関税・外国為替等審議会
第51回外国為替等分科会議事録
令和4年6月10日(金)
財務省 国際局
於 財務省第3特別会議室
(本庁舎4階)
1.開会
2.最近の国際金融情勢について
3.アジア地域金融協力について
4.最近の外為法をめぐる状況等について
5.閉会
出席者 | |||
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委員 |
伊藤 恵子 |
財務省 |
三村国際局長 |
亀坂 安紀子 |
土谷国際局次長 |
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河野 真理子 |
内野国際局審議官 |
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神作 裕之 |
吉田国際局審議官 |
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清水 順子 |
緒方副財務官 |
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神保 寛子 |
岸副財務官 |
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杉山 晶子 |
今村国際局総務課長 |
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高山 一郎 |
陣田国際局調査課長 |
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田村 善之 |
飯塚国際機構課長 |
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根本 直子 |
森地域協力課長 |
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原田 喜美枝 |
田部開発機関課長 |
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渡井 理佳子 |
土生外国為替室長 |
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臨時委員 |
安藤 光代 |
桜田調査課企画官 |
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植田 健一 |
髙橋投資企画審査室長 |
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大野 早苗 |
山下為替実査室長 |
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小枝 淳子 |
髙木資金移転対策室長 |
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佐藤 清隆 |
梶山地域協力企画官 |
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澤田 康幸 |
高橋開発企画官 |
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専門委員 |
伊藤 亜聖 |
増原資金管理室長 |
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林 信光 |
棚瀨資金管理専門官 |
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小林開発企画官 |
午前10時00分開会
○清水分科会長それでは、ただいまより第51回外国為替等分科会を開催いたします。
委員の皆様方におかれましては、御多用中のところ御出席いただきまして、ありがとうございます。
本日、オンラインでの参加を含め20名の委員に御参加いただいております。
まず、本日の議事に入ります前に、委員の異動につきまして、新たに國分文也委員が就任されましたので、御報告申し上げます。
さて、本日も新型コロナウイルスの感染拡大の防止の観点を踏まえた対応を行うこととしており、御協力のほどよろしくお願いいたします。具体的な留意点などについて事務局より説明をお願いいたします。
○陣田調査課長調査課長の陣田でございます。
会議室で御参加の皆様におかれましては、オンラインで御参加の皆様方に音声が明瞭に伝わりますよう、できるだけマイクに近づいて御発言いただきますようお願いいたします。また、オンラインで御参加の皆様におかれましては、御発言時以外はミュートにしていただきますようお願いいたします。御協力のほどよろしくお願いいたします。
○清水分科会長それでは、本日の議事に入りたいと存じます。本日の議題は、最近の国際金融情勢について、アジア地域金融協力について、最近の外為法をめぐる状況等についての3つです。
まず、最近の国際金融情勢につきまして、事務局より説明の後、意見交換の時間をお取りしたいと思います。それでは、飯塚国際機構課長、よろしくお願いいたします。
○飯塚国際機構課長よろしくお願いします。国際機構課長の飯塚でございます。
最近の国際金融情勢についてということで、5月に行われましたG7から4月に行われたG20、G7に遡る形で紹介させていただいた後で各論について若干紹介したいと思います。両会議とも日本からは財務省から鈴木大臣、日本銀行から黒田総裁が参加されました。
初めに、会議の結果、総論についてですけれども、1ページおめくりいただいて2ページ目、もう1ページおめくりいただきまして、5月19日から20日の2日間で行われたG7財務大臣・中央銀行総裁会議についてお話をしたいと思います。2022年の議長国ドイツは、Sustainable planetをはじめとしまして幾つかのいろいろな政策目標を念頭に置いて進めていたのですけれども、2月から起こりましたロシアのウクライナへの侵攻の対応に追われて、2022年前半は危機対応のフォーラムとしてのG7の役割が際立った印象があります。4月のワシントンのG7はロシア・ウクライナの問題に特化した議論が行われまして、G20とは別に開催された5月のG7でも、ほかの課題についての議論がいろいろ行われたわけですけれども、世間の関心は専らウクライナ支援でありまして、報道でもそこが一番取り上げられた印象。
まず、ウクライナ支援ですけれども、ウクライナが基本的サービスの提供継続をできるように、2022年中に既に198億ドルの短期的財政支援を動員した旨を表明しました。後ほど説明しますが、4月のG7コミュニケでは、2022年及びそれ以降に向けて240億ドルを超える支援を提供及びプレッジということをしておりますけれども、そこに新規分を加えまして、軍事支援、人道支援を除いて、2022年に執行が見込まれている財政支援に限って集計した金額になります。新規分ですけれども、4月のワシントンでの会議以降、5月のG7に向けて1か月弱の間にプレッジが95億ドルなされています。日本からは、世銀との協調融資を6億ドルに倍増しまして、とにかく早く資金を出すことが重要ということで、6月までにディスバースできるように手続を進めることを表明しております。
その下の注にございますけれども、5月の会議の段階では、欧州委員会が最大90億ユーロのマクロ金融支援を提案しておりまして、今後相当の金額がディスバースされる見込みでありますけれども、加盟国の承認手続中でありまして、この金額には含まれておりません。
次に、当審議会でも議論されているロシアの制裁についてです。G7で緊密に連携して当たることをしておりまして、断固として協調した制裁をコミットすることと、ロシアを世界経済から孤立させることによって戦争の代償を高めることを確認しております。
日本からは、国内で厳しい制裁に対する理解を得るためにも、効果を最大化しつつ、コストは最小化する必要性を指摘しております。輸出等の実体経済面では及ぼす影響に配慮がなされていても、金融面での取引は取組が整合的でないために止まってしまっては台なしになりますので、追加制裁の内容や時間軸はロシアへのエネルギー依存度を下げる各国の取組と整合的に設計する必要があること、第三国によるバックフィリングへの対応も重要であるということを強調しております。
次のページをおめくりください。次に、毎年G7で行われてきている議論であります。
まず、為替ですけれども、日本からは、為替の変動が拡大する中で、これまでの合意事項を再確認することが重要と強調しています。共同声明の中では、2017年5月の合意を再確認する。すなわち、ここに書いてありますように、為替レートの過度な変動や無秩序な動きは、経済、金融の安定に悪影響を与えることをはじめとして、為替レートは市場において決定されるとか、為替市場における行動に関して緊密に協議するといったことの合意を再確認しております。
マクロ経済については、ロシアの侵略によるエネルギー・食料価格の上昇等に協力して対応することを確認しておりまして、短期的な取組としては、戦争がエネルギー・食料価格の大幅な上昇等の影響を及ぼす中で、必要に応じて的を絞った支援を提供して、経済への影響を最小限に抑えるために協力することを確認しております。金融政策については、インフレ予想をアンカーするために、データを踏まえて明確なコミュニケーションを行いながら適切に金融政策を調整することを確認しております。これは4月のIMFCで合意されたwell-negotiated languageでありまして、いろいろな議論はあったのですけれども、ここに落ち着いたということであります。
中長期的な財政政策としましては、財政の持続可能性と強靱な金融セクターを実現できるように、安定・成長を志向する中期的なマクロ政策にコミットしていくことが確認されております。
次に、気候変動ですけれども、ショルツ首相が財務大臣の頃から提唱していた気候クラブについて、2月に出された首脳宣言では、開放的で協調的な国際気候クラブの立ち上げを追求する。これはexploreという英語の訳ですけれども、追求するという合意に沿って、財務大臣・中央銀行総裁間で気候クラブの提案について初めて議論がなされたということであります。
日本からは、気候クラブを、閉鎖的なものでなくて、開放的で協調的な枠組みにするためには、多様なアプローチを許容して、例えば炭素税とか特定の政策手段ではなくて、炭素強度の低下という結果に焦点を置くことを強調しました。そうした議論を経て共同声明でも、政策の組み合わせが複雑で多様であることを考慮して、炭素強度を含めて様々な緩和政策の比較手法について作業を行うことが確認されております。
1ページおめくりください。4ページ目です。次に、金融関係ですけれども、暗号資産について、会合のときに、暗号資産市場がドルにリンクするステーブルコインが暴落したことがありまして、そうしたことを踏まえて、FSBに対して暗号資産に関する一貫性のある包括的な規制の策定と実施を求めるという合意がなされました。これから作業がなされていくということであります。
債務問題につきましては、後ほど説明しますけれども、多くの低所得国において圧倒的な債権者である中国でプロセスが遅延していることがあります。これから金利上昇が見込まれる中で債務問題への対応が遅れていることを踏まえて、大臣間で強烈な危機感が共有されたということであります。3点ございまして、債務再編のための多国間枠組み――これは中国を含む、いわゆるコモンフレームワークを改善することが緊急に必要であること。2点目は、低所得国に多額の債権を有する国として、中国のような非パリクラブ国とコミュニケで名指しをしまして、そうした国も含めて全ての債権国が建設的に貢献することが不可欠であるということが合意されました。スリランカの対外支払いを止めておりますけれども、スリランカへの対応で非パリクラブ債権者に協調を要請もしております。3点目ですけれども、債務データの正確性と透明性を高めるために、債権国がIMF・世銀にデータを共有して協力することを要請しています。
国際保健につきましては、これは日本が2019年にG20の議長を務めた際に始めた財務と保健の合同会議をG7でも開催しました。G20の財務・保健のタスクフォースでパンデミックに対する予防、備え、対応(PPR)を効果的に行うための議論が行われてきておりまして、そこでG20の一部の国を除いて、おおむね支持されてきている資金ギャップ対応への取組として世界銀行に新たな基金をつくることをG7として支持を表明しております。
国際課税につきましては、去年10月に合意がなされた課税権の市場国への再配分とグローバル・ミニマム課税、この2本の柱についての合意の適時かつ効果的な実施に対する強い政治的コミットメントを再確認しております。
