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関税・外国為替等審議会
第55回外国為替等分科会議事録

令和5年6月19日(月)

財務省 国際局

於 財務省第3特別会議室
(本庁舎4階)

1.開会

2.最近の国際金融情勢について

3.閉会

出席者
委員

五十嵐チカ

財務省

三村国際局長

伊藤恵子

土谷国際局次長

植田健一

内野国際局審議官

片山銘人

矢作国際局審議官

亀坂安紀子

緒方副財務官

河野真理子

今村副財務官

神作裕之

藤井国際局総務課長

木村

野村調査課長

田村善之

木原国際機構課長

根本直子

陣田地域協力課長

和田照子

飯塚開発政策課長

渡井理佳子

德岡参事官

臨時委員

大野早苗

池田国際調整室長

佐藤清隆

佐三川郁子

澤田康幸

清水順子

専門委員

伊藤亜聖

伊藤由希子

玉木林太郎


午前10時00分開会

○神作分科会長おはようございます。ただいまより第55回外国為替等分科会を開催いたします。

委員の皆様方におかれましては、御多用中のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。

本日、オンラインでの参加を含め20名の委員に御参加いただいております。

進行上の具体的な留意点などにつきまして事務局より御説明をお願いいたします。

○野村調査課長おはようございます。調査課長の野村でございます。

私から、本日、会議室での御参加とオンライン参加のハイブリッド形式になっていることとの関係での留意点などについて一言御説明申し上げます。まず、会議室で御参加の委員の皆様方におかれましては、オンラインで御参加の委員の皆様に音声が明瞭に伝わりますよう、できるだけマイクに近づいて御発言いただきますようお願いいたします。また、オンラインで御参加の委員の皆様におかれましては、事前にお伝えしておりますとおり、御発言時以外はミュートにしていただきますようお願い申し上げます。また、途中で万が一Webexがつながらない等々の事故がございましたら電話会議システムのほうで引き続き御参加いただければと思っておるところでございます。

以上、委員の皆様には大変御不便をおかけいたしますが、何とぞよろしくお願い申し上げます。

私からは以上でございます。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

それでは、早速、本日の議事に入りたいと存じます。本日の議題は最近の国際金融情勢についてでございます。まず、事務局より御説明を頂いた後、意見交換の時間をお取りしたいと存じます。それでは、木原国際機構課長、御説明をどうぞよろしくお願いいたします。

○木原国際機構課長御紹介ありがとうございます。国際機構課長の木原と申します。

お手元の資料ですと資料2「最近の国際金融情勢について」、あとスライドのほうはお手元の画面でも表示されると思います。

まず、1.世界経済見通しになりますけれども、スライド番号で言うと2番になります。こちら、4月に公表されたIMFのWorld Economic Outlookでございますので、既に2か月ぐらい時間はたっているもので、7月にまたアップデートが出るということだと思います。4月時点のものでございますけれども、1つ目の丸ですが、世界経済は高い不確実性があるということで、強調されているのは、1つは金融政策の引締めの影響、あと財政余力(Fiscal Space)はいろいろな国で限られている。歴史的に高い債務水準ということで、こちらはどちらかというと新興国ですとか低所得国が念頭にあるのかなと思います。あとはコモディティ価格が引き続き高止まりしていたり、あるいは地政学的な分断が続いていくということです。特に4月時点でございましたので、3月中にシリコンバレーバンクの問題ですとか、あるいはクレディ・スイスの問題があった中で、特に金融安定への懸念というものがこの時点ではハイライトされていたということで、特にインフレ抑制と金融安定の維持の難しいトレードオフに直面する可能性があることが指摘されておりました。

ベースラインのほうは、特に金融セクターの混乱が抑制されて世界的な経済活動の低迷にならないことを想定。こちらのほうがベースラインの中では想定されているということで、現時点においてはおおむねそういう状況にあるのかなと思いますけれども、世界経済は、1月時点のアップデートと比べてそこまで見通しに大きな変化はなく、2023年ですと+2.8%、2024年ですと+3.0%が成長率の見込みになります。特に2023年のインフレ率を引き続きグローバルに見ても7.0%で、こちらは足元でも、特にヨーロッパだと思いますけれども、引き続きインフレ率は高止まりしているということかと思います。

この時点はやはり金融の問題が非常に念頭にありましたので、IMFで代替シナリオということで、ベースラインではなくて、代替シナリオで金融政策の脆弱性に伴うショックがさらに大きくなった場合の分析がなされております。

下から2つ目の丸ですけれども、中期的な成長見通しで、WEOですと少なくとも5年ぐらいはいつも見通しを示しますけれども、2028年で3.0%と、やはり新興国の成長の余地といいますか、ある程度経済が成熟度合いを増してきて、あるいは労働成長率が低下していく中で、分断という問題も背景に、成長率をグローバルに見ると中期的には以前のように高い水準には戻らないというのがパスとしては示されているということかと思います。

あと、下方リスクが支配的ということで、金融セクターの混乱ですとか、あるいはそれが影響を大きくしていく中でグローバルな金融環境のタイト化がより大きくなる可能性が指摘されたということであります。

おめくりいただきまして、政策対応の部分におきましては3ページになりますけれども、短期の政策対応ということで、引き続きやはりインフレ対応がトップに来ております。インフレを低下させること、それに併せてインフレ期待のアンカーをきっちり確保していくことが最優先だと。2番目で金融安定の確保。これはリスクを集中的かつ頻繁に監視するとか、あるいは流動性の支援をきちんと迅速にかつ強力にやっていくことが大事だ。あと、銀行監督の強化みたいなところもきちんと考えていかなければいけないということが指摘されております。為替変動への対処については、基本的に新興国はファンダメンタルズに沿った為替の調整を許容すべきだけれども、著しい変動が金融安定のリスクを高めたり、あるいは中央銀行の物価安定を損なう場合には為替介入が適切となり得ると書いてあります。財政政策の正常化ということで、特にインフレが高いままですので、緊縮的な財政政策が金融政策とのバランスでも大事になってくる。ただ、他方でインフレは高い状況が続いていますので、特に低・中所得国、脆弱層への的を絞った支援策が大事になるということです。

中期的には債務の持続可能性の確保で、先進国ですと中期的なサステナビリティの確保になりますし、低・中所得国ですと迅速な債務再編を必要に応じてやっていくことがハイライトされております。あとはサプライサイドの改革で、労働市場の問題とか市場支配力を減らすための構造改革が大事だということになります。

長期の問題として、国際協調として多国間協調を通じた地政学的分断の悪影響への対処でしたり、あるいはカーボンプライシング等を通じたきちんとしたグリーンへの移行が大事だというのがハイライトされているところでございます。

4ページは実際の見通しの数字で、4月時点の数字は黄色になっております。御紹介しておくところがあるとすると、特にドイツ、イギリスは、2023年、真ん中ですけれども、マイナス成長が見込まれていまして、こちらのあたりはドイツ、イギリス自身の見通しと比べるとIMFのほうがやや厳しめの見通しをしていたのがあるかなと思っているところでございます。

おめくりいただきまして、次のセッションに移らせていただきますけれども、G7関連で、2023年、7年に1度のG7議長国としてこれまで幾つか大臣会合を開催させてきていただいておりました。5月13日に新潟で3日間かけて開催しましたG7財務大臣・中央銀行総裁会議声明を出しておりますので、ここから数枚、新潟会合のポイントを御説明させていただきます。

冒頭の部分でございますけれども、引き続きG7におきましてウクライナの問題、ロシアへの対応が重要な課題という中で、マルチェンコ財務大臣にバーチャル形式で御参加いただきました。そうした中で、ロシアの侵略戦争に対する一致した対応、あるいはウクライナに対してきちんと支援をしていく、こういうコミットメントを改めて再確認したということです。こちらは、ロシアの侵攻以来、基本的にG7をやるたびに今までマルチェンコ大臣に対面あるいはバーチャルで参加してきていただいたということで、その流れをそのまま引き継いだということでございます。

冒頭の2つ目が今回少し新しい取組でございまして、一部のセッション、12日の半日ぐらいですけれども、G7に入っていない、それ以外の国々――今回ですと6か国をお呼びしてパートナー国との対話を実施しております。お呼びしたのはブラジル、コモロ、インド、インドネシア、韓国、シンガポールでございます。特に途上国との関係でどういうことをやっていく必要があるのかというところをハイライトしながらこれら6か国と議論したということでございます。

声明のポイントですが、大きく3つの柱がございまして、1つ目の柱が喫緊の世界経済、世界の課題への対処で、1つ目の内容がこのロシア対応、ウクライナ対応になります。まず、ウクライナ支援につきましては、2023年、2024年初頭に向けたG7としての財政・経済支援のコミットメントをパッケージとして440億米ドルに増加させたことが成果の1つとなります。2つ目としまして、欧州開発銀行(EBRD)と、日本で言うとJBICになりますけれども、各国の開発金融機関が協調融資などを通じてウクライナに対して支援していく。これをより円滑に進めるためのウクライナ投資プラットフォームの設立に合意したことがございます。あとは制裁の関係ですけれども、実施調整メカニズム(ECM)を通じて制裁をいろいろ実施している中で、迂回あるいは回避の類型、どういうパターンが多いのかということについての情報共有をきちんとやっていくことを取組として強調しているところでございます。

その次の柱が世界経済と経済政策で、こちらはマクロの部分になりますけれども、安定性と成長を志向するマクロ経済政策の組合せにコミット。財政政策については、先ほどのWEOでも出てきましたけれども、適切な場合には脆弱なグループに対して一時的かつ的を絞った支援を提供していく。またはグリーン、デジタルのトランスフォーメーションを促すための投資が大事だ。全体的な財政政策のスタンスとしては、特に中期的な持続可能性を確保していく必要があるということでございます。中銀については、インフレ予想の安定維持、あるいは各国間の負の波及効果の抑制に資するような明確な意思疎通を行っていく。供給サイドの改革ということで、例えば女性及び少数派グループの極めて重要な役割を強調という観点でありましたり、あるいはG20、OECDのほうで進めているコーポレート・ガバナンス原則の見直しに対する期待が表明されているところでございます。

最後のポツが金融セクターの関係でございます。きちんとどういう動向にあるかを引き続き監視することと、大きく3つのメッセージがございますけれども、1つは、金融安定及びグローバルな金融システムの強靱性を維持するために適切な行動をとる用意がある。2つ目としては、リーマン・ショック以降いろいろな金融規制改革が進められてきておりますので、そういう中で今の金融システムが強靱であることを再確認する。3つ目としまして、3月以降いろいろな出来事がある中で、特に金融安定理事会(FSB)でどういう教訓が得られるか、あるいは今後の優先課題として考えられることは何かを考える。そういう取組が既に始まっておりますので、そういうものをきちんと支持するというメッセージをG7として出したところでございます。

おめくりいただきまして7ページですけれども、1つ目の柱の中で、今回、脆弱国に対する支援、新興国、途上国に対する支援を明示的に位置づけておりまして、1つ目の問題が低・中所得国の債務の脆弱性の問題でございます。こちらは低所得国を念頭にG20の中で共通枠組みを立ち上げておりまして、この共通枠組みの中で今ザンビアですとかガーナですとかこういった国々の債務再編の議論をしております。こういうものをきちんとより迅速に進めていく。そういう意味で実施を改善するためのG20の取組を支持というのが1つ目のメッセージになります。あと、共通枠組みの対象とならない中所得国としてスリランカの債務問題がございました。こちらについては、昨年来、日本が中心となりながら、パリクラブの議長国であるフランス、あとはスリランカにとって重要なパートナーであって債権国であるインド、その2つの国々とよく連携しながら債務再編の議論を進めてきましたけれども、この3か国で共同議長になりましてスリランカの債権国会合を立ち上げております。こういったものが共通枠組みの対象にならない中所得国の債務問題に対処するための将来の成功モデルとなるのではないかと示しております。

