平成23年度税制改正大綱(1/5)
はじめに
税制調査会は、昨年の政権交代を機に、政府において権限と責任を有する政治家が我が国の税制を決定する透明な仕組みとして新たに設置されました。新体制において最初にとりまとめられた「平成22年度税制改正大綱」では、納税者の立場に立って「公平・透明・納得」の三原則を常に基本とすることをはじめとして、税制改革に向けての基本的な考え方をお示ししました。これを踏まえ、以下に示す様々な検討の場において、主要課題について更に検討を深めてきました。
本年1月末には、市民公益税制プロジェクトチーム(PT)及び控除廃止の影響に係るPTを設置しました。市民公益税制PTは、寄附税制及び公益活動を担う法人に係る税制に関する「中間報告書」を4月にとりまとめ、控除廃止の影響に係るPTにおいては、所得税・個人住民税の控除見直しに伴い影響が生じる諸制度に関する適切な措置について、10月に報告書をとりまとめました。
また、同じく本年1月末に、学識経験者による専門家委員会を設置し、「80年代以降の内外の税制改革の総括」をテーマに、税制抜本改革に関する総論的な議論を行い、本年6月に「議論の中間的な整理」が税制調査会に報告されました。また、9月に「納税環境整備に関する論点整理」、11月に「国際課税に関する論点整理」がとりまとめられました。
本年10月には、平成23年度税制改正に向けて、税制調査会本体会合を再開するとともに、納税環境整備PT、雇用促進税制等PT、租税特別措置・税負担軽減措置等の見直し及び課税ベースの拡大等の検討に関するPTを設置し、市民公益税制PTを含めた4つのPTにおいて、それぞれのテーマについて集中的に検討を行うこととしました。また、専門家委員会においても、税制抜本改革に向けた税目毎の論点の深掘りが行われ、12月に「『税目ごとの論点の深掘り』に関する議論の中間報告」として税制調査会に報告がなされました。
他方、政府・与党においては、10月に、社会保障改革とその財源確保について一体的に検討する場として、「政府・与党社会保障改革検討本部」が設置され、12月には今後の改革の基本方針を定める決定がなされています。
以下に示す「平成23年度税制改正大綱」は、税制調査会を中心とするこのような議論の積み重ねの集大成であり、支え合う社会の実現に必要な財源を確保し、経済・社会の構造変化に適応した税制を構築するための改革を進めるものです。今後、本大綱に基づいて、平成23年度税制改正を速やかに実施に移していく必要があります。
第1章 基本的な考え方
1.税制改革の視点
我が国は、人口減少と高齢化の同時進行、グローバル化の急速な進展、国内での格差拡大、資源制約の問題、気候変動をはじめとする環境問題など、内外の経済・社会構造の激しい変化に直面し、様々な問題を抱えています。また、現下の経済動向を見ると、景気は足踏み状態にあり、失業率が高水準にあるなど厳しい状況にあります。このような中で、我が国財政は、少子高齢化の進行による社会保障関係費の増大、度重なる減税と景気低迷に伴う税収減などが相まって危機的状況にあり、税収力の回復が喫緊の課題となっています。
《抜本改革に向けた基本的方向性》
こうした我が国の経済・社会の構造変化に対応し、成長と雇用の実現、社会保障改革とその財源確保といった我が国の喫緊の課題に応えるために、税制の抜本的な改革を果断に進める必要があります。改革に当たっては、平成22年度税制改正大綱でお示しした以下の5つの視点や改革の方向性を踏まえ、納税者の理解・納得を得ながら、所得課税、消費課税、資産課税全般について改革を進めていきます。この改革を通じて、セーフティネットの確立、経済活性化、財政健全化の好循環を促していきます。
- 納税者の立場に立ち「公平・透明・納得」の税制を築くこと
- 「支え合い」のために必要な費用を分かち合うこと
- 税制改革と社会保障制度改革を一体的にとらえること
- グローバル化に対応できる税制を考えること
- 地域主権改革を推進するための税制を構築すること
2.平成23年度税制改正の基本的な考え方
このような税制改革の視点に立って、平成23年度税制改正においては特に、デフレ脱却と雇用のための経済活性化、格差拡大とその固定化の是正、納税者・生活者の視点からの改革、地方税の充実と住民自治の確立に向けた地方税制度改革、の4つを柱として、税制抜本改革に向けた基本的方向性や政府の財政運営方針との整合性を確保しつつ、所得課税、資産課税、消費課税全般にわたる改正を行うこととします。
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(1)デフレ脱却と雇用のための経済活性化
デフレから脱却し、日本経済を本格的な成長軌道に乗せていくため、国内企業の国際競争力強化と外資系企業の立地を促進し、雇用と国内投資を拡大する必要があります。このため、新成長戦略の一環として、平成23年度税制改正において、課税ベースの拡大等と併せて、法人実効税率を5%引き下げます。中小法人に対する軽減税率についても3%引き下げます。デフレ脱却と雇用拡大を最優先して、「ペイアズユーゴー原則」1との関係では今回の税制改正による財源の確保は十分でありませんが、思い切った引下げ措置を講ずることにします。また、雇用促進、環境関連投資、総合特区制度・アジア拠点化等を推進するための政策税制措置等を講じます。さらに、贈与税を見直し、高齢者が保有する資産の若年世代への早期移転を促進します。
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(2)格差拡大とその固定化の是正
国民が安心して暮らせる「支え合いと活気がある社会」を実現するためには、格差の拡大とその固定化を食い止めることが重要な課題であり、そのために、社会保障制度と併せて、税制における再分配機能の回復を図る必要があります。平成23年度税制改正では、所得税における諸控除の見直しや相続税における控除や税率構造の見直しにより、税制の累進構造の回復を図ります。
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(3)納税者・生活者の視点からの改革
平成23年度税制改正ではまた、これまでの政権では取組みが不十分だった納税者・生活者の視点からの問題意識や、「新しい公共」の観点からの改革に取組み、「納税者権利憲章」の制定等の納税環境整備の推進や、寄附金税制の拡充等を行います。また、地球温暖化問題という人類共通の課題に取り組み、住みやすい環境を将来世代に残していくため、地球温暖化対策のための税を導入します。
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(4)地方税の充実と住民自治の確立に向けた地方税制度改革
地域主権改革を推進する中で、地方がその役割を十分に果たすため、地方税を充実し、税源の偏在性が少なく、税収が安定的な地方税体系を構築していきます。平成23年度税制改正では、個人住民税の諸控除や税負担軽減措置等の見直しを行います。また、地方税制度を「自主的な判断」と「執行の責任」を拡大する方向で抜本的に改革していくこととし、成案を得たものから速やかに実施します。
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このように、平成23年度税制改正においては、所得・消費・資産等にわたる抜本改革の実現に向けて、経済活性化と財政健全化を一体として推進するという枠組みの下で、特に、現下の厳しい経済状況や雇用情勢に対応して、経済活性化や税の再分配機能の回復、地球温暖化対策などの課題に優先的に取り組むとともに、納税者・生活者の視点などに立った改革に取り組み、全体として、税制抜本改革の一環をなす、緊要性の高い改革を実施します。
3.税制抜本改革に向けて〜社会保障と税制の一体改革〜
社会保障は、財政の最大支出項目であり、更なる高齢化により今後も歳出の増大が見込まれるとともに、極めて重要な成長分野です。同時に、信頼できる社会保障制度が確立されることで、国民は安心して消費を拡大することが可能となります。
このような観点から、社会保障改革とその財源確保について、消費税を含む税制全体の議論を一体的に行うことが不可欠であり、そのため、本年10月28日に、「政府・与党社会保障改革検討本部」が設置されました。