5ページ目をおめくりください。続きまして、4月に行われたG20、G7に遡りまして説明させていただきます。G20の財務大臣・中央銀行総裁会議というのは、ロシアの侵略後初めての閣僚会議ということで、ロシアの参加問題が報道における最大の焦点となった会合で、G20の共同声明は発出されずに、議長国のインドネシアが会見で議論を総括したという会議でありました。
G20におきましては、日本もG7各国と連携しまして異例の対応として3点。ロシアの財務大臣はオンライン参加になりました。ウクライナの財務大臣が対面で参加して、リードスピーチを実施しました。G7をはじめとして多くの国がロシアの侵略を厳しく非難したという異例の対応を取りました。議長国インドネシアの会見でも、「多くの国がロシアの戦争をいわれがなく不当と非難」という総括がなされております。これは、2月のコミュニケでは発生中の地政を巡る緊張という表現にとどまったのに比べるとかなり踏み込んだ表現と考えております。
日本からは、4月の会議でも、ロシアの侵略を最も強い言葉で非難しまして、ロシアの侵略が世界経済の直面する多くの困難の元凶であること、ロシアはG20に参加すべきでないということを大臣から強い言葉で発言いただいております。
加えまして、G20の直後にG7を開催しまして、ロシアに特化した声明を発表しております。これまでも、極めて異例なことなのですけれども、2月から累次のG7首脳宣言が出されておりまして、例えば、ルールを守らない国が世界経済協調の第一のフォーラムであるG20の議論に参加してその果実を享受するのはおかしいとか、経済制裁の議論、あるいは責任の帰属がロシアにあるといったことについての議論を積み重ねてきておりまして、その延長線上で主に3点合意されております。G20を含む国際フォーラムへのロシアの参加は遺憾である。戦争の代償を高めるために世界中のパートナーと緊密に協調した行動を継続する。プーチン大統領らは戦争の社会的、経済的結果に対する全ての責任を負う。この3点について記載したコミュニケを発表しております。
もう1ページおめくりください。ウクライナ支援ですけれども、先ほど説明しましたように、5月のG7で上書きはされたのですが、4月のG7でもウクライナの財務大臣が出席する中で、日本から、世銀との協調融資の増額、国際機関とG7で追加的支援の提供、プレッジの表明がなされました。
4月のG20における国際保健の議論では、先ほど申し上げました2点、既存の国際保健システムにおける資金ギャップに対処する必要があることと、新たな資金メカニズムを設立する必要があり、具体的には世銀に新たな基金(FIF:Financial Intermediary Fund)を4月のG20で多くの国が支持しております。国際保健と、次に説明します脆弱国支援につきましては、2月のG20に比べると今回のG20の議長総括では若干踏み込んでおりまして、一定の成果が得られたと考えております。
脆弱国支援ですけれども、G7ではもとより強い合意がなされているのですけれども、G20においても多くの国が共通枠組みの早急な進展・予見可能性向上が必要と強調したということであります。それと、昨年のこの分科会で10月に行われた国際会議の結果を紹介しましたけれども、SDRの配分が低所得国には3%ぐらいしかなされないことを踏まえて、その効果を高めるべくSDRチャネリングの検討、具体的には気候変動、パンデミックに対応する強靱性・持続可能性トラスト(RST)をつくっていただくようにIMFに要請してきておりまして、それを受けて議論がなされた結果、その新設に合意がなされたと。それをG20として歓迎しております。日本からは資金貢献を表明しておりまして、そこは後ほど説明させていただきたいと思います。
もう1ページおめくりください。ここ(7ページ)は4月に行われたG7の内容ですけれども、ロシアの対応とウクライナ支援、対露制裁、これは今まで説明してきたことと重複しますので、こういったことについて議論されたということで、説明の繰り返しは避けさせていただきたいと思います。
もう1ページおめくりください。ここ(8ページ)から各論になりまして、もう1ページおめくりいただきまして、世界経済見通しです。4月中頃に発表された世界経済見通しですけれども、パンデミックに加えましてウクライナにおける戦争という2つの危機によって世界経済がどういう影響を受けているのか。それと処方箋を示したものであります。危機下ということもあって、ここでの見方ですとか提言は、4月、5月、6月の会合でも何回も繰り返されておりまして、あまり異論がない、国際コミュニティにおけるコモン・グラウンドという印象を受けております。
世界経済見通しですけれども、戦争の影響で2022年の世界経済の成長は大きく減速しておりまして、成長率は2022年で3.6%。括弧内は1月の見通しからの変化幅でありまして、1月の見通しから比べると0.8%ポイント下落したということであります。世界経済はコモディティ市場ですとか貿易、金融チャネルを通じて波及的影響を受けると見込まれております。
各国の見通しですけれども、ロシア、ウクライナの2022年の経済見通しは大幅に下方改定されまして、ロシアでマイナス8.5%、ウクライナでマイナス35%です。これは、今週発表されました世銀の見通しによるとウクライナはマイナス45%なので、足元ではもっと拡大している可能性がございます。地理的にもロシア、ウクライナに近くてエネルギー価格の上昇の影響を受けるユーロ圏の2022年の見通しは2.8%へ下方改定されております。アメリカは3.7%と若干、中国も若干の下方改定をされております。日本の見通しは、原油価格上昇における民間消費と投資への下押し圧力とか純輸出の影響を受けまして、2022年は2.4%で、対1月比で0.9%ポイントの下落となっております。
次のページのリスクでも触れますけれども、インフレ率との関係で、インフレ率が高くなる兆しがあれば中央銀行は予想より早い利上げを迫られるということで、特に新興国では債務の脆弱性を表面化させるという指摘がなされております。これは債務問題の議論における前提となっておりまして、ここでのIMFのプレゼンを受けてかなりショックを受けた参加者も多くいらっしゃったと聞いております。
もう1ページおめくりください。リスクと政策対応ですけれども、リスクについては、大きな下方リスクが存在するということで、戦況悪化ですとか、パンデミック再拡大、中国経済の減速、インフレ期待の上昇、あと先ほど申し上げました金利上昇による債務危機等が挙げられてございます。
政策対応ですけれども、ウクライナにおける戦争は、インフレ抑制とパンデミックからの回復、すなわち、金融引締めが必要な中で経済回復をどうやって確保していくのかという問題と、さらに金利上昇が見込まれる中で脆弱層の支援と財政バッファーの再建という2つのトレードオフをどうするのかというものが深刻化している。このトレードオフについても4月から6月の国際会議の中でよく議論された話でございます。
それの対応としまして、国レベルでは、金融政策については中央銀行が国内のインフレ期待に与える影響に注視して対応する必要があります。財政政策については、戦争による影響、パンデミックの状況、回復段階に応じて決定すべきであるとしまして、脆弱な人々に的を絞って支援をする一方で、パンデミックが鎮静化する国では財政余力を回復するために支援策を段階的に縮小し得るということで、G7のコミュニケなどにもこういった表現が盛り込まれております。
多国間レベルでは、人道危機への対応ですとか、流動性支援・債務問題、気候変動、この3点を挙げられていますけれども、4月のWEOの段階では扱いは小さかったのですが、その後、食料問題が足元では大きな課題となっております。
もう1ページおめくりください。これは見通しの推移の表ですけれども、2022年のオレンジのラインに注目していただきまして、その左側に2022年1月時点での見通しがあります。その2つ右に2022年1月と4月の見通しの差がございますけれども、これを見ますと、やはりユーロ圏での下落幅が著しくて、ロシアによるウクライナにおける戦争のインパクトが地理的に近いユーロ圏に集中していることが分かると思います。
もう1ページおめくりください。先ほど申し上げましたRSTですけれども、通常のIMFによるBOPファイナンスというのは主に目先のファイナンスギャップを埋めるものですけれども、RSTは気候変動や将来のパンデミックといった中長期的な構造問題がもたらす国際収支上のリスクに加盟国がどう対応するのかということを目的として融資を行うものであります。今年5月に設立されていまして、IMFは年内に操業開始を目指す意向としております。その対象国ですけれども、いろいろ議論があったのですが、低所得国と脆弱な中所得国等ということで140か国強が対象となります。気候変動やパンデミックに対応する政策パッケージを条件に、償還期間20年で10年のグレースピリオドがございます。国の状況に応じてSDR金利プラス55~95bpsで貸付けをするものでございます。
その下に模式図があります。財務構造は、IMFは、It’s mostly fiscalと言われるような、割と単純と言うと語弊があるかもしれませんけれども、分かりやすい融資を行う機関だったと思うのですが、このトラストはかなり野心的な取組となっておりまして、その野心的な取組を支えるために、こういう財務構造が議論の末に合意されております。まず、貸出しですけれども、ほかのIMFの融資と同様のセーフガードがかかっております。なおかつ、全てのIMFによる融資と整合的な形で、RSTが優先的な弁済を受ける債権者として扱われる。いわゆるPCSが与えられております。あと、この3つの勘定がございまして、ローンアカウントとデポジットアカウントは外貨準備の一部であるSDRによる貢献がなされておりまして、IMFの試算におけるかなり極端なリスクシナリオの下でもそうしたローンアカウント、デポジットアカウントが毀損しない設計となっています。こうした財務構造を前提に、日本からは、4月のG20等におきましてSDRチャネリングの貢献として2021年8月に配分されたSDRの20%をプレッジしまして、そのうちRSTへの最初の貢献として10億ドルとそれに見合う準備金を拠出することを表明しております。
次の13ページをおめくりください。低所得国の債務問題ですけれども、背景については、以前説明しましたとおり、中国は多くの国で最大債権者となっておりまして、これまでパリクラブは債務救済等を主導してきたところ、一昨年にサウジアラビアがG20の議長の際に、中国も含む形でG20として共通枠組を承認したのですけれども、全く進んでいなくて、チャド、エチオピア、ザンビアの3か国が申請してきているのですが、1年半以上もたなざらしになっている状況でございます。
足元の動きですけれども、この共通枠組の下での債務救済は行われておりませんで、プロセスの迅速化が不可欠である。こうしたところ、4月のIMFCで、債務問題は基本的に財政部の所掌であるのですけれども、中国人民銀行総裁がザンビアの債務救済に関する債権者委員会への参加を表明するという朗報がございました。が、そのための債権者委員会はいまだに開催されておりません。足元で債務問題への危機感は高まっておりまして、5月のG7で、中国も含めて全ての債権国の貢献が不可欠であるという指摘がなされたのはさきに説明したとおりでございます。
日本のスタンスとしましては、成功例を積み上げて予見可能性を高めていくことと、債務データの透明性・正確性確保のためには、債務データは一義的に債務国に期待することだと、キャパシティの問題ですとか、あるいは契約によって債務国側がディスクローズできないといわれていることなどがありますので、債権国がデータ共有に協力する必要があるということを主張しておりまして、国際機関などへの働きかけも行っているところでございます。
もう1ページおめくりください。次に、国際保健ですけれども、日本がG20、G7でリードをしてきておりまして、パンデミックでより注目が集まりまして、その結果として脆弱性が露呈した面があります。ここの背景にありますように、昨年のG20首脳会合で、G20財務・保健合同タスクフォースで金融ファシリティの設立の検討も含めて議論することとなっておりました。
足元では、資金ギャップへの対処の必要性ですとか、世銀に新たな基金の設立、この2点に合意が得られております。今後の日本のスタンスとしましては、次のステップを見据えて、ドナーの意向を適切に反映するガバナンスの仕組みの構築と、一層の財務・保健の連携強化を進めていくことを考えております。
もう1ページおめくりください。気候変動に関する議論ですけれども、御案内のように、昨年のCOP26で、パリ協定の1.5℃目標のために、今世紀半ばのネットゼロを目標として掲げた上で、国別の排出削減目標を必要に応じて再考を強化することになっております。
