このページの本文へ移動

関税・外国為替等審議会
第52回外国為替等分科会議事録

令和4年10月5日(水)

財務省 国際局

於 財務省第3特別会議室
(本庁舎4階)

1.開会

2.最近の国際金融情勢について

3.マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策について

4.閉会

出席者
委員

伊藤恵子

財務省

三村国際局長

亀坂安紀子

矢作国際局審議官

河野真理子

緒方副財務官

斎藤

今村副財務官

清水順子

藤井国際局総務課長

神保寛子

野村国際局調査課長

杉山晶子

木原国際機構課長

高山一郎

陣田地域協力課長

原田喜美枝

松本為替市場課長

渡井理佳子

飯塚開発政策課長

臨時委員

植田健一

土生外国為替室長

佐藤清隆

武士俣調査課企画官

澤田康幸

山下国際投資企画官

専門委員

伊藤亜聖

石崎国際機構課企画官

玉木林太郎

髙木資金移転対策室長

信光

中西地域協力企画官

池田国際調整室長

棚瀨資金管理専門官


午前10時00分開会

○清水分科会長それでは、お時間になりましたので、ただいまより第52回外国為替等分科会を開催いたします。

委員の皆様方におかれましては、御多用中のところ御出席いただきまして、ありがとうございます。

本日、オンラインでの参加を含め16名の委員に御参加いただいております。

さて、本日も新型コロナウイルスの感染拡大の防止の観点を踏まえた対応を行うこととしており、御協力のほどよろしくお願いいたします。具体的な留意点などについて、事務局より説明をお願いいたします。

○野村調査課長調査課長の野村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

私から、会議室の参加とオンライン参加のハイブリッド形式の本日会議となっているという関係で、留意点を少し御説明させていただきたいと思います。

まず、会議室での御参加の委員の皆様におかれましては、オンラインで御参加の委員の方に音声が明瞭に伝わりますよう、できるだけマイクに近づいて御発言いただきますようよろしくお願いいたします。

また、オンラインでの御参加の委員の皆様におかれましては、事前にお伝えしておりますとおり、御発言時以外はミュートにしていただきますようお願い申し上げます。

また、途中で万一Webexがつながらないなどのことが起こりましたら、電話会議システムで引き続き御参加いただくことは可能でございますので、そちらでお願いいたします。

以上、委員の皆様には大変御不便をおかけいたしますけども、御協力のほどどうぞよろしくお願い申し上げます。

私からは以上でございます。

○清水分科会長ありがとうございます。

それでは、早速本日の議事に入りたいと存じます。本日の議題は、最近の国際金融情勢について、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策についての2つです。

まず、最近の国際金融情勢につきまして、事務局より説明の後、意見交換の時間をお取りしたいと思います。

それでは、木原国際機構課長、よろしくお願いいたします。

○木原国際機構課長ありがとうございます。国際機構課長の木原でございます。

画面のほう既に出ておりますけれども、資料2「最近の国際金融情勢について」という資料のほうで、まず私から世界経済の概要等を御説明させていただきたいと思います。

スライドの番号で言いますと、スライドの2、OECD中間経済見通しの概要、こちらを御説明させていただきます。

通常ですと、IMFのWorld Economic Outlookを御説明させていただくことが多いかと思いますけれども、WEOのアップデートのほうが来週の10月11日に公表予定ということですので、今回、9月26日に公表されましたOECDのほうの概要を最も直近のものとして御説明をさせていただきます。

世界経済の見通しですけれども、成長率については2022年で3.0%、2023年で2.2%ということで、ロシアのウクライナ侵攻、あるいはエネルギー・食料価格の高騰、金融引締めの継続、こういうものによって世界経済というのは減速していく方向にあるということ。

各国の見通しについては、アメリカのほうで2022年が1.5%、2023年が0.5%。ユーロ圏のほうは、逆に2022年は少し強めで3.1%なんですけれども、2023年にかけて大きく減速して0.3%。中国のほうは、ロックダウンの影響ですとか不動産市場の脆弱さというものがある中で、2022年3.2%。ただし、来年にかけて少し足元で大きめの経済対策が打ち出されたこともある中で、2023年については4.7%という形で見通しがなされています。日本については、欧米と比べますと比較的成長としては堅調なんですけれども、外需も弱い中で、2022年が1.6%、2023年が1.4%ということになっております。

最後の丸ですけれども、リスクについては大きく3つ書かれておりまして、1つがやはり欧州へのエネルギー供給――ガスのほうですけれども、これの影響と。2つ目が食料価格が引き続き高止まりするということ。③として、中国についてということですけど、企業債務の水準が高い、あるいは足元で最近見られている不動産市場がどうなっているかというところが引き続きリスクとしては残っているということでございます。

おめくりいただきまして、スライドの3ですけれども、今回、特に足元インフレが高いということで、資料も含めて準備をさせていただいています。

OECDの見通しについては、7月から9月にかけてアップデートされたわけですけれども、世界的にインフレ率が上方改定されているということで、これは自明でありますけど、エネルギー価格の高騰、あとは、特にアメリカが中心ということかもしれませんけれども、労働コスト、こういうものもよりブロードベースでインフレ率が上がってきているということが書かれております。

G20全体で見ますと、2022年が8.2%、2023年が6.6%ということですが、少し中を見ていただくと、表のほうですけど、左側のほうで、アメリカですと2022年中が6.2%、2023年が3.4%となっています。ユーロ圏のほうは、もう少し、2022年の水準も高くて8.1%となっておりますし、2023年にかけても6.2%ということで、アメリカよりはインフレ率が下がっていくペースがより緩やかであるということがユーロ圏において見込まれているということかと思います。

政策対応を下のほうに書かせていただいておりますけど、金融政策は、高インフレ下にある主要国で引き続きさらなる金融引締めが必要と。

財政政策のほうは、食料・エネルギー価格が上がっていますので、いろんな形での、迅速かつ一時的に、かつ特に脆弱層にターゲットを絞ってという形での支援が必要なんじゃないかと。特にインフレ率が高いという中なので、継続的にコロナ禍であったような刺激策が続いていく、こういうことは避けるべきであると。当然、債務の持続可能性にも配慮する必要があるということが強調されております。

気候変動につきましては、国際連携を続けながら、エネルギー安全保障の観点と気候変動対策、これをうまく連携させながら、こういう状況の下であってもきちんと推進していく必要があるということが書かれております。

4ページでございますけれども、こちらのほうは、IMF、世界銀行、OECD、3つの機関の世界経済見通し、現状の数字をまとめさせていただいております。

冒頭申し上げましたように、IMFのほうは7月時点、世界銀行のほうは6月時点、OECDのほうが9月時点ということになっております。

例えばですけれども、アメリカを見ていただきますと、2022年、IMF、世銀に対してOECDが少し低かったりですとか、ユーロ圏についても、2023年を見ていただくと、IMF、世界銀行の数字と比べるとOECDの数字は非常に低くなっていますので、全体としてアップデートの方向としては今後ともこういうふうになっていくのかなというふうに考えているところでございます。

続いて、5ページ目のほうに移らせていただきます。こちらは一番直近7月のインドネシアのバリでございましたG20財務大臣・中央銀行総裁会議の議長サマリーのポイントということでございます。

ロシア情勢もある中で、全会一致のコンセンサスがあったコミュニケとしてではなくて、大多数の意見を集約した議長サマリーとして公表されているということになっております。

構成としては一部と二部に分かれておりまして、一部については、世界経済情勢等について、会議における各国の意見をインドネシアの議長が要約したということでございます。

1つ目のポツにありますように、多くのメンバーがロシアのウクライナに対する戦争を強く非難し、戦争の結果として世界経済の回復は大きな後戻りに直面していることに合意したと。1メンバーが制裁は既存の課題を助長していると主張したということが書かれているところでございます。

あと、やはり食料・エネルギー価格の不安が増していて、特に脆弱層に偏って影響を与えているということに大半のメンバーは合意したということでございます。

第二部のほうは、財務トラックのほうで、金融政策、あるいは為替、国際保健、いろんな項目がございます。従来から議論を積み重ねてきているものについてということですけれども、こちらのほうは幾つかの論点で意見に幅があるということは書かれておりますけれども、非常に幅広い支持があって、G20として今年の1年間かけたインドネシア議長国の下での成果として成果が出つつあるという項目がリストされているというふうにお考えいただいていいかと思います。

金融政策については、データを踏まえて明確なコミュニケーションを行いながら適切に調整をした。

為替政策については、為替相場についての従来のコミットメント、こちらが再確認されております。

国際保健については、世銀に今回Financial Intermediary Fund(FIF)というものをつくって、さらに支援を強化していくということになっていますので、こちら、既に立ち上がりつつありますけど、7月の時点では、9月の立ち上げを目指して、ガバナンスや運営体制をきちんと議論していくということが書かれておりました。

債務につきましては、低所得国向けのG20で新しく債務救済の枠組みとして立ち上げた共通枠組みをきちんとやっていくことが重要であるということ。さらには、共通枠組みは基本的に低所得国のみを対象としていますので、中所得国、こういうものについても要請に迅速に対応できるべく国際社会として協調していく必要があるんだということが書かれております。最後に、債務については、透明性、こういうものをきちんと確保していくということが引き続き書かれているということでございます。

インフラ投資は、質の高いインフラ投資原則、こういうものを日本の議長国の下でもつくったわけですけど、こういうものを引き続き普及させていく、実際にオペレーションに生かしていくような作業が引き続き議論としては進んでおるところでございます。

金融セクターのほうは、特に暗号資産のリスク、こういうものについてFSBの作業を歓迎したりですとか、あとは、コーポレート・ガバナンス原則の見直しのほうを進めておりますので、その進捗を歓迎するというメッセージが出されているところでございます。

最後、国際課税でございますけど、こちら、昨年2本の柱、非常に大きな合意があったわけですけれども、第1の柱については、少し条約の策定、あるいはルールの詳細を決めていく上で時間がかかるということで、1年、実施目標の期限を2023年から2024年にこの時点で後ろ倒しを報告して、ただし、引き続きG20として迅速な合意の実施、こういうものにコミットしていくということが確認されたということでございます。

