- 開会
- 令和8年度関税改正検討項目①
- 暫定税率の検討にあたっての視点
- 関税の犯則調査・処分に係る手続きのデジタル化
- 不当廉売関税の迂回防止制度の創設
(不当廉売関税の迂回防止に関するワーキンググループとりまとめ) - 加糖調製品を巡る動向等
- 閉会
| 出席者 | |||
| 関税分科会長 | 木村 福成 | 財務省 | 寺岡関税局長 |
| 委員 | 阿部 克則 | 中澤審議官 | |
| 植田 健一 | 大関総務課長 | ||
| 内山 智裕 | 三浦関税課長 | ||
| 木村 旬 | 高橋参事官 | ||
| 古城 佳子 | 西野参事官 | ||
| 杉山 晶子 | 井田監視課長 | ||
| 下坂 朝子 | 藤中業務課長 | ||
| 高橋 裕子 | 野田調査課長 | ||
| 田邊 國昭 | 坂本事務管理室長 | ||
| 高橋 裕子 | 近田特殊関税調査室長 | ||
| 樽井 功 | 中尾原産地規則室長 | ||
| 中島 宏 | 香川税関調査室長 | ||
| 山口 博臣 | 平田経済連携室長 | ||
| 専門委員 | 佐藤 英明 | 金山知的財産調査室長 | |
| 末冨 純子 | 経済産業省 | 森井一成経済産業省貿易経済安全保障局特殊関税等調査室長 | |
| 松島 浩道 | 谷査恵子経済産業省通商政策局国際経済部通商交渉調整官 | ||
| 外務省 | 佐藤大輔外務省経済局国際貿易課長 | ||
| 農林水産省 | 参鍋健一農林水産省農産局地域作物課長 | ||
| 近藤信農林水産省輸出・国際局国際経済課長 | |||
| 午後4時00分開会 |
○木村(福)分科会長 それでは、時間になりましたので、ただいまから関税・外国為替等審議会関税分科会を開催いたします。
委員の皆様には、御多用のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。
まず、議事に入ります前に、先日2名の委員の交代がございましたので、私から紹介させていただきます。
佐藤基嗣委員の御退任に伴い、新たに関西経済連合会経済調査部長、中島宏委員が任命されております。
続いて、片山委員の御異動に伴い、新たに日本労働組合総連合会経済政策局長、山口博臣委員が任命されております。
それでは、本日の議事に入らせていただきたいと存じます。本日の議題は、お手元の議事日程のとおりでございます。具体的には「暫定税率の検討にあたっての視点」及び「関税の犯則調査・処分に係る手続のデジタル化」について財務省から、また「不当廉売関税の迂回防止制度の創設」について不当廉売関税の迂回防止に関するワーキンググループの阿部座長からの御報告及び財務省からの説明を受け、審議を行いたいと思います。最後に「加糖調製品を巡る動向等」について農林水産省より説明を受けたいと思います。
それでは、まず三浦関税課長より「暫定税率の検討にあたっての視点」について、説明を受けたいと思います。よろしくお願いします。
○三浦関税課長 分科会長、ありがとうございます。
資料1の「暫定税率の検討にあたっての視点」を御説明申し上げます。
資料の1ページ目をお開きいただきますと、基本税率につきまして、国内産業保護等の観点から関税定率法で設定される税率という記載が囲みの中にございます。2点目としまして、暫定税率は消費者利益の確保、国際約束の履行等の政策上の必要性等から、適用期限を定めて、基本税率を暫定的に修正、引下げをする税率ということになります。
記載はございませんが、背景としましては、関税の暫定的な減免制度、かつては関税定率制度の一部を改正する法律の附則や、または別表に記載されて、規定されておりました。昭和36年に租税特別措置法に倣いまして、独立の法律として関税暫定措置法が制定をされております。令和8年3月末に適用期限が到来いたします囲みの412品目につきまして、延長や見直しを検討する必要があるということで、令和8年度関税改正に向けた要望が物資所管省庁から提出を頂き、財務省ホームページに掲載をされてございます。ほとんどの品目につきまして関税率・関税制度の維持の要望となっている中で、加糖調製品につきましては関税率の引下げ、石油化学製品製造用の揮発油、灯油及び軽油については基本税率化の要望がなされているという状況です。
資料の2ページを御覧くださいますと、現在暫定税率を設定している品目の全体像が御覧いただけます。産業政策上の要請から基本税率等を下回る税率を設定している品目ということで、一番下の灰色の部分に記載をしているところがございます。その他、その上に掲げられている、現在もWTOドーハ・ラウンドの交渉途上にあるということから、暫定的な性格を有する暫定税率を設定しているところでございます。
3ページ目を御覧くださいますと、暫定税率設定品目数の推移がございます。過去の本分科会におきまして委員から、それぞれに納得いく理由はあった一方で、暫定税率を適用する期間が非常に長い、暫定といいながら暫定ではない状態が見受けられるということで、適用期間が長い品目については適当な時期に一度見直しの機会があってもよいとの御指摘を頂戴したことも踏まえまして、これまでも見直しを行ってきたところでございます。品目数の増減を経まして、現在の412品目となっているところでございます。この中で単純計算しますと、この10年間で廃止した品目が46品目ございます。新たに設けられたものは26品目という勘定になります。
資料の4ページ、5ページ目を御覧くださいますと、令和7年度関税改正法案の審議におきまして、暫定税率の必要性や減収規模等について質疑が行われまして、衆参両院で附帯決議を頂きました。資料中で二の部分が、暫定税率については、その恩恵の規模や産業等について適用実態の公開を進め、国内産業保護、消費者等の利益確保、国際交渉上の必要性等を具体的に考慮し、真に必要かつ合理的と認められるものに限って、適用期限の延長措置を講じることとされてございます。
6ページ目を御覧くださいますと、今後の方向性というところでございます。暫定税率の延長等の検討に当たりまして、本分科会での御議論や附帯決議も踏まえまして、延長の必要性、基本税率に移行する必要性といった観点から検討をする必要があると考えております。適用実態や暫定税率の恩恵の規模といった品目の現状及び国内産業保護との関係、消費者等の利益確保との関係、国際交渉との関係といった品目の考慮すべき事項を品目ごとに明らかにしまして、第3回の次回の関税分科会にて改正の方向性について御議論・御審議を頂くことといたしたいと考えております。
資料1について、以上でございます。
