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関税・外国為替等審議会 関税分科会 (令和元年10月23日開催) 議事録

  1. 開会
  2. 部会に属すべき委員の指名
  3. 最近の関税政策と税関行政を巡る状況
  4. 日米貿易協定のための関税関係法の取扱いについて
  5. 閉会

出席者
関税分科会長森田 朗財務省中江関税局長
委員浦田 秀次郎山名審議官
河野 真理子小宮審議官
工藤 操泉総務課長
佐藤 英明高橋関税課長
清水 順子河西参事官
杉山 晶子荒木参事官
高山 一郎芹生業務課長
野原 佐和子福田調査課長
春田 雄一田中事務管理室長
専門委員阿部 克則加藤特殊関税調査室長
国松 麻季井田原産地規則室長
末冨 純子鈴木税関調査室長
藤岡 博酒井経済連携室長
村上 秀徳福山企画官
内閣官房大嶋TPP等政府対策本部内閣参事官
外務省大野経済局国際貿易課長
農林水産省三野大臣官房国際部国際経済課長
経済産業省浦上通商政策局米州課長
小松通商政策局通商機構部課長補佐

 

午前10時00分開会

森田分科会長 おはようございます。

 ただいまから関税・外国為替等審議会関税分科会を開催いたします。

 委員の皆様には、御多用のところ御出席賜り、誠にありがとうございます。

 初めに、大変残念な御報告がございます。

 本分科会の会長代理でいらっしゃいました相澤英孝先生におかれましては、本年5月10日に御逝去されました。相澤先生は、平成23年1月より委員に任命され、平成29年4月からは分科会長代理として当分科会の運営に御尽力されました。ここにこれまでの相澤先生の当分科会における御貢献に対しまして深い敬意を表するとともに、早過ぎる御逝去に深い哀悼の意を表し、黙祷をささげたいと思います。

 皆様、御起立をお願いいたします。

〔黙  祷〕

森田分科会長 御着席ください。ありがとうございました。

 それでは、早速ですが、議事に入ります。

 まず、事務局の構成につきましては、本年7月に人事異動がありましたところ、お手元の座席表をもって御紹介にかえたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、続きまして、中江関税局長より一言御挨拶いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

中江関税局長 関税局長の中江でございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 委員の皆様方におかれましては、本日、御多忙中のところ御出席を賜りまして誠にありがとうございます。また、日ごろから関税政策あるいは税関行政につきまして、格別の御指導、御協力を賜りましていることに対し、心より感謝を申し上げる次第でございます。

 初めに、今般の台風19号等、各地において発生した自然災害により被災されました皆様に心からお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復旧復興をお祈り申し上げます。関税局・税関としても、災害による被害に対応するため、輸出入通関手続等について柔軟に対応してまいる所存でございます。

 さて、昨日、即位礼正殿の儀がとり行われたところでございますが、新しい令和の時代におきましても、グローバル化の加速やAI等の技術革新の飛躍的な進展などが予想されているところでございます。私ども関税局・税関はこうした環境変化に的確に対応する必要があり、関税政策、税関行政を御審議いただく本分科会はますます重要な役割を担っていただくものと考えております。

 本日お集まりいただきました皆様より、ぜひとも貴重な御意見をいただきながら、さまざまな課題の解決に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

 以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、本日の議事に入らせていただきたいと存じます。

 まず、部会に所属すべき委員についての指名ですが、関税・外国為替等審議会令の規定により、分科会長より指名することとされております。部会に所属すべき委員につきましては、本年4月の分科会において指名させていただいておりますが、7月に委員に任命された田村善之先生に企画部会及び特殊関税部会への所属をお願いしたいと存じます。

 続きまして、今後の審議の参考として、「最近の関税政策と税関行政を巡る状況」について、山名審議官と小宮審議官より御説明をお願いいたします。

山名審議官 おはようございます。審議官の山名でございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 まず、資料1の説明に入ります前に、局長の冒頭の挨拶にもございましたように、今般発生した台風19号をはじめとする災害に対する税関の対応について御説明いたします。

 お手元の1枚紙をご覧ください。関税局・税関では、災害による被害に対応するため、輸出入通関手続等について柔軟な対応を実施しております。具体的には、財務大臣の告示により災害や地域を指定することで、関税に関する申請等の期限延長を認めるほか、救援物資にかかる輸入手続等を簡素化、本来の官署で輸出入申告をすることが難しい場合には、利便のよい税関官署での申告を可能とするなどの柔軟な対応を行っております。

 今般発生した台風19号については、一昨日、10月21日に告示を発出するとともに、柔軟な対応をとるよう各税関に指示、税関ホームページにおいてもこうした対応を周知しております。今後も被災の状況や地域のニーズを踏まえ、必要に応じて追加的に地域を指定した上で告示を発出していく予定でございます。

 台風関係は以上でございます。

 それでは、資料1をご覧ください。右下にページ番号が振ってありますけれども、まず3ページをお開きください。税関は3つの使命を掲げておりまして、これらを旨として仕事をしております。

 4ページでございます。主な指標の推移でございますけれども、平成の30年間で貿易額は2.4倍、輸出入申告件数は5.1倍、税関における収納額は3.6倍、訪日外国人旅行者は11倍、発効済のEPAは17本など、年々税関業務は増加しているところでございます。

 5ページ、6ページに、貿易額の推移や税関における主要業務量の推移をつけておりますけれども、これらはお時間のあるときにご覧いただければと思います。

 次に、税関行政について、税関の3つの使命のうち、初めに、安全・安心な社会の実現に関連して御説明いたします。

 8ページ、今後の主な国際イベントということで、昨日即位礼正殿の儀が終了したところですけれども、来年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、引き続き緊張感を持ってテロ対策に万全を期してまいります。

 9ページでございます。先般のG20大阪サミットにおきましては、審査・検査の強化や、密輸防止に関する覚書の締結といった官民一体となった対策の促進などに加え、海外税関当局との連携強化も図りました。こうした経験を今後の国際イベント等に活かしていきたいと考えております。

 10ページでございます。密輸防止に関する覚書ですけれども、本年、覚書の対象にテロ防止の観点を追加し内容を拡充するとともに、新たに貿易関係団体に加えて、旅館、ホテルといった宿泊業界などとも締結したところでございます。

 11ページでございます。最近の輸入貨物の動向でございます。左下のグラフのとおり、電子商取引の拡大により輸入貨物の小口化が進展しておりまして、航空貨物、特に国際エクスプレス貨物といったSP貨物の輸入が急増しております。

 SP貨物や国際郵便物は速い配達が求められるため、迅速な通関が期待されますけれども、こうした特徴が悪用され、例えば右下のグラフのとおり、不正薬物の昨年の摘発件数の約7割がSP貨物、国際郵便物から摘発されていることから、取締りの強化が必要であり、効率的な通関を図るため、事前情報の活用、先端技術の導入などに取り組んでおります。

