関税・外国為替等審議会
第48回外国為替等分科会議事録
令和3年4月13日(金)
財務省 国際局
於 財務省第3特別会議室
本庁舎4階
1.開会
2.外国為替等分科会長の選任
3.外国為替等分科会長代理の指名
4.外資特別部会に属すべき委員等の指名及び外資特別部会長の指名
5.最近の国際金融情勢について
6.アジア地域金融協力について
7.閉会
出席者 | |||
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委員 | 伊藤 恵子 | 財務省 | 神田国際局長 |
河野 真理子 | 有泉国際局次長 | ||
神作 裕之 | 三村国際局審議官 | ||
斎藤 保 | 土谷国際局審議官 | ||
坂元 龍三 | 岸副財務官 | ||
清水 順子 | 吉田副財務官 | ||
神保 寛子 | 緒方国際局総務課長 | ||
高山 一郎 | 陣田国際局調査課長 | ||
田村 善之 | 今村国際機構課長 | ||
根本 直子 | 森地域協力課長 | ||
原田 喜美枝 | 野村為替市場課長 | ||
春田 雄一 | 田部開発機関課長 | ||
臨時委員 | 安藤 光代 | 土生外国為替室長 | |
植田 健一 | 桜田調査課企画官 | ||
大野 早苗 | 永田投資企画審査室長 | ||
佐藤 清隆 | 菊地為替実査室長 | ||
澤田 康幸 | 梶山地域協力企画官 | ||
専門委員 | 伊藤 亜聖 | 西村資金管理室長 | |
玉木林太郎 | 棚瀨資金管理専門官 | ||
林 信光 | 近藤開発企画官 | ||
高橋開発企画官 | |||
経済産業省 | 風木貿易管理部長 |
午前10時56分開会
○陣田調査課長 それでは、ただいまより第48回外国為替等分科会を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、御多用中のところ、引き続き御出席いただきまして、ありがとうございます。
分科会長が選任されるまでの間、議事進行を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
初めに、会議室参加とオンライン参加のハイブリッド形式の会議となっております関係での留意点について御説明させていただきます。まず、会議室で御参加の皆様におかれましては、オンラインで御参加の委員の皆様に音声が明瞭に伝わりますよう、できる限りマイクに近づいて御発言いただきますようお願いいたします。また、オンラインで御参加の皆様におかれましては、御発言時以外はミュートにしていただけますようお願いいたします。
外国為替等分科会の委員の名簿につきましては、お手元に資料1を配付しております。御確認いただければと思います。
また、本日の議題は、議事次第のとおりでございます。
それでは、早速でございますが、議事に入らせていただきます。
まず、委員の皆様方に分科会長の選任をお願いいたしたいと存じます。関税・外国為替等審議会令第6条第5項の規定に基づきまして、分科会長の選任につきましては委員の互選によることとされております。どなたか分科会長としてふさわしい方の御推薦をお願いいたします。
神作委員、お願いいたします。
○神作委員 ありがとうございます。神作でございます。
私は、清水順子委員を御推薦申し上げます。清水委員は、国際金融の分野で大変多くの実績を上げてこられていらっしゃいます。また、長年にわたって当分科会の委員を務めておられ、こうした学問的な御知見及び審議会での御経験を踏まえて、分科会長には清水委員がふさわしいと存じます。皆様方の御賛同を頂ければ幸いに存じます。
○陣田調査課長 ただいま神作委員から清水委員を推薦する御提案がございました。皆様いかがでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
○陣田調査課長 皆様方の御賛同がございましたので、清水委員が分科会長に選任されました。
それでは、清水分科会長、恐れ入りますが、分科会長席にお移りいただけますでしょうか。
(清水分科会長着席)
○陣田調査課長 それでは、以後の議事進行につきましては清水分科会長にお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
○清水分科会長 分科会長を仰せつかりました清水でございます。皆様方の協力を得まして本審議会の円滑なる運営に努めていきたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
早速ではございますが、分科会長代理につきまして、関税・外国為替等審議会令第6条第7項において、分科会長が指名することとされております。分科会長代理は神作委員にお願いしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
続けて、外資特別部会に所属すべき委員等の指名及び外資特別部会長の指名を行わせていただきたいと存じます。これも関税・外国為替等審議会令第7条第2項及び第3項によりまして、分科会長が指名するものとさせていただきます。
それでは、事務局から名簿案を配付させていただきます。オンラインで御参加の委員の皆様へは事務局から画面を共有させていただきます。
(名簿案配付)
○清水分科会長 ただいま配付させていただきました名簿案のとおり、外資特別部会に所属すべき委員を指名させていただくとともに、部会長は神作委員にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、次の議題に進ませていただきます。最近の国際金融情勢について、事務方より御報告させていただきます。今村課長、お願いいたします。
○今村国際機構課長 国際局国際機構課長の今村でございます。本日はよろしくお願い申し上げます。
昨年は外為法改正の関係で委員の先生の皆様に大変お世話になりまして、どうもありがとうございました。
今年、今回は国際金融情勢についてということで、私のほうから10分ほど説明させていただきまして、15分ほど質疑応答の時間を取らせていただきたいというふうに思っております。
資料3を御覧いただければと思います。
まず、1ページ目からしばらく、IMFが毎年春と秋に世界経済見通しですとか財政、それから金融の安定につきまして報告書を出しておりますので、こちらを御紹介させていただきたいというふうに思います。
まず、世界経済見通し――これはWEOと申しておりますけれども、世界経済は、各国の異例の政策対応、それからワクチンの普及によるセンチメントの改善を背景に、かなり成長率の上方改定が図られております。2021年は6%、2022年はプラス4.4%となっておりまして、1月にも途中段階のものを出しておりますが、それよりも上方改定ということでございます。次のパラで、日本に関しましても、アメリカと同様ですけれども、今年中に危機前のGDPに到達する見込みである。特に経済対策の効果が評価されているということでございます。他方、ユーロ圏、英国はそれよりもゆっくりしたペースであるということでございます。
他方、そのリスクが非常に大きいということでございまして、一番下のほうですけれども、不確実性が引き続き高い。それから、上方・下方リスク、どちらにもリスクがある。ただ、短期的にはバランスしておりますけれども、やはりワクチンのロールアウト等で上方リスクがやや上回るという見立てをしているということであります。上方リスクといいますか、上方の良いニュースでございますけれども、ワクチンの製造・普及が加速するとか、財政支援効果が上振れする等々でございます。他方、下方リスクとしましては感染症の拡大と。当然のことながら、ミューテーションで新しいウイルスが出てきたり、それから金融環境の悪化。後で出てきますけれども、やはり株価と実体経済の乖離がかなり出ていること。そういうリスクが実現してきた場合には影響がある。それから、コロナによるスカーズ(傷跡)というのが去年来のキーワードになっておりますけれども、そういったものが実体経済に影響を与えることがリスクとして挙げられております。
