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関税・外国為替等審議会
第44回外国為替等分科会議事録

令和元年12月26日(木)

財務省 国際局

於 財務省第3特別会議室
本庁舎4階

 
1.開会
2.「最近の国際金融情勢について」事務局報告
3.「外為法改正について」事務局報告
4.質疑応答
5.閉会

出席者
委員伊藤 恵子財務省岡村国際局長
 小川 英治 宮原国際局次長
 奥田 英信 有泉国際局審議官
 河野 真理子 三村大臣官房参事官
 清水 順子
 小野大臣官房参事官
 神保 寛子 三好国際局総務課長
 杉山 晶子 今村国際局調査課長
 高山 一郎 緒方国際機構課長
 根本 直子 梶川地域協力課長
 春田 雄一 細田開発政策課長
 臨時委員伊藤 隆敏
 米山開発機関課長
 大野 泉   
 土生外国為替室長
 大野 早苗 河邑国際調整室長
亀坂 安紀子 下井資金管理室長
 専門委員井戸 清人 棚瀬資金管理専門官
 植田 健一 桜田調査課企画官
林 信光
 森下国際機構課企画官
 渡辺 博史 梶山地域協力企画官
  田部開発企画官
  経済産業省飯田貿易管理部長



○小川分科会長 それでは、お時間になりましたので、ただいまより第44回外国為替等分科会を開催いたします。
 委員の皆様方におかれましては、年末押し迫った御多用中のところ御出席いただきまして、ありがとうございます。
 それでは、本日の議事に入りたいと存じます。
本日の議題は2つあります。最初に事務局から「最近の国際金融情勢」、主にG20及び世界銀行の国際開発協会第19次増資について報告した後、質疑、自由討議の時間をおとりしたいと思います。続いて、事務局より「外為法改正」について報告し、再び質疑、自由討議の時間をおとりしたいと思います。
 なお、前回の分科会で申し上げましたとおり、本日の分科会より資料のペーパーレス化を行っておりますので、画面上でごらんいただければと思います。端末の不具合等がございましたらお知らせいただきたいと思います。
 今村課長から御説明をいただきたいと思います。

 

○今村調査課長 調査課長、今村でございます。
 先ほど小川会長よりございましたように、今回から画面上での資料配付にさせていただきたく存じます。画面の操作でございますけれども、下のところにAdobeのAcrobat Reader:PDFの赤いアイコンがございます。そちらにカーソルを合わせていただきますと下に資料がずらっと出てまいります。資料1から順番に番号がついておりますので、選んでいただいて拡大するとその資料が出てくる形になっております。  何か御不明の点がありましたらお知らせいただければ、すぐ事務局の者が参りますので、よろしくお願いいたします。

 

○小川分科会長 どうもありがとうございます。
 それでは、議題に入りたいと思いますが、まず「最近の国際金融情勢」から始めたいと思います。宮原次長、有泉審議官から御説明をお願いしたいと思います。

 

○宮原次長 小川先生、ありがとうございます。国際局次長、宮原でございます。私はG20の担当ということで、簡潔に御説明を申し上げたいと思います。
 今画面にも出ております資料2「サウジアラビア議長下のG20財務トラックについて」でございます。
 この12月1日からG20の議長国を交代しまして、今サウジアラビアが議長を引き受けている状況であります。12月第1週に、1回目の財務トラックの会議になります財務大臣・中央銀行総裁代理会議、Finance and Central Bank Deputies会議がリヤドで開かれました。この会議でプライオリティを含めまして、大体のサウジG20のアジェンダについてG20国で合意がなされた状況になっております。このプライオリティについてポイントを御説明申し上げたいと思います。
 次のページにスクロールダウンをしていただきますと、これ(2ページ)は、財務トラックに限らず、G20全体のテーマ、あるいは来年のサミットのテーマになると思いますが、こういうようなしつらえになっております。まず21世紀の全ての人々の機会、Opportunitiesということでありまして、柱は、ごらんのとおり、Empowering People、Safeguarding the Planet、New Frontiersであります。赤枠で囲みましたポイントが主に財務トラックで引き受けるアジェンダで、次のページ以降になります。
 1点、個人的にもというか、欧米のG20担当者と話していても出てくるのが、気候変動関係のイシューをどのように取扱うのか、という点。サウジなので、全くやらないか、やるとしても極力ロープロファイルで抑えるものと想定しておりましたら、サミットのテーマで、この図では真ん中の一番上に、cleaner and more sustainable energy systemsとかmanage emissionsが上がっておりまして、このイシューもきちっとインクルーシブに行う姿勢を示しているなという感じであります。
 次のページに移っていただきまして、財務トラックの主なプライオリティでありますけれども、Opportunitiesということですね。G20の財務トラックは、近年インクルーシブ・グロースで、単に成長するだけではなくて、全ての人々を包摂するような成長にしなければいけないという議論をしておりますので、そういう意味ではこれまでの議論を踏まえた延長線に位置づけられると思います。不平等の拡大にきちっと対応していかなければいけない、そのために機会の平等を促進する、具体的には女性と若者のエンパワーメント、教育、人的資本の促進、質の高い雇用、その他でございます。先生皆様御承知のとおり、中東は若者の失業率の高さが社会の不安定要因にもなっておる状況が数年か、もっと長く続いておりますので、想像に難くない議題設定だなという印象でございます。財務トラックとの関係では、女性と若者に焦点を当てるときにFinancial Inclusionは特に大事ということであります。
 次のページ(4ページ)へ移っていただきまして、Shaping New Frontiersというアンブレラの下にうまくはめ込んだという感じでありますけれども、インフラ投資が議題となります。インフラも財務トラックでここ何年かずっとやっております。日本もQuality Infrastructureということで今年やらせていただきましたが、それを継続してもらうということ。ただ、サウジアラビアは焦点の当て方としてテクノロジーというところを持ってきております。インフラ部門で、品質改善、コスト削減、資金ギャップの縮小、こういうことを達成していくためにテクノロジーを活用していきましょう、それをどうやるかを議論したいということであります。幸い、品質改善、コスト削減は、日本G20でまとめました質の高いインフラに関するG20原則に、ずばりストレートにアドレスしておる内容でありますし、民間資金をより順調に引っ張ってきて、資金ギャップを埋めるためにも、やはりインフラ自体のクオリティが大事だというのは日本の主張でもありますので、そういう意味でQuality Infrastructureのアジェンダを引き継いでくれているという見方は十分できると思っております。
 それから、Big Tech in Financeですね。金融の巨大企業が市場や産業に参入してくることで、国際金融市場の安定性、通貨、競争、データ保護、こういった政策にどんな影響があるか。これを議論、分析して、適切に対処していきましょうということであります。特に目新しい議論ではないかなと個人的には思いますが、今年の夏以降G20でも、あるいはG7でも中心課題になっておりますグローバル・ステーブルコインの話について、その議論を継続すべきだということは我が国も含めて多くの国が感じておって主張しておるところであります。そのグローバル・ステーブルコインについての議論は、このBig Tech in Financeの系列で引き続き議論されることになると思います。
 3つ目がタックス(国際課税)ですね。経済の電子化に伴う国際課税のあり方で、これも申し上げるまでもなく、前回も御説明を申し上げた記憶がございますが、今年の福岡・大阪で、来年末までにOECDのサポートを得た国際合意をしっかりつくりましょうということが既定方針でありまして、これをサウジG20もしっかりフォローしていく。それに尽きる内容でございます。
 次の5ページに移っていただきますと、今申し上げたようなサウジのプライオリティと、今年、日本議長のG20が議論いたしましたプライオリティの比較対照になってございます。今まで申し上げた点以外に、上のGlobal Economic Outlookについて、口頭で恐縮ですが、サウジはリスクのモニタリングを高度化、強化する何か方法を議論しようということで、Enhancing Global Risk、Monitoring、そのような議題を掲げております。これの中にはリスク要因のくくりとして今年議論しましたインバランスをどうやってモニターしていくかということも含まれておりますので、ある種、継続は図られていると思っております。
 それから、先ほどのOpportunitiesの柱においても、今年日本が議論しました高齢化が進むことのマクロ経済上のインパクトについても引き続き忘れずに焦点は当てていくということで、サウジも同意しておるところであります。
 質の高いインフラは、先ほど申し上げたとおりです。
 それから、金融技術革新、特にグローバル・ステーブルコインの話も申し上げたとおりであります。
 それから、国際課税がありまして、債務問題も当然といいますか、サウジのG20でも議題に上がってまいります。サウジ自身のプライオリティにはまるかどうかは微妙なところですけれども、とにかくG20として継続することは合意されております。
 UHCファイナンスは、すぐれて日本アジェンダではありましたが、G20合意もありましたので、これも何とか継続したいという話をまだサウジと続けているところでございます。
 6ページ、7ページは、主にスケジュールということで御参考でございます。財務大臣会議が2月と4月、次の8ページに移っていただきまして7月にありまして、締めくくりサミットが11月21、22日という予定になってございます。
 駆け足で恐縮でございましたが、以上であります。

 