 12ページ、不正薬物の関係ですけれども、本年前半、1月から6月における覚醒剤の摘発件数及び押収量は既に昨年1年間を上回っておりまして、極めて深刻な状況です。また、覚醒剤の押収量は史上初めて4年連続1トン超えの状況でございます。覚醒剤は水際での押収が9割以上ですので、税関の役割がますます重要となっているところでございます。

 13ページ、金密輸の関係ですけれども、消費税の8%への引き上げに伴って急増していた金密輸の摘発件数、押収量は、昨年後半から大幅に減少してきております。ただし、消費税率の10%への引き上げなどによって、今後密輸が増加する可能性もありますので、引き続き厳格に対応してまいります。

 14ページ、知的財産侵害物品の取締りの関係です。税関が知的財産権侵害の疑いがある貨物を発見した際には、当該貨物の輸入者に知財侵害物品に該当するか否かの認定手続を開始する旨の通知を行いますが、輸入者から争う旨の申し出が増加しております。商標法上の規定により、個人使用目的での輸入は侵害物品に当たらないことから、争う旨の申し出の大半の理由が個人使用との主張となっております。これらの対応のため、知的財産侵害戦略本部決定がされており、現在関係省庁と検討を進めております。

 そのほか、資料にはございませんけれども、安全・安心な社会の実現に向けて、税関では、豚コレラ対策の一環としての肉類の確認ですとか、北朝鮮向け貨物の確認などの業務を行っているところです。

 次に、貿易円滑化の推進の関連でございます。

15ページ、輸入通関手続の平均所要時間でございますけれども、海上貨物、航空貨物の双方で年々短縮傾向にあり、これは貿易円滑化にかかる種々の施策を講じてきた結果と考えております。

 16ページ、認定事業者(AEO)制度でございます。AEO制度とは、貨物のセキュリティ管理と法令遵守の体制が整備された事業者に対して、税関手続上の迅速化、簡素化措置を提供するものでございます。国際的な取り組みとして、AEO相互承認がございまして、現在11の国・地域との間で署名されております。

 17ページ、輸出入申告官署の自由化でございます。平成29年10月に自由化が実施され、今月の8日で2年が経過いたしましたけれども、これまでのところ、税関側及び事業者側双方において順調に利用されております。この自由化を利用した申告は平成30年で約621万件行われておりまして、輸出入申告全体の約1割を占めております。自由化の実施により事業者においては輸出入申告を行うことができる官署の選択肢が広がり、輸出入にかかわる事務の効率化、コスト削減につながっていると聞いております。また、災害時の利用なども行われているところでございます。今後も引き続き自由化の利用状況等を注視しつつ利便性の向上に努めてまいります。

 18ページ、EPA利用促進に向けた取組みですが、我が国では、既に17本のEPAを発効しておりますけれども、これに加えて、現在日米貿易協定についても国会に提出されており、手続が進められることになります。EPAの一層の利用促進に向けた支援が重要であるとの認識のもと、関税局・税関では、原産地規則、原産地の証明制度の理解促進を目的として、説明会の開催、情報の提供、締約国への働きかけを積極的に行っているところでございます。

 3番目に、適正かつ公平な関税等の賦課徴収の関連でございます。

19ページ、税関における収納額の推移でございます。平成30年度に税関が収納した税額は約9兆1,000億円、これは国の租税、印紙収入の約14.2%に相当します。消費税率引き上げ時において収納額はますます増加するということで、税関は引き続き徴税機関として重要な機能を果たしております。

 20ページ、軽減税率制度への対応ですが、税関でも、輸入貨物につきまして軽減税率への対応を行っておりまして、一体貨物の例のように複雑なものもございますけれども、適切に対応してまいります。

 最後となりますけれども、税関業務の高度化・効率化に向けた環境整備について御説明いたします。

21ページでございます。税関では、手荷物を開封せずに隠匿物の有無等を迅速、確実に確認することができるX線検査装置などのさまざまな取締・検査機器を配備し、税関業務の高度化・効率化に努めております。

 22ページ、また、税関業務の高度化・効率化のためには、取締・検査機器だけでなく、情報の活用も非常に重要であり、情報収集、関係機関、業界団体との連携及び情報分析の強化に取り組んでおります。

 23ページ、また、NACCS、CISといった情報処理システムを整備しておりまして、輸出入申告の約99%はNACCSにより電子的に処理されております。

 24ページ、先端技術を活用した税関業務の高度化・効率化ということで、テロや巧妙な密輸に対する厳格な水際取締りと、増加する旅客等の円滑な通関を両立するため、本年4月から、情報機能や顔認証技術等を利用したEゲート(税関検査場電子申告ゲート)を成田空港の第3ターミナル、これはLCCターミナルですけれども、そこに初めて配備するなど、積極的に高度化・効率化を進めております。今後、さらにいろいろな変化が見込まれる中で、AIなどの先端技術のさらなる活用に向けた検証を進め、税関業務の一層の高度化・効率化を推進し、世界最先端の税関を目指していきます。

 最後、25ページ、来年度の税関定員、予算の概算要求の概要でございます。現在、必要な定員あるいは予算を要求しているところでございます。

 駆け足になりましたけれども、私からの説明は以上となります。

 続けて国際関係について、小宮審議官より御説明いたします。

小宮審議官 おはようございます。審議官の小宮でございます。2年間NACCSセンターに出向しておりまして、この夏の異動でまた関税局に戻ってまいりました。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、私のほうから、国際関係について御説明いたします。資料は26ページ以降でございます。

 27ページをお開きください。日本の貿易総額に占める国・地域別割合でございます。資料にございますとおり、日本は現在18の経済連携協定を署名または発効済みでございます。これにつきまして、2018年の貿易額ベースで見ますと、貿易総額に占めるEPA及びFTAの発効済・署名済の国との貿易額、この割合につきまして、右の上にありますけれども、51.6%という規模になってございます。

 また、現在交渉中でございますRCEPが署名に至った場合、真ん中の下のほうの四角に書いてございますけれども、この比率が78.7%まで上がるということでございます。

 また、28ページをご覧いただきますと、この経済連携協定等につきましての政府の大方針が記載されてございます。今年の6月21日に閣議決定をされました成長戦略フォローアップにおきましては、質の高いEPAの締結、拡大によって、世界のルール作りの牽引者を目指すということとされてございます。また同時に、経済連携交渉の推進などに加え、中小企業も含め、より多くの事業者にEPAを有効に活用してもらうべく、情報提供を含む支援を強化し、その利用の一層の促進にも取り組むこととされてございます。

