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【新たな特別会計財務書類について】第1章~第3章/財政制度等審議会

第1章 新たな特別会計財務書類の体系等


.体系
 新たな特別会計財務書類の体系は、貸借対照表、業務費用・財源計算書、区分別収支計算書及びこれらに関連する事項についての附属明細書とする。なお、新たな特別会計財務書類は、前会計年度と本会計年度の比較形式で開示する。
 また、特別会計が経理している業務と関連性があり、政策的に一体性があると認められる特殊法人、認可法人及び独立行政法人(以下「特殊法人等」という。)がある場合には、参考情報として連結財務書類を作成する。連結財務書類の体系は、連結貸借対照表、連結業務費用・財源計算書及び連結区分別収支計算書とする。


.作成単位
 新たな特別会計財務書類は、特別会計の歳入歳出決算の内容を補足説明するためものであることから、原則として、特別会計を作成単位とする。ただし、各特別会計法等の規定により、勘定区分が設けられている場合には、当該勘定を作成単位とし、参考情報として勘定を合算した財務書類を作成する。
 また、連結財務書類についても、原則として、特別会計を作成単位とするが、勘定区分が設けられている場合には、勘定を作成単位とする。


.作成に際しての基礎的な計数
 新たな特別会計財務書類は、歳入歳出決算及び国有財産台帳等の計数を基礎として作成する。


.作成基準日
 新たな特別会計財務書類の作成基準日は、会計年度末(3月31日)とする。ただし、出納整理期間が設けられている特別会計については、当該出納整理期間中の現金の受払い等を終了した後の計数をもって会計年度末の計数とする。
 なお、出納整理期間が設けられている場合には、その旨及び出納整理期間中の現金の受払い等を終了した後の計数をもって会計年度末の計数としている旨を注記する。


.計数の単位
 新たな特別会計財務書類に掲記される科目その他の事項の金額は、百万円単位(単位未満切り捨て)をもって表示する。

第2章 貸借対照表


.貸借対照表の作成目的等
 
(1)

 作成目的
 貸借対照表は、償却資産について減価償却後の資産価額を計上し、退職給付引当金等の引当金を計上するなど、発生主義による取引の認識をはじめとする企業会計の考え方及び手法を採り入れることにより、会計年度末において特別会計に帰属する資産及び負債の状況をより明らかにすることを目的として作成する。
 
(2)

 区分等
 貸借対照表は、「資産の部」、「負債の部」及び「資産・負債差額の部」の3区分とする。
 また、特別会計に帰属する資産及び負債の内容は区々であることに加え、歳入歳出予算により財政運営が規律されており、支払能力を判断する必要性が低いこと等から、特に流動・固定の区分は行わない。ただし、配列については、流動性配列法とする。
 
(3)

 外貨建て資産及び負債の換算
 外貨建て資産及び負債については、原則として、会計年度末の為替レートで換算し、その換算方法を注記する。
 なお、外貨建て資産及び負債の換算差額については、原則として、当該年度の「業務費用」又は「財源」として処理する。ただし、外貨建て資産の保有が政策的に要請されているものに係る換算差額については、資産・負債差額の部に計上する。


.資産項目
 資産については、現金・預金、有価証券、たな卸資産、貸付金、有形固定資産及び出資金等、過去の取引又は事象の結果として特別会計に帰属する資源であって、それにより将来の業務提供能力又は経済的便益が期待されるものを計上し、形態を表す科目によって表示する。また、貸借対照表価額については、それぞれの資産の所有目的に応じた評価基準及び評価方法により計上する。
 
(1)

 現金・預金
 手持ち現金、日本銀行預託金、財政融資資金預託金のほか、円貨預け金及び外貨預け金等を「現金・預金」として計上する。
 また、供託金、契約保証金等として、特別会計が保管しているものについては、特別会計に消費寄託されていることから「現金・預金」として計上する。なお、寄託者からの請求権は「保管金等」として負債の部に計上する。
 
(2)

