- 開会
- 令和7年度関税改正検討項目②
-暫定税率等の適用期限の延長等
-特別特恵関税の適用期限の延長 - 関税の犯則調査・処分に係る手続のデジタル化
- 不当廉売関税に係る迂回防止制度の創設
- 閉会
出席者 | |||
関税分科会長 | 森田 朗 | 財務省 | 高村関税局長 |
委員 | 伊藤 恵子 | 内野審議官 | |
植田 健一 | 中澤審議官 | ||
片山 銘人 | 吉田総務課長 | ||
河野 真理子 | 大関関税課長 | ||
木村 旬 | 石谷参事官 | ||
木村 福成 | 仲監視課長 | ||
古城 佳子 | 藤中業務課長 | ||
杉山 晶子 | 酒井調査課長 | ||
高橋 裕子 | 坂本事務管理室長 | ||
田村 善之 | 藤岡特殊関税調査室長 | ||
永沢 裕美子 | 平田原産地規則室長 | ||
根本 敏則 | 近田税関調査室長 | ||
野原 佐和子 | 金山知的財産調査室長 | ||
和田 照子 | 外務省 | 塚田経済局国際貿易課長 | |
専門委員 | 阿部 克則 | 農林水産省 | 近藤輸出・国際局国際経済課長 |
国松 麻季 | 白倉農産局地域作物課課長補佐 | ||
佐藤 英明 | 経済産業省 | 谷通商政策局国際経済部通商交渉調整官 | |
末冨 純子 | 信田貿易経済安全保障局貿易管理部貿易審査課特殊関税等調査室長 | ||
藤岡 博 | こども家庭庁 | 栗原成育局保育政策課長 | |
宮島 香澄 | |||
村上 秀德 |
午前10時00分開会 |
○森田分科会長 おはようございます。時間になりましたので、ただいまから関税・外国為替等審議会関税分科会を開催いたします。
委員の皆様方には、御多用中のところ、御出席をいただきまして誠にありがとうございます。
それでは、早速ですが、本日の議事に入らせていただきたいと存じます。本日の議題は、お手元の議事日程のとおりでございます。
具体的に申し上げますと、令和7年度関税改正検討項目として「暫定税率等の適用期限の延長等」と「特別特恵関税の適用期限の延長」、次いで「関税の犯則調査・処分に係る手続のデジタル化」、「不当廉売関税に係る迂回防止制度の創設」につきまして順次説明を受け、審議を行ってまいりたいと思います。
それでは、まず大関関税課長から「暫定税率等の適用期限の延長等」につきまして説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○大関関税課長 おはようございます。関税課長の大関でございます。
初めに、「暫定税率等の適用期限の延長等」について御説明いたします。
資料1-1の1ページを御覧ください。基本税率は中長期的な観点から内外価格差や真に必要な保護水準等を勘案して設定される税率です。他方で、暫定税率は政策上の必要性等から適用期限を定めて基本税率を暫定的に修正する税率です。令和7年度関税改正におきましては、令和7年3月31日に適用期限が到来する411品目について延長等を検討する必要がございます。
2ページ目を御覧ください。延長等の検討に当たっては、生産者及び消費者等の間の利益調整に及ぼす影響や国際交渉との関係等を考慮しております。基本税率化の有無につきましても、国内産業や国際交渉の状況、政策上の必要性等を踏まえ、関係省庁等と継続的に議論してきております。
こうした検討の結果、411品目について暫定税率の適用期限を1年延長することとしたいと考えております。
続きまして、特別緊急関税制度の適用期限の延長について御説明いたします。3ページ目を御覧ください。特別緊急関税制度は、ウルグアイ・ラウンド合意に基づいて関税化された農産品につきまして、関税化措置に伴う輸入急増時等の安全弁として、輸入数量が一定の水準を超えた場合や輸入価格が一定の水準を下回った場合にそれぞれ関税率の引上げを行うものでございます。適用期間は1年間であり、毎年度、期限延長の必要性を検討しております。
資料中段にお示ししておりますとおり、本制度はウルグアイ・ラウンド合意に基づき関税化された農産品につきまして、当該農産品の輸入が急増した場合等に備えて設けられた制度であることから、国際交渉の状況等を踏まえて検討する必要があると考えております。
この点、本制度は現在協議中のWTOドーハ・ラウンド交渉を踏まえ、経済連携協定に係る交渉の対象となり得るものであるところ、国際交渉の状況等を予断なく注視する必要があることから、改正の方向性については適用期限を1年間延長することが適当であると考えております。
次に、4ページ目を御覧ください。加糖調製品に係る関税の取扱いについて御説明いたします。加糖調製品は総合的なTPP等関連政策大綱に基づき、CPTPP発効時に糖価調整制度における調整金の対象に追加されております。CPTPP発効に伴い、加糖調製品に係る調整金を原資とした価格調整により国産の砂糖は加糖調製品よりも価格上昇が抑制されているものの、前回の農林水産省からの御説明のとおり、両者の間には依然として価格差が存在しております。こうした状況の下で、農林水産省から加糖調製品に係る調整金収入の拡大を可能とし、加糖調製品と国産の砂糖との価格差をさらに縮小するため、令和7年度のCPTPP税率の設定状況等を踏まえた暫定税率の引下げを求める要望が提出されております。
糖価調整制度の目的は、甘味資源作物に係る農業所得の確保等を通じて国内産糖の安定的な供給の確保を図ることにより国民生活の安定に寄与することであり、加糖調製品に係る調整金を拡充する必要性の有無については、加糖調製品と国産の砂糖の価格差や需給の動向、国内産糖に係る競争力強化の取組状況、暫定税率の引下げによる政策効果などを勘案した上で、消費者の視点も踏まえつつ検討すべきであると考えております。
この点、加糖調製品と国産の砂糖の価格差は足元で縮小しておりますが、依然として価格差が認められること、また、加糖調製品全体の輸入量は減少傾向にあるものの、一部の品目では減少幅が縮小しており、主な減少要因についても異常気象などを背景としたカカオ豆の需給逼迫、価格高騰等の一時的な要因によるものであることや、CPTPPの関税割当枠内税率の引下げや枠数量の拡大等に伴い、枠内での輸入量が増加している品目があることなどを踏まえますと、今後再び加糖調製品全体の輸入量が増加に転じる可能性も否定できないこと、それから、甘味資源作物の生産費削減を含む国内産糖に係る競争力強化等に努めていること、暫定税率の引下げにより確保した調整金を原資とした原料糖の価格調整により国産の砂糖の価格が抑制され、消費者の利益に寄与していると評価できることなどを総合的に勘案いたしますと、加糖調製品5品目について、令和7年度のCPTPP税率の設定状況等を踏まえ、国内産糖の支援の原資となる調整金の拡大が可能となるよう、暫定税率を引き下げることが適当であると考えております。
なお、本件につきましては来年度以降についても、加糖調製品と国産の砂糖の価格差及び需給の動向、国内産糖に係る競争力強化の取組状況、暫定税率引下げによる政策効果、食料の安定的な供給等における砂糖及び加糖調製品の位置づけを踏まえた関連制度の今後の在り方及びその在り方の実現に向けた具体的な取組の進捗等について、消費者の視点も踏まえつつ、農林水産省に検証及び報告を頂く必要があると考えております。
続きまして、5ページ目を御覧ください。給食用脱脂粉乳に対する関税軽減措置について御説明いたします。幼稚園、小学校、中学校や児童福祉法上の児童福祉施設等において提供される給食用の脱脂粉乳は一定の数量の範囲内で関税が無税となっております。本年の通常国会で成立した子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律により、令和7年4月から児童福祉法上に乳児等通園支援事業が新設されることとなりました。乳児等通園支援事業とは、満3歳未満の保育所に入所していない乳幼児を対象に当該事業の認可を受けた保育所等の施設において月一定時間までの利用可能枠の中で単位時間等で柔軟に通園することを可能とするものです。利用する乳幼児に対して適切な遊び、生活の場を提供すること等を目的としております。今般、こども家庭庁から既に関税の軽減措置が講じられている施設等との公平性や期待される効果等に鑑み、乳児等通園支援事業を行う施設において児童に提供される脱脂粉乳についても関税の低減措置の対象とするよう要望がなされております。
給食用脱脂粉乳に対する関税措置は、発育途上にある児童や生徒の心身の健全な発育等を図ることを目的としており、乳児等通園支援事業を本措置の対象とすることは制度の趣旨に沿ったものであると考えております。また、関税軽減措置については、事業開始に当たって事前の認可を必要とする等、行政による一定の関与を受け、一定の水準が確保されている施設に限り、原則施設単位でその範囲を定め、対象としております。乳児等通園支援事業の実施に当たっても、既に関税軽減措置の対象となっている施設と同程度の水準を確保した上で認可が必要になるなど、行政による一定の関与を受けることとなるため、給食用脱脂粉乳に対する関税軽減措置の対象施設に係る現行の考え方と照らして整合的であると考えております。
こうしたことを踏まえまして、発育途上にある児童や生徒の心身の健全な発育等を図るとの現行制度の目的を踏まえ、乳児等通園支援事業を行う施設において児童に提供される脱脂粉乳について、関税軽減措置の対象に加えることが適当であると考えております。
説明は以上となります。
○森田分科会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見等ございましたら御発言をお願いいたします。
まず植田委員、どうぞ。
○植田委員 丁寧な御説明をありがとうございます。どちらかというと質問とコメントが少々あります。