 29ページから30ページをお開き願います。日米貿易協定・日米デジタル貿易協定の概要についてでございます。昨年の日米の共同声明に沿ってこれまで交渉が行われてきておりましたけれども、先月、9月25日の日米首脳会談で最終合意を確認いたしまして、今月、10月8日に署名に至ってございます。この日米貿易協定につきましては、両国合わせまして世界のGDPの約3割を占める日米間の物品貿易に関する協定として署名をしているところでございます。

 内容につきまして、例えば農林水産品、工業品、それぞれについて主な交渉結果につきましては、この資料に概要を記載しているとおりでございます。また、一番下に日米デジタル貿易協定とございますけれども、これにつきましては、円滑で信頼性の高い自由なデジタル貿易を促進するためのルールの整備を目的として署名をしておりまして、具体的には、例えば電子的な送信に対して関税を賦課しないこと、それから、デジタル・プロダクトの無差別待遇等、TPPにおきましての電子商取引章とほぼ同様の規定が定められているほか、アルゴリズムの開示要求の禁止、暗号の開示要求の禁止など、これらの分野の状況の進展に応じまして、TPPの電子商取引章の規定をさらに強化したものとなっている部分もございます。

 この2つの協定につきましては、過日、臨時国会に提出されておりまして、早期に発効できるよう取り組んでいくこととなってございます。

 続きまして、31ページをお開きください。東アジア地域包括的経済連携、いわゆるRCEPでございます。RCEPにつきましては、昨年11月のRCEP首脳会議におきまして、2019年、本年においての交渉妥結を目指すことで合意をしておりまして、その後も、本年に入りましても、例えば直近で言いますと8月、9月、10月と3月連続で閣僚会合を開催するなど、閣僚レベルも交えて協議を加速しているところでございます。

 現在も交渉中のため、具体的な交渉内容につきましては申し上げることができませんけれども、本年に入り、市場アクセスとルールの両分野において相応の進展が見られているところでございます。今後、11月上旬に予定されておりますASEAN関連首脳会議に合わせて、RCEPの首脳会議も開催されることとなってございまして、これに先立ち、直前に開催される閣僚会合も含めて詰めの協議が行われることとなってございます。

 続きまして、32ページから33ページでございます。これは御参考でございますけれども、米中間の貿易協議の動向でございます。御案内のとおり、昨年、2018年から、米中間、さまざまなやり合いを行ってございます。もともと昨年、2018年7月、資料の32ページの左上でございますけれども、米国から追加関税措置が発動されまして、それに呼応して中国側も応酬をするという形になってございます。

 そして、めくっていただきますと、33ページ、これは今年に入ってからの動きでございますけれども、8月1日には、米国が新たに第4弾として3,000億ドル相当の中国からの輸入品に対して10%の追加関税賦課を発表してございます。9月1日と12月15日の2回に分けて発動するということを発表したわけでございますけれども、これにより中国からほぼ全てにつきまして追加関税措置の対象となっているという状況にございます。

 これらにつきまして、貿易額も含めて、わかりやすく描いてみたのが34ページでございますけれども、お時間があるときにご覧いただければと思います。

 続きまして、35ページをお開きいただきたいと思います。全世界ベースのルールを決めておりますWTOにつきまして、現在改革が進行をしてございます。主に3つの論点につきまして議論が進められているところでございます。1つ目が紛争解決の手続の強化、2つ目がWTOにおける協定履行監視機能の強化、いわゆる通報制度の強化、そして3つ目が、WTOルールの現代化でございます。

 まず、紛争解決手続の強化につきまして、ここに記載のとおりでございますけれども、上級委員会委員の選任プロセスが米国のブロックにより開始できていないため、現在7名となっている定員のうち実は4名が欠員という状況になってございます。今後、本年の12月にさらに2名が欠員予定ということでございまして、それぞれの審議する案件に必要な3人の上級委員を確保できなくなるという事実上機能停止に陥ることが見込まれるような状況でございます。このような中、昨年12月にはEU、中国、インド等が、本年4月には日本、豪州等がそれぞれ紛争解決制度にかかる共同提案を提出してございまして、それらをもとに現在議論が行われているところでございます。

 また、2つ目のWTOにおける協定履行監視機能の強化につきましては、WTO加盟国による通報義務の遵守が重要であるところでございますけれども、この通報義務を十分に果たしていない国が若干存在することから、確実な通報義務の履行確保を強化しようとするものでございます。

 3つ目のWTOの現代化でございますけれども、これは、例えば日米EU、で産業補助金ルール強化に向けて議論を行っているほか、電子商取引等の今日的な課題に対応するため、我が国が豪州やシンガポールとともに共同議長となりまして、新たなルール構築を目指して議論しているものでございます。

 WTO関連でいきますと、この36ページにデジタル経済の国際的なルール作りに係るいわゆる大阪トラックについての資料もつけさせていただいてございます。電子商取引に関するルール作りにつきましては、本年の1月、ダボス会議の際に開催されました有志国閣僚会合におきまして、76カ国・地域の閣僚によりWTOにおける電子商取引のルール交渉開始に向けた意思というものが確認をされました。

 本年6月のG20の大阪サミットの機会に開催されましたデジタル経済に関する首脳特別イベントにおきましても、デジタル経済に関する大阪宣言が発出されまして、デジタル経済に関する国際的なルール作りを進めていくプロセスとして大阪トラックが立ち上げられているところでございます。来年6月の第12回WTO閣僚会議までの交渉におきまして、実質的な進捗を達成することを目指してございます。

 37ページは、先ほども若干言及いたしました電子的送信に対する関税不賦課のモラトリアムの議論についての状況でございます。もともとは1998年の第2回WTO閣僚会議におきまして宣言されました電子的送信に対する関税不賦課モラトリアム、いわゆる関税をかけないということでございます。もう20年近く前でございますけれども、その後電子商取引もかなり拡大をしてきております。このモラトリアムにつきましては、その後も閣僚会議の決定によって順次延長をされてきているところでございましたけれども、この措置につきまして、昨年来やや議論が活発化しております。

 これは、一部の新興市場国が、例えば3Dプリンティングが発展してきますと、電子的に設計図を送信して、国内で物をつくってしまうことができる。そうすると、実質的には輸入と同じようなことが起こっているにもかかわらず、関税がかけられないということを論点として議論が主張されてございます。これについては、実はさまざまな技術的なところも含め議論がございますので、現在WTOで議論をされているところでございます。

 続きまして、若干これも御参考でございますけれども、英国のEU離脱につきまして御説明いたします。資料のほうは38ページからでございます。

 これは、まさに今進行中の話題でございますけれども、英国のEU離脱につきましては、最近、少し動きが活発化してございます。まず、10月17日にEUの理事会におきまして、新たな離脱協定案を承認してございます。