 有価証券
  
1

 計上対象
 特別会計が資金及び積立金の運用等の目的で保有している債券等及び「出資金」として計上されない有価証券を「有価証券」として計上する。また、有価証券の評価基準及び評価方法を注記する。
 なお、契約保証金等として国に寄託されている有価証券は、国に所有権が移転していないため計上しない。
  
2

 評価基準
 有価証券については、「満期保有目的有価証券」及び「満期保有目的以外の有価証券」に区分し、それぞれ次のとおり評価する。
    満期保有目的有価証券
 満期まで所有する意図をもって保有している債券、いわゆる「満期保有目的有価証券」については、償却原価法によって算定された価額をもって貸借対照表価額とする。
 ただし、満期保有目的有価証券で市場価格があるものについて、市場価格が著しく下落した場合には、回復する見込みがあると認められるときを除き、市場価格をもって貸借対照表価額とする。なお、債券の市場価格の下落率が30%以上である場合には、「著しく下落したとき」に該当するものとする。この強制評価減に係る評価差額については、当該年度の「業務費用」として処理しなければならない。回復する見込みがあると認められ、市場価格によって評価しない場合には、その旨、その理由及び市場価格との差額を注記する。
   ii 満期保有目的以外の有価証券
 「満期保有目的以外の有価証券」のうち、市場価格のあるものについては、会計年度末における市場価格をもって貸借対照表価額とする。市場価格での評価替えに係る評価差額については、洗い替え方式により、貸借対照表の資産・負債差額の部の「資産評価差額」に計上する。
 ただし、「満期保有目的以外の有価証券」のうち、市場価格のあるものについて、市場価格が著しく下落した場合には、回復する見込みがあると認められるときを除き、市場価格をもって貸借対照表価額とする。この強制評価減に係る評価差額については、当該年度の「業務費用」として処理しなければならない。なお、有価証券の市場価格の下落率が30%以上である場合には、「著しく下落したとき」に該当するものとする。回復する見込みがあると認められ、市場価格によって評価しない場合には、その旨、その理由及び市場価格との差額を注記する。
 「満期保有目的以外の有価証券」のうち、市場価格のないものについては、取得原価又は償却原価をもって貸借対照表価額とする。
 ただし、「満期保有目的以外の有価証券」のうち、市場価格のない株式について、発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下した場合には、相当の減額を行う。なお、実質価額の低下割合が30%以上である場合には、「著しく低下したとき」に該当するものとする。この強制評価減に係る評価差額については、当該年度の「業務費用」として処理しなければならない。
 
(3)

 たな卸資産
 製品、半製品、仕掛品等を「たな卸資産」として計上する。また、原則として、それぞれの種類ごとに取得原価により計上し、その評価基準及び評価方法を注記する。
 ただし、時価が取得原価より著しく下落した場合には、回復する見込みがあると認められるときを除き、時価をもって貸借対照表価額とする。この強制評価減に係る評価差額については、当該年度の「業務費用」として処理しなければならない。なお、回復する見込みがあると認められ、時価によって評価しない場合には、その旨、その理由及び時価との差額を注記する。
 
(4)

 未収金
 会計年度末における未収入金を「未収金」として計上する。
 ただし、たな卸資産の売却に伴う未収金については「売掛金」の科目で計上し、保険業務を行っている特別会計においては保険料に係る未収分とその他の未収分とを区分し、保険料に係る未収分は「未収保険料」として計上する。
 
(5)

 未収収益
 一定の契約に従い、継続して役務の提供を行っている場合、会計年度末において、既に提供した役務に対して未だその対価の支払を受けていないものを「未収収益」として計上する。
 
(6)

 前払金
 会計年度末において、未だ提供されていない役務又は物品に対する既支払額を「前払金」として計上する。
 ただし、前金払されている公共事業の対価について、膨大な数に上る事業ごとにその執行状況を把握し、分離・区分することが困難な場合には、これを「建設仮勘定」として計上することができる。
 
(7)

 前払費用
 一定の契約に従い、継続して役務の提供を受けている場合、会計年度末において、未だ提供されていない役務に対して支払われた対価を「前払費用」として計上する。
 
(8)

 貸付金
 貸付先に対する融資残高を「貸付金」として計上する。
 
(9)

