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財務総合政策研究所

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「世界経済の新たな動きに関する研究会」
第5回会合
2011年4月27日(水) 14:30〜16:30
於: 財務省4階 西456 「第1会議室」

第5回会合テーマ:中東・アフリカ、中央アジア・コーカサス、中・東欧諸国経済における新たな動きと諸問題

議事要旨
◆発表 「アフリカ経済における新たな動きと諸問題」
発表者 大門 毅 早稲田大学教授
発表資料[1.5mb,PDF]
     
◆発表 「中東・アフリカ、中央アジア・コーカサス、中・東欧諸国経済における新たな動きと諸問題」
発表者 山本 正彦 三菱商事株式会社 業務部 欧阿中東CIS室長
発表資料[191kb,PDF]
     

議事要旨

(1) 発表 「アフリカ経済における新たな動きと諸問題」

大門 毅 早稲田大学教授

【マクロ経済動向】
アフリカは世界の人口の14%程度を占めているが、GDPシェアは1.5%程度と経済規模は非常に小さい。また、サブサハラには多重債務国が多く、対外援助(ODA)に依存している国も多い。
輸出比率が高いサブサハラも2008〜2009年の世界経済危機時には成長率が低下した。輸出比率が高い理由としては、資源輸出に依存する国が多いことに加え、構造調整による自由化政策等を通じてサブサハラが国際経済に取り込まれたことも指摘できよう。
サブサハラの多くの国で天然資源が外貨獲得源となっているが、資源は偏在しており、域内格差の原因ともなっている。
コスト高構造、インフラの未整備、人材不足、不十分な教育、政治の不安定などから製造業など資源部門以外の産業の開発は遅れている。
アフリカでは、南部アフリカ開発共同体(SADC)など、域内協定を結び、経済面での相互補完、政治的な協調を進める動きがある。しかし、関係国間で調整すべき問題も多い。
【社会開発動向】
サブサハラの国々では平均寿命や識字率などからなる人間開発指数が低く、所得水準の地域格差も大きい。国内における所得格差も大きく、白人と黒人で社会・経済が二重構造となっている南部アフリカは不平等の割合が特に高い。また、極貧層の人口割合が過半数を超える国はアフリカ諸国の半数を占めている。
アジアと比較してサブサハラの国々のインフラ整備は遅れており、輸送コストを押し上げる要因となっている。
【ガバナンス動向】
アフリカには国民国家としての内容を伴っていない「脆弱性」の高い国が少なくない。「脆弱性」が高いと潜在的な紛争等のリスクが高まるが、ODAやPKO、マクロ制度や教育、インフラなどの整備は国家の脆弱性の高まりを抑制する。
【援助動向】
サブサハラに対する支援について、日本からの支援が低調となる一方、米国のプレゼンスが高まっており、欧州諸国も支援を伸ばしている。また、近年は中国が資源開発などでのアフリカへの援助に力を入れている。ただ、OECD非加盟国である中国の援助については人権問題との関係や透明性などで問題視される場合がある。
ODAには及ばないものの、近年、直接投資などによる海外からアフリカへの資金流入が増加してきている。
【今後の注目点】
短期的には、政情不安が続く中央・西アフリカ地域、独立間もない南スーダンの動向を注視する必要がある。中長期的には国民国家を創造する過程として歴史的な文脈の中でこれら地域の動きを見ていくことが必要である。
アフリカの経済を牽引する南部アフリカにおいて国内の二重構造が社会問題化する懸念があり、注意が必要である。
中国のアフリカ進出の状況や資源外交の動向については、日本はどうするのかといった観点からも注意が必要である。

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(2) 発表 「中東・アフリカ、中央アジア・コーカサス、中・東欧諸国経済における新たな動きと諸問題」