特別緊急関税制度、これは一部の農産品について輸入数量が一定水準を超えた場合、輸入価格が一定水準を下回った場合、引き上げるということで、令和5年度は数量ベース2回、価格ベース10回発動と書いてあります。けれども、この価格を具体的にどの水準で決めるのでしょうか。例えば過去10年、20年の平均のような形で決めますと、当然過去1、2年、3年ぐらいは非常に円安が進んでおり、世界的に食料価格が上がっているというのが私の認識なんですが、その2つを考えると、例えば過去10年、20年の平均の、こういう農産品の価格を考えると、恐らく価格は高いので、これが適用されることがないような気がするのです。どういうふうに計算して適用されているのでしょうか。それから僕自身はどちらかというと反対ですが、逆にむしろ思いっ切り世界的に価格が高くなったときに、関税をむしろ消費者のために引き下げるという制度があってもいいぐらいな気もするのですが。もっとも、それはあまりここと関係がないので、それは単なるコメントといたします。いずれにせよ、どういうふうに価格の基準を決めていらっしゃるのかなというのが質問でございます。
それから、加糖調製品のところの改正の方向性の最後のコメ印のところだけ、ちょっとコメントがあります。今後農林水産省に対して価格差や需給の動向、いろいろなことを調べてくださいねと書いてあります。その中でもう1つあるとすると、農業所得の確保が1つの目的になっておりますので、農家の所得、特に砂糖をつくられている農家の所得水準というのは本当にそんなに低いのかというのを調べていただきたい。特に北海道の農家、てん菜の農家の方、それほど所得が低くはないんじゃないかと思われます。沖縄のことは分からないんですけれども、当然農家の所得というのも明らかにしていただければと思います。
○森田分科会長 それでは、お答えいただきます。
○大関関税課長 ご質問ありがとうございます。価格に基づくSSGの発動要件についてでございますけれども、こちらは発動価格基準がウルグアイ・ラウンド交渉で決まっていまして、1986年から88年の平均価格と決まっているところでございます。ウルグアイ・ラウンドの交渉で決まった枠組みに基づくものということで、このような形で今も続いているものです。
2点目の農林水産省において検証する項目の中に農家の所得についても含めてという点につきましては、今も総合的に様々な要素を検討していただいている中で、競争力の確保など、そういったものの前提としてそういったものも入っているとは思いますけれども、その点、引き続き農林水産省ともよく協議をしてまいりたいというふうに考えております。
○森田分科会長 農林水産省の方、いらっしゃればコメントいただけますか。
○白倉農産局地域作物課課長補佐(農林水産省) 地域作物課の白倉でございます。御質問、御指摘ありがとうございました。北海道のてん菜については、当然これは南のさとうきびもそうなんですけれども、コストと販売価格との差額をしっかりと交付金として出していくという考え方で交付金を出しておりますが、てん菜の農家については、北海道は畑作地域でございますので輪作体系というものを組んでございます。ほかに小麦だとか豆だとか。そういったものと複合的に経営をする中で、てん菜の面積をどういうふうにしようか、これは毎年変わってくるものでございますので、北海道の農家の所得といいますと決しててん菜だけで経営されているとは限らない部分もありますので、一概に高い低いということはなかなか言えないのかもしれませんけれども、御指摘いただきました所得のことについては、来年以降、検討するに当たって、それを踏まえて考えさせていただきたいと思っております。ありがとうございます。
○森田分科会長 では、佐藤委員、どうぞ。
○佐藤(英)委員 慶應義塾の佐藤です。暫定税率について1点コメントがございます。
まず御提案いただいた改正の方向性については、特に反対する理由はございませんので賛成です。この暫定税率については、当然毎年ここで審議をしておるわけですが、私、この分科会に所属してから多分9年目か10年目になりまして、毎年微修正という印象を持っておるところであります。どういうものに暫定税率が適用されているかという全体像みたいなものを結局見たことがなくて、御提案を反対する理由がないから賛成しているというのが現状だと、正直言うと思っております。1ページ目に品目について、関税割当制度以下、関税局のほうでお考えの種類に応じたものや対象品目の例を挙げてくださっていますが、もう少しこの制度の全体像が分かるような資料を次回以降は頂けないだろうかと思います。もちろん411項目全部お見せいただいても当然分からないわけですが、例えば暫定税率を設定してから5年以下のもの、10年以下のもの、あるいは20年以上のものということが分かる資料がありますと、さすがに20年も、ひょっとしたらそれ以上も暫定税率で続けているということが適切なのかということをやはり考えるべきだろうと思います。もちろん年限だけではございませんが。あるいは種類も、協議していらっしゃる省庁ごとのほうがいいのかもしれませんが、農作物であるとか石油製品であるとかというような、どういうものに何品目ぐらい暫定税率を定めておられるのかというような、もう少し深掘りして、私だけかもしれませんが、我々が安心して賛成できるような資料を次回以降お見せいただければと強く願っております。
以上です。
○森田分科会長 いかがでしょうか。
○大関関税課長 御指摘ありがとうございます。今頂いた御指摘を踏まえて、次回以降、資料については工夫をしたいというふうに考えております。ありがとうございます。
○森田分科会長 宮島委員、オンラインでどうぞ。
○宮島委員 まず暫定税率に関しましては、今の御意見と同じような感想を持っております。税のほうの世界では、かなり時代に合わない税が残っていることに関して見直しが行われた時期があるんですけれども、関税の暫定税率に関しては、それよりは国家間の戦略的な部分があるので、ある程度暫定税率が残ることに関しては仕方がないかなと思っております。今回の御提案に関しても賛成です。
一方で、やはり漫然と行われているものがないかということと、関税の世界をめぐっては今非常に世界的な動揺がある可能性があると思っております。それぞれの暫定税率に関してどのような戦略なのかということも考えたいと思います。
加えて、これは御質問なんですけれども、まさにアメリカが昨日、今日、様々な関税を中国などにかけるというようなことが明らかになっております。様子を見守るということではあるでしょうし、日本がそれで何か対抗措置をとるというような状況にないことは承知しているんですけれども、今の世界的な状況に対して、関税の世界でどのようにお考えかということを改めて伺えればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○森田分科会長 これは、大関課長、どうぞ。
○大関関税課長 宮島委員、御質問ありがとうございます。アメリカの次期政権の発足を前に関税政策についても様々なことが打ち出されていることは報道などで承知をしておりますが、次期政権発足後の政策やその影響につきましては、なかなか予断を持ってコメントすることは差し控えたいというふうに考えております。ただ、アメリカは我が国最大の投資国でありますし、主要な貿易相手国でありますので、今後の政策動向の影響がどのような形で生じるのか、しっかりと注視して対応していく必要があると考えております。また、引き続きどのような展開になっていくのか、情報収集や分析などはしっかりと問題意識を持って対応していきたいと考えております。
○宮島委員 いろいろな状況が考えられると思いますので、関税審としても暫定税率、その他、御提案や意見が申し上げられるように、先ほどの資料など、どうぞよろしくお願いいたします。
○森田分科会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。
それでは、ないようでございますので、続きまして、「特別特恵関税の適用期限の延長」につきまして、大関関税課長から御説明をお願いいたします。
○大関関税課長 続きまして、「特別特恵関税の適用期限の延長」について御説明いたします。資料2-1を御覧ください。
特恵関税制度は、開発途上国の経済発展を支援する観点から、開発途上国からの輸入物品に対して一般の関税率より低い関税率を適用する制度です。特恵関税制度の対象国は130か国・地域であり、このうち後発開発途上国、いわゆるLDCの44か国に対しては特別特恵関税制度として約98%の輸入物品を無税無枠とする一層の優遇措置を講じております。現行制度においては、特別特恵関税の対象国は国際連合総会の決議によるLDC卒業から1年以内に適用除外となりますが、今般、外務省よりその適用期限を3年に延長する要望が提出されております。その背景ですが、WTOにおいて2023年10月、LDC卒業国に対する関税の優遇措置について、LDC卒業後の円滑かつ持続可能な移行期間を提供することを奨励する旨の一般理事会決定が採択されました。その後、本年2月のWTO第13回閣僚会議において同文書の内容を歓迎する旨の閣僚宣言が発出されました。
考慮すべき事項として、G7のうちEU及びイギリスはLDC卒業国に対して特恵関税を卒業後も3年適用する措置を既に導入しており、カナダも同措置を導入予定という状況です。WTOやG7諸国の動向を踏まえれば、G7広島サミット等で開発途上国との連携の重要性を訴えてきた日本としても、開発途上国の持続可能な発展を支援する観点で延長措置を講じる必要があり、開発途上国への連帯を示すためには早期の導入が必要です。
なお、特恵関税制度は供与国側による一方的な恩恵措置であることから、WTOにおいて当該延長措置の導入時期や具体的な内容は定められておりません。諸外国の措置に鑑みれば、LDC卒業後の特別特恵関税の適用期限は3年以内とするのが妥当と考えております。
また、輸入状況や国内産業との競合性等について関係省庁において検証を行ったところ、本措置の導入による国内産業への影響は限定的でございました。
以上を踏まえ、特別特恵関税の適用期限をLDC卒業から3年以内としたいと考えております。他方、開発途上国との連携強化の重要性に鑑み、特恵関税制度が全体として開発途上国の成長に一層寄与するものとなるよう、諸外国の制度を参考としながら特恵関税制度の在り方について引き続き検討を行うことが必要と考えております。