 各特別会計固有の債権
  
1

 他会計(勘定)繰入未収金
 他会計からの過去又は現在の繰入不足等であって、将来的に財源の繰入等について、法令により金額等が具体的に規定されているものについては、これを「他会計(勘定)繰入未収金」として計上する。
  
2

 他会計繰戻未収金
 他会計への繰入金で、繰入金に相当する金額が繰り戻されること及び繰り戻されるべき具体的金額(又は算出方法)が法令により規定されているものについては、「他会計繰戻未収金」として計上する。
  
3

 その他の債権
 特別会計に帰属する上記以外の債権については、「その他の債権」として計上する。
 ただし、金額的に重要性があるもの及び各特別会計で固有のものについては、「その他の債権」ではなく独立の科目で表示する。
 
(10

) 貸倒引当金
 売掛金、未収金及び貸付金等の債権に対しては、個々の債権の事情に適した合理的な基準により貸倒見積高を算定し、「貸倒引当金」として計上する。ただし、合理的な基準により難い特別の事情がある場合には、過去3年間の実績に基づいて算定することができる。
 また、保険特別会計における未収保険料については、不納欠損額等の実績を踏まえ、合理的な基準により不納欠損額を算定し計上する。
 貸倒引当金については、その計上基準及び算定方法のほか、貸倒引当金の計上対象となっている債権の状況等について注記する。
 
(11

) 有形固定資産
 有形固定資産については、その種類ごとに表示科目を設け計上する。
 また、有形固定資産は管理客体ごとに管理法規が定められていること等から、それぞれの目的に応じた評価方法により計上する。また、減価償却の方法について注記する。
  
1

 国有財産
 公共用財産(公園及び広場を除く。以下同じ。)を除く国有財産については、国有財産台帳によってその価額が管理されていることから、これを基礎として貸借対照表計上額を決定する。非償却資産については、国有財産台帳価格で計上する。また、償却資産については、価格改定年度以外の年度においては、減価償却費が台帳価格に反映されていないことから、価格改定に適用される減価償却の方法(定率法)により減価償却費相当額を算出し、国有財産台帳価格から当該減価償却費相当額を控除した後の価額を計上する。
 国有財産の台帳価格の改定に係る評価差額については、「資産評価差額」に計上する。国有財産の処分時において「資産評価差額」は取崩さず、台帳価格改定後の価額(価格改定年度の翌年度以降は減価償却費相当額を控除した後の価額)に基づいて処分損益を算定する。
 また、国有財産法施行細則別表1に掲げる国有財産の区分を参考に表示科目を設定する。
 なお、売却を前提として国有財産を保有している特別会計においては、これを「たな卸資産」として計上する。
  
2

 公共用財産
 公共用財産のうち、国の所有となるものについて、施設の耐用年数にわたる過去の用地費や事業費等を累計(累積)することにより取得原価を推計し計上する。
 非償却資産である公共用財産の用地部分については、施設の耐用年数分の用地費等を累計(累積)した額を貸借対照表価額とする。
 償却資産である公共用財産の施設部分については、過去の事業費等を累計(累積)することにより資産価額を推計し、更に定額法により減価償却費相当額を算出し、当該資産価額から、当該減価償却費相当額を控除した後の価額を計上する。
 また、事業費の累計(累積)にあたっては、国の事業費のほか、地方公共団体等の負担がある場合には、地方公共団体等の負担分を推計し、これも合算した上で事業費を累計(累積)する。
  
3

 物品
 取得価格が50万円以上の重要物品を「物品」として計上する。また、物品管理簿の記載価格を基礎とし、減価償却を行い、当該減価償却費相当額を控除した後の価額を計上する。
 なお、減価償却の方法については、原則として、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)」に定める耐用年数を基準とし、残存価額を取得原価の10%とした定額法とする。
 
(12

) 無形固定資産
 国有財産として管理されている地上権等の用益物権及び特許権等の無体財産権のほか、電話加入権やソフトウェアを「無形固定資産」として計上する。また、減価償却の方法について注記する。
  
