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国の債権の管理等に関する法律及びこれに基く命令の実施について

国の債権の管理等に関する法律及びこれに基く命令の実施について


 

昭和三二年一月一〇日


 

蔵計第一〇五号


 

大蔵大臣通達


 

 

 国の債権の管理に関する事務については、下(左)記によることとされたい。なお、下(左)記中第四(法務大臣に対し強制履行の請求等の措置を求める場合の取扱について)については、法務省訟務局とも協議済であるから申し添える。

 


 

略語については、次による。

 「法」・・・・・・・・・・国の債権の管理等に関する法律(昭和三十一年法律第百十四号)

 「令」・・・・・・・・・・国の債権の管理等に関する法律施行令(昭和三十一年政令第三百三十七号)

 「規則」・・・・・・・・債権管理事務取扱規則(昭和三十一年大蔵省令第八十六号)

第一 債権の調査確認及び債権管理簿への記載について

一 延滞金債権の調査確認及び債権管理簿への記載について

延滞金については、従来、各省各庁は、これが徴収について全くかえりみないきらいがあつた。これは、既に発生している延滞金債権を行使しないで放置するものであつて、財政法第九条第二項及び法第十条の規定の趣旨にもとるものであるから、今後は、延滞金債権についても、令第八条第四号、令第十条第三項等に規定するところによりその調査確認及び債権管理簿への記載を行い、他の債権と全く同様の管理を行うものとする。

二 国内部における金銭の受払について

国の組織の相互間において物又は役務の提供を行い、これらの対価として金銭を収受する場合(例、農林省食糧事務所(食糧管理特別会計)が刑務所(一般会計)から食糧売却代金を徴収する場合や郵便局(郵政事業特別会計)が他の官庁から後納郵便料金を徴収する場合)は、一の権利主体である国の内部における金銭の受払であるから法律上の債権債務は発生せず、従つて、この法律は適用されない(法第二条第一項)。しかし、一般の債権債務とかかる国内部における金銭の受払とを別個に経理することが各省各庁の事務取扱の実情から見て困難であり、かつ、非能率であるときは、国内部における金銭の受払についても、一般の債権に準じて、調査確認及び記載(法第十一条)、債権の発生又は国への帰属に関する通知(法第十二条)、証拠物件等の保存(法第二十条第一項)等に関する事務の取扱をしてさしつかえないものとする。なお、かかる国内部の金銭の受払を一般の債権債務と全く同様に取り扱い、同一の債権管理簿に記載整理をする官庁においては、標識又は記号により一般の債権との明確な識別をはかり、規則第四十条に規定する債権現在額通知書及び法第三十九条に規定する債権現在額報告書に計上されることのないようにするものとする。

第二 債権の発生等に関する通知について

一 債権の発生等の通知義務者が債権管理官等を兼ねる場合における債権の発生又は国への帰属(以下「債権の発生等」という。)に関する通知について

法第十二条の規定により債権の発生等に関する通知を行うべき者(以下「通知義務者」という。)が債権管理官等(規則第六条に規定する債権管理官等をいう。以下同じ。)を兼ねる場合には、令第二十三条第一号の規定により債権の発生等に関する通知を省略できるものとされているが、これは、債権の発生等を知り得る系統の事務を行う係等と債権管理官等の事務を行う係等とが内部組織上分離している場合における係等間の連絡をも省略しうるものとしたのではない。このような場合には、令第十一条及び第十二条の規定に準じ、当該係等の間の連絡を密にするものとする。

二 債権の発生等に関する通知に添附する書類について

通知義務者が債権管理官等に対して債権の発生等に関する通知を行う場合に添附する書類のうち、債権又はその担保に係る事項の立証に供すべき書類(以下「証拠書類」という。)は、原本ではなくその写でよいこととなつている(令第十一条第一項)。これは、通知義務者がその職務上引き続き原本を保存する必要がある場合又は原本を直ちに債権管理官等に送付することが適当でない場合が多いので、写を添附することとしたのであつて、通知の際に原本を送付することが可能である場合には原本を添附することとする。

