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税制メルマガ第144号 2021年11月1日

【税制メルマガ第144号】 
 2021年11月1日

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◆目次
1 はじめに
2 税制をめぐる最近の動き
3 若手コラム
4 アメリカからの研修生のメッセージ
5 編集後記

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1 はじめに

 税制メールマガジンをご覧いただいている皆さん、こんにちは。財務省主税局総務課の企画官(広報担当)の和田良隆です。

 第144号の税制メールマガジンをお届けさせていただきます。
 
 今回は、若手コラムにおいて、調査課外国係からイギリス税制の動向の紹介や、アメリカのマンスフィールド・フェローシップ・プログラムで主税局に研修に来られたマーラ・ボークソンさんからのメッセージなどを掲載しています。是非、お目通しいただければと思います。 

 イギリス税制の紹介や、マーラさんが主税局で研修されたということで、古今東西ではありませんが、私のほうでは、最近偶然見つけた昔の文書について、皆さんにご紹介させていただきます。 

 それは、財務省の広報誌「ファイナンス」平成元年2月号にある、「『公平』拾い書き」という論稿で、当時の主税局長の尾崎護さんが執筆されたものです。 
 皆さんは、税制は公平・中立・簡素であるべきだ、と聞かれたことがあるかもしれません。その中の税の公平性については、経済力が同等の人は等しく負担すべきという「水平的公平」と、大きな経済力を持つ人はより多く負担すべきであるという「垂直的公平」の2つがあります。またこれに加え、最近では、「世代間の公平」という視点も重要になってきています。
 この税の公平性に関して、「『公平』拾い書き」は、公平の捉え方は人それぞれ異なりうるため実現が非常に難しい、ということをとても分かり易い例で示しています。個人的に大変勉強になりましたので、以下にご紹介させていただきます。

 「ある課で新年会が行われたとします。その費用をどのように分け合ったら最も公平かということを考えてみましても、課員全員の納得が得られる分担方法を見つけるのは、議論を始めてみればそう簡単ではありません。
 ある人は費用を人数で割って均等に負担するのがいいと思うでしょう。課員全体が同じご馳走を食べ、同様にお酒を飲んだのだから、費用は均等に負担すべきだという考えです。
 ある人は、課長は平社員の何倍かを払い、それに応じて課長代理や係長も相応に平社員より余計に払うのが当然だと考えるでしょう。OL一年生などはただにしていいと主張するかもしれません。給料の額に応じて負担するという考えがその背後にあります。
  もう少し厳密な人は、同じ係長同士、平社員同士でも給与水準に応じて差をつけようと主張するかもしれません。お酒を飲まない人の負担は減らすべきだという意見も出るかもしれません。しかし、そこまで言い出すと折角の新年会が楽しくなくなり、懇親の意味がなくなるという声が出るかもしれません。
  新年会の例は会社の課内の話ですから、それぞれの給与の額が分かっています。従って、それぞれの分担額も役職に応じて定めれば大体よいのですが、実は平社員の中に親の遺産を受け継いで莫大な地代収入がある人がいたとします。そういう場合、課長さんにしてみれば、腹の底では「何でオレがあいつの何倍も会費を支払わなくてはいけないのか」と不公平感を味わっているかもしれません。本当はサラリー以外の収入もみんな把握して、それで分担を決める方が、水平的公平の面からも、また垂直的公平の完全を期す上でもよいのではないかと思われます。
 しかし、給与以外の収入まで課員に明らかにさせるということはまずありえないことです。そこまでやれとなれば、幹事のなり手がいなくなってしまうでしょう。つまり執行が不能になります。」

 いかがでしょうか。この30年以上前の論稿の中の事例が、現在でも全く色褪せずに税制の根源的な課題を言い表していることから見ても、時々の社会情勢の変化を踏まえつつ、不断に公平とは何か幅広い議論・意見集約を行って、税制を形作っていくのが重要だと、個人的に思った次第です。

 今回も本編の前に長々と失礼いたしました。それでは皆さん、是非、今月号の税制メールマガジンをお楽しみ下さい! 
 