○木村(福)分科会長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの説明につきまして、御質問、御意見等を頂きたいと存じます。いかがでしょうか。特にございませんでしょうか。
それでは、もし後でまた思いつかれたら御発言いただくということで、先に進ませていただきます。ありがとうございます。
それでは、次の項目ですね、続きまして野田調査課長より「関税の犯則調査・処分に係る手続のデジタル化」について説明を受けたいと思います。お願いします。
○野田調査課長 「関税の犯則調査・処分に係る手続のデジタル化」につきまして御説明差し上げます。
まず前提となりますけれども、犯則調査手続のデジタル化につきましては、昨年末の臨時国会において刑事訴訟法が改正された場合に令和7年度関税改正において改正することを検討するものとして、昨年11月26日の分科会において議題として取り上げさせていただいておりました。しかし、当該臨時国会にて刑事訴訟法の改正が見送られたことに伴い、資料の2ページ目にも参考として掲載させていただいておりますが、昨年12月20日付の答申書において引き続き検討すべき事項とされたものでございます。したがって、昨年と説明が重複する部分もございますけれども、御容赦いただければと存じます。
また、ちなみにではございますけれども、国税通則法も関税改正と同一の内容にて改正する予定となっております。
さらに、もう1つの前提としまして、税関職員が行う犯則調査について御参考までに御説明いたしますと、税関職員が行う犯則事件の調査や処分はその特殊性、専門性等に鑑み、関税法において規制されているものでございます。税関職員は関税法に基づき、犯則嫌疑者等に対する質問、許諾等の捜索、証拠物の差押え等を行います。また、犯則調査により犯則の心象を得た場合には税関長による通告処分や検察官への告発を行っております。さらに、輸入貨物に係る内国消費税の犯則調査処分については、輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律の規定に基づき、税関が国税通則法の規定を適用して行っているものでございます。
若干前置きが長くなりましたけれども、資料1ページの背景のところでございます。犯則調査手続のデジタル化の背景ですが、刑事手続等の円滑化・迅速化及びこれに関与する国民の負担軽減を図ることを目的として、情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律が本年5月23日に公布されたものでございます。
これを受けまして、税関における犯則調査や処分を効率的に執行する観点から、刑事手続と同様に、まず①としまして、犯則調査・処分に係る手続の円滑化・迅速化を図るとともに、②としまして、犯則調査・処分に関与する国民の負担軽減を図る必要があり、関税法上の犯則調査・処分手続のデジタル化への対応を検討するものでございます。
改正の方向性につきまして御説明差し上げます。資料の中段のオレンジのボックスの中でございますが、まず(1)としまして、電磁的記録提供命令等の創設につきましては、現在、犯則嫌疑者の通信履歴といった電子データの差押えを行う場合には、税関職員が差押えを受ける事業者の事業所まで赴いて、対面にて通信履歴を記録したUSBメモリなどを差し押さえております。対面場所の確保等の事業者の負担、また出張等を伴う税関職員の負担が生じております。ここで電磁的記録提供命令の規定を設けることによって、USBメモリ等の物理的な記録媒体の授受を介さずに、オンラインで送信を受ける方法によって電子データの提供を受けることが可能となり、これによって事業者にとっては対面で応対する必要性がなくなることや、税関職員のほうは来訪する必要がなくなるということでございます。
こちらに関しては、当然提供命令というものが先に書いてありますが、これが不意打ちになってはいけませんので、システム・運用の両面で対象事業者との間で手続の適正性が担保されるよう法務省・デジタル庁と今後検討してまいるということになっております。
続いて(2)でございますが、捜索・差押え許可状等の電子化について御説明いたします。現在、税関職員が捜索・差押え許可状等を請求する際には、大量の資料を書面により裁判所に持参する必要があるほか、許可状を請求してから交付されるまでに裁判所において長時間の待機を要する場合もございます。また、犯則事件後、告発する際は都度書類を検察官に持ち込んでおります。今般の改正により捜索・差押え許可状などの請求・交付・提示の電子化及び告発の電子化の規定が設けられ、大量の書類の持ち込みや許可状が交付されるまでの待ち時間が省略されることになります。
最後に(3)差押目録等の電子化について御説明いたします。これは例えば税関で証拠物を差し押さえた際は、税関職員が差押調書を作成し、差し押さえた証拠物を記載した一覧である差押目録を当該調書に添付の上、検印しているものでございます。差押調書については、税関職員は立会人とともにこれを署名押印し、差押えをした物権の所有者等に対してその差押目録の謄本を書面にて交付しております。改正によりまして電子データによる差押目録や調書の作成・管理などの規定を設けることが可能となり、犯則嫌疑者や立会人から署名押印・検印を省略させることができるということでございます。
本改正の施行でございますけれども、令和9年度中を目指してございます。デジタル化のシステム、ハード面での整備も必要になるわけでございますけれども、これは法務省及びデジタル庁等において検討しておりますシステムが構築された後に税関・関税局としても検討していくということになってございます。
なお、犯則調査のデジタル化は、これまで説明しましたとおり電磁的記録提供命令のように民間の事業者等と税関とのやりとりをデジタル化するというものでございますけれども、例えば電話やメールなどの通信履歴を大手の通信社であれば電子データで提供いただくということが可能であっても、中小の事業者等の場合は引き続き紙のほうがいい、電子的に対応していないといった事情もあるかと思いますので、最後の※のところに書かせていただいておりますが、引き続き書面による手続も存置するということで検討しております。
次のページ以降の参考については、基本的に説明は割愛させていただきますけれども、1点のみ、3ページの一番最後の表、許可状の請求件数というところで、合計3,941件ということで4,000件に迫る勢いとなっておりまして、なので書面で行われている事務が電子化されることによる効率化・負担軽減、これは税関職員のということもそうなんですが、それによって手続が先ほどるる御説明しましたとおり簡略化・短縮化されることによる事業者等の負担軽減というものにつながるものというふうに考えております。