排出削減目標ですけれども、G7は全てのメンバーが2050年までのネットゼロにコミットしております。ただ、大きな排出国が全てコミットしているわけではなくて、右のCO2のグラフを御覧になっていただきますと、今世紀半ばのネットゼロ達成には中国とかインドとか主要排出国による野心的な取組が必要ということでございます。
これまでのG20、G7での議論ですが、昨年はヨーロッパの一員であるイタリアがG20の議長国で、やや前のめりになってG20の議論が空回りしたような印象はあるのですけれども、今年の議長国はインドネシアでありまして、ネットゼロに向けた移行、トランジションを進めるためのトランジション・ファイナンスが重要であるということで、そこに焦点を当てて議論してきておりまして、昨年に比べるとややスムーズに進んでいる印象はございます。G7の中では、先ほど申し上げましたとおり、議長国ドイツは気候クラブをプレイアップしたいという考えであります。
来年のG20の議長国はインド、G7の議長国は日本で、今年から来年にかけて特に気候変動についての議論をどうやって進めていくのか悩ましいところではありますけれども、足元では、2月の首脳宣言にあるような開放的で協調的な気候クラブをエクスプローラーすべく、5月にG7の財務大臣・中央銀行総裁会議で初めての議論が行われました。先ほど説明しましたように、日本の主張も反映して多様なアプローチを許容して、炭素強度も含む政策比較手法について作業を行っていくことがコミュニケで合意されまして、それに沿って進めていくというのが足元の状況でございます。
○田部開発機関課長開発機関課長の田部でございます。
1枚おめくりいただきまして、私のほうからは国際開発協会(IDA)の第20次増資について御説明させていただきたいと思います。IDAは、皆様御案内のとおり、世界銀行グループの中で低所得国に特化した機関でございまして、グラント、無償支援、あるいはその低利の融資を通じて支援をしているところでございます。そういった形で支援をしておりますので、3年に1度通常増資を行っておりまして、前回は2019年2月に合意をして2020年から始まったものでございますが、まさにこの合意の直後にコロナが発生いたしまして、通常3年に1度の増資を1年前倒しして増資を行うことに合意したところでございます。
ここまでは昨年秋の審議会、この場で御説明させていただいたところでございますが、その後、昨年12月に日本が増資会合の最終会合を主催いたしまして、そこで3年間で総額930億ドルの支援をすることで合意いたしました。日本といたしましても、後で御説明いたしますが、日本が融資する開発課題がきちんと重点政策に位置づけられていることも踏まえまして、前回IDA第19次増資と同じ貢献シェアを維持するために3,767億円の貢献を表明いたしました。その後、その貢献を行うために必要な国内措置といたしまして加盟措置法の改正を国会に提出いたしまして、3月30日に全会一致で成立を頂いているところでございます。
IDA第20次増資の主な政策の内容でございますけれども、1点目といたしまして、コロナの変異株の連鎖を防ぐ意味でも重要になっておりますのは途上国におけるコロナの対応でございますが、途上国におけるワクチンの普及あるいはユニバーサル・ヘルス・カバレッジを通じた保健システムの強化、栄養の改善を推進する。
2点目といたしまして、コロナによって途上国において教育や雇用の機会が失われ、そして貧困が拡大している状況がございます。こうしたことに対応するために、途上国における教育や雇用の回復を支援していく。
3点目でございますけれども、コロナからの回復においては、グリーン、デジタルというものが重要になってまいりますが、その中でも日本が重視しております防災等の気候変動への適応、あるいはデジタルの中でのサイバーセキュリティといったものが政策に取り込まれているところでございます。
4点目でございます。先ほど飯塚課長からも説明がございましたが、債務につきまして、中国をはじめとする新興債権国の貸出しが大きくなっている中で、そうした債務に関する状況を正確に把握することは非常に重要になってまいります。それに対して、1つは、借入国に対してきちんと債務の状況を把握して公表することをIDAとして支援していくとともに、債権国、中国などの貸手に対してきちんとデータを共有するように働きかけていく。そういうことが内容として盛り込まれているところでございます。
私からは以上でございます。
○清水分科会長ありがとうございました。
それでは、意見交換に移りたいと思います。委員の皆様におかれましては、御発言の際は、御臨席の委員の方は従前どおり名札を立てていただき、オンラインで御参加の委員の方は、事前に事務局より御案内しましたとおり、御発言の意思をシステム上の挙手にて事務局までお知らせいただければと思います。
○亀坂委員御説明、ありがとうございました。
外国為替の分科会なので、まず一番気になるのが直近の為替変動です。資料で言うと資料2の3ページに該当すると思うのですけれども、この分科会でこれまで何度か為替変動が激しくなった時期にも質問させていただいたと思うんですが、日本では、トービン税、つまり外国為替取引自体に課税することというのは再び検討されないのかと思います。私もたくさんのマーケット関係者と継続的にいろんな情報交換をしているのですけれども、岸田政権になってから一番御連絡いただくのが実は金融所得課税の導入の議論であります。私も、アベノミクスでここまでやっと株価が持ち直して、岸田政権になってすぐに金融所得課税はとても賛成できないんですね。株式の譲渡益、だから、利益に対する課税をすることには私は反対なのです。
それは、金融所得課税ではなくて、為替の取引自体ですね。日本では今1日40兆円ぐらいだそうですけれども、1日40兆円の取引がある為替の取引に広く薄く課税できないかということを質問したいと思います。1日40兆円だと年間1京円に相当するそうです。私もマーケット関係者から質問を受けるということもあるんですけれども、これまでの政府の金融所得課税、金融課税の議論一般には関心を持って拝聴させていただいておりましたが、金融を専門とする立場から見ると非常に大ざっぱな議論がなされているように思うのですね。今でも為替取引で、例えば私が100万円ちょっとをドルに交換すると、1ドル当たり1円。つまり1万円ぐらいは取引手数料で取られるわけです。そこから内税で課税をする。本気で財政再建とかプライマリーバランスの達成とかそういうことを考えるのであれば、内税で少しでも課税できるはずだと思うんです。
今でも銀行で取引すると、為替によって違いますが、米ドルであれば1円取られるとはいえ、少しネット銀行とかを検索してみると、ネット銀行によって違って、例えば楽天銀行だと為替のコストが1アメリカドル当たり25銭とか書いてあるんですね。それだけ幅があるということは、1円取っているところから少しでも内税で取れるのではないかと正直思うのです。だから、新たに課税するといっても、手数料の内税で課税する。例えば個人の取引口座で米ドルに変換する。私が100万円とか200万円とか交換する場合に、内税で取引手数料の1ドル当たり1円の中から取られるのだったら私には痛みは全くないわけですから、取れるはずではないかと思うんですね。
あと、内税でないにしろ、これまでこういったことを申し上げると、世界各国が一律に同率の税率を採用しないと租税回避国、タックスヘイブンに資金が移動してしまうからという説明を受けてきたと思うんですけれども、最近ではブラジルが一国単独で導入しているみたいです。日本も例えばG20諸国などに対して、日本の為替の不安定をどうにかしてくれと言葉で訴えるだけではなくて、日本円との交換に限ってはトービン税のような為替取引の手数料を導入してもらえないかとか、もうちょっと具体的な提案をしてみてはどうかと思うこともあるんです。ですので、為替に関してはこの分科会が議論を担当すると思うので、そういった議論はもうちょっと本格的にしていただいたほうがいいのではないかと思っています。長くなりましたが、それが1点です。
もう1点は、以前、浅川さんがたしか国際局長でいらっしゃった頃に、OECDでBEPSプロジェクトを進めていらっしゃったと思うんです。それも大変興味深く拝見させていただいておりましたが、それより少し前、私は2012年に内閣府からの派遣でOECDのワールドフォーラムという、本当にOECDのトップの方々、例えばスティグリッツとかも出席されるような会議で、日本の東日本大震災前後の人々の生活満足度の推移などを報告させていただいたのです。実はその頃からOECDの幹部の方々から、日本でも生活満足度関連、ウエルビーイング関係の調査に関しても財務省の方々とネットワークが築けないかということは言われていたんです。ちらっとどなたかにお話ししたことがあると思うのですけれども、ちょっと難しいかもということだったと思うんです。
OECDは、御存じのとおり縦割りの組織で、かなりいろいろなセクションに、労働とかをやっている方の中にもウエルビーイングの研究者がいらっしゃいまして、その後、OECDはニュージーランドとかいろいろな国々の方々と一緒に様々な検討を行ってきたみたいです。最近ニュージーランドでは、財務省の方々が調査機関となって生活満足度関連の指標を取られて、政策決定と予算配分を行うための一つの基準として利用されているみたいです。カナダも財務省が調査機関となって、カナダのQOL戦略に向けてというようなことを公表して、政府の意思決定や予算編成に指標を取り入れているとのことです。
実は今週、日本の内閣府でも満足度・生活の質指標群に関する研究会が開催されまして、その報告書の作成作業に内閣府のたくさんの方々が関わっていらっしゃるのです。まだ未公表なのですが、そこでもカナダとかニュージーランドとか、それ以外にもドイツ、フランス、アイルランド、イタリア、イギリスなどの取組、日本でも地方自治体、荒川区とかの指標の取組を少し紹介しようとされているようです。ですので、日本がやるとしたら、多分このままいくと、私も研究会メンバーでありますが、内閣府でやることにはなるのでしょうが、ニュージーランドとかの事例を見ていると、予算編成に関わることなので、日本の財務省も何か研究会を立ち上げるとか勉強会をするとか、何かされたほうがいいのではないかと思います。
非常に長くなりましたが、2点です。御質問とコメントをさせていただきます。
○清水分科会長どうもありがとうございました。
時間の関係もございますので、まとめて質問を受けたいと思います。
○植田委員どうも御丁寧な御説明、ありがとうございました。2点ほどあります。
1つは、この債務問題は本当に難しくて、中国がどうやってこのパリクラブの枠組みに入るのか。これは誰も答えを出すことはできないと思うので、何となくのコメントだと思っていただければと思うんです。何らかの形でどうやって中国を引き入れるかと考えたときに、場合によっては、一部の国、特に中国に対して債務の多い国は、変な話ですけれども、オーダリーなワークアウトではなくて、アウトライト・デフォルトを勧めてもいいのではないかと。主権免除がございますので、どんな契約を持っていたとしても、いきなり港湾を取られたりということはあり得ないはずです。中国がその国に対して戦争でもしない限り。だとすれば、むしろそういうことが1例か2例あれば、中国も、だからパリクラブが必要なのだという認識を持ってくれるんじゃないかなと。ちょっと暴論かもしれませんけれども、もしかしたらそれもありかなというぐらいある意味では難しい話だなと思っていまして、考えてもいいのではないかと思うのが1つです。
それから、債務問題は、今のコロナ禍を受けて低所得国を中心に非常に問題になっているということですけれども、当たり前ですが、日本でも非常に問題になっていることでありまして、これはG7では何か問題にならなかったのか。先進国側、とりわけ日本ですね。まさに今の円安は、ほかのアメリカ、ECBが金利引上げの方向に移っていく中で、日本ができない。もちろん、インフレがそれほど、アメリカなどに比べればまだ低いからしないというのはそのとおりなのですけれども、もしかしたらやはり金利が高くなったら財政に影響があるということを考えられている。私は分かりませんけれども、そういうような感じももしかしたらあるのかなと思うと、金利がちょっと高くなったらやはり財政問題が日本は大変なことになりますので、それも考えますと、円安の要因の一つは、日銀が当面金利を上げられないだろうと思わざるを得ない。だとすれば、金利差がずっと続くのではないかということで円安になっているところが非常に強いと思われます。ある意味で財政問題とも関わってきていますので、ここのところをむしろ懸念を払拭するためには、財政再建の道筋を今以上にしっかりと立てていく必要があり、それをしないと円安も終わらないのではないかと思います。
