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普通財産を信託する場合の手続について

昭和62年 2月19日
蔵理第553

改正 平成元年 4 月 1 日蔵理第1668号

12年12月26日第4612号

21年12月22日財理第5538号

22年 3 月31日第1414号

令和元年 7 月 5 日第2378号

5 年 3 月22日第 853 号

大蔵省理財局長から各財務局長宛

標記のことについて、別紙のとおり各省各庁総括部局長あて通達したので、通知する。

普通財産を信託する場合の手続について

昭和62年 2月19日
蔵理第553

大蔵省理財局長から各省各庁総括部局長宛

国有財産法(昭和23年法律第73号)第14条第9号及び第28条の2から第28条の5の規定により普通財産である土地(その土地の定着物を含む。以下「普通財産」という。)を信託する場合の手続については、当分の間、下記によることとしたから、通知する。

なお、普通財産の信託を行う場合には、国有財産法、財政法(昭和22年法律第34号)、会計法(昭和22年法律第35号)等の定めるところに従い、財政上最も国の利益に適合するよう処理願いたい。

第1信託しようとする場合の手続

1財務大臣への協議手続

普通財産を信託しようとする場合において、国有財産法第14条第9号の規定に基づき財務大臣へ協議しようとするときは、別紙様式第1による「普通財産信託調書」、契約書案、図面その他の関係書類を添付するものとする。

なお、普通財産を信託しようとする場合は、すべての事案について、財政制度等審議会又は国有財産地方審議会に付議する必要があるので、外国に所在する場合を除き、当該土地が所在する地域を管轄する財務局長(沖縄総合事務局長を含む。)に内協議を行うものとする。

(注)普通財産の信託については、国有財産法、同施行令(昭和23年政令第246号)等に定めるもののほか、信託法(大正11年法律第62号)等の適用があることに留意する。

(1)信託の目的

信託の目的は、当該土地の規模、位置、形状、環境等の立地条件並びに当該地域における都市計画法(昭和43年法律第100号)等の土地利用に関する法的規制及び将来の発展動向による事業の採算性等を勘案し、かつ、当該土地に対する行政需要等を考慮して、賃貸型と分譲型の別及び信託財産の用途を定めるものとする。

(注)土地信託は、信託目的により一般に賃貸型と分譲型に分類することができる。

賃貸型は、普通財産の有効活用を図るため、受託者に当該土地を信託し、受託者が建築物等を建築してこれを賃貸することを目的とする。

分譲型は、普通財産の有効活用又は処分の促進等を図るため、受託者に当該土地を信託し、受託者が造成又は建築物等を建築してこれを分譲することを目的とする。

(2)受託者の選定方法

受託者の選定方法は、競争によることを原則とし、会計法令上随意契約が認められる場合には、随意契約によることができるものとする。

(注)随意契約により処理しようとする場合で、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)第102条の4本文及び予算決算及び会計令臨時特例(昭和21年勅令第558号)第5条第2項本文の規定に基づき、財務大臣(国庫大臣)との協議を必要とするときは、各省各庁の長が行うこととなるので留意する。

