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関税・外国為替等審議会 関税分科会 (令和3年11月5日開催) 議事録

  1. 開会
  2. 令和4年度関税改正検討項目(1)
    - 個別品目の関税率の見直し
    - 海外の事業者を仕出人とする模倣品の水際取締りの強化
  3. 加糖調製品をめぐる動向等
  4. スマート税関構想2020の進捗状況等
  5. 閉会

出席者
関税分科会長 森田 朗 財務省 阪田関税局長
委員 伊藤 恵子 小宮審議官
片山 銘人 中澤総務課長
金原 壽秀 河西関税課長
河野 真理子 福島参事官
木村 福成 加藤参事官
古城 佳子 米山監視課長
斎藤 保 小多業務課長
坂元 龍三 松田調査課長
佐藤 英明 荒巻税関調査室長
清水 順子 鈴木事務管理室長
杉山 晶子 井田経済連携室長
高橋 裕子 近田原産地規則室長
高山 一郎 松田特殊関税調査室長
田村 善之 石川知的財産調査室長
永沢 裕美子 農林水産省 尾﨑輸出・国際局国際経済課長
根本 敏則 水野農産局地域作物課長
野原 佐和子 金子農産局地域作物課課長補佐
三石 誠司 経済産業省 石川通商政策局通商機構部通商交渉調整官
専門委員 阿部 克則 特許庁 阪本総務部総務課制度審議室室長補佐
国松 麻季 原総務部国際協力課課長補佐
末冨 純子
藤岡 博
宮島 香澄
村上 秀徳

 

午前10時01分開会

森田分科会長 ただいまから関税・外国為替等審議会関税分科会を開催いたします。

 委員の皆様方には、御多用中のところ御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。

 議事に入ります前に、先日委員の交代がございましたので、私から紹介させていただきます。

 先日の春田委員の御退任に伴い、新たに日本労働組合総連合会経済・社会政策局長、片山銘人委員が任命されております。よろしくお願いいたします。

 それでは、本日の議事に入らせていただきたいと存じます。

 本日の議題は、お手元の議事日程のとおりでございます。具体的には、個別品目の関税率の見直し及び海外の事業者を仕出人とする模倣品の水際取締りの強化について説明を受けまして、その後審議を行いたいと存じます。また、今後の審議の参考といたしまして、加糖調製品をめぐる動向等について、農林水産省より説明を受けたいと思います。そして最後に、スマート税関構想2020の進捗状況等につきまして報告を受け、議論を行いたいと考えております。

 それでは、まず河西関税課長より、個別品目の関税率の見直しにつきまして御説明をいただきたいと思います。それでは、よろしくお願いいたします。

河西関税課長 ありがとうございます。関税課長の河西でございます。

 それでは、資料に沿って御説明をさせていただきます。

 まず1ページ目でございます。基本税率は、中長期的な観点から、内外価格差や真に必要な保護水準等を勘案して設定されておりますが、物資所管省庁の要望を踏まえまして、必要に応じて見直しを行っているところでございます。

 令和4年度の改正の要望としては、女子用のブラウス等につきまして、税細分の統合の要望を経産省からいただいております。具体的には、「ししゆうしたもの、レースを使用したもの及び模様編みの組織を有するもの」と、「その他のもの」と現在分かれておりますけれども、税細分を統合して低い税率に統一して欲しいという要望をいただいているところでございます。

 2ページ目でございますけれども、要望の背景といたしましては、現行では、「ししゆうしたもの、レースを使用したもの及び模様編みの組織を有するもの」と、「その他のもの」で、異なる関税率が適用されており、経産省からの御説明によれば、輸入申告の際に、製造工程等に関する別途の資料が必要となり、輸入者にとって貿易手続上の事務負担になっていると承知しております。

 国内産業への影響につきましては、国内産業におきましては、例えば環境と社会に配慮していることを示す国際認証の取得に努めているほか、自社ブランドを構築して高品質な製品づくりに特化するといった戦略を取るなど、高付加価値路線を取ることで、輸入品との差別化に努めており、今回の関税引下げによる国内産業への影響は限定的であると承知をしております。

 また、国際交渉の文脈で見ますと、昨年11月に署名されましたRCEP協定の発効要件が整い、来る令和4年1月1日に発効することとなりました。このRCEP協定の発効によりまして、約6割から7割の輸入を占めます中国からの関税率につきましては、来年4月には9.5%、そして、その次の1年後の令和5年4月には8.9%と段階的に引き下げられることとなっております。

 なお、今回の引下げ幅は実質的にRCEP協定を上回るものとはなっておりません。

 こうしたことを踏まえまして、改正の方向性としては、「ししゆうしたもの等」と「その他のもの」との現行の税細分を統合いたしまして、関税率(基本税率)につきましては、統合前の各細分における税率の低いほう、すなわち9.1%とすることが適当ではないかと考えております。

 資料1-2は、今御説明させていただきました内容を文章の形で改めて整理をさせていただいたもので、同内容でございます。

 事務局からの説明は以上でございます。ありがとうございます。

森田分科会長 御説明ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見等がございましたら御発言をお願いいたします。

特にございませんでしょうか。ないようでございますので、次に移りたいと思います。

 続きまして、海外の事業者を仕出人とする模倣品の水際取締りの強化につきまして、説明をお願いしたいと思います。

阪本制度審議室室長補佐(特許庁) 特許庁の制度審議室で総括補佐をしております阪本と申します。

 模倣品の水際取締りに関しまして、商標法、意匠法の令和3年改正の概要について御説明をさせていただきます。

 まず、本件につきましては、産業構造審議会知的財産分科会商標制度小委員会及び意匠制度小委員会におきまして御審議をいただきまして、本日オンラインで参加されております田村先生に小委員長として取りまとめていただきました。また、昨年もこの場でも御説明をさせていただきまして、また、本日も御説明の機会をいただきましたこと、心より御礼を申し上げます。

 それでは、内容の御説明に入らせていただきます。

 まず、1ページ目を御覧ください。近年、海外の事業者が国内の個人に対して少量の模倣品を郵便等で直接販売し送付する事例が急増しております。

 これまでも商標権や意匠権を侵害する物品は税関において没収等の対象となっておりましたが、商標権等の侵害となるのは事業性のある行為に限られておりますので、個人使用目的で模倣品を輸入する行為には商標権等の侵害が成立いたしません。海外事業者の行為につきまして、商標権等の侵害が成立しているか明らかではないことと相まって、現状、こうした輸入に係る物品は税関での没収等の対象とならず、模倣品の国内流入を止められないことが課題となっておりました。

 1枚おめくりいただきまして、2ページ目を御覧ください。改正前の商標等の規定上、商標権等の侵害が成立しているか明らかではなかった海外事業者の行為につきまして、今般の改正において、模倣品を郵送等により日本国内に持ち込む行為が商標法等の侵害行為となることを明確化することで、模倣品流入に対する規制を強化することといたしました。

 次のページを御覧ください。個人使用目的による模倣品の輸入につきまして、アメリカ、EUにおきましては規制対象となってございます。EU域内の者が個人として使用する場合であっても、EU域外の事業者が模倣品をEU域内に宛てて送付した場合については、このEU域外の事業者の行為に商標権侵害が成立すると解釈し、税関の差止め対象となりました。

 日本におきましても、EUのように海外の事業者の行為に着目しまして規制を行うことができないかということを検討いたしまして、今般の商標等の改正で、海外事業者が模倣品を郵送等により日本国内に持ち込む行為が商標権等の侵害行為となることを明確化いたしました。

 次のページを御覧ください。商標法、意匠法の改正箇所でございます。輸入行為について、外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為を含むものと定義することで、外国にある者が郵送等により商品等を国内に持ち込む行為が、事業者により権限なく行われた場合には規制対象となることを明確化することといたしました。したがいまして、商標法、意匠法上、輸入者は外国にある者を含むこととなっております。

 次のページを御覧ください。特許制度小委員会にて御審議いただきました報告書を抜粋したものを掲載してございます。御審議いただいた中で、特許権は、商標権、意匠権と異なりまして、1つの製品、部品において多数の特許発明が用いられる場合があって、意図せず他者の特許権を侵害してしまうおそれや、特許権は外観で判断することが容易でない場合が多く、故意ではなくても他者の特許権を侵害してしまう可能性があり、その場合であっても税関において被疑侵害品として差し止められるおそれがあるのではないか等の懸念が示されたところでございます。

 報告書抜粋の最後、太字としているところでございますけれども、特許法及び実用新案法については、今般の改正では措置せず、つまり、4法横並びの改正ということにはせず、今後税関における差止め状況等を注視した上で、必要に応じて検討を行うこととしたいと考えてございます。

 特許庁からの説明は最後になりますけれども、本改正法は、今年の5月21日に公布されましたが、施行期日につきましては、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日としてございます。施行に向けた準備として、本改正によって被害を被るおそれのある善意の輸入者、消費者の方々に対しましては、改正内容の周知など、関係省庁等と連携をして、しっかりと対応してまいりたいと考えてございます。