○有泉審議官 それでは、引き続き資料3に基づきまして、IDAの第19次増資について御説明させていただきます。国際局審議官の有泉でございます。
 まず最初に、世銀グループの概要ということで、これは委員の皆様御案内のことも多いかと思いますが、世銀グループの中で4つ、右にございますような支援主体があるわけです。今回のIDA増資は、上から2番目でございますけれども、国際開発協会の増資についてということであります。
 IDAの特徴ですけれども、低所得国の支援に特化していること。それから、ファイナンシングについては、出資金、市場調達の資金をもとに行っておりまして、基本的なツールとしては超長期、低利の融資、それからグラントを供与しております。IDAにつきましては3年ごとに資金の補充を行っておりまして、この3年のサイクルの中で今年12月、先々週ですけれども、最終会合で決着しております。
 ここに「担当副総裁:西尾昭彦」とわざわざ書いております。西尾さん御自身は1988年に世銀にヤング・プロフェッショナルで入行した方でして、ずっと世銀で長く勤められて、このIDA増資というのは世銀のグループ全体の中でも重要なプロセスなわけですけれども、その担当副総裁として今回重責を担われたということであります。
 資料の次のページをあけていただきまして、世銀グループ・IDA第19次増資ということですが、最初のポツのところは先ほど申し上げたとおりです。それから、こういったIDA増資プロセスというのは、当然、事務局としてはぜひ多くの資金を補充してほしい、一方でドナー国のほうからは、その資金を使って何をやってくれるんだと、こういう常に綱引きの議論になるわけです。我々としても、IDAにおいて日本のプライオリティとして考えていることをどのようにやってくれるのか、こういう議論を各国がそれぞれ事務局との間ですることになります。そういう意味では、担当副総裁の重責は、いろいろなドナーからそれぞれ、これをやってくれ、あれをやってくれと言われるものをどううまく取りまとめて、IDAとしてのポリシーコミットメントをまとめるかというところが非常に重要なことになってくるわけです。先ほど次長からも話がありましたように、G20の日本の議長下においてのプライオリティをどうIDAの中で反映させていくのかというのが我々としては重要な課題になってくるわけでございます。
 IDAのポリシーコミットメントの大きな柱として5つほどあります。Jobs and Economic Transformation、Gender and Development、Climate Change、Fragile States等の脆弱国、それからGovernance and Institution、こういった柱があるのですが、その柱に応じて日本のプライオリティを打ち込んでいくことになるわけです。私どもの中では、資料にちょっと書いてありますけれども、例えば質の高いインフラですとか、国際保健の問題、これはUHCも含めてということ、あるいは防災、それから債務の持続可能性も大変重要なトピックなわけですけれども、こうしたものを実際のIDAの今後のポリシーのコミットメントに反映させているようなことでございます。
 一方で、全体の資金の規模ですけれども、先ほど申し上げましたように、IDAにつきましては、前回のIDA18の増資から、市場調達をドナーの貢献とともに活用するような枠組みになっております。今回の総資金規模については、そういったIDA債の発行などの自己資金を積極的に活用することで、前回比で70億ドル増の820億ドルが全体の資金規模になります。このうちドナー貢献については、従前から、新興国として経済的な地位が向上しているような国を中心に、よりIDAへの貢献を求めるべきではないかということで、事務局も含め、あるいは他のドナーも含め働きかけましたところ、今回は中国あるいはサウジなどの新興国の貢献も増えた形になっておりまして、前回比で13億ドル増の323億ドルになっております。
 この中で日本の貢献についてですが、IDA17、18におきましては、通常のいわゆる出資貢献、私どもの場合ですと出資国債を提供しているわけですが、それに加えて融資貢献を行っております。融資貢献は、融資でございますので、グラントと比較して、どういうふうにコンセッショナリティというか、譲許性の資金としてカウントするかということについては一定のフォーミュラがあるわけです。通常、IDAが例えば調達できるところとの差を融資期間に応じて現在価値に割り戻して計算する、いわゆるグラントエレメントを計算して、それを貢献として認める。こういう枠組みになっていたわけでございます。一方で、今回IDA19におきましては、世界的にみても非常に低金利になってきていますので、そういう意味では融資貢献を行っても今までのようなコンセッショナリティがなかなか認められなくなってきている事情があること、それから、出資貢献を充実してほしいという事務局の要請もございましたので、従前の融資貢献については見送った形になっております。したがって、IDA17、18で、薄い緑で融資貢献としてカウントしていたものを今回は見送ったということでございます。  一方で、これは出資貢献に一本化するということですが、ここは我が国の経済的な地位とか、開発途上における取り組みにふさわしい貢献を考える必要があるということで、そういう意味では、出資国債に一本化した上で出資国債を増やした形になっております。こうした中で、全体のシェアについては、右側の図の折れ線に該当する部分ですけれども、過去を見てまいりますと、10%台をずっとここのところ維持しておりますので、今回につきましても、厳しい財政事情ではありますけれども、従前どおりの10%台を確保している。そういった今回の貢献ということになります。
 それから、注でございますけれども、今申し上げました今回の貢献3,525億円、これは全額出資国債です。これに加えまして、2005年のG8でIDAの重債務貧困国に対する債務救済費用をドナー間で負担することに決まっておりまして、その負担分が480億円あるということでございますので、IDAに提供する出資国債の総額は4,005億円になります。これは御案内のように法改正を必要とするものでございますので、今後そういった作業を進めていくことになるかと考えております。
 私のほうからは以上でございます。

 

○小川分科会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまから御報告いただいた内容に対して御質問や御意見をいただきたいと思います。御質問、御意見のある方は名札を立てていただければと思います。

 

○大野(泉)委員 JICA研究所の大野と申します。
 今回のG20トロイカの一角として、今年のG20大阪をまたつなげていくことの努力とか、IDA第19次増資、引き続き拡大する形で御貢献に感謝いたします。
 簡単なコメントと質問ですけれども、3つほど申し上げます。
 まず、G20につきましては、私自身は、小川代表もそうでございますけれども、シンクタンク20に参加させていただきまして、そういったプロセスで、G(政府プロセス)ではないのですけれども、その観点で非常に感じたことが1つあるのです。今度サウジアラビアでもシンクタンク20のインセプションがありますけれども、彼らは研究所などもお抱え外国人の方を、非常に優秀な方を世界中からリクルートして、ある意味では非常に効率的に、少なくともシンクタンク20の場合の準備の様子を見ると非常に洗練された形で進めているんですね。中心となる研究所なども、ヘッドとなるような方たちが実は外国人だったりするんです。エミレーツ航空などもよく見れば、ある意味ではいろいろな海外の方たちが添乗員として働いていらっしゃいます。Gの場合はわからないのですけれども、そういった意味では、いろいろな意味のアドバイザーとか、いろいろな形で欧米のインフルエンスはかなり強くなる可能性もあるかなと思っております。そういう中で、今まで日本としてもしっかり打ち込んできたこととか中身の発信について引き続きぜひ御尽力していただきたいと思います。シンクタンクのほうでも、そういったことも含めて、みんなで頑張っていきたいというふうには思っております。それはコメントです。
 それから、ジェンダーについては、比較表の中で、今回どちらかというと新しくというような取り上げ方のようにうかがえましたけれども、いろいろ議論を考えていくと、ジェンダーの話とかは、過去のG20とか他のエンゲージメントグループでも独立したタスクフォースとか、かなりしっかり取り上げてきたと思います。むしろサウジがFinancial Inclusion of Womenといった形で出してきたのは非常にいいことだと思いますので、ぜひ後押しいただければと思っております。
 3つ目はIDA増資についての御質問です。日本が重視している幾つかの質高インフラとか国際保健、防災、サステーナビリティ、債務持続性などが反映していけるように交渉をまとめたということですけれども、具体的にどういう形でこれが実際の実施に担保されるのか、その辺を教えていただければと思います。
 また、サウジとか中国が金額を増加したということですけれども、彼らの関心事は何なのでしょうかということも教えていただければ幸いです。

 

○岡村国際局長 大野(泉)先生、ありがとうございます。
 G20につきましては、先生御指摘のとおり、サウジは議長国としてやりたいアジェンダを割と根回しなく示してくるような傾向があり、その背景には、外国人アドバイザーの影があるのではないかと思われます。
 ただ、一方で、日本はトロイカとして議長団に引き続き入っていることと、それから、サウジ自身が、日本のG20は大変な成功だったので、その秘訣も伝授いただきながら――これはどちらかといえばサウジとしては非常に珍しい言い方なのだろうと思うんですけれども――ぜひ伝授いただいて指南してほしいということを前面に出してきています。そういう点からも、今日の次長からの説明にも具体的にありましたけれども、日本のプライオリティを引き継いで、それを継承、発展していくんだということもサウジのプライオリティ設定の一つの特徴になってきております。
 そういう中で、今申し上げたような環境を生かしながら日本色のあるアジェンダの推進、発展に努めていきたいと思っております。
 それから、IDAのほうは、これで交渉を終わりまして、各国で法律あるいは予算の手続を通して増資となりますが、本当に大事なのは、先生がおっしゃられたとおり、グラウンド、現場での実践、実施であります。そういった意味では、IDA19のreplenishmentの交渉のときに報告されているようなIDA18の実施状況、それを踏まえてIDA19をどう企画、計画していくかということがむしろ重要です。つまり、金額が幾らということでの妥結だけではございません。今日、法案の御説明ということで有泉審議官からも説明がありましたが、日本がG20という場も含めて推進してきたような政策目標、これはIDAの文脈で言えば、防災をメーンストリーム化すること、それから、トンカチのインフラだけではなくて、グローバルヘルスのようなソフトセクターに、特にIDAの視点、重点を移行していこうということで、IDA17、18、19と実施しています。こうした政策の実践に重点を置いて増資交渉にも臨んできておりますので、そういうものの継続、継承という点で捉えていただければと思います。
 それから、サウジ、中国については有泉審議官のほうから。

 

○有泉審議官今の局長の説明に若干補足させていただきますと、中国、サウジについてです。
 中国について言えば、世銀全体との関係をどう考えるかという中で、中国はフリーライドしているのではないかという批判は当然あるわけです。その中で、中国政府としては世銀との関係で、特に最貧国向けでもありますから、しっかり貢献したほうがよいだろうという判断をしたのではないかと推測しています。
 もう1点、サウジについて申し上げると、1つは、2020年のG20の議長国であるということですから、その中では、当然、開発のアジェンダというのも重要なものとして彼らとしては考えていくということだろうと思います。その中で、例えば中近東やアフリカといったところにIDAは支援を重点化していますので、サウジとしても一定の考慮が働いたのではないかと。これもまた推測になりますけれども、そういうように受け止めています。
 それから、最初の御質問のところで、どうやってIDAにおいて政策が実行されることを担保するのかということですが、ポリシーコミットメントの中で、例で申し上げますと、Quality Infrastructureについては、その実施を阻害する要因があるのかどうかを10カ国以上でちゃんと見ていきましょうとか、こういったような形で、IDAのポリシーコミットメントは、幾つの国でこういうものを調べていきましょうという形で特定されているケースが多いかと思います。こういったものを例えばIDA19の今後のミッドタームレビュー、中間的なアセスメントで、実際コミットされたものがどこまで進捗しているのかというところをしっかり見ていく。そういう枠組みになろうかと思います。
 あと、資料のところで若干説明しそびれたのですが、最後に、IDA19について、世銀のマルパス総裁から、日本のコントリビューションに感謝している、日本のリーダーシップに感謝しているというアナウンスメントが資料3の中で行われています。麻生大臣からも、これを歓迎し、今後ともIDAを積極的に支援していきたいといった談話も出ております。