2つ目は債務の関連で、正確性・透明性の向上です。これは、日頃から途上国がどういう債務をどの国に対してどんな条件で抱えているのかをきちんと把握していく取組でございますけれども、今回、日本が主導しまして債務データの突合をやっております。世銀のほうで基本的には借り入れている債務国側からデータを得て、一部推計などをしながら、どの国がどのぐらいの債務を持っているかを把握している、データベースを持っているわけですけれども、それと併せて、今回はG7とパリクラブの一部の有志の債権国側が、自分たちはこういう債権を有しているというものを世界銀行グループのほうにデータとして提供しまして、それを主には債務国側から得たデータとして、データを集めている世銀のデータと比べてみる。それを比べて突合、reconciliationと言っておりますけれども、その取組の結果、まだデータ整理の初期段階でございますが、やはり65億米ドルぐらいデータギャップがある。債権国からもらったデータのほうが多いことがございますので、こういった形できちんと債務のデータを日頃から把握していく取組はやはり大事だと。これは引き続き日本としてもプッシュしていきたいと思っているところでございます。

3つ目はMDBsの関係でございます。特に貧困削減の問題を従来からMDBsの最も重要な課題として取り組んでおりますけれども、それと併せて、国境を越えた課題、今ですと気候変動ですとかパンデミックがよく出てきます。こういうものにもよく対処すべきということで、そういう中でMDBsがどういうふうにビジネスモデルを見直していくべきかという議論が去年秋ぐらいから続いております。そういう中で、あわせて既存の資本の最も効率的な活用策ということで、いろんな形でもう少しリスクを取りながらMDBsとしても融資額を増やすような取組を促していくことを続けております。

あとは、特別引出権(SDR)ですけれども、数年前に配分があった。それを踏まえて20%ぐらい、各国いろいろな形で途上国の支援に回そうという取組をしておりました。G7、G20の枠組みでプレッジ総額1,000億米ドルを目指して、それを世界的な野心として取り組もうと進んできたわけです。これは4月の春会合の時点で日本が20%から40%までプレッジを引き上げたり、フランスも20%から30%までプレッジを引き上げる中で、1,000億米ドルまでこの5月時点で届いておりませんけれども、もう完全に射程には入っている中でその進展を歓迎しているということでございます。

あとは、10月にG7アフリカラウンドテーブルを日本が主催してやろうと思っておりまして、こういう中で民間投資の動員などを議論したいと思っているところでございます。

3つある柱のうちの2つ目の柱がより構造的な世界経済の強靱性の強化で、気候変動については、OECDで新しく立ち上げた包摂的フォーラム(IFCMA)でいろいろな政策手段の有効性の理解を深める取組を支持したり、あるいはインドネシアなどを対象にJETP(公正なエネルギー移行パートナーシップ)で、いろいろなグリーン・トランジションへのコミットメントを得ながら資金支援をしていく。こういうものをきちんとやっていく。また、トランジション・ファイナンスを日本としてきちんと引き続き促していくことでありましたり、災害リスクファイナンスもきちんとやっていくことがハイライトされております。

もう1つの柱が経済の効率性と強靱性の両立で、世界経済の強靱性を高めることは引き続き大事だ。そういう中で、自由で公正かつルールに基づく多国間システムも堅持していかなければいけないということで、効率性と強靱性。いろいろなリスクに対応する、ショックに対応するため強靱性も高めながら、しかし、効率性もきちんと両立させていく、こういう取組が大事なのだというメッセージを出しております。そういう中で1つ取組として今回ハイライトされているのは、後ほどより詳細に説明が池田室長からありますけれども、世銀と協働しながら本年末までを目指してRISEという取組を立ち上げたいと今回の新潟で示しております。これは具体的に何をやるかというと、低・中所得国がサプライチェーンにおいてより大きな役割を果たせるように支援ということで、この強靱性を高める中で、どうしても1か国にサプライチェーンが大きく依存するようなところを避けて、より多様化していくことが大事になってくるわけですけれども、その多様化の過程できちんと低・中所得国がいわば恩恵を得られるような取組をG7としても進めていく必要があるのではないかということをハイライトしております。

同じような観点で、最後のポツになりますけれども、新興国、開発途上国のインフラ需要を満たしていく上でFDIも非常に重要な役割を果たしていくわけですけれども、そういう重要インフラに対して海外の投資があった場合、時には経済的な主権にリスクをもたらすおそれがある中で、FDIのベネフィットをきちんと新興国、途上国が受けながら、ただし、こういったリスクにも対応できるようにOECDの投資枠組みの強化。こういった新興国、途上国側がFDIを受け入れるときの枠組みの強化を支援していくこともG7としてサポートしていこうと示しております。

おめくりいただきまして8ページが金融の関係になりますけれども、1つ目は特にデジタル化の関係でCBDCに着目した取組でございます。非常に多くの新興国、途上国がCBDCに関心がある中で、やはりグローバルに一定のスタンダードを確保された制度が各国に入っていかないと、金融の安定ですとか、あるいは資金フローの問題ですとか、通貨主権が損なわれるとかいろいろなリスクがありますので、そういったグローバルに見たいろいろなスタンダードの底上げを図っていくことで、こちらは日本が主導しながら、IMFでCBDCハンドブック――IMFによるTAが使える参考書のようなものを作ろうという取組をしております。そのハンドブックは全体で15チャプターぐらいに当たる大きなものになるので、作業としてはこれから3年ぐらいかかると言われていますけれども、秋会合にそのうちの初めの数チャプターを出してもらうことで作業をしておりますけれども、こういうものをきちんと進めていくのが1点目です。

2点目としては、金融規制監督の部分で、暗号資産とかステーブルコインに対してどういう形で規制をしていくか。これはFSBのほうでハイレベル勧告を出すことになっておりますので、これをきちっと実施していく。あるいは、それをG7の中だけではなくてグローバルに推進していくことを強調しているところになります。

最後はマネロンの関係、FATFの取組になりますけれども、こちらも暗号資産に関してグローバルな実施を加速することで、DeFiの問題とかP2Pも含めた新たなリスクに関する作業をきちんとやっていってほしいということを示しております。

その次は金融の持続可能性と健全性で、1つは、国際サステナビリティ基準委員会で、企業の開示の関係で、気候の問題に現在取り組んでおるのですけれども、それが終わった後、次のラウンドとして生物多様性ですとか、あるいは人的資本に関する開示もきちんと取り組んでほしいということに対する期待を表明しております。また、今回、今までG7で書かれていなかったこととして北朝鮮の関係になりますけれども、大量破壊兵器の拡散ですとか、あるいはICBMの発射を可能にしたような資金調達に関連する北朝鮮の不正な活動に対する深刻な懸念をG7で共有しているところでございます。

保健につきましては、1つ目のポツで、これは日本がG20の議長国以来熱心に取り組んできた部分になります。まず、財務・保健のさらなる連携強化で、今回も13日の朝、一番初めのセッションで、ちょうど同じタイミングで長崎で保健大臣会合をG7でやっておりましたので、そことバーチャルでつないで財務・保健の合同会合をやっております。その議論を踏まえて特に今回の主な成果としましては、パンデミック対応において、PPRの中でも特にRの分、対応の部分でございますけれども、実際にパンデミックが起きてしまったときに必要な資金を迅速かつ効率的に供給できるサージ・ファイナンスを今後検討していく必要があるということで枠組みの検討に合意をしております。その内容を含んだG7の保健大臣との共通理解、G7の共通理解を全体のコミュニケと併せて公表しているところでございます。

国際課税につきましては、2年前に合意された2つの柱を引き続きグローバルに実施していくための政治的なコミットメントを強調したところでございます。

最後、3つ目の柱は、少し中長期的な観点も含めた議論になりますけれども、ウェルフェアを追求する経済政策ということで、経済社会構造が特にデジタル化ですとか気候変動問題がより深刻化する中で変わっていく中で、GDPだけでは捉えられないようないろいろな要素がウェルフェアの関係で出てきているということで、ランチセミナーにスティグリッツ教授をお招きしながら、ウェルフェアについてどんな側面、どんな要素を考えなければいけないのかということを議論したり、あるいはそれを実際に政策に反映させていく上でどんな運用ツールがあるのかというところの議論をしております。こちらについては、引き続き、ベスト・プラクティスを各国間で共有しながらどんな議論が経済政策の中でもできるのかということをG7の中で取り組んでいきたいと考えているところでございます。

9ページ以降は、ちょうど新潟の1週間ぐらい後に広島でG7サミットがございましたけれども、幾つかスライドを財務トラック関係で入れさせていただいております。財務大臣のプロセスとかなり中身がかぶりますので、説明はややスキップさせていただきますが、ウクライナ、ロシア関連については、御案内のとおり、ゼレンスキー大統領が訪日したということで、特に制裁の部分は2つ目の黒ポツになりますけれども、ビジネスサービス分野での措置拡大等の制裁強化が新しく示されております。

2.の世界経済、金融セクター、国際課税、債務問題については、財務トラックの成果を反映ということで、新潟の合意のエッセンスがこちらに書かれていることになります。

おめくりいただきまして10ページ目でございますけれども、3.クリーンエネルギー経済で、先ほど新潟でもハイライトさせていただいたRISEをきちんとやっていくことが書かれている。

あとは、4.で経済的強靱性・経済安全保障という観点、こちらは日本が議長国下で、我々もRISEですとかCBCですとかFDIの関係で少しこういう側面の議論を新潟でもしましたけれども、首脳のほうでも経済安全保障の強化が議論されたということです。参考で書かれている経済的威圧については、政治外交目的を達成するために経済政策を使うようなケースが見られることをどう考えるかという議論ですけれども、こちらは調整プラットフォームをG7で立ち上げて連携を強化することが合意されております。

それ以外は保健ですとかサステナビリティ、5.の部分も財務トラック関係の成果が広島に盛り込まれています。参考の部分で対中姿勢ということで、サミットのほうですと中国にどう関与していくのか。特に国際的なルールの重視が重要だということが成果文書の中でもハイライトされているところでございます。

私のほうからは以上になります。

続きまして、RISEの詳細について池田調整室長から御説明をお願いします。

○池田国際調整室長国際調整室長の池田と申します。よろしくお願いいたします。

G7財務トラックにおけるサプライチェーン強靱化に係る新しいイニシアティブRISEについて、11ページ、12ページを御覧いただきながら説明させていただきます。

本年G7日本議長下において、サプライチェーンの強靱化、特にクリーンエネルギー関係の製品について焦点を当てながら議論を重ねてまいりました。その1つの大きなステップとして、4月のワシントンでのG7財務大臣会議のコミュニケの附属文書で、脱炭素時代における強靭なサプライチェーン構築に向けた財政・公的金融手段に係るハイレベル政策ガイダンスを公表いたしました。こちらの中身につきましては、恐縮ですが、次のページにございますので、12ページをおめくりいただければと思います。

問題意識といたしましては、先ほど木原課長からありましたとおり、経済の効率性、そして強靱性、この両立をしていくことは極めて重要であるという問題意識に立ちながら、特に今後需要の激増がグローバルに見込まれるクリーンエネルギーに不可欠な製品、具体的には太陽光パネルですとか蓄電池あるいは風力発電システムのサプライチェーンの多様化を実現することがエネルギー安保、マクロ経済の安定にグローバルに寄与するだけでなくて、地球温暖化対策にも資する。こういった問題意識の下で、特に財政・公的金融手段を活用して多様化あるいは強靱なサプライチェーンを構築していくに当たって留意すべきハイレベルのガイダンスを以下の5点にまとめた次第です。