 特許庁からは以上でございます。

石川知的財産調査室長 続いて関税局から御説明させていただきます。知的財産調査室長の石川でございます。よろしくお願いいたします。

 まず、知的財産侵害物品の水際取締りに関する現行制度について御説明します。6ページを御覧ください。

 「輸入してはならない貨物」と記載しておりますが、商標権等の知的財産権を侵害する物品及び形態模倣品等の不正競争防止法に違反する物品は、関税法上の輸入してはならない貨物として税関での取締対象となっております。

 なお、商標法等の産業財産権法においては、事業性のない者により輸入される模倣品は商標権等を侵害する物品に該当しないため、税関の取締対象となっておりません。

 続いて「認定手続」と記載しておりますが、税関長は、知的財産を侵害する疑義のある貨物を発見した場合、認定手続を開始し、権利者及び輸入者それぞれから提出された証拠等に基づき、侵害物品であるか否かの認定を行います。

 認定手続を開始する際、税関長は、権利者及び輸入者に対し、認定手続が執られた貨物が侵害物品に該当するか否かについて証拠等を提出できる旨の通知を行うこととされております。

 7ページを御覧ください。認定手続の流れをお示ししています。左側が通常手続です。税関に輸入申告または郵便物の提示がなされた後、審査・検査において、知的財産を侵害する疑義のある貨物を発見した場合、権利者・輸入者に認定手続の開始を通知します。その後、権利者・輸入者から、証拠・意見の提出を受け、侵害の該否を認定します。該当認定をした場合は、税関は貨物を没収することができ、非該当認定をした場合は輸入を許可します。

 資料の右側は簡素化手続です。下の(注)に記載したとおり、権利者が自己の権利を侵害すると認める貨物に関し、税関長に対し当該貨物が輸入されようとする場合に認定手続を執るべきことを申し立てることができる制度を輸入差止申立てといいますが、輸入差止申立てが受理された貨物のうち、特許権等に係る貨物以外のものについては簡素化手続を執ることとされています。

 簡素化手続においては、税関が知的財産を侵害する疑義のある貨物を発見した場合に、輸入者に対し疑義貨物が侵害物品に該当するか否かについて争う場合には、その旨を書面で提出すべき旨を通知します。輸入者が争う意思を示した場合は、通常手続と同様に、権利者・輸入者から証拠・意見の提出を受けるプロセスを経ますが、輸入者が争う意思を示さない場合は、権利者・輸入者から証拠・意見の提出を受けることなく侵害の該否を認定します。

 8ページを御覧ください。没収及び罰則について御説明します。

 先ほど御説明しましたとおり、税関長は認定手続を経て、侵害物品に該当すると認定した貨物を没収することができます。また、侵害物品に該当する貨物を輸入した者は、関税法で定める罰則の対象となります。

 ※印に記載しておりますが、商標法等においては、事業性のない者による標章の使用等は侵害行為に該当しないことから、事業性のない者による模倣品の輸入は罰則の対象となっておりません。

 以上が現行制度の御説明となります。

 9ページを御覧ください。ここから改正の必要性について御説明いたします。

 越境電子商取引の進展に伴い、海外の事業者と日本国内の個人との間の直接取引による模倣品の輸入が増加しているところ、事業性のない者により輸入される模倣品、いわゆる個人使用目的で輸入される模倣品は、税関の取締対象となっておりません。

 (参考)に記載しておりますが、近年、認定手続において、模倣品を輸入しようとする者からの個人使用目的の輸入である旨の主張が増加しております。

 右下のグラフに、簡素化手続における争う旨の申出の推移をお示ししております。令和2年においては、認定手続開始件数は3万4,128件で、そのうち、争う旨の申出件数は3,696件となっており、個人使用目的の輸入である旨の主張が大半を占めております。

 このように令和2年においては、認定手続開始件数の約1割について争う旨の申出がなされ、その多くについて個人使用目的の輸入である主張を認め非侵害認定をしておりますが、認定手続開始件数の約9割のほとんどについては侵害認定をして輸入を差し止めております。

 資料の2つ目の〇にお戻りください。こうした状況などを踏まえ、令和3年度関税改正における本審議会答申におきまして、「商標法等の改正が行われた場合には、その施行と同時に、税関で水際取締りを実施することが必要であるため、必要な制度改正について速やかに検討することが適当である。」とされております。

 10ページを御覧ください。改正の必要性の続きになりますが、先ほどの特許庁からの説明のとおり、本年5月に改正された商標法及び意匠法において、海外の事業者が模倣品を郵送等により日本国内に持ち込む行為について権利侵害行為となることが明確化されました。

 また、本年7月に決定された知的財産推進計画2021においては、「改正商標法等の施行と同時に、実効性のある水際取締りを実施できるよう、関税法等の改正を含めて検討の上、必要な措置を講じる。」とされております。

 11ページを御覧ください。ここからは、ただいま御説明しました改正の必要性を踏まえ、検討を要すると考えられる事項について御説明します。

 改正商標法等で権利侵害となることが明確化された行為に係る物品について、税関における水際取締りの対象とするため、当該物品を関税法の輸入してはならない貨物に位置づけるとともに、認定手続の対象とする、以下、これを新規規制といいますが、この場合におきまして、以下の点について検討する必要があると考えております。

 1つ目は、輸入者に対する罰則の整理についてです。

 関税法では、商標権等を侵害する物品を輸入した者に対する罰則を規定しております。関税法において、「輸入」とは、外国から到着した貨物を本邦に引き取ることと定義されておりますので、「商標権等を侵害する物品を輸入した者」は、「外国から到着した商標権等を侵害する物品を本邦に引き取った者」ということになります。

 改正商標法等では、新たに海外の事業者が郵送等により持ち込んだ模倣品についても商標権等を侵害するものとされ、この場合、輸入した者が事業性のない者であっても、当該模倣品は商標権等を侵害する物品となります。

 一方、事業性のない者の行為については、現行と同様、改正後においても商標の使用等に該当せず、商標権等の侵害は成立しません。

 このため、商標権等を侵害する物品を輸入した者のうち、事業性のない者については商標権等を侵害する者には該当せず、商標法等において罰則の対象とされておりません。

 以上を踏まえますと、当該者に関税法の規定により刑罰を科すことは適切ではないと考えております。

 12ページを御覧ください。2つ目の検討を要すると考えられる事項は、輸入者が疑義貨物について侵害物品に該当しない旨を主張する場合の手続規定についてです。

 現行制度に係る認定手続においては、輸入者が疑義貨物について侵害物品に該当しない旨を主張する場合に、税関長が輸入者に証拠の提出を求めることができる規定は設けられておりません。

 新規規制を実施するに当たって、認定手続においては、税関長は海外の仕出人に事業性があるか否かを認定しなければならないことから、新規規制の実効性の確保のためには、仕出人の事業性に係る証拠を入手する必要があります。

 この場合、通常、新規規制に係る疑義貨物を輸入しようとする者は、仕出人に係る証拠を入手することが可能であり、当該証拠を税関に提出することは過度な負担ではなく、さらに、それにより疑義貨物が侵害物品に該当しないと認定され、輸入が許可されれば、輸入者利益の確保にも資すると考えられます。

 また、現行制度においても、税関長が侵害該否の認定を適切に行うための判断材料を輸入者から十分に得られない場合があり、税関長が当該輸入者に対して証拠の提出を求めることができるようになれば、制度の実効性及び輸入者利益の確保が可能となります。

 したがいまして、認定手続一般において、税関長が輸入者に対して証拠の提出を求めることができるようにすることが望ましいと考えております。

 13ページを御覧ください。以上を踏まえまして、事務局としまして、制度改正の方向性については、以下のとおりとなるものと考えております。

 1つ目は、改正商標法等で権利侵害となることが明確化された行為に係る物品を関税法の輸入してはならない貨物として規定するとともに、認定手続の対象とすることとする。

 2つ目は、改正商標法等で権利侵害となることが明確化された行為に係る物品を輸入した事業性のない者は、関税法上の罰則の対象としないこととする。

 3つ目は、認定手続一般において、疑義貨物を輸入しようとする者が、当該物品が侵害物品に該当しない旨を主張する場合に、税関長が当該者に対してその旨を証する書類の提出を求めることができるよう、規定を整備することとする。

 なお、(注)に記載しておりますが、提出を求める書類の種類は、通達等で例示する予定としております。

 最後に、先ほど特許庁から説明がございましたが、商標法等の改正の内容や税関における水際取締りの対応については、特許庁などの関係省庁等と連携して、輸入者や関係事業者への周知にしっかり取り組んでいきたいと考えております。

 本件についての御説明は以上でございます。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見等ございましたら御発言をお願いいたします。

