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関税・外国為替等審議会 関税分科会 (令和4年10月31日開催) 議事録

  1. 開会
  2. 関税改正項目①
    -暫定的減免税制度の適用期限の到来
    -個別品目の関税率の見直し
    -知的財産侵害物品の認定手続における簡素化手続の対象拡大
    -植物防疫法の改正に伴う保税関連の規定の整備
  3. 急増する輸入貨物への対応に関する研究会の報告
  4. 加糖調製品をめぐる動向等
  5. 閉会

出席者
関税分科会長 森田 朗 財務省 諏訪園関税局長
委員 伊藤 恵子 山崎審議官
片山 銘人 柴田審議官
金原 壽秀 河西総務課長
河野 真理子 吉田関税課長
木村 福成 河邑参事官
斎藤 保 志賀参事官
坂元 龍三 西川監視課長
佐藤 英明 小多業務課長
清水 順子 馬場調査課長
杉山 晶子 澤藤事務管理室長
高橋 裕子 鈴木特殊関税調査室長
高山 一郎 近田原産地規則室長
田村 善之 荒巻税関調査室長
永沢 裕美子 松田経済連携室長
根本 敏則 伊藤知的財産調査室長
専門委員 国松 麻季 経済産業省 田上製造産業局生活製品課長
末冨 純子 八木製造産業局航空機武器宇宙産業課宇宙産業室室長補佐
宮島 香澄 石川通商政策局通商機構部通商交渉調整官
村上 秀徳 農林水産省 尾﨑輸出・国際局国際経済課長
尾室消費・安全局植物防疫課長
高橋農産局総務課長
金子農産局地域作物課課長補佐

 

午後1時00分開会

森田分科会長 皆様こんにちは。まだオンラインのほうでお入りになっていらっしゃらない方がいらっしゃいますけれども、時間が参りましたので、ただいまから関税・外国為替等審議会関税分科会を開催したいと存じます。

 委員の皆様方には、御多用中のところ御出席をいただきまして大変ありがとうございます。

 それでは、本日の議事に入らせていただきたいと存じますが、本日の議題はお手元の議事日程のとおりでございます。具体的には、「暫定的減免税制度の適用期限の到来」の他、「個別品目の関税率の見直し」、「知的財産侵害物品の認定手続における簡素化手続の対象拡大」及び「植物防疫法の改正に伴う保税関連の規定の整備」について御説明を受け、審議を行いたいと思っています。また、「急増する輸入貨物への対応に関する研究会の報告」につきまして御説明を受け、議論を行いたいと思います。そして、最後に、今後の審議の参考といたしまして、「加糖調製品をめぐる動向等」について農林水産省より説明を受ける予定でございます。

 それでは、まず、吉田関税課長から「暫定的減免税制度の適用期限の到来」及び「個別品目の関税率の見直し」につきまして御説明をいただきたいと思います。それでは、吉田課長、よろしくお願いいたします。

吉田関税課長 「暫定的減免税制度の適用期限の到来」について御説明を申し上げます。資料1-1を御覧ください。

 まず、航空機部分品等免税制度でございます。

 航空機部分品等免税制度の概要につきましては、航空機の部分品並びに航空機及びその部分品の製作に使用する素材、そして、人工衛星及び人工衛星打上げ用ロケットの部分品等並びにその製作に使用する素材、これらのうち国産困難と認められるものについて、その関税を免除するものでございます。

 本制度の目的は、航空機産業の国際競争力強化、公共性の高い航空運送事業の発展、広範な技術波及効果を有する宇宙開発の発展等に資することであり、航空機部分品等は昭和26年度、宇宙開発用物品の免税は昭和48年度にそれぞれ導入された制度でございます。本制度は、航空宇宙産業における国産開発、国際競争力の度合いなど、その時々の制度を取り巻く状況を勘案の上、その延長の適否を検討する必要があることから、制度の安定的運用及び定期的な制度の見直しの必要性を考慮し、3年の暫定措置としているところでございます。今般、来年3月末に適用期限が到来するため、その後の取扱いについて検討する必要がございます。

 制度の利用状況につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響等により、直近の適用実績は落ち込んでおり、令和3年度の本制度を利用した輸入額は214億円、免税額は7億円となってございます。

 続いて2ページを御覧ください。

 航空機産業の状況について、航空機産業は他産業への技術的波及効果が大きいという特徴を有し、中長期的に市場規模の拡大が見込まれるところでございます。民間航空機開発は、巨額の開発費や長期の投資回収期間を必要とするために、国際共同開発が主流となっており、我が国の航空機産業は国際共同開発に参画することを通じて成長してきたところでございます。航空機製造のための部分品等は、規格品の指定等を理由に国産困難なものがございまして、この輸入に際して本制度が利用されているところでございます。

 続きまして、3ページを御覧ください。宇宙産業の状況について、世界では民間企業による宇宙ビジネスが急拡大をしており、大量の小型衛星を打上げ、一体的に運用する「小型衛星コンステレーション」構築の動きが進展しております。我が国においては、日本政府の衛星だけでなく、民間衛星の打上げでの活用も想定し、打上げコストの大幅削減を可能とするH3ロケットを開発しているところでございます。ロケット製造のための部分品等は、規格品の指定等を理由に国産困難なものがあり、この輸入に際して本制度が利用されているところでございます。

 以上を踏まえました航空機部分品等免税制度の取扱いにつきまして、本制度は暫定的な制度であり、定期的に見直しを行い、本制度の全部または一部について必要性がなくなった場合には、その廃止を行うことが求められるものでございます。しかしながら、航空機産業、宇宙産業ともに市場は拡大しているものの、国産困難な部分品などについては輸入に依存している状況には変わりはなく、本制度は引き続き必要と考えております。

 したがいまして、改正の方向性に記載のとおり、航空宇宙産業の状況及び本制度が航空宇宙産業の新しい技術開発や事業化を支援する政策であることなどに鑑み、中期的な期間を設定することが妥当であり、適用期限を従来どおり3年間延長することが適当ではないかと考えてございます。

 続きまして、加工再輸入減税制度につきまして御説明申し上げます。

 これは、我が国から加工又は組立てのため輸出された貨物を原材料とした製品が、原則として輸出の日から1年以内に輸入される場合、その製品に課される関税のうち原材料相当分を軽減するものでございます。

 本制度は昭和44年度に導入され、現在対象となっている輸入製品は、皮革製品、繊維製品、革製履物の甲でございます。本制度は、原材料の国内生産者が制度利用により国内生産を維持しつつ構造改善を行い、国際競争力をつけるまでの措置であり、国内産業の状況等を勘案の上、その延長の適否を検討する必要があることから暫定措置としており、制度の安定的運用及び定期的な見直しの必要性を考慮して、3年を適用期限としているところでございます。来年3月末にこちらも適用期限が到来するため、その後の取扱いを検討する必要がございます。

 制度の利用状況につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により、直近の適用実績は落ち込んでおり、令和3年度の本制度を利用した製品輸入額は1,841億円、減税額は69億円となってございます。

 5ページを御覧ください。左側に繊維産業の状況、右側に皮革関連産業の状況を記載してございます。繊維産業、皮革関連産業のいずれにおいても、国内生産量あるいは国内出荷額が減少し、海外からの輸入は増加傾向にございます。本制度の利用を通じ、国産原材料の利用を促進しつつ製品生産コストの削減を図ることで、産業全体の国際競争力の維持・向上に努めているところでございます。

 以上を踏まえた加工再輸入減税制度の取扱いにつきまして、本制度は暫定的な制度であり、定期的見直しを行い、本制度の全部又は一部について必要性がなくなった場合にはその廃止を行うことが求められるものでございます。しかしながら、国内産業の状況を踏まえますと、関連産業の構造改善や国際競争力の強化支援のため、本制度は引き続き必要と考えてございます。

