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  1. 開会
  2. 大韓民国及び中華人民共和国産水酸化カリウムに対する不当廉売関税の課税期間の延長
  3. 中華人民共和国産及び大韓民国産溶融亜鉛めっき鉄線に対する不当廉売関税の課税に関する調査の開始
  4. 閉会

出席者
特殊関税部会長 佐藤 英明 財務省 阪田局長
委員 河野 真理子 小宮審議官
古城 佳子 泉審議官
杉山 晶子 中澤総務課長
高橋 裕子 河西関税課長
田村 善之 福島参事官
根本 敏則 加藤参事官
野原 佐和子 米山監視課長
春田 雄一 小多業務課長
三石 誠司 松田調査課長
専門委員 阿部 克則 鈴木事務管理室長
国松 麻季 松田特殊関税調査室長
佐々木 伸彦 荒巻税関調査室長
末冨 純子 井田経済連携室長
藤岡 博 経済産業省 坂本製造産業局金属課企画調査官
宮島 香澄 小林製造産業局素材産業課 企画調査官
村上 秀德 辻貿易経済協力局貿易管理部特殊関税等調査室長補佐

 

本稿は、令和3年8月2日の関税・外国為替等審議会 関税分科会 特殊関税部会の議事録です。

 

午後2時00分開会(オンライン)

佐藤部会長 それでは、ただいまから関税・外国為替等審議会関税分科会特殊関税部会を開催いたします。

委員の皆様方におかれましては、大変御多用中のところ御出席をいただきまして誠にありがとうございます。

 なお、本日は、私を含めて皆様全員にオンラインで御参加をいただいております。

 本日の議事に入ります前に、まず、事務局の構成につきまして、本年7月に人事異動がありました。新たに関税局長に就任された阪田関税局長より一言御挨拶を頂戴したいと存じます。局長、どうぞよろしくお願いいたします。

阪田関税局長 この7月に関税局長を拝命しました阪田と申します。皆様、どうぞよろしくお願いします。

 委員の皆様におかれましては、本日、御多忙中のところ御出席を賜りまして誠にありがとうございます。また、日ごろから関税政策・税関行政につきまして格別の御指導、御協力を賜りまして、心より感謝申し上げます。

 私事ではございますけれども、関税局の業務に携わるのは非常に久しぶりでございまして、入省したての1年生、2年生のときに関税局配属となり、それ以来三十数年ぶりということになります。奇しくも、当時、入りたての1年生、2年生が担当するのが特殊関税でして、まだ制度もそれほど整備されていなかった中、様々な書物をひもときながら勉強したことを懐かしく思います。三十数年たって帰ってみると、特殊関税制度はよく使われており、制度として定着しているという感を強く持ちますし、特殊関税調査室という10名を超える立派な行政機構までできていて、当時の状況からすると隔世の感があります。

 前回に引き続いて今回の審議会もオンラインとなりましたが、本日は「大韓民国及び中華人民共和国産水酸化カリウムに対する不当廉売関税の課税期間の延長」を御審議いただきたく、どうぞよろしくお願いします。

佐藤部会長 阪田局長、どうもありがとうございました。

 その他の事務局の異動につきましては、お手元の座席表をもって御紹介に代えたいと存じます。

 それでは、本日の議題に入らせていただきます。本日の議題は、議事日程のとおりでございます。

最初の議題である「大韓民国及び中華人民共和国産水酸化カリウムに対する不当廉売関税の課税期間の延長」につきましては、資料1のとおり、不当廉売関税を課する期間の延長について、財務大臣から当審議会に諮問がなされております。これを受けて、本件が当部会に付託されております。したがいまして、本件につきましては、委員の皆様方に御審議いただきました後に答申の取りまとめを行いたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。

 まず、「水酸化カリウム産業の現状」について、経済産業省製造産業局素材産業課、小林企画調査官より御説明をお願いします。

小林製造産業局素材産業課企画調査官(経済産業省) 業界を所管します立場である経済産業省素材産業課企画調査官の小林と申します。

 私からは、水酸化カリウムという物質について御説明申し上げます。

 資料2-1の1ページを御覧ください。水酸化カリウムは、一般的には写真にあるような白い粉末状の固形品と、その水に融解させた無色の液体品があります。基礎的な化学品として広範な製品の使用される物質です。

 具体的な用途としましては、資料の下段にございますけれども、写真の右にあります液体石鹸の原料が挙げられます。これは水酸化カリウムに原料の一つである脂肪酸を化学的に反応させるなどして製造したもので、水に溶けやすい性質を有しております。また、そのほかにも化学肥料の原料、洗剤の原料、アルカリ電池の電溶解、写真の現像液などに幅広く使用されております。

