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関税・外国為替等審議会 関税分科会(令和6年10月10日開催)議事録

  1. 開会
  2. 最近の関税政策と税関行政を巡る状況
  3. 国際コンテナ戦略港湾政策について
  4. 関税分科会の海外調査報告(韓国)
  5. 閉会

出席者
関税分科会長 森田 朗 財務省 高村関税局長
委員 伊藤 恵子 内野審議官
植田 健一 中澤審議官
片山 銘人 吉田総務課長
河野 真理子 大関関税課長
木村 旬 石谷参事官
木村 福成 志賀参事官
古城 佳子 仲監視課長
杉山 晶子 藤中業務課長
高橋 裕子 酒井調査課長
田村 善之 坂本事務管理室長
樽井 功 藤岡特殊関税調査室長
永沢 裕美子 平田原産地規則室長
根本 敏則 近田税関調査室長
野原 佐和子 香川経済連携室長
三石 誠司 金山知的財産調査室長
臨時委員 清水 順子 国土交通省 澤田港湾局港湾経済課長
専門委員 阿部 克則
大橋 弘
佐藤 英明
末冨 純子
藤岡 博
宮島 香澄
村上 秀徳

 

午前10時00分開会

森田分科会長 おはようございます。時間もまいりましたので、ただいまから関税・外国為替等審議会関税分科会を開催いたします。

 委員の皆様には、御多用のところ、御出席いただき誠にありがとうございます。

 まず議事に入ります前に、先日委員の交代がございましたので、私から御紹介させていただきます。

 先日の國分委員の御退任に伴い、新たに日本貿易会会長、安永竜夫委員が任命されております。本日、安永委員は御欠席です。

 また、事務局の構成につきましては本年7月に人事異動がありましたところ、お手元の座席表をもって御紹介に代えさせていただきたいと存じます。

 続きまして、7月に新たに着任されました高村関税局長から一言御挨拶をお願いいたします。

高村関税局長 本年7月に関税局長を拝命いたしました高村です。どうぞよろしくお願いいたします。

 委員の皆様方におかれましては、日頃より関税政策、税関行政に対して格別の御指導、御協力を賜りまして心より感謝申し上げます。冒頭、私より一言御挨拶を申し上げます。

 近年、技術革新とデジタル化の進展、厳しさを増す安全保障環境など、税関を取り巻く経済・社会情勢が急速に変化する中で、関税政策と税関行政を的確に遂行していくことが重要となっております。

 具体的には、急増する輸入貨物や入国旅客への対応のほか、深刻さを増す不正薬物、知財侵害物品、金地金の密輸、ロシア等に対する経済制裁や経済安全保障上の脅威への輸出面を中心とした対応など、これまで以上に効果的・効率的な水際取締りが求められております。

 経済促進の観点からは、各国と締結したEPAのさらなる利用や保税制度の利活用などについても検討していく必要がございます。

 また、来年に控えた大阪・関西万博が円滑に開催されるよう、テロ対策についても引き続き万全を期す必要があります。

 私ども税関は、こうした大きな環境変化の中、行政としていかに日本経済に貢献できるかという視点を持ちつつ、円滑な物流・人流の確保と水際取締りの間の的確なバランスを見出し、世界最先端の税関を目指して取り組んでいく必要がございます。

 今後の御審議に向けまして、最近の関税政策と税関行政を巡る状況等につきまして私どもから御説明を申し上げます。皆様から貴重な御意見を頂きながら、引き続き様々な課題の解決に向けて取り組んでまいりたいと思います。

 何とぞ御審議を賜りますようお願い申し上げて、私からの挨拶とさせていただきます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、早速ですが、本日の議事に入らせていただきたいと存じます。本日の議題は、お手元の議事日程のとおりでございます。

 まず、今後の審議の参考といたしまして、「最近の関税政策と税関行政を巡る状況」につきまして、吉田総務課長から御説明をお願いいたします。

吉田総務課長 吉田でございます。

 私からは「最近の関税政策と税関行政を巡る状況」につきまして御説明を申し上げます。資料1を御覧いただければと思います。

 初めに、最近の税関行政・関税制度について御説明を申し上げます。

 2ページ目を御覧ください。日本の輸出入の最近の動向でございますが、輸出額は2022年以降、自動車の輸出が増加したこともあり、対前年同月比で増加傾向となっております。輸入額はエネルギー資源の輸入増等により、2022年は急増いたしましたが、2023年はその反動で減少、ここ数か月は再び増加傾向となっております。輸出額から輸入額を差し引いた赤字額でございますが、2023年以降、足元では縮小傾向となっております。

 次に、税関における主要業務量の推移でございます。3ページ目を御覧ください。越境電子商取引の拡大に伴い、輸入許可件数が大幅に増加しております。2018年と2023年で比較いたしますと、航空貨物は約3.7倍、海上貨物は約2.3倍となっております。入国者数については、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により大幅に落ち込みましたが、2023年は急激に回復をしております。2023年度の税関における収入額につきましては、関税は0.9兆円、消費税及び地方消費税は10.8兆円、そして全体として約13.1兆円となっておりまして、これは国の租税及び印紙収入の約16.9%に相当いたします。

 次に、急増する輸入貨物への対応でございます。4ページ目を御覧ください。輸入許可件数の大幅な増加につきましては、令和5年度関税改正におきまして、税関長が税関事務管理人を指定できる規定の整備や輸入申告項目の追加といった措置を行い、税関事務管理人に係る規定の整備については昨年10月に施行済み、輸入申告項目の追加については次期NACCSの更改に合わせて令和7年10月から施行予定となっております。

 また、海上小口貨物についても今後増加傾向が続くことを見据えて、同じ更改のタイミングで、昨年の関税分科会で御報告をさせていただきましたように一定の要件を条件に簡易な通関制度の導入を予定しているところでございます。

 我々関税局・税関といたしましては、こうした措置を通じて引き続き厳格な水際取締りと迅速かつ適正な通関を両立していく必要があると考えております。

 次に、入国者数の増加に向けた対応等でございます。5ページ目を御覧ください。円安の影響などを背景に、引き続き入国者数が増加しております。2024年上半期の入国者数はコロナ禍前の2019年同期比で約107%となっており、今後もさらなる増加が見込まれております。こうした入国者数の増加に対応するため、税関検査場電子申告ゲート、いわゆるEゲートを7大空港に、QRコード読取端末を全ての税関空港に配備しております。また、本年1月から税関手続と入管手続とを1台で同時に行うことができる共同キオスクを羽田空港第2ターミナルに導入し、実証実験を行っており、今後、実証結果を見ながら主要空港への拡大配備を検討してまいります。

 次に、厳格な水際取締りでございます。6ページ目を御覧ください。2025年以降、大阪・関西万博など国際イベントが予定されており、さらなる水際取締りの強化が求められているところでございます。引き続き警察などの関係機関や民間の関係業界団体と連携したテロ対策を推進してまいります。

 また近年、日本では金融活動作業部会と訳されておりますFATFの要請により各国に厳格なマネロン・テロ資金供給対策が求められているところでございます。不正な資金の流れを断つという観点からは、これまでの関係機関との取締り体制の強化に加え、本年8月に紙幣探知犬を導入するなど、出国旅客に対する携帯品検査の強化も推進しているところでございます。

 次に、外国人旅行者向け免税制度の見直しについてでございます。7ページ目を御覧ください。こちらのスライドは主に消費税法の話となりますが、税関業務に関係する大きな流れとして御紹介いたします。令和6年度与党税制改正大綱におきまして、外国人旅行者向け免税制度につきましては、出国時に税関において持ち出しが確認された場合に免税販売が成立する制度へと見直されることとなりました。制度の詳細につきましては令和7年度税制改正において結論を出すこととされておりまして、今後検討が進められることとなっております。

 次に、不正薬物の摘発状況でございます。8ページ目を御覧ください。令和5年における不正薬物の押収量は、8年連続で1トンを超えたほか、単年では過去2番目となる2トン超えとなっております。特に覚醒剤につきましては、航空貨物、海上貨物、それぞれの密輸形態で覚醒剤の一度の押収量としては過去最高となる密輸事件を摘発するなど、押収量が大幅に増加しているところでございます。

 次に、知的財産侵害物品の水際取締りでございます。9ページ目を御覧ください。令和5年の知的財産侵害物品の輸入差止件数は3万1,000件を超えており、また令和6年上半期の輸入差止件数も半期ベースでは過去最多となるなど、高水準で推移しております。

なお、令和4年10月に施行されました改正関税法等によりまして、海外の事業者が郵送等により国内に持ち込む商標権又は意匠権を侵害する模倣品は、個人使用目的であっても取締りの対象となりました。この結果、令和5年の輸入差止件数は対前年比で17.5%増、輸入者が侵害の該非を争う旨の申出は前年比70.7%の減となっておりまして、制度改正の効果が表れているものと考えております。

 次に、金密輸取締りに関する取組でございます。10ページ目を御覧ください。平成30年の罰則強化を含む取組等によりまして、金の密輸入に対する摘発は大幅に減少したものの、このところの金価格の高止まりなどを背景に密輸リスクの高まりが懸念されており、足元、摘発件数、押収量ともに増加傾向が続いております。巧妙隠匿事案の摘発が散見されることから、関係機関との連携や検査機器の活用等により、引き続き厳格に対応する必要があると考えているところでございます。

 次に、11ページ目を御覧ください。ロシア等に対する経済制裁につきましては、これまでG7等と連携しつつ、外為法に基づき、輸出入禁止措置等を順次実施をしているところでございます。このほか、令和4年よりロシアに対する関税の最恵国待遇を撤回する措置を講じてきましたが、本年3月の政令改正により当該措置の期限を来年3月末まで延長しているところでございます。

 関税局としては、これらの措置の適切な執行のため、引き続き他省庁と連携し、G7等と情報の継続的な共有を行うほか、税関においても外為法に基づいた厳格な水際取締りを実施し、第三国迂回等による制裁逃れに対処してまいります。

