このページの本文へ移動

関税・外国為替等審議会 関税分科会(令和7年11月26日開催)議事録

  1. 開会
  2. 急増する少額輸入貨物への対応に関するワーキンググループ中間とりまとめ
  3. 令和8年度関税改正検討項目②
    - 保税業者に対する業務改善命令の創設等
    - 課税価格決定の特例の廃止
    - 暫定税率等の適用期限の検討
    - 暫定的減免税制度の適用期限の到来
  4. 閉会

出席者
関税分科会長 木村 福成 財務省 寺岡関税局長
委員 内山 智裕 中澤審議官
木村 旬 大関総務課長
国松 麻季 三浦関税課長
古城 佳子 高橋参事官
杉山 晶子 西野参事官
高橋 裕子 井田監視課長
田邊 國昭 藤中業務課長
田村 善之 野田調査課長
樽井 功 坂本事務管理室長
野原 佐和子 近田特殊関税調査室長
山口 博臣 中尾原産地規則室長
臨時委員 大橋 弘 香川税関調査室長
清水 順子 平田経済連携室長
専門委員 河野 真理子 金山知的財産調査室長
佐藤 英明 菊地理財局総務課たばこ塩事業室長
末冨 純子 経済産業省 谷査恵子通商政策局国際経済部通商交渉調整官
松島 浩道 蝶野製造産業局素材産業課課長補佐
若江 雅子 農林水産省 近藤信輸出・国際局国際経済課長
飯塚農産局地域作物課課長補佐

 

午前10時00分開会

木村(福)分科会長 それでは、そろそろ時間が参りましたので、ただいまから関税・外国為替等審議会関税分科会を開催いたします。

 委員の皆様には、御多用のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。

 それでは、本日の議事に入らせていただきたいと思います。

 本日の議題は、お手元の議事日程のとおりでございます。具体的には「急増する少額輸入貨物への対応に関するワーキンググループ中間とりまとめ」について、ワーキンググループの田邊座長からの報告を受け、審議を行いたいと思います。

 次に、「令和8年度関税改正検討項目」として、「保税業者に対する業務改善命令の創設等」と「課税価格決定の特例の廃止」、次いで「暫定税率等の適用期限の検討」、「暫定的減免税制度の適用期限の到来」について順次財務省から説明を受け、審議を行いたいと思います。

 それでは、田邊委員より、「急増する少額輸入貨物への対応に関するワーキンググループ中間とりまとめ」に係る報告を受けたいと思います。よろしくお願いいたします。

田邊委員 「急増する少額輸入貨物への対応に関するワーキンググループの中間とりまとめ」について、御説明申し上げます。

 資料1-1を御覧いただきたいと思います。

 スライドの2ページをお願いいたします。中間とりまとめの全体像がここに示されております。まずは、こちらで議論の流れを御説明いたしたいと思います。

 本ワーキンググループは、少額貨物、特にBtoCによる輸入の増大によって生じている諸課題に対しまして、越境ECの発展を阻害しない形で多岐にわたる課題への対応を検討するため、立ち上げられたものでございます。

 具体的な課題といたしましては、水際取締りでは、税関は、保税業者・通関業者の適切な業務運営を前提として、輸入申告情報等を用いた審査、それから検査対象の選定を行っております。一部の保税業者、それから通関業者の不適切な業務運営や、BtoCによる貨物の輸入申告情報が不足しているということによって、税関のほうが知的侵害物品等の摘発を十分に行えていないというおそれがございます。これに対しまして、社会にもたらされる危険、それから不安を払拭するために対応を検討したところでございます。

 課税制度におきましては、越境ECサイトを利用した消費者への直送貨物が増加していることによって、国内外の事業者間で競争の不均衡が顕在化していること、さらには、経済連携協定等の拡大によって納税事務が複雑化しているといった課題が生じております。

 これに対して、経済的な歪みの解消を図るとともに、通関実務上の相互の影響を考慮した輸入貨物への課税制度の全体的な見直しの検討を行ったところでございます。このほか、国際郵便、それから通関業者の諸課題、税関の体制についても議論を行いました。

 以下では、具体的な対応を課題、それから制度に沿って御説明申し上げます。

 スライドの5ページをお願いいたします。まずは、水際取締りに関する3つの論点について御説明いたします。

 1つ目は、保税業者、それから通関業者の業務運営についてです。

 輸入通関における事業者の役割の重要性を踏まえますと、軽微な不正が確認された段階で適切な業務運営を促進すること、さらには適正な業務運営に向けた自発的な取組を支援することが必要となってまいります。

 この対応といたしまして、税関の保税部門、それから通関業監督官部門の体制を整備する。2つ目といたしまして、保税業者に対する「業務の適正性の確保を促す」行政処分の新設をする。3つ目といたしまして、適正な業務運営の確保に取り組む事業者に対しましてインセンティブを導入すること。以上の3つが必要と考えられます。

 スライドの6ページをお願いいたします。2つ目は、簡易・迅速な通関手続です。

 輸入通関の簡易性・迅速性を提供するマニフェスト申告・予備審査制につきましては、一部の通関業者による不正事案が発生しており、また、AEO制度の認定の取得、それから貨物の事前情報の提供といった取組を行っている者は、そうでない者に対しまして、輸入通関における簡易性、それから迅速性を享受できる現状に不公平感を抱いているところでございます。

 この対策といたしまして、まず第1に、不適切な申告を繰り返し行う等の通関業者に対して、簡易・迅速な通関手続を利用制限すること。2番目といたしまして、事前の貨物の情報提供等を要件といたしまして、簡易な通関手続を航空通販貨物へこれを拡大すること。以上の2つが必要と考えられます。

 スライドの7ページをお願いいたします。3つ目は、BtoCによる貨物における情報です。

 BtoCにおける輸入では、個人輸入者からの貨物の情報を入手することが困難であるため、正確・十分な貨物の情報というものが海外の販売者等から通関業者に流れる仕組みというものを構築する必要がございます。

 この対応といたしまして、まず第1に、関税局・税関やプラットフォーム事業者から販売者に対する貨物情報の提供の重要性を周知すること。2番目といたしまして、関税局・税関と国内外のプラットフォーム事業者の間で連携を拡大すること。3番目といたしまして、関税局・税関が、プラットフォーム事業者、それから販売者の保有する情報を入手・処理できる体制を検討すること。以上の3つが必要と考えられます。

 スライドの10ページをお願いいたします。次に、4つの課税制度における論点について御説明申し上げます。

 1つ目は、消費税に係る少額免税制度です。

 見直しの方向性は、政府税制調査会で議論が行われてきたものでございますけれども、EU、それから豪州の事例を参考とした場合、プラットフォーム等を通じて購入される少額の通販貨物については、課税時期に販売時と輸入申告時に行うという2つのパターンが生ずることが想定されます。このため、通関業者及び税関が輸入申告時に課税される貨物か否かを識別できる必要がございます。

