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関税・外国為替等審議会 関税分科会 (令和4年3月28日開催) 議事録

  1. 開会
  2. ロシアに対する関税における最恵国待遇の撤回について
  3. 閉会

出席者
関税分科会長 森田 朗 財務省 小宮審議官
委員 伊藤 恵子 中澤総務課長
河野 真理子 河西関税課長
木村 福成 福島参事官
古城 佳子 小多業務課長
斎藤 保 米山監視課長
坂元 龍三 松田調査課長
佐藤 英明
清水 順子
杉山 晶子
高橋 裕子
高山 一郎
田村 善之
永沢 裕美子
根本 敏則
野原 佐和子
三石 誠司
専門委員 阿部 克則
大橋 弘
佐々木 伸彦
末冨 純子
藤岡 博
宮島 香澄
村上 秀徳

 

午後3時00分開会

森田分科会長 時間も参りましたので、ただいまから関税・外国為替等審議会関税分科会を開催いたします。

 委員の皆様方には、御多用中のところ、また急な御案内であったにもかかわらず、御出席を頂きまして誠にありがとうございます。

 それでは、早速ですが本日の議事に入らせていただきたいと思います。

 本日の議題は、お手元にお配りしております議事のとおり、ロシアに対する関税における最恵国待遇の撤回に係る答申案について御意見を頂きたいと存じます。

 それでは、まず事務局から説明を受けたいと思います。その後、答申案について御意見などをいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、関税課長。

河西関税課長 ありがとうございます。

 それでは、資料1、横紙の「ロシアに対する関税における最恵国待遇の撤回」という資料に基づきまして御説明をさせていただきます。

 まず、1ページ目でございます。改正の背景についてでございます。

 2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵略に対しては、我が国におきましても、G7を始めとする国際社会と緊密に連携し、これまで様々な制裁措置を実施してきたところでございます。こうした中、3月11日でございますけれども、G7の首脳声明が発出され、下線を引かせていただいておりますように、最恵国待遇に関する措置について、「我々は、各国の手続と整合的な形で、重要製品に関するロシアの最恵国の地位を否定する行動をとるよう努める」とされたところでございます。

 下のところ、各国の対応でございますけれども、米国におきましては、バイデン大統領がG7サミットと同日の3月11日にロシアへの最恵国待遇を無効化する旨を表明し、17日には下院で最恵国待遇税率撤回を含む法案が可決されたところでございます。他方、EUにおきましては、WTO協定税率に代わる税率がそもそも用意されていないと承知をしておりますけれども、最恵国待遇の停止を関税率の引上げではなくて、輸出・輸入禁止措置の組み合せで行うということを発表しております。

 こうした中で、2ページ目でございますけれども、日本における関税の適用に関する現行の枠組みについてまず御説明をさせていただきますと、関税法第3条におきまして、輸入品に係る関税につきましては、関税に関する法律によって定められることを原則としつつ、条約に特別の規定がある場合は、その規定によるということとされております。

 次のページで関税法第三条の条文を記載しておりますけれども、そこにありますように、「輸入貨物には、この法律及び関税定率法その他関税に関する法律により、関税を課する。ただし、条約中に関税について特別の規定があるときは、当該規定による」と規定されているところで、その適用関係を3ページ目で図示しておりますけれども、今回、その一番右側のWTO協定税率を撤回するという内容の改正をさせていただきたいと考えております。

 関税法第3条を踏まえまして、原則である関税定率法に基づく基本税率又は関税暫定措置法に基づく暫定税率が適用されている一方、現状においてはロシアも含めましてWTO加盟国に対してはWTO協定上の最恵国待遇原則に基づく税率(WTO協定税率)が適用されているという状況でございます。

 こうした中、今回のロシアによるウクライナ侵略を受けまして、G7首脳声明を踏まえまして、国際社会と連携してロシアに対するさらなる制裁の強化として必要な対応を行う観点から、ロシアに対する関税における最恵国待遇を撤回するため、ロシアに対してWTO協定税率の適用を撤回し、基本税率又は暫定税率の適用が可能となりますように、関税暫定措置法に以下の内容の新しい第3条を新設したいと考えております。