 次に、水酸化カリウムの製法について、資料上段でございますが、1ページで御説明いたします。原料の塩化カリウムを水に溶解し、電気分解することによって水酸化カリウムを生産しております。我が国の水酸化カリウムの生産者は、AGC、大阪ソーダ、東亞合成、日本曹達の4社となっております。

 続いて、水酸化カリウムの産業について、資料2ページ目にて御説明いたします。

現状、水酸化カリウムの生産国は、中国、韓国、米国などです。平成28年の中国及び韓国産水酸化カリウムの課税措置後、中国産水酸化カリウムの輸入は停止し、韓国産水酸化カリウムの輸入は減少しましたが、令和元年には再び増加に転じ、輸入量全体の約7割を占めております。本邦産水酸化カリウムの国内販売における市場占拠率は、平成28年以降増加しておりましたが、令和元年には輸入増加の影響により減少に転じました。その一方で、輸入水酸化カリウムの市場占拠率は平成30年にかけて減少しましたが、令和元年には増加に転じております。

 先ほど申し上げたとおり、水酸化カリウムは幅広い用途に必要な基礎的な化学品です。仮に不当廉売された韓国産及び中国産の輸入が継続又は再開すれば、国内産業に必要な水酸化カリウムを輸入品に大きく依存することになり、川下産業を含めたサプライチェーン全体にも悪影響を及ぼすおそれがあります。国内生産者4社は、課税措置後も継続する不当廉売された輸入品の影響により、製造原価に見合った価格設定ができず、平成30年以降は営業利益が減少するなど、損害を受けやすい脆弱な状況にあります。

これらを踏まえると、課税措置の延長による保護の必要があると考えております。

 以上でございます。

佐藤部会長 小林企画調査官、どうもありがとうございました。

 引き続き、「大韓民国及び中華人民共和国産水酸化カリウムに対する不当廉売関税の課税期間の延長」につきまして、松田特殊関税調査室長より説明をお願いいたします。

松田特殊関税調査室長 財務省関税局で特殊関税調査室長をしております松田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、資料2-2「大韓民国及び中華人民共和国産水酸化カリウムに対する不当廉売関税の課税期間の延長」につきまして御説明申し上げます。

 まず、1ページのほうを御覧いただけますでしょうか。調査の概要でございます。

 ただいま経済産業省より説明のございました水酸化カリウムにつきましては、韓国及び中国からの輸入に対しまして、平成28年8月より不当廉売関税を課税してございます。課税期間は5年とされておりまして、今月、課税期間満了というタイミングでございます。不当廉売関税課税期間満了の1年前までに課税期間の延長を求める申請ができる制度となってございます。この制度を利用いたしまして、昨年7月、カリ電解工業会のほうから課税期間の延長を求める申請がございまして、これを受け、翌8月に調査を開始しております。

 1ページの中段、調査対象貨物の内容は、経済産業省の説明と重複いたしますので割愛させていただきまして、1ページの下段、不当廉売関税の課税期間延長の要件でございます。確認まででございますが、延長の要件、関税定率法の規定によりまして、課税期間満了後、不当廉売輸入及びその不当廉売輸入による本邦産業への損害が継続又は再発するおそれがある場合とされてございます。

 次に、2ページのほうを御覧ください。これまでの調査の流れを整理したものでございます。

 昨年7月、カリ電解工業会からの課税期間延長を求める申請がございました。この申請の内容でございますけれども、「※」にございますとおり、関税定率法8条26項に基づく課税期間の延長、いわゆる単純延長を求める申請でございます。したがいまして、同じくこの8条21項に基づく税率の変更を求めるものではないというものでございます。

 申請を受けまして、翌8月より調査開始、さらに翌9月には特殊関税部会のほうに調査開始の御報告をさせていただいております。以降、数か月にわたり調査分析をいたしました。そして、本年5月には、それまでの調査結果を整理した内容を重要事実として全ての利害関係者に開示いたしました。これに対しまして、韓国の供給者より幾つか反論がございまして、その反論に対する当局の見解も含めて、資料2-3のとおり調査結果報告書を取りまとめ、本日の部会での御審議をお願いしているものでございます。

 続いて、3ページのほうを御覧いただけますでしょうか。以降は、今回の調査で判明した事実でございます。

 まず、3ページですが、韓国からの不当廉売された貨物の輸入の継続のおそれでございます。韓国からは、不当廉売関税の課税以降、かなり減少はしておりますけれども、現在でも輸入が続いてございます。そして、その日本への輸出価格と正常価格を比較したところ、輸出価格のほうが低く、その差額率は表の1にございますとおり66.51%と算出されております。