調査課の説明は以上となります。
○木村(福)分科会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明につきまして、御意見、御質問等ございますでしょうか。
○古城委員 デジタル化に対応した後も中小の業者のために書面の手続を残すということですけど、書面手続きは期間を区切って、その期間内で早くデジタル化してくださいとするのか、それともずっと書面も許すのか、どちらなのでしょうか。
○野田調査課長 実態としましては、なるべく早くデジタル化に移行してほしいというふうな願いはありつつも、特段現状のところは期限を区切ることなく、手続を存置するという方向で考えております。
○古城委員 分かりました。方向性としてはデジタル化を促進したほうが、より手間が省けてくるのかなという気はいたしております。
以上です。
○野田調査課長 ありがとうございます。
○木村(福)分科会長 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、これももし何かまた思いつかれましたら戻っていただくこととして、先に進ませていただきます。
それでは、続きまして「不当廉売関税の迂回防止制度の創設」について、阿部委員及び事務局から不当廉売関税の迂回防止に関するワーキンググループのとりまとめに係る御報告を頂きたいと思います。まず阿部委員、よろしくお願いします。
○阿部委員 ありがとうございます。不当廉売関税の迂回防止に関するワーキンググループの座長を務めました阿部でございます。御出席いただいた委員の皆様におかれましては、御多用のところ議論への御参加、誠にありがとうございました。
御承知のとおり本ワーキンググループは、昨年12月の当審議会の答申において、不当廉売関税に係る迂回防止制度について早期の制度創設を念頭に、引き続き精査・検討を継続することが適当、また、そのために有識者や関係者等の意見も踏まえ、実効性のある制度を創設することが重要とされたことなどに基づきまして、本年5月の当分科会において立ち上げが決定されました。本年9月より2回にわたって本ワーキンググループを開催し、その結果を取りまとめましたので御報告申し上げます。
技術的な詳細は後ほど事務局から補足がありますが、本ワーキンググループでは不当廉売関税の迂回問題に対して早期に対応する必要があるとの認識に立ち、課税要件等制度の骨格及び迂回防止制度の調査・手続等について、制度の実効性及び透明性、既存の貿易慣行への影響を含む公平性、WTO協定との整合性、制度の運用の安定性等の観点から議論を行ってまいりました。
議論の中で頂いた御意見としては、迂回防止制度を諸外国と同様に整備することは重要である、我が国の産業を不当廉売行為から適切に保護し、公正な競争関係を実現するために同制度の早期創設を希望する、合理的な経済活動を行う者を規制することは避けるべきであり、ルールベースの貿易体制を重視する日本として、WTO協定との整合性や透明性の確保等において比較的厳格な制度とする方向性は重要である、これらの要請と実効性のバランスを検討することが重要である、といったものがありました。
これらの議論を通じ、本ワーキンググループとして、令和8年度関税改正において、迂回の類型ごとに課税要件を備え、また原措置に準じつつ、迂回防止特有の要素を加味した調査手続を備えた不当廉売関税に係る迂回防止制度を創設することが適当、との結論に達しました。今後、不当廉売された貨物の輸入により損害を受けた国内産業を不当廉売関税により適切に保護・救済するためには、その効果を損なう迂回行為に対処することが不可欠であり、迂回防止制度の創設に当たっては、迂回行為に対し迅速かつ実態に即して対処することに加え、WTO協定との整合性や課税の公平性・透明性、そして調査の実効性・効率性等を確保することが重要です。
本ワーキンググループで示した方向性を踏まえた迂回防止措置ができるだけ早期に制度化されることにより、我が国の不当廉売関税制度が一層効果的な貿易救済措置となることを期待したいと思います。
私からの報告は以上でございます。
○木村(福)分科会長 ありがとうございます。
それでは、補足説明、三浦関税課長からお願いします。
○三浦関税課長 阿部座長、分科会長、ありがとうございました。補足説明につきまして、資料3-1に沿って事務局から説明申し上げます。
1ページ目を御覧くださいますと、ワーキンググループとりまとめ(案)の構成をお示ししてございます。
2ページ目を御覧くださいますと、不当廉売関税の迂回をめぐる諸情勢としましてAD関税の迂回を取り巻く状況、関税改正要望の経緯についての記載がございます。また、2ページ目の後半の昨年12月の本審議会からの御答申、ワーキンググループ立ち上げの経緯は座長からのお話のとおりであります。
3ページ目を御覧くださいますと、主要国の迂回防止制度についての調査結果の記載がございます。座長からWGにおいてWTO協定との整合性についての御議論があった旨のお話を頂きましたように、迂回防止措置について、WTO協定等には明文の規定などは存在しない状況でありますが、主要国については発動されたAD関税を原措置と呼びました上で、迂回防止制度をその原措置を延長・補完する制度として位置付けて迂回防止制度が整備されているという状況が御覧いただけます。
迂回防止制度を有するG20諸国の制度に関する調査を行いまして、中ほどの囲みに記載のとおりでありますが、大多数の国において、1点目としまして、調査において貿易パターンの変化、迂回の事実を確認しているということ、2点目として、利害関係者に対して証拠や意見提出の機会等の手続補償が原措置と同様に図られているということ、3点目としまして、課税に際しては原措置の税率を適用していること、4点目としまして、迂回の類型として第三国を経由することによりAD関税を回避する迂回、第三国迂回、軽微な変更によって関税を免れる軽微変更迂回、輸入国で完成品にすることでAD関税を回避する輸入国迂回の3類型を有していること等が共通して認められました。G20諸国の中でも迂回防止制度の歴史が最も長く、また調査実績も多いEUと米国につきましては、より詳細な比較を行いまして、EUの制度のほうがより多くの具体的な課税要件を明示しているとの調査結果になっております。
以上を踏まえまして、4ページ目を御覧くださいますと、我が国の迂回防止制度の設計に当たって、1つ目の矢尻としまして、発動されたAD関税である原措置を延長・補完する制度として、2つ目として、WTO協定整合性の確保の観点から、より慎重な要件を採用しているEUの制度を参考にしながら、我が国の実績、実情等に照らして迂回行為への迅速な対応を可能とする実効性の高い制度とする方針として御議論いただきました。