12月10日に本部決定され、同14日に閣議決定された「社会保障改革の推進について」では、今後の社会保障改革について、民主党「税と社会保障の抜本改革調査会中間整理」や「社会保障改革に関する有識者検討会報告〜安心と活力への社会保障ビジョン〜」に示された内容を尊重し、社会保障の安定・強化のための具体的な制度改革案とその必要財源の安定的確保と財政健全化を同時に達成するための税制改革について一体的に検討を進め、その実現に向けた工程表とあわせ、平成23年半ばまでに成案を得、国民的な合意を得た上でその実現を図ることが決定されました。
今後、税制調査会では、この決定を踏まえた政府・与党内の検討と緊密に連携しながら、早急に税制抜本改革の具体的内容について検討を行っていきます。
第2章 各主要課題の平成23年度での取組み
平成22年度税制改正大綱の第3章において、各主要課題の改革の方向性を示したところであり、改革の第一歩として、平成22年度税制改正では、「控除から手当へ」等の観点からの扶養控除の見直し、国民の健康の観点を明確にしたたばこ税の税率引上げ、「新しい公共」を支える市民公益税制の拡充、納税者の視点に立った租税特別措置等の見直し等の措置を一体として講じました。平成23年度税制改正においては、平成22年度税制改正大綱の改革の方向性を承継し、以下の改革に取り組みます。
1.納税環境整備
納税者の立場に立って納税者権利憲章を策定するとともに、税務調査手続の明確化、更正の請求期間の延長、処分の理由附記の実施等の措置を講じることとし、国税通則法について昭和37年の制定以来、最大の見直しを行います。
国税不服審判所の改革については、納税者の簡易・迅速な権利救済を図り、審理の中立性・公正性を高める観点から、行政不服審査制度全体の見直しの方向を勘案しつつ、不服申立ての手続、審判所の組織や人事のあり方について見直しを進めていきます。
社会保障・税に関わる番号制度については、早期の制度導入に向け、「社会保障・税に関わる番号制度に関する実務検討会」を中心に速やかに検討を進めるとともに、税務面においても積極的な検討を行います。
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(1)納税者権利憲章の策定
納税者の立場に立って納税者権利憲章(以下「憲章」といいます。)を策定します。
憲章については、複雑な税務手続を納税者の目から見て分かり易い形でお知らせするため、
納税者が受けられるサービス、
納税者が求めることのできる内容、
納税者に求められる内容、
納税者に気をつけていただきたいことを一連の税務手続に沿って、一覧性のある形で、平易な言葉で簡潔・明瞭に示すとの考え方に沿って策定します。 これを踏まえ、税務当局も納税者からより一層信頼される税務行政に向け、取り組むものとします。
また、国税通則法について、第一条の目的規定を改正し、税務行政において納税者の権利利益の保護を図る趣旨を明確にします。さらに、憲章の策定を法律上義務付けることとし、その策定根拠、憲章に記載すべき事項を法定するとともに、各種税務手続の明確化等に関する規定を同法に集約します。同法の法律名が改正後の法律の内容をよく表すものとなるよう、題名を変更します。
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(2)租税教育の充実
国民が租税の役割や申告納税制度の意義、納税者の権利・義務を正しく理解し、社会の構成員として、社会のあり方を主体的に考えることは、納税に対する納得感の醸成と民主国家の維持・発展にとって重要です。
こうした健全な納税者意識を養うことを目的として、国税庁では、次代を担う児童・生徒に対し、租税教育の充実に向けた各種の支援を実施しています。また、税理士・税理士会においても、納税者又は国民への社会貢献事業の一環として、租税教育を通じて申告納税制度の維持発展に寄与するため、小中学校への講師派遣等を積極的に実施しています。
本来、租税教育は、社会全体で取り組むべきものであり、健全な納税者意識のより一層の向上に向け、今後とも官民が協力して租税教育の更なる充実を目指す必要があります。特に、小中学校段階だけでなく、社会人となる手前の高等学校や大学等の段階における租税教育の充実や、租税教育を担う教員等に対する意識啓発について検討し、関係省庁及び民間団体が連携して取り組むこととします。
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(3)税務調査手続
調査手続の透明性及び納税者の予見可能性を高め、調査に当たって納税者の協力を促すことで、より円滑かつ効果的な調査の実施と、申告納税制度の一層の充実・発展に資する観点から、税務調査に先立ち、課税庁が原則として事前通知を行うことを法律上明確化します。ただし、悪質な納税者の課税逃れを助長することのないよう、課税の公平確保の観点を踏まえ、一定の場合には事前通知を行わないこととします。
また、調査終了時の手続について、課税庁の納税者に対する説明責任を強化する観点から、法律上明確化します。
なお、現行の調査実務上行われている物件の預かり・返還等に関する規定を法律上明確化します。
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(4)更正の請求
納税者が申告税額の減額を求めることができる「更正の請求」については、法定外の手続により非公式に課税庁に対して税額の減額変更を求める「嘆願」という実務慣行を解消するとともに、納税者の救済と課税の適正化とのバランス、制度の簡素化を図る観点から、更正の請求を行うことができる期間(現行1年)を5年に延長し、併せて、課税庁が増額更正できる期間(現行3年のもの)を5年に延長します。
これにより、基本的に、納税者による修正申告・更正の請求、課税庁による増額更正・減額更正の期間を全て一致させることとします。
また、当初申告時に選択した場合に限り適用が可能な「当初申告要件が設けられている措置」については、事後的な適用を認めても問題がないものも含まれていることを踏まえ、更正の請求を認める範囲を拡大します。
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(5)理由附記
処分の適正化と納税者の予見可能性の確保の観点から、全ての処分について、理由附記を実施します。ただし、個人の白色申告者に対する更正等に係る理由附記については、記帳・帳簿等保存義務の拡大と併せて実施することとします。
なお、個人の白色申告者に記帳が義務化されることに伴い、以下の点について今後検討を行います。
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白色申告者の記帳義務化に伴い、必要経費を概算で控除する租税特別措置についてどのように考えるか。 -
白色申告者に記帳が義務化されることを踏まえ、今後、正しい記帳を行わない者の必要経費についてどのように考えるか。 -
白色申告者の記帳水準が向上した場合には、現在、白色申告者に認められている専従者控除について、その専従の実態等を勘案し、どのような見直しが可能か検討してはどうか。
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(6)国税不服審判所の改革
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(争訟手続)
国税の不服申立手続の見直しについては、基本的には、現在、内閣府の行政救済制度検討チームで行われている、
「行政不服審査法の見直し」(審査請求への原則一元化、独立して職権行使を行う「審理官」の創設、証拠書類の閲覧・謄写のあり方、不服申立期間のあり方等)や、
「不服申立前置の見直し」の方向性を踏まえて検討を行う必要があります。 内閣府・行政救済制度検討チームの議論が来年以降本格化することを踏まえ、不服申立期間、証拠書類の閲覧・謄写の範囲、対審制、不服申立前置の仕組みのあり方については、同検討チームの結論を踏まえて改めて検討した上、所要の見直しを図ることとします。
なお、
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不服申立期間については現行の期間制限(2月)を延長する方向で、証拠書類の閲覧・謄写の範囲については審査請求人と処分庁とのバランスを踏まえつつ拡大する方向で、それぞれ検討を行うこととします。 -
不服申立前置のあり方については、納税者の利便性向上を図ることが求められていることから、争訟手続における納税者の選択の自由度を増やすことを基本に、以下の点にも留意しつつ、原則として2段階となっている現行の仕組みを抜本的に見直す方向で検討を行うこととします。 -