2ページ目でございます。IMFとしては、政策上の優先事項として、いろいろ危機からのフェーズというものを分けて、下のほうにフェーズ1、2、3とありますけれども、まず危機から脱出すること。その後、経済回復をしっかりしたものとすること。最後に、未来への投資を行っていくこと。こういう形の政策をしっかりやっていくべきだということを提言しております。当然のことながら、一番上にありますように、各国のフェーズには固有の事情に沿った対応が必要であること。それから、信頼に足る中期的な枠組みによってアンカーされる。これは財政も含めてですけれども、どんどんやっていくというフェーズから、しっかり持続可能性を見てやっていくべきだという提言でございます。
フェーズ1のほうですけれども、当然、危機からの脱出ということで、ワクチンなど最優先ですけれども、次のポツにありますように、対象を徐々に絞っていくことも大事だと。
それから、フェーズ2ですけれども、コロナの傷跡の長期化を避ける一方で、やはり経済のトランスフォーメーションに合わせて資本、労働の再配分を促す政策が必要である。次にありますように、ゾンビ企業の発生を抑制すべき。最近zombificationというのもキーワードになっておりますけれども、こういうものもしっかり抑制していくことが必要というメッセージをIMFが出しているということでございます。
それから、未来への投資、こちらはもう先生方もよく御案内のように、グリーン、デジタル、そういったものにもしっかり対応していくこと。それから、真ん中辺にございますけれども、やっぱり財政ルールの再開に現段階でちゃんとコミットして、財政枠組みの信頼性を強化することとか、歳入・歳出両面の見直し。それで、将来何かあった場合に財政スペースを確保していくことが重要だといった提言もしているところでございます。
それから、ちょっと飛んでいただきまして、ページ4は財政モニターでございます。こちらはIMFの中で財政に絞った形でのレポートでございます。実際上、先ほどのWEOのメッセージと随分重なる点がございますけれども、まず、世界全体でこれまで財政支出のコロナ対応として約16兆ドルという対策をやった。日本も大規模な経済対策をやっていることが一応評価されております。他方で、公的債務が世界全体で97.3%。これは2つ目のポツでございますけれども、相当悪化している状況です。今後、経済の回復が加速して財政を徐々に調整していく中で、特に日本については、高齢化の影響等々ございますので、債務の持続可能性を確保するために、中期的な財政政策に改めて重しを置く。reanchorという言葉を使っておりますけれども、こういうことが必要と。それから、低所得国は、当然のことながら債務脆弱性が引き続き高いということで、後ほど申し述べますけれども、債務への対応が国際社会での非常に重要なテーマとなっているということでございます。
それから、下のほうの政策上の優先課題でございますけれども、青字のところで、これも若干繰り返しで恐縮になりますけれども、緊急支援というのは、貧困層とかviableな企業にターゲットを絞っていく。それから、政府からの支援に依存する生産性の低い企業への支援は見直していくことも重要だと。緊急対応と長期的なシナリオをしっかりバランスを取って、必要なものに絞っていくべきだというのが今回のIMFのメッセージの特徴なのかなというふうに考えております。
大変駆け足で恐縮ですけれども、5ページ目、こちらは国際金融安定性報告書というものでございます。こちらは、むしろファイナンシャル・スタビリティの観点から現在の世界経済のリスクを評価しているものでございます。これまでに前例のない政策支援により金融安定に対するリスクは抑制されておりますけれども、株価など一部の資産価値が過剰に上昇している。仮に市場がリスクを再認識する、リプライシングすると、コンフィデンスの低下、それからマクロ金融の不安定化を招くおそれがあるといった評価をしております。
個別で見ますと、特に新興市場国は、現在アメリカの金利が上がっている状況でございますけれども、そういった中で、金利上昇があまりにも急激だと新興市場国は大規模な資本流出のリスクがあることも注意喚起をしているということでございます。それから、真ん中ですけれども、企業部門。またzombificationという言葉が出ておりますけれども、ゾンビ企業の存続を許してしまう。あまりにも過剰な支援を継続してしまうとそういったリスクが残ってしまうということでございます。
したがいまして、政策提言としては、やはりしっかり絞っていくことが重要ということで、特にゾンビ企業に関しては、下から2つ目のところにありますけれども、会社清算の枠組みとか整備をしっかりやっていく。特に途上国とか新興国ではそういうものはございませんので、そういったものを整備・活用して、退出すべきは退出すべき、守るべきは守るべきということをやっていくことが重要と。1つ上に戻って大変恐縮ですけれども、特に途上国、債務問題を抱える国は、昨年G20とパリクラブで合意しました「共通枠組」という債務再編の枠組みがございますけれども、これをしっかりやっていくべきというメッセージでございます。
続きまして、ページ6でございます。先週そのIMF・世銀の一連の春会合がございまして、今回もバーチャルで行われたわけでございますけれども、麻生大臣には4月6日のG7、4月7日のG20、それから国際通貨金融委員会、最終日は世銀・IMF合同開発委員会に御出席いただいているということでございます。成果のポイントは下の枠組みの中にありますが、簡単に御紹介させていただきます。
世界経済の見通しは改善しておりますけれども、やはり各国間、それから各国内で回復はばらつきがある。新たな変異株など下方リスクがある。そういった中で、最も影響を受けた人々の傷跡の問題。それから、拡大する格差、これは特に先進国と途上国の間の格差も含まれるわけでございますけれども、そういったものに対応する必要があり、必要とされる間は、全ての利用可能な政策手段を用いるとの決意。これは昨年からずっとG20等のメッセージになっておりますけれども、それを再確認した。それから、為替レートにつきましては、経済のファンダメンタルズを反映するという従来の考え方を明確化した文章が入っております。貿易につきましては、保護主義と闘うという言葉が若干久しぶりに入ったというのが今回の一つのポイントではあったかと思います。
それから、やっぱり一番大きな話は、今回は低所得国支援、先ほどの格差の問題でございますけれども、先進国と途上国の間で格差が広がっている中で、どう低所得国を支援していくか。その中で、この春会合では、一応3つの大きな成果が得られたというふうに我々は考えております。1つは、IMFの特別引出権(SDR)でございますけれども、新規一般配分(6,500億ドル相当)の提案を今後策定することに対し、IMF理事会で幅広い支持が得られました。SDRは、後で若干御説明しますけれども、各国がSDRを受けると、それをいわゆる自由利用可能通貨、ドルなり円なりと交換できるものでございますので、それが配られると各国の外準に積まれるということで、外貨準備が強化されることになります。外貨準備が強化される間に、財政のほうでは、必要なワクチンですとか、そういった国内の対応を行うbreathing spaceができるということでございます。ただ、その際、IMFに対しまして、SDRの使用に係る透明性、説明責任の強化策、それから先進国もSDRが配分されているのですけれども、それを途上国にどうやって活用していくかということも検討するよう要請したということでございます。
