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関税・外国為替等審議会 第64回外国為替等分科会議事録

関税・外国為替等審議会
第64回外国為替等分科会議事録

令和7年10月31日(金)

財務省 国際局

財務省第3特別会議室
(本庁舎4階)

1.開会

2.最近の国際金融情勢について

3.対内直接投資審査制度について

4.閉会

出席者
委員

五十嵐チカ

植田健一

江藤名保子

亀坂安紀子

神作裕之

木村

佐藤清隆

下坂朝子

杉山晶子

根本直子

山口博臣

財務省

緒方国際局長

今村次長

細田審議官

梶川審議官

渡邉副財務官

西方副財務官

木原総務課長

春木調査課長

池田国際機構課長

松本開発政策課長

恵﨑投資企画審査室長

宮地大臣官房企画官

竹中地域協力企画官

臨時委員

大野早苗

左三川郁子

澤田康幸

清水

専門委員

伊藤亜聖

伊藤由希子

河野真理子


午前10時02分開会

○神作分科会長おはようございます。予定した時刻になりましたので、ただいまより第64回外国為替等分科会を開催いたします。

委員の皆様方におかれましては、御多用中のところ御出席、あるいはオンラインで御参加いただき、誠にありがとうございます。本日は、オンラインでの御参加を含め大勢の委員の皆様に御参加いただいております。

議事に入る前に、進行上の留意点などについて事務局より御説明をお願いいたします。

○春木調査課長それでは、皆様、本日はよろしくお願いいたします。

先週異動がございまして、調査課長に移りました春木と申します。先週まで加藤大臣の秘書官をやっておりましたが、組閣のタイミングで交代の人事がございまして、こちらのほうを担当させていただきます。

本日ですけれども、対面での御参加とオンラインの御参加のハイブリッド形式になっております。会議室に来られている先生の方におきまして、オンラインの方にしっかりと伝わるように、できるだけマイクのほうに近づいて御発言いただきますようにお願いいたします。また、オンラインで参加される方につきましては、事前にお伝えしておりますとおり、御発言時以外はミュートにしていただきますようによろしくお願いいたします。

それでは、私からは以上になります。よろしくお願いします。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

それでは、早速本日の議事に入りたいと存じます。本日の議題は、最近の国際金融情勢と対内直接投資審査制度についての2点でございます。初めに事務局より御説明を頂いた後、意見交換の時間をお取りしたいと存じます。

それでは、池田国際機構課長、御説明どうぞよろしくお願いいたします。

○池田国際機構課長委員の皆様、おはようございます。国際機構課長の池田です。よろしくお願いいたします。

配付した資料の1ページをおめくりいただいて、まず、2025年10月のIMF世界経済見通しの概要を御紹介いたします。

これは毎回外為審のたびに御紹介させていただいていますけれども、10月のアップデートでは、2025年は3.2%、2026年は3.1%の世界の経済成長率の見通しが示されています。こちら、2025年に関しましては、毎回上方修正されていまして、4月は2.8%だった、7月は3.0%だったということで、それぞれ0.2ポイントずつ上方修正されて3.2%になっているということで、IMFは「unexpected resilience」という言葉を使っています。その理由としまして、1つには、やはり4月の状態よりも米国の実効関税率が低く今のところ抑えられていると。見通しの前提も、現状の関税措置がそのまま続くというようなことが前提で示されているということ。2つ目が、一時的な要因ということが強調されています。すなわち、今後、高関税が課されることを想定した消費者や企業が投資や消費を前倒ししているというようなことが指摘されていて、基調的な経済の実態が強いというわけではないんだということが示されています。その関連で3ポツを御覧いただければと思うんですけれども、2025年の世界全体の貿易量、これは昨年を上回る見通しが示されていると。昨年が3.5だったところが3.6%増となると。しかし、これはやはり一時的な要因であるので、今後、少しずつ減少していく見込みであるということが示されています。

主要国ごとに見てまいります。

アメリカに関しましては、2025年2.0%、2026年は2.1%の成長率ということで、それぞれ少しずつ上方修正されています。前回の見通しでも指摘されていましたけれども、これから関税の影響が出てくるぞということで、2025年後半からインフレ率が上昇していくであろうというようなことが示されている。しかし、リスクは、インフレの上振れリスクと雇用の下振れリスクとの双方で存在しているということが示されています。

ユーロ圏に関しても、今年は上方修正、そして、来年、若干の下方修正ということになっていて、やはり不確実性の高まりと関税率の上昇が逆風になっている。

日本に関しましては、2025年が1.1%、2026年が0.6%ということで、それぞれ上方修正されていると。予想される実質賃金の伸びが個人消費を支えることが追い風になるであろうと。

中国に関しましては、今年4.8、来年4.2ということで、7月の見通しからは変更なしと。

インドについては、今年、若干の上方修正、来年は少し下方修正ということですけども、いずれも6%台ということで力強い成長が見込まれます。

ロシアについては、昨年よりもかなり減速しているということが見込まれるということが指摘されています。

1ページおめくりいただきまして、IMFが指摘するリスクについて御紹介をいたします。明らかに下方リスクのほうが引き続き多いであろうということで、6つのリスクが指摘されています。

1つ目は、保護主義的な貿易措置が強化されるリスク。それから2つ目が、移民政策の厳格化によって労働供給が悪化するかもしれない。これによってインフレ率が上昇する可能性。3つ目は、財政の脆弱性。この文脈で、ステーブルコインの急速な台頭が通貨代替や金融市場に対して大きなリスクをもたらす可能性も指摘されているというのは新しいことでございます。そして4番目、ドットコムバブルに匹敵するAIブームの崩壊のリスクが指摘されています。こちらは今回耳目を集めたポイントでございまして、10月のIMF世銀総会の関連の会合でもこれを引用するような声が多くございました。5番目は、中央銀行等への政治的な圧力の高まりによる信頼の毀損。6番目が、一次産品価格の上昇、その背景には気候変動や地政学的な緊張ということが指摘されています。

上方リスク、こちらは前回と同様でございます。貿易交渉が思いのほかうまくいく。それから2つ目が、労働参加率の向上や、あるいは資源が適正により配分されるような構造改革の推進。それから、AI導入加速によって市場全体の生産性が向上するというようなことが上方リスクとして挙げられています。

必要な政策対応としては、貿易、財政、金融、そして中期的な政策、いずれにしても、信頼性、予測可能性、持続可能性をもたらす政策が必要であるということで、貿易ルールについても、様々な経済安保の動きなどありますけれども、これらを踏まえてルールをしっかり見直していくべきである。そういう中で貿易障壁は引き続き下げていくべきであるというようなことですとか、財政政策については、財政余力の回復や債務持続可能性の確保。金融政策については、こちらでも中銀の独立性の確保が重要であるということ。最後に、中期的な政策の中では、産業政策の規律ある運用であるとか、あるいは構造改革の着実な実施ということが指摘されています。

次のページには、各国ごとの成長率の見通しのテーブルが示されていますけれども、こちらは割愛させていただきます。

もう1ページ進んでいただきまして、G7及びG20の最近の足元の議論の概要を御紹介させていただきます。

G7につきましては、ワシントンに参集するに先立ち、財務大臣のみが集まって10月1日にオンラインで議論がなされました。実は9月の半ばにも集まって議論して、その続きが10月1日に行われ、そして、こちらに示されているような声明文が出されているということでございます。

全部で7パラの非常に短いものではございますけれども、この声明文をまとめた問題意識が1に書かれています。すなわち、ロシアへの圧力を強める共同のステップを取ることに合意した。その背景としては、増えているNATO加盟国への領空侵犯ですとか、あるいは、ウクライナの市民への攻撃や外交施設への損害も含むロシアの継続的な行動の激化ということが和平の仲介を阻害していると。なので、ここはしっかりとロシアへの圧力をG7が一致して強めていかなきゃいけないというような問題意識が1パラで示されています。

具体的にどんなことをやるのか、3つございます。

1つがまずウクライナ支援でございます。それが3ポツでございます。ウクライナに関しましては、現在、IMFプログラムが2027年3月までを期限に走っております。ただ、その支援の前提は、今年末までに戦争が終わるというのがベースライン。ダウンサイドリスクが顕在化する想定でも、来年中頃には戦争が終わるだろうと、こういう前提でしたので、大分前提自体が変わってきている。結果、財政ギャップが広がってきている。したがって、ウクライナの政府は、新しいプログラムをIMFに申請をしております。こういった状況を踏まえて、どういう形で支援をしていくのかということについて、広範な選択肢を策定中であるということを示しています。その一例として、我々の管轄下において動かせなくしているロシアの国家資産全額の価値の、協調的な方法による活用を含む措置を検討している。これはEUのほうで検討している、いわゆる賠償ローンというようなスキームを想定したものも含めてこちらに記されていると。ただ、いずれにしても、法的枠組と整合的であり続けるということは大前提であるということが強調されています。

2番目は、制裁の強化ということで、そちらが4パラに書かれております。ロシア経済の主要な分野や支援主体に対する制限措置を課すということでございまして、最近、アメリカ及びイギリスから発表されました、ロスネフチとかルクオイルといったオイルメジャーへの制裁措置というのは、こういったことを受けたものになります。

それから、3番目が貿易措置ということで、ロシアの輸出から得る資金、これを減らしていかなければならないということが5パラ、6パラで書かれているということで、ロシア原油輸出への圧力を最大化しなければならない。そして、6パラでは、関税及び輸出入禁止も含めて、貿易措置の重要性について合意する。その中で、「炭化水素の輸入を含む」とありますけど、これは天然ガス等を指していると言えますけれども、含む我々の残されているロシアからの輸入を、段階的な停止を目的として、大幅に削減するための具体的な措置を取っていくというようなことが書かれています。

こうしたことを踏まえて、引き続き10月15日にワシントンで会うときに議論を続けようと、こういった内容でございました。

それを受けて、10月15日にワシントンで集った際の議論の概要を日本からの主張を紹介する形で御紹介いたします。

まず、ウクライナ支援については、こちらはマルチェンコ大臣に加えてスビリデンコ首相も対面で参加されて議論が行われました。10月1日の声明を受けた各国の取組状況についてアップデートがあったということでございます。

それからもう1つの議題としては、世界経済について議論をしました。この中で、日本としては、中国が直前に発表したレアアースの広範な輸出制限措置、こちらについての強い懸念を表明した上で、G7として結束して対応していかなければならないということ。そして、ただ、こういった対応が報復の連鎖を招くことがあれば、世界経済や市場への悪影響を与えかねないので、これらも含めて金融市場にもたらすリスクをよく注視していこう、為替レートの過度な変動や無秩序な動きにも注意していこうということ。

それから、3つ目の議題としてグローバル・インバランスとございますけれども、こちらについては、IMFの客観的な分析、提言、これを非常にありがたいということを申し上げた上で、多国間の対話の場の設定に期待するということを主張してございます。

続きまして、G20も開催されましたので、その概要を簡単に御紹介させていただきます。

南ア議長下での最後の4回目のG20財務大臣・中銀総裁会議となりました。前回は共同声明が出されましたけれども、この内容を基本的に踏襲しながら、この1年間どんな経過があったのかということを議長がまとめた「議長総括」が出されました。それと併せて、後ほど内容を御紹介しますけれども、各国の合意に基づく「債務持続可能性に関する閣僚宣言」を発出しております。12月にはアメリカに議長国が交代していくということでございます。

