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関税・外国為替等審議会
第49回外国為替等分科会議事録

令和3年11月16日(火)

財務省 国際局

於 財務省第3特別会議室
本庁舎4階

1.開会

2.最近の国際金融情勢について

3.FATF第4次対日審査結果と外為法における対応

4.対内直接投資審査制度について

5.閉会

出席者
委員 雨宮 正佳 財務省 三村国際局長
伊藤 恵子 土谷国際局次長
片山 銘人 吉田国際局審議官
河野 真理子 内野国際局審議官
神作 裕之 岸副財務官
斎藤 保 緒方副財務官
坂元 龍三 今村国際局総務課長
清水 順子 陣田国際局調査課長
神保 寛子 飯塚国際機構課長
杉山 晶子 森地域協力課長
高山 一郎 松本為替市場課長
根本 直子 藤井開発政策課長
原田 喜美枝 田部開発機関課長
渡井 理佳子 土生外国為替室長
臨時委員 安藤 光代 桜田調査課企画官
植田 健一 髙橋投資企画審査室長
大野 早苗 日向為替実査室長
小枝 淳子 石崎国際機構課企画官
佐藤 清隆 髙木資金移転対策室長
澤田 康幸 梶山地域協力企画官
専門委員 伊藤 亜聖 増原資金管理室長
玉木林太郎 棚瀨資金管理専門官
信光 小林開発企画官
経済産業省 風木貿易管理部長

午後2時00分開会

○清水分科会長 それでは、ただいまより第49回外国為替等分科会を開催いたします。

委員の皆様方におかれましては、御多用中のところ御出席いただきまして、ありがとうございます。

本日、オンラインでの参加を含め23名の委員に御参加いただいております。

まず、本日の議事に入ります前に、委員の異動につきまして、新たに片山銘人委員、髙島誠委員、森田敏夫委員が就任されましたので、御報告申し上げます。

さて、本日も新型コロナウイルスの感染拡大の防止の観点を踏まえた対応を行うこととしており、皆様の御協力のほどよろしくお願いいたします。具体的な留意点などについて事務局より説明をお願いいたします。

○陣田調査課長  調査課長の陣田でございます。

会議室参加とオンライン参加のハイブリッド形式となっている関係で、留意点について御説明いたします。

まず、会議室で御参加の委員の皆様におかれましては、オンライン参加の委員の皆様に音声が明瞭に伝わりますよう、できる限りマイクに近づいて御発言いただきますようお願いいたします。また、オンラインで御参加の委員の皆様におかれましては、御発言時以外はミュートにしていただきますようお願いいたします。また、途中で万が一Webexがつながらない等の問題がございましたら、電話会議システムのほうで引き続き御参加いただく形をお願いいたします。

委員の皆様には大変御不便をおかけいたしますが、御協力のほどよろしくお願いいたします。

○清水分科会長 それでは、本日の議事に入りたいと存じます。本日の議題は、最近の国際金融情勢について、FATF第4次対日審査結果と外為法における対応、対内直接投資審査制度についての3つです。

まず、最近の国際金融情勢につきまして、これは、事務局より説明の後、意見交換の時間をお取りしたいと思います。それでは、飯塚国際機構課長、よろしくお願いいたします。

○飯塚機構課長 よろしくお願いします。国際機構課長の飯塚でございます。

1ページおめくりください。まずはIMFの世界経済見通しの概要でございます。1ページ目ですけれども、まさに見通しの概要でありまして、世界経済について、IMFの世界経済見通しによりますと、世界経済は、2020年にマイナス成長になった後で、コロナで蓄積されましたペントアップ需要が表れることにより、21年には約5.9%、22年には約4.9%の成長見通しとなっております。ただしですけれども、春のWEOに引き続きまして、ワクチンの普及ペースなどにより低所得国で成長が落ち込むなど、ばらつきが拡大しております。地域ごとの2021年の短期的な見通しにつきましては、アメリカでは供給制約等により6.0%へと下方改定が出されておりまして、日本につきましては緊急事態宣言の影響で2.4%に下方改定されておりますけれども2022年には3.2%の回復が見込まれております。新興国、途上国についてはむしろコモディティの市況改善を反映して上方改定が出されております。

次に、インフレですけれども、アメリカや幾つかの新興国、途上国で需給のミスマッチ等によってインフレは高まっております。ただ、2022年には解消される一過性のものだと見られております。リスクとしましては、需給のミスマッチ等が想定より長引けばインフレ圧力が高まりまして先進国の予想より早い金融正常化につながる可能性が指摘されております。

もう1ページおめくりください。2ページ目ですけれども、リスクと政策対応でありまして、一番初めにリスクです。不確実性が引き続き高く下方リスクが大きいとされております。下方リスクにつきましては、より悪質な変異株の拡大ですとか、インフレの上振れによる金融緩和の早期解除などが指摘されております。

次に、政策対応ですけれども、多国間レベルと国レベルの政策対応の両方が重要だとされております。多国間レベルでは、まずワクチンの供給を加速するということでありまして、2022年の年央までに70%の人口にワクチン接種を完了することなどが提言されております。あとは気候変動でありますけれども、グローバルかつ多様な側面を持つ課題であって、よく調整された政策対応を行うことが必要であると。国のレベルでは、保健分野、コロナ対策への緊急支援を優先しまして、感染状況が収束した後に、財政余地の範囲内で経済回復や未来への投資に重点を移していくべきだと。金融政策につきましては、インフレ期待が上昇して持続的な物価上昇に関する具体的なリスクが存在する場合には早期の具体的な対応が必要とされております。

もう1ページおめくりください。経済見通しの推移でありますけれども、2021年と22年のところを御覧ください。2021年7月との差で見ますと、先進国では2021年の見通しがサプライサイドのボトルネック等によりまして総じて下げられております。逆に2022年の見通しが改善しております。新興国では、中国の公共投資抑制などを見込んで、中国については若干見通しは下げられているものの、全体としてはコモディティ価格の上昇などによって成長見通しが若干改善しているところであります。

もう1ページおめくりください。次に、ワシントンで行われましたG20財務大臣・中央銀行総裁会議の結果について簡単に説明させていただきます。まずは世界経済ですけれども、見通しですとかリスクの認識については先ほどのIMFの世界経済見通しと整合的なものとなっております。政策対応については、金融の安定と、コロナでG20の先進国の債務残高対GDP比で言いますと20%近く悪化していることもありまして、長期的な財政の持続可能性を維持しつつ、7月のG20コミュニケに引き続いて、最も影響を受けた人々や不平等に対する悪影響に対処するために、必要とされる間は全ての利用可能な政策手段を用いるという決意が再確認されております。

国際課税ですけれども、BEPSの包摂的枠組みによる最終的な合意を支持しまして、2023年には新たな課税ルールが発効することを確保するための作業を迅速に行うことを要請しております。

コーポレート・ガバナンスは、企業がコロナ禍からの回復を進めて新たな社会構造に適応するのが重要という認識でありまして、G20/OECDコーポレート・ガバナンス原則の見直しを期待されています。

気候変動ですけれども、気候変動対策については、先進国と途上国で対立するところがありますので、まずは中央銀行などで用いられているシナリオ分析などを活用してマクロ経済、分配面の影響についてさらに分析を行うことと、あとは日本が主張してきましたトランジションファイナンスの原則などの策定を含む2025年までのロードマップの策定が行われました。

低所得国・脆弱国支援につきましては、IMFの脆弱国支援と債務問題がありますけれども、これは後ほど詳細を説明させていただきます。

国際保健につきましても後ほど詳しく説明させていただきますけれども、財務大臣会合の段階では、財務・保健の連携の新しい枠組みについて引き続き議論されていくこととなりました。

金融セクターにつきましては、MMFですとか金融技術革新に関するFSBの報告の承認が行われました。

もう1ページおめくりください。G20首脳会合ですけれども、基本的にはG20の財務大臣・中央銀行総裁会合までの議論の積み重ねが確認されたということであります。2点申し上げますと、国際保健につきましては、サミットの直前で行われた財務・保健大臣会合も含めて、G20サミットまでに具体的なタスクフォースの議論が進展されました。IMFを通じた脆弱国支援につきましても、世界合計で1,000億ドルの自発的貢献というG7サミットで合意された野心について、G20首脳間でも最近の進捗が歓迎されております。

もう1ページおめくりください。次に、国際課税についてですけれども、G20サミットのコミュニケにも記載されているとおり、より安定で公正な税制に向けてのヒストリック・アチーブメントという評価がなされておりまして、各国からも祝意が表明されるような議論でした。何が画期的かといいますと、大きく2つの課題に応えるものとなっております。1つ目が、大手ネット企業のように、市場となる国に物理的拠点がない企業が増えております。これに対して、これまでの国際課税の原則は物理的拠点がないと課税できないという問題がございました。2点目は、低い法人税率等により外国企業を誘致するという、racing to the bottomと言われるような動きが続いてきたことがあります。そうした課題に対応しまして、2015年のBEPSの最終報告書において作業を進めることになりまして、今年10月8日に2つの柱による解決策に合意がなされたところであります。第1の柱は新たな課税権の配分、第2の柱はグローバル・ミニマム課税でありまして、いずれも2023年の実施が目標となっております。次のページで詳細を説明させていただきます。

1ページおめくりください。経済のデジタル化に伴う課税上の課題に対する合意、これの概要になりますけれども、7月の大枠合意で行われた論点について、より詳細な実施計画とともに合意がなされたということであります。第1の柱関連では、7月の大枠合意では、国際的な合意ができた場合には速やかに一方的なデジタルサービス税を廃止してもらうことと、市場国への超過利益の20~30%という幅を持って税率が合意されていたわけですけれども、その確定が課題となっておりました。それに関しまして、売上の10%を超える超過利益の25%を売上等に応じて市場国に配分することと、第1の柱を実施するために、今後策定する多国間条約において全ての企業に対する全てのデジタルサービス税等を廃止して、将来にわたり導入しないことを定めるという、この2点が合意されました。実施目標は、2022年に多国間条約を策定しまして、23年から実施することとなっております。第2の柱につきましては、最低税率が15%以上ということが7月の段階で合意されていたのですけれども、その確定が課題となっておりまして、10月の段階では最低税率は15%、実施目標については、2022年に国内法を改正しまして、所得合算ルールは2023年、いわゆる軽課税支払いルールについては24年から実施することが合意されました。