 したがいまして、改正の方向性に記載のとおり、繊維・皮革関連産業の状況及び本制度が産業の構造改善や国際競争力の強化を支援する政策であることなどに鑑み、中期的な期間を設定することが妥当であり、適用期限を従来どおり3年間延長することが適当ではないかと考えております。

 続きまして、「個別品目の関税率の見直し」について御説明を申し上げます。資料2-1を御覧ください。

 関税定率法上の基本税率は、中長期的な観点から、内外価格差や真に必要な保護水準などを勘案して設定されているところでございますが、物資所管省庁の要望を踏まえ、必要に応じて見直しを行うものでございます。直近の2年間では、中ほどの表に記載した改正を実施しているところでございます。

 下段では、令和5年度改正要望が提出されました2項目、プロポリス原塊及びセルラーバンブーパネルにつきまして、用途等、輸入額、現行税率を記載してございます。2品目とも、HS委員会の決定による分類変更への対応として、現行税率が維持されるよう要望がなされているところでございます。

 次に、2ページを御覧ください。プロポリス原塊とは、植物の分泌物やミツバチ自身の分泌物等を練り合わせて、ミツバチの巣に作られる粘土状の物質でございます。このプロポリス原塊はこのまま食するものではなく、アルコール等でプロポリスを抽出の上、主にサプリメントや健康飲料といった健康食品に利用されているところでございます。このプロポリス原塊はこれまで我が国では食用ではない動物性生産品に分類されてきたところでございますが、令和元年9月のHS委員会において、その他の食用の動物性生産品に分類することが決定されたため、これに伴い分類の変更を行う必要がございます。新たな分類の税率は現行適用されている税率を上回る水準となっており、分類変更による過度な税負担を避けるため、税細分を新設した上で現行と同水準の関税率を設定することが適当ではないかと考えてございます。

 次に、セルラーバンブーパネルとは、芯材の両面に合板等を張り合わせた構造のもののうち、この合板等が竹製のものでございます。この構造を有したパネルは、一般的な室内のドアであるフラッシュドアやテーブルの天板などに利用されているところでございます。セルラーバンブーパネルは、これまで我が国ではセルラーウッドパネルに分類をされてきたところでございますが、本年3月のHS委員会において建具及び建築用品のうち竹製のものに分類することが決定されたため、これに伴い分類の変更を行う必要がございます。新たな分類の税率は、現在適用されている税率を下回る水準となっており、引き続き国内産業を保護するため、税細分を新設した上で、現行と同水準の関税率を設定することが適当ではないかと考えてございます。

 以上で説明を終わらせていただきます。

森田分科会長 御説明ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御説明につきまして、御意見、御質問等、御発言ございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。

 オンラインで御出席の杉山委員、どうぞ御発言ください。

杉山委員 ありがとうございます。これから申し上げるのは、質問というより意見でございます。

 航空機産業の部品の件でございますが、資料より、民間では巨額の開発費や長期の投資回収期間を必要とするため、なかなか日本独自の開発が難しいということでございます。こちらの素材等は他産業への技術的波及効果が高いということでございますので、可能であれば少し技術支援などをして日本独自のものが開発されますと、長期的に見て国益にかなうのではないかなと思った次第でございます。

 以上でございます。

森田分科会長 ありがとうございました。コメントということでございますが、お願いいたします。

石川通商政策局通商機構部通商交渉調整官 経済産業省通商機構部におります、通商交渉調整官をしております石川と申します。ただいまの御発言につきまして承りましたので、検討させていただきたいと思います。ありがとうございます。

杉山委員 ありがとうございます。

森田分科会長 他にいかがでございましょうか。よろしいですか。

 他に御質問等ないようでございますので、続きまして、「知的財産侵害物品の認定手続における簡素化手続の対象拡大」及び「植物防疫法の改正に伴う保税関連の規定の整備」につきまして、御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

伊藤知的財産調査室長 知的財産調査室長の伊藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、お手元の資料3-1の1ページを御覧ください。

 商標権等の知的財産を侵害する物品は、関税法上の「輸入してはならない貨物」として、税関での取締対象となっております。税関長は、知的財産を侵害する疑義のある貨物を発見した場合、認定手続を開始し、権利者及び輸入者に対し、その疑義貨物が侵害物品に該当するか否かについて証拠・意見を提出できる旨の通知を行います。税関長は、これらの者から提出された証拠等に基づいて、疑義貨物が侵害物品に該当するか否かを認定し、該当すると認定した場合には、その貨物を没収することが可能です。

 この認定手続においては、従来から、輸入者から証拠・意見の提出がない場合がほとんどであったこと等を踏まえ、平成19年6月に簡素化手続を導入しております。簡素化手続では、輸入者が認定手続開始通知書を受領した日から10執務日以内に、侵害の該否を争う旨の申出書の提出を行わない場合、税関長は、権利者に証拠・意見を提出させることなく侵害の該否を認定いたします。

 2ページを御覧ください。ここでは、先ほどの認定手続の流れを図に示しております。資料の左側が通常の手続、右側が簡素化手続になります。通常の手続では、税関が知的財産を侵害する疑義のある貨物を発見した場合、権利者・輸入者に認定手続の開始を通知し、双方から証拠・意見の提出を受け、侵害の該否を認定します。右側の簡素化手続においては、税関が疑義貨物を発見した場合に、輸入者に対し、疑義貨物が侵害物品に該当するか否かについて争う意思を確認します。輸入者が争う意思を示した場合は通常の手続と同様になりますが、争う意思を示さない場合には、権利者に証拠・意見の提出をさせることなく侵害の該否を認定します。

 続きまして、3ページを御覧ください。簡素化手続の対象となる貨物について御説明いたします。簡素化手続は、輸入差止申立てが受理された貨物が対象です。輸入差止申立てとは、知的財産を有する者が、自己の知的財産を侵害する貨物が輸入されようとする場合に、認定手続を執るべき旨を税関長に申し立てる制度を言います。ただし、特許権、実用新案権、意匠権及び保護対象営業秘密に係る疑義貨物については、簡素化手続の対象から除外されております。これは、簡素化手続の導入当時、これらに係る輸入差止申立件数及び輸入差止件数はまだ少なく、税関が侵害の該否を即物的に判断可能かどうかについては必ずしも明らかでなかったこと等の理由によります。この点につき、ページの下の○を御覧ください。この簡素化手続の導入から15年余りが経過したところですが、特許権・意匠権について認定手続を執る場合には、輸入差止申立て時に権利者から提出された侵害物品に該当することを疎明する資料及び識別ポイントを踏まえて、税関が侵害の該否を即物的に判断可能となる実務が定着した結果、侵害認定において特段の問題は生じておりません。

 次の4ページを御覧ください。改正の必要性が生じた背景について御説明いたします。下の棒グラフにて示しておりますが、近年の越境電子商取引の進展等に伴い、特許権・意匠権に係る輸入差止申立件数及び輸入差止件数が増加しております。また、本年10月1日から、海外の事業者から国内の事業性のない者に宛てて郵送等で持ち込まれた模倣品が没収の対象となり、今後、意匠権に係る認定手続に伴う事務負担の増加が見込まれております。実際の特許権・意匠権に係る認定手続においては、権利者からはほぼ全ての件で証拠・意見の提出がありましたが、輸入者から証拠・意見の提出があったのはごく一部にとどまっております。このような状況を踏まえて、主要な特許権者及び意匠権者からは、輸入者に争う意思がない場合であっても証拠・意見を提出しており、これに伴う業務や弁理士・弁護士への依頼費用等の負担が大きいため、簡素化手続の対象を特許権・意匠権まで拡大してほしい旨の要望が寄せられております。