日本からは、まず、世界経済について、ロシアのウクライナへの侵攻が引き続き世界経済の重荷になっているということ、それから、中国が発表したレアアースの広範な輸出制限措置に対する懸念、こういったことを主張しております。また、為替レートの過度の変動や無秩序な動きへの注意、それから、グローバル・インバランス是正のために、関税ではなくて、国内政策を通じて対処すべきということも引き続き主張しております。

IMFの機能強化ですとか、債務の透明性の重要性、こちらも引き続き主張しております。

それから、アフリカの部分に関しましては、南アフリカ議長がレガシーとして残すべく熱心に取り組んでいた「アフリカ・エンゲージメント・フレームワーク」を支持していくというようなことを申し上げました。

最後に、金融セクターに関しましては、特に暗号資産やステーブルコインについては、様々な技術革新に伴って新しいリスクが出てまいりますので、こういったことへの対処も含めて、FATFの継続的な取組を支持することなどを申し上げております。

私からは以上です。

○松本開発政策課長開発政策課長の松本でございます。私からは、池田課長に続き、G20の債務持続可能性に関する閣僚宣言について御説明を差し上げます。

内容に入る前に少し背景をということなんですけれども、先ほど池田課長からも説明があったように、この閣僚宣言につきましては、いわゆる議長総括という形ではなく、G20として合意をされたコミュニケ、閣僚宣言という形で発表がされております。これは非常に議長国の意向でして、近年、アフリカ諸国を中心に債務リスクが高い国の割合が再び上昇しているということで、債務持続可能性の課題が改めて浮き彫りになっていると。こうした中、南アとしては、アフリカ唯一のG20国として議長国就任当初より債務問題に大きなプライオリティーを持って取り組んできたと。こうした議長国の強いイニシアティブの下に取りまとめられたのが今般の閣僚宣言でございます。

内容につきましては、資料の下の四角、3つのパーツから構成されていまして、「前文」と、今後こういったことに力を入れていきましょうという「更なる行動へのコミットメント」、最後に、附録として、これまでG20として取り組んできたことを振り返る「過去および進行中の取組」と、3段構成となっております。

前文につきましては、最初の黒ポツにございますように、債務持続可能性の課題に直面する国々を支援する上で、G20が果たす重要な役割を確認と。

今後の更なる行動へのコミットメントといたしましては、債務措置に係る「コモンフレームワーク(共通枠組)」の実施のさらなる強化といったこと。あと、民間債権者を含む全ての利害関係者に対して債務透明性の向上の呼びかけ。3つ目は、債務に係るもろもろの途上国向けの能力構築の推進ということ。

あと、過去および進行中の取組といたしましては、創設から5年間で、「共通枠組」は4か国を対象に実施をして、やっていく中でもろもろの課題はあれど、債務措置に関するタイムラインというのは短縮化していると。最後にございますけども、データ共有の取組(Data Sharing Exercise)を含め、自発的なデータ突合の取組に留意ということで、最後の部分についてだけ補足いたしますと、これは「主な内容」の上の一番上から見て2つ目のポツですね。こちらはまさに日本が非常に推進してきた取組でして、貸し手・借り手双方のデータ共有の取組、世銀と連携しながら行っている取組でして、正確かつ透明な債務についてのデータを確保するための取組ということで、こちらはG20の大臣級の合意文書において記載されたのは初めてということで、そうした意味では前進だったのかなと評価をしております。

私からは以上です。

○竹中地域協力企画官地域協力課企画官の竹中でございます。私からは、APEC財務大臣会合について御説明させていただきます。

今月21日火曜日、韓国の仁川においてAPEC財務大臣会合が開催されました。今回の会合では、韓国議長の下、世界・地域の経済情勢、デジタル金融、財政政策等について議論を行いました。

今回の共同声明では、国際協力、質の高い雇用創出、そして経済成長に寄与する多様な取組や経済の不確実性に対する柔軟かつ信用あるマクロ経済政策等、経済強靭化に向けてAPECが一丸となって取り組むことで一致をしました。

なお、APEC財務プロセスの「セブ行動計画」、これは2015年から25年の10年間でしたが、本年、期限を迎えることから、記載の4つの柱を基に、今回は5年間、2026年から2030年のロードマップ(仁川プラン)を策定いたしました。

簡単ですが、私からは以上です。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

それでは続きまして、対内直接投資審査制度につきまして、春木調査課長から御説明をお願いいたします。

○春木調査課長では、配付資料②を御覧いただきたいと思います。

こちらは対内直接投資審査制度でございまして、先月も議題に上がって、先生方の御意見を伺ったというふうに思っておりますけれども、2019年の法改正から5年たつところでございまして、前回の改正も踏まえてどういった見直しができるのか、改善点があるかといったところを今年大きいテーマに考えて俎上にのせておるところでございまして、1回目の先生のご議論を踏まえて、こちらの2ページ目ですけれども、論点整理を今回させていただいております。また、今日のこちらの会議でのいろいろ御意見を踏まえて、これからの改善策を考えていければと思っている段階でございます。

2ページ目が今回の事務局からの説明のサマリーになっておりまして、こちらと後ろの資料もセットで使いながら御説明したいと思っています。

まず、冒頭の四角囲みのところでございますけれども、大原則が書かれておりまして、健全な対内直接投資の一層の促進を図っていくということでございます。他方で、安全保障の観点で、国の安全等を損なうおそれがある投資に対しましてリスクに応じた適切な対応をする必要があるという、この両面のバランスを取る必要があるということになります。

一応事務局が考えておる現行制度の課題として、6点ほど考えております。

まず、1つ目の1の①でございますけれども、事前届出件数が増えてきているということでございまして、参考資料を使っていきますが、4ページ目にございますけれども、こちらのほうで、件数としましては約3,000件、今事前届出が出ておりまして、大分増えてきておると。時系列的にも増えておりまして、また、他国との比較におきましても、アメリカですとCFIUSの審査ということで約300件なんですけれども、10倍ほどの量に上ってきております。こういった中で何か合理化する余地がないのかという論点があろうかと思っておりまして、投資家の方々の負担を減らすということも考える必要があるのではないか。具体的に4ページに2つ矢印で書いておりますけれども、例えばですけども、役員の選任のうち、再任する場合ですとか、そういったものについては、届出を省略するといったようなことも選択肢になるか。また、情報通信の関係ですと、サイバーセキュリティ対策の観点で、真に必要な分野というものに限定するというところも考えられるのではないかというところ。他方で、重要な技術や情報を有している本邦企業への投資が事前届出の対象になっているのかという見直しの検討もこのタイミングで考えてもいいんじゃないかといったところでございまして、2ページ目に戻るんですけども、そういったリスクに応じたメリハリ付けというものを考える必要があるというのが1つ目でございます。

2つ目ですけれども、こちらはリスク軽減措置を明確化するという論点でございます。こちらの1回目の前回、先月のところでも御意見がいろいろ出ていたと思いますけれども、資料で言うと5ページ目の資料を使って御説明いたしますと、こちらのリスク軽減措置と呼ばれる内容につきまして届出を提出するケースというのが現状出てきております。こちらのリスク軽減措置の内容ですけれども、「外国投資家が外国政府等の影響を受けて、投資対象事業の遂行に関与しない」というようなこと、経営の関与の在り方について事前届出の際に書類を出してもらっているケースがあります。そういった件数が今足元で増えてきているというところでございますけれども、こういった重要性は認められるものの、課題としまして、下のほうに書いておりますけれども、まず、記載項目としての位置づけが明確ではないということでございまして、ただいま外為法令の中で明示的に書いているものではございませんで、審査の中で外国投資家から出してもらっているというものでございますので、位置づけが曖昧なので明確化することが必要じゃないかといったこと。また、投資実行後に記載した内容に事情変更が生じた場合の手続についても、どういったことができるかということが明確に書かれていないということがございまして、重要性が高まる中で、こういったものについての位置づけを明確化するものが必要じゃないかということを、2ページに戻りまして、②のほうで記載しているところでございます。

次、③のところでございますけれども、こちらも1回目の議論でも議題になったと思いますが、間接投資の論点でございまして、別の外国投資家が投資を行っている会社を子会社化していくというような間接投資のケースでございまして、これについて何かしらの対応が要らないのかというようなところでございます。資料を使いますと7ページ目でございますけれども、右のほうで、AからBへの投資で事前届出対象になっているケースでございますが、Cの会社が出てきまして事後的にAの株式取得を行っていくということでして、CからAの間接投資について、現状の外為法令では事前届出とか審査の対象にはなっていないところでございますが、主要国のほかのG7で比較しますと、こうした間接投資につきましても届出や審査対象に含んでいるものというのが見られますので、そういったところまで網をかけていくということも考えられるんじゃないかというところでございます。

次に、2ページ目にまた戻りまして、2の①というところでございまして、こちらは安全保障等の環境変化への対応というくくりですけれども、こちら、①で、外国政府等の支配・影響下にある投資活動、リスクが高いものにつきましては、国内の投資家を含めて、こちらを審査対象にしていくということもあり得るのではないかということでございまして、資料で後ろのほうで参考になりますのが10ページ目でございまして、こちらは図で描いておりますけれども、現行の規制体系でございますが、今の外為法令でも、非居住者等が議決権の50%以上ですとか役員の過半数を有しているという場合には、真ん中のところにあります日本法人、こちらについて影響力を及ぼしておりますことから、こちらの日本法人が投資をする場合には事前届出をしなければならないという居住者外国人投資家の規定がございます。国内のこちらの日本法人にも審査の網がかかっていくということでございますけれども、四角に描いておりますけれども、外国政府等の国の安全に係るリスクが高いというものが国外の非居住者である場合には、そちらが日本法人に対しても何かしら支配・影響下に置いておるということが認められる場合には、懸念もございますので、そういった場合に、こちらの国内投資家のほうに何ができるかといったところを考える必要があるというものでございます。

2ページ目に戻りまして、②でございますけれども、非指定業種に対しての網のかけ方ということでございまして、こちら、現状は非指定業種のほうで事後報告を求めているところでございますけれども、資料で言いますと11ページで、一番右の赤の四角囲みのところでございまして、ただ、こちらは事後報告のみということになっておりまして、特段の事前届出、審査というものが求められていない状況でございます。こちらのほうにつきまして、例えば国の安全に係るリスクが顕在化するという場合に、非指定であっても何かしら事後的に対応を考える余地がないのか。例えばマスクですとか日常生活の用品でございますけれども、パンデミックが発生する場合ですとか、何かしらの有事の場合ですとか、そういったときにそういった生活用品も非常な重要物資になると。コロナの場合もそうだったと思いますけれども、そういったような事情の変化みたいなことがあると思いますので、その場合に迅速に対応して何かしら外為法令の対象にするというケースも考えられるのではないかと思いますので、そういった対応で何ができるかというところがございます。

最後、2ページ目の3番の執行体制の強化でございますけれども、こちらにつきましては13ページ目のところに資料がございまして、現状、申し上げましたとおり、届出件数も大分増えております。また、安全保障環境の変化もございまして、投資の対象というところもかなりいろいろと広がってきて、分野も広がっているという状況ですので、そういった中で審査体制について強化する必要がないのかというところで、幾つか掲げております。