 

○植田委員 いつも御丁寧な御説明、ありがとうございます。
大野(泉)所長の御質問にちょっとつけ加えさせて、今思っていたことなのですが、債務持続可能性のところです。ある意味では、IDAで超長期・低利でお金を出すことで、例えばの話ですけれども、ある特定の国・機関から来ている比較的高利なものを低利で超長期でリファイナンスするというのですか、それをすることによって債務は確かに持続可能にはなると思うんです。しかし、そういうことをやると、そもそもある特定の国とか機関が高利で貸し出すという先に、それを助長しかねない部分もあるのかなと思いました。なかなか難しいところですけれども、ある状況下では、確かに助けてあげたいという気はあるものの、これを助けてしまうとそもそも歯止めもかからなくなる可能性もあるような感じもしております。その辺は何か御意見とか御議論があったのかというところもひっくるめまして教えていただければと思います。

 

○岡村国際局長 ありがとうございます。
 IDAの資金の配分の基本はPerformance-based Allocationでありますので、それは、ある意味で債務救済には使わない。IDAの金は貴重なドナー国のtaxpayers' moneyが入っているということなので、それで成果を上げてください。そして、その成果をアセスした上で、これはワンショットで終わる話ではありませんので、次のラウンドにつなげていく。そういう意味で、開発効果がどう現れるかというのをチェックしながら使っていくということであろうかと思います。

 

○高山委員 ありがとうございます。
 ちょっとこの主題から外れるかもしれませんが、サウジについては、例のカショギ記者の殺害事件があって、先ごろ裁判があって死刑判決が出たという報道がありました。でも、必ずしも国際社会は納得しているわけではなくて、国連も非常に厳しい見方をしているし、皇太子の関与についても示唆をするような報告書もあったかと思います。こういうことが今回G20のリーダーシップとか議論に影響する懸念はあるのかどうかというところをちょっと教えていただければと思います。

 

○岡村国際局長 ありがとうございます。
 今、高山先生がおっしゃった話というのは潜在的にはあろうかと思います。ただ、潜在的にと申し上げましたのは、今私どもが直接関与しておりますファイナンス・トラックの議論の中では、おっしゃられたような人権でありますとか、価値の相剋に関するような話というものが直接議論の対象にはなっておらず、むしろファイナンスの部分での議論の継続ということでございますので、潜在的にと申し上げましたが、今のところ、そういった事柄が議論されたり、あるいはG20のリーダーシップへの影響というのはあらわれてはいないのが現状でございます。

 

○小川分科会長 ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、議題の「外為法改正」につきまして、三村副財務官から御報告をお願いしたいと思います。

 