それから、低所得国の債務問題でございますけれども、債務問題は2つございまして、まず債務の支払の猶予でございます。これは昨年からずっとやっておりまして、今年6月までが期限だったのですけれども、まだやはり厳しい状況が続いているということで、最後のではありますけれども、本年末まで延長に合意しております。
ただ、そういう支払の猶予だけではどうにもならない国がございまして、それに関しましては、昨年11月のG20で決めました「共通枠組」で債務措置、すなわち猶予ではなくて、さらに踏み込んだ措置を実施するという枠組みは決まっておりますけれども、今年はそれを実際に個々の国のケースでやっていく段階になっております。今回の春の合意では、その債権者委員会の来る初回会合を期待ということで、現在チャドとかエチオピア、あともう1つの国、3か国が「共通枠組」での債務措置を要請しているわけですけれども、来る初会合を早く開催しようということで期待ということでございます。
それから、参加する全ての公的二国間債権者は開かれた透明性ある形で交渉と。今回のポイントは、これまでパリクラブは中国が入っていなかったわけですけれども、今回はG20とパリクラブが合同でやったということで、中国という巨大な債権者も含めた形でこういった「共通枠組」ができて、それを実施していくというのがポイントでございます。
それから、民間債権者も債務措置を公的債権者と少なくとも同程度の条件、さらに深掘りをしてやることが決まっております。このポイントは、やはり中国、特に中国国家開発銀行が我々からすれば当然公的債権者と位置づけられるべきと考えておりますが、中国は、これは民間債権者であるというふうに昨年からずっと主張しているわけです。民間債権者であっても、きちんとこの枠組みの中でしっかり債務措置を行わなければいけない枠組みとなっていまして、それを確実に実施させていくことが重要と。その前提として、最後の段にありますけれども、債務データの質・整合性の強化、開示の改善。要するに、中国国家開発銀行なり民間債権者が幾ら持っているか、データが分からないと公正な債務削減ができませんので、そういったものをIMF・世銀がやろうとしている。その進捗を期待するということでございます。
それから、こうした債務ではなくて、新しくニューマネーを出して成長に資するという観点からは、国際開発協会(IDA)の増資、これは3年に1回やっておりますけれども、今回コロナで大分前倒しを使っておりますので、次の増資を1年前倒しすることを今回合意し、歓迎しております。
それから、国際課税。今回は、昨年、2021年半ばまでにグローバルなコンセンサスに基づく解決策に合意するとコミットしておりますけれども、これにつきまして引き続きコミットすることを確認しております。
最後、気候変動ですけれども、気候変動対策に取り組む財務大臣連合に今回日本がアメリカと共に初めて参加して、中西副大臣に御出席していただいているということでございます。
7ページ、IMFのSDRです。ほとんど釈迦に説法のところもあると思いますけれども、簡単に御説明させていただきます。下のポンチ絵でございますけれども、IMFというのは、総務会の決議85%で決定すれば、国際的な流動性が必要である、補完する必要があるという場合にはSDRを加盟国に配分するということでございます。SDRを受け取った国は、通常、外準に積むわけですけれども、実際SDRそのものではなかなか支払いができませんので、それを使って、SDRを渡して、その加盟国からドルなり円なりユーロなりをもらって、それで債務の償還に充てるという仕組みのものでございます。他方、我々は、今回そういうSDRを配分するに当たりまして、そういったものがどのように使われるのか。例えば隠された債務みたいなものに充てられるのは今回配る趣旨とは異なりますので、先ほど申し上げました透明性ですとか説明責任の強化をIMFのほうで検討するよう要請したということでございます。
次の8ページ、9ページは、先ほど申し上げました債務支払猶予イニシアティブと、それから共通枠組みの御説明資料でございます。ほとんど繰り返しになってしまいますので、私のほうからは割愛させていただきます。
駆け足で大変恐縮でございますけれども、私からの説明は以上とさせていただきます。
○清水分科会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまお話しいただいた内容に対し、御質問や御意見などがございましたらお願いいたします。
発言の際は、御臨席の委員の方は名札を立てていただき、オンラインで御参加の委員の方は御発言の意思をシステム上の挙手にて事務局までお知らせいただければと思います。
○河野委員 ありがとうございます。大変勉強になりまして、感謝いたします。
1点だけ、6ページの債務問題について御質問させていただきたいと思います。先ほど民間債権者という点につきまして、ここでの合意の背景に、特に中国開発銀行の問題があるのだという御説明があったと思います。確かに中国の中国開発銀行に着目すれば、公的な機関なのかもしれないのに民間と位置づけられている。そのような中国開発銀行の特殊性に配慮した対応が妥当であるとすると、本当の意味の民間の債権者が持っている様々な債権に関する情報も開示しなければならないという効果を持つのではないかと思います。
それでも仕方がないということであれば、物事の考え方として、国家債務を持っている場合は、通常の民間債権者であろうとも、それはある種の公の意味合いを持つので、ある種の情報開示を求められるという発想での対応を容認するものなのか。そうすると、通常の民間の経済活動といえども、ある種の公の性格を持つものについて一定の協力が求められるという国際的な合意あるいは了解のようなものが生まれているのかという点を教えていただければと思います。
○清水分科会長 ありがとうございました。時間の関係もございますので、まとめて質問を受けたいと思います。
○佐藤委員 非常に勉強になる説明を頂きまして、ありがとうございました。
私からは1点だけ確認の質問です。スライドの7ページ目に、SDRの新規配分の情報が書かれてありますが、このスライドの一番下に、資金提供国の専ら先進国から専ら途上国へという赤の点線があります。「脆弱国支援のためのSDRの活用策」というところ、ここについてどのような議論がなされたのかを少し御説明いただけると助かります。低所得国の配分額が3.2%ですので金額的には決して少なくありませんが、先進国からどのように追加的な支援があるかということが重要かと思いますので、質問させていただきました。
○清水分科会長 ありがとうございました。すみません。佐藤先生の御質問に関しては、私も全く同じように、このSDRの活用策で、専ら先進国から途上国に関してSDRを援助として活用するというのは非常に新しいアイデアだと思うのですが、もう少し詳しく御説明いただければと思います。
○玉木委員 2点質問があって、本来はよく理解していなきゃいけないことなのですけど、すっかり年月の経過とともに忘れたので確認のための質問です。