イ 現在、審判所における審査請求を含め、国税の不服申立手続が一定の争点整理機能を発揮しており、裁判所の負担軽減に役立っていること
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ロ 税制調査会専門家委員会「納税環境整備に関する論点整理」(平成22年9月14日)の指摘にもあるように、引き続き納税者の簡易・迅速な救済を図る必要があること
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ハ 行政に対し自律的に迅速かつ統一的に運用の見直しを図る機会を付与する必要があること
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ニ 主要諸外国においても、訴訟に先立ち、租税行政庁への不服申立てが前置されていること
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(争訟機関)
国税不服審判所における審理の中立性・公正性を向上させる観点から、今後、国税審判官への外部登用を以下のとおり拡大することとし、その方針及び工程表を公表します。
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民間からの公募により、年15名程度採用します。 -
3年後の平成25年までに50名程度を民間から任用することにより、事件を担当する国税審判官の半数程度を外部登用者とします。
さらに、国税不服審判所については、内閣府・行政救済制度検討チームの検討状況を勘案しつつ、簡易・迅速な行政救済を図るとの観点も踏まえ、審理の中立性・公正性に配意して審判所の所管を含めた組織のあり方や人事のあり方の見直しについて検討を行うこととします。
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(7)社会保障・税に関わる番号制度
社会保障・税に関わる番号制度(以下「番号制度」といいます。)は、主として給付のための制度であり、
真に手を差し伸べるべき人に対する社会保障の充実とその効率化を図りつつ、
国民の負担の公正性を担保し、制度に対する国民の信頼を確保するとともに、
国民の利便性の更なる向上を図るために不可欠なインフラとして可能な限り早期に導入することが望ましいものと考えます。 本制度については、「政府・与党社会保障改革検討本部」の下に設けられた「社会保障・税に関わる番号制度に関する実務検討会」の「中間整理」(平成22年12月3日)において、
幅広い行政分野での利用を視野に入れつつ、まずは税と社会保障分野から利用を開始する、
住民基本台帳ネットワークを活用した新たな番号を使用する、
データベースの管理方式については分散管理方式を前提に検討し、番号の管理方式については一元管理又は分散管理とすべき具体的分野について今後検討を進める、
付番機関については、社会保障制度や税制の改革の方向性に照らして「歳入庁の創設」の検討を進めるとともに、「まずはどの既存省庁の下に設置すべきか」について、他の論点の方向性に鑑みつつ、検討を進める、
個人情報保護の徹底については、最低限、「自己情報へのアクセス記録の確認」、「第三者機関の設置」、「目的外利用防止に係る具体的法原則明示」、「関係法令の罰則強化」を実施する方向で検討する、という目指すべき方向性を明らかにしたところです。また、スケジュールについては、「社会保障改革の推進について」(平成22年12月14日閣議決定)に基づき、来年1月を目途に基本方針をとりまとめ、さらに国民的な議論を経て、来秋以降、可能な限り早期に関連法案を国会に提出できるよう取り組むこととしています。今後、このような方針に即し、早期の制度導入に向け、実務検討会を中心に速やかに検討を進めます。 税務面において番号制度を活用するには、
各種の取引に際して、納税者が取引の相手方に番号を「告知」すること、
取引の相手方が税務当局に提出する法定調書及び納税者が税務当局に提出する納税申告書に番号を「記載」すること、が必要となります。これにより税務当局は、法定調書と納税申告書の情報を、番号をキーとして名寄せ・突合することが可能となります。 その前提として、番号は、少なくとも、
国民一人一人に一つの番号が付与されていること、
納税者が取引の相手方に告知できるよう、民−民−官の関係で利用でき、また、目で見て確認できること、
常に最新の住所情報と関連付けられていること、という条件を満たす必要があります。 税務面において、番号制度がこのような役割を果たしていけるよう、実務検討会での議論と並行して、
法定調書の拡充、
税務当局への提出資料の電子データでの提出の義務付け、
税務行政における電子化の推進と情報連携の効率化、等の課題について積極的に検討を進めます。また、制度全体についての議論の進捗状況を踏まえ、
法定調書への正確な番号記載の確保策、
税務情報についてのプライバシー保護の徹底策、といった課題についても検討を進めます。 なお、検討に当たっては、番号を利用しても事業所得や海外資産・取引情報の把握には限界があることについて、国民の理解を得ていく必要があります。
2.個人所得課税
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(1)所得税
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基本的な考え方 所得税については、累次の改正により累進緩和や各種控除の拡充が行われてきました。一方、給与収入階層の分布を見ると、平成9年まで平均給与は上昇し、高所得者の割合も増加してきましたが、その後、これらは低下し、平成20年は平成2年と同程度の水準に戻っています。このため、同じ税率構造の下では、インフレ等により名目賃金が上昇すれば全体としての累進性が高まるはずのところ、逆に累進性が低下する現象が生じ、所得再分配機能と財源調達機能が大きく低下しています。格差社会に対応するためにも、累進構造を基本とする所得税については、雇用形態や就業構造の変化も踏まえながら、所得再分配機能等を回復するための改革を進める必要があります。
そのため、税率構造の見直しはもとより、高所得者に対して結果的に有利になっている所得控除の見直しなどによる課税ベースの拡大、さらには、所得控除から税額控除・給付付き税額控除・手当へという改革を進めます。
また、所得税については、本来、全ての所得を合算して課税する「総合課税」が理想ですが、金融証券税制については、金融資産の流動化や個人金融資産の有効活用による経済活性化の必要性にかんがみ、可能なところから、金融所得課税の一体化に向けた取組みを進めます。
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改革の取組み -
イ 給与所得控除の見直し
給与所得控除については、「勤務費用の概算控除」と「他の所得との負担調整のための特別控除」(以下「他の所得との負担調整」といいます。)の二つの性格を有しているものとされています。
しかし、就業者に占める給与所得者の割合が約9割となっている現状で、「他の所得との負担調整」を認める必要性は薄れてきているのではないかと考えられます。
また、現在の給与所得控除については、マクロ的に見ると、給与収入総額の3割程度が控除されている一方、給与所得者の必要経費ではないかと指摘される支出は給与収入の約6%であるとの試算もあり、主要国との比較においても全体的に高い水準となっています。
このため、給与所得控除の二つの性格について、各々2分の1であることを明確化した上で、格差是正、所得再分配機能の回復の観点から、過大となっている控除を適正化するための見直しを行います。
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(イ) 給与所得控除の上限設定
現在の給与所得控除は、給与収入に応じて逓増的に控除が増加していく仕組みとなっており、上限はありません。しかし、給与所得者の必要経費が収入の増加に応じて必ずしも増加するとは考えられないこと、また、主要国においても定額又は上限があること等から、給与収入が1,500万円を超える場合の給与所得控除額については、245万円の上限を設けることとします。
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(ロ) 役員給与等に係る給与所得控除の見直し