○三村副財務官 ありがとうございます。副財務官、三村でございます。
 資料4をお開きいただきまして、「外為法改正について」でございます。
 初めにお断り申し上げますと、今回この資料4の中には、前回10月にも御説明をさせていただきました資料も含めまして、現在の私どもが外為法の改正について、いろいろなマーケットの関係の皆様方、あるいは各国の当局にも説明をする際の説明の基本パッケージを一通りつけさせていただいております。もう1つは、本日、中身には立ち入りませんけれども、資料5でQ&Aもつけさせていただいておりますが、こちらの資料4と5の全体で私どもは今いろいろな外為法の改正の中身を説明させていただいているということでございます。
 したがいまして、資料4の中で前回御説明させていただいたものも多々ございます。今回は、前回の10月に御説明申し上げて以降、さらに政省令・告示の策定に目がけまして、より免除制度の詳細を中心に、さらに私どもで明確化、精緻化してきている部分もございますので、そこを中心に御紹介させていただければというふうに思ってございます。
 改めて復習で資料の1ページ目でございますけれども、外為法の改正の狙いそのものは、前回御説明申し上げましたとおり変わってございません。投資の自由の大原則、この外為法上の大原則を引き続き維持をするということでございます。その中で、健全な投資の一層の促進は当然に図っていく。他方で、アメリカ、EU等々、世界的にも安全保障の観点から対内直接投資についてしっかり対応しようという流れ、これは法改正の流れがございます。私どもも、こういった流れの中で日本だけがいわば国際的なループホールになることがございませんように、一方で対応の強化はしようということでございまして、総体として健全な発展につながる投資はどんどん入っていただく。他方で、国の安全等の観点から問題になるものについてきちっと見られるようにする。こういうめり張りのある制度の全体像を目指すところは変わってございません。
 法案自体は、10月に御紹介申し上げました後に先般の臨時国会で御審議をいただきまして、11月22日に参議院でも可決をいただきまして成立をしているところでございます。衆参それぞれに全会一致での成立でございました。したがいまして、この法案の成立を受けまして、来年の法施行に向けまして政省令・告示の策定作業を現在鋭意進めている状況でございます。
 資料のほうでございますけれども、今申し上げた中で、柱は、これも前回御説明申し上げましたが、資料の3ページにございますように、法案の中身も申し上げましたとおりです。一方では、対内直接投資につきまして、上場会社の株式を外国投資家の方が買われる場合には10%の閾値を1%に引き下げるということでございます。他方で、健全な投資の促進が必要でございますので、それと同時に、従来はございませんでしたけれども、事前届出免除の制度を導入させていただく。ここが大きなポイントでございます。
 それから、10%→1%の閾値の引き下げに加えまして、従来は、定款の変更による事業目的の変更などを除きますと、株式取得後の行為は届出の対象になっていなかったわけでございますけれども、今般の改正によりまして、役員の就任とか、重要事業の譲渡・廃止についての同意行為、こういったものにつきましても事前届出の対象に加えさせていただいて、言ってみますと、株式の取得後も第2弾、第3弾の関所が設けられるということでございます。逆に、そういったこともいたしますので、株式の取得時には事前届け出免除の制度もつくって、冒頭申し上げたようなめり張りのある制度をつくっていく。そういう全体のたてつけでございます。
 現在、政省令・告示の策定作業の中では、今申し上げましたことの中で事前届出の免除の制度、ここの詳細が特にマーケット関係者の皆様方との間でもいろいろと御照会をいただき、また議論をさせていただいておるところでございます。ここの部分につきましては、前回10月に御紹介させていただいた以降、いろいろと我々のほうでも明確化するに至ったところがございますので、以後この部分につきまして御紹介を申し上げたいと存じます。
 資料の5ページをごらんいただければと存じます。これが現時点で我々が想定しております事前届出免除制度の具体設計でございます。
 大前提といたしまして、当然この免除制度の詳細は政省令・告示の中できちっと書きまして、外部の方から見ても透明性の高い形で制度の詳細を明らかにしていくということでございます。その上で2ポツ以降がその詳細でございます。
 まず、免除制度につきまして、これは前回も少しは申し上げたのでございますけれども、免除の対象外となる投資家の方も想定しております。前回も申し上げましたけれども、1つは、過去に外為法違反のあった方は、そういう履歴もありますので免除の対象外になりますと申し上げました。ただ、ここも今回少し明確化しておりますが、外為法違反といいましても、純粋に何か手続的にエラーがあって失念をしたような軽微なものについてまでおよそ免除を受けられないというふうに厳しくする必要はございませんので、これは、過去に外為法の違反を受けた方で、かつ、それによって外為法上処分を受けた方につきまして免除の対象外にするということで明確化したいと考えているところでございます。
 もう1点、こちらは大きなポイントの1つかと存じますけれども、国有企業等につきまして、通常、純粋な経済目的で投資をするというふうには想定できませんので、免除の対象外にしますということでした。この部分につきまして、いろいろな関係者の方との議論の中で、そうは申せど、いわゆるソブリン・ウエルス・ファンドとか公的年金基金とか、こういったものも広い意味では国有企業等に入るわけでございますけれども、こういった方々で純粋に日本に対して健全な経済目的の投資をしているのはごく普通にたくさんあるではないか。これが全部免除も受けられないということですと、逆に健全な投資の育成という観点でどうなんだという御指摘もございました。これは全くもってそのとおりでもございます。実は、我々もともとそこはイメージしておったところではあるのですが、その後、明確化をしてございます。注1、小さい字で恐縮でございますけれども、国有企業等に概念的に該当するからといってすべからく免除が受けられないようなことには我々もしない予定でございます。ソブリン・ウエルス・ファンドとか年金基金であっても、その投資目的とかトラックレコードあるいはガバナンスの構造等々を拝見しまして、国の安全等を損なうような投資をする方ではないと認められるケースの場合には当然免除を利用いただけるように想定をしております。これも既に対外的にも明確化を今させていただいているところでございます。
 今申し上げましたのは投資家の類型からの切り口でございますが、もう1つは指定業種、業種のほうの切り口でございます。これも10月にも申し上げましたけれども、いわゆる事前届出の対象に現在なっております業種の中で、特に国の安全等を損なうおそれの大きい非常に機微な業種、武器の製造とか原子力など、ここに列記しておるようなものでございます。こういった機微な業種に投資をする場合には、やはり一つ一つ見る必要がありますので、免除の対象外と申し上げておったわけでございます。ここにつきましても、その後、マーケット関係者の皆様方との議論も経まして、注2でございますけれども、1つ明確化をさせていただいております。具体的に申し上げますと、まさしく外国の証券会社、銀行等々、いわゆる金融機関の皆様方は、文字どおり薄く広く、インデックス投資を行うケースとか、あるいは純粋に証券会社として常に流動性を確保し、在庫を確保する目的とか、そういった金融機関の通常の業務の一環として、こういった機微な業種の株式を場合によって新しい閾値であります1%以上お買い上げになるケースはごく普通に想定されるわけでございます。これにつきましては、逆に言いますと、我々の今回の法目的でありますこういった機微な技術ですとか、それにかかわる情報の流出等々を防ぐ観点からは、別に厳しく届け出をいただいて審査をする必要もございませんから、こういった金融機関に該当するような皆様方につきましては、いわゆる機微業種につきましても免除を受けていただける。事前届出なしでやっていただける形で明確化をさせていただいたところでございます。これによりまして、日本の外国投資家の皆様方から日本の株式市場への投資につきまして妙な影響が出ないようにしたいということでございます。
 それから、3ポツのところでございます。これは、今申し上げました免除の制度を受けるに当たって投資家が守っていただくべき基準がこの3つでございます。10月の時点で、いわゆる経営に影響を与えないような投資であればオーケーですという形で、ややざっくりとした説明を申し上げましたけれども、ここの部分は、コーポレートガバナンス等々の観点から、どこまでができて、どこからはできないのかというところがマーケットの関心も大変高いところでございますので、ここをさらに明確化させていただいたところでございます。基本的には①から③に列挙しておりますこの3つの条件だけは守ってくださいということでございます。逆に言いますと、①から③以外は、特段何の制限もなく免除を受けていただけるということでございます。①から③はここにあるとおりでして、1点目は、自らあるいはその密接関係者の方が当該対象先の企業の役員に就任しないこと。2点目は、その投資先の企業が持っております重要事業の譲渡とか廃止の提案をしないこと。3点目は、投資先の企業の非公開の機微な技術情報にアクセスしないこと。この3点でございます。
 重要なところは、注3にも書いてございますけれども、2つと思っております。1つは、先ほども申し上げましたが、この①から③以外の株主としての行為は全くもって自由でございます。我々も時々マーケットの関係者の皆様方から、例えば株主として経営陣と対話をするとか、何かレターを送ってもっとこういうふうにしたらという事業戦略の提案をするとか、そういう対話は株主として普通やるのだけれども、そういったこともできなくなるのかといったお問い合わせもよくいただくことがあったのでございますが、まさにそういったことを行うことにつきましては別に何の制約もございません。特に株主の権利という意味では①と②がよく問題になるところだと思いますが、これ以外につきましては、株主としての権利の制限は何もありませんし、加える予定もございませんということを明確に今申し上げておるところでございます。
 さらに申し上げますと、①と②をやらないことが免除を受ける条件ではあるのですけれども、仮にその免除をお受けになった後、何か事情の変更があって、そうはいっても、最初はそういうことをやるつもりはなかったけれども、後日やる必要が出てくるかもしれないじゃないかというお問い合わせもいただくわけでございます。こちらも、基本的には①と②は今回の改正で届出対象の行為になりますので、仮に免除をお受けになった方も、その後、事情があって、やはり役員に就任したいとか、事業譲渡の話の提案をしたい場合には、事前届出を出していただければ当然やっていただけるということでございます。こちらは注3にも書かせていただいておりますけれども、そのような点を今マーケットの皆様方には明確化させていただいているところでございます。
 このような形で免除の詳細を今我々としても御説明申し上げております。
 6ページ、先ほど申し上げました金融機関につきましては機微業種についても免除を受けていただけます。我々これを便宜的に包括免除と今呼んでおりますけれども、この包括免除を受ける金融機関の皆様方についてはこういうことです。先ほど申し上げたように、あらゆる銘柄、機微な銘柄も含めまして免除を受けていただける。また、事後報告の閾値も、金融機関の皆様方の場合には、先ほど申し上げたように、あまり細かく彼らの通常の業務としての投資行動を拝見する必要もございませんので、これは現行法と同じ10%のままにさせていただく。したがいまして、金融機関につきましては、何か現行法に比べて特段、届出負担、報告負担が厳しくなることはない。論理的には10%以上でも届出の免除が受けられますので、むしろ規制緩和になるぐらいであるというのが金融機関についての対応でございます。
 それから、7ページ以降は前回も御説明した部分ですので少し飛ばさせていただきまして、10ページでございます。今後対応する主な事項でございますけれども、ここの1番から5番が、足元マーケットの皆様方とよく我々も毎日のようにいろいろなお話をさせていただいている中でいただく、残る大きな質問です。そこの部分について今こういう方向で政省令・告示の起案作業、大詰めの作業を進めているということでございますので、こちらについて御紹介をさせていただきます。
 1つ目は、事前届出の免除が利用可能な方というのは、誰がどこまでの免除を受けられるのかを明確化してほしいと。当たり前でございますけれども、先ほどの御説明を踏まえ、なお時々御質問を頂戴するところでございます。まず初めに、右側にございますけれども、外国の金融機関は包括免除が受けられると申し上げましたが、外国金融機関とは誰かというところです。ここにありますように、日本で、あるいは外国で何らかの業法上に従いまして金融機関として規制監督を受けておられる方であれば、基本的にはこれに該当すると考えております。いわゆる高頻度取引のようなものも、当然のことながら、これにつきまして一本一本届出、報告を出していただくことは物理的にも不可能でございます。また、高頻度取引の場合には恐らく通常は議決権行使にすら至らないのが普通だと思いますので、こういった方々についても事前届出を求めることは想定していないということでございます。
 それから、ソブリン・ウエルス・ファンドや年金基金であっても、先ほど申し上げたように、場合によって免除の対象にさせていただきますけれども、この部分についてどういう判断基準なのかというところであります。先ほどもちょっと申し上げましたけれども、設立目的とか、過去の日本での投資実績とか、ガバナンスの構造、特に投資決定自体を関係する外国政府からちゃんと独立して行っているかというところが当たり前のことながら重要なポイントになるわけですが、こういったところで個別に認定をしたいと考えているところでございます。
 2点目は、今回の法改正に伴いまして、事前届出の対象業種が、一般の投資家も含めて広く免除を受けられる業種と、金融機関以外の一般の投資家の方は免除が受けられませんという機微な業種とに分かれていくことになるわけでございます。このあたり、どの会社がどの分類に属するのかちゃんとはっきりさせてほしいということをよく意見として頂戴いたしました。これを外国投資家が一つ一つ投資に先立って判断するとなると非常に判断に迷ったり時間もかかったりしますので、そこをよりわかりやすくしてほしいということで、端的に言えばリスト化してくれとお話を承っております。実は国会でもこのあたりはそういった御指摘もございましたので、当局として、法律の施行に当たりましてリスト化いたしますと表明をさせていただいているところでございます。
 そのリスト化に当たってどういう考え方でやるのかというところです。これも右側にあるようなことでございまして、一般の投資家の方が免除を受けられない機微な業種とか銘柄は、国の安全等を損なうおそれに特に直結する、文字どおり機微な業種に当然絞り込んでいくということでございます。いずれにいたしましても、このあたりも法律の施行までにリストをしっかりと明らかにすると表明を申し上げているところでございます。
 その次は、事前届出の際にもできるだけ速く審査をしてほしい。あとは、審査に当たって当局がどういう考え方でいい悪いを言うのか、その審査基準もはっきりしてくれというお話も、当然のことながら透明性の観点から承っております。これは全くおっしゃるとおりでございますので、基本的には、我々は国の安全等にかかわるような技術情報の流出を避ける、重要事業の喪失を防ぐのが法目的でございますので、それと関係ないような、単なる産業政策のような観点で何か審査をすることはございません。その審査基準は、法施行に当たりまして当然に明確化する、また公表するということを申し上げております。これは前回も申し上げたかもしれませんが、特にその上で問題のない投資ということが明らかであれば、非常に速く、具体的には5営業日以内に審査を完了するということは申し上げているところでございます。
 それから、事前届出とか事後報告の負担の問題でございます。よく言われますのは、1%に到達した後、毎回買い上がるごとに、1.1が1.2になり、1.3になるたびに届出をしないといけないのか。事後報告をしないといけないのか。場合によっては1%のちょうど前後で、1をちょっと超えて、また売って、また下がって、また超えてというようなときに、瞬間風速的に1を超えたら毎回届出をするのか。こういうお話を承るわけでございます。これも全くおっしゃるとおりでございますし、法目的に照らしまして、毎回毎回取引の都度に届出や報告をいただく必要は確かにございませんので、ここも右側ですが、今大きく2つの方向性を考えております。
 1つは、一定期間の取引分についてまとめて届出をしていただく。例えば今後半年間に何%まで買うかもしれませんが、いいですねという届出をしていただいて、オーケーが出れば、その期間はそのパーセンテージまでは、別に何度に分けて取引をされようが、あるいは若干の売り買いのでこぼこがあろうが、特段、毎回毎回の届け出は要らない。例えばこういった形を考えております。
 あとは、1%を超えた後に毎回毎回事後報告などを出していただく必要もないと思っております。これは、会社法で申し上げますと、前回申し上げたように、1%の次の会社法上の新しい権利が生じる閾値で例えば3%がございますが、そういった節目節目でまた改めて事後報告を出していただくようなことで、取引の都度に事後報告を出していただくことは避けようという方向で今検討し、政省令・告示の準備を進めているところでございます。
 最後に、各種用語の定義でございます。もろもろのいろいろな概念につきまして、それぞれの概念をはっきりと定義付けしてくれということで、これも当然に政省令・告示に向けて行わせていただくつもりでいるところでございます。
 最後の11ページは、その上で、本件につきまして、コーポレートガバナンスとかスチュワードシップコードとか、ここ数年の日本のマーケットにおける取り組みに逆行しないよね、あるいは逆行することがないようにしてほしいというお話をよく承るわけでございます。参議院財政金融委員会での審議の中でもそういった御指摘を頂戴いたしましたときに、麻生大臣から、そのようなことにはなりませんと。コーポレートガバナンス改革路線の転換でもないし、アクティビストと言われる方の排除でもない。あるいは、スチュワードシップコードを踏まえて建設的な対話、コーポレートガバナンスは引き続き重要という認識に変わりはないと、国会でも明示的に御答弁申し上げていることの御紹介でございます。
 事務局の説明の資料は以上でございます。
 すみません。もう少しだけお時間を頂戴いたしまして、外為法改正の関係で、本日御欠席の委員の先生方、お三方から意見を頂戴して、意見書という形で書面の提示をしていただいております。こちらも端末の中に入れてございますが、ごく簡単にポイントだけ私のほうから御紹介申し上げたいと思います。
 まず初めに、神作先生から御意見を頂戴しております。基本的に1%に閾値を下げることにつきましては、会社法上の議決、議題提案権の節目というところで理解するとされながらも、そうはいっても1%は、低いといえば低いので、それによってマーケットに不測の影響を与えてはいけないという問題意識を示されました上で、大きく3点、御提言あるいは御意見をいただいております。
 1つは、ソブリン・ウエルス・ファンドのようなものにつきまして、物によっては免除の対象にすると今私は申し上げましたけれども、いわゆる一般投資家並みの免除だけではなくて、金融機関と同様の機微な業種まで含めた包括的な免除をソブリン・ウエルス・ファンドによっては認めるべきではないかという御意見です。
 2点目のポイントは、事前届出の対象の業種あるいは銘柄、わけても一般投資家にとっては免除の対象になりませんところの機微な業種とか銘柄は、できるだけ指定を限定的にするべきであるという御意見。
 3点目は、各金融機関におきまして、あるいはその他の投資家の皆様方におきまして、新しい法律のルールの内容の理解とか、場合によってはシステム対応等に時間を要する可能性もあるので、何か経過的な措置などを考えてはいかがか。
 このような3点の御意見を神作先生からは頂戴しております。
 それから、鈴木委員からも御意見を頂戴しております。大きく5点かと思っております。
 1点目は、神作委員とも重なりますけれども、ソブリン・ウエルス・ファンドについて包括的な免除も認めることを考えてはどうか。
 それから、2点目は、その他でも純粋な金融機関と別に、例えばハイ・フリークエンシー・トレーディングといった方々でも包括免除を認めるべき投資家がいらっしゃるのではないか。
 3点目は、いわゆる免除を一般投資家が受けられない機微な業種の指定につきまして、できるだけ限定的にするべきであるという御意見。
 4点目は、経過措置を考えてはどうかという御意見。
 5点目は、例えば届出なり報告の電子化といったことも含めまして、できるだけ届出や報告事務の簡素化、あるいは外国投資家にとって行いやすい届出、報告の実務を考えてはどうか。
 こういった5点の御意見を頂戴しております。
 最後に、原田委員から御意見を頂戴しております。
 原田委員からは、外国投資家向けの法律、ルールでありますので、いろいろな英語での資料の準備も含めまして、外国向けの説明といいますか、広報、アウトリーチをしっかりとやるべきだという御意見をいただきました上で、原田委員におかれましても、何らかの経過措置のようなものを考えてはどうか。システム対応等々もこれありということで、御意見を頂戴しておるところでございます。
 そういう意味で、ソブリン・ウエルス・ファンドへの対応等々につきまして、あるいは業種のリスト化に当たっての考え方は、先ほども資料の10ページ等々で少し申し上げましたけれども、この経過措置についても、それぞれ3委員から今御紹介しましたような意見を頂戴しております。システム開発等々、確かに必要がある場合もあるかもしれませんので、このあたりの何らかの経過的な対応も含めまして、我々としても今引き続き政省令・告示の策定作業の中で検討している状況でございます。
 長くなって恐縮ですが、以上でございます。