 次に、経済安全保障上の脅威への対応でございます。12ページ目を御覧ください。安全保障の裾野が経済・技術分野に急速に拡大する中、経済安全保障上の脅威への対処は政府全体の重要な政策課題です。本年6月に閣議決定をされました「経済財政運営と改革の基本方針2024」においても、引き続きその重要性や体制整備の必要性等が謳われております。

 関税局・税関といたしましても、こうした政府全体の方針を踏まえて取組を進めており、例えば「軍事転用のおそれのある製品や技術等の流出につながる不正輸出の防止」の観点から、情報の収集・分析の強化及び適正通関の確保、体制強化、民間事業者との連携や規制対象物品の輸出実績の把握等に取り組んでいるところでございます。

 次に、経済活性化のための保税地域の活用です。13ページ目を御覧ください。保税地域は関税等の徴収を留保したまま外国貨物の保管、加工、展示等が可能な場所であり、この特性を様々な分野において活用することで経済活性化への寄与が期待されております。これを踏まえ、関税局・税関においては、これまで業界団体への制度紹介や税関ホームページ上に解説した保税ポータルの活用等により、保税制度のニーズの掘り起こしに取り組んでいるところでございます。特にアート関係につきましては、ニーズを踏まえ、保税地域でアートフェア等を開催する際の要件を明確化したことで制度の活用が図られているところでございます。

 次に、国際物流の動向を踏まえた保税制度のあり方についてですが、14ページ目を御覧ください。経済活性化に関連して、近年、輸入貨物の急増や物流業界の人手不足等、保税制度を取り巻く国際物流の動向が大きく変化する中、保税制度に対するニーズや課題の声が寄せられております。こうしたニーズに対応するため、事業者へのアンケート結果や学識経験者などからの意見を踏まえ、本年6月に「国際物流の動向を踏まえた保税制度のあり方について」を取りまとめ、公表いたしました。引き続き水際取締りと簡素化等のバランスに留意しながら、着実に保税制度の見直しを進めてまいります。

 15ページ目を御覧ください。2020年6月に世界最先端の税関を目指して「スマート税関構想2020」を取りまとめた上で公表いたしました。

 また、16ページ目を御覧ください。スマート税関構想を取りまとめた後も、内外のダイナミックな構造変化の影響を受けて、税関を取り巻く環境は大きく変化しております。こうした環境変化に対応するとともに、構想にとどめることなくスマート税関を実現するため、2022年11月に「スマート税関の実現に向けたアクションプラン2022」を策定し、新規施策及び継続施策について新たに工程表を作成し、2023年6月に公表をしております。工程表については毎年アップデートして公表することとしておりまして、今年6月に更新したものを税関ホームページに掲載をしております。

 17ページ目を御覧ください。こちらはスマート税関構想2020を公表して以降の主な進捗を記載した年表となっております。本年の動きとしては、既に紹介済みのものに加えまして、7月に東京税関にAI・DX推進センター室を設置し、税関業務の高度化・効率化のため、AI・DXに関する取組の推進に努めていくこととしております。引き続き世界最先端の税関を目指して各施策を着実に進めてまいりたいと思います。

 それでは、次に2.国際関係について御説明を申し上げます。

 まず、我が国におけるEPA等の現状です。19ページ目を御覧ください。日本は現在、20の経済連携協定を署名又は発行済みで、2022年1月にRCEP協定が発効したことにより、日本の貿易総額に占めるEPAが発効済みの国との貿易額の割合は約8割となっております。最近の特徴としては、CPTPP、日EUやRCEPといったいわゆるメガEPAが相次いで締結され、EPAのネットワークが大きく拡大したことが挙げられます。

 次に、CPTPPへの新規加入の動きでございます。20ページ目を御覧ください。英国のCPTPP加盟については、2021年9月末から我が国が議長を務める加入作業部会を開催し、2023年7月のTPP委員会において締約国及び英国により英国加入議定書への署名が行われました。英国に加えて、日本、シンガポール、チリ、ニュージーランド、ベトナム、ペルー、マレーシアが既に国内手続を完了しており、遅くとも本年12月15日に英国加入議定書が発効することとなっております。

 21ページ目を御覧ください。インド太平洋経済枠組み、いわゆるIPEFにつきましては、2022年5月のバイデン大統領訪日時に米国が立上げを発表したもので、貿易、サプライチェーン等の4つの分野を柱として、インド太平洋における持続可能で包摂的な経済成長の実現を目指すこととされております。

 柱の2から4に関しましては既に署名に至っておりますが、関税局として最も関係が深い貿易円滑化章を含む柱1の貿易については、実質妥結に至らず、議論継続となっております。日本の関税制度や実務を踏まえた内容となるよう、引き続きしっかり取り組んでまいります。

 22ページ目を御覧ください。ここからは交渉中のEPAについて掲載しております。まずバングラデシュとは本年5月に交渉を開始いたしましたが、国内情勢の変動を受け、次回交渉会合が未定の状況となっております。

 トルコにつきましては、2014年に交渉を開始し、これまで17回の交渉会合を実施しております。

 次に、UAEについては、こちらは直近の話となりますが、先月、日本政府とUAE政府が日・UAE経済連携協定の交渉開始を決定し、公表をしております。今後、第1回交渉会合を実施するため、UAE側と調整を行う予定となっております。

 次に、GCCについては、しばらく中断をしておりましたが、昨年7月の岸田総理のGCC事務総長表敬を受け、本年中の交渉再開と、それに向けた事前協議の開始で一致をしております。

 最後に、一般見直しを予定しておりますインドネシアについては、今後、両国において改正議定書の批准に向けた国内手続が終わった後、発効の予定となっております。

 23ページ目を御覧ください。EPAの利用機会のさらなる拡大が見込まれる中、一層の利用促進に向けた取組が必要と考えております。税関ホームページの利便性の向上や動画コンテンツ等の充実を通じたさらなる情報発信の強化、説明会の開催、輸出者支援のための相談窓口の設置など、引き続きEPAの利活用の促進に向けた取組を続けてまいります。

 24ページ目を御覧ください。EPAを利用するための原産地証明書につきまして、我が国の産業界からは、特にASEAN各国への輸出面におけるPDF受理に加えて、一層の迅速かつ安全なやり取りを可能とすべく、原産地証明書のデータ交換を実現するといった原産地証明書のデジタル化に対する期待が寄せられているところでございます。

 我が国への輸入面においては、既にPDF受理を実現しているところでございますが、データ交換については、NACCSを介して相手国から原産地証明書のデータを直接受け取ることにより、日本税関における印影等の形式面での確認が不要になるといったメリットも考えられます。2023年6月にはインドネシアとの間で輸出入両面における原産地証明書のデータ交換の運用を開始いたしました。現在、タイ、ASEANとの間でも導入に向けた協議を行っているところでございます。こうした原産地証明書のデジタル化について、引き続き関係省庁と連携し、検討を進めてまいります。

 次に、WCO(世界税関機構)の概要でございます。25ページ目を御覧ください。WCOは世界186か国・地域からなる税関関連の国際機関で、国際標準の策定、密輸・テロ対策の推進や税関分野の技術協力等を実施しております。本年1月に御厨事務総局長の後任として、米国のイアン・サンダース氏が就任いたしました。アジア・大洋州地域の組織であるRILO及びROCBの長は我が国税関出身者でございます。日本として引き続きWCOの活動へ積極的に貢献するため、新たな事務総局長とも密接に連携してまいりたいと考えております。

 次に、関税技術協力でございます。26ページ目を御覧ください。関税技術協力は、開発途上国税関に対する受入研修や税関職員の派遣を通じて対象国の貿易円滑化や水際取締りの能力向上等が図られ、それが日本にも裨益することを目指して実施しているものでございます。令和5年度には受入研修を30件、専門家派遣を54件実施いたしました。今後もJICAやWCO等と連携し、日系企業の利便性向上への寄与も視野に、我が国と結びつきの強いASEAN諸国への支援に重点を置きつつ、政府方針も踏まえて、各地域の特性に応じた支援を実施してまいります。

 最後に、令和7年度関税改正について御説明を申し上げます。28ページ目を御覧ください。令和7年度関税改正の主な検討事項でございますが、詳細につきましては次回以降の分科会で御説明をいたしますので、ここでは簡単に御紹介をさせていただきます。

 まず暫定税率と特別緊急関税制度については、適用期限の1年延長、加糖調製品5品目については、併せて暫定税率の引下げについて要望があり、検討を行っております。

 次に、沖縄における選択課税制度につきましては、適用期限を2年延長する旨の要望があり、検討しているところでございます。

 続いて、関税法における犯則調査手続のデジタル化につきましては、刑事訴訟法における刑事手続のデジタル化の検討状況を踏まえて対応していくことを検討しております。

 次に、LDC特恵税率が適用除外となる際の経過措置期間の延長については、LDC特恵税率適用除外までの期間をLDC卒業から3年に延長する要望があり、検討しているところでございます。

 これらについて次回以降の分科会で御審議いただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 私からの説明は以上となります。

森田分科会長 御説明ありがとうございました。

 それでは、ただいまの説明に限らず、関税政策・税関行政につきまして幅広く御質問、御意見等ございましたら御発言いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 では、植田委員、どうぞ。

植田委員 大変御丁寧な御説明をいつもありがとうございます。全体といたしましても、例えば1年に1回ぐらいは全世界の関税の状況が高くなっているとか、低くなっているとか、我が国はどうなっているとか、その根本原因と今後どうなるかというようなものがあると、つまり大所高所の議論も1つあるといいかなと思いました。これは単なるコメントでございます。

 細かい話をいたしますと、スマート税関構想とか、もう1個のところは原産地証明の、この2つぐらいでしょうか、これは非常にデジタル化も絡んできて、それこそスマホのアプリや、そこまでいかないかもしれませんが、コンピュータ上で、いろいろと民間業者に競争させてつくらせることもできるかと思います。私も最近ヨーロッパへ出張しており、日本が対応しているかどうか分かっていないですけども、ヨーロッパには共通のスマホのアプリで、まさに免税の手続ができてしまうというものがあって、そのような主要国と共通化したアプリがあれば、大体主要国のどの国へ行っても同じアプリで対応できるようになり、便利なんですが、これは国がやるべきかというと、どちらかというと国のほうでは恐らく全体的な条件みたいなものを示して、民間にやらせるのがいいじゃないかという気がするのです。けれども、民間の業者の活用と国際的な共通した取組についても何かできないかと思います。もちろん原産地証明書は今おっしゃったとおり共通の取組があるということですが、前回も言いましたけれども、もうちょっと細かいところで、例えば、カーボンがどれだけ出ているかとか、奴隷労働を使っていないかというようなところも皆さんが今気になっているというか、そういうようなところの規制もあるので、恐らくそういうものをひっくるめて、うまく一体化したものができれば将来的にはいいのではと思います。