 5ページを御覧ください。改正の必要性について御説明いたします。特許権・意匠権に係る認定手続に簡素化手続を適用することは、権利者の人的・経済的負担を軽減するものであり、また、これらの負担を考慮して輸入差止申立てを躊躇する権利者もいることから、本件見直しを行うことによって、特許権・意匠権の輸入差止申立てが増加し、より的確な水際取締りが期待できると考えております。さらに、税関にとっても、簡素化手続の対象が拡大すれば、権利者に対して証拠・意見の提出を求める事務手続等が不要となります。

 また、一つの疑義貨物に、簡素化手続の対象となる知的財産と対象外の知的財産の両方に関する輸入差止申立てがなされている場合には、通常の手続と簡素化手続を別々に行わざるを得ず、手続が煩雑になっておりますので、権利者、輸入者及び税関の事務負担を軽減する観点からは、実用新案権及び保護対象営業秘密を含む全ての輸入差止申立てに係る疑義貨物について、簡素化手続の対象とすることが適当と考えられます。

 以上を踏まえまして、改正の方向性としては、知的財産侵害物品の認定手続において、簡素化手続の対象から除外されている特許権、実用新案権、意匠権及び保護対象営業秘密に関する輸入差止申立てに係る疑義貨物について、簡素化手続の対象とすることが適当ではないかと考えております。

 なお、次の6ページに参考資料として写真等を掲載しております。

 本件についての御説明は以上でございます。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、「植物防疫法の改正に伴う保税関連の規定の整備」につきまして、御説明をお願いします。

吉田関税課長 続きまして、私のほうから「植物防疫法の改正に伴う保税関連の規定の整備」について御説明を申し上げます。

 1ページをご覧ください。本年5月に植物防疫法が改正されたことを受けまして、農林水産省から保税関連の規定の整備に関する要望が提出をされております。

 まず、現行制度の概要につきまして、関税法上、外国貨物を置くことができる場所は保税地域に限定をされておりますが、外国貨物の特殊性によりまして保税地域に置くことが困難な場合等があるため、政令で定める貨物、税関長の許可を受けた貨物等については、保税地域外に置くことが可能とされております。

 植物防疫法におきまして、輸入される植物等は検疫検査の対象となっており、通関前に外国貨物として港又は飛行場の植物防疫所等において検疫検査が実施をされているところでございます。検疫検査を受ける輸入植物等は外国貨物であるため、保税地域外である一部の港又は飛行場の植物防疫所等には本来置くことができませんが、そこに置かれるものは植物防疫官によって適切に管理されていること等を踏まえ、港又は飛行場の植物防疫所等に置かれる輸入植物等は「保税地域外に置くことができる貨物」として政令に規定をされているところでございます。

 次に、改正の必要性につきましては、国際植物防疫条約に基づく国際基準の策定等に伴い、本年5月に植物防疫法が改正されたところでございます。これにより、輸入される「検疫指定物品」、具体的には有害動植物が付着するおそれのある中古農機等が検疫検査の対象となるとともに、「特別の事由」がある場合には、港又は飛行場以外の場所、つまり内陸での検疫検査も可能となったところでございます。これらの点は、令和5年4月に施行される予定となってございます。

 港又は飛行場の植物防疫所等に置かれる検疫指定物品は、輸入植物等と同様に取り扱うべきものであるため、政令上の保税地域外に置くことができる貨物に追加することが適当と考えられます。

 一方、特別の事由により内陸で検疫検査を受ける場合については、税関の取締り上の観点から、政令で定める貨物とはせず、保税地域外に置くことについて個別に税関長の許可を受けることとする等の取扱いが適当と考えられます。

 したがいまして、改正の方向性といたしましては、港又は飛行場の植物防疫所等に置かれる検疫指定物品を保税地域外に置くことができる貨物に追加することが適当であると考えております。

 以上で説明を終わります。

森田分科会長 御説明ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御説明つきまして、御質問、御意見等を御発言いただきたいと思います。いかがでしょうか。ございませんか。

 質問等がないようでございますので、次の議題に移りたいと思います。次に、「急増する輸入貨物への対応に関する研究会の報告」につきまして説明を受けたいと思います。初めに、小多業務課長から「急増する輸入貨物を巡る状況」について説明を受け、引き続き、根本委員より「研究会の報告」について御説明をお願いしたいと思います。

 それでは、小多業務課長、お願いします。

小多業務課長 関税局業務課長の小多章裕でございます。私からは、資料5-1について御説明を申し上げます。

 1枚おめくりいただくと目次がございます。非常に多くの資料をつけておりますが、いずれも、本日この後の根本委員からの御報告を聞いていただく際の参考となるファクト、制度に関する資料として御用意をさせていただいたものでございます。私からは、この中から幾つか、特にキーワードとなるものについて御紹介をさせていただきます。

 1ページを御覧ください。輸入貨物の増加については当分科会においてもこれまで何度か紹介させていただきましたが、令和4年の上半期の数字を追加しております。航空貨物は引き続き増加し、年間1億件 に迫る勢いです。海上貨物についても、倍増した昨年をさらに上回ることは確実であります。事業者からヒアリングをしたところ、増加の要因は、通販貨物、特に海上貨物については、近隣の中国・韓国からの通販貨物が非常な勢いで増えていると聞いております。

 2ページにまいります。今、増加の要因と申し上げました通販貨物とは何かという資料を用意してございます。

 ここでまず御覧いただきたいのは、右のほうにあるオレンジ、緑、青で示した4つ の貨物の類型の図でございます。

 まず、オレンジの通販貨物は、左の図を御覧ください。初めに行われるのは、一番左にいる海外の販売者によるECサイトへの商品の出品です。続いて、これを見た国内の消費者が注文いたします。そして、その後に海外から我が国へ貨物が直接送られるという流れになります。ポイントとなるのは、契約時点では貨物はまだ海外にあり、契約成立後に貨物が国内に送られてくるという点であります。そして、その途中で輸入、通関が行われることになります。これを通販貨物と呼んでおります。

 緑のFS利用貨物については次のページで紹介するといたしまして、その下の青い部分はEコマースとはあまり関係のない伝統的な貨物であります。BtoBは事業者間での輸入貨物、CtoCはプレゼントのような個人間の貨物であります。

 この4つの類型を前提として、根本委員がこの後発表される研究会での議論が行われました。

 続いて、先ほど後にしますと申し上げました緑のFS利用貨物について、次の3ページ、一番下の絵を御覧ください。

 最初に、右端にいる海外の販売者がECサイトに商品を出品します。その点では先ほどの通販貨物と同じです。違ってくるのは、最終的な購入者が購入の意思を示す前に、赤い矢印にある国内の物流倉庫への運送、その途中での輸入申告が行われるという点です。その後に、購入者が購入の意思を示し、物流倉庫から商品が配送されることになります。

 ここで、FS(フルフィルメントサービス)といいますのは、この物流倉庫における在庫管理、注文を受けての発送などをセットにしたEC事業者が提供するサービスのことです。このフルフィルメントサービスを利用して販売することを予定して輸入される貨物、これをFS利用貨物と呼んでおります。ポイントは、赤い矢印の時点では最終的な購入者がまだ決まっていないという点でございます。

 これに関連して、少しページは飛びますが9ページを御覧ください。税関事務管理人制度の概要というページです。

 下の絵は、左右反対にはなりますが、先ほどのFS利用貨物のスキームと同じものであります。繰り返しになりますが、輸入するのはまだ国内の購入者が決まっていないタイミングですから、左のほうにいる販売者が自ら輸入者となって輸入許可を得ることが原則となります。ですから、ページのちょうど真ん中の点線で囲ったところに、左端と同じ人物を「販売者」、括弧赤字で「(輸入者)」として描いております。