具体的には、下の囲みに記載のとおりでありますが、1点目としまして、迂回の事実、損害等の事実が認められる場合には原措置と同等の割増関税を課税すること、2点目としまして、制度の対象となる迂回の類型をこの3類型として、迂回の事実の認定に当たっては類型ごとに要件を設けるということ、3点目としまして、このうち第三国迂回と輸入国迂回につきましては、課税の範囲が過度に広がることのないよう目安の数値基準を設けつつも現行のAD調査と同様に個々の事案ごとに柔軟・弾力的な対応ができるように工夫をするということ、4点目としまして、輸入国迂回について対象貨物を原措置対象貨物の供給者から輸出され、本邦に輸入される部品等へ限定を行うことについて、ワーキンググループにて方向性を頂きました。また、適正な課税を確保する観点から、合理的な経済活動に基づく貿易取引を行っている方や迂回品の現実のダンピング・マージンを超える関税を納付した者に対する救済措置である除外申請・還付請求も十分な証拠に基づく申請・請求を前提に可能とする方向性を頂きました。
5ページ目を御覧くださいますと、迂回防止措置の調査手続の方針といたしまして、矢尻1点目の原措置であるAD関税の調査手続に沿った仕組みといたしまして、また2点目の迂回防止制度において特に求められる事項に対応する仕組みを整備し、調査の実効性・効率性の確保にも留意すべきとの御議論を踏まえ、まとめてまいりました。
具体的には、下の囲みの記載にありますように、原措置に準拠・連動するものとしまして、調査の基本的な手法、迂回防止措置に基づく課税期間の延長・満了等、これについて原措置に連動するものとしつつ、迂回防止制度特有の仕組みとしまして、3点目の原措置と比較して調査対象期間を短縮すること、調査期間は原則として10か月以内とすること、十分な証拠に基づく課税対象からの除外に係る調査を設けることとしております。
6ページ目を御覧くださいますと、AD関税の迂回の3類型に関しまして、具体的な課税要件等をまとめたものです。迂回の事実の認定に係る課税要件としまして、まず各類型に共通する要件としまして、迂回の事実の要件として①の貿易パターンの変化、②のダンピングが存在すること、すなわち迂回品の価格が原措置対象貨物の正常価格よりも低いこと及び③の迂回の類型に該当する輸入行為が行われていることを設けた上で、類型ごとに少し異なる要件としまして、④の第三国迂回では第三国で最終加工されていること、輸入国迂回では元のAD関税対象貨物の供給者から輸入されている部品等を用いて本邦で最終加工されていることに加えまして、⑤、⑥としまして、第三国迂回、輸入国迂回では原措置対象国産の部品等及び最終加工による付加価値の比重に係る目安の基準を設けることとしております。さらに、損害等の事実に係る要件としましては、⑦の原措置の対象貨物と同種の製品の価格と輸入量が原措置の救済効果を損なっていることを設けることとしております。
これらが満たされる場合に原措置と同等の割増関税が課されることとなります。ただし、迂回が疑われる行為に原措置のAD関税を免れる目的で行われたものではないとの合理的な理由が認められるとして、経済的正当性があると判断できる場合には課税の除外対象とすることとしております。
なお、EUの制度と異なる点として、第三国迂回、輸入国迂回の課税要件⑤、⑥にございます60%以上、25%以下といった数値は目安として設けつつ、個々の事案ごとに柔軟・弾力的な対応ができるよう、投資の程度や生産工程の性質等も勘案して課税要件の充足等を判断することとしてございまして、こちらも実情に合わせた対応を可能とするものとして、ワーキンググループで方向性を頂いたものでございました。
最後のページは、迂回防止調査の流れを本審議会、調査当局及び利害関係者の動きに分けてお示しをしてございます。迂回防止調査は、課税の求めまでに必要となる迂回による損害の事実のデータの期間を短縮することをはじめとして、申請準備から課税までを含めた調査プロセス全体で原措置の調査よりも迂回に対して迅速な対応が可能となる仕組みを目指しつつ、利害関係者の反論機会を確保し、またダンピングの存在の確認や除外申請に係る調査によって適正な課税を行うための調査手続を確保するものを目指すものとなっております。
事務局からの説明は以上となります。
○木村(福)分科会長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの説明につきまして御意見、御質問等いただきたいと存じます。いかがでしょうか。
下坂委員、お願いします。
○下坂委員 ありがとうございます。資料3-1、3-2のとりまとめにおきまして、ワーキンググループでの議論を十分に反映いただきましたこと、感謝申し上げます。
ルールの明確化や手続の透明性の確保というものを担保いただきつつ、数値基準については目安化するなど、柔軟で適切な運用が可能な制度設計になっておりまして、経済界としても評価できるものと考えております。この上は来年の通常国会において法改正をぜひ実現いただければと考えております。
追加で1点だけ申し上げますと、迂回防止制度の機動的な運用の前提といたしまして、日本の調査当局の体制強化が非常に重要であると考えております。本年に入りまして、アンチダンピング課税に関する新規の調査が相次いでいると承知しております。また、アメリカや韓国に比べて日本の調査体制は人数が少ないということを報道でも拝見しております。迂回防止制度だけではなくて、原措置の運用も含めた通商措置全般において調査体制を整備・拡充する方向で御検討いただければありがたく存じます。
以上でございます。
○木村(福)分科会長 どうもありがとうございます。御意見いただきましたけれども、よろしいでしょうか。
○三浦関税課長 下坂委員、1点目はワーキンググループの御議論に御参加を頂きまして、また、おとりまとめを頂きまして、感謝を申し上げます。また、調査当局の体制ということについても言及を頂きました。私どもも少しずつでありますけれども、これまでも調査体制を拡充し、また調査の内容を充実するという取組も行ってまいりました。今後も引き続きですけれども、調査体制について、調査を効率的に行うということも含めて、また関係省庁とも連携させていただいて、しっかりと整備を行っていきたいというふうに考えております。
○木村(福)分科会長 どうもありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。大分しっかり議論していただいて出てきたことになっていると思っております。