本件もございませんでしょうか。ないようですので、次に移りたいと思います。

 次は、農林水産省より、加糖調製品をめぐる動向等につきまして御説明を受けたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

水野農産局地域作物課長(農林水産省) 農林水産省で砂糖を担当している地域作物課長の水野でございます。よろしくお願いいたします。

 昨年の分科会で、暫定税率の引下げ等についてお認めいただいたところでございますけれども、毎年度加糖調製品と国産の砂糖の価格差及び需給の動向、国内産糖に係る競争力強化の取組状況、暫定税率の引下げによる政策効果等について農林水産省に検証を求めること、また、加糖調製品と国産砂糖に関する今後の中長期的な在り方及びその実現に向けた取組について、消費者の視点も踏まえつつ、農林水産省に説明を求めることが適当であるという旨の答申をいただいているところでございます。本日はそれに沿って御説明させていただきたいと思っております。

 資料は大部でございますので、簡潔に説明していきたいと思います。

 まず、2ページを御覧ください。制度の概要でございます。糖価調整制度というのは、海外から安価な輸入糖とコスト差がある国内のさとうきび、てん菜を原料とする国内の原料糖について、大幅な内外価格差が生じているという中で、その価格差を調整して、国内の甘味資源作物や、国内でこれを原料とします国内産の原料糖の製造等の経営が成り立つようにすることで国内の砂糖の安定供給を図るという仕組みでございます。

 平成29年11月に、TPP大綱において、改正糖調法に基づいて加糖調製品を新たに調整金の対象とし、これを国内の砂糖の支援財源に充当することを通じまして、国内価格の引下げ、国産の砂糖の競争力の強化を図るとしております。

 次に、3ページを御覧ください。ここでは、輸入加糖調製品と砂糖の需給動向についてお示ししております。

 直近の令和2砂糖年度におきましては、輸入加糖調製品は対前年比で7%の減、約47万トンとなってございます。

 次に、4ページを御覧ください。ここでは、調整金の徴収対象となります加糖調製品20ラインに着目した集計値でございまして、輸入は対前年比7%減少してございます。今回の動向で着目すべき点というのは、粉乳調製品が対前年比で16.3%減と減少幅が最も大きいという点でございます。これは、砂糖の価格差といったもの以上に、調製品の主原料となる脱脂粉乳に関して、長期保存が可能なことで国産の脱脂粉乳の製造量が増えまして、在庫が高水準となったということもあったため、生産者団体等による需要拡大対策を国内で実施したということで、結果的にその輸入の粉乳調製品の量がそれに置き換わって減少したといういわゆる特殊要因によるものでございます。

 それ以外の近年の粉乳調製品に関しましては、輸入量は増加傾向で堅調に推移しておりますので、今後こうした要因が解消されてくれば、粉乳調製品の輸入量というのはまた増加に転じるということが想定されます。砂糖にとっては脅威であるということには間違いないので、この動向については引き続き注視してまいりたいと考えてございます。

 続きまして、5ページでございます。ここでは、甘味全体の需要量の推移を見ているわけでございますけれども、甘味全体の需要量につきましては、近年消費者の低甘味嗜好、あとは人口減少等もあり、減少傾向にございます。直近では、新型コロナによる経済活動の停滞等もありまして、300万トンを割るという水準にまで落ち込んでいるところでございます。

 続きまして、6ページでございます。これは、国産の砂糖の競争力強化のための輸入原料糖に係る調整金の軽減措置の効果について説明をさせていただいております。

 海外の輸入原料糖は上昇しているわけでございますけれども、左の下の図をご覧いただくと分かるように、主要な輸入加糖調製品の令和2年度の取引価格には反映されておらず、昨年と同程度でございます。

 一方、国産の砂糖の取引価格は、原料となる海外の原料糖の相場が上昇、及びアジアにおける需給逼迫を反映しまして、それに賦課される割増料金、極東プレミアムというものが原料糖の調達コストに反映して高くなっているという状況でございます。他方で、加糖調製品からの調整金を原資とした輸入原料糖に係る調整金において、キログラム当たり3円の軽減措置を実施させていただいておりますので、その効果、あとは国内製糖メーカー等の合理化努力等も反映しまして、本来であれば右側の令和2年の赤いグラフ自体はもう少し上に来るところでございますけれども、現時点では、平成30年と同程度の水準に収まっているという状況でございます。

 このように当該軽減措置の効果によって、国産の砂糖の取引価格を引き下げるということを通じて、消費者に一定のメリットを享受していただいているのではないかと考えてございます。

 一方で、輸入加糖調製品と国産の砂糖には依然として大きな価格差がございますので、TPP11税率の設定水準に応じて暫定税率を引き下げることで、国際約束の範囲内で可能な限り価格調整を実施して、国産の砂糖の競争力の強化を図っていくことが必要であろうと思っております。

 次に、7ページを御覧ください。これは、国内産糖に係る競争力の強化の取組について御説明申し上げているところでございます。

 さとうきびにつきましては、手刈りで収穫していたものから機械化に移行したことで、労働時間が大きく減少してございます。これはグラフの緑部分を見ていただければ分かるかと思います。

 次はてん菜でございますけれども、物材費が高止まりしている中で、肥料の投入量ですとか、農薬の防除回数が多いということもあって、コスト削減が大変難しいという状況にはございますが、労働負担の大きい春先の植付け、これは移植栽培から直播栽培という種をまく栽培に切り換えることによって生産の効率化を図っているという状況にございます。

 工場については、甘しゃ糖工場もてん菜糖工場も、これは操業率の影響を受けて製造コストが上下しているわけでございますけれども、省エネ施設の導入でございますとか流通の合理化によって、製造コストの低減に取り組んでいるということでございます。

 こうした取組を通じまして、生産製造効率を高め、交付金支出を抑制するということを実施しているわけでございますけれども、例えば工場の交付金で言いますと、昨年夏に決定した交付金単価はいずれも下がっておりますし、今年の夏の工場の交付金についても下がっているという状況にありますので、そういった点では効率化の効果が現れているのではないかと思っております。

 次に、8ページを御覧ください。答申を踏まえまして、当省でも、今年の6月と8月に、食料・農業・農村政策審議会甘味資源部会を開催いたしまして、学識経験者や砂糖の関係者だけでなく、当審議会から一部オブザーバーとして参加いただいて、幅広い意見を聴取して、今後の対応を検討して取りまとめを行いました。

 9ページを御覧ください。甘味資源部会で議論し取りまとめた答申への対応の考え方でございますけれども、まず、全般的に、総合的なTPP等関連政策大綱を踏まえ、TPP11税率の設定状況に応じて、加糖調製品の暫定税率を引き下げ、砂糖と加糖調製品の価格差を埋めるため、令和4年度についても引き続き関税改正を実現する必要があるとの意見が大宗を占めたというところでございます。

 この他の意見につきましては、10から16ページにかけての資料で御説明をさせていただきたいと思います。

 各関係者の努力を通じて、国民負担の軽減を図るものとして、10ページと11ページに生産者や製糖工場のコスト低減に向けた今後の取組をまとめてございます。

 10ページにおけるさとうきび生産でございますと、収穫の部分は機械化が進んでいます。これまで機械化が進まなかった植付けの部分、さとうきびの場合は切ったらまた生えてきますが、その株出管理にも機械導入を進めていかなければいけないとか、てん菜では、さらなる直まき栽培、これは今3割でございますが、それをもっと進めるということでございますとか、減農薬や減肥料などの環境に配慮した持続的な生産を行って、コストの低減を図ってまいりたいと思っております。

 11ページをご覧下さい、工場についてでございます。甘しゃ糖工場でございますと、令和5年度に、働き方改革の猶予期間が迫っておりますので、省力化、省人化を引き続き進めていかなければいけないということでございます。

 てん菜糖工場では、季節的に原料輸送のためのトラック輸送が大変煩雑になるわけでございますけれども、中間の受入場を開設することでできる限りトラック輸送を効率化して、輸送コストの低減を図っていくということと、今年、てん菜糖工場は2年後に1つ閉めるということが決まりましたので、そういったことも踏まえますと、地域における基幹産業であるてん菜糖工場の持続的な在り方について、今後検討を進めていかなければいけないということを示してございます。

 続きまして12ページでございますけれども、答申における加糖調製品及び国産の砂糖の今後の中長期的な在り方を考える上では、砂糖が国民に消費されることを通じまして、国境離島における代替の効かないさとうきびでございますとか、我が国最大の畑作地帯の輪作体系の維持に欠かせないてん菜の生産を支えるという経済合理性だけでは図れない部分というのはどうしてもありますので、そういった背景を御理解いただいて、国産の砂糖の需要拡大を図るということが必要だと考えてございます。