こちらのほうでこれまで部屋を拡張したり、財務局を活用していくといったところで、人員面の強化というのも財務省として行っております。

また、必要な対応としまして、関係省庁が広がってきているということでして、申し上げましたとおり、いろんな分野に対して投資が進んでいると、グローバル化が進んでいるということでございますので、対象が、経済産業省さんがメインではありますけれども、それ以外の総務省さんですとか、ほかのいろいろな業界を持たれている関係省庁とも連携して、こうした懸念投資家ですとか、そういったリスクに対してちゃんと感度を上げて対応しなければいけないというときに、ちゃんとした意識を持ってもらう必要がございますし、投資対象になれば審査も行っていくということになりますので、そういったキャパシティビルディングも必要になってくるということでございますので、こういった取組を今後どうやって進めていくかというところが課題になっております。

また、情報発信はもちろん当然必要ということでございまして、当方としてアニュアルレポートなど昨年から発行しておりますけれども、投資家の方々に現状ですとか、どういった法枠組になっているかといったところをしっかりと紹介していくことも必要になってくるだろうと思っているところでございます。

それでは、私の説明はこれで以上とさせていただきます。

○神作分科会長御説明どうもありがとうございました。

それでは、これから意見交換に移りたいと存じます。委員の皆様におかれましては、御発言を希望される際は、御臨席の委員の方は従前どおり名札を立てていただき、また、オンラインで御参加の委員の方は、事前に事務局より御案内いただきましたとおり、御発言の意思をシステム上の挙手の機能を使ってお知らせ頂ければと存じます。御臨席の委員の方から先に御発言を頂き、次にオンラインで御参加の委員の方に御発言を頂きたいと考えております。順番が前後してしまうことがあろうかと存じますけども、その場合には御容赦いただければと存じます。

それでは、御発言下さい。

木村委員からどうぞ。

○木村委員御説明ありがとうございました。私からは、ちょっと長くなるかもしれませんけど、国際金融情勢と対内直接投資審査制度それぞれについて申し上げたいと思っています。

国際金融情勢、これはG20に関してですけど、9ページの債務持続可能性に関する閣僚宣言、これがまとまったというのは大変有意義だったと思います。厳しい国際情勢を反映して、G20の協調が難しくなっていて、共同声明もまとまりにくくなっているだけに、日本が議論をリードしてきた分野で宣言がまとまったということは、今後の債務の透明化とか途上国支援を図る上で重要な役割を果たすので、日本の国際社会への貢献度が大きいという意味で、非常に意義のあることだと思います。

その上で1つお伺いしたいんですけど、G7、ウクライナ関連で、ロシアへの制裁についてお伺いできればと思うんですけど、特に伺いたいのは、アメリカの姿勢ですね。トランプに聞いてくれという話かもしれませんけど、トランプ大統領は、一時、プーチン大統領と会談するなど、ロシアに対して極めて融和的な姿勢を取っていましたが、ここに来て制裁強化のほうにかじを切っているというふうに見えますが、中途半端な融和はロシアの時間稼ぎに使われるだけなので、制裁の強化、圧力路線に戻ってきたというのは評価はできると思いますが、じゃあ、これはどこまで本気なのかなという疑問もありまして。特に先ほど池田課長からも御言及がありましたけど、ロシアの石油会社への制裁とかが果たしてどこまで効果があるのかということも含めて、日本政府としての見方というのを教えていただければと思います。アメリカの本気度によって、G7でまた日本がサハリンとかセカンダリーサンクションとか様々な同調を求められるケースも考えられますので、そうしたことも含めてアメリカの姿勢に関してもしお伺いできればということです。

それからあと次に、対内直接投資審査制度、これは様々な論点整理を今回示していただきました。当局の方々の問題意識及び見直しの方向性に関しては認識を共有します。基本的にはこの方向性でいいのかなと思います。特に今後の審査制度の在り方については、8ページ以降にある安全保障等の環境変化への対応、言わば法の抜け道を利用したケースに対する審査の厳格化、重点化というのは必要だと思います。一方で、近年の事前届出件数の増加とか、当局のリソースが限られている実情も鑑みて、審査の効率化、実効性確保というのも必要だと思います。こうした審査の効率化、実効性確保は、投資家側の負担軽減につながるとともに、当局としても安全保障の環境変化に対してより重点的に取り組めるなど、メリハリを利かせた審査体制の構築にも資すると思います。それは最終的に健全な投資の促進と経済安全保障の確立という2つの原則の両立をさせることにもつながると思います。

ここで質問なんですけど、高市総理が片山大臣への指示書で対日直接投資の審査高度化を求められたと伺いました。この審査の高度化というのは、はっきりしませんが、具体的にどういうような意味なのか。分科会で今議論している内容と同じなのか、あるいは違うところがあるのか。違うとすれば、より審査を厳格化することになるのか。あるいは、自民党と日本維新の会の連立政権合意書で、来年の通常国会で日本版CFIUSの創設を目指すというふうにあるんですが、これは今の分科会の議論から、また方向性として似ているのか、さらに広がっていくのかに関しても、もし御教示いただければということです。私としては、やみくもに審査を厳格化するのではなくて、先ほど申し上げたように、審査体制にメリハリをつけることが健全な投資の促進と経済安全保障の確立という2つの原則を両立させることにつながって、最終的には総理の目指される強い経済にも資すると思うんですが、今後の議論の方向性に関しても御教示いただければ幸いです。

以上です。

○神作分科会長どうもありがとうございます。

多くの委員の方から御発言の希望を頂いておりますので、いつものように、時間の関係上、質問をまとめて行っていただき、回答のほうもまとめて行っていただきたいと思います。

それでは続きまして、佐藤委員、御発言ください。

○佐藤委員詳しく御説明いただき、ありがとうございました。私からは対内直接投資審査制度について、幾つか質問、あるいはコメントをさせていただきたく思います。

今2ページにまとめられている全体のサマリーがありますけれども、健全な対内直接投資の一層の促進を図っていくという1つの考え方と、あともう1つは、国の安全等を損なうおそれのある投資に対してはリスクに応じて適切に対応すると。2つやはり動きが違う対応をせざるを得なくなっているところがジレンマだというのは、これまでのこの分科会で御説明いただいていて、よく理解しているところでございます。

そこで、私からのコメントですが、やはり事前届出の件数がこれだけ増えている中、事後的な対応というところをもう少し考えていく必要があるのではないかなというふうに考えております。

例えば幾つかございますが、当初は議決権の50%を保有していなくても、後からそこが変わって、後から事後的に投資をして50%保有するようになってしまうであるとか、あと、実際には指定業種でないんだけれども、指定業種以外のところで、いや、実はやはりリスクが顕在化してしまう、そうしたところも事後的に対応せざるを得ないだろう。事後のモニタリングに関しても、実効性を強化するということが13ページにありましたように、事後的なところにもう少しかじを切っていくほうがやはりいいのかなと。

その事後的な対応というものの難しさもよく理解できるのですが、一番最後のページの各国の比較を見ても分かるとおり、日本の件数が突出しているというのは先ほどの御説明のとおりですが、単純に平日だけでカウントしても1日10件以上の対応になって、これはやっぱり関係各所の協力があってもそれなりに時間を取られてしまう。そうした中で、この一番最後のページの表では、事後介入を行っている国も幾つかもあるようですので、そうしたところとの連携とか情報交換を図って、日本と違う、日本は固有の対応を迫られることもあるかもしれませんが、それでも事後的な対応をもう少し強化していく方向がよいのではないかなと。過去のこの分科会での御意見等を伺っていて、今回の御説明も伺った上で、そのように強く感じた次第です。

幾つかの論点が混ざっておりましたが、私からはこの1つのコメントとしてまとめさせていただきます。以上です。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

続きまして、江藤委員、御発言ください。

○江藤委員ありがとうございます。本日も非常に詳細な御説明を頂き、大変勉強になりました。ありがとうございます。

今の佐藤委員のお話に恐らく関わる部分があると思うのですけれども、私、中国政治を研究している身として、やはり問題ベースで考えた場合に、安全保障に関わる投資案件をフォローできる議論として捉えられるのかというふうに、申し訳ありませんが、少し国際政治的なふわっとした観点からコメントさせていただきます。

やはり気になりますのが、非居住者であるということを起点にして議論が起きていること、あるいは、先ほどお話のあったように、事後的に50%以上を確保するというような、どのような手を打ってくるのかということを考えたときに、もっと複数の手の打ちようがあるような議論にとどまってしまう可能性があるというふうにお見受けしたところです。

例えば端的に言ってしまえば、中国が一体影響工作するのにどういうふうに手を打ってくるのかと考えたときに、こうした枠組が出た場合に、日本国内にいる誰かを介して徐々に影響力を発揮していくような形での裏道を通ろうとするであろうと思われたときに、事後的なことと、加えて、やはり行為者ベースではなくてアクションベースでこれをフォローするような枠組というのが考えられるのではないかと思います。

また、これに関連して、少し話がそれますけれども、今般の米中首脳会談で、あまり報道では出ていないんですが、中国側が気にしていたことの1つの案件として、アメリカの輸出管理規制の強化というのがありまして、エンティティリストに掲載されている企業の50%以上株式を保有している子会社に同じ状況を提起していると。この案件、1年どうやら延長になったようだということではあるんですが、オランダで発生したネクスペリアの事案を見ても、他国に対しての副作用的な影響が出ることをアメリカ側が打っていて、中国側はこうしたことに対して強い不満を表明しておりますので、恐らく学んで同じことをやる可能性が出てくるということになろうかと思います。

そうしますと、他国がエンティティリストを利用してかけた規制に対して、日本国内の子会社が影響を受けるというような少し複雑な事案も考えられることになりますので、これはその前の木村委員の御指摘にあったような日本版CFIUSということも議論として上がってきているように、極めて情報をどのようにフォローしていくのかという経済インテリジェンスが背景にあるべきであるというふうに今感じております。

今回は制度そのものの御議論ですので、そこからはみ出す提案になりますけれども、やはり機能させるための経済インテリジェンスの在り方というものをより大きな枠組として考えられた上で、その中に当てはめる形で各制度の構成ということを考えられると、より我々にとって実は理解しやすいと申しますか、説明を伺っていて納得感があるということではないかなというふうに思いましたので、コメントとして提案させていただきます。

以上です。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

続きまして、会場で御参加の清水(剛)委員、御発言ください。

○清水(剛)委員清水でございます。

今の佐藤委員、江藤委員の話に関わると思うのですけれども、私がお話を伺っていて理解する限り、基本的には投資審査というのは投資したときのタイミングで審査するというふうに考えられるわけですけれども、今、実際に上がってくる問題としては、やはり投資をした後にどういう対応が出てくるかという話だと思うんですね。そうしますと、金商法の適時開示ではありませんけれども、ある種の適時開示的な発想というのがもう少し強くあってもいいかなというふうに思っているところでありまして、個々に出てくる話として、例えば親会社が変わったときとか、あるいは内容変更とか、リスク軽減措置の場合にも内容変更というようなものが出てきているかと思うのですけれども、それはもう少し全体としてそのような事後的な報告の枠組のようなものを認めていくというような形で、少し全体として立てつけを強化しておくとよいのではないかという印象を、これは佐藤委員と同じ意見になりますけれども、受けました。そのようなものをつくっておきますと、事後的な報告に対してどう対応するかという話もしやすいかと思いますので、事後の報告という1つの枠組をつくるという方法がいいかなというふうに思っております。

私のほうからは以上であります。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

続きまして、植田委員、どうぞ御発言ください。

○植田委員いつも丁寧な御説明をありがとうございます。2点、1つは投資の話、もう1個は国際情勢の話があります。

まず、投資の話で、皆さんの続きで、思っているところをコメントさせていただきます。

前回、基準の1%がどうのという話をしたので今日はやめておきますけれども、やはり基となるのが約3,000件という数、アメリカの300件ぐらいに対して10倍になっているということで、皆さんどうしたものかなと考えているということです。もうちょっとなぜかというのを調べてみて考えるべきと思います。