2ページ目以降は参考資料となります。参考1の図は今回の改正のイメージを図示したものです。運用上、年度当初の4月1日時点で特恵受益国等を告示していることから、改正後は、仮にX年度中にある国が後発開発途上国から卒業する旨国際連合において決議がなされた場合、Xプラス3年度の4月1日以降、当該国は特別特恵受益国の適用を除外されるということになります。
そのほか、表において現時点で明らかになっている今後のLDC卒業予定国をお示ししております。
参考2では一般特恵関税及び特別特恵関税それぞれの指定要件や対象品目を、また、参考3では日本・EU・カナダ・米国の制度の概要、参考4ではWTOの一般理事会決定及び第13回閣僚会議の閣僚宣言を掲載してございます。
御説明は以上です。
○森田分科会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見等ございましたら御発言をお願いいたします。
片山委員、どうぞ。
○片山委員 私からは特恵関税制度全体の在り方についてということで、資料の参考3、4ページのところですが、EUの方でGSPプラスというのを設けておりますが、人権保障、環境保障に関連する一連の国際条約を批准・準拠する開発途上国に対して、EUがさらなる特恵措置を付与する制度ということですが、今後、我が国もこういった制度を設けることが必要ではないかと考えておりまして、価値観を共有したり、公正な貿易体制を整備する上では重要ではないかというふうに考えております。その際、やはり国際労働基準も意識することが肝要と思いますので、ILOの関連条約の批准状況についてもこの項目の中に加えていただくようお願いしたいと思います。
私からは以上です。
○森田分科会長 これにつきまして、お願いします。
○大関関税課長 御指摘ありがとうございます。御指摘も踏まえまして、諸外国の制度も参考に我が国の制度設計も考えていく必要があると考えております。ありがとうございます。
○森田分科会長 ほかにいかがでしょうか。この件よろしゅうございますか。
それでは、続きまして「関税の犯則調査・処分に係る手続のデジタル化」につきまして、酒井調査課長から御説明をお願いいたします。
○酒井調査課長 調査課長の酒井でございます。よろしくお願いいたします。
私からは資料3-1に沿って説明をさせていただきます。「関税の犯則調査・処分に係る手続のデジタル化」についてでございます。
この資料に入る前に、税関職員が行います犯則調査ですけれども、処分でありますとか、関税法の犯罪につきましては、その特殊性、専門性等に鑑みまして関税法において規定がされております。税関職員は関税法に基づき犯則嫌疑者に対する質問、居宅等の捜索、証拠の差押えなどを行うとともに、犯則の心証を得た場合には通告処分や検察官への告発といったことを行っております。
資料の1ページ目を御覧ください。犯則調査手続のデジタル化の背景ですけれども、現在、法務省におきまして刑事手続の円滑化・迅速化、また、刑事手続に関与する国民の負担を軽減することを目的として、刑事手続をデジタル化するための刑事訴訟法等の改正が検討されております。この年末の臨時国会において刑事訴訟法等が改正されるかどうかということは、まだ現時点では定かではありませんが、改正される場合には関税法上の犯則調査・処分についても手続の円滑・迅速な実現を図るとともに、関与する国民の負担を軽減するため、関税法上の犯則調査・処分手続のデジタル化への対応を検討するものでございます。
改正の方向性ですけれども、資料中段、(1)電磁的記録提供命令等の創設につきましては、現在、犯則嫌疑者の通信履歴といった電子データの差押えを行う場合には税関職員が電子データを保有している事業所に赴きまして、通信履歴を記録しましたUSBメモリなどを差し押さえております。対面での対応が必要となる事業者の側の負担でありますとか、出張等を伴う税関職員の負担といったものが生じてございます。電磁的記録提供命令といった規定を設けることによりまして、USBメモリ等の物理的な記録媒体の授受を介さずに、オンラインで送信を受ける方法によって電子データの提供を受けることを可能にすると、そういったことが考えられます。
(2)捜索・差押え許可状等の電子化でございます。こちらにつきましては、現在、税関職員が捜索・差押え許可状等を請求する際には大量の資料を書面により裁判所に持参する必要があるほか、請求から交付までに長時間の待機を要する場合もございます。また、検察官への告発は書面により行っているところ、告発に係る書類を都度、検察官に持ち込んでおります。改正によりまして、捜索・差押え許可状などの請求・交付、提示といったものの電子化及び告発の電子化の規定を設けることが考えられます。
(3)差押目録等の電子化につきましては、差押目録は押収したものの一覧でございますが、こちらにつきましては作成の上、差押えをした物件の所有者等にその謄本を交付し、調書を作成し、立会人とともにこれらに署名押印することとなっております。改正によりまして電子データによる差押目録や調書の作成、管理などの規定を設けることが考えられます。
資料の2ページ目ですけれども、不正薬物の摘発実績、関税法等違反事件の告発件数等をつけております。一番下の税関における許可状の請求件数のところを御覧頂きますと、一番下の欄に税関における許可状の請求件数が出ております。昨年、令和5年度の許可状請求数は3,500件を超えておりまして、現在、書面で行われているこうした事務が電子化されることによる効率化、負担軽減の効果は小さくないと考えております。
資料の3ページ目は犯則調査・処分の流れに係る参考資料となります。お時間のあるときに参照いただければと思います。
説明は以上となります。
○森田分科会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見ございましたら御発言をお願いいたします。
○植田委員 全くこういう件は素人なので非常にコメントしづらく、どちらかというと質問です。こちら側の作業といいますか、犯則調査・処分に係る手続のデジタル化ということで、いろいろとこういう手続をするこちら側のほうは、ある意味で心理的にも時間的にもコストが下がりますので良いと思います。一方で、濫用されるおそれとか、逆に言うとそういうことを言われたほうが、対抗するほうの措置は何らかの形で、同じようにデジタル化とかというのがあるのかどうかというのが少々気になった次第です。どんどん摘発すればいいじゃないかという考え方もある一方で、すごく簡単にやれるようになったら、それで本当に国民が幸せなのかというのもちょっと疑問に思った次第でございます。
○森田分科会長 今の点につきまして。
○酒井調査課長 御質問ありがとうございます。委員の問題意識は、権限拡大というか、濫用というお言葉がありましたけれども、この改正自体は、制度、特に裁判所と税関、あるいは検察庁との関係で、そこのやり取りを電子化しようという部分と、あとは委員御懸念の民間、事業者等との関係ということでは、特に(1)の電磁的記録提供命令のところが直接国民の皆様と税関が関わるところと思います。実際、ここで例に挙げておりますとおり、通信履歴、電話とかメールのそういった記録ということになりますけれども、今まで大体そういったものも、大手であれば電磁的に、電子的に提供いただくということは可能なんですが、小さな事業所等の場合では紙のほうがいいとか、ちょっとメールはとか、そういったこともいろいろあると思いますので、そういった意味で書面による手続も併存する、そういった形を考えております。
いずれにしても、法改正後もできれば円滑に、お互いに対面でということになりますと、日時を決めて場所を決めてというところからになりますので、そういったことがないように、もちろん先方と調整の上で差押え等々も行いますので、そこは負担にならないようにということで考えております。
(2)、(3)はあくまで、繰り返しになりますけれども、行政、我々の中の話でございまして、裁判所、法務省と我々関税局との間で、まず先に法務省側、裁判所側のシステムの開発があって、我々もそれに乗っかっていくという、そういう改正になりますので、必ずしも権限の部分というところとは少し違っているのかなと思っております。
○森田分科会長 野原委員、オンラインでどうぞ。
○野原委員 先ほどの回答内容に重複する部分がありますが、2点質問させていただきたいと思います。私は基本的にこのような手続のデジタル化推進に大いに賛成で、積極的に進めていただきたいと考えます。資料1ページ目の改正の方向性にあります、(1)、(2)、(3)のうち、(2)、(3)については、税関、裁判所、検察庁それぞれの機関間の情報、手続のやり取りをデジタル化するという内容で、改正により行き来する稼働も減りますし、デジタル化したデータ共有によって、その後の記録管理についても効率的になるので、積極的に進めていただきたいと思います。
質問は(1)についてですが、電磁的記録提供命令等の創設の場合は、税関職員が事業所に臨場してデジタルデータを現地で確認しないといけない場合があるのではないかと思います。通信会社等の大手企業で必要なデータを提供してもらうのであれば問題ないですが、事業所サイドが秘匿する可能性のあるデータを差し押さえるような場合もあるのかと思いますが、その場合のリスクについてどのように考えて今後進めていかれるのか、教えていただきたい。これが1点目の質問です。
2点目は、同じく1ページ目最下段のコメ印で、犯則調査手続のデジタル化に対応後も書面による手続はそのまま据え置くと記載されていますが、デジタル化を推進することで社会全体の生産性向上に資するという観点からも、できる限りデジタル化対応でと思います。先ほどの御説明において少し回答していただきましたが、どのような場合に書面による手続を許すのかについて、再度御説明いただきたいと思います。
以上、2点についてよろしくお願いします。