 砂糖はその原料の3割が菓子等に使われております。この日本の菓子というのは、世界的に品質の高さから非常に人気がありますので、輸出拡大が期待されているところでございます。下に書いてありますが、令和元年度202億円の輸出実績でございますけれども、これは政府の輸出拡大実行戦略の中では、令和7年の輸出目標で465億円と2.5倍に増やすという計画を目標にしておりますので、そういった中で砂糖の消費も拡大していきたいと思っております。

 13ページを御覧ください。これは、国内での需要拡大に向けた取組を示してございますけれども、令和4年度から、原料原産地表示の本格施行が始まります。それを契機に加糖調製品から国産の砂糖への切替え、需要回帰を進めたいと考えております。

 需要回帰の例は左に一部書いてございますけれども、加糖あんですとか、例えば粉乳調製品、小麦粉調製品においては、実需者のメーカーが輸入加糖調製品から国内での製造に切り替えるという動きが見られているところでございまして、需要回帰に向けた支援を農林水産省でも令和4年度の当初予算で要求してございますので、これらの取組をできる限り後押ししてまいりたいと考えております。

 それから、14ページ、15ページにかけては、精製糖メーカーが作っている商品のラインナップでございます。14ページは精製糖メーカーの健康志向に配慮した砂糖をラインナップしてございます。15ページにつきましては、消費者の国産志向ということで、さとうきび及びてん菜を原料とした砂糖のラインナップとして、こういったことで消費者のニーズにも応えているということでございます。

 続きまして16ページでございますけれども、まず、暫定税率を引き下げて輸入原料糖の軽減措置を図っていくためには、国産の砂糖の競争力強化を図る。一方で、これらの措置を行うには、そもそも糖価調整制度が安定的に運営されるということが前提となるわけでございます。

 多くの委員の方から、沖縄、鹿児島南西諸島、北海道の地域経済を守るという地域政策の観点で、将来にわたって糖価調整制度を守っていくことの重要性が示され、さらに直近の国際環境を踏まえると、国民生活に必要な基礎的食料である砂糖についても、食料安全保障の観点からも重要性が増しているという状況でございまして、砂糖の消費量の減少によって、現時点では、調整金勘定の赤字が膨らんでおりますので、制度の存続自体が危惧されているわけでございますけれども、これは、ひとえに輸入糖と国産糖のバランスの確保というのが何より必要ということでございます。

 17ページでは、砂糖の需要における減少の中で、てん菜糖のシェアが高まっているというのをお示ししているわけでございます。

 こうした状況を踏まえて、16ページでは、てん菜を含む北海道畑作の現状と課題を整理してございます。北海道畑作の中では、例えば加工用のばれいしょ、これはポテトチップ用に向くわけでございますけれども、実は量が足らなくて、一部輸入しているという状況にございます。また、大豆についても、大幅な需要が見込まれている中で、まだそれに応えられていないというところもございますので、北海道畑作において、てん菜を一部需要のある作物に転換してもらえないかという議論を今現在進めているところでございます。

 最後に、18ページでございます。ここでは、令和4年度に向けた関税改正の要望の概要を整理してございます。6ページで御説明したとおり、足元における加糖調製品の価格というのは昨年と同水準を維持しておりますけれども、輸入加糖調製品と国産の砂糖の価格差は、キログラム当たり5円程度拡大しているということで、両者の価格差は依然として高いという状況でございます。

 この価格差の拡大というのは、加糖調製品と国産の砂糖の価格が共に海外の輸入原料糖の相場の影響を受ける中にあっても、TPP11発効に起因しまして、TPP11加盟国を含めた輸入先国間での価格競争の激化が加糖調製品の価格の上昇を抑制しているということも一つの要因であると考えております。現在こそ協定発効後まだ間もないということもあって、輸入のボリューム自体は限定的ではございますけれども、今後割当枠の拡大でございますとか、協定税率のステージングが下がっていくということを踏まえますと、水面下では安価な加糖調製品の輸入量が増加しまして、国産の砂糖と価格差がさらに拡大するという下地が整ってきているのではないかと考えております。

 このため、令和4年度においても、TPP11税率の引下げに応じて、暫定税率の引下げを行っていただいて、国産の砂糖の競争力の強化を講じる必要があると考えているところでございます。

 駆け足となりましたけれども、私からは以上でございます。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見がございましたら御発言をお願いいたします。

根本委員ありがとうございます。

 令和4年度の改正の要望内容ですけれども、この右の上の箱の中に書いてあることは、簡単に言うと、価格差があるので、調整金でその差を縮小したいという御説明かと思います。昨年の関税改正要望の概要の資料と比べましたら、違いは「令和4年度」と書いてある文言が「令和3年度だけ」で、あとは一言一句、全く同じでした。

 毎年度自動的に調整金を拡大するということが決まっているわけではないので、今年度なりの事情をもう少し分かりやすく説明いただきたいと思います。例えば今年度のTPP11の枠内税率の引下げはどの程度の影響があったか、ありそうなのか。あるいは今実施している需要喚起策はどの程度効果が出てきているのか、あるいは効果発現までもう少し時間がかかりそうなのか、そういう説明が欲しいと思います。

 さらに加えて、今日の冒頭、「中長期的な見通しを検討された」ということで、確かに「生産コストとか製造コストを削減する、需要を喚起していく」という説明は評価したいと思います。そういう取組をぜひお願いしたいと思いますけれども、もう少し定量的な見通しを示していただけるとありがたいと思います。例えば昨年もそういう指摘があったと思いますけれども、将来の砂糖生産の適正な水準、例えば10年後の適正な水準、そういうものに関しての見通しなどについても説明いただければ説得力が増すのではないかと思います。

 以上です。

森田分科会長 ありがとうございました。それでは、回答をお願いできますか。

水野農産局地域作物課長(農林水産省) 御質問ありがとうございます。

 引下げを今年やる必要性というところだと思います。資料の中で、駆け足で大変申し訳なかったと思います。砂糖の取引価格は海外の原料糖相場が上昇しておりまして、海外の原料糖の調達コストというのが大幅に高くなっているのですけれども、加糖調製品からの調整金を原資とした輸入原料糖に係る調整金の軽減措置の効果や、国内精糖メーカーの合理化努力で国産砂糖の取引価格は比較の基準となる平成30年と同程度に今収まっているというのが政策の効果ではなかろうかと思ってございます。

 また、暫定税率の引下げの必要性の観点から申し上げますと、輸入加糖調製品と国産の砂糖の取引価格に着目しますと、これは足元で、加糖調製品の価格については昨年と同水準を維持しておりますので、加糖調製品と国産砂糖の価格差はキログラム当たり5円程度拡大しているという状況にございます。これは、加糖調製品と国産の砂糖の価格がともに、先ほど申し上げた海外の原料糖の国際相場の上昇が起きる中にあっても、TPP11の発効を起因としまして、TPP11の加盟国であるベトナムに韓国が工場を進出したということもございまして、ベトナムからの輸入量というのは3倍から5倍と今急進しているという状況にございます。ですので、輸入先国間での価格競争の激化が今加糖調製品の中で進んでいるという要因がございます。

 現在、TPP11の発効に伴う関税率の引下げの効果というのは、ボリュームとしてはそんなに多くはないわけでございますけれども、今後、枠が拡大していくということとか、ステージングが下がってまいりますので、そういった意味では、現時点では水面下で国産の砂糖との価格差が拡大する余地というのがあるのではなかろうかということが、我々が今年も引下げをお願いしたい理由でございます。

 どの程度の効果があるのかというのは、先ほど申し上げたとおり、3円の引下げの効果については3円程度下がったということと、消費拡大対策については、コロナの影響で、全体の需要が下がっているということもあって、今どれぐらいの需要拡大効果があるのかというのは定量的に説明するのはちょっと難しゅうございます。砂糖の消費自体は、資料の3ページでございますが、我々の需要拡大等の取組を行っている中で、砂糖自体は、令和元年から2年にかけての輸入量の減少というのは小幅に収まっているということもあるので、そういった点では一定程度需要拡大効果というのを現しているのではないか、効果が発現しているのではないかと思っているところでございます。

 それから、今現在、需給バランスが崩れているので、てん菜から他の品目への転換をお願いしているわけでございますけれども、では、将来的にどの程度の生産水準が妥当なのかどうかというのは、今まさにこれは議論している最中でございますので、この場でお示しするのは難しゅうございます。そこについては、引き続きいろいろ議論しながら、我々としては、どういった水準が適正なのかどうかについても、今後検討を進めていきたいと思っているところでございます。

根本委員定量的な分析は難しいとは思いますけれども、引き続きお願いしたいと思います。

 以上です。

森田分科会長 ほかにいかがでございましょうか。オンラインで、宮島委員、永沢委員の手が上がっているようですので、その順番でお願いいたします。

宮島委員 宮島です。御説明ありがとうございます。

 この問題に関しては、まず、こうしてしっかり部会などでもレビューをいただいたということはよかったと思います。一方で、制度の持続性とか、この先に向かって非常に明確な未来がちゃんと描けているというようにはなかなか見えていないかと思います。実際、砂糖の需要を増やすといっても、今の人口減少と志向の状況でうまくいくのかと。菓子の輸出を爆発的に増やすことができるのかという様々な課題の中で、引き続きしっかり状況を見て対策を考える必要があると思います。特に現場の様々工場の閉鎖とか、あるいはてん菜などは作るものを変えるといった対策がありますが、1つ疑念があるのは、これがちゃんと政策として現場に浸透しているかということはしっかり見ていく必要があるかと思います。