もしほかにございませんようでしたら、御報告いただいた内容を答申案に盛り込むように事務局において作業をお願いいたしたいと思います。よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
それでは、最後のアイテムですけれども、農林水産省より「加糖調製品を巡る動向等」について説明を受けたいと思います。農林水産省・参鍋農産局地域作物課長、お願いします。
○参鍋農産局地域作物課長(農林水産省) ありがとうございます。農林水産省で砂糖を担当しております地域作物課長の参鍋でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
資料4の「加糖調製品をめぐる動向等について」、御説明をさせていただきます。
おめくりいただいて、目次の次、3ページからになります。ここから糖価調整制度の概要と昨年の答申を踏まえました対応方向についてお示しします。まず制度に入る前に、砂糖自体の位置付けについてでございます。左側の円グラフにありますとおり、砂糖は国民の摂取カロリーの8%を占める食料安全保障上も重要な品目でございます。資料右側にございますように、食品製造業者あるいは消費者のニーズに応えて様々な種類の砂糖が生産・供給されており、我が国の食生活を支えているところでございます。
4ページ目は、この議論の対象になっている加糖調製品の例、加糖調製品とはどのようなものか例示した資料ですので、御覧いただければと思います。
続きまして、5ページにまいります。砂糖の安定供給を支えておりますのが糖価調整制度でございます。糖価調整制度は最終製品であります精製糖の海外からの流入を一定の水準の国境措置を通じて措置を課しまして、これと同時に輸入糖と国内産糖の価格調整を行っております。こうした措置を通じて沖縄・鹿児島のさとうきび、北海道のてん菜といった甘味資源作物、あるいはそれらを原料とする国内産糖の製造事業、さらに国内産糖と輸入粗糖を原料として精製糖を生産する事業が成り立つようにすることで、砂糖の安定供給を図る仕組みでございます。
現状、こうした仕組みが存在するわけですけれども、精製糖に例えばココアパウダーのようなものを混ぜた、先ほどお示しした加糖調製品については精製糖より関税が低くなっているということから、国内の精製糖について脅威となっておりました。これが砂糖との公平性の観点で加糖調製品からの調整金の徴収、これが平成29年11月のTPP大綱に盛り込まれたものでございます。
その概要を6ページでお示しをしております。平成30年12月のCPTPPの発効から加糖調製品を糖価調整制度の対象に加えまして、国産の砂糖の競争力の強化を図っております。調整金徴収の基準となる暫定税率は、CPTPPの税率をもとに定められておりまして、これが毎年ステージングによって下がっていきますので、今般、昨年に引き続き暫定税率の引下げを要望させていただく次第でございます。
次のページになります。中ほどに昨年の答申の一部を載せさせていただいております。この内容を踏まえまして、食料・農業・農村政策審議会甘味資源部会を9月10日に開催いたしまして御検討いただいたところです。その結論を8ページ枠内にお示ししておりますけれども、国産の砂糖の競争力強化を図る観点から、令和8年度においても引き続き加糖調製品の暫定税率引下げに向けて関税改正の要望を行う必要があるということで御議論いただきました。
9ページからは加糖調製品と砂糖の需給動向、あるいは暫定税率引下げによる政策効果でございます。
10ページは砂糖と加糖調製品の需給の動向でございます。加糖調製品、真ん中の青い棒グラフですけれども、平成2年に輸入が自由化されて以降、輸入量が増加して、砂糖の国内の需要を代替してまいりました。ここ数年は、輸入量は輸入価格の高騰、あるいは甘味自体の需要減少の理由により減少しておりましたが、直近の令和6砂糖年度では減少傾向が一服して、相当量の輸入がなされているという状況でございます。
11ページは、加糖調製品も含めた甘味全体の需要量の推移でございます。右側のグラフにありますように、砂糖・加糖調製品ともにその仕向先が菓子・冷菓が最も多く、次いで清涼飲料・酒類、パンと共通しておりまして、両者が競合関係で、減少する甘味の需要を食い合っていると、そういう状況だというふうに見ております。
12ページは直近の加糖調製品の輸入動向になります。グラフ右側の赤枠、これは令和5年と令和6年のとれる期間までで比較したものです。円安やエネルギー価格の高騰などを背景にCIFの単価は増加していると。11.4%でございますけれども、増加する一方で、輸入量はココア調製品の輸入量増加などにより1.6%増加しているところです。
13ページは輸入動向の分析になります。先ほど申し上げたココア調製品について、加糖調製品全体では5,300トンほどの増加になりますが、ココア調製品のみに着目すると8,700トンの増加しております。背景といたしましては、足元、カカオ豆の不作により高騰しておりました国際カカオ豆の価格が需給緩和により下落傾向になり、急騰していたココア調製品の調達価格もそれに伴って下落に転じたことで、ココア調製品の輸入量が増えたというふうに考えております。また、粉乳調製品についても例として挙げさせていただいていますが、これも輸入量は減少しております。この要因として令和2年度以降、在庫削減対策として輸入品の国産への置き換えなどを実施しているというふうに聞いております。他方、右のグラフのとおり、国内の脱脂粉乳の在庫量が落ち着くに伴い、粉乳調製品の輸入量の減少幅というのが小さくなっております。このように加糖調製品の砂糖以外の原料、これが要因となって一定程度輸入量に影響しているものと考えられまして、それらの動向次第でも加糖調製品の輸入が増加する可能性があるというふうに見ております。
14ページは暫定税率引下げの対象6品目に絞った輸入動向でございます。左側は6品目全体の傾向で、加糖調製品全体と傾向としては一緒ですが、直近の期間で輸入量が増加していて、前述のとおりココア調製品の増加が寄与しているというふうに見ております。また、この引下げ品目のうち4品目には漸増する関税割当が設定されておりますが、その消化率は大きく、安価な加糖調製品の輸入増につながっていると考えております。
15ページを御覧ください。加糖調製品を使用するメーカーにアンケート調査を実施しております。ユーザーの意向としては、加糖調製品を利用する理由として依然としてコストを削減するということが最も多く、価格が下がれば、それが加糖調製品に切り替える理由となっていくという回答になっております。また、価格以外でも砂糖以外の原料を安定調達できる、あるいは、加糖調製品のほうが生産効率がいいなどの回答もあって、引き続き加糖調製品の需要増の可能性があるというふうに考えております。
