株式会社日本政策投資銀行法案要綱 |
簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律に基づき日本政策投資銀行(以下「政投銀」という。)を完全民営化するとともに、その長期の事業資金に係る投融資機能の根幹を維持するため、政投銀を解散して新たに株式会社日本政策投資銀行(以下「会社」という。)を設立し、その目的、業務の範囲等に関する事項を定めるため、次により株式会社日本政策投資銀行法を制定することとする。 | |||
一 | 総則 | ||
会社は、その完全民営化の実現に向けて経営の自主性を確保しつつ、出資と融資を一体的に行う手法その他高度な金融上の手法を用いた業務を営むことにより政投銀の長期の事業資金に係る投融資機能の根幹を維持し、もって長期の事業資金を必要とする者に対する資金供給の円滑化及び金融機能の高度化に寄与することを目的とすることとする。 (第1条関係) | |||
二 | 業務等 | ||
1 | .業務の範囲等 | ||
(1) | 会社は、その目的を達成するため、その業務として、預金(譲渡性預金等に限る。)の受入れ、資金の貸付け、資金の出資、債務の保証、有価証券の売買、有価証券の貸付け、金銭債権の取得又は譲渡、特定目的会社が発行する特定社債等の引受け等、短期社債等の取得又は譲渡、銀行等のために資金の貸付けを内容とする契約の締結の代理又は媒介、デリバティブ取引、他の事業者の事業の譲渡等又は経営に関する相談、他の事業者の事業に関して必要となる調査又は情報の提供、金融その他経済に関する調査等を行うこととする。 | ||
(2) | 上記(1)の他、会社は、財務大臣の認可を受けて、その目的を達成するために必要な業務を営むことができることとする。 | ||
(3) | 日本政策投資銀行債を発行する場合においては、売出しの方法によることができることとする。 | ||
(4) | 日本政策投資銀行債を発行する場合においては、割引の方法によることができることとする。 (第5条、第6条関係) | ||
2 | .日本政策投資銀行債の発行等 | ||
(1) | 会社は、日本政策投資銀行債を発行することができることとする。 | ||
(2) | 日本政策投資銀行債の社債券を発行する場合には、当該社債券は無記名式とすることとし、発行時に当該社債券の応募者との間で当該社債券に係る保護預り契約を締結してはならないこととする。 | ||
(3) | 日本政策投資銀行債を発行する場合においては、売出しの方法によることができることとする。 | ||
(4) | 日本政策投資銀行債を発行する場合においては、割引の方法によることができることとする。 | ||
3 | .預金の受入れ等を開始する場合の特例等 | ||
(1) | 会社は、預金の受入れ又は日本政策投資銀行債の発行を開始しようとするときは、あらかじめ、財務大臣の承認を受けなければならないこととする。 | ||
(2) | 財務大臣は、上記(1)の承認をしようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣に協議し、その同意を得なければならないこととする。 | ||
(3) | 内閣総理大臣は、上記(2)の協議があった場合において、必要があると認めるときは、財務大臣に対し、必要な資料の提出及び説明を求めることができることとする。 | ||
(4) | 内閣総理大臣は、上記(2)の協議があった場合において、特に必要があると認めるときは、その必要の限度において、会社に対し、資料の提出、説明その他の協力を求めることができることとする。 | ||
(5) | 上記(1)の承認を受けた会社に対して、銀行法第12条の2、第13条、第13条の2、第13条の4、第14条、第14条の2、第20条、第21条、第23条及び第57条の4(第1号に係る部分に限る。)の規定を準用することとする。 (第9条、第10条関係) | ||
4.事業年度 | |||
会社の事業年度は、4月1日から翌年3月31日までとすることとする。 (第11条関係) | |||
5.株式 | |||
会社は、募集株式若しくは募集新株予約権を引き受ける者の募集をし、又は株式交換に際して株式若しくは新株予約権を交付しようとするときは、財務大臣の認可を受けなければならないこととする。 (第12条関係) | |||
6. 社債、日本政策投資銀行債及び借入金 | |||