 具体的な対応といたしましては、まず第1に、輸入申告項目に「プラットフォーム事業者等の番号」、それから「販売時における課税の有無」を追加すること。2番目として、システムへ与える影響を踏まえまして、準備期間を十分に確保すること。3番目として、通関業者・輸入者に向けた十分な事前説明を実施すること。以上の3つが必要と考えられます。また、国際郵便に関しましても、一般貨物と同様の措置を取ることも重要でございます。

 スライドの11ページをお願いいたします。2つ目は、関税に係る少額免税制度でございます。

 多数の1万円以下の貨物で関税が免税されているということによりまして、国内外の事業者間の競争上の不均衡が生じている、また、分割発送・低価格申告等を誘発するといった課題が顕在化する可能性がございます。

 1万円という少額免税基準の引下げ・廃止を行うことは、これらの課題が解消するということにはつながりますけれども、一方で、通関業者の申告納税業務、それから税関の賦課課税業務が新たに発生して、迅速な通関の実施に影響を及ぼすというおそれがございます。

 これに対しまして、逆に基準を引き上げるということは、課税対象貨物が減少するため、貿易の円滑化の促進につながる一方、世界的な少額免税制度を廃止するという潮流や、それから、日本における消費税の免税制度の見直しの方向性と整合しないという懸念が生じます。

 したがいまして、当面は納税事務全体の見直しを行いつつ、本制度に係る検討を継続するということが適当と考えられます。こうした納税事務の見直しの1つに、後ほど御説明申し上げます簡易税率の見直しが考えられます。

 スライドの12ページをお願いいたします。3つ目は、課税価格決定の特例です。

 本制度は、当時まだ珍しかった海外旅行のお土産品等を念頭といたしまして、40年以上も前に導入されたものですけれども、現在の適用実態を踏まえますと、個人が越境ECサイトで購入する通販貨物に主として適用されていると考えられます。

 また、国内消費者に商品を直送する国外事業者と、商業貨物として商品を輸入して、これを国内消費者に販売する国内小売業者との間で競争の不均衡が顕在しているということに加えまして、輸入者が国内での再販売・転売を目的として本特例を不正に利用しているという事例も発生しているところでございます。

 以上を踏まえますと、本特例は廃止することが適当と考えられます。

 スライドの13ページをお願いいたします。4つ目は、少額輸入貨物に係る簡易税率です。

 本制度は、課税価格の合計額が20万円以下の貨物につきまして、品目を大別した7つの税率区分から該当する区分の関税率を適用するということを可能とするものでございます。しかしながら、本税率を適用した申告というのは全申告の2%と非常に低く、その背景には、数多くのEPA等が発効されていることによりまして、簡易税率よりもEPA税率の税率水準が低くなったということがあると考えられます。

 このため、現在のEPA税率等を踏まえた簡易税率の水準を検討すること、さらには、適用除外品目の見直し等を行って簡易税率をより使いやすくすることで、納税事務の負担軽減を図ることが必要であると考えられます。

 スライドの15ページをお願いいたします。ここからは、水際取締り、課税制度両面に関連する事項を御説明いたします。

 まず、国際郵便についてでございます。

 一般貨物に対する規制というものを強化いたしますと、不適正な者が国際郵便をより利用するようになるのではないかといった懸念、さらには、越境ECを利用した国際郵便物は、消費者の意思で購入した商品が送られているため、賦課課税ではなく申告納税とすることが可能ではないかという御指摘がございました。

 これらにつきましては、財務省関税局、それから総務省、さらには日本郵便の間で越境ECを利用した国際郵便の課題というものを共有いたしまして、その対応を検討するということが必要と考えられます。

 なお、特に適正かつ公平な徴収の観点から、一般貨物と差異が生じないよう引き続き税関の体制を確保していくということも重要でございます。

 スライドの16ページをお願いいたします。続きまして、通関業者を取り巻く環境でございます。

 国際物流で重要な役割を担う通関業者におきまして、労務費の通関業務料金への転嫁というものが進んでおらず、適切な収入を確保できていないという可能性がございます。また、荷主の要請によりまして、やむなく立替払いを行っているものもございます。

 こうした状況を踏まえますと、労務費等の通関業務料金への適切な転嫁が可能となるような環境を整備すること、さらには、荷主が優越的地位を利用して不当に立替払いを行わせるというようなことは、不公正な取引につながるおそれがある旨を周知するということが引き続き行われることが望ましいと考えられます。

 スライドの17ページをお願いいたします。

 最後に、税関の体制整備でございます。越境ECの拡大に伴う輸入増大への対応に当たりましては、税関の体制や通関業務の在り方を見直すこと、さらには、先端技術等を活用した業務を効率化すること等が欠かせません。特に、越境EC貨物の特性に着目した通関手続の枠組み等を検討することや、さらには、先端技術を活用した検査機器等の円滑な導入を図るといった「スマート税関構想2020」関連の施策を一層進展させることが望ましいと考えられます。

 以上の取組を消費者、それから事業者の理解を得ながら進めていくことによって、財務省関税局、税関が、3つの与えられた社会的な要請というものを実現していくという姿を期待しております。

 私からの説明は以上でございます。

木村(福)分科会長 どうもありがとうございます。ワーキンググループの中間とりまとめを御説明いただきました。

 ワーキンググループにおかれましては、大変詳細にわたる御検討、御議論をいただいたものと承知しております。田邊委員をはじめとする皆様、どうもありがとうございました。

 それでは、ただいまの御報告につきまして、御質問・御意見等をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

 木村委員、よろしくお願いいたします。

木村(旬)委員 田邊先生、御説明ありがとうございました。

 私もワーキンググループのメンバーだったんですけれども、とりまとめの基本的な方向性に関しては賛成いたします。経済のデジタル化という構造変化に伴って越境ECが急拡大して、それに伴う様々な諸課題が生じていることから、水際取締りと課税制度という2つの大きな柱に関して、とりまとめの内容に沿った見直しを進めることが必要だと考えております。

 その上でのコメントなんですが、基本、国民の理解を前提に進めるというのは非常に大事なことだと思っています。特に、課税制度の見直しに伴って、中間とりまとめの中にも書いていますけれども、消費者にとっては一定の負担増が生じることになり、特に安い輸入品を多く購入している人たちからは懸念の声が出てくることも考えられないことではないということで、特に物価高で国民の生活が苦しいだけに、こうした負担の増加を今回の見直し案が説得できる内容であるということが、このとりまとめで求められているポイントではないかと思っております。

 その意味で、とりまとめの概要をまとめ、その概要の2ページ、「全体像」を作成されて、見直しの要点を分かりやすくまとめて書いたというのは、国民の理解を得る上でも非常によい試みだったと思います。

 その上であえて申し上げれば、税制上過度に優遇された輸入品が急増すれば、同じ品目を生産する国内企業の製品開発能力を損なって、消費者にもマイナスになるかもしれないという趣旨のようなことを今後も説明していくことがあってもいいのではないかと思いました。