 この場合、海外の販売者で国内に拠点がないということになりますと、税関に対する様々な手続において不便が生じることがあります。そのため、このような海外の販売者は税関事務管理人を立てなければならないと関税法第95条において定めております。そして、税関事務管理人を定めたときは税関長への届出が必要という制度でございます。

 もう一つだけキーワードの紹介をさせていただきます。少し戻りますが、資料の7ページをご覧ください。輸入申告項目についてであります。

 貨物を輸入しようとする際には、税関に輸入申告書を提出しなければなりません。その際に記載すべき項目を整理したのがこのページであります。現在の法定記載事項、つまり虚偽申告に対して罰則が適用されると解されるものですが、これがこのページの真ん中にある5つのポツで列記したものであります。

 ところが、ここにないものがあるというのが論点になります。例えば、輸入者の住所・氏名というものはここにはありません。一方で、その下の参考のところにありますように、通達で定める申告書の様式あるいはNACCSの入力画面には、輸入者の住所・氏名、通関業者、そして、先ほど紹介した税関事務管理人を使う場合にはその税関事務管理人の名前を記する欄があります。しかし、これらは法令上で明記されていないというのが現状であります。

 資料としてこのほかにも様々つけておりますが、時間もございませんので、恐縮ながら最後に、税関の現場においてこんな困ったことが生じているという事例を幾つか紹介させていただいて終わります。

 19ページの事例2を御覧ください。この事例、輸入者が立てられて輸入申告があり、税関も輸入許可をしました。ところが、どうもインボイスがおかしいということで、税関が調査をしようと輸入者にコンタクトをしたところ、確かに輸入者として名前は書いたけれども、海外の輸出者から頼まれて代行していただけで中身は分からないというふうに返答がありました。配送先などを調べてみると、FS利用貨物であるということが分かり、本来は税関事務管理人を立てて海外の事業者が自ら輸入者となるべき事案であったというものであります。

 最後に、21ページを御覧ください。事例4の上のほうだけ少し紹介します。

 FS利用貨物の輸入として、税関事務管理人の届出もなされていました。ところが、必要があっていざ税関が連絡を取ろうとしたところ、税関事務管理人に連絡がつかないということで行き詰まったという事例でございました。

 大変駆け足になりましたけれども、私からの発言は以上でございます。ありがとうございました。

森田分科会長 ありがとうございます。

 それでは、根本委員、お願いいたします。

根本委員 私のほうから、急増する輸入貨物の対応に関する研究会の取りまとめについて御説明いたします。資料5-2を御覧ください。

 初めに、問題の所在について御説明いたします。

 現在、通販貨物から不正薬物や知的財産侵害物品等が摘発される事案が増加しております。通販貨物のうち、フルフィルメントサービスを利用する貨物についても摘発事案が認められています。また、不適切な課税価格での輸入申告が行われる事例も散見されています。このような状況に鑑みると、通販貨物及びFS利用貨物について、適正な取締りと迅速な通関の実現のための見直しを検討すべきと思われます。その際、通販貨物及びFS利用貨物に係る措置が円滑に実施されるためには、SP業者、EC運営事業者等との協力・連携が不可欠となってきます。このような問題意識から、本年6月から「急増する輸入貨物への対応に関する研究会」を開催し、通販貨物及びFS利用貨物に係る措置について議論を行い、その結果を以下のように取りまとめました。

 次をお願いいたします。本研究会では、(1)事業者との連携・協力、(2)有用な情報の取得、(3)必要な制度見直しについて、税関及び事業者における実務上の実現性にも留意しつつ議論を行いました。議論を通じて共有された認識は、貨物あるいは事業者のリスクに応じたメリハリのある対応が重要ということであります。そして、輸入者等から取得した情報に基づくリスク判定の精度を向上させることで、リスクの高い貨物の検査に税関のリソースを集中することが可能となります。これにより、効果的・効率的な水際取締りが実現します。結果として、優良な又は協力的な事業者は通関迅速化のメリットを享受することができます。

 (1)事業者との連携・協力に関しては、SP事業者との連携、EC運営事業者との協力の2点について議論がなされました。

 SP事業者との連携については、現在SP業者から提供されている事前情報の拡充を図り、事前情報の提供が可能なSP業者を広げることが必要と思われます。

 EC運営事業者との協力については、模倣品等の水際取締りに関する協力関係の進展が期待されます。また、海外においては輸入通関手続全般にわたる情報に関してEC運営事業者と税関当局との協力が模索されており、我が国においても今後協力に推進していくことが期待されます。

 続いて、有用な情報の取得に関する議論について御説明いたします。

 急増する通販貨物及びFS利用貨物の円滑な輸入を引き続き確保するためには、まず、その実態を的確に把握すべきです。そのためには、貨物の種類、サービス形態を考慮し、通販貨物であるか否かを把握することが必要となります。このような観点から、輸入者が申告時に把握している「通販貨物であるか否か」と「国内配送先」を輸入申告項目に追加することが適当と思われます。

 また、本邦に拠点を有しない者が輸入しようとする場合において、輸入実績のある者になりすまして不適切な課税価格で輸入申告を行う事例や、税関事務管理人を定めず実態を把握していない本邦所在者に代行を依頼する事例が散見されます。このような事例への対応として、本来輸入者となるべきものが「輸入者」として申告することを求めるため、「輸入者の住所・氏名」を輸入申告項目として明記すること、また、その実施に当たっては「輸入者」の意義も明確化することが適当と思われます。現在、「輸入者」は、輸入取引がある場合を想定して定義されております。しかし、輸入取引がない場合でも、すなわちインボイスがない場合でも、輸入者は輸入貨物の内容を把握し、他者に明確に説明できることが重要な要件だと思います。

 一方で、情報を提供する事業者にとって、施策へ協力することによるメリットについても整理しておくことが必要と思われます。

 続きまして、必要な制度の見直しに関して御説明いたします。

 非居住者が輸入しようとする場合において、非居住者から依頼を受けた者がその役割を理解しないまま税関事務管理人として届けられ、適切な対応がなされない事例が散見されています。また、非居住者が輸入申告手続等への対応をする場合において、必要な税関事務管理人が定められていない事例も散見されています。これらの事例への対応として、非居住者に税関事務管理人を通じて適正な輸入申告を行わせるために、税関事務管理人制度の見直しが必要と思われます。

 具体的には、税関事務管理人の届出をする非居住者に関する情報を税関が的確に把握できるよう、届出項目に、届出の主体である非居住者と税関事務管理人との関係や非居住者の事業内容等を追加する措置を講ずること。また、当初の輸入手続において税関事務管理人が定められていない場合や、非居住者と税関との間の連絡等の窓口を担う者がいない場合に対応するための仕組みを設けることが適当と思われます。

 「おわりに」です。急増する輸入貨物への対応に当たっては、SP業者やEC運営事業者との連携・協力が不可欠なことが確認できました。

 次に、関税の賦課徴収、水際取締りの観点とともに、同じく税関の使命である貿易の円滑化の実現も忘れてはなりません。特に、越境ECの拡大は新たなビジネスモデルの創出や革新的な事業が出現する契機であり、これを促進する観点が求められます。越境ECに関する課題には海外も含め多くの利害関係者が関わっていることから、透明性が高く標準的な仕組みにしていくこと、海外の関係機関との連携や認識の共有を図ることも必要です。

 本研究の取りまとめを踏まえた今後の制度・運用の見直しを通じ、日本における官民の取組が世界のモデルとなることを期待しております。

 私からの説明は以上です。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見等ございましたら御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。

 オンラインで杉山委員から手が挙がっているようでございますので、どうぞ。

杉山委員 ありがとうございます。御説明いただきまして誠にありがとうございました。

 この輸入貨物への対応に当たっては、事前の有用な情報の取得というのが非常に重要だということが分かりました。これに関連して、ただいまの資料の3ページの一番下に「③協力事業者のメリット」が書かれておりますが、この具体的な内容について、現在検討されているものを御教授いただきたくお願いいたします。