 主税局総務課 企画官 和田良隆
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2 税制をめぐる最近の動き  

掲載日
 内容
10月8日
経済のデジタル化に伴う課税上の課題に対する国際合意についての財務大臣談話を発表しました
10月1日 令和3年度 8月末租税及び印紙収入、収入額調

(1)経済のデジタル化に伴う課税上の課題に対する国際合意についての財務大臣談話を発表しました
 本談話は、10月8日に行われた140カ国・地域が参加するOECD/G20の「BEPS包摂的枠組み」会合において、経済のデジタル化に伴う課税上の課題に対する国際合意が成立したことを受け、発表したものです。本合意は、10月13日に開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議においても支持されました。

 下記リンクから内容をご覧いただけます。
 財務大臣談話
 https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/20211009.html
 OECDによるプレスリリース(日本語)
 https://www.oecd.org/tokyo/newsroom/international-community-strikes-a-ground-breaking-tax-deal-for-the-digital-age-japanese-version.htm(OECEホームページへリンク)
 G20財務大臣・中央銀行総裁会議声明
 https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/convention/g20/g20_20211013.pdf

(2)令和3年度 8月末租税及び印紙収入、収入額調
 令和3年度8月末の租税及び印紙収入、収入額調を財務省ホームページで公開いたしました。

 下記リンクから内容をご覧いただけます。
  https://www.mof.go.jp/tax_policy/reference/taxes_and_stamp_revenues/202108.pdf

 
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3 若手コラム 

 読者の皆さん、こんにちは。主税局調査課外国係です。今月は、先月に引き続き、海外における最近の税制改革の動向についてお伝えしていきたいと思います。前回のアメリカに引き続き、第2回の今回は、「イギリス」です。先月のコラムで紹介したアメリカに負けず劣らず、最近のイギリス税制も大きなニュースが目白押し!今回のコラムでは、2021年のイギリス税制を巡る動向について、代表的なものを2つご紹介したいと思います。

 1つ目は、法人税率の引上げです。今年3月、スナク財務大臣は、コロナ危機の影響で悪化した財政の立直しを図るため、2023年の4月から、法人税率について、現在の一律19%から最高税率を25%に引き上げる(ただし、中小企業に対しては税率を軽減)ことを発表しました。イギリスにおいて継続的に引き下げられてきた法人税率が引き上げられるのは、1974年以来実に約50年ぶりであり、1974年当時の基本税率は52%!実に現在の3倍弱、時の流れを感じずにはいられません。
 なお、政府はこの措置により、2026年度までに約665億ポンド(日本円にして約9.1兆円)の増収を見込んでいます。(1ポンド=137円で換算)

 そして、今回のコロナ危機で影響を受けたのは、財政だけではありません。イギリスの医療制度である国民保健サービス(NHS)も大きな岐路に立たされています。現在、NHSでなんらかの治療を待つ人はなんと過去最高の550万人に達し、ここ数年で1,300万人になってしまうおそれもあると指摘されています。
 このようなNHSの現状を立て直すこと、加えて介護制度を改革することを目的に、本年9月、政府は医療・介護制度の改革に関する計画を発表しました。改革の財源として、2022年4月から、新たに「医療・介護負担金(Health and Social Care Levy)」を導入する方針を打ち出しました。給与収入(雇用主・従業員双方から)や自営業者の事業利益の1.25%を新たに徴収し、この財源をNHSの立直しや高齢化が進む中での介護サービスの改革に投入する見通しです。(なお、配当課税についても、同じタイミングで1.25%の税率引上げを行い、改革の財源とする予定です。)  

 イギリスに詳しい方だと、「あれ?保守党政権なのに増税?」と疑問を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。実際、この「医療・介護負担金」の導入により、現地報道によるとイギリスの租税負担率は1950年以降最高水準になると指摘されています。しかし、スナク財務大臣は、コロナ禍などの要因で悪化するイギリス財政を持続可能な形に戻すことの重要性を強調し、「豊かな未来を実現する上では健全な財政基盤が欠かせない」と述べています。

 今後はこれらの税制改革を実行に移すための法律の制定が行われていきます。今後も主税局調査課外国係では、イギリスの税制をしっかり調査、分析してまいります! 


