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所得税法等の一部を改正する法律案の概要

所得税法等の一部を改正する法律案の概要

 

 現下の経済・財政状況等を踏まえつつ、持続的な経済社会の活性化を実現するための「あるべき税制」の構築に向け、次のとおり改正を行うこととする。
 具体的には、
わが国産業の競争力強化のための研究開発・設備投資減税の集中・重点化
次世代への資産移転の円滑化に資する相続税・贈与税の一体化及び税率の引下げ
「貯蓄から投資へ」の改革に資する金融・証券税制の軽減・簡素化
土地の有効利用の促進に資する登録免許税の軽減
人的控除の簡素化等の観点からの配偶者特別控除(上乗せ部分)の廃止
消費税に対する信頼性・透明性を向上させるための免税点制度等の改革
酒税及びたばこ税の見直し
 その他の所要の措置を一体として講ずる。
 なお、上記措置の実施により、平成15年度において1.5兆円程度の減税となり、多年度においては税収中立となる。
(注
 
) 平成15年度においても、国・地方を合わせ6兆円を相当上回る個人所得課税及び法人課税の恒久的な減税が継続している。
 
 法人関連税制
〔研究開発減税〕
 試験研究費の総額に係る特別税額控除制度の創設
 試験研究費の総額の一定割合(8%~10%。時限措置として2%上乗せして10%~12%)を税額控除する制度を増加試験研究税制との選択制で創設する。
 
 産学官連携の共同研究・委託研究に係る特別税額控除制度の創設
 研究開発税制において、大学、公的研究機関等との共同試験研究等について、一律12%(時限措置として15%)の税額控除率を適用する。
 
 中小企業技術基盤強化税制の拡充
 研究開発税制において、中小企業に対し、一律12%(時限措置として15%)の税額控除率を適用する。
 
 
 
) 上記3つの措置は、平成15年1月1日以後に開始する事業年度で、かつ、平成15年4月1日以後に終了する事業年度について適用する。
〔設備投資減税〕
  IT投資促進税制の創設
 情報通信機器等(IT関連設備)の取得等をした場合に、50%の特別償却又は10%の税額控除制度を創設する。
 
 開発研究用設備の特別償却制度の創設
 開発研究用設備の取得をした場合に、50%の特別償却制度を創設する。
 

 
) 上記2つの措置は、平成15年1月1日から平成18年3月31日までの間に取得等をして事業等の用に供した場合について適用する。
 
 改正後の産業活力再生特別措置法の一定の事業革新設備(実用化第一段階の設備)の取得に対し、最大で取得価額の40%の特別償却措置を講ずる。
〔中小企業・ベンチャー企業支援〕
 研究開発税制において、中小企業に対し、一律12%(時限措置として15%)の税額控除率を適用する。(再掲)
 
 同族会社の留保金課税制度について、自己資本比率が50%以下の中小法人については、留保金課税を適用しない措置を講ずる。
 
 交際費等の損金不算入制度について、400万円の定額控除を認める対象法人の範囲を資本金1億円以下の中小法人(現行資本金5,000万円の中小法人)に拡大するとともに、定額控除額までの金額の損金不算入割合(課税される部分)を10%(現行20%)に引き下げる。
 
 中小企業について、30万円未満の少額減価償却資産の取得価額を取得した事業年度に全額損金算入(即時償却)する特例制度を創設する。
 
 エンジェル税制について、現行の優遇措置に加え、ベンチャー企業(特定中小会社)への投資額について、同一年分の株式譲渡益から控除する等の措置を講ずる。

   

相続税・贈与税
 相続時精算課税制度の創設
 20歳以上の子が65歳以上の親から受ける贈与について、贈与時に軽減された贈与税を納付し、相続時に相続税で精算する制度を、現行の制度(暦年課税)との選択制で導入する。(贈与時の非課税枠は累積で2,500万円を限度として複数年にわたって使用可能。非課税枠を超える部分については税率20%で課税)
 
 相続税・贈与税の税率構造の見直し
 相続税について、最高税率を50%(現行70%)に引き下げるとともに、税率の刻み数を6段階(現行9段階)に簡素化し、必要な税率区分の拡大を行う。
 贈与税(暦年課税)についても、相続税に準じて見直す。
 