 他方、10月19日に英国の議会のほうで離脱協定案の採決が見送られまして、過日、9月に成立をしておりました離脱延期法に従って、ジョンソン首相がEUに対しまして10月末の離脱期限の延期を渋々申請せざるを得ない形になりまして、これは申請がなされております。

 英国議会では、まさに昨日でございますけれども、22日にEUの離脱に必要な関連法がございまして、これの審議を開始しました。法案の一般原則は可決をしたのですけれども、全てについては審議に時間がかかるという形になっておりまして、政府側も早期議会通過を目指した日程案は否決をしたという状況になってございます。

 この結果、この資料で言いますと、今EU側では英国から申請をされました期限の延長について、それを認めるか認めないかという議論が始まってございますけれども、まだその帰趨はわからない状況でございます。他方、英国のほうは、要は関連法の審議がどれだけ時間がかかるのかということがございまして、10月31日までが離脱の期限になっておりますけれども、もし英国議会で協定案が承認されず、かつEUが延長を拒否するようなことになった場合、いわゆるノーディール、合意なき離脱という状況が発生し得る状況に、今日時点ではあるということでございます。今後も注意深く見ていきたいと思ってございます。

 それから、39ページでございますけれども、日本における英国産品に対するブレグジットがあった場合の関税上の対応でございます。まず、ノーディールではなくて、移行期間がある場合の関税上の対応でございますけれども、この場合は、離脱から移行期間の終了まで、現時点では2020年12月31日が移行期間の終了日となってございます。これまでの間は日EU・EPA税率を引き続き適用するという形になります。

 他方、ノーディール、すなわち移行期間がなく離脱をしてしまうという場合は、離脱直後から一般税率、MFN税率が適用されることになります。

 参考にも書いてございますとおり、日英の首脳間では、8月26日の首脳会談におきまして、ジョンソン首相より、円滑な離脱になるよう努めるという旨の発言がございまして、離脱後、新たな経済的パートナーシップの構築に迅速に取り組むことが両首脳間で確認をされてございます。

 続きまして、40ページ以降、関税技術協力絡みのものについて御説明いたします。まず、関税技術協力の実施形態には幾つかの種類がございまして、いわゆる途上国の税関職員を日本に呼びまして、短期間の受け入れ研修や長期間の留学制度を支援するというものがございます。他方、こちら側から、例えばJICAの長期専門家もしくはやや短期の専門家派遣ということで職員を派遣して、技術支援をするというスキームもございます。

 さらには、NACCS型の通関システムを途上国に導入することに対する支援にも取り組んでございます。

 41ページは、この実績でございます。ご覧のとおりでございます。相応の規模の受け入れ、さらには派遣を行っておりますけれども、右側を見ていただきますとおり、地理的にも結びつきが強い東南アジア絡みのASEAN各国への派遣ですとか、もしくは受け入れ研修が多いというところが特徴となってございます。

 42ページから43ページにつきましては、NACCSの海外展開でございますけれども、43ページをご覧いただければと思います。御案内のとおり、これまでベトナムとミャンマーに対しまして、NACCS型通関システムの導入と、それによる税関の近代化を支援してきてございます。いずれのシステムも現在も順調に稼働中でございます。

 続きまして、最後、44ページ、45ページは若干WCOにつきましても御報告をさせていただきたいと思います。御案内のとおり、マルチの国際協力の場として、税関関連の唯一の国際機関であるWCOというものがベルギーのブリュッセルにございます。ブリュッセルに本部がございまして、あと世界各地に地域組織がございまして、関税制度の調和、統一、さらには税関行政の国際協力の推進に取り組んでいるところでございます。

 そして、写真もついてございますけれども、この事務総局長、事務方トップでございます。これには日本人でございます御厨邦雄氏が現在3期目になりますけれども、事務総局長を務めてございます。また、資料にもございますとおり、日本からも特に税関を中心にブリュッセルの事務局に相応の人数の日本人職員を出している状況でございます。

 そして、最後のページでございますけれども、このWCOの主な活動について記載させていただいております。税関関連の各種条約、そして、ガイドラインの作成や改正、さらには密輸対策やテロ対策の推進、各国に対する技術協力の推進等を現在行っているところでございます。

 私からの説明は以上でございます。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、続きまして、「日米貿易協定のための関税関係法の取扱いについて」につきまして説明をお願いしたいと思います。

 御質問、御意見等は説明後にまとめていただきたいと思います。

高橋関税課長 関税課長の高橋でございます。昨年に引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

 私からは、資料2に基づきまして、日米貿易協定のための関税関係法の取扱いについて御説明をいたします。

 1ページをご覧ください。日米貿易協定は、先ほどの説明にもございましたように、本年10月8日に署名が行われまして、現在開会中の臨時国会におきまして協定の審議が行われる予定でございます。

 中段に、関税関係法に関連する日米貿易協定の主な規定をまとめておりますけれども、牛肉、豚肉等特定品目にかかるセーフガード、麦芽等特定品目にかかる関税割当、そして、原産地手続に関する規定が協定に定められております。

 この点につきましては、資料の下段の「日米貿易協定への対応について」に記載をしておりますように、セーフガード、関税割当、原産地手続のいずれに関しましても、関税暫定措置法等の現行の法律に一般化した規定が設けられておりまして、日米貿易協定に盛り込まれた内容につきましては、この現行の法律に基づいて実施することが可能ということになりますので、関税関係法の改正は不要ということでございます。

 私からの説明は以上でございます。

森田分科会長 ありがとうございました。

 それでは、御質問、御意見をいただきたいと思いますけれども、これまでの説明にかかわらず、関税・税関行政一般につきまして、幅広く御質問、御意見をいただければと思います。どなたからでも、どうぞ。

浦田委員 丁寧な御説明ありがとうございました。3点御質問したいと思います。

 まず第1点は、EPAの利用についてですけれども、いただいた資料の18ページに、日本の輸入側の利用についての情報を提供していただいています。輸出について利用がどのぐらいあるのかということを日本の企業は非常に関心を持っているわけですが、その情報についていただければ有難いです。私もこの分野を研究しているのですが、EPAを利用して輸出したと思っていても、相手側がEPAの原産地規則に合わないということで拒否したりすることもあるわけです。このような状況を考慮するならば、日本の輸出におけるEPA利用に関する情報については、日本が輸出した相手から情報をとるという方法が考えられると思いますが、そのような取決めといか、相手の国との間でこういった情報を交換するような形になっているのかということを教えていただければ有難いと思います。

 2点目ですが、日米貿易協定についてです。先ほど29ページで御説明いただきました。これは御説明にはなかったですけれども、関税撤廃率ですが、新聞報道などによりますと、アメリカ側は92%、日本側が84%、これは貿易額で見た数字ですけれども、それについて、タリフラインの数字を教えていただければ有難いというのが1つです。