○森田分科会長 それでは、御回答をお願いできますか。
○酒井調査課長 御質問ありがとうございます。1つ目の必要なデータを差押えするとき、どういうふうにしているのかというところなんですけれども、事業者の大小にかかわらず、通常差押えを行う場合には、特に電磁的記録、特に通信履歴というのは、場合によっては大変膨大な量がございまして、それを突然、調整なく事業所に行って出してくださいと言っても、なかなかそこは相手方も対応ができないですし、御負担ということになりますので、税関では赴く前に当然連絡を入れさせていただいて、どういったものが提供可能かといったようなことも含めて伺った上で、日時等も調整して、あと、何を実際頂くのかということも、どういった形で頂くのかといったことも調整した上で、実際執行というか、差押えを実施させていただいております。そういう意味では、事業者側の、国民の側からすれば、突然何の前触れもなく税関の職員が来て押収ということはなくて、事前に調整した上でやらせていただいております。それが1つ目の質問に対する回答になります。
2つ目ですけれども、書面による手続の存置ということにつきましては、先ほどの説明と重複しますけれども、事業者によっては電磁的にメール等を出すということはちょっとできないといったことがあるかもしれませんし、あとは個人の方とかで、そもそもそういう電子的な手段がないような場合も考えられると思いますので、そういったことも考えて両方存置、併存させるといったことと、あとはシステム対応につきましては、一応その予定は立っておりまして、法務省のほうで今検討中のスケジュールとしては、本年度からシステム全体の設計を始めまして、目標としては2026年、令和8年度中に裁判所、検察庁側のシステムを構築するということになっておりますので、そういった意味では税関手続もそれに遅れを取らない形で、ついていく形になりますので、漠然と期限なく、デジタル化がいつになるか分からないということではなくて、そういった期限も決まっておりますので、我々としてもそれにのっとって淡々とDX、しっかり進めていきたいと思っております。
○野原委員 1点目の質問への回答について確認させてください。事業所が通信会社で第三者として情報を提供する場合にはおっしゃるとおりですけれども、事業所のほうに隠し得るリスクがあるような場合には、事前の準備期間があっては困ると思いますが、その辺りはどうでしょうか。
○酒井調査課長 御質問ありがとうございます。説明を少しはしょった部分がありましたけれども、委員が御指摘のとおり、協力的な関係にある事業者に対しては全く御指摘いただいたとおりで、事前に調整してということになるんですが、通信事業者自体は多くの犯則事件の場合、第三者として、情報、そういう通信履歴というものを提供いただくことが多いものですから、そういった意味では協力的にいろいろなことを、データを協力いただけると。ただ、委員御指摘のとおり相手が協力的でないとか、極端な場合というか、実際にあるのは携帯電話そのものですけれども、まさにその場で押収しないと、その場で消去ということもあり得るものですから、すぐに差押えをする、当然予告なしに対面でやるということになるんですが、逆にそういったすぐに差押えというような状況は、むしろ電磁的というよりは、本当に携帯電話そのものをまさに犯則嫌疑者、これは特に薬物の摘発の場合なんかは実際そういうことがあるわけなんですけれども、まさに本人を目の前にして、その場で本人同意の上、携帯電話を差し押さえる、記録を消去させないといったことはございますので、先ほどの書面も存置というのと若干重複するんですが、相手が非協力的な場合には逆に電子でのやり取りになじまないものも実際ございまして、そういう場合には強制的に、当然予告なく差し押さえるということもございます。
○森田分科会長 それでは、御質問が伊藤委員、河野委員、佐藤(英)委員ということでよろしいでしょうか。では、伊藤委員からどうぞ。
○伊藤委員 御説明どうもありがとうございました。デジタル化の方向については賛成なんですが、あまり具体的な事例等々よく分からなくて御質問させていただきたいと思います。2ページ目の下の税関における許可状の請求件数というところで、通信事業者の件数がかなり多いという印象を受けたのですが、どういうケースなのかをもう少し詳しく教えていただきたいと思います。薬物等の輸入に関連する話かと思いますが、通信事業者という場合、通信事業者自身が輸入をしている場合ではなくて、ただオンラインプラットフォームを提供しているというイメージでしょうか。実際、薬物等の輸入に関連して通信事業者に対する許可状を請求する件数というのが最近とても増えているということでしょうか。また、コロナ以降、特に小口の輸入もかなり増えている状況ですが、通信事業者を通じた薬物等の輸入もかなり増加しているという認識でよろしいでしょうか。増加の件数や、それに対する税関の負担負担増などは、どのような状況でしょうか。通信事業者はただ単にプラットフォームを提供しているだけだとすると、そこに調査に入った場合にどれぐらいの証拠がつかめるのか、その辺り、もう少し詳しくお尋ねできればと思います。
以上です。
○森田分科会長 では、御回答をお願いいたします。
○酒井調査課長 御質問ありがとうございます。通信事業者に立ち入るというか、差押えをお願いするのは、まさに通信履歴ということで、電話の通話が何月何日にどの番号にあったか、それは例えば携帯電話を押収したときに、薬物等を密輸した者の携帯電話の中に幾つか電話番号があると。その中に発信履歴、受信履歴があると思うんですけれども、そういった特定の携帯番号と、海外でありますとか、どういう番号と通信があったのかというのを確かめるために、まさに第三者の通信事業者にお願いをして、この番号についての通話履歴、通信履歴を差し押さえたいということでお願いをして、差押えさせていただいています。そういう意味では委員御指摘のとおり、通信事業者はまさにデータを持っているだけでありまして、特に何らか関与があるわけではないんですけれども、そういった証拠として、まさに犯則嫌疑者が特定の番号に何月何日にこれだけの時間通話をしていた、そういったことを証拠化するために差押えをさせていただいております。
それから件数、1,300件ということで増えているんでしょうかということなんですが、これも委員御指摘のとおり、最近実は小口の薬物事案が増えているということでございます。そうすると犯則の調査の件数も実は増えております。そういう意味では差押えの許可状、通信事業者に対する請求も含めて件数は増えている状況でございます。
○森田分科会長 それでは、河野委員、どうぞ。
○河野委員 御説明ありがとうございました。手続が合理化されたことは非常に良いことだと思いますので促進していただきたいと思います。また、このシステムの導入によって集積されたデータが犯罪の防止や、再犯の可能性がある人の事前の特定といったいわゆる犯罪の防止につながるようなデータとして利用ができるのではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。プライバシーの保護はもちろん重要ですが、データを犯罪の防止に使える可能性があるかどうかを伺わせていただければと思います。
○酒井調査課長 御質問ありがとうございます。薬物事案の場合は、1件の調査の中でいろいろな関係者とか、関連する者というふうに我々は言っていますけれども、電話番号が出てきたり、特定の者の名前が出てきたりということがございます。ただ、1つの調査の中ではなかなか証拠がつかめなくて、名前は出てくるんだけども、実際何をしているのかが分からないとか、あるいは国内にいないとか、そういったこともございますので、犯罪の防止、先々のですね、例えば密輸を防止するという観点では、我々そういうのは当然蓄積したものもございますので、どういった関係、そういった関係する者、出てきた者ごとの関係をまた調査するという、また別のこともやっておりまして、そういう中でいろいろな密輸の計画とか、そういうものが明らかになってくれば、また準備して摘発につなげるという、そういった活用というか、蓄積に基づくさらなる調査というのは継続してやってきております。
○森田分科会長 それでは、佐藤(英)委員、お願いします。
○佐藤(英)委員 改正の方向性については賛成です。(1)の電磁的記録提供命令の創設ですが、現行の記録命令付差押え等は裁判官の許可状を必要とするはずですが、改正後もその点は変わりませんよねという点を確認させていただきたいのが1点。
それから参考の2ページ目で、ぴったり範囲が一致するものではありませんが、不正薬物について令和元年が摘発件数1,047、令和4年が1,046と、ほぼ同じ水準であるのに対して、禁制品輸出入事犯が令和元年は514件あるのに令和4年は約半分と言っていい272件と大きく差がありますが、これはどういう要因によるものと理解すればよろしいでしょうか。よろしくお願いします。
○酒井調査課長 御質問ありがとうございます。1つ目の電磁的記録提供命令については、当然裁判所に許可状を取った上で差押えしますので、そこは変わりません。
それから、資料の2ページ目のところですけれども、実は告発に至るまで大分時間の差がございまして、1件摘発した後も、先ほどのお話と重複しますが、関連者が出てきたりとか、いろいろなことで調査が数年に及ぶといったことも結構ございまして、そうすると例えば令和元年の事件について数年たってから告発といったようなこともございますので、どうしても数字にばらつきが出てくるということでございます。
○森田分科会長 それでは、オンラインで末冨委員、どうぞ。
○末冨委員 1点、時間軸について教えていただければと思います。犯罪がデジタル化している以上、法律のほうもデジタル化に対応するということは喫緊の課題だと考えております。法務省の刑事訴訟法の改正に連動する形でこの改正を考えていらっしゃって、なおかつ先ほどの御説明では年末に刑訴法の改正がされるか定かではないということでしたが、念頭においていらっしゃるタイムラインについて、法務省も含めてですけれども、例えば今年、来年初頭ぐらいを念頭に置いていらっしゃるのか、それとももう少し長い時間軸になるのかという、時間軸についての計画がありましたら具体的に教えていただければと思います。