 というのは、例えば全然別の話ですけれども、農業分野で、農地バンクというのはすごく前からやっているんですけれども、比較的最近のアンケートで、農地バンクを知っているかというアンケートに対して、知っている割合が非常に少なかったので私は驚いたのです。政策としては成立していても、それをこのままではもたないかもしれないという危機感とともに、現場の人がちゃんと受け止めて動いていないとあまり意味がないと思うので、引き続きしっかりしたレビューをしながら、この政策をどうしていくかをしっかり考える必要があるかと思います。

 以上です。

森田分科会長 ただいまのは御意見ということでよろしいでしょうか。

 それでは続きまして、永沢委員、お願いいたします。

永沢委員 消費者団体でありますNACSの副会長を務めております永沢と申します。

 御説明ありがとうございました。御説明の中に消費者という言葉が出てきましたので、消費者の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。

 私も宮島委員と基本的に同じような感想を持ち、厳しい事情というのがあるので、このような制度がどのように維持されていくのかという点には一抹の不安を覚えるとともに、一方、砂糖の安定的供給の仕組みをどう維持していくことの必要性やこれからどのようにしていくのかについては理解できました。事業者の価格競争力の強化については努力を続けていただくことが大変必要であるとともに、消費者団体の立場からは、消費者の認識や意識喚起ということも非常に重要であるということを認識いたしました。

 その観点から、今現在、私ども消費者団体も含め、消費者庁が中心となりまして、エシカル消費の取組を進めております。エシカル消費といいますと、人権や環境への配慮というふうに思いますが、地産地消というところも大変重要な取組として位置づけております。本日のお話を伺いますと、地域社会の持続可能性という観点から、この生産供給システムをどう維持していくのかということは重要な課題であると、消費者が認識していくことも必要と思いました。御提案ということになりますけれども、私ども消費者団体もエシカル消費の取組として、このような砂糖の供給需要の循環について、具体的な事例として取り上げ学習していくような取り組みを行い、消費者へ意識喚起を行っていってはどうかと考えました。

 私からの意見は以上になります。よろしくお願いいたします。

森田分科会長 ありがとうございました。お二人の御意見について、農水省からコメントございますか。

水野農産局地域作物課長(農林水産省) 永沢委員、大変ありがとうございます。砂糖のエシカル消費において、地産地消というのは、まさに我々としてもしていっていただきたいことでございますし、国産の砂糖を消費者の方々に認識していただいて、国産砂糖を取っていただくことで、代替作物のない沖縄を支えることでございますとか、北海道を支えるとか、そういった地域社会にも貢献しているということも消費者に伝えていくことが我々も重要だと思ってございます。甘味資源部会でも、そういった重要性を消費者にちゃんと伝えていきなさいということも言われてございますので、そういったものは引き続き伝えていかなきゃいけないと思っております。

 あと宮島委員は、甘味資源部会の委員で、日頃からいろいろ御指導賜っているところでございます。我々としても、この制度は持続していかないと、地域社会、特に沖縄、南西諸島における離島を守っていくためには、どうしてもこの制度を持続させていかなければいけないということで、その時々のメンテナンスは当然必要だと思ってございます。まさに今メンテナンスの時期になってございますので、そういった意味で、北海道のてん菜の生産の切替えみたいなものを今進めているわけでございます。できる限りメンテナンスを図りながら、この制度を維持して、地域社会を存続させることは重要な命題だと思ってございますので、引き続きやってまいりたいと思っているところでございます。よろしくお願いいたします。

金原委員 農業団体の立場から、さとうきび、てん菜農家、沖縄、それから、北海道の砂糖の産地、地域経済を守っていくという観点からコメントさせていただきたいと思います。

 先ほどから先生方の御意見を伺っております。昨年と大きく違うのは、御理解をいただきながら、それぞれ課題を出していただいている。このことは非常にありがたいと思いますし、前回の審議会でも申し上げましたけれども、これは、過去のTPPの交渉で、砂糖そのものは守っていただいたわけです。一方で、加糖調製品については関税割当てや税率の削減、撤廃の対象となっておりまして、砂糖と競合する加糖調製品が入りやすくなっている。これも、また事実であります。

 砂糖の需要が代替えされることで、砂糖の制度そのものが成り立たなくなる。安定的に交付金支援が得られなくなるという農家不安も大きかったことで、我々農業団体あるいは砂糖業界が一体となって、政府に、このTPPの交渉の過程の中で加糖調製品の対策を求めたという経緯があって、それがTPPと関連政策大綱において、国産甘味資源作物の安定供給を図るために改正糖価調整法に基づいて、加糖調製品からの調整金を徴収し、砂糖の競争力強化を図っていくとともに、着実に経営安定対策を実施するということで決着をしたという経緯がございます。

 様々な御意見があることはよく承知をしておりますけれども、北海道の北限の広大な畑地の輪作の体系の中に組み込まれているということも1つでありますし、鹿児島、沖縄の南西諸島については、台風常襲地帯で、ほかの作物となかなか代替えができないということもございまして、もう一つは、先般も申し上げましたとおり、例えばさとうきびを作らなくなれば産業がなくなる島がたくさんございまして、国をどうやって守るかという観点もあって、国も国策としてこういうことをやっている。このことも理解をいただいて、なるだけ生産者が減らない。

 今鹿児島と沖縄で約2万戸の農家、北海道と違って零細でありますので、戸数は非常に多い。そして、そこには精糖工場があって、物流があってということで、1つの島自体の経済的なものも支えているということであります。国防上も非常に大事な国策作物である、そう御理解をいただいたほうがいいのではないか。

 したがいまして、この制度をしっかり守っていただく。いろいろな状況の変化で、また、先の見え方が変わってくるだろうと思います。ただ、今置かれている立場の中では、大綱で決めていただいたことをしっかり堅持するということで、委員の皆さん方に御理解をいただければと思っています。

 以上です。

森田分科会長 ありがとうございました。御意見と思いますので、続きまして御発言をお願いいたします。

村上委員 

 TPP大綱において加糖調製品から調整金を徴収するということが決まった背景については、金原委員からお話があったとおりだと思います。全体の砂糖の需要、甘味の需要が減る中で、この糖価安定制度を維持するために、加糖調製品のほうでも制度を支える役割を果たしてほしいということ、輸入糖だけで支えるというのはなかなか難しくなってきているということで、そういう妥協が図られたのだろうと思います。一方で、需要者あるいは消費者に対する配慮というのは非常に大事でございますし、加糖調製品の暫定税率の引下げとそれによる調整金の徴収幅の拡大という中で、他方で、砂糖の価格を下げて、実需者、消費者の利益を図っていくということが非常に大事だということだったと思います。

 輸入糖の調整金の調整によって消費者あるいは実需者に還元するというだけではなくて、その調整金による保護を受けている国産糖あるいは国内の国産糖の製造メーカーの合理化努力というのも非常に大事だと思います。それがないと、この制度はなかなか維持できないというところへ来ていると思います。そういう意味で、できるだけそういうことが反映されるようなシグナルが関係者に伝わるような仕組みをぜひ考えていただきたいと思っております。

 それから、砂糖の需要全体が減っているときに、輸入糖と国産糖とは、互いに責任を分担していかないといけないということがございます。それぞれの役割をきちっと果たすという意味で、国産糖のほうにもその辺の努力をしていただく必要があります。資料9ページの最後に書いてありますけれども、現在市場が求めている原料ばれいしょの増産だとか、あるいは豆類の需要があるわけでございます。そういう市場のニーズにちゃんと応えていくということも非常に大事だと思います。そういう全体の動きの中で、この糖価調整制度が維持されていくことになるのではないかと思っております。

 私は昨年も同じようなことを申し上げましたけれども、このような意味で引き続き関係者には努力をしていただきたいと思っております。

 以上でございます。

森田分科会長 ありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。

 農水省から何かコメントはございますか。

水野農産局地域作物課長(農林水産省) 金原委員からも、これは叱咤激励だと捉えてございますけれども、村上委員からもいろいろ御提案いただいて、合理化努力がちゃんと反映される仕組みということで、我々は交付金の単価を設定するときに、できるだけ効率的なものを取りながら、生産コストが下がるようにということで努力しているところでございます。そういった効果もあって、最近工場の交付金もここ2年連続下げてございます。そういったことはできる限り反映して、砂糖の価格を下げて、消費者の利益にかなうようにしていくというのは使命でございますので、これは引き続きやっていきたいと思っております。