 以上でございます。

森田分科会長 根本委員から御回答をお願いいたします。

根本委員 小多課長の資料にありましたように、しかるべき資格を持ったAEO事業者が考えられます。これまでも適正な通関を行っている事業者にはいろいろな恩典があったかと思いますけれども、このEC貨物に関してもSP事業者等に同じような仕組みの適用が考えられるのではないかと思っております。

 小多課長、補足説明をお願いいたします。

小多業務課長 特段補足ということではございませんが、今おっしゃった点に関しまして、私の資料5-1で申し上げますと5ページに関連資料をつけさせていただいております。

森田分科会長 杉山委員、いかがでしょうか。

杉山委員 分かりました。ありがとうございます。

森田分科会長 続きまして、オンラインで永沢委員から御発言をお願いいたします。

永沢委員 ありがとうございます。私は、消費者団体の副会長をしておりまして、その立場から、質問というよりも意見を申し上げさせていただきたいと思います。

 根本委員からの御説明、大変ありがとうございました。その前の知的財産侵害物品の認定手続の説明にも関連して意見を申し上げたいと思いますが、消費者におきましても昨今ネット通販を利用する人が大変増えております。商流の分野でも、契約のとおりに履行されないという消費者トラブルが大変多く発生しており、問題になっておるのですけれども、改めまして商流と表裏一体で物流も流れているということを再認識いたしました。国境を越えて商流、物流が拡大するに伴い、税関の負担も大きくなっていることや、ご指摘のあったようなリスクも大きくなっているということを再認識した次第でございます。

 そして、10月1日より模造品取締りの強化が実施され、この件につきましては国民生活センター等からも積極的な情報提供がなされており、国民にも情報提供が行われているところなのですけれども、まだまだ十分ではありません。先ほどより、事業者の協力をというお話がありましたけれども、消費者・国民への情報提供をもっとしていただきまして、消費者の認識、協力を求める取組ももっと必要なのではないかと思います。国民生活センターの情報提供だけでは必ずしも足りないと思いますし、具体的には、物流、特に税関にこのような負担がかかっているというような情報提供ももっとあってもいいのではないかと思います。また、危険物の処理や没収品の処理に関しては、国民の税金を相当程度使って行われていると思います。私どもは消費者団体ですので、そのような啓発には御協力させていただきたいと思っておりますので、まずは当局のほうから、御苦労されていることを含めもっと情報提供をされてもいいのではないかということをお伝えしたいと思いました。

 以上でございます。

森田分科会長 ありがとうございました。お願いいたします。

伊藤知的財産調査室長 知的財産調査室の伊藤です。貴重な御意見、御示唆をいただきまして、まずは感謝を申し上げます。

 10月1日から施行を開始した知的財産侵害物品の水際取締りの強化に関して、委員から御発言いただいたとおり、関税局・税関だけでなく、制度を所管する特許庁、それから独立行政法人国民生活センターには非常にしっかりとした協力をいただき、政府一体となって消費者・国民への理解・認識を深める活動に取り組んでまいりました。それと同時に、政府機関からの周知・広報だけでは不十分ということで、先ほど申し上げた関係省庁等 で主要なEC運営事業者と協議をいたしまして、善意の消費者・輸入者の方が不当に損害を受けることがないように、周知・広報について協力を依頼いたしました。今までのところ、ほとんどのEC運営事業者から御賛同をいただいて、利用者向けに各社のECサイトやアプリケーションにおいて周知が行われていると承知をしております。

 さはさりながら、委員御指摘のとおり、まだまだ不十分であるという点はしっかりと受け止めて、関係省庁並びに主要なEC運営事業者などとともに、引き続き消費者・国民への理解・認識を深める活動にしっかりと力を入れてまいりたいと思います。

森田分科会長 根本委員、お願いいたします。

根本委員 資料5-1の3ページをお願いします。

 ECサイトに仮想商店街を設置して販売者が日本の消費者に商品を売る場合に、いろいろな商取引上のトラブルがあっても、この仮想商店街を設置しているECサイトは原則として責任を取りません。あくまでも販売者と購入者の間でそういうトラブルを解決してくださいというのが建前なんです。ですから、販売者が海外、中国などにいる場合、購入者がなかなか販売者と連絡が取りにくいとかで、困ってしまうわけです。そういう事案が増える中で、さすがにECサイトのほうでも、販売者に注意喚起する、あるいは不良な販売者は出店させないようにするというふうなことを始めています。また、最近聞いた話では、アメリカなどではこのECサイトに販売の責任の一部を担わすというようなことも判例として出ているようです。いずれにしても消費者との問題を解決するために少しずつ良い方向に向かっているのではないかと私は考えております。以上です。

森田分科会長 ありがとうございました。永沢委員、よろしいでしょうか。

永沢委員 ありがとうございます。消費者のほうも、いただいた情報を咀嚼し、認識を深めて、取引をする際には、自立した消費者として、きちんとサイトなどを確認するということも徹底するように努めていきたいと思っております。

森田分科会長 オンラインから木村委員、お願いいたします。

木村委員 分科会長、ありがとうございます。貿易の仕方が大きく変わっている中、これはとても大事なお仕事だと思います。研究会でやられたものも、とっても目配りが効いていてすばらしいものができていると思います。敬意を表します。

 2点コメントさせてください。

 1点目は、これも研究会の検討の中で当然の前提となっていると思いますが、通信販売が出てきて、これはすごく大きな消費者にとっての利益を生んでいると思います。ですから、問題はたくさん出てくるわけですけれども、そういうものを解決しつつ、こういう取引がなるべく円滑に行われるようにしていっていただきたい。これは消費者の利益もありますし、それから中小企業あるいは個人の市場への参加という意味でもとても大きな意義を持っていると思います。その点、もっともっと強調されてもいいのではないかというふうに思っております。

 2点目は、これは当然事業者との協力はとても大事になってくるんだと思いますが、その中で、大手の事業者と小さな事業者でいろいろ対応を変えたほうがいろいろなものが円滑に進むところも出てくるという面もあると思います。一方で、両方がちゃんと並び立っていくような、なるべく無差別な扱いというのもとても大事だと思いますし、それから、国内事業者と海外事業者の間の無差別というのもとても大事だと思います。そのような意味でバランスの取れた制度及び運用ができていったらいいのではないかなと思っております。その点御配慮いただければありがたいと思っております。以上です。

森田分科会長 小多課長、お願いいたします。

小多業務課長 木村委員、ありがとうございます。業務課長の小多でございます。

 まさに御指摘いただいた点、特に1点目につきましては、この研究会の取りまとめの報告の最後のページでも、はっきりとそのような形で言っていただいております。このECの分野というのは、新たなビジネスモデルの創出や革新的な事業が実現するむしろチャンスの分野ということで、ここをしっかり育てていくべきだという形で御提言をいただいております。この研究会の取りまとめ、それから今の木村委員からの御発言を含めて受け止めまして、我々のほうで運用の部分も含めてどのように対応していくか、まさに今検討中という状況でございます。引き続きどうぞ御指導よろしくお願いいたします。

森田分科会長 ありがとうございました。

 ほかに御発言がないようでございますので、最後に、農林水産省から「加糖調製品をめぐる動向等」につきまして御説明いただきたいと思います。それでは、農水省の高橋課長、お願いいたします。

高橋農産局総務課長 農林水産省農産局総務課長の高橋でございます。私からは、加糖調製品の動向等について御説明申し上げます。

 加糖調製品につきましては、昨年の審議会の場で暫定税率の引下げ等をお認めいただいたのですけれども、その答申の中で、毎年度の加糖製品と国産の砂糖の動向、それから暫定税率の引下げによる政策効果などについて農水省に検証を求めること、また、今後の中長期的な在り方やその実現に向けた具体的取組について農水省においてフォローアップの上、毎年度報告を求めることとされております。本日は、この答申を踏まえまして、検証状況を御報告させていただきます。