法人役員については、一般従業員に比べ、勤務態様が必ずしも従属的でないと考えられることや、給与の自己決定度合いが高いこと等を踏まえると、特に、高額な役員給与については、給与所得控除の性格のうち「他の所得との負担調整」部分が過大となっていると考えられます。
このため、役員給与に係る給与所得控除を見直し、4,000万円超という特別に高額な役員給与については、「勤務費用の概算控除」部分である、給与所得控除額の2分の1の額を上限とします。なお、2,000万円を超え4,000万円までの間では、「他の所得との負担調整」部分の一部を認め、控除額の上限を4分の3とする部分も含め、調整的に徐々に控除額を縮減します。
この給与所得控除の縮減措置は、役員給与のほか、いわゆる指定職等の国家公務員等やそれと同様の職位の地方公務員等の給与にも適用されるようにします。
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(ハ) 特定支出控除の見直し
今般、給与所得控除に上限を設けることに併せ、特定支出控除を使いやすくする観点から、特定支出の範囲を拡大するとともに、特定支出控除の適用判定の基準を見直すこととします。
具体的には、就労の多様化等を踏まえ、現在、特定支出の範囲から除外されている弁護士、公認会計士、税理士など、法令の規定に基づいてその資格を有する者に限って特定の業務を営むことができる資格の取得費を特定支出の範囲に追加します。
また、図書費、衣服費、交際費及び職業上の団体の経費(以下「勤務必要経費」といいます。)も、特定支出の範囲に追加します。なお、この勤務必要経費については、高額なものを購入できる高額所得者を過度に優遇するといった不公平が生じないよう、上限を設けることとします。
さらに、特定支出控除の適用判定の基準となる控除額については、「勤務費用の概算控除」部分、すなわち給与所得控除額の2分の1の額とし、給与所得者の実額控除の機会を拡大します。
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ロ 退職所得課税の見直し
退職所得については、長期間にわたる勤務の対価(給与)が一時期にまとめて後払いされるものであることや、退職後の生活保障的な所得であること等を考慮し、退職所得控除額を控除した残額の2分の1を所得金額とする累進緩和措置(以下「2分の1課税」といいます。)が採られています。
一般的に、短期間勤務の結果支給される退職金については、退職所得控除により課税が生じることは少ないと考えられますが、2分の1課税を前提に、短期間のみ在職することが当初から予定されている法人役員等が、給与の受取りを繰り延べて高額な退職金を受け取ることにより、税負担を回避するといった事例が指摘されています。
このように、一般従業員の退職金とは相当に異なる事情にあることを踏まえ、勤続年数5年以内の法人役員等の退職所得について、2分の1課税を廃止します。
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ハ 成年扶養控除の見直し
現行制度では、23歳から69歳までの成年を控除対象とする扶養控除(以下「成年扶養控除」といいます。)は、被扶養者が一定の年齢であれば一律に適用されています。しかしながら、本来、成年者は基本的に独立して生計を立てるべき存在であること等を踏まえれば、成年者を担税力の面で配慮が必要な存在として一律に扶養控除の対象に位置付ける必要性は乏しいと考えられます。このため、成年扶養控除の対象を見直すこととします。
まず、障害者、要介護認定者その他心身の状態等により就労が困難な扶養親族、65歳以上の高齢者、学生については、独立して生計を立てることが困難な状況にある人が少なくないと考えられることから、引き続き成年扶養控除の対象とします。
また、合計所得金額が400万円(給与収入568万円)以下の納税者(扶養者)については、扶養による担税力の減殺に配慮し、被扶養者の事情にかかわらず、引き続き成年扶養控除が適用できることとします。なお、合計所得金額400万円を境目として税負担が急増しないよう、調整措置を講じます。
以上のように、担税力の減殺に配慮すべき世帯については負担増にならないよう措置した上で、上記以外の場合については、控除を廃止することとします。
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ニ 配偶者控除
配偶者控除については、夫婦が生活の基本的単位である点を重視する考え方等から、その見直しに慎重な意見もありますが、雇用機会均等の理念から、制度が働き方の選択に対してできる限り中立的で公正なものとなるように見直すべきではないか、また、配偶者の家事労働には納税者本人にとっての経済的価値があり、配偶者の存在を担税力の減殺要因と捉えることは必ずしも適当ではないのではないか、という見直しに積極的な意見があります。
このような配偶者控除を巡る様々な議論、課税単位の議論、社会経済状況の変化等を踏まえながら、配偶者控除については、平成24年度税制改正以降、抜本的に見直す方向で検討します。
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ホ 金融証券税制
金融証券税制については、個人金融資産を有効に活用し、我が国経済を活性化させるためにも、金融所得間の課税方式の均衡化と損益通算の範囲拡大を柱とする金融所得課税の一体化に向けた取組みを進める必要があります。
現行の上場株式等の配当・譲渡所得等に係る10%軽減税率は、公平性や金融商品間の中立性の観点から、20%本則税率とすべきですが、景気回復に万全を期すため、2年延長し、平成26年1月から20%本則税率とします。これに伴い、非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(いわゆる「日本版ISA」)の導入時期については、平成26年1月からとします。これらの措置については、経済金融情勢が急変しない限り、確実に実施することとします。
現在、店頭金融デリバティブ取引に係る所得については、総合課税としていますが、金融商品間の課税の中立性を高める観点から、市場金融デリバティブ取引に係る所得と同様に、20%申告分離課税とした上で、両者の通算及び損失額の3年間の繰越控除を可能とします。
現行の会社法における少数株主権の制度との整合性及び所得再分配機能の回復の観点から、事業参加的側面が強いことを勘案して総合課税の対象としている大口株主等が支払を受ける上場株式等に係る配当等の要件について、発行済株式等の総数等に占める保有割合を、現行の5%から3%に引き下げます。
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(2)個人住民税
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基本的な考え方 個人住民税は「地域社会の会費」として、住民がその能力に応じて広く負担を分かち合うという性格を有しています。そのため、所得税と異なる、次のような特徴を有しています。
- 税率構造は、10%比例税率を基本とし、応益性を明確化
- 所得控除は控除項目・金額ともに所得税の範囲内
- 税額控除は課税技術上の控除が中心で、政策的な控除は極めて限定的
地域主権改革を進めていく観点からは、地方税源を充実することが必要であり、そのための方策の一つとして、個人住民税の充実強化を検討することは、地方消費税と並ぶ重要な課題です。
個人住民税の「地域社会の会費」的性格をより明確化する観点から、所得税における諸控除の見直しや低所得者への影響にも留意しつつ、個人住民税の諸控除の見直しについて検討を進めます。
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改革の取組み 個人住民税の諸控除について次の措置を講じます。
- 所得税において、成年扶養控除の見直しが行われることを踏まえ、税体系上の整合性の観点等から、個人住民税の成年扶養控除についても、所得税と同様に見直します。
- 退職所得に係る個人住民税(所得割)の額から税額の10%を控除する仕組みについては、廃止します。
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※ 所得税における給与所得控除、退職所得の2分の1課税の見直しは、個人住民税に自動影響。