16ページを御覧ください。加糖調製品からの調整金収入の推移でございます。調整金の収入額については、輸入量やCIF単価の上昇、暫定税率の引下げによる調整金徴収幅の拡大により、直近1年で106億円となっているところでございます。
17ページを御覧ください。直近の砂糖と輸入加糖調製品の価格を比較したものです。砂糖の価格は直近1年で190円から250円、精製糖製造コストの増加などで昨年からは横ばいないし5円の上昇となっております。一方で、輸入加糖調製品のほうも180円から215円程度と昨年から5円から10円の上昇となっており、価格差についてはわずかに縮小しているという傾向が見られます。この要因については、加糖調製品を制度対象に組み込んだことによる粗糖価格の抑制、あるいは精製糖メーカーの合理化努力等、こうしたものもあって価格の上昇幅が抑制されたものと考えております。引き続き価格差が存在しますので、競争力の強化は必要と考えております。
18ページからは国内産糖に係る競争力強化の取組についてでございます。
19ページが国内産糖全体、甘味資源作物並びに砂糖ベースでの取組状況を整理したものです。左がさとうきびと甘しゃ糖、右側がてん菜とてん菜糖になります。さとうきびについては、機械収穫への移行などにより、労働時間が減少傾向であり、これが生産費の減少に寄与しております。また、てん菜については肥料の投入回数あるいは防除の回数が多く、物財費が高止まりしておりますが、移植から直播への切り替えなどで生産の効率化を図っており、労働時間については減少傾向でございます。また、製糖工場、甘しゃ糖工場やてん菜糖工場について、自働化設備や省エネ設備の導入、あるいは原料中間受入場の開設による原料輸送効率の向上などにより製造コストの低減を進めているところです。
その具体的な取組について、20ページ以降で御紹介しております。さとうきびについてはデータを活用したスマート栽培などの効率化、あるいは多回株出し栽培に適した新品種の開発などが進められております。てん菜については、先ほど申し上げた直播栽培の拡大や特定の除草剤に耐性を持つ品種の普及など、あるいは減農薬・減肥料によりコストを削減し、収益の確保を目指した経営体の育成を図っているところです。また、そのほかにも予算措置として、省力機械の導入、作業の外部化・共同化を推進して、育苗・移植・収穫時間の削減などを進めているところでございます。
次のページにまいります。製糖工場の取組の具体例です。甘しゃ糖工場については設備の集中管理や自働化設備の導入による労働生産性の向上の取組を進めているところです。また、てん菜糖工場については、事例を挙げていますが、工場の再編合理化による生産体制の構築、あるいは流通の合理化などに努めていただいていると認識をしております。
22ページ目は精製糖企業の状況です。こちらも直近の動きとして、例えば10月にウェルネオシュガーが第一糖業を吸収合併するなど、業務提携や企業合併などを通じて経営体質の強化が図られており、生産の合理化を進めることで国民にとって重要なエネルギー源である砂糖の安定供給に貢献していただいていると承知しております。
23ページからは制度の中長期的な在り方とその実現に向けた具体的な取組についてです。
24ページ目は昨年改正された食料・農業・農村基本法に基づく新たな食料・農業・農村基本計画について記載しております。本年4月に閣議決定したものです。新たな基本法では、国民1人1人の食料安全保障を柱として位置付け、そのための農業生産の基盤等の食料の供給能力の確保が重要であるものが位置付けられております。その中で引き続き砂糖の安定供給の確保が課題となっております。
資料右側にさとうきび・てん菜の位置付けを記載しておりますが、砂糖の安定供給の確保には国境離島における代替の効かないさとうきび、あるいは我が国最大の畑作物地帯である北海道、この輪作体系の維持に欠かせないてん菜の生産者並びに国内産糖の事業者、この生産を維持・継続していくことが重要です。また、甘味資源作物の生産は砂糖製造業種と関連産業と相まって地域の雇用・経済を支える重要な役割を担っているところです。例えば、沖縄県においては、県内農家戸数のうち約8割がさとうきび生産に従事をしております。こうしたことを踏まえ、農林水産省としては砂糖をめぐる国内外の情勢を踏まえ、引き続き、持続可能な制度の在り方を検討していく必要があると考えております。
25ページは新たな基本計画における砂糖の位置付けについてです。食料・農業及び農村に関し、総合的かつ計画的に講ずべき施策として、消費面では新規需要開拓などにより需要の維持・拡大を図ること、生産では国内産糖の安定供給を図るために規模拡大への対応や生産基盤の整備を推進することにより糖価調整制度の持続可能性の向上に取り組むこと、加工・流通では製糖工場における物流の効率化や安定的な操業体制を確立することと記載しております。また、新たな基本計画では、甘味資源作物の国内消費仕向量、生産量、輸出量、単収、作付面積に関する2030年までのKPIも設定しているところです。
26ページ、砂糖勘定の収支の状況です。国際糖価の高騰や円安の影響などにより、足元、令和元年以降、収支が悪化しておりまして、砂糖勘定は引き続き厳しい状況にあります。直近、令和6砂糖年度における収支は約19億円の赤字の見込みであり、足元、令和6年は、補正予算による国費措置もありまして、累積差損は598億円の赤字となっているところです。
27ページにまいります。こうした状況のもとで、制度関係者にとって不可欠な糖価調整制度を維持し、砂糖を安定供給していくために、これまでも制度関係者の御理解と御協力のもとで各般の取組を講じてまいりました。27ページはてん菜の関係になりますが、砂糖の消費量が減少して、また、てん菜糖業の抱える在庫が増大する中で、令和4年12月、持続的なてん菜生産に向けた今後の対応が決定されたところです。これはてん菜糖への交付金の交付対象数量、令和8砂糖年度に向けて55万トンまで削減し、需要のある作物への転換などを推進するものでありまして、この方針のもと、着実に取組が進んでいる状況でございます。
28ページは異性化糖についてでございます。異性化糖からの調整金については、異性化糖の需給動向と用途の拡大などを踏まえて、令和6年4月からこの調整金に係る運用の見直しを実施しておりまして、13年ぶりに調整金が発生しているところです。引き続き適切に算定をしてまいります。
29ページは、異性化糖のイメージが分かりやすいように参考として資料をつけさせていただいております。