公正で生産的、かつビジネスにやさしい環境の提供。ルールに基づく開かれた世界経済システムを堅持しつつ、透明かつ効率的で、予測可能な形で財政・公的金融手段を使っていく。

それから、サプライチェーンを強靱化あるいは多角化していくに当たって、環境あるいは気候変動対策の視点を忘れてはならない。太陽光パネルを作っている過程で大量の電力が必要なわけですけれども、これを石炭火力で賄うような現状は変えていかなければいけない。あるいは、蓄電池に必要な様々な重要鉱物を加工・精錬していく過程で大量の有毒な物質が出るわけですけれども、こういったものについてはしっかりと管理していかなければならない。

3つ目は、技術ある労働力、質の高い働きがいのある雇用、あるいは良好なガバナンスをしっかりと構築しながらサプライチェーンをつくっていかなければいけない。

4つ目については、既存のサプライチェーンを根本から変え得る新しい技術に対するR&Dも奨励する形で財政・公的金融手段を使っていこう。

そして、5つ目ですけれども、低・中所得国への支援で、先進国の知見、資金及びパートナーシップをうまく組み合わせて低・中所得国と互恵的な協力関係をつくっていこうではないか。こういった問題意識も打ち出されました。

恐縮ですが、1枚戻っていただきまして11ページですけれども、今申し上げたワシントンで打ち出したガイダンスを具体的な行動に移すために、G7が同志国や世銀などと連携して、低・中所得国がクリーンエネルギー関連製品の中流及び下流においても大きな役割を果たせるよう、RISEを本年末までに遅くとも立ち上げるのだということを新潟で合意いたしまして、広島サミットでも同じような文言が盛り込まれたということでございます。こちらについては、キーワードとして互恵的というものがございますけれども、この意味は、1つは、中・低所得国、特に鉱物資源等を有する中・低所得国が、これまで自国で取れた重要鉱物を単に輸出するだけでは付加価値の高い製造業あるいは産業が国内で育たないだろう。これをしっかりと育てていく。自国産業の多様化、高付加価値化を実現していけば彼らの持続可能な発展にも資するであろうということが1つ。同時に、こうして中・低所得国がこれから需要の激増が見込まれるクリーンエネルギー関連製品の作製の担い手になっていけば、これはネットゼロに向けた世界的な取組の下支えにもなるであろうと。重要な製品がたった1か国に、あるいは極めて限られた国に依存しているような状況は、どの国にとっても望ましい状況ではないだろう。これを変えていくことが重要であるという視点でございます。

具体的に何をするのかということに関しましては、一番右下の箱にあります3つのことを想定しております。1つは、対象になる低・中所得国にとっての機会及び課題について分析をしていく取組。2つ目は、サプライチェーンの担い手は民間ですけれども、内外の民間投資が進むよう投資環境を改善するための、特にESGに関連する技術支援あるいは能力構築プログラム。規制改革ですとか、そういったことをやっていく。この1つ目、2つ目に関しては、基本的に世界銀行に設けるマルチの信託基金を通じて、先進国が知恵とファイナンシャルリソースを出し合って、そして世銀を通じて実施していく。3つ目ですけれども、現場レベルで協調融資を促進していくための情報共有の強化。これは先進国の例えばJICA、JBICに相当するような機関とIFCあるいは世銀グループの保証を提供するMIGAが連携して、どういったところに投資の機会がありそうかということを議論していく。こういった3本柱でもって先ほど申し上げたような成果を持続的に実現していくことで、RISEというものを本年末までに立ち上げるべく、現在、関係国及び機関と精力的に議論を重ねているところでございます。

私からは以上です。

○飯塚開発政策課長開発政策課長の飯塚ですけれども、13ページ、スリランカ債権国会合と次のページについて説明させていただきます。

スリランカですけれども、昨年4月に対外債務の支払い停止をして以来、財務省がパリクラブ議長であるフランスと非パリクラブの債権者と水面下で調整を行いまして、債権国による協調した債務再編の実現に向けて取り組んでまいりました。その結果としまして3月20日にIMF理事会でスリランカ向け支援プログラムが承認されたのですけれども、その際に関係者のhidden dealに対する拒否感というのがものすごくありました。要はhidden dealをしないように、逆にhidden dealを持ちかけられた場合に抵抗できるようにということで、①から③にありますように、透明性、公平性、適切性を保つ旨のオープンコミットメントがウィクラマシンハ大統領から表明されまして、それを受けてIMFの理事会が開かれたということでございます。

その下ですけれども、スリランカによるこういったコミットメントを踏まえまして、本年4月ワシントンで行われたIMF・世銀の春の会議のマージンにおきまして、日本は、日印の両大臣、あとフランスとともに、写真にありますように、スリランカの大統領の参加も得まして債権国会合の発足を発表しました。

その下ですけれども、5月9日には日印仏の3共同議長の下で第1回会合を開催しまして、共同声明も発出したところであります。

その意義ですけれども、その下のポツにありますように、スリランカ等の中所得国については、低所得国と異なりましてG20の共通枠組みといった既存の枠組みが存在しませんので、今回スリランカのために新興債権国を含む広範な債権国間の協調体制が立ち上がったことは歴史的快挙と考えておりまして、成功事例となって将来のモデルケースになることを期待して作業を進めているところでございます。

次のページですけれども、G7の財務・保健合同セッションであります。背景の部分は、これまで何回も説明してきておりますけれども、日本は国民皆保険といったアドバンテージがありまして、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの重要性を指摘、財務・保健の連携強化を提唱してきております。先ほど木原課長からありましたように、2019年G20におきましては両大臣の合同会合を開催したということであります。今回もG7議長に当たりまして財務・保健大臣合同会合を開催しまして、オンラインで新潟、長崎を接続して開催したということであります。前回ドイツが始めたのですけれども、やや平板だということもありましたので、今回はきちんと共通理解という形で合意文書を取りまとめたということでございます。

2点ございまして、1点目は、財務・保健のさらなる連携強化であります。コロナウイルスのパンデミックによって露顕されたグローバル・ヘルス・アーキテクチャの短所を補うべく、ファイナンスを含むPPRについてギャップを分析して補強していくというサイクルを回す上でG20の財・保タスクフォースの強化などを要求したものであります。

2点目はサージ・ファイナンスでありまして、上にありますけれども、PPRファイナンスのうちPreventionとPreparednessに当たる部分につきましては、昨年パンデミック基金の設立で1つのマイルストーンが達成されましたので、Response(対応)部分のファイナンスについてきちんと対応していこうということであります。特に必要な資金を迅速かつ効率的に供給する新たなサージ・ファイナンスの枠組みを検討していくことに合意しました。そのためには、今の仕組みのどこにギャップがあるのかということを特定すべく、WHOと世銀が共同して包括的かつ一貫したマッピングを行っていただいて、夏のG20財務・保健大臣会合に向けてG7としても引き続き貢献していくことを確認しております。気候変動ですと、セクター全般にわたる気候ファイナンスをUNFCCCでやって精査して、どこにギャップがあるのかというのをこの10年、20年とやっていますけれども、いまだに新しい発見があるということでありまして、保健セクターに関してセクターワイドのファイナンスについて世銀とWHOできちんと議論していくのは画期的なことだと考えておりますし、短期的に言うと、サージ・ファイナンスのメカニズムについてG7議長としてどういった貢献ができるのかというのがこの年度後半の課題となります。

私からは以上となります。

○野村調査課長続きまして、ロシア・ウクライナ関係でございますけれども、1枚おめくりいただきまして16ページでございます。こちらのスライドにおきましては、昨年のロシアのウクライナ侵攻以来、我が国、そしてG7をはじめとして措置を取ってまいりました様々な制裁、特に金融制裁の分野についてまとめさせていただいているところでございます。この1年、本当にいろいろな手段を活用してきたところでございます。こちらにも示させていただいておりますけれども、個人、団体に対する資産凍結に限らず、金融機関に対する資産凍結、あるいは中央銀行に対する資産凍結もやっております。また、ロシア向けの新規対外直接投資の禁止、あるいは信託・会計のサービスの提供禁止、さらにはロシア産の原油や石油製品に対するプライス・キャップの導入と、いろいろな制裁メニューを活用してきたわけでございます。

そうした中、我々が最近の特に優先課題として認識している問題点でございますけれども、次のスライドでございます。いろいろな制裁をやってきているわけでございますけれども、そうした制裁の実効性をきちんと確保していく上で何が大事かということについて申し上げると、やっぱり制裁の回避、迂回、その動きに対してちゃんと封じ込めの対策をきちんとやっていく必要があるという認識を持っているところでございます。そういう中におきましてG7といたしましては、冒頭、木原課長からも話がございましたけれども、実施調整メカニズム、要するに制裁の実施状況についてG7間できっちりと調整していくメカニズムを立ち上げたところでございます。これは具体的に何をやるかといいますと、要するに、迂回、回避の手口について、どんな手口でやっているのかをきっちりと分析して、そういう情報についてG7の中で共有して、それについて我々はどういうふうな対応を取っていくのかということをきっちり相談していこう。そういうことを試みとしてG7として開始した。これが最近の大きな問題意識の1つでございます。

次のスライドでございますけれども、もう1点でございますが、ロシアの国家資産の扱いについてと書かせていただいているところでございます。こちらの問題意識については、最初の2月のG7の首脳声明にも明確に書かれているところでございますけれども、G7をはじめとして国際社会が今ウクライナ支援を力強くやっているところでございます。ただ、もともとウクライナに対してもたらした損害について全責任を負うべきなのはロシアであるということの認識が、当然でございますけれども、G7首脳レベルでは確認されているところでございます。そうした認識を前提といたしまして、G7といたしましては、現在凍結しております中央銀行も含めたロシアの国家資産につきまして、ロシアがウクライナに対して自分がもたらした損害について支払いをするまでの間、我々はその凍結を継続していこうということをG7として確認しているところでございます。

私からは以上でございます。

続きまして、ウクライナ支援の話を德岡参事官からお願いいたします。

○德岡参事官参事官、德岡でございます。私のほうからは19ページの日本のウクライナ支援のアップデートについて御説明いたします。

日本のウクライナ支援につきましては、大きく財政支援、それから民間活動支援に大別されますが、財政支援につきましては、3月9日の本分科会でも御説明いたしましたけれども、世界銀行を通じた5億ドルのグラント、それから世界銀行への信用補完を通じた財政支援融資で50億ドル、合わせて55億ドルとなっております。50億ドルのほうにつきましては、日本が世界銀行に国債を拠出する形で信用補完を行い、50億ドルの世銀からの財政支援融資を可能とするものでございます。囲みの中でございますけれども、今申し上げました55億ドルを含め、先ほど木原課長から御説明申し上げましたとおり、G7等により440億ドルにコミット済みでございます。また、3月にはIMFによる財政支援融資も決定しております。

次に、民間活動支援でございますけれども、世界銀行グループのMIGAに対して日本から2,300万ドルを拠出済みでございます。これによりウクライナ向け投融資の政治リスクへの保険の提供を支援しております。また、JBICにつきましても、IFC、EBRDといった国際機関からのウクライナ民間セクター向け融資の保証を4月7日に成立した改正JBIC法により可能といたしました。JBICの関連では、先ほどこちらも木原課長から御紹介申し上げましたけれども、プラットフォームの設立に合意しておりまして、関係機関で協調融資等を促進していくこととしております。