 とりまとめには、小売業者同士のいわゆる競争上の不均衡という課題は記されていて、理論的にはこれでおおむね尽くされているのかもしれませんけど、デフレ時代に慣れた消費者から見れば、ならば日本メーカーも安くつくるべきじゃないかという声も出るかもしれません。しかし、デフレ時代のようなコストカット競争ではなくて、インフレ時代になると、適正なプライシングによって付加価値を増した製品が開発されて、消費者もより優れた製品を購入できると。

 それは、最終的に日本経済の全体の豊かさが増すということで、価格が上がってもそのほうが最終的には国民生活の向上にも資するのではないかという、そうしたニュアンスがにじむような説明、これは御当局のほうにかかってくるのかもしれませんけど、とりまとめの最終、第5章にも、今後、当局のほうで積極的に発信していくことが求められるというのが書いてあったと思いますけれども、そういうような説明がこれからあればいいかなというふうには思いました。以上です。

木村(福)分科会長 どうもありがとうございます。

 何かお答えになりますか。よろしいですか。よろしくお願いします。

藤中業務課長 田邊座長、そして木村委員、御説明と御指摘ありがとうございます。木村委員からまさに御指摘いただいたように、これを実施していくとともに国民にご理解いただけるような環境整備をしっかり努めてまいりたいと思いますありがとうございます。

木村(福)分科会長 どうもありがとうございます。

田邊委員 御指摘ありがとうございました。まさにそのとおりだと思います。この中間とりまとめに当たりましては、水際対策というものと関税の構造を変えていくという2つの対応を考えてきましたけれども、それを展開するためには、木村委員がおっしゃられましたように、まさに国民の理解ということが不可欠になってくると思います。今後、何年かかけてそういう関税体制を組む際には関税局のPRの努力がまさに不可欠であり、それを私も望んでいるところでございます。以上です。

木村(福)分科会長 どうもありがとうございます。

 では、続きまして、オンライン参加の清水委員、お願いできますか。

清水委員 御説明ありがとうございました。たまたまこの分科会でこの問題を取り上げるという話が出たその前に、ちょうどマスコミからどう思うか意見を求められたことがございました。そういう点では、非常に注目されている問題だと思います。

 今回の中間とりまとめで非常に丁寧に御説明はいただきましたが、これを国民に向けて発表するのであれば、どういった点が重要なポイントとなるのかについて明確に伝える必要があります。木村委員もおっしゃっていましたように、今まで安く海外から購入されたものに課税されてしまうというようなマイナスのイメージを与えるのではなく、きっちり不正を取り締まる、危険を取り締まる、消費者をリスクから守る、さらに日本国内の業者を守る、というような目的を前面に出した上で、今までの古い制度を見直していくということが伝わるように、わかりやすくアピールするということが私は非常に重要だと思っております。その点について何か御意見がありましたら、よろしくお願いいたします。

木村(福)分科会長 ありがとうございます。何かお答えになりますか。

藤中業務課長 清水委員、コメントをありがとうございます。業務課長の藤中です。

 まさに御指摘いただいたように、間違っても増税のためにやっているとか、そういうことではなくて、今回、水際取締り面、課税面でワーキンググループで御意見をいただいた目的は、全体像の一番下に書いておりますけれども、安全・安心な社会の実現、適正かつ公平な徴収と貿易の円滑化という3つの社会的要請の実現と、それを通じて越境ECの発展と、そして消費者の安全性・事業者の公平性、こうしたものを目的として様々な対応を行っていく。こういう目的を分かりやすく引き続き当局からも発信しつつ、求められる対応を着実に行っていきたいと思います。

 ありがとうございます。

木村(福)分科会長 どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

 河野委員、どうぞお願いします。

河野委員 1つは、皆様のおっしゃるように、国民への説明というのもとても大事だと思いますけれども、今、藤中課長が読み上げられた2ページの一番下の行の越境ECの発展ということも、今後もいかに合理的にこの制度を利用する一方で、社会正義として税をきちんと払うという2つの要請を満たす方法で、新たな商売の在り方を促進できるような施策を取っていただけるとありがたいと思います。ありがとうございます。

木村(福)分科会長 どうもありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。――よろしいでしょうか。

 大変大切な御指摘をいただきました。どういう目的でやるのかということをしっかり分かっていただけるようなプレゼンテーションということだと思います。お手当てのほうをよろしくお願いいたします。

 それでは、次に進ませていただいてよろしいでしょうか。ありがとうございました。

 次の議題ですね。「令和8年度関税改正検討項目」ということで、まず最初に、井田監視課長より、「保税業者に対する業務改善命令の創設等」について、説明を受けたいと思います。よろしくお願いします。

井田監視課長 監視課長、井田でございます。

 資料2-1に沿って、「保税業者に対する業務改善命令の創設等」につきまして御説明申し上げます。

 資料の1ページ目を御覧ください。改正の背景について御説明申し上げます。

 関税法上、外国貨物は原則として保税地域以外の場所に置くことができないとされております。言い換えれば、外国貨物は保税地域に置くことが原則であり、税関長から保税地域の許可を受けるためには、その許可を受けようとする者が保税地域の業務を遂行するのに十分な能力を有していること等が要件とされております。

 保税制度は、外国貨物を税関の監督下である保税地域に置くことによって、不正薬物・銃器等の社会悪物品の国内への流入防止や、関税等の適正な徴収の確保という社会的要請に応えることを目的としておりますので、税関長から保税地域の許可等を受ける保税業者は、適正かつ円滑な国際物流を実現するためにも、適正に貨物の管理を行う重要な責務を負っております。

 近年、港湾・空港分野における国際競争力強化やアートフェア等の開催等、保税制度の活用に係るニーズが多様化しており、保税制度の適正な運用の一翼を担う保税業者の役割が高まっております。また、越境ECの拡大に伴い輸入件数が急増している中、その役割は社会的により一層重要となっております。

 しかしながら、特に通販貨物を取り扱う保税業者において、不適正な貨物管理が疑われる事案等が散見されております。例えば、輸入許可を受けていない貨物を保税地域から搬出、知的財産侵害疑義物品を輸入許可済貨物と誤認して搬出、保税地域内で従業者による申告外物品の抜き取り等、保税業者による自主的な貨物管理を前提とした制度への信頼を揺るがす事態が起こっております。

 このような不正事案の発生は、我が国の安全・安心を脅かしかねない喫緊の課題であると考えており、保税業者の適正な業務運営の確保を通じて、引き続き社会的要請に応えていくため、その対策を講じることが急務となっております。

 こうした状況を踏まえ、改正項目として大きく2点検討しております。

 資料2ページ目を御覧ください。2点の改正項目、具体的には、保税業者に対する業務改善命令等の創設と保税地域から貨物を搬出する際の確認義務の創設について、それぞれ現行制度の概要と課題を御説明いたします。