 具体的には、「国際関係の緊急時において、WTO協定による関税についての便益を与えることが適当でないときは、政令で定める国を原産地とする物品で、政令で定めるもののうち、政令で定める期間内に輸入されるものに課す関税率は、関税法第3条ただし書の規定にかかわらず、基本税率(暫定税率の適用があるときは暫定税率)とする。」という内容の新3条を新設したいと考えております。

 対象国、物品、期間につきましては、政令で定めることにいたしまして、今回の具体的な政令の定め方としては、対象はロシア、物品は全品目、そして期間は公布の日の翌日から令和5年3月31日としたいと考えております。施行期日につきましては、通常の年度改正の関税改正法案同様、公布の日の翌日とさせていただきたいと考えております。

 次のページ以降は参考資料でございますけれども、先ほど御説明させていただきましたように、3ページにつきましては適用関係の図解でございますけれども、一番右でWTO協定税率の直接適用とされているところについて、まさにこのところを撤回し、国定税率と呼ばれる基本税率又は暫定税率を適用するための規定を今回整備させていただきたいというものでございます。

 4ページ目は、ロシアからの主な輸入品目と輸入額について、整理をさせていただいたものでございます。ロシアからの輸入額の大宗は、液化天然ガス等の資源、その他魚介類、木材などとなっております。約8割を占める資源については、仮にWTO税率が適用されない場合に基本税率が適用されたとしても、無税のままとなります。

 また、魚介類のうち代表的な例といたしまして、すじこ、あるいはサケ、マスについては、WTO税率ですと3.5%となっておりますけれども、基本税率が適用される場合には5%となります。なお、カニですとWTO税率ですと4%となっているところ、基本税率が適用される場合には6%となる一方で、生きているウニについては基本税率である無税のままとなります。

 木材につきましては、こちらは代表的な例として一部のマツの例を出させていただいておりますけれども、こちらについては4.8%がWTO税率で、基本税率になりますと8%となるところでございます。

 以上が資料1でございまして、資料2として具体的な答申案の内容でございます。説明が重複いたしますので、下の4行のところを読み上げる形でご説明させていただければと思いますけれども、「G7首脳声明を踏まえ、国際社会と連携してロシアに対する更なる制裁の強化として必要な対応を行う観点から、ロシアに対する関税における最恵国待遇を撤回するため、ロシアに対して、WTO協定税率の適用を撤回し、基本税率(暫定税率の適用があるときは暫定税率)の適用が可能となるよう、所要の改正を行うことが適当である。」という形で答申を頂戴できればと思っております。何とぞよろしくお願い申し上げます。

森田分科会長 ありがとうございました。ただいま事務局から説明がございました答申案につきまして、御意見がございますでしょうか。おありの方は御発言をお願いいたします。

 では、佐藤委員からまず御発言をお願いいたします。

佐藤委員 ありがとうございます。

 最初に、誤解のないように私の現状認識を申し上げておきますと、現在我が国は一刻も早くロシアに対する最恵国待遇を撤回し、国際社会との連携を深めるべきであるとの認識を持っております。さはさりながら、お示しくださった資料2ページの改正案につきまして、租税法学の観点から若干お尋ねいたします。御提案に係る本条の要件である「国際関係の緊急時において、WTO協定による関税についての便益を与えることが適当でないとき」との要件は、いわゆる憲法第84条の定める租税法律主義の内容として確立している課税要件明確主義に抵触するおそれはないのでしょうか。なお、判例・裁判例において課税要件明確主義違反と判断された例はこれまでなく、また、最初に申し上げた私の現状認識に照らしましても、本条の改正について反対するものではありません。

 以上でございます。ありがとうございます。

森田分科会長 ありがとうございました。

河西関税課長 佐藤先生、コメントをいただきましてありがとうございます。

 例えば、今回のロシアによるウクライナ侵略に対して国際社会が連携して厳しい措置を迅速に執ることが求められる場合のように、「国際関係の緊急時において、WTO協定による関税についての便益を与えることが適当でないとき」というふうに、きちんと要件を限定した上で、特定の国に対してWTO協定税率を撤回するための措置として、国内法の法的安定性の確保の観点から今回この条文を入れさせていただきたいというものでございます。