1ページおめくりください。次に、IMFを通じた脆弱国支援でありますけれども、背景としましては、新型コロナがありまして、それにいろいろな対策をする中で、米ドル等の外貨準備に対する需要が増加したということがございます。このため、国際社会とIMFが議論しまして、4月の段階でIMFCにおいて大筋合意が出されまして、それに基づきましてSDRを6,500億ドル、8月に追加発行しました。ただ、SDRですけれども、IMFの全加盟国への出資割合に応じて配分されるため、低所得国に回るのは全体の3%程度でありまして、必要なところにお金を回そうという観点で、先進国、新興国に新規配分されたSDRの一部を低所得国に自発的に融通する、チャネリングと呼んでいますけれども、この仕組みの検討がなされております。そこで、G20首脳会合での主な成果の欄の記載でありますけれども、6月のG7の首脳コミュニケで表明されました、SDRチャネリングによって世界合計で1,000億ドルを自発的に貢献するという野心がG20でも言及されたということであります。それと、IMFによる低所得国向け無利子融資ですね。PRGTですけれども、日本が10月にG20の大臣会合で貢献を表明したものも含めて、各国の貢献を歓迎されました。それと、IMFに対しまして、新たにパンデミック、気候変動等のリスクに対応する強靱性・持続可能性トラストというものをつくっていただくことを要請しております。

もう1ページおめくりください。参考ですけれども、IMFのSDRの新規配分でありまして、1ポツ目と3ポツ目は説明が重なりますので、2ポツ目を御覧ください。2ポツ目ですけれども、SDRの使用についての透明性と説明責任を強化するように日本は求めていたのですけれども、加盟国のSDRの取引、保有量の定期的な対外公表とか、ガイダンス・ノートの作成・公表、それと新規配分の2年後にSDRがどう活用されたかということについて分析レポートを作成していただくこととなっております。

もう1ページおめくりください。次はこれまでのG20とちょっと違う毛色ですけれども、G7での政策であります。10月のワシントンG7で各国が中央銀行デジタル通貨(CBDC)の検討を行う上での原則について合意がなされました。これまでのCBDCの検討においては、主に中銀サイドでの検討ですけれども、通貨の金融システムの安定ですとか金融の包摂性などに主眼を置いていたのですけれども、今回のG7合意はその中銀の権限を超えた幅広い公共政策上の課題についてG7内外の検討指針を表すものとされております。具体的な項目が8個ほど並んでおりますけれども、法的・ガバナンスの枠組み、さらに、個人情報の保護・利用、データプライバシーですとかサイバーセキュリティだとか、不正な金融に使われないようなマネロン・テロ資金供与対策ですとか、他国の通貨主権や金融システム安定への配慮が必要だという波及効果への配慮ですとか、あとは、開発援助に利用する際の、動機の透明性の確保だとかいう国際開発などの観点等、中銀の幅を大きく超えるような観点を含んだものとなっております。

続きまして、国際保健以降については開発政策課長から説明させていただきます。

○藤井開発政策課長 開発政策課長の藤井でございます。

私のほうから、国際保健と、それから途上国向けの債務問題、この2つについて御報告をさせていただきたいと思います。この2つのアジェンダは、従来からあるアジェンダですが、コロナ・パンデミックが起きたことによって国際社会の中でより注目を浴びるようになったアジェンダでございます。

まず、11ページでございます。国際保健について、一番上の背景のところ、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジは、注にもございますが、全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを支払い可能な費用で受けられる状態でございます。このUHCというのは日本が長らく国際開発の分野で重要だと主張してきている分野でして、2008年の洞爺湖サミットぐらいからずっと主張してきていることでございます。こういった国際保健の分野を推進するに当たって、担当である保健大臣だけではなくて、ファイナンシングを担う財務大臣、この両者の間の連携がないとなかなかこれを進めていくのが難しいという点を日本は長らく主張してきております。これを仕組みとして具体化したのが、2年前になりますけれども、日本が議長国を務めましたG20大阪サミットと併せて、初めて開催させていただいたG20財務・保健大臣合同会議です。これは日本が主導してやらせていただいたものでございます。ここまではプレ・コロナの時代でしたけれども、その後コロナが非常に流行して今もまだ続いているところでございます。こういった中で、ワクチンあるいは医療機器といったようなものの開発、調達、普及でなかなか連携がうまくいかないということで目詰まりが生じることがございます。国際保健分野ではWHOが中心的な機関でございますが、必ずしもWHOだけで国際保健の分野を全て賄っているわけではなく、いろいろな関係機関の間の連携もなかなかうまくできていないところがあり、既存の国際保健システムのガバナンス面、それからファイナンス面の、両方で弱いところがあるということがと露呈してきているところでございます。

こうしたことを受けて、今年はイタリアがG20の議長国ですが、こういった問題に対して解決策を見出していこうとしました。1つには、まず足元のコロナ・パンデミックを何とか解決していこうということです。もう1つとして、将来また似たようなパンデミックが起きた場合に同じようなことが起きないように、予防、備え、対応、PPRという言い方をしておりますが、将来のパンデミックへのPPRを備えるための具体的な仕組みを議論していこうというのがテーマとなっております。10月の終わりにローマで財務・保健大臣合同会議が開催されました。今回が3回目になります。日本で1回目をやって、昨年サウジアラビア議長国下で2回目、そして今年3回目の財務・保健大臣合同会議が首脳会合と併せて行われていますが、ここに書かせていただいている3点がその主な成果でございます。

まず1点目は、足元のコロナ対応として、これはWHOが掲げた目標ですけれども、全ての国において、来年(2022年)半ばまでにワクチン接種率70%を達成するという目標に向けて途上国支援を継続することを確認しました。非常に野心的なターゲットではございますが、これをG20として確認したところに意義があると思います。2点目は、日本が掲げておりますUHCを達成するためのコミットメントを再確認しました。3点目は、将来のパンデミックPPRに向けて、先ほど申し上げた財務・保健当局の連携強化と、これを実現していくための議論の場として、G20財務・保健合同タスクフォースというものを設立することに合意しております。なお、下の注のところですが、財務・保健大臣合同会議が10月最後の週の半ばぐらいにあって、その後首脳会合があったわけですけれども、首脳会合では、資金調達について金融ファシリティ設立の方途についてこのタスクフォースで議論をしてくださいということが併せて盛り込まれております。

1ページめくっていただきまして、12ページはローマの財務・保健大臣合同会議の国際保健分野の抜粋でございます。主に青色をつけさせていただいたところがポイントとなります。最初の点、2つ目の点はもう御説明したとおりでございます。3点目のところが、資金メカニズムについて多国間資金メカニズムを適切な組合せで動員、それから新たな資金メカニズムの設立を検討といったことで、ファイナンシングについての記述が盛り込まれております。最後の4点目がタスクフォースについてで、一番下3行ぐらいに内容が書いてありますが、このタスクフォースの議長は今年と来年のG20議長国、すなわちイタリアとインドネシアが議長を務める。来年初めに保健大臣、財務大臣に報告をする。世銀の支援を受けながらWHOに事務局を置く。それから、タスクフォースを今年の年末までに開始し、具体的なロードマップや事務局の任命を行うといったようなことが盛り込まれております。まさにこれから具体的な作業をしていくことになります。

次の13ページ目、こちらは参考でつけさせていただきました。UHCファイナンスについてのこれまでの取組につきましてまとめておりますので、後で御覧いただければと思います。

次に、14ページは、低所得国の債務問題でございます。これは、従来、基本的には貸手は先進国中心だったので、債務状況が悪化した場合の債務救済策はいわゆる先進国を中心としたパリクラブが主導する形でやってまいりました。しかしながら、近年、中国が途上国向け融資を拡大し、最大債権者になる場合も多くなっている中で、いかに中国を巻き込んで債務救済の仕組みをつくっていくのかというのが非常にチャレンジングな課題となっているところでございます。注に書いてありますように、中国の融資契約には、先進国と比べていろいろ違った特徴もあり、情報開示面、それから公平な債務救済を妨げる条項、こういったところでいろいろ不透明や不公平な部分がございます。それから、資源やインフラ等の権益を代わりに取得するぞといった債務の罠と呼ばれるようなこともあり、こういったものも併せてどう解決していくかというのが課題になっております。

こうした中で、昨年のサウジアラビアでのG20において中国を含む形でG20が低所得国向けに債務救済を行う際の共通枠組というものをつくりました。これは、債務救済について、パリクラブ国と中国を含んだ非パリクラブ国が共通の枠組に沿って合同でやろうということを初めて約束したもので、そういう意味で意義のあるものでございますが、これを具体的に動かしていくのが今年の課題になっております。その下に書いているように、現在、チャド、エチオピア、ザンビアというアフリカの3か国がこの共通枠組の下での債務救済を要請しておりまして、これについて具体的な議論をしているところですが、まだ現時点では債務救済は最終的に合意というところまでは至っておりません。このプロセスをいかに迅速化していくのかというのが課題という状況でございます。

こうした背景を受けてG20首脳会合では、今申し上げたように迅速化をすることがテーマになっておりますので、適時に実施するための取組を強化し、それによって債務国に一層の確実性を与え、IMFによる資金プログラムの迅速な提供を促進していこうということに合意をしております。あわせて、債務状況の透明性を高めていく必要があるだろうということで、これは日本がかねてから非常に強く主張しているところですが、こちらも盛り込まれております。首脳宣言では、こういった債務データの質・整合性の強化に向けた作業を期待する旨も言及されております。

次のページをめくっていただきまして、15ページ、16ページは御参考になりますが、中国の途上国向け融資について、アメリカを中心とした研究機関が今年3月、それから秋に研究レポートを出しております。なかなか興味深い内容となっておりますので、こちらを御参考につけさせていただいております。

15ページのほうは、中国が外国政府と締結した融資契約の内容で、いろいろ注で書いておりますが、計100件の融資契約をサンプルとして分析しております。その中で、四角の中に囲んでおりますような主に4つの特徴があるという分析をしております。1つは、秘密保持条項が多く盛り込まれているということです。特に2014年ぐらいからこういった条項を入れているものが増えているようでございます。民間の契約でこういった秘密保持条項を入れているところもあるのですが、下線も引かせていただいているとおり、契約の存在すら情報開示を禁じるといったようなところが特徴でございます。

2つ目の特徴は、Non Paris Club条項。中国からの債務についてはパリクラブの債務救済の対象に含めないといったような条項が入っているというのもサンプルの中でかなりの割合を占めております。