 まず、1点目の業務改善命令等の創設は、資料(1)の部分でございます。現状、税関による保税業者に対する監督等は、主に2つの方法により行われています。1つ目は、保税業者は通達の規定に基づき、適正な貨物管理を行うための手順等を規定した社内管理規定を定めることが求められています。

 そして、税関は、巡回や検査を行うほか、保税業者の業務が社内管理規定に則って適正に履行されているかどうかの確認等を行っております。また、その確認等の結果に応じて、保税業者の業務について改善すべき点があれば、改善を促すための助言・指導を行っております。次に、2つ目は、より厳しいものとして、保税業者が関税法に違反した場合等には、一定期間の貨物の搬入等の停止や保税地域の許可の取消しの行政処分を行っております。

 このように、現状2つの方法により監督等を行っていますが、一部の保税業者において、社内管理規定に従わずに業務を行っている状況が散見されており、これは、社内管理規定を定めることが通達の規定であり、法令に直接規定されたものでないことに起因している可能性があると考えております。

 また、先ほど申し上げた助言・指導は、関税法の規定に違反する行為、すなわち非違を防止する観点で行っておりますが、税関から保税業者に対して助言・指導を行ったものの、非違が繰り返される状況も散見されており、その効果には一定の限界があるものと考えています。他方で、貨物の搬入停止等の行政処分は、保税業者の営業上の利益を喪失させるものであり、いたずらに行うことは過酷に失する場合もあります。

 このように、現状の税関による保税業者に対する監督等は、非違を防止する効果として一定の限界がある「助言・指導」、保税業者にとって過酷な「行政処分」という両極端なものとなっており、より実効性のあるきめ細やかなものとすることが望ましいと考えております。

 次に、2点目の改正項目である保税地域から貨物を搬出する際の確認義務の創設について、現行制度の概要と課題を御説明します。

 資料(2)の部分になります。現状、貨物が保税地域から国内へ不正に流入することを防止する観点から、保税業者に対して、保税地域から貨物を搬出する際に自主的な措置を実施することを通達の規定で求めております。具体的には、輸入者等が保税業者に対して提示する輸入許可書等と保税地域から搬出しようとする貨物の対査を行い、貨物の異常の有無等の確認を実施することを保税業者に対して求めております。

 しかしながら、一部の保税業者において、貨物の引取りを急ぐ顧客からの要請を優先し、保税地域から貨物を搬出する際の確認を適正に行わず、輸入の許可を受けていない貨物を搬出したことが疑われる事案が発生しており、これは、貨物搬出時の確認は通達の規定であり、法令で義務付けられていないことに起因する可能性があると考えております。保税業者が貨物搬出時の確認を怠った結果、輸入してはならない貨物等が保税地域から国内へ不正に流入した場合には、我が国に与える影響は甚大です。

 ただいま御説明した改正項目2点について、これら課題に対する改正の方向性としまして、資料下部にございますとおり、保税地域において適正な貨物管理を行うための体制・手順等を規定した規則を定めることを法定化し、保税業者に対する業務改善命令等及び貨物搬出時の確認義務等を新設することが適当ではないかと考えております。

 資料3ページ目を御覧ください。改正のイメージを図で示しております。上部の矢印は、適正な貨物管理のために保税業者において求められる責務、下側の矢印は、税関による保税業者に対する監督等を示しており、オレンジ色の部分が改正により新たに追加されるものです。

 現状、一部の保税業者において社内管理規定に従わずに業務を行っている状況が散見されておりますが、貨物管理に係る規則を定めることが法定化されることで、保税業者において規則に則ったこれまで以上に適正な貨物管理が期待できると考えております。

 また、現状の税関による保税業者に対する監督等は、助言・指導と貨物の搬入停止等といったものとなっておりますが、これらの間に位置付ける措置、具体的には、規則に定められた業務等の改善を命ずる処分、いわゆる業務改善命令を新設することで、保税業者による不正事案を確認した場合に、例えば、まず改善を促すための助言・指導を行い、その効果が見受けられなかったときは業務の改善等を命じ、その業務改善命令に違反した場合には、貨物の搬入停止等の処分や罰則の適用が可能となります。これにより、保税業者の改善状況に応じたより実効性のあるきめ細やかな対応ができるようになり、不正事案の再発防止につながるものと考えております。

 さらに、軽微な不正が確認された段階で業務改善命令を行い、それにより保税業者の業務が改善されることで、結果的に保税業者にとって過酷な貨物の搬入停止等の行政処分に至ることなく、保税業者の資質が向上するという効果も期待されます。この結果、保税業者のみならず、保税業者を利用する輸入者等の利便にもつながり、もって国際物流の円滑化への貢献にも資するものと考えております。

 最後に、貨物搬出時の確認義務についても、この義務を怠った場合には、法令違反として貨物の搬入停止等の行政処分や、情状が悪質な場合には罰則の適用につなげることが可能となり、これまで以上に保税業者による保税搬出時の確認が適正に履行される効果が期待され、輸入許可を受けていない貨物の不正な国内流入の防止等につながると考えております。

 また、保税業者がこのような確認義務を法令上負っていることが公に知られることにより、貨物の引取りを急ぐ顧客や荷主に対しても、より毅然とした説明をすることが可能となることから、もって、国際物流の健全化にもつながると考えております。

 こうした一連の改正によって、引き続き保税業者による自主的な貨物管理を前提とした制度の下で、保税業者の資質の向上を図りつつ、保税業者の適正な業務運営の確保を通じて、不正薬物・銃器等の社会悪物品の国内への流入防止や、関税等の適正な徴収の確保という社会的要請に応えていくことが可能となるものと考えております。

 資料4ページ目は、保税地域の数等に係る参考資料でございます。御覧いただければと思います。

 保税業者に対する業務改善命令の創設等についての説明は以上でございます。ありがとうございました。

木村(福)分科会長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御説明につきまして、質問・意見等をいただきたいと思います。いかがでしょうか。佐藤委員、お願いします。

佐藤委員 御説明ありがとうございました。業務改善命令の新設は、先ほどのワーキンググループの中間とりまとめにも提案があったものであり、適切と考えます。貨物搬出時の確認義務の新設につきましても、ただいまの御説明でその重要性を確認いたしました。これも賛成です。

 1点質問がございますのは、今回、法定化しようと御提案のある貨物管理に係る規則の定めですが、その間にある規則に沿った貨物管理は法律上の義務なのか、そうでないのかということについて教えていただければ幸いです。

井田監視課長 井田でございます。御質問ありがとうございます。

 説明の趣旨について賛同いただけたということで、大変ありがとうございます。

 御質問がありました貨物の適正な管理に関しましては、法律で適正な管理をすることになっておりまして、そのための社内管理の規則を定めていただきまして、それを守っていただくという立てつけになってございます。

