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第50回ADB年次総会 議長国演説(平成29年5月6日 於日本・横浜)

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第50回アジア開発銀行(ADB)年次総会における 麻生副総理議長国演説
2017年5月6日(於:日本 横浜)

1.導入

 皇太子殿下、総裁、総務各位、並びにご参列の皆様。

 今般のアジア開発銀行第50回年次総会に皇太子殿下のご臨席を賜り、非常に光栄に思います。総務並びに他の参加者を代表して深く感謝申し上げます。

 そして、横浜総会への皆様のご参加を心から歓迎します。ここ横浜は、約160年前の開港以来、世界との窓口として発展してきた、日本を代表する国際的な都市です。この記念すべき年次総会を開催するのに相応しい場所です。

 また、多くの横浜市民の皆様の協力を得て、本総会が開催されるものであります。横浜の方々の温かいおもてなしに心より感謝します。

 また、ADBの運営に強力なリーダーシップを発揮されてきた中尾総裁が、昨年8月に全加盟国からの信任を得て再選されたことを嬉しく思います。

2.アジア・太平洋地域経済のこれまでの発展

 最初に、アジア開発銀行設立以来の50年間を振り返りますと、50年前には非常に貧しかったアジア・太平洋地域は、その後目覚ましい経済発展を遂げ、その結果、貧困率は大きく減少しました。今やアジアは世界経済の成長を牽引する地域となっています。

 この間、この地域は、食糧不足、弱いインフラ、感染症や自然災害、通貨危機等、様々な困難にも直面しましたが、各国の努力でこれらの克服に取り組み、今の活力あるアジアを築き上げてきました。その際、ADBは、この地域のいわばファミリー・ドクターとして、各国に寄り沿った支援を提供し、多大なる貢献を果たしてきました。

3.アジア・太平洋地域が直面する課題と対応

 このように、経済成長を通じて貧困削減を実現してきたアジア・太平洋地域は、世界の開発における誇るべき成功事例です。

 しかしながら、決して慢心することはできません。

 アジア・太平洋地域は未だ3億人を上回る貧困人口を抱えています。自然災害やパンデミックは引き続き脅威であり、更に、経済発展やグローバル化に伴い、格差拡大や高齢化、気候変動、国際的資本フローの過度な変動等の課題も発生しています。

 こうした課題に対応するためには、「包摂的かつ持続可能な経済成長の実現」、そして、「様々な危機に対する強靭性の強化」という2つの基本理念の下で、インフラ整備や保健システム強化、防災、地域金融協力等に取り組むことが重要と考えます。

(インフラ整備)
 第一に、インフラ整備については、経済発展に伴い、質・量ともにニーズが増大しています。

 ADBの最近の試算では、アジア途上国におけるインフラ・ニーズは、今後15年間で合計26兆ドルと膨大な量が見込まれています。こうした中、ADBに対しては、引き続きインフラ整備を推進するとともに、PPP等を通じ民間資金の一層の動員に取り組むことを期待します。

 また、ライフサイクル・コストや環境社会配慮等の面でインフラの質を高めることも重要です。こうした観点から、ADBが、より質を重視した調達制度の導入を決定したことを歓迎しており、こうした取り組みの継続を求めます。

 日本は、これまでADBとも連携しつつ、アジアにおける質の高いインフラ整備の推進に取り組んできました。こうした連携を一段と強化するため、今般、ADBが新たに設立した、高度技術導入のための信託基金に対し、2年間で40百万ドル拠出することを表明します。

 また、インフラの運営に当たっては、開放的で、透明で、非排他的なものとして連結性を向上させることが重要であることを指摘したいと思います。

(保健システム強化)
 第二に、保健について申し上げます。

 保健システムの強化を通じ健康な人材を確保することは、人道・社会的見地から重要であるだけでなく、包摂的かつ持続可能な経済成長を確保する上でも不可欠です。

 この問題は、アジアにとって、とりわけ重要です。なぜなら、アジアでは、鳥インフルエンザ等のパンデミックが頻発しており、また、急速に進行する高齢化に伴う高齢者介護へのニーズの高まり等の新たな健康課題に直面することが見込まれるからです。