上場株式等の配当・譲渡所得等に係る10%軽減税率(うち個人住民税3%)など、金融証券税制については、個人住民税も所得税と同様に対応します。
個人住民税の所得割は前年所得を基準に課税しているため、収入が前年より大きく減少した人にとっては金銭的負担感が過重になります。納税者、特別徴収義務者、地方自治体の事務負担を踏まえつつ、現年課税化についても検討を行います。
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3.資産課税
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(1)相続税
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基本的な考え方 相続税は格差是正・富の再分配の観点から、重要な税です。相続税の基礎控除は、バブル期の地価急騰による相続財産の価格上昇に対応した負担調整を行うために引き上げられてきました。しかしながら、その後、地価は下落を続けているにもかかわらず、基礎控除の水準は据え置かれてきました。そのため、相続税は、亡くなられた方の数に対する課税件数の割合が4パーセント程度に低下しており、最高税率の引下げを含む税率構造の緩和も行われてきた結果、相続税の再分配機能が低下しています。
地価動向等を踏まえた基礎控除の水準調整をはじめとする課税ベースの拡大を図るとともに、税率構造について見直しを図ることにより、相続税の再分配機能を回復し、格差の固定化を防止する必要があります。
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改革の取組み -
イ 基礎控除及び税率構造
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格差固定化の防止、相続税の再分配機能・財源調達機能の回復等の観点から、基礎控除を「3,000万円+600万円×法定相続人数」へ引き下げるとともに、高額の遺産取得者を中心に負担を求める観点から最高税率を55%へ引き上げるなど税率構造を見直します。
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ロ 死亡保険金の非課税措置
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死亡保険金の非課税措置については、「相続人の生活安定」という制度趣旨の徹底の必要性や他の金融商品との間の課税の中立性確保の要請等を踏まえ、算定の基礎となる法定相続人の範囲を縮減します。
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ハ 未成年者控除・障害者控除
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相続税額から一定額を差し引く未成年者控除・障害者控除については、控除額が長年にわたって据え置かれてきており、物価動向や今般の相続税の基礎控除等の見直しを踏まえ、引き上げます。
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(2)贈与税
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基本的な考え方 贈与税は、相続税と同様、贈与という無償の財産取得に担税力を見出して課税するものであり、相続税の回避を防止するという意味で、相続税を補完する役割を果たしています。
過去累次の相続税・贈与税改正においては、こうした「相続税の回避防止」の観点から、相続税に比べ贈与税の税率構造は相対的に厳しいものとされてきました。加えて、近年、被相続人のみならず相続人自身の高齢化が進んでいることとも相まって、若年世代への資産移転が進みにくい状況となっています。贈与税の見直しを通じ、高齢者層が保有する資産をより早期に現役世代に移転させ、その有効活用を通じて経済社会の活性化を図ることが必要です。一方で、見直しに当たっては、資産格差が世代を超えて固定化してしまうとの懸念にも配慮する必要があります。
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改革の取組み 相続税について、課税ベースの拡大・税率構造の見直しを図れば、死亡時点まで資産を保有することに伴う税負担が高まるため、そのこと自体によっても生前贈与を促す効果があります。こうした相続税の負担の適正化と併せて贈与税を緩和すれば、そうした生前贈与はより一層促進されることになります。こうした観点から、子や孫などが受贈者となる場合の贈与税の税率構造の緩和、受贈者に孫を加えるなど相続時精算課税制度の対象範囲の拡大を行い、高齢者の保有資産の若年世代への早期移転を促し、消費拡大や経済活性化を図ります。
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(3)固定資産税
固定資産税は、課税客体である固定資産がどの市町村にも広く存在しており、税源の偏りも小さく、地域主権改革の観点からも市町村税としてふさわしい基幹税目です。市町村が住民に身近な行政サービスを提供する上で、今後とも税収の安定的な確保が不可欠です。
このため、政策税制措置については、適用実態や有効性等を検証し、厳格に見直します。
また、平成24年度の評価替えに向けて、負担調整措置のあり方及び固定資産の適正な評価について検討を進めます。
4.法人課税
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(1)基本的な考え方
デフレから脱却し、日本経済を本格的な成長軌道に乗せていくため、国内企業の国際競争力強化と外資系企業の立地を促進し、雇用と国内投資を拡大することが喫緊の政策課題となっています。こうした観点から、先進国の中で米国と並んで最も高い水準にある我が国の国税と地方税を合わせた法人実効税率について、「新成長戦略」(平成22年6月18日閣議決定)の方針の下、課税ベースの拡大等により財源確保を図りつつ、引下げを行います。厳しい環境に置かれている中小法人に適用される軽減税率も引き下げます。
また、雇用を増加させた企業を支援する雇用促進税制、成長分野である環境分野への投資を促進するための税制措置、国際的な企業立地競争の中で我が国の魅力を向上させる税制措置を講じます。
このような税制面での対応により、国内の雇用や投資が増加し、それが持続的な経済成長をもたらして、新たな雇用や投資を生むという好循環の実現を目指します。
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(2)改革の取組み
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法人実効税率の引下げ 平成23年度税制改正では、国税と地方税を合わせた法人実効税率を5%引き下げます。このため、現在30%である法人税率を25.5%に引き下げます1。これにより、我が国企業の国際競争力の向上や我が国の立地環境の改善が図られるとともに、「日本国内投資促進プログラム」2で示されたように我が国企業が国内の投資拡大や雇用創出に積極的に取り組み、これらが相まってデフレからの早期脱却につながることが期待されます。
税率引下げに併せて、課税ベースの拡大を行います。具体的には、租税特別措置である特別償却や準備金等の廃止や一部縮減を行うほか、法人税法上の措置である減価償却制度の償却速度を主要国並みに見直すことや、大法人について欠損金の繰越控除を一部制限する等の措置を講じます。
なお、法人実効税率の引下げは、我が国企業の国際競争力の観点等から行うものであるため、全体として地方の税収に極力影響を与えないようにします。また、法人実効税率の引下げと課税ベースの拡大措置に伴う都道府県と市町村の増減収を調整するため、平成24年度から道府県たばこ税の一部を市町村たばこ税に移譲します。
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中小法人に対する軽減税率の引下げ 我が国で地域経済の柱となり、雇用の大半を担っているのは中小企業です。厳しい経済状況の中、こうした中小企業を支えることは、重要な政策課題の一つです。法人実効税率の5%引下げは中小法人にも適用されますが、これに加え、平成22年度末に期限切れを迎える中小法人に対する18%の軽減税率についても、一般の税率とのバランスや個人事業主の所得税負担水準とのバランス等を勘案して、15%まで引き下げることとします。これに伴い、中小企業関連の租税特別措置についても一部見直しを行います。