佐藤委員 今の御説明の確認ですが、最初に「適正な」とおっしゃったのは、一般に適正な義務があるということで、それは理解できるんですけれども、規則に則った貨物管理であるということが義務づけられているかという点について御質問したいと思います。その趣旨は、規則を定めることを法定化しても、規則そのものに則った貨物管理が義務付けられていなければ、そこは尻抜けになるのではないかという不安があるからです。

木村(福)分科会長 井田課長、お願いします。

井田監視課長 法律上求められる貨物管理をしていただくために、その実施をするための社内管理の規則をつくっていただいて、それを実施していただくということになってございます。

佐藤委員 そうすると、法定化された規則に則っていない貨物管理をしている場合、これは法令違反になるということですね。

井田監視課長 まさにそれは違反になりますので、業務改善命令の対象になると考えてございます。ありがとうございました。

木村(福)分科会長 ありがとうございます。河野委員、お願いします。

河野委員 御提案はそのとおりだと思いますし、不適切な業務を行っている保税業者にきちんと指導することは何より重要だと思いますので、この制度の導入自体には賛成いたします。

 ただ、ここしばらく保税地域の活用のための取組をしていただいた経緯がございますし、ある種の加工貿易を促進することで、日本の港湾、あるいは日本の空港の国際競争力を強化することが必要であるということも、もう片方の要請としてございます。ので、したがって、不適切な保税業者に対しての業務改善命令をきちんと厳格にしていただくとともに、適切で、かつ日本の競争力をもたらすような業務を行っている者の活動について、過度な負担にならないように少し工夫をしていただければと思います。よろしくお願いいたします。

木村(福)分科会長 井田課長、お願いします。

井田監視課長 河野委員、御指摘ありがとうございます。全くおっしゃるとおりでございます。昨年、保税地域の在り方、保税制度の在り方というものを取りまとめまして、そこに3本の柱がございました。1本目が利用者の利便性向上、2番目が保税制度の利活用促進、3番目が厳格な水際取締りということで、今御説明しましたものは、3番目の厳格な水際取締りに属する措置でございますけれども、1番目、2番目の利便性向上、それから利活用促進に関しましても、引き続き力を入れてまいりたいと思います。御指摘いただいたとおりだと思いますので、しっかり取り組んでまいりたいと思います。ありがとうございます。

木村(福)分科会長 どうもありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。

 それでは、御報告いただいた内容を答申案に盛り込むよう、事務局において作業をお願いいたします。

 続きまして、三浦関税課長より、「課税価格決定の特例の廃止」について御説明を受けたいと思います。お願いします。

三浦関税課長 木村会長、ありがとうございます。事務局、三浦です。

 先ほど、お取りまとめをいただきましたワーキンググループの中間とりまとめに盛り込まれた対応の方向性を受けまして、「課税価格決定の特例の廃止」につきまして、資料3-1を御覧いただきたいと存じます。

 資料の1ページ目ですけれども、記載はありませんが、関税定率法における課税価格は、原則が輸入価格の取引価格とされております。これに対しまして、この制度の概要の1点目でありますけれども、輸入取引が小売取引の段階によるものと認められる貨物で、個人使用の貨物については、当該貨物の輸入が通常の卸取引の段階でされたとした場合の価格とされております。具体的には、関税定率法基本通達におきまして、当該貨物の輸入者が貨物を取得する際に実際に支払った価格である海外小売価格に0.6を乗じて算出することとされておりました。

 ワーキンググループにおかれまして、この課税価格決定の特例が当時珍しかった海外旅行の土産品等を念頭に法制化されたこと、また、2つ目の囲みの見直しの背景でございますが、現在においては、海外旅行が一般化してきていることや、個人で輸入することが容易となっているといったこと、そして、本特例の適用対象が、下の右側の棒グラフにございますコロナ禍を経て90%に大幅に増加し、そのうちの9割以上が課税価格の合計額が1万円以下の少額貨物であり、大層は中国・韓国・香港来のものであることも御覧いただきましたところです。

 これらのことを踏まえますと、本特例は、制度を導入したときの想定と異なって、個人が越境ECサイトを利用して輸入する貨物に多く適用されていると考えられるという御議論を賜りました。

 資料の2ページ目を御覧くださいますと、ワーキンググループで御議論いただきました課題につきまして、改めてでございます。田邊先生からのおとりまとめと若干重なって恐縮でございます。

 ❶でありますが、越境ECサイトで商品を販売し、消費者に直送する国外事業者と、商業貨物として商品を輸入し、消費者に販売する国内小売業者との間において、課税価格の元となる海外小売価格と海外卸売価格との金額に差がなくなりつつある結果、本特例によって課税価格に差が生じるという競争上の不均衡が顕在化していること。

 さらに、箇条書きの2点目で、輸入者が個人的な使用と偽って本特例を不正に利用する事例も発生していることを記載してございます。

 以上を踏まえまして、ページ下の朱色の囲みのところですが、本特例の立法趣旨の前提が既に消失・変容していること。また、本特例が創設された当時には想定されていなかった国内外の事業者間における競争上の不均衡、本特例の不正利用といった課題が顕在化していることから、改正の方向性としまして、本特例を廃止することが適当とのワーキンググループの御議論のとおり対応してまいりたいと考えております。

 なお、課税価格の決定を廃止した場合における関税と消費税の増収試算につきましては、一定の仮定の下で計算をしまして、関税について80億円程度、消費税について300億円程度と試算しております。具体的な試算の方法でございますが、一般貨物につきましては、輸入者が法人でなく個人の消費者であると想定される申告を0.6掛けが適用されたものと想定しまして、これらの申告の課税価格に6分の10を乗じて、言わば元に戻して試算をするという作業を行ってまいりました。

 説明は以上でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

木村(福)分科会長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの説明に関しまして、御質問・御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

 佐藤委員、お願いします。

佐藤委員 御説明ありがとうございました。ワーキンググループの中間とりまとめに沿った御提案で、賛成です。

 1点お伺いしたいのは、令和8年度改正でこれが可能になった場合に、施行はいつからとお考えでしょうか。

木村(福)分科会長 三浦課長、お願いします。

三浦関税課長 佐藤先生、どうもありがとうございます。ただいま、法制当局と省内の各関係部署と協議をしているところでありまして、まだ確たるところを申せなくて恐縮でございます。現在におきましては、中間とりまとめでも御議論をいただきましたように、関係の方々への御説明でありますとか、それから関係のシステムの対応とかいったこともあろうかと考えておりますので、そうしたことも見極めながら、可能な限り早い時期の施行に向けて取り組んでまいりたいなというふうに考えております。確たることを申せなくて恐縮でございます。