実質担保条項というのが3つ目の特徴です。債務国に対して、エスクロー口座を設けて、そこにあらかじめ資金を入金させておいて、それによって債務に対する返済を確保するような条項も入っております。

4つ目の特徴は、契約解除や債務不履行に関する条項(クロスデフォルト条項)です。民間の契約にもこのような条項はございますが、特徴として、中国の特定の融資と無関係な要件、直接関係のない政治経済情勢ですとか、あるいはほかの中国企業が不利な扱いをされる場合にこういったクロスデフォルトをすることができるという条項が入っているということで、かなり中国に有利なものが入っているというのが分析されております。

16ページのほうに移っていただきまして、こちらは9月にAidDataというアメリカの研究機関がいわゆる中国の一帯一路構想における融資がどうだったのかというのを分析したレポートでございます。一帯一路構想以降、中国による融資の規模が拡大しておりますが、その背後を見ると担保付融資の活用や隠れた債務が増えているということでございます。こういった情勢になると、債務国自身が実際総額で幾ら中国に債務を負っているのかということをはっきり把握するのが難しく、公的債務管理がなかなか厳しい状況だというのが見えてきております。真ん中あたり、担保付融資の活用というところについて、これは新聞等でも報道されておりますが、中国が将来の資源輸出の収益等を担保とした融資を入れている例がございます。それから、隠れた債務というところでは、中国の融資が借入国に直接ではなくて、例えばSPVや国有銀行、国有企業、民間企業向けに出されております。これは公式な政府債務としては報告に入ってこないのですが、デフォルトした場合には、実質、これに対しての返済義務を借入国側が負わなければいけないといった例がございます。こういったあたりも今後の債務問題を考える際に考えていかなければいけないということで御紹介をさせていただきました。

私からは以上でございます。
○田部開発機関課長 開発機関課長の田部でございます。

私のほうからは17ページ、18ページ、気候変動の関係について御報告をさせていただきます。ちょうど先週末までイギリス・グラスゴーで開催されておりましたCOP26に向けて、ファイナンス・トラック、財務金融分野におきましても様々な取組が進んでおりますので、それについて御紹介をさせていただきます。

まず1点目、気候資金でございますけれども、これは、もともと途上国支援のために、先進国全体で2020年までに官民合わせて年間1,000億ドルの資金を導入するという目標を立ててやってまいりました。これについて、2021年から25年までこの年間1,000億ドルという規模を継続することを公約しております。これにつきまして、日本のほうでございますけれども、今年6月に5年間で官民合わせて約600億ドルの支援を行うことを表明しております。5年で600億ドルですので、単純に割ると年間120億ということになって12%ぐらいを占めていて、実は主要国の中で一番大きな金額でございました。ただ、全体を合わせて2019年の時点で800億ドルしかいっていないということで、やはり各国とも積み増しがさらに必要であるという状況の中、日本においてもCOP26において岸田総理のほうから最大100億ドルの追加支援を行う用意があることを表明いたしました。日本以外にも幾つかの国が追加の支援について表明をしているところでございます。

2点目、世銀等ということでございますが、COP26に向けまして、世界銀行において例えば気候変動アクションプランが策定され、アジア開発銀行においてエネルギーポリシーの見直しが行われるなど様々な動きがございましたが、こうした動きについて日本からも、後で詳しく御説明させていただきますが、新規の石炭火力支援を停止するという方針を支持するとともに、天然ガス支援を含む温室効果ガスの排出削減のための現実的な支援を行う必要性を強調する提案を発表させていただいております。

3点目でございますけれども、気候変動対策には膨大な資金が必要となってまいりまして、それは当然、民間の資金を動員していかなくてはいけない。また、民間の側から見ても、気候変動に伴うリスクにきちんと対応していかなくてはいけないということで、気候変動が企業財務にもたらす影響の開示を強化するということで、日本も上場企業に対して国際的枠組みに基づく開示を求めるとともに、この議論全体の中で高排出産業の脱炭素化への着実な移行へのファイナンスというものの重要性をこの議論の中で主張してきたところでございます。

4点目、カーボンプライスでございますけれども、これは様々なやり方が考えられるわけでございますが、排出される二酸化炭素に価格付けをして排出削減を促す政策でございまして、これについては今後国際的な議論が本格化してくる見込みでございます。

最後、その下に参考としてG20首脳宣言のポイントをつけさせていただきましたけれども、サステーナブル・ファイナンス・ロードマップにつきましては先ほど国際機構課長から説明がありましたが、その下にもう1つ、比較的重要な話として、新しい排出削減対策が講じられていない石炭火力発電に対する国際的な公的資金の提供を2021年度末で終了するということがG20の首脳宣言に盛り込まれておりまして、これまで石炭火力に対する主要な支援国でありました中国、日本、韓国、全てを含む合意が得られたところは重要なことかと思います。

次の18ページに行っていただきまして、先ほど少し紹介いたしましたが、国際開発金融機関を通じた途上国の気候変動対応への支援でございます。先ほど少しお話しいたしましたが、IMF・世銀総会期間中の開発委員会で10月15日におきまして、私どものほうからMDBsのエネルギー支援に係る日本の提案を公表させていただきました。この内容でございますけれども、1つ目の丸でございますが、国際社会全体で1.5℃という目標を達成するためには、途上国において、特に途上国にもたくさん排出している国がたくさんございますので、そうしたところにおいて温室効果ガスを最大限削減していくことが重要になってまいります。この観点から、世銀などの国際開発金融機関に対して2点要請をしております。1点目は、各途上国においてパリ協定に沿ったエネルギー計画などを策定するように支援していく。その際、所得水準が高い、例えば中国のような国についてはより高い目標の設定を求めるとともに、MDBsが支援する事業だけではなくて、それ以外の事業も含めてこのエネルギー計画と整合的でない事業の実施を抑制するようにこのMDBsから各国に求めていくことを要請している。これが1点目でございます。

2点目でございますが、個別のプロジェクトについては、それぞれの国の実情を踏まえて温室効果ガスの排出抑制に最も寄与する方策で、先ほど申し上げましたエネルギー計画等と整合的なものを支援することを要請しております。これは、最も寄与する方策はその国、その地域の状況に応じて、例えばそれが再生可能エネルギーであれば再生可能エネルギーを支援していくことでございまして、例えばそれが天然ガスである場合には、それを支援しないと逆に温室効果ガスの排出を増やしてしまいますので、天然ガスを支援していくことを要請しているものでございます。一方で、石炭火力については最も温室効果ガスの排出が多い種類の発電になりますので、これについては支援をしないというMDBsの方針と判断を支持していることを表明したものでございます。

下でございますけれども、さらに、COP26の際に幾つかの新しい枠組みが発表されておりまして、これに対して日本も支援を表明しているところでございます。1点目は、世界銀行のクリーン・テクノロジー・ファンドでございますが、これは2008年に設立されて、これまで途上国の気候変動対策を融資などを通じて支援してきたものでございますが、融資で支援していきますとお金が返ってくるというフェーズになってまいります。その返ってきたお金を再利用して、途上国における石炭からの移行を支援するという新たな枠組みを日米英が中心となって立ち上げをいたしました。この立ち上げの際にイエレン財務長官、スナク財務大臣などとともに歓迎のコメントを発出しているところでございます。

2点目、アジア開発銀行のエネルギー・トランジション・メカニズムでございますけれども、これも途上国の石炭火力から再生可能エネルギーへの移行を支援するものでございまして、これもCOP26の場でアジア開発銀行が立ち上げを表明しております。これは、ドナー国と民間セクターから集めた資金を利用して石炭火力発電所の稼働を早期停止、例えば20年やる予定だったものを12年で閉じるなどといった形で前倒しをするとともに、再生可能エネルギーへの投資を推進して移行を支援するものでございまして、最初の対象国としてインドネシア、フィリピンが想定されております。日本はこの立ち上げの際に、最初のドナー国として2,500万ドルの拠出を表明しているところでございます。

以上でございます。

○清水分科会長 ありがとうございました。

それでは、意見交換に移りたいと思います。委員の皆様におかれましては、御発言の際は、まず御臨席の委員の方は従前どおり名札を立てていただき、オンラインで御参加の委員の方は、事前に事務局より御案内しましたとおり、御発言の意思をシステム上の挙手にて事務局までお知らせいただければと思います。いかがでしょうか。

○雨宮委員 御説明、どうもありがとうございます。

冒頭に世界経済の関連でインフレの御説明がありましたので、G20等で世界の物価上昇やインフレ動向についてどんな議論が起きているかということを若干御参考までに御紹介したいというふうに思います。

御案内のとおり、FEDやECB等の主要中央銀行の見解は、先ほども御紹介がありましたとおり、現在の物価上昇はコロナ禍からの回復過程における一時的な需給ミスマッチが主因で、いずれ解消するものであるというのが基本的な見方であります。ただ、一時的なものとはいっても、当初、世界の主要中央銀行が見込んでいたよりもインフレ率の幅が高くかつ長くなっていることは事実であります。この一時的という表現で、英語の表現は、一頃はtemporaryと言っていたのが最近は明らかにtransitoryというふうに表現が変わっています。これ、微妙にどう違うか、未来永劫でなければtransitoryのようであります。さらに直近のFOMCではexpected to be transitoryということで、過渡的と思われるというところまで慎重になってきている感じはあります。

論点としては、基本的には今のこの供給制約がどこまで続くかということと、先ほども御紹介がありましたけれども、企業や家計のインフレ期待がどうなるかという2つがポイントであります。供給制約については、今起きていることは、基本的には、例えば戦争とか自然災害でインフラがなくなってしまったということではありませんので、時間をかければ戻ってくるというのがtransitoryの基本的な考え方なわけであります。しかし、どうも経験を重ねるにつれて、一旦労働市場から退出した労働力が戻るには相当時間がかかりそうである。むしろ戻す誘因として賃金を上げなければならない、これがまたインフレにつながっていると。その労働力を戻すのに時間がかかるかもしれないという短期的な議論。さらに、このコロナ禍の下で社会のIT化が進展する中で、半導体等IT関連財の需要が構造的に増加した可能性があるとなると、これにマッチするためには相当の設備投資が要るということで、時間がかかるかもしれないという議論もあります。さらに、最近では環境対応が物価を押し上げるのではないかというような議論も起き出していて、これはいずれ炭素税だとコストアップになるとか、こういうのを称してグリーンとインフレーションの造語で最近グリーンフレーションという言葉も使われ始めているわけであります。個人的には今の物価上昇をこれと結びつけるのはちょっと早計かなと思います。けれども、これまでですとこれだけ原油価格が上がると早急にリグの建設が追いついてくるのですけども、今回はリグの増設が非常にゆっくりである。というのは、やはり化石燃料産業の将来に対する懸念があって、設備投資がやや控え目であるといったことが影響しているのかもしれません。