証拠書類のうちもつぱら債権又はその担保に係る事項の立証に供すべき書類の原本は、法第二十条第一項の規定により債権管理官等が整備保存すべきものであるから、なるべく早い機会において通知義務者から債権管理官等に送付するものとする。

第三 納入の告知の手続について

一 延滞金等が附される債権の納入の告知の請求等をする場合に明らかにする弁済の充当の順序

債権管理官等が、利息、延滞金又は一定の期間に応じて附する加算金(以下「延滞金等」という。)が附される債権について歳入徴収官に対して納入の告知をすべきことの請求をし、又はみずから債務者に対し納入の告知をする場合に明らかにする弁済の充当の順序は、次によるものとし、債権管理官等は、この順序を規則第十三条第一項に規定する書面又は規則第十四条第一項に規定する書面及び規則第十四条第二項に規定する納入告知書に記載するものとする。

1 一般の債権(下(左)記2及び3の債権以外の債権)についての弁済の充当の順序

元本と延滞金等との間においては、まず延滞金等に充当し、次いで元本に充当する。延滞金等相互の間においては、弁済期の早いものを先にし、弁済期の同じものについてはそれぞれの延滞金等の金額に均分して充当するのを原則とするが利息と履行期限までの加算金との間においては、とくに事務処理の便宜を考慮して、利息を先にし、加算金を後とする。

2 歳出予算の金額又は前渡資金に戻入することができる返納金債権の弁済の充当の順序

規則第十四条第三項に規定するところにより、まず元本に充当し、次いで延滞金等に充当する。

3 法施行前に告知済である債権の弁済の充当の順序

法施行の日(昭和三十二年一月十日)前に改正前の歳入徴収官事務規程第九条又は改正前の支出官事務規程第四十条の規定により既に元本について納入告知書又は返納告知書が発行されている債権について、当該告知に基いて弁済がされたときは、判例上その弁済は元本に対する弁済と解釈されるから、元本に充当し、延滞金についてまだ納入の告知がされていないときは、別途納入の告知をするものとする。

二 履行期限の定のない債権について納入の告知をする場合の履行期限の設定について

債権管理官等は、その所掌に属する債権について納入の告知をすべきことを歳入徴収官に対して請求し、又はみずから納入の告知をする場合において、当該債権の履行について法令又は契約に期限の定がないときは、納入の告知の請求の日又はみずから納入の告知をする日から二十日以内において適宜の履行期限を定めることとなつているが(規則第十三条第三項、第十四条第七項、歳入徴収官事務規程第十八条第一項)、悪意の不当利得者に対する不当利得返還金債権又は不法行為による損害賠償金債権については、債務者は不当利得時又は不法行為時から遅延利息を附して弁済すべきこととされている(民法第七百四条、大正三年六月二十四日大審院判例)ので、当該不当利得の日又は不法行為の日を履行期限として指定するものとする。

第四 法務大臣に対し強制履行の請求等の措置を求める場合の取扱について

一 債権管理官等が規則第二十一条の規定により行う書面の送付の宛先は、次のとおりとする。

1 各省各庁の中央機関に所属する債権管理官等にあつては、法務大臣(所掌は法務省訟務局)に送付する。

2 各省各庁の地方支分部局に所属する債権管理官等にあつては、その地方支分部局の所在地を管轄区域とする法務局長(所掌は法務局訟務部)又は地方法務局長(所掌は地方法務局訟務課)に送付する。

3 他の地方支分部局を監督する地方支分部局でその所在地が地方法務局長の管轄区域内にあるものに所属する債権管理官等は、訴の提起、仮差押若しくは仮処分の申請又は会社更生若しくは破産の申立の措置を求める場合には、上記2にかかわらず、当該地方法務局長を監督する法務局長に送付することができる。

4 他の地方支分部局を監督する地方支分部局でその所在地が東京法務局長の管轄区域内にあるものに所属する債権管理官等は、上記3の措置を求める場合には、上記2にかかわらず、当分の間、法務大臣に直接送付することができる。