資料をおめくりいただきまして20ページでございますけれども、ウクライナの周辺国向けの日本の支援でございます。財政支援につきましてはモルドバへの財政支援、円借款1億ドル。それから、世界銀行のモルドバ向け財政支援融資の金利負担軽減1,700万ドルを実施してございます。それから、JBICを活用した周辺国支援につきましては、JBICと民間資金合わせて10億ドル規模の資金動員を行うこととしております。囲みの中、具体例でございますけれども、ポーランド開発銀行が日本で発行する円建て債券(サムライ債)に対する保証の付与ですとか、中東欧地域のスタートアップ企業に投資を行うファンドへの出資、JBICの出資を行うこととしております。今申し上げたサムライ債、それから中東欧ファンドの出資、いずれも5月に契約を行ったものでございまして、比較的新しい動きでございます。

私からは以上でございます。

○陣田地域協力課長最後に、アジア地域金融協力につきまして、地域協力課長の陣田より説明いたします。

資料の22ページを御覧ください。ASEAN+3(日中韓)財務大臣・中央銀行総裁会議でございます。メンバーはASEAN10か国と日中韓で、共同議長はASEANと日中韓からそれぞれ1か国が持ち回りと。今年はインドネシアと日本が共同議長で、5月に行われました大臣・中銀総裁会議では、鈴木大臣、植田総裁が出席されております。今回の大臣・中銀総裁会議ですけれども、パンデミック前の2019年以来4年ぶりの対面会合ということで、事務方につきましてはこの会合を本年前半の山場として成果を出すべく取組を進めたところでございます。

経緯でございますけれども、1997年のアジア通貨危機を契機としまして、アジアの自助・金融セーフティネットを構築することで行っております。3本柱が従来からございまして、1つ目が危機時の流動性供給メカニズムのCMIM(チェンマイ・イニシアティブ)、第2がそのチェンマイ・イニシアティブを支えます経済サーベイランス機関でございますAMRO、第3の柱が現地通貨建て債券市場の育成を行うABMIで、これまでこの3つの柱を主にやってきておりましたけれども、地域の多様化するニーズを踏まえて様々な課題があるだろうということで、現在、自然災害リスクに対する財務強靱性の向上、あるいは金融デジタル化が域内金融協力にもたらす影響、こういうものを日本からも新しい議題として提唱を行って議論しているところでございます。

続きまして、23ページを御覧ください。今回5月に行われました大臣・中銀総裁会議の主な成果でございますけれども、それぞれの項目につきましては後ほど説明いたします。左下に小さく書いておりますけれども、今回、日本とASEANの友好協力50周年を記念しまして日ASEAN特別財務大臣・中銀総裁会議も開催しております。

続きまして、24ページを御覧ください。24ページは共同声明におけるポイントでございますけれども、地域経済・金融情勢の分析でございます。ASEAN+3経済につきましては、パンデミック、それからロシア・ウクライナ紛争の影響を受けながらも2022年は3.2%成長と。今後は景気回復が牽引力を増すにつれて内需が主導して、2023年は4.6%の成長見通しとなっております。下振れリスクでございますけれども、金融環境の悪化、サプライチェーンの混乱、それから世界的なコモディティ価格の上昇がやはり下振れリスクとして認識されています。一方、アメリカやヨーロッパにおける銀行セクターの混乱がございましたけれども、地域に及ぼす直接的な影響は限定的である。ただ、引き続き警戒が必要であるということで、政策対応につきましては、COVID-19関連の政策措置を縮小させていく必要が指摘されております。

続きまして、25ページを御覧ください。地域金融取極(Regional Financing Arrangement)の強化についてでございます。背景でございますけれども、チェンマイ・イニシアティブにつきまして、2000年に設立して以来、支援の迅速化、円滑化のためのマルチ化、それから資金規模の倍増を通じまして、機能・役割の強化、改善を行ってきましたけれども、これまでパンデミックを含む世界的な危機におきましても活用されていない。これにつきましては、いろいろ意見がございますけれども、やはり多様なニーズに対してしっかりと対応できていないのではないかということで、あるべきRFA(地域金融取極)について検討する必要があるのではないかと。今回、より骨太の議論をしようということで、2つテーマがございます。1つは、地域のニーズを踏まえた多様なファシリティを考えていこう。これにつきましては、日本から例えば自然災害、パンデミック、こういった外生ショックにおきまして生じる緊急支援ニーズに対応するための緊急融資ファシリティを検討したらどうかということを提案しております。こういったファシリティについて検討していこうと。2つ目でございますけれども、資金構造。チェンマイ・イニシアティブにつきましては、基本的には各国の通貨スワップで行っているものでございますけれども、これらにつきましては、より効果的な支援を行うために、強固で信頼性の高い資金構造が考えられるのではないか。例えばIMFのような構造、あるいはESMのような構造を参考にしながら検討する価値があるのではないかということで、これらにつきまして活発な議論が行われまして、今回の大臣・中銀総裁会議におきましては、まず緊急融資ファシリティについて詳細な制度設計を行っていこうと。その他の新たなファシリティ、それから資金構造に関するロードマップを年末までにつくりまして検討していこう。こういうことが合意されたところでございます。

続きまして、26ページを御覧ください。アジア債券市場育成イニシアティブでございます。まず、アジア通貨危機の一因としまして、アジア諸国において二重のミスマッチと。ドルなどの外貨を海外から短期で借り入れて自国通貨で国内の長期融資を行うものが存在していた。これを解消するために、アジアにおける貯蓄をアジアに対する投資で活用することを目的に、現地通貨建て債券市場育成に向けた取組を2003年度より行っております。こういった取組につきまして域内の債券市場を拡大しておりますけれども、今般新たな潮流、例えばデジタル、グリーン、こういうものを踏まえして、5つのpillarから成る新しい中期ロードマップを策定したところでございます。

それから、27ページを御覧ください。地域の新たな課題でございまして、アジア地域におきましては自然災害に対するリスクが非常に高い。特に最近では頻発化、激甚化する自然災害を踏まえまして、よりリスクに対する財務強靱性の強化が必要になってくるということで、日本はこれまでワーキング・グループを通じましてこの取組を推進してきました。今回の大臣会合ではこの認識が共有化されまして、新たに災害リスクファイナンスにつきましてはASEAN+3全メンバーが参加する定例議題に格上げすることで、今後ASEAN+3の金融協力の新たな柱としてやっていこうということになりました。これに併せまして、今回、保険、その他の商品の検討や提供、データベースの共有、知見共有、こういった3年間の取組を盛り込みましたアクションプランをつくりまして承認されたところでございます。

最後、28ページを御覧ください。金融デジタル化への対応でございます。ASEAN+3地域では、デジタル通貨等の金融デジタル化が急速に進んでおります。これ自体は取引コストの低減、金融包摂、経済成長等の恩恵をもたらす一方で様々なリスクがございます。こうした観点から、日本としましては、金融デジタル化に対してしっかり議論をしていこうということで、AMROと一緒にレポートをつくっておりまして、今回AMROのほうでレポートをまとめまして提言を行っております。具体的には、まずリスクとしまして、国際収支統計で捕捉し切れない資金フローの監視・管理の問題、金融危機の伝播のスピードが増加している。それから、データプライバシー、サイバーセキュリティのリスクなどが増えているということで、これらにつきましては、例えばAMROにおきましてサーベイランスを強化して技術支援を行っていく。あるいは、チェンマイにおきまして見直しを行っていくことで、域内の金融協力の将来を見据えた提言を行っているところでございます。

私からは以上でございます。

○神作分科会長御説明、どうもありがとうございました。

それでは、意見交換に移りたいと存じます。委員の皆様におかれましては、御発言の際は、この会議室で御参加の委員の方は、従前どおり名札を立てていただき、オンラインで御参加の委員の方は、事前に事務局より御案内していただいておりますとおり、御発言の意思をシステム上の挙手機能を用いて事務局までお知らせいただければと存じます。いかがでしょうか。

○木村委員どうも、御説明、ありがとうございました。

この春は、世界経済にとっては極めて重要な時期だったと思います。ロシアのウクライナ侵攻から1年を経て、インフラ圧力は高止まりする中、アメリカとヨーロッパの金融不安が深まり、さらに途上国の債務問題も深刻化したということで、一つかじ取りを誤れば本当に世界経済がハードランニングに陥りかねないという胸突き八丁というか、極めて危うい局面だったと思います。そういう大事な時期に、日本は、御報告されたとおり、G7の議長国として多国間の連携のかじ取り役という重い職責を担ったわけですけれども、しっかりと役目をこなせたのではないかと思います。

とりわけ意義があったのは、御説明があったようにスリランカ債権国会合の発足ですね。日本がインドあるいはフランスとともにそのイニシアティブを発揮したというのは、ルールベースの国際秩序を守って発展させていく上で極めて重要な役割を果たしたと思います。何年か前にアメリカがTPPを抜けた後、TPP11の構築でも日本がリーダーシップを発揮しましたが、これに続いて国際社会における日本の存在感を高めたのではないかというふうに私は思っています。

あと、こうした成果を踏まえて、今後の課題ですけれども、要は、ウクライナ危機は依然として深刻ですけれども、世界経済は、アメリカの金融不安も落ち着く兆しが徐々に見え始めていて、今後、世界経済をいかにソフトランディングさせていけるかということがポイントだと思います。それには国際的な政策協調というのは欠かせないわけですけれども、その中で、いわゆる鍵を握るはずのG20がロシアのウクライナ侵攻で共同声明を出せない。機能不全とも言われていますけれども、そういう状態に陥っている。このため、G7を基軸に協調体制を建て直していく必要があると思いますし、中でも、いかにグローバルサウスも含めた幅広い連携をつくり出していくかが重要になると思います。その点で、今回多くの招待国、アウトリーチ国が参加したG7はサミットの歴史上で転換点の会合になったと思っています。

あと、今後は極めて難しい課題ですけれども、要は、中国も含めた国際的な連携体制をいかに再構築できるかが問われると思います。もちろん、中国が国際ルールに積極的に関与していく。それこそスリランカ債権国会合に正式に参加する、こういう中国の姿勢が何より大事なのですが、G7としても中国を国際協調の枠組みにどういうふうに取り込んでいくかということもまた検討課題になると思います。

今回のG7サミットなどでも中国の関係に関しては、デカップリングではなくてデリスキングというふうにラインが言及されて、そういうラインで進んでいくのかもしれませんけれども、アメリカは昨日ブリンケン国務長官が訪中しました。こういうふうに対立だけじゃなくて対話の路線も模索していますので、極めて難しい局面ではありますが、日本としても対中関係の再構築に向けてどのような役割を果たすべきかが問われていると思います。G7の中で、欧米ではない、アジアの国として日本に期待されている役割というのもあるでしょうから、この秋のG20サミットなどに向けて中国との関係について模索していく時期にあるというふうに思います。

1つ、これはもし御教示いただければということですけれども、今後の国際的な政策協調の在り方ですね。要は、これまでの枠組み、G20あるいはG7というようなことでやってきたのですが、G20はこのような状況でしばらく機能不全になるかもしれないですが、逆にG7だけでもまたかじ取りが難しいことは明らかですので、世界経済の安定に向けて、今後どのような国際的な枠組みが適切なのか。今回のG7サミットというのは1つのヒントというか、解を与えてくれたのかもしれませんけれども、なかなか正解の出ない課題で手探りかもしれませんが、そういうことに関してどのようなことを財務省として模索されているかということに関してひとつ御教示いただけたらと思います。

○木原国際機構課長ありがとうございます。国際機構課長の木原です。

木村委員の御質問の件で国際協調の考え方ということだと思いますけれども、恐らく1980年代、90年代というのは、G7がグローバルの中でもGDPのシェアで6割を超えているような状況で、グローバルなルールメーキングも含めてG7が主役だったというのが、特にリーマン・ショックの後、G20サミットが立ち上がって、G20が経済関係のプレミア・フォーラムというふうに位置づけられる中で、過去15年ぐらいはG20を中心に、こういった政策協調の問題、あるいはグローバルな課題、みんなで取り組まなければいけない問題についてG20が主役になって議論してきたというのがこれまでの少し長いスパンで見たときのコンテクストなんだと思います。