6ページは、国際会議の日程ということで、御参考としてつけさせていただいているものでございます。

私からはここまでにさせていただいて、続いて、飯塚課長から国際保健のほうの御説明をさせていただきます。

○飯塚開発政策課長開発政策課長の飯塚でございます。引き続きどうぞよろしくお願いします。

私のほうからは、国際保健と債務問題について説明をさせていただきます。

7ページ目ですけれども、まず、背景ですが、財務・保健大臣合同会議というのが2019年の日本のG20議長下でつくられた枠組みであります。去年はローマサミットのマージンで開催されまして、将来のパンデミックへの予防、備え、対応(PPR)強化に向けて、財務・保健当局の連携強化、あと、コロナのパンデミックの教訓から、必要となってから資金をかき集めるというのではなくて、保健システムの弱いところ、ギャップを特定しながら、資金をあらかじめプールをするという新たな金融ファシリティの検討を目的とした、G20の「財務・保健合同タスクフォース」を設立したところであります。

そこのタスクフォースで議論しまして、4月にG20の財務大臣・中央銀行総裁会議で、既存の国際保健システムにおける資金ギャップに対処しまして、国内資金、あと既存の機関でもいろんな活動を行っていますので、それを足し合わせてもなおかつ足りない部分を補完するものとして、世界銀行にパンデミックPPR向けのFIF、基金を設立することに合意しました。

その後、世界銀行とWHOが事務局を務める下で、資金拠出意図を持った国が議論を行いまして、9月8日、9日に初回理事会を開催するに至りました。拠出を表明したドナー、受益国の代表が意思決定メカニズムなどガバナンスや運営体制に合意しまして、FIFを正式にローンチしたということであります。

注にございますけれども、日本は、7月のG20大臣会合で、大臣から1,000万ドルの初期貢献を表明しました。その際、適切なガバナンスが確保されればさらに貢献すると言っておりまして、その後の議論で、1か国が拒否権を持たず、拠出ドナーの意向が適切に反映されるガバナンス構造が確保されてきておりますので、現在、資金貢献に向けた作業を行っているところであります。

FIFの立ち上げという役割を果たしたタスクフォースにつきましては、またバリのサミットのマージンで開催される秋のG20財務・保健大臣会合へ向けて連携強化の議論が行われているところでありまして、日本としては、連携強化の中で、引き続き保健システムにおけるギャップ分析などが必要と考えているところであります。

次に、もう1ページおめくりください。債務問題について足元の動きですけれども、背景は先ほど説明ありましたように、パリクラブ以外の中国などの債権国の存在感が増していることを踏まえて、2020年にサウジの下でG20の枠組みで債務救済を行う共通枠組みに合意しまして、その後、チャド、エチオピア、ザンビアが債務救済を要請しましたけれども、現在に至っては未執行ではありますと。

今年の4月には、経済状況が悪化したスリランカが対外債務の支払いを一時的に停止しておりますけれども、スリランカは割と所得が高いので、中所得国であるスリランカにはこの枠組みは対象外ということであります。

足元の動きですけれども、6月16日に中国とパリクラブ議長が共同議長を務めているザンビアの第1回債権者委員会が開催されました。

それを受けまして、7月のG20の財務大臣・中央銀行総裁会議の議長サマリーでは、先ほどありましたけれども、債権者委員会での合意が必要なザンビアへの資金保証の提供への期待と、中所得国の債務措置に迅速に対応するための多国間協調の歓迎等が明記されまして、こうしたものは、これまでコンセンサスベースだったので、なかなか書き込めなかったんですけれども、書き込まれるという進展がありました。

その後、7月中旬ですけれども、第2回の債権者委員会において、ザンビアへの資金保証を提供するという合意ができまして、支援プログラムを承認する条件が整ったことから、8月末にはIMF理事会においてプログラムが承認されております。

また、スリランカについてですけれども、9月1日にIMFのスタッフとの間で支援プログラム導入について合意が得られております。その正式承認には、債権国による債務再編の方向性と民間債権の取扱いに関して、関係者による大枠の合意が必要ということでありまして、現在、債権国間で議論を行っているところであります。

以上でございます。

○野村調査課長続きまして、ロシア・ウクライナ情勢につきまして御説明させていただきたいと思います。

まず、1枚これをおめくりいただきまして、ロシアの実質GDPの成長率でございます。

足元でございますけれども、もう皆さん御存じのとおり、本年のウクライナ侵攻前と後を比べますと、民間予測ですと2022年の実質GDP成長率の前年比は、こちらは、侵攻開始前2.6%であったものが足元はマイナス6%と、マイナス8.6%の下方修正となっているところでございます。そうした傾向につきましては、民間予測だけではなく国際機関の予測でも見られているところでございまして、こちらのスライドの下に書いておりますけど、IMF、世界銀行、あるいはOECDといった機関の予測におきましても、2022年、そして2023年の数字、どちらも侵攻前と侵攻後を比べますと大きく落ち込むという姿が予測されているところでございます。

1ページおめくりいただきまして、そうした侵攻によりまして、ロシア、厳しい制裁を受けているところでございますけども、そうした中、ロシアの鉱工業生産、小売の売上高、あるいは自動車販売台数といったことにつきましても、大きな落ち込みをしているという状況でございます。また、経済制裁という中で、主要国からの輸入も激減しているということ。それも1つの背景といたしまして、経常収支というものは実は増えているという状況にあるところでございます。

それから、1ページおめくりいただきまして、こちら、後の話にも関連するものでございますけども、ロシアにつきましては、これはもう皆様御覧のとおりでございますけども、非常にエネルギー収入というものに大きく依存する経済でございまして、例えば連邦予算の推移を見てみますと、歳入につきましては、おおむね3割から4割程度が、これは侵攻前の数字までしか取れておりませんけれども、石油天然ガス収入に依存すると、そうした経済構造になっていたというところでございます。

1ページおめくりいただきまして、ロシアのウクライナ侵攻という中で、主要国、国際社会と連携して我が国もロシアに対する、そしてベラルーシに対する制裁措置を順次導入しているところでございます。足元の直近の数字でございますけれども、前回の外為審で御報告させていただきました制裁につきましては、この1番から11番のところまででございましたけども、その後、12番のロシア向けの信託・会計等のサービスの提供禁止、そして13番のロシアを原産地とする金の輸入禁止という制裁を、これもG7等々と協調する形で我が国も新たに実施をしているところでございます。

次でございますけども、さらに次の新たな制裁ということで、現在G7を中心に検討しているものが、それがこちらのスライドに書かせていただいておりますロシア産石油の輸入に関する上限価格――プライス・キャップと呼んでおりますけども、それを導入してはどうかということで、現在議論をしているところでございます。

こちらは、もともとは、EUが第6次の制裁パッケージにおきまして、ロシア産石油の輸入禁止をするだけじゃなくて、第三国へのロシア産石油の海上輸送に対して、EU企業による保険の付保等のサービスの提供を禁止するというものでございました。

この点につきましては、確かにそうした形でロシア産石油の海上輸送の保険を禁止いたしますと、これはロシアの石油収入が大きく落ち込むということは想定されるわけでございますけれども、他方で、それは世界の石油価格の高騰、あるいはインフレ圧力の増というものももたらし得る可能性があると。そういう中で、ロシアの石油収入は当然削減しつつ、だけども、インフレの面での影響はできるだけ抑えるという観点から、一定の価格以下のロシア産石油だけが出回るようにしていきましょうという、そういう取組をG7の中で始めております。

そうした点につきましては、G7のエルマウ・サミットの首脳声明で、今後そうした仕組みを関係大臣間で検討するということは首脳間で合意されまして、去る9月2日、制度設計の大枠につきまして財務大臣間で合意をしたところでございます。

また、この実際の制度の運用でございますけれども、今後、石油につきましては本年の12月5日から、石油製品につきましては来年の2月5日から、これはEUの第6次制裁パッケージのタイミングと合わせる形で実際にオペレーションに移っていきたいというふうに考えているところでございます。

もう1枚おめくりいただきますと、こちらが先ほど申し上げました9月2日のG7の財務大臣間でのプライス・キャップの導入に関する財務大臣声明の抜粋でございます。こちらに書かせていただいておりますとおり、このプライス・キャップの導入の目的につきましては、こちらは基本的にはロシアの石油収入を削減すると。と同時に、インフレの影響というものもできるだけ抑えていくと。そういう中で、一定価格以下のロシア産石油しか市場には出回らないようにするということで、上限価格を設けるということについて合意するということが財務大臣声明において合意されているところでございます。

続きまして、16ページでございますけども、ロシアに対する制裁だけではなくて、被害に遭っているウクライナに対する支援も我が国は行っているところでございます。こちらの資料に詳しく書かせていただいていますとおり、日本はこれまで合計約11億ドルの支援を表明しておるところでございまして、このうち、円借款により約6億ドルが既にウクライナ政府への融資として実行されているところでございます。

また、こちら(16ページ)はニューマネーでございますけど、次の資料でございますけども、ニューマネーを出すということに加えまして、ウクライナからの債務の支払いの猶予というものも我が国としては他の主要国と協調する形で行っているところでございます。こちらの資料で書かせていただいておりますとおり、公的債権者グループの一員として、ほかのアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、カナダと共に、我が国もウクライナに対する公的債務の支払い猶予というものに合意しているところでございます。さらに、こうした公的債権者による支払い猶予の動きに加えまして、民間債権者にも御協力をお願いしているところでございまして、報道等によりますと、ウクライナとの関係で、約2年間で約60億ドルが猶予されるという内容で、既に民間債権者との間でも話がついているという形で、ウクライナに対してニューマネーを出すことに加えまして、債務の支払いを猶予するという形での支援も行っているという状況でございます。

駆け足でございましたけど、私からは以上でございます。よろしくお願いいたします。

○清水分科会長ありがとうございました。

それでは、意見交換に移りたいと思います。委員の皆様におかれましては、御発言の際は、御臨席の委員の方は従前どおり名札を立てていただき、オンラインで御参加の委員の方は、事前に事務局より御案内しましたとおり、御発言の意思をシステム上の挙手にて事務局までお知らせいただければと思います。

それでは、植田先生、お願いいたします。

○植田委員どうも毎回非常に丁寧な御説明をありがとうございます。大変勉強になります。

今回、特にあまり私からということもないんですが、ちょっとだけ気になったのがやはりプライス・キャップのところでしょうか。これはやっぱり、一定の価格以下のロシア産石油の輸入に対して保険を掛けない、保険付与の禁止というのは――当然、保険付与の禁止は、対象はG7というイメージですよね。プラスEUだと思うんですけれども。