ちょっと気になったのが、一番最後の19ページ、各国のG7対照表というのが載っていますけれども、これを見ますと、対象となる事業、どこも「指定業種」なんですよね。カナダだけが「全業種」と書いてありますけれども。だから、カナダ以外のほかの国は指定業種なので、こういう国が思っている指定業種と我々の考えている指定業種というのは果たして同じなのかというのがちょっと疑問に思います。

といいますのも、16ページに指定業種表がありますけれども、もちろんコア業種以外にも変なものがいろいろ入っているようですけれども、コア業種に関しても、一体何が安全保障上大事かということを改めて問い直さないといけないんじゃないかという感じもいたします。

一番上に書いてある武器とか原子力、宇宙、軍事転用可能、これは明らかに軍事関係ですので、誰もコア業種になることは問題ないと思います。また、下のほうの電力、ガスとか、上下水道、通信、鉄道など、この辺もいわゆる社会インフラですので、これも比較的皆さん、私もそうですけども、大事だと、安全保障上大事だと思うんです。けれど、ほかのものはだんだんと微妙になってきて、これはもしかしたら単にその産業を保護しているとか、業界に言われたからこれを入れたとか、そんなものも入っているんじゃないのかなとかという気もしないでもなく、こういうものが軍事とどう結びつくのかとか、社会的なインフラとどう結びつくのかということが肝要ですね。

いわゆる1つとか2つの企業、例えば今解消されましたけど、日産自動車はルノーがかなり持っていましたけど、日産自動車ぐらいの大きな会社でも軍事とはちょっと言いにくいので、当然ルノーが、また再び持つかどうか知りませんけど、そうあっても多分反対しにくいんだと思います。また、直近のUSスチール対ニッポンスチールの話でも、我々は非常にこれは安全保障とは違うだろうと思ったわけなんですよね。当然、日本製鉄が買収してもいいんじゃないかと思ったということもありますので、そういう意味で、改めて業種をしっかりと見直すというのもあるのかなという気がいたしました。

それが1つのコメントです。

もう1つは、国際情勢のほうに行きます。3ページの「IMF世界経済見通しの概要」というのがありますけれども、3ページの下のほうに「必要な政策対応」というのがあります。これなんか当たり前のことがつらつらと書いてあって、非常に当たり前過ぎてあれと驚くのです。けれども、財政余力の回復と債務持続可能性の確保とか、その次の中銀の独立性確保とか、それから産業政策の規律ある運用というようなところというのは、当たり前過ぎて以前は書いてもいなかったようなぐらい当たり前だったのがしっかりと書かざるを得ないような状況に今なっている。そういう、今だけじゃないですけども、そういう状況にここ最近なっているということです。この辺、もちろん債務持続可能性は、開発途上国に対して言っていますけども、そもそもG7の中とかG20の中で、この債務持続可能性だとか中銀の独立性や産業政策の規律ある運用というのはどの程度先進国間で自分たちの問題として話し合われているのだろうかというのをお聞きしたいなと思います。よろしくお願いいたします。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

続きまして、河野委員、どうぞ御発言ください。

○河野委員ありがとうございます。毎回詳細な御説明をありがとうございます。私からは、1つ御質問と、それからあと何点かコメントをさせていただきたいと思います。

まず、御質問なんですけれども、これは先ほどの最近の国際金融情勢についての資料の6ページ目で、G7の財務大臣会合でロシアへの制裁を強化するための共同歩調を取るという御説明がございました。ただ、これ、G7だけで共同歩調を取っても、ロシアへの制裁がなぜ有効性がいま一つなのかといいますと、やはりそれは国際社会全体で一致団結した国連の安保理が決定したような制裁措置が取れていないことが問題ではないかというふうに理解しております。そうだとすれば、例えばロシア製の天然ガス、原油がアフリカ、あるいはアジアの国々に買われていくことについて、このG7の財務大臣会合では、そういった点のG7に入っていない国への圧力といいましょうか、措置といいましょうか、それはどのように認識されているのだろうかということを教えていただきたく思いました。

以上がまず御質問でございます。

あと、コメントは3点ございまして、頂きました資料、今度、対内直接投資に関しての御質問というかコメントになってしまいますが、まず1つ目は、7ページ目の間接取得者C、それから、同じように、10ページ目の国外での取得というところで、日本法を外国で行われる取引行為にどのような根拠で適用できるかという点について、かなり留意した措置が必要になると思います。もちろんこれをやらないと有効な措置は取れないというふうに考えますので、必要であることはもうおっしゃるとおりで賛成いたしますけれども、それを日本法の適用対象にどういう根拠で行っていくかということを慎重に御検討いただくべきであろうと思います。

同様に、19ページ、最後のページの事後的な経済活動に対する国の関与ということでございますが、これも必要であるということはもうまさにそのとおりだというふうに考えますが、ただ、経済活動の自由に対して国が何らかの形で作用を及ぼすことをどのように位置づけるかということについては、やはりこれは、直接投資の自由化と安全保障のバランスということと同様に、経済活動の自由と国家の関与ということのバランスをどのように取るかということの配慮が必要であろうと思います。

あと最後に、指定業種について、今、植田委員が御指摘になられた点でございますけれども、今、少なくとも国際法の世界では、「安全保障」という言葉は軍事に限定されないということが認識されるようになっていると私自身は理解しております。それは、経済安全保障ですとか、それから社会秩序の維持、あるいは社会の安全の維持ということも含めての安全保障というふうに、恐らく2000年か2010年代ぐらいからかなり大きな転換が起こっているというふうに考えます。そうしますと、やはり指定業種の考え方についても、例えば各国で指定業種が違うのは、その国の経済活動において、あるいは、その国の主たる根幹となる企業、あるいは業種が国によって違うということもあって、国によって指定業種が違うというふうに理解しておりますので、必ずしも軍事に限らないということも念頭に置いてこの指定業種は考えなければならないというふうに私としては考えております。

以上でございます。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

続きまして、澤田委員、御発言ください。

○澤田委員いつも大変分かりやすい御説明をありがとうございます。私のほうは、国際情勢のG20の債務持続性のところでコメント1つと、それから、スリランカがモデルになるのではないかということで、スリランカの債務再編の現状についてシェアしていただけることがあればということで質問1つなんですが、DSE、データ共有の取組が記載されたというのは非常に重要だというふうに思います。やっぱり中国の貸付けの実態というのは分かっておりませんので、それをまずは全部俎上にのせるということなんだと思いますが、データが出てきて実態が明らかになったというのは第一歩でして、その後どうなるのかということだとは思いますけれども。

それで、カーメン・ラインハート、世銀の前のチーフエコノミストですけれども、彼女たちのチームが二、三年前にNBERのワーキングペーパーに、中国のデットについて、データをとにかくかき集めてそれを明らかにするというペーパーを書いていたんですが、ついこの間、NBERのワーキングペーパーに改訂版が出ていまして、その内容をちょっとコメントとして御紹介したいと思うんです。

個別の中国の貸付けのデータを50年ぐらいのスパンで集めて、それを集計したという膨大な作業をされているんですけれども、基本的には表に出てこない隠れ債務であるというのがまず1つで、これはコンティンジェントライアビリティの問題をそもそも抱えているということなんですけれども。国有銀行、開発銀行とか、それから人民銀行とか、有商業銀行とか、そういうところが貸し付けていて、ほぼマーケットの金利で貸し付けているということで、しばしば石油とか鉱物資源とか、そういうものが担保になっているという特徴を持っていて、額を見ますと、直近、2017年ぐらいまで非常に伸びておりまして、特に一帯一路路線が打ち出された後に急激に伸びて、2017から2018の数字で、フローで見て25ビリオンぐらいまで、1年間それぐらい貸しているということで、借り手のほうの途上国は債務GDP比率が、当然ですけれども、非常に拡大したと。GDP比で1%ぐらいだったのが15%ぐらいまで拡大したということなんですけれども。それで、コンティンジェントライアビリティの問題が表面化したというのは、コモディティプライス、特に原油価格だと思いますけれども、下落したということで、焦げついて債務危機になっていると。

カーメン・ラインハートたちのデータを見ると、2018年、19年ぐらいまで急激に増えていたのが突然ゼロになって逆流するという、そういうような状況になっていて、これは、ラインハートたちは70年代、80年代のラテンアメリカ・デッドクライシスに似たようなブームバストの循環で、コンティンジェントライアビリティで、外的な環境が悪化したので当然焦げついたということを言っていて、そもそも契約が不透明で、それから、今焦げついているわけなんですけれども、一切元利とか金利の減免はやってないということで、リスケをするかニューマネーを供給するかという、そういう形で何とかやっているということと、それから、債権者、当然アフリカの国は中国だけじゃなくてほかの国とかMDBからも借りているわけなんですけれども、そういう協調が非常に欠如しているということで、ある意味、ラテンアメリカ・デットクライシスとちょっと違う、クレディター側が中国の国家銀行だということで若干──若干というか、かなり構図は違うんですけれども、焦げついた債務をラ米のときのようにどうやって粛々と処理していくかという、そういうことが今後10年ぐらい、あるいは10年以上起こるのではないかということで、ラ米の場合はブレイディ提案で結局債務を減免して──貸し手のほうが当時の東京銀行を含め民間銀行だったので、そういうような状況で最終的には債務を減免して、しかも、マーケットベースドアプローチということで、デットエクイティスワップとか流通市場の取引を通じて、そういうのを活用して処理するという形で、それでも10年以上処理はかかったということなんですが。

そうすると、中国の貸付け、これは次の段階は、ラ米のような歴史もあるわけなんですが、どうなるのかというところが気になるところで、そこで、スリランカのアプローチというのが1つ参考になるのではないかということで、日本政府がイニシアティブを取ってやられているということなので、少しそこら辺の次のステップについて、スリランカのケースも含めて何かシェアしていただけることがあればシェアしていただきたいというのが私の質問でございます。

以上です。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

続きまして、下坂委員、御発言ください。

○下坂委員ありがとうございます。私からは、対内直接投資のほうでちょっとコメントをさせていただきます。

資料2ページに現行制度の課題と考え方を整理いただいておりまして、大原則2つと、それから事務局にてお考えになっている改善点6つということで、御説明を頂きましてありがとうございました。

今後さらに具体的な方向性が示されていくのかなと思いますけれども、総論で恐縮でございますけれども、経済界といたしましては、やはり対外取引が自由に行われることが基本で、必要最小限の管理や調整を行うことで日本経済の健全な発展を目指すという外為法の大原則を踏まえていただくということがまず重要であると考えております。ただし、他方、昨今の安全保障に関する環境の変化を踏まえましたら、機微技術を有する日本企業の買収を通じて技術流出が起こるなど、経済安全保障上のリスクを考慮することも必要というふうに理解しております。

したがいまして、今後の見直しにおきましては、大原則を基に規制は必要最小限ということでございますけれども、特に必要性が高い分野においては、実効性のある規制を設けるという方向性が重要であると考えております。その際、ほかの国の法制度よりも規制が強くなり過ぎるということで、日本のマーケットが他国に比べて劣後するというようなことがないようにぜひ御留意を頂ければと考えております。今後の分科会におきまして、ぜひこうした観点を踏まえた検討をお願い申し上げます。