 それから、先ほどの貿易額を使った関税撤廃率に関しての質問ですけれども、アメリカ側が92%ということですが、私の理解ですと、自動車の関税2.5%というのは撤廃しない、継続という話だったと思います。日本からアメリカに輸出する財の貿易の約3分の1が自動車関連と言われているわけですので、これらの数字が両方正しいということはあり得ないわけですが、どのようにして92%という数字が出てきているのかということを教えていただきたい。

 もう一つ、日本側ですけれども、84%です。交渉相手が、ライトハイザー氏、それからトランプ氏と、非常に難しい。そういう中で、こんな言い方をするとおかしいのかもしれないけれども、よく交渉されてきたと思います。ただ、ちょっと違った観点から見ると、WTOのGATT24条の解釈ですけれども、必ずしも決まった数字ではないとは思いますが、FTAでの関税撤廃率は約9割というのが一応基準となっていると一般的に考えられています。そうしますと、この基準を満たさないわけです。それも日本側は84、アメリカが92だとすれば、日本側が低いわけです。この状況について、もしWTOのほかの加盟国から何か説明を求められた場合に、求められることはないのかもしれませんけれども、どのように対応されるのかというのが2点目です。

 3点目、WTOですけれども、このままいくと、12月末で上級委員会が機能しなくなるということです。そうなった場合、紛争はどのようにして解決に向かうのか、あるいは対応するのかということについて、なってみないとわからないかもしれませんが、この点についてお考えを御説明いただければ有難いと思います。

 以上です。よろしくお願いいたします。

酒井経済連携室長 浦田先生、ありがとうございます。経済連携室長の酒井でございます。

 私のほうからは、EPAの利用率、利用状況ということで御質問を最初にいただきましたので、そこについてお答えをさせていただきます。

 先生の御質問は、協定の中でそういった利用状況、貿易統計といったものを交換するような規定というのはあるのだろうかという御質問だったと思いますけれども、一般的に申し上げまして、御案内のとおり、今までのEPAの中では、そういった貿易統計あるいは利用状況の交換というものを規定したものは、唯一日EUの協定については貿易統計の交換についての規定がございます。逆に言いますと、それ以前の協定につきましては、そういった規定は盛り込まれておりません。

 日EUの規定は、年に1回、年間の貿易統計をお互いに交換しましょうということは物品章の中に規定がございまして、第2章になります。日EUは2月に発効したばかりですので、一番早い第1回目の交換というのは恐らく来年の春、2月以降ということになると思いますけれども、別途物品に関する特別の専門委員会というのを年に1回開催することになっておりまして、今後の進め方としては、そういったところでどういったものを交換するのか、どういったタイミングで交換するのかを日EU間で相談していくということになっております。

森田分科会長 一問一答ではありませんけれども、浦田委員、よろしゅうございますか。

浦田委員 他のEPAについても、そういう方向で議論していくということでよろしいですか。

酒井経済連携室長 他のEPAの利用率、特に輸出面ということでございましたので、難しい部分は先生も御案内のとおりで、輸出の時点で、日本側でということですけれども、輸出する業者さんなり商社さんなりが、それが輸出した先、相手国のほうで特恵税率を実際使うのかどうかという情報をそもそも持っていない可能性がありまして、そうすると、先生がおっしゃっていただいたように、相手国から情報をもらうということが現実的かなと思いますが、他の協定について、何ができるかというのは、今後の検討課題ということで考えさせていただければと思います。よろしくお願い致します。

河西参事官(国際交渉担当) 国際交渉を担当しております河西と申します。よろしくお願いいたします。

 日米貿易協定についての御質問を頂戴いたしました。日米貿易協定における関税撤廃率につきましては、本協定で新たに譲許される品目にWTO協定の枠組みの下で無税としているものを含めれば、貿易額ベースで日米それぞれ約84%と約92%というふうになっております。タリフラインにつきましては、交渉全体をTPP本部が取りまとめておりますので、TPP本部のほうから後で補足をしていただければと思いますけれども、全体のWTO協定への整合性につきましては、GATT24条の「実質上全ての貿易」の解釈につきまして、具体的な基準は確立されていないというふうに承知をしております。そこも含めて、TPP本部のほうから御説明を頂戴できればと思っております。

大嶋TPP等政府対策本部内閣参事官(内閣官房) 内閣官房、TPP等政府対策本部の大嶋でございます。

 この交渉につきましては、茂木大臣のもと、内閣官房のほうで全体の交渉を取りまとめておりました関係上、私のほうから御説明させていただきます。

 まず、浦田委員の御質問の中の品目別、タリフラインベースでどのぐらいの関税撤廃率になるのかという点に関しましては、日本が約45%、アメリカが約42%と、品目別ではそのような撤廃率ということになっております。

 それから、御指摘の貿易額ベースで9割以上の関税撤廃がないと、GATT24条の要件を満たしていないのではないかという御指摘につきましては、確かにおおむね9割の関税撤廃を一つの目安とするということは、我が国としてもそのような考えではございますが、先ほどもおっしゃいましたとおり、GATT24条の上で何が実質上全ての貿易に当たるかということについての具体的な基準が確立されているということではないと理解しておりまして、したがいまして、貿易額につきましては、委員御指摘のとおり、日米でそれぞれ約84%と約92%ということでございますけれども、私どもとしては、この協定はWTO協定に整合的であると考えてございます。

 他国から、それはおかしいのではないかという指摘を受けた場合にどのように説明するのかということにつきましては、まだ我々としてこの協定を今国会で御審議いただいている最中ということもあって、必ずしも各国に説明等を行ったということでもございませんけれども、先般、TPP11の第2回TPP委員会がニュージーランドで行われました折に、そこでの参加者については概要を御説明したということはございます。各国からは、まとまってよかったですねという反応で、突っ込んだやりとり等は現時点ではございませんでした。どのような指摘があるかというのは、現時点で予断できませんので、それは都度、関係省庁とも相談しながら検討するということになろうかと思います。

河西参事官(国際交渉担当) 1点補足をさせていただきます。

 上級委について、浦田先生から質問を頂戴いたしました。上級委につきましては、まさに12月に事実上の機能停止に陥る危険性があるということで、今、まさに上級委員の選出プロセスを再開するためには、現在選出をブロックしているアメリカを含む全加盟国のコンセンサスが必要でございます。ですので、それを打開するためには、上級委の機能とか役割に関するさまざまな問題に対処する必要があるということで、現在、一般理の非公式プロセスにおきまして、各国から提出された提案をもとに、精力的に各国が有している懸念や、その解決策等についての議論がまさに現在進行中でございます。日本としても、本年4月に豪州、チリと共同で上級委をめぐるその問題について議論すべき論点を示した改革案というのを提出いたしましたけれども、WTOの紛争解決制度の主要な利用国として、上級委問題の早急な解決というものを重視しておりますので、引き続き議論に積極的に関与していきたいと思っております。