1

 国有財産
 国有財産として管理されている地上権等の用益物権及び特許権、著作権等の無体財産権については、国有財産台帳価格で計上する。
 地上権等の用益物権については、非償却資産として償却を要しないが、その他の償却資産は償却を行うこととし、実施料等の見積価格で国有財産台帳に計上されているものについては、実施料等相当額を償却し、当該実施料相当額を控除した後の価額を計上する。
 国有財産の台帳価格の改定に係る評価差額については、「資産評価差額」に計上する。国有財産の処分時において「資産評価差額」は取崩さず、台帳価格改定後の価額(価格改定年度の翌年度以降は減価償却費相当額控除後の価額)に基づいて処分損益を算出する。
  
2

 電話加入権
 電話加入権については、取得原価で計上する。ただし、取得原価が判明しないものについては、現在の取得価格に相当する金額で計上する。
  
3

 ソフトウェア
 ソフトウェアについては、研究開発費に該当しないソフトウェア制作費について、当該ソフトウェアの利用により将来の費用削減が確実であると認められる場合には、当該ソフトウェアの取得に要した費用(過去に遡って算出することが困難な場合は、5年間の開発費等の累計)を資産価額とし、定額法による減価償却を行い、当該減価償却費相当額を控除した後の価額を計上する。
 
(13

) 出資金
 国有財産として管理されている政府出資等のうち、国が政策目的をもって保有しているものを「出資金」として計上する。ただし、政策目的をもって保有していない有価証券については、「有価証券」として計上する。
 「出資金」のうち、市場価格があるものは、会計年度末における市場価格をもって貸借対照表価額とする。市場価格での評価替えに係る評価差額については、洗い替え方式により、貸借対照表の資産・負債差額の部の「資産評価差額」に計上する。
 ただし、市場価格のあるものについて、市場価格が著しく下落した場合には、回復する見込みがあると認められるときを除き、市場価格をもって貸借対照表価額とする。この強制評価減に係る評価差額については、当該年度の「業務費用」として処理しなければならない。なお、市場価格の下落率が30%以上である場合には、「著しく下落したとき」に該当するものとする。回復する見込みがあると認められ、市場価格によって評価しない場合には、その旨、その理由及び市場価格との差額を注記する。
 「出資金」のうち、市場価格がないものは、出資金額をもって貸借対照表価額とする。
 ただし、市場価格のないものについて、出資先の財政状態の悪化により出資金の価値が著しく低下した場合には、相当の減額を行う。なお、出資金の価値の低下割合が30%以上である場合には、「著しく低下したとき」に該当するものとする。この強制評価減に係る評価差額については、当該年度の「業務費用」として処理しなければならない。
 この出資先の財政状態について、行政コスト計算書を作成している特殊法人及び認可法人においては、「特殊法人等に係る行政コスト計算書作成指針」に基づいて作成された貸借対照表によって出資金の実質的価値を算出する。
 なお、出資金の評価について、出資先法人に勘定区分があり、当該勘定の業務に充てるために出資がなされている場合には、当該勘定の財務状況によって評価を行う。


.負債項目
 負債については、未払金、政府短期証券、借入金、公的年金預り金及び退職給付引当金等、過去の取引又は事象に起因する特別会計の現在の義務であって、その履行により、将来の業務提供能力又は経済的便益の減少を生じさせるものを計上し、形態を表す科目によって表示する。
 
(1)

 未払金
 会計年度末までに支払義務発生の原因が生じており、その金額が確定し又は合理的に見積もることができるものを「未払金」として計上する。
 
(2)

 支払備金
 保険契約に基づいて支払義務が発生しているが、保険金として支出されていない金額を「支払備金」として計上する。
 
(3)

 未払費用
 一定の契約に従い、継続して役務の提供を受けている場合、会計年度末において、既に提供された役務に対して未だその対価の支払を終えていないものを「未払費用」として計上する。
 
(4)

 前受金
 会計年度末において、代金の納入は受けているが、これに対する義務の履行を行っていないものを「前受金」として計上する。
 
(5)