○酒井調査課長 御質問ありがとうございます。我々も法務省のほうにいろいろ伺わせていただいている中では、刑事訴訟法の施行につきましては、段階が2段階に分かれるんですが、電磁的記録提供命令については令和7年度中、それから書類のデジタル化に係る部分は令和8年度中ということで法務省のほうでは考えているということで、そういった意味でスケジュールは今あって、我々の関税法の改正についてもそれに倣った形で進める方向でございます。
○森田分科会長 ほかに御発言はございますでしょうか。よろしいですね。
ないようでございますので、続きまして「不当廉売関税に係る迂回防止制度の創設」につきまして、経済産業省、財務省よりそれぞれ御説明を受けたいと思います。まず経済産業省のほうからお願いいたします。
○信田貿易経済安全保障局貿易管理部貿易審査課特殊関税等調査室長(経済産業省) 経済産業省特殊関税等調査室の信田でございます。本日は「不当廉売関税に係る迂回防止制度の創設」につきまして、資料4-1に基づきまして御説明いたします。
1ページを御覧ください。不当廉売関税制度の概要でございます。御案内かと思いますけれども、不当廉売関税制度は正常価格、輸出国内の販売価格でございますけれども、これよりも低い価格で輸入された貨物が国内産業に損害を与える場合に、国内産業を保護するため、当該輸入貨物に対して正常価格とダンピング価格の差額、ダンピング・マージンでございますけれども――以下の関税を課すもので、これはWTO協定上認められた制度でございます。
下の概念図でございますけれども、例えば輸出国内の販売価格が120円で、日本への輸出価格が100円の場合、ダンピング・マージン率は20%となります。
上の四角囲いに戻りますけれども、我が国では不当廉売関税制度は関税定率法等に基づき規定されております。以下の(1)から(4)の課税要件を満たした場合に賦課できる仕組みとなっているところでございます。
2ページです。こちらはAD関税の課題でございます。AD関税に対して、それを回避する、迂回という行為がございます。迂回行為とは少々分かりにくいかもしれませんけれども、AD関税の課税命令が示す課税範囲から形式的に外れるものの、実質的には課税命令前と同様の商業行為を行うことを指します。我が国でも近年、AD関税対象製品の類似品の輸入の増加や第三国からの輸入の増加が確認されるなど、AD関税を回避するための迂回が行われている懸念が生じております。
迂回には、主に第三国迂回、軽微変更、輸入国迂回がございますが、以下の迂回類型別の迂回事例でございます。1つ目は第三国迂回ですけれども、これはAD関税の対象国から部素材を第三国に輸出し、そこで加工してから輸入国に輸出する行為です。例えば、韓国・中国産の溶融亜鉛めっき鉄線に関してでございますけれども、これがAD関税が賦課された後、韓国や中国からの輸入は減少しましたが、中国からの第三国への鉄線の輸出、そして当該第三国からの輸入が増加しました。これは第三国で加工した後、日本に輸出するという第三国迂回の疑いが生じていることでございます。
3ページに移ってください。軽微変更でございます。これは関税対象の産品をわずかに異なる製品に切り替えて輸出することでAD関税を回避する行為でございます。例えば韓国・中国産の溶融亜鉛めっき鉄線に対して、課税後に中国からの類似品、ここではアルミ合金加工した代替品でございますけれども、これの輸入が増加しております。
下の図に移っていただければと思いますけれども、もう1つの迂回行為である輸入国迂回でございます。これは課税対象の完成品の部品を輸入国に持ち込み、そこで組み立てて販売する行為となります。例えばEUの案件でございますけれども、中国産自転車に対してAD関税が課された後、中国から自転車の部品を輸出して、EU国内で組み立てて販売する企業が存在したため、自転車部品に対しても原措置と同じAD関税を課税しているということになります。
4ページに移ってください。我が国では以上御説明したようなAD関税の迂回が疑われる場合には、現状では改めてAD調査を行う必要がありますが、これには以下のような課題がございます。
まずは、迂回製品による国内産業への損害を確認するためには、通常迂回が生じてから少なくとも3年間のデータが必要になり、迅速な対応が難しくなります。
2つ目でございますけれども、迂回製品単独での損害の認定が難しく、調査開始に必要な十分な証拠がそろわない可能性があります。
また、3つ目でございますけれども、通常AD調査は原則1年かけて行うため、迂回が確認されてからAD調査を開始するという対応では国内産業の被害を防ぐことが難しくなるということがございます。
5ページ、現在、WTO協定には迂回行為に対処するための規定は存在しませんが、主要国では既に迂回防止制度を導入しております。G20の中でこの制度を持っていないのは日本とインドネシアのみで、韓国では2025年から施行予定となっております。
次に、これら状況を、課題を踏まえた要望の概要でございます。下の箱、四角囲いでございます。各国が迂回防止制度を持つ中で、我が国でも適切にAD関税を活用して、我が国への不当廉売製品の流入を抑えるため、こうした制度の導入を早期に検討することが必要と考えております。
具体的には、迂回行為の類型、先ほど申し上げた第三国迂回、軽微変更迂回、輸入国迂回とございますけれども、これらや課税要件を定め、迅速に迂回の事実などを認定し、発動中の課税措置の対象に迂回輸入品を含めることを可能とする制度にしたいと考えております。
6ページ、迂回調査の概要案でございます。1つ目の迂回製品に対する課税要件の設定でございます。AD関税の迂回行為に対処するため、迂回防止制度を原措置の延長または補完と整理した上ででございますけれども、迂回の類型別に当初措置とは異なる迂回の認定要件を設けます。これにより迂回行為が行われている事実、実質的な損害、または救済効果が損なわれているという事実の確認等をもって、現行のAD調査を経ずに早期に迂回製品をAD関税の対象としたいと考えております。
2つ目でございますけれども、適用税率でございます。迂回の認定要件が全て満たされた場合には、原措置と同じ税率のAD関税を課税したいと考えております。
3つ目でございますけれども、損害認定の調査対象期間でございますけれども、現行のAD調査の損害認定期間、原則3年でございますけれども、これを1年に短縮したいと考えております。
4つ目の調査期間でございますけれども、こちらにつきましては仮決定を行わず、また現行のAD関税の課税要件とは異なる個別の課税要件を設定することで、現行のAD調査の期間、原則1年でございますけれども、こちらを短縮し、最終決定までの調査期間を9か月以内とすることを考えております。
7ページをご覧ください。こちらは参考でございますけれども、主要国の迂回防止制度の概要になりますので、こちらはご覧いただきたいと思います。
以上、検討中のことが多く含まれておりますけれども、簡単でございますが、説明は以上でございます。
○森田分科会長 ありがとうございました。
それでは、続きまして財務省のほうからご説明をお願いいたします。
○大関関税課長 それでは、資料4-2に沿って御説明いたします。
1ページ目を御覧ください。経済産業省より創設の要望がありました迂回防止制度につきましては、不当廉売関税に係るいわゆる迂回品に対して、現行制度に基づく調査によらず、迂回行為の事実認定をもって迅速に原措置の課税対象を迂回品に広げるものとなります。不当廉売関税制度を所管する財務省としては、本要望を受けた改正により、この制度の実効性が高まるのであれば、それは大変意義のあることだと考えております。そのためにも、多岐にわたる論点を丁寧に検討し、有効に活用できる制度設計にしていくことが重要であると考えております。
そこで、今後の判断に当たって検討すべき主な論点について、大きく3つに分けて御説明いたします。
まず主な論点の1つ目である制度創設の必要性や期待される効果等についてです。具体的には(1)に記載のとおり、迂回防止制度は現行制度の対象を広げるものとなりますが、我が国は諸外国と比較して不当廉売関税の発動実績が少なく、迂回とされる行為の各類型についてそれぞれに該当する事例を精査し、その対処を迂回防止制度によって行い得るのかどうかを十分に検討するための情報収集が重要であると考えています。そこで、既に迂回防止制度を導入しているG20各国等における迂回調査や認定の事例等を参照した上で、本制度の創設・施行により期待される効果や影響を見極める必要があると考えています。
続いて、主な論点の2つ目である制度設計の妥当性・合理性についてです。(2)に記載したとおり、迂回調査の具体的な方法や認定要件等については、既に導入している各国間でも差異があるところ、我が国の実状も踏まえつつ、合理的な経済活動等と迂回行為との区別や課税要件の明確化による予見可能性の確保等について、専門家や有識者の方々の御意見を伺うことも含め、十分な検討が必要と考えております。
また、迂回品に課す税率について、要望では迂回調査においてはダンピング・マージンの調査を行わず、迂回行為の認定をもって原措置の対象貨物と同一の税率を課すこととされております。この点、WTO協定上迂回に関するAD関税の税率の算出方法に係る規定はないため、適切な整理を行うことが必要となると考えております。
加えまして、要望内容はいずれも迂回行為の疑義発生後に迂回調査を行う形式の制度でございますが、迂回を未然に防止する方策がないのかどうかについての検討も必要であろうと考えております。