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雇用促進税制 雇用の維持・増加を図り、それによって経済成長を推進することは、新成長戦略の一つの柱です。税制面でも、法人実効税率の引下げにより国内雇用の維持・増加を促すことに加え、現下の厳しい雇用情勢を踏まえ、出来る限りの支援措置を講じる必要があります。
そこで、雇用の受け皿となる成長企業を支援するために、雇用を一定以上増やした企業に対する税制上の優遇措置を創設するとともに、育児支援や障害者雇用促進のための税制上の優遇措置の創設・拡充を行います。
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環境関連投資促進税制 地球温暖化問題への対応が重要課題となる中、先進的な技術力を有する我が国において、環境分野は大きな成長が見込まれる有望な分野の一つです。我が国の環境・エネルギー技術の開発を後押しすることにより経済成長につなげるとともに、地球温暖化問題に対応していくため、先進的な低炭素・省エネ設備への投資に対し、税制上の優遇措置を講じることとします。
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総合特区制度・アジア拠点化推進のための税制 激しい国際競争にさらされている我が国の企業立地環境を改善するため、税制面においても、法人実効税率の引下げに加え、地域や対象企業の特色に応じた対応が必要となっています。
そこで、我が国全体の成長を牽引し、国際的に競争優位性を持ちうる大都市を対象とする国際戦略総合特別区域(仮称)における成長産業や外資系企業等の集積を促進するため、税制上の支援措置を創設します。併せて、全国で展開する地域活性化総合特別区域(仮称)についても税制上の支援措置を講じます。
さらに、グローバル企業のアジア地域統括拠点や研究開発拠点等を呼び込むための税制上の支援措置を創設します。
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租税特別措置(国税)の見直し 法人実効税率引下げに伴う課税ベースの拡大措置に加え、平成22年度税制改正大綱にもあるように、税制を納税者の視点に立って公平で分かりやすい仕組みとするとの観点から、租税特別措置については引き続き徹底した見直しを進めます。平成23年度税制改正においては、政策税制措置について109項目の見直しを行い、その結果として、50項目を廃止又は縮減します。
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脚注1:「法人実効税率」とは、法人事業税及び地方法人特別税が損金算入されることを調整した上で、法人税、法人住民税、法人事業税(所得割)、地方法人特別税の税率(法人事業税及び地方法人特別税については、外形標準課税の対象となる資本金1億円超の法人に適用される税率)を合計したものです。法人税率(国税)を4.5%引き下げるとともに法人住民税率(地方税)を維持することにより、法人実効税率は、国税と地方税を合わせて5.05%(東京都)下がり、現行の40.69%(東京都)が35.64%となります。なお、5.05%の内訳は、法人税分が4.18%、法人住民税分(東京都)が0.87%です。
5.消費課税
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(1)消費税
消費税のあり方については、民主党「税と社会保障の抜本改革調査会中間整理」(平成22年12月6日)で指摘された以下の基本的な考え方などを尊重しつつ、今後、社会保障制度の抜本改革の検討などと併せて、その具体的内容について、早急に検討を行ってまいります。あわせて、消費税制度の信頼性を確保していくために、一層の課税の適正化にも着手していきます。
『社会保障の財源は、税制全体で「所得・消費・資産」のバランスのとれた改革を行う中で確保していく。社会保障全体の財源は税制全体で確保していくが、その中でも「国民全体で広く薄く負担する」「安定した税収」という特徴を有する消費税は非常に重要である。「公平・透明・納得」の税制を築き、社会全体が支え合う新しいモデルを構築していくためには、およそ所得税改革だけでなし得るものではなく、消費税を含む抜本改革に政府は一刻も早く着手すべきである。』
『社会保障の安定・強化を目的に消費税の引き上げを提起する場合には、国民の理解と納得を得るためにも、消費税を社会保障の目的税とすることを法律上も、会計上も明確にする。その際の「社会保障」とする給付費の範囲は、まずは高齢者3経費を基本としつつ、現役世代のセーフティネットの安定・強化についてどこまで対象とすることが適当か、検討を行っていく。将来的には「社会保障」全体について安定財源を確保することにより、制度の一層の安定・強化につなげていく。また消費税率が一定の水準に達し、税・社会保障全体の再分配を見てもなお「逆進性対策」が必要となった場合には、制度が複雑となり、また政治的な要因が働きやすい「複数税率」よりも、制度が簡素で、透明性の高い「還付制度」を優先的に検討する。』
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(2)地方消費税
地方消費税は、偏在性が少なく税収が安定的で、経常的なサービスをあまねく提供する地方自治体の基幹税として適切な税です。
地方消費税のあり方については、「社会保障改革に関する有識者検討会報告〜安心と活力への社会保障ビジョン〜」(平成22年12月10日)において示された以下の内容などを尊重しつつ、今後、社会保障制度の抜本改革の検討などと併せて、その具体的内容について、早急に検討を行ってまいります。
『国民一人ひとりに包括的な支援をおこなうという社会保障の考え方からすれば、国民に身近なところでサービスを設計し、実行する地方自治体の役割はきわめて重要である。すべての自治体で、住民の参加と自立を支えることが、地域の自立につながる。また、国民自らが関与する分権的な社会保障は、社会保障の信頼を大きく高める。したがって、社会保障改革を支える税制改革のためには、国とともに制度を支えている地方自治体の社会保障負担に対する安定財源の確保が重要な目標でなければならない。
地方自治体もまた、安定的な公共サービスの供給をとおして地域の経済活力を高め、雇用を拡大することに責任を負わねばならない。そして、地方自治体のそのような努力を支えるためにも、税源の偏在性が少なく、安定的な税財源を確保することが必要である。また、地方が地域の実情に応じて住民合意の下に提供するサービスに関しては、独自に財源が確保できるように地方自治体の課税自主権の拡大・発揮についても検討されるべきである。』
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(3)たばこ税・酒税
たばこ税については、国民の健康の観点から、たばこの消費を抑制するため、将来に向かって、税率を引き上げていく必要があります。この方針に沿って、平成22年度税制改正では、1本あたり3.5円の税率引上げを実施しました。
平成24年度税制改正以降の税率引上げにあたっては、たばこの消費や税収、葉たばこ農家、小売店、製造者等に及ぼす影響等を十分に見極めた上で判断していきます。その過程で、たばこ法制について、現行のたばこ事業法を改廃し、たばこ事業のあり方について、上記のたばこ関係者の生活や事業の将来像を見据えて、新たな枠組みの構築を目指すこととします。
酒税については、課税の公平性等の観点も踏まえ、平成22年度税制改正大綱に示した「酒類の生産・消費の状況等に配慮しつつ、類似の酒類については、基本的に致酔性の観点からアルコール度数に着目した税制とすることを検討」との方針に沿って、検討を進めます。
6.環境関連税制
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(1)地球温暖化対策のための税の導入
地球温暖化防止のための温室効果ガスの削減は、我が国のみならず地球規模の重要かつ喫緊の課題です。欧州諸国を中心とした諸外国では、1990年代以降、燃料などのCO2排出源に対する課税を強化し、価格メカニズムを通じたCO2排出の抑制や企業による省エネ設備導入の支援などを行う施策が進められています。