30ページにまいります。これまでの取組のまとめでございますが、近年の砂糖勘定の収支が悪化した要因も踏まえつつ、制度関係者による収支改善に向けた取組を進めることにより、将来的にも糖価調整制度を持続的・安定的に運営をしていく必要がございます。前述のてん菜方針、あるいは異性化糖の調整金のほか、令和6砂糖年度に係る各種価格指標では、指定糖調整率について13年ぶりに引上げとしまして、粗糖を輸入する精製糖企業には制度を支えるために追加で負担を頂いたということにしております。引き続き国産の砂糖がより効率的・安定的に供給される環境をつくり、制度について国民の理解・支持を得ていくためにも、全ての制度関係者が生産・製造コストの引下げに向けて不断の努力をしていく必要があると考えております。
31ページにまいります。制度の安定運営にとって砂糖の需要拡大というのも重要な要素となります。少し取組を紹介させていただきますと、平成30年から私どもの担当課職員がSNSなどで砂糖に関する情報発信などを行う「ありが糖運動」を展開しております。直近の、SNS以外の取組としては、今年8月6、7日に開催された「こども霞が関見学デー」においては親子参加型の綿菓子づくり体験や砂糖の知識が学べるクイズ等を実施しました。また、今年公式マスコットキャラクターとして決定した猫の「かんみぃ」の着ぐるみも参加して、多くの消費者に砂糖に親しんでいただく機会を提供したところです。また、資料でも紹介させていただいておりますとおり、インバウンド向けの市場調査など、砂糖の新規需要開拓への支援措置も講じております。
32ページにまいります。SAFの議論に関してでございます。農水省としても、引き続きSAFの官民協議会の議論に参画しております。この協議会での議論も踏まえて、本年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画においては2030年のSAF供給目標量が設定されたと承知しております。また、我々の取組として甘味資源作物のSAF利用に関するシンポジウムなども実施しておりまして、国産さとうきびの多用途利用の検討についても推進しております。
33ページは国産さとうきびなどを原料としたSAFの製造コストの試算となりますので、御参照ください。
最後、34、35ページになります。関税改正要望の概要といたしまして、価格差が存在するということ、また、引き続き加糖調製品輸入増加の脅威があるということを踏まえまして、CPTPP税率のステージングによる引下げに合わせた暫定税率の引下げを要望させていただいております。
以上でございます。ありがとうございます。
○木村(福)分科会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明につきまして、御質問、御意見等いただきたいと思います。いかがでしょうか。
内山委員、お願いします。
○内山委員 ありがとうございます。
今回、御説明いただいた資料で言うと8ページ目になりますけれども、甘味資源部会、農林水産省で開かれたものですが、その一番下に「単に経済合理性のみでは評価できない背景」というような書き方がされていまして、これはやや曖昧というか、具体的に何を指しているのかが分かりにくいんですけれども、農林水産省は言いにくいかもしれないので、私の意見として申し上げると、通常はこれは食料安全保障ですよという言い方になると思いますが、食料安全保障のみならず、むしろ安全保障そのものではないかということが考えられると思います。というのは、いわゆる定住人口をしっかりとそこに、島なら島に住んでいただかなきゃいけないと。ヨーロッパ等ですと山の向こうが隣国なので、地域にしっかり人に住んでもらいましょうと。人に住んでもらうためには、その地域で行われているのは主に農業なので、農業あるいは農村の振興に関するしっかりとした政策支援を行うということになっていますが、日本の場合は、それは山奥ではなく島嶼部だということになりますので、しっかりとそこに定住人口にいてもらうためにも、この調整制度の意義というところでは、この資料だと「単に経済合理性のみでは評価できない」という言い方になっていますが、より突っ込んだ説明が必要かと思いますので、意見として述べさせていただきました。それが1点です。
もう1点ですが、SAFに関する議論がありますけれども、これは載せること自体がかなり無理筋の話ではないかと思いますけれども、その点について御説明いただければと思います。要するに現実的ではない話が書いてあるということです。
○木村(福)分科会長 参鍋課長、お答えになりますか。
○参鍋農産局地域作物課長(農林水産省) 御指摘ありがとうございます。まず前段の部分に関しては、この法律の目的は国内産糖の安定供給ということではありますが、地域経済において重要な役割を果たしている甘味資源作物の生産、工場の維持を図っていく上でも重要な役割を果たしているというふうに認識をしております。
後段のSAFに関しては、さとうきびのみならず、甘味資源作物の他用途利用に関して、この審議会でかつて御指摘をいただいたことがございます。糖価調整制度の趣旨自体は食品として摂取される砂糖をつくることを前提にしておりますが、甘味資源作物の持続的な生産を行っていく観点から様々な可能性を検討するという意味で、議論の推進のために、我々としても事業を行っておりますし、またこの資料にも掲載をさせていただいている次第でございます。
○木村(福)分科会長 取りあえずよろしいでしょうか。
それでは、オンラインで植田委員、お願いします。
○植田委員 私がちょっと疑問に思いましたのは、31ページ、砂糖の需要拡大に向けた取組のところ、全体的に確かに経済合理性だけではないというものの、合理性も必要だと思いつつ、もし何か経済合理的じゃないものがあるかというと、私から見るとやっぱり問題なのは、糖尿病が国民病と言われている中で、いろいろな内外の調査も必要だと思いますが、ぱっとオンラインとかで見るだけでも場合によっては、砂糖に税金をかけて、例えばたばことかアルコールと同じで、お酒と同じで、ちょっと税金をかけて高値に誘導することで需要をむしろ下げて、国民の健康を図るという考え方も当然あるんじゃないかと思います。これは関税分科会で話すことじゃないので、単なるコメントなんですけども、本当に長中期的に我が国のことを考えたら、もうちょっと広い話なんです、確かに。経済だけではないと、私もそうは思うんですよ。そこまでひっくるめて考えてくれば、多分調整金のようなものもなければ砂糖価格がもうちょっと高くなるわけですし、需要も減っていいということであれば、ある意味で調整金があまりなくてもうまくいくんじゃないかというような気がします。ただ、これは全体的な、今後例えばそういう国民病とか社会保障の医療費とか、いろいろなことも考えた上で、もうちょっと幅広な議論を、別の場所かもしれませんけども、農水省さんのほうではやっていただけたらなという要望です。
