。
○杉山委員 ありがとうございます。こちらの4社は金融商品取引法の適用企業と考えてよろしいでしょうか。
○鈴木特殊関税調査室長 それは上場しているかという趣旨の御質問でしょうか。
○杉山委員 有価証券報告書を提出しているかどうかという趣旨でございます。
○鈴木特殊関税調査室長 まず日亜鋼業というのは上場しておりまして、そのほかの3社については上場していないのですが、全て株式会社になっているものでございます。
○杉山委員 質問の趣旨は、もし有価証券報告書を適用している場合には、有価証券報告書において追加情報とか記述情報、例えば事業等のリスクとかMD&Aといったところでこの状況が記載されているのではないかと思って質問した次第でございます。有価証券報告書は法定開示書類ですので、こちらに記載があるということは監査人のチェックも入っておりますので、廉売の証拠資料としても記載しておくとよろしいかなと思って質問した次第でございます。ありがとうございました。
○鈴木特殊関税調査室長 補足で申し上げますと、まず申請書の提出に当たって、まさに有価証券報告書があるところにおいては、資料2-3の調査結果報告書の一番最後の主要証拠等目録の1というのが申請書なのですけれども、その中に証拠資料として添付され含まれておりますので、委員御指摘の情報についても含めて精査をさせていただいているところでございます。ありがとうございました。
○杉山委員 ありがとうございました。
○佐藤部会長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。オンラインの方は大丈夫ですね。特に御質問、御発言がないようでしたら、答申の取りまとめに移りたいと存じますが、よろしいですか。
それでは、答申案の配付、表示をお願いいたします。
(答申案配付、オンライン画面に表示)
○佐藤部会長 答申案はお手元に届きましたですね。また、画面にも表示をされております。この内容を御確認いただけますでしょうか。お手元の答申案につきまして御質問、御意見等ございましたら、どうぞお願いいたします。
特に御質問、御意見等がございませんようでしたら、本部会として、配付いたしました本案のとおり決定をすることといたしたいと存じますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
○佐藤部会長 御異議がございませんようですので、「大韓民国産及び中華人民共和国産溶融亜鉛めっき鉄線に対する不当廉売関税の課税」につきまして、当部会といたしまして答申案どおり決定することとし、これをもって関税・外国為替等審議会としての答申といたしたいと存じます。ありがとうございます。
続きまして、「中華人民共和国産高重合度ポリエチレンテレフタレートに対する不当廉売関税の課税期間の延長に関する調査の開始」につきまして、鈴木特殊関税調査室長より御説明をお願いいたします。
○鈴木特殊関税調査室長 それでは、資料3について御説明をさせていただきます。本件は調査の開始の御報告となりますので、本日何らかの御判断をお願いするというものではございません。
まず、1ページ目ですが、中華人民共和国産高重合度ポリエチレンテレフタレートに対しましては、平成29年12月28日から不当廉売関税が課されており、課税期間は令和4年12月27日までとなっております。高重合度ポリエチレンテレフタレートは、一般に白色のペレット状であり、主としてボトルやシートに加工され使用されています。中国からの輸入量は棒グラフのオレンジ色に当たりますが、不当廉売関税の課税以降、全く見えないほど非常に少なく、実質的に停止したと認められる状態となっております。
次に、2ページ目、調査開始の概要ですが、昨年12月3日に三井化学株式会社から、現在、不当廉売関税を課税中の中国産高重合度ポリエチレンテレフタレートに対する課税期間の延長申請がございました。申請の概要としては、不当廉売された貨物の輸入が不当廉売関税の課税期間の満了後に再発するおそれとして、中国産品の第三国への輸出価格は正常価格を下回っていること、中国の供給者は大きな余剰生産能力を有しており、その追加的な供給を吸収できる市場は存在しないことが示されておりました。また、本邦の産業に与える実質的な損害等の事実が不当廉売関税の課税期間の満了後に再発するおそれとして、中国産品の第三国への輸出価格と同一価格で本邦に輸入された場合、当該価格は国産品の国内販売価格を下回っていること、不当廉売関税の課税後も本邦産業は十分に価格転嫁ができていないことに加え、販売数量及び営業利益はそれぞれ令和元年度以降及び平成30年度以降減少を続けている等、依然として脆弱な状態であることが示されておりました。
以上のことから、調査開始のための十分な証拠があり、必要があると認められたため、本年2月10日に調査を開始することとし、その旨を官報において告示、同日公表いたしました。
最後に、3ページ目ですが、調査手続の大まかな流れを示しております。調査は原則として1年以内に終了することとされており、調査に必要な手続を進めているところでございます。
私からの説明は以上となります。ありがとうございました。
○佐藤部会長 御説明、ありがとうございました。
ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見などはおありでしょうか。
○阿部委員 ありがとうございます。本件につきましても調査を進めるということで、全く異存ございません。
一般的な意見としまして一言申し上げたいと思います。このサンセット・レビューもそうですし、先ほどの新規の調査もそうですけれども、我が国としても特殊関税の事例が少しずつ積み重なってきているかと思います。諸外国と比べますとまだ比較的件数は少なくとどまっておりますけれども、今後もWTO協定を遵守した上でということですけれども、特殊関税制度の適切な活用を進めていただきたいと思っております。
○佐藤部会長 御意見、ありがとうございました。事務局から何かレスポンスはありますか。
○鈴木特殊関税調査室長 非常にサポーティブなお言葉、ありがとうございます。頑張ります。
○佐藤部会長 事務局には頑張っていただきましょう。
○野原委員 ありがとうございます。野原です。
資料の2ページ目の青枠の下側に書いてあるとおり、不当廉売関税の課税後も本邦産業はまだまだ依然として脆弱な状態ということを書いてあります。ということは、不当廉売のせいで脆弱になっているというより、不当廉売を防ぐべく特殊関税を入れても依然として脆弱ということですから、既に別途経産省等で実施していらっしゃるのかもしれませんけれども、別途対策が必要というか、必ずしも保護するということではなく、産業を別の観点で充実させる。あるいは充実させるか否かについて検討すべきとも思います。そういった観点はこの部会の検討事項でないことは承知していますが、別途検討されていると理解すればよろしいでしょうか。
○佐藤部会長 ちょっと難しい質問ですけれども、事務局どうぞ。
○名須川製造産業局素材産業課課長補佐(経済産業省) 野原委員、ありがとうございます。私、経済産業省で有機化学品を担当します名須川と申します。
まさに御指摘のとおり、ペットの部分に関しては脱プラスチックみたいなところで風向きも強くて、廉売以外のところでもなかなか厳しい状況が続いております。もともとマテリアルのリサイクルも進めているのですけれども、ケミカルのリサイクルとかも進めながら、環境とか自然に優しいもの、サーキュラーなものとしてしっかりと強くしていきたいと思っておりますので、御指摘、ありがとうございます。引き続き頑張っていきたいと思います。
○野原委員 よろしくお願いします。
○佐藤部会長 ありがとうございました。
ほかには御発言ございますか。
特に重ねての御質問等はないようであります。
以上をもちまして、本日の特殊関税部会を終了いたします。本日は、御多用のところ御出席を賜りまして、本当にありがとうございました。
午前11時46分閉会 |