二 規則第二十一条の規定により送付する書面に明らかにする事項は、次のとおりとする。

1 債務者の住所及び氏名又は名称

2 債権の内容(債権金額、履行期限、利率その他利息に関する事項、延滞金に関する事項等)

3 債権の発生原因

4 要求する措置の種類及びその措置を必要とする理由

5 次の措置の種類に応じそれぞれ次に定める事項

(1) 担保権の実行(法第十五条第一号)にあつては、

I 担保権の種類及び内容

II 担保物の種類、所在及び価額

III 優先債権等(令第四条第一項第一号に規定する優先債権等をいう。)の種類及び内容

(2) 強制執行(法第十五条第二号)にあつては、

I 債務名義の種類及び内容

II 執行の目的物の種類、所在及び価額

(3) 訴訟手続等による履行の請求(法第十五条第三号)にあつては、

I 従前の経過の詳細、ことに争の有無及び内容

II 関係人の住所及び氏名又は名称

III 証拠書類の有無及び内容

(4) 債権の申出(法第十七条第一号、第三号、第四号及び第七号)にあつては、

I 申出に係る事件の種類及び内容

II 当該事件の管轄裁判所

III 申出の期限

IV 申出をする債権に係る債務名義の有無、種類及び内容

V 当該債権に係る担保の有無、種類及び内容

(5) 仮差押及び仮処分(法第十八条第二項)にあつては、前記(3)に定める事項

(6) 債権者代位権の行使(法第十八条第三項)にあつては、

I 代位権の対象となる権利の種類及び内容並びに当該権利の相手方の住所及び氏名又は名称

II 保全する債権及び代位権の対象となる権利についての前記(3)に定める事項

(7) 詐害行為の取消(法第十八条第四項)にあつては、

I 詐害行為の内容及びその行為を知つた時期

II 保全する債権についての前記(3)に定める事項

(8) 履行延期の特約等に代る和解(法第二十八条)にあつては、和解条項案

6 法務大臣の所部の職員との連絡に当る職員の官職氏名及び所属部局名。なお、国の指定代理人とすることを必要と認める者のあるときは、その者の官職氏名及び所属部局名

7 その他参考となる事項

三 前記二の書面には、証拠書類その他必要と認められる書類の写のほか、債務者が法人である場合にはその法人に関する登記簿謄抄本、不動産に関する措置を求める場合にはその不動産登記簿謄本を添付するものとする。

第五 担保について

一 担保の価値について

規則第二十五条第七号に掲げる担保の価値は、次による。

(1) 規則第二十五条第四号に規定する手形以外の手形及び小切手 手形又は小切手の金額及び当該手形債務者又は小切手債務者の資産の状況を勘案して債権管理官等が決定する金額

(2) 保険に附されていない建物、立木、船舶、航空機、自動車及び建設機械 時価の六割以内において債権管理官等が決定する価額

(3) 動産(無記名債権、船舶、航空機、自動車及び建設機械を除く。)時価の五割以内において債権管理官等が決定する価額

(4) 規則第二十五条第六号に規定する保証人の保証以外の保証 保証金額及び保証人の資産の状況を勘案して債権管理官等が決定する金額

(5) 指名債権 指名債権の金額及び第三債務者の資産の状況を勘案して債権管理官等が決定する金額

二 担保として提供する有価証券のうち供託による提供を要しないものについて

登録した債券以外の有価証券を担保として提供するときは、供託所に供託することとなつているが、特殊の売買契約における事例として、七日~十日間程度の短期延納特約の担保として手形又は小切手を提供する場合には、規則第二十六条第一項の規定の特例として、その提供は供託所に対する供託によらず、これを債権管理官等に引き渡すことにより行うことができるものとし、債権管理官等は、受領後は、政府保管有価証券取扱規程第二条第一項ただし書の規定によりみずから保管し、又は部下の職員をして保管させるものとする。