 それでは、資料6の3ページを御覧いただきたいと思います。

 まず初めに、制度の概要でございます。

 糖価調整制度は、海外から輸入される原料糖と国内のさとうきび・てん菜を原料とする国内産の原料糖の間の価格差を調整し、国内の甘味資源作物や、これを原料とする国内産の原料糖の製造事業者の経営が成り立つようにすることで、国内への砂糖の安定供給を確保する仕組みでございます。

 具体的には、この図にありますように、輸入原料糖から調整金を徴収し、これを原資に国内産糖を支援することで価格をバランスさせております。

 また、平成30年12月30日からは加糖調製品を新たにこの調整金の制度の対象といたしまして、これを国内の砂糖の支援財源に充当することを通じまして国内価格を引き下げ、国産の砂糖の競争力の強化を図っているところでございます。

 続きまして、4ページを御覧ください。関税審の答申を踏まえまして、農水省としてこれを検証するために食料・農業・農村政策審議会の甘味資源部会で議論をいたしまして、その対応方向について取りまとめました。対応方向の詳細につきましてはこの後御説明申し上げますけれども、まずは検証の本題となります加糖調製品をめぐる動向と暫定税率の引下げ効果について御説明いたします。

 6ページを御覧ください。加糖調製品と砂糖の需給動向を長期的にお示ししたものでございます。加糖調製品の輸入が自由化された平成2年以降、安価な加糖調製品の輸入が増加いたしまして、これが砂糖を代替してきたということでございます。一方、平成28砂糖年度以降は加糖調製品の輸入量も減少傾向に転じまして、直近の令和3砂糖年度につきましても、前年に比べて僅かではございますが減少する見込みとなっております。

 7ページを御覧ください。甘味全体の需要量の推移でございます。今、調製品が減少したと申し上げたところでございますけれども、これは人口減少でありますとか消費者の低甘味嗜好等を主な要因といたしまして、加糖調製品だけではなくて砂糖も含めた甘味全体の需要量が減少する中での動向でございまして、加糖調製品の輸入が砂糖にとって脅威ではなくなったということではないというふうに認識をしております。実際、右の円グラフを御覧いただきますとお分かりになりますように、砂糖と加糖調製品の仕向先の割合は、いずれも菓子、それから冷菓が最大となっているなど、競合関係にあるということでございます。

 8ページを御覧ください。加糖調製品の輸入量を主なカテゴリーごとにお示しをしたものでございます。直近でその輸入量は僅かに減少しておりますけれども、国際糖価の上昇等もありましてCIF単価は3割程度上がっているという状況になってございます。

 9ページを御覧ください。これは、暫定税率の引下げ効果を見るため、その対象となる6品目の動向をお示ししております。この6品目の輸入量は、粉乳調製品とココア調製品がそのほとんどでございまして、全体輸入量の半分程度を占める重要品目でございます。

 これを詳しく見てまいりますと、TPPの発効以降、TPP11加盟国が輸入量のシェアを大きく伸ばすとともに、TPP11非加盟国である韓国の加糖調製品の製造工場がTPP加盟国のベトナムに進出したということでございまして、輸入量自体はさほど多くはないのですけれどもベトナムからの輸入が大きく増加しておりまして、令和元年の同期と比べますと、粉乳調製品で約9倍、ココア調製品で約5倍と、いずれも大きく上昇しておりまして、今後の輸入増への脅威が高まっているという認識でございます。

 さらに、ココア調製品につきましてはTPP11加盟国で9月末に国内手続を完了したマレーシアの割合が高くて、11月の発効以降は輸入量が増加することも想定されまして、その動向を注視していく必要があると考えております。

 10ページを御覧ください。暫定税率を引き下げた際の効果として、加糖調製品からの調整金の収入の状況と、これを財源とした支援について説明した資料でございます。

 調整金収入につきましては、暫定税率引下げに伴う調整金の徴収幅の拡大に加えまして、国際糖価やエネルギー価格、円安等により、加糖調製品のCIF価格が大きく上昇しております。これによりまして、輸入量が減少する中でも直近1年間で約76億円と、これまでに比べて大きく増加をしております。特に暫定税率引下げ対象であります6品目につきましては調整金の徴収幅の拡大が寄与いたしまして、その収入が大きく増加しております。

 なお、加糖調製品の調整金収入は輸入数量やCIF価格、暫定税率引下げによる徴収幅で変動いたしますけれども、数量や単価を一定の仮定を置いて固定するなどの前提を置いて計算いたしますと、暫定税率引下げによる収入増分は毎年3億から4億円というふうに推計をされるところでございます。これを原資として原料糖の調整金の軽減、そして国内産糖への交付金への支援の充当という措置を講じておりまして、暫定税率引下げによる調整金の軽減効果というのは、毎年の国産の砂糖価格の引下げに寄与しており、引き続き暫定税率の引下げが必要であるというふうに考えております。

 11ページを御覧ください。加糖調製品と国産の砂糖の価格差の状況と、政策効果について御説明いたします。この両者の取引価格は、原油相場による国際糖価や海上運賃の上昇などを背景にいたしまして、いずれも上昇をしてございます。調整金の軽減措置も寄与して、その差は縮まっておりますけれども、依然として価格差が存在するという状況でございます。

 それぞれを詳しく見てまいりますと、国産の砂糖では、円安の影響も相まって輸入原料糖の調達コストは上昇しておりますけれども、キログラム当たり3円の加糖調製品の軽減措置と国内産糖メーカーの合理化努力によりまして価格の抑制に寄与してございます。比較の基準となります平成30年に比べまして、キログラム当たり10円程度の上昇にとどまったという状況にございます。

 一方、加糖調製品につきましては、貨物輸送の急増に伴うコンテナ不足あるいは国際コンテナ利用料金の上昇などによりまして調達コストが上昇しておりまして、キログラム当たり15円程度上昇しているという状況にございます。

 このように、海外の原料糖相場をはじめとする様々な外部環境の変動がある中でも、加糖調製品からの調整金を原資とした価格調整の効果によりまして、国産の砂糖価格が抑制され、消費者にメリットをもたらしております。一方、両者の価格差は依然として存在することから、引き続き加糖調製品の6品目の暫定税率の引下げ及び14品目の暫定税率の据置きの措置をしていただき、可能な限りの価格調整を通じて国産の砂糖の価格を引き下げ、競争力の強化を図っていくことが必要であるというふうに考えてございます。

 続きまして、13ページを御覧ください。国内産糖に係る競争力強化の取組状況でございます。国産の砂糖の価格を引き下げる上で、生産者、そして製糖業者のそれぞれについて、コスト削減に向けた不断の努力が重要であるというふうに考えております。例えば、てん菜につきましては物財費が高止まりしていることから、移植から直播に切り替えて生産の効率化を図る、あるいは、てん菜糖工場については、エネルギー価格が上昇する中で、例えば原料の中間受入場の開設といったことによって原料輸送効率の向上を図るといった努力をしているというところでございます。

 個別の取組内容は以下資料にございますけれども、時間の都合上ちょっと割愛をさせていただきます。

 19ページを御覧いただきたいと思います。ここからは、中長期的な在り方、そしてその実現に向けた具体的な取組ということでございます。甘味資源部会で取りまとめました対応方向におきましては、糖価調整制度の持続的な安定に向けまして、中長期的な観点からの取組の必要性について、過剰基調にあるてん菜の他作物への転換あるいはSAFなどの新用途の利用について検討すべきとの指摘を受けているところでございます。