 前受収益
 一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合、会計年度末において、未だ提供していない役務に対し支払を受けた対価を「前受収益」として計上する。
 
(6)

 未経過(再)保険料
 未経過期間(保険契約に定めた保険期間のうち、会計年度末において、未だ経過していない期間をいう。)に対応する責任に相当する額として算定した金額を「未経過(再)保険料」として計上する。
 
(7)

 賞与引当金
 期末手当・勤勉手当については、公務員の日々の勤務に応じて発生する費用であることから、既に勤務が提供された部分について負債として認識し、会計年度末までの期間に対応する部分を「賞与引当金」として計上し、その計上基準及び算定方法について注記する。
 
(8)

 政府短期証券
 外国為替資金証券、財政融資資金証券及び食糧証券等については、残高(額面額)より債券発行差金を控除又は加算した額を貸借対照表価額とし、「政府短期証券」として計上する。
 債券発行差金は、政府短期証券の発行期間にわたって償却を行う。なお、債券発行差金の償却分については、「支払利息」として業務費用・財源計算書に計上する。
 
(9)

 借入金
 財政融資資金及び民間金融機関からの融資残高を「借入金」として計上する。
 なお、公債を発行している特別会計においては、公債の残高(額面額)より、債券発行差金を控除又は加算した額を貸借対照表価額とし、「公債」として計上する。
 また、貸付金の原資としての他会計からの受入金については、将来的には貸付金の原資を受け入れた他会計へ戻すことが予定されていると考えられることから、「貸付金財源受入金」として計上する。
 
(10

) 責任準備金
 特別会計が行っている保険事業に係る保険料については、単に保険数理のみではなく、政策的な観点も踏まえて、その水準が設定されており、一概に責任準備金の取扱いを定めることは困難であることから、各保険事業に適した合理的な基準により算定した金額を「責任準備金」として計上する。
 なお、責任準備金については、その計上の考え方、計上方法及び算定方法等を注記する。
 
(11

) 公的年金預り金
 厚生年金及び国民年金については、過去期間に対応する給付現価のうち、積立金で賄われるべき部分、すなわち財政再計算における各年度末の所要積立金に相当する金額を「公的年金預り金」として計上する。
 なお、公的年金の積立方法、財政再計算における各年度末の所要積立金に相当する金額と現実の積立金の差額の発生原因、会計処理のほか、過去期間に対応した将来給付現価額及びこれに対する財源の見込額、算出根拠等について注記する。
 
(12

) 退職給付引当金
  
1

 退職手当に係る退職給付引当金
 退職手当の性格は賃金の後払いであるとの考え方にたち、既に労働提供が行われている部分については負債として認識し、「退職給付引当金」として計上する。計上額については、期末要支給額方式で算定する。
 なお、特殊法人等への出向者に係る退職給付引当金等についても計上することとし、特殊法人等からの出向者に係る退職給付引当金については計上を要しない(特殊法人等への出向者に係る退職給付引当金の計上は、特別会計において負担することとなる者を対象とし、この場合の俸給は、引き続き国の職員として在職していたと仮定した場合の俸給で算定するものとする。)。
 また、退職給付引当金の計上基準及び算定方法について注記する。
  
2

 恩給給付費
 恩給給付費のうち、特別会計の負担に係る将来給付見込額の割引現在価値額を「退職給付引当金」として計上する。
  
3

 整理資源
 国家公務員共済年金のうち、整理資源(昭和34年10月前の恩給公務員期間に係る給付分)については、将来給付見込額の割引現在価値額を「退職給付引当金」として計上する。
  
4

 国家公務員災害補償年金
 国家公務員災害補償法に基づく補償のうち、職員が死亡した場合に支給される遺族補償年金については、使用者としての国が、その遺族に対して将来的に支給するものであり、また、金額を合理的に見積もることができることから、将来給付見込額の割引現在価値額を「退職給付引当金」として計上する。
 
(13

) 各特別会計固有の債務
  
1

 他会計(勘定)繰入未済金
 他会計への過去又は現在の繰入不足等であって、将来的に他の会計(勘定)に財源として繰り入れるべきものについて、法令の規定により金額等が具体的に規定されているものについては、これを「他会計(勘定)繰入未済金」として計上する。
  