それから、亀坂委員の質問で、私、IMF時代に少しだけ覚えていることがありまして、ファイナンシャル・トランザクション・タックスというのは10年に1回ぐらい出てくる話でして、私もいた頃にIMF調査局でたしか本が書かれたことを思い出しました。ラテンアメリカの国は何回か、エクスチェンジレートとか、もうちょっと一般的な話にトランザクション・タックスを導入してみたことが過去もあるんですね。失敗が続いていまして、そういうことをまとめた本もございますので、その辺は亀坂委員に御紹介できるんじゃないかと思います。端的に言えば、金融の世界は逃げ足が速いので、業者が2~3か月もたたないうちにうまく逃れる手配を幾らでも考えてしまう。今で言えば暗号資産を使うだとかスワップを使うだとか、ありとあらゆる手で逃れることができるのですね。それなのでもうイタチごっこになってしまうという感覚だったと思います。そのために実効的にはほとんど税収は上がっていない。税収が上がっていないイコール全く意味がなかったという、10年ぐらい前の本が出ていたことを記憶しています。これはあくまでも御参考までです。
○根本委員今の委員の御発言とも重なるので簡単にしたいのですけれども、やはり債務問題についてです。この後のお話にも関わるのかもしれませんが、御説明にあったように、金利の引上げ局面、食料、エネルギーの高騰、それからもともとのコロナの問題などなど非常に深刻な状況かなと思います。スリランカのデフォルトとかそういう事件もあり、特にアジアで債務が大きくて、ファンダメンタルの弱い国への波及みたいなのはどうお考えなのかというのが1つ。
今、委員のお話にあった中国の動向が鍵だと思うのですけれども、G20でもものすごく分断というんですか、協調性が失われているようです。そうしますと、中国自体もいろいろと今ゼロコロナとか問題を抱えていると思うのですけれども、それを放置しているとなかなか問題解決が進まないように思えるのですが、さらなる打ち手というんですか、どういうふうにお考えかというのを伺えればと思いました。
○清水分科会長ありがとうございました。
それでは、委員から頂戴した御質問につき事務局より回答をお願いいたします。
○陣田調査課長ありがとうございます。
それでは、亀坂委員のトービン税について私のほうからお答えできる範囲でお答えいたします。委員の御指摘のとおり、為替の安定や財政再建は非常に重要なものでございます。一方で、トービン税は執行面の課題がいろいろあると言われております。例えば、ドル円の取引で申し上げますと、東京マーケット以外でもニューヨークやロンドン、シンガポール、いろいろなところで行われておりまして、例えば日本の税制当局がどうやって執行するかという課題があり、グローバルに協調しないと執行は厳しいのではないかと言われていると認識しております。
一方で、ブラジルの例については勉強不足でしたので、研究させて頂きたいと思います。
○飯塚国際機構課長ウエルビーイングについてです。予算配分のことについては所掌外ですのでコメントは差し控えさせていただいて、御意見があったことは関係部局に伝えたいと思います。
その上で申し上げますと、私は2年前に主計局の財政分析の企画官をやっていまして、そこで諮問会議の下で経済・財政一体改革推進委員会で、KPIを設けて、内閣府と財務省主計局と各省がかなり密接に何百個もアイテムをKPIを使ってやるという作業をやっていました。おっしゃるとおり、KPI自体が予算要求の便法となっているようなところはありますので、そこは主計局がきちっと、財務省が参加してやるということは重要だと思います。
あと、その中で、2021年の骨太で、ウエルビーイングに関するKPIを政府の各種基本計画等に設定することは決められていまして、関係府省会議ですとか2022年の骨太でも議論がなされていまして、ウエルビーイングに対する政府の認識の重要性というのは高まっていると思います。OECDが予算当局との関連ということで、いきなり何か議論できるか分かりませんけれども、もし議論したいということであれば、財務省のOECD担当課は我々になりますので、つないでいただければ御対応したいと思います。
債務問題については幹部の方に。
○三村国際局長国際局長の三村でございます。まず、本日はこの場にお越しいただきました委員の先生方、それからオンライン参加いただきました委員の先生方、お忙しい中ありがとうございます。
植田委員と根本委員から債務問題の話を頂きましたので若干感想めいたことも含めて申し上げますと、まさしく中国をどうパリクラブといいますか、コモンフレームワークに取り込むかというところがこの2年以上にわたって我々の本当に悩みの中の悩みではあるのですが、いろんなことを考えております。
まず、現状、中国がどんな状況にあるのかというところですが、多分彼らも今相当悩んでいるのだろうと思っています。一帯一路の中でいろいろと貸し込んできたものが正直言ってかなり今焦げつきそうな状態になっている。これは全く想像にすぎないのですけれども、そうはいっても、一帯一路の中で貸し付けてきたものがデフォルトになりましたとか、あるいはリスケになりましたということは国内的にもなかなかやりたくないので、この議論に参加したくない。さりとて貸し付けているほうが首が回らなくなってしまうと、ない袖は振れないことになるので、一種のバブルのときのどこぞの金融機関ではないですが、場合によっては追い貸しみたいなことをしながら取りあえず目先は何とか返済が滞らないようにだけしているとか、そういういろいろな苦しい状況の中で彼らもやっているのだと思います。
その中でどういう形で我々が彼らに鈴をつけられるかということですが、植田委員がおっしゃったように、この際いっそ借りている側にデフォルトさせたらいいんじゃないかみたいなお話というのは、個別にどこの国と申し上げると差し障りもありますので申し上げませんが、実際それに近いようなことが議論になっている国もあります。現実問題として少し返済が滞り始めているときに、場合によってはその返済がこのまま中国との関係ではできないことをもって、一種、半分期せずしてではあるのですが、債務削減、リスケに貢献しているようなものだという前提で先に進めないだろうかという議論をやっている例は実際にないわけではありません。
ただ、当たり前のことながら、これは申し上げるまでもないのですが、そうなっちゃった国はある種そうなってしまったことを前提にいろいろ議論しやすいのですが、これまで何とか曲がりなりにも返してきた国に、「おまえ、もうこの際だからもう返さなくていいよ」となっても、それは、借りている側の国にしますと、「いやいや、我々はマーケットの目もあるので」あるいは「今後のこともあるので」という話に当然なるので、なかなか借りている側の国に押しつけるわけにもいかない。そういう意味では、当然、劇薬でもあります。ただ、我々もそれぐらい構えを広く、何とかならないかと考えながらやっているのは率直に言ってあるという状況ではございます。
あと、悩ましいところでは、根本委員からもスリランカの現況がありました。これも今我々は非常に悩んでいるところで、具体的な数字は控えますけれども、いろいろ報道もされているとおりです。スリランカは、圧倒的に最大債権国はバイで見ると中国なわけであります。我々にしてみると、スリランカはこういう状況で今IMFにプログラム申請もしてきていますけれども、恐らく何らかの債務措置を考えないと先には進めないのだと思いますが、中国抜きでそれをやるのはまさにメインバンク抜きで債務再編の議論をするような話になりますから、我々としてはそれはなかなか――日本が許せないという以前に、中国との債権の関係を何も手つかずのまま債務の持続可能性の絵を描けないのだろうと我々は思いますので、そこは引き続きIMFといろいろな議論をしていくところです。
一方で、コモンフレームワークというのは、御承知のように低所得国が対象のフレームワークですので、スリランカは形の上ではまだ低所得国ではないものですから、形式的に言うと、スリランカは必ずしもコモンフレームワークの対象国ではないことになってしまいます。我々としては、いや、低所得国だろうがそうでなかろうとパリクラブの原則は同じなのだから、スリランカだろうがアルゼンチンだろうが、パリクラブの原則、あるいはそこに体現しているコモンフレームワークは当然やってしかるべきなのだというのが基本的な考え方で、現にそういう話はしておるのです。このあたりは、中国もスリランカとの関係で、今までいろいろ貸しているものもありますので、相当いろいろな議論をしていかないといけないのだろうと思います。
もう1点、まさに金利が高くなったら債務の負担が重くなるというのは、ある種、先進国は同じだと。これは全くおっしゃるとおりでございます。ただ、そこの中で、金利とそこまで直接的に結びつけた議論では必ずしもないかもしれませんが、やはりコロナ以来これだけ財政出動もしてきて各国とも相当財政が苦しくなっている中で、最終的な中長期的な財政の持続可能性をきちっと確保しなければいけない。そこはさすがにG7財務大臣会合ですので、相当はっきりとしております。今日御紹介した先般5月のG7の中でも、中長期的な財政の持続可能性と強靱な金融セクターを実現できるように、きちっと中期的なマクロ経済政策をやることにコミットするんだということが書かれています。特に今年はドイツが議長国ということも影響しているかもしれませんが、足元コロナで来て、かつ、今ウクライナの戦争でエネルギーや食料価格がこれだけ増えていますので、現に困っている方々あるいは企業への緊急的な支援策は当然やらなければいけないわけですけれども、それもあくまで的を絞ったものにするべきだと。いずれにしても最後は北極星として、あるいは北極星ほど遠いものであってはいけないわけですが、その次の道筋として財政の持続可能性をちゃんと維持していかなければいけないし、そのための方向感を失ってはいけないというところは結構G7の中ではしっかりと共有はされていると思います。であるがゆえに、ほかのG7でも御承知のようないろいろな増税等々の議論も含めて今行われている状況ではないかと思っております。
○清水分科会長ありがとうございました。
それでは、次に、アジア地域金融協力について、事務局より説明の後、意見交換の時間をお取りしたいと思います。森地域協力課長、よろしくお願いいたします。
○森地域協力課長おはようございます。地域協力課長の森でございます。よろしくお願いいたします。
昨年も一度同じような御説明をさせていただいておりますが、アジアの地域金融協力ということで、主にASEAN+3の動きなどについて御説明します。
めくっていただきまして、2ページからとなりますが、まずは全体の前提条件として、特にASEAN+3、ASEANと日中韓の地域の経済状況がどうかということについて、1つ宣伝も兼ねてなのですが、ASEAN+3の国際機関でありますAMROが毎年経済白書のようなものを出しています。今年4月にもこのAREOという報告書を出しているのですけれども、それから幾つかポイントだけ御説明した上で中身に入っていきたいと思います。これは先生方御案内のとおりですけれども、今地域全体としてはCOVID-19からの回復過程にあるということで、ワクチンの接種ペースの加速などによって堅調に回復して緩やかに成長する見通しである。他方で、下方リスクとしては、オミクロン株等々による経済の停滞ですとか、あるいはサプライチェーンの混乱及び物価上昇が4月の段階で指摘されている次第であります。その一方で、最新の状況としては、先ほどからもお話がありますように、ウクライナ情勢については、ASEAN+3地域に対して直接の影響は限定的との見方がある一方、エネルギー高騰などの物価上昇、あるいは輸送ルートへの影響によるサプライチェーンの混乱といった間接的な影響は懸念されるところであるといったことが指摘されております。
これが出されたのは4月で、それから2か月弱ぐらいたっておりますけれども、もし口頭でつけ足すことがあるとすれば、例えば明るい動きとしては、ASEAN各国は開放政策を取りつつあって、例えばタイなどは、ビザは必要になるかもしれませんが、ほぼ制限なく入国できる様子になってきていて、特に観光業に頼る国が多いASEANにおいては明るい動きではないかと。その一方で、ロシア・ウクライナ情勢に起因する世界的な原油価格の上昇の影響はASEAN+3地域もいまだ逃れられていないことはあろうかと思います。
次の3ページはあくまでデータの御紹介となります。
次に5ページに飛んでいただきまして、今日御紹介しますのはASEAN+3の地域金融協力の全体像で、このページはあくまで目次的なものでして、従来からやってきた3本柱と、あと日本などが推進してきているものも含めて新しい議題にどういったものがあるかということを御紹介いたします。