 生産者も同じでございまして、いみじくも最後におっしゃったてん菜の生産がすごく多くなっているというところについては、一方で需要に応えられていない、豆でございますとか、加工用のばれいしょについては、まさにチャンスロスをしている状況でございます。産地が持続的に発展して、経営が継続していくという意味では、需要に応じた生産というのはマーケットインの発想でやっていかなければいけないのは間違いないわけでございますので、ここについては、今産地といろいろ議論をしているところでございます。引き続き我々としても需要のあるものを作っていただきながら、持続的な発展を図っていくということが必要だと思ってございますので、そこについては努力してまいりたいと思っているところでございます。

 以上でございます。

河西関税課長 ありがとうございます。関税課長でございます。

 御議論ありがとうございました。本日いただいた先生方の御意見を踏まえまして、次回、11月29日の第3回の分科会における暫定税率に関する検討の中で、加糖調製品についても改正の方向性を示させていただければと存じます。また、定量的な分析、あるいは現在の取組の様々な努力のフォローアップといった先生方の御指摘についても引き続き農水省とよく連携しながら相談できればと思っております。引き続きよろしくお願いいたします。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、最後になりますけれども、中澤総務課長より、スマート税関構想2020の進捗状況等につきまして御説明をお願いいたします。

中澤総務課長 ただいま御紹介いただきました関税局総務課長の中澤と申します。

 本日は、資料4、スマート税関構想2020の進捗状況等につきまして御説明をできればと思います。

 1枚おめくりいただきますと、本日の構成でございます。最初に「スマート税関構想2020の進捗」について申し上げたいと思います。その後、「税関を取り巻く環境変化への対応」ということで、「スマート税関構想2020からスマート税関の実現へ」という点を御説明できればと思います。

 2ページ目を御覧いただきたいと思います。

 「スマート税関構想2020」と上段に書いてありますが、まず、これは何かと申し上げますと、税関行政を取り巻く今後の環境変化を見据え、AIなど先端技術を活用し、業務の一層の高度化、効率化を進めるとともに、利用者への一層の利便向上を図り、20年後、30年後も国民の期待に応えられる世界最先端の税関を実現させる中長期ビジョンでございまして、昨年6月に公表しておるところでございます。公表から1年以上経過したところでございますので、この場を借りまして、進捗状況について共有できればと思っております。

 その下を御覧いただきたいと思います。1つ目は「Solution」でございます。税関手続を利用する方の利便性の向上を図る観点から取り組んでいるものでございまして、ここでは01、02という形で、「税関手続の一層のデジタル化」、「相談対応の利便性の更なる向上」という形の小見出しを付けております。

 まず「税関手続の一層のデジタル化」でございます。電子申告ゲートの増配備を行うとともに、本年3月に関税法を改正いたしまして、7月からスマートフォン決済アプリによる関税のキャッシュレス納付を可能とするなど、主要空港における税関手続のデジタル化というものを推進しているというところがこの01で御紹介しているところでございます。

 02を御覧いただきまして、この一番下を御覧いただきたいと思います。来年1月1日にRCEP協定が発効することになっており、EPAの利用機会のさらなる拡大が見込まれている状況でございます。EPAの利用によって通常よりも低い関税率で輸入が可能となりますが、この適用を受けるためには、原産地規則などルールを満たす必要があることから、EPAに関する説明会の開催や、これらの手続を解説した動画をユーチューブの税関チャンネルで提供をするなど、動画の内容を基にしたリーフレットを作成するなど、周知徹底を図っております。

 1枚おめくり下さい。上のほうに2つ目の「Multiple-Access(パートナーシップ強化)」とございます。環境変化や、新たなニーズの把握につきましては、輸出入者が直面する課題をしっかり把握していくということが重要かと思っております。

 関税局と関係業界との間で、定期的な意見交換を実施していることを上に紹介をしておりまして、スマート税関構想についての紹介や、産業界における具体的なニーズの把握、また制度改正の概要、趣旨を説明して事業者の理解向上を図るなどの取組を積極的に行っているところでございます。

 また、AEO制度の利用拡大に向けた取組も進めているところでございまして、税関によるAEO制度の事務運営の方針を明確化する通達を定め、本年7月から実施しております。また、本年4月には、AEO事業者が利用する手続の中で、カルネ申告については申告官署を弾力化する。こういった取組を紹介しているところでございます。

 続きまして、3つ目の「Resilience(しなやかで頼もしい税関へ)」部分を御覧いただきたいと思います。ここでは、01「災害等非常時に強いシステムの検討」、及び02「海岸線等の監視取締りにおける先端技術の活用」という点をご紹介いたします。

 まず、01を御覧いただきたいと思います。地震、台風などの自然災害の被害を受けた場合でも、税関業務への影響を最小限にとどめるために、災害などの情報をリアルタイムに収集する危機管理のAIサービスを活用するなど、効率よく情報収集いたしまして、より迅速な対応ができないか、検討を進めているところでございます。

 また、テレワークの推進でございますが、税関職員が税関官署の中で行う業務の一部を自宅など離れた場所でもできるよう環境整備を進めているところでございます。

 また、02でございますが、監視取締りにドローンが活用できないか、実証実験を進めているところでございます。

 続きまして、4ページ目を御覧いただきたいと思います。4つ目は「Technology&Talent」ということで、AIなどの先端技術を積極的に税関業務に導入いたしまして、業務の高度化、効率化に取り組むとともに、このような技術を使いこなしていける人材を育成していくことを目的に取り組んでおるというところでございます。

 まず1つ目は、ビッグデータの解析というところで、01を御覧いただきたいと思いますが、税関が保有する過去の輸出入実績など膨大なデータをビッグデータとしてAIに解析させることによりまして、税関業務の高度化、効率化はできないかを検討しているところでございます。

 また、資料の右のほうを御覧いただきますと、AIによるX線画像審査支援を紹介しているところでございます。AIの活用ということで、画像解析の分野でも進めております。国際郵便物の検査につきまして、X線画像から内容物の識別を行うAIを開発したところでございまして、このAIを活用いたしまして、検査対象郵便物の自動識別を行うための準備を進めているところでございます。

 また、その左下を御覧いただきますとRPAの活用と書いてございますが、このRPAの活用も今現在進めているところでございまして、150以上の業務をRPA化し、また、年間約1万7,000時間を削減するといった取組をしているところでございます。

 さらに先端技術を使いこなすための人材育成を02にてご紹介しているところでございます。大学教授の皆様、またITベンダーなどの有識者との意見交換を行いまして、先端技術の税関業務への活用などアドバイスをいただいているところでございます。

 以上、この1年におきますスマート税関構想の進捗状況を紹介させていただきました。今後も構想の実現に向け様々な取組を進めていく所存でございます。

 続きまして、2つ目のパートに移りたいと思います。「税関を取り巻く環境変化への対応(スマート税関構想2020からスマート税関の実現へ)」でございます。

 6ページ目を御覧いただきたいと思います。スマート税関構想は、先ほど申し上げましたように昨年6月に公表した後におきましても、当初想定していなかったような様々な環境変化が確認されております。そのような中であっても、税関行政の中長期ビジョンでありますスマート税関構想を構想にとどめることなく、スマート税関を実現していくことで引き続き税関の使命を果たしていくために、環境変化、また新たなニーズに対しても積極的に対応していくことが重要だと考えております。

 ここで左側を御覧いただきますと、「スマート税関構想2020で想定する環境変化」ということで、スマート税関構想2020本文にも紹介されているものがこの左側の青いところに書かれております。

 一方、その時点から1年経過する中で、新たな環境変化ということで、この右の四角を御覧いただきたいと思います。ここで幾つか紹介してあるものとしまして、長期化しております新型コロナウイルス感染症の拡大とポストコロナへの対応というものが必要ではないかという点。また、越境電子商取引の拡大によりまして、小口急送貨物が急増するなど、サプライチェーンの変化が加速しているという点。官民におきましてデジタル化が加速している点。さらには、新たなニーズの出現のところを御覧いただきたいと思いますが、例えば経済安全保障上の脅威の高まり、保税地域の活用、そういった新たなニーズの出現も確認しているというところでございます。

 このような税関を取り巻く新たな環境変化も踏まえまして、スマート税関を実現するために、制度改正を含め、時間軸をもって必要な対応について検討していくこととしておるところでございます。

 続きまして、1枚おめくりいただきたいと思います。以下、この中で3つほど新たな環境変化を踏まえて税関業務上の課題として考えているものを紹介したいと思います。

 まず1つ目が、「越境電子商取引の拡大による輸入小口急送貨物の加速度的な急増」でございます。

 ここでは、まず右側のグラフを御覧いただきたいと思います。やや復習的なところになるかもしれませんが、破線がSP貨物の件数の流れでございます。平成21年には1,089万件であったものが、令和元年には3,949万件、令和2年には6,336万件と加速度的に増えてきているところでございます。この背景には、コロナ禍におきまして、電子商取引が急速に拡大している、また、輸入貨物の小口化が進展しまして、航空貨物の中でもSP貨物の輸入が急増しているといったところが挙げられるかと思います。