(1) | 会社は、毎事業年度の開始前に、社債及び日本政策投資銀行債の発行並びに長期の借入金の借入れに係る基本方針を作成し、財務大臣の認可を受けなければならないこととする。 | ||
(2) | 会社は、社債若しくは日本政策投資銀行債を発行したとき、又は借入金の借入れをしたときは、その旨を遅滞なく財務大臣に届け出なければならないこととする。 (第13条関係) | ||
7. 受信限度額及び与信限度額 | |||
(1) | 預金の現在額、借入金の現在額、寄託金の現在額、社債及び日本政策投資銀行債等の現在額等の合計額は、資本金及び準備金の額の合計額の14倍に相当する額を超えることとなってはならないこととする。 | ||
(2) | 資金の貸付け及び譲り受けた債権の現在額、保証した債務の現在額、取得した有価証券の現在額、資金の出資の現在額の合計額は、資本金及び準備金の額並びに上記(1)の限度額の合計額を超えることとなってはならないこととする。 (第14条関係) | ||
8. 代表取締役等の選定等の決議 | |||
会社の代表取締役又は代表執行役の選定及び解職並びに監査役の選任及び解任又は監査委員の選定及び解職の決議は、財務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じないこととする。 (第15条関係) | |||
9. 取締役の兼職の認可 | |||
会社の常務に従事する取締役(委員会設置会社にあっては、執行役)は、財務大臣の認可を受けた場合を除き、他の会社の常務に従事してはならないこととする。 (第16条関係) | |||
10. 事業計画及び償還計画 | |||
会社は、毎事業年度の開始前に、事業計画及び償還計画を定め、財務大臣の認可を受けなければならないこととする。 (第17条、第18条関係) | |||
11. 認可対象子会社 | |||
会社は、銀行、長期信用銀行、金融商品取引業者、貸金業者、信託会社、保険会社等を子会社としようとするときは、あらかじめ、財務大臣の認可を受けなければならないこととする。 (第19条関係) | |||
12. 定款の変更等 | |||
(1) | 会社の定款の変更、剰余金の配当その他の剰余金の処分(損失の処理を除く。)、合併、会社分割及び解散の決議は、財務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じないこととする。 | ||
(2) | 財務大臣は、上記(1)の認可(合併、会社分割及び解散の決議に係るものに限る。)をしようとするときは、国土交通大臣に協議しなければならないこととする。 (第20条関係) | ||
13. 貸借対照表等の提出 | |||
会社は、事業年度ごとに、当該事業年度及びその中間事業年度に係る貸借対照表、損益計算書及び事業報告書を財務大臣に提出しなければならないこととする。 (第21条関係) | |||
14. 財政融資資金の運用に関する特例 | |||
(1) | 財政融資資金は、会社の業務に要する経費に充てるため会社が借入れをする場合における会社に対する貸付けに運用することができることとする。 | ||
(2) | 財政融資資金は、会社の業務に要する経費に充てるため会社が発行する社債又は日本政策投資銀行債に運用することができることとする。 (第22条、第23条関係) | ||
15. 債務保証 | |||
政府は、国会の議決を経た金額の範囲内において、社債又は日本政策投資銀行債に係る債務について、保証契約をすることができることとする。 (第25条関係) | |||
三 | 雑則 | ||
1. 監督上の措置 | |||
会社は、主務大臣がこの法律の定めるところに従い監督するものとし、主務大臣は、会社の業務又は財産等に照らして会社の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときその他この法律を施行するため必要があると認めるときは、会社に対し、措置を講ずべき事項及び期限を示して、会社の経営の健全性を確保するための改善計画の提出を求め、若しくは提出された改善計画の変更を命じ、又はその必要の限度において、期限を付して会社の業務の全部若しくは一部の停止を命じ、若しくは会社の財産の供託を命ずることその他業務に関し監督上必要な命令をすることができることとする。 (第26条関係) | |||
2. 報告及び検査 | |||
