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新たな特別会計財務書類について/財政制度等審議会

新たな特別会計財務書類について





平成15年6月30日

財政制度等審議会


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「新たな特別会計財務書類について」


平成15年6月30日

財務大臣 塩川 正十郎 殿
財政制度等審議会会長
貝塚  啓明


 財政制度等審議会 財政制度分科会 法制・公会計部会は、「新たな特別会計財務書類について」、ここに報告を取りまとめた。
 政府においては、本報告の趣旨に沿い、公会計の充実に向けた積極的な取組みを進めるよう強く希望する。

   



新たな特別会計財務書類について





.公共部門の会計制度である公会計については、国の内外においてその重要性が認識されるとともに、機能の充実が求められている。財政制度等審議会 法制・公会計部会の下にある公企業会計小委員会においては、従前から、公会計の充実に向けての取り組みが行われている。


.公企業会計小委員会では、一昨年の10月、特別会計の財政状況をより明らかにするため、企業会計的な考え方を導入した財務諸表の検討を行うこととし、昨年2月から、公企業会計小委員会の下に設置されている公企業会計ワーキンググループにおいて、具体的な作成基準の検討が行われ、「新たな特別会計財務書類について」として報告書の取りまとめが行われた。報告書は、公企業会計小委員会に6月26日に報告された後、本日、当法制・公会計部会に報告されたところである。


.報告書では、特別会計の財務内容について、ディスクロージャーの充実及び説明責任の適切な履行を図るとの観点から、全特別会計において発生主義など企業会計の考え方及び手法を可能な限り活用した統一的な基準に基づく新たな財務書類の作成基準について取りまとめが行われている。


.本報告書に基づき、新たな特別会計財務書類が全特別会計において作成され、特別会計における財務内容のディスクロージャーの充実等が図られることを期待したい。



平成15年6月30日

   財政制度等審議会 財政制度分科会
   法制・公会計部会 部会長 立石 信雄
 

企業会計の考え方及び手法を活用した新たな特別会計財務書類について


財政制度等審議会 財政制度分科会
法制・公会計部会 公企業会計小委員会
平成15年6月30日


 特別会計の財務内容については、平成13年10月、当小委員会において、「特別会計の財政状況をより明らかにするため、特別会計の特殊性を勘案しつつ、発生主義等企業会計的な考え方を導入した財務諸表の作成方法について検討を行う」こととし、その後、4回にわたり議論を行い、昨年1月、「新たな特別会計財務諸表の作成に係る論点整理」の取りまとめを行った。
 論点整理においては、新たな財務諸表の作成は、全ての特別会計を対象として検討を行い、国の予算制度や特別会計の特殊性を踏まえつつできる限り企業会計の考え方及び手法を活用し、特別会計に共通する基準を設ける方向で検討を行うこととし、具体的作成基準の検討については、会計専門家等で構成するワーキンググループを設けて個々具体的に検討を行うこととした。

 論点整理を踏まえ、公企業会計ワーキンググループにおいて検討を開始し、昨年10月には「特別会計における新たな財務書類の作成に係る取りまとめ(試作基準)」を公表し、その後、試作結果を踏まえた検討が行われ、昨年2月の作業開始から40回にわたり精力的な検討を経て、「新たな特別会計財務書類の作成基準」として取りまとめが行われ、去る6月26日、当小委員会に報告された。
 報告書においては、企業会計の考え方及び手法を可能な限り活用し、特別会計における財務内容のディスクロージャーの充実及び説明責任の適切な履行を図るとの観点から、全ての特別会計を対象とした共通の作成基準が取りまとめられている。

 新たな特別会計の財務書類の作成により、特別会計における財務内容のディスクロージャーの充実等が図られることとなることから、「新たな特別会計財務書類の作成基準」に基づく財務書類の積極的な開示が期待される。
 なお、公会計全般についての総合的な検討が始められており、その検討状況を踏まえ、今後、特別会計の財務状況の開示のあり方等について見直しを行う必要があることを特に付言したい。
   