木村(福)分科会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

 それでは、よろしいでしょうか。次に進ませていただきます。

 続きまして、「暫定税率等の適用期限の検討について」、三浦関税課長より説明を受けたいと思います。

三浦関税課長 資料は4-1で、「暫定税率等の適用期限の検討について」でございます。

 1ページ目を御覧くださいますと、囲みのところで、基本税率、関税定率法に規定されているものがございまして、これに対しまして暫定税率は、政策上の必要性等から、適用期限を定めて基本税率を暫定的に修正する税率ということで、関税暫定措置法に規定をされているものでございます。

 令和8年3月末に適用期限が到来いたします全412品目につきまして、検討する必要があると考えております。このうち404品目につきましては、下の囲みの表でございますが、適用期限の延長が要望をいただいております。404品目の中で加糖調製品5品目につきまして、前回5日の本分科会で詳細をお聞きくださいました。これについては、関税率の引下げが要望をされているところでございます。

 それから、一番下の列であります石油化学製品製造用の揮発油、灯油及び軽油8品目につきましては、基本税率化の御要望を頂戴しております。

 以下では、暫定税率の水準を見直す品目、基本税率化を検討する品目、その他の品目の順で具体的な検討内容をお聞きいただければと存じます。

 2ページ目を御覧くださいますと、前回御覧いただきました全体像でございますので、恐れ入りますが割愛させていただきます。

 3ページ目を御覧くださいますと、加糖調製品5品目でございます。加糖調製品をめぐる状況につきまして、前回5日の本分科会で詳細をお聞きくださいましたとおりでございます。農林水産省から、加糖調製品に係る調整金収入の拡大を可能とし、国産砂糖との価格差をさらに縮小するため、来年度のCPTPP税率を踏まえた暫定税率の引下げを求める御要望をいただいております。

 囲みの中の考慮すべき要素のそれぞれの点につきまして、前回5日にお聞きをくださいました点をまとめて申し上げますと、1点目として価格差についてです。加糖調製品と国産の砂糖の価格は足元で縮小しておりますが、依然として価格差が認められること。

 輸入品につきましては、カカオ豆の需要逼迫等の一時的な要因によって減少傾向にありましたが、直近では増加に転じていること。今後、CPTPPの関税割当枠内税率の段階的な引下げや枠数量の拡大等に伴いまして、枠内での輸入量が増加している品目があること等を踏まえますと、今後、長期的に加糖調製品全体の輸入量が増加していく可能性も否定できないということでありました。

 また、甘味資源作物の生産費の削減を含む国内産糖に係る競争力強化の取組が行われております。また、暫定税率の引下げによって確保した調整金を原資とした原料糖の価格調整により国産の砂糖の価格が抑制され、消費者の利益にも寄与していると考えられること等を総合的に考案いたしまして、加糖調製品5品目につきまして、令和8年度のCPTPP税率の設定状況等を踏まえまして、国内産糖への支援の原資となる調整金の拡大が可能となるよう、暫定税率を引き下げることが適当ではないかと考えております。

 なお、本件につきましては、来年度以降につきましても、米印にございますような、(1)の①ですけれども、加糖調製品と国産の砂糖の価格差、需給の動向、②で国内産糖に係る競争力強化の取組状況、③で暫定税率の引下げによる政策効果、(2)で、食料の安定的な供給等における砂糖及び加糖調製品の位置付けを踏まえた関連制度の今後の在り方、また、その在り方の実現に向けた具体的な取組の進捗等について、消費者の方々の視点も踏まえつつ、農業水産省におかれて御検証及び御報告をいただく必要があると考えております。

 次のページを御覧くださいますと、石油化学製品製造用の揮発油、いわゆるナフサと灯油及び軽油についてでございます。

 ナフサ等は、一番上の囲みでございますが、原油から精製される連産品の1つであり、エチレン等の基礎化学製品が製造され、その後プラスチック等が製造され、様々な産業に利用をされております。様々な暫定税率で無税を設定しております。

 国産ナフサ等をめぐる状況として、ロのところに記載がございますように、国産ナフサ等は優先して引き取られて、不足分が輸入されるという構造となっております。近年、諸外国におきまして、ナフサ等を原料とする石油化学製品の生産能力の増強に向けた動きが進展しております。特に中国で著しいという状況を受けまして、中国へ輸出できなくなった韓国等の石油化学製品がアジア市場に流れて、我が国からの汎用的な石油化学製品の輸出額が減少する等の影響が生じているところでございます。

 こうしたことから、我が国の揮発油等を精製する川上の石油精製企業と石油化学企業の国内産業保護の観点や、ナフサを原料とする製品を安価に供給するという消費者等の利益確保の観点から、石油化学製品の原料であるナフサ等の関税率を無税とする必要が、中長期的に継続すると見込まれてございます。

 こうした点につきまして、経済産業省とも検討を行い、現行の暫定税率を廃止しまして、暫定税率で設定しておりました水準を基本税率によって維持することが適当ではないかと考えてございます。

 資料の次の5ページからは、暫定税率が設定される412品目のうち、これまでお聞きくださいましたものを除いて、399品目について関税率及び関税制度を維持する御要望を頂戴しております。これら399品目に加糖調製品5品目を加えた計404品目について、関税の減収の規模として想定されるものを一定の仮定を置いて推計をしてございましたのが、この表でございます。

 関税の減収する規模として推定されるものの推計方法でございますが、字が少し小さくて恐縮でございます。(注1)のところを御覧くださいますと、令和6年度の輸入額または輸入量について、仮に協定税率等が適用された場合の関税収入額と、暫定税率が適用された関税収入額の差額を機械的に算出してございます。

 暫定税率以外の税率が適用されることとなった場合に、輸入数量や金額が変動することも想定されるところではありますが、これは考慮しておらないという数字でございます。このように試算をした場合、合計で1,012億円となりまして、このうち減収規模の上位となる品目が表のとおりというところでございます。

 暫定税率の延長の必要性については、物資を所管されている省庁からの要望を受け、品目ごとに毎年度検討してございます。これまでの分科会における御議論や国会での御審議を踏まえまして、全ての品目の個別の検討につきまして、縦長の資料ですが、資料の4-2に記載をしてございます。次ページ以降、この横長の資料におきましては、全品目のうち、今御覧くださっている表に記載のある推計減収額が上位となる品目についてお聞きいただければと存じます。

 次のページを御覧くださいますと、でん粉・コーンスターチ用とうもろこしについてでございます。でん粉・コーンスターチ用とうもろこしは、ウルグアイ・ラウンド合意の以前、または以後に関税割当制度が導入された品目ということで、1995年前後ということになります。

 関税割当と申しますものが、一定数量以内の輸入品には低い関税を適用する一方で、これを超える輸入分については、高い関税を適用することによって国内生産者の方々の保護を図り、また、消費者の方々の利益の確保を図るという制度でございます。

 「現状」の囲みを御覧くださいと、でん粉は、食品、飲料、調味料のほかにも、紙や建材、医薬品といった多くの用途で使われ、国民生活に不可欠なものと言っても過言ではないかと存じております。