 以上でございます。もしそういうようなことで何かお考えや、今こういうことを実はもう行っているということがありましたら伺いたいと思います。よろしくお願いします。

森田分科会長 ありがとうございました。事務局のほうは、中澤審議官、お願いします。

中澤審議官 植田先生、どうもありがとうございます。例えば原産地証明書でございますが、説明が吉田からありましたとおり、今現在やっておりますのはインドネシア、タイといったところとNACCSを経由してやるという形で、かなり大がかりな仕組みでやっているという中で、これは今後、確かにおっしゃるとおり、いろいろな技術進歩をしっかり我々も踏まえてやっていく必要があると思っております。その点はよく我々も見ていかないといけないと思っておりますし、また、スマート税関のところでもDXの活用というところで、おっしゃるとおりいろんな活用があるという中で、民間の力を使っていくのは一つ大きな柱だと我々も思っております。実際、スマートグラスについてもいろいろと御提案いただいて今試してみたりとか、ドローンもそうでございますし、あとは共通化に伴う利便性の向上とか、コストの節約もございますので、頂いた点をしっかり頭に入れながら検討を進めてまいりたいと思っております。ありがとうございます。

森田分科会長 続きまして、会場でネームプレートを上げていらっしゃる方がいらっしゃいますので、そちらから順番にお願いいたします。片山委員、木村旬委員、木村福成委員、どうぞ。

片山委員 発言の機会を頂きましてありがとうございます。私からは2点コメントさせていただきたいと思います。

 1点目は関税・税関における対応についてです。輸入貨物、訪日外国人旅行者の大幅な増加に伴う対応として、一部の貨物についての通関手続の簡素化や、電子ゲート等の導入による入国手続の効率化などを通じて、利用者の利便性の向上や税関業務に従事する労働者の負担軽減などを進めていただいているものと理解しております。こうした中、2025年以降は、大阪・関西万博や世界陸上競技大会等の国際イベントが開催されることで、より一層の取締り強化が行われるということですので、税関業務に従事する労働者の繁忙度が高まることが想定されます。ついては、かかる労働者の適正な人員配置など、体制整備をより強化していただくとともに、スマート税関構想を着実に実現していくことが重要だと考えますので、よろしくお願いします。

 なお、スマート税関構想の実現に向けては、税関職員の雇用面への影響も一定程度考えられますので、雇用の継続性にも配慮しながら進めていただきたいと思います。

 2点目は、経済連携協定についてです。日本における貿易総額のEPAにかかる部分が約8割を占めるなど、EPAの利用促進を図っていくことは日本の国益に資する取組だと考えております。他方、EPAの取組を進める中では、どうしても貿易額や関税といった内容に議論が集中してしまうかと思います。しかし、労働者の立場からすると、経済安全保障とか労働、人権、環境といった様々な観点も含めた議論が必要だと思いますので、かかる観点での議論の推進をお願いしたいと思います。

 以上です。

森田分科会長 ありがとうございました。中澤審議官、どうぞ。

中澤審議官 私から人員配置、スマート税関について、まずお答えさせていただきたいと思います。御指摘いただいたとおり、今現在、税関における行政需要というものは高まってきております。旅客の増、また貨物の増、また経済安全保障等と様々な課題を抱えておりまして、人員配置につきましては、今まで霞が関全体で見れば厳しい中でもいろいろ御配慮いただきながら純増という形でやってきましたし、今回の要求につきましても、しっかり要求をして、人員増に向けて今取り組んでいるところでございます。また、スマート税関、雇用面の配慮ということで片山委員御指摘いただきましたけれども、スマート税関構想は人を減らすためのものというよりは、税関職員一体となってつくり上げていくものだというふうに認識をしております。実際そういう形で今もつくってきておりますし、よく税関とコミュニケーションをとりながらつくり上げてきているものでございますので、その点、我々も十分認識しながら取り組んでいるところでございます。ありがとうございます。

森田分科会長 それでは、木村旬委員、どうぞ。

木村旬委員 御説明ありがとうございました。御説明の中で経済のデジタル化及びインバウンドの急増という日本を取り巻く経済環境の変化、経済構造の大きな変化に伴って、我が国の関税政策及び税関行政も時代に即した変革を迫られているというのがよく分かりました。今お話にも出ていましたけど、限られた人員と予算で日夜対応されている当局の方々と現場の税関職員の方々の御努力には改めて敬意を表したいと思います。

 その上でコメントを2点させていただきます。1点はまず外国人旅行者向け免税制度の見直しです。外国人旅行者の消費拡大というのは、日本経済にとってこれからも不可欠なものであり、免税制度というのはその中で重要な役割を果たしているとは思います。ただ、不正を防がなければ、この制度も持続可能にはならないと思っています。この観点から、令和6年度の税制改正大綱で見直しの方針が盛り込まれたことは非常に評価したいと思います。あとは早急な実施が求められると思いますが、今度は令和7年度の税制改正で制度の詳細に関して結論を得るとされておりますが、残された観点と、その実施時期のめどについて、これからどうなるのかという見通しを簡単に教えていただければと思います。

 もう1点は国際関係です。人口が減少して、資源も乏しい日本にとって、やはり多国間の自由貿易体制を維持・発展させるのは至上命題といっても過言ではないと思います。その点で、今御紹介があったように日本のEPAが2023年時点で発効署名済み及び交渉中が87%に達したというのは非常に心強いと思っています。ただ、懸念されるのは、世界的に自由貿易の逆風が一段と強まっていることですね。特に気になるのはアメリカの動きで、1つは御紹介があったようにアメリカが主導してきたIPEF、先ほど御説明がありましたが、貿易での合意が見送られたことですが、これは極めて残念なことで、この背景と、今後政権交代でどうなるか分かりませんが、見通しについて何かしら教えていただければというのが1点。もう1点は、これはほかの国のことではあるかもしれませんが、中国製EVに絡んで、アメリカとかヨーロッパが100%など高関税の発動を決めたのは、中国の過剰生産の問題に対して、多額の補助金の是正を強く求める必要があるためでしょうが、だからといって一方的な関税の引上げというのは国際ルールにもとるのではないかとも思われます。自由貿易を遵守すべき立場にある日本としてアメリカとかヨーロッパに対して、他国の動きとはいえ、内政に口を挟むことになるかもしれませんけど、何かしら日本として、一方的な関税の引上げは自由貿易にもとるんじゃないかと、G7の中で果たして一致して行動していいのかとも思われますので、その辺、日本としての考え方を改めて教えていただければと思います。

 以上です。

森田分科会長 ありがとうございます。

仲監視課長 監視課長、仲でございます。御質問ありがとうございます。

 最初の御質問で、外国人向けの免税制度の見直しの時期でございますが、昨年の税制改正大綱で、令和7年度税制改正において結論を得るということになっておりますので、こちらの議論はこれからの状況でございます。関係部局において、特に主税局を中心に検討されていると承知しておりますが、こちら導入するに当たっても、実際に詳しい制度が固まって、それをまた販売店などでシステム等の対応が必要になってくると伺っております。スムーズな制度の導入に当たって、どれぐらいの期間が必要かということも含めて検討されていると聞き及んでおりまして、今の段階で予断を持って申し上げることはなかなか難しいのですが、いずれにせよ、おっしゃっていただきましたように、現状の制度に課題があってシステムを含めて見直しを行うことになっておりますので、我々としてもなるべく早期にしっかりと導入されるよう、現場の対応者として準備していきたいと考えております。

石谷参事官(国際交渉担当) 国際交渉を担当しております石谷と申します。

 御質問いただきましたIPEFの件ですけども、IPEFの柱1につきましては、資料にありますように内容が多いということもございまして、交渉に時間がかかっているということでございます。今後の見通しにつきましては、先ほど委員からの御指摘にもありましたように、アメリカの大統領選挙の情勢等もありまして、今こうであるといったような、確定的なことは私どもから申し上げることはできないという状況でございます。

 また、過剰生産につきましてのG7における議論ですけども、過剰生産につきましてはG7でも議論されておりまして、我が国としても、我が国の立場をきちっと主張していくということで臨んでいるところでございます。

森田分科会長 どうぞ、木村委員。

木村(福)委員 世界全体の地政学的緊張の高まり、それに伴って全体的にルールに基づく国際貿易秩序が弱くなってきているということを非常に懸念しているものであります。日本もいろいろ、特に米欧の動きに伴ってやらなきゃいけないことはたくさんあると思いますけど、できる限り既存の国際ルールでジャスティファイできるような形まで政策をやっていくことはとても大事だと思いますし、あるいはWTO上許されているいろんなツールについては、逆に使いやすくしてあげることも、もしかしたら要るかもしれないなと思ったりしています。

 経済安全保障自体のところはなかなかいじれないと、そういう立場からいじれないと思いますけど、少なくともその他の経済ですね、経済安全保障上のものによっていろんな規制がかかっている部分以外については、ルールというものをきちんと貫徹していくことがとても大事だと思っていまして、特に日本の場合には、アジアの国々との関係ですね、そういう中ではしっかり国際ルールが大事なんだよ、ということをいろんな機会で訴えていくことはとても大事だと思いますし、今交渉されているバングラデシュとのEPAとか、あるいはASEANとの関係で様々なフォーラムがありますけれども、そういうところで我々が大きな声を上げて、国際ルールをしっかり守っていこうよという、そういう動きを同時にやっていくことはとても大事だと思っていますので、そういうところも考えられていると思いますが、さらに協調しながらやっていっていただけると、もう少しバランスのとれた政策論ができるんじゃないかなと思ったりしております。コメントです。ありがとうございます。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、オンラインで手を挙げていらっしゃった清水委員、それから河野委員でお願いいたします。どうぞ、清水委員。