以上です。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

続きまして、会場で御参加の伊藤(亜)委員、御発言ください。

○伊藤(亜)委員伊藤亜聖でございます。

1点目は、経済見通しについて、中国経済の箇所で「財政拡張に支えられた堅調な国内消費」という言及がある点です。中国経済を見ている身としては、消費が相当弱っているというのが過去数年の認識でありまして、もしかしたらここでは財政拡張というところに重点があるのかもしれないんですけども、少し我々が感じている感触と違う評価なのかなというのは感じました。

今週の月曜日の夜に次期5か年計画の概要が公表されました。そこでも、重点政策として、中国にとっての国内消費の拡大ということが記載されていまして、必ずしも各論ははっきり書かれてはいないんですけども、そういう観点からも、むしろ中国政府としてはここが問題だなというふうに認識しているように感じております。

2点目として、次に対内直接投資につきましても一言申し上げます。

頂いた資料の6ページ目に届出者の国籍別事前届出件数というものがあります。これを見ると、左側の取得時と、それから最終親会社との間に乖離が多少あるということをお示しいただいています。シンガポール、香港が最終親会社の件数では順位を落としつつ、中国が増えているということで、想像するに、香港、シンガポール経由で中華人民共和国に最終親会社を置くような形態での投資が見られているのではないかと思われます。

ここでは、クロス集計としては上場会社、非上場会社という形なんですけれども、やはり気になるのは、後半の資料でお示しいただいている、いわゆる特定重要物資等関連産業との関わりといった面を、投資対象国とのクロス集計を出すとどうなるんだろうというのは少し個人的には気になった点です。恐らく件数としてはそれほど多くはないとは思うんですけども、気になったということですね。

もう1つは、この情報をもって、もちろん「重要な考慮事項となっている」ということはそのとおりでありますけれども、1つは、この情報を実証的に検証する手段があるのかということですね。私ども研究者は、例えばビューロー・ヴァン・ダイク社のオービスというデータを使って、とりわけ企業の所有構造をグローバルで見るという研究は結構あります。今回の場合それがどこまで通用するかちょっと私も自信はないんですけれども、当然自分での届出ということと、もう1つ、検証するデータといいますか、手段というのはあり得るのかというのは気になっております。英領ケイマンが279件といったときに、非常に判断に困りますよね。事実上情報がないような状況になり得るので、例えばそういうときにどういうふうに調べがもう一歩できるのかということです。

もう1点は、3,000件を超える応募ということで、絞るということは合理的かなと思います。もう一方で、資料13ページ目で「デジタル化への対応についても検討が必要ではないか」という記載がありまして、これはどういうことだろうなと想像するに、例えば大規模言語モデルなんかを活用してもうちょっと審査を効率化するということなのかなと思ったんですけども、もう少しこのアイデア、あるいは3,000件でもカバーできるような体制をつくり得るツールがあるのかなと私は思っていますので、そこは一言追加させていただきました。

それからもう1点。10ページ目なんですけれども、「みなし外国投資家」ということで、これは本当に大事な論点であろうかと思います。このときに、すみません、私の理解が追いつかなかったんですけれども、「外国投資家の計算」という手続を記載いただいているんですけれども、これはどういう計算なのか、お伺いします。後ほどもし補足いただければ幸いです。

以上です。ありがとうございました。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

お待たせいたしました。オンラインで御参加の委員の皆様から御発言を頂きたいと思います。

初めに、根本委員、どうぞ御発言ください。

○根本委員どうも丁寧な御説明をありがとうございます。

国際情勢について2点ほど質問なんですけれど、ほかの委員のお話にもあった政策対応のところですかね。ここを読んだ印象として、関税の問題もありながら、いろんなリスクがありながら、それほど大きな、経済が大変ダメージを受けているという感じでもないというふうに見えたんですけれど、一方で、他の委員のお話にあったのは、例えば中国で国内成長率が弱くて実質ドライブをかけているとか、米国でも債務が、財政赤字の均衡化が全く見えないとか、そういう中で、グローバル・インバランスとしてはどうもよくない方向に行っているんじゃないかなと思うんですけど、その辺りはどういう受け止め方なのかなというのを伺いたいなということが1つと、あとこの中には記載がなかったんですけど、アルゼンチンが最近危機を繰り返していますけど、通貨ということで。そして、アメリカが非常に多額のスワップ協定をつくってとか、援助されているみたいなんですけど、こういう比較的ユニラテラルなもの、そしてルールベースではない援助のようなことはどういうふうに見ていらっしゃるのか、その辺の御見解を伺いたいと思いました。

あと、対内直接投資は、他の委員の方がおっしゃっていたことなのでそれほど付け加えるところはないんですけど、大原則、自由な投資を支持しつつ、適宜見直しされるというところ、そしてそこの項目自体は賛成しております。他の委員もおっしゃっていたような指定業種とそれ以外ではかるというところもかなりいろいろ限界があるみたいなものなので、経済安全保障という観点からぜひ見直して、メリハリのある対応をしていただければと思います。

また、事後的なモニタリングというのも、できればやっぱり強化していきたいと思います。それにはやはり体制の強化というのがどうしても必要ではないかと思います。前に伺ったときは、かなりまだマニュアル的にやっていらっしゃるというような面もあるということだったんですけど、そこはぜひデジタル化を進めていただきたいですし、あと、生成AIの活用とか、こういうものも考えられるのではないかなと思います。3月に金融庁でAIのディスカッションペーパーを出されていて、官庁での例なんかも出されていると思うんですけれど、もちろんいろいろリスクとか限界はあるんですけど、そういうものも踏まえた上で、審査とかコンプライアンス、モニタリングに使える面もあるのではないかなというふうに、これは意見としてですけど、そういうふうに思いました。

以上でございます。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

続きまして、亀坂委員、どうぞ御発言ください。

○亀坂委員ありがとうございます。私は対内直接投資審査制度に関しまして、3点コメントさせていただければと思います。

まず1点目なんですけれども、資料の7ページ目に関することです。7ページ目の最初の箇条書きですね。「事前届出を行った外国投資家が事後的に別の外国投資家に買収された場合等」とあるんですけれども、この問題は、私は2019年の外為法改正の際にも経産省の産業構造審議会の安保の小委員会では指摘させていただいたつもりでございまして、議事録、残っているかどうかよく分からないんですけれども、7ページのような問題はちゃんと網をかけなきゃいけないものと当時から、5年以上前から思っております。ですので、ぜひ対応をと思います。

これが1点目で、次、2点目なんですけれども、資料の13ページ目に関することです。真ん中辺にある「関係省庁・外国当局との連携」の「関係省庁と連携し、政府全体として審査能力の底上げを図るとともに、事後モニタリングの実効性強化を推進」と書いてあるんですが、これも2019年の外為法改正に関する議論のときから話題に上がっていたと思うんですけれども、どれだけ事後モニタリングに対応できるのかという問題があって、あと、産業構造審議会の小委員会のほうでさらにそれに加えてコメントさせていただいたはずなんですが、機微情報の流出は事後モニタリングでは、そもそも情報流出した後ではもうアウトなんじゃないかということもコメントさせていただいたと思うんですね。だから、情報が流出した時点で、例えばデュアルユースの技術情報とかが流出した時点でもう取り返しがつかないんじゃないかということを5年以上前にもコメントさせていただいたと思います。ですので、事後的なモニタリングを強化することももちろん重要なんですけれども、それには限界があって、そもそも情報流出を食い止める必要があるんじゃないかと思います。今の高市政権、情報管理を強化してくださるようなので、いま一度そういったことも政府全体として御検討いただければと思っております。

3点目に関しては、既に木村委員ほかの委員からもコメントいただいたことに関するものなんですけれども、やはり外為法で対応するというのにはそもそも無理があるんじゃないかという問題です。これも2019年の外為法改正に先立って経産省の産業構造審議会の小委員会で議論させていただいたことだと思うんですけれども、ほかの委員の方々も御指摘のとおり、外為法は原則自由としていて、かつ居住者と非居住者で対応を分けているので、そちらの審議会では、そもそもの問題として、外為法が原則自由としているのに、その法律をもって対内直接投資審査制度について対応するということ自体にやっぱり無理が生じているんじゃないかという意見もあったと思います。当時から私は、日本版CFIUSの創設も同時に検討が必要なのではないかということを申し上げてきました。2019年当時は間に合わないとしても、そろそろ本当に日本版CFIUSの創設とかも、少なくとも検討が必要であるように感じております。当時は、そういった検討をしたとしても国民の合意が得られないんじゃないかということも小委員会の関係者の方とお話ししたんですけれども、今、国際情勢が非常に大きく変わってしまいましたので、やはり今、日本版CFIUSの創設とかをいま一度少なくとも検討してみてはいかがかと思います。

以上です。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

続きまして、オンラインで御参加の五十嵐委員、御発言ください。

○五十嵐委員ありがとうございます。私からは、対内直投の審査制度について発言させていただきます。

資料②の2ページにおまとめいただいた課題と考え方は、前回の分科会の議論をベースに整理いただいており、基本的に賛同いたします。特に事前届出件数の増加に伴うリスクに応じたメリハリ付けやリスク軽減措置の明確化と実効性確保の必要性は、現場の実務感覚から見ても極めて重要な論点だと感じております。

その上で、先ほど亀坂委員からも御発言ありましたとおり、今回の議論は総じて日本版CFIUS構想の初期的な検討段階に位置づけられると理解しております。これまで我が国の外為法制度が指定業種に限定した事前届出型を基本的に運用されてきたのに対しまして、今後は非指定業種への投資や、事後的に間接投資すなわち最終親会社の変更などが生じた場合なども含めて、政府による事後的な介入をどう位置づけるか、制度的にどのように見直していくかというところが大きな焦点になっていると理解しております。

現行の制度ですと、非指定業種への投資は事後報告にとどまり、リスクが判明しても政府が介入できない構造になっておりますが、今後はリスクの高い投資家による非指定業種への投資、資料の11ページでおまとめいただいておりますような場面で国の安全に対するリスクが顕在化した場合の対応が今まさに課題として指摘されているという理解です。

他国では、こうした状況に対して法的な介入が可能な枠組が広がっておりますので、義務的届出の対象外であっても政府が国の安全保障上必要があれば事後的に審査を行って、必要に応じて株式売却命令などを発出できるような制度、この辺りも視野に入れて今後制度設計を検討していく必要があろうかと思います。

その中で最も重要なのは、単なる規制強化にとどまらず、安全保障の確保と対日直接投資促進の両立を図ることでございます。この観点から、先ほどのリスク軽減措置、現状では一方的なといいますか、投資家の誓約という形になっておりますけれども、そこの点も含めて、投資家と発行会社と政府の3者が共同してリスクを管理する、実効性と予見可能性を兼ね備えた制度設計を検討する必要があると考えております。

