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承継銀行の保有する資産として適当であることの確認を行うための基準

告示第一号


 

平成十三年三月二十九日号外


 

 平成十三年三月二十九日号外

 金融庁 財務省 告示第一号


 

承継銀行の保有する資産として適当であることの確認を行うための基準


 

金融庁財務省


 

預金保険法(昭和四十六年法律第三十四号)第九十三条第三項の規定に基づき、承継銀行の保有する資産として適当であることの確認を行うための基準を次のように定め、平成十三年四月一日から適用する。


 

 


 

一 

基本的考え方


 

1 

円滑な業務承継を図る観点及び承継銀行の業務の健全かつ適切な運営を図る観点から、被管理金融機関の貸付債権その他の資産のうち、確認の対象となる債権に係る債務者の債務の履行状況について、貸出条件の緩和(債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として、金利の減免、利息の支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄その他の債務者に有利となる取決めを行うこと。)が行われておらず、かつ、元本の返済若しくは利息の支払が延滞していないもの、又は速やかに貸出条件が正常化され、かつ、元本の返済及び利息の支払の延滞が解消されるものは、承継銀行の保有する資産として適当であることの確認を行うものとする。


 

2 

二以下の資産の確認に際しては、被管理金融機関が債務者の特殊事情(特許取得や保証など)に基づき将来の収益や債務の履行の確保を見込んでおり、これが合理的なものと認められる場合には、当該特殊事情も考慮して確認を行うものとする。


 

3 

資産の確認は、被管理金融機関の自己査定のほか、金融庁による検査及び金融整理管財人による調査を踏まえて行うものとする。

二 

貸出金


 

1 

貸出金に係る債務者は、その状況等により次のとおり区分して確認を行う。

(一) 

正常先

正常先とは、業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる債務者をいう。

(二) 

要注意先

要注意先とは、金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある債務者、元本の返済又は利息の支払が事実上延滞しているなど履行状況に問題がある債務者のほか、業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある債務者など今後の管理に注意を要する債務者をいう。

(三) 

破綻懸念先

破綻懸念先とは、現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者をいう。具体的には、現状、事業を継続しているが、実質債務超過の状況に陥っており、業況が著しく低調で貸出金が延滞状態にあるなど元本及び利息の最終の回収について重大な懸念があり、従って損失の発生の可能性が高い状況で、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者をいう。

(四) 

実質破綻先

実質破綻先とは、法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にあると認められるなど実質的に経営破綻に陥っている債務者をいう。具体的には、事業を形式的に継続しているが、財務内容において多額の不良資産を内包し、あるいは債務者の返済能力に比して明らかに過大な借入金が存在し、実質的に大幅な債務超過の状態に相当期間陥っており、事業好転の見通しがない状況、天災、事故、経済情勢の急変等により多大な損失を被り(あるいは、これらに類する事由が生じており)、再建の見通しがない状況で、元本又は利息について実質的に長期間延滞している債務者などをいう。

(五) 

破綻先

破綻先とは、法的・形式的な経営破綻の事実が発生している債務者をいい、例えば、破産、清算、会社整理、会社更生、再生手続、手形交換所の取引停止処分等の事由により経営破綻に陥っている債務者をいう。


 

2 

正常先に対する貸出金は、承継銀行の保有する資産として適当なものとする。


 

3 

要注意先に対する貸出金は、原則として次のとおり確認を行う。

(一) 

債務者について、元本の返済及び利息の支払が当初の貸出契約どおりに履行されている場合は、当該債務者に対する貸出金は、承継銀行の保有する資産として適当なものとする。

(二) 

(一)以外の債務者については、当該債務者から経営の合理化等の企業経営の見直しにより確認時の二年後を含む当該債務者の会計期間の終了時(個人の場合には、確認時の二年後を含む暦年の年末とする。)までに次に掲げるすべての要件を満たすことを示す財務指標の資料等が提出され、その資料等を精査した結果、これらの要件の達成が実現可能であると判断される場合に限り、当該債務者に対する貸出金は承継銀行の保有する資産として適当なものとする。

(1) 元利金に係る貸出条件が正常化すること。

(2) 元本の返済及び利息の支払の延滞が解消され、新規の延滞が発生しないこと。

(三) 

(一)及び(二)にかかわらず、貸出金が住宅ローン等の個人向け定型ローン等のみである場合における当該貸出金に係る債務者に対する貸出金は、承継銀行の保有する資産として適当なものとみなす。


 

4 

破綻懸念先、実質破綻先又は破綻先に対する貸出金は、原則として承継銀行の保有する資産として適当でないものとする。

三 

外国政府等に対する貸出金

外国の政府、中央銀行、地方公共団体及び政府関係機関に対する貸出金は、二の規定によらず、原則として、リスケジュール(債務の履行期限の延長)が成立しているもの、元本の返済若しくは利息の支払が延滞しているもの又は債務不履行の宣言に係るものは、承継銀行の保有する資産として適当でないものとする。

四 

有価証券


 

1 

株式については、業務の遂行上、必要不可欠なものは、承継銀行の保有する資産として適当なものとする。


 

2 

貸付有価証券については、貸出金に準じて確認を行う。


 

3 

債券その他の有価証券(投資信託の受益証券、貸付信託の受益証券等)については、その債務の履行に特に問題があると認められておらず、業務の遂行上、必要不可欠なものは、承継銀行の保有する資産として適当なものとする。

五 

その他の資産(貸出金、有価証券以外)


 

1 

外国為替、仮払金、支払承諾見返(債務保証見返)、未収利息又は未収金については、貸出金に準じて確認を行う。


 

2 

金融派生商品、動産又は不動産については、業務の遂行上、必要不可欠なものは、承継銀行の保有する資産として適当なものとする。


 

3 

その他の資産については、その資産の性質を勘案し、回収の危険性又は価値の毀損の可能性が特に高いと認められず、業務の遂行上、必要不可欠なものは、承継銀行の保有する資産として適当なものとする。