そうしていきますと、当然、そういう保険会社、再保険会社は中国とかほかの国にもあり得ますし、じゃ、ここぞとばかりそういう市場にむしろ打って出てくるような可能性も。もちろんロシア国内の保険会社もひっくるめてなんでしょうけれども。もしかしたらそこで――私の理解によれば、例えばスイス、ドイツ、イギリスの再保険会社、かなりのマーケットシェアを持っていますけども、その構造がある意味でもしかしたら崩れてくる可能性もあって、その辺の心配はどう考えられて議論されたのかなというのをちょっと思いました。

そういう次第です。よろしくお願いします。

○清水分科会長一応、お時間の関係もございますので、まとめて質問を受けてから御回答いただきたいと思いますが、ほかに御質問はいかがでしょうか。

オンラインにて、杉山委員、よろしくお願いいたします。

○杉山委員ありがとうございます。

私からは、今御質問がありましたキャップ制についてと、それから国際課税について、1つずつ質問がございます。

まず、キャップ制のほうなんですけれども、保険会社、世界の海洋保険の9割がEUとかG7の国ということなので、保険サービスの附帯の禁止というのは、恐らく対応ができるだろうと思うんですけれども、ロシア産原油の原産地が偽装されてしまう可能性というのはあるのかなとちょっと懸念しておりまして質問させていただきました。もし原産地を迂回されてしまうと、この対応もあまり効果がなくなってしまう可能性もあるのではないかというふうに思って質問いたしました。

それからもう1点は、5ページの国際課税のほうになります。OECDの2本の柱が合意されたということは、非常に国際課税上画期的であると思うんですけれども、第1の柱が少し後ろ倒しになっているということでございます。そこで、第2の柱の15%の最低法人課税を導入するというこれに当たって、これを国内法に取り入れるためのモデル規則を開発中ということなんですが、こちらは予定どおり開発されるのでしょうかというのが2つ目の質問でございます。

私からは以上でございます。

○清水分科会長ありがとうございました。

それでは、河野委員、お願いいたします。

○河野委員様々な御説明をありがとうございました。

私からは、3ページ目の一番下の行と、それから12ページ目について質問させていただきたいと思います。気候変動問題に関しての御質問です。

ロシア産の石油に関しては今御説明ございましたけれども、天然ガスに関してはいかがでしょうか。例えば、欧州はかなりロシア産の天然ガスに依存してきていると理解しております。先日もパイプラインの爆発がニュースになりましたけれども、気候変動対策としては、天然ガスを使うことが当面の解決策として不可欠だと思います。確かに欧州は気候変動対策で、GHG排出ゼロの再生可能エネルギーにかなりシフトしているとは思いますけれども、どうしても当面全ての需要をそれで賄うわけにはいかないですし、それから燃料としての天然ガスも大事であると思います。ロシアのウクライナ侵略への対応として、天然ガスの問題をどうするのかという問題があると思います

緊密な国際連携の下でエネルギー安全保障と気候変動対策を連携させるということですが、各国どのような雰囲気なのか、あるいはロシア産の天然ガスがこれから滞る可能性がしばらく続くことに各国がどのように対応しようとしているのか、さらに、世界全体で見たときの天然ガスの輸入先をどのように考え、流通を確保しようとしているのかを教えていただきたいと思います。天然ガスの確保は、日本にとっても当面のGHG対策としてとても大事だと思いますので、この点を教えていただければと思います。

○清水分科会長河野先生、ありがとうございました。

オンラインで、佐藤先生、お願いいたします。

○佐藤委員それでは、聞こえておりますでしょうか、私から質問といいますか、コメントさせていただきます。

御説明の前半部分で、各国のインフレ――ちょうど今スライドで投影されているところ(3ページ)ですけど、インフレ率に関しまして、見通しなどは御説明あったところです。これを考える上で、今、私の1つ前の御発言であったように、例えば原油価格だけではなくて、天然ガス――ドイツなどはロシア産の天然ガスに非常に大きく依存していると言われていますし、天然ガスの供給が絞られることがヨーロッパに対して大きな影響を与えるというふうに言われておりますので、そうしたところも踏み込んで御説明があったらより現状が分かりやすくなるかなと感じました。そういう意味では、これは質問ではなくてコメントでございます。

また、もう1つこのインフレのところについて気になるのは、やはり為替の減価といいますか、各国の通貨の減価が非常に気になります。日本も最近為替介入しておりますし、ポンドも相当減価しています。こうした為替の減価というのがじわじわと国内インフレ率の上昇に今年、そして来年と効いてくる可能性もあるので、こうした為替のところも今回少し踏み込んで御説明いただけると、よりよく状況が分かったのではないかと感じました。

ということで、質問というよりは今回の御説明をいただいた上での感想でございます。そのあたりまで踏み込んでいただけるとより分かりやすくなったかと思います。

以上です。

○清水分科会長佐藤先生、ありがとうございました。

それでは、委員から頂戴した御質問につき、事務局より御回答をお願いいたします。

○野村調査課長調査課長、野村でございます。

まず、植田先生からいただきましたプライス・キャップについてのお話でございますけども、これは杉山先生からのお話ともかぶる部分がございますけれども、これ、実際にやろうとしておりますのは、ロシア産の原油の海上輸送に対する保険、これのサービスを提供するのをやめましょうという話でございます。当然、今のところはG7中心にした話でございます。

実際にそのマーケットを見てみますと、世界の原油の海上輸送の件につきましては、もうほぼ9割方がEU、そして欧米系の会社――これは保険、再保険含めてということで、これは非常に実効性のある、措置としては非常に効くのではないかという観点から、今回導入したわけでございます。

結局、そうすると、中国とかほかのところが保険を取ってしまうんじゃないかという御懸念かと思いますけども、基本的にすぐにそんな大きな欧米系の保険会社が引き受けられるような体力というものが、そうした新興国の保険会社においてすぐに代替できるようなところがそもそもあるのかと。そのために必要なかかる時間というものは相当あるんだろうと思います。そういうことが起きる前に、とにかく今ロシアがやっていることについて、各種の制裁措置を導入することで、早めにこうしたロシアのウクライナ侵攻という事態をとにかく止めてしまいたいということがまずは我々としての政策の狙いでございます。

また、このプライス・キャップというものの実効性を高めていくという観点から申し上げますと、G7、確かに主要ではございますけども、G7だけではなくて、それ以外の国にもとにかく裾野を広げていきたいと。同じようにプライス・キャップをやっていく、ある意味コアリションのような形でG7以外にも裾野を広げていくという取組を進めていくということ、これも非常に大事かと思っております。

そうしたことも併せまして、このプライス・キャップを使いまして、できるだけロシアに対する制裁の圧力をかけていきたいというふうに思っているところでございます。

それから、杉山先生からお話のございました原産地の偽装の話でございます。

これは、ロシア産原油の輸送に関わるだけではなくて、そもそもその原産地を偽装するという行い自体、これ自体がまず許されないことでございまして、今回のプライス・キャップの措置の実効性を確保する上でも当然重要な点ではございますけれども、そうした原産地偽装を防ぐための様々な世界の貿易に関するルール、そして税関における実際の執行面、こうしたものもしっかりと対応していくという中で、プライス・キャップ自体の制度の実効性というものもしっかり確保していきたいというふうに思っているところでございます。

それから、河野先生からのお話で、ロシアの天然ガスの供給の話と、あと気候変動の取組の話との関連、そうした御指摘ございましたけれども、こちらも非常に悩ましい部分がございますけども、これ、私自身の理解で恐縮でございますけれども、世界の今後のことを考えますと、長期的に化石燃料に依存した生活というものからどんどん依存を脱却していかなきゃいけないと、こういう長期的な目標というのは、これはやっぱり見失ってはいけないんだと思います。そうしたものをきちんと追い求めていくという姿勢、これは維持しつつ、だけども、現在、足元、短期的な話といたしまして、対ロシアとの関係で制裁の実効性を高めていくという観点から、様々な形での制裁を実施しているというところでございます。

ただ、そういう中におきましても、天然ガスにつきまでは、今お話ございましたけれども、非常に冬場をこれから迎えるという中でもございまして、できるだけ確保したいと。やっぱりどうしても使わざるを得ないという中で、ここについて非常に悩ましいところはございますけども、だけども、そういう中におきましても、EUの中でも、そうは言っても、とにかく対ロシアとの関係での天然ガスの依存というもの、これはやっぱりきちんと減らしていくんだという姿勢というものは――冬場をきちっと乗り切るという意味で必要最低限の確保は彼らも当然大事だと思っているところでございますけども、そうは言っても、きちんと依存というものはこれから減らしていくと、そういう姿勢で取り組んでいるものだと思っております。

私からは以上でございます。

○木原国際機構課長国際機構課長の木原でございます。その他の質問、お答えさせていただきます。

まず、杉山先生から国際課税について御質問ございました。第2の柱のモデルルームがどういう形で準備が進んでいくのかということでしたけれども、モデルルール自体につきましては、既に今年の前半にOECDの中で合意がされまして、公表されております。ただし、モデルルールは制度の概要、大きな枠組みとして決まったということでありますので、より詳細な実施枠組み――インプリメンテーションフレームワークというふうに呼んでおりますけれども、こちらは引き続きOECDのほうで議論が続いております。これが、今年の年末までにできれば議論をまとめて、そうするとルールとしては全体像がある程度詳細なところまで含めてつくられた形になるというのが今のスケジュール感ということでございます。

河野先生から気候変動のほうのお話ございました。既に野村のほうからもお話をさせていただいておりますけれども、現状で一遍にクリーンエネルギーのほうに今の足元の状況を受けて動けないというのは御指摘のとおりで、そういう意味でなかなか難しい状況にあると思いますけれども、政策の観点で特に最近OECDの政策対応のところでも言われているところとして、やはりエネルギー価格の上昇に対していろいろな対応、財政政策のほうでもしていきますけれども、ここ(3ページ)に、今スライドにも出ていますけれども、ターゲットを絞るということが大事なというところはあります。あとは、やはりこういうエネルギー、特に化石燃料の使用を減らしていくようなインセンティブ、こういうものをなるべく維持しながら支援をしていくということが大事なんじゃないかというようなことが1つ言われているということと、あとは、今スライドに出ている一番最後のところで、連携させてともに促進というところで、例えばというところで出ていますのは、やはりこういう機会を特にとらまえて、クリーンエネルギーへの投資を促進するであるとか、エネルギー効率化を進めるような投資を促すとか、そういうことを視野に入れながら、一層取組を進めていくべきじゃないかというような指摘がよくなされているということかと思います。