 次に、不当廉売輸入の継続のおそれ、中段の囲みでございますけれども、韓国の供給者には相当程度の余剰生産能力があり、将来は増産が見込まれること、また、この余剰生産能力を吸収できる市場は、韓国はもとより海外にも存在しないことを資料などにより確認をしております。

 これらによりまして、仮に課税期間が満了となれば不当廉売輸入が継続するおそれがあると認定をさせていただいております。

 続いて、4ページのほうを御覧いただけますでしょうか。こちらは、中国からの不当廉売された貨物の輸入の再発のおそれでございます。

 中国からは、不当廉売関税の課税以降、令和元年まで輸入は停止しております。一方で、中国から第三国への輸出はございまして、その輸出価格と正常価格を比較したところ、輸出価格のほうが低く、差額率は表2のとおり51.02%と算出されました。

 次に、不当廉売輸入の再発のおそれでございますけれども、中段でございます。中国の供給者につきましても、相当程度の余剰生産能力があること、将来は増産が見込まれること、また、これを吸収できる市場は中国はもとより海外にも存在しないことを資料により確認してございます。

これらによりまして、仮に課税期間が満了となれば不当廉売輸入が再発するおそれがあるというふうに認定をしてございます。

 次に、5ページのほうに進ませていただきます。本邦産業の損害の継続又は再発のおそれでございます。

 上段の囲み、右のほうの表3に、本邦産業の状況に関します各種の数字を、平成27年を100とした指数で掲載してございます。まず、表3の一番上、(A)でございますけれども、平成27年以降、国内需要量は緩やかに上昇してございます。次に、その下の(B)中国・韓国からの輸入でございますけれども、平成28年からの不当廉売関税の課税以降、平成30年まで減少、他方、令和元年には増加をしております。その下の(C)国産品の販売量でございますけれども、これは平成27年以降緩やかに上昇、また、その下の国産品の市場占拠率(D)でございますけれども、平成30年までは緩やかに増大いたしました。他方、この国産品の市場占拠率、令和元年には減少に転じております。

 本邦産業は、韓国産品を引き合いに、値上げ幅の圧縮や値下げを要求され、平成30年以降、製造原価の上昇を販売価格に反映できず、営業利益が低下しております。表3の下から2行目、製造価格(F)を御覧いただきますと、平成30年から令和元年にかけて87から96に増加、一方、その上の(E)販売価格でございますけれども、同じ時期、95から98と、製造原価の上昇に見合った販売価格の上昇が抑えられているということでございます。こうしたことから、一番下、営業利益(G)でございますけれども、同じ時期、平成30年から令和元年にかけて191から123へ大幅に減少しております。このような状況から、本邦産業は損害を受けやすい脆弱な状況にあると言えるところでございます。

5ページの中段のほうに進みます。仮に課税期間が満了した場合でございますが、この場合には、1つ目、両国からの不当廉売輸入は増加又は再発、2つ目、国内生産者は国産品の値下げを強いられ、場合によっては製造原価割れのおそれもあるところでございます。

以上のことから、結論でございますけれども、現行の不当廉売関税が満了した場合、本邦産業の損害が継続し、又は再発するおそれがあると認定をしたところでございます。

次に、資料の6ページのほうに進ませていただきます。調査を踏まえた対応でございます。さきに若干触れましたが、本年5月26日、それまでの調査により判明した事実を含む重要事実を全ての利害関係者に開示しております。これに対しまして幾つか意見がございました。国内の供給者からは当局の調査を支持する意見がまいりましたが、韓国の供給者からは幾つか反論がございました。

続く7ページのほうを御覧ください。上段に韓国からの主な反論を整理してございます。反論の内容自体は、この記載のとおりでございます。また、それに対します当局の見解は、その右側、当局見解として記載をさせていただいております。これらの反論の内容を検証・確認したところ、重要事実を変更する必要は認められなかったところでございます。

以上、これらの調査によって判明した事実によりまして、最終決定の案でございますけれども、韓国・中国産の水酸化カリウムに対する不当廉売関税の課税期間を延長することが適当。期間は協定・法令で認められる5年間、不当廉売関税率は現行どおりとさせていただいております。

つきましては、今般、この当局の案につきまして御審議をお願いする次第であります。

 私のほうからは以上でございます。

佐藤部会長 松田室長、どうもありがとうございました。

ただいまの説明につきまして、御質問、御意見等はございますでしょうか。委員の皆様、どうぞお願いいたします。

どなたからも挙手のない様子です。重ねてお伺いしますが、御質問、御意見はございませんでしょうか。

それでは、特に御質問、御意見がございませんようでしたら、答申の取りまとめを行いたいと存じます。

(答申案、オンライン画面に表示)

佐藤部会長 ただいま、答申案が画面に映っております。内容を御確認いただきたいと存じます。

この答申案につきまして、御質問、御意見などはおありでしょうか。

特に御質問、御意見がございませんようですので、本部会として、この案のとおりに決定することとしたいと存じますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