1つがCMIM、いわゆるチェンマイと呼ばれるマルチのスワップであり、危機時の流動性供給メカニズム。もう1つがAMRO、先ほど申し上げましたけれども、ASEAN+3の財務トラックにぶら下がっている国際機関でして、経済サーベイランス機関となっております。3つ目は現地通貨建て債券市場の育成を図るABMIというのがあり、これらがこれまでASEAN+3の主力商品であったわけですけれども、ASEAN+3も立ち上がって約20年ということで、次の新しい柱を見つけようという議論がこの数年行われてきております。詳細は後で申し上げますけれども、幾つか挙がってきているのがここに書いてあるようなことで、自然災害リスクに対する財務強靱性の向上、金融デジタル化の影響、あるいはトランジション・ファイナンスといったことが議論されてきております。
次のページをお願いいたします。少し過去を振り返りまして、このASEAN+3という枠組みにおいて、日本は、発足及びそれ以降の議論を主導してきたと自負するところもありますし、単に口だけではなく、特に日本が議長国をやってきた年などにはいろいろな成果も実現してきたのではないかと考えます。下にあるのはあくまで一例でございますけれども、例えばAMROの創設などは2011年、日本の共同議長下の年に動きがあったり、あるいはCMIMの規模倍増も2014年の日本共同議長下で行われていたりということで、単に日本は会議に参加したり、発言するだけではなく、こういった成果も出すべく引っ張ってきているというふうに認識しています。
次のページですが、その中で、今年、先月5月12日に、年1回やっておりますASEAN+3の財務大臣・中央銀行総裁会議を開催いたしました。今年も残念ながらオンラインの開催ということになります。今年の議長は中国とカンボジアです。ポイントはここに書いてあるとおりですが、先ほどG20等々の御紹介もありましたけれども、やはりロシア・ウクライナ紛争の影響というのは1つの大きなテーマでして、この会議におきましても、マクロ経済情勢に関する意見交換において、ロシア・ウクライナ紛争が域内経済に与える影響について意見交換を行いましたし、その影響については発出した声明にも明記をいたしました。
また、ASEAN+3における議論を日本として引き続き牽引していくということで、最後に一応御紹介しますが、来年が日本・インドネシア共同議長年になるということで、そこへの成果につなげることも念頭に、2つ、特に日本から提起しております。自然災害リスクに対する財務強靱性の向上、金融デジタル化が及ぼす影響を今後議題として取り上げることを我々のほうから提起しまして、参加国の広範な支持を取り付けることができました。
それ以外の従来の柱でも、先ほど申し上げたCMIMについては、自国通貨以外の域内通貨を利用する場合の指針の年内策定を目指すことを確認しました。また、AMROにつきましては、戦略文書を見直していくということで、その取組を歓迎するとともに、まさに5月下旬に、この3年間所長を務めてきました財務省出身の土井所長が退任しましたので、その所長の交代がありました。また、ABMIについては、この分科会でも何度か議論となっておりますが、二重のミスマッチ問題についてADBの協力も得ながら調査を行ってきておりまして、その進展を歓迎するといったことがありました。この模様については、声明等出ておりますので、財務省ホームページのほうでも御覧いただければと思います。
今申し上げた幾つかのものについて、簡単に最新の動きだけ各論のほうで御紹介させていただきます。
10ページでございます。CMIMについては、これまでも紹介させていただいていますが、今一番何を議論しているかというと、下の3のところに書いてある中で、特に現地通貨の活用。つまり、これまでCMIMはドルを使うことを想定していたのが、ドル以外の通貨、例えば円であるとか人民元も活用できるという原則だけは書き込んだわけですが、それをどうやって実際に使用できるようにするかという細則のようなものを今まさに議論しております。これについて多少の動きがありましたので、さらにそれを今年内に向けて進めていくというのが一番の動きです。
また、ここには書いておりませんが、今の点も含めて、CMIMをいかに使われやすくするか。アクセシビリティと言いますが、これを引き続き改善していくことが大きな命題として与えられています。
続きまして、AMROですが、AMROは設立されて去年で10年ということで、去年12月にはシンガポールでいろいろと大きなイベントもあったりする中で、次の10年をどうしていくかという議論をまさに行っています。戦略的方向性を見直す作業を始めるとか、あるいはサーベイランス能力を強化していくべきであろうということで、様々な取組を、特に日本の発案のものも含めてやっているところです。また、リサーチ能力の強化という観点では、AMROの「ヒストリーブック」を今回出させていただきました。ここに表紙とリンクだけ紹介しておりますが、アジア通貨危機を振り返って、まさにそのとき関わった人たちのインタビューですとか、あるいはそこから得られるlessons learnedについて紹介するものとなります。御参考までに。
また、1つ戻りますが、③にございますように、去年秋のASEAN+3の首脳会合に、AMROの土井所長が初めて参加するというのがありましたので、これは今後とも続けていきたいと考えています。
続いて、12ページです。ABMIについては、先ほどちらっと申し上げましたように、アジア諸国における二重のミスマッチ問題、ドルなどの外貨を海外から短期で借り入れて自国通貨建てで国内長期融資を実施するという問題がありますが、これを解消するために、アジアにおける貯蓄をどう使っていくか。それをどう投資に結びつけていくかということで、社債ですとか国債発行に関する技術協力とか市場の整備について協力していくという取組です。これについて、まさに今ADBなどの協力を得て調査を行っているところです。この調査の結果が得られましたら、次のABMIの中期ロードマップに反映していきたいと考えます。
このABMIという3つ目の柱の中の主力商品として、CGIFという保証を提供するファシリティがあります。これは簡単に御紹介だけですが、順調にといいますか、ASEAN地域を中心として見込みのある案件に対して保証を出してきています。
めくっていただきまして、14ページ、15ページにおいて、新しい議題の可能性ということで日本から提案しているものが2つあると申し上げましたが、1つは自然災害リスクに対する財務強靱性の向上です。これまで日本はSEADRIFという保険を使ったスキームを提唱してASEAN+3のトラックの下で育ててきていますが、さらにそれに加えて、ワーキンググループという形で財務強靱性の向上をぜひ取り上げようということでこの二、三年議論してきました。これに関して、今回の大臣会合において本議題化することについて方向性が確認されて、できれば来年から正式にASEAN+3財務トラックの本議題として取り扱っていきたいと考えています。
もう1つは金融デジタル化が域内金融協力にもたらす影響で、先生方御案内のとおり、世界的に様々な官や民の取組が行われているわけですが、特にASEAN地域はある意味いろいろな面で先を行っている面もあります。そういったものについて一度横串で現状について調査した上で、それが与える影響、特に今まさに議論していますASEAN+3の様々な枠組み、例えばCMIMですとか、サーベイランスであるとか、AMROの在り方であるとか、そういったものにいかなる影響あるいはいかなる改善があり得るかについてぜひ議論しようということで、日本から提唱いたしました。これについても、先般の大臣会合においてこの取組を歓迎するということが確認されていますので、できる限りこの調査を年内に進めていき、もし来年にかかるようであれば、また来年、日本の共同議長下で成果を得たいというふうに考えています。
以上が資料の上での御説明となりますが、先ほどから申し上げておりますように、来年は非常に大事な年だと思っておりまして、日本がこのASEAN+3の共同議長を務める。パートナーはインドネシアで、インドネシアはまさにG20などでも議長をやったり、最近とみにそういう面でもプレゼンスを増していますが、そういったASEANの大国と日本で来年共同議長を務めるということ。また、日本は御案内のとおりG7の議長国でもあるので、例えばASEAN地域への橋渡しも役割としてはあるのではないかと思います。もう1つ大事なのは、来年は日ASEAN関係50周年という大事な年になりますので、そういった面からも何か日本から具体的なタマを用意していけないかということで、今年から来年にかけていろいろと考えていきたいと考えています。
簡単ではございますが、以上でございます。ありがとうございました。
○清水分科会長ありがとうございました。
それでは、意見交換に移りたいと思います。御意見、御質問などがございましたら、先ほどと同じ要領で御発言の意思をお知らせいただければと思います。
○佐藤委員非常に興味深い現在の動きを御説明いただきまして、ありがとうございました。よく理解できました。
ASEANのチェンマイ・イニシアティブのところで、最後のほうで、特別に今注目されることとして、CMIMの現地通貨の活用というところが指摘されたと思います。現地通貨の活用あるいは現地通貨建て取引の促進というのは、アジア諸国、特にASEANにとってはとても重要な内容だと思います。そしてまた、それと関係して質問というか、感想なのですが、新しい課題の金融デジタル化のところですね。金融デジタル化と域内の金融協力を関係して議論するというのはとても適切な提言であるかと思います。このときに、例えば金融のデジタル化あるいはデジタル通貨の議論と、あと域内金融協力、そしてまたアジア域内での現地通貨建て取引の促進というところを調査するというのはとても大切ではないかと思います。
たしか私の記憶では、1年ほど前のこの会議で、日本とインドネシアの現地通貨の利用促進に関する協力枠組みが設立されたことが報告されたと思いますが、ASEANでは、皆様御存じのとおりLCSF(Local Currency Settlement Framework)があります。そこに、私の理解は、1年前に御説明された日本とインドネシアの現地通貨の利用促進という、ここに日本も深く入っていく。そういう狙いがあって、そして現地通貨建て促進だけではなくて、円の利用促進も必要であればそれも視野に入れて取り組む。そういう取組があったと思います。こうした現地通貨建て促進の動きと、あとデジタル通貨、あるいは金融のデジタル化というところをもっと調べていくというのが必要ではないかと、先ほどの報告を伺っていて思いました。
少し感想めいたことになりますが、以上です。
○清水分科会長どうもありがとうございました。
時間の関係もございますので、まとめて質問を受けたいと思います。
○澤田委員どうもありがとうございます。大変よく分かりました。2点ほどコメントか質問かという感じなのですけれども、自然災害リスクに対する保険メカニズムをつくることは非常に重要だと思います。2011年のタイの洪水でチェンマイに立地している日系企業は非常に甚大な被害を受けたということで、なかなか民間の保険で――財産保険のほうはある程度大企業だとカバーされていたようですけれども、サプライチェーンに対する事業休止、そういう形の保険というのはほとんどなかったことも考えますと、やはりかっちりした保険のメカニズムをつくって、それによってサプライチェーン全体がインシュアされることは非常に重要だと思いました。
前半のチェンマイ・イニシアティブと、それからボンドマーケットの話にも関わるのですけれども、いろいろリスクを考えてみると、自然災害リスクというのも、狭い意味でのリスクもありますが、経済危機に対する備えも必要だし、危機に対する対処のメカニズムも必要だと。自然災害といっても、地震もあれば洪水もあれば干ばつもあれば、あるいはパンデミックも広い意味での自然災害に入る。経済危機もあるし、政治的な問題が生じるという大きなリスクもある。それから、自然災害によって福島の事故のような技術的な災害も起こるということで、いろいろな形の巨大災害がある程度事前に想定されるのだけれども、タイミングが分からないということで、少しざっくりした話になりますが、それぞれの個別のハザードを超えた大きなリスク、巨大リスクにどう対処するかという視点が重要なのかなと思いました。その中で自然災害リスクに対する強靱性を向上させるのは非常に重要な位置づけになるということです。
それに関連して1つスペシフィックな質問なのですけれども、ここで自然災害というふうに対象をされているのは、例えばクリフとかカリブ海のスキームだと地震とハリケーンだと思います。あと太平洋地域もそういうようなハザードを想定していると思うのですが、今回のASEAN+3といいますか、今回の強靱性向上の対象になっているハザードとはどういうものかということを少しお伺いしたいと思います。あとはコメントです。ありがとうございます。
○小枝委員御説明いただき、ありがとうございました。