 

○小川分科会長どうもありがとうございました。
 それでは、ただいま御報告いただきました内容に対して、御質問、御意見がある方は名札を立てて御発言いただきたいと思います。

 

○伊藤(隆)委員 御説明、ありがとうございました。
 ニューヨークの投資家の間でも非常に話題になっているので、だいぶ明確化されてきたことはよろしいかと思いますが、そもそも論に戻って、国の安全保障を守るというのは非常に重要なことですし、特に最近のようなデジタル化が起きているときには安全保障の守り方も随分違ってきていると思うんですね。あるいは、いろいろな意図を持って行動する国が増えていることもあるので、国の安全保障を守る。かなり総合的に考える必要があって、そういう観点からいって、この外為法改正で十分なのか。これは財務省で考える話ではなく、もうちょっと官邸で考えるべきことかもしれません。
 もう1つ、今説明された、これで副作用が起きないのか。ここまでやる必要があるのか。外為法改正が十分なのか。外為法改正が必要なのかということから考えてみる必要があると思います。
 十分なのかのほうは、外為法のここで書いてあることで防げることはかなり限定的でありまして、日本人でも悪い人がいるということであれば、その日本人がいろいろなことができるわけなので、外国人が日本企業を買って、そこで何か経営を行って外国に技術なりが流出する。我々が考えている、恐れている安全保障の中から言うと非常に一握りだと思うんですね。そういう観点から言うと、ぎりぎり細かく詰めていってもあまり意味がなくて、もうちょっと大きな、例えばCFIUSのような、包括的に事後的にでも売らせてしまうみたいなことを日本ができるかという問題はありますけれども、そういった方法のほうがむしろ安全保障にとっては重要なのかもしれないと考えると、これをもともと提案されたのは経産省だと聞いていますが、全省庁が集まって安全保障法制の中でむしろやるべきことで、官邸マターなのではないかというふうに感じています。これで安全になったというのは決してないんだということを考えた上で、次に行っていただきたいと思います。それが十分なのかというマターは、たぶん十分ではない。
 次に、必要なのかということで、いろいろ書いてありますけれども、本当に1%を超えて審査する必要があるのかということで、免除機関を並べているわけです。そこで随分問題のない投資家のリストがどんどん広がってきているので、ほとんどの金融機関は安心するだろう。たぶんそのとおりだと思うんですね。残りはアクティビストと言われるPEの人たちで、そこを規制する必要があるかどうかということはもう少し考えていただきたい。ほとんどのアクティビストは金もうけに入っているわけですから、所有しても誰かに転売して売り抜けることで、そこの経営を何かいじって重要な部分を売り飛ばす。技術を売り飛ばすことはあまり考えられないので、どういうアクティビストが審査対象になるのか、ならないのかというのはもう少し明確化すると安心するかもしれない。随分きれいにして免除対象を広げていただいているのだけれども、もう一段、今灰色になっているところを明確化していただきたいということだと思います。投資家にとって予見性というのは非常に重要なので、個別の企業のリストをつくっていただくのも重要だと思うんですけれども、投資するほう、されるほう、それぞれにマトリックスができて、できるだけ予見性のある形を完成させていただきたい。
 会社の名前、リストが出てきたところで心配なのは、戦略的に行動する企業が出てくるのではないか。安全保障にとって重要な企業ですと言われたい企業は、半導体部門、武器製造部門をちょっと買えば、そういう部門をつけてしまうと安全だ、買われないという、誤ったことを考えてしまうところが出てくる。あるいは、原子力を持っている会社が、原子力さえ切り離せば、うちの会社は自由に取引してもらえる。逆に、そういうセンシティブなところを切り離そうとする。法律の意図と逆のことが起きる。理論的にあるんじゃないかと思うんですね。だから、これは全然コンテクストが違いますけれども、CFIUSの議論のときに、CFIUSに指定されたいのか指定されたくないのかというのは金融機関によって違っていて、それとかなりパラレルな話がここで起きている。理論的に起きる可能性があると思っています。
 次は細かい話ですけれども、最後にします。外国金融機関はオーケーというのですけれども、外国金融機関の中でも国の持っている比率が30%を超えていたりする。10ページですけれども、いわゆる国有銀行と言われるところは外国金融機関の白なのか黒なのか灰色なのか。ガバナンス構造を見てというふうに注釈がついていますけれども、では、ガバナンス構造を見ても本当にそれが判断できるのだろうか。国有というところをどこまで考えるか。あるいは、国有でなくても、ひょっとしたら、ある国の銀行は国の意思を尊重して行動するのかもしれないとすると、こんな線引きでいいのだろうかと。一番最初に戻りますけれども、これで十分なのかというときに危惧が残ると思います。

 

○小川分科会長どうもありがとうございます。何人かの方が名札を上げていただいているので、まとめて御質問を受けて、まとめて答えていただきたいと思います。

 

○植田委員 また非常に詳細な御説明、ありがとうございます。
 私は、前回と同じく、やはりコーポレートガバナンスの関係で懸念しているところがあるのです。もちろん、10月に比べますと非常に明確になっていまして、ここは非常にいいことではないかと思います。
 その上でまだ懸念があるところを申し上げますと、スライドの5ページですか。事前免除制度の具体設計案というところですが、この中で2ポツを除く。つまり、「次に該当する投資家とか、特に国の安全等を損なうおそれが大きいもの以外」では、事前届出免除を使えるということなのでございますが、そうはいっても、3ポツのところは免除しないという案だということですね。この3ポツのところは、コーポレートガバナンスを考えますと、株主側が役員に就任するとか、関係者が役員に就任する、もしくは、株主側が事業の譲渡・廃止も含めて事業再編を提案することは、当然のことながらコーポレートガバナンスの主要な項目といいますか、主要な中身でございます。なので、ここの2つの点も、本来であれば、上のような、2ポツに書いてあるところでない投資家、もしくは本当に必要な国の安全を損なうおそれの大きいもの、武器製造、原子力、電力、通信など以外に関しては、ここの要請も免除してあげるべきではないかという気が非常にいたします。
 それから、3ポツの③の非公開の技術情報にアクセスしないことは、どちらかというと、伊藤(隆)先生のおっしゃったことに非常に近いのですが、産業スパイの話とかパテントの問題とかで、外為法なのかなという気が非常にいたします。これはちょっと違う話のような気がします。
 もう1つ、まさにまた伊藤(隆)先生のおっしゃったことと似ているのですが、アメリカで基本的には成り立ってきた理論ですので、アメリカ的な理論と言えばアメリカ的な理論ですが、コーポレートガバナンスの本来の趣旨は、株主の言うことを聞かないような経営者がいるときに、どうやって経営者に株主側から規律をかけるかという議論でございます。これは当然、そういう経営者に対して、株をもっと取ることでもっと圧力をかけるとか、そういうことができるようにすべきだと。場合によってはTOBのような乗っ取りを認める形で経営者の規律を高めるという議論が中心ですので、伊藤(隆)先生もおっしゃったように悪用の懸念がここは出てまいります。
 もちろん、原子力とか電力、通信をどの程度までひっくるめるか私にはわからないのですけれども、例えば福島の原発関連の廃棄物を処理するような業者として、ほんのわずかだけ下請で1,000万円ぐらい入ることによって原子力関連だと言って乗っ取りから逃れるとか。通信でも電力でも、ほんの小さな太陽光か何かの電力会社をちょっとつくることによって、うちは電力会社だと言うことによって乗っ取りを防ぐ。悪用する経営者がいるとすればですけれども。そういうような形で、コーポレートガバナンスの原則から見ると悪用される可能性が非常に高いのかなと思います。
 だとすると、もちろんどこまでできるかわかりませんけれども、ある程度マーケットシェアを考えるようなところ。さっき言ったように、廃棄物の処理業者であれば、マーケットシェアがほんの1%程度のところまで守るのか。電力にしても、ほんの1,000戸ぐらいに提供しているような電力会社をつくったところまでも守るのか。そういうような話も本来はすべきではないかと思います。

 