1点は、SDRの新規配分がどういう意味を持つかということですが、例えば自分がチャドやエチオピアだった。さっき債務救済の話で出てきました。ほとんどの債務が例えばIDAだった。だから、金利はゼロで借りている。その場合、100万SDRの配分を受けて、それによって100万SDR相当分のIDA債務を返済した。この場合には、バランスシートとしてはIDAの債務がなくなる。だけど、SDR勘定では配分額より100万SDR減る。そうすると、その減った分、配分額から減った分についてはSDR金利を払わなければいけない。ということは、IDAの元本は消えたけど、今だと0.05%低いわけですが、未来永劫SDR金利を払い続ける、こういう形になる。だから、全く天からお金が降ってきたわけではないということですよね。それを確認したい。
2点目は債務救済の話で、債務措置という言葉が使われていますが、昔、2000年前後に重債務貧困国向けに債務削減をするという議論をしたときに、日本政府は必ずしも賛成ではありませんでした。その当時の議論では、基本的に財政法で、国の債権というのはまず国会の議決がないと放棄できない。新規立法して重債務貧困国対応をしたわけですが、1つは、様々な債務措置の手法――元本削減や金利削減や支払いの長期化あるいは金利の元加、様々な手法があるわけですが、今の日本の法律ではどのやり方も対応可能なのか。そして、日本政府としては、これで債務削減をすること、例えばJICAの円借款やJBICのローンに対して削減という措置を取ることに賛成しているのかどうか。これについて教えていただけませんでしょうか。
○澤田委員 アジア開発銀行、東京大学の澤田でございます。今日初めて参加します。どうぞよろしくお願いいたします。
私のほうからは質問ということではないんですけれども、若干のコメントを2点、短いコメントをさせていただければと思います。
最近の国際金融情勢について、今村課長には非常に手際よくまとめていただいて、大変勉強になりました。
1点目は経済見通しですが、ADBではアジア経済見通しをやっております。2週間後に出しますので、最近の成長率はまだ今仕上げているところなんですが、IMFのWEOによると、アジアの開発途上国、ADBの開発途上加盟国の成長率は7.7%ということで、非常に手堅い復興が今年は期待されているんです。特に東アジアが中国を中心として堅調ということなのですけれども、その中でも東南アジア、南アジアも、IMF見通しだと、4.6%、10.5%ということで非常に高い成長率になっているんです。恐らくWEOの成長率のカットオフは1か月くらい前にはもう仕上げていると思いますので、ここのところのインド等でのコロナ感染者数の急増という下方リスクを少し考えるべきかなと思います。フィリピンもここ2週間ほど非常に強いロックダウンで、私のマニラでも非常に強い外出規制がしかれております。これは先週公表された数字ではありますけれども、そういうところを少し考えたほうがいいのかなというふうに思います。
それから、もう1つ、ワクチン普及に期待されるわけですが、アストラゼネカの問題が表面化しまして、特にタイ、スリランカ、それからバングラデシュはアストラゼネカに非常に大きな発注をしております。こういうところからもワクチンの進捗がアンバランスになっていくのではないかということで、これがコメントでございます。
もう1つは債務問題ですけれども、世界中で巨額の財政・金融政策が行われたということで、ADBでもCOVID-19 Policy Databaseという、政策動向の公表ベースの把握をするためのデータベースを構築・公開しております。それを月に2回、去年4月から更新しておりますが、最新のデータによりますと、ADBの開発途上加盟国の総政策規模、公表ベースの財政・金融政策の規模は3.7兆米ドルという巨額に上っておりまして、GDP比で言うと15.4%です。そういうことですので、おのずと公的債務GDP比率は非常に上がっておりまして、我々の推計ですと、2019年は42.5%だったのですが、今年は50.9%で、公的債務のGDP比が非常に上がっているということだと思います。そのこともあって、Domestic Resource Mobilization(DRM)にかじを切るタイミングも考えつつ、そうした準備をすべきだということで浅川総裁以下やっておるところです。ADBでは、DRMのハブをつくり、international tax cooperationのハブをつくるということで5月の総会に公表、始めるということで準備を進めております。
ここら辺の一連の政策の流れが非常に連関しているところが重要かなと思いましたので、以上2点コメントさせていただきました。どうもありがとうございます。
○清水分科会長 澤田委員、ありがとうございました。
それでは、時間もありますので、回答をお願いいたします。
○神田国際局長 国際局長の神田でございます。非常に貴重な、いずれもレリバントで重要な御下問を頂きまして、ありがとうございます。ちょっと悩ましい問題もありますので十分なお答えにならないかもしれませんが、一言ずつ申し上げます。
まず、河野先生の民間債務の扱いにかかるご質問でございます。我々は従来からパリクラブでも民間債務のコンパラビリティを求めてきており、その必要性は今一層、重たくなっております。さっき申し上げた既に共通枠組みで議論が始まっているチャド、それからエチオピア、もう1つは実は昨年11月にデフォルトしたザンビアですけれども、ザンビアの場合、対外公的債務残高の中で、中国が25%、民間がもう5割近くを占めているんです。だから、そこを処理しない限りサステーナビリティを絶対に回復することができない。あともう少しマクロで、まさに先ほど玉木委員がおっしゃった重債務貧困国のような国全体で対外債務どうかというと、ちょっと古い統計になるのですけれども、パリクラブ、先進国が今5%ぐらいで、民間が3割、中国が2割を占める状況になっており全く姿が変わってしまっているんです。したがって、確かにエンフォースメントは難しい。そもそもアルゼンチンとかであれだけ騒ぎになるように、ものすごく大変な交渉をすることも多いのです。ただ、現実問題として、民間債務を処理しない限り絶対に解決できないというのが過去との違いでありまして、今回もしっかりと文書の中に民間債務も少なくとも同等のというのが入っているわけであります。
ただ、他方で、先ほど説明にありましたし、先生からもお話がありましたように、当然、中国が中国国家開発銀行を民間扱いすることによって、ある意味、ルールから逸脱しようとするのを防ぐ機能があるのも事実でございます。
それから、佐藤先生、それから清水先生も御関心があるとおっしゃっていたSDR新規一般配分の扱いですが、確かに我々もほとんど先進国に行ってしまって効率が悪いのじゃないかと言われるのですけれども、ただブタ積みするわけではなくて、これをどう使うかというリサイクルの議論は別途IMFを中心になされることになっているというか、もう既に始まっております。ただ、SDRの再分配自体の迅速なプロセスを止めてはいけないので、それが決まらないと再分配の議論はしませんよというふうにはしていなくて、別トラックで同時並行で議論しております。例えばPRGT、低利のIMFの融資ウインドーの融資原資にしていただくというのも一つです。ただ、その場合、当然、金利を押し下げるためにsubsidyの部分が必要ですので、やはりいろいろな議論、検討が必要になる。つまり、おっしゃった点については皆、当然問題意識を持っていて、その有効活用をどうやってできるのかということが今水面下で議論されているところでございます。
それから、玉木委員からありました、ずっと金利を払い続けることになるのかというのは、私の理解では、そうだと思います。SDRを買い戻さない限り金利を払わなければいけない。ただ、確かにIDAと比べればそうですけれども、ほかの民間債務とか一部の国の融資は非常に金利が高いので、SDR金利であれば相当に彼らの金利負担というのは押し下げられることになると考えられます。