12ページで、先ほどABMIのお話があって、国内債券市場が発展しているというお話があって、自然災害、気候変動というお話もあったので、そのうちグリーンボンドというのはどういった発展をしているのかというのは少し気になりました。その関係で、先ほどの資料2の15ページ、一番下で、特定の政策手段ではなく、炭素強度の低下という結果に焦点を置くということに触れられていたと思います。これはコメントなのですけれども、サステーナブル・ファイナンスの面からだと、トランジション・コストをいかなる手段で調達するか、あるいは、いかなる政策でサポートするかというのは大きな問題だと思いますので、この点は調査を引き続きしていただければと思いました。
以上、コメントです。
○清水分科会長ありがとうございました。
それでは、事務局より回答をお願いいたします。
○森地域協力課長先生方、ありがとうございます。
まず、佐藤先生から頂いたお話、金融デジタルの取組についてお褒めの言葉を頂きまして、大変ありがとうございました。我々としても、そのようなお言葉を先生方から頂きますと、ますます頑張らねばということで、一層やる気も湧き出るところです。
非常に興味深い御提案も頂きまして、単にデジタルという切り口だけではなくて、ほかの柱としてやっている現地通貨建ての取組、ABMIですとか、あるいはそれ以外にもCMIMであるとか、そういった現地通貨の取組と絡めて見るべきではないかというのは大変興味深いです。得てしてタコつぼ的に仕事をやってしまいがちですので、ラインをまたいで見るということで非常にありがたい御提案を頂戴いたしました。ありがとうございます。
また、昨年の会議で私のほうから御紹介しました日インドネシアの直接交換についても改めて御指摘いただきまして、ありがとうございます。これは日本にとってある意味試験的な面もありまして、まだインドネシアとだけですが、去年御報告して以降、まさにインドネシアとの間でこれがどのように使われているか、あるいはどのように改善し得るかという点をインドネシアあるいは関連する金融機関とも議論しているところです。先生の御指摘があったように、LCSFという取組がASEANの中で行われていますので、これの動きもよく見ていきながら、連携できるところがあれば可能性は検討していきたいというふうに考えております。
また、澤田先生からは、同じく自然災害リスクに関して非常に示唆に富んだ御指摘を頂きまして、ありがとうございます。先生から御指摘のあったタイの洪水というのは、結構前にはなるのですけれども、我々にとって非常にインパクトのあることであったと思います。日本の企業やサプライチェーンにも影響のあった事案であったと思いますし、単に家が何軒水没するとかだけでなく、サプライチェーンであるとか、場合によっては一国の経済にも影響が及ぶものであることは、もちろんその通りですし、そういった影響があることを念頭に、どんなスキームがつくれるかということは確かに考えていく必要はあろうかと思います。御指摘、ありがとうございます。
具体的にどのハザードを念頭に置いているかということですが、今のところオープンでありますが、まずスタートとしてはASEAN地域、特にタイやラオスなどを念頭に置くと、やはり水害が一番念頭にあろうかと思います。特にそれ以外を排除しているわけではなくて、まずはそういったところを中心にスキームを考えてみたいということですので、先生から御指摘のあったほかの地域の保険のスキームなどもよく勉強していきたいと考えます。
また、小枝先生から御指摘のあった点で、私のほうから申し上げられることとしては、今日は日本印(じるし)ということで自然災害とデジタルを中心に売り込ませていただきましたが、最初に申し上げたように、ASEAN+3の新しい柱の候補としてもう1つ、トランジション・ファイナンスも提起されています。これにも日本としては積極的に参加していきたいと思いますし、まさに先生御指摘のようにG7やG20でも非常に重要な議論が行われていますので、それを踏まえてASEAN+3で何ができるかということは日本としても議論に積極的に参加していきたいと考えます。
いずれにしましても、ありがとうございました。
○清水分科会長どうもありがとうございました。
それでは、最近の外為法をめぐる状況等について、引き続き事務局より説明の後、意見交換の時間をお取りしたいと思います。陣田調査課長、よろしくお願いいたします。
○陣田調査課長それでは、資料4「最近の外為法をめぐる状況等について」を御覧ください。大きく3つございまして、1つは外為法改正、2つ目はマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策、3つ目が直近の対内直接投資の実績でございます。
それでは、資料の2ページを御覧ください。こちらはウクライナ情勢をめぐる我が国の対応でございます。前回4月の分科会で御説明いたしましたように、ロシアの力による一方的な現状変更の試みに対して、国際秩序の根幹を守り抜くために断固として行動していく必要があるということで、G7をはじめ国際社会と緊密に連携して、我が国では、外為法に基づき制裁措置を講じてきたところです。直近で申し上げますと、例えば8番、4月8日公表、12日閣議了解していますが、ズベルバンクなどロシアの2金融機関を対象とした資産凍結。9番目に、ロシア向けの新規の対外直接投資の禁止。10番目に外為法の改正。さらに、今週、ロシアの2金融機関及びベラルーシの1金融機関を対象としました資産凍結措置を講じているところでございます。
続きまして、3ページを御覧ください。こちらは4月に御説明しまして委員の皆様に御議論いただきました外為法改正の概要でございます。ロシアに対する国際社会による金融制裁が強化される中で、暗号資産が制裁の抜け穴として悪用されないようにするため、法的手当てを講ずることにより制裁の実効性をさらに強化するものです。具体的には、制裁対象者から第三者への暗号資産の移転についても、いわゆる資本取引規制の対象としてカバーをする、また、銀行の預金と同じように動かせないようにすることによって規制の実効性を確保する。合わせて、銀行に対するものと同様に、暗号資産交換業者に対しましても、制裁対象者に係る移転ではないことを事前に確認する義務を賦課するものです。こちらの改正案を国会に提出いたしまして、国会でも最優先に御審議を頂きました。4月20日に成立・公布されまして、5月10日から施行されております。委員の皆様には改めて御礼を申し上げます。
4ページは、御参考に我が国の制裁措置に係る告示改正、それから外為法令の改正の詳細について財務省ホームページで掲載しておりますので、御覧くださいませ。
続きまして、5ページ以降のマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策でございます。
6ページを御覧ください。先ほど外為法の改正を御紹介しましたけれども、その際、国会の審議におきましても、ウクライナ侵略で経済制裁の実効性確保、不正な資金移転への対策が重要になっているということで、マネロン対策等に対してしっかり取り組むべきであるという御指摘も頂いております。6ページは基本方針でございまして、まず、その背景について説明致します。昨年8月に公表されたFATFの対日審査、において、日本にはリスク評価を踏まえましたマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に焦点を当てた国の施策(national policy)がない、目的・活動や戦略的に優先すべき事項を明確にしなければいけないという指摘がございました。政府としても、今後数年間の我が国の方向性を確認する文書を策定して関係省庁間の連携を図ることが重要である、それから、政府と民間事業者が同じ方向を向いて同じ目標に向かって連携して取り組むことで、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の効果を高めていくことが重要であるということで策定したものでございます。昨年8月に関係省庁で構成される政策会議を立ち上げまして、財務省、警察庁が共同議長をしておりますけれども、その政策会議において行動計画をつくり、この中で国の施策を策定することを盛り込んで取り組んできたものです。5月19日に政策会議で決定し、公表しています。
7ページは、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策を強化する必要性や意義について整理したものです。そもそも不正な資金の流れが放置されることで組織犯罪やテロリズムの資金源となり、組織的な犯罪や大量破壊兵器の拡散を助長させかねない。近年は特に経済・金融サービスのグローバル化や暗号資産の普及等の技術革新により、資金の流れの多様化、クロスボーダー取引がしやすいといった状況にあります。このため、我が国としても、国際社会と連携しながら国内で必要な対策を強化する必要がございます。それにより、一番下にございますけれども、国民の安全・安心、健全な経済成長、それから国際金融センターの実現にも資するものと考えております。
それから、8ページは具体的に我が国が対策に取り組むに当たりましてどういうリスクがあるかについてまとめたもので、警察庁が毎年まとめております犯罪収益移転危険度調査書、いわゆる国のリスク評価書、それから関係省庁の資料などを用いて分析したものです。例えば、我が国におけるリスクとして、国内では、非対面取引、現金取引、外国との取引が相対的に高リスクとされております。また、顧客としましては、暴力団、国際テロリスト、非居住者、外国のPEPs、それから実質的支配者が不透明な法人等に注意すべきとされております。また、右側の国際情勢でございますけれども、国際的なテロ、拡散金融の動向、それからロシアのウクライナ侵略など経済制裁の重要性、こういうところについて触れているところです。
9ページは、こうした我が国を取り巻くリスクを低減するために、4つの柱に基づいて対策を強化していくものでございます。4つの柱として、リスクベース・アプローチの徹底、新技術への速やかな対応、国際的な協調・連携の強化、それから関係者省庁間や官民の連携強化を挙げております。この4つの柱に沿って、次の10ページの具体的な対策に取り組んでいくものでございます。
10ページを御覧ください。こちらは具体的な対策として8点述べております。最初に、1番目のリスク分析の更なる深化から始まりまして、金融機関あるいはDNFBPs、金融機関以外の事業者の監督の強化等。次に右側に移りまして、法人及び信託の透明性向上、7番目に経済制裁の実施強化、こういう取組を述べております。一番最後に、国内外の情勢変化を踏まえた政策の不断の見直しということで、これらの対策について国内外の情勢を踏まえて見直すことが重要と記載しております。
また、マネロン等対策は、国民や事業者の協力が不可欠でございます。11ページを御覧ください。国民や事業者の協力を求めるに当たりまして、対策の内容、必要性について分かりやすく説明して理解をしていただくことは極めて重要であります。このため、最近、財務省のホームページにおきまして特設ページを作りました。今後、広報活動、周知活動を充実いたしまして官民の連携を強化していきたいと考えております。
続きまして、13ページ以下が直近の対内直接投資等に関する事前届出実績です。13ページのグラフを御覧ください。対内直接投資審査の制度の見直しを2019年に国会で審議しまして、改正外為法が2020年6月から完全適用されております。この改正外為法の施行以降、新たに導入されましたピンクの部分、いわゆる行為時事前届出というものでございますが、こちらの件数が加わっております。一方で、株式等の取得時事前届出、青い部分ですけれども、こちらにつきましては事前届出の閾値を10%から1%に引き下げると同時に事前届出免除制度を導入しております。これにより、2019年度と比べまして、2020年度の青い部分、取得時事前届出の件数は減っています。足元の2021年度を見ますと、この青い取得時事前届出は1,405件、その他の事前届出は210件、行為時事前届出は1,244件となっております。なお、2020年度は6月に改正外為法が施行されておりますので、1年間を通じての影響が統計上出ているのは2021年度からとなっております。
それでは、14ページを御覧ください。こちらは業種別の事前届出割合を示したものでございます。個別要因もございまして変動はありますが、情報処理サービス業、あるいはソフトウエア業といったサイバーセキュリティ関連業種が引き続き高い割合となっています。こちらは2019年に指定業種に追加されてからですけれども、それぞれ63%、66%、54%と過半を占めている状況になっております。
15ページは、先ほどの14ページの資料の円グラフの内容をブレークダウンしたものです。