その上で、個別に大きく3点申し上げます。

1点目として、リスク軽減措置の実効性確保、資料の5ページでございますけれども、現行制度では外国投資家が届出書の「経営関与の方法」欄にリスク軽減措置を記載するという形で運用されておりますが、ここの点について法制上の明確化が必要であろうと理解しております。その際には、先ほど申しましたとおり、発行会社、被投資先も当事者または義務の履行者として一定程度関与させる仕組みの検討も必要な段階に入っているのではないかと考えます。米国のCFIUSなどでは、ミティゲーションメジャーズにおいて発行会社も一定の関与をする、例えば発行会社が自ら外国投資家から機微情報を遮断する体制を構築するですとか、セキュリティ委員会を設置して外国投資家の経営関与を監督するといった考え方もあろうかと思いますので、この点も含めて検討する必要があろうかと存じます。発行会社自身も一定の統制体制を整備してリスク軽減措置を履行するような仕組みの導入の可否も含めて今後検討を進めることが、最終的には制度の高度化、透明化に資すると考えます。また、リスク軽減措置の内容そのものを公開する必要はないとしても、リスク軽減措置が存在するかどうかといった最低限の情報については、今後は秘密指定の対象から除外して透明性を確保する試みも考えられるかと存じます。

2点目として、保護の対象の再定義といいますか、重要技術、重要な戦略的技術にこれまで焦点が当てられてきましたが、現在は重要なデータも国の安全保障上の重要な資産となっております。先ほど事後介入では遅過ぎるのではないかという御指摘もございましたけれども、私もその点、賛成でございます。AIやクラウドの技術の発展をも背景に、データのアクセス性や脅威点が安保上のリスクを生むケースが増えておりますので、日本の対内直投審査制度において明示的に重要なデータも保護対象とするということも考えられてよろしいのではないでしょうか。他方で、サイバーセキュリティや機微的なデータの保護に関連しない業種、単なるソフトウエアの代理業務やローカライズ作業を中心とした情報処理サービス業などについては、メリハリをつけるという観点から、審査の対象外する方向で整理すべきと考えております。

3点目といたしまして、合理化、予見可能性の確保でございます。制度を厳格化するばかりでは、対日投資の活性化にブレーキがかかる懸念がございます。したがって、リスクの低い投資については合理化を進めて、例えば事前届出の対象としないであるとか、あるいは事前届出の手続を簡素化する試みが必要かと存じます。具体的には、一例として、役員選任に係る届出のうち、同じ候補者の再任議案については、その候補者の属性が外国政府関係者に該当してしまったなどの変更がない限り、簡素化、緩和が考えられるかと思います。また、同じく役員選任に係る届出のうち、ほかの株主、特に日本法人の指名権行使に応じて行う議決権行使の場合は、株主間契約によって賛成義務があることから関係者という定義に当たってしまうわけですけれども、ここについても簡素化が考えられるように思います。また、非上場株式会社の株式における少額、あるいは低い割合の投資につきましては、免除要件を使いやすくすること。日本法人の100%海外子会社や海外設立ファンドによる投資については、事後報告の対象に切り替えること。それから、電気事業法上の発電事業に該当しない類の小規模発電や蓄電設備など、こういったものについては免除制度を柔軟化することなどが例として考えられるように思います。

最後に、資料の18ページに「外国政府等の影響を受ける外国投資家に関する取扱い」として非常に分かりやすい図をお示しいただきまして、ありがとうございました。こちらは前回の分科会でも私が発言したところですが、この図を改めて見ますと、一番左側、外国金融機関に該当する投資家による投資に関しては、コア業種、あるいは特定コア事業者、本当にコア中のコアといった事業に関しても、一番シンプルな免除基準、下の3段表の一番上の免除基準①②③というブルーの色分けの部分だけをクリアすれば包括的に免除されてしまう。このような立てつけは、やはり国の安全保障リスクの観点から再検討の余地があるように思われてなりません。確かに、金融機関ということで一定のスクリーニングが得られているということ、加えて、特定外国投資家、つまりその背景に外国政府の影響がある場合は、外国金融機関であったとしても、図表の右から2番目のカテゴリーとして一定の規制がかかるという御説明を前回の分科会で頂戴しましたが、この辺りも含めて、さらなる上乗せ基準などが全く必要ないのかといったところも含めて検討していただきたいと思います。

以上でございます。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

続きまして、オンラインで御参加の伊藤由希子委員、どうぞ御発言ください。

○伊藤(由)委員質問というかコメントになりますが、関税についてコメントしたいと思います。

こちらは関税分科会ではないので、ちょっとそれたコメントになるかもしれませんけれども、関連としては、IMFの世界経済見通しなどでも保護貿易という形で載っているかと思います。ただ、こちらの世界経済見通しなどでは、関税ショックは小さかったというような形が書いてあって、まだまだあまり危機感がないのかなというふうに思っておりますが、これは結構特定業種に絞ってみるといろいろ影響があり得るというふうに考えております。

例えばなんですけれども、米国のMFN制度で今後医薬品の価格がどうなるのかというようなことが結構欧州の経済団体、それから製薬団体から懸念されておりまして、具体的にどういうことが起こるかというと、米国が世界の中で最も安い単価を参照して米国の価格を決めるということをもし本当にやった場合に、日本の価格を参照したくないという欧米の製薬メーカーを中心に、じゃあ、日本にはもう上市をしないと、申請をしないというような形の行動を取り得る可能性がある。いわゆる昔からドラッグロスと言われている概念だったんですけれども、このドラッグロスというものが今後関税政策によってはさらに拡大する可能性もあり、また、関税のあるなしにかかわらず、日本の市場はどんどん小さくなってきているので、スタートアップの創薬メーカーなどですと、昔ながらの製薬メーカーと違って、日本にはわざわざ革新的な医薬品、新薬は導入しないと、導出しないというような決定をしているようなところも、まだ顕在化していないものの、今後そのリスクが十分にあると。

その点でちょっと関わるのが資料②の指定業種に関することなんですけれども、これは、コロナのときに、感染症に係る医薬品は、やはり国内安全保障の関係で重要だということで業種指定されたんですけれども、同じような形で、日本に医薬品が入ってこないというような形の安全保障上の危機が顕在化し得る可能性があってですね。同じ状況を抱えているのが実は韓国で、韓国も割と国際水準に比べると徹底的に薬価を下げている国の1つなんですけれども、韓国の場合は、政府と製薬メーカーと非常に協働して、ぜひ韓国にドラッグロスが起きないようにという形で、かなり米国との交渉に臨んでいるというふうに聞いております。

ちょっと全体の関税の影響と、それがこちらでの議論かと思うんですけれども、やはり関税分科会などもあることから、関税が特定の業種において日本の貿易体制を大きくゆがめる可能性についても今後ぜひ注視して検討いただきたいというのがコメントになります。

以上です。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

続きまして、オンラインで御参加の杉山委員、どうぞ御発言ください。

○杉山委員ありがとうございます。

対内直接投資審査制度に関連してですが、指定業種以外の投資についてのリスク対応についてですけれども、投資受入れ企業側のリスク管理体制の強化も非常に重要なのではないかというふうに考えております。これについては現在どのような取組が行われているのかについてお聞かせいただければと思います。よろしくお願いいたします。

○神作分科会長どうもありがとうございます。

ほかに御発言の御希望はございますでしょうか。よろしいでしょうか。

もしよろしければ、これまで頂いた御質問ですとか御意見に対して御回答ないしは事務局の側からコメントがございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。

○春木調査課長調査課長の春木ですけれども、手分けして回答したいと思っていますけれども、まずは、対内直接投資審査のほうにいろいろ貴重な示唆に富むアドバイス、御意見、御質問を頂きまして、非常にありがとうございます。こちらも参考にしながら今後検討していきたいと思っています。

私から答えられる範囲で答えまして、実務に関係しているところにつきまして、室長とも手分けして回答したいと思っています。

まず、順番どおり頂いた点で振り返りますけれども、まず、木村先生のほうから、対内直接投資審査の高度化の話ですとか、CFIUSの話を頂いておりました。実際、片山大臣に対しての総理指示事項というのを具体的にちょっと御紹介しますと、「対日直接投資審査を高度化する枠組みを検討する」というふうになっておりまして、ここでは「枠組み」というのが書いてあります。なので、普通にこの文章を捉えますと、基本的には体制整備ですとか、そういったものが念頭に置かれて、こういった指示が出ているんじゃないかなというふうに理解はしておりまして、同時並行的に、日本版CFIUSの話、こちらのほうにつきましても出ておりますが、これは自民党と維新の合意事項の中に、令和8年度通常国会で日本版CFIUSの創設を目指すというふうに明記されておりまして、8年通常国会、すぐという話ですので、こちらは喫緊の検討課題になっておりますので、先ほどの「枠組み」という意味合いからは、体制の強化ですとか日本版CFIUS、こういったものは恐らくリンクして検討していかないといけないのだろうと捉えているところでございます。

佐藤先生のほうから、事後モニタリング強化の話がございまして、こちら、いろいろほかの各先生方からも多かったと思うのですけれども、現状では、非指定業種への投資でも10%超の議決権を持つというケースにつきましては、投資について報告を求めるということを行っておりまして、それについてまたしっかりとモニタリングしていかないといけないというふうなことは資料にも書いてあったとおりです。事前届出が非常に件数も増えているところでございますので、体制面の強化が必要だというふうにも捉えておりますし、また、事後のモニタリングでどういったところに実際焦点を当てているのか、といったところは、室長のほうから後ほど補足していただきます。

あと、江藤先生のほうから経済インテリジェンスの話がございまして、こちらにつきましては、これも自民党と維新の合意事項ですけれども、こちらでは、令和8年通常国会において、内閣情報調査室を格上げし、「国家情報局」を創設するというふうに明記されているところでございまして、こちらもかなり喫緊の8年通常国会の話ですので、こちらをどう進めていくのか。その中で、先ほどの投資審査の文脈でもどういった関与を求めていくのか、そういったことが検討課題に上ってくるのだろうと理解しております。

清水(剛)先生の御指摘の事後の話につきましては、また室長からの説明のところで回答したいと思っております。植田先生のほうから指定業種の絞り込みの話もございました。こちらのほうは、我々の資料でも、サイバーセキュリティの観点で、本当に真に必要なものにしているのかといったところも合理化対象としての検討事項でも挙げさせていただいておりまして、そういったものも必要じゃないかなというふうに考えておりますが、あと、他国との比較につきましては、また室長から現状どういったところに差があるのかとかを説明させていただきたいと思っています。

河野先生のほうから、今回の提案内容というか論点についての法的な根拠というところの御質問がありまして、こちらも後ほど室長から回答させていただきたいと思います。

下坂先生のほうから、他国よりもあまり強くないような規制の内容についての御指摘がございまして、こちらはしっかり留意して進めていきたいというふうにも思っております。

伊藤(亜)先生のほうから、実証研究の課題、どういったものが可能なのか。また、デジタル化というものがどういったことができるか。こちらについて後ほど室長から現状の我々の持っているデータですとかを紹介させていただきたいと思っております。

「計算」の10ページ目の表現でございますけれども、こちらのほうは外国投資家が主体になって運用業務をお願いしているケースということを想定しておりまして、例えば運用委託などを行って、経済的利益自体は外国投資家に帰属しているケースなどを想定しておりまして、表現としては解釈上「計算において」という文言をお示ししてきたところでございます。

根本先生のほうからは、事後強化、体制強化のお話がございまして、こちらをしっかりと踏まえて考えたいと思っております。

亀坂先生のほうから、高市政権下でのこういった審査制度の強化ですとか日本版CFIUSのお話がございまして、こちらは先ほどちょっと申し上げたような点とかぶっておりますので、自民党、維新の合意事項なども踏まえての検討になろうかと思っております。

五十嵐先生のほうから、非指定に対しての強化ですとか、リスク軽減措置の明確化、審査の合理化、いろいろ御指摘いただきまして、非常に参考にしないといけないというふうに思っておりますので、こちらの御指摘をしっかり踏まえて今後考えたいと思っておりますし、また、外国金融機関の18ページの御指摘もございましたので、こちらも検討課題と考えております。