それから、債務措置。これは非常に悩ましくて、確かにHIPCのときの議論、それは今でも日本で基本的なドグマとしてよく言われてしまうことがあるのは残っている一方で、御案内のとおり、これまで柔軟な対応をしてきたトラックレコードもございます。今回については、申し訳ありませんが、一切まだ始まってもないので、どういうふうな対応を取るのかというのは決まっておりません。債務削減といっても、Net Present Valueでどうするのかとか基本的には交渉事になりますので今後ですが、まず今我々がやろうとしているのは、関係者、特にステークの大きい債権者に参加していただくのが一番の大事なところでございます。今回、最初の債権者会合を行うというのは極めて画期的で、これはずっとなかなか実現しなかったのですが、それがコミュニケに一文、そういうのを歓迎するというのが入ったのが一歩前進で、日本がどう対応するのかというのはその先の話になると思います。
特に、先ほど申し上げたとおり、全体の債務の構造の中では、昔のHIPCイニシアティブのとき、日本のアフリカの債権がものすごく大きな比重を占めていたときに比べるとさま変わりで、例えばさっきのザンビアでも日本が持っている、たしかJICAの債権は5,000万ドル、1%に満たないと思います。だから、我々の立ち位置も大分違うのですけれども、しかし、しっかりとそういった国際的な議論で貢献していきたいと考えております。
澤田先生のコメント、本当にありがとうございました。全くおっしゃるとおりで、結局、経済見通しが今非常に難しくなっていて、要は、単純に言えば、感染状況と、感染状況に伴ってどれだけロックダウンとか経済活動を抑制するかというのと、経済のパフォーマンスがほとんど相関していて、例えばアメリカでワクチンが2億回に達しそうとかなるとFedが成長率見通しを6.5%にガンと上振れさせるし、おっしゃったとおり、インドあるいは最近だとフランスがロックダウンとか再開されると、恐らく見通しを下方修正しなきゃいけない。そういうことなので、上方・下方リスクともに非常に高い状況の中で、我々どうやってこのuncertaintyを処理していくのかに悩みながら最善を尽くしたいと考えているところでございます。
私からは以上です。
○清水分科会長 ありがとうございました。もう1つ御質問を頂きまして、植田健一委員、お願いいたします。
○植田委員 私からは、SDRのところについて少々質問というかコメントをさせていただきたいと思います。いつも丁寧な御説明、ありがとうございます。
SDRの件、前々から少々言われてきたことでもあり、同時に、国際金融の経済学の考え方では最近注目され始めている考え方でもあるのですけれども、やはりアメリカ、日本、ユーロ圏、イギリス、今回最近入った人民元、中国などというハードカレンシーの供給国は、いざというときは自分の国のお金を刷って国際的な財を買える。例えば、今回で言えばワクチンを買うのに、アメリカはアメリカのドルを刷って買えるわけですね。そういうような特権が一部の国だけありまして、ほかの一般の国、発展途上国に限らず、先進国でもハードカレンシー国でないような国は、いわば特権のようなものがないわけなんです。もちろん、こういうことは通常の状況であればあまり気にもされていない状況なのですけれども、今回のような世界的な危機のとき、前回、例えばSDR配分したのはリーマン・ショック後のはずですけれども、そういうような世界的危機のときだけこういう問題が認識されて不満が多少たまってくるということがございます。先進国から途上国に必ずお金が行くという見方を我々はしているのですけれども、途上国側の視点に立ってみれば、どうして一部の先進国の金持ち国だけがそういう特権があるのだろうかという疑問が常にある。なおかつ、そういう議論が最近は経済学のほうでも俎上に上ってきているような状況でございますので、必ずしもこれだけを捉えている、途上国にお金だけ渡しているようなイメージと捉えている、と全体像を見誤るのかなと思った次第でございます。
○清水分科会長 ありがとうございました。もう一方、春田委員、お願いいたします。
○春田委員 ありがとうございます。もう時間がないところですので、簡潔に質問を2点させていただければと思います。
IMFの直近財政の見通しの中で日本について記載があったかと思うんですけれども、パンデミックと高齢化の影響で財政収支が一層悪化した日本が債務持続可能性を確保するために、中期的な財政政策に重きを置くということだったと思います。この記載に関連し、日本の財政赤字が国際的に見てどういうふうに今捉えられているのか、また、とりわけ「債務持続可能性を確保するため」という文章の意味合いについて、MMT等さまざまな理論がある中で、そのあたりどういうふうに思われているのか、それに対しての見解、コメントなどあればお伺いしたいのが1点です。
2点目は、6ページ目の中で国際課税について、「2021年半ばまでに、グローバルなコンセンサスに基づく解決策に合意することに引き続きコミット」とありますが、現時点での国際課税に対する議論状況についてお伺いできればと思います。
○清水分科会長 ありがとうございました。。
神田国際局長、お願いいたします。
○神田国際局長 貴重な御意見、また御下問、ありがとうございます。
植田先生のおっしゃるとおりで、非常に複雑な見方ができるものですので、我々もコミュニケーションもしっかりと気をつけたいと思っております。
春田先生がおっしゃっている件ですけれども、債務の持続可能性、これは確かに中心的には低所得国、特にデット・オーバーハングしてまさに返済も危ないような国がもちろん中心にあるわけです。しかし、もう少しユニバーサルに全ての国にも当てられたことであって、3つのフェーズと書きましたけれども、今何か対応を打つときでも、少しでもやはり将来の負債になるものであるから、ターゲットを絞って生産性を落とさないように、モラルハザードがないようにするとともに、しっかりと返済のことを念頭に置く。つまり、次世代のことを考える。この考え方については、実は去年の今頃からEUなどはやっていて、リカバリーファンドのときに、まさにNext Generationと銘打ったように、多年度予算(MFF)とあわせて3割を環境問題に充てるだけではなくて、そのときから返済原資の議論をしております。最近もイギリスやアメリカがコロナでたまった債務も念頭に、あるいは今後の投資をしっかりと賄うために、法人税増税をうたったことも皆さんの記憶にあるとおりでありまして、このことが春田先生の2つ目の御下問、国際課税にもつながっている。つまり、自分たちだけ増税したら企業に逃げられてしまうのでというのが今回の国際課税のsecond pillarの後押しになった部分があると思います。
先に債務持続可能性の話をもう一言だけ申しますと、日本だけ突出しているんですね。非常に難しくて、基本的には債務問題は途上国とかの話なのですけれども、日本だけがファンドのデータでもいろいろなグラフで、つまり、戦前と同じように日本だけ突出している。前回から残っておられる委員にはお見せしたと思うのですけれども、ちょっと特殊なんです。当然しっかりと、日本の部分でも書かれているように、我々が議論していると、発散するような絵のままでは大変なことになるというのはみんなの共通認識にありまして、それをどうやってうまくコミュニケートして債務持続可能性に持っていくかというのを一緒に悩んでくれているようなところがあるかと思います。この辺はポストコロナで非常に大きなテーマになると思います。