新たな特別会計財務書類の作成について


財政制度等審議会 財政制度分科会
法制・公会計部会 公企業会計小委員会
公企業会計ワーキンググループ
平成15年6月26日




.公企業会計ワーキンググループでの検討の経緯
 特別会計の財務内容については、平成13年10月、財政制度等審議会財政制度分科会法制・公企業会計部会公企業会計小委員会において、「特別会計の財政状況をより明らかにするため、特別会計の特殊性を勘案しつつ、発生主義等企業会計的な考え方を導入した財務諸表の作成方法について検討を行う」こととされ、昨年1月、「新たな特別会計財務諸表の作成に係る論点整理」がまとめられた。
 論点整理における新たな財務諸表の方向性は、全ての特別会計を対象として検討を行い、国の予算制度や特別会計の特殊性を踏まえつつできる限り企業会計の考え方及び手法を活用し、特別会計に共通する基準を設ける方向で検討を行うとするものであり、具体的検討については、会計専門家等で構成するワーキンググループを設けて個々具体的に検討を行うこととされた。


.公企業会計ワーキンググループにおける検討
 
(1)

 試作基準の取りまとめ
 公企業会計小委員会における論点整理を受け、昨年2月、第1回目のワーキンググループを開催し、特別会計における新たな財務書類の作成方法等について精力的な検討を開始した。
 検討に当たっては、まず特別会計の事業内容や経理処理の実態を把握することが肝要と考え、特別会計の類型毎に7つの特別会計を選び、これらの特別会計を所管している省庁からヒアリングを行い、その後、貸借対照表、フローの財務書類及び連結財務書類等について具体的な検討を行った。
 しかしながら、特別会計の経理している内容は区々であり、また、財政資金の流れや保有資産等の内容が大きく異なっていることから、各特別会計において財務書類を試作した上で、試作の財務書類を通じて各特別会計における個別の論点等を洗い出し、検討することが適切であると考え、昨年10月、「特別会計における新たな財務書類の作成に係る中間取りまとめ(試作基準)」(以下「試作基準」という。)を取りまとめた。
 なお、検討を開始した時点においては37の特別会計があったが、独立行政法人化や公社化等により、6つの特別会計が廃止される予定となっていたことから、残りの31の特別会計を検討対象とした。
 
(2)

 試作基準の見直し
 試作基準に基づき、各特別会計の財務書類が作成され、本年2月以降7回にわたり、全ての特別会計の財務書類についてヒアリングを実施した。
 その後、試作基準に基づき作成された各特別会計の財務書類の問題点の検討や、個々の特別会計の経理内容をより明らかにするための財務書類として改善すべき事項等について検討を行った。
 また、財務書類の作成意義や財務情報として追加すべきもの等について検討し、試作基準の見直しを行い、今般、「新たな特別会計財務書類の作成基準」として検討結果を取りまとめた。


.新たな特別会計財務書類の作成目的等
 
(1)

 検討の前提
 特別会計は、国の会計の一部を区分したものであり、その業務の基盤としての人的組織や資産を有していない特別会計があるなど、独立した会計主体たりうるのかといった問題点も指摘されたが、現行の特別会計制度を前提とし、公的な主体として財務内容のディスクロージャーの充実及び説明責任の適切な履行を図るとの観点から検討を行った。
 また、国の財政事情をより分かりやすく提供するため、「国の貸借対照表作成の基本的考え方」に基づいて国の一般会計及び特別会計を対象とした「国の貸借対照表(試案)」が作成され、また、特別会計等の財務書類の作成の指針として「特別会計等財務書類の作成ガイドライン」が公表されていることから、これらの内容を踏まえたところで検討を行った。
 
(2)

 新たな特別会計財務書類の作成目的
 各特別会計法の規定に基づき、一部の特別会計において歳入歳出決算の添付書類として財務諸表が作成されている。この財務諸表は、それぞれの特別会計の事業内容を踏まえたところで作成され、予算・決算との関連があり、予算の適正な執行を確保するという予算統制に配慮したものとなっている。しかし、すべての特別会計において財務諸表が作成されているものではなく、また、財務諸表作成のための統一した基準がないため、民間企業の財務諸表や他の特別会計との比較に際して分かりづらいといった指摘もある。
 このため、企業会計の考え方及び手法を可能な限り活用し、特別会計の財務状況をより分かりやすく表示し、特別会計における財務内容のディスクロージャーの充実及び説明責任の適切な履行を図るとの観点から、法定の財務諸表に加え、新たな特別会計財務書類の作成の検討を行った。
 