それから、もう1つはインフレ予想、インフレ期待がどうなるかということです。一時的あるいは過渡的であるにせよ、ある程度高い物価上昇率が続くと、せっかく欧米先進国では2%にアンカーできた企業、家計の物価上昇期待、インフレ期待がデアンカーされるリスクがあるということです。先ほどの幾つかのケースでは利上げということが議論になっているわけでありますけれども、これも別に中央銀行は金融政策でIT産業の部品供給を増やそうとしているわけではないわけです。あくまでインフレ期待がデアンカーされるリスクに対応するというセカンドラウンド・エフェクトに対する対応としてイギリス等で議論され始めているという状況であります。

いずれにせよ、今言った供給制約がどうなるかというのは、短期、中期、長期の課題、それからインフレ期待の問題等で、インフレ及びそれに対する対応は、ある種の不確実性を伴う要因ですので、世界の国際金融市場はしばらく神経質な状況が続くかなというふうに見ているということであります。御参考までに。

○清水分科会長 ありがとうございました。

それでは、幾つか御質問を頂いておりますので、まとめてお受けしたいと思います。

○高山委員 ありがとうございます。7ページのデジタル化に伴う課税のところで、もしよろしければ教えてほしいことがあるんです。第1の柱の売上の10%を超える利益の25%を売上等に応じて市場国に配分ということですけれども、この配分の具体的なフォームといいますか、基準というか、考え方。その手前に「売上等」とありますので、この「等」に何らかのインプライがあるのかどうかちょっと気になってしまっているんですけれども、これが1つ。

それから、第2の柱の最低税率のところですけれども、これは15%ですが、これは精いっぱいやっても15%、これ以上いかないということなのか。まだまだ状況によっては深掘りをしようという議論が起こっているのか、起こり得るのか。

この2点について教えていただければと思います。よろしくお願いします。

○片山委員 連合の片山と申します。本日から初めて参加させていただきますので、よろしくお願いします。

私のほうからは2点、ちょっと意見ということで言わせていただければと思います。世界経済がきちんと元に戻るにはやはりワクチンの接種率が大事だと思いますので、2022年中頃までに世界のワクチン接種率ということでよろしいのでしょうか。そこを70%達成するということで財務大臣と保健大臣が連携してやっていくということですので、ぜひとも途上国中心にこういったところが達成できるようにお願いしたいと思います。

あと、気候変動に関しまして、17ページにありますように、高排出産業の脱炭素化への着実な移行ですとか、あと18ページにありますように、世界銀行のクリーン・テクノロジー・ファンドで途上国における石炭からの移行を支援する。こういった産業ですとか脱炭素化への着実な移行は大変大事なことだと思いますが、雇用面への影響もあると思います。そこをきちんとこういったファイナンスの中で手当てしていただけるような仕組みも考慮していただければと思いますので、よろしくお願いします。

○清水分科会長 ありがとうございます。

それでは、今お三方、雨宮委員から大変貴重なインフレに関する御意見、それから高山委員より2つ御質問、片山委員よりはワクチン、気候変動に関する御意見を頂きましたので、まず事務局でこれらに対して対応をお願いいたします。

○飯塚国際機構課長 国際租税に関する質問でございますけれども、「売上等」の「等」に何が含まれるかというところですが、まだ詳細については具体的な検討がなされていると承知しておりまして、そこについては確認させていただきまして後ほど個別に回答させていただければと思います。

15%について余地があるのかということでありますけれども、7月の段階では15%以上ということで決まっていたのですが、10月まで議論しまして15%に落ち着いたということでありますので、15%は当面の最終合意数字ということでございます。

○田部開発機関課長 片山先生、御意見ありがとうございます。おっしゃるとおり、脱炭素化を進めていく中で、その産業が移行していく中で雇用の問題というのは非常に重要な問題でございまして、まさにこういった枠組みの中でも、ジャスト・トランジションという概念の中では、まさに移行における雇用の影響というのもきちんと対応していくことが重要だということで議論されて、我々としてもそれをしっかりと見ていきたいと思っております。

○三村国際局長 改めまして、国際局長、三村でございます。まず、本日最初の発言でございますので、7月に局長に就任をいたしまして、本日は今事務年度初めての外為審分科会でございまして、清水分科会長をはじめとしまして物理的にお越しいただいた委員の先生方あるいはオンラインで御参加を頂きました先生方、誠にありがとうございます。

今、最初の議題ということで、足元の国際金融情勢の課題を御説明させていただきまして、私ども日々国際金融の関係の会議をやっておりまして、我々が日々抱えている問題意識は、ちょっと変かもしれませんが、色で申し上げますと多分、緑色と赤色だろうというふうに私は思っております。

緑色は、申し上げるまでもなく、最後に御説明申し上げました、今、片山委員からも少し御質問いただきましたけれども、やっぱり気候変動の話でございます。先ほど御紹介もいたしましたけれども、特に今年に入りましてアメリカがバイデン政権に代わりました。率直に申し上げて、昨年まではトランプ政権でしたので、ヨーロッパの人たちも、何を言おうと、パリ協定すら脱退してしまったアメリカの政権を前に何かやろうとしてもマルチの場でおよそ成果は出ないよねというのが重々分かっていたような状況だったものが、バイデン政権になりました。また、今年はG20の議長国がイタリアで、G7の議長国がイギリスで、COP26はイギリスをイタリアが共同議長のような形で支えるという惑星直列のような構図もございましたものですから、今年に入りましてから我々ファイナンス・トラックの世界でも気候変動の関連のいろいろなテーマにかける各国の時間と情熱たるや大変なものがあります。その中で我々日本としてもしっかりと当然このグローバルな課題に貢献するべきは貢献する。一方で、日本として、特にアジア太平洋地域の新興国、途上国の実情にもある程度通じている我が国として、どういう点で、また欧米とは少し違う観点で議論に貢献していくのかというようなことをずっと考えてきたところがございます。

それから、もう1つの赤というのは端的に言いますと中国でございまして、先ほどの債務問題のところでははっきりと中国ということで申し上げましたけれども、実は本日、先ほど各課長から御紹介申し上げたこともほとんどの案件は中国が事実上後景に見えている、背景にちらついている状況でございまして、気候変動のところでは、高排出国はしっかりと1.5℃目標に向けて取り組んでもらう必要があると申し上げましたけれども、まさに中国はいまだに2060年のカーボンニュートラルと言っている中で、3割近い排出量を持つ中国が2060年ということで本当に1.5℃目標が達成できるのか、我々はどうそこを中国により野心的な取組をしてもらうのか。また一方で、我々も石炭火力等々、徐々に当然シフトしていかなければいけないわけですけれども、我々ですとかMDBsが手を引いた後に、単にそこを後釜で中国がファイナンスで全部埋めてしまうということでは意味がないわけでございます。あるいは、かえってマイナスかもしれませんので、そういったことを防がなければいけない。こういった議論で、気候変動の中でもやはり中国とどう協力し、逆にどう牽制するのかというところは大変に大きなテーマでございました。

それから、国際保健なども、これは財務・保健の連携でどういうふうにやっていくかというところです。G7、G20、特にG20の中の細かい議論をあまり申し上げてもいけないんですけれども、少し申し上げますと、こういう財務・保健の連携、特にWHOだけではなくて、世銀をはじめとしたファイナンスの世界からもこの問題に取り組んでいこうということにつきましては、実はかなり中国は慎重でございます。これだけ慎重になられるところを見ると、やっぱり相当中国は今のWHOについてはそれなりに自分の意見が通るというふうに思っているのかもしれないなと私は個人的に感じるのですが、そういう中で、しかし、別に中国憎しということではもちろんないのですけれども、いかに日本として従来から言ってきた財務・保健の連携を新しいコロナを踏まえた状況の中でどう実現していくのかという話でございます。

それから、一見、一番関係なく見えるようなSDRも、先ほど少しSDRの使途の透明性について日本が主張しましたということを申し上げました。これも債務の問題につながりますけれども、せっかく途上国に配られたSDRがその存在すら明らかにされていない中国の隠れた債務の返済に単純に回されたのでは何のためのSDR配分か分からないことにもなってしまいますので、やはりそこはしっかりと、配るからには、何に使ったのか、ちゃんと役に立つことに使われているのかについて使途の透明性を確保するべきではないのかというのを日本が実際G7、G20の場あるいはIMFの場でも主張しまして、それがそれなりに反映されたというようなことでございます。事程左様に中国の問題をいろいろなところで認識しながら、この気候変動、あるいは気候変動と並んで、先ほど国際課税の御質問もございましたけれども、デジタルという、当然どこの世界もそうでありますように、ポスト・コロナでのグリーンとデジタルというのを中国との立ち位置も見ながらどう対応していくかということでずっとやっていると、こんなところかなというふうに思っております。

そういった中で日本としてどういうふうな貢献をしていくかというところでございますけれども、先ほど先生方の御質問にもありましたが、恐らく日本は、欧米と、それから新興国の間を、どううまく両者の間をつないでいくかというところに最も立ち位置があるだろうと思っております。気候変動のところも、さっき申し上げましたように1.5℃目標は目標としつつも、当然、現実的に全ての国が一足飛びに100%再生エネルギーに行けるものではありませんから、そこはエネルギーという意味でも、石炭はもう確かにあれかもしれないけれども、天然ガスについては現実的にサポートしていくところはしていこうよと。それから、そういう意味でのトランジションと同時に、まさに片山委員の御質問にありましたように、社会的なインパクトへの対応という意味でのトランジションも重要でございます。これは足元、エネルギー価格、電力価格が上がっている問題をどうするのだという意味も含めまして、経済的、社会的なトランジションをどうするんだというところも当然ございますので、こういった両面での、つまり、経済的、社会的インパクトへの対応という意味でも、エネルギー源の現実的な確保という意味でも、我々としてトランジションの観点をどう支えていくかということでいろいろな仕組み、あるいはCOP26でも先ほど御紹介したような世銀ですとかアジ銀とも組みながらやっておると、こんな状況でございます。