国際課税に戻りますと、2021年半ばまでにまとめるという昨年のG20の合意があり、7月のG20の財務大臣会合が我々のタイムリミットのように考えておりまして、それまでにこの国際課税の合意を取り付けるという政治的なコミットメントは今でもG20全ての国でシェアされておりますし、OECDもそれに向けて最終的な作業をしております。2つの柱があって、1つは、多国籍企業がある国でサービスを提供してもうけているけれども、そこに拠点がないために全然税金を払っていないときに税金を公平に払ってもらう。2つ目は、簡単に言えば、法人税の最低税率みたいなものを置いて、それをオーバーカットしている部分はほかのところ、例えば親会社が所在する国において課税するというものです。1月にバイデン政権ができて、アメリカが1つ目の柱についてずっとセーフハーバー、言ってみれば、企業の選択制にしろというので、なかなか議論に参加しないということをしていたのが、その要請はドロップすることになって一気に動き出して、みんなの期待が高まっているところであります。
ただ、今後そんな簡単ではありません。我々7月に向けて全力を尽くして必ず成果を出したいと思っていますけれども、例えば国際的な課税の対象企業をどうするのか。アメリカは100社と、少しでもGAFA以外にも広げたいということだと思います。それから、最低税率をどうするのか。あるいはまた、気候変動と同じように、途上国はちょっと特別扱いしてくれと言ってくるかもしれませんので、そんなに容易ではありませんけれども、恐らくこれまでの歴史の中で、これだけグローバル化、デジタル化が進んで、主権国家の税源というか、むしろみんなで費用を賄うという基本的なところが壊れかけているのに対応する最初で最後のオポチュニティかもしれないので、ここはぜひ成果を出したいと考えております。
○清水分科会長 どうもありがとうございました。
それでは、次の議題に進ませていただきます。アジア地域金融協力について、事務方より御報告いたします。森課長、お願いいたします。
○森地域協力課長 おはようございます。国際局地域協力課長の森でございます。昨年夏よりこのポストにおりまして、アジアとの地域金融協力、特にASEANとの関係について担当させていただいております。
本日は、時間の関係もございますので、新しい動きになるべく絞って手短にさせていただければと思っております。今回、資料を御用意させていただきましたけれども、主にアジアの地域金融協力という場合のマルチの枠組み、特にASEAN+3、チェンマイ・イニシアティブを中心としたものと、あと二国間で財務省のほうでやっております取組について簡単に御紹介させていただければというふうに思っております。
めくっていただきまして、1ページ目でございますが、この辺はもう先生方もよく御存じかと思いますけれども、どこからスタートしているかというと、90年代末のアジア通貨危機があって、ASEAN+3の財務トラックというのは99年に始まっておりますけれども、そういった議論を経て、チェンマイの前身であるCMIが2000年に発足。去年がちょうどそれから20年という節目でございました。また、その中間には2010年に今の形のチェンマイ、つまりCMIをマルチ化したものができたのが2010年ということで、そこから数えても去年は10年であったというタイミングでございました。
また、ASEAN+3のほかの柱としましては、地域の国際機関でありますAMROが2011年にできておりまして、これも実は今年が10年目を迎えることになっております。そのほかの柱としましては、債券市場の育成を域内で頑張るということで、ABMIが2003年に、また災害対応の保険分野ということでSEADRIFが2018年に発足しております。
以上でございますが、特に一番の主力選手でございますチェンマイ・イニシアティブの現状について2ページ目以降で簡単に御紹介いたします。手短に下の段の2ポチ、3ポチだけ御紹介いたします。
最近何をやっているかというところでございますけれども、チェンマイがマルチ化されてから、数え方によるのですけれども、通算3回ぐらい大きい変更が行われてきておりまして、まず、2014年に全体の規模感を倍増するであるとか、危機予防の機能を導入する。あるいは、IMFのプログラムがなくてもどこまで上限額の割合に比してスワップできるかというデリンク割合の引上げの1回目を行っております。
その後、去年6月に、数え方によりますが、2回目の大きな変更がございまして、例えばコンディショナリティの明文化ですとか、あるいはIMFとの連携強化などを追記した改訂契約が発効しております。一番最近の動きとしましては、昨年9月に合意した内容ですけれども、先月3月でございますが、さらに改訂が発効いたしておりまして、内容といたしましては、デリンク割合がさらに3割から4割まで引き上げられたこと。また、これまでドルが基本的に想定されておったわけですけれども、現地通貨の活用も排除されないという総論について確認がされたこと。また、チェンマイはずっとLIBORを参考指標として使っているわけですけれども、御案内のとおり、LIBORが近々廃止の動きであるということで、その代替指標を今後考えなければいけないということで、そのワークプランについて今後検討することがうたわれております。
このチェンマイあるいはASEAN+3において、日本は去年ベトナムとともに共同議長国を務めさせていただきまして、今申し上げたような2020年、様々な改訂に向けた動きを日本として支援することができたと。少し引いた目で見ますと、ASEAN+3において、日本は唯一G7、G20双方に参加しております。また、IMFを中心とした国際金融システムの議論においても中心的なプレーヤーの1つでございますので、そういった経験、知見をこういったチェンマイ、ASEAN+3に還元することができるというふうに考えておりますし、そういうふうに対応してまいりました。
また、もう少し個別に具体的に申し上げますと、チェンマイにおきましては、日本はさすがに、どちらかというと潜在的な資金の出し手というふうに想定されるわけですけれども、そういった立場を超えて、潜在的な借り手でありますASEANの意向にも寄り添いつつ、地域全体の安定を見据えて積極的に俯瞰的に議論をリードしてきております。そういったことを今後ともやっていきたいということでございます。
先ほど申し上げましたように、去年がちょうどチェンマイ20年目、今年がAMRO10年目ということでございます。
1枚めくっていただいて、次は先ほど申し上げたデリンク割合が4ページ目ですが、どういうふうに変遷しているかという資料でございます。
めくっていただいて、5ページでございますけれども、今後どういったことがチェンマイあるいはASEAN+3で議論されるかということでございます。一番最近の改訂においてうたわれた現地通貨建ての支援というのは、総論では一応書き込まれたわけですけれども、これを実際どうオペレーショナライズというか、具体化していくかについてまさに今議論しているところでございます。また、LIBORの代替指標につきましては、非常に急いで決めなければならない問題ですので、具体的にどうするかということを現在議論しているところでございます。
さらに、より中長期的な課題としまして、チェンマイ、基本的にはマルチのスワップの協定でございますけれども、それにとどまらず、どういった制度改善があり得るかということについても断続的に議論を行っております。
また、先ほど申し上げたASEAN+3、チェンマイ、AMRO、ABMI等々柱がございますけれども、将来ほかに柱がないかということで、こちらも検討を行ってきております。ASEAN+3の下で、この囲み表にございますような5つのテーマでこれまでスタディ・グループで検討させていただいておりまして、これを踏まえて、今後どうASEAN+3の本体で議論していくかについて今検討しているところでございます。