 租税法律主義の観点から申し上げますと、関税法第3条ただし書により適用されていたWTO協定税率を撤回し、原則であるところの国定税率に戻るというところでございますので、そうした点からも、関係部署等も含めて、租税法律主義の観点については問題はないというふうに認識しております。

 以上でございます。

佐藤委員 ありがとうございました。部内でも、また、関係部署ともご検討済みとのこと、よく承知しました。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、続きまして、末冨委員、お願いいたします。

末冨委員 ありがとうございます。私も今回の改正案について異論はございません。

 ただ、質問させていただければと思うのですけれども、今回の改正案につきましては、原産地を基準とするということで、ロシア原産とするものについて最恵国待遇を撤回するということになっているかと理解しております。ロシアからの出荷であったとしても、原産国がロシアでない場合にはこれは適用されず、最恵国待遇は依然として適用されるというふうに理解しておりますが、ロシアからの出荷で原産国が分からない場合の扱いを確認させていただきたいと思います。

 すなわち、原産国の表示そのものは義務的なものではないかと理解しておりますが、ロシアからの出荷で、原産国が不明の場合の扱いについてどうなるかということについて確認させていただければと思います。

 以上でございます。

森田分科会長 では、お答えをお願いします。

河西関税課長 ありがとうございます。先生が御指摘の、恐らくあり得るとする懸念といたしましては、ロシアからの原産品であるにもかかわらず、ほかの第三国を経由したような形で迂回するようなことがあるのではないかという御心配なのかなと、理解しておりますけれども、そこにつきましてはまさに、税関の申告の際に原産地を書くことになっておりますけれども、その際に本当はロシアであるにもかかわらず、第三国を偽って申告がされるようなことがあるのではないかということにつきましては、必要に応じて原産地証明書の提出を求める等を通じた現場の対応かと思いますけれども、そういったことにつきましても検査・審査をきちんとやっていくということで、実効性を適切に担保していきたいというふうに思っております。御指摘ありがとうございます。

森田分科会長 末冨委員、よろしゅうございますか。

末冨委員 ありがとうございます。今ご説明いただいた、迂回をする場合は、原産国がロシアである限り、原則どおり、ロシア原産品に対する最恵国待遇の撤回が適用されるかと思います。私の質問としては、出荷はロシアからであることは間違いないのですけれども、迂回はされていなくても原産国自体がはっきりしない場合というのはあり得るかと思います。そのような場合の扱いがどうなるのかというのが質問でございます。

河西関税課長 恐らく、今御指摘のような点は多分、今回の事態にかかわらず、通常の例でもあるとは思いますが、WTO協定や国内法令における原産地に関する規定等に従って処理されるものと思いますけれども、いずれにしても今回の措置が効果をきちんと発揮するように、現場も含めて一体的に運用していきたいというふうに思っております。

末冨委員 ありがとうございます。運用で対応されるということで理解いたしました。ありがとうございます。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、ほかにいかがでしょうか。

 特にないようでございますが、よろしいでしょうか。

 御異議がないということでございますので、それでは、ロシアに対する関税における最恵国待遇の撤回につきましては、本分科会として答申案どおり決定することとし、これをもって関税・外国為替等審議会としての答申といたしたいと存じますが、よろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)

森田分科会長 ありがとうございます。

 なお、答申の提出のタイミングにつきましては、私に御一任いただきまして、事務局と調整の上、財務大臣に提出させていただくこととさせていただきたいと思います。

 それでは、他に御意見などないようでしたら、本日の議事はこれで終了いたします。

 なお、会議を終了するに当たりまして、事務局から連絡事項がございますので、お願いいたします。

河西関税課長 ありがとうございます。本日送付させていただきました資料につきましては、答申の最終的な提出・公表がまだでございますことから、取扱いには御注意いただきますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 以上でございます。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、本日は、御多用中のところ御出席をいただきまして、誠にありがとうございました。これで閉会とさせていただきます。

午後3時17分閉会