そういう中で、これからもいろいろなグローバルな課題を解決していく上でG20のような新興国も含めた場で議論をしないといけない、そういう状況は変わらないんだと思っています。ただ、木村委員がおっしゃられたような形で、なかなかG20の中で議論していてもうまくいかないような問題がある。そういう問題に対してインペタスを与えるというか、あるいは国際ルールに基づいたいろいろな行動が重要だと。そういう共通の価値観を持っているG7としてどういうふうにこのグローバルなルールメーキングに関与していくのか。そういうところを議論する場としてやはりG7の重要性が特にここ数年間見直されてきているということだと思います。そういう意味では、G20のような場でルールをつくることは変わらない中で、その議論をより有効に進めていくためにG7としてもきちんと協調していく。そういう形のG7の役割というのはやはり大事だろうというふうに思っています。

G20の機能不全ということで、先生おっしゃるとおり、いろいろな形で今、我々も、特に債務問題も含めて、御指摘のあったような形でストラグルはしているわけです。他方で、コミュニケが出せていないという状況はありますけれども、こういった形でロシアが戦争をする中でも定期的に、大臣が必ずしも来るわけではないケースもありますけれども、G20が集まって経済問題をいろいろな形で議論する場が続いているというのは一つ重要な意義があるというふうには思っております。声明が出せていない部分もありますけれども、逆に今なぜ声明が出せていないかというと、まさにロシアの戦争をどういうふうにG20として非難するかというところ、そこだけをもって声明が出せていないのが現状です。そういう意味では、それ以外の世界経済に対する認識とか債務に関する問題とか税の問題、金融セクターの問題、いろいろな形の議論をアジェンダとしてG20で取り扱ってきています。そちらについてはきちんと議論がG20としてできていて、それなりにG20として共通の方向性を見出せている部分もあると思いますので、そういう部分はきちんとG20としても議論を続けていくのが大事なのかなと思っているところでございます。

○神作分科会長木村委員、よろしゅうございますか。

それでは、発言の意思を表していただいております、本会議室で御参加の根本委員、片山委員、それからオンラインで御参加いただいております佐藤(清)委員、伊藤(恵)委員の順番に御質問、あるいは御発言いただけますでしょうか。

○根本委員御説明、どうもありがとうございます。大変激動の中で議長国としていろいろな成果を上げていらっしゃるということがよく分かりました。また、RISEという試みも大変画期的なものなのかなと思いました。

御質問は13ページです。大変な中で協調体制を立ち上げられたというのは非常によいニュースだなと思うのですけど、この中での中国の立ち位置というか、協力姿勢というのを差し支えない範囲で教えていただければというふうに思いました。といいますのも、この後書きというんですか、参考資料の30ページを拝見すると、中国を巻き込んだ債務再編が課題というふうに最初に書いていらっしゃるので十分その点を配慮されているんだろうと思ったものですけど、ちょっと確認までということです。今日もスリランカ大統領のインタビューとか出ていて、割と多方面に良好な経済関係を維持したいみたいなコメントもありましたので、ちょっとお伺いしたいというか、確認したかったということです。

もう1つは、26ページに債券市場育成イニシアティブというのがあって、日本及びADBなどもこれをずっとサポートしていると思うんですけど、デジタルの潮流を踏まえているところで、もう少し具体的にどういう取組があるのか分かれば教えていただきたいと思いました。恐らくグリーンボンドとかトランジションボンドとか、今後アジアのグリーン化がすごく重要になってきて、そこには多分それに取り組む民間の金融機関とか企業がそういう意識を持つことも重要で、情報の開示とか、あるいは金融機関監督とか、そういう面が伴っていかないとなかなか伸びていかないのかなと思うんですけど、日本としてもナレッジシェアとか、その点、どういうふうにお考えなのかなと思いました。

もう1つコメントですけど、こうやって紙の資料を頂くのはとてもありがたいのですけど、他の省庁とか民間ではiPadがあると紙の資料というのは普通省略しているので、今後はなくてもよろしいのかなというふうに思いました。

○木原国際機構課長御質問、ありがとうございます。スリランカの件でございますけれども、全体のプロセスとしては飯塚から御説明申し上げましたように、まずインドをきちんと巻き込む。フランスと一緒にやっていくことで債権国会合の立ち上げまで来たということでございます。中国との関係では、随時情報提供もしながら、こういったマルチの枠組みに入ってもらえるように働きかけは続けてきているということでございますけれども、債権国会合自体は今の段階では中国はオブザーバーで参加していることになっています。ですので、日本としては引き続きドアはいつでもオープンですし、必要な情報を提供する形で債権国会合の運営をやっていくことも大事だと思っていますので、こういったマルチの場で債務の問題をきちんと解決していくことに向けて引き続き中国に対する働きかけは続けていくということかなと思っています。

○陣田地域協力課長債券市場育成の関係でございます。デジタル化と債券市場育成でございますけれども、念頭に置いているものにつきましては、例えばアジア・太平洋地域で証券のクロスボーダー取引についてブロックチェーン技術を使った効率性、安全性の向上ができないかということで今実証実験などを行っております。域内の中央銀行と証券決済機関をブロックチェーンを用いて接続するような実証実験をやってみようと。あるいは、いわゆるCBDCなどがありますけれども、ブロックチェーン技術を使いました個人向け国債をつくりまして、例えば銀行口座を持っていない、あるいは金融包摂のためということで、こういうものが途上国で使えるのではないか。そういうものについても検証を行ったりということを今やっております。それから、ブロックチェーン技術などを使うためには、特にクロスボーダーの関係では各国の報告書、例えば外為報告の標準化がある程度重要ではないかということで、各国の報告の基準などについても調べているところでございます。

○片山委員連合の片山です。どうぞよろしくお願いします。私のほうから2点御質問させていただきたいと思います。

1つ目は、やはり債務問題ですね。SDGsを考えた上では大変重要な課題だと思っていますので、早期の解決が望まれると思います。今回G7ではスリランカで進展があったということで大変好ましい状況だと思っています。低所得国については今後G20で議論を行っていくという状況ですが、これの進捗状況についてちょっと教えていただければというふうに思います。

あわせて、RISEですが、気候変動問題を解決していく上では金融面でも支援することはかなり重要な取組だというふうに思いますが、これの対象国ですね。これについて、可能な範囲で結構ですけれども、どういった国が入ってくるのか。中・低所得国を支援するということですが、そういった債務国についても支援するのかということも含めて教えていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

○木原国際機構課長ありがとうございます。

1点目の債務の関係でございますけれども、今までですとパリクラブという先進国の債権国グループの中で債務問題を議論するのが伝統的なやり方だったわけですけれども、G20の枠組みの中で、そこに特に中国ですとかインドをはじめ新興国が債権者として役割を増していますので、その新興国も入った枠組みで債務再編を議論する枠組みとしてコモンフレームワーク、共通枠組みが立ち上がったというのがここ二、三年の動きになります。このコモンフレームワークの下で個々の具体的な国の債務問題の取組、今どういうふうな形の経済情勢になっていて、どのぐらいの債務再編の取組が必要かを議論していくというのが現状になっています。ですので、個別国で申し上げますとザンビアですとかエチオピア、ガーナ、こういった国々について一つ一つこの枠組みが立ち上がって議論がなされているということです。えてして今の段階ですとこの議論が想定されていたほどにはスムーズに迅速に進んでいないことがありますので、ここを一つ一つの国のケースについて迅速に債務措置、具体的な中身に合意ができるように議論を進めていかなければいけない。これをG20としてきちんと後押しする。そういうのがこれから大事になってくるということかと思います。

もう1つ、先ほどの根本先生の御質問とも関係しますけれども、もう少しグローバルな枠組み、仕組みの議論としましては、IMF、世銀が中心となりましてグローバル・ソブリン・デット・ラウンドテーブルを立ち上げています。これは国際機関、主要な債権国、債務国、あと民間の債権者も踏まえながら、これからこの仕組みとして民間も巻き込んで、あるいは新興国のドナー国も巻き込んで、どういった形で議論を進めていけば、どういう問題を解決していけば債務再編がより迅速に進むのか。そういう新しいマルチの枠組みが今年4月から立ち上がっています。例えばIMF、世銀がやる債務持続可能性分析によってどのぐらい債務再編しなきゃいけないかという一つのパラメータが決まってくるわけですが、そういうものの中身をより新興国のドナーも含めて分かってもらったり、そういう中身をより早いタイミングでドナーサイドに共有をして、少しでも早く債務再編が進む。こういう努力も併せて今しているところでございます。

○池田国際調整室長片山委員、ありがとうございます。RISEの対象国につきましては、今後立ち上げされた後に、世界銀行及びその参加国と協議して決めていくということで、現時点で個別の国を予断をもって申し上げることはできないのですけれども、1つ基準になりますのは、やはり鉱物資源を有している低・中所得国であって、そして、それを単に輸出するだけではなくて、国内でしっかりと産業としてサプライチェーンを中流、下流も含めて担っていきたいんだという政府の意思があるところというのは一つの基準になってくるだろうと思います。債務国との関係に関しましては、御案内のとおり、どうして債務危機に陥ってしまうのだろうかと。これはいろんな理由があると思いますけれども、1つ、地域に関しましては、資源一本足打法といいますか、資源の呪いといいますか、こういったところに依存しているだけですとグローバルな市況にも左右されますし、やはり税収も上がってこないということがありますので、仮にそういった今債務危機に苦しんでいる国がしっかりと資源を持っていて、かつ、それを有効活用していこう、国内産業の礎にしていこうということがあるとすれば、それは十分にポテンシャルのある対象国になるのだろうと考えます。

○佐藤(清)委員私からはスライド7枚目ですけれども、債務データの正確性・透明性の向上に関する取組のところについて3点ほど質問させていただきます。ここに書かれているとおり、債務データを正確に把握する、あるいは透明性を高めることは極めて重要だと思いまして、こういう取組をG7で行っているのは非常によいと思いました。それに関連して、ここに書かれていることで幾つか明らかにしたいというか、知りたいという意味で質問させていただきます。

まず最初に、債務データを突合しているということですけれども、債務国にとって、その債務データはかなり広範に広く突合の作業ができているのか。それともまだまだ限定的なところでしか債務データの突合ができていないのか。例えば債権国から2国間で政府レベルでの融資であるとか、そういうものだけしか突合の対象になっていないのか。もっと広い範囲で突合できているのかというところを教えていただければと思いました。

続きまして、こうした突合作業がG7と、あと有志の債権国と書かれています。これらが取り組んでいるということで、有志の債権国の中にやはり中国をいかに含めていくかということがとても重要だと思うんですけれども、現時点で有志の債権国というのがかなり多いのか、それとも――それともというよりも、中国をこれからいかに取り込んでいくかということで何か既に進められていることがあるのかどうかというのが2点目でございます。

3点目は、こうした突合作業を行ってデータギャップを特定していく作業がすごく重要なんですけれども、現時点でも65億ドルほど初期段階で特定できていると。これは非常に大きな額だと思うのですが、これを特定した後、次のアクションとして何を目指されているのかということについても何か決まっていることなどがありましたら御説明いただければと思います。

○木原国際機構課長御質問、ありがとうございます。

まず、御質問3点頂いたうちの1つ目でございます。債務の範囲ということで、今回ですと2つ目の御質問とも関係しますけれども、G7プラスほかのパリクラブの有志国ということで18か国が債権国としてこの取組に参加しております。この18か国が持っている2国間の公的債権について、どの国にどんな条件で幾ら貸しているのかというデータを世銀のほうに提出したことになりますので、その範囲において世銀が持っているデータとの突合がなされたことになります。おっしゃるとおり、パリクラブの有志でございますので、この中に当然、中国を含めて入っていない国はまだまだたくさんあるということですので、突合ができているのは全体の中でもまだ一部の債権データのみになります。ですので、まさに佐藤(清)先生がおっしゃられた問題意識のとおり、これをもちろん毎年のように恒常的にやる必要はないわけですけれども、一定の期間を置いてこういった取組をきちんと続けていくのが大事だというふうに日本としても考えているところでございます。