2

 他会計繰戻未済金
 他会計からの繰入金で、繰入金に相当する金額を繰り戻すことが法令で規定されているものについては、繰戻未済額を「他会計繰戻未済金」として計上する。
  
3

 その他の債務
 特別会計に帰属する上記以外の債務については、「その他の債務」として計上する。
 ただし、金額的に重要性があるもの又は各特別会計で固有のものについては、「その他の債務」ではなく独立の科目で表示する。


.資産・負債差額
 貸借対照表における資産と負債の差額については「資産・負債差額の部」として整理する。また、「資産・負債差額の部」においては、次の内訳を表示する。
 
(1)

 基金等
 特別会計の中には、その設立の際に、廃止された特別会計から資産を承継し、特別会計法上これを資本として整理しているもの等がある。これらについては、「基金」等(法律上の名称を使用する。)として表示する。なお、基金等の根拠法令及びその内容等について注記する。
 
(2)

 基準時資産・負債差額
 本作成基準に準拠して作成した平成11年度期首の貸借対照表の作成時に、その性質又は発生原因を明確にすることができないものについては、これを「基準時資産・負債差額」として表示する。
 
(3)

 資金(積立金)
 財政法第44条において、「国は、法律を以て定める場合に限り、特別の資金を保有することができる」と規定されており、特別会計においても、効率的な財政運営の必要性から、資金又は積立金の名称で特別の資金を保有している場合がある。これらの資金のうち、歳入歳出の剰余が積み立てられているものについては、これを「積立金」等(法律上の名称を使用する。)として表示する。なお、資金の根拠法令及びその内容等について注記する。
 
(4)

 業務費用・財源差額累計
 業務費用・財源計算書において計算された業務費用と財源の差額については、企業会計における当期利益や未処分利益とはその性格が異なるものであるが、業務費用と財源の差額の累計を貸借対照表において明示することとし、「業務費用・財源差額累計」として表示する。
 なお、金額は、業務費用・財源計算書の「本年度末業務費用・財源差額累計」と同額になる。
 
(5)

 資産評価差額
 資産及び負債の評価替え等に伴い発生した評価差額については、「資産評価差額」として表示する。
 価格改定が行われる国有財産の価格改定に伴う評価差額、外貨建て資産及び負債の為替換算、有価証券及び出資金の時価評価による評価差額を計上する。
 なお、為替換算に伴う差額については、「資産評価差額」ではなく独立の科目で表示する。


.貸借対照表の標準的な様式
 貸借対照表の標準的な様式は次のとおりとする。
 なお、各特別会計で固有の表示科目については、適宜、科目を追加する。

貸借対照表

(単位:百万円)
貸借対照表

第3章 業務費用・財源計算書


.業務費用・財源計算書の作成目的等
 
(1)

 作成目的
 業務費用・財源計算書は、特別会計の業務実施に伴い発生した費用を発生主義により認識し、その総額と財源を明らかにすることを目的として作成する。
 
(2)

 業務費用・財源計算書の考え方
 業務費用・財源計算書は、特別会計の経理する範囲内において、当該年度に発生した業務費用の総額とその財源を計算書の形式で示すものである。
 業務費用と財源との間には、企業会計でいう費用と収益の対応関係のような関係は存在しないこと等から、この差額は、当該年度に発生した業務費用から当該年度に受け入れられた財源を差し引くことにより計算された、計算上の概念として位置付けられ、企業会計の損益計算書の当期純利益又は当期純損失とは性格が異なるものである。
 なお、業務費用・財源計算書の「本年度業務費用・財源差額」の下で、業務費用及び財源に整理されないものを計上することにより、貸借対照表の「資産・負債差額の部」の増減の内訳を示すという機能も有している。
 
(3)

 作成方法
 業務費用・財源計算書は、現金収支の記録である歳入歳出決算の計数から、施設整備費のうち資産計上される部分及び固定資産等売却収入のうち簿価相当分を控除するほか、発生主義により把握する経過勘定項目、減価償却費及び引当金等の非資金取引を修正すること等により業務費用及び財源を算定して作成する。