最後、佐藤先生のほうから、インフレ、特に欧州のガス供給の問題ということで御指摘いただいて、ありがとうございました。ちょっと資料のほうには載せられませんでしたけれども、今回、OECDの中間経済見通しの見直しにおきましても、ヨーロッパにおけるエネルギー供給が滞った場合というのは、わざわざリスクシナリオとして1つ分析がなされているところでございます。シナリオの中身としましては、2023年の初めから1年間、あくまで仮定ということでありますけれども、ガス価格が50%上昇したときにどのぐらいのインパクトがあるのかというものが分析をされておりまして、仮にこういう事態が生じた場合には、ベースラインと比べるとヨーロッパで2023年の成長率がさらに1と4分の1%ポイント低下するであるとか、インフレがさらに1.5%程度上振れると。それに伴って世界経済が0.5%さらに成長率としては下がって、インフレ率としてもグローバルに見て0.5%上がるというような形で分析がなされていますので、やはり主要なリスクの1つとしてこのヨーロッパのエネルギー情勢、特に冬の間のどのぐらい寒くなるかというところにもよると思いますけれども、認識されているということかと思います。

以上です。

○三村国際局長国際局長、三村でございます。本日も御出席を賜りまして、ありがとうございます。いろいろと活発な御議論もいただきまして、誠にありがとうございます。

かなりもうそれぞれの担当課長から御説明申し上げたことで、お答えとしては尽きている部分もございますけれども、幾つかお話を伺いながら若干感想めいたことも含めて申し上げますと、植田委員ですとか杉山委員からお話を伺いましたプライス・キャップの問題、ロシアや中国の保険会社に流れるだけじゃないのか、あるいは産地偽装だってできるんじゃないのかと。

これは多分このプライス・キャップの問題にとどまりませんで、恐らくあらゆる制裁について常にこの迂回ですとか回避ですとか、そういった問題というのはあり得るわけですし、もともとこのプライス・キャップの議論を始めたこと自体も、若干そういう意味では自己矛盾的なところを抱えているわけでございます。

御説明もしましたけれども、もともとEUがそういったEU企業による保険の付与の禁止を第6次制裁パッケージの中で打ち出したのに対して、アメリカがそれで全然ロシアの原油が出回らなくなったら価格が高騰するじゃないかと。そこまではいいわけですが、同時に、一方で、価格が高騰したらロシアの収入がかえって増えるんじゃないかと。こういう心配もアメリカはしているわけでして、本来であれば、本当にEUのパッケージが完全に効いて、ロシアが本当に一切輸出できなくなるのであれば――価格が高騰するのは、それ自体困りますが、別にそれでロシアの収入が増えるということには本来ならないわけで、やっぱりそこには暗黙の前提としてどうしても少しそういう漏れ出るものがあるのではないのかというところは、率直に言ってあるんだろうと思います。

先ほど調査課長から申し上げたとおり、中国やロシアの保険会社がいきなりG7、イギリスや欧州、アメリカ、日本まで含めた全ての保険会社の分を代替できるわけでは現実的にございませんし、特に再保険のネットワーク、そんなに一朝一夕で国際的なネットワークをつくれるわけでもありませんし、かつ、これは輸出する側だけが「その保険会社でいいよね」と言っても、輸入する側の港湾当局もそれでよいとしなければなかなか実際問題進みませんし、そういったことで言えばもちろん容易ではないわけですが、さはさりながらというところはございます。

その上で、多分ここのプライス・キャップの大きなポイントの1つは、ほかの制裁――当然いろんな制裁があるわけですが、ともすると、これは制裁を導入する側の国にとってはもちろん経済的に副作用がないわけではないので、したがって、G7とロシアの間の中間的な立場を取っているような国にしてみますと、一朝一夕に我々と全く同じ立場を取ってくれないというところが往々にしてあるわけですけれども、このプライス・キャップについては、G7側として我々が期待しておりますのは、これについては、例えば第三者的な中間的な地位にいる国も、自分にとって何が利益になるかというと、実はこのプライス・キャップに乗っかって、「いやいや、申し訳ないけど、G7の保険がこの価格以上だと下りないので」と、あるいは、「そういう国には、あなた、いざとなったらその価格以下で売るんでしょう」と、「じゃ、俺にもその価格で売ってよ」ということで、むしろこのプライス・キャップを導入することで、明示的にプライス・キャップに自国の措置として乗っからない国であっても、場合によってはこれを奇貨としてロシアに対するバーゲニングパワーが増えて、事によるといい意味でフリーライドしてもらって、第三国もロシアからプライス・キャップ以下の価格で買ってもらえるようになれば、それによってロシアの収入が減るではないかと。もちろんこれはロシアが生産コストをカバーできる程度で――売れば売るほど赤字になるのではロシアも売らないでしょうから、価格の具体的な設定は難しいわけですが、そのあたりのところで設定をできれば、むしろ第三国にとっても経済的な利益だけ考えても、我々のものにうまく乗ってもらうほうが彼らにとっても有利になるのではないか。したがって、これは意外とG7以外にも参加してもらえるのではないかと。そういうことも期待しながら導入をしている措置ということでございまして、その辺の特徴というものも踏まえながら、引き続きG7以外の国に対しましても、明示的な同調、あるいは、そこまでいかなくても、「ぜひこれであなた自身も価格交渉してくださいね」という話の呼びかけをしていくというようなところが今後さらにポイントになっていくのではないかと思ってございます。

それから、ロシアと気候変動の関係、これも何人かの委員から御指摘をいただいたとおりで、なかなか難しいわけですが、これも先ほど担当課長たちから御説明をしたことに尽きるわけですけれども、恐らくG7をはじめとして国際的な認識として、確かにこの足元、このウクライナの戦争が始まって以降、かなりの国がこの天然ガスにまたある種、再度依存を強めている、場合によっては石炭をさらに増やしたりというようなことで、確かに短期的には少し後戻りのような状況が増えているわけですけれども、先ほど来御説明申し上げたとおり、だからといってこのネットゼロ、気候変動の取組自体を失うことがあってはならないというところは、非常に固い共有認識であることに加えまして、これに恐らく一種地政学的な要因というのも加わって、まさにロシアの化石燃料に依存するようなこと、この依存度を下げると。明らかにロシアが外交的な、あるいは地政学的な手段としてエネルギー輸出を使ってきている中で、これへの依存を下げることは、ある意味では、気候変動のみならず、地政学的な経済安全保障の観点からも一層重要性が増しているということで、中長期的にこのネットゼロに取り組んでいくべきだというところ自体は、認識が強まりこそすれ、弱まっていることはないんだろうと思います。

その上で、恐らく欧米等を含めてマルチラテラルにいろんな議論がある中での日本の立ち位置は、ウクライナ戦争の前、昨年の頃から私は変わらないんだろうと思っておりまして、昨年のCOP26の頃から既に日本は欧米と同様にネットゼロの目標は共有はするけれども、さはさりながら、一朝一夕にあしたからいきなり全ての国が石炭を全部やめて、全て再生エネルギーに現実的にいけるわけではないので、どうしてもその移行過程においては、その移行について天然ガスも含めたエネルギー源ですとか、そういったものに対する取組、あるいはファイナンスも必要になるということで、このトランジションファイナンスの重要性というのは、我々、ずっと昨年のCOP26の頃から言い続けてきておったわけでございますけれども、恐らくこのトランジションファイナンスで天然ガスも含めて、完全にクリーンではないけれども、少しでも脱炭素化につながるような、あるいは温室効果ガス排出の削減につながるようなものを現実的な――北極星の目標は失わないけれど、道筋としては現実的な道筋をしっかりと支援していくと。これの重要性を説いていくというのが恐らく日本の立ち位置でございまして、先般の8月に行いましたTICAD8のときにも、そういった考え方、アフリカの国々に対しましても日本は表明をしました。

アフリカの国々は、アフリカ開発銀行なんかは、当然そうだ、そうだという話になっているわけですが、足元、正直申し上げまして、今、気候変動の担当チームも苦労しておりますけれども、欧米なんかからは、ともするとアジアとかアフリカに対しては、「天然ガスじゃなく、すぐクリーンエネルギーにいけ」「石炭、速攻でやめろ」みたいなことを言いながら、そういった国々にしてみると、「いやいや、あなたも足元、石炭増やしているじゃないですか」という話になって、やや欧米の、原理主義的と言うと彼らに怒られますが、そういう理想論とこのアジア、アフリカの国々の現実論にともすると若干のギャップもある中で、そこをきっちりとつなぎながら、しかし、目標としては、ネットゼロは当然人類共通の目標としてしっかりとG7の一国として後押しをしていくと。このあたりの日本の立ち位置は、高まりこそすれ、弱まることはないかなということも思っておりますので、また来年のG7議長国に向けても、そういった観点で我々としても取り組んでいくのかなというふうに思ってございます。

感想めいた話ばかりで恐縮ですけれども、私からも少し申し上げました。

○清水分科会長ありがとうございました。

それでは、次に、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策について、事務局より説明の後、意見交換の時間をお取りしたいと思います。野村調査課長、よろしくお願いいたします。

○野村調査課長それでは、次の資料に基づきまして御説明させていただきたいと思います。マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策ということでございます。

1枚おめくりいただきまして、こちら、そもそも何でそうした取組を強化していくことが必要なのかというところを最初に御説明させていただきたいと思います。なかなか日本で暮らしておりますと、そんなに意識することのないような話かもしれませんけれども、実はそれは無視できないことであるということをまず簡単に御説明したいと思います。

そもそもテロ情勢、あるいは大量破壊兵器の開発といったことにつきまして、これは報道ベース等でももう既にある程度出てくるところではございますけども、例えば昨日なんか、いきなり北朝鮮が日本の青森を通過するようなミサイルを撃ったということがございました。あるいは、イスラム国ですね、「ISIL」と書いていますけども、イスラム国の人たちが、これを繰り返してございますけども、「日本、あるいは日本人だってテロの対象としているんだぞ」ということを繰り返して言っていたりしております。