以上です。
○木村(福)分科会長 ありがとうございます。参鍋課長、何かお答えになりますか。御意見ということでしたけど。
○参鍋農産局地域作物課長(農林水産省) 御指摘ありがとうございます。砂糖の需要拡大というか、情報発信、いろいろ難しい面もあると思います。御指摘のとおり、たばこやアルコールなどと並んで課税を強化すべきというような議論も一面では存在いたします。一方で、砂糖については、この資料でも御説明させていただいた砂糖自体の効用、あるいは先ほど御指摘いただいた地域経済に果たす役割などの側面もあります。需要拡大、あるいは情報発信の中には事業者が行っているものもありますし、あとは我々役所として行っているものもありますが、我々としてもバランスのとれた形で基本的な知識をできるだけ広い範囲に対して発信をしてまいりたいというふうに考えております。
○木村(福)分科会長 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。松島委員、お願いします。
○松島委員 ありがとうございます。
私、今年からこの分科会の委員をさせていただいておりまして、実はかつて農林水産省でTPP交渉を担当していたことがあったものですから、若干昔話になって恐縮ですけれども、コメントさせていただきます。
たしか日本はこれまで20以上のEPA協定を締結しているかと思いますが、当初、シンガポールから始まって東南アジアやオーストラリアのEPAでは、皆さん昔のことで御記憶が薄れているかもしれませんが、重要5品目といわれていた米や麦や乳製品など、砂糖も含めて市場アクセスの改善を行われなかった中で、TPPについては全品目関税撤廃という原則の下で砂糖本体や今日議論になっています加糖調製品も市場アクセスの改善が図られました。これを国会で了解を得るには大変御苦労があった時期でしたが、冒頭、農水省から説明がありましたように、TPP対策大綱という国内政策の方針を決定するということを併せて与党やステークホルダーの了解を得て国会を通ったという経緯があろうかと思います。
今日の農水省からの御説明を聞きますと、資料の19ページ、20ページにあるように、さとうきび・てん菜について農家段階で様々な新技術や品種改良などにより生産コストの低減が図られていること。また、その次の段階の製糖企業において工場の統廃合、再編合理化が行われて
おり、また、精製糖企業では系列を越える合併が進んで生産コストの低減が図られるということで、毎年ステージングで加糖調製品の関税率が下がる中でそれに対応した措置が講じられているという印象を持ちました。
また、より直接的には、資料の17ページを見ますと、加糖調製品からの調整金徴収の政策効果について、この調整金の徴収制度が国内の砂糖の価格低減にどれだけ寄与しているのかという定量的な分析がされていますけれども、この調整金制度によって消費者の負担軽減が直接図られています。
全体としてTPP大綱で決められた国内措置の趣旨に沿った形で制度運用が行われていると理解して良いのではないかなと思っているところでございます。
以上です。
○木村(福)分科会長 ありがとうございました。御意見ということでしたけれども、何かございますか。よろしいですか。ありがとうございます。
末冨委員、お願いします。
○末冨委員 ありがとうございます。
1点だけ教えていただければと思いますが、28ページのところで異性化糖の調整金に係る運用の見直しで、13年ぶりに調整金が発生しているということですが、その理由として、砂糖と異性化糖の用途の現状を踏まえて換算係数の見直しを実施されたことによって13年ぶりに調整金が発生というところについて、調整金についていろいろ議論がある中で、13年間発生していなかったものがこのタイミングで発生するということにはそれなりの必要性があったと理解していますが、「砂糖と異性化糖の用途等の現状を踏まえ」という事情についてもう少し教えていただければと思います。
○木村(福)分科会長 ありがとうございます。お願いします。
○参鍋農産局地域作物課長(農林水産省) ありがとうございます。
まず異性化糖については、実は加糖調製品と同様でありますけれども、この法律の中で同様に調整金を頂いて国内産糖の支援に充てるということが既に位置付けられていたものでございます。この法律自体は、甘味の需要でもって国内の甘味資源作物、あるいは国内産糖の生産を支えるということになっておりました。異性化糖と砂糖の価格調整は、とうもろこしの国際価格と砂糖の国産糖のコストに基づいて行いますが、制度が導入されて以降、調整金が発生する時期というのもありましたが、まさに委員から御指摘があった13年間、価格の算定の結果として調整金が発生しないという状況が続いていたわけでございます。ただ、一方でその期間、砂糖と異性化糖の需要がどういうふうに推移してきたか、まさにこの資料に記載させていただいておりますけれども、平成元年に砂糖の需要が257万トン、これに対して異性化糖が72万トンの需要があって、例えば令和5年で見ますと砂糖174万トンに対して異性化糖が77万トンの需要となっております。異性化糖がどういうものかというと、29ページに記載をさせていただいておりますが、基本的には砂糖と同じ甘みが出せる一方で、これは液状でございますし、その性質としても清涼飲料水であるとかアイスとか、そういったものに多く使われるということで、用途に一定の差があるということを前提とした価格調整の仕組みで長年運用してきました。しかし、異性化糖が砂糖の需要を大幅に代替してきているのではないかという議論を、制度関係者を交えていたしまして、そうした中で価格を調整する際の換算係数についても見直しを行い、異性化糖にも応分の負担をお願いするということに至った次第でございます。
○末冨委員 ありがとうございました。
○木村(福)分科会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、ほかにございませんでしたようでしたら、以上をもちまして本日の関税分科会を終了いたしたいと存じます。
次回の関税分科会の開催につきましては、11月26日(水曜日)10時開始を予定しております。詳細につきましては、事務局と調整の上、別途御連絡を差し上げます。
本日は、御多用のところ御出席賜りまして、誠にありがとうございました。終了いたします。
| 午後5時08分閉会 |