ワクチンについても同様でございまして、単にワクチンの開発だけではありませんで、やっぱり現実に現場まで行き渡らないと意味がありません。これは外務省などとも連携をしながら、実際にワクチンをまさに現場に配って、ちゃんと現場で打てるようにということで、コールドチェーンの整備ですとか、あるいはそれぞれの国におけるワクチンの生産能力の支援というところも含めて、我々、できるだけワクチンの上流、すなわち開発から実際の製造を経て配布まで、それから実際のセッションへ、上流から下流までをできるだけカバーできるようにというところを一生懸命主張しておると、こんなところでございます。

また、引き続きこういう状況で、COPも終わりましたけれども、これから年明けに向けて、ドイツも新しい政権では緑の党も入ってくると思いますから、グリーンという問題が一層出てまいります。それから、赤いほうの問題も当然引き続きあるところではございますけれども、引き続き委員の皆様方にもいろいろな問題意識あるいは御意見を頂戴しながら、我々としてもなかなか難しい状況、時代ではございますが、しっかり取り組んでいきたいと思っているところでございます。

○清水分科会長 三村局長、今までの取組の中で日本がどのように主張してきているのか、そういった詳しい御説明をありがとうございました。

時間もございますので、今頂いております質問全てまとめてお受けしたいと思います。

○小枝委員 早稲田大学の小枝です。私からは短いコメントを1つ申し上げたいと思います。先ほど8ページでIMFのチャネリングの話があって、今、局長から、どう配分されるべきなのか、日本の役割はという御議論があったと思います。皆様も御承知のとおり、IMFはもともと危機対応の機関で、援助は世銀が行うというのがもともとだったと思うのですが、今回、低所得国にチャネリングという議論までいったのは、やはり低所得国に低利子借款をしたり、デットリリーフをしたり、そういった経緯がずっとあったからで、そこで日本の役割はすごく大きかったのではないかと私は理解しています。低所得国への無利子や低利子の利ざやというのは日本がかなり拠出してきたという理解ですので、今までIMFが低所得国を支援する上でcumulativeに、累積的にどの国がどれだけ支援してきたのかというのを明確にして、ぜひ今後のチャネリングというのを議論していただきたいと思いました。

○坂元委員 関経連のほうから参加させていただいております坂元でございます。気候変動問題について少し私ども企業社会が認識していることをお話ししたいと思います。企業社会にとって気候変動問題というのは最重要課題の一つであるというふうに考えていまして、財務価値と非財務価値の統合的なマネジメントをどうしていくのかというところが、今、企業社会がいろいろと研究する、また重点的に取り組もうとしていることの一つだというふうに思います。今日の説明の中で民間資金導入というところで、気候変動が企業財務にもたらす影響の開示ということが触れられております。この開示のことなんですけれども、TCFDが求めているように、リスクと事業機会、両面でどうかということをいろいろ検討しているわけです。この開示の在り方といいますか、どういう形で具体的に企業に対する要請が出てくるのか、そのあたりに注目して関心を持って見ているところです。この辺、何かまた御助言がございましたら教えていただきたいと思います。

一方、カーボンプライシングについては、CO2に価格付けをするということで、インターナル・カーボンプライシングとしてどのように整備していくか。あるいは、一つのマネジメントシステム構築の段階で非常に重要な要素です。カーボンプライシングの仕組みを各企業ごとにつくっていくために恐らくガイドラインみたいなものがまた示されるのではないかと思いますけれども、その辺のことについてももし分かりましたら教えていただきたいと思います。

○伊藤(亜)委員 ありがとうございます。伊藤亜聖と申します。2点ほどお伺いいたします。

1点目はグローバル課税の点です。直感的には人口大国において新たな課税基盤を提供するのではないかと考えられます。IMFのスタッフが書いているレポートによると、しかしながら、対GDPにおいては税収の増減の効果というのは非常に小さくて、せいぜい対GDP0.1%あるいは0.2%ぐらいではないかという推計があります。この新たなルールがとりわけ途上国、新興国、そして日本にどのような影響があり得るのかという点について、今回でなくても、適宜で構わないのですけども、御見解あるいは議論の機会を頂ければと思います。

2点目は、スライドで言うと14から16枚目の中国の債務の話です。共通枠組ができる一方で、ノン・パリ条項というのが個別の契約の中にあるわけです。2015年以降の協定、中国が結んでいる借款の契約にこうした条項が入っているときに、共通枠組においては他の借款に先んじて借金を取り立てないというような了解があるので、実質的に、共通枠組が維持される限りにおいてノン・パリ条項というのは機能しないというふうな議論はあり得ると思うんですね。それほど単純ではないかもしれないが、共通枠組と個別の契約条項との関係をどういうふうに理解すればいいんだろうかということであります。

○斎藤委員 ありがとうございます。経団連の斎藤でございます。今、最後にお話しになった内容と若干かぶるかもしれませんが、低所得国の債務問題についてお聞きしたいと思います。我々産業界は、インフラ輸出をやるときに中国といわゆる競合になるケースが非常に多いといった中で、今話が出た共通枠組の承認を昨年得たとなっておりますけども、一方、今日説明がありました中国の実際の融資契約の実態が、今このレポートによるとかなり、まさに債務の罠の状態になっているということを考えたときに、その共通枠組とこの契約の絡みというのは今後どうなっていくのかということについてお聞かせ願えればと思います。

○清水分科会長 ありがとうございました。大変貴重な御意見、御質問を頂きましたが、御対応をよろしくお願いいたします。

○飯塚国際機構課長 まず小枝委員の質問で、低所得国向けの日本の貢献というところでありますけれども、IMFが国際経済に果たす役割に鑑みて低所得国に対する譲許的融資が必要だという観点で、日本はこれまでもPRGTに対して相当の貢献をやっておりまして、トップドナーとして貢献してきております。今回のSDRチャネリングの文脈でも幾つか選択肢はございまして、1つはPRGTを活用するということと、2つ目は、先ほど議論がありましたRSTを新しく設けるということでありました。日本としましては、RSTの議論に積極的に参加していくのですけれども、まずはPRGTを活用するのが重要だろうということで、そこを主にサポートしていますし、今回の秋の総会でも新しくプレッジをさせていただきまして、これまでの総額についてはしっかりと認識してもらっておりますけれども、引き続き日本の貢献というのを主張していきたいと考えております。

それと、IMFと世銀とのデマケといいますか、SDRが配られたことにより、RSTがただ金を配るんじゃないかというような印象がありまして、それについては、日本は、違いますよねと考えております。IMFと世銀というのはデマケがありますし、IMFについてはあくまでもBOPファイナンスでありまして、プロジェクト・ファイナンスとかいったものをするのではないということで、RSTの文脈においても世銀とかMDBsにある知見は活用しつつ、IMFはIMFのマンデートの中でしっかりと貢献すべきだと。SDRについては外貨準備という性質に伴う制約があるものですから、外貨準備という制約の中でお金をどう回すのかというようなことを言っております。

2点目は、すみません、国際課税についての御質問でありますけれども、現時点でどの国にどれだけお金が行くかというのはちょっと議論はまだできないんです。というのは、いろいろな経過措置がありまして、途上国に対して目配りしなければいけないところもありますし、片やネット企業を持っているようなアメリカとかイギリスなどに対しての目配りもありますので、そういった議論が進んでいく中でどの国がどれだけお金が、課税ベースが移るのかというようなものは明らかになってくると思いますので、また引き続き議論はさせていただきたいと思いますけれども、今の段階でIMFのレポートにコメントだとか、日本がどれだけお金が得られそうだとかいうことを申し上げられる立場にはございません。

○藤井開発政策課長 伊藤(亜)委員、それから斎藤委員から債務問題についての御質問を頂戴いたしました。御指摘いただいたコモンフレームワークと中国の様々な条件をどう考えるかというのはまさに非常に重要な問題だと思っておりまして、これについては、コモンフレームワークをどう実施していくのか、現在の段階で言いますと、個別の国ごとにどう合意をつくっていくのかということをやろうとしていて、なかなかそれも今時間がかかっているところであるのですけれども、そこの中でどのような解決を図っていけるのかという積み重ね、そこがまず試金石になるのだろうと思います。その中で、研究機関のレポートが指摘しております秘密保持条項ですとか、あるいは隠れた債務といったようなものはまさに債務のトランスペアレンシーに関わるものですから、債務救済措置の対象になるものが一体何かというところをどう確定させるか。これは、基本的にパリクラブでもやっているのは、IMF、それから世銀の下でのDSAという分析において対象になる債務というのを確定し、そこの中で途上国の債務がサステーナブルになるような分析をしていくわけですが、そこの対象となる債務をどう確定していくのか。そこに直接関わるところだと思いますので、そこの中でいろいろ中国などとの間でやり取りをしながら、百点満点になるかどうか分からないのですが、やっていくということだと思います。

また、No Paris Club条項というすごく刺激的な名前でございますけれども、コモンフレームワーク自体がパリクラブの国とノン・パリクラブの国が合同で一緒にやっていくということでございますので、まさにこの枠組みを実際に成功させていく中でこういった条項の意味をどう解決していくのかということではないかと思っておりまして、単純にすぐにコモンフレームワークなら解決できるというような話ではないと思いますが、一つ一つの事例を積み重ねていく中で道を見つけていくことだというふうに認識しております。ありがとうございます。

○田部開発機関課長 坂元委員から気候変動に関する御質問を頂きました。

カーボンプライシングにつきましては、どういったものを含めるのか、どういうふうに見るのかということも含めて、まさに今後国際的な議論が本格化してくるということでございますので、今後、経産省、環境省も含めていろいろと経済界とも御相談をさせていただきながら、日本としてその議論に参画をしていくことになってくると思います。

○清水分科会長 ありがとうございました。

最後に植田委員から御質問を頂いております。

○植田委員 手短に一言だけ。CBDCについて今G7で宣言が出されていますということをお伺いいたしましたが、中国などを含めてもうちょっと広い枠組みに持っていくというような状況でしょうか。それだけ確認させてください。よろしくお願いします。