(1) | 主務大臣は、会社の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときその他この法律を施行するため必要があると認めるときは、会社に対して報告をさせ、又はその職員に、会社の営業所その他の施設に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができることとする。 | ||
(2) | 主務大臣は、会社の業務の健全かつ適切な運営を確保するため特に必要があると認めるときその他この法律を施行するため特に必要があると認めるときは、その必要の限度において、会社の子会社若しくは会社から業務の委託を受けた受託者に対して報告をさせ、又はその職員に、会社の子会社若しくは受託者の施設に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができることとする。 (第27条関係) | ||
3. 権限の委任 | |||
財務大臣は、立入検査の権限の一部を内閣総理大臣に委任することができることとし、内閣総理大臣は、立入検査をしたときは、速やかに、その結果について財務大臣に報告するものとすることとする。 (第28条関係) | |||
4. 主務大臣 | |||
この法律における主務大臣は、財務大臣とする。ただし、会社が、二 3.(1)の承認を受けた場合には、二 3.(5)において準用する銀行法の規定に関する事項、会社の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときに行う命令、報告徴収及び立入検査については、財務大臣及び内閣総理大臣とすることとする。 (第29条関係) | |||
四 | 罰則 所要の罰則規定を設けることとする。 (第30条~第35条関係) | ||
五 | 附則 | ||
1.施行期日 | |||
この法律は、公布の日から施行する。ただし、金融商品取引法に係る一部の規定については、証券取引法等の一部を改正する法律(平成18年法律第65号)の施行の日又はこの法律の施行の日のいずれか遅い日から、貸金業法に係る一部の規定については、貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律(平成18年法律第115号)の施行の日又はこの法律の施行の日のいずれか遅い日から、日本政策投資銀行法(以下「政投銀法」という。)の廃止及びその廃止に伴う経過措置等に係る規定については、平成20年10月1日から施行することとする。 (附則第1条関係) | |||
2.政府保有株式の処分 | |||
(1) | 政府は、その保有する会社の株式(以下「政府保有株式」という。)について、市場の動向を踏まえつつその縮減を図り、平成20年10月1日から起算しておおむね5年後から7年後を目途として、その全部を処分することとする。 | ||
(2) | 政府は、この法律の施行後政府保有株式の全部を処分するまでの間、会社の有する長期の事業資金に係る投融資機能の根幹が維持されることとなるよう、政府保有株式の処分の方法に関する事項その他の事項について随時検討を行い、その結果に基づき、必要な措置を講ずることとする。 (附則第2条関係) | ||
3.この法律の廃止その他の措置 | |||
政府は、政府保有株式の全部を処分したときは、直ちにこの法律を廃止するための措置及び会社解散後の円滑な承継のために必要な措置を講ずることとする。 (附則第3条関係) | |||
4. 準備期間中の業務等の特例 | |||
(1) | 政投銀は、この法律の施行の日から平成20年9月30日までの準備期間中、長期借入金の借入れをすることができることとする。 | ||
(2) | 政投銀は、上記(1)の長期借入金の借入れに係る基本方針を作成し、財務大臣の認可を受けなければならないこととする。また、政投銀は、上記(1)の長期借入金の借入れをしたときは、その旨を遅滞なく財務大臣に届け出なければならないこととする。 (附則第4条関係) | ||
5.会社の設立 | |||
会社の設立について所要の規定を設けることとする。 (附則第5条~第14条関係) | |||
6.政投銀の解散等 | |||
政投銀は、会社の成立の時において解散するものとし、その一切の権利及び義務は、国が承継する資産を除き、その時において会社が承継することとする。 (附則第15条関係) | |||
7.日本政策投資銀行法の廃止等 | |||
日本政策投資銀行法を廃止するとともに、廃止に伴う関係法律の改正その他所要の規定の整備を行うこととする。 (附則第26条~第67条関係) | |||
(以上) |