次のページにまいりまして、主な論点の3つ目であるWTO協定との整合性の確保についてでございます。具体的には(3)に記載しましたとおり、現行の不当廉売関税制度については、WTO協定等において定められている国際的な基準に基づき、関税定率法をはじめ、国内法令等において課税要件や手続などが規定されております。本来、この不当廉売関税制度自体がWTOの基本原則である無差別原則と譲許税率を超える関税賦課の禁止の例外規定でございまして、我が国はそれが保護主義的な目的で濫用されることのないよう注意が必要であるとして、その適切かつ公正な実施を重視してきております。
今回の迂回に対処するための措置については、WTO協定等に明文の規定や国際的な基準は存在しておりません。迂回防止制度を整備する場合には、調査当局による恣意的な運用とならないことに加え、WTO協定等の違反との批判を受けない制度内容及び規定方法を十分に検討する必要があると考えてございます。
以上、御説明しましたとおり、本制度の創設の検討に当たりましては実効性の高い制度とするべく、これら主な論点3つを含め、様々な事項を丁寧に検討する必要があると考えております。そのため、本要望につきましては、令和8年度以降の創設を念頭に引き続き関係省庁等と精査・検討を継続することとしたいと考えております。
私からの説明は以上です。
○森田分科会長 ありがとうございました。
ただいまの両省からの御説明につきまして、御質問、御意見等ございましたら御発言をお願いいたします。
それでは、伊藤委員、植田委員の順番でお願いいたします。
○伊藤委員 御説明どうもありがとうございました。1点、コメントと簡単な御質問があるのですが、まずコメントとしては既に2つ目の資料の1ページ目、制度設計の妥当性・合理性というところでも書かれているとおり、どう認定するか、認定要件の透明性について十分に検討する必要があるという点について、しっかりお願いしたいと考えております。アメリカやEU、英国の例等も調べていただいていますが、諸外国でどういう状況であるか、どういった問題点があるかを十分に調べていただき、制度設計をしっかりと慎重に検討していただきたいと思います。
また、単純な質問ですが、WTOで特にこの件に関して明文の規定や国際的な基準は存在しないというお話でした。WTOの中ではこういった迂回防止に関して何か議論があるのかどうか、また、もし何らかの議論があるとすれば、WTOではどのような議論がされているのか、またはあまりWTOでは話し合われていないのか、その辺りについて少し情報があれば教えていただきたいと思います。
以上です。
○森田分科会長 これは経産省のほうからお答えいただけますか。
○信田貿易経済安全保障局貿易管理部貿易審査課特殊関税等調査室長(経済産業省) コメントありがとうございます。要件等につきましては引き続き諸外国の例を見ながらしっかりと検討してまいりたいと思っております。また、WTOでそういった議論が行われたかということでございますけれども、例えば韓国産テレビ受信機の輸入に対する米国の迂回防止調査手続とか、トルコ産のブランケットに対する南アフリカの迂回防止措置について、協議要請やパネル設置要請が行われたことがあるんですけれども、いずれも迂回防止制度とWTO協定との整合性について判断されたことはなかったものと承知はしております。
○森田分科会長 財務省、どうぞ。
○大関関税課長 ご指摘ありがとうございます。委員御指摘のとおり諸外国の制度なども十分に調査、リサーチしながら適切な制度設計をしていきたいと考えてございます。
○伊藤委員 ありがとうございます。結局、WTOでは迂回防止制度を整備するという方向について、今のところあまり議論はないという理解でよいでしょうか。
○森田分科会長 今の点の確認もありますけれども、外務省のほうからどうぞ。
○塚田経済局国際貿易課長(外務省) 外務省国際貿易課長の塚田でございます。
WTOではアンチダンピング措置に関する専門家が集まってプラクティスとかを意見交換するとかというような議論は行われてはいますが、新たな協定の改正に向けた動きというものは今のところ、マルチでの新たなルールづくりになりますので、なかなかハードルが高いというようなところかと思います。
○森田分科会長 それでは、植田委員、どうぞ。
○植田委員 私もどちらかといえば慎重に行うべきという財務省の案に賛成、慎重に検討するという案に賛成です。やはり我々、歴史的にもむしろ苦しめられてきた国です。いまだに輸出に関しては、今貿易収支がちょうどゼロぐらいですけれども、長いこと貿易黒字で、世界各国からこういうことを言われてきて対応してきたわけです。当然発展途上国でこれから伸びようという国にとっては、第三国を介した貿易はある意味でいい話です。中国から駄目ならバングラデシュに迂回して多少価値をつけ、バングラデシュ経済が伸びるというような意味で良いわけです。全体的に、いいかどうかはともかくとして、なかなかWTOの原則だけではうまくいかないなという背景が分かるという意味で言ったわけです。何を言いたいかというと、やはり全体的に、こういう迂回に対し何らかの形で対応しないといけないというのは分かるんですが、細部に注意していかないといけないと思っています。例えば第三国迂回で、韓国・中国から第三国に迂回して日本にというイメージが資料4-1の2ページ目に載っていますけれども、例えばの話、そのときでも第三国にあるのが例えば韓国のある企業の子会社なのか、それとも全く違って、例えばそれがメキシコだとするとメキシコの現地の会社なのか、その場合はどう見るのかとか、企業のオーナーシップをどう考えるかとか、を詰める必要があります。それから最後の7ページ目に書いてあるEU・英国の例の真ん中の③ですかね、措置実施国/第三国での組立等により付加される価値が重大でない、25%を超えない、逆に言ったら25%以下だと認められてしまう、でも25%って、かなり今細かくサプライチェーンが各国にわたっている中、ある一国で25%以上生産するということが本当に現実的なのかという、ことがあります。細いサプライチェーンでは、ほとんど全てがここの迂回の定義に入ってしまうのではないか懸念があります。それから、後出しじゃんけんのようにこういうルールを使われる懸念もあります。ほかの国にこのルールを逆に日本に使われてしまうと、日本の電気とか自動車、メキシコで生産してアメリカに輸出しているようなケースはほとんどかかってしまうおそれもあります。今まさにアメリカの政権がどのように関税を武器として使ってくるか分からないのですけれども、アンチダンピングだけの話でもないような気がするのです。関税率の違いをいろいろうまく使ってサプライチェーンを組んでいる中で、それがどこまで認められるか、より大きな話のような気もします。ここで非常に慎重に日本は動かないといけないのでは。日本は、また各国も、ここで議論しているのと同じようにEUがどうしている、米国がどうしていると見ながらルール作りを進めていると思うのですけれども、日本が大きく動いたら全体にハードルがボンと上に上がると思われます。ですので、まさに保護主義の観点からも慎重に、また日本の企業が今までとってきたいろいろな方策というのが、悪いことをやってきたかもしれませんけれども、往々にしてそんなに悪いことをやっているような気がしないわけです。関税の違いとか、まさに先ほど出た特恵関税ですよね、より貧しい国に移すことによって関税率を下げていくという、そのようなこともやってきているわけで、それはその国のためでもあるということもあります。先ほど出た話でもそうなんですけども、そういうようなことを組み合わせて企業がサプライチェーン全体で価値創造をやっている中で、どこまできつく縛るかというところについては、大きな捉え方が必要と考えます。さっきのデジタル化もそうですけれども、大きな考え方としては、何か手を打たないといけないのは分かるんですけれども、やはり非常に慎重にいくべきだと思われます。とりわけアメリカの政権の状況が今分からない中で、今すぐに動くべき話ではなくて、もうちょっとゆっくりと見るべきではないかと思っております。
以上です。
○森田分科会長 今のは御意見ということでよろしいでしょうか。経産省のほうは。
○信田貿易経済安全保障局貿易管理部貿易審査課特殊関税等調査室長(経済産業省) コメントありがとうございます。御指摘のとおり、世界的なサプライチェーン等を含めた上で要件を検討していく必要があると考えております。韓国・中国、日本という流れの御指摘もありましたけれども、その場合には中国に流れた製品等が日本に環流してくるというようなときに、中国における企業がどういった企業かということも含めながら細部は検討してまいりたいと考えております。一方で、これまで日本はどちらかというと打たれる側という立場でございましたけれども、今後世界各国で関税の壁が築かれていくというような状況において、日本にもいろいろな製品が流れてくると、そのような状況において、我々もしっかり対応していかないといけないというような状況にあります。これは産業界からも要望が来ているところでございますので、その点はしっかりと検討してまいりたい、早急に検討していかなくてはいけないということもございますので、難しさもあるところながら、しっかりと早急に検討していかなくてはいけないというところがありますので、そこは引き続き関係省庁と議論しながら検討してまいりたいと考えております。
○森田分科会長 外務省も発言がございますか。どうぞ。
○塚田経済局国際貿易課長(外務省) 外務省としては、今回のこの迂回防止制度の創設については基本的にできるだけバックアップしたいというふうに思っています。資料にも書いてあるとおり、主要国の中でこの制度をツールとして持っていないというのは、逆に少数国になってきています。被害を受けている企業もあるということですし、国際社会からこれをやったからといって日本の評判を落とすとか、非難を受けるとかというものではないと思います。そこは制度設計次第かなというふうに思っていますので、ツールとして持っておくということは必要かなと思いますし、WTO協定と国際約束との整合性についてはしっかりと外務省のほうで制度設計に当たってサポートしていきたいというふうに思っています。
以上です。
○森田分科会長 財務省はよろしいですか。