浦田委員 細かな点ですみません。先ほどアメリカの関税撤廃率92%を輸入額で見ているという話、私もそれで質問したわけです。繰り返しになりますけれども、アメリカの日本からの輸入の3分の1が自動車だとすれば、そこに関税が残っているわけで、どう考えてみても、92%に届かないと思います。この92%という数字はどうやって出てきたのか。今でなくて結構ですけれども、後でも教えていただければありがたいです。

大嶋TPP等政府対策本部内閣参事官(内閣官房) 御指摘の自動車の関税撤廃につきましては、協定に附属するアメリカの譲許表が記載されている附属書がございますけれども、そこにさらなる交渉による関税撤廃ということを明記してございますので、これは、私どもとしては、関税撤廃が前提となっているというふうに考えておりまして、したがいまして、関税撤廃率の中には加えておるわけではございますが、そのことに関して問題はないものというふうに考えております。

浦上通商政策局米州課長(経済産業省) 若干補足をよろしいでしょうか。経済産業省でございます。浦田先生御指摘の特に自動車のところでございますので、経済産業省のほうからお答えさせていただきます。

 我々もWTO上の論点というものが存在するということは深く認識をした上でこの交渉に取り組んでおりまして、浦田先生御指摘のような難しい、厳しい交渉の中で、何とかこれをうまくこなすということを念頭に置きながら、ずっと交渉を続けてまいりました。

 29ページの資料の中に簡単に触れておりますけれども、右下のところです。「自動車・自動車部品:「関税の撤廃に関して更に交渉」と協定に明記」というところ、国会などでも、繰り返し御説明を茂木大臣からしてございます。英文がなくて恐縮でございますけれども、「Customs duties on automobile and auto parts will be subject to further negotiations with respect to the elimination of customs duties」というのが大嶋参事官の御説明した協定の中に書かれている文言でございます。

 「elimination」ということがきちんと書かれているというところが一つの肝だと我々は思っておりまして、確かに「further negotiations」というところを捉えて、多くの報道、先送りであるとか、追加協議であるとかいうことになっておりますけれども、我々はこれから協議をしていく対象というのは、いつこの「elimination」をするのかというところ、あるいは原産地規則なども決まっておりませんので、その点について交渉するということでおりまして、「elimination of customs duties」というのは大前提であると、こういう理解をしておりまして、その理解に立つ限りにおいて、この自由化率の中にこれを含めるということは問題がないという理解でおります。

 いろいろな議論があるということは、国会審議を見ていただければおわかりのとおりだと思いますけれども、我々の立場としては、そういう理解、説明をしているところでございます。

佐藤委員 意見が1点と質問が2点です。

 意見は、13ページの金密輸取締りに対する取り組みでありまして、この件は、摘発件数、摘発量も重要ですが、それ以上に、右側のグラフに示されている、金の輸出入量の推移で、輸出量と輸入量とのギャップが重要な指標であると考えております。と申しますのは、ほとんど金を産出しない日本で輸出量が輸入量を大きく上回るということは、全部ではありませんが、このギャップのかなりの部分が密輸されているということだからです。その観点から申し上げまして、現状は大きく改善をしていると思いますが、引き続きこのギャップについて注視したいと思います。これは意見です。

 御質問ですが、第1点は、14ページの知財侵害物品取締りの取り組みの右下のグラフで、「争う旨の申し出」の推移を見ますと、平成30年にはこれが5,700件以上に達しているということであります。他方、関税等不服審査会に不服として出てきます案件は、他の案件を含めて年間多くて五、六件というところでありまして、この争う旨の申し出が急増している中、その後どう処理されているのかということをお伺いいたします。申出をほぼ認容しているのか、あるいは認容しないものについても不服はないのかということを含めて、どういう処理になっているかということを教えていただければと思います。

 質問の2点目は、18ページでありまして、先ほど浦田先生も輸出の件について御質問になっていましたが、これについては、輸出のための利用を促進することが極めて重要であり、28ページの成長戦略フォローアップでも、中小企業も含めてと書いてあります。とりわけこういう能力の高くないと思われる中小企業に対して、どのような利用促進の具体的な取り組みをなさっているのか教えていただければと思います。

 以上、質問は2点です。

福田調査課長 佐藤委員、どうもありがとうございます。

 金の密輸の関係でございますけれども、摘発数量と件数ともに大幅に減少している中、御指摘のとおり、輸出と輸入にかなりの差があるということで、これは全体が密輸入であるとは必ずしも言い切れないと思いますけれども、引き続き検査の強化でありますとか、厳正な処分の実施、あるいは国内流通の透明性の強化ということを通じて、一層厳格に対応していきたいと考えております。

芹生業務課長 関税局業務課長の芹生でございます。

 知財の認定に関する争う旨の申し出でございますが、これはほとんど個人使用の主張、抗弁がなされておりまして、個人使用の主張がなされますと、現行の商標法ないし関税法のもとでは、業として知財侵害を行う者のみを取り締まりの対象としている関係上、それは争う旨の申し出を認容せざるを得ない場合もある、そういった状況でございます。したがいまして、不服審査の過程にはいかないということになってございます。

佐藤委員 ということは、不服審査に出て来る案件は、税関で、これは違うというものを選んで拒否をして、そのうちの幾ばくかが不服審査に出ている、そういう状況であって、この数千件のうち、ほとんどは現場で認容されているという理解でよろしいわけですね。

芹生業務課長 御理解としては、先生がおっしゃられるとおりであります。個人使用につきましては、不服審査のプロセスに乗るというような事例はほとんどございませんで、現場で抗弁がなされて、それが法律侵害に当たらないということであれば、税関としては、水際の取り締まりという観点では通関を認めざるを得ない、そういった状況でございます。

井田原産地規則室長 7月に原産地規則室長を拝命いたしました井田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 委員から、EPAの利用促進、特に輸出に関して、中小企業等にどのような支援をするのかという御質問をいただきました。まず、EPAの利用がどのぐらい行われているか、についてでございます。先ほど御質問を別にいただいたもので、輸入に関しては輸入申告のときにわかりますが、輸出に関してはそういうものがございませんので、相手国との関係でしかわからないということが前提になってございます。

 そういった中で、輸出促進をどういうふうにするか。まず、1つよくお聞きする意見としては、ルールが複雑でよくわからない。原産地規則がEPAによって異なっている。これは交渉の結果でございますので、そこは仕方ないのですけれども、複雑でわかりづらいというようなことがございます。これに関しては、まず情報提供をしなければいけないということで、我々が持っているツールであるホームページや、税関の窓口等で情報発信をするということが1つと思っております。