 「検討」のイのところを御覧くださいますと、国内産のでん粉の原料はばれいしょやかんしょでありまして、それぞれ北海道と南九州の基幹作物となっております。国産品につきましては輸入品より高価でありますため、輸入品から調整金を徴収し、これを財源として国内生産者に対して交付金を交付し、生産者所得の確保、製造事業者の経営安定を図っているというところでございます。

 「検討」と「改正の方向性」のところでございますが、国産品だけでは国内需要を賄えない一方で、国産いもでん粉生産者を保護する必要があること、消費者の方々への安定的な供給が必要であること、国際的な合意を履行する必要があるということから、引き続き暫定税率の適用期限を1年延長することが適当ではないかと考えております。

 次の資料に進ませていただきます。恐縮です。資料の7ページ目、紙巻たばこについてでございます。関係国との協議結果を踏まえまして、暫定税率で無税と設定している品目でございます。

 「検討」のイのところを御覧くださいますと、たばこ事業法におきまして、葉たばこ農家を含む我が国たばこ産業の保護のため、JTによる紙巻たばこの製造独占及び国産葉たばこの実質的な全量買取りが義務づけられてございます。その一方で、葉たばこ生産は価格面での国際競争力に乏しいという状況に置かれているところでございます。

 「検討」のハ及び「改正の方向性」でございますが、紙巻たばこについて、日米たばこ協議の合意に基づきまして、紙巻たばこを暫定無税とする一方で、JTによる紙巻たばこの製造独占及び国産葉たばこの実質的な全量買取りを維持することで、葉たばこ農家を含む国内葉たばこ産業を保護する必要があることから、引き続き暫定税率の適用期限を1年延長することが適当ではないかと考えております。

 おめくりくださいますと8ページ目で、バイオエタノール(バイオETBE)についてでございます。産業政策上の要請を踏まえて、暫定税率で無税と設定している品目でございます。

 このうち、バイオエタノールについては次第のとおりでございますが、バイオETBEとはバイオエタノールから合成される化合物でありまして、バイオエタノールそのものでありますと、水分や蒸気圧の管理が必要になるところでありますが、ETBEという化合物にしますと、この管理が不要になり、ガソリンになじみやすいという性質があるものでございます。

 「検討」と「改正の方向性」でございますが、国内では商用規模の生産はないものの、低炭素ガソリンの供給に関する政府目標の下で普及促進が必要であり、また、今後の国産化もあり得るということから、引き続き暫定税率の期限を1年延長することが適当ではないかと考えておるところでございます。

 おめくりくださいますと、9ページ目でございまして、でん粉の原料以外の目的で使用されるとうもろこしでございます。したがいまして、「現状」のところを御覧くださいますと、家畜の餌ですとか、お酒とか、コーンフレークといったものに使われております。こちらは、ウルグアイ・ラウンドの合意実施以前、1995年以前に関税割当制度が導入されている品目ということになります。

 先ほどの資料にもありましたように、「検討」のイのところを御覧くださいますと、とうもろこしは、でん粉、コーンスターチの原料ともなり得るため、飼料用等として低関税で輸入されたとうもろこしがコーンスターチ用に流用された場合、国内いもでん粉の生産者に影響するおそれがあるというところがございます。そのために、関税割当制度によって輸入数量を管理するとともに、横流れ防止措置を図る必要があると考えております。

 コーンスターチ用を除くとうもろこしにつきましては、「検討」及び「改正の方向性」としまして、国産品だけでは国内需要を賄えないこと、安価な輸入品の無制限な国内流入を防ぎまして、国産いもでん粉生産者の保護と、コーンスターチ用への横流れ防止を図った上で、安定した価格での畜産物の供給等に寄与する必要がある、日米合意を履行する必要があることから、引き続き暫定税率の期限を1年延長することが適当ではないかと考えてございます。

 おめくりくださいますと、5つ目の品目、乳製品についてでございます。関税割当てが設定されている品目でございます。

 脱脂粉乳、バターが、製品特性上可逆性があるということから、ほぼ全ての乳製品を製造することが可能ということで、一部の製品の供給が乳製品全体の需給に影響を及ぼす可能性があるというものでございます。

 乳製品につきましては、国産の乳製品だけでは国内需要を賄えないこと、また、安価な輸入品が無制限に国内に流入することを防ぎ、生産者を保護するとともに、乳製品を消費者に対して安定的に供給する必要があること。国際合意におきまして、WTOにおいて一定数量以上の輸入機会の提供を約束していること。これを履行する必要があることから、引き続き暫定税率の期限を1年延長することが適当ではないかと考えております。

 まとめとしまして、以上のような全品目についての検討を踏まえまして、5ページの「改正の方向性」にございました404品目につきまして、国内産業保護や利用者・消費者の方々等の利益の確保、国際交渉上の必要性等につき個別に検討した結果、必要性と合理性が認められたことから、暫定税率の適用期限を1年延長することが適当ではないかと考えておるところでございます。

 飛びまして、大変恐縮です。11ページを御覧くださいますと、特別緊急関税制度、特別セーフガードについてのものでございます。適用期限の延長についての御説明です。

 特別緊急関税制度は、ウルグアイ・ラウンド合意に基づきまして、それまでの数量制限を外しまして、代わって輸入品に関税が導入された。いわゆる関税化がされた農産品についてのものでございます。

 輸入急増時の安全弁として、輸入数量が一定の水準を超えた場合や、輸入価格が一定の水準を下回った場合に、それぞれ関税率の引上げを行うものであります。適用期間は1年間ということで、毎年度期限延長の必要性を検討してございます。

 資料中段に御覧いただけるように、本制度はウルグアイ・ラウンド合意に基づいて関税化された農産品について設けられた制度でありますことから、国際交渉の状況等を踏まえて検討する必要があると考えております。

 この点、本制度は現在協議中のステータスとなっておりますWTOドーハ・ラウンド交渉も含めて、経済連携協定に係る交渉の対象となり得るものということで、交渉の状況等を注視する必要があることから、改正の方向性については、適用期限を1年間延長することが適当ではないかと考えております。

 本資料につきましての説明は以上となります。どうぞよろしくお願い申し上げます。

木村(福)分科会長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの説明につきまして、御質問・御意見等をいただきたいと存じます。いかがでしょうか。

 佐藤委員、お願いします。

佐藤委員 ありがとうございます。暫定税率の適用期限の検討について詳細な資料を作ってくださり、また御説明をいただいて、ありがとうございます。昨年の分科会において、私を含む何人かの委員の指摘を受け入れてくださったものと考えて、大変感謝を申し上げております。

 まず、御提案そのものには全て賛成ですが、資料に関して少し外しているというか。それは、このような課税が現在の我が国において必要であるということは恐らく毎年我々は理解をしていて、今日もその点について御説明をいただいて、こういう課税の姿が必要なんだということはよく理解できました。