実際にテロ事件というものが、幸いまだ日本においてそうしたものが最近起きているわけではございませんけども、世界に目を向けますと、フランス、ニュージーランド、あるいはイギリス、当然、やや衝撃的な映像等も流れておりましたけども、アフガニスタンで米軍が撤退するときでございますけども、空港で爆破テロが起きたとかですね。そうしたテロ行為というものは、まだまだ世界の中では脅威としても大きく存在感を増しているというところでございますし、特に北朝鮮なんかにつきましては、我が国自身の安全保障への脅威として、どうしてもやはり認識する必要があるという状況でございます。

そうした中、日本としても、これももう御案内のとおりでございますけども、北朝鮮・イラン、あるいはテロ関係者、さらに最近ですとロシア・ベラルーシ関係に対する資産凍結措置というものを順次打ってきているところでございまして、こちらの表にも書かせていただいておりますけども、例えばテロ関係ですと、足元、483個人・団体と、北朝鮮・イランですと239個人・団体、ロシアにつきましては約1,000人いるという状況でございます。

また、こうした実際のテロ行為以外にも、技術の進展に伴いまして、様々な違法行為というものが少しずつ巧妙化しているという部分がございます。特に暗号資産を活用する形で違法行為が行われるというリスクが最近増大しているという状況でございまして、これ、例えばロシアのオリガルヒなんかが資産凍結を食らいました。だから、ロシア国内でお金を暗号資産に換えて、暗号資産をどこかほかの国に移して、そこで暗号資産を今度土地に換えてしまうとか、そうしたことを実はやっているんじゃないかと。これが資産凍結のすり抜けになっているんじゃないかという部分もございますし、あるいは、暗号資産がそういう匿名性の高いものだということで、非常に便利だなということで、北朝鮮なんかは暗号資産を窃取しようとしているんじゃないかというような話もございます。あるいは、身代金要求ですね。例えば日本国内でも、どこかの病院のデータベースをハッキングして、「ハッキングを解除してほしかったらビットコインで身代金を払ってください」というようなことが起きているというような声も実は聞かれるところでございます。

実際にこれは警察庁の統計でございますけれども、日本で現在金融庁に登録しております暗号資産の交換業者、ここから届け出られました暗号資産交換に絡む疑わしい取引の届出というものが、これが足元すごく増えてきているという状況でございまして、これは決して他人事ではないという認識を持つ必要があるんだというふうに思っておるところでございます。

そうした中、こうしたテロ資金供与、マネロン対策、あるいは拡散金融対策につきまして、世界の取組をリードしているがFATFでございます。そこも技術の進展に伴ってその基準というものを徐々に徐々に高度化させてきているところでございますけれども、我が国もこうしたFATFの取組につきまして、中心メンバーの1人として、これまでから議論・活動を主導してきているところでございます。

そうしたFATFの取組が、日本だけに限らず、世界の国にも大きく広がっていくということを通じまして、世界におきましても、そして我が国自身の安全保障の確保、そして健全な経済の発展というものを追求していく必要があるというふうに思っているところでございます。また、そうした取組をきちっとやっていくということが、我が国の国際金融センターとしての地位の向上を図っていく上でも不可欠であろうというふうに思っているところでございます。

1枚おめくりいただきまして、そうした中で、日本とFATFとの関係、どうなっているんだというところでございますけれども、実は去年の8月に日本の4回目の審査というものが行われまして、その中で日本の結果につきまして通知を受けたわけでございますけれども、基本的に、日本、マネロン・テロ資金対策、FATF基準にのっとってしっかり頑張っている分野もたくさんあるよという話ではございますけれども、他方で、もう少しやっぱり頑張ったほうがいいよというところもいろいろと指摘を受けたところでございます。

大きく分けますと、資産凍結措置の強化、あるいは暗号資産への対応の強化、そしてマネロン対策、本丸ですけども、それの強化といったものの法改正も必要ではないかという指摘も受けているところでございます。

結果としては、上中下の3段階評価の日本は「中」という評価でございまして、ちなみに、国の数で言いますと、「上」が10か国、「中」が20か国、「下」は3か国というのが足元の状況でございますけれども、そうした「中」の評価を受けているところでございますが、その「中」の評価で指摘されております様々な改善事項につきまして、審査報告書公表後3年間、毎年、改善状況を報告し、3年間でしっかりと対応を済ませてくださいということをお願いされております。

それはつぶさに見てまいりますと様々な役所の所管に関わるということもございましたので、昨年、内閣官房のほうで取りまとめる形で法整備を一緒にやろうじゃないかということで、現在、私もそちらに派遣されているところでございます。そういう中で、この臨時国会にも必要な法案を出していこうということで、現在作業を進めております。

その中で、実は外為法の改正というものも考えておりまして、その中身につきまして、次のスライドで御説明させていただきたいと思います。

このFATFの勧告に対応する法案の中で、外為法改正として大きく分けて2つのことをやりたいというふうに思っておるところでございます。

1つ目、これは制裁措置自身を強化していくという観点から、本年の6月に資金決済法の改正で創設されました新たな資産形態でありますステーブルコイン、これへの資産凍結措置を強化していくと、これが1つでございます。実は資金決済法の中での暗号資産というカテゴリーにつきまして――ビットコイン等でございますけど、ここにつきましては、4月の外為法改正におきまして、既に資産凍結の対象資産としての措置を強化するということを行っているところでございますけれども、それと同じことを6月にできましたステーブルコインについてもしっかりやっていこうということでございます。

それから、制裁のスコープ等を広げるということではございませんけども、制裁そのものの実効性をしっかりと確保するために、新たにですけれども、金融機関、暗号資産の交換業者さん、あるいはステーブルコインの取扱業者さんに対しまして、制裁措置を実施するに当たりましての中のガバナンスでございますけども、態勢整備というものをきっちりしていただきたいということをお願いしたいというふうに思っているところでございます。

こちらで、スライドで、左と右と現状と改正法案の中身を比較対照する形で示させていただいておるところでございますけれども、最初のステーブルコインへの資産凍結措置を強化するということにつきましては、大きく分けて具体的には2つのことをやりたいと。

実は、制裁対象者に対してステーブルコインを日本から移転させるという行為につきましては、これは既に外為法の規制の対象になっているところでございますけども、例えば制裁対象者が日本の国内でステーブルコインの、ある意味では業者に預けている口座の中でステーブルコインを持っていた場合におきまして、そうした日本国内で海外の制裁対象者が保有しているステーブルコインについて、その口座をしっかり凍結することで外に出ていかないようにするというのが1つ目の話でございます。

それから、ステーブルコインの取扱業者さんにつきましても、既に行っております銀行ですとか暗号資産の交換業者さんと同じように、ステーブルコインを移転する際には、移転先が制裁対象者でないことを確認するという義務を課していくということをやろうと思っているところでございます。

それから、先ほど申し上げましたけれども、金融機関、あるいは暗号資産交換業者、そしてステーブルコイン取扱業者につきまして、現在、資産凍結措置の違反を未然に防止するための態勢整備の義務というものは特段課しているわけではございませんけれども、そこにつきましても、しっかりその制裁の実効性を確保し、モニタリングがしっかりできるようにしていくという観点から、金融機関等に対しまして中での態勢整備。平たく申し上げますと、資産凍結の対象者のリストというものを、常に最新のものをきちんと備えつけておいて、そして顧客から送金等の依頼があったときには、そこに、対象者になっていないかどうかをきちんと検索してヒットさせると。そして、そうしたものに実際にお金とかが回っていかないようにすると。そのための、行内、あるいはそういう企業の中でのコンプライアンスをきちっと確保するための態勢もきちんと整備していただくと。そうした形で実際制裁の実効性を高めていきたいというのが2つ目の話でございます。

1枚おめくりいただきますと、それを外為法の立てつけの中で具体的にどのように規定していくかということでございますけれども、先ほどのステーブルコイン、これは「電子決済手段取引」と書いておるところでございますけれども、こちらにつきまして、具体的には、現在、外為法上、資本取引については、これは許可制の対象とすることができるとなっておりますので、ステーブルコインの取引、これを資本取引に含めると、みなすという形で、ステーブルコインの取引につきましても、これを資本取引として、資本取引の許可制の対象にできるようにするというのが1つ目でございます。それから、様々な本人確認、あるいは制裁対象者への支払いではないことを確認するという義務を課していく。それがステーブルコインについての改正事項でございます。

それから、右側でございますけれども、金融機関等に対しまして態勢整備義務を課すということでございますけども、こちらも先ほど申し上げましたけれども、実際に確認するに当たって必要な手順をきちんと定めていただいて、本当にその支払いをする際に資産凍結の対象者、制裁の対象者のところにお金等が渡らないような仕事の仕方がきちんとできていくようにしていただきたいということをお願いするというものでございまして、基準に沿いましてきちんとやっていただくことを担保するために、もしそうした基準から逸脱行為があると、適正な運営が行われていないということがある場合には指導・助言を行う、それでも足りない場合は勧告をし、駄目な場合には命令をし、そして最終的には罰則まで科すという形で、ここはきっちりと担保させていただきたいという形で、今回の外為法改正をしたいというふうに思っているところでございます。

すみません、私からの説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

○清水分科会長ありがとうございました。

それでは、意見交換に移りたいと思います。御意見、御質問などがございましたら、先ほどと同じ要領で御発言の意思をお知らせいただければと思います。

それでは、植田委員、お願いいたします。

○植田委員また大変な法改正、お疲れさまでございます。

いつも規制がかかるときに常に問題になってくるのは、それでどれだけ、その分だけ余分なコストがかかるかということで、恐らく今までの伝統的な銀行を使った海外送金ですと、そもそも手数料も高いんですが、時間もある程度かかるというのが分かっているわけで。その間の中に、例えば顧客の確認というのができる時間も引っくるめて時間がかかっていたというわけなんですけれども、やっぱり金融の世界でそこの送金に時間がかかる、コストがかかるというのをいかに速くするかというのが1つのある意味で目的みたいなものがあってですね。その中で、1つの手段として、こういうブロックチェーンを使った暗号資産だとかステーブルコインだとかというのが出てきている中で、この規制がもしかしてそこの――コストというよりは時間ですかね、確認のところに時間がもしもかかるようなことになってしまうと、本来の目的からするとちょっと残念なことになるのかなと。その辺はもちろんRegTechとかいって規制のほうのテクノロジーの進化もあると思うので、そういうこともあると思うんですが、それが重要かなと思います。