○大関関税課長 ありがとうございます。御指摘も踏まえまして、財務省としては、やはり実効性の高い制度としていくということが大事だと思っておりますので、制度創設の必要性や効果、それから懸念される影響、制度設計の妥当性や合理性、要件の明確化なども含めて、それからWTO協定との整合性など、こちらの資料に挙げたような様々な事項について精査・検討を関係省庁とも引き続き取り組んでまいりたいと考えています。
○森田分科会長 では、野原委員、それから根本委員、藤岡委員に御発言いただきます。どうぞ。
○野原委員 今議論がありましたような内容は、各々の立場からのご意見として非常に勉強になるコメントでした。また、各省庁の方の御意見にもありましたように、昨今は変化が激しい、世界各国の関税戦略やサプライチェーンの動向を注視して、しっかり検討した上で取り組まなくてはいけないこともよく分かりました。一方で、私からの意見としては、国内外の動向に的確に速やかに対応して、現状にフィットした制度設計をしっかりしていくことも重要なのではないかと強く感じております。
経産省の資料で、G20のうち迂回防止制度を有していないのは日本とインドネシアのみとのことでしたが、多数の国で既に制度が施行されているにも関わらず、わが国で制度化に向けたアクションが遅れているのはと如何なものかと思います。財務省が令和8年度以降の項目として扱うとしている点に違和感を覚えます。まだ今、令和6年度ですので、来年度中に検討して結論を出すという解もあるのではないかと思います。精査・検討をしっかりやることは大変重要だということは理解できますが、可能な限り速やかにしっかりと検討を実施して、来年度の項目として扱うというようなことも検討していただけないかと思います。
以上です。
○森田分科会長 続けて、根本委員、藤岡委員、お願いいたします。
○根本委員 小さなコメントなんですけれども、植田委員から「EUの制度では付加される価値が25%を超えない場合に適用する」という指摘がありました。そうならば「中国の自転車の組立てをEU内でやった場合に、付加価値がどの程度発生したか」ということがちゃんと調査されているということになるわけです。説明のあった制度では「ダンピング・マージンの調査を行わない、なぜならば調査を迅速化するため」ということと矛盾するところもあるので、これはEUがどういうふうに要件を定めているか、というのは調べる価値があるなということを感じました。
以上です。
○森田分科会長 それでは、藤岡委員、どうぞ。
○藤岡委員 経産省の資料にございましたけれども、ここで言う迂回というのは課税を免れるために課税命令が示す課税範囲から形式的に外れるようにするものの、実質的には課税命令と同等の商業行為を行う行為であります。したがいまして、このような迂回については、経産省の御説明では、第三国迂回、軽微な変更迂回、輸入関係国迂回という、3つの例が示されておりましたけれども、ぜひこのような行為についてはこれを是正し、必要な対応がとれるように積極的な対応が必要だと思っております。各委員からもございましたけれども、現在G20のうち非常に多くの国、日本とインドネシア以外の国では、迂回防止制度が設けられている。その意味で、日本の制度には、まだある種、足らざるところが明確にあるというふうに思っております。
私は関税局の御説明にあったとおり、今後種々の論点があるのは事実でございますので、諸外国の調査、あるいは有識者の意見等も聞きながら、実効性の高い制度とすべく、令和8年度改正以降の創設を念頭に関係省庁との協議を進めていくことに賛成でございます。ぜひ積極的な検討を行い、ただいま委員の御発言にもありましたとおり、令和8年度改正で実現するということをまず目指して協議を開始していただきたいと思っております。
1点、基本的な事項、これは皆様御周知のことをもう一度申し上げるのも誠に恐縮でございますが、不当廉売関税、WTOの基本原則の1つを構成する要素でございます。本日の財務省の記載にもあるとおり、WTOの無差別原則、最恵国待遇の付与の例外規定であるのは全くの事実でございます。しかし、これはWTO基本協定の発足以来、一貫して設けられた制度でございます。現在のWTO協定と総称されておりますけれども、1947年のGATT第6条以来の規定が現在も引き継がれています。相殺関税と同じでございます。さらに歴史をひもとくと、イロハのイで、特に御存じの先生方も多いと思いますけれども、1947年のGATTはITO設立を目論んだハバナ憲章の規定をほぼそのまま受け継いだ規定でございます。ハバナ憲章34条の規定をほとんど受け継いだものでございます。これは非常に長い歴史がある国際貿易について、制度を論ずる場合の基本的な前提として共有しなければいけないことでございます。これも先学が論じておられますけれども、淵源はアメリカの反トラスト法にございます。公正で自由な取引を行うことが経済の最終的な発展につながるという強い信念と確信に基づく制度でございます。イロハのイを御存じの先生方に申し上げるのは恐縮でございますけれども、アメリカの反トラスト法は1890年のシャーマン法に始まります。その後、1914年のクレイトン法の2条で、同種同等の商品を異なる購入者間で価格の面で差別をする行為を明確に禁止いたしております。GATT第6条は、このような取引規制の趣旨を国際貿易トレードにも適用し、公正でない取引を行うべきではないとする。この制度は、最終的には1947年のGATTの前文にも高らかにうたわれていますけれども、貿易と経済の分野における締約間の関係が生活水準を高め、貨物の生産、その他の拡大を支援するものであると、強い確信を持って、盛り込まれた制度である。つまりキーワードは公正で自由な貿易をなす重要な制度であるということでございます。これは守らなければいけない。十分に産業化が進展して、ある意味、日本よりも経済力があるとも言われる中国や韓国の産品について、LDC等の議論を交えることも、不適当、不十分な理解に基づくものではないかと思います。
このような大きな流れの中で、これをAD関税、あるいは相殺関税と規定が設けられ、共有され、その際に協定の欠缺である迂回については明確に、これも一度御覧になられたら結構ですが、AD関税、非常に膨大な協定で、諸般の手続、価格の決定、決まっておりますが、そこに書き切れなかった部分がある。法の欠缺がある部分について必要な対応を、基本的には法律的に言えば、これはその範囲内で行えばいいわけですから、任されているところでございますが、現時点でG20諸国ではおおむね迂回防止措置を設けている、EUやアメリカをはじめとしておおむね迂回に対して必要な措置をとるということが当然の前提となっています。しかしながら、検討すべきことが多々あるということは本日の財務省からあったとおり、この点については十分検討されながら、ぜひ積極的な検討をお願いしたいと思います。
以上です。
○森田分科会長 まだたくさん発言の希望がございますので、それではオンラインで先ほどから手を挙げていらっしゃいます和田委員、どうぞ。
○和田委員 発言の機会をいただきありがとうございます。まず今回の不当廉売関税に関する迂回防止制度の創立について、その必要性を積極的に支持したいと考えております。先ほど御説明がありましたように、近年アンチダンピング関税の対象となっている製品について、迂回が疑われる事例が見られるようになっておりまして、関係の業界においては、これを放置すれば、アンチダンピング関税を課しているそもそもの政策目的や、制度の実効性が損なわれるという懸念が高まっていると認識しております。迂回が疑われる事態に速やかに対応するためには、迂回防止措置の導入が必要であると考えております。
御説明では、WTO協定には迂回防止措置についての明文規定がないということではありましたが、これも御説明にありましたように、既に多くの主要国で迂回防止措置が導入されているということ、これはツールとして一般的に認められる制度になっているということでございますので、我が国の産業を不当廉売行為から適切に保護するためにも、諸外国の制度を参考に迂回防止制度の導入について早急に検討していただきたいと考えております。
制度設計につきまして、経産省からも御提案がございましたけれども、基本的な方向性として、現行のアンチダンピング関税を基礎とした合理的な提案であると考えております。もちろん保護主義に陥らないか、濫用される懸念はないか、あるいはさらにはWTO違反の懸念がないかなど、いろいろな御心配があるのは当然でございますので、そうした疑義が生じないような適正な制度設計をしていただくと同時に、特に、現在、アンチダンピング関税を実際に活用している関係業界の意見もよく聞いていただいて、実効性の高い制度にしていただきたいと考えております。
その関連で、時期について、令和8年度改正以降の創設という御説明が先ほどありましたが、こちらについてはほかの委員からも発言がございましたように、既にあるアンチダンピング関税の制度の実効性が損なわれている状況であるということを考えれば、これについては速やかに対応していただく必要があると考えております。ぜひ令和8年度改正以降というタイムラインを所与とせずに、できるだけ早くこの検討に着手していただいて、制度の早期の実現をお願いしたいと考えております。
その関連で最後に1つ付言させていただきますが、そもそも不当廉売行為の実態把握というのは、外国において行われている各事業者の行為の実態を把握するということで、非常に調査が難しいと伺っております。今回これで迂回防止の制度を入れるとなれば、措置対象国だけではなくて、さらに第三国での事業活動など、いろいろな調査が必要となるということで、関係国との調査に関する連携はますます重要になってくると思われますので、これについてもぜひ関係国との協力を強化していただければと考えております。
以上でございます。
○森田分科会長 手が挙がっておりますので、次いで片山委員、河野委員、佐藤(英)委員、その後、オンラインで末冨委員、その順番でお願いします。