清水委員 先ほども御意見が出ておりましたが、私も7ページの海外旅行者の免税制度の見直しについて、常々こういう制度に変えたほうがいいと思っていましたので、非常にいいことだと思いますし、なるべく早く実施されるように動いていただきたいと思います。その際に、やはり他国との外国人旅行者の免税のやり方なども十分学習した上で、いろいろ工夫していただきたいと思います。例えばアメリカの場合は、多くの州で海外旅行者の免税制度はありません。特にニューヨークなど大きな都市では、宝飾品ような高額商品の税金は旅行者、居住者、全てが払わされます。また、フランスの例ですと最低金額が設定されています。店によっても異なりますが、175ユーロ以上、あるいは350ユーロ以上について免税制度が使えるというものです日本でマツモトキヨシなどいろいろな小売店でも免税を行っています。いろいろな財によって価格の弾力性というのが違うと思いますので、もちろん日本の業者にとって損にならないようにというところも重要かと思いますが、旅行書に対する消費税について網羅的にきっちり調べた上で、どうやったら売上げにはあまり響かず、しかし日本の税収に貢献するような形で海外旅行者からも消費税を徴収できるかということをぜひ考えていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

森田分科会長 ありがとうございました。

仲監視課長 清水委員、ありがとうございます。頂いた御意見、我々税関としては、現場でしっかり不正がないように対応していくということに尽きようかと思っております。頂いた御意見につきましては担当部局にもお伝えして、今後の、秋、議論が行われていますので、しっかり参考とするように併せてしっかりと伝えていきたいと思います。ありがとうございます。

森田分科会長 それでは、河野委員、それから根本委員でお願いいたします。どうぞ。

河野委員 御説明ありがとうございました。私は1点はコメント、もう1点は御質問をお願いしたいと思います。

 まず1点目でございますけれども、13ページの保税地域の活用についてでございます。こちらにつきましては今年の国際物流の動向を踏まえた保税制度のあり方について取りまとめをしていただき、誠にありがとうございました。大変迅速に作業を進めていただき、またそれに関わる様々な政策も早速とっていただいていており、大変ありがたく感じております。その上で、保税地域の利用に関して1点コメントさせていただきます。別のところでも御説明のあったようにたくさんのEPAが結ばれております。そのようなEPAを利用して、日本の経済や産業をEPAのネットワークの中でどこに位置づけて、そしてその中での物の動きを踏まえた上で、日本経済の活性化のために保税制度が活用できるような方向でぜひ運営を考えていただきたいです。また、たくさん情報を関係の業者に提供しておられる中で例えばEPAのネットワークを利用した生産システムの中でどのようにEPAの制度や保税の制度を利用していくのかを伝えていただき、そうした経済活動によって日本の経済を活性化する方向に導く方向で御指導いただけると、この制度が日本の経済の活性化、あるいはひいては日本の港湾の活性化にもつながると感じます。ぜひよろしくお願いしたいと思います。以上、コメントでございます。

 もう1点は、21ページのIPEFについてでございます。先ほど貿易について、まだ交渉が決着していないとの御説明がございました。IPEFの枠組みというのはアメリカが入っているということで特別なものだとは思いますが、それ以外で交渉に参加している国を見ますと、ほとんどEPAでカバーされている国です。特に東南アジアの国々の多くについては多様なEPAが重複的に適用される状況になっていますので、そこにさらにこれだけ新しい要素を含んだ枠組みが適用されることになったときに、相互にどのような関係があるものと認識されて交渉が行われているのかをできれば教えていただきたいと思います。すなわち、IPEFとEPAは単に共存するということなのか、それとも両者が連携するなどのような関係がありうるのかもしれないと思います。両者の関係について少し、もし可能でしたら教えていただければと思います。

 以上でございます。

森田分科会長 ありがとうございました。

香川経済連携室長 経済連携室長の香川でございます。

 まずEPAにおける保税地域の活用については、非常に面白い論点だと思っております。最近、事業者からのヒアリングもさせていただいておりますけれども、例えば東南アジアの保税地域的なところを使いながらサプライチェーンの一部として活用されている企業さんはいらっしゃるということは認識しておりますので、日本の保税地域に関しても、我々はEPAの利用支援もしておりますので、頂いたコメントも踏まえて保税地域の活用も関連して促進していきたいと思います。どうもありがとうございました。

石谷参事官(国際交渉担当) 御質問ありがとうございます。IPEFにつきまして、委員御指摘のようにIPEFの参加国の多くは東南アジアの国々ということで、これらの国々との間には既にEPAがあるというのはそのとおりでして、他方、IPEFというのはこれまでのEPAとは違い、持続的な経済とか、そういう新しい目的を内容としたもので、例えば柱2のサプライチェーンとか、柱3、柱4のクリーン経済、公正な経済とか、これまでのEPAにはないような要素がたくさん含まれてございます。柱1の貿易につきましては交渉中ですので、具体的な内容は申し上げられませんが、IPEF加盟国の間で協定に盛り込まれた新しい内容を実施していくということで、そういう意味でいいますとEPAと競合するというよりも、IPEFで合意した新しい経済枠組みを加盟国で実施していくということと考えております。

高村関税局長 関税局長になる前は、私は、経済安全保障を担当しておりまして、米国とIPEFの提案について議論したことがありますが、アメリカがTPPから離脱した後、アジア太平洋地域にどう関与していくかというのがバイデン政権の重要な課題でした。マーケットアクセスの話ができない中で、どうやってアジアの国々に関与していこうかということで、彼らなりに工夫してこういう柱をつくって議論をしてきたものと私は理解しております。ただ、先ほど説明があったように、貿易のところは最後難しい問題があるということだと思います。

 それから、木村先生からも、経済安全保障は重要だけれども、それ以外のところでのルールの貫徹という話がありました。政府は、経済安全保障推進法を2022年に制定しましたが、そのときに我々が強調していたのは、経済活動は自由であるという基本原則は損なわないということです。安全保障の観点から必要最小限の範囲で政府が関与していくツールをこの法律でつくる、という説明をしてきました。アメリカはスモールヤード・ハイフェンスという言い方をしていますし、EUも経済安全保障の戦略を作りましたが、プリサイス、的確にターゲットを絞るということ、それからプロポーション、リスクに応じて比例的に措置を講じていくという原則も強調していました。経済活動の自由という大きな原則とのバランスをきちんととりながら経済安全保障の施策を担っていかなくてはいけないと思います。関税局・税関も経済安全保障、特に輸出面での対応はしっかりと役割を担っていかなくてはいけないと感じております。以上です。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、時間が大分迫っていますけど、根本委員、それからオンラインで末冨委員も手を挙げていらっしゃいますか、そして大橋委員と、それで一応打ち切りたいと思いますので、どうぞ。

根本委員 御説明ありがとうございます。

 私は令和7年度関税改正のうちの沖縄の特例措置について質問します。28ページです。資料では国際物流拠点産業集積地域に保税工場が立地しているように読めるわけですけれども、実績としてどのような製品を製造する保税工場がどの程度立地しているか、本日もし分かれば教えていただきたいと思います。

 以上です。

仲監視課長 根本委員、ありがとうございます。

 今御質問のあった沖縄の保税工場ですけども、2つほど保税工場が許可されております。内容を申し上げますと、1つは牛肉や豚肉を原料に食料製品、あるいは加工肉を製造している工場と、もう1つは冷蔵庫を輸入して、これを修理している工場というふうに承知しております。

根本委員 この制度を利活用している工場が存在していることは分かったわけですけれど、やはりもっと多くの民間企業に保税地域を活用してほしいと思うわけです。沖縄の国際物流拠点産業集積地域というのは、前は自由貿易地域という名前もついていましたけれども、日本で唯一の自由貿易地域だと思うんですね。沖縄が中心になって企業誘致を行っていますけれども、やはり自由貿易地域というのは言葉からして国がもっと関与すべき制度じゃないかというふうに思うので、各省庁ももっと大きな役割を果たすべきではないかと思っています。

 以上です。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、末冨委員、どうぞ。

末冨委員 御説明、種々ありがとうございました。私から1点、お礼のコメントを保税地域のことについてさせていただきたいのと、もう一つは質問と要望のコメントを関税技術協力についてさせていただければと思います。

 1点目の保税地域の件につきましては、広く業界の声を吸い取っていただいた上で迅速に種々御対応いただいて、保税ポータル等を設定いただき、備えていただいてありがとうございました。今後これを活用させていただきたいと考えております。それがお礼のコメントでございます。

 2点目の関税技術協力についての質問と要望のコメントですけれども、関税技術協力についてASEAN諸国を中心として協力をしていらっしゃると御説明を頂きましたし、また、EPAを締結している諸国などについては定期的に意見交換や状況の確認などをしていらっしゃると理解しております。昨今、各国、特にASEAN諸国を中心に輸入事後監査が各税関において積極的に行われていると感じておりますし、理解しております。各国の輸入事後監査の状況を見ますと、積極的に行われていて、それは適正な税収の確保のために重要なことは理解できるところですけれども、適正手続がちゃんと踏まれているかという疑問に思われるような案件も多々散見されるところでございまして、一例を挙げると、例えば表敬訪問と言いつつ、会社を訪問してはいきなり監査が始まって、ごくごく軽微なミスを指摘しては優遇措置を否定されつつ追徴をする、不足分を支払うことを命じられるというような場合などでございまして、適正手続が踏まれているのか疑問があるようなケースもございます。

 そこでEPA締結各国などを中心に、輸入事後監査や、あるいはいろいろな関税の手続について、リーディング税関である日本の税関に適正手続を遵守するような議論をリードしていただければと思いますし、あるいは実際にいろいろな声を吸い取って、実際の運用方法について改善していただければありがたいと思う次第です。というのは、適正手続が踏まれないことによって事実上の貿易障壁になり、事実上の日本企業の海外進出や、あるいはサプライチェーンの障害になっているのではないかという疑問を感じるところでございまして、ハイレベルでの御対応を頂けると、個々の窓口の意識も高まっていいのではないかと思っているところでございます。