 20ページを御覧ください。砂糖の需給と砂糖勘定の収支でございます。砂糖消費の減少は、輸入糖の減少を通じて調整金収入の減少につながります。このままでは収支が均衡せずに制度が破綻するおそれがございます。特に近年は赤字が単年度112億円、累積で448億円と大幅に悪化しておりまして、このままではさとうきび・てん菜の生産から産地の製糖工場、精製糖工場といった業界全体の存続が困難な状況となっております。

 21ページを御覧ください。こうした状況にある中で、糖価調整制度を持続的なものとするためにはどうしたらいいのかという検証でございます。

 まず、収入面でございますけれども、調整金単価を引き上げれば収入額は増加するわけでございますが、それが国内の砂糖価格の引上げにつながり、より一層の砂糖離れが進みます。そうするとさらなる収入額の減少を招くといった負のスパイラルに陥る可能性がございまして、調整金単価の引上げについては慎重な対応が必要というふうに考えております。

 一方で、支出面でございます。まず、さとうきびでございますけれども、さとうきびは台風常襲地帯の沖縄の主要作物でございまして、ほかに代替の利かない作物でありまして、小規模零細農家が大半を占める中で、ほかへの転換はなかなか難しいということでございます。一方、てん菜につきましては、北海道の畑作の中で重要な輪作作物の一つであるとは認識しておりますけれども、砂糖消費が減少を続ける中で、現在あまり需要に応えられていない、あるいは今後需要が増えていくであろう、例えば加工用のばれいしょですとか豆類といった作物へ生産をシフトしていくことが重要ではないかというふうに考えております。

 22ページを御覧ください。てん菜から需要のある作物への転換ということでございます。

 糖価調整制度が破綻すれば、そもそも生産者への支援もできなくなりますから、収支改善を通じた制度の持続的な運用が重要でございます。このため、てん菜生産の一部を需要のある作物への転換を進めていくという必要があるというふうに考えております。

 また、産地のてん菜糖業につきましては生産者にとって唯一の取引先ということで、車の両輪として重要でございます。左のグラフにあるように、砂糖消費が減る中で、てん菜糖の在庫が相当かさんでおりまして、適正水準の2.5倍の量の在庫を抱えてございます。糖業2社の経営状況も大変厳しいということで、この点においてもてん菜の作付転換が必要ということだと思います。

 農水省といたしましては、産地の組合長さんやてん菜糖業等が参加する意見交換会の場において、この右下にあるような収支シミュレーションなども提示しながら、今後のてん菜生産・てん菜糖業のあり方の議論を今丁寧に進めているというところでございます。転換に係る支援も措置しているということでございます。ちなみに、産地からの聞き取りでは、令和4年産では2,300ヘクタールが転換している状況にあるということでございます。

 次に、23ページを御覧いただきたいと思います。昨年の審議会の場で、砂糖の食用以外の需要開拓、それを通じた業界の活性化という観点で、国産の航空バイオ燃料、いわゆるSAFについての御指摘をいただいたところでございます。御指摘のとおり、世界的な脱炭素化の流れの中で、SAFの活用により国際航空におけるグローバルなCO2削減が求められており、我が国として喫緊の課題であるということは間違いない事実でございます。農水省では、過去の国産のバイオエタノールの製造事業の経験なども踏まえながら、国産SAFへの原料供給の検討を開始したところでございます。

 24ページを御覧ください。政府としてSAF導入を加速させるべく、SAFの官民協議会を4月に設立いたしました。農水省も参画しております。さらに2つのワーキンググループも設置されて7月にキックオフしたところであり、これから検討を深めていきたいというふうに考えております。

 続いて、25ページを御覧ください。特に農水省では、国内におけるさとうきび等を原料とした国産SAFの供給可能性について調査を開始しております。需要者側の航空業界が、適切な価格、それから安定的な調達がなされるということが重要ということでございまして、農水省としても供給可能数量や製造コスト、温室効果ガスの削減効果などを把握して、甘味資源作物が将来的にSAFの供給源として有力候補になり得るかどうか、見きわめができるようにしていきたいというふうに考えてございます。

 最後、31ページを御覧いただきたいと思います。これまで御説明してきましたけれども、そのポイントを整理した上で、令和5年度の関税改正要望を御説明したいと思います。

 暫定税率引下げ対象の6品目につきましては、TPP11加盟国の輸入シェアの上昇、一部の加盟国では輸入量が急伸するなど、今後の輸入増の脅威が高まっているところでございます。

 TPP11発効以降の調整金収入は暫定税率の引下げ等により増加し、この収入を原資とした調整金の軽減措置で、実質的に国産の砂糖価格が抑制され、消費者にメリットがございます。しかしながら、両者の間にはまだ依然として大きな格差が存在するということもまた事実でございます。

 このため、加糖調製品からの調整金収入を確実に確保して、今後もその価格差を縮小していくためにも、令和5年度のTPP11税率の設定水準に応じ、暫定税率の引下げ及び延長を要望させていただきたいと考えております。

 また、糖価調整制度の持続的な運営に向けまして、甘味資源作物の生産費の削減を含む国内産糖に係る競争力の強化あるいは輸入原料糖と国内産糖のバランスを図るためのてん菜生産の削減といった中長期的な在り方の検討も進めており、これらの取組とともに、国産の砂糖の競争力を図るための暫定税率の引下げの措置をぜひお願いしたいと思います。委員の先生方の御理解をよろしくお願いいたします。私からは以上でございます。

森田分科会長 御説明ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見等ございましたら御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。佐藤委員、お願いいたします。

佐藤委員 詳細な御説明をありがとうございました。制度の持続可能性を維持すべく努力されているところには大変敬意を表します。

 資料22ページで、令和4年度のてん菜作付面積が前年比約2,300ヘクタール減とのことですが、分母となる総作付面積はどのくらいの桁でしょうか。丸い数字で結構ですから、教えていただけますと幸いです。

高橋農産局総務課長 分母は約5万7,000ヘクタールです。

佐藤委員 分かりました。ありがとうございます。

森田分科会長 佐藤委員、よろしゅうございますか。では、村上委員、そして金原委員、お願いいたします。

村上委員 この加糖調製品の暫定税率の引下げの問題ですけれども、この糖価調整制度を振り返ってみますと、この前身は「糖価安定制度」で昭和40年に砂糖の輸入自由化を受けて、コストの高い国産の砂糖と輸入糖との価格の調整をする目的で導入された制度でございます。その後、砂糖の需給をめぐる状況は大きく変化してきておりまして、1970年代の後半とか80年代の初め頃には異性化糖が市場に登場してまいりまして、これが砂糖の需要を相当食うようになってきたということがあり、この異性化糖を糖価調整制度に取り込み、調整金を徴収できるようにしました。その後も砂糖全体の需要の減少は大きく進んできており、この制度そのものが消費者負担あるいは事業者負担という形で、輸入糖に調整金をかけるという仕組みになっておりますので、一部国の交付金が出ておりますけれども、全体の砂糖の需要が減っていくと輸入糖の負担がどんどん増えていくという事態となりました。それは、取りも直さず、割合的に言いますと消費者・事業者の負担が増えるということになるわけでございます。

 TPPの合意を踏まえて平成29年にTPP等大綱が制定されて、加糖調製品から調整金の徴収をするということになりました。これは加糖調製品の輸入の増加が、先ほど言いました異性化糖と同じように砂糖全体の需要を食っていくということで、また輸入糖の負担が増えるとことになったわけです。

 そういう事態の中で、何とかこの制度を維持するためには当事者間でバランスの取れた負担をする必要があるという考えのもとで、TPP大綱で加糖調製品からの調整金の徴収ということになったのだと思います。

 併せて、実需者負担、消費者負担に偏重しているところを少しでも是正して、砂糖の消費の減退を多少なりとも予防していくという考え方があったのかと思います。加糖調製品のアクセスの拡大と併せて、ユーザーや消費者への配慮も一方でしているという意味でも、関係者間のバランスを取った形になっているのではないかと思います。