もう1つは、実は2週間前、ロンドンで僕は暗号資産関係の国際コンファレンスに出てきていまして、そこで1つ非常にためになった話を聞きまして。ウクライナの前経済大臣が、オンラインでの参加だったんですけども、送金を、御寄附をウクライナは全世界の方にお願いしている中で、通常の銀行の場合だとやっぱり銀行のほうで各地で拒否される。1つはこの確認事務かもしれないし、そもそも一日二日後にその送金先が本当にウクライナ国内にいるかどうかも分からないということで、普通の銀行の送金ではなかなかうまくいかなかったんだけども、暗号資産を使って主に大量に瞬時に集めることができて、今必要なお金を今まさに振り込んでくれる人が多くて、その意味では暗号資産が大変に役に立ったと、ウクライナの前経済大臣がおっしゃっていまして。

だから、難しい問題だなと思っています。例えば、当面の間、ウクライナはここに乗せないとか、何かうまく……。時間がまさに今必要なんだというようなウクライナみたいな状況があるときはどうするかというのは、ちょっと考えないといけないのかなと思った次第です。

以上です。

○清水分科会長ありがとうございました。

それでは、渡井委員、お願いいたします。

○渡井委員詳細な御説明をありがとうございました。渡井でございます。

一般的なお尋ねになってしまって恐縮ですけれども、今回を含めた対策の強化によってマネーロンダリングの防止が図られるものと思いますが、様々な取引の中でも為替の取引はマネーロンダリングに悪用されるケースが多いことから、マネーロンダリングの罪の捜査や公訴の提起を確実に行う必要が、以前からも課題として挙がっていたように思います。

そこで、捜査といいますか、起訴率の向上でしょうか、そのための取組の現状をお教えいただければ幸いに存じます。よろしくお願いいたします。

○清水分科会長ありがとうございました。

神保委員、お願いいたします。

○神保委員御説明ありがとうございました。

今回の外為法の改正自身については、ぜひ進めていただけたらと思っていますが、FATFの勧告にコンプライアントしていくための重要な課題と、今後、制裁リストに挙がっている当事者との取引を各金融機関等で対応していくという観点で少し気になっているのは、制裁対象者が必ずしも自分の名前で素直に口座をつくりに来るとはあまり思えなくて、やはり法人をつくったり、SPCをつくったり、ファンドのような形で自分の正体が分からない形で自分の資金を運用しようとするというところに対応をしなければならないと思っております。我々は法律事務所で仕事をしていて、法人の実質的支配者の明確化については、法改正と法務局の対応などに実務上の変更がありましたが、ファンドについての実質的支配者――その支配者自体については申告義務があるのですが、資金が本当に出てきているところ、誰の資金が運用されて、その法人の名前で銀行口座等がつくられて事業資金となっているか、きちんと防止につながっているのかというところは少し疑問に思っていまして、まだ制度が不足しているのではないかという点が気になっております。今後、どういう取組の御予定かというあたりも教えていただけると助かります。お願いします。

○清水分科会長ありがとうございます。

次に、オンラインで、原田先生、お願いいたします。

○原田委員FATFの勧告に基づいて対応するということの重要性は非常にあると思っています。ただ、いたちごっこの面があるかなというのも感じておりまして、今回の外為法の改正ではステーブルコインについての対応が盛り込まれているということですが、恐らく次はデジタル資産になるんじゃないかなと思っております。例えばデジタルアートですとか、デジタル資産アクセス権ですとか利用権などを移転することで、マネロンの資金としても利用されているということはあるかと思います。

今、アメリカでは、NFTのマネロン対策の議論がされているところだと思います。日本では、与党がNFT対策のホワイトペーパーを出した段階で、まだまだ法的な位置づけは定まっていないかと思うんですが、今後、対応がなされると、恐らく外為法でもマネロン対策としての法的な手当てがNFTについてもなされるようになるのじゃないかなというのは思っているところでありまして、多少時間はかかるかと思うんですけれども。でも、その頃になるとまた別のデジタルなものに議論が移っているということもありますので、可能であれば、こういった形でステーブルコインを加えます、暗号資産を加えましたという形ではなく、ほかで対応したものは外為法でも取り込めるような形での仕組みができれば、より迅速に対応できるのではないかというのが感想めいた意見になります。

そして、3ページの右下のほうで議論していただいている、③と書いているところなんですけれども、今回は金融機関などに対して態勢を整備してもらう義務を課すという形でいいですけれども、小さな業者も対象になっているかと思いますし、登録業者ですし、登録していないところは、じゃ、どうするんだという議論もあるかと思いますし、免許を与えている業者だけではないということで、どこまで態勢整備を求められるのかとどう遵守してもらうのかというのは、特に登録していない業者についてはもう少し今後考えていく必要があるのかなというふうに感じました。

以上になります。ありがとうございます。

○清水分科会長ありがとうございます。

玉木委員、お願いいたします。

○玉木委員ありがとうございます。

内閣官房で法案を取りまとめるという、あまりにもたくさんの役所が関与しているのでそういう進め方になると思いますけれども、法案審議の過程で反対論というのはどういうものがあり得るのか。

もう1つは、その金融機関等に対し態勢整備義務を課すということの具体的な意味ですけれども、例えばみずほのケース、一種、システム障害が起こって、そのためにえいやとチェックしないでやってしまった。これは態勢整備を怠ったという問題なのか、態勢整備はあったけれども実際には外為法違反をしてしまったという整理になるのか、どっちなんでしょうか。

以上です。

○清水分科会長ありがとうございます。

伊藤(恵)委員、お願いいたします。

○伊藤(恵)委員御説明どうもありがとうございました。

私もこの改正の方向に関して特に異議はないんですけれども、既にほかの委員の先生方もおっしゃっていたように、やはりこの確認をする時間やコストとか、体制もどういう体制をちょっと想定しているのかというところが具体的にまだよく分からないなという印象を持ちました。法律を整備するということ自体、重要で、よいと思うんですけれども、例えばデータベースのようなものの整備といった技術的なところというところ、整備、どういう形で進めていこうというふうな方向なのかと。

先ほども法人の支配者だとか、ファンドの資金はどこから出ているかとか、そういったデータに関して、やはり日本は様々なデータベース、政府がしっかり整備できていないんじゃないかという印象を常々持っています。統計等の委員もやっていますけれども、そちらも民間のデータベースに頼っている部分がかなり多くて、こういったなかなか国際的にもいろんな業者がいるという状況を政府の中でデータベース化をするのも大変なのかもしれないですけれども、やはり個々の金融機関に、じゃ、何をさせて、政府としてはどういうサポートを技術的にしていくのか、そのあたりちょっとお尋ねできればと思います。

以上です。ありがとうございました。

○清水分科会長ありがとうございました。

それでは、いただきました御質問について、お答えをよろしくお願いいたします。

○野村調査課長多くの御質問どうもありがとうございます。順次お答えしていきたいと思います。

まず、植田先生からのお話がありましたけれども、実際、確認義務とか、いろいろと義務をかけていくということの中で、実際にその送金に当たってのコストとか時間とかが変わってきてしまって、せっかくのメリットを潰してしまうんじゃないかという御懸念だと思いますけれども、ここにつきましては2点申し上げたいと思います。

実際にその確認をしますと、それに基づいて送金の取扱いをするということについて、実はいろいろと我々も業界の方たちとお話しさせていただいているところではあるんですけれども、実際問題としては、かなりシステム化された対応というものが可能であるというところでございまして、例えば今回の改正の中で、外為法ではないんですけど、犯収法の中なんですけれども、暗号資産について、トラベルルールというものをこれからしっかりと日本でも手当てしていきましょうという話でございます。

ここは何かといいますと、暗号資産は、今、送付人、受取人それぞれの氏素性、これは特段情報としてつけずに暗号資産だけで交換できるという状況。これでは銀行送金の被仕向けにしかならないじゃないかということで、きっちりと誰から誰に渡ったのかというのが分かるように、追跡できるようにしましょうという話ではあるんですけれども、それにつきましては、例えば業者さんが顧客を実際に迎えるときに、本人確認、これはきっちり既に法律の中でされております。そういう中で名前やら住所やら分かっておりますので、それをきっちりとシステム対応してひもづける中で、そういう中できちっと時間を――新たな確認を課すとしても、その時間が短縮できるようにしていくと。あるいは、制裁対象者のリストにつきましても、かなりシステム対応で検索可能な体制が既にある程度整っているという状況でございますので、もちろん新たな義務を課すわけでございますけども、それが最大限支障として、皆さんの足を引っ張るということにはならないような努力というものはきっちりとしていきたいというふうには思っているところでございます。

それから、暗号資産関係の中で、ウクライナの方たち、お金での寄附というものは、なかなか銀行からというのは難しい部分があると。そういう中で、暗号資産経由でいろいろ頂いていると。そういう中で、こうしたウクライナについて、暗号資産であまりきつく締め過ぎると、それはそれでダウンサイドもありますよというお話だったと思いますけれども、今回の外為法改正でいろいろと規制をかけようとしております対象というのは、これは要するに被害者であるウクライナ側というよりかは、加害者であるロシアですね、資産凍結の対象者のそちらの人に対して目をよりしっかりと光らせていくということを念頭に置いているものでございまして、受け取り側になるという人たち、ウクライナの人たちに対して目を光らせていくということを今回念頭に置いているということではございません。

それから、渡井先生からのお話でございましたけども、実際、マネロンとかの捜査の状況ですね、これをどうやってやっていくんだという話でございました。

そういう中で、暗号資産とかも使ったりすることもありますし、捜査自体もしっかりやっていくと。これはすみません、直接の所管ではないのであれですけれども、警察庁のほうでいろいろとこうしたマネロン犯罪についての取組としてやっていることでございますけれども、サイバーポリスですね、サイバーポリスというものを新たな大きな仕事の柱として彼ら自身が実は立ち上げております。そういう中で、サイバー空間の中で行われる各種の犯罪について、きっちりと日本の警察庁が目を光らせていくということは、新たな取組としてされているというところでございます。