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4 アメリカからの研修生のメッセージ

 主税局では、本年9月から10月にかけて、マンスフィールド・フェローシップ・プログラムの一環として、研修生のマーラ・ボークソンさんを受け入れ、研修を行いました。
  マンスフィールド・フェローシップ・プログラムとは、1994年に米国議会によって設立され、米国連邦政府職員をカウンターパートに当たる日本の省庁等に派遣することで、日本の行政システムに詳しい知日派の中堅若手官僚を養成しようというものです。
 プログラムでは、まず石川県の協力のもと7週間の日本語と日本文化研究を行い、その後の10ヶ月間は日本の中央省庁で研修を行うこととなります。そして、帰国後は、日本で得た研修成果を各連邦政府機関で活かすことが求められます。
  10月に主税局での研修を終えたマーラさんは、現在も財務省内の他の部局で研修を続けています。
 今回、マーラさんから主税局での研修の感想等について、税制メルマガに寄稿をいただきましたので、ご紹介いたします。


【原文】
Dear Tax Bureau Colleagues,

Thank you for allowing me to join you this past month. I enjoyed working alongside you and learning about your expertise, interests, and research. I learned a lot about Japanese and international taxation and loved answering your U.S. tax questions in return. I was impressed by all of your hard work and kindness.

I hope you all continue to thrive and advance in your respective careers. If you are ever in the U.S., especially Washington D.C., I hope you reach out to me. I also hope to hear from you and any updates you may have. Know you have a friend cheering you on in America. I hope we get the opportunity to cross paths again.

Marla Borkson

【日本語訳】
主税局の同僚の皆様

 この1ヶ月間、私を受け入れてくれてありがとうございました。 皆さんと一緒に仕事をして、皆さんの専門知識や興味、研究内容を知ることができて楽しかったです。 日本や国際的な税務について多くのことを学びましたし、アメリカの税務に関する質問に答えるのも楽しかったです。 皆さんの勤勉さと優しさに感銘を受けました。

 皆さんがこれからもそれぞれのキャリアで活躍されることを願っています。 もしアメリカ、特にワシントンD.C.にいらっしゃることがあれば、是非ご連絡いただければと思います。 近況をうかがうのを楽しみにしています。 アメリカからあなたを応援しています。 またお会いできる機会を待ち望んでいます。

マーラ・ボークソン


 主税局内での研修では、マーラさんが所属する米国内国歳入庁での業務経験を生かした調査業務に加え、日本の税制に関する研修や主税局内の各課との意見交換などのプログラムを行っていました。我々、主税局職員としても、米国をはじめとする外国の税制への理解が深まり、有意義な期間となりました。
  研修や、主税局職員との交流など、主税局で過ごした日々がマーラさんの行政官としての良い経験になればうれしく思います。  


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 5 編集後記 

 最近は秋も深まり肌寒い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。

 今回のコラムに登場したマーラさんが研修していた時期には、調査課外国係の職員とマーラさんが英語と日本語を織り交ぜて会話をしているのがよく聞こえてきていました。調査課外国係には英語が堪能な職員が多く、驚きました。私は英語が苦手ですので、英語学習はこれからの課題であります。英語や税法など学ぶべきことはたくさんありますので、自己研鑽を欠かさない職員になりたいものです。

 今月も最後までお付き合いいただきありがとうございます。次回の税制メールマガジンもよろしくお願いいたします。

 主税局総務課 広報係 田中

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mailto:mg_tax@mof.go.jp

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