例えばですけれども、G20のほうでこういった債務の問題を引き続き議論していきますので、こういった債務の突合、債権データの突合というところも含めてこのG20の中で少しでも継続的な取組ができないかということを日本としては引き続き推し進めていきたいというふうに思っておりますし、G20におきましても現時点でできていることとしましては、各国が世界銀行など国際機関あるいは債務国との間でどんなふうにデータの提供をしているのか。実際のデータ提供まではいっていませんけれども、どういう取組をしているかということを自己評価するような取組をやっていたり、あるいは、もう少し具体的に世界銀行と、どういうデータを今提供しているか。データの中身まではいかないですけれども、どんなデータ提供の実態があるのかというところの情報交換まではできているところでございます。そういう取組を少しでもこれからさらに進めていって、有志国の範囲がさらに広がっていくような後押しをG20の場、場合によっては世界銀行の理事会の場も使いながら進めていきたいというふうに考えております。

○伊藤(恵)委員伊藤恵子です。詳しく御説明いただいて、ありがとうございました。

私からは2点あるんですけれども、1点目は、もう既にたくさんの委員の先生方が御指摘のスリランカの債務の問題で、私も、会合を立ち上げたことは非常に意味があるとは思いますけれども、やはり中国がオブザーバーであって、正式メンバーとして参加していないことは非常に重大な問題だと思っております。中国に対して責任ある大国としての役割を果たしていっていただくように、これからも引き続きしっかりと強く働きかけをお願いしたいというのが1点目です。

2点目は、ロシアに対する制裁に関連することで、17ページとかそのあたりにあったことかと思います。今日の新聞にもちょっと出ていましたけれども、第三国を迂回してロシアに半導体等が輸出されているという話があって、アメリカは、例えばアメリカ由来の技術を使った製品をアメリカ以外の国が、例えば中国に輸出したりするのを規制していたりしています。まず、大前提として、私個人的には、貿易を制限するような措置を政治的なツールに使うべきではないと思っていて、基本、こういう制裁をどんどん強くしろというふうには思っていない。あまり望ましいことではないと思っているというのがまず大前提です。ただ、いろいろ制裁をやっていても実効性がない。それも困ることなので、第三国を迂回してロシアに輸出されるところを規制するためには、ある程度アメリカがやっているような直接製品規制に近いようなことも打ち出さなければいけないのかもしれない。その辺、何か検討をされる御予定があるのか。どのように考えていらっしゃるのかというのが1つです。

迂回輸出だけではなくて、例えば2022年の貿易統計をちょっと見てみますと、2022年1年間の日本とロシアの輸出輸入の金額が、確かに2021年と比べて減ってはいるんですけれども、ぱっと見たところ思ったよりは減っていないという印象でした。国別のランキング等で見ると、ロシアは日本から見るとまだトップ20位の中に入っている重要な貿易相手国で、それほど、思ったより輸出輸入が減っていないという印象を受けました。SWIFTから除外をしていて、決済等についてもかなりやりにくくなっているんだと思うのですけれども、意外と減っていないという印象で、これに関してもう少し具体的な分析等をされていたら教えていただけないかというのが質問です。SWIFTから除外しているにもかかわらずかなりの金額の貿易が行われていまして、それはどういう形で行われているのか。もちろん私としては国内の企業がネガティブな影響を受けるのはなるべく避けたほうがいいと思いますので、輸出輸入が継続して行われていること自体を問題視しているわけではないんですけれども、SWIFTから除外したことがあまり貿易に影響していないのかなという印象を受けました。そのあたり、どういうふうに見られているか。そこを少し詳しい分析等されているか。また、この後もう少し注視して見ていかれる御予定があるか。そのあたりをお尋ねできればと思います。

以上です。どうぞよろしくお願いいたします。

○野村調査課長まず、ロシア制裁の関係と迂回の関係につきまして私のほうから回答申し上げます。もう先生がおっしゃるとおり、問題意識は我々も十分認識しているところでございまして、どうやってこれから我々が実施しているような制裁のロシアの迂回を止めていくかということについて我々は問題意識を強く持っているところでございます。

すみません。役所の間の話で大変恐縮ではございますけれども、物と技術の輸出、貿易の関係は、財務省ではなくて、経産省の担当ということで、公式に私が経産省の答えは言えませんけれども、私が知っている範囲でちょっと申し上げますと、まず経産省のほうでやっておられる貿易の関係の物の輸出制限は非常に輸出管理を広くやっておられると認識しているところでございます。その輸出管理のやり方でございますけれども、どこかの国を経由していたとしても最終的にロシア向けに輸出するのであれば、それは経産省の輸出管理の規制にたしか入っているはずでございます。ですので、そこは直接行くところだけを見ているのではなくて、最終的にそれはどこに向けて輸出するものなのかというところに着目した規制を既に経産省は実施しておられるというふうに理解しているところでございます。

それから、ロシアとの貿易の関係でございますけれども、案外減っていないというお話もございました。我々のほうでもいろいろな制裁をやる中で、世界各国でいろいろやっています。例えば北朝鮮との関係ですと全面的に貿易はストップというようなことをやっているわけでございますけれども、基本的には今のところロシアがウクライナとの戦争の関係でいろいろな必要な物資等がロシアの手に渡らないようにするところを中心に念頭に置いて貿易の制限をやっておる。あるいは、財務省の関係で申し上げますと、貿易の制限という意味では金ですね。金をロシアから輸入しないようにする。そういったことはやっているところでございます。ただ、そういう中で、いかにしてロシアが我々の規制品を迂回によって手に入れるのを防ぐかということを考える際に、先ほど先生からお話がございましたけれども、貿易統計等も活用して、ロシア向けは減っているかもしれないが、何か知らないけれどもどこかの国向けが急に増えているとか、そういったことも着目するような形で、どうやってロシアが我々の様々な制裁を迂回しているのかというところをまずはきっちりと見ていきたい。その上でG7としてもそういう情報を持ち寄って対抗手段をしっかり相談していこうと現在考えているところでございます。

○神作分科会長ロシアの決済関係についての御質問もあったかと思いますが、御回答をお願いできますでしょうか。

○野村調査課長決済の関係は、ロシアがSWIFTから除外されたというところでございますけれども、恐らくSWIFT以外の決済チャンネルを彼らは使っているんだろうと。いろいろな形で、新聞等の情報ですとCIPSを使っているんじゃないかというような話もあったりします。ただ、SWIFTからの謝絶について申し上げますと、実はあらゆるロシアの金融機関が謝絶されているわけではないところでございまして、非常に大きなところを謝絶している状況でございます。我々は、そういう中でそれ以外のところをどうするんだと考える際に、例えば金融機関向けの資産凍結をどのぐらいやっていくのかと考える際に、これまでやってきた大銀行中心という形での資産凍結に限らず、今年2月、トップ10ではなかったのですけれども、新たに国際的な取引にここがどうやら使われているらしいと思えるところが出てきたときにはそこについても資産凍結の対象に加えるような対応を我々としてはやっているところでございます。

決済の関係はそんな感じでございます。

○伊藤(恵)委員どうもありがとうございました。貿易自体がすごく減るということは望ましいと思っていないので、SWIFT以外の方法で貿易が継続されること自体、悪くない面もあるのかなとは思います。ただ、SWIFTから除外していることがあまり貿易には影響を与えていないということかとも思いまして、どういったところでどう制裁が効いているのか詳細な分析をやっていただいて、よりネガティブな部分はなるべく少なく、より有効な形の制裁をできるように検討を続けていただきたいと思います。

以上です。ありがとうございました。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

続きまして、会場で御参加いただいております植田委員、オンラインで御参加いただいております河野真理子委員、会場で御参加いただいております玉木委員、それからオンラインで御参加いただいております伊藤亜聖委員の順番に、時間も大分押してまいりましたので、まとめて御質問いただいて、その後まとめて御回答いただきたいと思います。

○植田委員本当に考えれば考えるほど難問が山積みという今回のG7議長国ということで、本当にお疲れさまでございます。頭が下がります。

質問というよりはコメントで、本当に難問だなと思った感想を述べさせていただきます。難問の1つは、皆さんおっしゃっていますけれども、ある意味でG7ぐらいしかうまく機能していない中で、そのG7の力が世界の中でどんどん小さくなってきているということなので、やはりどこかで多国間的なアプローチをかけていかないと、先ほど言った制裁の迂回とかいろんなこともできない。そんな小さな話じゃないですが、いろんなことを多国間でやっていかないといけない。ただし、もちろんWTOも動いていないし、何も動いていない中で、難しいですねと言うしかないんですが、頑張っていただきたいと。

ただ、その中でちょっと光明が見えていたのは、先ほど紹介されたチェンマイのように、アジアのその部分は、地域間ですけれども、うまく強化が動いているということで、やはりそういうところを一つ一つ少しでも盛り上げていって、ある意味でものすごく分断化していく社会よりは、ある程度うまくコネクトしている社会となるほうがいいと思います。いろいろなことをやるにしても、完全に多国間にならないにしても、いろいろな地域間とか、いろいろな目的別のもののつながりを大事にしてやっていっていただけたらと思います。

そこで、多少不満があるのがCBDCとかブロックチェーンとかです。前回もたしか言ったと思うんですけれども、香港とかタイとかBISが絡んだmブリッジ・プロジェクトとか、シンガポールとかNew York Fedが絡んでいるプロジェクトとかあって、ある意味でSWIFT以外のものですけれども、新しい技術を使って国際決済システムが今つくられようとしている中で、どうも日本が積極的に参加しているように見えない。その意味では、まさにいろいろな多国間のことがすんなりいかない中で、新しいこととか、今まであまりなかった、参加してこなかったことも積極的にやって、うまくつながりをつくっていくことも大事ですし、世界から乗り遅れないことも大事なのかなと思っております。

ただ、私も分からないですが、世界通貨システムとかそういうふうになってくると財務省の話なのか、でも、やっぱり中央銀行間なら日銀の話なのか分からないので、もしその辺の細かいデマケのことが分かれば、教えていただければと思います。

それらが難問1で、難問2のほうはもうちょっと細かい難問ですけれども、ロシアの凍結資産の話です。ロシアの凍結資産は必ずウクライナに払われるように、どこかに書いてありましたね。広島サミットで、ウクライナにもたらした損害を支払うまでロシアの有する資産を引き続き動かせないようにしておくということで、フリーズしていくのは問題ないと思うんですけれども、損害を支払うまでというのが非常に微妙な表現だなと思っています。当然のことながら、どの段階か分かりませんけれども、戦争が終わった後なのか戦争が終わる前なのか知りませんけれども、もしも無理に取ろうとすれば、当然、主権免除という国際法を超えてやる場合は戦争のときかテロリスト国家のときだけということになっています。ある意味で宣戦布告になってしまいますから、それは多分できないだろうと。一方で、戦争が終わって賠償しろとなったときに、それもまたロシアの意向を無視して取り上げて賠償というのは、これまた宣戦布告で難しい。何度も言うように、特に質問ではないんですけれども、難問だなと思っております。