山本 正彦 三菱商事株式会社 業務部 欧阿中東CIS室長

【中東諸国】
世界金融危機の影響は欧米諸国と比較すれば軽微であり、原油価格が高水準で推移する限り順調な成長トレンドに乗っていくと見る。
中東諸国は若年人口の増加が著しい。人口の増加に対応して電力、水や都市開発などの大規模インフラプロジェクトが実施されており、これも成長要因となっている。
湾岸諸国は石油依存からの脱却を目指しており、雇用創出効果の大きい石油以外の産業分野への投資要望が大きい。日本への期待も高く、日本企業にとっては、技術やソフト面の強みを生かせる面がある。
【アフリカ諸国】
世界金融危機の影響を受け、南ア共和国や一部資源国はマイナス成長となったが、サブサハラ全体ではプラス成長を維持。資源輸出先である先進国経済の成長と政情の安定を前提に2011年には5.5%の成長が見込まれている。
アフリカは人口の占める若年人口の比率が高く、現在10億人の人口が2050年には20億人に倍増するとの予測もある。
アフリカに対する投資の中心は鉱業部門。欧米メジャーに加え、近年はBRICsの企業の投資も増加。また、銀行や小売業など資源以外の部門への投資も増えている。
【最近の中東・北アフリカ情勢】
チュニジア、エジプトでは民衆のデモに端を発して政府の枠組みにも大きな変化。リビアではNATO/多国籍軍の支援が加わっての軍事衝突にも発展。
リビアのような主要なエネルギー供給元が大きく影響を受けた欧州諸国に比べると、日本への供給国は相対的に安定している状況と言える。
【中央アジア・コーカサス諸国】
旧ソ連時代の分業体制の影響が残っており、国による経済格差が大きい。
世界金融危機の影響は、カザフスタンのように大きな影響を受けた国もあれば、ウズベキスタンのように間接的な影響を受けたに過ぎない国もある。なお、経済の回復は総じて早い。
中央アジアは豊富な資源を活かした産業発展を目指しているものの、内陸に位置しているため物流に難あり。また、外貨送金制限もあるなど、外資系企業に進出しにくい面もある。旧ソ連時代の古いインフラ更新などはビジネスチャンスでもある。
【中東欧諸国】
中東欧の中でも2004年にいち早くEU加盟を果たしたポーランド、チェコ、ハンガリー等の成長ドライブは、自動車部品などの製造業。今後は、単なる組み立てだけでなく、R&D機能を併せ持つ製造業を指向する方向となっている。
製造業重視という点で中東欧は日本企業がプレゼンスを発揮できる地域と思う。

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(3) 質疑・応答

アジア同様、2000年以降、外国直接投資(FDI)はアフリカでも成長のドライビングフォースである。ただ、インフラや政治の安定性などを考慮するとアジア同様に安心して投資できない面がある。
将来の政治体制なども踏まえてリスク分析を行った結果、投資は難しいと判断せざるを得ない場合もある。また、過去の取り組みを通じて知見を有する国とそうでない国とでは違いがある。
資源・エネルギー分野では投資の規模が大きくなり、また、必ずしも欧米のビジネスルールが浸透していない国・地域が対象となるような場合には、政府のサポートも重要である。
中央アジアの物流については改善の動きも見られ、エネルギー資源に対する世界的な需要を考えれば、今後、パイプラインや道路網等の整備は更に進んでいくと見られる。これらの整備が進めば、外貨獲得が増えてインフラ投資も拡大し、経済の順調な発展形態が整うと考える。
アフリカの対外債務に関しては、被援助国におけるモラルハザードなどの問題があり慎重に対応すべきとの意見がある一方、貧困率の高い国を放置できないとの主張もある。また、構造調整については、意図した効果が上がっていないのではないかとの見方もあり、こうした見方があることには留意する必要がある。
最近、中国のアフリカに対する援助が増えており、アフリカの中国に対するイメージも好転している。また、援助額がまだ小さい韓国については、電化製品や車などの製品に対する評判が良い。

(以上)

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