 問題は、それを1年ごとに延ばしていくという形を維持するのが適切なのか、それとも、基本税率として定めるのが適切なのかというところが、期限の延長のポイントなんだろうと思います。1995年という御説明がありましたが、30年、毎年延長してきているという状態が果たして正常な形なのかというところが、多分私を含めた昨年の指摘のポイントだったように思います。

 4ページのこのたび基本税率化されたものと、例えば8ページのバイオエタノールとの違いは一体何なんだろうかということが必ずしも分からないというか、その辺りについて、毎年延長する制度でなければいけないという理由についても、ぜひ来年以降はまた御説明いただければと思います。現行の制度の姿が必要であるということは、特に資料の4-2を拝見してよく理解できますので、問題は、30年も毎年改正していく姿が正しいかということだと思います。どうもありがとうございました。

木村(福)分科会長 ありがとうございました。では、お願いします。

三浦関税課長 佐藤先生、どうもありがとうございます。まさに事務局として今年、努力といいますか、非常に勉強したところでありました。昨年の御指摘から、また本日までの御指導についても心より感謝を申し上げます。

 今、2つ目に大変大きなテーマをいただきました。その中で、バイオエタノールと今回のナフサ等の違いというところでありますが、ナフサ等につきましては、国内で精製される部分が需要の4割を満たしており、残る6割を輸入で補っているという状況。この構造的な状況が中長期的に続くということが今回見極められたということかなと考えております。

 他方、バイオエタノールにつきましては、国産化される可能性がまだあるということで、今回、暫定税率で1年延長をさせていただければというご提案に至ったというところでございます。

 それから、1年間であるというところは、これについても仰せのとおりだと思います。私どもは、これまでも御説明を聞いていただいている内容で、ちょっと重複になってしまうんですけれども、国内産業の状況ですとか、国際交渉の状況がやはり年々変わり得るということがあり、WTOのドーハ・ラウンド、また、EPAの交渉も並行して行われているという状況があります。

 そうした状況も踏まえて、その時々の政策的な必要性も踏まえて常に見直しが必要であるということから、会計年度に連動する形で1年間で期限を切って、関係省庁の皆様とその都度スクラッチからの見直しをさせていただくというような取組を行っております。

 この説明がうまくできるよう、勉強してまいりたいと思っております。重複となり申し訳ありません。

木村(福)分科会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

 よろしいでしょうか。それでは、次に進ませていただきます。

 最後ですね。「暫定的減免税制度の適用期限の到来について」、三浦関税課長より御説明を受けたいと思います。よろしくお願いします。

三浦関税課長 会長、ありがとうございます。資料5-1の1ページ目を御覧くださいますと、航空機の部分品や素材、そして人工衛星や打ち上げロケットの部分品や素材で国産困難と認められるものについて、この関税を免除するという制度でございます。

 本制度が、航空機産業や宇宙開発の発展等に資することを目的として導入をされております。本制度は暫定措置としておりまして、制度の安定的な運用と、それから定期的な制度の見直しの必要性を考慮して、3年を適用期限としております。

 今般、来年3月末に適用期限が到来するということで、その後の取扱いについて検討する必要があるという状況でございます。

 制度の利用状況につきましては、コロナ禍からの減少から回復して、令和6年度実績では輸入額785億円、免税額29億円となっております。下の表の一番右の列を御覧くだされば幸いでございます。

 2ページ目をおめくりくださいますと、我が国航空機産業は、国際共同開発に参画することを通じて成長してきたという経緯がございます。そして、航空機製造のための部分品等については、規格品の指定等を理由に国産困難なものがありまして、この理由に際して本制度が利用されているという状況でございます。

 3ページ目を御覧くださいますと、宇宙産業につきまして、民間企業が主導して衛星の製造・打上げ・軌道上サービスを行う形式が主体となりつつあるということでございます。

 ロケット製造のための部分品等につきましては、規格品の指定等、またライセンス等の理由で国産困難なものがあり、この輸入に際しては本制度が利用されているという状況でございます。

 以上を踏まえまして、航空機産業、宇宙産業ともに市場は拡大しているものの、国産困難な部分品等については輸入に依存している状況には変わりがなく、本制度は引き続き必要性があると考えております。

 したがいまして、「改正の方向性」に記載のとおりでございますが、航空宇宙産業の状況、本制度が航空宇宙産業の新しい技術開発や事業化を支援する政策であること等に鑑みまして、中期的な期間を設定することが妥当であり、適用期限を要望どおり3年延長することが適当ではないかと考えております。

 4ページ目を御覧くださいますと、加工再輸入減税制度につきまして、我が国から加工または組立てのために輸出された貨物を原材料とした製品が原則として輸出の日から1年以内に輸入される場合に、その製品に課される関税のうち、原材料相当分を軽減するという制度でございます。

 現在、皮革――革の製品と繊維製品、革製履物の甲が本制度の対象となっております。本制度は、国内生産者が国際競争力をつけられるまでの措置ということで、国内産業の状況等を勘案して、その延長の適否を検討する必要があることから、暫定措置としてございまして、制度の安定的な運用、定期的な見直しの必要性を考慮して、3年を適用期限としております。来年3月末にこちらも適用期限が到来しますため、その後の取扱いを検討するという必要がございます。

 制度の利用状況につきましては、コロナ禍によって令和2年度から輸入額、減税額がともに減少し、以前の水準まで回復していない状況となってございます。

 5ページ目を御覧くださいますと、左側に繊維産業の状況、右側に皮革関連産業の状況でございます。いずれにおきましても、国内生産が減少し、海外からの輸入は増加傾向にあるという状況です。本制度の利用を通じまして、国産原材料の利用を促進しつつ生産コストの削減を図ることで、産業全体の国際競争力の維持向上に努めているところでございます。

 以上、国内産業の状況を踏まえますと、関連産業の構造改善や国際競争力の強化支援のため、本制度は引き続き必要かと考えてございます。したがいまして、「改正の方向性」に記載のとおり、繊維・皮革関連産業の状況及び本制度が産業の構造改善や国際競争力の強化を支援する政策であること等に鑑みまして、中期的な期間を設定することが妥当であり、適用期限を要望どおり3年間延長することが適当ではないかと考えております。

 本資料の説明は以上でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

木村(福)分科会長 ありがとうございます。

 それでは、ただいまの説明につきまして、御意見・御質問等をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

 特にございませんか。では、これで一応ご質問がないということで、先に進ませていただきます。

 これで一応今日の議題は終わりですけれども、今後、当分科会におきましては、答申を取りまとめる作業に移ることになります。次回の分科会におきまして、これまでの御審議の内容を踏まえた答申案を御提示させていただき、御議論賜ることとしたいと考えております。

 次回の関税分科会につきましては、昨今の国会情勢等を踏まえつつ、事務局と調整の上、別途御連絡を差し上げることとなります。

 本日は、どうも御多用のところ御出席いただきまして、ありがとうございます。

 閉会とさせていただきます。ありがとうございました。

午前11時14分閉会