今後そういう話になってくると思いますので、我々経済学者に有名な話をします。ケインズという人が書いた、第一次大戦が終わったときのドイツ賠償問題というのがあって、あのときドイツに大量に賠償をしたことに対して、当時のイギリス大蔵省代表の一部だったケインズが大反対をしました。確かにドイツがひどいことをフランスにしているので、賠償を求めるのはよく分かるんだけれども、そんなたくさんの賠償を長年にわたって取る、ローンか何かで長年にわたって取るスキームだったのですけれども、恐らくドイツ国民はどこかの段階で頭にきて再び戦争が起きるに違いないという有名な文書を書いた。それがヒトラーとその次の第二次大戦の予言につながったというのはよく知られて、経済学者であればみんなケインズのその話を知っています。ある意味でそれに助けられて、第二次大戦後に連合国側が日本に賠償請求していなかったこともあります。だから、私は今この時点でロシアをどうしろという気持ちとか全くないのですけれども、いろんな歴史も踏まえて慎重に深く考えながらやっていただきたい。その上で非常に難問だと思うんです。人々の世論というのは当然賠償を求めるでしょうし、私もそういう気持ちでいっぱいですけれども、同時にそういう歴史もあるなというのを踏まえつつ、どうすればいいのかなというのを今後また考えていただければと思います。

○河野委員ありがとうございます。私からは2点御質問させていただきます。

1つ目の御質問は、植田委員と伊藤(恵)委員が御質問されたウクライナの問題でございます。スライドは6ページと16ページについて2点ございます。

まず、1つは、前回もたしか私は聞かせていただきましたけれども、G7で協調歩調を取るとしつつも、それぞれの国が違う制裁措置を取っているという状況があります。しかも、途上国に関しては、新聞報道とかを拝見していますと、貿易をやめていない国がかなりある。むしろ先進国に行かなくなった、例えば石油、天然ガスなどが途上国に輸出されているのではないかという報道があります。G7あるいはG20の中から、制裁をどう捉えるかについて途上国に何か働きかけのようなものがあるのでしょうか。あるいは、これだけ長引いてきていますので、少し政策が変わってきたのかどうかということがまずウクライナについて第1の質問でございます。

第2点目もウクライナ問題についてです。特に16ページについてですが、植田委員もおっしゃったロシアの資産凍結ですけれども、例えばアメリカとイランの関係では、テヘランの大使館が学生たちに占拠されて人質が取られた後に、アメリカ国内ではイランの資産が凍結され、それが基礎となってその後賠償の基金が設立されたと思います。今回の場合は、資産を凍結するにしても、各国に資産が散らばっていると思います。こういうときに例えば国際的な基金のようなものを設立する方向に行くお話というのがあるのでしょうか。伺える範囲で伺いたいです。ただし、ウクライナの惨状を拝見していますと、それでも足りないのではないかと感じないでもないです。そうすると、たとえ基金を設立するとしてもその基金には先進国からの拠出が必要になるのかもしれません。単に2国間でのODAとか政府間の援助だけでなく、そういう基金的なものが俎上にのっているのかをできれば教えて頂きたいと思います。

2番目の御質問はスライドの8ページと14ページです。先ほどのコロナの後に関して、パンデミック関係でG7での対応、特にPPRとかの対応を検討しておられるというお話がありました。この14ページのスライドの下から3行目に「WHOと世銀が更に協力し」と書かれていますけれども、G7の取組とWHOや世銀の間で何か協力関係とかいったものがあるのでしょうか。G7という国家間でのフォーラムと国際組織の間で何か協力関係があるのでしょうかということでございます。

以上です。すみません。長くなりました。

○玉木委員ありがとうございます。御説明を聞いていて2点気になったことがあったので申し上げますけれども、決してこれは外為分科会のテーマとも思えないので、必ずしも御回答いただかなくてもいいと思います。

1点目は、何人かの方がRISEについて質問されていました。例えば日本に近いところでは、インドネシアは、この10年近く鉱石をそのまま輸出することを禁止したいという方針を掲げて、ニッケルをまずやり、私の理解ではボーキサイトも今停止になっている。このテーマで言うと重要なリチウムはチリが国有化した。こういうふうに資源国が自分の持っている将来有用な資源を囲い込み、国内で中流、下流のプロセスを、付加価値を高めるために海外の投資を得て盛んにしていきたいと。一種の資源ナショナリズムみたいなものがあるわけですけれども、それを許容しているものなのか、そうでないのか。実際には何が起こっているかというと、中国とインドネシアの企業の合弁なんかの形で中流、下流の一種の囲い込み競争みたいなことが起きていることになるわけです。このRISEの話をぱっと聞くと、そういうこととは全く無縁のややきれいごとのように思うのですが、何か御見解があればというのが1点。

もう1つは、G7のコミュニケでISSBが生物多様性や人的資本の情報開示を求めるというくだりが出てきました。もちろん、これは企業に求めるのはよく分かるんですけれども、本来的な議論は、例えばイギリス財務省がダスグプタレポートを要請したように、生物多様性を中心とする自然資本という考え方を経済政策に取り入れていく。こういう議論が出発点だったはずだと思うんですけれども、G7でこうした広い見地から、ここでもウェルフェアという議論も出てきてはいますけれども、GDP、マネーマターを超えた我々のシステム全体のバリューを評価するようなことを議論する動きはあるのかしらというのが2点目です。必ずしも御返事がなくても構いませんが。

○伊藤(亜)委員伊藤亜聖です。2点ほど御質問させていただきたいと思います。

1点目がスライドの11枚目のRISEに関する点です。ただいま玉木委員からも質問があったかと思います。この構想が目指さんとしているところは、つまるところ産業政策的な含意があるのではないかということです。すなわち、中・低所得国といっても特定の国の生産力を育成する。直接的な金融支援あるいは投資支援というのは恐らく難しいので、かなり間接的な形で取組が書かれています。こういった非常に間接的な介入でこれだけ大規模の目的、生産力の形成というのは可能なのでしょうか。

もう1つは、中流及び下流というふうな書き方がされております。先ほど御回答いただいた中では、私の聞き間違えでなければ、特定国でこの中・下流を両方持っている国が想定されるようでした。これだけ工程間分業が広まっているグローバル・バリュー・チェーンの時代において、例えば下流であれば担える中・低所得国というのはかなり多いと思うんですね。そこを切り離して考えていったほうがこの目的に合致することがより幅広い国を対象としてできるのではないかと感じたということが1つです。

2点目は、冒頭にもほかの委員の方が質問されていたことですけれども、少し大きな話で、今回の議題の多くも新興国、途上国が関わる論点が多くて、その中で、半年程度前ですけれども、インドのモディ首相がグローバルサウスの声サミットを開催した。その中で例えばモディ首相は、世界の政治と金融ガバナンスを再設計することを試みなければならないという文言が入っているんですね。インドが考える世界の金融ガバナンスの再設計というのは一体どういうことなのだろうか。もし御存じであれば御教示いただければと思います。

以上です。ありがとうございました。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

それでは、ただいま頂きました植田委員、河野真理子委員、玉木委員、伊藤亜聖委員からの御質問、あるいはコメントを求められている部分があったかと思いますけれども、御回答をお願いいたします。

○野村調査課長様々な貴重な御意見、ありがとうございます。御質問を幾つか頂いておりますので。まずウクライナ関係で河野先生からも御質問を2つ頂いております。また、植田委員からも凍結資産の関係で貴重な御意見を頂きまして、どうもありがとうございます。

では、御質問のほうで、最初にロシアの凍結資産について。これはアメリカとイランのときと違っていろいろな国に散らばっているのだけれども、それを国際的な基金に集めるというような動きはあるかという話でございます。これまでのところG7で、ロシアの、特にソブリン資産、凍結資産の合意事項につきましては、先ほど申し上げたとおりでございますけれども、ロシアがウクライナに対してその損害を支払うまでの間その凍結を継続していくことは合意しているところでございますが、その後、実際にそのお金をどうするという話については、具体的な動きはこれまでのところない状況でございます。

1つ目の御質問で、ロシア制裁の関係で、途上国はまだロシアとの間の貿易は続けていますね。途上国向けの政策はどのようにするのかという御質問だったと思います。ここはまさに先ほど私のほうから申し上げました迂回対策等とも非常に密接に絡んでくる部分があろうかと思っているところでございまして、実際にどういうところが、どういう手口で我々のロシア制裁が迂回されているのかをしっかりと見定めていく必要がまずあるわけでございます。そういう中で、特定の第三国を経由していることが明らかとなるようなときには、そうした形での迂回について、G7としてどういう形でその国にアプローチしていくかということは当然議論しなければいけない。そういうときには、その第三国は途上国ということもあり得るだろうことは当然想定されるところでございまして、そこはG7としてもこれからしっかりと迂回回避の中での議論は必要になってくるだろうと思っているところでございます。

○木原国際機構課長ありがとうございます。国際機構課長、木原です。順番にお答えをさせていただきます。

まず、河野先生の2点目のグローバル・ヘルスと国際保健の関係で、国際機関、WHOとか世銀との関係がありますかということでございますけれども、G7とかG20で議論するときには基本的にこういったグローバルにリーチがある国際機関の知見を得ながら議論を従来から進めてきております。例えば昨年立ち上がったパンデミック基金も、世銀が事務局となりながら、ドナー国は当然各国が主にはなりますけれども、支援の実施機関としてもMDBsですとか国連機関が入る形で、グローバルなリーチを確保しつつ効率的な支援をするという意味で、こういった世界的なメンバーシップを持つ国際機関との連携は非常に大事だと思っています。今回のG7の財務・保健大臣の合同会議においても、世銀はずっとG7のほうで全体、新潟に参加されていましたけれども、この保健セッションについてはWHOのほうからテドロス事務局長にオンラインで参加を頂いています。今回、ここの14ページの資料に書かれている「WHOと世銀が更に協力し」という部分については、これからこのサージ・ファイナンスの枠組みを検討していくに当たって、まず現状どういう形でいろいろなバイあるいはマルチの支援機能があるのか、こういうものをマッピングしてもらう。こういうマッピング作業をする上でこういった国際機関にきちんと全体を見ながら整理してもらうことが大事だという問題意識の下で、G7のほうからタスクアウトした形になっていますけれども、この後G20の財務大臣・保健大臣合同会合に向けて作業を進めていただいて報告をもらう形になっております。

玉木先生の2点目の生物多様性も含めて政府レベルでの取組についてG7でどういう議論があるのかという部分については、今回、G7の新潟で議論した3つ目の柱のウェルフェアというのは、正直申し上げるともう少し広い視点で、デジタル化が進んだり気候変動も進む中で、あるいは格差の問題もありながら、間口としてはもう少し広い議論を、いろんなGDPでとらわれない価値に着目して経済政策をつくっていかなければいけないのではないかと議論をしています。そういう意味では、やや日本としてこれは新しく、10年ぐらい前にサルコジ大統領の下いろいろな議論がありましたけれども、少しそれをリバイブする形でもう一回G7で議論しようというので日本が始めたことになっています。例えば資源の問題ですと、特に資源を採掘して、ストックで減らしてフローでGDPが増える。それでどのぐらいの意味があるんだろうかとか、そういったものがサステナビリティの観点からどのぐらい、本当にウェルフェアな観点から意味があるんだろうか。そういう議論は実際にあります。そういうところも含めてこれからG7で引き続き議論はしていきたいと思っています。現時点ではこういった問題意識を共有して、各国が実際、政策決定段階でどういう形でいろいろな指標、GDP以外のものを活用していって、そこから何かベストプラクティスのようなものが見出せるかどうか、そういう形の議論を少ししていければなと思っているところでございます。