 税関職員の数は限られている中におきましても、不正薬物の密輸入防止、また、テロ対策をやっていく必要がございます。そういうことを考えますと、このSP貨物の取締りの強化が必要だということで、制度改正を含め必要な対応について検討するということでございます。

 1枚おめくりをいただきますと、2点目でございますが、「経済安全保障上の脅威の高まり」でございます。

 税関におきましては、外為法に基づく輸出規制に該当する貨物につきましては、経済産業大臣の輸出承認などの証明がなされているかを確認しているところでございますが、輸出規制に該当しないと申告された場合でありましても、申告内容などに基づきまして、厳格な審査と必要な貨物確認を行うとともに、輸出申告の適正性を確認するため輸出者に対しまして事後調査というものを実施しております。

 また、技術流出の軍事転用のおそれのある製品などの流出につながる不正輸出を防止するための情報収集、分析なども行っているところでございます。右のグラフを御覧下さい、経済産業省によりますと、外為法違反事例の40%は税関の事後調査が端緒となっております。

 下の箱に移りたいと思いますが、昨今、経済安全保障上の脅威への対処が、政府全体として重要な政策課題となっております。政府全体の方針を踏まえまして、関税局、税関といたしましても、関係機関との連携促進によります情報収集の強化など、取組を進める必要があると考えているところでございます。

 最後に、9ページ目を御覧いただきたいと思います。3つ目は、「輸出物品販売場制度の電子化による利用実態の可視化」でございます。

 この輸出物品販売場制度とは、具体的には、消費税法に基づきまして、外国人旅行者などの非居住者がいわゆる免税店におきまして通常生活の用に供する物品を輸出するために購入した場合に、一定の手続を経ることによりまして消費税が免税されるという制度でございます。本制度におきまして、利便性の向上、効率化などを図る観点から、昨年4月より、一部の免税店におきまして、免税販売手続が電子化されております。税関におきましては、外国人旅行者が出国する際に、国税通則法に基づきまして、免税購入品と購入記録情報との対査確認を実施しているところでございます。

 中段に移っていただきますと、税関の対査確認におきまして、免税購入品を所持していない、また、本制度の趣旨を逸脱したような利用実態、さらには1億円を超えるような購入をしている者などが確認をされているというところでございます。本年10月には、完全電子化がなされております。完全電子化をしたということを踏まえまして、利用実態が一層可視化され、不正事案の確認・把握が可能になってくると考えております。

 下の箱に移っていただきまして、今後そのような不正事案を把握し、または情報を蓄積し、不正手口などの分析、調査を行い、制度の適正な執行に向けた対応策を講じていく必要があると考えております。また、国税当局と緊密に連携し、制度の適正執行の方策についても検討していく必要があると考えておるところでございます。

 以上、税関を取り巻く環境変化を踏まえまして、所要の対応について検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。検討状況につきましては、適宜御報告をさせていただきたいと思います。また、その中で制度改正の検討が必要となる事項がございましたら、当分科会の中で御審議いただくとなりますので、その際にはどうぞよろしくお願いいたします。

 私からは以上でございます。ありがとうございます。

森田分科会長 御報告ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見等ございましたら御発言をお願いいたします。

河野委員 御説明がありましたように、スマート税関構想は、6ページに青い箱で書いておられますように、越境電子商取引の拡大や、それから、日本を取り巻く環境の変化といったものを含めて、税関を取り巻く環境が大きく変化する中、例えば先端技術の活用などを踏まえ、税関業務の一層の高度化、効率化を進めていく中で、中長期的に予想される環境変化に対して、税関がどのように対応していくかという観点から、今後の方向性やビジョンを示したものと理解をしております。その意味では、今回改めて御説明いただきましたように、スマート税関構想のフォローアップを今後とも進めていただき、そして、それを具体的な実施に移していただくということが非常に重要であろうと考えております。

 ただ、6ページの黄色い「新たな環境変化」というところで書いておられますように、スマート税関構想を発表した後の1年間にあまりに大きな変化が生じたと考えております。新型コロナウイルスの感染症の長期化と、それによってポストコロナにおける社会が大きく変化していくであろうこと、これは確実に申し上げられることですし、他方で、日本を取り巻く環境の急激な変化としては、経済安全保障をめぐるサプライチェーンの動きといったものも思った以上に重要性を増しているということは御指摘のとおりであろうと考えております。

 こうした新しい環境変化があっても、このスマート税関構想というものを具体化していかなければならないと考えております。そうした様々な環境変化、そして、税関として今の課題、日本のありようにどのように応えていくのかということをさらに具体的に御検討いただく必要があると思います。せっかくの構想でございますので、これからポストコロナの社会が本当に進展していくとき、人や物の動きも盛んになると思われますし、さらには、繰り返しになりますけれども、経済安全保障をめぐる問題というのはもっと厳しくなっていくであろうと考えております。

 したがいまして、これまではこの取組を構想としていただいてきたわけですけれども、これを具体的に実施に移していただきたいと思いますので、今後具体的な実施方法をぜひ御検討いただきたいと思いますし、その中で、EPAの利用者の支援ですとか、あるいは人材の育成といったところにもぜひ御配慮をいただきたいと思います。せっかくの構想ですので、具体化していただければと思います。よろしくお願いいたします。

中澤総務課長 河野先生、どうもありがとうございます。今いただいたような環境変化も含め、しっかりと現下の課題、新しい環境変化に対してどういう対応が必要かということをしっかり検討していきたいと思っております。また、ぜひ御報告させていだき、御審議いただければと思います。ありがとうございます。

森田分科会長 オンラインで御質問がたくさん出ておりますので、順番に、片山委員、清水委員、野原委員、宮島委員の順でお願いいたします。

片山委員 連合の片山と申します。今回から参加させていただいております、どうぞよろしくお願いします。

 税関を取り巻く環境の変化を考えますと、スマート税関構想というのは着実に進めていかなければいけないのだと思っておりますが、一方で、具体化するときには、税関職員の皆さんにも、働き方ですとか、雇用の面ですとか、そういったところで影響があると思いますので、適正な人員配置や、雇用の継続性などにも配慮しながら進めていただきたいと思っております。

 以上、意見ということでよろしくお願いします。

森田分科会長 ありがとうございました。御意見を承りました。

清水委員 御説明ありがとうございました。

 このスマート税関構想ですが、デジタル技術をいろいろ駆使しながら、麻薬、金の密輸などの取締りの強化ということに役立っていくものと期待しております。先ほどの海外模倣品の水際取締りもそうだと思うのですが、このようなことを行っているということをぜひ日本語だけではなく、海外にも周知することによって、アナウンスメント効果を高めていただきたいと思っております。

 特にスマート税関構想に関しては、ここの資料では、海外との連携のようなことはあまり書かれておりませんが、海外税関との連携でいろいろな情報共有をすることによって効果を高めていくということは重要ではないかと考えております。その点について、何かございましたら御説明をお願いいたします。

 以上です。

中澤総務課長 ありがとうございます。

 海外との連携、これはまさに税関では特に情報という視点で考えますと重要だということは、清水先生御指摘のとおりでございます。このスマート税関構想は、今回、紹介の仕方としましてはかなり圧縮して紹介をしているところでございまして、スマート税関構想の中には、当然海外との情報なりを含め、連携強化も入っております。その点もしっかり取り組んでいくということで、中でもフォローアップもしておりますし、KPIを含めしっかり管理をして実現していくという取組をしているところでございます。

野原委員 野原です。

 基本的には、皆さんもおっしゃられているように、スマート税関の構想は、20年先、30年先を見据えて、中長期プランとして、その当時作ったものですけれども、その後、たった1年で想定以上に著しい変化がありました。

 こうした想定外の変化は、今後も常に起こりうるものだと思いますので、アジャイルに構想を変化させていくことが大変重要だと考えています。特に注意が必要と考える点を2点申し上げたいと思います。

 1点目は、4ページ目の先端技術の活用と人材育成についてです。

スマート税関構想の中に「Technology&Talent」ということで、「先端技術の活用と人材育成」とあります。この点については、変化に素早く対応するための対策の1つとして、有識者との意見交換の仕組みが作られていますが、それでも適切に進めるのは大変だと思います。

 AI、ビッグデータ解析、ロボティクス、メタバース等の先端技術の動向の変化は極めて早いので、常にプランの見直し、アジャイルな進め方を一層強化していただきたい。そのために、外部の専門人材の採用をより積極的に推進する、あるいは民間企業、組織等の外部との協業・連携をさらに幅広く進めていただきたいと思います。