○神保委員  いろいろと御説明をありがとうございます。
 私のほうでは、いろいろクライアントであるとか、今回、外為法の改正を発表された後で、こういう懸念があるというふうに個別の御相談等もいただいていることもあって、それらを踏まえて、ぜひ御検討いただきたいと思っている事項について少し述べさせていただきたいと思っています。
 まず、今回の改正の中で、結構残っている、実際に免除は受けられずにいろいろな審査に係るファンドとか、そういった方々が気になっているところは、役員派遣について、どういった人を派遣することになったときに事前届出が必要になるのかというところはとても気にされています。ですので、そこの定義についてはできるだけ早目に公表していただく。あとは、わかりやすい内容で公表していただいて、それがまた適切なのかどうか。ファンドの構造はそれぞれの会社によっても違いますので、適切なのかというのは広く意見を求めていただきたいと思っています。
 2点目の機微業種のリストですけれども、これは今、両先生が御指摘されていたとおり、上場会社のほうもとても気にされていて、うちは何に分類されるんだろうか。うちには実は子会社にこういうところがあるんだけれども、それは本当に拾ってもらえるのだろうかというところなどを気にされています。他方、今我々が行っている実務では、TOBとかでちゃんと対話をして届け出するときはかなり詳細に会社に業種の調査をしてもらっているのですけれども、今後1%以上で必要になると社内の調査をするのはとても大変だと思うので、そういった上場会社の協力義務みたいなところはできるだけ負担を軽減するような形での制度を考えていただきたいと思っています。
 3点目は、投資家、特に上場に関する改正が多いのでそこにフォーカスが当たっているのですけれども、非上場会社の投資における運用に変なところでひずみが起きてしまわないかと気にしております。特に事業目的の変更等、従前3分の1以上の株主が行うときだけ必要だったものが、現状の改正法では非上場会社だと1%のときに必要となっているんですけれども、おそらく意図しない規制強化になっていると思います。例えば非上場の会社でグループ内の会社の中のことであれば、毎年、自分が50%持っている会社に自分が役員を派遣するのは当然の行為で、しかも人事はかなりスピーディーにやる必要がございます。いろいろな事情があって、トラブル、不祥事があって、すぐ替えなければいけないとか、5日間も待っていられないことも実際の経済活動にはあるので、100%の例えばグループ内であれば、そういったものは事後の報告で足りるとか、そういう設計を御検討いただきたいと思っております。
 あとは、特定上場会社等の定義です。これは今、上場会社であって、外資、外国の投資家が多い会社というのは、形式上、外国投資家に一旦、過半数で当たったとしても、一つの特定の投資家が10%以上持っているときだけが上場会社は事前届出が必要な外国投資家に該当するとなっているのですけれども、今後1%に引き下げになる。今までは10%以上のときに事前届出が必要だということが一つの見えない壁になっていて、投資家はそれを超えないように投資をしていたという活動の実態があります。それが今後なくなっていくので、上場会社で1の投資家が10%超を持つところが今後たくさん出てくると思うんですね。ただ、日本で上場している会社、特に10%を超える会社というのは、マザーズだとか、二部ですとか、それほどのリソースがない、マーケットキャップの比較的小さ目の会社が10%を超えて持たれることがたくさん起きてくる。そういった会社のそれぞれの子会社運営といったものに形式的に届け出が必要になってしまうことも、やはり意図しない強化になってしまうのではないかと思っています。今10%ですけれども、実際に10%にはあまり意味がないと思っているというのが今年5月ぐらいからと。10%には実は意味がないのではないかというところからスタートして1%に引き下げられているので、会社のほうで普通考えられるのは、持ち分適用会社になる20%からが本当の支配されているということなのではないか。そういったことも考慮して、特定上場会社等の定義についても10%をもう少し引き上げるとかいったことを御検討いただきたいと思います。
 最後ですけれども、業種について、機微業種をどうするか、免除をどうするかというところが今回はメインになると思っているのです。実際に5営業日に短縮されるといっても、届出があるのは大変に事務的な手続が多くて煩雑になっています。ベンチャー投資等ではスケジューリングで影響が出ているのですけれども、やはり事前届出業種にソフトウエアが全部入っているのがあまりに広過ぎていて、恐らく当局でもこれは別に提出してくれなくてもいいと思う簡単なアプリといったものを外すとか、告示の中で、事前届出業種について免除を導入するとしても、もとのリストのほうも広過ぎにならないようにということは御検討いただきたいと思っております。
 長くなりました。ありがとうございます。

○根本委員  私の知り合いの海外投資家とかエコノミストの間では、この改正以降コンフュージョンが広がっていまして、懸念もちょっとあるのかなと思います。御承知か知らないですけれども、先月、日本の会社が欧州のエネルギー会社、電力事業会社エネコを買収されました。買収したのは日本の商社と電力会社だったんです。報道によると、国内の会社もバイヤーとしてあったのだけれども、日本を選んでいる。それだけ海外の知見だの資金を入れて国内を活性化して、ひいては消費者のためになるようにしようという背景だったと伺っています。そういう国には本当に知見なり資金が集まってくる。ぜひ日本はそうではない国にならないであってほしいと思います。
 10ページですか、今の対応のところで3点ほどあります。
 1つは、行為を列挙されているところは非常に明確化されてよろしいと思いまして、ほかの先生もおっしゃった予見可能性というのは非常に重要なので、ぜひそれを「等」とか拡大をされないでいただきたいと思います。
 一方で、明確化すると、先ほどほかの先生がおっしゃったように、それが何かネガティブな行為であるかのようにも印象として持たれる。事業を譲渡したら"どうですかというようなエンゲージメント行為はあり得ることなので、印象論としてはその配慮が必要かなと思いました。
 あと、ほかの先生方がおっしゃっている指定業種のところも、それを何か逆手にとって所有を防ぐような会社がないとも限らないので、その程度の重要性とか、あるいはそのための子会社を取得したとかいうことは排除されるような方向が望ましいかなと思います。
 閾値については、海外の事例と比べて非常に低いことがあり、政省令でもここは変わり得るのではないかと思うので、取引コストの面も考えて、もう一回御検討いただければと思います。

 

○伊藤(恵)委員 御説明、ありがとうございました。
 特に事前免除制度についてかなり詳細に情報が出てきまして、わかりやすくはなったと思います。
 スライド5ページの免除制度の設計のところで少し御質問です。重要事業の譲渡・廃止を株主総会に自ら提案しないというところですが、免除を受けている企業であっても、その行為の前に届出をすれば可能と書いてあるんです。それで届出をして重要事業を譲渡・廃止したり、例えば外国の投資家が役員に就任したりということが起きた場合、その後、その企業はもう免除対象から外れて、その都度、事後にも届出をしなければいけないことになってしまうのか。ケース・バイ・ケースなのかもしれないですけれども、その後どうなることを想定されているのかというのが質問です。
 もしその後に結構規制対象になっていろいろ面倒な手続をしなければいけないことになってしまうとなると、本来コーポレートガバナンスの面から望ましいであろう必要な事業の譲渡や廃止、または適切な役員の就任というところを妨げてしまうようなことにならないのかとちょっと懸念します。
 あと、業種リストですとか審査基準を明確化して明記すること自体、それは非常に意味あることとは思いますけれども、技術の進歩によって産業の分類も非常に難しい状況に近年なっていまして、企業を業種に紐づけすることも実はかなり難しいと思います。こういった中で、いろいろな業種のリストまたは基準を書いていくこと自体が難しくなったり、どんどんリストが増えるとなると、企業側も免除を受けるためのいろいろな要件をいっぱい読まないといけないことになってしまう。さらに、幾ら細かく書いたとしてもたぶん完全にカバーすることは無理という話になってきて、いろいろ難しい点があると思います。
 以前から私は事前の免除と外為法の改正と事後の介入をセットで考えるべきではないかと言っていまして、先ほどの国内の安全にかかわる技術情報というのもなかなか難しい面があります。やはり事後どういうふうに介入するかという話も議論をしていただきたいということを以前から言っていまして、今日も、事後をどのように審査して、どう介入するかというところを考えていただきたいと申し上げたいと思います。

 

○清水委員 先ほど出ていました10ページの表の中で、今後すべきところですが、ソブリン・ウエルス・ファンドとか年金基金を個々に認定というふうに書いてあります。これは、その国ごとによって、もしかすると認定されないソブリン・ウエルス・ファンドが出てきてしまうことになると、外交問題に発展しないのかなというのが懸念されます。
 もう1つは銘柄リストの公表です。ちょっと違うかもしれませんが、GPIFのときに、どんな銘柄を持っているのか公表したのですけれども、その際はすごく注意しました。マーケットにインパクトを与えてはいけないということで、3回ぐらいにわたりまして、現時点ではなくて、過去の時点のをまとめて公表して、だんだん近づいていって、公表するたびに、その公表した後で株式市場で影響が出ていなかったかどうか点検して、最終的に現在持っている株式銘柄の公表をいたしました。
 今回この銘柄リストを法令の施行までに公表と簡単に書いてありますが、恐らく株式市場ではかなりのニュースになり、マスコミニュースなどでどのような取り上げ方をされるかわからない。せっかく株式市場が堅調に戻ってきたところで水を差すようなことになったり、また乱高下をさせるようなことになってはいけないと思いますので、この銘柄リストの公表についてはぜひいろいろな意見を聞いた上で慎重に行うようにしていただければと思います。

 