続きまして、16ページを御覧ください。こちらは取得時事前届出の件数を取得態様別と目的別に分けたものでございます。届出件数につきましては、上場会社が183件。これに対して非上場会社については、1株から届出が必要になるということで、件数が大きくなっており、1,222件です。取得態様別で見ますと、上場会社は、既発行株式の譲受けによる取得が約9割を占めるのに対して、非上場会社では増資新株の取得が多くなっています。また、下のほうの目的別の円グラフを御覧いただくと、非上場会社に係る株式取得については、上場会社に比べて、いわゆる経営関与が多くなっております。こちらについては過去も同様の傾向でございました。
17ページは、国籍別の取得時事前届出件数です。取得時事前届出件数を届出者の国籍別に分けたものですが、日本を除きますと、アメリカと英領ケイマンが多くなっております。なお、日本となっているものは、外為法上、非居住者である個人または外国法人に直接・間接に議決権を過半、50%以上保有されている日本の会社につきましては外国投資家として扱っているためでございます。日本からの届出に分類される届出をさらに見ますと、右の真ん中でございますが、最終親会社等の国籍はアメリカ、シンガポール、それから英領ケイマンが多くなっている状況です。
私のほうからは以上でございます。
○清水分科会長ありがとうございました。
それでは、意見交換に移りたいと思います。御意見、御質問などがございましたら、先ほどと同じ要領でお願いいたします。
○神保委員御説明、ありがとうございます。
外為関連で以前にもお伺いした点ではあるのですけれども、制度が変わって、事前届出の統計として示していただいて非常に分かりやすいと思っております。
もう1点追加で、投資家さんの興味としては、どれぐらい審査に今時間がかかるのかというところは非常に我々もよく質問を受けるところであります。おおむねといった数字で結構ですので、どの程度の審査期間が今かかっているのかという点も教えていただけると助かります。
それから、もう1つは単に意見なのですけれども、こういった最近の社会情勢からすると、現状の非常に安全保障の観点から、マネロンの観点でも、実質的支配者が誰なのか、誰が何の資産を保有しているのかというところを気にされるようになってきていると思っています。現在の外為の対内直投は、最後の統計のページにもあるとおり、直接の届出者が誰かと、最終親会社が誰かというのは届出書の中でも記載するのですが、間接的に日本の法人のコントロールを取るときに、海外の会社、例えばアメリカの会社が日本の会社を持っています。シンガポールの会社が日本の会社の株を持っています。そのシンガポールの会社とかアメリカの会社の株式を100%取得するときに、日本での届出が要らないというふうに理解しています。ここは、その最終親会社が変更したり、実質的な支配者が変更になることを捕捉しないでいていいのかなというのがやはり気にはなっております。何らかの規制が及ぶべきではないかと思っていますので、この点は継続で検討いただければと思いました。
○清水分科会長ありがとうございました。
時間の関係もございますので、御質問を集めてからにしたいと思います。
○渡井委員渡井でございます。外為法をめぐる状況についての御説明をありがとうございました。2点お伺いしたいと思います。
1点目は、5月に成立した経済安全保障推進法とその4本柱でございますけれども、外為法に及ぼす影響としては何が考えられるかということをお伺いしたく存じます。
そして、2点目は事前届出の実績でございますけれども、外為法の対内直接投資をめぐる制度もこの5年ほどで安全保障の見地からの見直しが進められたところで、それはもちろん必要な見直しであったわけでございますが、当初、投資の促進に負荷をかけるのではないかというような議論もあったように存じます。そこで、実際に負荷と見るような余地があったのかどうか。INVEST JAPANとの関係などもふまえてお教えいただければ幸いでございます。
よろしくお願いいたします。
○神作委員神作でございます。御指名ありがとうございます。
最近の外為法改正の運用の実態について御質問させていただきたいと思います。約2年前から施行されております2019年の改正外為法によって、御報告にございましたように、株式取得に係る事前届出の閾値が10%から1%へと大幅に引き下げられたほか、役員就任ですとか、指定業種に属する事業の譲渡・廃止について、いわゆる行為時事前届出をすることが新たに追加されました。他方で、取得時事前届出の免除制度も導入されたと理解しておりますけれども、この制度を導入するときに、この改正によって外国投資家による投資に対するディスインセンティブになるのではないかという意見や批判もあったと思います。そこで、2年ほどの運用の実態を踏まえて、外国投資家の投資に対するディスインセンティブの効果というものについてどのように捉えられているのかについての御所感あるいは御感想を教えていただければと思います。
それとともに、先ほども御質問がございましたけれども、届出件数が増加しているということでございますので、どうしても事務手続に時間がかかったり、今までのマンパワーでは不足するようなこともあるのではないかとも拝察いたします。このあたり、運用について何か改善というか、見直しの必要性があるのかどうかについてお伺いします。
第3に、無届が判明したケースというのはありますでしょうか。かなり届出の範囲が拡張されたこともあって、また、その後の指定業種の追加等もあって様々なルール変更がある中で、無届が判明したようなケースがあるのか。併せて、新たなルールのエンフォースメントをどのように図っていくかという点についても御質問できればと思います。
以上3点、よろしくお願いいたします。
○根本委員御説明、ありがとうございました。
私が伺いたいのは、マネロン・テロ資金への対応です。政策の明確性とか、各省庁の協調ができつつあって非常にいいと思うのですけれども、その中で、先ほども御質問があった実質的支配者情報、この一元的管理を載せていらっしゃるんですが、もうちょっと具体的な見込みも伺えればと思います。諸外国では、アメリカではそういった一元的な管理とか情報シェアも進んでいると聞くのですけれども、日本においてはなかなか難しいのか、ちょっと教えていただければと思いました。
○伊藤(恵)委員御説明、どうもありがとうございました。
まず、マネロンに関しては、日本はマネロン・テロ対策が非常に弱いと随分昔から指摘をされていましたので、やっとこういった形でしっかりと方針、対策が決まってきたことは大変よかったと思っていますので、この方針に従ってしっかり進めていただきたいと思います。
私のほうは2点御質問と簡単なコメントがあるのですけれども、外資の対日投資に関連しまして、既に御意見があったように、やはり私もまず1つは、投資家側からこれまでの事前届出制に対してどういう意見が出ているか。制度や手続の改善のために何らかの意見等を企業のほうから得ていて、それに対して何らかの検討がされているかどうかというところを少しお伺いしたいのが1点です。
2点目は、以前から、なるべく事前にはそれほど厳しい制限を設けずに、事後的にしっかりモニタリングすることが重要だということは申し上げてきて、現在、事後的なモニタリングはどのようになっているかというところをもし可能であれば少し教えていただきたい。
少し話はそれますけれども、例えば統計委員会等でビジネスレジスターの整備を数年前からずっとやってきています。アメリカは企業の親子関係というのもしっかりと調べています。ビジネスレジスターと少し違うところではありますけれども、しっかりと親子関係を調べている。さらに、貿易データにおいてもrelated partyとの貿易もしっかり分かるような統計になっています。EUについても、EU域内で活動する多国籍企業に関してビジネスレジスターのようなものができていて、多国籍企業の活動も統計でしっかり捉えていると思います。
日本についてももちろん多国籍企業に対する調査はありますけれども、ビジネスレジスターのような形で親子関係をしっかり捉えることは今できていないと思いますし、貿易のデータについてもrelated partyとの貿易なのかどうかというところも判別できる情報はない。こういう事後的なモニタリングをするに当たって、欧米でつくられているような包括的なしっかりとしたデータベースをつくることが大事だと私は個人的に思っています。こういった点にも関連して、やはり事前届出、事後モニタリングをやっていらっしゃるところからほかの省庁とも情報共有・交換していただいて、さらに統計部局のほうにフィードバックをしっかりとやっていっていただきたい。いかに効率的な事後モニタリングができるか。そのためにどういう情報が必要か。そのあたりの議論もどこかで進めていただきたいというのが私からのコメントです。
以上です。どうもありがとうございました。
○植田委員すみません。私、自分自身のコメントがあるわけではなくて、何となく皆様のコメントを聞いていた中で思ったことでして、神作先生や伊藤(恵)先生のおっしゃったことは非常にそのとおりで、私もいろいろと状況を知りたいなと思っていますので、よろしくお願いします。
ただし、同時に、この新しい外為法の改正によっていろいろとFDIが難しくなったことについての結果の報告をまとめろと、もし私がやれと言われたら、これは真面目にやろうとすると大変なことだなと思います。ですから、あくまでもカジュアルにおっしゃっていただければいいんですけれども。
もし真面目にやろうとするのであれば、1つは、まさに2020年からコロナ禍だったので、その特殊性をどう排除するのかがまず一番あると思うのですね。もう1つは、そうではないにしても、経済学の理論上は、M&AによるFDIというのはいろいろな代替があります。例えば、M&AによるFDIができないのだったら自分で工場を造ればいいじゃないかという簡単な話ですし、その国に工場ができないのだったら諦めて、輸出をすればいい。貿易をね。いろいろな代替性があります。もちろん、さらにそれに加えて、そもそもその国はそんなにFDI、M&Aができにくいのだったら、その国のターゲットは諦めて、別の国のターゲットを取得すればいいという日本をパスするような代替性もあります。そういういろいろな意味での代替性をどうやって捉えるのかというのは、経済学的に非常に魅力あるテーマなのですけれども、かなり難しい。本当の結果を知るのはかなり難しいなと思った次第です。そのことも踏まえまして、ただ、現状でどのように感じられていらっしゃるのかお聞きしたいなと私も思っております。
○伊藤(亜)委員伊藤亜聖と申します。
外為法の運用の点で1点、関連してお伺いしたいのは、特にスタートアップ企業の場合、非上場で、取引が非常に頻繁です。株主の変更が頻繁ですし、ひょっとしたら年に何回か替わるというのが通常の姿だと思います。既に御質問があったように、投資家にどういった影響があったのかということを考える際に、とりわけ新興スタートアップ企業の投資環境にどういった影響があり得たのか。もし何か情報があれば御知見を頂ければと思います。質問している背景には、私、知り合いのスタートアップ投資関係の方と意見交換する機会があったときにこういった論点を聞いたことがあるということです。よろしくお願いします。
○清水分科会長ありがとうございました。
それでは、事務局より回答をお願いいたします。
○陣田調査課長御質問、ありがとうございました。それでは、順番にお答えを差し上げます。
最初に神保委員から、審査の期間についての御質問がございました。公表しているデータはございませんけれども、事前届出免除制度が入った関係で、改正前に短期間で審査を終わっていたものにつきましては、事前届出が免除されています。その他のものにつきましては、外為法の審査期間は原則30日になっていますけれども、我々の手元のデータでは30日の半分程度で了しているものも多くあります。問題のない投資については審査を速やかに行うのは当然ですが、国の安全等を損なうおそれがないかしっかりと審査する必要があり、バランスが重要と考えています。今は審査期間が15日以内というのが過半でございますけれども、ケース・バイ・ケースになります。
神保委員からの2点目、最終親会社や実質的支配者が替わったとしても直接の投資家は替わらないので届出は要らないという論点がございますけれども、それについては我々としても論点として認識しており、引き続き考えていきたいと思っております。
渡井委員の経済安全保障推進法に関するご質問ですが、同法が外為法上の対内投資審査に直接影響を及ぼす項目はなく、まだ施行されていませんので、現時点で特段の対応はございませんが、同法の動向も踏まえながら、引き続き関係省庁と連携して、我が国の経済安全保障の確保に取り組んでいきたいと考えています。