○片山委員 先ほども御説明がありましたように、既に我が国の産業が迂回を活用した不当廉売の被害に遭っているということですとか、あと、日本とインドネシア以外が迂回防止措置を持っているということですと、今後我が国がまた狙い撃ちされるのではないかというような懸念もありますので、私としては早期の対応が必要ではないかというふうに思っておりますので、EUなど既に導入されている諸外国の例を参考に、早期の検討をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。
以上です。
○森田分科会長 河野委員、どうぞ。
○河野委員 私も同様で、第一に、アンチダンピングという制度は、先ほども御指摘のあったように公正な貿易を確保するためのものでございますので、そのような基本的な理念に基づいて考えなければいけないと思います。第二に、産業構造や貿易慣行が日々激しく変化する中で、あまり時間をかけて検討していますと、せっかく導入した制度が既に過去のものになっているという可能性が出てくると考えております。したがって、実効的な制度をつくるために十分な検討が必要なことは十分に理解できますけれども、やはり時代の変化に即応して制度を導入しなければならないという点も考慮していただく必要があるのではないかと考えます。何人かの委員がおっしゃったような、何年度以降というようなことではなく、できるだけ早い時期の導入を念頭に置いて、御検討いただければというふうに思います。
また、もう1点ですが、G20の中で日本とインドネシアだけが導入をしていないという点を何人もの委員が指摘しておられます。また、和田委員がおっしゃったように、ほかの国との協力が必要だということも考えますと、日本がこの制度を持っていなければ諸外国と協力する基礎がないということにもなります。情報交換ですとか、国際協力の基礎としても、諸外国と共通の目的を持ったこの制度を導入すべきであると考えます。ありがとうございました。
○森田分科会長 佐藤(英)委員、どうぞ。
○佐藤(英)委員 特殊関税部会長を8年務めさせていただいて、少ないと言われながらもそれなりのアンチダンピング課税の発動に関わってきました。そのときに感じたのは、情報がなかなかとれない中で執行当局が極めて努力をされると。そしてその努力の及ばないところが国際的な協定等で埋められていっているという、そういうつくりに、最終的に数字にしないといけないので、そういうつくりに強い印象を持っています。そういう国際的な基準がない中で数字に落とし込んでいくということを考えないといけないというところで、我が国、EUの、経産省資料の7ページを見ると、要件の②が6割とか、③が先ほどの御指摘の25%とかというような数字、これは我が国が導入するならばその数字を決め打たないといけないという、そういうつらさがあると思います。その点、あらゆる業種が同じなのかとか、貿易慣行がどうなのかというようなことを含めて、精査も必要ですし、決断も必要ですが、使い勝手をよくするために、はしょってしまうということは避けたほうがいいだろうと考えております。導入の必要性そのものについては賛成ですが、あまり出てきていない論点だったので申し上げました。
○森田分科会長 末冨委員、オンラインでどうぞ。
○末冨委員 近年、迂回防止の法制度を導入するというのは各国で強い傾向があると感じておりまして、それは関税法制のみならず、例えば制裁ですとか輸出規制などもそのように拝見しておりますので、そのような動向に沿うような形でのお考えかなと思いますが、2点ほど確認させていただきたいんですけれども、AD関税が対象国、対象産品を指定して課税されて、一旦課税命令を受けた人が迂回したような場合に、本件、このような迂回防止が適用されるというふうに理解しているんですが、これは一旦最初のAD命令で課税対象になった人だけがこの対象になるのかどうかということを1点確認させていただきたいということと、2点目はADを一旦課せられると何かそれに縛られることになりかねないという懸念なんですが、一旦ADを課せられると、場合によっては、企業によって死活問題で、とてもビジネスが成り立たなくなるというような状況に陥る企業も多々あるかと思います。そのような企業が生き残るために、サプライチェーンを変更するなりしてダンピングにならないようにして生き残るすべを検討するということはよく見られることだと思うんですが、一旦AD税を課せられてしまうと、いかにサプライチェーンを変更しようが、なかなかAD税から逃れられないということになりかねない、そういう懸念もございます。そういう企業努力によってADを回避しようというものと、迂回ということの線引きの難しさがあるかと思うんですけれども、その辺りについて何かお考えがあったら、それもお聞かせいただきたいなと思います。よろしくお願いいたします。
○森田分科会長 ありがとうございました。最後の御質問については、経産省のほうから回答いただいてよろしいですか。
○信田貿易経済安全保障局貿易管理部貿易審査課特殊関税等調査室長(経済産業省) 最後の御質問につきましてでございますけれども、AD関税を当初措置で受けた企業に対してのみかけられるのかということでございますけれども、必ずしもAD関税をかけられた企業のみというわけではなくて、例えば第三国迂回の場合でございますけれども、その場合、第三国で活動している企業がAD関税をかけられている国の企業から当該部品を購入して、それを日本に加工して輸出するというような場合には、当初措置でAD関税をかけられている企業のみに関税がかけられるというわけではございませんので、そういったことがございます。
あと、2つ目の御質問にありましたけれども、AD関税をかけられてしまうと、サプライチェーンを変更してもダンピングにならないような形で輸出するのがなかなか難しくなってしまうということでございますけれども、これはダンピングが行われないという形で日本に輸出していただくという形であれば問題ないと考えておりますけれども、それはサプライチェーンを変えたとしても、それがもしダンピングであるというのであれば、それはしっかりと迂回防止制度なりを活用して対処していくことが必要であるとは考えております。
簡単でございますけれども、以上でございます。
○森田分科会長 財務省からお願いします。
○大関関税課長 御質問ありがとうございます。2つ目の御質問について述べさせていただければと思いますけれども、資料の1ページ目の(2)にも記載させていただきましたとおり、制度設計に当たりましては、合理的な経済活動や貿易活動と迂回行為をしっかり区別できるような制度設計にしていくことが重要であるというふうに考えておりますので、そのような観点から関係省庁とも引き続き協議を進めていきたいというふうに思っております。
○森田分科会長 ありがとうございました。
この件について、さらに御発言ございますでしょうか。財務省から、どうぞ。
○大関関税課長 末冨委員も含めて、多くの委員の先生方から様々な御質問、コメント、頂戴いたしましてありがとうございます。
まず制度改正のタイミングについてですけれども、早急に検討に着手するべきだという御指摘については、既に検討には着手し、協議を始めているという状況でありますが、他国の制度などもまちまち、様々でありますので、そういったものもよく調査をしながら、日本の様々な産業の構造ですとかそういったことも、産業界の御意見などもできればきちんと把握した上で、しっかりと実効性のある制度設計にしていきたいというふうに考えています。
タイミングについては、令和8年度というのは、これから制度設計をして成案を得たとした場合に、最速が令和8年度の改正というふうになります。令和7年度の改正はまさにこの秋、今ですね、最初のテーマで御検討いただいた、暫定税率の御検討を頂きましたけれども、令和7年度改正のタイミングとしてはちょっと、制度をしっかり精査、制度設計するには時間が足りないというところが正直なところでありまして、これからしっかりと検討、しかもできる限り速やかに検討をした上で、最速が令和8年度の改正ということでありますので、そこを目指して当然取り組んでいくということになろうかと思います。様々な事項、検討の精度というんでしょうか、そういったものによっては、確たることは申し上げにくいところがありますけれども、ただ、今目指しているところは最速で令和8年度ということでございます。
○森田分科会長 ありがとうございました。
ほかに発言はございますでしょうか。それでは、この辺りでよろしいでしょうか。
この議題につきましては様々な御意見を頂きましたし、御意見があるようでございますが、まとめるという立場ではございませんけれども、WTOの原則をきちっと尊重しつつ、実効性のある議論をなるべく速やかにつくるというところにつきましては皆さん大体同じような見解をお持ちかと思いますので、関係各所、そういう御意見を反映する形で検討をお願いしたいというふうに思います。そういうまとめ方をさせていただきます。
この件につきまして、いずれにしましても検討の進展に合わせまして、今後の分科会等に報告をしていただくようにお願いしたいと思います。
それでは、本日はこれくらいにさせていただきまして、御議論いただいたことを踏まえまして、今後、当分科会におきましては答申を取りまとめる作業に移ることになります。本日御議論いただいた内容につきまして、特別特恵関税については令和7年度関税改正で措置するほか、特恵関税制度全体の在り方についてはさらに引き続き検討を進めていただくようにお願いしたいと思います。そして、不当廉売につきましては先ほど申し上げたとおりでございます。
次の分科会におきましては、これまでの御審議の内容を踏まえた答申案を提示させていただき、それについて御議論を賜ることとしたいと考えております。
次の分科会につきましては、昨今の国会情勢などを踏まえつつ、事務局と調整の上、別途御連絡を差し上げる予定でございます。
それでは、これで本日の審議を終了させていただきたいと思います。御多用中のところ、御出席をいただきまして誠にありがとうございました。
午前11時48分閉会 |