○亀坂委員 前回のこの外為分科会では自由に発言できなかったので、あえてです。経産省の安全保障に関する委員会の報告書が公表されたのが前回の分科会が終わってからなので、何か思うようなことが発言できないまま前回の分科会が終了してしまったのがちょっと気になったので、一言だけですけれども。
 いまだに、今進めていただいている外為法の改正と、詰めていただいている政省令・告示で規定していただいていることについては、方向性として私は全く間違っていなくて正しいものだと思っています。私が2つ、外為分科会の委員と経産省の安全保障関連の小委員会の委員を兼ねていたので、その後もものすごくたくさん投資家の方々から直接お問い合わせをいただきました。わかる範囲内で御説明したのですけれども、もちろん問題はあるし、クリアしなくてはいけない問題は残っているわけですけれども、大きな方向性としては間違っていなくて、国際情勢を見る限り、海外の動向を見る限り、これはもうどうしても進めなければいけないものだと思っております。国会を通過したから今さらながらの発言ですけれども、欧米諸国の最近の動向からして外為法の改正は必要であったと。
 もちろん経産省内でも日本版CFIUSをつくろうという議論もされていたのですけれども、間に合わないかもしれないし、十分に体制を整えるにはそれなりの人員も必要なわけです。だから、そういった日本の現状、官僚の方々の状況、スタッフをどれぐらい確保できそうかとか、今の日本の会社法の状況からしてベストな選択肢をしていただいたと今でも思っております。
 経済学でもよく、ファーストベストはこれ。ところが、こういう規制があるからこれがセカンドベスト。税金があるからこうとか、こういう条件を課すとこれがセカンドベストとなるのでしょうけれども、いろいろな議論に参加させていただいて、要するに、皆様にはセカンドベストを既にとっていただいていて、あとは政省令とか告示とかで細部を詰めていただくことが求められているのではないか。
 あと、1つだけ思ったのは、私が直接問い合わせを受けて、直接私のわかる範囲内で答えると安心して帰っていく方が多かったので、やっぱり対話というのは重要かなと非常に思いました。日本CFA協会の方々からも早速、財務省の方にセミナーを開いていただけることになったとすごく喜んでメールをいただいたりしたので、それを海外でもやっていただけないかというお問い合わせを今受けています。海外で、例えばアメリカとかいったところでも直接対話の機会をつくっていただくのはどうなのかと思っています。

 

○大野(早)委員  これは必要な措置ということで外為法の改正がなされたと私も理解しているんですが、いかに副作用を小さくするかというところも大事な検討課題である。例えば資料の5ページのところ、3ポツの①、②で、注3に、事後的に①、②の行為を行うことがあっても届出をすれば可能ということも書かれているんです。例えば株主総会の前にこういった事案が多発してくるようなことがありますと、それをどのように短期間でチェックしていく体制をつくっていくのかということも重要ではないかと思います。
 意見書の中にも何人かの方が書かれていらっしゃいましたけれども、システム対応とかいったものを御検討いただきたいというような意見もありました。いかに副作用を小さくするか。予見可能性を高めるところはすごく大事だと思うのですが、非常に細部のところでいろいろなことが残っているのではないかと思います。
 ただ、非常にクリアにいろいろ整理してくださっているというふうに思いますので、残されたところをもう少し御検討いただければと思います。

 

○小川分科会長 どうもありがとうございました。
 たくさんのコメント、御質問がありましたけれども、それでは岡村局長からお願いします。

 

○岡村国際局長 御意見、御指摘、大変ありがとうございました。
 私からは、時間の制約もありますので、共通したようなことをお答え申し上げて、あと三村副財務官に補足をお願いしたいと思います。
 まず、外為法で安全保障への対応が十分なのかどうか。外為法でできることは何なのか。この法律の狙いは何であるかという御指摘をいただきました。これは、一言で言えば「不十分」です。安全保障の対応を外為法だけでできる、これでキャッチオールをして、外為法で国を守るんだというような意識はございませんで、そういう意味ではもっとより大きな国の安全をどう守るのかという視点は引き続き政府としての重要な課題として残っているということでございます。その大きな枠組みの中で、外為法でできるものをまず諸外国の動きから後れないように対応していこうということが基本的な考え方でございます。
 したがって、特に今ありますのは土地の取得をどう規制するかという点です。CFIUSでは土地、それから先日オーストラリアの方と意見交換していたのですが、オーストラリアの法制はアメリカのような事後介入ではなくて事前届出制ですけれども、それでも対象に不動産が入っていて、投資規制の大きな要素だという話もありました。そういう意味では、土地などが外れていること。それから、外為法はクロスボーダーでありますので、在留外国人はもともと対象にならない。そういった制約の中で、外為法でできること、手の届く範囲のことをやろうという考えでございます。
 それから、事前届出制が日本の法制では基本になっておりますので、それを事後介入というか、一種、事前届出制なのですけれども、株式の取得時点よりは後にどういった対応が可能か。その法制のもとで事後的な対応がどこまで可能かということとセットで考えていく。そんな視点になろうと思います。
 その上で副作用を小さくすることが極めて大事な視点であります。そこでは、1つは、「取得の面で全部を守ること」、つまり、株を買われないようにすることによって企業を守るのだというところから大きな転換というか、基本的考え方の転換がございます。それが法律では、対内直投の行為類型として、役員の就任や重要事業の譲渡の提案などを、対内直投の行為類型に追加しています。ここは取得のときの事前届出の免除が及ばない部分でございます。したがって、ここには免除制度は適用がありませんので、この行為をする投資家は、株主総会の前に事前届出をしていただいて、それは審査をさせていただく。ということで、役員就任とか事業譲渡につきましては対内直投の行為として事前届出の対象になっており、これは免除制度の外です。つまり、取得のところで株を買われないようにして守るというパラダイムから、ある意味では取得のところはある程度開く。これは投資家に対して門戸を開く意味もありますので、そこは開いた上で、行為のところで審査をさせていただく。関門のウエートが事後のほうに、株式の取得のところから移っているというのが基本的な考え方でございます。
 それが資料では5ページの注3に、免除のところでは書いてあります。特に大野早苗委員からあった、「また、事前届出免除制度を利用した外国投資家が、株式取得後に①②の行為を行うことも、行為前に届出をすれば可能。」と。ここは免除の話で書いてありますが、この免除を利用しなかった方も、した方も、①、②の行為についての事前届出は必要であるということを改めて申し上げさせていただいたほうがいいかなと思います。ここで見させていただいて、Q&Aの問8にあるのですけれども、国の安全に関係がなければ審査は短縮して5日以内にオーケーを出します。取得のところの門を広げて、そして行為のところで審査をさせていただく、そういう立て付けになっております。その点が1点です。
 2点目、副作用を小さくするということでの延長線上ですが、銘柄のリスト化の話について何人かの先生から御指摘がありました。これは、投資家にとっての予見可能性を高めるということで、ある意味では、外形的に明確にすることのコミットメントのあらわれでございます。ここで改めて申し上げさせていただきたいと思っておりますのは、包括免除は「銘柄にかかわらず」でございます。他方、この銘柄リストについては、Q&Aの問3の③のところに免除を受けられないというふうに書いてあります。包括免除の効果と、それから銘柄リストの効果。これが並列だとすると、どっちが優先するんだというお尋ねをいただきますから、そこを改めて申し上げますと、銘柄にかかわらず包括免除が優先いたします。したがって、そういう意味では、銘柄リストが妥当すると申しますか、銘柄リストがカバーするような投資家の範囲はかなり限定される。つまり、包括免除の対象になる場合には、①はもともと事前届出がありませんが、②、③のどちらであろうが、どの銘柄にかかわらず取得についての事前届出は必要ないことになります。包括免除との優先関係です。
 さはさりながら、包括免除の利用の主体にならない投資家からすれば、当然これは大変重要な分水嶺になるわけでございます。指定を受ける企業側から見てもここは非常に大きなポイントになろうかと思います。その上で、ここは2点、戦略的な行動、あるいはリストを悪用するようなリスクに対してどう備えるのか。その点と、どういうふうにしてリストをつくるんだということ。その2点は御指摘を大変重く受け止めておりまして、各省とよく相談をした上で、企業の意向といったものをよく聴取する。一方で、企業の意向というのは、希望というよりは実態を把握するという意味でよく調査した上で、あと意思疎通をし、各省と協議しながら、投資家に対して行動の予見可能性を増すような情報を提供するという理念の下、これから具体的な作業を進めていくことになろうかと思います。
 あとは、亀坂先生からお話がありました対話の機会で、国内にいらっしゃる方、もちろん国内の外国投資家、それからマーケットプレースでのヘッドクオーターへの働きかけというのは大変重要であります。既に財務官がシンガポールで、副財務官がワシントンに行って説明をしており、年明け早々にはロンドン、ニューヨークで説明を行う予定です。それから具体化の方向性について、今日の資料では10ページに整理させていただいている諸点ですが、投資家の方々の懸念がある意味ではこちらの発信不足に起因するところが大きい面がありますので、その辺を力を入れて続けていきたいと思っております。

 