めくっていただきまして、その他の柱、AMROでございます。一言だけでございますが、今財務省の土井俊範氏が所長をやっておりまして、現在職員数は66名になりました。最近のAMROの動きとしては、やはりサーベイランスの強化を非常に重点的に行っておりまして、スタッフや予算についてもそこを重点的に増やす方向で頑張ってくれています。また、先ほど申し上げたようなチェンマイのいろいろな改訂におきましては、いわばセクレタリアート的な働きを非常によくやってくれていることと、コロナの今回のパンデミックを受けて、域内の経済分析とか、そういった面でも活躍が見られるようになってきているかと思います。
例えばGoogleのニュース検索などでAMROと入れていただくと、そんなにたくさん膨大な数ではないですけれども、大体何かAMROが引用されているようなニュースが実は引っかかるということでございますので、一度ぜひ御覧いただければというふうに思っております。
また、積極的にAMROはメディアなどで発信する以外にも、次のページにございますけれども、かなりしっかりしたレポートを域内について出させていただいておるようでございまして、ホームページにも掲載されておりますが、このAREOというアウトルックを出させていただいています。
ASEAN+3のそのほかの柱ということで、8ページ、債券市場の育成でABMIを立ち上げておりますけれども、これにつきましては一言だけ。様々な、CGIFという実際に保証を出す機関ですとか、あるいはABMF、これは官民の専門家が議論するような場で、AMBIF債という債券発行のひな形をつくるような取組をやっておりますけれども、そういったフォーラムであるとか、あるいはクロスボーダー決済に係るインフラの促進のためのフォーラムなどを引き続きやってきております。
めくっていただきまして、特に一番主力選手でございますけれども、CGIFでございます。これは域内の債券発行がなかなかうまくできていない企業に対して保証を付与するということでございます。一番下のポチにございますけれども、これまでのところ31社に対して22.6億ドル相当の保証残高があるということでございます。より具体的な例として申し上げますと、一番最近ですと、例えば3月にタイのロジスティックスの会社に対して保証をつけておる例がございます。
以上が国際局から見ましてマルチの取組について、駆け足でございますが、御説明させていただきました。
10ページ目以降は、バイ、二国間の取組についても、簡単にですが、御紹介させていただきます。
まず、政策対話が重要であろうということで、様々なレベルで、言わずもがなですが、ASEANとは対話をやってきております。最近では、フィリピンと2月に、またインドネシアとは3月に、審議官級の合同作業部会を開催しております。やはりこれまでフィジカルに会議ができていて、それがかなり対話の力になっていたわけですけれども、なかなかバーチャルで難しい面もございますが、こういった取組を続けていきたいと思っております。また、日頃アタッシェを中心に企業の特に金融部門などでの要望などは吸い上げておりますけれども、こういった機会を使ってなるべく相手国政府に提起してきているということでございます。
11ページでございますが、二国間通貨スワップの状況でございます。先ほどマルチのチェンマイについては少し時間を割いて御説明させていただきましたが、バイはどうかということで、現在ASEANとの間で有効なものについてこちらに6つ並べております。すみません。1つ、誤解を招きかねないので申し上げますと、契約日というのは今「2018年」等々書いていますけれども、もともと古い前身のものは、例えば2001年頃からこういったものは締結されてきていて、今生きている協定の契約日がここにあるということでございます。現在ではチェンマイというしっかりしたものができましたので、ある意味、マルチの補完をするという位置づけに、より移行してきているのかなというふうに考えております。また、この契約というのは時々更新していく必要がありますので、現在まさに期限切れが近づいているものについて、相手国との間で、どう延長していくか。また、チェンマイの補完ですので、チェンマイのほうで何か変更があれば、それを均てんというか、反映していく必要がありますので、そういった議論を相手国との間でやっているところでございます。
そのほか、駆け足でございますが、幾つかの国と個別のユニークな取組ということで2つほど御紹介させていただければと思います。
1つは、インドネシアとの間で現地通貨の利用促進のための協力枠組みということで、以前の分科会でも質疑応答で清水先生ほかから御質問がありましたけれども、直接交換とも呼ばれております。インドネシアとの間で、両国の参加する銀行を指名して、一部規制緩和を適用してもらうことで現地通貨による直接取引を促進するものでございます。こちらにつきましては、2019年12月に協力覚書が締結されて、去年夏、8月31日に枠組みが設立しております。今この利用状況であるとか銀行さんのニーズであるとか、そういったところをまさに見つつ今後育てていきたいというふうに思っております。
最後のページは日銀の方の取組なので、一言だけですが、最近の動きです。日銀と香港のHKMAとの間でクロスボーダーのDVPリンクが立ち上がりました。これは突然出たものではなくて、ABMIの下で数年にわたって議論されてきたものが最近立ち上がったということでございまして、念のため入れさせていただきました。
すみません。駆け足になりますが、以上でございます。
○清水分科会長 森課長、ありがとうございました。
それでは、ただいまお話しいただきました内容について御質問、御意見がございましたらお願いいたします。
○佐藤委員 今回も非常に情報量のある御説明を頂きまして、ありがとうございました。大変勉強になりました。
私からは、日本とASEANの二国間の取組の中にある、インドネシアとの現地通貨の利用促進のための協力枠組みについて質問したいと思います。この取組は非常に重要だと思います。日本が今後ASEANでどのように貢献できるかという点で、インドネシアと現地通貨の利用促進の枠組みをつくることは、非常によい取組です。これからを期待したいと思いますが、現地通貨を利用するときに、インドネシアのルピアを使うのか、あるいは円の取引が促進されるのかというのは非常に面白い論点だと思います。もしかしたら円の利用が促進されるかもしれません。
あとは、為替取引コストがこれでどの程度低下していくかという点もとても重要だと思います。今までドルを媒介通貨として使用していた部分を直接取引に置き換えることを狙っているわけですけど、もし直接取引のコストが高過ぎるとなかなか使われなくなりますので、この点がどのように変わっていくかということをぜひ注目して見ていきたいと思います。
あと、このローカルカレンシーの使用については、マレーシア、タイ、インドネシアが先行してLocal Currency Settlement Framework(LCSF)をスタートしています。それがどの程度効果があったのか、実際に現地通貨建て取引を促進しているのかについて、何らかの報告あるいはデータがあると、今後を占う上で非常に分かりやすいと思います。
そして、最後ですが、この件を調べているときに、インドネシアと中国が昨年9月にローカルカレンシーの使用についてMOUを結んだという記事を見ました。中国も積極的にこういう形で取り組んでいることを受けて、今後、日本がこの動きをさらに進めていくべきなのかという点も検討課題であると思います。
少しコメントに近いものになりましたが、以上です。
○清水分科会長 ありがとうございました。