我が国では、温室効果ガスの約9割をエネルギー起源CO2が占めており、エネルギー基本計画(平成22年6月18日閣議決定)においては、地球温暖化対策等を強力かつ十分に推進することにより、エネルギー起源CO2を2030年に1990年比▲30%程度、もしくはそれ以上削減することを見込んでいます。
こうした状況に鑑み、我が国においても税制による地球温暖化対策を強化するとともに、エネルギー起源CO2排出抑制のための諸施策を実施していく観点から、平成23年度に「地球温暖化対策のための税」を導入することとします。
具体的な手法としては、広範な分野にわたりエネルギー起源CO2排出抑制を図るため、全化石燃料を課税ベースとする現行の石油石炭税にCO2排出量に応じた税率を上乗せする「地球温暖化対策のための課税の特例」を設けることとします。
この特例により上乗せする税率は、原油及び石油製品については1キロリットル当たり760円、ガス状炭化水素は1トン当たり780円、石炭は1トン当たり670円とします。
このように「広く薄く」負担を求めることで、特定の分野や産業に過重な負担となることを避け、課税の公平性を確保します。また、導入に当たっては、急激な負担増とならないよう、税率を段階的に引き上げるとともに、一定の分野については、所要の免税・還付措置を設けることとします。併せて、燃料の生産・流通コストの削減や供給の安定化、物流・交通の省エネ化のための方策や、過疎・寒冷地に配慮した支援策についても実施することとします。
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(2)揮発油税、地方揮発油税及び軽油引取税
国及び地方の財政事情は引き続き非常に厳しい状況にあることや、地球温暖化対策の観点も踏まえ、引き続き、平成23年度においては、揮発油税、地方揮発油税及び軽油引取税について当分の間として措置されている現在の税率水準を維持することとします。
軽油引取税の当分の間税率を当面継続するにあたり、これと一体の措置である営業用トラック、バスに対する運輸事業振興助成交付金については、これに関する地方交付税措置を含め、継続します。
なお、交付金制度の透明性の向上を図るとともに、交付金基準額の確実な交付を確保するため、法整備等を受け所要の措置を講じます。
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(3)森林吸収源対策
温室効果ガスの削減に係る国際約束の達成等を図る観点から、森林吸収源対策を含めた諸施策の着実な推進に資するよう国全体としての財源確保を引き続き検討します。
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(4)地球温暖化対策に関する地方の財源確保
地球温暖化対策を推進するためには、地域において主体的な取組が進められることが不可欠です。既に地方公共団体が、地球温暖化対策について様々な分野で多くの事業を実施していることを踏まえ、エネルギー起源CO2排出抑制策、森林吸収源対策などの地球温暖化対策に係る諸施策を地域において総合的に進めるため、地方公共団体の財源を確保する仕組みについて検討します。
7.市民公益税制
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(1)基本的な考え方
「新しい公共」によって支え合う社会の実現に向けて、特定非営利活動法人(以下「NPO法人」といいます。)をはじめとする、市民が参画する様々な「新しい公共」の担い手を支える環境を税制面から支援することとします。
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(2)改革の取組み
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所得税の税額控除制度の導入 認定NPO法人への寄附について、草の根の寄附を促進するため、所得税において新たに税額控除を導入し、所得控除との選択制とします。
その際、寄附がチャリティの精神に基づくものであるという点にも留意しつつ、寄附者と政府が併せて支援するとの考えの下、所得税と個人住民税で合わせて50%までの税額控除を可能とすることとします。
また、公益社団法人、公益財団法人、学校法人、社会福祉法人及び更生保護法人についても、草の根の寄附を必要とする「新しい公共」の担い手として、市民との関わり合いが強く、かつ、運営の透明性が確保されている法人を税額控除の対象とします。いずれも、平成23年分から適用します。
なお、認定NPO法人以外の法人への寄附に係る税額控除については、制度導入後、どの程度の数の法人が税額控除の対象となっているかの実績を検証し、必要に応じて、各法人の特性を踏まえた要件等の見直しを検討します。
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認定NPO法人制度の見直し 後述の新認定法に基づく新たな認定制度が施行されるまでの間の対応として、事業収入の多いNPO法人でも、幅広く市民の支持を得ているのであれば認定を受けられるよう、パブリック・サポート・テスト要件に一定金額以上の寄附者の絶対数で判定する方式を導入し、現行の判定方式との選択制とするなど、認定要件の見直しの一部の措置を講ずることとします。
併せて、適切な税制上の事後的是正措置を整備する観点から、認定NPO法人のみなし寄附金について、認定取消しがあった場合には、取消しの原因となる事実のあった事業年度まで遡った取戻し課税を行うこととします。
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新認定法に基づく新たな認定制度 「新しい公共」の枢要な担い手となるNPO法人の健全な発展のための環境整備を図るため、新たな法律又は改正特定非営利活動促進法(以下「新認定法」といいます。)により新たな認定制度を整備することとします。このため、内閣府は、関係省庁の協力を得て、新たな認定制度等について、地方団体と協議を行い、その協議を整えた上で、平成24年4月から開始されるよう、次期通常国会において所要の法整備が行われることを目指します。
新認定法に基づく新たな認定制度が、「認定の間口は広く、事後チェックをしっかりやる」との考え方の下、次のイのようなものとして整備された場合には、ロの税制上の措置を講ずることとします(「市民公益税制PT報告書」を参照)。
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イ 新たな認定制度
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(イ) 地域のことは地域に住む住民が自ら決めるとの理念の下、認定事務を国税庁からNPO法人を認証した地方団体に移管します。
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(ロ) 「新しい公共」の枢要な担い手となるNPO法人の設立初期の活動を支援するため、設立後5年以内のNPO法人がPST要件以外の認定要件を満たす場合に、「仮認定」を受けることができる制度を導入します。
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(ハ) 新たな認定制度において本認定を受けた法人(以下「新認定法人」といいます。)について、名称の独占その他必要な支援措置を整備します。
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(ニ) 新認定法人の適正な運営を確保する観点から、適正を欠く運営が認められた場合に、現行のように直ちに認定取消しをするのでなく、事案に応じた段階的な監督の枠組みを設けます。
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ロ 新たな認定制度の下での税制措置
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(イ) 新認定法人については、現行と同様の認定基準等が設けられることを前提として、現行の認定NPO法人と同様に、寄附金控除やみなし寄附金制度の適用を認めることとします。「仮認定」を受けたNPO法人は、寄附金控除の対象とします。