○三村副財務官 それでは、それ以外にいろいろと頂戴いたしました意見につきまして、幾つか大きなところにつきまして私から補足的に申し上げさせていただければと存じます。
 まず、何人かの先生から、アメリカの事後介入のようなものをいっそ検討したらどうかというお話がございました。実は我々も法案を作成する過程でかなり議論いたしました。確かに先生方からも御指摘がありましたように、特にこの技術の変化の激しいときでもありますから、事によると、今、事前届出対象に指定していないような業種の会社であっても、ある日突然その技術が全く新しいものに使えるかもしれないとか、いろいろなこともあり得るわけです。このようなことも含めて、事後介入ができたほうがいいのではないかというお話はあるのですけれども、最終的にとらなかった我々としての整理は2つでございます。
 1つは、事後介入の制度については、本日まさに委員の皆様方から多々、あるいはこれまで我々の議論の中で市場関係者の方からも、その予見可能性についての懸念というものを非常に強く言われるわけでございます。事後介入制度は、国にとってはある意味で非常に便利なツールではございますけれども、投資家の方にしますと、いつ何どき国が後になって介入してきて株を売れと言い出さないとも限らないという意味で、いわば、いつまでたっても枕を高くして眠れないようなところもある制度でもございます。マーケットの方々から見た予見可能性という意味で、事後介入は、事前届出に比べると、ある意味では効果が大きいことの裏側ではあるのですが、非常にネガティブな影響もあるのではないかと考えましたのが1点目です。これはむしろ政策的な理由でございます。
 もう1点はもう少し法的な理由でございまして、今回のような制度は、国の安全保障という観点からやっておりますので、マルチのルールで言いますと、WTO協定とかOECDの自由化コードなどは、国の安全保障を理由にした、内外無差別に対する例外は、協定上、ルール上認められております。したがいまして、我々もこういうことをやっておるということでございますけれども、実はマルチの協定と別に、御承知のように、私どもは2国間とか3国間のいろいろなバイの投資協定も結んでおります。この投資協定をつぶさに見ますと、物によっては協定適用時よりも、より厳しい内外差別的な措置はとらないというかなり限定的な、いわゆるスタンドスティルの規定を設けているような協定が日本が現に締結しているものの中にございます。今回のこの改正は、一方で、確かに10を1に引き下げる等々、規制強化の部分はあるわけでございますが、同時に免除制度も導入しておりますので、総体としてこれは何かスタンドスティルに反する内外差別度合いが高まるような措置ではないということで整理はできるであろうと。他方で、今、外為法上全く存在しない事後介入のようなものを導入することになりますと、さすがにスタンドスティルとの関係でいうとひっかかるのではないか。実は外務省ともいろいろ議論もしたのでございますけれども、こういった我が国の国際協定上の懸念もございますから、今申し上げました政策的な理由とあわせまして、今回、事後介入まで踏み込むのは無理があろうと。これは議論はしたのでございますけれども、今回はそういう判断をさせていただいたところでございます。
 それから、リスト化については、先ほど岡村局長からも申し上げたとおりでございますけれども、私どもとしましても重々留意をしてということでございます。委員から、例えばリストのどこに分類するのか、分類の基準等々をどうやるのかというお話がございました。今の時点での私どものイメージといたしまして、あまり事細かに分類の基準とか、なぜこの会社がここに分類されたのかというようなお問い合わせには、基本的にはお答えしない、あるいは、できないのだろうと思っております。あまり申し上げますと、まさに個々の会社がどういう機微な技術を持っている、持っていないという個別情報に立ち入ることにもなりますので、私どもとしては、外国投資家の方々の透明性、予見可能性を求める御要望に応えまして、どの会社がどこに属するかというところはクリアにいたしますけれども、その背景にある事情につきましては、むしろ当局から開示することは控えなければいけないだろうと思っております。
 他方で、時代とともに、時とともに当然変わり得ますので、このリストにつきましては、1回出して終わりではなくて、アップデートは必要だろうと考えております。定款をはじめとしました公表情報にあわせまして、先ほど局長からも申し上げましたように、企業への実態調査等も踏まえた上でいずれにしても判断していくということで考えておるところでございます。
 それから、植田先生から、3つの基準の中で①、②はそもそも要らないのではないかというお話もあったのでございますけれども、もちろん我々も不確定要因をできるだけ小さくする、予見可能性を高めるということで検討しております。考え方としましては、既に前回も御説明申し上げましたように、我々として、機微な技術の流出とか、重要事業の流出、廃止につながるような行為類型としてどういうものがあるかということを考えましたときに、役員の選任と、役員のボードの一員になることと、株主としてこういった提案をすることがそれにつながる。いわば蓋然性の高い行為ではないかということで選ばせていただいたということでございます。繰り返しですが、それに伴いまして必要のないところに対して規制的になってはいけませんので、逆に言いますと、条件も情報アクセスの部分とあわせまして限定もいたしますし、届出が出たからといって、やたらめったらだめというはずもございません。基本的に問題のないものはできる限り速やかに審査をお通しすると考えているところでございます。
 他方、さはさりながら、いわゆる機微業種あるいは銘柄をできるだけ小さくしたほうがいいので、例えば電力といって、電力事業をすべからく機微業種だというのではなくて、もう少しマーケットシェア等々の切り口で絞り込みをというお話がございましたけれども、これはまさしく我々も今、経産省をはじめ事業所管省庁と議論させていただいているところであります。それこそ電力について言えば、送配電網を持っているような大どころは国の安全の観点からcrucialでございますけれども、確かに昨今の非常に小規模でソーラーパネルをやっているとか、そういうところを全部指定する必要があるのかといったところはいろいろな議論の余地があります。これはまだ関係省庁で議論中ですので何か結論を確定しているわけではありませんが、そういった切り口は念頭に置きながら今議論させていただいておるところでございます。
 それから、神保先生から、いろいろと具体的なマーケットからの質問ですとか御懸念をおっしゃっていただきまして、誠にありがとうございます。
 例えば役員派遣はどういった場合がというところ、先ほど10ページのところでも申し上げましたけれども、具体的に誰が密接関連者に当たるのか。おっしゃいましたように概念を明確化しないといけませんので、こういったものは政省令・告示の策定過程の中で明確化をしたいと思っております。
 それから、非上場会社のケース、あるいは特定上場会社のケース、それぞれ御指摘がございましたけれども、我々としましても、基本は今回、もともと1%という会社法上の一つのメルクマールとなっている基準に着目して、その3分の1のところは、そういう意味では平仄という意味で外すとか、そういったことをやったわけではございます。いずれにしても、全体の制度の骨格は、本当に必要なところには対応するツールはあるけれども、できるだけ問題のないところには御迷惑をかけないようにというのが大前提でございますので、今日頂戴しました御懸念、御指摘も踏まえまして、さらに策定作業に相努めたいと考えているところでございます。
 それから、全体の告示指定の業種につきましても、今回の法改正に伴って全体の指定業種を広げるということは考えておりませんけれども、それとは別な話として、未来に向けて指定業種のたゆまざる見直しが必要なのは当然でございます。これは常に広げるばかりではございませんで、当然その逆もあり得るわけでございますので、ここは今回の法改正に直接かかわらず、絶えずやっていかなければいけないところだろうと思っております。
 それから、根本委員からご指摘いただきましたが、いろいろとコミュニケーション、あるいは外向けの説明をよく考えるようにということは当然でございます。その一方で、1%はどうなんだというところで、法律上は確かに1%以上、1%を下回らない数字ですので、論理的には1%を上回る数字を指定する余地もあるというのは、法律上はおっしゃるとおりでございます。ここは、10月以来御説明申し上げておりますように、私どもとしましては、今回につきましては会社法上のメルクマールとなりますパーセンテージが幾つかある中で、1%という議題提案権、1%という水準で議案提案権が生じること自体が他国に比べても低目に設定されているのは前回委員の皆様方からもお話がありました。そこはそうということを踏まえつつ、その議題提案権をメルクマールにして、我々としては1%ということで考え、また御説明をさせていただいている状況はあるところでございます。
 また、清水委員の御指摘の中で、ソブリン・ウエルス・ファンドや年金基金について、国によって差があるんだ、大丈夫なのかというお話がございました。これについては、基本的に国というより、実際はより細かく一つ一つのソブリン・ウエルス・ファンドですとか年金基金につきまして、何か要望があれば我々のほうでチェックをしまして最終的に認定を下すことで考えております。我々の判断の結果が、特によろしくない場合にはということですけれども、当該SWF等々のレピュテーションにもかかわり得ますので、我々のほうでどういう認定を下したかということについては対外的には公にしない方向で考えております。もちろん、申請をした側のSWFとか年金基金が、私は日本の当局から包括免除はいいと言われました、あるいは、一般免除はいいと言われましたみたいなことをおっしゃる分は止めようもないわけですけれども、当局として何か正式にどういう判断をしてというのは、レピュテーションにもかかわりますので、基本的にはお答えしないことを今我々の事務方の思いとしては考えているところでございます。
 それから、システム対応の経過措置のところを最後に大野(早)先生からいただきました。これは先ほどもちょっと申し上げましたけれども、投資家によっては、証券会社等とかお客様のために、システム対応が必要かもしれない。あるいは、システム対応を抜きにしても、今回かなりルール変更もあります。今まで10%のときには、どうせ抵触しないやといって意識しておられなかった方も、1%となると今までのルールも含めてよく咀嚼しないといけないのでというお声は頂戴いたします。そういったところにシステム対応が必要な場合に、システム対応している間は一切免除を受けられない投資家が何も投資ができないような事態になりませんように、何らかの対応を考えなければいけない。ここは今、金融庁などからも金融機関様からのお声を多く頂戴しておりますので、そういった関係省庁とも事務的にもよく相談をさせていただいている状況でございます。
 すみません。網羅的ではなかったかもしれませんけれども、以上でございます。

 

 

○飯田経済産業省貿易管理部長 1点だけ、機微技術管理について、例えば外為法で十分なのかという御指摘が伊藤(隆)先生をはじめとしてございました。今、政府の中では、前回あるいは前々回も御説明したかもしれませんが、機微技術の流出経路、あるいは技術を調達しようとする方がどういう活動をしているのかということで考えますと、日本から考えた場合は輸出がありますね。それから対内直接投資や、例えば、大学、研究機関の共同研究、ヘッドハンティング、産業スパイ、サイバー攻撃、場合によっては論文発表や、特許としての公開の是非に関する議論もございます。あるいは、強制的な技術移転要求により技術情報を開示させられる場合にどう対応するのか。一つ一つ見ていきますと、外為法のような水際管理で対応できるものもあれば、不正競争防止法で営業秘密侵害という形で対応を強化してきたものもあれば、共同研究であれば規制というよりガイドラインのような形で内閣府が取り組みを進めているものもあります。また、倫理規範のような形で利益相反をどう解消するのか、例えば外国からお金をもらっている一方で日本の政府からもお金をもらって、同じ研究がミラーリサーチやシャドーラボという形で盗まれてしまうことについてどう考えるべきか等、いろいろなパターンがあります。それらを全部並べて検討していくのが基本的な政府全体の対応であると考えております。
 私どもも財務省と連携しながら、そのような政府全体の取り組みを見ながら、全体として機微技術管理のレベルを上げていく、あるいは、実際に行われる活動に対処できるように、ある部分は規制を強化し、ある部分は実際にそれに携わっている方々の意識を喚起し、自主的な取り組みを促すことの組み合わせの中で対応していくということでございます。今回は外為法でその一部を強化していくことだと御理解をいただければと思っております。全体の流れは今、内閣府の科学技術・イノベーション会議の「安全・安心」有識者会議の中で、機微技術の管理をどうしていくのか、機微技術をどう守っていくのか、場合によっては育てていくのかという視点から検討を進めているところでございます。
 私からは以上です。

 

○小川分科会長 どうもありがとうございました。
 それでは、これで本日の議事を終えたいと思います。
 なお、今回の議事録の作成は私に御一任いただきたいと存じます。その際、発言部分を事前にごらんになりたい委員の方におかれましては、会合終了後にその旨を事務局に御連絡いただくということにいたしまして、御連絡いただきました委員の方には、議事録を案の段階で事務局より送付したいと考えております。その後1週間程度の間に御意見がない場合には、御了解いただいたものとして理解させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

 

○小川分科会長 どうもありがとうございます。
次回の分科会につきましては、事務局と相談の上御連絡させていただきたいと思います。
 本日は長時間にわたりまして御出席いただきまして、ありがとうございました。

 

午後0時4分閉会

・意見書(鈴木委員)(PDF:736KB)
・意見書(原田委員)(PDF:644KB)
・意見書(神作臨時委員)(PDF:138KB)