 それから、実際に貿易に携わっている方がどのような御意見をお持ちであるか、また、どのようなニーズがあるかということを調査することも必要だと思っておりますので、これはアンケート等々ということを使って情報収集をしたいと思っているところでございます。

 輸出に関しましては、輸出先の国で特恵税率を適用するということになれば、当然輸出先の税関での審査がございます。税関の審査というのは、輸入申告のときのみならず、輸入許可後の確認という形で審査が行われることもあります。これはどこの国でもやっていることでございます。それに備えまして、EPAを使って輸出をする場合には、必要な書類をちゃんと保存しておく義務がある。また、事後的に外国政府から間接的、直接的に確認をされた場合に、どのような対応をすべきか等輸出者に覚えておいていただくことがたくさんございますので、それに関しましても、我々のほうで個別に御相談に当たったりとか、また広く周知をしたりということを進めてまいりたいと思っているところでございます。

 以上でございます。

浦上通商政策局米州課長(経済産業省) 1点補足をよろしいでしょうか。中小企業のEPA利用促進という点に関しまして、本日、JETROの佐々木専門委員が御欠席であられますけれども、大企業で法務部とか専門の部局があるところではない中小企業が複雑なEPAの規則を理解して実際に使うというのは大変難しい課題だという感じがしております。JETROのほうでも、さまざまな機会を通じて、EPAの利用支援セミナーといった形で中小企業の方々も招いて説明会を行ったり、あるいはわかりやすいマニュアルの整備といったことをやっているところでございます。政府全体としては、新輸出大国コンソーシアムというふうに銘打ちまして、さまざまな関係機関が協力をして、そうした利用促進を進めていきたいと考えております。

末冨委員 ありがとうございます。3つほどお尋ねしたいんですけれども、そのうち2つは既に御指摘があったところですので、それに対する追加の質問ということになるかと思います。

 まず1点目が、原産地証明の利用促進をしていらっしゃるということなのですけれども、最近、WTOでも、加盟国の間でEPAを中小企業にも使いやすいようにするようにしようというイニシアチブが開始されたという報道がなされております。恐らく日本はそれにおいて強いリーダーシップをとっていらっしゃることと拝察するのですけれども、また、今まで財務省・税関を中心に説明会等々をしていらっしゃるのですけれども、それとはまた別に、何か新たな政策といいますか、方法というのを打ち出そうとしていらっしゃるものがもしあれば、御教示いただきたいということでございます。

 今やっていらっしゃるものを粛々とそのまま推進していかれるということでありましたら、それをまた教えていただきたいと思います。

 2点目は、先ほど御指摘があった知財侵害物品の取締りで、ほとんどが個人使用の抗弁だということで処理の状況を御説明いただいたのですけれども、企業が知財侵害物品の申し出を受けて、それで個人使用という抗弁を使えない場合に、例えば特許侵害のことでしたら、それに対して真正面から反対意見を出すようなこともあります。その場合は、そうしますと、特許侵害等々とかですと結構難しい部分があったりするのですけれども、そのような場合には、粛々と最後まで手続が行われるのかということを確認させていただければと思います。

 3つ目は、昨今、輸出規制関連がどこの国でも厳格化の方向にあったりすることもございますし、我が国でも、いわゆる非ホワイト国への規制等々で、改正等々のニュースがあったところでございます。特に非ホワイト国に対しての輸出許可を得るための期間が長くなっているようなことを聞き及んだりしているわけですが、最近の貿易統計で輸出が減少していることが報道されるに当たって、主には米中の貿易摩擦の影響によって輸出が下がっているのではないかということが報道されてございます。そういう輸出規制の強化による影響を認識していらっしゃるかどうか。御認識があるか、それは、ないということでしたらないということで御教示いただければと存じます。

 以上でございます。

井田原産地規則室長 今御質問いただきました輸出促進、中小企業に対する支援ということでございます。先ほどお答えした部分と一部重なる部分もございますが、現状を申し上げますと、情報提供が一番大事なところだと思っております。先ほど経産省のほうからも御説明がありました説明会等ということも広く行っております。

 昨年末にTPP11、今年の2月に日EUという大型のEPAが続けて発効いたしました。これを利用されたいという方が非常に多かったのだと思いますけれども、税関への問い合わせを見ていても、去年末から今年の初めにかけて、やはり原産地に関する問い合わせの件数が非常に多くございまして、その後、だんだん落ち着いてきているという状況が見てとれてございます。

 つまり、EPA発効の前後に、特に情報に関して高いニーズがあると我々は捉えて対応しているところでございます。TPP11、それから、日EU等々に関して、発効の前後に日本全国で説明会を54回開催、約4,500人の方に参加いただきました。その場でもちろん御質問もいただけますし、事後的にも御質問いただける。特に中小企業の方が御自身でされている個別の取引に関しての御質問を税関職員にじかにしていただく機会を設けてございます。

 先ほど御説明がありました日米貿易協定、こちらも今国会で御審議いただいております。これも発効ということになれば、もちろん個別の説明会を行いたいと思ってございますし、今大型のRCEP等の交渉も動いておりますので、状況を見ながら、また皆様のニーズに応えられるような情報提供をしていきたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

芹生業務課長 2点目の知財に関する御質問についてお答えいたします。

 この争う旨の申し出がございますのは、これはほとんどが商標権について個人使用を争われていることであります。先生がおっしゃいますように、特許権について、権利者ないし利害関係人から異議申し立てがあれば、それは最終的には、不服審査のプロセスへと移行していくわけですけれども、現実に現場で起こっているものというのは商標権及び一部意匠権として個人使用の抗弁がなされている。そういったものについては不服審査に持ち込まれるというところまではいかないということでございます。

高橋関税課長 続きまして、韓国向け輸出管理の運用の見直しの関係で、貿易統計上どういった影響がある、あるいはないということを考えているかということでございますけれども、まず事実関係、貿易統計上の扱いから申し上げますと、韓国向け輸出管理の運用の見直しの対象となった3品目につきまして、それは貿易統計でその品目に直接対応した品目というのを集計しておりませんので、貿易統計上その対象3品目の輸出実績についてはどうだということをお答えするというのはできないということになります。その上で申し上げますと、一般的に輸出入動向あるいはその先行きにつきましては、さまざまな要因の影響がございますので、特定の要因による影響を貿易統計上、これこれ、こういった特定の要因でこういう影響があるといったものを申し上げることはなかなか困難であるということを御理解いただければと思っております。