(3)信託期間

信託期間は、信託の目的、借入金の返済方法等の業務内容を勘案して、次に掲げる期間を限度として定めるものとする。

賃貸の場合20年以内

分譲の場合5年以内

(4)信託の収支見積り

信託の収支見積りは、信託期間について、各年度毎に事業収入から事業支出を控除して差額を求め、その差額の累計額によつて算定するものとする。

なお、借入金返済額については、信託期間内において借入金の返済が完了するよう算定するものとする。

(注)信託の収支見積りは、事業内容等を勘案して、例えば、次のような項目について算定する。

(イ)事業収入

A賃貸の場合

近傍類似の民間賃貸実例に比準して年額賃貸料を求め、信託期間に相応する賃貸料に修正して求める。

(注)敷金、入居保証金等の預り金の運用益については、信託期間に相応して求める。

B分譲の場合

近傍類似の民間分譲実例に比準して求める。

(ロ)事業支出

A賃貸の場合

借入金返済額、諸経費及び信託報酬について、次に掲げる支出項目により信託期間に相応する支出額を求める。

(A)借入金返済額及び諸経費

  • 借入金返済額

  • 維持管理費

  • 公租公課

  • 損害保険料

  • 借入金利息

  • その他の経費

(B)信託報酬

B分譲の場合

建築物等の建築工事費、造成工事費及び諸経費並びに信託報酬について求める。

(5)信託の事業計画及び資金計画

事業計画は、信託の目的、建築物等の建設コスト等を総合的に勘案し、かつ、当該土地の規模、位置、形状及び現在の管理態様に応じ公共性、公益性にも配慮して事業の基本計画及び実施計画について定めるものとする。

資金計画は、事業の所要資金及び所要資金の調達計画について定めるものとする。

(6)受託者が当該信託に必要な資金の借入れをする場合の当該借入金の限度額

受託者が当該信託に必要な資金の借入れをする場合の当該借入金の限度額は、信託財産(土地に限る。)の価額の範囲内で、かつ、信託財産の建築等及び信託の事務処理に必要な経済性を十分勘案した最小限度の金額にとどめるものとする。

2財政制度等審議会等への付議

普通財産を信託しようとする場合には、信託することについて財務大臣への協議手続を了した上、信託の目的、受託者の選定方法、信託の収支見積り、借入金限度額、信託の事業計画及び資金計画並びに信託期間について、各省各庁の長又は部局等の長が財政制度等審議会又は国有財産地方審議会に諮問し、その議を経るものとする。諮問に当たつては、理財局(財務局(沖縄総合事務局を含む。以下同じ。))を経由するものとし、その庶務手続は、理財局(財務局)が行うものとする。

なお、会計法第29条の6第2項の規定により受託者を選定する場合には、価格及びその他の条件としてどのような事項を競争の対象とするかについて、当該審議会の意見を聴かなければならない。

(注)普通財産を信託しようとする場合において、対象土地が外国に所在するとき又は借入金限度額が100億円を超えると見込まれるときは、各省各庁の長が財政制度等審議会に諮問し、その議を経る。

3会計検査院への事前通知

普通財産を信託しようとする場合には、信託の目的、受託者、信託の収支見積り、借入金限度額、信託の事業計画及び資金計画並びに信託期間について、図面その他の関係資料を添えて契約予定日(入札の場合は、入札予定日)の10日前までに部局等の長が各省各庁の長を経由して会計検査院に通知するとともに、その写しを財務局長(福岡財務支局長及び沖縄総合事務局長を含む。)に送付するものとする。

4信託契約の締結

信託契約を締結する場合は、次の事項を契約書において明らかにするものとする。

(1)受託者は、信託財産から信託事務の処理に関する費用及び信託報酬を支弁すること。

(2)受託者は、信託期間中に災害その他の特別の事情が生じたことにより借入金限度額を超えて借入れをしようとする場合には、事前に国に申請し、承認を受けなければならないこと。

(3)受託者は、信託財産の建築物等の工事については、原則として一般競争入札によらなければならないこと。

(4)受託者は、信託財産を賃貸する場合及び分譲する場合には、入札又は公募による等適正、公平に相手方を選定しなければならないこと。

(5)受託者は、信託法第36条第1項に規定する権利を行使しようとする場合には、事前に国に申請し、承認を受けなければならないこと。

(6)国は、信託利益の全部を享受する場合において、行政需要等により必要があると認めるときは、当該信託契約を解除することができること。

(7)受託者は、信託財産について、善良なる管理者の注意をもつて適正かつ効率的に管理及び処分をしなければならないこと。

(8)受託者は、信託財産の全部又は一部を賃貸する場合には、信託の終了時に国による利用が円滑に行われるよう十分配意するとともに、賃借人の選定、賃貸料その他の賃貸条件について、あらかじめ国に通知し、また、受託者と賃借人との賃貸借契約において第三者に転貸することを禁止する条件又は風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)第2条第1項に規定する風俗営業、同条第5項に規定する性風俗特殊営業その他これらに類する業の用に供することを禁止する条件(当該地域の性格上、これを付すことが不必要又は不適当であると認められる場合を除く。)を付さなければならないこと。