○飯塚国際機構課長 CBDCの原則ですけれども、ここに書いてありますように、G7内外での検討の指針ということで、まずG7でCBDCを導入するとすればこういった見方が必要だよねということでG7の中では議論しておりまして、ほかの地域で導入するにしても、これはレリバントだろうというふうに考えてはいるのですけれども、例えばデータプライバシーだとかガバナンスとかいったものは一朝一夕に中国で導入されるかというと、そこについてはいろいろな見方はあるのではないかと。ただ、こういった原則をせっかく作ったものですから、各国だとか、例えば国際機関などを通じてできるだけ咀嚼してもらって、こういったものに基づいて、いいCBDCを波及させていただきたいなという考えは持っております。

○清水分科会長 ありがとうございました。

それでは、時間も押しておりますので、次に、FATFの第4次対日審査結果と外為法における対応について、事務局より御説明の後、意見交換の時間をお取りしたいと思います。陣田調査課長、よろしくお願いいたします。

○陣田調査課長 資料3を御覧ください。FATF第4次対日審査結果と外為法における対応について御説明いたします。

まず、2ページを御覧ください。FATFについてです。FATF、Financial Action Task Forceは、マネロン、テロ資金供与、それから拡散金融と言われます大量破壊兵器の拡散に寄与する資金の供与への対策について国際基準の策定・履行を担う多国間の枠組みです。加盟国の間で厳しく相互審査を実施しまして国際基準の履行を強力に担保するという枠組みです。このFATFには37か国・2地域機関が加盟しておりますけれども、リージョンごとにありますFATF型地域体(FSRB)を加えますと世界で200以上の国・地域にFATFの勧告が適用されており、非常に影響力の大きいものとなっております。

続いて、3ページを御覧ください。このFATFの相互審査では、法令等の整備状況と法制度の有効性の両面からFATF基準に沿っているかということの審査が行われます。それぞれの項目ごとに4段階の評価がなされております。相互審査の結果に応じまして、上から通常フォローアップ国、重点フォローアップ国、観察対象国に分類されます。この重点フォローアップ国につきましては、例えば毎年法令等の整備状況について改善状況を報告する。一番下の観察対象国に分類されますと、1年の観察期間中に顕著な進捗を報告できないといわゆる「グレーリスト」に入る、というふうになっております。日本に対する相互審査は、今回で4回目です。

次の4ページにありますとおり、日本の評価につきましては重点フォローアップ国という結論になっております。各個別の評価につきましては、参考資料の12ページ、13ページのほうにまとめておりますので御覧ください。

次に、5ページを御覧ください。FATF加盟国の審査結果をまとめております。真ん中の日本と同じ重点フォローアップ国の中にはカナダ、アメリカといった先進国、あるいは中国、韓国といったアジアの国が多く含まれておりますけれども、こうした国々は審査後、改善に向けた取組を進めておりまして、それぞれマネロン・テロ資金供与対策のレベルを上げているところでございます。

続きまして、6ページを御覧ください。8月30日に公表されました財務大臣談話です。日本の対策も国内外の動向を踏まえながら不断の見直しを行っていくことが必要である、それがひいては成長戦略で掲げます世界に開かれた国際金融センターを実現していく上でも不可欠であるということで、FATFの審査報告書の公表を契機としまして政府一体となって強力に対策を進めるため、警察庁、財務省を共同議長としますマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議を設置しています。そのほか3年間の行動計画を策定したところでございます。また、資料にはございませんけれども、内閣官房にFATF勧告関係法整備検討室を設置しまして、FATFの勧告を踏まえました法整備の検討が進められているところです。こうした中、外為法についても必要な見直しを行うことを検討しているところです。

それでは、具体的に外為法の見直しの検討内容について、8ページを御覧ください。足元、北朝鮮の核・ミサイル開発の進展やタリバンの政権掌握などアフガン情勢の悪化が見られる中、テロや大量破壊兵器の拡散を防止することが、日本はもちろん、国際社会で喫緊の課題となっております。また、参考資料につけておりますけれども、暗号資産が、例えばランサムウェアの身代金の支払いに使われたり、北朝鮮が暗号資産を窃取して資金源にしたり、暗号資産を悪用した不正な資金調達のリスクが高まっているところです。こうした脅威やリスクが高まる中で、FATFは国連安保理決議に基づいた資産凍結措置の適切な履行の確保を各国に勧告しています。また、今般の第4次対日審査でも銀行等や暗号資産交換業者がFATFの基準に従って資産凍結措置に係る義務を果たせるように、制裁枠組みの義務を明確化すべきとの指摘を受けているところです。これらを踏まえ、外為法の見直しを検討するものでございます。

具体的な見直しの方向性について、9ページを御覧ください。まず1つ目ですけれども、国連安保理決議は、暗号資産を含む制裁対象者のあらゆる資産の凍結を求めています。この暗号資産取引を外為法上の資本取引の対象とみなして、銀行の預金取引と同様に資産凍結措置を可能とすることを検討しているところです。

それから、2つ目ですが、2019年6月に改訂されましたFATFの勧告では、銀行等に加えまして暗号資産交換業者に対しても、制裁対象者への資金、資産の流れを止めることを求めています。現行の外為法では、銀行等に対し、顧客の送金が制裁対象者に対する送金に該当しないことを確認する義務が課されているわけですけれども、これと同様に、暗号資産交換業者に対しても顧客の暗号資産の移転が制裁対象者に対する移転に該当しないことを確認する義務を課すことを検討するものです。

10ページを御覧ください。3つ目ですが、2020年10月に改訂されましたFATFの勧告では、大量破壊兵器の拡散に関与する者に対する資産凍結措置を事業者が適切に履行するための制裁潜脱リスク、制裁を回避するリスクの評価や、当該リスクに応じた低減措置を行うことを求めております。また、第4次対日審査の中では、銀行等あるいは暗号資産交換業者がFATF基準に従って資産凍結措置に係る義務を果たせるよう、制裁枠組みを明確化すべきと指摘しております。そこで、FATF基準に従った銀行等の義務を明確化するために、制裁潜脱リスクの評価を行うことや、そのリスクの低減措置を講じることなどを含む遵守基準を定めること、及び当局がその遵守状況についてモニタリングを行い、必要に応じて指導・助言・勧告・命令を行えるようにすることを検討しているものです。

11ページ以降は参考資料になります。

私からは以上でございます。

○清水分科会長 ありがとうございました。

それでは、意見交換に移りたいと思います。御意見、御質問などがございましたら、先ほどと同じ要領で御発言の意思をお知らせいただければと思います。

○神保委員 神保でございます。御説明、ありがとうございました。

こちらのマネロン等についてなんですが、現行の外為法上の確認義務は、例えば暗号資産交換業者に対しては確認義務が課されていないというふうに御説明があったんですけれども、マネーロンダリングやテロ資金供与という観点で言うと犯収法の規制もあって、犯収法上は暗号資産交換業者は特定事業者として規制の対象になっているという理解なのですが、かつ、それに従いガイドラインの適用対象にもなっていて、行政の指導の対象ともなっているというのが現状の理解なんです。これが、外為法が変わることによって具体的に何か変わることが想定されているのか。それとも、現状のガイドラインで暗号資産交換業者に対して既に実質的にはレギュレーションが及んでいるからあまり変わらないというふうに捉えてよいのかというあたりをお伺いしたいと思います。例えば、資産凍結の制裁対象者などが変わりましたというときに、できるだけ早くその確認がなされるようにそういった通知というのが銀行等になされていると思うんですけれども、現状も暗号資産交換業者にそういった連絡はなされていて、それは変わらないということになるのかなと予想するのですが、そのような理解でよいのかというところを教えていただきたいと思います。

それと、ランサムウェアのいろいろな脅威があるといったところで、そこと暗号資産交換業者に対する規制であるとか、暗号資産取引を規制対象に追加するところの整合がよく分からなかった。きちんとした業者でない方法による暗号資産を使った取引が対象になるということですか。そこも教えていただきたいと思いました。よろしくお願いいたします。

○原田委員 ありがとうございます。今、神保委員がおっしゃったことに関連するかと思うんですけれども、FATFの要請に基づいて外為法の見直しをするということに関しまして、まず確認としましては、暗号資産取引業者というのはもう既に資金決済法などで規制の対象になっていると。今回新たに規制をかけるのが資産凍結措置のための追加の規制で、これは外為法上で行うということで、9ページのところに書いていただいているように、居住者と非居住者の間での取引について暗号資産交換業者が適法かどうかを確認してもらうということで、それを外為法上で措置するということだと認識をしております。そもそも日本でマネロンに関する罪があまり重くないようなことを聞いておりますので、これは何ら反対するものではなく、できるだけその制裁枠組みを明確にしてより強化していただければと、そういう意見になります。

あと、多分、後で申し上げると時間がなくなるので追加でちょっと事務局に御要望といいますか、今後の審議会の運営について考えていただければと思うことを1つだけ申し上げますと、オンラインと会場が分断されているんですね。私たち、委員の方が発言されるとそこのテレビの画面で大きくアップされて見えるのですけれども、そうでなければ、どなたが参加していらっしゃるかも分からない状況ですし、オンラインの方からすると、私たち、誰がいるのか、座っている方が見えない状況だと思います。この会議室の前後に白い部分がありまして、そこから白いモニターといいますか、スクリーンのようなものが下りてきますので、そこで主催者のパソコンの画面共有をしていただくと、発言している方が自動で前に来ますし、どなたが発言なさっているのか。あと、何ページと言ったときに主催側のパソコンで何ページを出していただけると皆さんのこのパソコン上にそのページが出てくるので、より有効活用できるんじゃないかと。私の目の前にもパソコンがありますけれども、より有効活用するために、主催側のパソコンを共有という形でやっていただけるとありがたいかなと思いました。すみません。以上になります。

○清水分科会長 貴重な御意見、ありがとうございます。

○神作委員 神作でございます。意見を1点と、それから御質問を1つさせていただきたいと思います。

スライドの9ページおよび10ページの見直しの方向性についてでございますけれども、FATFの審査結果と勧告に基づいて、暗号資産取引についても資産凍結措置の対象とするという一連の見直しの方向性に賛成いたします。その理由は、これは性質上、規律が弱いところですとか、規律に穴があるところからまさに水は低きに流れるで、お金が規制の弱いところ、実効性が低いところから流れていくおそれが大きいと思いますので、抜け穴を塞ぐことが極めて重要であると考えられるからです。したがって、スライドの9ページと10ページにあるような見直しの方向性で規制、規律については一律と申しますか、穴がないように法制度を整える努力を続けていただきたいというのが意見でございます。

