ムスティスラフ・アファナシエフ ロシア財務省財政アカデミー所長
・ | 2009年における実質GDP伸び率の落ち込みはロシアの方が大きく、世界金融危機の影響はロシアの方が大きかった。しかし、回復はロシアの方が早く、2010、2011年は4%程度の成長が見込まれている。 |
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・ | 産業基盤の改善が必要なロシアでは固定投資は非常に重要である。固定投資(購買力平価ベース)は2007〜2010年に900億ドルから1200億ドルに増加したが未だ不十分である。 |
・ | ロシアの財務省と中央銀行はインフレ抑制を重視している。極端な高インフレのもとでは国内投資が促進されない。なお、世界的な傾向と同様にロシアでも食品価格の上昇率が高くなっている。 |
・ | ロシアでは貿易収支、経常収支は黒字基調にある。これは天然ガスや石油などロシアの資源輸出に負うところが大きい。 |
・ | リーマンショック後にはロシア国外への資本流出の動きが見られたが、現在、状況は安定してきている。 |
・ | 為替レートは1ドル=30ルーブルの水準にある。ロシアは為替介入により為替レートの安定を図っている。 |
・ | ロシアにおいて個人預金が力強く増加しているのは好ましい動きである。ロシアでは、個人向け融資市場の方が法人向けより活発でありかつ成長している。 |
・ | 政府は失業率を低下させるため様々な取組みを進めており、民間企業に潜在労働者の就労機会の創出を促がしている。他方、財政上の理由から今後3年間に公務員を20%削減することを目指している。 |
・ | 連邦財政収支は2000年代半ばまで黒字であったが現在は赤字である。 |
・ | ロシアには2つの政府系ファンドがある。一つは「予備基金(Reserve Fund)」であり、もう一つは「国民福祉基金(National Wealth Fund)」である。「予備基金」は連邦財政赤字の補填に使われ、「国民福祉基金」は年金基金の不足の補填に使われる。連邦財政赤字が拡大しているため、「予備基金」は急速に減少している。 |
○ | 世界金融危機による資本流出はロシアにとって重大な問題であったが、為替管理の厳格化などにより対応し、現在は落ち着いている。 |
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○ | 世界金融危機の際、ロシアの政策金利の引下げは緩やかなものであった。それはまず為替相場の水準を維持することが政府の基本方針だったからである。 |
○ | ロシアでは企業や銀行の意思決定は長期的なものではなく、戦略投資が不十分である。政府は民間投資を促進するため多くの官民による事業を実施している。また、投資拡大のため、金融関係の政府機関や金融市場を管理する中央銀行の複数の権限を統合して金融市場開発のための新しい機関の整備など、制度的な取り組みも行っている。 |
○ | ロシアの銀行システムの問題の一つは、預金は多いが融資が不十分なことである。銀行は資金を有しているが投資先を見つけられない状況にあり、構造改革が必要である。 |
○ | クドリン財務相は2014年に連邦財政を均衡させることを目指している。現在、ロシアの財政赤字はGDP比3%程度であり、これを3年後にゼロにすることが目標である。副首相を兼ねる財務相はインフレ抑制の責任も担っており、今後5年間にインフレ率を徐々に低下させ、最終的にインフレ率を2〜3%にすることを目指している。 |
○ | ロシアは連邦予算の48%を石油・天然ガスの収益に依存している。ロシアが資源を保有していることは大きな利点であり貿易上の優位性だが、この利点を国内産業構造の改善に活かす必要がある。 |
○ | ロシアの財政赤字の原因は年金制度が大きな赤字を抱えていることである。年金制度は改革が必要であり、過去にも改革は行われたが大きな成果は上がっていない。 |
○ | 人口の高齢化はロシアでも重大な問題である。平均寿命が延びるなか、年金の受給年齢を引き上げる必要があるが、大統領選挙を1年後に控え、政治的には議論が難しい問題である。 |
(以上)