注) 上記2つの改正は、平成15年1月1日以後の相続又は贈与から適用する。
  
 住宅取得資金に係る相続時精算課税制度の特例の創設
 住宅の取得又は増改築に充てる資金を贈与により取得した場合には、65歳未満の親からの贈与についても相続時精算課税制度を選択できる特例を創設する。
 住宅の取得又は増改築に充てる資金を贈与により取得した場合には、相続時精算課税制度に係る非課税枠を3,500万円に拡大(1,000万円上乗せ)する特例を創設する。
(注

 
) これらの特例は、平成15年1月1日から平成17年12月31日までの間に贈与により取得する金銭について適用する。
 
 現行の住宅取得資金の贈与の特例(5分5乗)は、平成17年12月31日までの間、経過措置として存続する。
(注 ) この経過措置の適用を受けた場合には、その適用年分以後5年間は、上記の相続時精算課税制度を選択できない。

  

金融・証券税制
 上場株式等の配当、公募株式投資信託の収益分配金、上場株式等の譲渡益について、15%(個人住民税含め20%)源泉徴収のみで納税が完了する仕組み(申告不要制度)を導入する。
 
 「貯蓄から投資へ」の対応を一層明確化するため、上記について、今後5年間7%(個人住民税含め10%)の優遇税率を適用する。
 
 公募株式投資信託の償還(解約)損と株式等譲渡益との通算を可能とする。

 

土地・住宅税制
 登録免許税の軽減等

 
 不動産の登記に係る登録免許税について、税負担を軽減するとともに、土地と建物との間の実質的な税負担水準の格差を解消し、各種登記間の税率格差の是正を図る。
 
 住宅ローン控除の適用を受けていた者が、勤務先から転勤命令などやむを得ない事由により住宅を居住の用に供しなくなった後、その事由が解消し、その住宅に再び居住した場合には、一定の要件の下、その再居住年以後住宅ローン控除の再適用を受けることができる措置を講ずる。

 

個人所得課税
 配偶者特別控除のうち、控除対象配偶者について配偶者控除に上乗せして適用される部分(最高38万円)を廃止する。
(注) 上記の改正は、平成16年分以後の所得税について適用する。

 

消費税
 中小事業者に対する特例措置
事業者免税点制度の適用上限を1,000万円(現行3,000万円)に引き下げる。
簡易課税制度の適用上限を5,000万円(現行2億円)に引き下げる。
(注 ) 上記の改正は、平成16年4月1日以後に開始する課税期間について適用する。
 
 申告納付制度等
 直前の課税期間の年税額が4,800万円(地方消費税込6,000万円)を超える事業者は、中間申告納付を毎月(現行3月ごと)行うこととする。
(注 ) 上記の改正は、平成16年4月1日以後に開始する課税期間について適用する。
 
 消費税法において、事業者がその相手方である消費者に対して商品の販売、役務の提供等の取引を行うに際し、予めその取引価格を表示する場合には、消費税額(含む地方消費税額)を含めた価格を表示することを義務付ける。 
(注 ) 平成16年4月1日から適用する。

 

酒税・たばこ税
 酒類間の税負担格差の縮小
   ビール・発泡酒(麦芽比率25%未満)、清酒・果実酒、清酒・合成清酒、リキュール類・甘味果実酒等の間の税負担格差を4分の1縮小することとし、発泡酒、果実酒、合成清酒、甘味果実酒等の税率を引き上げる。
   (注) 平成15年5月1日から実施する。
 
 ビールに係る酒税の税率の特例の創設
 小規模なビール製造業(いわゆる「地ビール」)について、創業支援のため、3年間の特例措置を創設する。(酒税額を20%軽減)
 
 たばこ税の税率を1本当たり0.82円(国・地方合計)引き上げる。
(注) 平成15年7月1日から実施する。

 

その他
〔NPO税制〕
 認定NPO法人についてみなし寄附金制度を導入する。
注) このほか、認定NPO法人の認定要件を緩和する。(政令)
 
〔石油税及び電源開発促進税〕
 LPG及びLNGに係る石油税の税率を引き上げるとともに、新たに石炭に課税する。また、電源開発促進税の税率を引き下げる。
 
〔自動車関係諸税の特例〕
 揮発油税及び地方道路税並びに自動車重量税について、税率の特例措置の適用期限を5年延長する。
(注 ) このほか、自動車重量譲与税の譲与割合を3分の1(現行4分の1)に引き上げる。(自動車重量譲与税法)
 
〔その他〕
 租税条約の規定に基づき条約相手国から情報提供要請があった場合に、一定の場合を除き、当該情報提供のために税務当局が質問検査を行うことができることとする規定を整備する。