あと、杉山先生ですが、こちらは、被投資会社の審査体制、こういったものについて実務の観点から、室長から回答したいと思っております。私からは以上とさせていただきます。

○宮地大臣官房企画官企画官をやっております宮地と申します。どうぞよろしくお願いいたします。御質問、御意見をたくさん頂きまして、大変ありがとうございました。

私のほうからは、多くの方々から御指摘、御質問いただいた事後の対応について少し補足をさせていただければと思いますけども、御案内のとおり、対内直投審査制度自体は、基本的には投資の事前審査というところに軸足が置かれているということになりますけども、その後の株主行為についてもフォローアップが必要であるという重要性というのは、かなり前から認識をされていまして、実際、今日、佐藤先生、江藤先生、清水(剛)先生はじめ多くの方々から御指摘いただいたとおり、そういった問題意識の観点から見直しを進めていく必要があると思っております。

2019年の法改正でも、ある意味、株主行為の届出というのを入れるということで、そういった対応を取ってきておりまして、それで執行しているということではあるんですけども、その後の施行状況を踏まえて、あるいは諸外国の取組を踏まえて、例えば今回お示ししたとおり事後に親会社が変わったときに捕捉をできないのではないかといった問題点だとか、あとは非指定業種について本当にリスクが顕在化したときにどうするのかという問題意識を持って、まさに検討しているというところでございます。

それで、そういった御議論を次回以降また詳細にさせていただきたいと思っているんですけれども、その中で、まさに河野先生から御指摘いただいたような点も非常に大事だと思っていまして、例えば間接取得者と直接保有者について言えば、国外での取引なので、立法管轄権はどうなるのかというところは非常に大事な論点だと思います。

諸外国でもこういった制度がございまして、実際のところ、間接的ではあっても本邦企業の議決権を持つということになりますので、管轄権は認められるというふうに理解をしてございますけれども、同時に、執行の実効性であるとか、投資家から見ての明確性というのも十分留意をしないといけない点だと思いますので、これはしっかり制度設計も含めて議論をしていただく必要があるというふうに認識をしております。

それから事後的な対応という話でもう1点出てきた話としては、非指定業種の部分ですけども、全てを心配して非指定業種というのが全部事前の届出対象になっていくというのは、それはバランスが取れないということになりますので、そうした中で、実際に投資家のリスク属性に着目して、かつ、実際に問題が起きているような状況において何らか最低限の対応を取る必要はないのかという問題意識については、きちんと考えていく必要はあるということだと思います。同時に、これも河野先生から頂いたところですけれども、やはり投資財産の安定性という観点からも、それから、国際約束の整合性というところも十分留意をしないといけないというふうに承知をしておりますので、結果的にそこのバランスを取っていくことで、下坂先生はじめ多くの方から御指摘いただいた経済安保の確保というところと健全な投資の促進というところのバランスを取っていくということかなというふうに考えているところでございます。

それから、伊藤(亜)先生から御指摘を頂いた6ページの届出者の国籍別の件数の部分なのですが、あまり正面からお答えできる形にはならないかもしれないんですけども、これでまずお示しをしたかったのは、現行の制度におきましても、届出書の様式において、届出者の事業方針等に影響を及ぼすものとして、最終親会社の記載をしていただいているということで、投資実行段階ではそういった把握に努めてございますというのが1つでございます。

その上で、特定の国についてコメントは差し控えますけれども、例えばケイマンと書いてあるときに、実態がどうなのかというのは把握しづらいのではないかというのはおっしゃるとおりだと思うんですけども、これはまさにその最終親会社等として届け出られた法人について、議決権50%以上を保有している特定のものはないということかとは思いますので、実際の審査の段階で投資家の構造も含めてきちんと見ていくということが大事ということではないかなとは思ってございます。

こちらの6ページでも御指摘を頂きましたし、執行体制の13ページのほうでも御指摘を頂きましたけども、やはりデジタル化への対応というのは大事だと思っています。今も届出自体はオンラインでできるということではあるんですけれども、それが投資家さんの利便性に十分かなったものになっているかということと、それから、分析、処理の観点から、リスクの特定とかの部分も含めて、もっと活用のすべがあるのではないかということを前回も御指摘を頂きまして、必ずしも今具体策としてこういうことをやりますというのを明確に我々が申し上げられる段階にはないんですけども、これはむしろ我々の苦手分野としてしっかり認識をして、対応策をしっかり考えていきたいということで入れさせていただいている部分ですので、先生方からの御知見もお借りしながら対応を考えていきたいなというふうに考えております。

最後に、亀坂先生、五十嵐先生から御指摘を頂いたとおり、やはりデータであるとか技術というのは、一度流出してしまうとそれは取り返しがつかないのではないかという問題意識は我々も持っております。したがって、4ページのほうで少し書かせていただいたんですけれども、まさに今届出件数が増えている中で、届出の対象行為であるとか業種についての合理化自体は大事だと思っているんですけども、それと同時に、重要な技術、情報を保有している企業への投資というのがきちんと届出の対象になっているかということも見直しをしていきたいというふうに考えているところではございます。

ただ、同時に、これはあくまでも先ほど申し上げたとおり、制度の主眼というのは対内直接投資自体の審査ということでありますので、その上で発行会社さん、企業さん自身が機微技術、機微情報をどのように守っていくかというのは、ある意味、内外の関係を規定する外為法を超えてより広い世界で、経済安保推進法もそうだと思うんですけども、そちらでむしろメインで対応を考えていく分野でもあると思いますので、そこの補完関係というのをきちんと整理して、これまでの御指摘の中でもあったとおり、外為法だけでできるところというのはやはり限りもありますので、政府全体として対応すべき経済安保の課題について、全体パッケージで、かつ、法律ごとの補完関係、役割分担が明確な形で対応していくということが大事かと思ってございます。

最後に、五十嵐先生から多くの実務的な御指摘を頂きまして、今日、全部コメントというかお答えをすることはなかなか難しいんですけれども、リスク軽減措置についていろいろ御助言を頂きました。まさに我々が大事だと思っていますのは、今は届出を出していただいて、その後の事情変更に対応できないというか、我々としても、届出の段階でリスク軽減措置にコミットしていただいて、それが重要な投資の前提になっているわけですけれども、それが変わってしまうということになると困るので把握をしたいという我々当局側の目線と同時に、投資家さんからすると、事情が変わったので当初届け出たものについて内容を変更したいといったときに、そういった手続がないというところが課題かと思っています。そこに発行体さんが関与するという形自体は、届出制という法構成上なかなか今の時点で妙案がないんですけれども、ただ、制度の明確性と透明性の観点から、頂いた御指摘も踏まえてきちんと対応、検討していきたいなというふうに考えてございます。

残りを恵﨑室長にお願いします。

○恵﨑投資企画審査室長投資企画審査室長をしております恵﨑でございます。私のほうからも何点か補足をさせていただきます。

まず、植田先生のほうから、指定業種は諸外国と同様なのか、諸外国の状況も踏まえて見直すべきではないかという御指摘を頂きました。諸外国との関係につきましてですけれども、諸外国におきましても、審査をする対象の業種ということで、武器ですとか半導体ですとかAIですとか、そういったものを対象業種としているところもございます。諸外国は分野という形でやっておりまして、日本のほうが指定業種という形で省令や告示でより精緻に指定しているという部分はございますけれども、この点は河野先生からも御指摘ございましたように、何を審査の対象とするのかというところは、もちろんかぶる部分もございますが、何を守るべきかという観点がその国の事情に応じて違うところもございまして、それぞれの国で対象を決めているという事情も一方ではあるかと思います。その中で、届出件数が約3,000件と多いという中には、お示しさせていただいたとおり、サイバーセキュリティのような分野で届出が多いという指定業種の分野に係る部分もございますけれども、一方では、役員選任などの行為を対象にしているというところで増えているという部分もございますので、まさにそういった行為ですとか業種の内容を含めてメリハリをつけて、より効率的、実効的な審査ができないかというところを課題としてお示しさせていただいたところでございます。

また、様々、清水(剛)先生、佐藤先生はじめとして、事後モニタリングにつきまして、実効性を強化すべきだというところの御指摘も頂きました。今どういったことを事後モニタリングでしているのかというところを少し御紹介をさせていただきますと、例えば、非指定業種を営む会社に対する10%以上の株式取得、持ち分又は議決権を取得する場合につきましては、こちらは事後報告という形で報告を求めており、事後的に調べてみたところ、実は指定業種を対象としているものであって、本来これは事前届出が必要であったのではないかということをモニタリングしております。また、免除制度を使った投資につきましても、免除事後報告という形で事後報告を求めており、こちらにつきましては、報告された内容を見まして、これは免除制度が実は使えなくて事前届出が必要だったのではないかとモニタリングしており、そういったものが判明した場合には、届出者に対して報告を求めて、きちんと必要な措置が取れるというような対応を取ってございます。ただ、こうしたモニタリング、本省、また財務局含めて、いろいろと対応しておりますけれども、そちらの体制も強化が必要だというところはまさに御指摘のとおりでございまして、ここ数年、体制の強化もやってきているところでございますけれども、引き続きこの体制を強化して、審査能力、モニタリング能力を強化していく必要があると考えております。

最後に、杉山先生のほうから、投資を受け入れる企業側のリスク管理も大事ではないかという御指摘も頂きました。こちら、まさにおっしゃるとおりでございまして、投資を受ける企業に、対内直接投資審査制度という制度があって、投資を受けるときにはその投資が持つリスクなども含めて企業側のほうでも意識を高めていただくということが大事だと我々も考えております。その観点で、先ほどモニタリングのときに財務局というお話をしましたけれども、我々財務省は地方支分部局として財務局を各地方に持っており、これらの各財務局に投資調査官というものを置いておりまして、そこで投資を受け入れる企業の方々を集めた様々なセミナーを開いたり、また、個々の企業にこちらから訪問させていただいて、投資審査制度というものがあるんですと、こういった懸念ある投資というものも最近見られているので、投資のお話があるときには投資審査制度があるんだということを認識していただいて、届出を投資家の方々にはしていただくようにというところで、企業側も意識を高めてくださいといった制度周知・アウトリーチの活動もしてございます。こうした活動を通じて、まさに投資を受ける企業の側のリスク管理といったところにも我々は貢献していきたいというふうに考えております。

私のほうからは以上でございます。

○神作分科会長それでは、国際情勢についての御質問につきましては池田国際機構課長にお答えいただいてよろしいでしょうか。

○池田国際機構課長国際情勢につきまして、頂いた御質問、ありがとうございました。

まず、G7の財務大臣声明に関して、木村委員、それから河野委員から御質問、御指摘を頂きました。

まず、木村委員から、ロシアに対するアメリカの姿勢如何ということでございまして、戦術的な観点から様々な声明ですとか発言がアメリカから出されているということは承知しております。これをもってなかなかアメリカの真意というものが読みづらいというところはございますけれども、3つのことを申し上げたいと思います。

1つは、この財務大臣声明及びそれに至る議論の過程で、アメリカが非常に主導的な役割を果たしていたと、アメリカ財務長官ですね。

それから2つ目ですけれども、その主導的と申しますのは、我々の視点からすると少し強過ぎるのではないかというような話もございます。

例えばロシアの凍結資産の元本につきましては、こちらは、我々としては国際法遵守の観点から困難であろうというスタンスを持っているわけですけれども、アメリカでは既に議会でそのようなことを可能とする法律が通っている。