御質問でございますけれども、先ほども御発言がございましたように、犯罪収益移転防止法に基づく制裁対象者の取引のフィルタリング等につきましては、現在、金融機関の間で制裁対象者に関する情報を共同機関にプール化したり、共同利用したりするための議論、すなわち金融機関のAML/CFT業務の共同化の議論が進んでいると認識しております。犯収法のほうだけではなく、外為法についてもそのような制裁対象者に関する情報管理と利用の共同事業化とか共同機関の設置・利用というような形で実効性をより高めていくような方向で、法制度を整えるだけでなく規制の実効性についても配慮することが重要と思います。そのような観点からの御質問でございますけれども、現在、金融庁のほうで議論が進んでおりますAML/CFT業務の共同化、共同機関設置の動向とこちらの外為法の規制との関係と申しますか、金融庁との間で情報交換などはされているのでしょうか。

以上でございます。どうもありがとうございました。

○清水分科会長 貴重な御質問、ありがとうございました。

それでは、事務局より御回答をよろしくお願いいたします。

○陣田調査課長 まず、神保委員からの御質問で、犯収法の枠組みと金融庁のマネロン・ガイドラインとの関係でございます。現在、暗号資産交換業者につきましては、例えば制裁リストに関しまして、財務省のメールマガジンに登録した業者については我々からも情報提供しておりますけれども、全ての暗号資産交換業者が常に対応しているというふうには聞いておりません。それから、犯収法の措置はマネロン対策でございまして、いわゆる外為法で行っております金融制裁の資産凍結措置については犯収法ではカバーしておりません。したがいまして、今回の外為法において、もちろん、それぞれの暗号資産交換業者の中には自らのレピュテーションリスクを考え対応している業者もあると理解していますけれども、しっかりと明確に法制化、法律上で明確にしまして、この暗号資産交換業者についても漏れなく適切に履行して頂くことを考えているものです。

それから、ランサムウェアでございますけれども、委員おっしゃったとおり、ピア・ツー・ピアと言われる暗号資産交換業者を通さない方法によっても、不正な取引が行われていると認識しております。ただ、実際には、暗号資産交換業者を通す取引がメインでございますので、こういう取引をしっかりと規制の範囲としてカバーをして、限られた捜査当局のリソースをピア・ツー・ピアとかそういうところに注げるように、まずはしっかりメインである暗号資産交換業者を通したものについて対応するのがFATF勧告の考え方です。

続きまして、原田委員の御意見、ありがとうございます。

事務局の運営について、今頂いた御意見も踏まえまして対応を検討します。ありがとうございます。

続きまして、神作委員からの御指摘でございますけれども、金融庁で検討しております共同化システムでございますが、委員御指摘のとおり、金融庁の担当部署と我々のほうで緊密に連携を取っております。なぜかと申しますと、今回金融庁が考えている共同化について、マネロン対策のみならず、金融制裁措置をしっかりと履行することもやはり中小金融機関等の負担を軽減するために一緒にやろうということになっておりますので、まさに金融庁がやっていることは我々にとっても資産凍結措置の適切な履行に資するものと考えておりまして、積極的に今協力して検討を進めているところでございます。引き続き金融庁とはよく情報交換したいと思っております。

○斎藤委員 ありがとうございます。今お話をお聞きして大体理解できたんですけれども、今回のFATFの審査において、顧客管理において、やっぱり大型金融機関と中小では随分差があったと。したがって、共同化のシステムを開発しようとしているというふうに理解しておりますけれども、これはお願いでありますが、ぜひ使いやすく、かつ安価な価格で提供できるように御配慮いただきたいというふうに思います。

○清水分科会長 貴重な御意見、ありがとうございました。

○澤田委員 どうもありがとうございます。大変勉強になる御発表をしていただいて、本当に有益でした。

1つだけちょっとお伺いしたいことがありまして、今回の対日審査はおおむね良好ということだと思うんですが、法令等の整備状況のほうで、ちょっと細かいのですが、NCが1項目あるということで、参考資料を見ますと、これはNPO法人の悪用防止というところがNon-Compliantになっているということです。教えていただける範囲で、どういう点なのかということを御教示いただければ大変助かります。

○陣田調査課長 澤田委員からございましたとおり、「NPOの悪用防止」の内容ですが、NPOに関するリスク評価をちゃんとしなさい、リスク評価をした上で、悪用されないようにちゃんとリスクの低減措置を取るというのがこの項目です。日本におきましては、このNPOのリスク評価は実はあまりできておりません。例えばNPOがアフガニスタンのような紛争地域に行ったときにどういうリスクがあるか、NPOがだまされてテロリストとかに資金を供給しないか。また、NPO自身が隠れみのとして使われることもあると思いますけれども、そういうリスク評価自体が行われていない。リスク評価を行っていなければそもそも対応もできないじゃないかということで、ここはNCになっております。我々としても、審査結果が公表される前から既に準備を始めておりまして、今、内閣府等と議論をして、どう対応するか作業を行っているところでございます。

○清水分科会長 皆様、ありがとうございました。貴重な多数の御意見を頂きましたので、政府におかれましては、これらを踏まえつつ外為法の見直しに取り組んでいただければと存じます。

それでは、最後の議題で、対内直接投資審査制度について、引き続き事務局より説明の後、皆様の意見交換をしたいと思います。陣田課長、よろしくお願いいたします。

○陣田調査課長 それでは、資料4を御覧ください。

まず最初に、事前届出の状況について御説明いたします。

2ページです。事前届出の推移のグラフを見ますと、改正外為法が完全適用されました2020年6月以降新たに導入されましたピンクの部分の行為時事前届出の件数が加わっております。一方で、取得時事前届出の件数につきましては、上場企業の届出の閾値を10%から1%に引き下げると同時に、事前届出免除制度を導入したことで2019年度と比べますと件数は減少している状況でございます。足元の2021年度上半期につきましては、取得時事前届出は703件、その他の事前届出は94件、行為時事前届出は829件となっております。ただし、2020年6月に改正外為法が完全適用されている関係で、4月からのカウントであります2020年度と単純比較できないということについて御留意いただければと思います。

3ページを御覧ください。こちらは業種別の事前届出割合を示したものになります。個別要因もあり変動もございますけれども、情報処理サービス業、それからソフトウエア業といったサイバーセキュリティ関連業種が2019年に指定業種に追加されて以降はこちらの業種が引き続き高い割合となっております。

4ページは、3ページの円グラフをブレイクダウンしたものです。

それでは、5ページを御覧ください。取得時事前届出の件数を取得態様別と目的別に分けたものです。届出件数につきましては、上場会社96件に対しまして1株から届出が必要な非上場会社は607件となっておりまして、非上場会社のほうが多くなっています。取得態様別で見ますと、上場会社は既発行株式の譲受けによる取得が約9割を占めることに対して、非上場会社では増資新株の取得等が最も多くなっております。また、下の目的別の円グラフを見ますと、非上場会社に係る株式取得は上場会社に比べて経営関与のみを目的とする届出の割合が高い状況です。こちらは過去も同様の傾向になっております。

6ページを御覧ください。取得時事前届出の件数を届出者の国籍別に分けたものです。日本を除きますと、上場、非上場ともに英領ケイマンと米国が多くなっています。なお、日本からの届出が多い理由ですが、外為法上、非居住者である個人または外国法人に直接・間接に議決権を50%以上保有されている日本の会社が外国投資家として取り扱われているためです。日本からの届出に分類されるものを見ましても、最終親会社等の国籍はやはり米国や英領ケイマンが多くなっております。

続きまして、対内直接投資審査制度の最近の動向について御説明いたします。

8ページを御覧ください。レアアース等の重要鉱物資源の安定供給を確保し、サプライチェーンの脆弱性を克服することが経済安全保障上重要な課題です。このため、本年10月に重要鉱物資源の安定供給確保のためのコア業種を追加する告示改正を行ったところです。

9ページを御覧ください。9ページが上場企業の銘柄リストになります。外国投資家が対内直接投資等を行うに当たりまして、外為法上の事前届出の要否を判断するための便宜のために財務省が作成しているものです。全上場会社を対象とした照会の結果、それから定款・有価証券報告書に基づきまして、指定業種以外の事業のみを営んでいる会社、指定業種のうちコア業種以外のみを営んでいる会社、いわゆるコア業種に属する事業を営んでいる会社の3つに分類しております。昨年5月に初めて公表した後に、6月、7月、それから本年7月に改訂を行っております。先ほどの告示改正を行ったことや、あるいは企業の照会等を踏まえまして、今月も銘柄リストの改訂を改めて行っているところです。

最後に、10ページを御覧いただければと思います。対内直接投資審査制度に関する財務省における取組についてです。現在、経済安全保障の推進が政府の重要な施策となっております。財務省としましても関係省庁と連携し、政府全体の審査能力の底上げを図っております。また、投資後のモニタリングの実効性も強化しているところであります。それから、昨年10月にアメリカとの間でMOC、Memorandum of Cooperationを締結しまして、情報交換を行う枠組みを構築しており、こうした外国当局との情報交換の連携を進めております。さらに、我が国の場合、地方にも多くの技術力の高い企業がございますので、こうした地方企業への投資動向についてもきちんと目配りできるように、財務局を活用しながら執行体制の強化を図るということで、現在、財務局も含めた定員要求を行っているところです。財務省としてもこのような取組を進めまして経済安全保障の推進に貢献していきたいと考えております。

11ページ目以降は対内直接投資制度の概要などについての参考資料です。

私からは以上でございます。

○清水分科会長 ありがとうございました。

それでは、意見交換に移りたいと思います。御質問、御意見などがございましたら、先ほどと同じ要領で御発言の意思をお知らせいただければと思います。

○神保委員 御説明、ありがとうございました。

私からは質問が1点と、あとは、昨年から改正外為法で、いろいろ投資家さんの代理をして実務を進める中で、我々のほうでちょっと気がついていることといったあたりを少し意見として述べさせていただきたいと思います。

質問1点は、こういった資料で、どのように、どれぐらいの届出が出ているかというあたりを共有いただいて非常に参考になります。さらに参考としたいな、こういった情報が分かるといいなと思っているのは、平均的にどれぐらいの審査期間がかかっているか。平均するとあまり意味はないということになるかもしれないものの、何かそういった数字があると、投資家から見ても海外から見ても、例えば延長されることはあまりないんですよねとか、そういったあたりが見えるとよろしいのではないかと思います。もしそういったところが今日御回答いただけそうであれば教えていただきたいところです。