(9)受託者は、信託財産を分譲する場合には分譲価格、分譲方法、分譲条件等についてあらかじめ国に通知しなければならないこと。

(10)信託の収支計算期等は、次によること。

信託財産に関する収支計算期は、賃貸の場合又は分譲の場合に区分して、原則として次の期日とする。

(イ)賃貸の場合毎年3月の末日及び信託期間終了の日

(ロ)分譲の場合信託期間終了の日

収支計算は、受託者が公正、妥当な会計慣行により行うものとし、当該収支計算書を計算期の翌月末日までに報告する。

収支計算の結果、信託の利益が生じた場合には、当該信託事業の内容を勘案して原則として計算期の翌々月の末日までに国に納付する。

賃貸型の場合において収支計算の結果損失が生じたときには、原則として次年度以降の収益により補填する。

(注)(1)及び(5)の条件は、信託財産の不足又は換価困難な場合において、国に対する受託者の信託法第36条第2項の権利行使を認めない趣旨ではないことに留意する。

5所有権移転登記等

普通財産を信託した場合は、受託者に所有権移転及び信託の登記嘱託請求書に登録免許税現金納付領収書(又は登録免許税の額に相当する金額の印紙)を添えて提出させ、不動産登記法(明治32年法律第24号)の定めるところにより登記を嘱託し、所有権移転及び信託の登記を完了したときは、速やかに登記済証を受託者に交付するものとする。

6信託財産台帳

普通財産を信託した場合は、信託財産の現況及び運用状況を的確に把握し、その適正な運用を図るため、別紙様式第2による「信託財産台帳」を備え付け、記録整理するものとする。

第2信託契約の内容の変更等

普通財産を信託した場合において、信託期間の更新、信託契約の内容の変更その他次に掲げる事務を処理することについて国有財産法第28条の4の規定に基づき財務大臣へ協議しようとするときは、その適当と認める理由を記載した調書に関係書類を添付するものとする。

なお、信託期間を更新しようとするとき及び信託契約の内容を変更しようとする場合で信託の目的を変更しようとするときは、その処理について財務大臣への協議手続を了した上、第1の2により諮問した財政制度等審議会又は国有財産地方審議会に諮問し、その議を経るものとする。諮問に当たつては、理財局(財務局)を経由するものとし、その庶務手続は、理財局(財務局)が行うものとする。

(注)財政制度等審議会の議を経て信託したものについては、各省各庁の長が当該審議会に諮問し、その議を経る。

1信託期間の更新

信託期間の更新は、当該信託の事業内容等を勘案して国が期間更新することを適当と認める場合において、かつ、前契約と同一の期間を限度として、これを行うものとする。

なお、信託財産を国において庁舎等として使用する見込みがある場合又は信託財産の運用状況が悪化し、回復の見込みがない場合には、期間更新しないものとする。

(注)財政制度等審議会及び国有財産地方審議会への諮問事項は、更新後の信託の収支見積り、借入金限度額、信託の事業計画及び資金計画並びに信託期間とする。

2信託契約の内容の変更

(1)信託の目的の変更は、当該変更することにつきやむを得ない事由があると認められ、かつ、変更後の信託の目的、信託の収支見積り、借入金限度額、信託の事業計画及び資金計画並びに信託期間等の事業内容が適当であると認められる場合に限り行うものとする。

(注)財政制度等審議会及び国有財産地方審議会への諮問事項は、変更後の信託の目的、信託の収支見積り、借入金限度額、信託の事業計画及び資金計画並びに信託期間とする。

(2)信託の目的を除く契約内容の変更は、当該変更することにつきやむを得ない事由があると認められ、かつ、当該変更内容が適当であると認められる場合に限り行うものとする。

3借入金の限度額を超える借入れの承認

信託に必要な資金の借入金限度額を超える借入れの承認は、信託期間中における災害その他の特別の事情が生じた場合に限り行えるものとし、当該借入金の合計額は信託財産(土地に限る。)の価額の範囲内であつて、かつ、災害等の復旧に必要な最小限度の金額にとどめるものとする。