森田分科会長 予定された時間に達しておりますけれども、ほかに御質問等ございますか。

清水委員 清水です。詳しい説明をありがとうございました。

 今までたくさん出ておりますが、EPAとWTOに関して、2つ質問と意見を言わせていただければと思います。

 まず、特に2010年以降たくさんのEPAが発効されて、カバー率も高くなっているというのは非常に喜ばしいことだと思います。ただ、一方で、例えばRCEPが結ばれますと、31ページの図などをご覧いただくとわかるように、アジアの国ですと、2国間があって、ASEANがあって、TPPがあって、なおかつRCEPが入るというような複雑な状況になり、どのEPAを使うとより原産地手続きが楽なのか、あるいは一番適用税率が低いのかといった問題が出てきます。先ほどのお話でも、個別の業者さんが自分の輸入品目に対してどれが一番いいのかという御質問が多いというお話もございました。

 今後のことを考えますと、例えばAIとかの技術を使って、自分の品目を入れると、どれが使えて、何が一番便利で、この場合の原産地証明書は何、みたいなのができて、税関職員のそういう応対の時間も少なくなり、より利用促進できるようなことというのもお考えになるといいのではないかと思います。

 また、原産地証明に関してなのですが、日豪から自己申告ができるようになったかと思います。今までも結ばれているEPAの中でも、これからEPAをもっとふやすのではなくて、既に締結されたEPAの中で、原産地規則を自己申告ができる国を多くするといった取り組みが行われているのかどうか。そういうことはすごく必要ではないかと思っておりますが、そのことについて御質問させていただければと思います。

 それから、WTOに関して、上級委員が1人になってしまうという状況ですが、過去には日本人が上級委員であったこともございます。日本は特に国際機関に職員の割合というのがいつも少ないと言われておりますが、WTOに関して、上級委員のみならず、職員の方も含めて、日本人がたくさんそこの中にインボルブされているということが重要ではないかと考えておりますが、そのことについて何か御意見がございましたら教えていただければ幸いです。

酒井経済連携室長 EPAが増えていって、どのEPAを使ったらいいのかというのがお話の中に含まれておりましたので、そこの部分について補足をさせていただきます。

 先ほど井田原産地規則室長のほうからも、今後も丁寧な説明等という話がありました。今、税関のホームページは、原産地規則ポータルでありますとか、税関のホームページ、EPAのページもまた別途ございまして、基本的には輸入を中心に情報発信しておりますけれども、相手国側の税率がまさに欲しい情報だということになると思いますので、そこについてはJETROさんのほうで、ワールドタリフというものが無償提供されていますけれども、経済連携室のほうでも、できるだけ調べられる限り、相手国のここに行けば、少なくともここのサイトを見れば税率が分かるというものを探しているところでございまして、そういったものを我々のホームページに、各国の、EPA相手国の税率一覧みたいな形で出せたらということで今作業を進めているところでございます。

河西参事官(国際交渉担当) WTOの邦人職員について御質問を頂戴しました。WTOも含めて、国際機関における邦人職員の数、着実な増員というのは、日本政府全体としても大きな課題でございます。関係省庁からも適宜必要に応じて補足いただけると思いますけれども、WTOについても、例えばJPO(Junior Professional Officer)ですとか、政府全体が取り組んでいるところでございます。まさに先生が御指摘の問題意識に沿って、引き続き関係省庁間でどういったことができるのかということを検討していきたいと思っております。

大野経済局国際貿易課長(外務省) 補足させていただきます。外務省で国際貿易課長をしております大野と申します。

 邦人職員の増強の取り組みでございますが、まず、WTOには邦人職員が5名現在おりまして、一番トップのランクの方が押川さんというWTOの加盟部長をされております。これは、WTO全体の職員数からいくと、約400名の中で非常に低い数字なわけでございまして、政府としては、引き続きジュネーブであったり東京であったり、キャリアセミナー等、WTOを含む国際機関への関心のある若者に対してより働きかけていくとともに、実際に応募する人がいる場合には、適宜支援をしていくということをやっております。昨年も、実際この押川加盟部長に来ていただきまして、ある国立大学でキャリアセミナーを開催しております。

 また、上級委員につきましては、御案内のとおり、日本人といたしましては、大島正太郎委員がやめられてから以降、日本人は上級委員を出していないわけですが、こちらのほうも、まず上級委員になる前に一審のパネリストにまず選ばれて実績を積むということが、その7名の上級委員に選ばれる前に必要ということでございますので、政府としても、日本の学界、法曹界と連携して、まずはパネリストであったり、ジュネーブでまずは顔を売ってもらうということを行って、ひいてはそれが日本人が上級委員として再び活動することができるようにしっかりと頑張っていきたいと思います。

井田原産地規則室長 自己申告の件で御質問いただいておりますので、お答え申し上げたいと思います。

 原産地の証明制度は、発給当局が出す第三者証明書のほかに、輸出者自己申告、輸入者自己申告というものがございます。これは御指摘のとおりでございまして、我々としても、輸出入者の利便を考えますと、選択肢は多いにこしたことはないという考えでおり、国際交渉に当たっては、全て日本としてとれるようなという姿勢でいつも交渉しているところでございます。

 他方で、輸出者、輸入者自己申告という自己の責任に基づいて証明書を作成するという制度は、社会や輸出入者の成熟度といったものも絡んでくるところでございます。国の状況によっては、それができにくいというような話も聞いたこともございますので、それぞれの交渉で一番高くとれるところをとってきているというのが現状でございます。既存のEPAには見直し委員会というものがございまして、定期的に当局同士が会って話をする機会がございますので、状況を見ながら、我々としてもより多くの選択肢をとれるようにという姿勢で臨んでいきたいと思ってございます。

森田分科会長 ありがとうございました。それでは、よろしいでしょうか。

 御質問もないようですので、それでは、最後に事務局より連絡事項がございますので、高橋関税課長より御説明をお願いいたします。

高橋関税課長 本分科会における議事録の取り扱いにつきましては、当審議会議事規則第5条の規定により、原則公開とされております。本日御発言いただきました委員の方には、議事録案がまとまりました段階で御発言部分を事務局から送付させていただきます。送付後1週間程度の間に御意見などがない場合には、恐縮ですが、御了解いただいたものとさせていただきたいと存じます。

 議事録の取り扱いにつきましては、今後ともこの扱いで進めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 また、この後、分科会の終了後、引き続き当会場におきまして特殊関税部会を開催いたしますので、特殊関税部会の委員の皆様方におかれましては、そのままお待ちいただきますようお願い申し上げます。

森田分科会長 ありがとうございます。

 以上をもちまして本日の関税分科会を終了いたしたいと存じます。

 次回の関税分科会の開催につきましては11月上旬を予定しております。詳細につきましては、事務局と調整の上、別途御連絡を差し上げたいと思います。

 それでは、本日は御多用のところ御出席賜りましてありがとうございました。

午前11時19分閉会