 2点目は、ほかの方もいろいろな点で言っていらっしゃいますが、海外動向を常に積極的に把握し、海外とも適宜連携するという点です。データを連携するための海外機関との連携だけでなく、海外の先進的な施策を取り入れて進めていっていただきたいと思います。

 以上2点、よろしくお願いします。

森田分科会長 ありがとうございます。回答は、まとめて後でいただければと思います。

宮島委員 御説明もどうもありがとうございます。

 私も気になるのはSP貨物の増大というところですけれども、これは、もっと言うと、今個人と業者の境がどんどん曖昧になって溶けていっているという状況があると思います。前段の水際対策のときに申しそびれましたが、今回は商標の改正に伴う変更でいいと思うのですが、もしかしたら、この先さらに考えないと、商標や、知的財産が守れないかもしれないと思うぐらい、事業みたいなことを展開する個人が増える中で、SP貨物もさらに増えるかもしれないし、その区分けも難しくなるかもしれないという現状があると思います。

 それに対して、税関には非常に負担がかかると思いますが、手間が増えたからといって税関の人員をものすごく増やすというわけには、多分いかないと思うので、皆さんの働き方も含めて考えますと、そうした大きく一気に増えるかもしれないさらなる課題に対して、どのようにやっていくかというのは、これは本当にスピードも早いと思いますので、先を見通した上で対応をしていただければと思います。

 以上です。

末冨委員 ありがとうございます。

 1点だけ簡単に質問させていただければと思いますが、スマート税関構想に対する新たな環境変化という中に、新たなニーズの出現として、小項目「民間事業者のビジネス形態に応じた保税地域の活用」という項目を入れていただいております。この点について、もし具体的に例とか、あるいは具体的に想定していらっしゃるものがあれば、御教示いただけたら幸いでございます。

 なぜこの質問をさせていただくかといいますと、国境を超えてサプライチェーンを検討している企業は、各国の保税地域で何ができるか、どういうメリットがあるか、あるいは手続が簡単かと非常に関心が高いという現状がございますので、我が国の保税地域で何か魅力的なところがあったら、そこはもっと紹介したいと思いますし、何かそういう新しい動きがあるのだとすると教えていただければと思い、質問させていただきます。よろしくお願いいたします。

古城委員 ご説明にもありましたが、デジタル技術を使うことで省力化ができるというのはメリットだと思います。税関業務は非常に増えていまして、人手不足というのを前から指摘されていましたので、ぜひ省力化できるところは省力化し、必要な人材をきちんと研修なりで育成していただいて、今いる人材を有効に使うということをやっていただきたいと思います。

 それで質問ですが、今後、税関業務に携わる方のどういう知識あるいは能力が必要かということで、採用の基準等も変わっていくと思いますので、採用制度についてどのようにお考えなのかということをお伺いしたいと思います。

 以上です。

森田分科会長 ありがとうございました。では、中澤課長から回答をお願いいたします。

中澤総務課長 ありがとうございます。

 保税地域の活用につきましては、別途監視課長から答えることといたしまして、私から、まずお答えさせていただきたいと思います。

 まず野原委員からのご意見について、先端技術のスピードが非常に早いので、その点、我々もしっかりキャッチアップして置いていかれないように、新しい技術をどんどん活用すべく、いろいろ挑戦をして取り組んでいく必要があると思っております。また、海外の動向につきましても、第1回目の分科会で御紹介させていただきましたが、WCO(世界税関機構)でいろいろな各国の取組を含め情報交換をしておりますし、各国にも税関アタッシェという形で人を派遣しながら、しっかりと各国の動向も踏まえて、また、それを関税政策に取り組んでいくという取組をしておるところでございます。

 また、宮島委員からご意見いただきました、SP貨物の増大に対して、業者と個人の境界が曖昧になってくるという点でございます。もちろん、この点も踏まえまして、まさに新たな課題だということで、このSP貨物の加速度的な急増に対してどう対処していくのか、税関の人数が簡単に増えない中で、どうしていけばいいのかというところをしっかりと先を見て検討しているところでございます。

 最後に、古城先生からのご意見について、確かにデジタル技術は効率化に寄与するということで、我々もしっかり認識をしながら取り組んでいるところでございます。また、採用でございますが、税関で多様な人材を集めるべく、通常の採用と同時に選考採用という、税関として必要な人を見ながら採用する方法も進めております。

 以上でございます。

米山監視課長 続きまして、末冨委員から御質問いただきました保税制度につきましてお答え申し上げます。

 今日お示ししました資料の6ページに、「民間事業者のビジネス形態に応じた保税地域の活用」と書かせていただいております。従来、保税地域というのは、大半が輸入をするために一時的に貨物を置く場所とか、輸出を申告するために一時的に貨物を置くというような形で多くが活用されておりまして、そのほかにも、保税工場という形では、海外から原料を輸入して、関税等を納めることなくいろいろ加工して、また輸出するという使われ方をしていたわけでございます。

 一方、最近では、例えばアートフェアとか、絵画のオークションなどでも、海外から高額な絵画を日本に持ってきまして、保税地域そのものでオークションを開く形がございます。当然日本の方が購入なさって日本国内に持ち込むときには、消費税の納税や輸入手続を踏んでいただきまして持ち込むわけですが、例えば海外の方が購入なさって、また海外に持ち出すというときには、納税や輸入手続などはなく、保税地域を出し入れする手続などは必要になりますけれども、税の一時的な負担はございません。こうした利用方法が広がることで保税地域の活性化を図れるのではないかということで、この10月の頭にも、事業者からの申請を受け、その事業者が適切な保税地域の管理をできるということが税関において確認できたことから、羽田空港の一部を新たに保税地域として許可しまして、絵画のオークションが開催されたところでございます。そのほかにも幾つか実際にそういう利用がなされているところでございます。

 当然こういうアート関係に関しましても、今後とも同様の活用ができないかということで、関係事業者の方にもこういう制度を御説明してまいりたいと思っておりますけれども、さらに加えて、アート以外でも、先ほど末冨委員からもお話があったように、私どもで思いつかないようなビジネスの使われ方があるのではないかと思っております。基本的に保税地域に保管されている物品が消費されると税金を払っていただく必要がございますが、消費されない形で一時的に国内に持ち込んで、また国外に出すとか、一部は国内に引き取り、そのときには税金を納めていただく、そういうような形で何ができるか、何ができないかというのを明確に関係業界幅広く御説明させていただいて、何かビジネスチャンスにつなげられないかということは今後とも積極的に展開していこうと思っている次第でございます。

 以上です。

森田分科会長 ありがとうございました。御質問された委員の方はよろしいでしょうか。

 それでは、ほかに御質問、御発言はございますでしょうか。

坂元委員 関経連から出席させていただいております坂元でございます。

 企業の貿易実務に関してですけれども、スマート税関構想というのは、企業も含めたスマート化ということが必要だと思うんです。企業の貿易関連処理のペーパーレス化、スマート化について、現場の人たちの意見を少し聞いてみたので感想を申し上げたいと思います。

 企業では、輸出入の貿易関連書類、インボイスとかパッキングリスト、船荷証券など、こういったものは法的根拠に基づいて原本保管するということになっております。電子化については、ペーパーレス化を進めようとしてきているわけですけれども、そういう個別の進め方については、税関当局の御指導によって一部の電子化が始まっているわけです。電子化については、一定の条件をクリアして要件を満たさないといけないということで、その手続についての作業、手間がかかっているように聞いております。担当レベルでは、税関からの情報提供をいただいていますけれども、電子化手続や簡素化の手続についてのできるだけ丁寧な情報、分かりやすい情報をいただければもっと助かるという話がありますので、その点、またよろしくお願いいたします。

 以上です。ありがとうございました。

中澤総務課長 坂元委員、ありがとうございます。

 電子帳簿等保存制度の見直しというものが図られまして、このペーパーレス化につきましては、以前でございますと、税関長の承認の下で行われていたものが、今度必要なくなる。こういったところで環境変化が生じております。いずれにしましても、我々としましては、今日紹介しましたけれども、企業との意見交換、関係団体との意見交換という形で、皆様のニーズをしっかり把握いたしまして、それに対して必要な取組を進めていきたいと考えております。ペーパーレスにつきましてもおそらく大きなニーズがあると我々は承知をしておりますし、今般の電子帳簿等保存制度の見直しにつきまして、どのような見直しなのかとか、そういうことをしっかり周知を図りながら、一方で新たなニーズに対しても積極的に対応していきたい。そういう所存でございます。ありがとうございます。

森田分科会長 ありがとうございました。

 ほかに発言はございませんでしょうか。よろしいですか。

 それでは、以上をもちまして、本日の関税分科会を終了させていただきたいと存じます。

 なお、次回の関税分科会の開催につきましては、11月29日(月)13時開始を予定しております。詳細につきましては、また事務局と調整の上、別途御連絡をいたします。

 本日は御多用中のところ御出席いただきましてありがとうございました。これで終了といたします。

午前11時39分閉会