そのほかで実務の中で気づいている点として申し上げたいところは、まず、指定業種の銘柄リストのところなんですが、これはあくまでも参照にすぎませんということで、投資家が自分で調べなければならないということですが、実務上は、業種が広がったことによって、投資家が調べる負担であるとか、発行会社側もそれに回答する。あまり詳しくないんだけれども、業種について教えて、我々のほうでいろいろこういう内容なんですよと御説明をしながら調査していただくということで、負担が結構あるなという状況ではございます。特に上場会社においては、①といって事後業種だというふうにリストで出ているんだけれども、実際に取得をしてみた後で実は事前業種がありましたということが分かったトラブルなどもありました。参照用とはいいながらも、できるだけ上場会社のほうで真面目にアンケートに答えていただいたりというところが進むといいなと思っています。

プラス、指定業種には今回、例えばレアアースの点と併せて特定離島であるとか国防上の重要な設備の建設業をやっている会社というような形でコア業種が拡大されているんですが、こういったコア業種をやっていますということが明らかになる。それを投資家に説明しなければならないこと自体が発行会社から見ると抵抗があるのではないかと思っております。投資家が提出するときのために、自分が何の事業をやっているということを発行会社がどれぐらい協力しなければならないのか。これは当局にさえ伝わればいいのではないかと思ったりもするので、そういった点については実務の中で柔軟な対応をお願いできればと思っているところです。

あとは、審査の実態なんですけれども、現状、中止であるとか変更の勧告が出たりということはないという理解ですが、昨今のFDIのレギュレーションが非常に強化されているということで、承認されませんでしたという事例が海外では出てきているというふうに認識しています。日本ではまだ出ていないけれども、特に海外の投資家からは、何が日本では大丈夫ではないのかといったところが分かりにくいところがございますので、日本としてはこういう立場なんだという事例が出てきてもよいのではないかと思っております。特に、単に禁止ということが難しいんだと思うのですけれども、条件をつけて承認するといったことが正面からできるような法制にしていくことも今後の課題として検討いただくとよろしいのではないかと思っているということです。

あとは、行為時事前届出については、最初のページでも非常に件数が多いというふうに出ているんですけれども、正直、これもかなり投資家からすると煩雑だなという感想を持っております。しかも恐らく審査する側においても、審査期間はほとんどない状態で、届出書が出てきて、一体どの程度実質的な審査ができているのかと疑問に思っております。もう少しこういった届出が不要だというケースを増やしていく。重要な審査に集中できるようにすることも検討いただければというふうな点でございました。

○清水分科会長 大変貴重な御意見、ありがとうございます。

それでは、まとめて質問を受けてから御回答いただきたいと思います。

○渡井委員 ありがとうございます。慶應義塾の渡井でございます。質問を1つと簡単なコメントを1つ申し上げたいと思います。

事前届出手続のオンライン化、リモート化の導入から1年近くになりますが、この活用の状況についてお教えいただければと思います。

もう1つコメントとしましては、既に委員の先生から御指摘もあったところですけれども、経済安全保障は非常に重要な取組として、進めるべきである一方、やはり定義が必ずしも明確でないところもございますので、対日直接投資の推進や促進とのバランスを取っていくことが重要ではないかと考えた次第でございます。

○伊藤(恵)委員 伊藤です。詳しい説明、ありがとうございました。

先ほど御説明の中にも、事後モニタリングに関して、各省庁と協力して、連携して進めているというお話があったんですけれども、私、以前から事後モニタリングの仕組みをしっかり構築する必要があるとは思っていまして、そのあたりの進捗状況について可能な限り教えていただきたいというのが御質問です。

それと関連してなんですけれども、コア業種が追加される。それ自体は重要な業種で仕方ないとは思いますが、十分にこういった外為審議会の場では特に議論がなく、事後報告的に追加されましたという感じにこれまでなっているように感じています。パブリック・コメント等も取ってはいるみたいですが、ちょっと我々の印象としては、知らないところで追加されていって、後で追加されたというのを聞くような感じを受けています。

また、銘柄リストについても、先ほども少し企業秘密の話だということもあったんですが、やはり企業側からもいろいろ否定的な意見も出ているような印象も持っています。その辺のコア業種を追加していくとか、銘柄リストを公表すること、一定の理解はしているわけなんですけれども、対日直接投資を推進するという方向からいくと、少し対日直接投資促進とは逆方向の効果にもなる。やはり一定の期間後にはしっかりとレビューをしていただいて、コア業種を追加していくというやり方ですとか、銘柄リストの公表というやり方に関して、これの是非というか、ずっとレビューをするということも検討いただきたいと思います。よろしくお願いします。ありがとうございました。

○河野委員 詳しい御説明をありがとうございました。コメント1点と、それから御質問1点です。

コメントは、8ページのレアアース関係の追加についてですけれども、ほかの委員の先生方が既におっしゃった、追加されることが対日投資の促進を害さないようにという御配慮は分かりますけれども、やはりこの分野はこれからますます重要になっていくと思いますので、一定の制限が必要であろうというふうに考えます。特に日本の排他的経済水域における資源開発との関係で、きちんと日本の経済安全保障を守っていくことは大事なのではないかというふうに考えますので、少なくとも私はこの8ページに関しては大事な点になるであろうと考えます。

それから、10ページについての御質問なのですけれども、外為法を改正したときに、やはり外国の機関との連携、それから情報交換に寄与する法であるべきだということで規定が入っているわけで、その後、米国とMOCを結ばれたということですけれども、これはもっと強化していくべきではないかと考えております。例えば、今後、EU加盟国、それからアジア諸国、アフリカ諸国といったような国々とどのような方向性で連携を強めていく御計画なのか。もしできましたら少し教えていただければと思います。ありがとうございました。

○植田委員 よろしくお願いします。非常に丁寧な御説明、ありがとうございました。また、できるだけ短くしようと思います。

まず、皆様方の御指摘のとおり、私もこの問題は難しいと思っていまして、こういう経済安全保障と言われるまでは、日本国内に来るFDIがむしろ少ないということで逆に問題になっていた状況でもあり、また、特に地方などの中小企業、先ほども御説明がありましたけれども、高い技術力を持っているような企業が後継者難とか資金難とかで廃業してしまうようなことが多々ある中で、もしそこに外資系でもいいのでプライベート・エクイティ・ファンドなどが入ってきて、それを資金面で救って、また経営者も探してきてくれるようなことがあるのであれば、それはむしろそういう技術が日本国内で継承されていって、労働者が守られていってというような側面もあります。

これはちょっと問題になってきていますのが、スライド3ページ目ですかね、いろいろな業種が円グラフに書かれておりますが、意識しているところと思います。微妙に業種ごとによって審査の体制なども、既に変えられているかとは思うんですけれども、その辺り考えないといけないのかなと思います。赤字で書かれているような、いわゆる本当に安全に関するところですよね、武器だとか航空機、サイバーセキュリティというのは非常に気をつけてやらないといけない。それに対して、紫関係ですかね、皮革関連だとか農林水産、場合によっては地方の鉄道などは、もし地方でそういう業種が潰れるぐらいであれば、外資を呼び込んで存続してもらったほうが地方の方々の生活のためにもいいわけで、そこのところはやはり微妙に判断を。既にそういう判断でやられているとは思うんですけれども、そのような判断をぜひしっかりとできるような体制というか、そういうことを考えながら今後とも取り組んでいただければと思います。よろしくお願いします。

○清水分科会長 ありがとうございました。

それでは、事務局のほうから回答をお願いいたします。

○陣田調査課長 ありがとうございます。

まず、神保委員から御質問がございました審査期間の平均期間です。おっしゃるとおり、改正外為法におきまして事前届出免除制度を導入しております。実はこの免除制度の対象というのがこれまで短期間で、審査を了していた案件でございまして、これらを含めた平均期間と、これらを除いた平均期間は比較が難しくなっております。我々業務の上では、速やかに審査を行うことが重要ということで、業務の指標としては使っております。

次に上場企業の銘柄リスト、それから事前届出の対象範囲について御意見を頂きました。我々としても検討していきたいと思います。

それから、渡井委員からの質問で事前届出手続のオンライン化でございます。まさにオンラインについて利用を慫慂しようということで我々も説明会等を行っております。法律事務所を通して届け出ることが多いですので、法律事務所などを含めていろいろ説明しております。若干増えておりますけれども、まだ利用は限られておりますので、ここについては引き続き利用を慫慂したいと。もちろん、利用を慫慂するだけでなく、やはり使い勝手もよくしなければいけませんので、その両面で検討を進めていきたいと思います。

それから、伊藤恵子委員から、事後モニタリングについて、事業所管官庁、経産省や総務省等と連携して、事前届出免除制度を使った場合にはその条件に合った投資をしているかどうかをしっかり見てまいります。

伊藤(恵)先生、河野先生から銘柄リストについての御意見がございました。頂いたご意見を踏まえまして我々としても検討していきたいと思います。

それから、河野委員から、まず情報交換について、例えばEUの加盟国とかアジア諸国等とやっていくということでございますけれども、現在、のMOC、情報交換の枠組みをアメリカ以外の国とも結べないか協議しております。それから、例えばG7の間でベストプラクティスについて意見交換を行っております。EU加盟国、それからアジア諸国についても、引き続きこういう国々も含めて、どのような連携のあり方が適切かを検討していきたいと思います。

植田委員から指定業種について、審査において個別の判断をすべきというご指摘がございました。個々の投資の内容に応じまして、どういうリスクがあるかを見て判断しておりますが、引き続き丁寧に審査、判断していきたいと思います。

○清水分科会長 ありがとうございました。

まだ御質問、御意見などもあろうかと思いますが、時間の関係もございますので、これで本日の議事を終了させていただきます。

なお、今回の議事録の作成は私に一任いただければと存じます。その際、発言部分を事前に御覧になりたい委員の方におかれましては、会合終了後にその旨を事務局に御連絡いただくということにいたしまして、御連絡いただきました委員の方には議事録を案の段階で事務局より送付したいと考えております。その後1週間程度の間に御意見がない場合には御了解いただいたものとさせていただきます。

次回の分科会につきましては、事務局と相談の上、御連絡させていただきます。

本日は、長時間にわたりまして御出席を賜り、本当にありがとうございました。

午後4時02分閉会