.業務費用・財源計算書上の計上項目
 
(1)

 業務費用
 特別会計の経理する範囲内において、特別会計の業務実施に伴い当該年度に発生した費用を「業務費用」として計上する。
 
(2)

 本年度受入財源
 特別会計が当該年度に受け入れた財源を「本年度受入財源」として計上する。また、その財源の性格に従い「対価見合収入等」、「目的税収入等」及び「他会計(勘定)からの受入」に区分して計上する。
  
1

 対価見合収入等
 特別会計の業務実施に伴い受け入れられた対価収入的な財源及び運用益等の自己収入を「対価見合収入等」として計上する。
 また、他会計からの受入について、特別会計における業務実施の財源として受け入れられたものや、法律の規定に基づき国庫が負担する負担金についても「対価見合収入等」として整理する。
 なお、手数料や運用益等のうち発生主義により計数を把握することが可能なものについては、発生主義に基づく経過勘定項目の修正を行う。
  
2

 目的税収入等
 特定の事業支出に充てるための特定の税収入及び財源を「目的税収入等」として計上する。
  
3

 他会計(勘定)からの受入
 対価見合収入等及び目的税収入等に該当しない、他会計(勘定)からの受入を「他会計(勘定)からの受入」として整理する。
 なお、他会計(勘定)からの受入については、その内容等を注記する。
 
(3)

 業務費用及び本年度受入財源とは整理しないもの
  
1

 資産項目、負債項目及び資産・負債差額の部の「基金」等の科目として整理されるもの
 他会計(勘定)への繰入れ及び他会計(勘定)からの受入等で資産、負債又は資産・負債差額の部の「基金」等として整理されるものについては、「業務費用」及び「本年度受入財源」として整理しない。
  
2

 資産及び負債の評価差額
 資産及び負債の評価替えに伴い発生した評価差額のうち、貸借対照表の資産・負債差額の部の「資産評価差額」に計上するものについては、「業務費用」及び「本年度受入財源」として整理しない。
  
3

 財産の無償所管換等
 国の会計間における財産の無償所管換等及びこれに準ずる資産の増減に伴い生じた差額については、特別会計の業務運営に伴い直接関連して生じたものではないことから、「業務費用」又は「本年度受入財源」としてではなく、「本年度業務費用・財源差額」の下で「財産の無償所管換等」として整理する。ただし、特別会計における業務として建設した施設等の他会計への引渡しについては、「業務費用」として整理する。
  
4

 資金(積立金)からの受入等
 一部の特別会計では、歳入歳出決算上の剰余等を財政法第44条に規定する資金として保有し、決算上の不足があった場合には当該資金から補足し、また、剰余があった場合には、当該資金に積み立てることが各特別会計法において定められている。
 特別会計に設置された資金からの受入は、年度の歳入不足を補うものであるが、前年度以前に既に特別会計に受け入れられているものであることから、これを「本年度受入財源」として整理しない。
 ただし、資金からの受入又は資金への繰入がなされていることを明らかにするため、「本年度業務費用・財源差額」の下において、「資金(積立金)からの受入」、「資金(積立金)への繰入」の科目を設けて表示する。
  
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 前年度剰余金受入
 特別会計においては、業務実施の財源に前年度剰余金も含まれているが、前年度剰余金は、資金(積立金)からの受入の場合と同様、前年度以前に既に特別会計に受け入れられているものであることから、「本年度受入財源」として整理しない。


.業務費用・財源計算書の標準的な様式
 業務費用・財源計算書の標準的な様式は次のとおりとする。
 なお、各特別会計で固有の表示科目については、適宜、科目を追加する。

業務費用・財源計算書

(単位:百万円)
業務費用・財源計算書

(注1

)人件費には、共済組合負担金を含む。

(注2

)補助金等には、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」第2条第1項で規定する補助金等を計上。その他については、委託費等、適宜の科目で計上。

(注3

)施設整備費には、資産計上されるものは含まない。

(注4

)業務対価相当分を計上。