さらには、この10月の1日のちょうど1日前にトランプ大統領がバージニアのクアンティコの海兵隊の基地で講演されていますけれども、そのときには、ロシアとウクライナの戦争において、これを終わらせるために力による平和、言葉的には「peace through strength」という言葉を使っていますけれども、こういったものが必要なのであると。そして、ロシアの原子力潜水艦も含めて脅威になっているというような発言もございました。

そういう意味では、いろいろと、足元のタクティクスは分かりませんけれども、アメリカとしても必要な措置を力強く取っていくんだというのが我々の認識です。

その上で、こちらの声明にも書かれていますけれども、「共に行動する必要性について一致」と、「協調的措置を大幅に強化」ということで、日本としては、まず、国際法の遵守ですとか、それから、サハリンをはじめとする日本の国益、こちらをしっかりと踏まえるということを前提に、G7として一致して対応していくということは、引き続き変わらないということを申し上げていきたいと思います。

その上で、河野委員からございましたG7の協調だけでは不十分ではないかと。まさにそうした問題意識がこちらの声明文に現れています。例えばパラグラフ5に、「ロシアのウクライナ侵略以降ロシア原油の購入を増加させ続けている者や迂回を促進している者を対象とする」ということがございます。こちらは、アメリカが8月の末にインドを対象に25%の追加の関税を、ロシアの原油を購入しているということを理由に課しているということがありました。インドや中国を念頭にそうしたことも例えば議論の俎上にのせるということ。それから、その後のこれまでの制裁措置も、例えば中国などにおける原油の精製施設、こちらが制裁の対象になっているというようなこともございますので、やはりG7だけではなくて、これまでもオイル・プライス・キャップなどをやってまいりましたけれども、様々取引のある者、国も含めて、できるだけロシアに資金が流れないようにしていくというようなことを取ってきたということは申し上げたいと思います。

以上がG7でございます。その上で、IMFの世界経済見通しについて頂いた御質問に移ります。

まず、植田委員から、こちらに書かれている政策提言は言わずもがなのものが多いのではないかと。おっしゃるとおりでございまして、まさにこういったことを言わなければならないほど政策による不確実性が高いというようなことがやはり重要なポイントだろうと思います。その上で、指摘を受けて我々先進国も含めてどうするのかということに関しまして、例えばIMFCの議長総括が1つのポイントになろうと思います。こちらについては、今回もコミュニケが出ませんでしたけれども、ただ、その中身については、「IMFC members agreed」ということを明記した上で様々なことが書かれています。その中には、例えば「Strong economic institutions, notably independent central banks, remain essential」ですとか、あるいは債務の持続可能性を確保するための財政調整、そしてバッファーの構築というものが重要なのであるということも明記されています。WEOの中でも、アメリカの財政赤字に関してはグローバル・インバランスの是正の観点から、それからフランスの財政赤字の問題ですとか、もちろん先進国のことの指摘もございます。そういう意味で、途上国だけでなくて先進国も含めて、こういった政策提言をしっかり受け取って取り組んでいくんだということの意思が示されているところでございます。

それから、中国の経済認識について、少し認識が例えば個人消費の部分について甘いのではないかというような御指摘を頂きました。こちらについて、IMFのWEOの記述ぶりを正確に申し上げますと、「reflecting front-loading in international trade and relatively robust domestic consumption supported 
by fiscal expansion in 2025」と記されています。その背景には、やはり昨年の後半以来、中国政府が取ってきた景気刺激策というものがある程度効いているのではないかと。ただし、IMFとしても、そして我々としても申し上げているのは、やはり中国の経済が国内の消費主導型のものにもう少し移行していかなければならないのであると。投資主導、あるいは輸出主導型の経済というものはサステナブルではないし、またインバランスも拡大しているということは引き続き申し上げていますし、IMFも指摘をしているということでございます。

それから、根本委員から御指摘のありましたグローバル・インバランスの問題についても、こちら、IMFのWEOの中でも指摘がございました。先ほど申し上げたように、G7、あるいはG20でも議論がございます。前回も申し上げたとおり、インバランス、コロナ以降に拡大しております。特にアメリカ、中国、そしてドイツが大きく貢献して、その伸びは過剰なものであると。ファンダメンタルでは説明できない過剰なものであるという警鐘をIMFは鳴らしています。今後この傾向は恐らく縮小していくのであろうというのが今回示されています。フローとしてのインバランスは縮小していくであろうと。それは例えば、ドル安による米国の経常赤字の縮小ですとか、あるいは米国の関税措置によって米国の国内需要が減退していくことによって、あるいは、中国やドイツによる財政出動によって、ある程度縮小していくだろうと。フローにおいてはですね。しかし、ストックでたまっているインターナショナルインベストメントポジションに関しましては、引き続き高いレベルのインバランスが継続するわけでございます。したがって、これをどういう形で減少させていくのか。関税は正しい措置ではなくて、やはり国内の正しい経済政策、財政政策が必要であるということは我々も申し上げていますし、IMFも指摘している。こういう文脈の中で、先ほど御紹介したような日本としてのG20の発言につながっているということでございます。

最後に、根本委員からアルゼンチンのことについて御指摘がございました。アルゼンチン、我々も注視しております。アメリカの支援についての言及がございましたけれども、もともと今年の4月にIMFが200億ドルという規模でミレイ政権の改革努力を後押しするためにプログラムを導入しております。こちら、非常にある意味異例なのは、200億ドルのうち120億ドルを承認途端にぼんと出すというようなプログラムでございます。日本もこれは支持をしております。この背景には、やはりミレイ政権の改革努力を後押ししていかなきゃいけないということと、それに対して懐疑的な視点を持っているマーケットセンチメントを落ち着かせなきゃいけないと。さらに、ミレイ政権の改革の柱は緊縮財政でございますので、そして、ミレイ政権は非常に少数与党でございますので、政治的な安定性の確保が難しい状況にある。こういう背景の中で、マーケットを安心させて、ミレイ政権の努力を後押しするということが目的でございました。

これは進んでおったんですけども、夏に幾つか動きがございました。1つにはやはり側近の汚職の問題、それからブエノスアレスの地方選挙での敗北というものがございまして、これでかなりマーケットのセンチメントが荒れてペソが下落しました。こういった文脈の中でアメリカが出てきたということでございます。グローバルフィナンシャルセーフティネットは、もとよりIMF、バイのスワップ、それからチェンマイ・イニシアティブのようなリージョナルの金融セーフティネット、そして個々の国々の外貨準備という4層構造でできていますので、いざというときにバイのスワップが出てきて、そしてマーケットセンチメントを落ち着かせるということ自体は、我々、ルールに反しているとか異例のことということでは必ずしもなくて、そういうことも必要なのであろうなというふうに認識を持っておるところです。

直近のつい日曜日のアルゼンチンの総選挙でミレイ政権が勝利ということで、今後、ある程度、今のマーケットの懸念、こういったものが落ち着いていくことを期待していますけども、引き続き注視していきたいというふうに思っております。

私からは以上です。

最後、松本課長からスリランカ等をお願いします。

○松本開発政策課長澤田先生から、中国の貸付けにつきまして問題意識の共有を頂きまして、ありがとうございます。

中国、スリランカの関係だと思うんですけども、中国に関しては、大きなピクチャーとしては、2020年にコモンフレームワークができてから、低所得国の債務再編については中国を含むいわゆる非伝統的な貸付者と伝統的なパリクラブメンバーが共同して対応する枠組ができて、まさに4か国については債務措置を実施していると。一方、スリランカのような中進国については、そういったフレームワークが当時も今も存在はしておりませんので、スリランカについては、中進国においてまさに新興債権国とパリクラブが協調して債務再編に取り組んだ初のケースとなりました。

スリランカの債務再編で、日本はインド、フランスと共に債権国会合で議長を務め、そうした公的債権者とスリランカの合意については2024年6月に正式に到達をして、中国はオブザーバー参加というステータスだったんですけど、中国もエンゲージする形で、中国についても同時に同等の条件での債務再編の合意に至ったということで、これは中国自身、コモンフレームワークやスリランカといったケースでは先進国とも協調した形での債務再編というのを実施はしていると。

一方で、これも中国の貸付けについては、透明性の問題とか、パリクラブと協調するにしてもタイムラインが若干遅くなってしまうといった問題もございますので、そうした点も様々な場で指摘をしながら、同時に一定の実績があるのも事実ですので、中国も交えた債務再編が今後もうまく進むようにということを期待しております。そうした形で取り組んでいきたいと思っております。

○神作分科会長よろしいでしょうか。御回答いただきどうもありがとうございました。

予定した時刻を少し過ぎてしまっておりまして、大変申し訳ありません。

最後に、緒方局長からお願いします。

○緒方局長ありがとうございます。委員の皆様方、大変貴重な御意見をありがとうございます。大変濃い内容で、我々もよく咀嚼して検討してまいりたいと思います。

いろいろ御議論させていただきたいことはあったんですが、お時間もありますので、本当に重要な点だけ、1点だけ、感想というか、まとめで申し上げたいと思います。

言ってみれば、政府全体としての方針の中で外為法をどう位置づけるか、それに集約されることだと思いますけれど、経済インテリジェンスが要だとかという江藤先生のお話とか、様々なやり方もあるだろうというお話とか、情報流出は事後ではアウトだという御指摘もありましたし、それから、発行会社の関与も必要だろうという指摘もありました。こういったことは、本当に全くそのとおりだと思っておりまして、非常に重要な点でございますけれども、一方で、様々御指摘いただいたとおり、原則、投資自由、しかも、非居住者にフォーカスを当てた外為法の中でどうやって安保リスクに対応していくのかということについては、おのずとやっぱり限界も当然ありますので、やれる範囲でやっていくということですけれども、ただ、全体としてやれる範囲しかやらないという趣旨では全くございませんで、宮地から申し上げましたけれども、全体としては、経済安保推進法であるとか、土地関係であれば重要土地等調査法とか、様々既に法制もありますし、今後、他省庁とも協力しながらいろいろ全体的な経済安保にどういう枠組で政府として対応していくのかということをよく考えながら、そういう中で非居住者対応の外為法、内外無差別であるほかの法制、そういった補完関係なんかもよく見ながら、全体像を意識して外為法ではできることを最大限にやるという形を進めていきたいと思っております。

そういうことを通じて、亀坂先生から5年後にまた結局何もやっていないじゃないかというおしかりを受けないように、ぜひ我々チームで一丸となって対応してまいりたいと思います。引き続き御指導よろしくお願いいたします。

○神作分科会長どうもありがとうございました。

それでは、本日の御議論はこれにて終了したいと存じます。もし御発言の御希望がございましたらおっしゃっていただければと思いますけども、よろしゅうございますか。

それでは、本日の議事はこれにて終了とさせていただき、議事録の作成は、従来どおり私に御一任を頂ければと存じます。その際、発言部分について事前に御覧になりたい委員の方におかれましては、この会合終了後にその旨を事務局に御連絡いただくということとさせていただきます。御連絡を頂きました委員の方には、議事録を案の段階で事務局より御送信させていただきます。その後1週間程度の間に御意見がない場合には、御了解いただいたものとして取り扱わせていただきます。

次回の分科会につきましては、事務局と御相談の上、御連絡させていただきます。

本日は、長時間にわたり御参加頂き、建設的かつ活発な御議論を頂き、誠にありがとうございました。

午後0時12分閉会