 ADBにおいては、総合的な開発機関として、こうした社会課題についても知見を一層強化し、貢献することを期待します。

 日本は、世界に先んじてユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成するとともに、超高齢社会を迎える中で、保健分野に関する様々な知見・経験を培ってきました。

 日本としては、こうした強みを活用し、アジアにおける保健分野の課題への対応を支援する考えです。本総会では、ADBとJICAが、これらの分野での協力を促進するための連携枠組みに合意したところです。

(防災)
 第三に、防災については、アジアは台風、洪水、地震等の多発地域であり、更に気候変動の進行に伴い、こうしたリスクが一層深刻になることが懸念されています。

 ADBには、気候変動対策に一層注力するとともに、災害発生後の復興や災害に強いまちづくり等への支援を強化することを期待します。

 日本は、豊富な防災の知見・経験を活用しつつ、災害に強い質の高いインフラ整備等を積極的に支援しています。これに加えまして、自然災害発生時の迅速な資金動員を図るため、「東南アジア災害リスク保険ファシリティ」の設立に向けて取り組むなど、一層の貢献を果たしていく考えです。

(地域金融協力)
 第四に、地域金融協力について申し上げます。

 現在、アジア経済が国際的な資本フローに起因するリスクに直面する中、ADBに対しては、政策対話や融資を通じた構造改革支援や、他の国際金融機関との協調の下での経済危機対応を通じ、加盟国経済の強靭性強化に貢献することを期待します。

 日本としては、本年、ASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁会議の共同議長として、域内金融セーフティネットの枠組みであるCMIMの一層の機能強化や、ABMI等による現地通貨使用拡大を促進しています。

 加えて、日本は、昨日開催された日ASEAN財務大臣・中央銀行総裁会議において、二国間通貨スワップ取極(BSA)の新提案を発表しました。具体的には、既存のBSAを円でも引出可能とするとともに、短期流動性危機に対応する、最大4兆円規模の新たなBSAを創設するものです。

 日本としては、こうした取組みを通じて、アジア域内経済の強靭性を更に強化してまいります。

4.ADBの今後の業務の方向性

 さて、ここで、ADBの今後の業務の方向性について申し上げたいと思います。

 ADBの支援の成果もあり、アジアは著しい経済発展を遂げ、上位中所得国(UMICs)の割合も増加しました。他方、アジアは、高齢化や気候変動、資本フロー変動など、より一層、多様な課題に直面しています。

 こうした中、ADBの今後の業務については、引き続きインフラ・プロジェクト支援を中心に行いつつも、保健等の分野における、知識の共有や改革支援のための融資にも一層力を入れることを期待します。これらの業務を的確に行うため、ADBが組織や人員を強化することを支持します。

 また、支援に際し、UMICsとより貧しい国との間のバランスを如何にとるかについては、原則としては、ADBの貴重な資源を有効に活用する観点から、より貧しい国を重点的に支援すべきと考えます。

 一方で、UMICsが抱える課題解決は、地域全体の更なる発展をもたらすものとして、現在のADBに期待される役割となっています。

 こうした点を踏まえ、UMICsとは、質・量ともに適度な関与を行うことが重要と考えます。具体的には、知識面での協力や環境などの外部性・スピルオーバーのある分野への支援を中心に、ADBがUMICsと関与を継続することを期待します。

5.結語

 現在、ADBは、新たな長期戦略である「戦略2030」を策定中です。本総会で行われる様々な議論を踏まえた力強い戦略を策定することで、ADBが今後とも地域にとって極めて重要な機関として、アジアの更なる発展に貢献することを期待します。

 終わりに当たり、ADBの過去半世紀における素晴らしい業績を賞賛するとともに、今後とも、中尾総裁の強力なリーダーシップの下、ADBが域内の開発において中心的役割を果たしていくことを期待いたします。日本は、引き続き、ADBと密接に協力しつつ、アジア・太平洋地域の発展に取り組んでいくことを誓います。

 ご清聴、ありがとうございました。