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(ロ) 新認定法人のみなし寄附金の損金算入限度額について、社会福祉法人等と同等の監督規定等が整備される場合には、社会福祉法人等と同等の限度額(所得金額の50%又は200万円のいずれか大きい金額)に引き上げる措置を講じます。
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地域において活動するNPO法人等の支援(個人住民税) 地域において活動するNPO法人を支援するため、控除対象寄附金の拡大を行います。
また、「ふるさと寄附金」を活用してNPO法人等への支援を促進するため、控除対象寄附金の取扱いを明らかにすることを通じて寄附しやすい環境を整備します。
さらに、寄附文化の裾野を広げるため、寄附金税額控除の適用下限額の引下げを行います。
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8.国際課税
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(1)基本的な考え方
国際課税については、国際的租税回避を防止して我が国の適切な課税権を確保すると同時に、投資交流の促進等により我が国経済を活性化する観点から、制度・執行の両面において対応する必要があります。
近年の経済取引や企業活動のグローバル化に対応した国際課税の課題については、今般、税制調査会専門家委員会において「国際課税に関する論点整理」がとりまとめられました。
この「論点整理」は、国際的経済活動を阻害しない形で、税収の適切な確保を目指す必要があるとの視点に立った上で、課題の提起を行っています。具体的には、
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非居住者及び外国法人に対する課税原則について、今般のOECDモデル租税条約の改定を踏まえ、今後、国内法をいわゆる「総合主義」から「帰属主義」3に見直すとともに、これに応じた適切な課税を確保するために必要な法整備を検討する必要性、 -
国際的な事業再編等を通じた無形資産の移転に係る国際課税のあり方、 -
国外資産に関する報告制度など様々な資料情報収集の手続整備や、外国との間で租税徴収の共助を行うための仕組みについて検討を進める必要性、
などについて課題が提起されました。
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(2)今後の改革の方向性
今後、この「論点整理」で提起された点も参考にしつつ、まずは、上記
(帰属主義への見直し)及び
(資料情報収集及び徴収共助の手続整備)の点について具体的な検討を進める必要があります。また、
(無形資産の取扱い)の点については、今後OECDにおいて無形資産の移転に係る国際課税のあり方に関する議論が行われることから、当面は「論点整理」で示された点を参考にしつつ、こうした国際的な議論に参画していく必要があります。 さらに、租税条約については、今後とも我が国経済の活性化や我が国課税権の適切な確保に資するよう、我が国の経済構造及び国内法制、国際課税を巡る状況等を勘案しつつ、国際的な税務当局間の協力・協議の法的枠組みの強化を含め、そのネットワークの迅速な拡充に努めます。
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(3)国際連帯税
国際連帯税については、貧困問題、環境問題等の地球規模の問題への対策のための財源確保を目的としたものであり、代表例として航空券連帯税や通貨取引税が挙げられます。航空券連帯税については、既にフランスや韓国等で導入されています。また、通貨取引税については、フランスやベルギーにおいて、他の全てのEU加盟国での実施等を前提として導入することとされています。今後、上記「論点整理」も参考にしつつ、真摯に検討を行います。
脚注3:「総合主義」とは、恒久的施設を国内に有する外国法人等にはすべての国内源泉所得に課税すべきという考え方をいいます。
「帰属主義」とは、恒久的施設に帰属するすべての所得に課税すべきという考え方をいいます。
9.地域主権改革と地方税制
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(1)地方税の充実
地方税は、住民自治を支える根幹であり、地域主権改革を進めていく観点から、地方税を充実することが重要です。
また、少子高齢化が進み、社会保障制度を支えている地方自治体の役割がますます増大する中で、社会保障など地方行政を安定的に運営するための地方消費税の充実など、税源の偏在性が少なく、税収が安定的な地方税体系を構築します。
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(2)住民自治の確立に向けた地方税制度改革
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基本的考え方 税制を通じて住民自治を確立し、地域主権改革を推進するため、現行の地方税制度を「自主的な判断」と「執行の責任」を拡大する方向で抜本的に改革していきます。
その際、「自主的な判断」の拡大の観点に立って、地方税法等で定められている過剰な制約を取り除き、地方自治体が自主的に判断し、条例で決定できるように改革を進めます。
また、「執行の責任」の拡大の観点に立って、地方自治体が課税に当たって納税者である住民と直接向き合う機会を増やすように改革を進めます。
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具体的取組み 以下の事項等について検討を行い、成案を得たものから速やかに実施することとし、法制化が必要なものについては、平成24年度税制改正から実現を図ります。
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イ 地方自治体の「自主的な判断」の拡大のための事項
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(イ) 法定任意軽減措置制度(仮称)の創設
適用の是非や程度を、各地方自治体が自主的判断に基づき、条例において決定できる仕組みの創設を検討します。
また、例外的に全国一律に法律で軽減する必要がある対象の絞り込みを行います。
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(ロ) 法定税の法定任意税化・法定外税化
税収が僅少な法定税や法定任意税の取扱いを検討します。
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(ハ) 制限税率の見直し
納税者の権利保護や社会経済・他団体への影響等の観点を踏まえつつ、見直しを検討します。
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ロ 地方自治体の「執行の責任」の拡大のための事項
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(イ) 法定外税の新設・変更への関与の見直し
法定外税の新設・変更への国の同意付き協議による事前関与の見直しを検討します。
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(ロ) 消費税・地方消費税の賦課徴収に係る地方自治体の役割の拡大
地方自治体による消費税・地方消費税の申告書の収受や納税相談等を一層推進します。
また、今後の課題として、地方自治体による申告書の受理等について、実務上の論点等を含め検討します。
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税負担軽減措置等の見直し 地方税については、平成22年度税制改正大綱に掲げた「地方税における税負担軽減措置等の見直しに関する基本方針」に沿い、さらには地域主権改革の視点を踏まえ、国が地方の税収を一方的に減収せしめる税負担軽減措置等は、可能な限り行わないような方向で見直しを行っていきます。平成23年度税制改正においては、税負担軽減措置等のうち、産業政策等の特定の政策目的のために税負担の軽減等を行う「政策税制措置」について、100項目の見直しを行い、その結果として、64項目を廃止又は縮減します。
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