 以上でございます。

森田分科会長 ありがとうございます。

志賀参事官(国際協力担当) 関税技術協力を担当しております志賀と申します。

 末冨先生がおっしゃった事後監査の部分の関税技術協力ですね、その際の研修でございますが、東南アジアの国からこの分野での受入研修で訪日されたグループが日本の事後監査の様子を学びまして、かなり自国と違うなということで、積極的な意見交換や質問がなされたところでございます。本国に帰ってからの自国の事後監査に活かしていただけるのではないかと思っております。先生がおっしゃったような適正手続が海外において行われていないような事例が散見されるとことについては、この分野に限らず、日系企業さんからの声をちょくちょく聞くところでございます。これはそれぞれの各大使館に税関からの出向者なり、あるいは税関以外の出向者であっても何がしか経済案件、日系企業を担当する人間がおりますので、そういった方々の御意見、日系企業さんからの御意見を聞いて、また、必要に応じ相手国政府への申入れですとか意見交換も行っているところでございます。

 以上です。

末冨委員 そのような制度というか、対策が既にとられていることを大変頼もしく感じましたし、ありがとうございます、大変参考になりました。

森田分科会長 それでは、大橋委員と、そして宮島委員でこのセッション、一応終わりにしたいと思いますので、大橋委員、どうぞ。

大橋委員 お時間ない中、ありがとうございます。

 3点だけですが、まず第1に、保税地域の活用でアート関係のものを深掘りしていただいて、ここ数年、アート関係を御紹介いただいていると思いました。アート以外についても事例をぜひ広げていただくのがいいのかなと思っていますので、ぜひ応援しています。

 2点目は共同キオスク、税関と入管手続の一本化のお話を頂きました。併せてスマート税関構想2020、しっかりアクションプランに引き継いで続けていただいていること、大変すばらしいと思います。こうしたアクションプランの中に手続の一本化の先を見据えて、通関・入管のデータの共有、そしてそれによる通関行政の効率化・高度化にしっかりつなげていくことが重要だなと思っています。

 3点目は、私、中座しなきゃいけないので本会議の後段についてもお話させて頂きたいのですが、経済安全保障の観点で我が国の物資の相当量を扱っている外港の扱いをしっかり議論することが重要だなと思っています。一定数の日本人船員を確保する必要があるのか、あるいはシーレーンの問題、そうしたものをしっかり議論していくことも併せて重要だなと感じています。

 以上です。ありがとうございます。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、宮島委員、どうぞ。

宮島委員 ありがとうございます。短めに申し上げます。

 まず来年度の税制改正に向けてのスタートだと思いますので、暫定税率に関しましては、今までもそうされていると思うんですけれども、漫然と続けるのではなく、1つ1つしっかり見直しをお願いしたいと思います。関税の場合は暫定が戦略的にいい場合もあるので、暫定税率そのものが特に悪いというわけではないんですけれども、固定税率にしたほうがいいもの、その他ということはしっかり見ていただければと思います。

 あと、国際情勢の変化でアメリカの大統領選挙などの影響についてしっかり見ていただきたいというのは、これまでの委員の方々もおっしゃったとおりです。

 もう一つ、スマート税関でいろいろな工夫はしていただいていると思います。特に今お話がありました外国人旅行者の免税についてなんですけれども、対象ですとかやり方に関しては本当に詳細にいろいろな例を見ながらやっていただきたいです。特に気になっておりますのがロジのところです。今海外でもいろんな形でやられていますけれども、空港での列がものすごいことになったり、人手がものすごくかかるような空港というのも過去にもよくありまして、それそのものが旅行者にとってあまりハッピーではない状況になっていることは過去にあったと思います。せっかく日本は新しくこれを取り入れるわけですので、今まで海外がやっているやり方よりもさらに先を行く、例えば、どういった形がいいか分からないですけど、タグとか、デジタルを使ってうまい形で、できるだけ人手を最少の形で、混乱を防ぐ形で導入されるとありがたいと思います。特に人手に関しましては、もちろん必要に応じて人が増えているとはいっても、日本全体としての人口減少は避けられない状況なので、極力人が少なくてもうまくいくという形を整えていただければと思います。

 以上です。

森田分科会長 ありがとうございました。

仲監視課長 一番最後に、宮島委員からございました外国人旅行者向け免税制度の見直しですけども、昨年の税制改正大綱にも、新制度の検討に当たっては外国人旅行者の利便性の向上や免税店の事務負担の軽減に十分配慮しつつ、空港等での混雑防止の確保を前提として、と謳われているところでございます。しっかりと不正を防止するという観点も、もちろん我々としては確保しつつ、一方で、空港での混雑防止の確保といったところもいかに両立させるかが肝になってくるかと思っております。これは担当当局ともよく議論し、あるいは関係省庁、空港・港湾を担当している国交省とかも含めて今議論を鋭意行っているところでございます。御指摘の点も踏まえて、制度の内容が固まった暁には我々としてもしっかりと導入に向けて作業を進めてまいりたいと考えております。ありがとうございます。

森田分科会長 よろしいでしょうか。この件はよろしゅうございますね。

 それでは、続きまして、国土交通省から「国際コンテナ戦略港湾政策の取組状況」につきまして御報告を受けたいと思います。澤田港湾経済課長、どうぞ。

澤田港湾局港湾経済課長(国土交通省) ただいま御紹介いただきました国土交通省港湾局港湾経済課長の澤田でございます。

 関税分科会委員の皆様方には、とん税・特別とん税の特例措置につきまして御理解を賜りまして、誠にありがとうございます。本日は日本の港湾・海運を取り巻く国際状況や我々の最近の取組状況などについて御説明申し上げます。

 それでは、資料2の表紙をおめくりいただきまして、1ページを御覧ください。

 アジア主要港におけるコンテナ取扱個数でございます。初めに、最近の国際海上コンテナ物流の動向について御説明します。1990年当時、神戸港をはじめとする複数の日本の港湾がコンテナ取扱個数ランキングの上位におりました。しかし、中国をはじめアジア主要港の取扱貨物量が急激に増加し、日本の貨物量が相対的に減少いたしました。2022年ではかろうじて東京港のみが上位50位以内に入っておりますが、取扱量も第1位となっている上海港の10分の1程度にすぎないという状況となっております。

 続きまして、2ページを御覧ください。コンテナ船の大型化と我が国港湾の最大水深岸壁の推移でございます。このスライドはコンテナ船の大型化が近年急速に進展したことを示しています。例えば2010年時点では、世界の最大船型は1万3,000TEU前後でした。TEUと申しますのは、20フィートコンテナを1個当たり1TEUと換算して、20フィートコンテナ1万3,000個積みの船というイメージでございます。最大船型が2010年時点では1万3,000TEU前後でしたけれども、直近では2万4,000TEU程度と、わずか15年間で倍近く大型化しております。欧州、北米、中南米等の各港湾に接続する長距離航路のことを基幹航路と呼んでおりますが、基幹航路に投入される船舶の大型化がさらに進展すると、寄港地の絞り込みがますます進展することが懸念される状況にございます。

 続きまして、3ページです。国際基幹航路の寄港回数と船型でございます。このスライドはアジア主要港と国際コンテナ戦略港湾である京浜・阪神港に寄港する基幹航路の寄港回数を週ベースで比較したものです。2010年代は各港ともにおおむね横ばいで推移しておりましたが、京浜港・阪神港につきましては、2021年に入ってから寄港回数が減少しています。これは新型コロナウイルス感染症に伴う国際海上コンテナ輸送の需給逼迫の影響により基幹航路の運航スケジュールに大幅な遅延が生じたため、国際コンテナ戦略港湾が抜港、スキップされる対象になったためと考えております。

 続きまして、4ページ目を御覧ください。釜山港のトランシップ貨物の国別の内訳でございます。基幹航路の寄港回数が減少した結果、その分の日本発着貨物が海外港で基幹航路にトランシップされていると考えられます。例えば170万TEUの日本発着貨物が釜山港でトランシップされているという状況にございます。

 続きまして、5ページを御覧ください。船会社間のアライアンスの再編でございます。これまで申し上げました貨物や船型を取り巻く状況の変化を受けまして、基幹航路を運航する主要な船会社は厳しい競争にさらされております。これらに対応するために企業の統廃合やアライアンスの再編などが実施されている状況です。現時点におきましては、2M、THE Alliance、Ocean Allianceの3大アライアンスとなっておりますが、来年2025年2月にはMaerskとHapag LloydによるGemini Corporation、ONE、陽明、HMMによるPremier Alliance、Ocean Allianceへと再編される予定となってございます。

 続きまして、6ページを御覧ください。アライアンス再編に伴う日本発着の国際基幹航路でございます。船社間のアライアンスの再編は日本発着の国際基幹航路にも影響がございます。先日、各船社が第一報を発表したところでございますが、これによりますと京浜港及び阪神港の欧州向け航路は増加見込みとなっているところです。ただ、週当たりの便数など、まだ詳細が判明してございませんので、今後の詳細情報を注視していきたいと考えております。

 続きまして、7ページを御覧ください。国際海上コンテナ輸送の需給逼迫によるリードタイムへの影響でございます。海外港湾でのトランシップに依存することの潜在的なリスクについて御説明申し上げます。例えば新型コロナウイルス感染症流行の影響を受けた需給逼迫によりまして、国際コンテナ戦略港湾経由と釜山港経由の輸送日数の差が最大50日程度に達するなど、海外港でトランシップする場合のサプライチェーンの脆弱性が顕在化いたしました。有事におけるリスク低減のためには、国際コンテナ戦略港湾を経由した輸送を活用する必要があると考えております。

 続きまして、8ページを御覧ください。基幹航路の寄港喪失による影響でございます。物流混乱のときだけではなく、日本に寄港する基幹航路が減少し、海外港湾でトランシップして輸送せざるを得ない状況になりますと、リードタイムの上昇といった悪影響が生じます。この結果、輸入物価の上昇といった家計への悪影響に加えて、日本に所在する企業の立地環境が悪化し、企業の海外流出が促される結果、輸出入貨物の減少により基幹航路の寄港喪失がさらに進むという悪循環が生じてまいります。これに対処するため、国土交通省では国際コンテナ戦略港湾政策のもと、京浜港・阪神港にハード・ソフト一体となった施策を集中的に実施し、両港に寄港する基幹航路の維持・拡大を図っているところでございます。