 ただ、この制度を維持していくためには、今言いましたようにステークホルダー全体で相当の努力をしていかないと難しいということがありますし、先ほど農水省からお話がございましたけれども、国内生産者、国産糖製造業者の合理化努力ということで、消費者ユーザー負担をできるだけ下げていくという努力が必要ではないかと思います。

 この制度の問題は、市場やシグナルが必ずしも生産現場に伝わらないというところでございます。一つには、今言いました国内生産者や製造業者に対する合理化努力のシグナルが必ずしも伝わらないということと、それから需要サイドのシグナル、どういう品目に需要が高まっているかということが生産現場に伝わらず、遮断されているところがあります。したがって、意識的に関係者に努力していっていただく必要があると思っております。

以上申し上げたことから、暫定税率を引き下げて調整金の徴収の余地を広げるということについては引き続き必要だと思いますし、併せてステークホルダー全体の努力ということを期待したいと思っております。以上でございます。

森田分科会長 ありがとうございました。金原委員、お願いいたします。

金原委員 全中の金原といいます。生産者団体の立場から、さとうきびやてん菜の生産者や、沖縄あるいは鹿児島の南西諸島、北海道といった砂糖の産地の地域経済を守る観点で、少し皆さん方にコメントを申し上げたいというふうに思います。

 毎回この審議になればたくさんの御意見が出ますけれども、現状はなかなか、北海道は広大な畑地をどうやってうまく輪作をさせていくかということが非常に問題でありまして、先ほど農水省からもありましたように、今需要のある大豆でやってみたり、あるいは小豆の国際価格が相当高騰して、もう国内産のほうが良いという話もございます。徐々にそういうところに仕向けながら転作の努力も生産者側もやっておりますし、農水省からもそういう指導もされております。ただ、鹿児島・沖縄の南西諸島についてはもう台風常襲地帯でありますので、今年も塩害等々に遭っているようでございますけれども、もうさとうきびしか育たないというところにやはり定住をさせていくことが大事だと思います。もちろん食料安全保障の問題もありますけれども、国家的な安全保障の問題にも関わってきます。これは私も何回も申し上げましたけれども、南西諸島が無人島になりますと尖閣の二の舞になる。そういう観点からも、やはり生産をそこで何とか維持をして、物流であってみたり、製糖工場であってみたり働き口を確保して、そういうところに定住を進めていくことも国策として必要だと思います。TPPで加糖調製品の税率が下がって輸入が増加することが分かりますので、その大綱の中に入れていただいた、いわばこれは国策的な思惑もいろいろな形であるという側面もあります。今は防衛費の増大の問題はありますけれども、もし南西諸島が無人島になってしまったらとてつもなく大変な財源が必要になると、私はそういうふうに思っております。そういう意味では、ちゃんと島に残って定住をしてくれる人間がおる間は周りもいろいろ言わないだろうというふうに思いますので、その辺も鑑みて、この加糖調製品で問題はありますけれども、産地にはいろいろなことをお願いしながら、あるいは製糖工場には効率化を求めながら、生産者側も何とか少し広いところについては機械化を進めながらコストを下げるよう努力をいたしております。もう少し気長に皆さん方に御理解を頂ければと、このように思いますので、どうぞよろしく御理解をいただきたいと思います。以上です。

森田分科会長 ありがとうございました。宮島委員、お願いいたします。

宮島委員 どうもありがとうございます。今の皆さんの御意見にあったように、私もこの調整金の制度については今の段階ではいろいろなバランスの上で必要だと思いますので、引き続きの暫定税率ということだと思います。

 ただ、前回もここで議論があったように、これはこの先どうなってしまうのだろうかということに関して心配はあります。もちろん砂糖の需要が増えれば、あるいはSAFが物すごくたくさん使えるようになればいいんですけれども、それと砂糖の需要の減るスピードというのも見きわめられませんし、先が見えない状況だとみんな非常に不安だと思いますので、まずは引き続き産地におけるいろいろな合理化努力ですとか、あるいは甘いお菓子などを一生懸命輸出するとか、できることは頑張っていただきたいと思います。

 その上で、農水省の方々とお話をする機会もあるんですけれども、農水省とか政府の関係者の方、あるいはいろいろな議論をされている方はこの問題意識を持って前に進めようとしていると思うんですが、いま一つそれが生産現場に完全に伝わっているかというと、そうではない部分があるのではないかと思っております。やはり、比較的農業分野に多い、今のままやっていても何とか国が助けてくれるのではないか、あるいは今のままやっていても何とかなるのではないかという漠然とした中で、改革のスピードが遅くなっているという部分がところどころあると思います。それは情報がしっかり伝わっていない部分もあるのではないかと思います。今、食料安保の議論もありましたので、日本の砂糖の生産がゼロになっていいということではないと思うので、どのぐらいを目指してやるのか、そして転作をどのぐらい求めるのか、どのぐらいのスピードでやれば安心なのかというようなことをもうちょっと精緻に現場に伝わるようにしますと、現場の方々もやる気が出るというか、危機感を共有できると思います。もちろんこれは国民全体も知っておくべきだとは思うんですけれども、農業に携わっている現場の方々がしっかりとした理解をされて努力をされるということは非常に期待したいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

森田分科会長 ありがとうございました。オンラインで杉山委員、お願いいたします。

杉山委員 ありがとうございます。資料の25ページにバイオジェット燃料についての記述がございました。航空産業におけるCO2削減に寄与するということでございますが、CO2の削減はもう全産業において喫緊の課題となっており、こちらのバイオジェット燃料は航空産業以外への応用可能性はあるのでしょうか。

森田分科会長 これは農水省のほうからお答えいただけますか。

金子農産局地域作物課課長補佐 杉山委員、御質問ありがとうございます。地域作物課で加糖調製品を担当しております金子といいます。よろしくお願いいたします。

 バイオジェット燃料だけを、燃料作っていらっしゃる方々が作っているわけではなくて、やはり作り方にも色々技術があるわけです。例えばで申し上げますと、微細藻類から油を取り出してバイオジェット燃料を作るという技術もございます。そういう場合には、途中の段階で付加価値の高い油脂が出てきたり、あるいはバイオジェット燃料には向けられないけれども海運向けの燃料がつくられたり、そういう形で様々な副産物のほうも出てきますので、なかなかコスト面でうまくいかない部分がありますが、トータルで見たときにどのような対応ができるのかというのがポイントになるであろうというふうに考えております。以上です。

森田分科会長 杉山委員、よろしいですか。

杉山委員 ありがとうございます。

森田分科会長 ほかにいかがでしょうか。今の御質問ですけれども、いわゆるこのお砂糖を使った燃料がほかに使えるかという御質問だったと思いますが、お答えはちょっと違う論点も含んでいたかなという気がしたんですが、いかがでしょうか。

金子農産局地域作物課課長補佐 すみません。例えば、いわゆるさとうきびから燃料を作るときにも、色々な技術の中で作っていくことができますので、今ほどの例で申し上げますと、微細藻類のほうに糖液のほうを食べてもらって、そこから出された油脂のほうを元に、高付加価値な油脂であったり、あるいは最終的にはバイオジェット燃料のほうに向けられるというふうな意味において、たくさんの利用方法があるのかなというふうに思っております。

森田分科会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、御質問がないようでございますので、本日の分科会は予定より少し早いのですけれども、この辺りで終了とさせていただきたいと思います。

 なお、次回の関税分科会の開催につきましては、11月24日木曜日の午前10時開始を予定しております。詳細につきましては、また事務局と調整の上、別途御連絡差し上げる予定でございます。

 それでは、本日は御多用中のところ御出席をいただきまして誠にありがとうございました。

午後2時32分閉会