(3)

 新たな特別会計財務書類の検討にあたっての基本的考え方
   
1

 昨年1月の公企業会計小委員会の論点整理を踏まえ、企業会計の考え方及び手法を可能な限り活用し、特別会計の財務状況をより分かりやすく表示し、特別会計における財務内容のディスクロージャーの充実及び説明責任の適切な履行を図るとの観点から検討を行った。
   
2

 他方、特別会計は営利を目的としておらず、また、その収入と費用とには企業会計におけるような対応関係が見られないこと等から、特別会計の特性を踏まえ、公的な主体に相応しい財務書類について検討を行った。
   
3

 特別会計については、その経理している内容は区々であり、また、財政資金の流れや保有資産等の内容も大きく異なることから、特別会計の類型ごとに別の基準を作成することも考えられた。また、独立した会計主体としての実体が乏しい特別会計や、事務事業の実態が発生主義になじみにくい特別会計も存在するが、特別会計間の一覧性、比較可能性を確保するとの観点から、全特別会計で同一の基準に基づいて財務書類を作成する方向で検討を行った。
   
4

 財務書類の体系については、企業会計の考え方及び手法を可能な限り活用し、ストック情報を開示する財務書類、フローの状況を開示する財務書類及び財政資金の流れの状況を開示する財務書類を作成する方向で検討を行った。


.新たな特別会計財務書類の作成時期等
 
(1)

 作成及び公表時期
 新たな特別会計財務書類は、特別会計における財務内容のディスクロージャーの充実及び説明責任の適切な履行を図る観点から作成されるものであることから、その公表時期については、歳入歳出決算の作成・国会提出時期から遅滞なく公表されることが望ましい。このため、各省庁の作成担当者においては事務負担となるが、新たな特別会計財務書類の意義を十分踏まえ、可能な限り速やかな作成及び公表を要望する。
 
(2)

 公表に当たって留意すべき事項
 特別会計については、その設置目的や経理している事業内容、その財源等が大きく異なっているなど、その経理内容は区々であることから、企業会計の考え方及び手法を採り入れた財務書類の作成によっても、これだけで特別会計の財務内容に対する理解が進むとはいい難いものである。
 このため、特別会計における財務内容のディスクロージャーの充実及び説明責任の適切な履行を図るには、まずは特別会計の設置目的や経理している事業内容、財政資金の流れ等についての情報提供が重要であり、新たな特別会計財務書類の公表とともに、これらについての情報を提供することが必要不可欠であることを強調したい。
 
(3)

 試作財務書類の取扱い
 各特別会計における財務書類作成上の問題点等を検討するため、試作基準に基づき平成11年度から平成13年度までの3カ年分の財務書類が作成されている。
 この試作基準に基づく財務書類は、あくまで基準の検討に資するために作成されたものであり、内容的に不十分なところがあり、そのまま公表することは適当ではない。
 しかしながら、ディスクロージャーの観点から、試作基準に基づく3カ年分の財務書類についても、本作成基準に基づいて必要な修正を行い、速やかに公表すべきものと考える。


.今後の見直し
 公会計については、国民に対して国の財政事情を分かりやすく開示し、財政の透明性及び一覧性を向上させるとの観点から、その重要性が一段と高まってきており、これまでの個別分野における検討に加えて、公会計の意義や目的等の公会計に関する基本的な考え方等について総合的に検討するため、財政制度等審議会に「公会計基本小委員会」が設置され、本年1月から検討が開始されている。
 また、特別会計の事業の見直し及び歳出の効率化・合理化等について検討するため、財政制度等審議会に「特別会計小委員会」が設置され、本年4月より検討が開始されている。
 このように、公会計のあり方や特別会計の事業内容等について、検討が進められているところであり、今後、特別会計における財務内容の開示についての要請の内容も変化していくことも考えられる。このため、公会計に関する基本的考え方についての検討等も踏まえ、各特別会計における財務書類の作成・開示のあり方、本作成基準の内容についても見直しを行っていくことが必要であると考える。
   

新たな特別会計財務書類の作成基準

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