 続きまして、9ページを御覧ください。新しい国際コンテナ戦略港湾政策の進め方検討委員会最終とりまとめの概要でございます。国際コンテナ戦略港湾政策につきましては、本年2月に今後5年間程度で取り組むべき施策の方向性が取りまとめられました。こちらに関しましては、本日もいらっしゃっておられます河野真理子先生に、この検討委員会の座長として非常にお世話になりました。ありがとうございました。

 当該委員会におきまして、国内外の貨物を国際コンテナ戦略港湾に集約する「集貨」、国際コンテナ戦略港湾近隣での産業立地等の促進を図り、新たな貨物を創出する「創貨」、施設の整備や港湾のDX化・GX化等を実現する「競争力強化」という三本柱の施策を引き続き強力に推進していくこととしてございます。また、京浜港につきましては横浜川崎国際港湾株式会社が、阪神港につきましては阪神国際港湾株式会社がコンテナターミナル等の運営を担う港湾運営会社に指定されており、事業を通じて集貨施策などを実施しておりますが、これら港湾運営会社をはじめとする関係者と荷主との連携の強化などに取り組んでいくこととしているところでございます。

 続きまして、10ページを御覧ください。国際コンテナ戦略港湾の機能強化~「集貨」「創貨」「競争力強化」~でございます。具体的な取組を御説明申し上げます。

 集貨につきましては、引き続き日本国内からの集貨に取り組むとともに、海外発貨物の集貨を進めるべく、北米・中南米地域向けの貨物を中心とした東南アジア等からの広域集貨に向けた輸送ルートの構築に取り組むこととしております。

 続きまして、2の創貨についてでございます。創貨につきましては、貨物を単に日本でトランシップするのではなく、保税地域において加工・製造や再混載することで、より付加価値のある形での積み替えを行いたいというニーズに対応するべく、トランシップ貨物にも対応した流通加工・再混載等の複合機能を有する物流施設の立地への支援や国際トランシップ貨物に係る物流手続の円滑化等について、財務省関税局とも連携して取り組んでいるところでございます。

 続きまして、11ページを御覧ください。競争力強化の取組といたしましては、船舶の大型化、積み替え円滑化等に対応した大水深・大規模ターミナルの整備に取り組んでおります。

 また、ヒトを支援するAIターミナルを実現させ、生産性向上や労働環境改善を確保するため、港湾のDX化を推進していくこととしてございます。具体的には、ゲート前混雑問題の解消によるコンテナ輸送効率化を目指すシステムであるCONPASの本格運用や遠隔操作RTGの整備、ゲートシステムの高度化など、AIターミナル技術の社会実装を引き続き推進していくこととしてございます。

 続きまして、12ページを御覧ください。国際基幹航路の寄港の維持・拡大を図るための特例措置(とん税・特別とん税)でございます。とん税・特別とん税の特例措置につきましても、入出港コストの低減により大型コンテナ船の寄港を促進するものであり、国際コンテナ戦略港湾政策において重要な役割を担っております。特例措置により北米・欧州方面の基幹航路に就航する大型コンテナ船の入出港コストについて、近隣諸国の主要港である釜山港・上海港と比較して遜色のない水準に低減されており、これらの港湾との競争環境の確保につながっています。

 続きまして、13ページを御覧ください。とん税・特別とん税の特例措置に関する船会社のコメントでございます。とん税・特別とん税の特例措置に関しまして、国際コンテナ戦略港湾に基幹航路を寄港させている主要船社からコメントを頂いているところでございます。総じて特例措置のコスト削減効果が大きく、基幹航路の国際コンテナ戦略港湾への寄港を維持する上で重要な要素となっているとの御意見を頂戴しているところです。

 続きまして、14ページを御覧ください。国際フィーダー航路網の拡大でございます。国際コンテナ戦略港湾のこれまでの取組により、その効果が徐々に発現してきていると理解しているところでございます。日本の各地域の港湾と国際コンテナ戦略港湾である阪神港や京浜港を結ぶ国際フィーダー航路網の寄港便数につきましては、国際コンテナ戦略港湾の港湾運営会社が設立される前と比較して、阪神港では約5割、京浜港では約4割増加してございます。この結果、国際コンテナ戦略港湾を経由する輸送がますます利用しやすくなっているところです。

 続きまして、15ページを御覧ください。横浜港における北米東岸向け直航輸出航路の新規寄港でございます。北米東岸向けの直行航路につきましては、2021年7月から日本への寄港がなくなっていたところですが、2023年3月に約2年ぶりに日本発北米東岸向け直航サービスの寄港が再開いたしました。

 続きまして、16ページを御覧ください。日本-米国東岸間のコンテナ貨物輸送量の推移でございます。日本-北米東岸間の輸出は、直行航路の寄港が中止された2021年7月以降、ほぼ全量が釜山港トランシップに切り替わっておりましたが、2023年3月に直行航路の寄港が再開したことで、直航率が2割程度まで回復するなど、日本に所在する企業の立地環境が改善しております。

 続きまして、17ページを御覧ください。国際コンテナ戦略港湾政策のKPI、こちらはまず輸送力について京浜港で見たものでございます。国際コンテナ戦略港湾政策では、京浜港について週当たり27万TEUを取り扱うことができる航路を確保することをKPIとしてございます。2020年はKPIを上回りましたが、2021年以降、需給逼迫による基幹航路減少の影響を受けて低下してはおりますが、足元では2022年から2023年にかけまして回復している傾向が出てきたという状況にございます。

 続きまして、18ページを御覧ください。国際コンテナ戦略港湾政策のKPI、こちらは輸送力ベースで阪神港について見たものでございます。阪神港につきましては、週当たり10万TEUをKPIとしておりますが、阪神港の輸送力に関しましても需給逼迫による基幹航路減少を受けまして低下傾向にございます。多方面・多頻度の直航サービスの充実という国際コンテナ戦略港湾政策の政策目標の達成は道半ばであり、今後より一層強力にこれらの政策を推進していくこととしてございます。

 続きまして、19ページ、20ページでございますが、こちらは昨年発生いたしました名古屋港のコンテナターミナルへのサイバー攻撃を受けて様々な対応を行っている状況を参考資料として添付させていただきましたので、お時間のある際にお目通しいただければと思います。

 私からの説明は以上となります。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御説明について質疑応答に入りたいと思いますが、時間が押しておりますので、できるだけ簡潔にお願いしたいと思います。

 それでは、植田委員、どうぞ。

植田委員 簡潔に、前回、私から申し上げたのと同じで、恐らく清水委員からチャットで入っているコメントと同じですけれども、要は釜山港に、かなり日本もしくは東南アジアからの荷の集積をして、そこからアメリカとかに行くという、中継点としての機能がかなり集中している中で、それに対してどう対抗するかという視点がやはりちょっと薄いという感じがいたします。経済学では、はるか昔からホテリングの立地モデルという理論が知られておりまして、ライバルのお店があるところにあるとすると、似たようなことをやるのであれば、そのすぐ横にお店を立地させるのが最も効果が高いことが知られております。それを考えますと、東京や横浜・神戸とかにお金を使うのではなく、釜山の物を持ってきたいと思うのであれば、少しでも取りたいと思うのであれば、阪神や東京・横浜ではなくて、やはり九州の北部とか、釜山にできるだけ近いところに立地させて物を持ってくるのが最も効果的であるということになります。そういう形でも考えてみたらいかがかと思います。

 以上です。

森田分科会長 ありがとうございました。

澤田港湾局港湾経済課長(国土交通省) 植田委員からの貴重な御質問、大変にありがとうございます。国際コンテナ戦略港湾の選定に際しましては、平成22年に公募を行いまして、京浜、阪神のほかに、伊勢湾、北部九州から応募を頂いたという経緯がございます。厳正なる審査を経まして、京浜港と阪神港が国際コンテナ戦略港湾として選定されております。その理由でございますけれども、もちろん海外からの積み替えというところもさることながら、やはり船会社として寄港に際して何を選ぶのかというところは、貨物量を見ているというところがございます。そうした場合に京浜港・阪神港は我が国を代表する大消費地を有しているということで、これらの貨物需要を活用するということが重要だと思っております。また、特にインフラの場合ですと、京浜港・阪神港は、これまでも投資が進んできているところでも一日の長があるというところがございます。

 いずれにいたしましても、今後も国際基幹航路の維持・拡大に向けた取組をしっかり継続してまいりたいというふうに考えております。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、杉山委員、お願いいたします。

杉山委員 質問が2点ございます。

 1点目は資料の5ページの船会社間アライアンスの再編でございますが、2025年から、資料を拝見しますと最大のスイスのMSCという会社がアライアンスから離脱しているように見受けられますが、これについての影響というのはあるのでしょうかという質問です。

 もう1点目は、大水深コンテナターミナルの整備ですけれども、こちらについての費用対効果はどのように見込まれているのかについて質問させていただきます。よろしくお願いします。

森田分科会長 それでは、お答えをお願いいたします。

澤田港湾局港湾経済課長(国土交通省) 貴重な御質問ありがとうございます。まず1点目の船会社間のアライアンスの再編に関してでございます。まさに委員御指摘のとおり、今般、2025年のアライアンスの再編によりましてMSCはこのアライアンスから離脱をして、単独で運航を行う予定となってございます。ただ、資料の5ページの下のところにございますように、MSCの隻数は801隻、また船腹量としても一番大きい船会社であるということで、彼らの経営戦略として単独で、アライアンスを離脱して運航していくという道を選んだのではないかと我々としては推測をしているところでございます。今後、アライアンスを離脱したMSCと、それから3大アライアンスと合わせて4大グループぐらいになっていく中で、どういうふうな影響が出ていくのかというところにつきましては、引き続き我々としても注視してまいりたいと考えているところでございます。