それでは、まとめて質問を頂きたいと思います。
○原田委員 ありがとうございました。今後の主な課題の中にも入ってきていないのでお伺いしていいものかどうかと思いましたが、時間もあまりありませんので、1点だけお伺いさせていただきたいと思うことはミャンマーに関することであります。オフィシャルには要請などはないのかもしれませんけれども、水面下ではいろいろな動きがあるのではないかと考えているところです。主に金融面での問題について、主にマクロ面での動きなどについてお伺いさせていただきたいということになります。チェンマイ・イニシアティブは金融危機の連鎖を防ぐ目的というものでありますし、今回の議題にはあまり関係がないといえば関係がないかと思うのですけれども、そうでしたら、次回以降でも構いませんので、情報をシェアしていただければとお願いいたします。
日本から、民間からミャンマーに出ている資金もあります。例えば、官民ファンドからもクールジャパンとJICTから日本のテレビ番組の輸出などの事業がミャンマー現地で行われているかと思いますので、そういったところは回収見込みですとか様々なことが今後問題になってくるかと思います。その辺について、いつの時点でも構いませんので、分かる範囲で情報のシェアをお願いいたします。
○澤田委員 ありがとうございます。大変すばらしいまとめをしていただきまして、大変勉強になりました。私からはコメントを1つだけ申し上げたいと思います。
最近のマクロファイナンス状況を見ておりますと、特に2月から3月にかけてインドネシアのルピアが特にそうだったですけれども、アジアの主要通貨が減価するような状況がありまして、今ちょっと落ち着いていますけれども。それから、それに併せて資本流出が全体として起こるようなことが観測されておりました。この背景にあるのは、アメリカ、それからイギリスの長期金利上昇とか、あるいはワクチン普及が進んで、非常に先進国の経済が戻るところがその背景にあるのだろうと思われるのですが、私がおりますADBのようなところ、あるいは開発途上アジアの視点から見ると、2013年のテーパータントラムがまた起こるんじゃないか。そういうリスクが非常に懸念されているということだと思います。
そういう状況で、やはり域内の金融セーフティネットを深め強化することは非常に重要で、今日のお話で、CMIM、それからAMRO、ABMI等々、こうした機能を強めていくことは非常に重要だろうというふうに思っております。ADBでも継続してサポートさせていただいておりますけれども、特にAsia Bond Monitorという報告書を定期的に出しておりまして、最新版によりますと、昨年末の自国通貨、現地通貨建ての債券市場を育成することが非常に重要だということですが、昨年末の我々のデータによりますと、昨年末の状況で現地通貨建ての国際ボンドマーケットの規模は20.1兆ドルで、コロナにもかかわらず、その前の年よりも18%拡大しているということで、こうしたことをサポートしていくことは非常に重要だろうというふうに思っております。
1つだけコメントさせていただきました。ありがとうございます。
○根本委員 御説明、ありがとうございました。今の澤田先生のお話もちょっと関係するのですが、AMROの機能についてちょっとコメントがございます。澤田先生もおっしゃった、あるいは前半におっしゃったテーパリングの可能性とか、今までの非常にサポーティブな金融緩和政策が変わった場合、どういう資金の流出とか影響が起きるのか、すごく大きい問題だと思います。AMROのレポートも読ませていただいて、ファンダメンタルズとか経済のトレンドとか非常に深く分析されているのですけれども、資金フローとか、IMFで言う金融システムレポートというんですか、こういう要素ももう少し取り入れてもよろしいのかなというふうには思いました。
あと、最近、ESG投資みたいな、ESGファンドが去年5割増えたとか、そういうニュースもございます。一方、アジアは資源国が多いとか、人権問題とかもいろいろございますし、その影響なども研究してはどうかというふうに思いました。
○清水分科会長 ありがとうございました。
それでは、神田国際局長、お願いいたします。
○神田国際局長 ありがとうございます。また、いずれもすばらしい御意見あるいは御下問でありまして、ただ、時間が限られているので、申し訳ありませんが、一言ずつ。
まず、佐藤先生、おっしゃるとおりで、これに対して、どちらかというと、先方の規制緩和次第というところがあり、その非常に難しい交渉で、一歩ずつ前進しているところであります。ドルを介在しなければアジア通貨の取引ができない。そのコストをどういうふうに下げていくのか。それはもちろん円の国際化にも通ずるものがあります。したがって、おっしゃるとおり、直接取引のコストが下がっていくことが非常に大きな課題だと思っております。ただ、悩ましいのは、世の中どんどん進んでいって、今後、同時並行でデジタル通貨がどうなるのかというところに我々も今視野を広げて、非常に難しい環境の中でやっているところであります。
原田先生がおっしゃったミャンマーは、日々動いていますし、外交的にも機微でありますので、どこまで申し上げられるかなんですけれども。今の欧米の制裁は、どちらかというと軍の高官、ミン・アウン・フライン以下のトップのほうと、それから直接関係しているところ、さらに、大きな軍部が関与している産業ですね。特に2つの大きな国軍系財閥を中心に少しずつ追加をしているような状態で、どちらかというとピンポイントの制裁で、一般国民に投網をかけるようなことにはなっていない。今の経済の停滞は、制裁もありますけれども、やはり今の軍部がやっていることによる社会の混乱、それに対応する不買運動とかサボタージュ、そういったものが大きいということも言われております。政府の対応は、オフィシャルに発言しているラインに尽きるのですけれども、例えばODAを3月にやったのは国際機関経由とNGO経由でありまして、軍事政権と直接の新しい取引というのは行われていないのではないかと承知をしております。引き続き、日々悪化していくので我々も悩んでいるのですけれども、しっかりと対応していきたいと思っております。
澤田先生おっしゃるとおり、ボンドマーケット、フィクスト・インカムのところも非常に我々は注視しておりまして、特に世界的な金融緩和によってマーケットの構造あるいはビヘイビアが本当にストラクチャルなトランスフォーメーションを起こしているのかというのも非常に関心がありまして、しっかり見ていきたいと思います。
根本先生がおっしゃったAMROの機能強化の観点、ESGを含めて非常に重要な御意見でありまして、検討していきたいと思います。
○清水分科会長 どうもありがとうございました。
まだ御意見、御質問あろうかと思いますが、もう時間も過ぎてございますので、本日の議事を終了させていただきます。
なお、今回の議事録の作成は私に御一任いただければと存じます。その際、発言部分を事前に御覧になりたい委員の方におかれましては、会合終了後にその旨を事務局に御連絡を頂戴するということにいたしまして、御連絡のございました委員の方には議事録を案の段階で事務局より送付したいと考えております。その後1週間程度の間に御意見がない場合には御了解いただいたものと理解させていただきたいと存じますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
○清水分科会長 これにて、第48回外国為替等分科会を終了いたします。
次回の会合につきましては、事務局と相談の上、御連絡させていただきたいと思います。
以上でございます。本日は、本当に長時間にわたりまして御出席賜り、どうもありがとうございました。
午後0時13分閉会