佐藤部会長 ありがとうございます。

それでは、御異議がありませんようですので、大韓民国及び中華人民共和国産水酸化カリウムに対する不当廉売関税の課税期間の延長につきまして、当部会といたしまして答申案どおり決定することとし、これをもって関税・外国為替等審議会としての答申といたしたいと存じます。ありがとうございました。

続きまして、2番目の議題である「中華人民共和国産及び大韓民国産溶融亜鉛めっき鉄線に対する不当廉売関税の課税に関する調査の開始」につきまして、松田特殊関税調査室長よりお願いをいたします。

松田特殊関税調査室長 よろしくお願いいたします。それでは、私のほうから資料3につきまして説明をさせていただきます。中華人民共和国産及び大韓民国産溶融亜鉛めっき鉄線について調査を開始させていただいた、その御報告となります。

1ページのほうを御覧いただけますでしょうか。本件、課税申請でございますが、本年の3月31日、日本国内で対象産品を生産しております企業4社から申請があったものでございます。これら4社で国内生産量の50%超を占めているということでございます。

溶融亜鉛めっき鉄線は、鉄線の表面に高温で溶かした亜鉛をめっきしたもので、主な用途としてはフェンスなどの金網類、有刺鉄線、あるいはパルプなどのバルクの貨物を結束させる結束線に用いられる物資ということでございます。

申請のありました対象国ですが、韓国と中国でございます。両国からの溶融亜鉛めっき鉄線の輸入状況は、こちら1ページの下段のほうに示させていただいております。左が輸入量、右が輸入額でございます。ピンクが中国からの輸入、水色が韓国からの輸入、緑がその他でございます。平成28年度から令和元年度にかけて、この中国・韓国からの輸入が増えていることを見ていただけるかと思います。足元、令和2年度につきましては前年度比で減少しておりますが、このピンクと水色の合計、中国・韓国からの輸入ですけれども、輸入量全体における割合ですが、80%後半と高推移で動いております。

続いて、2ページのほうを御覧いただけますでしょうか。不当廉売関税の課税の求めを受けて調査を開始するに当たりましては、不当廉売された貨物が本邦に輸入されている事実、及びその輸入が本邦の産業に実質的な損害を与えている事実という2つの要件について、十分な証拠が示されていることが必要となります。

まず、1点目、不当廉売された貨物が本邦に輸入されている事実につきましては、申請書の内容によりますと、まず、中国につきまして、本邦への輸出価格は正常価格よりも低く、不当廉売差額率は25~35%、また、韓国につきましても申請者が算出した韓国から本邦への輸出価格は正常価格よりも低く、不当廉売差額率は20~30%と算出されております。

次に、2つ目の要件でございます、不当廉売輸入が本邦の産業に実質的な損害を与えている事実につきましては、この溶融亜鉛めっき鉄線の輸入量につきまして、矢印の1つ目でございますけれども、平成28年度から令和元年度にかけまして、中国につきましては2万1,008トンから3万6,636トンに大幅に増加、また、韓国につきましては8,889トンから1万1,235トンへ増大してございます。

さらに、矢印の2つ目でございますが、中国・韓国産の溶融亜鉛めっき鉄線の日本国内におきます販売価格は、国産品の国内販売価格を常に下回っておりまして、その結果、国内の需要者が国産品から輸入品にそのニーズを切り替えたことで、国産品の販売量が著しく減少、また、本邦の産業は原材料の価格の上昇に見合った価格設定を妨げられ、営業利益が減少するなど、実質的な損害が生じているということでございます。

以上のことから、調査を開始するための要件は整っていると判断されましたので、中国産・韓国産の溶融亜鉛めっき鉄線に対する不当廉売関税の課税に関する調査を6月14日に開始することといたしまして、その旨を官報において告示、同日公表いたしました。

次のページ、3ページを御覧ください。調査手続の今後の大まかな流れを示してございます。6月14日に調査を開始いたしまして、利害関係者に対して質問状等を送付してございます。幾つか回答を受領しており、また、日頃様々な問合わせを受けております。調査は原則として1年以内に終了することとされておりまして、今後、証拠の提出、意見の表明、必要に応じた現地調査というふうに調査手続を進めていくこととなります。

私のほうからは以上でございます。ありがとうございました。

佐藤部会長 松田室長、どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明につきまして、委員の方から御質問、御意見などはございませんでしょうか。どうぞよろしくお願いをいたします。

それでは、特に御質問等はないようですので、以上をもちまして本日の特殊関税部会を終了いたします。

本日は、御多用のところ御出席をくださいまして誠にありがとうございました。

以上です。

午後2時25分閉会