4受託者の補償請求権の行使の承認

受託者の信託法第36条第1項に規定する権利の行使の承認は、信託財産について行政需要等が見込まれない場合に限り行うものとする。

5信託受益権の売払い

(1)信託受益権を売払いすることができる場合

信託受益権の売払いは、信託財産について将来の行政需要等が確実に見込まれない場合で売払いすることが適当と認められるときに限り行うものとする。

(2)信託受益権の売払価格

信託受益権の売払価格は、別に定めるところにより売払時の評価格を求め、決定するものとする。ただし、敷金、入居保証金等の返還債務等がある場合には、これらの額を控除して求めるものとする。

第3信託に係る実地監査等

1実地監査等

普通財産を信託した場合は、当該土地に係る信託事務の処理の適正を期するため、受託者に対し次により信託事務の処理状況に関する資料若しくは報告を求め、又は必要に応じ実地監査を行うものとする。この場合、遅滞なく財務大臣に通知するものとする。

(1)報告等

定期又は随時に次の資料又は報告を求めるものとする。

信託財産の現況、賃貸事業の運営状況、分譲事業の進捗状況、今後の管理運営計画等を明らかにした資料又は報告

その他必要と認める事項

(2)実地監査

信託財産の現況、運営状況等を実地に調査し、信託契約に適合した管理処分がなされているか、信託財産の維持保存状態は適正か、信託財産に関する会計処理は適正になされているか等について監査する。

なお、実地監査に当たっては、現地に赴くことなく、対象財産の状況等を十分把握することができるとともに、受託者との見解・認識に齟齬が生じない場合には、オンライン会議システム等のデジタル技術を活用する方法で監査を行うことができるものとする。

2信託事務の処理に関する指示

信託事務の処理状況に関する資料若しくは報告を求め、又は実地監査を行つた場合において、信託事務の処理に関し是正、改善を求めることが適当と認められるときは、必要な指示をするものとする。この場合、あらかじめ財務大臣に通知するものとする。

第4信託契約の解除等

1信託契約の解除

国が信託利益の全部を享受する場合において、信託契約を解除しようとするときは、その理由を記載した調書に関係書類を添付して財務省理財局長に通知するものとする。

(注)信託契約の解除は、次のような場合が考えられる。

信託財産を国又は公共団体において公用、公共用に供するため必要があると認めるとき。

経済情勢の変化により信託の目的の達成が不可能になると見込まれるとき。

受託者が信託契約に反する行為を行つたとき。

受託者に信託財産に対する管理の失当があつたとき。

事業が順調に推移する見込みがなく、債務等の発生を最小限にとどめるためには、契約を解除することが最も適当であると見込まれるとき。

2最終計算の承認

信託が終了(解除による終了を含む。以下同じ。)したときは、受託者から最終計算の報告を求め、返還される信託財産の現況、関係図面その他参考となる事項により、その内容を審査の上、適正であると認めた場合には、受託者に対し最終計算を承認するものとする。

3残存債務の処理

信託の終了時において、借入金債務その他の債務が残存する場合には、1受託者に信託財産の売却を行わせた上残存債務を返済させ、又は2予算措置を講じた上信託財産に繰入れを行つて、残存債務を返済させるものとする。この場合、財務省理財局長に通知するものとする。

4信託契約の終了

国有財産法施行令第4条各号に掲げる特別会計(財政投融資特別会計の特定国有財産整備勘定を除く。)に属する普通財産を所管する各省各庁の長は、信託の終了により土地又は建物を取得したときは、次に掲げる事項を財務大臣に通知するものとする。

(1)当該土地又は建物の所在及び地番

(2)当該土地の地積又は当該建物の構造及び面積

(注)土地又は建物に付随して立木竹又は工作物を取得した場合には、種目及び数量を併せて記載する。

(3)信託の終了年月日

(4)その他参考となるべき事項

第5特例措置

本通達により処理することが適当でないと認められる場合は、その事由を付した処理案により財務省理財局長と協議して処理することができる。



様式第1~2(PDF:190KB)