また、2点目の外為法改正と投資の促進との関係でございますけれども、制度改正の後で、先ほど申し上げましたが、株式取得時事前届出件数が減っています。株式取得時事前届出の審査については、先ほど申し上げましたように事前届出免除制度が入ったことで、たくさんの投資をしていた金融機関につきましては逆に非常に利便性が高まったというような評価を頂けると思います。神作委員、伊藤(恵)委員、植田委員からも関連の御質問がございましたが、全体として外国投資家から大きな不満は実は私どものほうにはございません。
ただ、コロナ禍で、例えば外国投資家の方が日本に会いに来る、そういう機会があまりありません。オンラインで話をするのはいつでもウエルカムでございますので、そこはよく丁寧にお話を聞いていきたいと思っております。
それから、神作委員の質問で2点目、運用の実態・マンパワーについて、確かに行為時事前届出など審査件数が増えています。今後、行為時事前届出をはじめ、審査の数が増えていく傾向にございますので、関係省庁で定員要求をして人員を増やしております。財務省国際局におきましても、現在、投資審査を行う職員は8名おりますけれども、来事務年度、来月からさらに増員しまして6名増やす予定でございます。さらに、以前申し上げましたとおり、財務局、地方のほうにも人を張りつけてしっかり周知をしていきます。神作委員のおっしゃるように、投資審査の重要性は高まっておりますので、政府としてはまさに人を増やしてしっかり対応していくと。経産省、その他の事業所管官庁におきましても同様に人を増やしております。このように対応しておりますけれども、なお審査が滞ることがございましたら、さらに効率的な方法を関係省庁で考えていきたいと思っております。
それから、無届の関係でございます。無届事案につきましては我々は厳しく対応する方針です。まずは過失で届出をしなかったケースがあります。この場合には、我々は警告を行い、場合によっては書面で注意を行うことをしております。これが繰り返されるような場合には、例えば報告徴求命令を出して、記録に残る形でしっかりと再発防止策をつくってもらうということをやっております。いずれにしても、無届事案は、悪質なものには極めて厳粛に対応する必要があると考えておりますので、しっかりモニタリングをしていきたいと思っております。
続きまして、根本委員から、実質的支配者情報の一元化管理がございました。ちょうど3月にFATFで法人の実質的支配者情報の一元化をする新たな登録制度を各国がつくるべきという勧告がなされておりまして、日本としてもこれは重要な話であるということで、現在、関係省庁間で検討しています。例えば、我々が理解する限り、ヨーロッパやアメリカなど一部の国では導入が始まっており、不正な資金の流れを追うときに法人の実質的支配者情報というのは非常に重要になりますので、我々は関心を持って各国の動きを見てきたわけでございますけれども、日本においてどういうような制度が望ましいかについて、まさに今関係省庁間で議論をしているところでございます。
それから、伊藤(恵)委員の御質問でございます。事後的なモニタリングですけれども、事前届出の後、事後に事前届出をした際の内容を守っているかどうか、あるいは、事前届出を免除された投資について、しっかり届出免除基準を満たしているかどうかについてモニタリングする必要がありますので、財務省を中心に関係省庁間でモニタリングをしております。具体的な中身につきましては申し上げられないのですけれども、まさに財務省、事業所管官庁が一体となってモニタリングをしていくということで足元で事後モニタリングの強化に向けた取組を進めているところでございます。
もし回答漏れがございましたら恐縮ですけれども、以上でございます。
○三村国際局長基本的に今かなり陣田君からお答えを申し上げたとおりでございますけれども、幾つか御質問も頂きましたし、委員の中には御承知の方も多いように、2年前の法改正は、当時、私が副財務官として思い切り担当しておりましたので、幾つか個人的な振り返りも含めまして、すみません、時間もあれですが、感想めいたことも含めて申し上げます。かなり陣田君からお答えしておりますので補足的にということで、かいつまんで幾つか適宜ピックアップしてお答え申し上げますけれども。
まず、神保委員からお話のありました最終親会社が替わったときに届出しなくていいのかというお話は、実は私が副財務官をしている当時、調査課のチームと恐らく数日、延べ時間で言えば何十時間と議論をしたと思うんです。ものすごく問題意識は持っているのですが、実際にやろうとするとものすごく悩ましくて、例えばシンガポールの親会社の株式をアメリカ人が中国人に売るとかいうケースなわけです。そもそも、まずシンガポールにあるシンガポールの法人に対して直接的に外為法で何か義務をかけられるのか。仮にかけられるとしても、シンガポールの会社がもし上場会社とかであれば、あるいは上場会社でなくてもそうかもしれませんが、株主同士で、特に外国にいる株主同士で株式を移転されるものについて、「おまえ、自分のところの株式を、株主AからBに売らせるな」みたいなことをなかなか命じようもないものですから、実際上、主権の問題を考えたときに、どうやって外国の親会社の、さらにそのまた後ろにいる外国の株主に対して日本の外為法に基づく義務を課し、あるいはそれをエンフォースできるのだろうかということを当時もさんざん議論したんです。
あの当時は、これは実際上難しいなと。アメリカのような二次制裁がうちはありませんが、かなりなことをやって、それでもなお投資家が来てくれるような国であればまた違うのかもしれません。まさに一方で日本への投資も常に門戸を開かなければいけない中で、そこと両立する中で法制的にできるものが少なくとも当時は思いつかなかったというのが実情であります。ただ、本当は何かやらなければいけないという問題意識は全くおっしゃるとおりで、我々も問題として認識していないということではないんですが、当時としては非常に難しかったということで、その悩みは今も私自身引き続き抱えておるところでございます。
それから、渡井委員はじめ何人かの委員の方から、まさに2年前に、外国の投資家の日本へのせっかくの投資をある種dissuadeしないのかというお話は当時もさんざん頂いたわけでございます。先ほど陣田君からも申し上げましたけれども、その後、結構折に触れて、我々もアメリカですとかロンドンですとか、あるいはそのほかの国も含めましていろいろなところにアタッシェ等々もおります。ニューヨークの投資家ですとかロンドンの投資家ですとかいろいろな外国の投資家の方、それも現地の人もいれば、日本人で現地でやっておられる方、いろいろな方で、毎日のようにいろんなアタッシェの情報も送ってくれます。私も注意して読んでいますけれども、少なくともこの2年間見る限り、この外為法の手続がややこしくなったからもう日本は知らないというのは、本当の話、私はまだ一件も読んだことはありません。日本に投資をしないのは、これはこれで深刻なわけですが、むしろもっと日本の足元の競争力とか、経営者がなかなか株主目線でないとか、こういったいつも言われているようなことをいろいろ指摘を受けて、それはそれで何とかしなきゃいかんと思うわけですが、外為法の手続自体で何か直接的にということはありません。
むしろ、もちろん数は多くありませんが、幾つか見て私自身が非常にうれしく思いましたのは――あの当時もロンドンですとかワシントンですとかニューヨークですとか私自身もいろいろなところに出張して、さんざん外国の投資家の方に御説明もしました。あるいは、当時まだコロナの前でしたから、毎日のように外国の投資家でこの建物にお越しになられた方とも議論をしました。あの当時そういう形で財務省から一生懸命マーケットに説明をして、それを一部なりとも制度に反映させようという努力をして、そのプロセス自体は評価をしているというふうに言ってくれた投資家の方もいらして、この辺は非常にありがたいし、また当然のことだとも思います。先ほど陣田君の話もありましたけれども、ようやくコロナの水際規制も少し解消されてきまして、日本にお越しになる外国の方も私の体感として増えてきた感じもいたしますので、ぜひこういったところについて、もし何か引き続きの懸念があるやもしれませんし、そういったことは引き続き周知徹底をしていきたいと思います。
それから、神作委員の無届のお話は、先ほどどういう対応を我々がしているかは陣田君からお答えしたとおりです。我々も無届という事態を把握すれば当然そういう対応をするわけですが、把握できているのかという、そもそもの問題が無届だからあるわけでございます。これは一生懸命情報収集をという一般論になるわけですけれども、中には、別に何か悪意があってではなくて、制度を御存じなくて届出ができていないというケースも当然あると思っていますので、この制度の周知徹底は極めて重要だと思っております。
先ほど陣田君から申し上げましたように、例えば財務局に人員を今度増やしますという話も、実際上の届出上の審査自体はこの建物でやるわけですけれども、むしろ財務局の新しいチームに期待していますのは、まさにその辺の制度の周知徹底であります。非上場会社の場合には1株から届出が指定業種でも必要になるわけですが、実際は、地方におられる例えば非上場の企業の方で、株をどこか外国の投資家に売るときに、外為法を皆さん御存じかというと恐らくそうではないと思います。そういった制度がありますよということをいかに周知徹底するかが大事だと思っていますので、地方財務局につくる部隊には、それこそそれぞれの各省庁の出先機関ですとか、場合によっては地元の商工会議所的なところですとか、あるいは税理士の先生とか会計士の先生ですとか、とにかく日頃そういう企業の方々がアクセスしそうな方々に、まずこういう制度がありますよという話を周知する。とにかく自分の顧客が株を外国人に売ることになったら、詳しいことは知らないけれども何か財務省に相談したほうがよかったような気がするというふうにまず思っていただけるような制度の周知徹底はしなきゃいかんかなと思っているところでございます。
最後に、事後モニタリング、これも伊藤(恵)委員からありましたように非常に重要な論点だと思っております。さっき陣田君から申し上げましたように、随時いつもやっていかなければいけないことだと思っていますので、引き続き人員の増強とともに図っていきたいと思っている次第でございます。
そして、Beneficial Ownershipのお話、実質的支配者、これは外為法の話であると同時にFATFでどう対応していくかという問題で、これも制度的につくろうとするといろいろ難しいところはあるのですが、FATFの要請としてもある程度のことをやらなければいけません。やりませんと次の第5次審査でまた指摘を受けることは確実でありますので、FATFにしっかりと対応することが、当たり前ですけれども、外為法上もいろいろなことに役に立つことでありますので、このあたりは合わせ技でやっていかなければいけないと思っている次第でございます。
ちょっと延長しまして申し訳ございません。私からは以上です。
○清水分科会長ありがとうございます。
すみません。私も一言だけ。今円安がこれだけ進みまして、外国投資家の日本買いが今後多方面で進むことが考えられると思います。特に素人同然の投資家が非上場企業の株を買うというような事例も生じてくると思いますので、今の御意見にもあったように人員を増やして制度の周知徹底というのは非常に重要かと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
陣田課長、一言。
○陣田調査課長ありがとうございます。先ほど1点お答えを忘れましたので、補足説明致します。伊藤亜聖委員から、スタートアップ企業の投資への外為法改正の影響についてのご質問がございました。2020年の外為法改正におきましては、スタートアップ等の非上場企業については特に改正はしていなくて、従来より1株から届出が必要という状況でございます。ただ、改正前後で変わっているわけではございませんけれども、スタートアップの方は人員が少ないですから、手続負担が重く感じられると思いますので、我々もオンラインで届出ができるようにシステムを構築するなどしております。特に今年度は、オンラインを使いやすくするように改修しておりますので、それによって手続がよりスムーズにできればと思っております。
○清水分科会長ありがとうございます。
まだ御質問、御意見などもあろうかと思いますが、既に時間を延長しておりますので、これで本日の議事を終了させていただきます。
なお、今回の議事録の作成は私に一任いただければと存じます。その際、発言部分を事前に御覧になりたい委員の方におかれましては、会合終了後にその旨を事務局に御連絡いただくということにいたしまして、御連絡いただきました委員の方には議事録を案の段階で事務局より送付したいと考えております。その後1週間程度の間に御意見がない場合には御了解いただいたものとさせていただきます。
次回の分科会につきましては、事務局と相談の上、御連絡させていただきます。
本日は、長時間にわたり御出席を賜り、ありがとうございました。
午後0時10分閉会