 それから、2点目で御質問いただきました大水深のバースを整備する際の費用対効果のところについてでございます。当然ながら、これを単に思いつきで整備しているというのではなくて、我々としては整備に当たりましてきちんとB/Cなども確認を行った上で整備に着手をしているというところでございますし、また、実際にそれらがどのような効果というものを及ぼしているのかをしっかりと我々としてもチェックをしているところでございます。

森田分科会長 それでは、古城委員、それから河野委員でお願いいたします。

古城委員 御説明ありがとうございました。ここでは関税分科会ということなので、とん税・特別とん税というものがどのぐらい効果があるのかというのは前から議論があったと思います。今回の御説明で国際コンテナ戦略を非常に幅広くやられているということですが、質問は6ページにある欧州向けの航路数が増えているというのは、この原因というのはどういうふうに分析されているのかというのが1つと、それから、とん税・特別とん税の効果というのは国際コンテナ戦略の中でどの程度の影響力を持っているというふうに国交省のほうでは分析されているのか、この2点について御説明いただければと思います。

 以上です。

森田分科会長 お願いいたします。

澤田港湾局港湾経済課長(国土交通省) 御質問ありがとうございます。まず1点目の今回のアライアンス再編に伴う欧州航路が航路数として見れば増えているという点でございますけれども、これに関しましては、先ほども申し上げましたように便数などの詳細が不明だというところがございます。すなわち、どれだけの大きさの船が入ってくるのか、週何便入ってくるのかというところによってくるところもございまして、船社がどういう考え方でやっているのかというのは、これら便数の詳細や船の大きさの詳細、そういうところが明らかになった段階でないと、まだ今の段階では判断がつかないのかなというふうに思っているところでございます。

 2点目のとん税・特別とん税の特例措置の効果についてでございます。コンテナ船の船社にしてみたら、寄港するかどうかを判断する際には、貨物量が非常に重要な要素になるというのは当然でございますけれども、それ以外にインフラであったり、入出港のコストといったような要素を総合的に勘案して判断されますので、とん税・特別とん税の要素というのも非常に大きいというふうに我々としては考えているところでございます。とん税・特別とん税の特例措置によって、入出港のコストが少なくとも海外主要港と同程度となっていることは主要船社からのヒアリング結果にも出ているんですけれども、やはり国際基幹航路の国際コンテナ戦略港湾への寄港を維持する上では非常に重要な要素となっていると考えてございます。

 関税局の試算によりますと、特例措置によるとん税・特別とん税の、税収から見たら減収額という形になるんだとは思いますけれども、毎年数億円程度と伺っているところでございます。

 いずれにいたしましても、この特例措置というのが我が国の国際コンテナ戦略港湾を寄港先として選んでいただく上で非常に大きな源泉になっているのは、船社からのヒアリングなどを聞いていても、まず間違いないところと我々は思っているところでございますし、また、このような措置を実施していただけることを非常にありがたいことと考えてございます。

森田分科会長 では、河野委員、どうぞ。

河野委員 先ほど御紹介ありましたように、検討会の座長を務めた身で発言させていただくのはいかがかとは思いますが、あえて発言をお許しください。確かに平和で何の問題もない時代ですと、日本の港がトランシップに特化する方が経済効率が良いと考えます。ですが、7ページに記載されていますように、例えばコロナウイルスのような問題が起こったときに日本発着貨物が後回しにされるということが現実に起こるわけです。この事例はたまたま感染症でございますけれども、今の国際関係の不安定さを考えるときに、少なくとも日本国内の産業が外に物を輸出したり輸入したりするときのリードタイムの問題やそれを生む要因を、考えなければならない要素になろうかと思います。

 日本として経済の安定性の確保のありようをどういう方向にかじを切るのかということと連動すると思うのですけれども、国際基幹航路の日本の港湾への寄港をどのように維持するかについては、経済合理性だけでは考えられない側面があるのだということを指摘させていただきたいと思います。誠に申し訳ございませんが、座長をさせていただいて、この点を痛感した次第でございますので、コメントをさせていただきます。ありがとうございます。

森田分科会長 ありがとうございます。

 それでは、野原委員、お願いいたします。

野原委員 私からもコメントおよび質問をさせていただきます。

 とん税・特別とん税の特例措置についての議論のために、国際コンテナ戦略港湾政策の取り組み状況についてわかりやすく説明いただいたと思います。中でも、国際コンテナ戦略としても、10ページ上段にあります国際コンテナ戦略港湾への集貨施策の効果を高めることが重要かと思います。国内からの集荷に加えて、釜山や上海港等の東アジアから、さらには東南アジアからの集荷を促進し、それによって北米・中南米方面の基幹航路の拡大を図る。北米・中南米方面の国際基幹航路の貨物量をいかに確保していくかが重要で、その補完的な意味合いとして、とん税・特別とん税の特例措置が有効ということかと思います。その意味で、北米・中南米方面の国際基幹航路の競争力向上や、貨物量増加にどの程度インパクトがあると考えておられるかを伺いたいと思います。趣旨としては、10ページに記載されている集貨施策の効果、重要性をもう少し具体的に説明していただきたいと思います。

 また、同じく10ページの下段に、創貨のために、保税地域における加工・製造等のサプライチェーンのニーズにも対応していくと書かれています。これも国際基幹航路の集貨量増加につながりますが、具体的にどのような進捗状況かも補足説明していただければありがたいです。そうしたことがとん税・特別とん税の特例措置の意義、有効性の理解にもつながると思います。以上2点について補足説明をお願いします。

森田分科会長 では、お願いします。

澤田港湾局港湾経済課長(国土交通省) 御質問ありがとうございます。まず1点目の集貨施策についての部分でございますけれども、特に日本における集貨というところで強みとなるところは、私としてはアジアからアメリカに、あるいは中南米に貨物を輸送する場合において、アジアにおけるラストポート、あるいは輸入する場合であればファーストポートになり得る位置に日本が立地しているということではないのかと考えております。そのために、特に東アジアや東南アジアから集貨をして日本で積み替えるということに関しては、地の利としてはいいところにあるという状況です。そういう中で、選んでいただくためには地の利がいいというだけでは駄目なところもございまして、貨物量であったり、それからコスト、さらには最近ですと環境対応などを気にする方も荷主、船社の中にはいらっしゃるため、そういうところの総合力でもって日本の港湾の品質を上げていくことによって、日本の港湾を選んでいただけるようにしていくというのが集貨施策とともに実施していく必要があるというふうに考えているところでございます。

 一方で創貨の部分、2点目の御質問でございますけれども、創貨に関しましては我々も様々な取組を行っております。無利子貸付であったり、補助によって物流施設の整備を支援して貨物需要を創出するという取組もやっています。ただ、これはハードだけではなくて、やはりソフトの分野に関する取組が非常に大きいと思っているところでございます。特に保税地域における加工・製造や再混載という面に関しましては、先ほどの関税局の御説明の中でもありましたけれども、保税制度における見直し、御協力というのも非常に大きいところでございますので、その部分に関しましては関税局と連携させていただきながら、ハード・ソフト両面で創貨施策についても皆さんに御利用していただけるよう取り組んでいきたいと考えているところでございます。

野原委員 ありがとうございます。関税の施策と港湾の施策の連携によって、さらなる成果が出ますように頑張っていただきたいと思います。

澤田港湾局港湾経済課長(国土交通省) ありがとうございます。

森田分科会長 ありがとうございました。

 あと、手を挙げていらっしゃるのは杉山委員、お願いいたします。

杉山委員 申し訳ございません。もう大丈夫でございます。ありがとうございます。

森田分科会長 ありがとうございます。

 それでは、ほかによろしいでしょうか。

 それでは、続きまして根本分科会長代理から「関税分科会の海外調査報告(韓国)」でございますけれども、これにつきまして御報告を受けたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

根本委員 御紹介に預かりました根本でございます。私からは本年5月に実施いたしました韓国での調査に関し報告させていただきます。

 1ページ目を御覧ください。本年5月13日から15日にかけて韓国の釜山港、仁川港及び仁川空港の調査を行いました。

 主な報告ポイントは3点となります。1点目は、釜山市街から25キロメートル離れている釜山新港において大規模な港湾開発が進められているという点です。新港の隣に建設中の国際空港とつなげることでシー&エアの物流サービスを実現することを目指しています。また、新港の後背地に日本をはじめとする外資系企業を多数誘致し、コンテナ貨物の集貨・創貨により国際基幹航路の大型コンテナ船が寄港するグローバル・ハブになっています。

 2点目は、視察した港湾・空港の物流施設や税関検査場では、人手不足への対応や安全性の確保などの面から先端技術を用いたオートメーション化が進められていたという点です。

 3点目は、物流センターや旅具通関においては、一部の管理対象貨物では全量X線検査が行われている点です。なお、検査対象、貨物に対する処理プロセスは日本と同様のようです。

 2ページ目を御覧ください。ここからは調査先ごとに少し詳しく結果を報告いたします。韓国最大のグローバル・ハブ港である釜山港は、新港と北港が主要ターミナルとなっております。新港は釜山港全体の70%、北港は30%のコンテナを取り扱っています。なお、釜山港は国の計画、予算に基づき釜山港湾公社が管理しております。日本の国際コンテナ戦略港湾におけるトランシップコンテナの比率は1%にとどまっていますが、釜山港における比率は51%と大きな差が生じています。また、2030年頃に近接地に新空港が完成予定であり、これによりシー&エアの物流サービスが可能となるなど、今後も規模は拡大していくと思われます。

 釜山港がグローバル・ハブ港として成功した要因の1つにはFTZ(自由貿易地域)があると考えています。FTZは立地企業が通関規制や関税に関する優遇措置を受けることができる保税地域です。また、法人税・所得税の減免や1平方メートル当たり年間35円など非常に安い土地賃貸料などで多くの外国企業の誘致に成功しています。進出企業の半分が日系企業です。日系企業は、例えば中国・東南アジアで生産された雑貨などを輸入し、保税倉庫で保管し、日本国内の需要に応じてFTZから日本に輸出しています。