それから、実際に、先ほどもちらっと申し上げましたけれども、暗号資産を用いた犯罪資金の移転と疑われるような取引、これについてきっちりと目を光らせていくという観点から、既に金融機関等の協力を仰ぐ形で、疑わしい取引の届出をたくさん受けております。その届出件数は大きく増えてきているところでございますけども、これ、何もやたらめったらみんな疑わしいというものを報告してきているというものではございませんでして、実際にどういうケースだったら疑わしい方向として上げてくださいというものをきちっとある程度例を示す形で、警察庁のほうでいろいろと業者さんに対して研修をやっています。研修をやる中で、何でもかんでもじゃなくて、ある程度本当に疑わしいというものに絞って報告が来るという形にしています。それでも件数が増えてきております。ただ、ある程度絞られた確度の高い情報がたくさん増えてきているところでございますので、これからきっちりと捜査への生かし方というものは、捜査の実効性というものは高まっていくんじゃないかなというふうに思っております。

では、実際どういうのが疑わしいのかというところでございますけれども、これは私どもがお伺いしている話でございますけども、例えば我々公務員のような人間が突然ものすごい巨額のお金を持ってきたと、これは何か悪いことをこの人はしているんじゃないかというようなケース。あるいは、送金をする際に、とにかく徹底的に小口にしてくるとかですね。要するに、それはやっぱり疑わしい取引の手口として、典型例として、金融機関等に警察のほうからお示しさせていただいていると。そういう中で、上がってくる情報の精度も高めていくという中で、実際、捜査の実効性に生かしていくという形の取組を今されているというふうに伺っているところでございます。

それから、神保先生から、特に偽名口座とか正体を隠すような人たちにどういうふうに取り組んでいくのかという中で、先生からもお話ございましたけれども、法務省さんのほうで実際に、これまた株式会社を対象としたものでございまして、BOのリスト制度という中で、実際に株式会社、自分の実質的支配者、会社としての法人の実質的支配者について、きちんと法務局で確認していただいて、それを持っていけば自分のBOは誰ですよということはきちんと金融機関に認証してもらえるという制度が始まっているところでございます。

こうした取組につきまして、当然FATFとしても、BOの透明性、実質的支配者の透明性を高めていく取組というものは、実は順次強化しているところでございまして、そのために、日本としても取り組んでいくという中で、法務省の取組というものも実は始まったものでございます。

ただ、その株式会社だけでいいのかと。実は先ほどファンドとかございましたけれども、これもFATFの考え方の中では、SPCとかも一応法人の一類型というふうに位置づけられておりますので、これも実は網にかかってくることになっております。そういう中で、実際にどういうふうにBOの透明性をこれから高めていくのかと。実は4次審査というよりかは、この次の5次審査の中でしっかりと取り組んでいかなきゃいけない課題の1つでもございます。

今回の法案につきまして、基本的には4次審査の指摘事項に対応していくという中で括らせていただいておりますけれども、実は法改正の対応だけではなくて、私自身、財務省と警察庁とで共同議長となる形で、5次審査のこともにらんで、これからの日本のマネロン・テロ資金・拡散金融対策について、様々な行動計画というものを実は設けているところでございまして、その中でもBOの透明性の向上のために日本政府としてどういうことに取り組んでいくのかということをきっちりと定めた上で、それをきちんと実行していくということで、関係省庁、認識共通しております。ここはしっかりとこれからも取り組んでいきたいというふうに思っているところでございます。

それから、原田先生からのお話の中で、結局、いろんな形の資産形態が出てくる中でいたちごっこであるのではないかという話ございました。

確かにそういう面は否めません。今回、暗号資産、そしてステーブルコインと、いろいろと我々、取組をしているところでございますけれども、FATF自身にとっても、ここは実はいたちごっこというのは大きな課題でございまして、これからのFATFの基準をどう高度化させていくかという中で、まさにこのバーチャルアセットの分野ですね、バーチャルアセットの分野が抜け穴にならないにするためにどういうふうに対応していくかということをきちんとFATFの中で議論していこうということで、そのためのグループというものが実は立ち上げられております。現在、そのグループの議論を主導するという立場で日本とアメリカ、これが今議論を主導する形で、ここのところの基準を、高度化について貢献していくとしている状況でございます。

今後、当然こういうものは瞬時に国境を越えるという話でございますので、いかに国際的に足並みをそろえてやっていくかということが大事なんだろうというふうに思っております。そういう中で、FATFの基準の中にそれをこれからきちっと取り込んで、それに沿ってみんなで足並みをそろえて実施していくということが大事だと思っております。

それを実際にやっていく際に、先ほど先生からお話ございましたけども、例えばNFTとか、こういうものが今後資産形態として定義されるときに、そういうときに合わせて――定義されたその後で外為を後追いでもう一遍やるんじゃなくて、そういうときにある程度足並みをそろえてやればタイムラグもないんじゃないかというお話ございましたけども、それは確かにそういう形での立法という形というものは有効だと思っておりますので、そういうものはしっかりと我々も留意して、これからの立法作業は進めていきたいというふうに思っているところでございます。

それから、玉木先生からの御質問をいただいております。

まず、法案審議の反対論としてどういうものがあり得るかというところでございます。

これ、実は私も、寝ても覚めてもとは申しませんけれども、実際にこれからの法案審議ということで、シャドーボクシングを頭の中でいろいろとやっているところでございます。

実際に様々な方にお会いする中で伺っておりますと、幾つか、反対論ではないんですけれども、意見として伺っているものとしましては、外為法改正について特にという話はお伺いしてはおりませんけれども、例えば、これはある程度、バイアスがかかっているとは申し上げませんけれども、実は今回の法案の中でマネロン罪そのものの懲役刑の上限を引き上げるというような話もございます。これは法務省さんの所管の法律の中でそういう手当てをしていただくわけでございます。もちろんこれはFATFの勧告の中でしっかりと指摘されたことについて対応するものでございますけれども、そもそもその懲役刑を引き上げるということについて、ある程度もう少し慎重な検討が必要ではないかと、そうした意見にも出会うことがございます。

ただ、実際問題、この懲役刑の法定刑の上限の問題につきましても、実は日本の場合、マネーロンダリングの上限5年と、でも、詐欺でも10年という中で、詐欺してもうけた金、マネロンしたら5年で済むんかいという話でございます。そこでちょっと変なんじゃないのと指摘を受けておりまして、それに合わせるというものでございますので、そうした懲役刑の引上げの合理性につきましても、これはしっかりと法案審議の中でもしそういう意見がございましたら、しっかりと説明していきたいというふうに思っているところでございます。

それから、みずほのケースに絡めた態勢整備義務の話をいただいているところでございます。

これ、ちょっとどこまで言えるかあれですけれども、基本的に我々の認識といたしましては、当然、態勢整備義務を今回かけますけれども、メガさんとかは、態勢整備、これは基本的にほぼもう皆さんきちんとお持ちなんです。我々の意図としては、そのメガさんが持っておられるようなきちんと最新のアップデートされたリスト、制裁対象者のリストをもって、それをシステム的に検索をして、ヒットした場合には実際の取引に応じない、こうした手順をきちっと定めて、しかも、行内のコンプライアンス体制もきちんと整えていただいているという、そういう態勢を、ほかの業者さんにもきちんと同じようなことをやっていただきたいという部分が実は狙いでございます。

みずほについて、残念ながら、その態勢自体は義務化はしておりませんけども、ちゃんとそういうのがございました。ございましたけれども、それを飛ばしてやってしまったと。そういうものについては、これはしっかりと外為法上の違反行為ということで、行政処分という形で対応させていただいたところでございます。

今回の態勢整備義務につきましても、同じように、先ほどの資料でも説明させていただきましたけども、きちんと基準に沿った対応がなされていないという場合には、まずは指導・助言させていただくと、それでもなかなか対応いただけない場合には勧告させていただいて、それでもという場合、命令させていただいて、最後は罰則という形で、その実効性をしっかり担保していきたいというふうに思っているところでございます。

それから、伊藤(恵)先生からのお話でございますけども、こちらも態勢整備義務の話ございました。

ここにつきまして、政府としてどうサポートしていくかということでございますけども、今回の態勢整備につきましては、きちんと皆さんが透明性のある形で何をやればいいかということが分かるようにきちんとしていきたいというふうに思っているところでございまして、今回の法律を制定することを受けまして、主務大臣たる財務大臣において、実際の態勢整備義務の基準というもの、遵守基準というものをしっかりとお示しさせていただいて、それに沿って御対応いただきたいというふうに思っているところでございます。ただ、基本的には、既にある程度大きなところであれば、態勢整備というものはそれなりにはきちんと整っているものでございますので、大きな大作業が急激に発生すると、それによって大きな混乱を招くということにはならないんじゃないかというふうには思っているところでございます。

以上でございます。

○清水分科会長ありがとうございました。

○植田委員ありがとうございます。すみません、1つだけちょっと、私もうろ覚えで、確認だけ野村課長にしたいのが、さっきちょっとウクライナでなくてロシアを念頭に置いた話だとおっしゃいましたが、今現在ロシアに対して規制をかけているのは、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策としてやっていたんでしたっけ。それとも別の理由でしたか。そこだけちょっと念のため確認をしておきたいなと思った次第です。

○野村調査課長よろしいでしょうか。ロシアに対する資産凍結措置というものは、外為法で既に対象者928個人・団体に対して資産凍結措置をやっております。これはプーチン氏はじめオリガルヒの方、その他たくさんおられますけども、そういう方たちに対しての制裁につきまして、こういう人たちに対してお金を送ると、これは当然外為法違反ということになってまいります。これは要するに犯罪資金ということになってまいりますので、そうしたことが起きないようにするというのは、これはやはり、テロ資金供与とまで申しませんけれども、でも、資産凍結措置をきっちりと強化していくというのは、悪い人にお金が渡らないようにする、悪いやつの資金源を断つという大きな目標がございます。そういう意味では、FATFの勧告の精神ともきっちり合致しておりますし、実際に資産凍結措置を強化していきましょうということにつきましても、これはFATFの基準としても明らかにされているところでございますので、広い意味ではFATFの基準にも、勧告にも沿った部分というのは当然あるんだろうというふうに思っているところでございます。