あと、伊藤亜聖先生からインドが考える新しいガバナンスは何なのかという御質問がありましたけれども、それが具体的に何なのかというのは、すみません、正直、私も分からない。具体的に何かというところでお答え申し上げられる材料があるわけではないですけれども、インド議長国の下で既に半年近くG20が走ってきております。その中でインドとして新興国の視点も盛り込みながら、例えばインフラの問題ですと、非常に多様なインフラの需要がある中で、そこに民間資金をどうやって導入していくか。あるいは、デジタル化の視点も踏まえながら今後どうやってインフラ整備を進めていかなければいけないか。あるいは、デジタル化の問題について、クリプトアセットの問題についてどういう規制をしなきゃいけないか。新興国独自の議長国の視点も盛り込みながらG20のプロセスを進めているのかなと思います。例えば債務の問題ですと、スリランカの問題が先ほどから出てきておりますし、あとは中所得国と同じようになりますけれども、スリナムなどについてもインドのほうではきちんと債務再編の合意が進んでいたりしますので、そういった形で議長国を担う中で、より既存のグローバルのルールにのっとった形でバイのほうでも対応していくような取組が、議長国という実績を担う中でインドの姿勢にも変化が見られるところもあるのかなと思っているところでございます。

○池田国際調整室長私からはRISEに関して頂いた御質問にお答えさせていただきます。

まず、玉木委員から御質問いただきました件につきまして、私どもといたしましてもRISEを検討する際に現在起こっている大きな幾つかの潮流を意識して検討を進めました。1つは、クリーンエネルギー関係の製品のグローバルな需要が激増すること。2つ目は、その加工・精錬・組立のプロセス、中流・下流のプロセスが現状、中国に相当程度集中していること。同時に、3つ目は、玉木委員がまさに御指摘された資源ナショナリズムと言えるような動きが中所得国において起こってきていること。具体的には、御指摘のありましたインドネシアで未加工のニッケル、これは2020年1月に全面的に禁止、ボーキサイトについては今年6月から、銅についても未加工のものは今年6月から禁止というようなことも出てきています。程度の差がありますけれども、アフリカのザンビアとDRCに関してもバッテリー・カウンセルというものを、お互いコバルト、ニッケルを持っていますのでこういったものを立ち上げていくような動きがある中で、単に鉱石を採掘するだけではなくて、自国の中で付加価値をどう高めていくかというようなことが起こりつつある。これをこのまま放置しておくと恐らく何が起こるかというと、いわゆる人権とか労働規制とか環境規制ですとか、あるいはサプライチェーンにおける気候変動のCO排出ですね。こういったものをあまり気にしない人たちがそういうところに入っていって、結果的にグローバルに見て、生産地は多角化しているように見えて、実は作っている人はほとんど同じで変わらないことが発生しかねない。こういったような状況を避けつつ、低・中所得国にサプライチェーンの担い手にもなってもらう。でもって、先進国あるいはグローバル社会においても、これから誰にとっても大事になってくるこういった製品の供給源が多様化していく。こういうものをつくるにはどうしたらいいかと考えたときに、1つやはり大事なのが投資環境整備だろうと思っています。

具体的には、そういった自国で頑張って加工・精錬して製品を作っていくんだというときに必要な労働規制とかガバナンスの規制とか、あるいは気候変動のCO排出量についてもしっかりと考慮しながらサプライチェーンをつくっていくことが中長期的に見てその国の国づくりにおいて非常に重要だし、そういったものをしっかり整えたところにこそ多国籍金融機関であるとか、あるいは先進国の金融機関の投資も入る。そして、そこに具体的に技術を持っている先進国の企業も入る。こういったものはどうやってつくっていけるかという問題意識で考案しているイニシアティブであります。なので、キーワードは投資環境整備だと考えております。

この点、伊藤(亜)委員から御指摘もありましたところと重なるのですけれども、RISEは産業政策的な含意があるということがありまして、それは確かにそのとおりだと思います。ただ、それだけですと、例えば補助金をつければいいのかとか、そういう話だけということかもしれませんけれども、そうでは決してなくて、インフラ――太陽光パネルを作るときに近くにクリーンエネルギーの発電所をどうやって造っていくか、あるいは道路や港湾とどうやってうまく組み合わせていくかといったインフラの視点ですとか、投資環境の視点ですとか。そもそも最終消費地が国内ないし近隣になければなかなかサプライチェーンは育たないという中で、その国自体あるいはその地域自体が、EVとか太陽光とか風力ですとか、こういった再生可能エネルギーについてエネルギーミックスの中でどのぐらい賄っていくのか。こういったことも含めて見ていかなければいけないという意味で非常に幅広い分析が求められる。こういった幅広い分析をできるという意味で世銀をパートナーとして選んで、彼らにしっかりと最初に分析をやってもらいつつ、それに基づいて、特に1か国だけでなくて、複数の国のクラスターも見据えながら支援を展開できないか。この点が伊藤(亜)委員が御指摘された2点目につながっていると思います。確かに上・中・下一気通貫でやれれば美しいのかもしれませんけれども、そうではない場合があるかもしれない。より最適な可能性があるかもしれないということで、近隣諸国も合わせて、A国は採掘、その隣にあるB国で中流の加工・精錬をやり、そしてその近隣の大消費地であるC国に対して展開していく。こういったクラスターアプローチが地域統合をうまく促していくことにもなるかもしれませんけれども、こういったことも意識しながら、これから国レベルですとか、それからデザインといったものを関係国あるいは世銀と連携して検討していきたいと思っております。

○三村国際局長国際局長の三村でございます。神作分科会長の下で初めて実質的にいろいろな議論をする場を設けさせていただきましたけれども、大変に活発な御議論を頂きまして誠にありがとうございます。

全体の先生方の議論の中の一番の潮流は、これだけ世の中の国際市場が激変しようとし、また、世界がどっちに向かっていくかも分からない中で、G7だけで何かができるわけでもない。でも、G20も機能不全だし、この中で我々はどこに進んでいくのだ、どう進んでいくのだというところが恐らく全てに共通する潮流なのだろうと思います。また、その中でグローバルサウスとどう対峙していくのだというところだと思うのですけれども、私自身、大きく2つのことを思っております。

まず1つは、昨今グローバルサウスというはやりの言葉のようにもなっているんですけれども、当たり前のことながら、グローバルサウスといっても、それらの国々がその立場とか考え方が全部、全ての物事について一まとまりになっていることではなくて、グローバルサウスといっても、全くもって一からげにはできなくて、実にいろいろな立場があるわけでございます。今日いろんな御議論も頂きました。債務問題一つとっても確かに中国はこういう状況でございますし、今ロシアなども中国を債務の問題についてもサポートするようなことをいろいろ言っているのですが、他方で、BRICs皆そうなのかというと、そうではないわけです。インドはまさにスリランカで我々と共同議長になってくれておりますし、ブラジルは実はパリクラブの一員なわけでございます。それから、これだけアフリカの共通枠組みの債務再編の取組が中国の所業によって遅れておりますので、債務問題については、南アフリカは我々と並んで債務問題をもっと早く取り組むべきだということで、BRICsの中でも実は分かれておる。これは全く一つの例ですけれども、ことほど左様にグローバルサウスといっても問題に応じて非常にいろいろな形で立場は分かれている状況でございます。なので、今日この時点での我々は、何か一つだけの場で全ての物事が解決できるということではなくて、いろいろな取組をまさにいろいろな場でやっていくしかないということだと思います。

先ほど木村委員と機構課長の間のやり取りでもありましたが、G20も確かにコミュニケはまとめられておりませんけれども、一方で、現在ロシアとか中国が両方いるところで我々も一緒になって議論をするという意味で恐らくG20ぐらいしか今ないのだろうと思いますので、そういう意味における価値というのはある。一方で、ただ、G20はロシアも中国もいますので、まさに中国とかロシアにどう厳しく対峙していくんだという話になればやはりG7の価値というものが当然出てくる。一方で、中国と対峙するだけではなくて、協力するところは協力しないといかんではないかと。全くおっしゃるとおりでございまして、そのときに今日御紹介したASEAN+3などはまさに日中韓プラスASEANでありますから、今日もいろいろ御紹介しましたけれども、中国も一緒になって地域の問題とか世界の問題に取り組むに当たっては、このASEAN+3は、我々にとってはむしろ中国と手を握れるところは握るための場として相変わらず非常に重要です。

それから、インドはなかなかグローバルサウスで大変であるわけですけれども、ブレトン・ウッズの仕組みをどうするのかといったところでもなかなか手ごわい相手なわけですけれども、一方、G20議長国である上に、我々は実はQUADという枠組みを持っています。今日はQUADのお話は申し上げませんでしたけれども、まさにインドとそういうところで、彼らも中国とは地政学的ないろいろな問題がある中で、むしろ米豪とともにインドと手を組むQUADのような枠組みを我々は持っているということですので、恐らくそれぞれの取組をそれぞれの特性とか目的に応じてうまく使い分けをしていくことしかないのだろうと思います。

その中で、ただ、それぞれがサイロになってばらばらにいろいろなことをやるのではなくて、その間からどう隣の枠組みに持っていくかということでございます。今日御紹介した例えばグローバル・ヘルスなどもG7で議論したわけですが、WHOと世銀にお願いする。その成果物はG7に来るのではなくてG20に持っていってくださいということで、G7からむしろG20にインプットを求めるような形でG20に行こうとしているという話です。それから、債務の問題やなんかにしても、新たなスリランカの枠組みをつくったわけですけれども、それは最終的には当然G20に持ってくる。それから、今日の透明性のお話は、まずはパリクラブの有志国でやりましたけれども、これをG20の場で紹介することによって、中国をはじめとしたノン・パリクラブのG20にもこれを広げるような形ですので、それぞれの場の特性に応じた何か新しいイニシアティブをできるだけ始めて、それをさらに広げていくために、じゃ、次にどこの場に持っていけばいいか。こういうような形でそれぞれのサイロの使い分けと、そのサイロから別のサイロへとうまく物事を持っていく。多分こういう戦略をやっていかなければいけないし、我々としては何とかそれをやろうとしている状況でございます。

こんな状況ですので、なかなか難しい状況ではございますけれども、今日も御議論いただきましたそれぞれの話、スリランカの話にしてもそうですし、ロシアへの取組の話にしてもそうですし、それぞれについてまた私自身の思いを申し上げますと時間も超過しますので申し上げませんけれども、こういう状況ではありますが、今日御紹介しましたように、新潟での基本的な考え方は、とにかく美しい言葉だけを書くのはやめよう。必ず次に具体的な政策アクションにつながることだけを新潟には書こうということで、今日御紹介したものはそれぞれの今後につながる政策アクションを御紹介したつもりでございますので、これはまさに、今日はG7あるいはASEAN+3のものが中心でしたけれども、恐らくG7からG20に持っていくもの、ASEAN+3から別の場に持っていくもの、あるいはパリクラブないしはその外側の場からG20に持っていくもの。こういった形で、いろいろな先ほど申し上げたようなダイナミズムに持っていくべきものができてくると思います。我々としては、例えば今日G7で御紹介したものがその後G20ではこうなりましたとか、そういったいろいろな形でさらに今後御紹介できるようになることを目指しながら引き続き取り組みたいと思いますので、引き続き先生方には貴重な御指導あるいは御意見を頂戴できればと思っております。

ありがとうございます。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

本日は大変活発な御議論を頂き、誠にありがとうございました。

時間になりましたので、本日の議事はこれにて終了とさせていただきたいと存じます。

なお、今回の議事録の作成は私に御一任いただければと存じます。その際、発言部分を事前に御覧になりたい委員の方におかれましては、本会合終了後にその旨を事務局に御連絡いただくことといたしまして、御連絡いただきました委員の方には議事録を案の段階で事務局より御送付させていただきたいと考えております。その後1週間程度の間に御意見がない場合には御了解を頂いたものと取り扱わせていただきます。

次回の会合につきましては、事務局と御相談の上、御連絡させていただきます。

本日は、長時間にわたり御出席賜り、誠にありがとうございました。

午後0時00分閉会