 3ページ目を御覧ください。ドンウォン・グローバル・ターミナルと新港指定蔵置場について報告します。ドンウォン・グローバル・ターミナルでは、これは新港の中の一番新しいターミナルですけれども、安全性確保の観点からコンテナの搬出工程は人が立ち入らずに完結する仕組みが導入されています。すなわちコンテナ船からガントリークレーンでコンテナを降ろす工程、降ろしたコンテナをヤードに仮置きする工程、仮置きしたコンテナを門型クレーンで取り出してトラックに積み込む工程まで、全て機械化・自働化されていました。また、将来のコンテナ船大型化を見込んで水深23メートルの岸壁を整備中です。

 次に、新港指定蔵置場ですが、これは検査・監視の必要があるものとして選別された管理対象貨物の検査を行う施設で、資料に記載の4種類の管理対象貨物のうち、ここでは即時検査貨物とX線検査貨物を取り扱う施設となっていました。貨物はマニフェスト提出後、税関が管理対象貨物を選定します。そしてX線検査貨物に選定された貨物は大型X線検査を行い、異常があれば搬入、開披検査という流れになります。即時検査貨物に選定された場合は、直接搬入され、開披検査されることになります。

 4ページ目を御覧ください。仁川税関統合検査センターは仁川港周辺に点在していた既存の税関検査施設を統合する形で本年4月から運用されている施設になります。今回はこのうち、海上特送物流センターとコンテナ検査センターを視察してきました。

 まず海上特送物流センターでは、主にSP貨物を取り扱っており、貨物情報やX線画像を基に職員があらかじめ決めてある取扱指示に基づき自動仕分けを行う自動分類システムが導入されていました。貨物検査の流れについては、ベルトコンベア上でバーコードリーダーによる申告情報の読み取り及び全量X線検査を一貫して実施しています。また、検査対象貨物に判別された場合は、同建物の別フロアに移され、開披検査が行われるという流れになっていました。

 次に、コンテナ検査センターでは、釜山税関・新港指定蔵置場でX線検査貨物に選定されたものについて検査を行っており、検査の結果、異常が認められた場合は隣接する指定蔵置場にて開披検査を実施することになっております。

 5ページ目を御覧ください。最後に仁川空港における国際郵便物流センターと旅具検査場について報告いたします。

 国際郵便物流センターは、日本の外国郵便出張所に当たる機構であり、書状や小包など種類別に分けた後、海上特送物流センター同様にベルトコンベアに載せたままバーコード読み取りや全量X線検査を行っていました。2023年には434件、233キログラムの不正薬物の摘発があったとのことです。

 次に、旅具検査場ですけれども、各ターンテーブルにX線検査装置が設置されており、受託手荷物は全量X線検査を実施しているとのことです。昨年5月からは税関申告がない旅行者による携帯品申告書の提出が省略されているため、申告件数は減少していますが、検査率はおおむね維持されています。

 私からの説明は以上です。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御報告につきまして御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。

藤中業務課長 業務課長の藤中でございます。貴重な出張報告ありがとうございます。韓国におきまして先端技術を用いたオートメーション化が進んでいる状況、大変よく分かりました。ありがとうございます。

 我が国におきましても、例えばバーコードリーダーを用いた効率的な審査ですとか、AIを含んだDX化に取り組んでいるところでございますけれども、こうした韓国の状況等も踏まえながら、また、我が国でも2030年代、成田空港の再編といったこともございますので、税関の審査・検査のあり方について不断に見直し、検討を進めていきたいと思います。ありがとうございます。

森田分科会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

 伊藤委員、どうぞ。

伊藤委員 大変興味深い御報告ありがとうございました。コメントなんですけれども、本日最初の税関のスマート税関の話ですとか、港湾の施策の話とも関連すると思いますが、釜山も仁川も非常に進んだ取組をしており、かつ釜山は非常に大規模な港湾で、日本の国際戦略港湾が頑張ってもかなり水を開けられているという印象があります。先ほど、他の委員の先生からも、諸外国のいろいろな例に倣って、より利便性の高いシステム構築が必要だというような御意見もあったように、先端的なところに学び、かつ、そういう海外の港湾とか海外の税関とももっと連携することが必要だと感じました。日本だけで独自によりよいシステムをつくるというよりは、海外とのコネクティビティみたいなものを向上していくシステムをどのようにつくるかということに重点を置いて考えていくのがいいのではないかと思っております。国内だけでも港ごとに全然違うシステムを使っていて、国内でもシステム統一が非常に難しいという状況だと聞いていますけれども、海外との連携を見据えた形のシステム構築を考えていく必要があるんじゃないかと、御報告を受けて感じました。

 以上です。コメントです。ありがとうございました。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、河野委員、どうぞ。

河野委員 短くコメントさせていただきます。大変有意義な御報告をありがとうございました。特に2ページに記載されていますように、韓国の場合は釜山港のトランシップコンテナの比率が51%で、日本は現状1%にとどまっていることに注目しなければならないと思います。この点が先ほどの資料2で御説明があった日本の国際コンテナ戦略港湾がうまく国際基幹航路を惹きつけられなくなっている大きな原因の一つであろうと考えております。もともと日本は自国発着の貨物だけで国際基幹航路が入ってくれるだけの十分な力がありました。日本発着の貨物が減少傾向にあるにもかかわらず、その時代の港の造りであったり、港の運営方法が続いているであろうと思います。日本経済の事情が大きく変化しており、さらに国家政策として港湾の強化に力を入れている港がすぐそばにあるということが現在の日本の国際コンテナ戦略港湾が直面している状況です。そのような中で何とか国際基幹航路を維持していくとするのであれば、韓国の施策の経験から何をどのように学んで、そして日本に生かしていくのかということが必要になろうかと思っております。ありがとうございました。

森田分科会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

 村上委員、どうぞ。

村上委員 先ほどの国交省の課長さんのお話とか、先ほどの根本先生の御報告を聞いてつくづく思いますが、港湾整備について日本の経済規模を前提にやっていくのではなくて、港湾ビジネスや運輸ビジネスを日本の基幹産業として育てていくという視点が恐らく欠けていたのかなという感じがいたします。私の経験では、小学校や中学校の頃の教科書では神戸港が世界第1位の港というふうに教わった記憶がありますが、その状況から見ると現状は非常に寂しい状況になっているなという感じがします。やはり韓国の取組などを見ても、韓国経済に必要な貨物を扱うためというよりも港湾ビジネスを基幹ビジネス、基幹産業として育てていくという視点があったのではないかなと思います。当然港湾問題の検討会などでは十分その辺は分析されているとは思いますが、正直な感想を述べさせていただきました。

森田分科会長 ありがとうございます。

 それでは、予定の時間になりましたので、末冨委員、どうぞ。

末冨委員 ありがとうございます。1点だけ質問なんですが、韓国は、北朝鮮とかロシアに地理的に近いというところで、国家安全保障上の輸出規制あるいは制裁などで潜脱の場所として使われるのではないかというような観点から、ほかの国からそのように見られたり、あるいは韓国自身もおそらく気をつけているのではないかと思います。日本も従前、輸出規制を韓国に対して強化したときは韓国経由で北朝鮮に物資が流れていたというような状況があったかと思います。韓国を通じて例えばロシアとか北朝鮮への物資の流れが、港湾を通じてのものなのか、ほとんどが陸続きのものなのかとは予想はされますけれども、ただ、保税地域などをもし使っている場合には港湾を通じてということもあるかなと思うんですが、この点についての意識や関心は高かったのかどうかということを教えていただければと思います。

根本委員 経済安全保障、私はよく分からないので答えていただいていいですか。

森田分科会長 どなたか、どうぞお願いします。

内野審議官 国際担当の審議官の内野でございます。短く申し上げますと、G7でロシア制裁を厳しくやっておるという中で、迂回地として疑わしい地域も存在するため、迂回対策の議論もG7間で進めていまして、そこでライク・マインデッド・カントリーの1つとして韓国もその議論に参加してやってもらっているという、そういう状況はございます。なかなか個別の話はいたしかねるので、韓国も我々サイドについてくれているということだけで御理解いただければと思います。

末冨委員 ありがとうございました。

森田分科会長 それでは、よろしいでしょうか。

 実は私もこの調査、一緒に参りまして、一言だけ印象を述べておきますと、韓国の場合はかなり先の目標をしっかりと見て、そしていろんな要素というものを統合化・集中化をすると。しかもそれを大規模にするとともに、その要素間の効率を高めるための標準化ということも図っていると。その意味で言いますと、かなりコンセプトがはっきりしてああいうものを造っているのかなという気がいたしまして、日本もかつての時代はともかくとして、これからの時代はそういう形での先を見通した考え方というのが大事になってくるかなと感じたところでございます。

 それでは、よろしいでしょうか。ありがとうございました。

 それでは、最後に事務局から連絡事項がございますので、大関関税課長から御説明をお願いいたします。

大関関税課長 本分科会における議事録の取扱いにつきましては、当審議会議事規則第5条の規定により原則公開とされております。本日御発言いただきました委員の方には、議事録案がまとまりました段階で御発言部分を事務局から送付させていただきます。送付後、1週間程度の間に御意見などがない場合には、恐縮ですが御了解いただいたものとさせていただきたいと存じます。議事録の取扱いにつきましては今後ともこの扱いで進めさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 また、当分科会の終了後に、引き続き当会場におきまして特殊関税部会を開催させていただきますので、恐縮ですが、特殊関税部会の委員の先生方におかれましては、そのままお待ちいただければと存じます。

 以上でございます。

森田分科会長 ありがとうございました。

 次回からは令和7年度関税改正につきましての本格的な議論を行うこととなりますが、俯瞰的な議論ができるように、事務局には改正内容のみならず、関連する制度なども適宜御紹介いただくようにお願いしたいと思います。

 毎年、年度の初めは非常に活発な議論が展開されまして、少し時間がオーバーしてしまいまして、進行の不手際もございまして申し訳ございませんでしたが、いずれにしましても、これをもちまして本日の関税分科会を終了いたしたいと存じます。

 次回の関税分科会の開催につきましては、11月5日(火曜日)の午前10時開始を予定しております。詳細につきましては事務局と調整の上、別途御連絡を差し上げたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、本日は御多用のところ、御出席賜りまして誠にありがとうございました。これで終了といたします。

午後0時05分閉会