○植田委員それは全くそうなんですけど、理由はこれではないですよねという。

○野村調査課長分かりました。FATFの基準でロシア、ベラルーシの資産凍結をしろと言われているわけではございません。そういうことでございます。

○三村国際局長三村でございます。

幾つか申し上げようと思いますけれども、まさに恐らく今の植田委員の御質問のところは、このFATFの中の議論になっているところのマネロン対策、テロ資金対策、拡散金融対策という話と、それからの外為法上の経済制裁の根拠になっている事柄とに、そこがちょっと違う切り口になっているということに尽きると私は思っておりまして。

外為法上、御承知のとおり、安全保障理事会の決議があったような、そういう国際条約に基づく義務として制裁を科す場合、国際協調としてやる場合、それから第3に、北朝鮮のようなケースですけれども、閣議決定を経て我が国の安全保障に関わるということで、単独であっても経済制裁をする場合、この3類型が基本あるわけでございます。

ロシアの場合には、当然、第2類型――安保理決議は残念ながらあるわけはございませんので、国際協調という文脈の中で、外為法上は国際協調として制裁をやっているということになるわけでございまして、この目的が何なのかというのは、したがって、法的な整理があるわけではありませんけれども、オリガルヒなんかの資産凍結ということであれば、それは腐敗とかそういったことを念頭に置いた、いわゆる古典的なマネロン対策、腐敗資金に対する対策という側面も当然ございましょうし、あるいは、それが一部テロ的な活動に流れていれば、テロ資金対策ということにもなりましょうし、当然、今、現にこれだけ大量破壊の活動がウクライナで行われているわけですから、それの資金源を断つという観点で言えば、拡散金融の対策にも行く行くはつながると、あるいは直接つながると、こういう観点でやっているという、そういう整理だろうと思います。

それで、植田委員が前におっしゃった、まさに実際これをやっていく上での時間とかコストというところ、先ほど野村からも申し上げたように、いろんなデータベース、御承知のようにできてございまして、現状、少なくとも安保理決議での制裁対象になっているようなもののリスト、これはもう随時安保理決議とともに非常に機動的に更新されたものがございますので、基本的にそれぞれの金融機関さんいずれもこのリストを――当然一定のコストはかかりますけれども、購入をいただいて、もちろんそれに場合によって自分自身の日頃の情報収集で得たリストも加えた形でチェックリストのようなものを作って、それにシステム的に充てていただいてチェックをいただいていると、こういう現状になっていると理解をしております。

暗号資産の場合も同様でして、暗号資産の場合、御承知のように、別に個人の名前とかが常にあるわけではありませんで、送付先なんか単なる訳の分からない数字やアルファベットの羅列のアドレスにすぎないようなケースもあるわけですけれども、これも既にアメリカなんかでは制裁対象者が持っているアドレス――もちろんこれは把握できた場合に限りますけれども、把握した場合には、そういう制裁対象者が保有するアドレスのリストみたいなものはもう既に一般に入手可能な状態になっておりますので、我々としてはぜひそういったもの――一定のコストはかかりますけれども、ぜひそれを導入いただきたいということはお願いをしているところでございます。

それからもう1点、ここで難しいのは、仮にチェックできたとして、次の話として、まさにそれを送り先と送り元と、その受け取り側と送る側と双方で共有をしないといけないよねという話がございます。銀行の場合、まさにいっとき話題になりましたSWIFTなんかで、当然、送金者と、それから受け取り側の情報というのは両方の銀行で共有されるわけですが、暗号資産の場合、実は直ちにそれがなかったということがFATFの基準の導入以来悩みだったわけですけれども、これが幸いにしまして――日本が先ほどちょっと野村からもありましたグループの共同議長なんかも務める中で、業界とも議論しまして、こういうシステムが幸い一応世界的にはできてまいりましたので、一応、今、システム的には暗号資産業者さんがSWIFTなんかと同じような形でシステム的に海外であっても――相手方もそういうシステムを導入してくれていることが条件にはなってしまいますが、システム的にそういう情報を共有することができるような、こういったこともできる形になってきました。

実はそれを受けまして、今回の犯収法の部分でございますので、今日御紹介しておりませんけれども、この一連の法改正の中で、これ、トラベルルールと呼んでおりますけれども、この送金人と受け取り側の情報を業者間で共有することを義務づける、こういうルールも今回導入をしようとしているところでございます。

その上で、もちろんこの時間というところは、これは根源的にはFATFの話だけではございませんで、一般的なクロスボーダーの送金自体に時間が銀行ルートだとかかり過ぎるんじゃないのというそれ自体の問題でございまして、これはまさにそれも踏まえて、実際リブラとかいろんな話が出てきたことをきっかけに、御承知のように、今G20でもこのクロスボーダーペイメントについて、もう少し迅速化、あるいはもうちょっと低コスト化、もう少しアクセシビリティ、包摂性、そういったものを高めようよという議論をまさにG20、あるいはFSB等々でもやっておるわけでございまして、こういったものを併せて進めていくということが当然に必要になってくるんだろうと思います。

先ほどのウクライナのお話にもあったように、これ、常に悪いやつのものは断ちたいし、一方で便利なものはということで、常にイノベーションの話ですので、いかに便益は最大化し、リスクやコストや問題は最小化するかということで、常に一定のトレードオフはある議論で難しいところはありますが、この問題だけではなくて、そういったクロスボーダーの銀行送金自体の利便性、迅速性を高める話と併せてやっていく話なんだろうというふうに思ってございます。

それから、幾つかかいつまんで申し上げますと、実質的支配者の話は、先ほど野村からもお答えをしましたが、まさに日本の審査――今回は第4次審査へのまずは対応ということで、あまりそこをプレーアップさせておりませんけれども、日本の審査を受けた後で実はFATFの基準のほうはさらにバージョンアップをしておりまして、これは法人の実質的支配者だけではなくて、いわゆる信託のような枠組みを含めて、じゃ、信託の実質的な受益者は誰なんだとか、そういったところまで含めてできるだけ網を広げていくべきではないかという野心的な議論、ここまでも行われておりますし、今後も引き続きFATFの中で行われていくんだろうと思いますので、まさに先ほど野村からも申し上げたように、間違いなく第5次審査に向けてはまた大きな議論になってまいります。

原田委員の御指摘にもありましたように、いつもいつも後追いでもいけなくて、パッチワーク的でもいけなくて、できるだけ先も見据えながらということではありますが、同時に、FATFの話ですので、日本だけが何か先走ってもあまり意味がなくて、国際的なネットワークの中でみんなで足並みをそろえてやるということがまた常に必要不可欠な面もありますので、この第5次審査に向けての、全体的にFATF基準を受けてこれから各国もさらに取組を強化していくと思いますので、我々もその中でさらにやっていかなければいけない話かなというふうに思ってございます。

それから、玉木委員から、みずほ銀行の問題、御指摘がありました。

若干、もう公表している話でもありますので、私自身があの件をどういうふうに捉えているかということで申し上げますと、これは一言で言いますと、システム部門とコンプライアンス部門がお互い、システム部門はシステムのことは分かっているけれども法令が分かっていない、コンプライアンス部門は法令のことが分かっているけどもシステムのことが分かっていないということの結果として起きたものだというふうに私は思ってございまして、端的に言うと、あのときにシステム部門は、ここでこういう応急処置をしたら一旦保留している取引も含めて全部流れていきますということをシステム部門としては分かっているんですが、それが外為法17条違反になるという法令的な知識までシステム部門は持っていないと。コンプライアンス部門は、当然ここ、保留しているものは保留しておかないと確認義務違反になるということは御認識されているんですが、この応急処置をしたらその保留されているものまでが流れてしまうということをその瞬間に認識はされていないと。

こういう中で起きてしまったというようなものでありまして、やっぱりこのシステム――どうしてもこれはシステム対応で実質的にはやることになるわけですが、このシステム部門とコンプライアンス部門、そして両方またがった上でのマネジメントの的確な判断というものをやっていただくための絶えずの情報共有というものが絶対に必要だろうと思っておりまして、これはみずほの件だけではございませんけれども、例えばどことは申しませんが、我々、検査なんかに入りますと、例えば外資系なんかも当然国際送金ですから多いわけですけれども、システム開発なんかになりますとしばしば本店のほうで進めておられて、本店は別に日本の外為法まで一々把握はしておりませんので、そうするとともすると外為法のところがちょっとおざなりになったままシステム開発がいってしまいがちで、日本の拠点がうまくそこに普通はちゃんと気づいて、外為法上の義務の履行にも抜かりのないような対応をいただくんですけれども、時々それがちょっとあれっとなることがあり得るという状況が常にございます。

なので、まさしくこの確認義務を実際にいかに実際上やるかというところは、まさに外資系であれば本店と日本の拠点、あるいは日本の銀行であってもコンプライアンス部門とシステム部門、そして営業部門というところの総括的な情報をいかに共有をして対応に遺漏なきを期していただくかということが結局は最後要諦だと思っておりまして、そういう意味でまさにこれはガバナンスの問題であるということで、これはどこまで詳しく基準自体に書き込んでいただくのか、どこから先は運用としてやっていただくのか、またこれからやりながら考えているところもございますけれども、日頃我々が検査等で見ている限りにおいて、そういった今申し上げたようなガバナンスの問題というところが最後は要諦だと思っておりますので、そのあたりを取り組んでいただくためにも、これを法律上の態勢整備義務という形でお願いをしたいと思っていると、こういうことでございます。

以上でございます。

○清水分科会長ありがとうございました。

まだ御質問、御意見などもあろうかと思いますが、時間も過ぎておりますので、これで本日の議事を終了させていただきます。

なお、今回の議事録の作成は私に一任いただければと存じます。その際、発言部分を事前に御覧になりたい委員の方におかれましては、会合終了後にその旨を事務局に御連絡いただくということにいたしまして、御連絡いただきました委員の方には議事録の案の段階で事務局より送付したいと考えております。その後1週間程度の間に御意見がない場合には御了解いただいたものとさせていただきます。

次回の分科会につきましては、事務局と相談の上、御連絡させていただきます。

本日は、長時間にわたり御出席賜り、ありがとうございました。

午前11時37分閉会